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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025003895
(43)【公開日】2025-01-10
(54)【発明の名称】跨座式モノレールシステム
(51)【国際特許分類】
   B61B 13/06 20060101AFI20241227BHJP
   E01B 25/12 20060101ALI20241227BHJP
   E01B 25/10 20060101ALI20241227BHJP
   B60L 13/00 20060101ALI20241227BHJP
   B61L 5/06 20060101ALI20241227BHJP
   B61B 1/00 20060101ALI20241227BHJP
【FI】
B61B13/06 B
E01B25/12
E01B25/10
B60L13/00 A
B61L5/06
B61B1/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023103808
(22)【出願日】2023-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】306037229
【氏名又は名称】株式会社 空スペース
(72)【発明者】
【氏名】河島 壯介
【テーマコード(参考)】
2D056
5H125
【Fターム(参考)】
2D056EA00
2D056EB01
5H125AA05
5H125AC02
5H125EE55
5H125EE58
5H125EE66
(57)【要約】      (修正有)
【課題】利用者の少ない鉄道単線を代替するモノレールであって、既存の鉄道軌道をそのまま利用して、複線化と無人運転を実現する跨座式モノレールシステムを提供する。
【解決手段】鉄道軌道の片側レール上を、ジャイロモーメント発生機構を使用した横転防止手段により走行させる。小型車両により、狭軌(一般的に1067mm)単線の一対のレールを上り/下りの複線として利用するもの。すれ違い時の車両退避が無いことより、ロープーウェイ同様、両端を循環する運行に単純化され無人運転化が容易。また、鉄道軌道を残していることより、従来通りの鉄道車両との併用運行が可能となる。これにより、通学客輸送等の時間変動や季節変動、人口変動等に輸送能力を合わせることが容易な輸送手段となる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1本の軌道レール上に設置される跨座式モノレール車両において、車輪の支持、駆動、制動を行う駆動手段と、ジャイロモーメント発生機構による横転防止手段と、前記駆動手段への電力供給手段からなる跨座式モノレール車両
【請求項2】
前記軌道レールが鉄道用軌道の一対のレールの内の1本のレールであることを特徴とする請求項1に記載の跨座式モノレール車両。
【請求項3】
前記跨座式モノレール車両、及び既存鉄道車両の両方が走行可能なレール分岐装置。
【請求項4】
複数台の前記跨座式モノレール車両と、前記レール分岐装置と、各車両の傾斜と位置、すれ違い車両や先行車両、後継車両との距離を測定する計測手段と、前記計測手段が取得した情報により跨座式モノレール車両とレール分岐装置を監視制御することを特徴とする跨座式モノレールシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は1本のレール上を走行する跨座式モノレールシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
モノレールは、鉄道とバスの中間的な輸送能力を有すること、また路線の施工費用が鉄道に対し廉価であることより、鉄道路線やバス路線の代替となり得る交通手段である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3-31057
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら過疎化等で収益が悪化した鉄道ローカル線の代替は主にバス路線であり、モノレールへの転換例を聞かない。バス路線は道路の無償使用が前提であることに対し、モノレールは廃線前の鉄道路線を利用できず、多額の軌道設置費用が必用な事が主な原因である。
