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  • 特開-防振ゴム組成物および防振ゴム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025039000
(43)【公開日】2025-03-21
(54)【発明の名称】防振ゴム組成物および防振ゴム
(51)【国際特許分類】
   C08L 7/00 20060101AFI20250313BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20250313BHJP
   C08K 5/37 20060101ALI20250313BHJP
   C08K 5/18 20060101ALI20250313BHJP
   C08K 3/06 20060101ALI20250313BHJP
   C08K 5/40 20060101ALI20250313BHJP
   F16F 1/36 20060101ALI20250313BHJP
【FI】
C08L7/00
C08L9/00
C08K5/37
C08K5/18
C08K3/06
C08K5/40
F16F1/36 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023145715
(22)【出願日】2023-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】000158840
【氏名又は名称】鬼怒川ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100205682
【弁理士】
【氏名又は名称】高嶋 一彰
(72)【発明者】
【氏名】原田 倫宏
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 樹里亜
【テーマコード(参考)】
3J059
4J002
【Fターム(参考)】
3J059AB01
3J059AB11
3J059AD06
3J059BA41
3J059CB09
3J059EA06
3J059EA17
3J059GA01
4J002AC011
4J002AC032
4J002AC062
4J002DA048
4J002EN077
4J002EV086
4J002EV169
4J002FD148
4J002FD156
4J002FD157
4J002FD159
4J002GM00
4J002GN00
(57)【要約】
【課題】防振特性と耐熱性,耐熱へたり性とを所望どおり両立し易くすることに貢献可能な技術を提供する。
【解決手段】天然ゴム(NR)および/またはイソプレンゴム(IR)とブタジエンゴム(BR)を主ゴム成分とする防振ゴム組成物において、全ゴム成分を100質量部とした場合に、2-メルカプトベンゾイミダゾール亜鉛塩を1.8~5質量部含有およびN,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミンを0.2~1.1質量部含有し、かつ加硫剤としてイオウを0.2~0.7質量部含有およびサルファードナー化合物としてテトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィドを2~7質量部含有するものとする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ゴム(NR)および/またはイソプレンゴム(IR)とブタジエンゴム(BR)を主ゴム成分とする防振ゴム組成物であって、
全ゴム成分を100質量部とした場合に、2-メルカプトベンゾイミダゾール亜鉛塩を1.8~5質量部含有およびN,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミンを0.2~1.1質量部含有し、かつイオウを0.2~0.7質量部含有およびテトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィドを2~7質量部含有することを特徴とする防振ゴム組成物。
【請求項2】
天然ゴム(NR)および/またはイソプレンゴム(IR)とブタジエンゴム(BR)を主ゴム成分とする防振ゴム組成物であって、
全ゴム成分を100質量部とした場合に、2-メルカプトベンゾイミダゾール亜鉛塩を1.8~5質量部含有およびN,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミンを0.2~1.1質量部含有し、かつイオウを0.2~0.7質量部含有および2-(4-モルホリノジチオ)ベンゾチアゾールを1.2~3質量部含有することを特徴とする防振ゴム組成物。
【請求項3】
該主ゴム成分は、天然ゴム(NR)とブタジエンゴム(BR)の割合においてNR/BR比で90/10~60/40とした天然ゴム(NR)とブタジエンゴムのブレンドゴムであり、
該ブタジエンゴムは、100℃におけるムーニー粘度(ML1+4)が50~75であることを特徴とする請求項1または2記載の防振ゴム組成物。
【請求項4】
請求項1または2記載の防振ゴム組成物が、金具表面上の接着剤層を介して該金具表面に加硫接着されて、該金具と該防振ゴム組成物による加硫ゴムとが一体的に形成されていることを特徴とする防振ゴム。
【請求項5】
請求項3記載の防振ゴム組成物が、金具表面上の接着剤層を介して該金具表面に加硫接着されて、該金具と該防振ゴム組成物による加硫ゴムとが一体的に形成されていることを特徴とする防振ゴム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車等の車両のブッシュ等の防振ゴムに用いられ、振動に対する防振特性に優れ、さらに、耐熱性(耐熱老化性),耐熱へたり性等に優れた防振ゴム組成物、および該防振ゴム組成物を使用し耐熱接着性に優れた防振ゴムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の各種車両では、例えば、搭乗者の快適性を向上させるために、振動の発生源となる部位に様々な防振ゴムを配置し、振動伝達を遮断・抑制して、車内への振動及び騒音の侵入を低減したり、周辺環境への騒音の拡散を低減することが行われている。
【0003】
防振ゴムの防振特性を向上、すなわち、振動伝達の遮断のためには、動的バネ定数(Kd)を小さくすることが効果的であることが知られている。しかしながら、防振ゴムは、重量物を支えるなど一定の静的な力に耐え得ることが求められるため、静的バネ特性(Ks)はある程度大きくしなければならない。従って、動的バネ定数(Kd)と静的バネ定数(Ks)との比である動倍率(=Kd/Ks)の値は、小さいこと(すなわち、低動倍率であること)が望まれる。さらに、防振ゴムは、所望の材料物性、例えば繰り返しの振動による変形に対して高い耐久性を保有していることが望まれる。
【0004】
このような要求性能(低動倍率と高耐久性)に対応するため、車両用防振ゴムにおいては、ゴム成分として、天然ゴム(NR)及び/またはイソプレンゴム(IR)とブタジエンゴム(BR)をブレンドしたジエン系ブレンドゴム(以下、単にジエン系ゴムと適宜称する)が多く用いられている。また、防振ゴムは、例えば熱過酷地での使用や熱源から受ける熱に耐え得るように、例えば耐熱性(耐熱老化性),耐熱へたり性等も要求される。しかしながら、天然ゴム(NR)及び/またはイソプレンゴム(IR)とブタジエンゴム(BR)のジエン系ゴムは、耐熱性が劣ることが知られている。
【0005】
