(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025039064
(43)【公開日】2025-03-21
(54)【発明の名称】流体圧制御装置
(51)【国際特許分類】
F15B 11/08 20060101AFI20250313BHJP
F15B 11/04 20060101ALI20250313BHJP
F15B 21/044 20190101ALI20250313BHJP
【FI】
F15B11/08 B
F15B11/08 A
F15B11/04 H
F15B21/044
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023145842
(22)【出願日】2023-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保 俊輔
【テーマコード(参考)】
3H082
3H089
【Fターム(参考)】
3H082AA13
3H082BB12
3H082BB17
3H082CC02
3H082DA36
3H082DB34
3H082EE01
3H089AA12
3H089AA23
3H089AA45
3H089AA59
3H089AA60
3H089BB24
3H089CC01
3H089DA02
3H089DB03
3H089DB13
3H089DB43
3H089DB68
3H089EE04
3H089EE05
3H089EE22
3H089GG02
3H089JJ01
(57)【要約】
【課題】パイロット室側の空気を効率良くドレン室に排出する。
【解決手段】気体抜き装置80は、パイロット室23とドレン室51に亘ってピストン50に形成され、パイロット室23からドレン室51へ流体を排出するための排出通路81と、パイロットキャップ58に移動自在に支持されたロッド82と、排出通路81内においてロッド82を前進させるセットスクリュ83と、排出通路81に設けられ、排出通路81を開閉する弁体84と、排出通路81に設けられ、弁体84を閉方向に付勢する付勢部材としてのスプリング85と、を有し、セットスクリュ83によりロッド82が排出通路81内において前進することにより、ロッド82は弁体84をスプリング85の付勢力に抗して開弁させ、パイロット室23からドレン室51への流体の流れが許容される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷を駆動するシリンダの伸縮作動を制御する流体圧制御装置であって、
流体圧供給源から前記シリンダへの作動流体の供給を制御する制御弁と、
パイロット圧供給源から前記制御弁に導かれるパイロット圧を制御するパイロット制御弁と、
前記制御弁が中立位置の場合に負荷による負荷圧が作用する前記シリンダの負荷側圧力室と前記制御弁とを接続するメイン通路と、
前記メイン通路に設けられる負荷保持機構と、を備え、
前記負荷保持機構は、
前記制御弁から前記負荷側圧力室への作動流体の流れを許容する一方、背圧に応じて前記負荷側圧力室から前記制御弁への作動流体の流れを許容するオペレートチェック弁と、
前記パイロット制御弁を通じて導かれるパイロット圧によって前記制御弁と連動して動作し、前記オペレートチェック弁の作動を切り換えるための切換弁と、を有し、
前記切換弁は、
前記パイロット制御弁を通じてパイロット圧が導かれるパイロット室と、
前記パイロット室のパイロット圧に応じて移動するスプールと、
パイロット圧を受けて前記スプールに推力を付与するピストンと、
前記スプールと前記ピストンによって区画されるドレン室と、
前記ピストンに対向して設けられ、前記パイロット室を区画する区画部材と、
前記ピストンと前記区画部材に設けられ、前記パイロット室から前記ドレン室へ気体を排出するための気体抜き装置と、を有し、
前記気体抜き装置は、
前記パイロット室と前記ドレン室に亘って前記ピストンに形成され、前記パイロット室から前記ドレン室へ流体を排出するための排出通路と、
前記区画部材に移動自在に支持されたロッドと、
前記排出通路内において前記ロッドを前進させるロッド駆動部と、
前記排出通路に設けられ、前記排出通路を開閉する弁体と、
前記排出通路に設けられ、前記弁体を閉方向に付勢する付勢部材と、を有し、
前記ロッド駆動部により前記ロッドが前記排出通路内において前進することにより、前記ロッドは前記弁体を前記付勢部材の付勢力に抗して開弁させ、前記パイロット室から前記ドレン室への流体の流れが許容されることを特徴とする流体圧制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の流体圧制御装置であって、
前記切換弁は、前記パイロット室に接続されるドレン通路をさらに有し、
前記ドレン通路には、通過する作動流体に抵抗を付与する絞りが設けられることを特徴とする流体圧制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の流体圧制御装置であって、
前記ロッドは、前記弁体を開弁させた後、前記ロッド駆動部によりさらに前進することにより、前記ピストンに当接し前記ピストン及び前記スプールを移動させることを特徴とする流体圧制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の流体圧制御装置であって、
前記付勢部材の付勢力は、前記パイロット圧供給源の駆動時であって前記パイロット室にパイロット圧が導かれる場合において、当該パイロット圧によって前記弁体が開弁しないように設定されることを特徴とする流体圧制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体圧制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
