(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025038774
(43)【公開日】2025-03-19
(54)【発明の名称】飲料容器用蓋及び飲料容器
(51)【国際特許分類】
A47G 19/22 20060101AFI20250312BHJP
B65D 75/62 20060101ALI20250312BHJP
B65D 85/72 20060101ALI20250312BHJP
【FI】
A47G19/22 M
B65D75/62 A
B65D85/72 200
A47G19/22 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023145584
(22)【出願日】2023-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】000223193
【氏名又は名称】東罐興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(74)【代理人】
【識別番号】100198214
【弁理士】
【氏名又は名称】眞榮城 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】田中 佑典
(72)【発明者】
【氏名】太田 登茂樹
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 恒昭
【テーマコード(参考)】
3B001
3E035
3E067
【Fターム(参考)】
3B001AA02
3B001BB01
3B001CC15
3E035AA03
3E035BA05
3E035BC01
3E035BC02
3E035BD04
3E035CA02
3E067AA03
3E067AB26
3E067AC01
3E067BA07A
3E067BB01A
3E067BB14A
3E067BC07A
3E067CA07
3E067EA17
3E067EB03
3E067EB07
3E067EB29
3E067EB30
3E067EE59
3E067FA01
3E067FC01
3E067GA01
3E067GA06
(57)【要約】
【課題】1ステップで飲み口を開封できるとともに、飲料の香りを楽しむことができる飲料容器用蓋及びそれを備えた飲料容器を提供する。
【解決手段】 飲料容器2の開口部を覆う覆板部4と、この開口部の縁部に係合可能な側周部5と、を備える飲料容器用蓋1において、指で下方に押し込まれる押込み部7と、押込み部7が下方に押し込まれる反力で上方に持ち上がる飲み口部8を設け、飲み口部8を、押込み部7より側周部側にし、飲み口部8と押込み部7との境を区画線部9で区画し、押込み部7の幅W1を飲み口部8の幅W2より広くし、且つ、区画線部9から飲み口部8の側周部5側の端部までの距離D2を区画線部9から押込み部7の中央側の端部までの距離D1より長くする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料容器の開口部を覆う覆板部と、当該覆板部の外周縁に設けられ、上記飲料容器の上記開口部を上記覆板部が覆うようにした際に当該飲料容器の上記開口部の縁部に係合可能な側周部と、を備える飲料容器用蓋であって、
上記覆板部に形成され、当該覆板部の一般部より強度の低い低強度部又は切込線部からなる切断線部で囲まれ、指で下方に押し込まれる押込み部と、
上記押込み部に隣接する上記覆板部に形成され、上記低強度部又は上記切込線部からなる切断線部で囲まれ、上記押込み部が下方に押し込まれる反力で上方に持ち上がる飲み口部と、を備え、
上記飲み口部は、上記押込み部より上記側周部側にあり、
上記飲み口部と上記押込み部との境は、上記低強度部又は上記切込線部からなる区画線部で区画され、
上記押込み部の幅は、上記飲み口部の幅より広く、且つ、上記区画線部から上記飲み口部の上記側周部側の端部までの距離は、上記区画線部から上記押込み部の中央側の端部までの距離より長いこと
を特徴とする飲料容器用蓋。
【請求項2】
