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特開2025-38998搬送方法切替装置、搬送切替方法および移動体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025038998
(43)【公開日】2025-03-21
(54)【発明の名称】搬送方法切替装置、搬送切替方法および移動体
(51)【国際特許分類】
   B62D 65/18 20060101AFI20250313BHJP
   B65G 43/08 20060101ALI20250313BHJP
【FI】
B62D65/18 Z
B65G43/08 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023145709
(22)【出願日】2023-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩堀 健人
(72)【発明者】
【氏名】横山 大樹
【テーマコード(参考)】
3D114
3F027
【Fターム(参考)】
3D114AA06
3D114CA01
3D114JA01
3F027AA01
3F027DA16
3F027FA13
(57)【要約】
【課題】搬送装置から移動体の移動による離脱が遅れることなどによる生産性の低下を抑制または防止することができる技術を提供する。
【解決手段】搬送方法切替装置は、無人運転により移動可能な移動体の移動制御が停止された状態の移動体を予め定められた搬送区間において搬送可能な搬送装置によって搬送される移動体の搬送状況を示す搬送状況情報を取得する搬送情報取得部と、取得された搬送状況情報を用いて、搬送装置によって搬送される移動体に対して移動制御を開始するか否かを判断する移動制御判断部と、移動制御判断部によって移動制御を開始すると判断された場合に、移動制御によって移動体を搬送区間から移動させて離脱させるための制御指令を生成して出力する指令生成部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送方法切替装置であって、
無人運転により移動可能な移動体の移動制御が停止された状態の前記移動体を予め定められた搬送区間において搬送可能な搬送装置によって搬送される前記移動体の搬送状況を示す搬送状況情報を取得する搬送情報取得部と、
取得された前記搬送状況情報を用いて、前記搬送装置によって搬送される前記移動体に対して前記移動制御を開始するか否かを判断する移動制御判断部と、
前記移動制御判断部によって前記移動制御を開始すると判断された場合に、前記移動制御によって前記移動体を前記搬送区間から移動させて離脱させるための制御指令を生成して出力する指令生成部と、を備える、
搬送方法切替装置。
【請求項2】
請求項1に記載の搬送方法切替装置であって、
前記搬送情報取得部は、前記搬送区間における移動体位置を前記搬送状況情報として取得し、
前記移動制御判断部は、取得された前記移動体位置を用いて、前記移動制御を開始するか否かを判断する、
搬送方法切替装置。
【請求項3】
前記移動制御判断部は、取得された前記移動体位置が前記搬送区間の終点から予め定められた距離だけ上流側である場合に、前記移動制御を開始すると判断する、請求項2に記載の搬送方法切替装置。
【請求項4】
前記移動制御判断部は、取得された前記移動体位置の少なくとも一部が前記搬送区間の終点を越えた場合に、前記移動制御を開始すると判断する、請求項2に記載の搬送方法切替装置。
【請求項5】
請求項1に記載の搬送方法切替装置であって、
前記搬送情報取得部は、前記搬送装置による前記移動体の搬送速度を前記搬送状況情報として取得し、
前記移動制御判断部は、さらに取得された前記搬送速度を用いて前記移動制御を開始するタイミングを決定し、決定されたタイミングで前記移動制御を開始するか否かを判断する、
搬送方法切替装置。
【請求項6】
請求項5に記載の搬送方法切替装置であって、
前記移動制御判断部は、取得された前記搬送速度が予め定められた基準速度より速い場合には、前記移動制御を開始するタイミングを、前記搬送速度が前記基準速度である場合よりも早いタイミングに決定する、
搬送方法切替装置。
【請求項7】
請求項1に記載の搬送方法切替装置であって、
さらに、前記指令生成部によって前記制御指令が前記移動体に送信されたあとに前記移動体の移動が検出されない場合に、前記搬送装置による前記移動体の搬送速度を低減させる指示または前記搬送装置による前記移動体の搬送を停止させる指示を出力する搬送指示部を備える、
搬送方法切替装置。
【請求項8】
前記搬送指示部は、移動が検出されなかった前記移動体に対して異常措置が完了した場合に、低減された前記搬送速度をもとの搬送速度に戻す、または停止された前記搬送装置を作動させる指示を出力する、請求項7に記載の搬送方法切替装置。
【請求項9】
請求項1に記載の搬送方法切替装置であって、
さらに、前記指令生成部によって前記制御指令が前記移動体に送信されたあとに前記移動体の移動が検出されない場合に報知を行う報知部を備える、
搬送方法切替装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9までのいずれか一項に記載の搬送方法切替装置であって、
さらに、前記移動体の画像と前記移動体の3次元点群データとの少なくともいずれかの移動体情報を検出する移動体検出器によって検出された前記移動体情報を用いて、前記移動体の位置を推定する位置推定部を備え、
前記指令生成部は、推定された前記移動体の位置を用いて、前記移動制御によって前記移動体を移動させるための制御指令を生成して出力する、
搬送方法切替装置。
【請求項11】
搬送切替方法であって、
無人運転により移動可能な移動体の移動制御が停止された前記移動体を、搬送装置を用いて予め定められた搬送区間において搬送し、
搬送される前記移動体の搬送状況情報を取得し、
取得された前記搬送状況情報を用いて、搬送される前記移動体に対して前記移動制御を開始するか否かを判断し、
前記移動制御を開始すると判断された場合に、前記移動制御によって前記移動体を前記搬送区間から移動させて離脱させる、
搬送切替方法。
【請求項12】
無人運転により移動可能な移動体であって、
移動制御が停止された状態の前記移動体を予め定められた搬送区間において搬送可能な搬送装置によって搬送される前記移動体の搬送状況を示す搬送状況情報を取得する搬送情報取得部と、
取得された前記搬送状況情報を用いて、前記搬送装置によって搬送される前記移動体に対して前記移動制御を開始するか否かを判断する移動制御判断部と、
前記移動制御判断部によって前記移動制御を開始すると判断された場合に、前記移動制御によって前記移動体を前記搬送区間から移動させて離脱させるための制御指令を生成して出力する指令生成部と、を備える、
移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、搬送方法切替装置、搬送切替方法および移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、車両を製造するための製造システムにおいて、組立ラインではベルトを用いて車両が搬送され、組立ラインの終端からは、遠隔制御を利用して車両を走行させることによって、車両が製造システムの駐車場まで搬送される技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2017-538619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ベルトを用いた搬送方法と、遠隔制御による車両の走行を利用した搬送方法とでは、搬送方法が互いに異なるため、搬送方法が円滑に切り替えられることが望ましい。搬送方法が円滑に切り替えられない場合には、例えば、車両がベルトから適切なタイミングで離脱できず、生産性の低下や異常を発生させる可能性がある。かかる問題は、ベルトに限らずリフタなど、車両を搬送可能な任意の搬送装置を用いた搬送方法において共通する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
(1)本開示の一形態によれば、搬送方法切替装置が提供される。この搬送方法切替装置は、無人運転により移動可能な移動体の移動制御が停止された状態の前記移動体を予め定められた搬送区間において搬送可能な搬送装置によって搬送される前記移動体の搬送状況を示す搬送状況情報を取得する搬送情報取得部と、取得された前記搬送状況情報を用いて、前記搬送装置によって搬送される前記移動体に対して前記移動制御を開始するか否かを判断する移動制御判断部と、前記移動制御判断部によって前記移動制御を開始すると判断された場合に、前記移動制御によって前記移動体を前記搬送区間から移動させて離脱させるための制御指令を生成して出力する指令生成部と、を備える。
この搬送方法切替装置によれば、停止された移動制御を、搬送装置による移動体の搬送状況に基づく適正なタイミングで開始させることができる。したがって、搬送装置から移動体の離脱が遅れることなどによる生産性の低下や異常の発生を抑制または防止することができる。
(2)上記形態の搬送方法切替装置において、前記搬送情報取得部は、前記搬送区間における移動体位置を前記搬送状況情報として取得してよい。前記移動制御判断部は、取得された前記移動体位置を用いて、前記移動制御を開始するか否かを判断してよい。
この搬送方法切替装置によれば、停止された移動制御を、搬送区間における移動体の位置に基づく適切なタイミングで開始することができる。
(3)上記形態の搬送方法切替装置において、前記移動制御判断部は、取得された前記移動体位置が前記搬送区間の終点から予め定められた距離だけ上流側である場合に、前記移動制御を開始すると判断してよい。
