(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025038645
(43)【公開日】2025-03-19
(54)【発明の名称】押ボタンスイッチ
(51)【国際特許分類】
H01H 13/56 20060101AFI20250312BHJP
【FI】
H01H13/56
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023145383
(22)【出願日】2023-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】508296738
【氏名又は名称】富士電機機器制御株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 辰志
【テーマコード(参考)】
5G206
【Fターム(参考)】
5G206AS02J
5G206AS02L
5G206AS02N
5G206AS04J
5G206FS02J
5G206FS02L
5G206FS10L
5G206LS02
(57)【要約】
【課題】製造後に1つの部品を追加するだけでモーメンタリ式とオルタネート式とに使い分けることのできる押ボタンスイッチを提供する。
【解決手段】押ボタンスイッチ10における操作部12のケース24には、ロック具収納室36にロックピン38が収納可能になっている。ロックピン38はZ方向に対する直交面に沿って弾性変位可能な従動接触子38bを備える。操作部12は、ケース24に対してZ方向に沿って変位可能な押込体28と、押込体28をZ2側に弾性付勢するコイルバネ32と、押込体28の変位にともなって従動接触子38bを弾性変位させながら案内するハート形状部30aを含むカム部30とを有する。ロック具収納室はZ1側に開口している。ロック具収納室36は、ロックピン38がZ1側から挿入されることにより係合固定されるようになっている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作部および該操作部に対してZ方向に沿った一方のZ1側で固定される接点部を有する押ボタンスイッチであって、
前記操作部のケースには、Z方向に対する直交面に沿って弾性変位可能な従動接触子を備えるロック具が収納可能になっており、
前記操作部は、
ケースに対してZ方向に沿って変位可能な押込体と、
前記押込体をZ方向に沿った他方のZ2側に弾性付勢する弾性体と、
前記押込体に設けられ、前記押込体の変位にともなって前記従動接触子を弾性変位させながら案内し、Z1側に押し込まれた後前記弾性体によってZ2側に変位する毎に前記従動接触子に係止されて前記押込体をZ方向に沿った第1位置と第2位置とに維持されるカム部と、
を有し、
前記接点部は、前記押込体が前記第1位置にあるとき第1状態となり、前記第2位置にあるとき第2状態になる端子対を有し、
前記ケースはZ1側に開口するロック具収納室を備え、
前記ロック具収納室は、前記ロック具がZ1側から挿入されることにより係合固定されるようになっている
ことを特徴とする押ボタンスイッチ。
【請求項2】
操作部および該操作部に対してZ方向に沿った一方のZ1側で固定される接点部を有する押ボタンスイッチであって、
前記操作部は、
ケースに対してZ方向に沿って変位可能な押込体と、
前記押込体をZ方向に沿った他方のZ2側に弾性付勢する弾性体と、
Z方向に対する直交面に沿って弾性変位可能な従動接触子を備え、前記ケースに係合して固定されるロック具と、
前記押込体に設けられ、前記押込体の変位にともなって前記従動接触子を弾性変位させながら案内し、Z1側に押し込まれた後前記弾性体によってZ2側に変位する毎に前記従動接触子に係止されて前記押込体をZ方向に沿った第1位置と第2位置とにロックされるカム部と、
を有し、
前記接点部は、前記押込体が前記第1位置にあるとき第1状態となり、前記第2位置にあるとき第2状態になる端子対を有し、
前記ケースはZ1側に開口するロック具収納室を備え、
前記ロック具収納室は、前記ロック具がZ1側から挿入されることにより係合固定されている