上記覆板部には、上記飲み口部を係止する係止部が形成され、
上記押込み部を下方に押し込むことで開封された飲み口部を上記係止部に係止した状態でも上記押込み部の一部が香り窓として開放されていること
を特徴とする請求項1記載の飲料容器用蓋。
【請求項3】
上記係止部は、上記押込み部を囲う切断線部の一辺が兼用していること
を特徴とする請求項2記載の飲料容器用蓋。
【請求項4】
上記飲み口部を囲う切断線部の端部である飲み口部端と、上記押込み部を囲う切断線部の端部である押込み部端とは、互いに離間しており、
上記飲み口部端は、上記押込み部を囲う上記切断線部の延長線上に無く、且つ、上記押込み部端は、上記飲み口部を囲う上記切断線部の延長線上に無いこと
を特徴とする請求項1記載の飲料容器用蓋。
【請求項5】
容器本体と、請求項1~4のうち何れか1項に記載の飲料容器用蓋を備えること
を特徴とする飲料容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料容器の開口部を覆う飲料容器用蓋及びこの飲料容器用蓋を備えた飲料容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ファーストフード店やコンビニエンスストアなどの多くの飲料の販売店では、プラスチック(合成樹脂)製や紙製のコップ等の飲料容器の開口部を、飲料容器用蓋で覆い、持ち運びの際に、その内部に収容されたジュースやコーヒーなどの飲料が開口部からこぼれ難いようにして販売している。
【0003】
飲料容器の内部に収容された飲料を飲むには、単純に飲料容器用蓋を外して開口部から飲んでもよいが、飲料容器用蓋を外した際に、その内側に付着した飲料が飛び散り、飲む人の衣服等を汚してしまうおそれがある。
【0004】
そのため、例えば、特許文献1には、飲料容器用蓋に、ストローの差込部を設け、付属のストローを差し込むことにより、飲料容器内部の飲料を飲み易くした飲料容器用蓋が開示されている(特許文献1の特許請求の範囲の請求項1、明細書の段落[0036]~[0058]、図面の
図1~
図7等参照)。
【0005】
しかしながら、昨今、プラスチックゴミによる海洋汚染問題等を発端に、脱プラスチックの世界的な流れが大きくなり、その一環として、プラスチックからなるストローを無くそうという流れも大きくなっている。
【0006】
このような状況の下、市場では、ストローを無くし、飲料容器用蓋を外さなくても、飲料が飲み易い飲口を形成することができる飲料容器用蓋が求められている。このため、特許文献1の開示技術以外に、飲料容器用蓋に設けられた飲口を形成する部位を谷折りにすることで飲口を形成するプッシュダウンタイプも提案されている。
【0007】
しかしながら、このプッシュダウンタイプは、飲口を形成するために消費者に対して2ステップの開封動作を強いるものであることから、消費者が直感的に飲口を形成する方法を理解することが難しいという問題点があった。このため、開封動作自体を簡略化して1ステップで実現できるようにすることで、消費者が直感的に飲口を形成する方法を理解できる飲料容器用蓋が望まれていた。
【0008】
そこで、特許文献2には、直線状のミシン目(折畳用低強度部14)を境に押込み部である飲口開封用部位12Aと飲口形成用部位11Aとからなる飲み口(飲口110)を形成し、飲口開封用部位12Aを指で押し下げ、その反動で飲口形成用部位11Aを持ち上げることで飲み口を開封するシーソータイプ(プッシュアップタイプ)の飲み口が形成された飲料容器用蓋1が開発されるに至った(特許文献2の特許請求の範囲の請求項1、明細書の段落[0024]~[0036]、図面の
図2~
図4等参照)。
【0009】
特許文献2に記載の飲料容器用蓋のようなシーソータイプの飲み口は、押込み部を指で押し下げるだけの1ステップで開封が可能であるため、消費者が直感的に飲口を形成する方法を理解し易く、使用書がなくても誰でもすぐに飲み口を開封することができるというメリットがある。
【0010】
また、特許文献2に記載の飲料容器用蓋には、係合部13の切れ目が形成され、飲口形
