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特開2025-3892プラスチック含有材料の処理方法、プラスチック含有材料の処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025003892
(43)【公開日】2025-01-10
(54)【発明の名称】プラスチック含有材料の処理方法、プラスチック含有材料の処理装置
(51)【国際特許分類】
   C08J 11/00 20060101AFI20241227BHJP
   A23K 50/90 20160101ALI20241227BHJP
   A01K 67/00 20060101ALI20241227BHJP
   A23K 20/20 20160101ALI20241227BHJP
【FI】
C08J11/00 ZAB
A23K50/90
A01K67/00 Z
A23K20/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023103803
(22)【出願日】2023-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003768
【氏名又は名称】東洋製罐グループホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000419
【氏名又は名称】弁理士法人太田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】道志 弘輝
(72)【発明者】
【氏名】片山 傳喜
(72)【発明者】
【氏名】寿命 伸哉
【テーマコード(参考)】
2B005
2B150
4F401
【Fターム(参考)】
2B005EA03
2B005KA02
2B005MC05
2B150AA20
2B150BC01
2B150DH36
4F401AA08
4F401AA11
4F401AA22
4F401AA24
4F401AC11
4F401AD07
4F401CA91
4F401FA07Y
(57)【要約】
【課題】鱗翅目昆虫によるプラスチック含有材料の処理方法を提供する。
【解決手段】鱗翅目昆虫の幼虫、及び、プラスチック含有材料を、飼育空間に投入する投入工程と、前記飼育空間における、少なくとも前記プラスチック含有材料の占有率を調整する調整工程と、前記飼育空間内で、前記プラスチック含有材料を前記鱗翅目昆虫の幼虫に摂食させる摂食工程と、を有することを特徴とする、プラスチック含有材料の処理方法。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鱗翅目昆虫の幼虫、及び、プラスチック含有材料を、飼育空間に投入する投入工程と、
前記飼育空間における、少なくとも前記プラスチック含有材料の占有率を調整する調整工程と、
前記飼育空間内で、前記プラスチック含有材料を前記幼虫に摂食させる摂食工程と、
を有することを特徴とする、プラスチック含有材料の処理方法。
【請求項2】
前記調整工程において、前記占有率が1.09%超となるように調整される、請求項1に記載のプラスチック含有材料の処理方法。
【請求項3】
前記プラスチック含有材料に含まれるプラスチックが、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリアミド、パラフィン、からなる群より選ばれる、請求項1又は請求項2に記載のプラスチック含有材料の処理方法。
【請求項4】
前記プラスチック含有材料に含まれるプラスチックがポリオレフィンであり、
前記調整工程において、前記占有率が2.0~8.0%となるように調整される、請求項1又は請求項2に記載のプラスチック含有材料の処理方法。
【請求項5】
前記プラスチック含有材料に含まれるプラスチックがポリエステルであり、
前記調整工程において、前記占有率が1.2~4.0%となるように調整される、請求項1又は請求項2に記載のプラスチック含有材料の処理方法。
【請求項6】
前記プラスチック含有材料が2以上の種類のプラスチックを含む、請求項1又は請求項2に記載のプラスチック含有材料の処理方法。
【請求項7】
前記プラスチック含有材料が積層体である、請求項1又は請求項2に記載のプラスチック含有材料の処理方法。
【請求項8】
前記プラスチック含有材料の形態が、フィルム、カップ、パウチ、ペレット、ボトル、粉末、繊維、又はカプセルのうちの少なくとも一つである、請求項1又は請求項2に記載のプラスチック含有材料の処理方法。
【請求項9】
前記幼虫がハチノスツヅリガの幼虫である、請求項1又は請求項2に記載のプラスチック含有材料の処理方法。
【請求項10】
鱗翅目昆虫の幼虫を収容して飼育可能な飼育槽と、
前記飼育槽に収容され前記幼虫が摂食するプラスチック含有材料の占有率を、少なくとも調整可能な調整装置と、を備えることを特徴とする、
プラスチック含有材料の処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プラスチック含有材料の処理方法、及び、プラスチック含有材料の処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ある種の昆虫の幼虫は、魚釣り用の餌として飼育されることが知られていた。魚釣り用の餌は生き餌であることが必要なため、特許文献1~4のように、蛹化を遅らせるための方法が種々提案されていた。
【0003】
一方で、特定の鱗翅目昆虫の幼虫によって、ある種のプラスチックが生分解される旨の指摘がなされていた。例えば非特許文献1は、PEフィルムをハチノスツヅリガの幼虫と直接接触させたままにした場合、所定時間経過後にはPEフィルムに穴が現れ始めると共に、PEフィルムに質量損失が生じた結果を示している。また非特許文献2は、ハチノスツヅリガの幼虫がポリエチレン(PE)やポリスチレン(PS)を摂食することを明らかにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-165065号公報
【特許文献2】特開平5-41936号公報
【特許文献3】特開平3-285630号公報
【特許文献4】特開平1-132324号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Bombeli et al.(2017) Current Biology 27, P283-293