ことを特徴とする押ボタンスイッチ。
【請求項3】
前記ケースはさらに、
前記ロック具収納室に設けられZ方向に交差する向きの係合軸と、
前記ロック具収納室の内壁から突出する係合突起と、
を備え、
前記ロック具は、
弾性的に湾曲可能であり、前記係合軸に係合してZ2側に対する抜け止めがなされる湾曲部と、
前記湾曲部の一方からZ2側に延在して前記従動接触子を備える第1アームと、
前記湾曲部の他方からZ2側に延在する第2アームと、
前記第2アームに設けられ、前記内壁に向かって弾性付勢されて前記係合突起に係合してZ1側に対する抜け止めがなされる係合爪と、
を備える
ことを特徴とする請求項1または2に記載の押ボタンスイッチ。
【請求項4】
前記ロック具は屈曲ピンであり、
前記従動接触子は前記第1アームの先端がL字に屈曲して形成され、
前記係合爪は前記第2アームの先端がU字に屈曲して形成されている
ことを特徴とする請求項3に記載の押ボタンスイッチ。
【請求項5】
前記係合突起は、Z1側に向かって前記内壁に接近する傾斜面を形成している
ことを特徴とする請求項3に記載の押ボタンスイッチ。
【請求項6】
前記ロック具収納室には前記係合突起と対向する箇所に前記第1アームの中間部を支持する支持突起が突出している
ことを特徴とする請求項3に記載の押ボタンスイッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は押ボタンスイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
押ボタンスイッチは、例えば制御盤等のパネルに設けられた孔に取り付けられる。この場合、パネルの表面側にボタンを有する操作部が配置され、裏面側には操作部に対して固定される接点部が設けられる。接点部にはボタンの操作に連動して端子の接続状態が切り替わる端子対が設けられる。押ボタンスイッチにはモーメンタリ式とオルタネート式とがあるが、筐体などの大部分を共通化することによるコストダウンや、意匠上の統一感が図られている。
【0003】
モーメンタリ式はボタンの押し操作をしている間だけ端子対がオンになる簡単な機構で足りるが、オルタネート式は押し操作をする毎に端子対がオン-オフを繰り返すようなオルタネート機構が必要になる。そのため、モーメンタリ式とオルタネート式との共通化のためには、モーメンタリ式をベースにして部品を追加してオルタネート式に変更することが考えられる。オルタネート機構はハート形のカムと、該カムに案内されるロックピンが用いられることがある。
【0004】
特許文献1に記載の押ボタンスイッチは外側からロックピンを含む2つの部品追加することでモーメンタリ式からオルタネート式へと変更可能である。特許文献2に記載の押ボタンスイッチは操作部と接触ユニットからなり、接触ユニットにロックピンを含む3つの部品追加することでモーメンタリ式からオルタネート式へと変更可能である。特許文献3に記載の押ボタンスイッチは、製造時の組立工程で1つの部品追加することで、モーメンタリ式かオルタネート式かのいずれかを製造することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭61-32312号公報
【特許文献2】特開平2-230621号公報
【特許文献3】特開2009-54349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1,2に記載の押ボタンスイッチは、モーメンタリ式からオルタネート式へと変更するのにロックピン以外に蓋体や板バネなどの部品が必要となっている。特許文献3に記載の押ボタンスイッチは製造工程における1つの部品の有無によりモーメンタリ式とオルタネート式とを分けて製造することができるが、製造後には変更ができない。