作業機器の動作を制御する流体圧制御装置として、特許文献1には、シリンダに対する作動油の給排を切り換えシリンダの伸縮動作を制御する制御弁と、シリンダの負荷側圧力室と制御弁とを接続するメイン通路に介装された負荷保持機構と、を備えるものが開示されている。
【0003】
負荷保持機構は、オペレートチェック弁と、パイロット圧によって動作してオペレートチェック弁の動作を切り換えるメータアウト制御弁と、を備える。メータアウト制御弁は、スプールと、パイロット圧が導かれるパイロット室と、パイロット室に摺動自在に収容されパイロット圧を受けてスプールを移動させるピストンと、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この種の流体圧制御装置では、パイロット室にパイロット圧が導かれた際にピストンの推力が効率良くスプールに伝達されるように、スプールとピストンの間にタンクへ連通するドレン室が区画されている。
【0006】
ピストンとハウジングの間には、パイロット室からドレン室への空気の排出のために、環状隙間が設けられる。しかしながら、環状隙間は流路断面積が小さいため、パイロット室側の空気を効率良くドレン室に排出することができない。そのため、パイロット室に空気が残ってしまい、流体圧制御装置の動作に影響を与えるおそれがある。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、パイロット室側の空気を効率良く排出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、負荷を駆動するシリンダの伸縮作動を制御する流体圧制御装置であって、流体圧供給源からシリンダへの作動流体の供給を制御する制御弁と、パイロット圧供給源から制御弁に導かれるパイロット圧を制御するパイロット制御弁と、制御弁が中立位置の場合に負荷による負荷圧が作用するシリンダの負荷側圧力室と制御弁とを接続するメイン通路と、メイン通路に設けられる負荷保持機構と、を備え、負荷保持機構は、制御弁から負荷側圧力室への作動流体の流れを許容する一方、背圧に応じて負荷側圧力室から制御弁への作動流体の流れを許容するオペレートチェック弁と、パイロット制御弁を通じて導かれるパイロット圧によって制御弁と連動して動作し、オペレートチェック弁の作動を切り換えるための切換弁と、を有し、切換弁は、パイロット制御弁を通じてパイロット圧が導かれるパイロット室と、パイロット室のパイロット圧に応じて移動するスプールと、パイロット圧を受けてスプールに推力を付与するピストンと、スプールとピストンによって区画されるドレン室と、ピストンに対向して設けられ、パイロット室を区画する区画部材と、ピストンと区画部材に設けられ、パイロット室からドレン室へ気体を排出するための気体抜き装置と、を有し、気体抜き装置は、パイロット室とドレン室に亘ってピストンに形成され、パイロット室からドレン室へ流体を排出するための排出通路と、区画部材に移動自在に支持されたロッドと、排出通路内においてロッドを前進させるロッド駆動部と、排出通路に設けられ、排出通路を開閉する弁体と、排出通路に設けられ、弁体を閉方向に付勢する付勢部材と、を有し、ロッド駆動部によりロッドが排出通路内において前進することにより、ロッドは弁体を付勢部材の付勢力に抗して開弁させ、パイロット室からドレン室への流体の流れが許容されることを特徴とする。
【0009】
この発明では、ロッド駆動部によりロッドを前進させることで、排出通路に設けられる弁体を開弁させ、パイロット室とドレン室とを排出通路を通じて連通させることができる。よって、パイロット室側の気体抜き時に環状隙間のような流路断面積の小さい通路ではなく、流路断面積の大きい排出通路を通じてパイロット室の空気をドレン室へ排出することができる。そのため、パイロット室側の空気を効率良くドレン室に排出することができる。
【0010】
また、本発明は、切換弁は、パイロット室に接続されるドレン通路をさらに有し、ドレン通路には、通過する作動流体に抵抗を付与する絞りが設けられることを特徴とする。
【0011】
この発明では、パイロット室側の気体抜き時に流体を排出通路からドレン通路に導いた際に、絞りによりパイロット室側の圧力が上昇するため、パイロット室側の気体を圧縮させるとともに流体に溶け込ませることができる。よって、効率良くパイロット室側の空気をドレン室に排出することができる。
【0012】
また、本発明は、ロッドは、弁体を開弁させた後、ロッド駆動部によりさらに前進することにより、ピストンに当接しピストン及びスプールを移動させることを特徴とする。
【0013】
この発明では、パイロット圧供給源の故障等の異常時にも、ロッド駆動部によりロッドを前進させてスプールを移動させることができる。よって、異常時にもシリンダから作動流体を排出させてシリンダを作動させることができる。このように、気体抜き装置により、パイロット室側の気体抜きと、異常時にシリンダから作動流体を排出することの二つを行うことができる。
【0014】
また、本発明は、付勢部材の付勢力は、パイロット圧供給源の駆動時であってパイロット室にパイロット圧が導かれる場合において、当該パイロット圧によって弁体が開弁しないように設定されることを特徴とする。
【0015】
この発明では、シリンダの通常の動作時には弁体は閉弁するため、気体抜き装置がシリンダの動作に悪影響を及ぼすことはない。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、パイロット室側の空気を効率良くドレン室に排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】本発明の実施形態に係る流体圧制御装置の流体圧回路図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る流体圧制御装置の負荷保持機構の断面図である。