【非特許文献2】Lou et al.(2020) Environ. Sci. Technol. 2020, 54, 5, 2821-2831
【非特許文献3】森本(1960) 日本応用動物昆虫学会誌 4, 4,197-202
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来行われているプラスチックのリサイクル方法としては、既使用プラスチックをプラスチック原料まで分解・精製したものを再重合するケミカルリサイクルや、既使用プラスチックをフレーク・ペレット化した後に繊維やシート等の成形品に加工するマテリアルリサイクル等の方法が知られている。しかしながらいずれも、製造コスト、環境負荷、必要設備、等の面で改善が望まれている。
【0007】
また、従来の上記手法によれば、被処理プラスチックが単一種の場合には効率的に分解やリサイクルが可能であるが、複数種類のプラスチックが混在する場合には、処理効率が低下するという問題がある。また、被処理プラスチックにプラスチック以外の材料が含まれる場合、例えば金属材との積層体である場合や、食品の汚れなどが付着している場合にも、処理の効率が低下するという問題がある。
【0008】
上述の非特許文献に示されるように、生物を利用したプラスチック含有材料の分解が可能となれば、エネルギー消費が小さいというメリットや、必要設備などのコストが小さいというメリットがある。また、生物を利用したプラスチック含有材料の分解の結果として有用物質を得ることができれば、将来的な循環型経済への移行に貢献し得る。しかし、上記の生物を用いたプラスチック含有材料の処理は、未だ実用化の域に至っていない。
【0009】
上記のような理由から、本発明者らは、ある種の幼虫によるプラスチック含有材料の分解機構について研究を重ねた。また、幼虫の生育からプラスチック含有材料の分解まで全過程において、効率的にプラスチック含有材料を処理可能かどうか等の検討を行い、本開示に至った。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本実施形態のプラスチック含有材料の処理方法は、(1)鱗翅目昆虫の幼虫、及び、プラスチック含有材料を、飼育空間に投入する投入工程と、前記飼育空間における、少なくとも前記プラスチック含有材料の占有率を調整する調整工程と、前記飼育空間内で、前記プラスチック含有材料を前記鱗翅目昆虫の幼虫に摂食させる摂食工程と、を有することを特徴とする。
【0011】
上記(1)のプラスチック含有材料の処理方法において、(2)前記調整工程において、前記占有率が1.09%超となるように調整されることが好ましい。
【0012】
上記(1)又は(2)のプラスチック含有材料の処理方法において、(3)前記プラスチック含有材料に含まれるプラスチックが、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリアミド、パラフィン、からなる群より選ばれることが好ましい。
【0013】
上記(1)又は(2)のプラスチック含有材料の処理方法において、(4)前記プラスチック含有材料に含まれるプラスチックがポリオレフィンであり、前記調整工程において、前記占有率が2.0~8.0%となるように調整されることが好ましい。
【0014】
上記(1)又は(2)のプラスチック含有材料の処理方法において、(5)前記プラスチック含有材料に含まれるプラスチックがポリエステルであり、前記調整工程において、前記占有率が1.2~4.0%となるように調整されることが好ましい。
【0015】
上記(1)又は(2)のプラスチック含有材料の処理方法において、(6)前記プラスチック含有材料が2以上の種類のプラスチックを含むことが好ましい。
【0016】
上記(1)又は(2)のプラスチック含有材料の処理方法において、(7)前記プラスチック含有材料が積層体であることが好ましい。
【0017】
上記(1)又は(2)のプラスチック含有材料の処理方法において、(8)前記プラスチック含有材料の形態が、フィルム、カップ、パウチ、ペレット、ボトル、粉末、繊維、又はカプセルのうちの少なくとも一つであることが好ましい。
【0018】
上記(1)又は(2)のプラスチック含有材料の処理方法において、(9)前記鱗翅目昆虫の幼虫がハチノスツヅリガの幼虫であることが好ましい。
【0019】
本実施形態のプラスチック含有材料の処理装置は、(10)鱗翅目昆虫の幼虫を収容して飼育可能な飼育槽と、前記飼育槽に収容され前記幼虫が摂食するプラスチック含有材料の占有率を、少なくとも調整可能な調整装置と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本開示によれば、鱗翅目昆虫の幼虫を用いた効率的なプラスチック含有材料の処理方法、及びプラスチック含有材料の処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施例における幼虫形態の割合の経時変化を示す図である。
図2】実施例及び参考例における摂食量の経時変化及び合計量を示す図である。
図3】他の実施例における幼虫形態の割合の経時変化を示す図である。
図4】他の実施例及び参考例における摂食量の経時変化及び合計量を示す図である。
図5】他の実施例における幼虫形態の割合の経時変化を示す図である。
図6】他の実施例及び参考例における摂食量の経時変化及び合計量を示す図である。
図7】他の実施例における幼虫形態の割合の経時変化を示す図である。
図8】他の実施例及び参考例における摂食量の経時変化及び合計量を示す図である。
図9】本実施形態におけるプラスチック含有材料の処理装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、実施形態により本開示を詳細に説明する。なお、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0023】
鱗翅目昆虫の幼虫の摂食によるプラスチック含有材料の処理を行うに際して、幼虫が蛹化した場合にはプラスチック含有材料の摂食を行わなくなる。そのため、少なくとも幼虫形態が維持される期間を長くすることができれば、幼虫によるプラスチックの摂食量をより増加させることができると見込まれる。本開示は、幼虫によるプラスチック摂食量を向上させるための方法を含む。
【0024】