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、製造後に1つの部品を追加するだけでモーメンタリ式とオルタネート式とに使い分けることのできる押ボタンスイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる押ボタンスイッチは、操作部および該操作部に対してZ方向に沿った一方のZ1側で固定される接点部を有する押ボタンスイッチであって、前記操作部のケースには、Z方向に対する直交面に沿って弾性変位可能な従動接触子を備えるロック具が収納可能になっており、前記操作部は、ケースに対してZ方向に沿って変位可能な押込体と、前記押込体をZ方向に沿った他方のZ2側に弾性付勢する弾性体と、前記押込体に設けられ、前記押込体の変位にともなって前記従動接触子を弾性変位させながら案内し、Z1側に押し込まれた後前記弾性体によってZ2側に変位する毎に前記従動接触子に係止されて前記押込体をZ方向に沿った第1位置と第2位置とに維持されるカム部と、を有し、前記接点部は、前記押込体が前記第1位置にあるとき第1状態となり、前記第2位置にあるとき第2状態になる端子対を有し、前記ケースはZ1側に開口するロック具収納室を備え、前記ロック具収納室は、前記ロック具がZ1側から挿入されることにより係合固定されるようになっていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明にかかる押ボタンスイッチは、操作部および該操作部に対してZ方向に沿った一方のZ1側で固定される接点部を有する押ボタンスイッチであって、前記操作部は、ケースに対してZ方向に沿って変位可能な押込体と、前記押込体をZ方向に沿った他方のZ2側に弾性付勢する弾性体と、Z方向に対する直交面に沿って弾性変位可能な従動接触子を備え、前記ケースに係合して固定されるロック具と、前記押込体に設けられ、前記押込体の変位にともなって前記従動接触子を弾性変位させながら案内し、Z1側に押し込まれた後前記弾性体によってZ2側に変位する毎に前記従動接触子に係止されて前記押込体をZ方向に沿った第1位置と第2位置とにロックされるカム部と、を有し、前記接点部は、前記押込体が前記第1位置にあるとき第1状態となり、前記第2位置にあるとき第2状態になる端子対を有し、前記ケースはZ1側に開口するロック具収納室を備え、前記ロック具収納室は、前記ロック具がZ1側から挿入されることにより係合固定されていることを特徴とする。
【0010】
これらの押ボタンスイッチによれば、製造後に操作部を分解することなく1つのロック具をZ1側から挿入するだけでモーメンタリ式とオルタネート式とに使い分けることができる。
【0011】
前記ケースはさらに、前記ロック具収納室に設けられZ方向に交差する向きの係合軸と、前記ロック具収納室の内壁から突出する係合突起と、を備え、前記ロック具は、弾性的に湾曲可能であり、前記係合軸に係合してZ2側に対する抜け止めがなされる湾曲部と、前記湾曲部の一方からZ2側に延在して前記従動接触子を備える第1アームと、前記湾曲部の他方からZ2側に延在する第2アームと、前記第2アームに設けられ、前記内壁に向かって弾性付勢されて前記係合突起に係合してZ1側に対する抜け止めがなされる係合爪と、を備えていてもよい。このような構成によりロック具はZ1側からロック具収納室に挿入するだけで係合固定される。
【0012】
前記ロック具は屈曲ピンであり、前記従動接触子は前記第1アームの先端がL字に屈曲して形成され、前記係合爪は前記第2アームの先端がU字に屈曲して形成されていてもよい。このようにロック具を屈曲ピンで構成すると簡便かつ廉価となる。
【0013】
前記係合突起は、Z1側に向かって前記内壁に接近する傾斜面を形成していてもよい。これによりロック具はスムーズにロック具収納室に挿入可能となる。
【0014】
前記ロック具収納室には前記係合突起と対向する箇所に前記第1アームの中間部を支持する支持突起が突出していてもよい。これにより、第1アームは適正な姿勢に維持されるとともに、支持突起を支点とした傾動が可能になり従動接触子が変位しやすくなる。
【発明の効果】
【0015】
本発明にかかる押ボタンスイッチは、製造後に操作部を分解することなく1つのロック具をZ1側から挿入するだけでモーメンタリ式とオルタネート式とに使い分けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態である押ボタンスイッチを示す側面模式断面図である。
【
図2】