【
図4】気体抜き装置周辺の拡大断面図であり、セットスクリュが初期位置にあり弁体が閉弁している状態を示す。
【
図5】気体抜き装置周辺の拡大断面図であり、弁体が開弁した状態を示す。
【
図6】本発明の実施形態の変形例4に係る流体圧制御装置の気体抜き装置周辺の拡大断面図である。
【
図7】本発明の実施形態の変形例5に係る流体圧制御装置の気体抜き装置周辺の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る流体圧制御装置について説明する。
【0019】
流体圧制御装置は、油圧ショベル等の油圧作業機器の動作を制御するものである。本実施形態では、
図1に示す油圧ショベルのブーム14(負荷)を駆動するシリンダ15の伸縮作動を制御する油圧制御装置100について説明する。以下では、シリンダ15の作動流体として、作動油が用いられる場合について説明するが、作動油に代わり、例えば水溶性代替液等を用いてもよい。
【0020】
まず、
図2を参照して、油圧制御装置100の油圧回路について説明する。シリンダ15は、筒状のシリンダチューブ15cと、シリンダチューブ15cに摺動自在に挿入されシリンダチューブ15c内をロッド側室15aと反ロッド側室15bに区画するピストン15dと、一端がピストン15dに連結され、他端側がシリンダチューブ15cの外部へ延びてブーム14に連結されるピストンロッド15eと、を備える。
【0021】
油圧ショベルには、エンジンや電動モータの動力源が搭載され、その動力によって流体圧供給源としてのポンプ4及びパイロット圧供給源としてのパイロットポンプ5が駆動する。
【0022】
油圧制御装置100は、ポンプ4からシリンダ15への作動油の供給を制御する制御弁6と、パイロットポンプ5から制御弁6に導かれるパイロット圧を制御するパイロット制御弁9と、を備える。
【0023】
制御弁6とシリンダ15の反ロッド側室15bとは第1メイン通路7によって接続され、制御弁6とシリンダ2のロッド側室15aとは第2メイン通路8によって接続される。
【0024】
制御弁6は、油圧ショベルのオペレータが操作レバー10を手動操作することに伴ってパイロットポンプ5からパイロット制御弁9を通じてパイロット室6a,6bに導かれるパイロット圧によって動作する。
【0025】
具体的には、パイロット室6aにパイロット圧が導かれた場合には、制御弁6は位置6Aに切り換わり、ポンプ4から第1メイン通路7を通じて反ロッド側室15bに作動油が供給されると共に、ロッド側室15aの作動油が第2メイン通路8を通じてタンクTへと排出される。これにより、シリンダ15は伸長作動し、ブーム14は、
図1に示す矢印18の方向へと上昇する。
【0026】
一方、パイロット室6bにパイロット圧が導かれた場合には、制御弁6は位置6Bに切り換わり、ポンプ4から第2メイン通路8を通じてロッド側室15aに作動油が供給されると共に、反ロッド側室15bの作動油が第1メイン通路7を通じてタンクTへと排出される。これにより、シリンダ15は収縮作動し、ブーム14は、
図1に示す矢印19の方向へと下降する。
【0027】
パイロット室6a,6bにパイロット圧が導かれない場合には、制御弁6は位置6Cとなり、シリンダ2に対する作動油の給排が遮断され、ブーム14は停止した状態を保つ。
【0028】
このように、制御弁6は、シリンダ15を伸長作動させる伸長位置6A、シリンダ15を収縮作動させる収縮位置6B、及びシリンダ15の負荷を保持する中立位置6Cの3ポジションを有し、シリンダ15における作動油の給排を切り換え、シリンダ15の伸縮作動を制御する。
【0029】
ここで、
図1に示すように、ブーム14がアーム1を持ち上げた状態で、制御弁6を中立位置6Cに切り換えブーム14の動きを止めた場合には、ブーム14等の自重によって、シリンダ15には収縮する方向の力が作用する。このように、ブーム14を駆動するシリンダ15においては、反ロッド側室15bが、制御弁6が中立位置6Cの場合に負荷圧が作用する負荷側圧力室となる。
【0030】
負荷側圧力室である反ロッド側室15bに接続された第1メイン通路7には、負荷保持機構20が設けられる。負荷保持機構20は、制御弁6が中立位置6Cの場合に、ロッド側室15aの負荷圧を保持するものであり、
図1に示すように、シリンダ15の表面に固定される。
【0031】
なお、アーム1(
図1参照)を駆動するシリンダ2においては、ロッド側室2aが負荷側圧力室となるため、アーム1に負荷保持機構20を設ける場合には、ロッド側室2aに接続されたメイン通路に負荷保持機構20が設けられる。
【0032】
負荷保持機構20は、第1メイン通路7に設けられたオペレートチェック弁21と、パイロット制御弁9を通じて導かれるパイロット圧によって制御弁6と連動して動作し、オペレートチェック弁21の作動を切り換えるための切換弁22と、を有する。
【0033】
オペレートチェック弁21は、第1メイン通路7を開閉する弁体24と、弁体24が着座するシート部28と、弁体24の背面に臨む背圧室25と、弁体24に形成され反ロッド側室15bの作動油を背圧室25へと常時導く通路26と、を有する。通路26には、通過する作動油に抵抗を付与する絞り26aが設けられる。
【0034】
第1メイン通路7は、反ロッド側室15bとオペレートチェック弁21を接続するシリンダ側第1メイン通路7aと、オペレートチェック弁21と制御弁6を接続する制御弁側第1メイン通路7bと、を有する。
【0035】
弁体24には、制御弁側第1メイン通路7bの圧力が作用する第1受圧面24aと、シリンダ側第1メイン通路7aを通じて反ロッド側室15bの圧力が作用する第2受圧面24bと、が形成される。