この問題に対して、上記ジエン系ゴムの耐熱性を向上すべく、各種老化防止剤や加硫系(加硫促進剤およぼ加硫剤)の各種の提案がなされている。例えば、老化防止剤の配合割合として、ベンゾイミダゾール系老化防止剤のベンゾイミダゾール基1モルに対してアミン系老化防止剤の配合量が0.5~3モルの範囲内となるように設定し、老化防止剤の配合量の合計がゴム成分100重量部に対して1~10重量部の範囲内となるように設定したジエン系ゴム組成物(特許文献1)が提案されている。また、2-メルカプトベンゾイミダゾール亜鉛塩と4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミンを規定量含有する天然ゴムとブタジエンゴムをブレンドした防振ゴム組成物(特許文献2)や、末端に炭素-炭素二重結合を有し且つそのα位にカルボニル基を有する化合物と、イミダゾール系老化防止剤とを含む防振ゴム組成物(特許文献3)なども提案されている。
【0006】
加硫系(加硫促進剤およぼ加硫剤)としては、イオウを少量含有若しくは該イオウを含有せずにテトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)や4,4’-ジチオジモルホリンなどのサルファードナー化合物(イオウ供与体)を用いて架橋(加硫)させることで、耐熱性を向上させる技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002-194140号公報
【特許文献2】特開平11-116733号公報
【特許文献3】特開2015-025060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記提案でも記されているように、所望の防振特性(低動倍率性等)を得るためにゴム成分中にブタジエンゴムを含有させることはよく知られたことであるが、老化防止剤を含有させると動倍率が増大することが多く、使用する老化防止剤の種類と量によっては、防振特性と耐熱性,耐熱へたり性とを所望どおり両立することが困難となる場合があった。
【0009】
例えば、特許文献1では、耐熱性と低動倍率の両立のために、ゴム成分として末端変性ブタジエンゴムを含有したものを用い、イミダゾール系老化防止剤として2-メルカプトベンズイミダゾール亜鉛塩、アミン系老化防止剤としてN,N’-ジ-β-ナフチル-p-フェニレンジアミンを用いることが記載されている。老化防止剤の配合割合としては、ベンゾイミダゾール系老化防止剤のベンゾイミダゾール基1モルに対してアミン系老化防止剤の配合量を0.5~3モルの範囲内に設定することも記載されている。
【0010】
ここで2-メルカプトベンズイミダゾール亜鉛塩は、下記式
【0011】
【化1】
【0012】
で示される1分子中にイミダゾール基が2基、分子量397.85の化合物である。
【0013】
N,N’-ジ-β-ナフチル-p-フェニレンジアミンは、下記式
【0014】
【化2】
【0015】
で示される分子量360.45の化合物である。
【0016】
そして、特許文献1の場合、ベンゾイミダゾール系老化防止剤のベンゾイミダゾール基1モルに対してアミン系老化防止剤を0.5~3モル配合するものとされていることから、2-メルカプトベンズイミダゾール亜鉛塩(イミダゾール基2モル)1質量部に対するN,N’-ジ-β-ナフチル-p-フェニレンジアミンの配合量は、[0.5×360.45/(397.85/2)=]0.906質量部~[3×360.45/(397.85/2)=]5.436質量部の範囲内となる。これを言い換えると、N,N’-ジ-β-ナフチル-p-フェニレンジアミン1質量部に対しては、2-メルカプトベンズイミダゾール亜鉛塩(イミダゾール基2モル)は0.184質量部~1.104質量部の範囲内で配合することとなる。
【0017】
しかしながら、本発明者らが詳細に検討したところ、N,N’-ジ-β-ナフチル-p-フェニレンジアミンは、防振ゴム組成物中に一定量以上含有すると動倍率を増大させてしまうことがあり、耐熱性と防振特性(動倍率)を両立するには、さらなる改善が必要な場合があった。なお、特許文献1では、N,N’-ジ-β-ナフチル-p-フェニレンジアミンの含有量を比較的少く設定(例えば1質量部以下に設定)した場合、かつ2-メルカプトベンズイミダゾール亜鉛塩の含有量を比較的多く設定(例えば1質量部以上に設定)した場合の耐熱性の改善効果については、何ら開示及び示唆すらされていない。
【0018】
特許文献2では、低動倍率および耐へたり性改善のために、シス-1,4結合の含量が97%以上のブタジエンゴムを含有し、耐熱性向上のための老化防止剤として4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミンと2-メルカプトベンゾイミダゾールの亜鉛塩、又はそのメチル化誘導体を含有したものが記載されている。
【0019】
しかしながら、本発明者らが詳細に検討したところ、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミンは、防振ゴム組成物中に一定量以上含有すると動倍率を増大させてしまう上に、それぞれの含有量によっては、長期的な耐熱性が不十分となる場合があった。
【0020】
特許文献3では、ジエン系ゴムに対し、α位にカルボニル基を有した化合物とイミダゾール系老化防止剤を含有させた防振ゴム組成物が記載されている。
【0021】
しかしながら、本発明者らが検討したところ、α位にカルボニル基を有する化合物は、該特許文献3に記載されているように減衰性に大きく寄与し得るものの、防振ゴム組成物に添加することより加硫速度が速まり、スコーチ安定性が大きく低下する(スコーチタイムが短くなる)傾向となる場合があった。また、防振ゴム組成物の保存中にスコーチ(早期加硫)を起こす場合や、射出成型において射出中に加硫が進行して成形加工が困難となる場合があった。さらに、α位にカルボニル基を有する化合物は、該特許文献3に記載の如く減衰性向上には大きく寄与し得るものの、動倍率は大きく増大するため、低動倍率性が不十分となる場合があった。
【0022】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、防振特性と耐熱性,耐熱へたり性とを所望どおり両立し易くすることに貢献可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明者らは、上記目的を達成する防振ゴムゴム組成物を得るために鋭意検討を重ねた。
【0024】
その結果、低動倍率性と耐久性に優れた天然ゴム(NR)および/またはイソプレンゴム(IR)とブタジエンゴム(BR)を主ゴム成分とする防振ゴム組成物において、全ゴム成分を100質量部とした場合に、2-メルカプトベンゾイミダゾール亜鉛塩を1.8~5質量部含有およびN,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミンを0.2~1.1質量含有し、かつ加硫剤としてイオウを0.2~0.7質量部含有および特定のサルファードナー(イオウ供与体)となる化合物を規定量含有することにより、上記目的を達成する防振ゴム組成物および防振ゴムが得られることを見出し、発明を完成するに至った。
【0025】
即ち、本発明の防振ゴム組成物および防振ゴムの一態様としては、以下の[1]~[4]が挙げられる。
【0026】
[1]天然ゴム(NR)および/またはイソプレンゴム(IR)とブタジエンゴム(BR)を主ゴム成分とする防振ゴム組成物において、全ゴム成分を100質量部とした場合に、2-メルカプトベンゾイミダゾール亜鉛塩を1.8~5質量部含有およびN,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミンを0.2~1.1質量部含有し、かつイオウを0.2~0.7質量部含有およびテトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィドを2~7質量部含有することを特徴とする防振ゴム組成物である。
【0027】