図2は、押ボタンスイッチの分解斜視図である。
【
図4】
図4は、
図3におけるIV~IV線視による断面側面図である。
【
図5】
図5は、
図4におけるロックピンとその周辺部の拡大図である。
【
図7】
図7は、操作部におけるロックピンとその周辺部の一部断面斜視図である。
【
図8】
図8は、
図3におけるロックピンとその周辺部の拡大図である。
【
図9】
図9は、ロックピンが挿入されていない操作部の一部拡大底面図である。
【
図10】
図10は、ロックピンが挿入されている操作部の一部拡大底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明にかかる押ボタンスイッチの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0018】
図1は、本発明の実施形態である押ボタンスイッチ10を示す側面模式断面図である。
図2は、押ボタンスイッチ10の分解斜視図である。
【0019】
押ボタンスイッチ10は、後述するロックピン(ロック具)38の有無によりモーメンタリ式およびオルタネート式のいずれかになり得る。押ボタンスイッチ10はいわゆる分離型であり、一部がパネルPの取付孔Paに挿入された状態で該パネルPに取り付けられる操作部12と、該操作部12に対して取付孔Paから挿入された下側部分に対して固定される接点部14とからなる。接点部14はパネルPの裏面側に配置され、取付孔Paの内径による大きさの制約を受けない。押ボタンスイッチ10は、基本的に強度や弾性を要する部品(後述するコイルバネ32やロックピン38など)や導電性を要する部品が金属材で構成され、それ以外(後述するケース24や押込体28など)は樹脂材で構成されているが、各部品の材質はこれに限定されない。押ボタンスイッチ10は丸形であるが角形などでもよい。
【0020】
説明の便宜上、押ボタンスイッチ10の中心軸に沿う方向をZ方向とし、これに直交する2方向をX方向およびY方向とする。Z方向については、接点部14側をZ1側または下とし、操作部12側をZ2側または上とする。ただし、押ボタンスイッチ10の取付向きはこの方向に制限されることはない。
【0021】
接点部14は、箱形状の本体部14aの上面に操作部12の一部が嵌り込む凹部14eが形成されている。本体部14aからはランプ14bが上方に突出している。本体部14aの下面には複数の端子14caが突出している。端子14caは複数がまとまって端子対14cを形成する。端子対14cは操作部12の操作に基づいて接点状態が切り替わる。本実施例では端子対14cはa接点式を含むものとし、ボタン26が押し込まれて(またはロックされて)相対的にZ1側の第1位置にあるときオン状態(第1状態)になり、押し込まれないで相対的にZ2側の第2位置にあるときオフ状態(第2状態)になるものとする。もちろん端子対14cはb接点式、またはc接点式であってもよい。端子対14cがc接点であればa接点と共通部で同じ論理になり、b接点式であればa接点の場合とオン・オフ論理が逆になる。
【0022】
接点部14は操作部12の一部に嵌め込んだ後に線状の抜止めバネ14dを側方から取り付けることによって固定される。接点部14は抜止めバネ14dの取付けおよび取り外しにより操作部12に対して容易に着脱可能である。接点部14はランプ14bを有する照光式であるが、非照光式や端子対14cの数または種類が異なるものに交換可能である。
【0023】
操作部12は、孔Paから下方に突出する下方突出部24aに対してパッキン18、ワッシャ20が嵌め込まれ、さらにナット22が螺合することによりパネルPに対して固定される。
【0024】
図3は、操作部12の断面側面図である。なお、
図3および後述する
図4、
図5、
図8におけるボタン26および押込体28は第2位置(つまりオフ状態)にあり、第1位置(つまりオン状態)にある状態の図示は省略する。操作部12には主要な構成要素としてケース24、ボタン26および押込体28がある。上記の下方突出部24aはケース24の一部である。ケース24は下方突出部24a以外にパネルPより上側のパネル前面部24bを有しており筒形状となっている。下方突出部24aはパネル前面部24bよりやや小径であって径の段差部に取付孔Paの縁が当たるようになっている。