この搬送方法切替装置によれば、搬送区間の終点までに移動体を搬送装置から離脱させることができ、移動体が終点を越えて搬送不能な状態で停止する不具合を抑制または防止することができる。
(4)上記形態の搬送方法切替装置において、前記移動制御判断部は、取得された前記移動体位置の少なくとも一部が前記搬送区間の終点を越えた場合に、前記移動制御を開始すると判断してよい。
この搬送方法切替装置によれば、搬送区間の終点を越えたか否かという簡易な方法により、移動体が搬送開始位置に到達したか否かを判定することができる。
(5)上記形態の搬送方法切替装置において、前記搬送情報取得部は、前記搬送装置による前記移動体の搬送速度を前記搬送状況情報として取得してよい。前記移動制御判断部は、さらに取得された前記搬送速度を用いて前記移動制御を開始するタイミングを決定し、決定されたタイミングで前記移動制御を開始するか否かを判断してよい。
この搬送方法切替装置によれば、搬送装置の搬送速度が切り替えられる場合であっても、停止された移動制御を、搬送速度に基づく適正なタイミングで開始させることができる。
(6)上記形態の搬送方法切替装置において、前記移動制御判断部は、取得された前記搬送速度が予め定められた基準速度より速い場合には、前記移動制御を開始するタイミングを、前記搬送速度が前記基準速度である場合よりも早いタイミングに決定してよい。
この搬送方法切替装置によれば、搬送装置の搬送速度が速められる場合であっても、適正なタイミングで移動制御を開始させることができる。
(7)上記形態の搬送方法切替装置において、さらに、前記指令生成部によって前記制御指令が前記移動体に送信されたあとに前記移動体の移動が検出されない場合に、前記搬送装置による前記移動体の搬送速度を低減させる指示または前記搬送装置による前記移動体の搬送を停止させる指示を出力する搬送指示部を備えてよい。
この搬送方法切替装置によれば、移動制御によって移動体が移動できていない場合に、搬送装置による搬送を停止することにより、異常措置を実行する時間を確保することができる。
(8)上記形態の搬送方法切替装置において、前記搬送指示部は、移動が検出されなかった前記移動体に対する異常措置が完了した場合に、低減された前記搬送速度をもとの搬送速度に戻す、または停止された前記搬送装置を作動させる指示を出力してよい。
この搬送方法切替装置によれば、異常措置から復旧までを連続的に行うことにより、搬送装置を異常措置から早期に復旧させることができる。
(9)上記形態の搬送方法切替装置において、さらに、前記指令生成部によって前記制御指令が前記移動体に送信されたあとに前記移動体の移動が検出されない場合に報知を行う報知部を備えてよい。
この搬送方法切替装置によれば、報知により搬送装置の異常措置を促すことができ、搬送装置の早期の復旧を促すことができる。
(10)上記形態の搬送方法切替装置において、さらに、前記移動体の画像と前記移動体の3次元点群データとの少なくともいずれかの移動体情報を検出する移動体検出器によって検出された前記移動体情報を用いて、前記移動体の位置を推定する位置推定部を備えてよい。前記指令生成部は、推定された前記移動体の位置を用いて、前記移動制御によって前記移動体を移動させための制御指令を生成して出力してよい。
この搬送方法切替装置によれば、3次元点群データを用いることにより、移動体の位置を高い精度で推定することができる。
本開示は、搬送方法切替装置以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、遠隔制御装置、移動体、搬送装置、搬送システム、移動体の搬送方法、搬送装置の制御方法、搬送システムの制御方法、これらの制御方法を実現するコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した一時的でない記録媒体等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】搬送方法切替装置としての遠隔制御装置を含む搬送システムの概略構成を示す説明図。
図2】遠隔制御装置および車両の内部機能構成を示す説明図。
図3A】遠隔制御装置によって実現される車両の走行方法を示すフローチャート。
図3B】搬送制御装置の内部機能構成を示すブロック図。
図4】本開示の第1実施形態に係る車両の搬送切替方法を示すフローチャート。
図5】遠隔制御開始処理の処理ルーチンを示すフローチャート。
図6】搬送速度が基準速度以下場合に設定される遠隔制御の準備開始位置を示す説明図。
図7】搬送速度が基準速度より速い場合に設定される遠隔制御の準備開始位置を示す説明図。
図8】第2実施形態に係る搬送方法における遠隔制御開始処理の処理ルーチンを示すフローチャート。
図9】第2実施形態に係る搬送方法の遠隔制御開始処理における遠隔制御の準備開始位置を示す説明図。
図10】第3実施形態に係る車両におけるECUの機能構成を示すブロック図。
図11】第3実施形態の車両の走行方法を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.第1実施形態:
図1は、本開示の第1実施形態に係る搬送方法切替装置としての遠隔制御装置300を含む搬送システム600の概略構成を示す説明図である。搬送システム600は、例えば、車両100を製造する工場で用いられる。搬送システム600の搬送対象は、遠隔制御によって走行可能な車両100である。搬送システム600は、例えば、車両100の検査工程や車両100の組立工程などで用いられ、車両100の製造過程における予め定められた搬送区間に亘って車両100を搬送する。搬送システム600は、遠隔制御装置300と、車両検出器80と、搬送装置500とを備えている。
【0009】
図2は、遠隔制御装置300および車両100の内部機能構成を示す説明図である。車両100は、例えば、乗用車、トラック、バス、ならびに工事用車両などである。本実施形態では、車両100は、無人運転により走行可能な電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)である。「無人運転」とは、搭乗者の運転操作によらない運転を意味する。運転操作とは、車両の「走る」、「曲がる」、「止まる」の少なくともいずれかに関する操作を意味する。無人運転は、車両の外部に設けられた装置を用いた自動・手動の遠隔制御、または、車両の自律制御によって実現される。無人運転によって走行している車両には、運転操作を行わない搭乗者が搭乗していてもよい。運転操作を行わない搭乗者には、例えば、単に車両の座席に着座している者や、組み付け、検査、スイッチ類の操作といった運転操作とは異なる作業を車両に乗りながら行っている人が含まれる。なお、搭乗者の運転操作による運転は、「有人運転」と呼ばれることがある。車両100は、車両通信装置190と、アクチュエータ140と、ECU(Electronic Control Unit)200とを備えている。
【0010】
ECU200は、車両100に搭載され、車両100の各種の制御を実行する。ECU200は、HDD(ハードディスクドライブ)、SSD(ソリッドステートドライブ)、光記録媒体、半導体メモリ等の記憶装置220と、中央演算処理装置としてのCPU210と、インタフェース回路230とを備えている。CPU210と、記憶装置220と、インタフェース回路230とは、内部バスを介して、双方向に通信可能に接続されている。インタフェース回路230には、アクチュエータ140、車両通信装置190が接続されている。車両通信装置190は、工場内のアクセスポイント等を介して、遠隔制御装置300など、ネットワークに接続された車両100の外部の装置との無線通信を行う。
【0011】
記憶装置220には、本実施形態において提供される機能の少なくとも一部を実現するためのコンピュータプログラムが格納されている。CPU210がメモリに格納された各種のコンピュータプログラムを実行することによって、運転制御部212などの機能が実現される。
【0012】
運転制御部212は、車両100の運転制御を実行する。「運転制御」とは、例えば、加速度、速度、ならびに舵角の調整など、車両100の「走る」、「曲がる」、「止まる」の機能を発揮する各アクチュエータ140を駆動させるための種々の制御である。なお、車両100に代えて移動体であれば、「運転制御」に代えて「移動制御」とも呼ぶことがある。本実施形態では、アクチュエータ140には、車両100を加速させるための駆動装置のアクチュエータ、車両100の進行方向を変更するための操舵装置のアクチュエータ、および、車両100を減速させるための制動装置のアクチュエータが含まれている。駆動装置には、バッテリ、バッテリの電力により駆動する走行用モータ、および、走行用モータにより回転する駆動輪が含まれている。駆動装置のアクチュエータには、走行用モータが含まれている。なお、アクチュエータ140には、さらに、車両100のワイパーを揺動させるためのアクチュエータや、車両100のパワーウィンドウを開閉させるためのアクチュエータなどが含まれてもよい。
【0013】
運転制御部212は、車両100に運転者が搭乗している場合に、運転者の操作に応じてアクチュエータ140を制御することにより、車両100を走行させることができる。また、運転制御部212は、車両100に運転者が搭乗しているか否かにかかわらず、遠隔制御装置300から送信される制御指令に応じてアクチュエータ140を制御することにより、車両100を走行させることもできる。
【0014】