【0036】
背圧室25には、弁体24を閉方向に付勢する付勢部材としてのスプリング27が収容される。背圧室25の圧力とスプリング27の付勢力とは、弁体24をシート部28に着座させる方向に作用する。
【0037】
弁体24がシート部28に着座した状態では、オペレートチェック弁21は、反ロッド側室15bから制御弁6への作動油の流れを遮断する逆止弁としての機能を発揮する。つまり、オペレートチェック弁21は、反ロッド側室15b内の作動油の漏れを防止して負荷圧を保持し、ブーム14の停止状態を保持する。
【0038】
切換弁22は、パイロット制御弁9を通じてパイロット圧が導かれるパイロット室23と、パイロット室23のパイロット圧に応じて移動するスプール56(
図3参照)と、スプール56を閉方向に付勢する付勢部材としてのスプリング36と、スプリング36が収容されたスプリング室54(
図3参照)と、スプール56を挟んでスプリング室54とは反対側に設けられるドレン室51(
図3参照)と、スプリング室54及びドレン室51をタンクTへ接続するドレン通路76と、を有する。
【0039】
切換弁22の上流側には、バイパス通路30及び背圧通路31が接続され、切換弁22の下流側には下流通路38が接続される。バイパス通路30は、反ロッド側室15bの作動油をオペレートチェック弁21をバイパスして制御弁側第1メイン通路7bへと導くための通路である。背圧通路31は、背圧室25の作動油を制御弁側第1メイン通路7bへと導くための通路である。下流通路38は、バイパス通路30及び背圧通路31からの作動油を制御弁側第1メイン通路7bへと導くための通路である。
【0040】
切換弁22は、下流通路38に対するバイパス通路30及び背圧通路31の連通を切り換え、シリンダ15を伸長作動させる際にメータアウト側となる第1メイン通路7の作動油の流れを制御する。
【0041】
切換弁22は、バイパス通路30に連通する第1供給ポート32、背圧通路31に連通する第2供給ポート33、及び下流通路38に連通する排出ポート34の3つのポートを有する。また、切換弁22は、遮断位置22A、第1連通位置22B、及び第2連通位置22Cの3ポジションを有する。
【0042】
制御弁6のパイロット室6bにパイロット圧が導かれると、同時に、パイロット室23にもパイロット圧が導かれる。つまり、制御弁6を収縮位置6Bに切り換えた場合に、切換弁22も第1連通位置22B又は第2連通位置22Cに切り換わる。
【0043】
具体的に説明すると、パイロット室23にパイロット圧が導かれない場合には、スプリング36の付勢力によって、切換弁22は遮断位置22Aを保つ。遮断位置22Aでは、第1供給ポート32及び第2供給ポート33の双方が遮断される。
【0044】
パイロット室23に第1所定圧力以上第2所定圧力未満のパイロット圧が導かれた場合には、切換弁22は第1連通位置22Bに切り換わる。第1連通位置22Bでは、第1供給ポート32が排出ポート34と連通する。これにより、反ロッド側室15bの作動油はバイパス通路30から切換弁22を通じて下流通路38へと導かれる。つまり、反ロッド側室15bの作動油はオペレートチェック弁21をバイパスして制御弁側第1メイン通路7bへと導かれる。このとき、絞り37によって作動油の流れに抵抗が付与される。第2供給ポート33は遮断された状態を保つ。
【0045】
パイロット室23に第2所定圧力以上のパイロット圧が導かれた場合には、切換弁22は第2連通位置22Cに切り換わる。第2連通位置22Cでは、第1供給ポート32が排出ポート34と連通すると共に、第2供給ポート33も排出ポート34と連通する。これにより、背圧室25の作動油は、背圧通路31から切換弁22を通じて下流通路38へと導かれる。このとき、背圧室25の作動油は、絞り37をバイパスして制御弁側第1メイン通路7bへと導かれ、制御弁6からタンクTへと排出される。これにより、絞り26aの前後にて差圧が発生し、背圧室25内の圧力が小さくなるため、弁体24に作用する閉方向の力が小さくなり、弁体24がシート部28から離れ、オペレートチェック弁21の逆止弁としての機能が解除される。
【0046】
負荷保持機構20は、反ロッド側室15bの圧力が所定圧力に達した場合に開弁し、反ロッド側室15bの作動油をタンクTへ排出するリリーフ弁41を有する。リリーフ弁41は、バイパス通路30における切換弁22の上流から分岐するリリーフ通路40に設けられる。なお、リリーフ通路40は、シリンダ側第1メイン通路7aから分岐して設けられてもよいし、反ロッド側室15bに直接接続されてもよい。
【0047】
ドレン通路76は、ドレン室51に接続された第1ドレン通路76aと、スプリング室54に接続された第2ドレン通路76bと、第1ドレン通路76aと第2ドレン通路76bが合流して形成される合流ドレン通路76cと、を有する。第1ドレン通路76aには、リリーフ通路40が合流する。第1ドレン通路76aには、通過する作動流体に抵抗を付与する絞りとしてのオリフィス79が設けられる。オリフィス79の効果については後述する。合流ドレン通路76cは、負荷保持機構20のボディ60(
図3参照)の外面に開口するドレンポート77に連通する。ドレンポート77はドレンホース78を通じてタンクTに接続される。このように、ドレン室51及びスプリング室54のドレンは、合流ドレン通路76c、ドレンポート77、及びドレンホース78を通じてタンクTへ排出される。切換弁22のスプール56の両側にそれぞれ設けられるドレン室51とスプリング室54は双方ともタンクTに連通するため、切換弁22が遮断位置22Aの際には、スプール56の両端には大気圧が作用し、スプール56が意図せずに移動するような事態が防止される。
【0048】