なお、本実施形態において「プラスチック含有材料」とはプラスチックからなる材料でもよいし、プラスチック材料及びプラスチック以外の材料の両方を含んでいてもよい。本実施形態において幼虫とは、特定がない限りにおいて、その令数に関わらず孵化直後から終令幼虫までを含む。本実施形態において「飼育」とは、幼虫にプラスチック含有材料を摂食させ育てることを含む。本実施形態において「プラスチック含有材料の処理」とは、幼虫等の生物を利用したプラスチック含有材料(以下、被処理物、被処理プラスチック、とも称する)の分解を含む。またプラスチック含有材料の処理としては、プラスチックにおける少なくとも一つの結合を切断することを含む。結合の切断の方法としては、加水分解や酸化還元であってもよいし、それ以外の方法であってもよい。
【0025】
<プラスチック含有材料の処理方法>
以下、本実施形態におけるプラスチック含有材料の処理方法について説明する。本実施形態のプラスチック含有材料の処理方法は、鱗翅目昆虫の幼虫、及び、プラスチック含有材料を、飼育空間に投入する投入工程と、前記飼育空間における、少なくとも前記プラスチック含有材料の占有率を調整する調整工程と、前記飼育空間内で、前記プラスチック含有材料を前記鱗翅目昆虫の幼虫に摂食させる摂食工程と、を有することを特徴とする。
【0026】
本実施形態のプラスチック含有材料の処理方法において、対象とされるプラスチック含有材料に含まれるプラスチックの種類としては、プラスチック構造の少なくとも一部に、C-C単結合、C=C二重結合、エステル結合、アミド結合のいずれかを含むものが挙げられる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリブチレンフタレート(PBT)、ポリ乳酸(PLA)等のポリエステル、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリスチレン、ポリアミド、パラフィン、等を挙げることができる。
【0027】
本実施形態のプラスチック含有材料の処理方法において、処理されるプラスチック含有材料に含まれるプラスチックは1種類であることに限られず、異なる種類の複数のプラスチックが含まれていてもよい。すなわち、上記に挙げられた中の少なくとも1種類のプラスチックが含まれている限りにおいて、異なるプラスチックとの複合材料となっていてもよい。
【0028】
また、処理されるプラスチック含有材料は、紙、布、金属等、プラスチック以外の材料を含む複合体であってもよい。例えば、紙製の包装容器本体にプラスチック製の注ぎ口が連結された包装容器等であってもよい。
【0029】
なお、本実施形態のプラスチック含有材料の処理方法により処理されるプラスチック含有材料は、積層体を構成していてもよい。具体的には、すなわち、プラスチックと紙のラミネート材料や、プラスチックと金属のラミネート材料等であってもよい。また、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アルミニウム箔及びポリプロピレンが積層された食品用のレトルトパウチ等であってもよい。
【0030】
本実施形態のプラスチック含有材料の処理方法において、処理されるプラスチック含有材料の形態は、様々な形態のものが適用可能である。例えば、カップ、パウチ、ボトル、キャップ、ペレット、フィルム、粉末、粒子、スラリー、繊維、又はカプセル、等の形態を挙げることができる。
【0031】
本実施形態におけるプラスチック含有材料は、植物性廃棄物、動物性廃棄物、食品残渣、野菜くず、加工された食品残渣、おから、むぎわら、木くず、籾殻等の有機廃棄物や土、汚泥、燃え殻、ばいじん、鉱滓、ガラスくず・陶磁器くず・コンクリートくず、がれき等の無機廃棄物が付着しているものであってもよい。例えば、洗い残した食品由来の汚れなどが付着していてもよい。
【0032】
本実施形態において、鱗翅目昆虫の幼虫(以下、単に「幼虫」とも称する。)としては、上記プラスチック含有材料を摂食可能な幼虫であれば特に制限されるものではない。具体的にはハチノスツヅリガの幼虫、ウスグロツヅリガの幼虫、コハチノスツヅリガの幼虫、ノシメマダラメイガの幼虫等が挙げられる。
【0033】
なお本実施形態でハチノスツヅリガとは鱗翅目メイガ科の生物であるGalleria mellonellaを意味する。ウスグロツヅリガとは鱗翅目メイガ科の生物であるAchroia innotataを意味する。コハチノスツヅリガとは鱗翅目メイガ科の生物であるAchroia grisellaを意味する。ノシメマダラメイガとは鱗翅目メイガ科の生物であるPlodia interpunctellaを意味する。
【0034】
(投入工程)
本実施形態のプラスチック含有材料の処理方法において、投入工程では、上述した鱗翅目昆虫の幼虫が飼育空間に投入される。飼育空間としては、幼虫を収容可能な空間であれば特に制限されない。飼育空間の具体例としては、例えば幼虫を収容して外部から観察可能な、透明なプラスチック製やガラス製の飼育槽や、金属メッシュ製収容槽などを挙げることができる。飼育空間は、例えば複数の幼虫を隔離して収容可能なように、仕切り板等を介して適宜区分されていてもよい。また、飼育空間に複数の幼虫を隔離せずに収容してもよい。
【0035】
飼育空間内に幼虫を投入する方法として、飼育空間の外部から内部に幼虫を収容できれば特に限定されない。具体的に、人為的な方法で幼虫を飼育空間内に収容してもよく、例えば幼虫をピンセットなどの道具を用いて飼育空間の外部から内部に移動させてもよい。また、ベルトコンベア等の機械的な方法で幼虫を飼育空間の中に移動させてもよい。幼虫の飼育空間内への投入タイミングとして、間欠的に、又は、自動的に、幼虫が供給されるものであってもよい。
【0036】
投入工程においては、プラスチック含有材料が飼育空間に投入される。その結果、飼育空間内の幼虫がプラスチック含有材料を摂食可能となる。なお、投入順としては特に制限はなく、幼虫とプラスチック含有材料とが同時に投入されてもよいし、飼育空間に両者を投入するタイミングを異ならせてもよい。また、上述のように飼育空間には板等を利用した仕切りがあっても良く、幼虫がプラスチック含有材料を摂食可能であればよい。
【0037】
なお本実施形態における投入工程では、プラスチックを含まない材料、例えば、プラスチックで表面処理加工されていない紙や金属(紙製の包装材料や金属製の包装材料など)が投入されてもよい。
【0038】