車両検出器80は、車両情報を測定するための装置である。「車両情報」とは、車両100の位置と車両100の向きとの少なくともいずれかを推定するために用いられる情報である。本実施形態では、車両検出器80は、測距装置であるLiDAR(Light Detection And Ranging)が用いられている。車両検出器80は、車両情報として、車両100の3次元点群データを測定する。3次元点群データとは、点群の3次元位置を示すデータである。LiDARを用いることにより、高精度の3次元点群データが取得され得る。なお、車両検出器80によって車両100の位置のみを取得し、車両100の経時的な位置変化等を取得することによって、車両100の向きや走行方向が推定されてもよい。
【0015】
車両検出器80は、遠隔制御装置300と無線通信あるいは有線通信により通信可能に接続されている。遠隔制御装置300は、車両検出器80から3次元点群データを取得することにより、目標ルートに対する車両100の相対的な位置および向きをリアルタイムで取得することができる。車両検出器80の位置は、車両100が走行予定の走行路SRおよび搬送装置500の近傍に固定されている。
【0016】
図2に示すように、遠隔制御装置300は、遠隔制御によって車両100を自動走行させるための制御指令を生成して車両100に送信し、遠隔制御による車両100の運転制御を実行する。遠隔制御装置300は、例えば、遠隔制御によって車両100を自動走行させることによって、工場内の搬送区間における車両100の搬送などを行う。本実施形態では、遠隔制御装置300は、後述するように、搬送装置500による車両100の搬送状況を示す搬送状況情報を用いて、遠隔制御によって車両100の運転制御を開始するか否かを判断する搬送方法切替装置としても機能する。
【0017】
遠隔制御装置300は、中央演算処理装置としてのCPU310と、記憶装置340と、インタフェース回路350と、遠隔通信装置390とを備えている。CPU310と、記憶装置340と、インタフェース回路350とは、内部バスを介して双方向に通信可能に接続されている。インタフェース回路350には、遠隔通信装置390が接続されている。遠隔通信装置390は、ネットワーク等を介して車両100や搬送制御装置400との通信を行う。
【0018】
記憶装置340は、たとえば、RAM、ROM、HDD、およびSSD等である。記憶装置340の読み書き可能な領域には、基準速度SVが格納されている。基準速度SVは、搬送装置500による車両100を搬送する可変の搬送速度のうち、通常時に設定される搬送速度である。「通常時に設定される搬送速度」とは、例えば、目標製造時間を達成するために予め設定される搬送速度である。目標製造時間は、車両100を1台製造するために工程に設定される製造時間である。目標製造時間は、「タクトタイム」と呼ばれることがある。基準速度SVは、後述するように、車両100を搬送装置500から離脱するタイミングを判断するための閾値として機能する。
【0019】
記憶装置340には、本実施形態において提供される機能の少なくとも一部を実現するためのコンピュータプログラムが格納されている。記憶装置340に記憶されたコンピュータプログラムがCPU310によって実行されることにより、CPU310は、遠隔制御部312と、位置推定部314と、遠隔制御判断部316と、搬送情報取得部318と、搬送指示部322と、報知部324と、後続指示部326と、車両情報取得部328として機能する。ただし、これらの機能の一部または全部はハードウェア回路によって構成されてもよい。
【0020】
位置推定部314は、車両検出器80から車両情報を取得して、取得された車両情報を利用して車両100の位置および向きを推定する。本実施形態では、位置推定部314は、車両情報として、車両検出器80によって測定された3次元点群データを用いる。位置推定部314は、取得された3次元点群データ中における車両100の位置及び向きを推定する。具体的には、位置推定部314は、3次元点群データに対して、予め記憶装置340に格納された車両点群データを用いたテンプレートマッチングを実行する。そのため、3次元点群データ中における車両100の位置及び向きを高精度で推定することができる。テンプレートしての車両点群データには、例えば、車両100の3次元CADデータを用いることができる。車両点群データには、車両100の向きを特定するための情報が含まれてよい。3次元点群データに対する車両点群データのテンプレートマッチングには、例えば、ICP(Iterative Closest Point)アルゴリズムや、NDT(Normal Distribution Transform)アルゴリズムなどを利用することができる。
【0021】
遠隔制御部312は、車両100に各種の動作を実行させるための制御指令を生成して車両100に出力する指令生成部として機能する。例えば、遠隔制御部312は、推定された車両100の位置及び向きを用いて、遠隔制御のための制御指令を生成して車両100に送信する。この制御指令は、記憶装置340に格納された目標ルートに従って車両100を走行させる指令である。制御指令は、駆動力又は制動力と、舵角とを含む指令として生成することができる。あるいは、制御指令を、車両100の位置及び向きの少なくとも一方と、今後の走行ルートとを含む指令として生成してもよい。車両100が遠隔制御の要求を受信すると、ECU200の運転制御部212によって運転制御が実現され、この結果、車両100が自動的に走行する。
【0022】
図3Aは、遠隔制御装置300によって実現される車両100の走行方法を示すフローチャートである。遠隔制御部312は、位置推定部314による車両100の位置および向きの推定結果を取得する(ステップS1)。本実施形態では、車両100の位置には、工場のグローバル座標系におけるX,Y,Zの座標が含まれている。車両検出器80の位置は、予め調整されている。遠隔制御部312は、車両検出器80から取得した車両情報から車両100の位置を検出し、検出された車両100の位置から、工場における車両100の位置を取得する。
【0023】
遠隔制御部312は、車両100が次に向かうべき目標位置を決定する(ステップS2)。本実施形態では、目標位置は、工場のグローバル座標系におけるX,Y,Zの座標で表される。遠隔制御装置300の記憶装置340には、車両100が走行すべき経路である理想経路が予め記憶されている。経路は、出発地を示すノード、通過点を示すノード、目的地を示すノード、および、各ノードを結ぶリンクで表されている。遠隔制御部312は、車両100の位置と理想経路とを用いて、次に車両100が向かうべき目標位置を決定する。遠隔制御部312は、車両100の現在地よりも先の理想経路上に目標位置を決定する。
【0024】
遠隔制御部312は、決定した目標位置に向かって車両100を走行させるための走行制御信号を生成する(ステップS3)。本実施形態では、走行制御信号は、車両100の加速度および操舵角をパラメータとして含んでいる。遠隔制御部312は、車両100の位置の推移から車両100の走行速度を算出し、算出した走行速度と予め定められた車両100の目標速度とを比較する。遠隔制御部312は、走行速度が目標速度よりも低い場合には、車両100が加速するように加速度を決定し、走行速度が目標速度よりも高い場合には、車両100が減速するように加速度を決定する。遠隔制御部312は、車両100が理想経路上に位置している場合には、車両100が理想経路上から逸脱しないように操舵角を決定し、車両100が理想経路上に位置していない場合、換言すれば、車両100が理想経路上から逸脱している場合には、車両100が理想経路上に復帰するように操舵角を決定する。
【0025】
遠隔制御部312は、生成した走行制御信号を車両100に対して送信する(ステップS4)。遠隔制御部312は、所定の周期で、車両100の位置の取得、目標位置の決定、走行制御信号の生成、および、走行制御信号の送信などを繰り返す。
【0026】
車両100の運転制御部212は、遠隔制御部312から走行制御信号を受信し(ステップS5)、受信した走行制御信号を用いてアクチュエータ140を制御することにより、走行制御信号に表されている加速度および操舵角で車両100を走行させる(ステップS6)。運転制御部212は、所定の周期で、走行制御信号の受信、および、アクチュエータ140の制御を繰り返す。以上のように、車両100を遠隔制御により走行させることにより、クレーンやコンベア等の搬送設備を用いずに、車両100を移動させることができる。
【0027】
図2に戻り、遠隔制御判断部316は、搬送装置500によって搬送される車両100に対して、遠隔制御による自動走行を開始するか否かを判断する。遠隔制御判断部316は、搬送装置500によって搬送される移動体に対して移動制御を開始するか否かを判断する移動制御判断部の一例である。遠隔制御判断部316による遠隔制御を開始するか否かの判断には、後述するように、搬送装置500による車両100の搬送状況が用いられる。
【0028】
搬送情報取得部318は、車両100の搬送状況を示す搬送状況情報を取得する。「搬送状況情報」とは、車両位置および搬送速度である。「車両位置」とは、搬送装置500の搬送区間における車両100の位置である。車両位置は、車両100の全体の位置であってもよく、車両100の少なくとも一部の位置であってもよい。搬送情報取得部318は、搬送制御装置400から記憶装置440に格納された車両位置VPを取得するか、あるいは、車両検出器80から取得可能であれば車両検出器80からコンベア部510上の車両100の位置を取得することによって、車両位置を取得する。搬送情報取得部318は、車両位置を搬送位置検出器526から直接的に取得してもよい。
【0029】
「搬送速度」とは、搬送装置500による車両100を搬送する速度である。本実施形態では、搬送情報取得部318は、搬送制御装置400から記憶装置440に格納された搬送速度CVを取得する。搬送情報取得部318は、搬送速度を搬送速度検出器524から直接的に取得してもよい。