成用部位11A周縁の係止部11aを係合部13に差し込み係合させることにより、飲口110を開放した状態で保持することができる。しかしながら、特許文献2に記載の飲料容器用蓋は、飲口110を開放した状態で保持することができるものの、飲み口から飲料を飲んでいる最中の鼻付近は、密閉された状態で飲料の香りを楽しむことができないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2021-14286号公報
【特許文献2】特開2023-6268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで本発明は、上述した背景を鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、1ステップで飲み口を開封できるとともに、飲料の香りを楽しむことができる飲料容器用蓋及びそれを備えた飲料容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1発明に係る飲料容器用蓋は、飲料容器の開口部を覆う覆板部と、当該覆板部の外周縁に設けられ、上記飲料容器の上記開口部を上記覆板部が覆うようにした際に当該飲料容器の上記開口部の縁部に係合可能な側周部と、を備える飲料容器用蓋であって、上記覆板部に形成され、当該覆板部の一般部より強度の低い低強度部又は切込線部からなる切断線部で囲まれ、指で下方に押し込まれる押込み部と、上記押込み部に隣接する上記覆板部に形成され、上記低強度部又は上記切込線部からなる切断線部で囲まれ、上記押込み部が下方に押し込まれる反力で上方に持ち上がる飲み口部と、を備え、上記飲み口部は、上記押込み部より上記側周部側にあり、上記飲み口部と上記押込み部との境は、上記低強度部又は上記切込線部からなる区画線部で区画され、上記押込み部の幅は、上記飲み口部の幅より広く、且つ、上記区画線部から上記飲み口部の上記側周部側の端部までの距離は、上記区画線部から上記押込み部の中央側の端部までの距離より長いことを特徴とする。
【0014】
第2発明に係る飲料容器用蓋は、第1発明において、上記覆板部には、上記飲み口部を係止する係止部が形成され、上記押込み部を下方に押し込むことで開封された飲み口部を上記係止部に係止した状態でも上記押込み部の一部が香り窓として開放されていることを特徴とする。
【0015】
第3発明に係る飲料容器用蓋は、第2発明において、上記係止部は、上記押込み部を囲う切断線部の一辺が兼用していることを特徴とする。
【0016】
第4発明に係る飲料容器用蓋は、第1発明において、上記飲み口部を囲う切断線部の端部である飲み口部端と、上記押込み部を囲う切断線部の端部である押込み部端とは、互いに離間しており、上記飲み口部端は、上記押込み部を囲う上記切断線部の延長線上に無く、且つ、上記押込み部端は、上記飲み口部を囲う上記切断線部の延長線上に無いことを特徴とする。
【0017】
第5発明に係る飲料容器は、容器本体と、第1発明~第4発明の何れかの飲料容器用蓋を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
第1発明~第5発明によれば、シーソータイプの飲み口となっているので、押込み部を指で押し下げるだけの1ステップで開封が可能であるため、消費者が直感的に飲口を形成する方法を理解し易く、使用書がなくても誰でもすぐに飲み口を開封することができる。
【0019】
また、第1発明~第5発明によれば、押込み部の幅は、飲み口部の幅より広く、且つ、区画線部から飲み口部の側周部側の端部までの距離は、上画線部から押込み部の中央側の端部までの距離より長いので、飲み口部の幅と押込み部の幅との差の隙間から飲料の香りを楽しむことができる。
【0020】
特に、第2発明によれば、飲み口部を上記係止部に係止した状態でも上記押込み部の一部が香り窓として開放されているので、飲み口部を全開状態で飲料を飲むことができるとともに、飲料の香りを楽しむことができる。
【0021】
特に、第3発明によれば、押込み部を囲う切断線部の一辺が係止部を兼用しているので、覆板部に押込み部とは別に係止部を設ける必要がなく、製造コストを低減しつつ上記作用効果を達成することができる。