制御弁側第1メイン通路7bには、制御弁側第1メイン通路7bの圧力が所定圧力に達した場合に開弁するリリーフ弁43が接続される。第2メイン通路8には、第2メイン通路8の圧力が所定圧力に達した場合に開弁するリリーフ弁44が接続される。リリーフ弁43及びリリーフ弁44は、ブーム14に大きな外力が作用したときに、それぞれシリンダ15のロッド側室15a及び反ロッド側室15bに生じる高圧を逃がすためのものである。
【0049】
次に、主に
図3を参照して、切換弁22について詳細に説明する。
図3は負荷保持機構20の断面図であり、パイロット室23にパイロット圧が導かれておらず切換弁22が遮断位置22Aである状態を示す。
図3において、
図2で示した符号と同一の符号を付したものは、
図2で示した構成と同一の構成である。
【0050】
切換弁22は、負荷保持機構20のボディ60に組み込まれる。ボディ60にはスプール孔60aが形成され、スプール孔60aには略円筒形状のスリーブ61が挿入される。スリーブ61内には、スプール56が摺動自在に組み込まれる。
【0051】
スプール56の一端面56aの側方には、キャップ57によってスプリング室54が区画される。スプリング室54は、スリーブ61の端面に形成された切り欠き61aを通じて第2ドレン通路76bに接続される。スプリング室54に漏れ込んだ作動油は、第2ドレン通路76bからタンクTへ排出される。
【0052】
スプリング室54には、スプール56の一端面56aに端面が当接すると共に中空部にスプール56の一端面56aに突出して形成されたピン部56cが挿入される環状の第1バネ受部材45と、キャップ57の底部近傍に配置された第2バネ受部材46と、が収容される。スプリング36は、第1バネ受部材45と第2バネ受部材46との間に圧縮状態で介装され、第1バネ受部材45を介してスプール56を閉方向に付勢する。
【0053】
スプール56の他端面56bの側方には、パイロット室23が区画される。パイロット室23は、スプール孔60aと連通して形成されたピストン孔60bと、ピストン50に対向して設けられピストン孔60bを閉塞するパイロットキャップ58と、によって区画される。パイロットキャップ58は、パイロット室23を区画する区画部材である。パイロット室23には、ボディ60に形成されたパイロット通路52を通じてパイロット圧油(パイロット流体)が導かれる。パイロット室23内には、背面にパイロット圧を受けてスプール56にスプリング36の付勢力に抗する推力を付与するピストン50が摺動自在に収容される。
【0054】
ピストン孔60b内には、スプール56とピストン50によってドレン室51が区画される。ドレン室51は第1ドレン通路76aに接続される。ドレン室51に漏れ込んだ作動油は、第1ドレン通路76aからタンクTへ排出される。
【0055】
ピストン50は、外周面がピストン孔60bの内周面に沿って摺動する摺動部50aと、摺動部50aと比較して小径に形成され、スプール56の他端面56bに対向する先端部50bと、摺動部50aと比較して小径に形成され、パイロットキャップ58の先端面に対向する基端部50cと、を有する。
【0056】
パイロット通路52を通じてパイロット室23内にパイロット圧油が供給されると、基端部50cの背面と摺動部50aの環状背面とにパイロット圧が作用する。これにより、ピストン50は、前進し、先端部50bがスプール56の他端面56bに当接してスプール56を移動させる。このように、スプール56は、ピストン50の背面に作用するパイロット圧に基づいて発生するピストン50の推力を受け、スプリング36の付勢力に抗して移動する。基端部50cの背面がパイロットキャップ58の先端面に当接している場合であっても、基端部50cは摺動部50aと比較して小径であり、摺動部50aの環状背面にパイロット圧が作用するため、ピストン50は前進可能である。
【0057】
ピストン50の一端部はパイロット室23に臨み、他端部はタンクTに接続されたドレン室51に臨んでいるため、パイロット室23のパイロット圧に基づいて発生するピストン50の推力は効率良くスプール56に伝達される。
【0058】
スプール56は、一端面56aに作用するスプリング36の付勢力と他端面56bに作用するピストン50の推力とがバランスした位置で停止し、そのスプール56の停止位置にて切換弁22の切り換え位置が設定される。
【0059】
ピストン50とパイロットキャップ58には、パイロット室23からドレン室51へ空気を排出するための気体抜き装置80が設けられる。気体抜き装置80については、後に詳しく説明する。
【0060】
スリーブ61には、バイパス通路30(
図2参照)に連通する第1供給ポート32、背圧通路31(
図2参照)に連通する第2供給ポート33、及び下流通路38(
図2参照)に連通する排出ポート34の3つのポートが形成される。
【0061】
スプール56の外周面は部分的に環状に切り欠かれ、その切り欠かれた部分とスリーブ61の内周面とで、第1圧力室64、第2圧力室65、第3圧力室66、及び第4圧力室67が形成される。
【0062】
第1圧力室64は、排出ポート34に常時連通している。第3圧力室66は、第1供給ポート32に常時連通している。スプール56のランド部72の外周面には、スプール56がスプリング36の付勢力に抗して移動することによって、第3圧力室66と第2圧力室65を連通する複数の絞り37が形成される。第4圧力室67は、スプール56に軸方向に形成された導圧通路68を通じて第2圧力室65に常時連通している。
【0063】