本実施形態において、プラスチック含有材料の処理の継続の観点から、飼育空間に投入された後の幼虫の環境が、生育に好適な環境に維持されることが好ましい。例えば、温度が極端に高いまたは低い場合には、幼虫によるプラスチック含有材料の速度、又は摂食速度が落ちてしまう。そのため、幼虫の飼育温度が15℃以上35℃以下に維持されることが好ましい。
【0039】
なお、湿度に関しては特に制限はないが、コスト等の観点に鑑みて、幼虫の環境が湿度20~80%の範囲内に維持されることが好ましい。
【0040】
(調整工程)
本実施形態における調整工程は、飼育空間におけるプラスチック含有材料の占有率を調整する工程である。すなわち、上述の投入工程を経た後で、飼育空間には少なくとも幼虫とプラスチック含有材料が収容され、幼虫がプラスチック含有材料を摂食可能となっている。ここで、飼育空間内の一定の割合が幼虫とプラスチック含有材料で占有されている。本実施形態においては、飼育空間における、少なくともプラスチック含有材料の占有率を調整することを特徴とする。
【0041】
ここで、上述した「占有率」は、プラスチック含有材料が飼育空間内のどれくらいを占めるかの度合いと定義される。具体的に、飼育空間の容積が1000cmであり、当該飼育空間内におけるプラスチック含有材料の体積が合計で100cmであった場合、プラスチック含有材料の占有率は10%であると言える。占有率の測定方法は特に限定されないが、例えば、プラスチック含有材料の体積を飼育空間の体積で除することによって得られる体積比を、上記占有率とすることができる。なお、プラスチック含有材料の体積は、例えばプラスチック含有材料の形状がフィルムである場合には、その縦横の長さ及び厚さからプラスチック含有材料の体積を計算することができる。また、満杯となるまで水を満たした飼育空間内にプラスチック含有材料を投入していき、飼育空間内から溢れ出た水の量を測定することによっても、占有率を得ることが可能である。
【0042】
また、「占有率を調整する」とは、占有率を決定することを含む。具体的には、幼虫にプラスチック含有材料を摂食させることを目的として、飼育空間内に投入するプラスチック含有材料の量を決定することを含む。より具体的には、幼虫の摂食量が増加するように、或いは幼虫が所定期間以上摂食を継続するように、飼育空間内に投入するプラスチック含有材料の量を決定することを含む。さらに本実施形態において「占有率を調整する」とは、占有率を変化させることを含む。すなわち本実施形態において「占有率を調整する」とは、占有率を上げる、又は、下げることを含む。例えば、飼育空間の容積が1000cmであり、飼育空間内におけるプラスチック含有材料の量を100cmから150cmと増加させた場合、占有率が10%から15%に調整されたと言うことができる。上記占有率を上げる方法としては、飼育空間内にプラスチック含有材料を投入又は補充する方法が挙げられる。また上記占有率を下げる方法としては、飼育空間内に存在するプラスチック含有材料を摘出する(取り出す)、又は幼虫に摂食させる、等の方法が挙げられる。
【0043】
本実施形態において、上述の占有率の調整は、投入工程と同時、または投入工程の後の任意のタイミングで、少なくとも一回行われるものであればよい。すなわち本実施形態では、幼虫を飼育空間に投入する段階で、飼育空間内におけるプラスチック含有材料の量を決定し投入し、その後は、飼育空間内にプラスチック含有材料を補充しないこととしてもよい。あるいは、投入工程時における占有率を維持又は変化させるために、飼育期間中に飼育空間内にプラスチック含有材料を補充又は摘出してもよい。
【0044】
なお、本実施形態における調整工程は、占有率を所定の数値範囲内とする工程であってもよい。より具体的に、飼育空間内におけるプラスチック含有材料の占有率は、幼虫の摂食量の観点からは、1.09%超となるように調整されることが好ましい。
【0045】
さらに本実施形態において、調整工程は、プラスチック含有材料の種類に応じて、所定の数値範囲内とする工程であってもよい。具体的に、予め得られたプラスチック含有材料の種類に応じた占有率と幼虫の摂食量とのデータに基づいて、幼虫の摂食量が所定量以上となるような占有率とする工程であってもよい。一例として、前記プラスチック含有材料に含まれるプラスチックがポリオレフィンの場合は、前記占有率を2.0~8.0%となるように調整してもよい。また、前記プラスチック含有材料に含まれるプラスチックがポリエステルの場合は、前記占有率を1.2~4.0%となるように調整してもよい。このように、プラスチックの種類に応じて占有率を調整することにより、幼虫によるプラスチック含有材料の摂食量を向上させることが可能となる。また、幼虫形態が維持される期間を長くすることができ、幼虫によるプラスチック含有材料の摂食期間を長くすることが可能となる。
【0046】
飼育空間に収容された幼虫とプラスチック含有材料のうち、本実施形態においては、少なくともプラスチック含有材料の占有率を調整すればよく、飼育空間内における幼虫の占有率を調整することは必須とはされない。すなわち、飼育空間に対して幼虫が充分に小さい場合には、幼虫の体積は誤差として無視する、あるいは幼虫の体積をゼロとすることができる。
【0047】
一方で、飼育空間における幼虫の占有率も考慮する場合、幼虫の占有率の取得方法としは特に制限はなく、公知の方法を適用することができる。例えば、カメラ等による三次元測定を利用して幼虫の体積を取得することにより占有率に反映させてもよい。あるいは、ふ化後以降の生育日数に応じた幼虫の体積をデータベース化しておき、それを幼虫の占有率に反映させてもよい。幼虫の占有率の取得時点は、ある任意のタイミングでもよいし、成長に応じて複数の時点で占有率を取得してもよい。例えば、飼育開始時の幼虫の当初の体積を計測して幼虫の占有率としてもよい。また、日々成長する幼虫の体積をリアルタイムに計測して、その変化を占有率に反映してもよい。
【0048】
なお本実施形態の調整工程では、飼育空間における非占有率を調整することにより、間接的にプラスチック含有材料の占有率を調整することもできる。具体的には、プラスチック含有材料と幼虫が占有していない領域(「非占有空間」とも称する)が、飼育空間内のどれくらいを占めるか(「非占有率」とも称する)を算出することにより、間接的に占有率を取得することもできる。非占有率の取得方法としても、特に制限はなく公知の方法を適用することができる。例えば、公知の三次元測定等により、プラスチック含有材料と幼虫が占有していない領域の体積を取得してもよい。