【0030】
搬送指示部322は、搬送制御装置400に対して、搬送装置500による車両100の搬送に関する指示を出力する。搬送指示部322は、例えば、遠隔制御による車両100の走行に異常があった場合などに、車両100の搬送速度CVを低減させる指示、または搬送装置500による車両100の搬送を停止させる指示を出力する。なお、搬送指示部322は、搬送速度CVの低減や搬送停止の指示のほか、搬送速度CVの上昇や搬送を開始する指示を出力してもよい。
【0031】
報知部324は、遠隔制御による車両100の走行に異常があった場合などに、当該異常の報知を行う。報知部324は、例えば、遠隔制御を実行するための制御指令が車両100に送信されたあとに車両100の自動走行が検出されない場合などに報知を行う。
【0032】
後続指示部326は、遠隔制御による車両100の走行に異常があった場合などに、後続車両が搬送装置500に到着するタイミングを遅らせるための指示を出力する。「後続車両」とは、車両100の次に搬送装置500によって搬送される予定の車両である。後続指示部326は、例えば、遠隔制御を実行するための制御指令が車両100に送信されたあとに車両100の自動走行が検出されない場合や、搬送装置500によって車両100が搬送されない場合などに、後続車両が搬送装置500に到着するタイミングを遅らせる指示を出力する。
【0033】
車両情報取得部328は、搬送装置500による搬送対象の車両100の車両識別情報を、生産管理装置などから取得する。「車両識別情報」とは、車両100を個別に識別可能な種々の情報を意味する。車両識別情報には、例えば、車両識別番号(VIN:Vehicle Identification Number)などの車両100ごとに与えられるID情報や、生産管理に用いられる車両100の製造番号などである。車両識別情報には、さらに、車種・色・形状などの車両100の仕様情報などであってもよい。車両識別情報には、単数の車両100を識別するための情報のみには限らず、例えばロット番号など、複数の車両100を所定の単位ごとに識別するための情報が用いられてもよい。車両識別情報は、例えば、車両100に付された無線移動識別(RF-ID:Radio Frequency-Identification)タグから短距離無線通信などを介して取得することができる。車両識別情報は、車両100に付された二次元コードをカメラ等で読み取ることによって取得されてもよい。
【0034】
図1に戻り、搬送装置500は、コンベア部510と、モータ522と、搬送速度検出器524と、複数の搬送位置検出器526と、搬送制御装置400とを備えている。モータ522は、搬送制御装置400によって制御され、コンベア部510を駆動させる。
【0035】
コンベア部510は、搬送対象である車両100を搬送方向DRに向かって搬送する。本実施形態では、コンベア部510は、環状の無端ベルトを有するベルトコンベアであり、無端ベルト上に接地された状態の車両100を搬送する。コンベア部510は、ベルトコンベアのみには限定されず、ローラコンベア、チェーンコンベアなど、車両100を搬送可能な種々のコンベアであってよい。なお、コンベア部510は、コンベア部510上に車両100があるか否かにかかわらず、連続的に駆動されている。ただし、車両100がコンベア部510上に載置された状態でのみ駆動されてもよい。コンベア部510が搬送する搬送対象は、車両100のみには限らず、例えば、車両100に対する処理を行う作業員、車両100の部品などが車両100とともに搬送されてもよい。また、車両100は、車両100が有するすべての車輪がコンベア部510に接触して搬送される必要はなく、車幅方向のいずれか一方側の車輪のみが接触された状態で搬送されてもよい。コンベア部510は、接地された状態の車両100を搬送する装置のみには限らず、コンベア部510による搬送開始時および搬送終了時に車両100が遠隔制御によって走行可能な状態にされることを前提に、いわゆるリフタなど、車両100が接地されていない状態で搬送される装置であってもよい。
【0036】
搬送速度検出器524は、コンベア部510による車両100の搬送速度を検出する。搬送位置検出器526は、コンベア部510上の車両100の有無を検出する。搬送位置検出器526は、例えば、赤外線センサ、超音波センサ、ミリ波レーダなど、物標の有無を検出可能な種々の検出器である。搬送位置検出器526は、複数であり、複数の搬送位置検出器526が搬送システム600による所定の搬送区間ごとに設置されることによって、搬送区間ごとの車両100の有無を検出することができる。換言すれば、搬送位置検出器526は、搬送装置500の搬送区間における車両100の車両位置を検出することができる。搬送速度検出器524および搬送位置検出器526による検出結果は、搬送制御装置400に出力される。
【0037】
図1には、範囲AR1から範囲AR5までの車両100の搬送区間が模式的に示されている。図1には、車両100の一例である車両100p,100q,100r,100s,100t、ならびに車両検出器80の一例である車両検出器80p,80tが示されている。範囲AR1および範囲AR5は、遠隔制御による車両100の自動走行が実行される搬送区間である。範囲AR1では、前工程から走行を開始した車両100pは、車両検出器80pから取得された車両情報を用いた遠隔制御によって搬送装置500まで走行する。範囲AR5は、搬送システム600から離脱した車両100tが車両検出器80pから取得された車両情報を用いた遠隔制御によって次工程等へと走行する搬送区間である。
【0038】
範囲AR2から範囲AR4までは、搬送装置500による車両100の搬送区間である。範囲AR2は、搬送装置500による車両100の搬送が開始されるエリアである。範囲AR2では、車両100の搬送方法が、遠隔制御による自走搬送から搬送装置500によるコンベア搬送へと切り替えられる。本実施形態では、範囲AR2は、始点SPから予め定められた距離までの範囲として、予め設定されている。この「予め定められた距離」は、例えば、車両検出器80pが車両100qを検出可能な範囲に基づいて決定されている。図1に示すように、遠隔制御によって走行する車両100pは、コンベア部510の一端側の始点SPを乗り越えて範囲AR2に進入すると、コンベア部510によって搬送可能な状態になる。
【0039】
範囲AR3では、搬送装置500によって搬送されている車両100rに対して検査工程などの所定の処理が行われるエリアである。本実施形態では、範囲AR3は、車両検出器80の検出範囲外であり、遠隔制御による車両100rの自動走行は実行されない。ただし、範囲AR3において、車両100rは、遠隔制御装置300と無線通信可能な状態とされてもよく、例えば、車両100や各部の電源オン・オフなど、車両情報を用いない遠隔制御が実行されてもよい。ただし、範囲AR3を車両検出器80の検出範囲内に設定して、範囲ARにおいても車両情報を用いた遠隔制御が実行されてもよい。
【0040】
範囲AR4は、搬送装置500による車両100の搬送が終了されるエリアである。範囲AR4では、車両100は、範囲AR3での処理が完了して、車両検出器80tによって車両100sが検出可能である。すなわち、範囲AR4では、遠隔制御による自走搬送が可能な状態となり、車両100sを走行させてコンベア部510から離脱させることができる。本実施形態では、範囲AR4は、コンベア部510の他端側の終点EPから予め定められた距離までの範囲として、予め設定されている。この「予め定められた距離」は、例えば、車両検出器80tが車両100tを検出可能な範囲に基づいて決定されている。ただし、範囲AR4は、範囲AR3で車両100rに対する処理が完了した位置から終点EPまでの範囲とすることもできる。この場合には、範囲AR4の大きさは、範囲AR3での車両100に対する処理の進行状況に応じて可変である。
【0041】
図3Bは、搬送制御装置400の内部機能構成を示すブロック図である。搬送制御装置400は、中央演算処理装置としてのCPU410と、記憶装置440と、インタフェース回路450と、搬送通信装置490とを備えている。CPU410と、記憶装置440と、インタフェース回路450とは、内部バスを介して、双方向に通信可能に接続されている。インタフェース回路450には、搬送通信装置490が接続されている。搬送通信装置490は、ネットワーク等を介して、遠隔制御装置300や車両100との通信を行う。
【0042】
記憶装置440は、たとえば、RAM、ROM、HDD、およびSSD等である。記憶装置440の読み書き可能な領域には、搬送速度検出器524によって検出された搬送速度CVと、搬送位置検出器526によって検出された車両位置VPとが格納されている。記憶装置440には、本実施形態において提供される機能の少なくとも一部を実現するためのプログラムが格納されている。CPU410が当該プログラムを実行することによって、コンベア制御部412と、搬送状況取得部414として機能する。
【0043】
コンベア制御部412は、モータ522を駆動させて、コンベア部510のオン・オフや搬送速度を制御する。搬送状況取得部414は、搬送状況情報を取得する。具体的には、搬送状況取得部414は、搬送装置500の搬送区間における車両100の位置、すなわち車両位置を、搬送位置検出器526から取得し、記憶装置440に車両位置VPとして格納する。搬送区間における車両100の位置は、車両検出器80を用いて取得されてもよい。搬送状況取得部414は、搬送装置500による車両100の搬送速度CVを、搬送速度検出器524から取得し、記憶装置440に搬送速度CVとして格納する。