操作レバー10が操作されずパイロット室23にパイロット圧が導かれない場合には、スプリング36の付勢力によってスプール56に形成されたポペット弁70が、スリーブ61の内周に形成された弁座71に押し付けられ、第2圧力室65と第1圧力室64の連通が遮断される。したがって、第1供給ポート32と排出ポート34との連通が遮断される。これにより、反ロッド側室15bの作動油が排出ポート34へと漏れることはない。この状態が、切換弁22の遮断位置22Aに相当する。スプリング36の付勢力によってポペット弁70が弁座71に着座した状態では、第1バネ受部材45の端面とスリーブ61の端面との間には僅かな隙間が存在するため、ポペット弁70は弁座71に対してスプリング36の付勢力によって確実にシートされる。
【0064】
操作レバー10が操作されパイロット室23にパイロット圧が導かれ、スプール56に作用するピストン50の推力がスプリング36の付勢力よりも大きくなった場合には、スプール56はスプリング36の付勢力に抗して移動する。これにより、ポペット弁70が弁座71から離れると共に、第3圧力室66と第2圧力室65が複数の絞り37を通じて連通するため、第1供給ポート32は第3圧力室66、第2圧力室65、及び第1圧力室64を通じて排出ポート34と連通する。第1供給ポート32と排出ポート34の連通によって、反ロッド側室15bの作動油は、絞り37を通じて下流通路38(
図2参照)へ導かれる。この状態が、切換弁22の第1連通位置22Bに相当する。
【0065】
パイロット室23に導かれるパイロット圧が大きくなると、スプール56はスプリング36の付勢力に抗してさらに移動し、第2供給ポート33に第4圧力室67が連通する。これにより、第2供給ポート33は、第4圧力室67、導圧通路68、第2圧力室65、及び第1圧力室64を通じて排出ポート34と連通する。第2供給ポート33と排出ポート34の連通によって、背圧室25の作動油は、絞り37をバイパスして下流通路38(
図2参照)へ導かれる。この状態が、切換弁22の第2連通位置22Cに相当する。
【0066】
次に、
図2及び
図3を参照して、油圧制御装置100の動作について説明する。
【0067】
制御弁6が中立位置6Cの場合には、ポンプ4が吐出する作動油はシリンダ15に供給されない。このとき、切換弁22のパイロット室23にはパイロット圧が導かれないため、切換弁22は遮断位置22Aの状態となる。
【0068】
このため、オペレートチェック弁21の背圧室25は、反ロッド側室15bの圧力に維持される。ここで、弁体24における閉方向の受圧面積(弁体24の背面の面積)は、開方向の受圧面積である第2受圧面24bの面積よりも大きいため、背圧室25の圧力による弁体24の背面に作用する荷重とスプリング27の付勢力とによって、弁体24はシート部28に着座した状態となる。このように、オペレートチェック弁21によって、反ロッド側室15b内の作動油の漏れが防止され、ブーム14の停止状態が保持される。
【0069】
操作レバー10が操作され、パイロット制御弁9から制御弁6のパイロット室6aへとパイロット圧が導かれると、制御弁6は、パイロット圧に応じた量だけ伸長位置6Aへと切り換わる。制御弁6が伸長位置6Aへと切り換わると、ポンプ4の吐出圧がオペレートチェック弁21の第1受圧面24aへと作用する。このとき、切換弁22は、パイロット室23にパイロット圧が導かれず遮断位置22Aの状態であるため、オペレートチェック弁21の背圧室25は、反ロッド側室15bの圧力に維持される。第1受圧面24aに作用する荷重が、背圧室25の圧力による弁体24の背面に作用する荷重とスプリング27の付勢力との合計荷重よりも大きくなった場合には、弁体24はシート部28から離れる。このようにしてオペレートチェック弁21が開弁すれば、ポンプ4から吐出された作動油は反ロッド側室15bに供給され、シリンダ15は伸長する。これにより、ブーム14は、
図1に示す矢印18の方向へと上昇する。
【0070】
操作レバー10が操作され、パイロット制御弁9から制御弁6のパイロット室6bへとパイロット圧が導かれると、制御弁6はパイロット圧に応じた量だけ収縮位置6Bへと切り換わる。これと同時に、パイロット室23へもパイロット圧が導かれるため、切換弁22は、供給されるパイロット圧に応じて第1連通位置22B又は第2連通位置22Cに切り換わる。
【0071】
パイロット室23に導かれるパイロット圧が第1所定圧力以上第2所定圧力未満の場合には、切換弁22は第1連通位置22Bに切り換わる。この場合、第2供給ポート33と排出ポート34との連通は遮断された状態であるため、オペレートチェック弁21の背圧室25は反ロッド側室15bの圧力に維持され、オペレートチェック弁21は閉弁状態を維持する。
【0072】
一方、第1供給ポート32は排出ポート34と連通するため、反ロッド側室15bの作動油は、バイパス通路30から絞り37を通じて下流通路38へ導かれ、制御弁側第1メイン通路7bから制御弁6を通じてタンクTへと排出される。また、ロッド側室15aには、ポンプ4から吐出される作動油が供給されるため、シリンダ15は収縮する。これにより、ブーム14は、
図1に示す矢印19の方向へと下降する。
【0073】
ここで、切換弁22を第1連通位置22Bに切り換えるのは、バケット13に取り付けた搬送物を、目的の位置に下ろすクレーン作業を行う場合が主である。クレーン作業では、シリンダ15を低速で収縮作動させてブーム14を矢印19の方向へとゆっくりと下降させる必要があるため、制御弁6のパイロット室6bに導かれるパイロット圧は小さく、制御弁6は収縮位置6Bにわずかに切り換えられるだけである。このため、切換弁22のパイロット室23に導かれるパイロット圧も小さく、第1所定圧力以上第2所定圧力未満となり、切換弁22は第1連通位置22Bまでしか切り換わらない。したがって、反ロッド側室15bの作動油は絞り37を通過して排出されることになり、ブーム14はクレーン作業に適した低速で下降する。
【0074】