【0049】
(摂食工程)
本実施形態におけるプラスチック含有材料の処理方法は、飼育空間内で、プラスチック含有材料を幼虫に摂食させる工程(摂食工程)を含む。一般に、鱗翅目昆虫の幼虫のうち上述した種類のものは、所定の種類のプラスチックを摂食することが知られている。
【0050】
プラスチック含有材料を幼虫に摂食させる期間は特に制限はなく、孵化直後~終令幼虫のすべての期間においてプラスチック含有材料を摂食させてもよいし、特定の期間、例えば終令幼虫の期間に限ってプラスチック含有材料を摂食させてもよい。また、プラスチック含有材料を幼虫に摂食させる期間において、幼虫にはプラスチック含有材料だけを摂食させてもよいし、プラスチック含有材料に加えて他のもの(例えば蜜蝋、小麦ふすま、蜂蜜、野菜くずなど)を与えてもよい。
【0051】
なお、プラスチック含有材料を幼虫に摂食させる期間は、幼虫の飼育温度に応じて変化させてもよい。すなわち、幼虫が蛹になるまでの期間は、飼育温度等により異なることが知られている。例えば幼虫の飼育温度が約30℃の場合は、孵化直後~終令幼虫までの期間が4週間程度であるが、飼育温度が約15℃以下の場合には、孵化直後~終令幼虫までの期間が5か月程度となる場合もある。
【0052】
よって、例えば幼虫の飼育温度を25℃以上とすると共に、プラスチック含有材料を幼虫に摂食させる期間を1週間~4週間とする等、幼虫の飼育温度に応じてプラスチック含有材料を幼虫に摂食させる期間を異ならせてもよい。
【0053】
また、幼虫が孵化直後~終令まで飼育する段階毎に飼育温度を変更してもよい。このとき複数の幼虫がプラスチック処理装置内に存在する場合には、孵化直後~終令のうち最も割合の多い幼虫に対応する飼育温度に設定してもよい。
【0054】
上述のとおり、本実施形態のプラスチック含有材料の処理方法は、上述した投入工程、調整工程、及び、摂食工程を含むことにより、幼虫を用いたプラスチック含有材料の処理量を最適化することができる。
【0055】
<プラスチック含有材料の処理装置>
次に、本実施形態におけるプラスチック含有材料の処理装置100について説明する。本実施形態におけるプラスチック含有材料の処理装置100は、図9に示されるように、鱗翅目昆虫の幼虫を収容して飼育可能な飼育槽10と、前記飼育槽に収容されると共に、前記幼虫が摂食する、プラスチック含有材料の占有率を、少なくとも調整可能な調整装置20と、を備えることを特徴とする。なお、本実施形態の処理装置100は、上述したプラスチック含有材料の処理方法を実現可能な装置である。そのため、共通の用語についてはその詳細な説明を省略する。
【0056】
(飼育槽10)
飼育槽10は、鱗翅目昆虫の幼虫を収容して飼育可能なものであれば、特に制限されない。例えば、幼虫を収容して外部から観察可能な、透明なプラスチック製やガラス製の飼育槽や、金属メッシュ製収容槽などを挙げることができる。飼育槽は、例えば複数の幼虫を隔離して収容可能なように、仕切り板等を介して適宜区分されていてもよい。また、複数の幼虫を隔離せずに収容できるものであってもよい。
【0057】
(調整装置20)
本実施形態の調整装置20は、飼育槽10に収容されたプラスチック含有材料の、飼育槽10内における占有率を、少なくとも調整可能であることが必要である。例えば、飼育槽内には、鱗翅目昆虫の幼虫と、プラスチック含有材料が、共に収容される。そして、鱗翅目昆虫の幼虫は、プラスチック含有材料を摂食して成長し、最終的には蛹化して成虫となる。この過程において、上述のプラスチック含有材料の処理方法において開示したように、飼育槽内の占有率を調整することにより、幼虫の摂食量を向上させることが可能となる。
【0058】
本実施形態の調整装置20は、飼育槽内の占有率を制御可能なものであれば、特に制限はない。一例として、調整装置20は、例えば、飼育槽10内を撮像可能な公知のカメラ11、上記した幼虫を飼育槽10内に投入し又は飼育槽10内から抽出可能な第1コンベア12、プラスチック含有材料Pを飼育槽10内に搬入し又は飼育槽10内から搬出可能な第2コンベア13、及びそれらを制御可能な制御装置50を含んで構成されていてもよい。なお上記した第1コンベア12及び第2コンベア13の具体的な構成としては、特に制限されず、例えば公知のベルトコンベアや六軸制御可能なロボットアームなど公知の搬送手段が例示できる。
【0059】
この場合、調整装置20を使用した具体的な占有率の調整方法として、以下のように行うことができる。まず、カメラ11にて飼育槽10内の任意の時点の占有率(現在占有率)を取得する。取得した現在占有率に対して、目的とする摂食量が得られる理想占有率とを比較する。なお、この理想占有率は、図示しない記憶装置等に予め記憶しておくことができる。そして、理想占有率よりも現在占有率が低い場合には、制御装置50が第2コンベア13(プラスチック投入装置)を介して、飼育槽10内にプラスチック含有材料Pを補充する処理を行うことができる。
【0060】
あるいは、占有率の調整方法の他の例として、理想占有率よりも現在占有率が高い場合には、制御装置50が第1コンベア12(幼虫投入装置)を介して、飼育槽10内に幼虫Wを補充する処理を行うことができる。
【0061】
このような、占有率の調整は、飼育槽内の幼虫の成長度合いに応じて、任意のタイミングで行ってもよい。また、カメラ11で飼育槽10内を常時観察することにより、占有率を所定の範囲内を維持し、又は、幼虫の摂食量を所定の範囲内に維持するため、自動的にプラスチック含有材料Pや幼虫Wを補充することとしてもよい。
【0062】
さらに調整装置20は、飼育槽内に収容されたプラスチック含有材料Pや幼虫Wの位置を異ならせるための、図示しない攪拌装置や振動装置等を備えていてもよい。これらの装置により、飼育槽内の幼虫Wの位置を移動させて占有率を調整することもできる。
【実施例0063】
以下、実施例を用いて本開示をさらに詳細に説明する。なお本開示は以下の実施例に限定されるものではない。
【0064】
(占有率の算出方法)
飼育空間におけるプラスチック含有材料の占有率の算出方法は、以下のとおりに行った。各実施例で使用するフィルムのサイズと厚さからフィルムの体積を計算し、各実施例で使用する飼育瓶の飼育空間の体積で除することによって得られる体積比を用いることで、飼育空間内におけるプラスチック含有材料の占有率を算出した。