【0044】
図4は、本開示の第1実施形態に係る車両100の搬送切替方法を示すフローチャートである。本フローは、前工程による処理が完了した車両100が搬送装置500に向かう走行開始の許可を得ることで開始される。以下では、技術の理解を容易にするために、適宜に図1を参照して説明する。
【0045】
ステップS10では、遠隔制御部312は、図1の範囲AR1で示したように、遠隔制御によって、前工程から出発した車両100pを搬送装置500に向かって自動走行させる。より具体的には、遠隔制御部312は、位置推定部314によって推定された車両100pの位置及び向きを用いて、遠隔制御のための制御指令を生成して車両100pに送信する。
【0046】
ステップS20では、遠隔制御部312は、遠隔制御によって車両100pを自動走行させて、搬送装置500に到着させる。搬送制御装置400は、搬送装置500に到着した車両100p等から車両識別情報を取得して、生産管理上における搬送対象としての車両100pの車両識別情報と適合するかについて照合してもよい。
【0047】
ステップS30では、図1で示したように、遠隔制御部312は、車両検出器80pから取得される車両情報を利用した遠隔制御によって、車両100pを自動走行させる。車両100pは、自動走行によってコンベア部510の始点SPを乗り越えて範囲AR2に進入する。この結果、車両100qは、コンベア部510によって搬送可能な状態になる。なお、車両100pの範囲AR2への到着は、搬送情報取得部318によって、搬送状況として検出される。
【0048】
ステップS40では、遠隔制御判断部316は、車両100pの範囲AR2への到着が検出されると、遠隔制御による車両100qの自動走行を停止すると判断する。遠隔制御による車両100qの自動走行の停止は、遠隔制御装置300による制御指令の生成の停止、あるいは車両100qへの制御指令の送信の停止、車両100qの電源等のオフなどによって実行され得る。搬送装置500による搬送中において、遠隔制御における搬送システム600の電力消費を抑制することができ、また、遠隔制御における搬送システム600および車両100qの処理負担を軽減することができる。また、車両100qの電源オフあるいはエンジンをオフにすることによって、例えば、作業員による車両100qの電気系統やエンジンルーム等の検査を実行することができる。
【0049】
ステップS50では、搬送制御装置400は、モータ522を制御してコンベア部510を駆動させて、車両100qの搬送を開始する。ステップS100では、遠隔制御装置300によって、遠隔制御開始処理が実行される。「遠隔制御開始処理」とは、搬送装置500による搬送中の車両100、あるいは搬送装置500による搬送が完了した状態の車両100に対して遠隔制御による自動走行を開始させる処理を意味する。ステップS200では、図1の範囲AR4で示すように、遠隔制御部312は、車両検出器80tから取得される車両情報を利用した遠隔制御によって、車両100sの自動走行を開始し、車両100sをコンベア部510から離脱させて、本フローを終了する。
【0050】
図5は、遠隔制御開始処理の処理ルーチンを示すフローチャートである。本実施形態では、遠隔制御判断部316は、車両100の遠隔制御を開始すると判断した場合に、さらに、搬送状況の一例である搬送速度CVを用いて、車両100の遠隔制御を開始するタイミングを決定する。
【0051】
ステップS110では、搬送情報取得部318は、現在の搬送装置500の搬送速度を取得する。本実施形態では、搬送情報取得部318は、現在の搬送装置500の搬送速度として、搬送制御装置400に格納された搬送速度CVを取得する。ステップS120では、遠隔制御判断部316は、取得された搬送速度CVが、記憶装置340に格納された基準速度SVより速いか否かを確認する。
【0052】
搬送速度CVが基準速度SV以下であれば(S120:基準速度以下)、遠隔制御判断部316は、処理をステップS122に移行する。ステップS122では、遠隔制御判断部316は、遠隔制御の準備開始位置を、終点EPから予め定められた基準距離の位置に設定する。「準備開始位置」とは、遠隔制御を所定の位置で実行可能にするための準備を開始する位置である。本実施形態では、「所定の位置」とは、範囲AR4内の任意の位置である。「基準距離」とは、搬送速度が基準速度SVである搬送装置500で目標製造時間を達成するために予め設定される準備開始位置である。遠隔制御の準備の例としては、車両100や車両100の各部の電源オン、ECU200や車両検出器80の起動の完了、車両100と遠隔制御装置300とを通信可能な状態にするための準備の完了などが挙げられる。
【0053】
搬送速度CVが基準速度SVより早ければ(S120:基準速度より速い)、遠隔制御判断部316は、処理をステップS124に移行する。ステップS124では、遠隔制御判断部316は、遠隔制御の準備開始位置を、基準距離よりも始点SPに近い上流側の位置に設定する。
【0054】
ステップS130では、車両100は、搬送装置500によって搬送されて、搬送速度ごとの遠隔制御の準備開始位置に到達する。なお、車両100が準備開始位置に到達したことは、範囲AR3に設けられる搬送位置検出器526によって検出することができる。範囲AR3に車両検出器80が設けられる場合は、車両検出器80によって検出されてもよい。ステップS140では、遠隔制御部312および遠隔制御判断部316は、車両100や遠隔制御装置300の各部の制御を開始して、遠隔制御の準備を開始する。
【0055】
ステップS150では、遠隔制御部312は、例えば、図1で示した範囲AR4などの遠隔制御可能なエリアに車両100が到達したか否かを検出する。遠隔制御可能なエリアに車両100が到達したか否かは、図1で示した範囲AR4に設けられた搬送位置検出器526、あるいは車両検出器80tによって取得された車両情報等から検出することができる。範囲AR4の車両100sが検出されれば(S150:YES)、遠隔制御判断部316は、処理をステップS160へと移行する。
【0056】
ステップS160では、遠隔制御部312は、車両検出器80tを用いて車両100sの遠隔制御を実行する。具体的には、遠隔制御装置300は、遠隔制御によって車両100sを自動走行させるための制御指令を生成して車両100sに送信して、車両100sを走行させて搬送装置500から離脱させる。離脱された車両100sは、自動走行により次工程へと払い出される。
【0057】
図6は、搬送速度CVが基準速度SV以下である場合に設定される遠隔制御の準備開始位置を示す説明図である。図6の例では搬送速度CVは、基準速度SVと同じ速度V1で設定されている。基準開始位置は、速度V1で搬送される車両100が範囲AR4に到達したタイミングで遠隔制御を開始できるようにするために、終点EPから基準距離D1の位置に設定されている。
【0058】
図6に車両100R1で示すように、車両100R1が基準距離D1の位置に到達すると、遠隔制御を開始するための準備が開始される。図6の例では、基準距離D1は、範囲AR4を規定する距離と同じである。すなわち、遠隔制御の準備開始位置は、範囲AR3の終端の位置である。遠隔制御を開始するための準備は、範囲AR3の搬送の完了にしたがって開始され、車両100R1が範囲AR4に進入するまでに完了する。
【0059】
図6に車両100S1で示すように、遠隔制御の準備が完了した状態の車両100S1は、車両検出器80tから取得される車両情報を用いた遠隔制御によって走行し、搬送装置500から離脱する。遠隔制御が可能となる範囲AR4に到達するまでに遠隔制御の準備を完了させることにより、範囲AR3での搬送中に遠隔制御を停止させたとしても、遠隔制御による車両100の走行開始タイミングが遅れる不具合を抑制または防止することができる。また、遠隔制御の事前準備を前もって完了させることで、遠隔制御が可能となる範囲AR4を小さくすることができる。
【0060】
図7は、搬送速度CVが基準速度SVより速い場合に設定される遠隔制御の準備開始位置を示す説明図である。図7の例では搬送速度CVは、基準速度SVよりも速い速度V2で設定されている。基準開始位置は、速度V2で搬送される車両100が範囲AR4に到達したタイミングで遠隔制御を開始できるようにするために、終点EPから基準距離D1よりも長い距離D2の位置に設定されている。
【0061】
図7に車両100R2で示すように、車両100R2が距離D2の位置に到達すると、遠隔制御を開始するための準備が開始される。遠隔制御を開始するための準備は、車両100R2が範囲AR4に進入するまでに完了する。範囲AR4に進入した車両100S2は、遠隔制御によって自動走行し、搬送装置500から離脱する。このように、搬送装置500の搬送速度CVが通常よりも速い場合には、通常よりも早いタイミングで遠隔制御の準備を開始する。したがって、搬送速度CVが切り替え可能に構成される場合であっても、遠隔制御による車両100の走行開始タイミングが遅れる不具合を抑制または防止することができる。
【0062】
図5に戻り、ステップS170では、遠隔制御部312の制御指令が送信されたあとに車両100が遠隔制御によって移動したか否かが確認される。すなわち、遠隔制御による車両100の走行に異常があるか否かを検査する。車両100が移動したか否かは、例えば、範囲AR4に設けられた搬送位置検出器526によって検出された車両100の有無あるいは、車両検出器80tによって検出された車両情報等によって検出することができる。車両100の移動が検出された場合には(S170:YES)、遠隔制御部312は、処理をエンドに抜けて、本フローを終了する。車両100の移動が検出されない場合には(S170:NO)、遠隔制御部312は、処理をステップS172へと移行して、各種の異常措置を実行する。なお、ステップS172からステップS176までは任意の順序あるいは同時に実行されてよい。