【0025】
ボタン26はキャップ26a、ボタン本体26bを有する。キャップ26aは人手による押し込み操作がなされる部分であり、下方に開口した低い有底筒形状となっている。キャップ26aは複数色が用意されており交換可能になっている。ボタン本体26bは、上方部分がキャップ26aに嵌合固定されており、下方部分は上方部分よりやや小径で下方に延出している。ボタン26はパネル前面部24bの中空部に対して下向きに押し込み操作が可能となっている。ボタン26が第2位置にあるとき、キャップ26aのほとんどはパネル前面部24bより上方にあり、ボタン本体26bのほとんどはパネル前面部24bの中空部にある。キャップ26aとボタン本体26bとの間には複数枚のプレート26cが設けられている。
【0026】
押込体28は係合部28a、フランジ28b、ロッド28c、抜止部28d、およびカム部30を有する。係合部28aはボタン本体26bの内周側に係合固定されている。つまり、ボタン26と押込体28とは一体的に動作するように固定されている。したがってオルタネート式でスイッチオンの状態ではボタン26と押込体28とは一体的に第1位置の下降状態に維持される。ただし、ボタン26と押込体28とは別体式で、スイッチオンの状態で押込体28だけが第1位置に維持されるようにしてもよい。
【0027】
フランジ28bは係合部28aの直下にあり、ケース24の内周壁に当接および摺動して、押込体28の上方部分が安定的に支持される。ロッド28cは下方に突出しており、接点部14を操作する。ロッド28cは複数設けられている。抜止部28dはケース24の一部に係止され押込体28が上方へ抜けることを規制する。カム部30は押込体28におけるY方向に沿った一方(
図3の左側)の下端近傍の周面に形成されている。カム部30についてはさらに後述する。
【0028】
ケース24のやや下方の内周部には内側に向かって突出するほぼ環状の突起24cが形成されている。突起24cは押込体28の周面に当接および摺動し、該押込体28の下方部分が安定的に支持される。フランジ28bと突起24cとの間にはコイルバネ(弾性体)32が設けられており、押込体28およびボタン26を上方に付勢している。
【0029】
ボタン26および押込体28とケース24との間は環状の弾性シール34によってシールされている。弾性シール34は全周に亘って略S字断面形状であり、一端がボタン本体26bの下端とフランジ28bとの間で押圧され、他端がケース24に形成されたシール溝24dに嵌り込んでいる。弾性シール34は柔軟であり、断面S字形状は適度に長く、ボタン26および押込体28の昇降動作を阻害しない。
【0030】
図4は、
図3におけるIV~IV線視による断面側面図である。
図5は、
図4におけるロックピン38とその周辺部の拡大図である。
図6は、ロックピン38の斜視図である。
図7は、操作部12におけるロックピン38とその周辺部の一部断面斜視図である。
図8は、
図3におけるロックピン38とその周辺部の拡大図である。
【0031】
図4、
図5に示すように、カム部30は縦方向にやや長い変則形状の溝であり、その下端部はハート形状部30aを形成している。カム部30は押込体28の一部であるから該押込体28とともに昇降する。ハート形状部30aは昇降に際してケース24の下端に設けられたロック具収納室36を臨んでいる。ロック具収納室36にはロックピン38が収納されている。カム部30、ロック具収納室36およびロックピン38は、ボタン26の押し込み操作毎に接点部14の接点状態を切り替えるオルタネート機構40を構成している。
【0032】