一方でローカル線とされる1日当りの利用客数1000人未満の路線であっても、利用者は一定時刻に集中する通学客が多いことより、これをバス路線で賄うためには、大型車や複数台の運行が必要、バス路線転換での費用削減効果は限定的であった。
【0005】
そこで本発明は、ローカル線で一般的な単線路線の軌道設備(枕木、レール、バラストまたはコンクリート基礎、レールを枕木に固定する犬釘等の締結具)と軌間寸法(ゲージ)を変更せずに利用可能にすると共に、互いに干渉せずにすれ違いが可能な複線の跨座式モノレールシステムを構築することにある。
さらに混雑時などはこの路線に、係る跨座式モノレール車両に代えて従来の鉄道車両を乗入れ可能とした、跨座式モノレールシステムを構築することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために本発明の跨座式モノレール車両は、1本の軌道レール上に設置される跨座式モノレール車両において、車輪の支持、駆動、制動を行う駆動手段と、ジャイロモーメント発生機構による横転防止手段と、自車両の傾斜と位置、すれ違い車両や先行車両、後継車両との距離を測定する計測手段と、駆動手段、計測手段への電力供給手段と、計測手段が取得した情報を無線送信する情報発信手段からなる。
【0007】
また、軌道レールが鉄道用軌道の一対のレールの内の1本のレールであって、跨座式モノレール車両、及び既存鉄道車両の両方が走行可能なレール分岐装置を有し、複数台の前記跨座式モノレール車両とレール分岐装置からの情報を無線受信し、跨座式モノレール車両とレール分岐装置を監視制御する跨座式モノレールシステムを構成する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の跨座式モノレール車両は、ローリング方向の姿勢をジャイロモーメント発生機構によっていることより、レールスパンや高さ相互差、個々のレール傾斜によって車体の姿勢変化が生じないことより、保線作業(レールスパンや高さ相互差の維持管理)が大幅に軽減される。
さらにローリング加振力はジャイロが抑止するのでレールは基本的に横方向力を受けないことより、レールの摩耗や倒れが大幅に低減される。これにより従来よりも軟弱な地盤へ敷設できる。
【0009】
また、運行車両を需要に合わせて、少量輸送向きの跨座式モノレール車両と大量輸送向きの従来車両から容易に選択できるのでエネルギー消費が抑制でき、従来車両は定員を増やした通学用に座席を撤去する、等の最適化が容易になる。
さらに、本発明の跨座式モノレールシステムは、既存鉄道の単線軌道をそのまま利用し、車両がその一方のレールのみを走行させて往路とし、他方のレールを復路とした利用を可能とする。これにより、従来の単線鉄道路線からの移行費用を最小限に抑えた複線路線が実現する。
また複線化により、すれ違い時の車両退避作業や、その時刻合わせが不要、ロープーウェイの様に両終点間を一方向に循環する経路に単純化されるので、運行ダイヤが不要となり、例えば乗客のスマートフォンからの呼び出しに依る配車も可能になる。
鉄道路線は基本的に歩行者や他の交通手段に対し優先通行権を有していることより、基本的に前車両との車間制御のみで安全な無人運行がでる。
【0010】
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の係る跨座式モノレール車両実施例の断面図。
図2】本発明の係る跨座式モノレール車両実施例の駆動部周辺とホーム9の断面図。
図3】本発明の跨座式モノレールシステムのレール分岐装置の第一実施例の平面図。
図4】本発明の跨座式モノレールシステムのレール分岐装置の第二実施例の平面図。
図5】本発明の跨座式モノレールシステムのレール分岐装置の第一実施例の平面図。
図6】本発明の跨座式モノレールシステムのレール分岐装置の第一実施例の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施例を説明する。ただし、図面はもっぱら解説のためであって、本発明の記述範囲を限定するものではない。
【実施例0013】
図1は、本発明の跨座式モノレール車両1の実施例の断面図、図2はその駆動部周辺とホーム9の断面図である。
跨座式モノレール車両1は、駆動手段3と、ジャイロモーメント発生機構6(横転防止手段)、自車両の傾斜と位置、すれ違い車両や先行車両、後継車両との距離を測定する計測手段Sと、前記駆動手段、及び前記計測手段への電力供給手段(図中不記)と、前記計測手段が取得した情報を無線送信する情報発信手段(図中不記)からなる