【0063】
ステップS172では、搬送指示部322は、異常措置の一例として、搬送装置500を停止させる指示を搬送制御装置400に出力する。停止指示を受け付けた搬送制御装置400は、モータ522の停止などによりコンベア部510を停止させて、車両100の搬送を停止する。異常を早期に解消できる場合などには、搬送指示部322は、搬送装置500の停止に代えて、車両100の搬送速度CVを低減させる指示を出力してもよい。
【0064】
ステップS174では、報知部324は、車両100の移動が検出されない旨や異常措置を実行した旨等を報知する。報知部324は、例えば、コンベア部510上で車両100に対して作業を実行する作業員、あるいは当該工程の管理者、あるいは搬送システム600の管理者に対して報知する。
【0065】
ステップS176では、後続指示部326は、後続車両が搬送装置500に到着するタイミングを遅らせる指示を出力する。後続指示部326は、当該指示を、例えば、前工程の工程管理装置、各工程を統括する生産管理装置、遠隔制御によって後続車両を走行させる遠隔制御装置などに対して出力することができる。後続指示部326は、例えば、目標製造時間に対する遅延時間にしたがって後続車両を到着させるタイミングを遅延させる。このように構成することにより、搬送装置500による搬送の異常等から復旧する前に後続車両が搬送装置500に到着することを抑制し、搬送装置500による搬送を待機する仕掛品の増加などを抑制または防止して、生産効率の低下を抑制することができる。
【0066】
ステップS180では、搬送指示部322は、ステップS172からステップS176までの異常措置が完了すると、停止された搬送装置500を作動させる指示を搬送制御装置400に出力する。この結果、車両100の搬送が再開され、処理をエンドに抜けて、本フローを終了する。搬送装置500の停止に代えて、車両100の搬送速度CVを低減させる指示が出力されている場合には、搬送指示部322は、低減された搬送速度CVをもとの搬送速度CVに戻す指示を搬送制御装置400に出力する。この場合に、目標製造時間に対する遅れを解消するために、搬送速度CVを、再開前の搬送速度よりも速い搬送速度に設定してもよい。また、後続指示部326は、遅延させた後続車両の走行を通常の走行に復旧させる。
【0067】
以上、説明したように、本実施形態の遠隔制御装置300は、遠隔制御の停止により運転制御が停止された状態の車両100に対して、搬送装置500による車両100の搬送状況を用いて遠隔制御を開始するか否かを判断する遠隔制御判断部316を備えている。本実施形態の遠隔制御装置300によれば、停止されていた遠隔制御を、搬送装置500による車両100の搬送状況に基づく適正なタイミングで開始させることができ、適切なタイミングで車両100を搬送装置500から離脱させることができる。したがって、搬送装置500からの車両100の離脱が遅れることなどによる生産性の低下や異常の発生を抑制または防止することができる。
【0068】
本実施形態の遠隔制御装置300は、さらに、搬送制御装置400から搬送区間における車両位置VPを取得する搬送情報取得部318を備えている。遠隔制御判断部316は、取得された車両位置VPを搬送状況として用いて、車両100の遠隔制御を開始するか否かを判断する。本実施形態の遠隔制御装置300によれば、搬送区間における車両100の位置に基づく適切なタイミングで車両100を搬送装置500から離脱させることができる。
【0069】
本実施形態の遠隔制御装置300によれば、遠隔制御判断部316は、取得された車両100の位置が搬送区間の終点EPから予め定められた基準距離D1だけ上流側である場合に、遠隔制御を開始すると判断する。したがって、搬送区間の終点EPまでに車両100を搬送装置500から離脱させることができ、搬送装置500から車両100が終点EPを越えて搬送不能な状態で停止する不具合を抑制または防止することができる。
【0070】
本実施形態の遠隔制御装置300は、さらに、搬送装置500による車両100の搬送速度CVを取得する搬送情報取得部318を備えている。遠隔制御判断部316は、さらに、取得された搬送速度CVを搬送状況として用いて、車両100の遠隔制御を開始するタイミングを決定する。したがって、搬送装置500の搬送速度CVが切り替えられる場合であっても、停止されていた遠隔制御を、搬送速度CVに基づく適正なタイミングで開始させることができ、適切なタイミングで車両100を搬送装置500から離脱させることができる。
【0071】
本実施形態の遠隔制御装置300によれば、遠隔制御判断部316は、取得された搬送速度CVが予め定められた基準速度SVより速い場合には、車両100の遠隔制御を開始するタイミングを、搬送速度CVが基準速度SVである場合よりも早いタイミングに決定する。したがって、搬送装置500の搬送速度CVが速められる場合であっても、搬送速度CVに基づく適正なタイミングで開始させることができる。
【0072】
本実施形態の遠隔制御装置300は、さらに、遠隔制御部312によって制御指令が車両100に送信されたあとに車両100の移動が検出されない場合に、搬送装置500による車両100の搬送を停止させる指示を出力する搬送指示部322を備えている。遠隔制御によって車両100が移動できていない場合には、搬送装置500による搬送を停止することにより、異常措置を実行する時間を確保することができる。
【0073】
本実施形態の遠隔制御装置300は、搬送指示部322は、移動が検出されなかった車両100に対する異常措置が完了した場合に、停止された搬送装置500を作動させる指示を出力する。したがって、異常措置からの復旧までを連続的に行うことにより、搬送装置500を異常措置から早期に復旧させることができる。
【0074】
本実施形態の遠隔制御装置300は、さらに、遠隔制御部312によって制御指令が車両100に送信されたあとに車両100の移動が検出されない場合に報知を行う報知部324を備えている。報知により搬送装置500の異常措置を促すことができ、搬送装置500の早期の復旧を促すことができる。
【0075】
本実施形態の遠隔制御装置300は、さらに、車両検出器80によって検出された車両100の3次元点群データを車両情報として用いて、車両100の位置を推定する位置推定部314を備えている。遠隔制御部312は、3次元点群データを用いて推定された車両100の位置を用いて、遠隔制御によって車両100を移動させる。3次元点群データを用いることにより、車両100の位置を高い精度で推定することができる。
【0076】
B.第2実施形態:
図8は、本開示の第2実施形態に係る搬送方法における遠隔制御開始処理の処理ルーチンを示すフローチャートである。本実施形態の遠隔制御開始処理は、第1実施形態とは、遠隔制御開始処理のステップS170からステップS180までの処理を備えていない点で相違する。具体的には、上記第1実施形態では、遠隔制御部312の制御指令が送信されたあとに車両100の移動が検出されない場合に異常措置が実行される例を示した。これに対して、本実施形態のように、これらの異常措置が実行されないようにされてもよい。ただし、搬送装置500の停止、報知部324による報知、後続車両の到着タイミングを遅らせる指示の出力などの異常措置のいずれか一つ、あるいはこれらの異常措置を任意に組み合わせた異常措置が実行されてもよい。
【0077】
また、本実施形態の遠隔制御開始処理は、上記第1実施形態で示した遠隔制御開始処理のステップS110からステップS124までの処理を備えていない。上記第1実施形態では、遠隔制御を開始するか否かの判断に、搬送位置と搬送速度との双方の搬送状況が用いられる例を示した。これに対して、本実施形態のように、遠隔制御判断部316は、搬送速度を用いず、取得された車両100の搬送位置のみを用いてもよい。また、この場合において、本実施形態のように、車両位置の少なくとも一部が搬送区間の終点EPを越えたか否かを搬送状況として用いて、車両100の遠隔制御を開始するか否かを判断してもよい。
【0078】
本実施形態の遠隔制御開始処理では、第1実施形態で示した遠隔制御開始処理のステップS150に代えて、ステップS150bを備えている。ステップS130,S140では、第1実施形態と同様に、搬送装置500の遠隔制御の準備開始位置に車両100が到達すると遠隔制御の準備が開始される。ステップS150bでは、遠隔制御の準備が開始された車両100の少なくとも一部が終点EPを越えるまで待機する。車両100が終点EPを越えた場合に(S150b:YES)、遠隔制御部312は、処理をステップS160へと移行し、車両検出器80を用いた遠隔制御によって車両100の自動走行を開始する。
【0079】
図9は、第2実施形態に係る搬送方法の遠隔制御開始処理における遠隔制御の準備開始位置を示す説明図である。図9に示すように、車両100S3が搬送装置500によって搬送方向DRに向かって搬送されると、例えば、車両100S3の前部FAなど、車両100S3の一部が搬送装置500の搬送区間の終点EPを越える。前部FAが終点EPを越えたことが車両検出器80tあるいは搬送位置検出器526によって検出されると、遠隔制御判断部316は、遠隔制御を開始すると判断する。遠隔制御部312は、判断結果を受け付けると、車両検出器80tを用いて車両100S3の遠隔制御を実行し、搬送装置500から車両100S3を離脱させる。
【0080】