【0065】
占有率(%)=フィルムの体積(cm)/飼育空間の体積(cm)×100(%)
【0066】
(実施例1)
試料としてポリエチレン無延伸フィルム(厚さ40μm)を10枚と、飼育瓶(容積48cmのガラス製容器)を10個、それぞれ準備した。各々の飼育瓶に、ハチノスツヅリガ幼虫(幼虫重さ約200mg)を1匹と、上記試料1枚を投入した。投入する際は、幼虫の周囲を試料で覆うようにした。
【0067】
飼育瓶内における上記試料の占有率は、2.33%であった。なおこの占有率は、幼虫の体積を含まないものとした。幼虫と試料を収容した飼育瓶を、35℃の室内において11日間維持することにより飼育した。飼育中に一日一回、試料重量の測定(後述)を行うために試料の取り出しを行い、その際に試料に付着した繭を除去した。また、同タイミングで飼育瓶中の糞の除去を行い、測定後の試料は飼育瓶に戻した。また、飼育期間中の試料の補充は行わなかった。
【0068】
飼育期間開始後、4日経過後、7日経過後、11日経過後、の各時点において、幼虫形態を維持した状態で生存しているか否かを記録した。具体的に、蛹化、死亡、蛹化間近(見た目は幼虫形態だが殆ど動かず、蛹化への移行途中と思われる形態)は、「幼虫形態外」と判断した。その結果、4日経過後において、10個の飼育瓶のうち4個は幼虫形態を維持した状態で生存していた(幼虫形態の割合が40%)。また、7日経過後において、10個の飼育瓶のうち2個は幼虫形態を維持した状態で生存していた(幼虫形態の割合が20%)。さらに、11日経過後において、10個の飼育瓶のうち幼虫形態を維持した状態で生存していたのは0個だった(幼虫形態の割合が0%)。
【0069】
さらに、4日経過後、7日経過後、11日経過後、のそれぞれの時点で、幼虫の試料摂食量を求めた。摂食量の求め方としては、飼育瓶から試料のみを取り出して、重量を測定することにより行った。なお、試料に幼虫の排出した繭が付着している場合には繭をピンセットで取り除いた後に、試料の重量を計測した。飼育瓶10個それぞれにおける試料の重量の減少量を求め、最大値と最小値を除いた値の平均値を幼虫の摂食量とした。
【0070】
実施例1で得られた摂食量の経時変化の結果を表1に示した。また幼虫形態の割合の経時変化を図1、摂食量の合計量を図2に示した。
【0071】
(実施例2)
飼育瓶内における上記試料の占有率を3.30%とした以外は、実施例1と同様に行った。幼虫形態の割合の経時変化は記録せず、摂食量の測定を実施例1と同様に行った。実施例1で得られた摂食量の経時変化の結果を表1に示すとともに、摂食量の合計量を図2に示した。
【0072】
(実施例3)
飼育瓶内における上記試料の占有率を3.85%とした以外は、実施例1と同様に行った。幼虫形態の割合の経時変化は記録せず、摂食量の測定を実施例1と同様に行った。実施例1で得られた摂食量の経時変化の結果を表1に示すとともに、摂食量の合計量を図2に示した。
【0073】
(実施例4)
飼育瓶内における上記試料の占有率を4.67%とした以外は、実施例1と同様に行った。幼虫形態の割合の経時変化は記録せず、摂食量の測定を実施例1と同様に行った。実施例1で得られた摂食量の経時変化の結果を表1に示すとともに、摂食量の合計量を図2に示した。
【0074】
(実施例5)
飼育瓶内における上記試料の占有率を5.60%とした以外は、実施例1と同様にして飼育し、幼虫形態の割合と摂食量の経時変化を記録した。幼虫形態の割合の経時変化について、4日経過後において、10個の飼育瓶のうち10個が幼虫形態を維持した状態で生存していた(幼虫形態の割合が100%)。また、7日経過後において、10個の飼育瓶のうち7個は幼虫形態を維持した状態で生存していた(幼虫形態の割合が70%)。さらに、11日経過後において、10個の飼育瓶のうち6個は幼虫形態を維持した状態で生存していた(幼虫形態の割合が60%)。得られた摂食量の経時変化の結果を表1に示した。また幼虫形態の割合の経時変化を図1、摂食量の合計量を図2に示した。
【0075】
(実施例6)
飼育瓶内における上記試料の占有率を6.60%とした以外は、実施例1と同様にして飼育し、幼虫形態の割合と摂食量の経時変化を記録した。幼虫形態の割合の経時変化について、4日経過後において、10個の飼育瓶のうち10個が幼虫形態を維持した状態で生存していた(幼虫形態の割合が100%)。また、7日経過後において、10個の飼育瓶のうち9個は幼虫形態を維持した状態で生存していた(幼虫形態の割合が90%)。さらに、11日経過後において、10個の飼育瓶のうち9個は幼虫形態を維持した状態で生存していた(幼虫形態の割合が90%)。得られた摂食量の経時変化の結果を表1に示した。また幼虫形態の割合の経時変化を図1、摂食量の合計量を図2に示した。
【0076】
(参考例1)
飼育瓶内における上記試料の占有率を1.65%とした以外は、実施例1と同様に行った。幼虫形態の割合の経時変化は記録せず、摂食量の測定を実施例1と同様に行った。参考例1で得られた摂食量の経時変化の結果を表1に示すとともに、摂食量の合計量を図2に示した。
【0077】
【表1】
【0078】
上記実施例1~6及び参考例1によれば、占有率を調整することにより、幼虫の摂食量が増加することが確認できた。また上記実施例1~6によれば、飼育開始から4日以降も幼虫によるプラスチック含有材料の摂食が継続することが確認できた。さらに図1に示されるように、占有率に応じて、幼虫形態が維持される期間が変化することが確認できた。
【0079】
(実施例7)
飼育空間としての飼育瓶の容積を252cm、飼育瓶内における試料の占有率を2.22%とした以外は、実施例1と同様にして飼育し、幼虫形態の割合と摂食量の経時変化を記録した。幼虫形態の割合の経時変化について、4日経過後において、10個の飼育瓶のうち2個が幼虫形態を維持した状態で生存していた(幼虫形態の割合が20%)。また、7日経過後、及び11日経過後において、10個の飼育瓶のうち幼虫形態を維持した状態で生存していたのは0個であった(幼虫形態の割合が0%)。得られた摂食量の経時変化の結果を表2に示した。また幼虫形態の割合の経時変化を図3、摂食量の合計量を図4に示した。
【0080】
(実施例8)
飼育瓶内における上記試料の占有率を3.14%とした以外は、実施例7と同様に行った。幼虫形態の割合の経時変化は記録せず、摂食量の測定を実施例7と同様に行った。実施例8で得られた摂食量の経時変化の結果を表2に示すとともに、摂食量の合計量を図4に示した。