【0014】
この跨座式モノレール車両1は、既存鉄道軌道をそのまま利用することを想定している。即ち既存の軌道(バラストに枕木によって軌間寸法G=1067mm(狭軌)のレールR1、R2)の一方のレールR1上を走行させる跨座式モノレール車両である。キャビン4をレールに対し左右対象に配置する場合、標準的な在来線(軌間寸法1067mmと50Nレール)のレールスパンRSは1132mmである。よってキャビン外幅1000mmのすれ違いでの車両間隔は132mmである。
【0015】
駆動手段3は、両側に脱輪防止フランジ2a、2bを備えた複数の回転自在の車輪2によって1本の軌道レール上に置かれ、駆動、回生発電用モータが車輪2を加速、減速させる。ジャイロモーメント発生機構6(横転防止手段)は車体の傾きを検出し、内部のジンバル軸へのトルク付与により傾きを修正する方向にすべく跨座式モノレール車両1にローリング方向のトルクを与える(特許国際公開番号WO 02/077369 A1 で公知)。
電源の長期喪失やジャイロモーメント発生機構6の故障時は、横転防止用油圧シリンダー7a、7bにより跨座式モノレール車両1を直立状態に支える。
【0016】
すれ違い車両や前後方向の車両との距離や速度差、自車両のローリング傾斜角やバッテリー残量、及びGPS等による自車両の位置などの計測手段Sをキャビン4の前端、後端に備えこれらからの情報は情報発信手段(図中不記)で無線送信される。
すれ違いでの車両間隔の拡大、若しくはキャビン幅の拡大の為、キャビンをレールに対しオフセットすることもできる。またキャビン4は乗降用ドア(図中不記)、及び乗客用椅子5を備える。
【0017】
跨座式モノレール車両1のホーム9停車中、ジャイロモーメント発生機構6のジンバル軸による車両の傾斜操作、または停車中は油圧シリンダー7a、7bの突き出し量による車両の傾斜操作により、ホーム9から車両への給電接点8bと8aを閉じてバッテリーを充電することが出来、同時に乗降者の為にキャビンとホームの間隔を狭めることが出来る。
【0018】
キャビン4の前後端上部にはマグネットチャック機構等による連結器20が備えられており、車両動力の喪失故障時に、後継(又は先行)車両の連結器20と連結しての運転を可能としている。
ジャイロモーメント発生機構の故障時も、この連結により故障車両を横転させない為に、連結器20は横転の回転中心であるレール上面より極力離れたキャビン上部が好ましく、少なくとも車両重心高さより上に配置するものとする。
また連結によるジャイロモーメント発生機構への負荷の増加に対応するため、ジャイロモーメント発生機構のフライホイールの回転速度を通常より高くすることも可能である。
【0019】
次に本実施例の作用について説明する。
本車両は初期状態で、既存鉄道のレール上に車輪を乗せ、油圧シリンダー7a、7bによりローリング方向を支えられることにより、図1の状態で停止される。
【0020】
起動時は、ジャイロモーメント発生機構6内のフライホイールを所定回転数まで廻してた後、6内のジンバル軸へのトルク付与による車両の傾斜制御を有効にすることで、油圧シリンダー7a、7bを接地面から離すことが出来る。この状態が通常可動中の停止、である。
発進時は駆動手段3内のブレーキを解除してモーターに通電することにより、車輪1よりトルクをルに伝え、跨座式モノレール車両が発進する。計測手段Sは例えば、ビューカメラやレーザーレーダー等ですれ違い車両や前後方向の車両との距離や速度差を検出し、自車両のローリング傾斜角を角度センサーで検出し、バッテリー残量を電流電圧計で計測し、自車両の位置をGPSで検出することにより無人運転が可能な情報が得られる。
【0021】
次に、異常時の作用について説明する。
まず安全停止について、ジャイロモーメント発生機構の故障時に、係るフライホイールの回転速度が低下し、次第に車両の姿勢を維持できなくなる。本発明の車両はこの状態になる前に、駆動装置3の停止と制動装置の起動により車両を停止させると共に、車体両側面に設置された対の油圧シリンダー7a、7bのヘッドを下方に伸ばして枕木やバラストに当接、車両の横転を防止する。
【0022】