図6に示すように、ロックピン38は、屈曲ピンであり、弾性的に湾曲可能な湾曲部38aと、湾曲部38aの一方から上側に延在して先端にL字状に屈曲した従動接触子38bを備える第1アーム38cと、湾曲部38aの他方から上側に延在して先端にU字状に屈曲した係合爪38dを備える第2アーム38eとを有する。第1アーム38cおよび第2アーム38eはV字状になっている。第1アーム38cは第2アーム38eより長く、本実施例では1.5倍程度である。従動接触子38bはY方向を指向し、係合爪38dは下方を指向している。従動接触子38bおよび係合爪38dは適度に短い。第1アーム38cと第2アーム38eとは湾曲部38aが弾性変形することにより互いの成す角を変化させることができる。ロックピン38の下端つまり湾曲部38aはケース24の下面より下方に突出していないが、該下面とほぼ一致している。ロックピン38は製造が容易であって廉価である。
【0033】
図5、
図7に示すように、ロック具収納室36は下側に開口36aを有しており、開口36a近傍でY方向に沿って形成された係合軸36bと、X方向に沿った一方(
図5の右側)の内壁から突出する係合突起36cと、他方(
図5の左側)の内壁から突出する支持突起36dとを有する。支持突起36dは係合突起36cと対向する位置にある。
【0034】
係合軸36bの下面には湾曲部38aが係合してロックピン38の上側に対する抜け止めがなされる。係合軸36bの外径と湾曲部38aの内径とはほぼ等しい。係合軸36bは基本的にY方向に沿う向きに設けられるが、湾曲部38aと係合可能なようにZ方向に交差する向きに設けられていればよい。
【0035】
係合突起36cの上面は、Y方向幅がロックピン38の線径よりやや大きく、係合爪38dが係合してロックピン38の下側に対する抜け止めがなされる。支持突起36dは小さく、ボタン26および押込体28が第2位置にあるとき、第1アーム38cがZ方向に沿うように該第1アーム38cの略中間部を側方から支持する。係合突起36cおよび支持突起36dは、各上面がそれぞれZ方向に対する直交面となっており、下面は下側に向かって内壁に接近する傾斜面36ca,38daを形成しており、上下に非対称な台形となっている。
【0036】
図5の仮想線で示すように、ロックピン38は開口36aから上向きに挿入することによってロック具収納室36内で係合して固定される。つまり、湾曲部38aは弾性的に湾曲変形可能であることから、係合爪38dが係合突起36cを乗り越える際に一度角度が少し狭まり、その後やや広がり、湾曲部38aが係合軸36bに係合するとともに係合爪38dが係合突起36cの上面に係合する。仮想線で示すように係合爪38dが係合突起36cの側面に当接しているとき、第1アーム38cおよび第2アーム38eはそれぞれZ方向に沿うようにほぼ平行になる。係合突起36cの下方は傾斜面36caになっており、U字で上方が円弧状の係合爪38dが乗り越えやすい。
【0037】
ロックピン38がロック具収納室36に固定されると、従動接触子38bの先端はカム部30に挿入される。従動接触子38bは、Z方向には変位不能であるが第1アーム38cが弾性変形することにより、Z方向に対する直交面(つまりX-Y平面)に沿って弾性変位可能となっている。第1アーム38cは略中間部が支持突起36dによって支持されることにより、
図5における左側内壁に対してわずかに余裕があり、支持突起36dを支持点として時計方向にやや回動可能であり、従動接触子38bが
図5の右側に向かって変位しやすくなっている。
【0038】
従動接触子38bは、押込体28が第2位置にあるときカム部30におけるハート形状部30a左下のP1点にある。この状態から押込体28が押し込まれると、従動接触子は一旦左上方のP2点に従動的導かれ、その後ハート形状部30aの上方窪み部のP3点に導かれて係合し、押込体28が第1位置に維持される。この状態から再度押込体28が押し込まれると、従動接触子38bは一旦右上方のP4点に従動的導かれ、その後P1点に復帰し、押込体28が第2位置に戻る。換言すると押込体28は、下側に押し込まれた後コイルバネ32によって上側に変位する毎に従動接触子38bに係止され、Z方向に沿った第1位置と第2位置とに維持される。なお、カム部30を形成する溝は経路に沿ってY方向(
図5の紙面垂直方向)に傾斜する部分が複数ある。したがって、従動接触子38bはカム部30内をY方向に弾性変位しながら導かれ、一方にのみ移動するようになっている。
【0039】