【0022】
第4発明によれば、飲み口部端と押込み部端とが互いに離間しており、飲み口部端は、押込み部の切断線部の延長線上に無く、且つ、押込み部端は、飲み口部の切断線部の延長線上に無いので、飲み口部を開封する際に押込み部を強く押し込んでもヒンジ部を破れ難いものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る飲料容器を示す分解斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1実施形態に係る飲料容器用蓋を示す平面図である。
【
図3】
図3は、同上の飲料容器用蓋の飲み口を拡大して示す部分拡大平面図である。
【
図4】
図4は、同上の飲み口を飲み口部の全開状態で示す平面図である。
【
図5】
図5(a)は、
図3の飲料容器用蓋のヒンジ部を示すA部拡大図であり、
図5(b)は、同飲料容器用蓋のヒンジ部を示す模式断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の第2実施形態に係る飲料容器用蓋を示す平面図である。
【
図7】
図7は、同上の飲料容器用蓋の飲み口を拡大して示す部分拡大平面図である。
【
図8】
図8は、同上の飲み口を飲み口部の全開状態で示す平面図である。
【
図9】
図9は、同上の飲み口の押込み部が左右対称でない例を飲み口部の全開状態で示す平面図である。
【
図10】
図10は、同上の飲み口の香り窓が中央にある例を飲み口部の全開状態で示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を適用して例示した実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0025】
<飲料容器>
先ず、
図1を用いて、本発明の実施形態に係る飲料容器2について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る飲料容器2の分解斜視図である。
【0026】
本発明の実施形態に係る飲料容器2は、
図1に示すように、紙製の容器本体3と、この容器本体3に嵌着された本発明の実施形態に係る飲料容器用蓋1を備える。
【0027】
容器本体3は、その上部に縁部3bを有する開口部3aを備え、上方に行くに従って逆円錐台状に拡径する有底の紙製の紙コップであり、その内部にコーヒー、紅茶、緑茶などの飲料bを収容して販売するのに多く用いられる。
【0028】
なお、容器本体3は、紙製に限定されず、プラスチック製などの他の材料で製造されていてもよい。但し、容器本体3は、紙製とすることでプラスチック使用量を削減できるだけでなく、パルプ状に溶かしてリサイクルし易い上、焼却処分できるためマイクロプラスチックの問題が解消されるため好ましい。また、容器本体3をプラスチック製とする場合は、環境にやさしい生分解性プラスチックなどとすることが好ましい。
【0029】
そして、この飲料容器2は、容器本体3の開口部3aの縁部3bに後述の飲料容器用蓋1が嵌着されることで塞がれて、容器内に飲料bが入れられた状態での運搬が容易となり、包装容器として種々の店舗等に陳列・販売される。
【0030】
<飲料容器用蓋>
[第1実施形態]
次に、
図2~
図5を用いて、本発明の第1実施形態に係る飲料容器用蓋1について説明する。
図2は、第1実施形態に係る飲料容器用蓋1を示す平面図であり、
図3は、飲料容器用蓋1の飲み口6を拡大して示す部分拡大平面図である。また、
図4は、飲料容器用蓋1の飲み口6を飲み口部8の全開状態で示す平面図である。
【0031】
飲料容器用蓋1は、
図2に示すように、一枚絞りの紙製絞り蓋であり、飲料容器2の開口部3aを覆う円盤状の覆板部4と、覆板部4の外周縁に設けられ、飲料容器2の開口部3aを覆板部4が覆うようにした際に飲料容器2の開口部3aの縁部3bに係合可能な側周部5と、を備えている。
【0032】