[2]天然ゴム(NR)および/またはイソプレンゴム(IR)とブタジエンゴム(BR)を主ゴム成分とする防振ゴム組成物において、全ゴム成分を100質量部とした場合に、2-メルカプトベンゾイミダゾール亜鉛塩を1.8~5質量部含有およびN,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミンを0.2~1.1質量部含有し、かつイオウを0.2~0.7質量部含有および2-(4-モルホリノジチオ)ベンゾチアゾールを1~3質量部含有することを特徴とする防振ゴム組成物である。
【0028】
[3]前記[1]または[2]は、該主ゴム成分が、天然ゴム(NR)とブタジエンゴム(BR)の割合においてNR/BR比で90/10~60/40とした天然ゴム(NR)とブタジエンゴムのブレンドゴムであり、該ブタジエンゴムが、100℃におけるムーニー粘度(ML1+4)が50~75である防振ゴム組成物とすることが好ましい。
【0029】
[4]前記[1]~[3]の何れかに記載の防振ゴム組成物が、金具表面上に設けた接着剤層を介して該金具表面に加硫接着されて、該金具と該防振ゴム組成物による加硫ゴムとが一体的に形成されていることを特徴とする防振ゴムである。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、防振特性と耐熱性,耐熱へたり性とを所望どおり両立し易くすることに貢献可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】実施例1~13及び比較例1~15の各防振ゴム組成物を用いて成るテストピース1の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施に関連する事項について詳細に説明する。
【0033】
上述したように、本発明の防振ゴム組成物は、天然ゴム(NR)および/またはイソプレンゴム(IR)とブタジエンゴム(BR)を主ゴム成分とする防振ゴム組成物において、全ゴム成分を100質量部とした場合に、2-メルカプトベンゾイミダゾール亜鉛塩を1.8~5質量部含有およびN,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミンを0.2~1.1質量部含有し、加硫剤としてイオウを0.2~0.7質量部含有およびサルファードナー化合物としてテトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィドを2~7質量部含有するものである。
【0034】
このような構成によれば、動倍率の増大を抑制しつつ、所望の耐熱性(耐熱老化性),耐熱へたり性等を有した防振ゴムを製造するための防振ゴム組成物を提供することが可能となる。
【0035】
また、前記サルファードナー化合物としてテトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィドを含有する替わりに、2-(4-モルホリノジチオ)ベンゾチアゾールを含有(1~3質量部含有)するものとしてもよく、これにより動倍率の増大を抑制しつつ、所望の耐熱性,耐熱へたり性等を有し、更に長期間の熱環境下に曝されても振動特性(バネ定数)変化が小さい防振ゴムを製造するための防振ゴム組成物を提供することが可能となる。
【0036】
また、前記防振ゴム組成物は、金具表面上に設けた接着剤層を介して、該金具表面に加硫接着してもよく、これにより該金具と該防振ゴム組成物による加硫ゴムとが一体的に形成された耐熱接着性に優れる防振ゴムを提供することが可能となる。
【0037】
次に、本実施形態の防振ゴム組成物や防振ゴム(ゴム成形品)に適用可能な各成分について説明する。なお、以降全ての成分(資材)の含有量を示す場合に単に質量部と記載することがあるが、それぞれ全ゴム成分を100質量部とした場合の成分の質量部であることを意味するものとする。
【0038】
[ゴム成分]
本実施形態に係る防振ゴム組成物においては、ゴム成分中の主ゴム成分として、天然ゴム(NR)および/またはイソプレンゴム(IR)とブタジエンゴム(BR)が用いられている。この主ゴム成分とは、天然ゴム(NR)および/またはイソプレンゴム(IR)とブタジエンゴム(BR)の合計量が全ゴム成分中の90質量%以上であることを意味する。
【0039】
ゴム成分においては、例えばゴム強度の安定性や防振ゴムの耐久性等の観点から、天然ゴムが含まれることが好ましい。天然ゴムとしては、特に制限はなく、例えば防振ゴムに用いられている通常の天然ゴムを適用することが挙げられる。具体的には、例えば、シートゴム(クレープを含む)では、RSS(RIBBED SMOKED SHEET)、WHITE CREPES、PALE CREPES、ESTATE BROWN CREPES、COMP CREPES、THIN BROWN CRAPES(RIMILLS)、THICH BLANCKET CRAPES(AMBERS)、FLAT BARK CREPES、PURE SMOKED BRANKET CRAPESの全ての等級などが挙げられ、またブロックゴムでは、SMR(STANDARD MALAYSIAN RUBBER)、SIR(STANDARD INDONESIAN RUBBER)、STR(STANDARD THAI RUBBER)、SSR(STANDARD SINGAPOREAN RUBBER)、SCR(STANDARD CEYLON RUBBER)、SVR(STANDARD VIETNAMESE RUBBER)などが挙げられる。
【0040】
また、ゴム成分には、低動倍率性、耐久性の観点から、ブタジエンゴム(BR)が含まれることが好ましい。即ち、天然ゴム(NR)とブタジエンゴム(BR)のブレンドしたジエン系ゴムであることが好ましい。天然ゴム(NR)とブタジエンゴム(BR)の配合割合は、適宜設定することが可能であり、その一例として、天然ゴム(NR)/ブタジエンゴム(BR)比で90/10~50/50(質量比)の範囲内、好ましくは90/10~60/40の範囲内とすることが挙げられる。このような範疇の場合、耐久性と低動倍率性に優れた防振ゴムを得ることが可能となる。天然ゴム(NR)/ブタジエンゴム(BR)において、天然ゴム(NR)の割合が高くなるに連れて、加硫ゴム強度が高い値で安定性に優れる上、耐久性ばらつきが少なくなる。一方、ブタジエンゴム(BR)の割合が高くなるに連れて、より低動倍率性に優れた防振ゴム組成物が得られ易くなる。
【0041】
本実施形態で適用可能なブタジエンゴム(BR)としては、特に制限はなく、例えば防振ゴムに用いられている通常のブタジエンゴムを適用することが挙げられる。繰り返し変形に対する耐久性を重視する場合には、シス1,4-結合量は高いほど好ましく、一例として、シス1,4-結合量が90%以上であるブタジエンゴム(高シスBR)が好適なものとして挙げられ、シス1,4-結合量が93%以上である高シスBRがより好適なものとして挙げられる。
【0042】
また、同じ化学組成のブタジエンゴム(BR)では、ムーニー粘度(ML1+4)が高いほど分子量が高くなる傾向があり、耐久性が良好になるため、例えば100℃におけるムーニー粘度(ML1+4)が50以上のものを適用することが好ましい。一方で、ムーニー粘度(ML1+4)が高くなるに従い、ゴムの流動性が低下する傾向にあり、ムーニー粘度(ML1+4)があまりにも高いとゴム材料組成物の混練加工性、成形加工性が低下し易くなるおそれがある。そのため、100℃におけるムーニー粘度(ML1+4)が75以下のものを適用することが好ましく、より好ましくはムーニー粘度(ML1+4)が65以下のものを適用することが挙げられる。
【0043】
このようなブタジエンゴムの具体例としては、BR730,BR54,BR740(以上、それぞれENEOSマテリアル社製)、ウベポール390L(宇部興産社製)、BUNA CB21,CB22,CB1221(以上、それぞれアランセオ社製)などが挙げられる。一方で、低動倍率性がより必要となる場合には、例えば末端をN‐メチルピロリドン基に変性した末端変性ブタジエンゴム(例えば、日本ゼオン社製のNipol 1250H)が好適に使用可能なものとして挙げられる。
【0044】