以上のように、遠隔制御判断部316は、取得された車両位置の少なくとも一部が搬送区間の終点EPを越えた場合に遠隔制御を開始すると判断する。搬送区間の終点EPを越えたか否かという容易な方法により、車両100が搬送開始位置に到達したか否かを判定することができる。また、終点EPを越えたタイミングで遠隔制御を開始することにより、搬送装置500からの離脱が容易となる。また、終点EPを越えたタイミングで遠隔制御を開始することができるので、範囲AR4を縮小あるいは省略することができる。
【0081】
C.第3実施形態:
図10は、第3実施形態に係る車両100におけるECU200cの機能構成を示すブロック図である。本実施形態において、搬送システム600は、遠隔制御装置300を備えていない点で第1実施形態とは異なる。具体的には、遠隔制御装置300に代えて、車両100に設けられるECU200cが搬送方法切替装置としての機能を備える点で、第1実施形態とは相違する。搬送システム600のその他の構成については、特に説明しない限り第1実施形態と同じである。
【0082】
図10に示すように、ECU200cは、第1実施形態で示したECU200とは、CPU210に代えてCPU210cを備え、記憶装置220に代えて記憶装置220cを備える点で相違する。具体的には、記憶装置220cには、第1実施形態で示したCPU210の機能に加え、さらに、第1実施形態で示した遠隔制御装置300が備えていた位置推定部314、遠隔制御判断部316、搬送情報取得部318、搬送指示部322、報知部324、後続指示部326、ならびに車両情報取得部328に対応する機能を実現するためのプログラムが格納されている。この結果、CPU210cは、さらに、これらの機能に対応する位置推定部214、運転制御判断部216、搬送情報取得部218、搬送指示部222、報知部224、後続指示部226、ならびに車両情報取得部228として機能する。また、記憶装置220cは、遠隔制御装置300に格納されていた基準速度SVを格納している。本実施形態では、運転制御判断部216は、搬送装置500によって搬送される車両100に対して、運転制御による自動走行を開始するか否かを判断する。運転制御判断部216は、搬送装置500によって搬送される移動体に対して移動制御を開始するか否かを判断する移動制御判断部の一例である。また、運転制御判断部216は、運転制御による自動走行を開始すると判断された場合に、運転制御によって車両100を搬送区間から自動走行させて離脱させるための制御指令を生成して運転制御部212に出力する指令生成部として機能する。このように構成された車両100によれば、車両100が搬送方法切替装置の機能を備えることにより、遠隔制御装置300などの車両100とは別体の装置を用いることなく、停止された運転制御を、搬送装置による車両100の搬送状況に基づく適正なタイミングで開始させることができる。
【0083】
図11は、本実施形態の車両100の走行方法を示すフローチャートである。位置推定部214は、車両検出器80から出力される車両情報を用いて車両100の位置や向きを取得する(ステップS210)。運転制御部212は、車両100が次に向かうべき目標位置を決定する(ステップS220)。本実施形態では、ECU200cの記憶装置220cには、理想経路が予め記憶されている。運転制御部212は、決定した目標位置に向かって車両100を走行させるための走行制御信号を生成する(ステップS230)。運転制御部212は、生成した走行制御信号を用いてアクチュエータ140を制御することにより、走行制御信号に表されている加速度および操舵角で車両100を走行させる(ステップS240)。運転制御部212は、所定の周期で、車両100の位置や向きの取得、目標位置の決定、走行制御信号の生成、および、アクチュエータ140の制御を繰り返す。本実施形態の車両100によれば、遠隔制御装置300により車両100を遠隔制御しなくても、車両100を自律制御で走行させることができる。
【0084】
D.他の実施形態:
(D1)上記各実施形態では、搬送装置500による車両100の搬送速度、あるいは車両100の搬送位置が搬送状況として用いられる例を示した。これに対して、搬送状況には、搬送速度や搬送位置に代えて、車両100の搬送を開始してからの搬送時間が用いられてもよい。
【0085】
(D2)上記第1実施形態では、遠隔制御判断部316および運転制御判断部216は、取得された車両100の位置が搬送区間の終点EPから予め定められた距離D2だけ上流側である場合に、遠隔制御を開始すると判断する。これに対して、遠隔制御判断部316および運転制御判断部216は、車両100の位置が搬送区間の始点SPから予め定められた距離だけ下流側である場合に、遠隔制御を開始すると判断してもよい。この場合であっても同様の効果を得ることができる。
【0086】
(D3)上記第1実施形態では、遠隔制御を開始するか否かの判断に、搬送位置と搬送速度との双方が用いられる例を示した。これに対して、搬送位置を取得せず、搬送速度のみを取得してもよい。この場合には、取得された搬送速度を用いて遠隔制御の準備を開始することができる。例えば、取得された搬送速度で車両100が搬送される場合には、車両100の搬送が開始されてから当該速度に応じた所定の時間が経過した時点で遠隔制御の準備を開始することができる。この場合でも第1実施形態と同様に、車両100が搬送装置500から適切なタイミングで離脱することができ、搬送システム600での生産性の低下や以上の発生を抑制または防止することができる。
【0087】
また、搬送速度を取得せず、搬送位置のみを取得してもよい。この場合には、例えば、搬送速度にかかわらず、搬送された車両100が終点EPから予め定められた距離の位置に到達した時点、あるいは、車両100が始点SPから予め定められた距離だけ搬送された時点で遠隔制御の準備を開始することができる。この場合でも第1実施形態と同様に、車両100が搬送装置500から適切なタイミングで離脱することができ、搬送システム600での生産性の低下や以上の発生を抑制または防止することができる。
【0088】
(D4)上記第1実施形態では、搬送速度CVが基準速度SVよりも遅い場合には、搬送速度CVが基準速度SVである場合と同じタイミングで遠隔制御の準備が開始される例を示した。これに対して、搬送速度CVが基準速度SVより遅い場合には、搬送速度CVが基準速度SVである場合よりも遅いタイミングで遠隔制御の準備が開始されてもよい。
【0089】
(D5)上記実施形態では、車両検出器80がLiDARである例を示した。これに対して、車両検出器80には、LiDARに代えて、またはそれとともに車両100とは異なる場所に設けられる外部カメラを用いることができる。この場合には、車両検出器80は、車両情報として、車両100の画像を取得する。位置推定部314および位置推定部214は、車両100の位置および車両100の向きを、外部カメラによって取得された撮像画像を用いて推定することができる。車両100の位置は、例えば、撮像画像から検出された車両100の外形を用いて、画像座標系における車両100の測位点の座標を算出し、算出された座標をグローバル座標系における座標に変換することによって取得することができる。車両100の向きは、例えば、オプティカルフロー法を利用して、撮像画像のフレーム間における車両100の特徴点の位置変化から算出された車両100の移動ベクトルの向きに基づいて推定することができる。車両100の向きは、例えば、車両100に搭載されたヨーレートセンサ等の出力結果を用いて算出されてもよい。
【0090】
撮像画像に含まれる車両100の外形は、例えば、人工知能を活用した検出モデルに撮影画像を入力することで検出できる。検出モデルとしては、例えば、セマンティックセグメンテーションとインスタンスセグメンテーションとのいずれかを実現するように学習された学習済みの機械学習モデルが挙げられる。この機械学習モデルとしては、例えば、学習用データセットを用いた教師あり学習によって学習された畳み込みニューラルネットワーク(以下、CNN)を用いることができる。学習用データセットは、例えば、車両100を含む複数の訓練画像と、訓練画像における各領域が車両100を示す領域と車両100以外を示す領域とのいずれであるかを示す正解ラベルとを有している。CNNの学習時には、バックプロパゲーション(誤差逆伝播法)により、検出モデルによる出力結果と正解ラベルとの誤差を低減するように、CNNのパラメータが更新されることが好ましい。
【0091】
(D6)上記各実施形態では、車両100が乗用車、トラック、バス、ならびに工事用車両などである例を示した。ただし、車両100は、種々の移動体とされてもよい。「移動体」は、移動し得る物体を意味し、例えば、車両や電動垂直離着陸機(いわゆる空飛ぶ自動車)である。車両は、車輪によって走行する車両であっても無限軌道によって走行する車両であってもよく、例えば、二輪車、四輪車、戦車などであってもよい。車両は、電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)、ガソリン自動車、ハイブリッド自動車、ならびに燃料電池自動車を含む。移動体が車両以外である場合には、本開示における「車両」「車」との表現を、適宜に「移動体」に置き換えることができ、「走行」との表現を、適宜に「移動」に置き換えることができる。
【0092】