なお、飲料容器用蓋1も、紙製に限定されず、プラスチック製などの他の材料で製造されていてもよい。但し、飲料容器用蓋1は、紙製とすることでパルプ状に溶かしてリサイクルし易い上、焼却処分できるためマイクロプラスチックの問題が解消されるため好ましい。また、飲料容器用蓋1をプラスチック製とする場合は、環境にやさしい生分解性プラスチックなどを用いてもよい。
【0033】
(飲み口)
また、覆板部4には、シーソータイプ(プッシュアップタイプ)の飲み口6が形成されている。この飲み口6は、指で下方に押し込まれる押込み部7と、この押込み部7が下方に押し込まれる反力で上方に持ち上がる飲み口部8から構成されており、飲み口部8が押込み部7より側周部5側(周縁側)に位置している。
【0034】
押込み部7は、覆板部4を貫通して切り込まれた切込線部からなる切断線部70で四方のうち飲み口部8と隣接する側の一方を除く三方を囲まれることで構成されている。但し、切断線部70は、覆板部4を全部貫通して切り込まれた切込線部ではなく、覆板部4の紙板素材の断面を部分的に切断したミシン目、ハーフカット、折り目などの覆板部4の一般部より強度の低い低強度部としても構わない。
【0035】
この切断線部70は、
図3に示すように、覆板部4の半径方向と直交方向に延びる、後述の係止部を兼用する飲み口部8を掛け止める直線状の掛止め辺71と、この掛止め辺71の両端から周縁側に折り返される左右一対の円弧状の側辺72など、から構成されている。
【0036】
飲み口部8は、覆板部4を貫通して切り込まれた切込線部からなる切断線部80で四方のうち押込み部7と隣接する側の一方を除く三方を囲まれることで構成されている。但し、切断線部80も、前述の切断線部70と同様に、覆板部4を全部貫通して切り込まれた切込線部ではなく、覆板部4の紙板素材の断面を部分的に切断したミシン目、ハーフカット、折り目などの覆板部4の一般部より強度の低い低強度部としても構わない。
【0037】
この切断線部80は、
図3に示すように、周縁側に側周部5に沿って設けられ、飲料bを飲む際に飲料bが実際に通過する辺となる円弧状の周縁辺81と、この周縁辺81の両端から中央側に覆板部4の半径方向に沿って折り返された左右一対の直線状の側辺82と、から構成され、全体としてU字状となっている。
【0038】
また、
図2,
図3に示すように、押込み部7と飲み口部8との境は、区画線部9で区画されている。この区画線部9は、覆板部4を貫通して切り込まれた切込線部からなるが、切断線部80の端部同士を結ぶ、前述のハーフカットや折り目などの覆板部4の一般部より強度の低い直線状の低強度部としても構わない。但し、押込み部7と飲み口部8とは、シーソー式に連動して動く必要があることから、図示形態のように、押込み部7と飲み口部8との境の覆板部4の紙板素材の全断面が連続して接続される部分が残存する方が好ましい。
【0039】
また、
図3に示すように、押込み部7の幅W1は、飲み口部8の幅W2より広く、且つ、区画線部9から飲み口部8の側周部側の端部までの距離D2は、区画線部9から押込み部7の中央側の端部までの距離D1より長い。このため、
図4に示すように、飲み口部8を区画線部9に沿って谷折りにして折り曲げ、押込み部7の中央側(側周部反対側)の掛止め辺71(覆板部4の縁)の下に、飲み口部8の周縁辺81を差し込んで係止する係止部として兼用することができ、指で押さえたりすることなく、飲み口部8から飲料bを飲み口部8の全開状態で飲むことができる。
【0040】
なお、押込み部7の側辺72を円弧状のものを例示して説明したが、側辺72も直線状のものであっても構わない。但し、押込み部7の側辺72は、押込み部7の幅W1が、側辺82の間隔である飲み口部8の幅W2より広くする必要がある。押込み部7の幅W1と飲み口部8の幅W2との差の隙間から飲み口部8からコーヒー、紅茶、緑茶などの香りの高い飲料bを飲む際の香り窓とするためである。
【0041】
(ヒンジ部)
また、