イソプレンゴム(IR)は、天然ゴム(NR)に類似した性能を示し、異物等の不純物が少なく、天然ゴム(NR)の代替となり得ることも多い。一方、ゴム強度の安定性や耐久性の安定性等の観点では、天然ゴム(NR)の方が、良好な結果が得られている場合が多く、好ましく用いることが可能となる。
【0045】
その他、加工性改善などの目的で、例えばスチレンブタジエンゴム(SBR)やEPDMなどのジエン系ゴム以外の他のゴム成分を適宜含有(例えば10質量部以下の範疇で少量含有)しても特に問題はない。
【0046】
[老化防止剤]
本実施形態のゴム成形品に用いる防振ゴム組成物は、老化防止剤として、2-メルカプトベンゾイミダゾール亜鉛塩とN,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミンを必須成分として含有する。
【0047】
2-メルカプトベンゾイミダゾール亜鉛塩は、2次老化防止剤として知られているものであり、1次老化防止剤である各種アミン系老化防止剤やフェノール系老化防止剤と併用して、一般的には1質量部以下で用いられる場合が多い。
【0048】
一方、本実施形態では、2-メルカプトベンゾイミダゾール亜鉛塩は、1.8質量部~5質量部の範囲内で含有するものとする。この2-メルカプトベンゾイミダゾール亜鉛塩の含有量を1.8質量部より少なくした場合、長期間における耐熱性の改善効果が十分には得られなくなるおそれがある。一方、該2-メルカプトベンゾイミダゾール亜鉛塩の含有量を5質量部より多くした場合、更なる耐熱性の改善効果が得られるようなことはなく、寧ろ耐圧縮永久ひずみ率が大きくなり易い傾向となる。2-メルカプトベンゾイミダゾール亜鉛塩のより好適な含有量としては、1.9質量部~4質量部の範囲内とすることが挙げられる。
【0049】
類似の老化防止剤であるベンズイミダゾール系老化防止剤として、2-メルカプトベンゾイミダゾールや2-メルカプトメチルベンズイミダゾールが知られている。しかしながら、本実施形態の如く、天然ゴム(NR)および/またはイソプレンゴム(IR)とブタジエンゴム(BR)を主ゴム成分とし、加硫剤としてイオウを0.2~0.7質量部含有およびサルファードナー(イオウ供与体)となる加硫促進剤を含有する防振ゴム組成物においては、該2-メルカプトベンゾイミダゾールは、2-メルカプトベンゾイミダゾール亜鉛塩と比較すると、長期的な耐熱性の改善効果が小さく、また、耐圧縮永久ひずみ率を大きくさせてしまうおそれがある。また、該2-メルカプトメチルベンズイミダゾールは、耐熱性の観点では、2-メルカプトベンゾイミダゾール亜鉛塩と同様に大きな改善効果が得られる可能性はあるが、耐圧縮永久ひずみ率が大きくなり易い傾向があり、防振ゴムとしては適していない。
【0050】
本実施形態のゴム成形品に用いる防振ゴム組成物では、アミン系老化防止剤として、N,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミンを0.2~1.1質量部含有するものとする。このN,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミンは、加熱による揮発性が少なく、長期に渡って加硫ゴム中に残存し易いことが知られており、長期の耐熱性の観点から好適に使用可能である。また、該N,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミンと2-メルカプトベンゾイミダゾール亜鉛塩とを併用する場合には、その併用効果により、たとえ該N,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミンの含有量が少量であっても、長期の耐熱性の改善効果が十分得られる可能性がある。
【0051】
一方で、該N,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミンの含有量が多くなり過ぎると、防振ゴムの動倍率を増大させてしまうおそれがあるため、前記のように2-メルカプトベンゾイミダゾール亜鉛塩を併用(1.8質量部~5質量部含有)する場合には、該N,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミンの含有量が1.1質量部を超えても、更なる耐熱性改善効果は得られない。
【0052】
なお、アミン系老化防止剤を単に特許文献1に示すような配合割合で含有した防振ゴム組成物を用いて作成した防振ゴムにおいては、殆どの場合、動倍率が増大し易く、さらに長期間の熱環境下(例えば100℃,500時間以上の熱被ばく)に対する耐熱性の改善効果が不十分となる場合が多い。
【0053】
また、特許文献3の如く、α位にカルボニル基を有する老化防止剤は、反応性老化防止剤として知られるもので、長期的な耐熱性には優れるが、該α位にカルボニル基を有する老化防止剤を含有した防振ゴム組成物を用いて作成した防振ゴムでは、動倍率が増大し易いため、好ましくない。さらに、耐圧縮永久歪み性を低下させる場合が多いことから、本実施形態では含有しないことが好ましい。
【0054】
なお、ジエン系ゴムは、耐オゾン性が劣ることが知られている。そこで、耐オゾン性を付与することを目的としている場合には、例えばN-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミンおよび/またはN-フェニル-N’-イソプロピル-p-フェニレンジアミンを含有(例えば、2質量部以上5質量部以下の範囲内で含有)することが好ましい。
【0055】
[イオウおよびサルファードナー化合物(イオウ供与体)]
本実施形態の防振ゴム組成物は、加硫剤としてイオウを0.2~0.7質量部の範囲内で含有(好ましくは0.3~0.6質量部)および特定のサルファードナー(イオウ供与体)化合物を特定量含有する。
【0056】
ここで、加硫促進剤の中には、低イオウ(イオウ含有量が少ない)ゴム組成物に対して加硫促進剤効果とサルファードナー(架橋剤)効果の両方を併せ持つ化合物があることが知られており、加硫促進剤として分類されているものも存在しているが、本実施形態に係る説明ではサルファードナー化合物と記す場合がある。
【0057】
一般的に、ゴム組成物の耐熱性を良好にする技術として、イオウを含有せずにテトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)などのサルファードナー化合物で架橋(加硫)させる方法(無イオウ加硫方法)が知られているが、本発明者が詳細に検討したところ、該無イオウ加硫方法で得られたゴム組成物は、長期的な耐熱性の観点においては、十分な耐熱性を持続できるとは言えない場合が多いことが判った。この理由はおそらく、該無イオウ加硫方法で加硫させたゴム組成物は、たとえ架橋形態として耐熱架橋形態に至っているとしても、サルファードナー化合物由来の未反応成分や反応残渣が多く存在してしまうため、長期的な耐熱性が低下するものと思われる。
【0058】
一方、本実施形態の防振ゴム組成物のようにイオウを少量(0.2~0.7質量部)含有することにより、サルファードナー化合物由来の反応残渣や未反応残渣を減らすことができるため、長期的な耐熱性の向上ができると思われる。
【0059】
本実施形態に用いるイオウは、特に限定されるものではないが、例えばゴム用配合資材として公知のものを使用することが挙げられる。具体例としては、粉末イオウ、沈降イオウ、粉末イオウや沈降イオウの表面処理した表面処理イオウ、不溶性イオウなどが挙げられる。
【0060】