【0081】
(実施例9)
飼育瓶内における上記試料の占有率を3.67%とした以外は、実施例7と同様に行った。幼虫形態の割合の経時変化は記録せず、摂食量の測定を実施例7と同様に行った。実施例9で得られた摂食量の経時変化の結果を表2に示すとともに、摂食量の合計量を図4に示した。
【0082】
(実施例10)
飼育瓶内における上記試料の占有率を4.44%とした以外は、実施例7と同様に行った。幼虫形態の割合の経時変化は記録せず、摂食量の測定を実施例7と同様に行った。実施例10で得られた摂食量の経時変化の結果を表2に示すとともに、摂食量の合計量を図4に示した。
【0083】
(実施例11)
飼育瓶内における上記試料の占有率を5.33%とした以外は、実施例7と同様にして飼育し、幼虫形態の割合と摂食量の経時変化を記録した。幼虫形態の割合の経時変化について、4日経過後において、10個の飼育瓶のうち10個が幼虫形態を維持した状態で生存していた(幼虫形態の割合が100%)。また、7日経過後において、10個の飼育瓶のうち8個は幼虫形態を維持した状態で生存していた(幼虫形態の割合が80%)。さらに、11日経過後において、10個の飼育瓶のうち6個は幼虫形態を維持した状態で生存していた(幼虫形態の割合が60%)。得られた摂食量の経時変化の結果を表2に示した。また幼虫形態の割合の経時変化を図3、摂食量の合計量を図4に示した。
【0084】
(実施例12)
飼育瓶内における上記試料の占有率を6.29%とした以外は、実施例7と同様にして飼育し、幼虫形態の割合と摂食量の経時変化を記録した。幼虫形態の割合の経時変化について、4日経過後において、10個の飼育瓶のうち10個が幼虫形態を維持した状態で生存していた(幼虫形態の割合が100%)。また、7日経過後において、10個の飼育瓶のうち9個は幼虫形態を維持した状態で生存していた(幼虫形態の割合が90%)。さらに、11日経過後において、10個の飼育瓶のうち8個は幼虫形態を維持した状態で生存していた(幼虫形態の割合が80%)。得られた摂食量の経時変化の結果を表2に示した。また幼虫形態の割合の経時変化を図3、摂食量の合計量を図4に示した。
【0085】
(参考例2)
飼育瓶内における上記試料の占有率を1.57%とした以外は、実施例7と同様に行った。幼虫形態の割合の経時変化は記録せず、摂食量の測定を実施例7と同様に行った。参考例2で得られた摂食量の経時変化の結果を表2に示すとともに、摂食量の合計量を図4に示した。
【0086】
【表2】
【0087】
以上の実施例7~12及び参考例2より、実施例1~6及び参考例1と対比して、飼育空間の大きさが異なる場合でも、占有率を調整することによる幼虫のプラスチック含有材料の摂食量の変化が確認できた。具体的に、実施例7~11及び参考例2によれば、占有率が大きくなるにつれ幼虫の摂食量が増加することが確認できた。また、実施例8~12によれば、飼育開始から4日以降も幼虫によるプラスチック含有材料の摂食が継続することが確認できた。さらに図3に示されるように、占有率に応じて、幼虫形態が維持される期間が変化することが確認できた。
【0088】
(実施例13)
飼育瓶内における試料としてポリプロピレン無延伸フィルム(厚さ40μm)を使用し、飼育瓶内における試料の占有率を2.47%とした以外は、実施例1と同様にして飼育した。幼虫形態の割合の経時変化は記録せず、摂食量の測定を実施例1と同様に行った。実施例13で得られた摂食量の経時変化の結果を表3に示すとともに、摂食量の合計量を図6に示した。
【0089】
(実施例14)
飼育瓶内における上記試料の占有率を3.50%とした以外は、実施例13と同様に行った。幼虫形態の割合の経時変化は記録せず、摂食量の測定を実施例13と同様に行った。実施例14で得られた摂食量の経時変化の結果を表3に示すとともに、摂食量の合計量を図6に示した。
【0090】
(実施例15)
飼育瓶内における上記試料の占有率を4.10%とした以外は、実施例13と同様に行った。幼虫形態の割合の経時変化は記録せず、摂食量の測定を実施例13と同様に行った。実施例15で得られた摂食量の経時変化の結果を表3に示すとともに、摂食量の合計量を図6に示した。
【0091】
(実施例16)
飼育瓶内における上記試料の占有率を4.90%とした以外は、実施例13と同様にして飼育し、幼虫形態の割合と摂食量の経時変化を記録した。幼虫形態の割合の経時変化について、4日経過後において、10個の飼育瓶のうち10個が幼虫形態を維持した状態で生存していた(幼虫形態の割合が100%)。また、7日経過後において、10個の飼育瓶のうち10個は幼虫形態を維持した状態で生存していた(幼虫形態の割合が100%)。さらに、11日経過後において、10個の飼育瓶のうち8個は幼虫形態を維持した状態で生存していた(幼虫形態の割合が80%)。得られた摂食量の経時変化の結果を表3に示した。また幼虫形態の割合の経時変化を図5、摂食量の合計量を図6に示した。
【0092】
(実施例17)
飼育瓶内における上記試料の占有率を7.00%とした以外は、実施例13と同様にして飼育し、幼虫形態の割合と摂食量の経時変化を記録した。幼虫形態の割合の経時変化について、4日経過後において、10個の飼育瓶のうち10個が幼虫形態を維持した状態で生存していた(幼虫形態の割合が100%)。また、7日経過後において、10個の飼育瓶のうち10個は幼虫形態を維持した状態で生存していた(幼虫形態の割合が100%)。さらに、11日経過後において、10個の飼育瓶のうち9個は幼虫形態を維持した状態で生存していた(幼虫形態の割合が90%)。得られた摂食量の経時変化の結果を表3に示した。また幼虫形態の割合の経時変化を図5、摂食量の合計量を図6に示した。
【0093】
(参考例3)
飼育瓶内における上記試料の占有率を1.75%とした以外は、実施例13と同様にして飼育し、幼虫形態の割合と摂食量の経時変化を記録した。幼虫形態の割合の経時変化について、4日経過後において、10個の飼育瓶のうち5個が幼虫形態を維持した状態で生存していた(幼虫形態の割合が50%)。また、7日経過後、及び11日経過後において、10個の飼育瓶のうち幼虫形態を維持した状態で生存していたのは0個だった(幼虫形態の割合が0%)。得られた摂食量の経時変化の結果を表3に示した。また幼虫形態の割合の経時変化を図5、摂食量の合計量を図6に示した。
【0094】
【表3】
【0095】