図7に示すように、ケース24の下端には小さいブロック24eが設けられており、ロック具収納室36の壁の一部を形成している。ブロック24eはケース24の内周壁に対してX方向に沿った一方(
図7の左側)では直接つながっており、他方(
図7の右側)では係合軸36bを介してつながっている。ブロック24eは比較的低く設定されており、本実施例で第1アーム38cの1/3程度、第2アーム38eの1/2程度である。ブロック24eはY方向に関して第1アーム38cと重ならず、ケース24との間に隙間24hが形成されており、該第1アーム38cが傾動可能になっている。
【0040】
図8に示すように、ブロック24eとケース24の内周壁との隙間24fはロックピン38よりやや広い程度である。ロック具収納室36内の上方部ではケース24の内壁に凹部24gが形成されており、従動接触子38bが
図8における左側に傾動可能となっている。
【0041】
図9は、ロックピン38が挿入されていない操作部12の一部拡大底面図である。
図10は、ロックピン38が挿入されている操作部12の一部拡大底面図である。識別を容易にするため
図9、
図10では、係合軸36b、係合突起36c、支持突起36dに濃いドット地を付し、
図10ではさらにロックピン38に薄いドット地を付している。
【0042】
上記のとおりオルタネート機構40はロックピン38が構成要素の一つとなっている。つまり、押ボタンスイッチ10は、開口36aからロックピン38を挿入する前段階ではモーメンタリ式であり、挿入後にはオルタネート式になる。つまり、
図9のようにロックピン38のない操作部12を備える押ボタンスイッチ10はモーメンタリ式スイッチ10Aとなり、
図10のようにロックピン38のある操作部12を備える押ボタンスイッチ10はオルタネート式スイッチ10Bとなる。また換言すると、モーメンタリ式スイッチ10Aのロック具収納室36は、ロックピン38が下側から挿入されることにより係合固定されるようになっており、オルタネート式スイッチ10Bのロック具収納室36は、ロックピン38が下側から挿入されることにより係合固定されている。
【0043】
モーメンタリ式スイッチ10Aをオルタネート式スイッチ10Bに変更するには、開口36aからロックピン38を挿入するという簡易操作によって行うことができる。この操作はラジオペンチなどの工具を用い、または人手により直接行うことができる。ケース24(例えば黒)とロックピン38(例えば銀)とを違う色にすることにより、操作部12の底面を見てモーメンタリ式スイッチ10Aとオルタネート式スイッチ10Bとを容易に識別することができる。
【0044】
このように、本実施の形態では製造後に操作部12を分解または加工することなく、ロックピン38を1つ追加するだけでモーメンタリ式スイッチ10Aをオルタネート式スイッチ10Bに変更し使い分けることができる。したがって、製造者または数多く使用するユーザは、モーメンタリ式スイッチ10Aとオルタネート式スイッチ10Bとを個別に在庫として準備する必要がない。モーメンタリ式スイッチ10Aとしてはロックピン38を追加することなくそのまま使用することができ、オルタネート式スイッチ10Bとしては在庫を持つことなく、ロックピン38を追加するだけで必要に応じて即時に対応することができ、双方が補完的効果を奏する。オルタネート式スイッチ10Bはロックピン38を追加した後に必要に応じて動作検査をしてもよい。ロックピン38は十分に小さくかつ廉価であり、数が多くとも在庫が負担とならない。
【0045】
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0046】
10 押ボタンスイッチ
10A モーメンタリ式スイッチ
10B オルタネート式スイッチ
12 操作部
14 接点部
14c 端子対
24 ケース
26 ボタン
28 押込体
30 カム部
30a ハート形状部
32 コイルバネ(弾性体)
36 ロック具収納室
36a 開口
36b 係合軸
36c 係合突起
36ca,38da 傾斜面
36d 支持突起
38 ロックピン
38a 湾曲部
38b 従動接触子
38c 第1アーム
38d 係合爪
38e 第2アーム
40 オルタネート機構