サルファードナー化合物としては、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド、テトラベンジルチウラムジスルフィド、2-(4’-モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール、4,4’-ジチオジモルホリン、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィドなどを使用することが可能である。この中でもテトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド、テトラベンジルチウラムジスルフィド、2-(4’-モルホリノジチオ)ベンゾチアゾールが、好ましく使用される。特に、耐熱性と耐圧縮永久ひずみ率、耐熱接着性の観点から、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィドが、より好ましく使用される。テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィドの含有量としては、2~7質量部の範囲内に設定することが挙げられる。
【0061】
テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィドを使用した場合、他のチウラム系サルファードナー化合物を使用した場合と比較して、長期的な耐熱性に優れる傾向となる。この理由はおそらく、サルファードナー化合物由来の未反応成分や反応残渣の反応活性が低く抑えられるため、たとえ防振ゴム組成物が長期に渡って熱環境下に曝されても、不必要な反応が起きにくいためだと思われる。
【0062】
ここで、一般的なゴムの熱劣化のメカニズムとしては、空気中の酸素の存在下で生じる自動酸化(高温自動酸化による劣化)によって説明される場合が多い。防振ゴムの場合においても、表面に露出した部位(以下、単に露出部位と適宜称する)のゴムの劣化を抑制することは極めて重要ではある。
【0063】
しかしながら、ゴムブッシュのように金属に覆われている部位(以下、単に非露出部位と適宜称する)や肉厚部位(例えば、ゴム厚みが4mm以上の部位)を有しているような防振ゴムの場合、該非露出部位のゴムや該肉厚部位の内部のゴムにおいては、たとえ空気に触れていない部分であっても、それぞれの特性変化は振動特性変化として影響することになる。このため、一般的な防振ゴムの場合、露出部位のゴムが、長期的な熱老化により、酸化劣化や表面硬化が進行し易いおそれがあった。
【0064】
そこで、本実施形態の防振ゴムでは、長期的な熱被ばくによる振動特性変化をより小さくすることを目的とする場合、サルファードナー化合物として、2-(4’-モルホリノジチオ)ベンゾチアゾールを使用することとした。このようにサルファードナー化合物として2-(4’-モルホリノジチオ)ベンゾチアゾールを使用した防振ゴム組成物によれば、防振ゴムの内部部位のゴムの硬度変化が小さく、露出部位や非露出部位のゴム表面の硬化の程度と内部(例えば肉厚部位の内部)のゴムの硬度変化の少なさとのバランスにより、振動特性変化が抑制されることとなる。
【0065】
本実施形態の防振ゴム組成物では、2-(4-モルホリノジチオ)ベンゾチアゾールの含有量は、1~3質量部の範囲内、好ましくは1.2~3質量部とする。この2-(4-モルホリノジチオ)ベンゾチアゾールの含有量が3質量部を超えると、耐熱接着性が低下するおそれがあり好ましくない。
【0066】
また、加硫剤としては、m-フェニレンジマレイミドも、イオウおよびサルファードナー化合物と併用することもできる。
【0067】
[加硫促進剤]
また、本実施形態の防振ゴム組成物には、例えばイオウ加硫ゴム用配合資材として使用されている公知の加硫促進剤を、適宜併用することが好ましい。加硫促進剤は、特に限定されるものでは無く、具体例としては、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系化合物や、2-メルカプトベンゾチアゾール、2,2’-ジベンゾチアゾリルジスルフィド、2-メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩、2-メルカプトベンゾチアゾールのシクロヘキシルアミン塩などのチアゾール系化合物や、ジフェニルグアニジン、トリフェニルグアニジン、ジオルソニトリルグアニジン、オルソニトリルバイグアナイド、ジフェニルグアニジンフタレート等のグアニジン化合物や、テトラメチルチウラムモノスルフィド等のチウラム系化合物などを、挙げることができる。
【0068】
さらに、加硫速度の調整やスコーチタイムの遅延を目的として、スコーチ防止剤であるN-シクロヘキシルチオフタルイミド、N-フェニル-N-(トリクロロメチルチオ)ベンゼンスルホンアミドなどを、好ましく使用することができる。
【0069】
[カーボンブラック]
本実施形態の防振ゴム組成物は、カーボンブラックを適宜使用することが可能であり、その一例として公知のものを使用することが挙げられるが、特に限定されるものではない。具体例としては、FT級、SRF級、GPF級、FEF級、MAF級、HAF級、ISAF級、SAF級等のカーボンブラックを挙げることができる。この中でも、ゴム強度と耐久性および低動倍率のバランスがよいことから、FEF級、MAF級、HAF級のカーボンブラックが好ましく用いられる。また、例えば自動車の車両に対する支持性能と低動倍率性の観点からは、SRF級でストラクチャーが発達したSRF-HS級のカーボンブラックが、好ましく使用される。
【0070】
[充填剤]
本実施形態の防振ゴム組成物には、硬さ等の調整や加工性の改善を目的として、充填剤を含有させてもよい。例えば、湿式シリカ、乾式シリカ、コロイダルシリカ等のシリカ、炭酸カルシウム、クレー、タルク等の通常のゴム組成物に使用されている充填剤を、適宜使用することができる。これらの充填剤は、単独で使用もしくは二種以上併せて使用することができる。
【0071】
[プロセスオイル]
本実施形態の防振ゴム組成物には、硬さ等の調整や加工性の改善を目的として、プロセスオイルを含有させてもよい。プロセスオイルの一例としては、ナフテン系オイル、パラフィン系オイル、アロマ系オイル等が挙げられる。これらのプロセスオイルは、単独で使用もしくは二種以上併せて使用することができる。プロセスオイルの含有量は、適宜設定することが可能であるが、例えば0~20質量部の範囲内とすることが好ましい。プロセスオイルの含有量が20質量部を超えると、長期的な耐熱性が低下してしまうおそれがあり、好ましくない。
【0072】
[加硫助剤]
本実施形態の防振ゴム組成物には、酸化亜鉛(ZnO)あるいは複合亜鉛華の加硫助剤を適宜含有させることが好ましく、さらに、その他の加硫助剤(例えばステアリン酸、ステアリン酸亜鉛等)と共に適宜含有させることが好ましい。
【0073】
ここで、複合亜鉛華においては、表面に酸化亜鉛(亜鉛華)の層を有したものであって、コア成分として内部に無機金属塩を含有するものなどが知られており、その一例としては、井上石灰工業社製のMETA-Z Lシリーズ(META-Z L40、L50、L60)などが挙げられる。
【0074】
酸化亜鉛若しくは複合亜鉛華の含有量は、適宜設定することが可能であるが、例えばゴム成分100質量部に対して、好ましくは3質量部以上15質量部以下とすることが挙げられる。
【0075】
ステアリン酸若しくはステアリン酸亜鉛の含有量は、適宜設定することが可能であるが、例えばゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部~2質量部とすることが挙げられる。
【0076】
[加工助剤]
本実施形態の防振ゴム組成物には、加工性の改善を目的として、加工助剤を含有することができる。加工助剤としては、通常のゴムの加工に使用されている化合物を、適宜適用することができる。その一例としては、滑剤、粘着付与剤、分散剤、相溶化剤、均質化剤等の種々の添加剤が、挙げられる。
【0077】
〔防振ゴム組成物の調製方法〕
本実施形態の防振ゴム組成物は、その必須成分である上記記載のゴム成分、老化防止剤成分、加硫剤成分(および必要に応じて上記列記したその他の資材)を、例えば加圧ニーダー,バンバリーミキサー、インターミックスミキサー、オープンロール等の混練機を用いて混練することにより、調製することができる。
【0078】