図3に示すように、押込み部7の切断線部70の側辺72の端部である押込み部端73と、飲み口部8の切断線部80の側辺82の端部である飲み口部端83とは、所定距離(実施形態では、3mm)離間している。これは、押込み部端73と飲み口部端83との間が、押込み部7を指で押し込んで飲み口部8を開封するとき、即ち、シーソー式に押込み部7及び飲み口部8を回転させるときのヒンジ部となるため、一定距離、覆板部4の紙板素材を残して置かないとこのヒンジ部が回転時に捩じれ切れて破断してしまうからである。
【0042】
次に、
図5を用いて、このヒンジ部についてさらに詳細に説明する。
図5(a)は、
図3の飲料容器用蓋1のヒンジ部を示すA部拡大図であり、
図5(b)は、飲料容器用蓋1のヒンジ部を示す模式断面図である。シーソータイプの飲み口6のヒンジ部が破断する原因は、
図5(b)に示すように、覆板部4の鉛直断面においてシーソー(梃子)の支点部分にあたる飲み口部端83と押込み部端73との位置が離れていると、押込みの起点である押込み部端73が起き上がる起点である飲み口部端83へと近づこうとするためその繋ぎのヒンジ部が破れていくからである。即ち、飲み口部端83から切断線部80(切断線部70)の紙板素材の切断された部分が点線Xに沿って伸展して行き、押込み部端73にまで到達した場合にヒンジ部が破断する。また、同様に、押込み部端73から切断線部70の紙板素材の切断された部分が点線Yに沿って伸展して行き、飲み口部端83にまで到達した場合にヒンジ部が破断する。
【0043】
しかし、
図5(a)に示すように、本実施形態に係る飲料容器用蓋1では、押込み部端73は、飲み口部8を囲う切断線部80の延長線上、即ち、直線状の側辺82の延長線上に無い(延長線上を除く部分にある。以下同じ)。このため、切断線部80の紙板素材の切断された部分が点線Xに沿って伸展しても押込み部端73に到達せず、覆板部4の紙板素材が残り、ヒンジ部が完全には破断しない。同様に、飲み口部端83は、押込み部7の切断線部70の延長線上、即ち、円弧状の側辺72の延長線(接線)上に無い。このため、切断線部70の紙板素材の切断された部分が点線Yに沿って伸展しても飲み口部端83に到達せず、覆板部4の紙板素材が残り、ヒンジ部が完全には破断しない。
【0044】
[第2実施形態]
次に、
図6~
図8を用いて、本発明の第2実施形態に係る飲料容器用蓋1’について説明する。
図6は、第2実施形態に係る飲料容器用蓋1’を示す平面図であり、
図7は、飲料容器用蓋1’の飲み口6’を拡大して示す部分拡大平面図である。また、
図8は、飲料容器用蓋1の飲み口6’を飲み口部8の全開状態で示す平面図である。
【0045】
第2実施形態に係る飲料容器用蓋1’が、前述の第1実施形態に係る飲料容器用蓋1と相違する点は、押込み部7’の形状と、新たに係止部10が設けられている点であるので、その点を主に説明し、同一構成は同一符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0046】
(飲み口)
飲料容器用蓋1’の覆板部4には、
図6~
図8に示すように、飲料容器用蓋1と同様に、シーソータイプ(プッシュアップタイプ)の飲み口6’が形成されている。この飲み口6’は、指で下方に押し込まれる押込み部7’と、この押込み部7’が下方に押し込まれる反力で上方に持ち上がる飲み口部8から構成されており、飲み口部8が押込み部7より側周部5側に位置している。
【0047】
(押込み部)
押込み部7’は、押込み部7と同様に、覆板部4を貫通して切り込まれた切込線部からなる切断線部70’で四方のうち飲み口部8と隣接する側の一方を除く三方を囲まれることで構成されている。但し、切断線部70’は、覆板部4を全部貫通して切り込まれた切込線部ではなく、覆板部4の紙板素材の断面を部分的に切断したミシン目、ハーフカット、折り目などの覆板部4の一般部より強度の低い低強度部としても構わない。
【0048】
この切断線部70’は、
図6,
図7に示すように、覆板部4の半径方向と直交方向に延びる直線状の直線部71’と、この直線部71’の両端から周縁側に折り返される左右一対の半円状の側辺72’と、から構成されている。
【0049】
また、