上記実施例13~17及び参考例3によれば、実施例1~12及び参考例1~2と対比して、異なるプラスチック含有材料の場合でも、占有率を調整することにより、幼虫の摂食量が変化することが確認できた。より具体的には、占有率が大きくなるにつれ、幼虫の摂食量が増加することが確認できた。さらに、実施例13~17と参考例3とを対比した場合、占有率が所定以上の場合、飼育開始から4日以降も、幼虫のプラスチック含有材料の摂食が継続することが確認できた。さらには図5に示されるように、占有率に応じて、幼虫形態が維持される期間が変化することが確認できた。
【0096】
また、実施例1~17によれば、占有率が2.0~8.0%、より好ましくは3.0~7.0%の範囲で、幼虫の摂食量が増加することが確認できた。
【0097】
(実施例18)
飼育瓶内における試料としてポリエチレンテレフタレート無延伸フィルム(厚さ17μm)を使用し、飼育瓶内における試料の占有率を1.49%とした以外は、実施例1と同様にして飼育した。幼虫形態の割合の経時変化は記録せず、摂食量の測定を実施例1と同様に行った。実施例18で得られた摂食量の経時変化の結果を表4に示すとともに、摂食量の合計量を図8に示した。
【0098】
(実施例19)
飼育瓶内における上記試料の占有率を2.18%とした以外は、実施例18と同様に行った。幼虫形態の割合の経時変化は記録せず、摂食量の測定を実施例18と同様に行った。実施例19で得られた摂食量の経時変化の結果を表4に示すとともに、摂食量の合計量を図8に示した。
【0099】
(実施例20)
飼育瓶内における上記試料の占有率を2.48%とした以外は、実施例18と同様にして飼育し、幼虫形態の割合と摂食量の経時変化を記録した。幼虫形態の割合の経時変化について、4日経過後において、10個の飼育瓶のうち9個が幼虫形態を維持した状態で生存していた(幼虫形態の割合が90%)。また、7日経過後において、10個の飼育瓶のうち9個は幼虫形態を維持した状態で生存していた(幼虫形態の割合が90%)。さらに、11日経過後において、10個の飼育瓶のうち9個は幼虫形態を維持した状態で生存していた(幼虫形態の割合が90%)。得られた摂食量の経時変化の結果を表4に示した。また幼虫形態の割合の経時変化を図7、摂食量の合計量を図8に示した。
【0100】
(実施例21)
飼育瓶内における上記試料の占有率を3.67%とした以外は、実施例18と同様にして行った。幼虫形態の割合の経時変化は記録せず、摂食量の測定を実施例18と同様に行った。実施例21で得られた摂食量の経時変化の結果を表4に示すとともに、摂食量の合計量を図8に示した。
【0101】
(参考例4)
飼育瓶内における上記試料の占有率を1.09%とした以外は、実施例18と同様にして飼育し、幼虫形態の割合と摂食量の経時変化を記録した。幼虫形態の割合の経時変化について、4日経過後において、10個の飼育瓶のうち10個が幼虫形態を維持した状態で生存していた(幼虫形態の割合が100%)。また、7日経過後において、10個の飼育瓶のうち2個は幼虫形態を維持した状態で生存していた(幼虫形態の割合が20%)。さらに、11日経過後において、10個の飼育瓶のうち1個は幼虫形態を維持した状態で生存していた(幼虫形態の割合が10%)。得られた摂食量の経時変化の結果を表4に示した。また幼虫形態の割合の経時変化を図7、摂食量の合計量を図8に示した。
【0102】
(参考例5)
飼育瓶内における上記試料の占有率を4.36%とした以外は、実施例18と同様に行った。幼虫形態の割合の経時変化は記録せず、摂食量の測定を実施例18と同様に行った。参考例5で得られた摂食量の経時変化の結果を表4に示すとともに、摂食量の合計量を図8に示した。
【0103】
(参考例6)
飼育瓶内における上記試料の占有率を6.25%とした以外は、実施例18と同様にして飼育し、幼虫形態の割合と摂食量の経時変化を記録した。幼虫形態の割合の経時変化について、4日経過後において、10個の飼育瓶のうち9個が幼虫形態を維持した状態で生存していた(幼虫形態の割合が90%)。また、7日経過後において、10個の飼育瓶のうち6個は幼虫形態を維持した状態で生存していた(幼虫形態の割合が60%)。さらに、11日経過後において、10個の飼育瓶のうち5個は幼虫形態を維持した状態で生存していた(幼虫形態の割合が50%)。得られた摂食量の経時変化の結果を表4に示した。また幼虫形態の割合の経時変化を図7、摂食量の合計量を図8に示した。
【0104】
【表4】
【0105】
上記実施例18~21及び参考例4~6によれば、実施例1~17及び参考例1~3と対比して、プラスチック種が異なる場合(例えばポリエステルとした場合)でも、占有率を調整することにより、幼虫の摂食量が変化することが確認できた。より具体的には、占有率に応じて幼虫によるプラスチック含有材料の摂食量が変化することが確認できた。実施例18~21と参考例4~6とを対比した場合、占有率が、1.2~4.0%の範囲、特に1.49~3.67%の範囲で、幼虫の摂食量が増加することが確認できた。また、占有率が所定範囲内の場合、飼育開始から4日以降も幼虫によるプラスチック含有材料の摂食が継続することが確認できた。さらに図7に示されるように、占有率に応じて、幼虫形態が維持される期間が変化することが確認できた。
【0106】
上記実施例の結果に基づけば、飼育空間において、占有率に限られず、幼虫及びプラスチック含有材料が占有する領域以外の「非占有率」に応じても、実施例と同様に幼虫形態が維持される期間や摂食量が変化し得ることは、当業者であれば容易に理解できる。また、飼育空間に複数の幼虫を収容した場合においても、同様に幼虫形態が維持される期間や摂食量を制御し得る。さらには、飼育空間の大きさにかかわらず、幼虫の摂食量を向上させたり、摂食量が多い状態を維持したりすることが可能となる。
【0107】
本開示によれば、幼虫によるプラスチック含有材料の処理効率を向上させることが期待できる。
【産業上の利用可能性】
【0108】
発明は、多様なプラスチック含有材料の種類や状態に応じて、適切な条件においてプラスチック含有材料の処理方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0109】
100:プラスチック含有材料の処理装置
10:飼育槽
20:調整装置
11:カメラ
12:第1コンベア
13:第2コンベア
50:制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9