本実施形態の防振ゴムは、上述した防振ゴム組成物を加硫して得られるものであるが、該防振ゴム組成物は、適宜加硫(例えば、145~170℃の加硫温度にて3~30分間で加硫)することにより、防振ゴム用の弾性体となる。
【0079】
即ち、本実施形態の防振ゴム組成物を加硫して得た弾性体からなる防振ゴムは、長期的な耐熱性に優れ、圧縮永久ひずみ率が小さく、動倍率が低いことから振動遮断性に優れたものとなる。このため、自動車等の車両や各種機械等において、厳しい熱環境対応および振動源からの振動遮断性能が要求されるような防振ゴムとして、好適に用いることができる。
【実施例0080】
以下、本実施形態の実施例(実施例1~13)を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0081】
≪防振ゴム組成物の作成≫
表1~表4に示す割合で各種資材を配合して混練することにより、実施例1~13および比較例1~15の防振ゴム組成物を調製した。なお、前記混練は、まず、加硫剤およびサルファードナー化合物と加硫促進剤以外の資材を、バンバリーミキサーを用いて5分間混練し、混練物を得た。次いで、該混練物において、オープンロールを用いて冷却(オープンロール内の冷却水温度を約20℃に設定して冷却)しながら、加硫剤およびサルファードナー化合物と加硫促進剤を添加して5分間混練することにより、それぞれの防振ゴム組成物を作成した。
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
【0084】
【表3】
【0085】
【表4】
【0086】
なお、表1~表4に記載した各種資材は、次の通りである。
・天然ゴム:SVR CV60
・ブタジエンゴム-1:シス1,4-結合量96%、100℃におけるムーニー粘度(ML1+4)63、ARLANXEO株式会社製「BUNA-CB21」
・ブタジエンゴム-2:シス1,4-結合量96%、100℃におけるムーニー粘度(ML1+4)44、株式会社ENEOSマテリアル製「BR-01」
・ブタジエンゴム-3:シス1,4-結合量35%、100℃におけるムーニー粘度(ML1+4)59、日本ゼオン社製「BR1250H」
・老化防止剤-1:N,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン、大内振興株式社製「ノクラックWhite」
・老化防止剤-2:2-メルカプトベンゾイミダゾール亜鉛塩、大内振興株式社製「ノクラックMBZ」
・老化防止剤-3:(N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-P-フェニレンジアミン)、大内振興社製「ノクラック6C」
・老化防止剤-4:2-メルカプトベンズイミダゾール、大内振興株式社製「ノクラックMB」
・老化防止剤-5:2-メルカプトメチルベンズイミダゾール、大内振興株式社製「ノクラックMMB」
・老化防止剤-6:N-フェニル-N’-(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピル)-p-フェニレンジアミン、大内振興株式社製「ノクラックG-1」
・加硫剤:硫黄、鶴見化学工業社製「金華印微粉硫黄200MESH」
・サルファードナー化合物-1:テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド、大内振興株式社製「ノクセラーTOT-N」
・サルファードナー化合物-2:2-(4-モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール、大内振興株式社製「ノクセラーMDB-P」
・サルファードナー化合物-3:テトラメチルチウラムジスルフィド、大内振興株式社製「ノクセラーTT-P」
・サルファードナー化合物-4:4,4’-ジチオジモルホリン、大内振興株式社製「バルノックR」
・加硫促進剤-1:(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)、大内振興化学株式会社製「ノクセラーCZ-G」
・加硫促進剤-2:1,3-ジフェニルグアニジン、大内振興化学株式会社製「ノクセラーD-P」
・カーボンブラック-1:窒素吸着比表面積47m/g(MAF級)、日鉄カーボン株式会社製「ニテロン#10」
・カーボンブラック-2:窒素吸着比表面積22m/g(SRF-HS級)、旭カーボン株式会社製「旭#52」
・パラフィンワックス:(ワックス)日本精蝋株式会社「オゾエース0100」
・複合亜鉛華:井上石灰工業社製「META-Z-L60」
・ステアリン酸:日本油脂株式会社製「ステアリン酸つばき」
・ナフテン系オイル:ENEOS株式会社製「クリセフオイルH56」。
【0087】
≪評価サンプル(加硫ゴム)の作成≫
〔引張り特性及び熱老化後特性測定用の加硫ゴムシートの作製〕
表1~表4に示す実施例1~13及び比較例1~15の各防振ゴム組成物において、厚みが略2mmとなるキャビティの2mmシート用金型を用いたコンプレッション成形により、160℃にて加硫時間10分加硫成型を行って、厚み2mmの加硫ゴムシート(以下、単に評価用ゴムシートと適宜称する)を得た。
【0088】
〔圧縮永久ひずみ試験用加硫ゴム試験片の作成〕
表1~表4に示す実施例1~13及び比較例1~15の各防振ゴム組成物を、直径29.0mm×高さ12.5mmの円柱状の試験片作成用金型を用いたコンプレッション成形により、160℃にて加硫時間15分加硫成型を行って、直径29.0mm×高さ12.5mmの円柱状でタイプAデュロメータ硬さ及び圧縮永久ひずみ試験用の加硫ゴム試験片(以下、単にゴム試験片と適宜称する)を得た。
【0089】
〔防振ゴムのテストピースの作製〕
図1に示す防振ゴムのテストピース1を作製するにあたり、まず、片面の中心にボルト3が立設された50mm×50mmの鉄製金具2を二つ準備し、各金具2のボルト3が立設されていない面をショットブラスト処理し粗面化した。次に、各金具2の、ボルト3が立設されていない面それぞれに、下塗り接着剤としてケムロック205(ロード・ファー・イースト社製)を塗布し、80℃雰囲気下にて20分間乾燥させ、下塗り接着剤層(厚み10μm)を形成した。この下塗り接着層を形成した各金具2を室温まで冷却後、続いて、上記下塗り接着剤層の表面に、上塗り接着剤としてケムロック6125(ロード・ファー・イースト社製)を塗布し、80℃雰囲気下にて20分間乾燥させ、上塗り接着剤層(厚み10μm)を形成した。そして、成形用金型内に、各金具2を配置(各金具2の上塗り接着層が対向した姿勢となるように配置)し、さらに、インジェクション成形機を用いて、成形用金型内における各金具2間に未加硫ゴム(防振ゴム組成物)を充填し、加硫(160℃×15分間)して、図1に示すような40mm×40mm×30mmの直方体に形成した金具2付き角型防振ゴムのテストピース1を作製した。
【0090】
≪防振ゴム組成物(加硫ゴム)の試験方法、評価方法および判定≫
表1~表4に記載の実施例1~13及び比較例1~15の防振ゴム組成物(加硫ゴム)の試験方法、評価方法は、以下の通りである。なお、各評価結果及び判定結果は、後記の表5~表8に合わせて示す。
【0091】
〔初期物性:タイプAデュロメータ硬さ〕
表1~表4に記載の実施例1~13及び比較例1~15の各防振ゴム組成物用いて得た各評価用ゴムシートにおいて、それぞれ4枚ずつ作成し積層して積層シート(すなわち、4層構造で厚み約8mmの積層シート)を得た。そして、各積層シートにおいて、JIS K6253-3(2012年)に準拠してタイプAデュロメータを用いて、硬さ(HA)を測定した。
【0092】
〔初期物性:引張特性〕
表1~表4に記載の実施例1~13及び比較例1~15の各防振ゴム組成物用いて得た各評価用ゴムシートにおいて、JIS3号ダンベルで打ち抜き、JIS K 6251に準拠して、切断時伸び(EB)、切断時引張強さ(TB)を測定した。
【0093】
〔圧縮永久ひずみ率〕