(D7)車両100は、無人運転により移動可能な構成を備えていればよい。例えば、以下に述べる構成を備えるプラットフォームの形態であってもよい。具体的には、車両100は、無人運転により「走る」、「曲がる」、「止まる」の3つの機能を発揮するために、少なくとも、ECU200と、駆動装置と、操舵装置と、制動装置とを備えていればよい。無人運転のために車両100が外部から情報を取得する場合に、車両100は、さらに、車両通信装置190を備えていればよい。すなわち、無人運転により移動可能な車両100は、運転席やダッシュボードなどの内装部品の少なくとも一部が装着されていなくてもよく、バンパやフェンダーなどの外装部品の少なくとも一部が装着されていなくてもよく、ボディシェルが装着されていなくてもよい。この場合、車両100が工場から出荷されるまでの間に、ボディシェル等の残りの部品が車両100に装着されてもよいし、ボディシェル等の残りの部品が車両100に装着されていない状態で、車両100が工場から出荷された後にボディシェル等の残りの部品が車両100に装着されてもよい。各部品は、車両100の上側、下側、前側、後側、右側あるいは左側といった任意の方向から装着されてよく、それぞれ同じ方向から装着されてもよいし、それぞれ異なる方向から装着されてもよい。なお、プラットフォームの形態に対しても、第1実施形態における車両100と同様にして位置決定がなされ得る。
【0093】
(D8)車両100は、任意の製造方法によって製造されてよい。例えば、車両100は、複数のモジュールを組み合わせることによって製造されてもよい。モジュールは、車両100の部位や機能に応じて纏められた複数の部品によって構成されるユニットを意味する。例えば、車両100のプラットフォームは、プラットフォームの前部を構成する前方モジュールと、プラットフォームの中央部を構成する中央モジュールと、プラットフォームの後部を構成する後方モジュールとを組み合わせることで製造されてもよい。なお、プラットフォームを構成するモジュールの数は、3つに限られず、2つ以下や4つ以上であってもよい。また、プラットフォームを構成する部品に加えて、あるいは、これに代えて、車両100のうちプラットフォームとは異なる部分を構成する部品がモジュール化されてもよい。また、各種モジュールは、バンパやグリルといった任意の外装部品や、シートやコンソールといった任意の内装部品を含んでいてもよい。また、車両100に限らず、任意の態様の移動体が、複数のモジュールを組み合わせることによって製造されてもよい。こうしたモジュールは、例えば、複数の部品を溶接や固定具等によって接合することで製造されてもよいし、モジュールを構成する部品の少なくとも一部を鋳造によって一の部品として一体的に成型することで製造されてもよい。一の部品、特に比較的大型の部品を一体的に成型する成型手法は、ギガキャストやメガキャストとも呼ばれる。例えば、上記の前方モジュールや中央モジュールや後方モジュールは、ギガキャストを用いて製造されてもよい。
【0094】
(D9)上記第1実施形態では、遠隔制御装置300が車両100の位置および向きの取得から走行制御信号の生成までの処理を実行する例を示した。これに対して、車両100の位置および向きの取得から走行制御信号の生成までの処理の少なくとも一部を車両100が実行してもよい。例えば、以下の(1)~(3)の形態であってもよい。
【0095】
(1)遠隔制御装置300は、車両100の位置および向きを取得し、車両100が次に向かうべき目標位置を決定し、取得された位置に表されている車両100の現在地から目標位置までの経路を生成してもよい。遠隔制御装置300は、現在地と目的地との間の目標位置までの経路を生成してもよいし、目的地までの経路を生成してもよい。遠隔制御装置300は、生成された経路を車両100に対して送信してもよい。車両100は、遠隔制御装置300から受信した経路上を車両100が走行するように走行制御信号を生成し、生成された走行制御信号を用いてアクチュエータ140を制御してもよい。
【0096】
(2)遠隔制御装置300は、車両100の位置および向きを取得し、取得した位置および向きを車両100に対して送信してもよい。車両100は、車両100が次に向かうべき目標位置を決定し、受信した位置に表されている車両100の現在地から目標位置までの経路を生成し、生成した経路上を車両100が走行するように走行制御信号を生成し、生成した走行制御信号を用いてアクチュエータ140を制御してもよい。
【0097】
(3)上記(1)~(2)の形態において、車両100に内部センサが搭載されており、経路の生成と走行制御信号の生成との少なくとも一方に、内部センサから出力される検出結果が用いられてもよい。内部センサには、例えば、カメラ、LiDAR、ミリ波レーダ、超音波センサ、GPSセンサ、加速度センサ、ジャイロセンサなどが含まれ得る。例えば、上記(1)の形態において、遠隔制御装置300は、内部センサの検出結果を取得し、経路を生成する際に内部センサの検出結果を経路に反映してもよい。上記(1)の形態において、車両100は、内部センサの検出結果を取得し、走行制御信号を生成する際に内部センサの検出結果を走行制御信号に反映してもよい。上記(2)の形態において、車両100は、内部センサの検出結果を取得し、経路を生成する際に内部センサの検出結果を経路に反映してもよい。上記(2)の形態において、車両100は、内部センサの検出結果を取得し、走行制御信号を生成する際に内部センサの検出結果を走行制御信号に反映してもよい。
【0098】
(D10)上記第2実施形態において、車両100に内部センサが搭載されており、経路の生成と走行制御信号の生成との少なくとも一方に、内部センサから出力される検出結果が用いられてもよい。例えば、車両100は、内部センサの検出結果を取得し、経路を生成する際に内部センサの検出結果を経路に反映してもよい。車両100は、内部センサの検出結果を取得し、走行制御信号を生成する際に内部センサの検出結果を走行制御信号に反映してもよい。
【0099】
(D11)上記第2実施形態では、車両100は、車両検出器80の検出結果を用いて車両100の位置および向きを取得している。これに対して、車両100に内部センサが搭載されており、車両100は、内部センサの検出結果を用いて位置および向きを取得し、車両100が次に向かうべき目標位置を決定し、取得した位置および向きに表されている車両100の現在地から目標位置までの経路を生成し、生成した経路を走行するための走行制御信号を生成し、生成した走行制御信号を用いてアクチュエータ140を制御してもよい。この場合、車両100は、車両検出器80の検出結果を一切用いずに走行することができる。なお、車両100は、車両100の外部から目標到着時刻や渋滞情報を取得し、経路と走行制御信号の少なくとも一方に目標到着時刻や渋滞情報を反映させてもよい。また、搬送システム600の構成や遠隔制御装置300の機能構成がすべて車両100に設けられてもよい。すなわち、車両100に備えられる少なくとも一の装置を待機状態から作動状態へと切り替える処理など、本開示で示された搬送システム600や遠隔制御装置300によって実現される処理は、車両100単独によって実現されてもよい。
【0100】
(D12)上記第1実施形態では、遠隔制御装置300は、車両100に対して送信する走行制御信号を自動で生成している。これに対して、遠隔制御装置300は、車両100の外部に位置しているオペレータの操作に従って、車両100に対して送信する走行制御信号を生成してもよい。例えば、車両検出器80から出力される画像を表示するディスプレイ、車両100を遠隔操作するためのステアリング、アクセルペダル、ブレーキペダル、および、有線通信あるいは無線通信により遠隔制御装置300と通信するための通信装置を備える操縦装置をオペレータが操作し、遠隔制御装置300は、操縦装置に加えられた操作に応じた走行制御信号を生成してもよい。
【0101】
(D13)無人運転による車両の走行を利用して車両を搬送させることを「自走搬送」とも呼ぶ。また、自走搬送を実現するための構成を、「車両遠隔制御自律走行搬送システム」とも呼ぶ。また、自走搬送を利用して車両を生産する生産方式のことを「自走生産」とも呼ぶ。自走生産では、例えば、車両を製造する工場において、車両の搬送の少なくとも一部が、自走搬送によって実現される。
【0102】
(D14)上記各実施形態で示した搬送制御装置400によって実現されるコンベア制御部412などの機能の一部または全部は、遠隔制御装置300によって実現されてよい。すなわち、搬送システム600は、遠隔制御装置300単体によって構成されてもよい。
【0103】
本開示に記載の制御及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【0104】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0105】
80,80p,80t…車両検出器、100,100R1,100R2,100S1,100S2,100S3,100p,100q,100r,100s,100t…車両、140…アクチュエータ、190…車両通信装置、200,200c…ECU、210,210c…CPU、212…運転制御部、214…位置推定部、216…運転制御判断部、218…搬送情報取得部、220,220c…記憶装置、222…搬送指示部、224…報知部、226…後続指示部、228…車両情報取得部、230…インタフェース回路、300…遠隔制御装置、310…CPU、312…遠隔制御部、314…位置推定部、316…遠隔制御判断部、318…搬送情報取得部、322…搬送指示部、324…報知部、326…後続指示部、328…車両情報取得部、340…記憶装置、350…インタフェース回路、390…遠隔通信装置、400…搬送制御装置、410…CPU、412…コンベア制御部、414…搬送状況取得部、440…記憶装置、450…インタフェース回路、490…搬送通信装置、500…搬送装置、510…コンベア部、522…モータ、524…搬送速度検出器、526…搬送位置検出器、600…搬送システム、CV…搬送速度、EP…終点、FA…前部、SP…始点、SR…走行路、SV…基準速度、VP…車両位置
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11