次に、故障車両の回収は道路からアクセスできない所でも可能なことが前提となる。その場合故障車両の前(または後)の車両を救援車両として連結器20によって接続し、救援車両の動力とジャイロモーメント発生機構による姿勢維持を使用して故障車両の油圧シリンダー7a、7bのヘッドを縮めて、連結状態で自走させる。故障車両の車輪が回転不能の場合、救援車両を前後共接続し、故障車両の車輪をレールから浮かせるリフトアップ機構を備えることも可能である。
【0023】
図3は、本発明の跨座式モノレールシステムのレール分岐装置の第一実施例の平面図。
軌道の2本のレールR1,R2は、跨座式モノレール車両1(以下、車両と表記)を搭載して180deg回転するターンテーブルT1に設置されたレールR3,R4、及びターンテーブルより右方の従来の鉄道車両の停留位置のレールR5,R6へ繋がっている。
【0024】
図の右方向へ走る車両が上り、左方向は下りとすると、上り車両はレールR1よりターンテーブル上のレールR3に移動し停止。ターンテーブルを180deg回転させることにより、車両ごとレール位置がR4に反転する。その後車両を前進させることにより、レールR2方向へ進む下り車両に変わる(図の細線は回転途中の45deg毎の車両を記載したもの)。
【0025】
次に、従来の鉄道車両Dをこの路線に入れる場合は、最初に、R1からR6全てのレールから跨座式モノレールを後述する退避路線へ移動する。これによりR3からR1、R4からR2のレールは直線状に空いた状態となっているので、従来の鉄道車両Dを、ターンテーブル上のレールR3,R4を通過してR1,R2へ侵入させ、従来の鉄道車両D下り車両となる。
【0026】
図4は、本発明の跨座式モノレールシステムの単線軌道の終端におけるレール分岐装置の第二実施例、第一実施例の路線の反対側の終端の平面図である。3個のターンテーブルは右から左の順で径が大きくなり、それぞれ、T1はモノレール車両の反転用(図3と同一)、T2は上り線モノレール車両の退避用、T3は下り線モノレール車両の退避用、である。ターンテーブル3個の動作は図3と同じで、モノレール車両用のレールを車両ごと180deg回転させながら移し替えることである。
【0027】
図の左端に停留している従来の鉄道車両Dの使用時は、ターンテーブルT2,T3を使用して路線内の車両を退避路線RXに反転退避させることにより、レールR1,R2と各ターンテーブル上の空きレールが接続され、従来の鉄道車両Dはこれらのレールを通り路線内に投入される。
また、車両M使用時は、この逆の動作を行う。
【0028】
レール分岐装置の第一と第二の実施例によれば、上り線と下り線の往復動作時に、自動的に車両方向が反転するので、車両のドア側側面を常に反対側レール上の車両と対抗しない方向に向けることが出来る。
【0029】
図5は、本発明の跨座式モノレールシステムの単線軌道の終端におけるレール分岐装置の第三実施例の平面図である。
既存の単線軌道の終端の一方のレール端と他方のレール端を、車両が走行可能な曲率半径で接続するもの。可動部が無い長所があるが、従来の鉄道車両を併用する場合はその退避手段が別途必要になる(既設のポイントの利用が考えられえる)。
【0030】
図6は、本発明の跨座式モノレールシステムの単線軌道の終端におけるレール分岐装置の第四実施例、トラバーサーの平面図である。本実施例では、第二実施例の3個のターンテーブルを1つのトラバーサーで実現できるが、上り線と下り線の往復動作時に、自動的に車両方向が反転するため、側面に乗降口や窓を持つ車両に使用する場合、別途の安全策が必用となる。
【0031】
以上、主に単線ローカル線に複線の自動運転車両を導入する例を念頭に実施例を説明したが、本発明の跨座式モノレールシステムはこの用途に限るものでは無く、軌間寸法が固定されていることは要件では無い。また、車両のローリング方向の姿勢がレールでは無くジャイロにより制御されることより、従来のモノレールシステムに対して、レール設営が大幅に簡略化され、軟弱な地盤への敷設が可能になることに注目されたい。例えば、地雷埋設地に施設する防衛設備用モノレール、若しくは果樹園用モノレールに好適である。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、利用者の少ない鉄道路線を代替するモノレール、もしくは軟弱地盤へ施設するモノレールとして広く使用できる。
【符号の説明】
【0033】
1・・・モノレール車両
3・・・車輪
6・・・・・ジャイロモーメント発生機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6