表1~表4に記載の実施例1~13及び比較例1~15の各防振ゴム組成物用いて得た各ゴム試験片において、JIS K6262(2013年)に準拠して、治具を用い、高さ方向に25.0%圧縮した状態(高さ9.38mm)で、雰囲気温度100℃のギヤー式老化試験機(強制循環形熱老化試験機)中に22時間放置した後、治具ごと取り出して速やかに該ゴム試験片を解放した。この解放後、23℃の雰囲気下で木製の台上に30分放置して該ゴム試験片の高さ(h1)を測定して、圧縮永久ひずみCS(%)を算出した。
【0094】
圧縮永久ひずみCSの算出方法(計算式)は、JIS K6262(2013年)に準拠するものであり、下記(1)式に示す通りである。
【0095】
CS(%)=((h0-h1)/(h0-hs))×100 ……(1)
なお、この(1)式において、h0はゴム試験片の圧縮前の厚さ(mm)、h1は圧縮装置から取り外した後のゴム試験片の厚さ(mm)、hsは使用したスペーサーの厚さ(mm)を示すものとする。
【0096】
この(1)式で算出した圧縮永久ひずみCSの値が小さい程、圧縮永久ひずみ率が小さく、耐熱へたり性が良いことを意味する。そこで、評価判断として、上記圧縮永久歪みCS(%)が30%未満の場合を「◎」、該CS(%)が30%以上35%未満の場合を「〇」、該CS(%)が35%以上の場合を「×」と判定した。
【0097】
〔耐熱老化性-1〕
表1~表4に記載の実施例1~13及び比較例1~15の各防振ゴム組成物用いて得た各評価用ゴムシートにおいて、まずJIS3号ダンベルで打ち抜き、JIS K 6257に従い、雰囲気温度100℃のギヤー式老化試験機(強制循環形熱老化試験機)中に種々の保持時間(72時間、168時間、240時間、336時間、500時間、1000時間、1500時間)で保持することにより、熱老化試験を行った。
【0098】
次に、該熱老化試験後の硬さ(HA)、切断時伸び(EB)、切断時引張強さ(TB)を、前記項目〔初期物性〕と同様の方法で測定した。
【0099】
そして、該熱老化試験前後それぞれの硬さ(HA)の差により、AHA(Duro-A)を求めた。また、該熱老化試験前後それぞれの切断時伸び(EB),切断時引張強さ(TB)により、変化率(該熱老化試験前の値に対する該老化試験後の値の変化率)AcEB(%),AcTB(%)を求めた。
【0100】
なお、評価判断として、熱老化試験の保持時間(熱老化時間)が1000時間におけるAcEB(%),AcTB(%)の両方がともに50%以下である場合を「〇」と判定し、その「〇」と判定した中で、さらに該保持時間が1500時間におけるAcEB(%)が60%以下の場合には「◎」と判定した。また、該保持時間が1000時間におけるAcEB(%),AcTB(%)の両方若しくは一方が50%を超えても、AcEB(%),AcTB(%)の両方が60%以下である場合には、耐熱性ゴムとして使用できる可能性はあるため「△」と判定した。また、該保持時間が1000時間におけるAcEB(%)が60%を超える場合を「×」と判定した。
【0101】
〔初期振動特性:静的特性Ks,動的特性Kd100,動倍率〕
実施例1~13及び比較例1~15の各防振ゴム組成物用いて得た各テストピース1において、まず、JISK 6385(2012年)に準拠して、各ボルト3を介して軸方向荷重を加えて軸方向(ボルト3軸方向)に5mm圧縮(変位速度10mm/分で圧縮)させ、一旦、減荷(変位速度10mm/分で減荷)するという圧縮・減荷工程を、2回繰り返した。この後、再度、5mm圧縮(すなわち3回目の加荷過程)させることにより、該圧縮時(3回目の加荷過程)における荷重-撓み特性を測定し、それに基づいて荷重‐撓み曲線を作成した。そして、該荷重‐撓み曲線から、撓みが2mmと4mmになったときの荷重値P1,P2(単位は、N)をそれぞれ読み取り、該荷重値P1,P2を関係式「Ks=(P2-P1)/2」に適宜代入することによって、各々の静的ばね定数Ks(N/mm)を算出した。
【0102】
また、これとは別に、各テストピース1について、前記同様に各ボルト3を介して、軸方向に3mm圧縮させた状態にし、その圧縮状態のテストピース1の一方のボルト3側(例えば図示下方)から、該3mm圧縮した位置を中心とする振幅±0.05mmの定変位調和圧縮振動を、周波数100Hzにおいて加える試験を行い、JIS-K-6385-2012の「防振ゴムの試験方法」における「非共振方法(a)」に準拠して、100Hz時の動的ばね定数Kd100(N/mm)を求めた。そして、その求めた動的ばね定数(Kd100)と前記算出した静的ばね定数(Ks)とから、動倍率(=Kd100/Ks)を算出した。
【0103】
動倍率は、前述の如く使用するポリマー、カーボンブラックの種類と含有量でも、大きく変わる値である。動倍率としては、小さい方がよいが、補強性などとのバランスが必要となる。そこで、評価判断においては、実施例1の防振ゴム組成物を用いた場合の動倍率(1.56)を判定基準値して定義し、その判定基準値よりも+8%以下の動倍率(すなわち、1.68以下)の場合を「〇」と判定し、該判定基準値よりも+8%超の動倍率(すなわち、1.68超)の場合を「×」と判定した。
【0104】
〔耐熱老化性-2〕
実施例1~13及び比較例1~15の各防振ゴム組成物用いて得た各テストピース1において、まず、雰囲気温度100℃のギヤー式老化試験機(強制循環形熱老化試験機)中に種々の保持時間(72時間、168時間、240時間、336時間、500時間、1000時間、1500時間)で保持することにより、熱老化試験を行った。
【0105】
次に、該熱老化試験後(ギヤー式老化試験機からテストピース1を取り出し後)、テストピース1を雰囲気温度23℃にて16時間以上3日以内の間で放置してから、前記項目〔初期振動特性〕と同様の方法で静的バネ定数(Ks)を測定した。
【0106】
そして、該熱老化試験前後それぞれの静的バネ定数(Ks)の差により、変化率(該熱老化試験前の値に対する該熱老化試験後の値の変化率)AcKs(%)を求めた。
【0107】
なお、評価判断として、熱老化試験の保持時間(熱老化時間)が72時間~1500時間に至るまでのAcKs(%)が全て+25以下の場合を「◎」と判定した。また、該「◎」ではないが、該保持時間が1000時間におけるAcKs(%)が+30以下であって、かつ該保持時間が1500時間におけるAcKs(%)が+40以下の場合を「〇」と判定した。また、該保持時間が1000時間におけるAcKs(%)が+30を超える、および/または該保持時間が1500時間におけるAcKs(%)が+40を超える場合を「×」と判定した。
【0108】
〔耐熱接着性試験-1,2〕
耐熱接着性試験-1では、実施例1~13及び比較例1~15の各防振ゴム組成物を用いて得た各テストピース1について、まず、前記同様に各ボルト3を介して、50%伸長(図1では図示上下方向に伸長)させた状態で、雰囲気温度100℃のギヤー式老化試験機(強制循環形熱老化試験機)中にて60分間保持して、各金具2の接着剥がれの有無を目視で観察した。その後、更に10℃ずつ昇温させた雰囲気でそれぞれ30分間保持して、各雰囲気での各金具2の接着剥がれの有無の目視確認を繰り返し、最後に200℃雰囲気で30分間保持して、各金具2の接着剥がれの有無確認を行い、試験を終了した。
【0109】
この耐熱接着性試験-1では、各金具2の接着剥がれを防止できた温度が高い程、耐熱接着性が良好であると判断した。表5~表8には、接着剥がれを防止できた温度のうち最高温度を記載した。例えば、160℃では接着剥がれがなく、170℃で接着剥がれが発生した場合、表5~表8には「160℃」と記した。なお、200℃でも接着剥がれを防止できた場合は「200℃OK」と記した。
【0110】
また、この耐熱接着性試験-1では、実施例1~13及び比較例1~15の各防振ゴム組成物において、それぞれ2個のテストピース1を作製し、該2個のテストピース1の試験結果のうち剥がれた温度が低い方の結果を、耐熱接着性試験-1による耐熱接着性の指標として採用した。