また、切換弁22が第1連通位置22Bの場合において、制御弁側第1メイン通路7bが破裂などして作動油が外部へと漏れるような事態が発生したとしても、反ロッド側室15bから排出される作動油の流量は絞り37によって制限されるため、バケット13の落下速度は抑制される。このため、バケット13が地面に落下する前に、切換弁22を遮断位置22Aに切り換えることができ、バケット13の急落下を防止することができる。
【0075】
このように、絞り37は、オペレートチェック弁21の閉弁時におけるシリンダ2の下降速度を抑えると共に、制御弁側第1メイン通路7bの破裂時におけるバケット13の落下速度を抑えるためのものである。
【0076】
パイロット室23に導かれるパイロット圧が第2所定圧力以上の場合には、切換弁22は第2連通位置22Cに切り換わる。この場合、第2供給ポート33が排出ポート34と連通するため、オペレートチェック弁21の背圧室25の作動油は、背圧通路31から絞り37をバイパスして下流通路38へ導かれ、制御弁側第1メイン通路7bから制御弁6を通じてタンクTへと排出される。これにより、絞り26aの前後で差圧が発生し、背圧室25内の圧力が小さくなるため、弁体24に作用する閉方向の力が小さくなり、弁体24がシート部28から離れ、オペレートチェック弁21の逆止弁としての機能が解除される。
【0077】
このように、オペレートチェック弁21は、制御弁6から反ロッド側室15bへの作動油の流れを許容する一方、背圧室25の圧力である背圧に応じて反ロッド側室15bから制御弁6への作動油の流れを許容するように動作する。
【0078】
オペレートチェック弁21が開弁すると、反ロッド側室15bの作動油は第1メイン通路7を通りタンクTへと排出されるため、シリンダ2は素早く収縮する。つまり、切換弁22を第2連通位置22Cに切り換えると、反ロッド側室15bから排出される作動油の流量が多くなるため、ロッド側室15aに供給される作動油の流量が多くなり、シリンダ2の収縮速度は速くなる。これにより、ブーム14は矢印19の方向へと素早く下降する。
【0079】
切換弁22を第2連通位置22Cに切り換えるのは、掘削作業等を行う場合であり、制御弁6のパイロット室6bに導かれるパイロット圧は大きく、制御弁6は収縮位置6Bに大きく切り換えられる。このため、切換弁22のパイロット室23に導かれるパイロット圧も大きく、第2所定圧力以上となるため、切換弁22は第2連通位置22Cまで切り換わる。
【0080】
次に、主に
図4を参照して、気体抜き装置80について説明する。
図4は、
図3における気体抜き装置80周辺の拡大断面図である。以下では、気体抜き装置80がパイロット室23からドレン室51へ空気を排出する場合について説明するが、気体抜き装置80が排出するのは空気には限られず、その他の気体であってもよい。
【0081】
パイロットキャップ58は、ボディ60におけるピストン孔60bの開口部に取り付けられる頭部58aと、頭部58aと連続して形成されピストン孔60bに挿入される本体部58bと、を有する。本体部58bの外周面には雄ねじ部58cが形成され、雄ねじ部58cとピストン孔60bの内周面に形成される雌ねじ部がねじ結合して、パイロットキャップ58がボディ60に取り付けられる。本体部58bには、パイロット室23に開口し気体抜き装置80の後述するロッド82の一部が挿通される挿通孔58dが形成される。
【0082】
気体抜き装置80は、ピストン50とパイロットキャップ58とにわたって設けられる。気体抜き装置80は、パイロット室23とドレン室51にわたって設けられる排出通路81と、パイロットキャップ58に移動自在に支持されたロッド82と、排出通路81内においてロッド82を前進させるロッド駆動部としてのセットスクリュ83と、排出通路81に設けられ、排出通路81を開閉する弁体84と、排出通路81に設けられ、弁体84を閉方向に付勢する付勢部材としてのスプリング85と、を有する。排出通路81は、ピストン50の移動方向に沿ってピストン50を貫通して形成され、パイロットキャップ58の挿通孔58dと同軸状に形成される。
【0083】
排出通路81には、環状の弁座81aが設けられる。弁座81aは、排出通路81の内周面よりも小径な中空部81bを有する。弁体84は、球体であって、T字状の着座部材86に着座して設けられる。なお、弁体84は、球体以外の他の形状であってもよく、例えばポペット弁等であってもよい。弁体84及び着座部材86は、排出通路81における弁座81aよりもドレン室51側に設けられる。弁座81a(中空部81b)の内径は、弁体84の外径よりも小さい。そのため、弁体84は弁座81aに当接可能であり、弁体84が弁座81aに着座すると排出通路81が遮断される。スプリング85は、着座部材86と、切り欠き87aを有し排出通路81におけるドレン室51側に圧入されて設けられる支持部材87と、の間に圧縮して設けられる。これにより、スプリング85は、着座部材86を介して弁体84を弁座81aに向けて付勢する。つまり、スプリング85は、排出通路81を遮断するように弁体84を付勢する。スプリング85の付勢力(初期セット荷重)は、パイロットポンプ5の駆動時であってパイロット室23にパイロット圧が導かれる場合において、当該パイロット圧によって弁体84が開弁しないように設定される。言い換えれば、スプリング85の付勢力は、シリンダ15の通常の動作時には弁体84が閉弁し、後述するようにパイロット室23からドレン室51へ空気を排出する場合のみ弁体84が開弁するように設定される。
【0084】
ロッド82は、パイロットキャップ58の挿通孔58dと排出通路81にわたって設けられる。ロッド82は、挿通孔58dの内周面に摺動可能に支持される頭部82aと、頭部82aから軸方向に延びて形成される軸部82bと、軸部82bの先端部に形成され弁体84を押圧可能な押圧部82cと、を有する。頭部82aは、軸部82bよりも大径に形成され、頭部82aの外周面には、挿通孔58dの内周面との間をシールするシール部材82dが設けられる。パイロットキャップ58は、頭部82aが挿通孔58dの内周面に支持されることで、