図7に示すように、飲料容器用蓋1’では、押込み部端73’は、飲み口部8を囲う切断線部80の延長線上、即ち、直線状の側辺82の延長線上に無い。このため、切断線部80の紙板素材の切断された部分が側辺82に沿って伸展しても押込み部端73’に到達せず、覆板部4の紙板素材が残り、ヒンジ部が完全には破断しない。同様に、飲み口部端83は、押込み部7’の切断線部70’の延長線上、即ち、円弧状の側辺72’の延長線(接線)上に無い。このため、切断線部70‘の紙板素材の切断された部分が半円状の側辺72’の接線に沿って伸展しても飲み口部端83に到達せず、覆板部4の紙板素材が残り、ヒンジ部が完全には破断しない。
【0050】
(係止部)
また、
図6,
図7に示すように、飲料容器用蓋1’の覆板部4には、飲み口部8の周縁辺81を係止する係止部10が形成されている。この係止部10は、覆板部4を貫通して切り込まれたコの字状の切込線部からなる切断線からなり、飲み口部8を挿通可能な幅W2程度の長さに設定されている。
【0051】
また、飲料容器用蓋1’は、
図8に示すように、飲み口部8を係止部10に係止した状態でも半円状となった側辺72’が飲み口部8の側辺82から左右に張り出しているので、押し込んで開封された押込み部7’の一部が香り窓として開放されていることとなり、飲み口部8を全開状態で飲料bを飲むことができるとともに、飲料bの香りを楽しむことができる。
【0052】
以上説明した本発明の実施形態に係る飲料容器用蓋1,1’によれば、シーソータイプの飲み口6,6’となっているので、押込み部7,7’を指で押し下げるだけの1ステップで開封が可能であるため、消費者が直感的に飲口を形成する方法を理解し易く、使用書がなくても誰でもすぐに飲み口を開封することができる。
【0053】
また、飲料容器用蓋1,1’によれば、押込み部7,7’の幅W1,W1’は、飲み口部8の幅W2より広く、且つ、区画線部9から飲み口部8の側周部5側(周縁側)の端部までの距離D2は、区画線部9から押込み部7,7’の中央側の端部までの距離D1,D1’より長いので、飲料bがコーヒー、紅茶、緑茶などの香りの高い飲料である場合、飲み口部8の幅W2と押込み部7,7’の幅W1,W1’との差の隙間から飲料bの香りを楽しむことができる(
図3,
図4,
図7,
図8参照)。
【0054】
その上、飲料容器用蓋1,1’によれば、飲み口部8を係止部10,掛止め辺71に係止した状態でも押込み部7,7’の一部が香り窓として開放されているので、飲み口部8を全開状態で飲料bを飲むことができるとともに、飲料bの香りを楽しむことができる。
【0055】
以上、本発明の実施形態に係る飲料容器用蓋1,1’及び飲料容器2について詳細に説明したが、前述した又は図示した実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたって具体化した一実施形態を示したものに過ぎない。よって、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。
【0056】
特に、飲料容器用蓋1,1’及び飲料容器2として、紙を主原料とする紙製のものを例示して説明したが、樹脂キャップなど、形態が同じでシートの素材が相違するものにも本発明を適用することができる。
【0057】
また、押込み部7,7’が左右対称のものを例示して説明したが、
図9に示すように、押込み部7’の一方の側辺72’が半円状で他方の側辺が直線状となっていても構わない。1つの香り窓でも飲料bの香りを楽しむことはできるからである。
【0058】
さらに、
図10に示すように、押込み部7が左右に膨出しているものではなく、中央側に膨出した形状であっても構わない。押込み部7と飲み口部8との形状の違いにより、香り窓を左右ではなく中央に設けても飲料bの香りを楽しむことはできるからである。
【符号の説明】
【0059】
1,1’:飲料容器用蓋
2:飲料容器
3:容器本体
3a:開口部
3b:縁部
4:覆板部
5:側周部
6,6’:飲み口
7,7’:押込み部
70,70’:切断線部
71:掛止め辺
71’:直線部
72,72’:側辺
73,73’:押込み部端
8:飲み口部
80:切断線部
81:周縁辺
82:側辺
83:飲み口部端
9:区画線部
10:係止部
b:飲料