【0111】
次に、耐熱接着性試験-2では、耐熱接着性試験-1と同じ各テストピース1について、まず、前記同様に各ボルト3を介して、40%伸長(図1では図示上下方向に伸長)させた状態で、雰囲気温度100℃のギヤー式老化試験機(強制循環形熱老化試験機)中に種々の保持時間(24時間、48時間、72時間)で保持し、それぞれの保持時間が経過する毎に各金具2の接着剥がれの有無を目視で観察した。
【0112】
そして、該保持時間を72時間とした場合(72時間経過後)も接着剥がれが観察されなかったテストピース1について、引き続き雰囲気温度100℃の該試験機中に数日間保持(該試験機中に最初に投入してから30日間保持)した後、各金具2の接着剥がれの有無を目視で観察した。
【0113】
この耐熱接着性試験-2では、実施例1~13及び比較例1~15の各防振ゴム組成物において、それぞれ2個のテストピース1を作製し、該2個のテストピース1の試験結果のうち接着剥がれが早かった方の結果を、耐熱接着性試験-2による耐熱接着性の指標として採用した。表5~表8には、試験機中に30日間保持した後も各金具2の接着剥がれが無かった場合を「30日〇」と記した。
【0114】
なお、評価判断として、耐熱接着性試験-1において耐熱限界温度(接着剥がれを防止できた温度のうち最高温度)が170℃以上であり、かつ耐熱接着性試験-2において「30日〇」の結果が得られた場合を「◎」と判定した。また、耐熱接着性試験-1において耐熱限界温度が170℃未満であっても、耐熱接着性試験-2において「30日〇」の結果が得られた場合を「〇」と判定した。また、耐熱接着性試験-2において「30日〇」の結果が得られなかった場合(試験機中で30日が経過する前に接着剥がれが生じた場合)を「×」と判定した。
【0115】
〔総合判定〕
以上示した各評価判断において1つでも「×」の結果があるものは、総合判定では「×」と判定した。また、各評価判断において「×」の結果が一つもなく、かつ「△」の結果が1つ以下(その他の項目は「〇」または「◎」)の場合は、総合判定では「〇」と判定した。
【0116】
【表5】
【0117】
【表6】
【0118】
【表7】
【0119】
【表8】
【0120】
≪実施例1~13及び比較例1~15の比較による検証結果≫
表1~表4に示す各種資材の配合割合および表5~表8に示す結果により、以下に示すことが判る。
【0121】
まず、実施例1~8の各防振ゴム組成物においては、天然ゴム(NR)および/またはイソプレンゴム(IR)とブタジエンゴム(BR)を主ゴム成分とするものであって、全ゴム成分を100質量部とした場合に、2-メルカプトベンゾイミダゾール亜鉛塩を1.8~5質量部の範囲内で含有及びN,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミンを0.2~1.1質量部の範囲内で含有し、かつ加硫剤としてイオウを0.2~0.7質量部の範囲内で含有およびサルファードナー化合物としてテトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィドを2~7質量部の範囲内で含有した構成(以下、単に実施例1~8範疇構成と適宜称する)となっている。
【0122】
そして、実施例1~8範疇構成によれば、圧縮永久ひずみ率(耐熱へたり性)、耐熱性(項目〔耐熱老化性-1〕において、長期的な熱老化での材料物性の低下が小さい)、初期振動特性(低動倍率性)、耐熱接着性において、極めて優れた結果が得られていることが判る。また、振動特性変化(項目〔耐熱老化性-2〕のテストピース1(厚肉防振ゴム)における長期的な熱老化での防振特性変化)も小さく、耐熱性の防振ゴム組成物および耐熱性の防振ゴムとして、極めて優れたものが得られることが判る。
【0123】
一方、比較例1~8の各防振ゴム組成物においては、実施例1~8範疇構成と比較すると、老化防止剤,イオウ,サルファードナー化合物それぞれの種類や含有量のうち少なくとも一つが異なっている構成であり、表7に示す各評価判断のうち少なくとも一つにおいて「×」と判定されていることが判る。
【0124】
次に、実施例9~13の各防振ゴム組成物においては、天然ゴム(NR)および/またはイソプレンゴム(IR)とブタジエンゴム(BR)を主ゴム成分とするものであって、全ゴム成分を100質量部とした場合に、2-メルカプトベンゾイミダゾール亜鉛塩を1.8~5質量部の範囲内で含有及びN,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミンを0.2~1.1質量部の範囲内で含有し、かつ加硫剤としてイオウを0.2~0.7質量部の範囲内で含有およびサルファードナー化合物として2-(4-モルホリノジチオ)ベンゾチアゾールを1.2~3質量部の範囲内で含有した構成(以下、単に実施例9~13範疇構成と適宜称する)となっている。
【0125】
そして、実施例9~13範疇構成によれば、特に振動特性変化(項目〔耐熱老化性-2〕のテストピース1(厚肉防振ゴム)における長期的な熱老化での防振特性変化)が極めて小さく、より優れた結果が得られていることが判る。また、圧縮永久ひずみ率(耐熱へたり性)、耐熱性(項目〔耐熱老化性-1〕においても、雰囲気温度100℃で保持時間が1000時間に至るまでは物性低下も小さく、優れた耐熱性が得られていることが判る。耐熱接着性に関しては、100℃を大幅に超える熱雰囲気下での接着性は不十分な場合もあるが、100℃の熱雰囲気下で引張り応力を30日間かけ続けても十分な接着性が得られており、耐熱防振ゴム組成物として十分に使用できることが判る。また、圧縮永久ひずみ率(耐熱へたり性)、初期振動特性(低動倍率性)も、十分良好な結果が得られていることが判る。
【0126】
一方、比較例9~15の各防振ゴム組成物においては、実施例9~13範疇構成と比較すると、老化防止剤,イオウ,サルファードナー化合物それぞれの種類や含有量のうち少なくとも1つが異なっている構成であり、表8に示す各評価判断のうち少なくとも一つにおいて「×」と判定されていることが判る。
【0127】
なお、比較例12,15の各防振ゴム組成物は、サルファードナー化合物として、2-(4-モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール、または4,4’-ジチオジモルホリンを多量に含有したものであるが、それぞれ作成したテストピース1において、手の力で簡単に金具2とゴム部分との間に剥がれが生じたため、金具付き防振ゴムとしては不適格なものと判断して、該テストピース1を用いた試験は中止した。
【0128】
実施例1~13の防振ゴム組成物に使用したブタジエンゴムに着目したところ、実施例1~8範疇構成および実施例9~13範疇構成においては、ブタジエンゴムの100℃におけるムーニー粘度(ML1+4)が50~75の範囲内となるように設定することにより、防振特性(低動倍率性)およびゴム強度がより向上し、より好ましい結果が得られることを確認できた。
【0129】
以上の結果により、実施例1~8範疇構成の防振ゴム組成物は、極めて長期間の熱環境下(例えば100℃にて1500時間という極めて長期間)でも材料物性の低下が小さく、耐熱へたり性、振動特性、耐熱接着性にも優れていることから、極めて優れた防振ゴム組成物と言える。
【0130】
さらに、実施例9~13範疇構成の防振ゴム組成物は、極めて長期間の熱環境下(例えば100℃にて1500時間という極めて長期間)でも防振ゴムの振動特性変化が小さく、また長期間の熱環境下(例えば100℃にて1000時間という長期間)でも材料物性の低下が小さく、耐熱へたり性、振動特性にも優れ、耐熱接着性に関しては極めて長期間の熱環境下(例えば100℃で30日間)で引張応力をかけ続けても接着剥がれが生じることがないことから、優れた防振ゴム組成物と言える。
【符号の説明】
【0131】
1…テストピース
2…金具
3…ボルト(支持棒)
図1