図4に示す姿勢に保持される。頭部82aには、セットスクリュ83が当接可能に設けられる。軸部82bは、挿通孔58d、パイロット室23、及び排出通路81にわたって設けられ、排出通路81よりも小径に形成される。押圧部82cは、軸部82bよりも小径に形成されて弁体84に対向して設けられる。押圧部82cは、弁座81aの内径よりも小径に設けられ、弁座81aを挿通可能である。押圧部82cの軸方向の長さは、弁座81aの軸方向の長さよりも長く形成される。これにより、後述するようにロッド82が排出通路81内において前進した際に、軸部82bが弁座81aに当接する前に押圧部82cが弁体84に当接する。
【0085】
セットスクリュ83は、パイロットキャップ58に設けられる。セットスクリュ83は、パイロットキャップ58の頭部58aを貫通し、先端部(
図4における右側の端部)が挿通孔58d内に位置してロッド82の頭部82aに当接するように設けられる。セットスクリュ83は、オペレータの操作により工具を用いて手動で回転されることで、軸方向に移動可能である。セットスクリュ83が移動すると、セットスクリュ83に当接するロッド82がセットスクリュ83とともに移動する。これにより、弁体84が開閉し、後述するようにパイロット室23側の空気を排出可能な状態となる。シリンダ15の通常の動作時には、セットスクリュ83は、
図4に示すように初期位置に保持される。なお、セットスクリュ83の移動は、アクチュエータ等を用いて電動で行ってもよい。
【0086】
次に、気体抜き装置80の動作及び作用について説明する。
【0087】
気体抜き装置80は、例えば、油圧ショベルの組み立て作業後や、油圧ショベルが長期間停止した状態から始動する際に、パイロット室23側の空気をドレン室51に排出するために用いられる。パイロット室23側に空気が残っていると、油圧ショベルの始動時に、オペレータの入力操作に対してパイロット室23のパイロット圧の上昇が遅れてしまう。そのため、パイロット室23側の空気は、オペレータの入力操作に対するシリンダ15の応答遅れの原因となる。気体抜き装置80を用いてパイロット室23側の空気抜きをすることにより、油圧制御装置100の動作が安定する。
【0088】
パイロット室23側の空気をドレン室51に排出する際には、まず、オペレータが、セットスクリュ83を
図4に示す初期位置から工具を用いて回転させ、
図4における右側に移動させる。すると、ロッド82がセットスクリュ83とともに
図4における右側に移動し、排出通路81内において前進する。そして、ロッド82の押圧部82cが弁体84に接触し、弁体84をスプリング85の付勢力に抗して押圧する。ロッド82が弁体84を押圧する力がスプリング85の付勢力を上回ると、
図5に示すように、弁体84が弁座81aから離座し、開弁する。これにより、排出通路81を通じたパイロット室23からドレン室51への流体の流れが許容される。パイロット室23からドレン室51には、ロッド82の軸部82bの外周面と排出通路81の内周面の間、押圧部82cの外周面と弁座81aの内周面の間、着座部材86と排出通路81の内周面の間、及び支持部材87の切り欠き87aを通じて流体が導かれる。このように、パイロット室23側の空気をドレン室51に排出する際には、オペレータは、セットスクリュ83を操作することにより、押圧部82cが弁体84を開弁するとともに軸部82bが弁座81aに当接しない位置に、ロッド82を移動させる。
【0089】
そして、弁体84が開弁された状態で、パイロットポンプ5を駆動し、パイロット室23に流体を導く。パイロットポンプ5から供給される流体は、油圧ショベルの組み立て作業後に流路に残った空気を押し出しながらパイロット室23に導かれ、排出通路81を通じてドレン室51に排出される。ドレン室51に排出された流体は、第1ドレン通路76a、合流ドレン通路76c、及びドレンポート77を通じて、タンクTに排出される。このようにして、パイロット室23側の気体抜きがされる。パイロット室23側の気体抜きが終わると、セットスクリュ83を
図4に示す初期位置に戻し、排出通路81が弁体84により遮断された状態に戻す。なお、パイロット室23側の気体抜きは、パイロットポンプ5とは異なる気体抜き専用のポンプを用いて行ってもよい。
【0090】
このように、油圧制御装置100では、セットスクリュ83によりロッド82を前進させることで、排出通路81に設けられる弁体84を開弁させ、パイロット室23とドレン室51とを排出通路81を通じて連通させることができる。よって、ピストン50とピストン孔60bの間の環状隙間のような流路断面積の小さい通路ではなく、流路断面積の大きい排出通路81を通じてパイロット室23の空気をドレン室51へ排出することができる。そのため、パイロット室23側の空気を効率良く短時間でドレン室51に排出することができる。
【0091】
さらに、油圧制御装置100では、第1ドレン通路76aには、通過する作動流体に抵抗を付与するオリフィス79が設けられる。よって、パイロット室23側の気体抜き時に流体を排出通路81から第1ドレン通路76aに導いた際に、オリフィス79より上流側であるパイロット室23側の圧力が上昇する。これにより、パイロット室23側の空気を圧縮させるとともに、圧縮された高圧の空気を流体に溶け込ませることができる。よって、空気を圧縮しつつ流体に溶け込ませて排出することができるため、効率良くパイロット室23側の空気をドレン室51に排出することができる。
【0092】
また、油圧制御装置100では、スプリング85の付勢力は、パイロットポンプ5の駆動時であってパイロット室23にパイロット圧が導かれる場合において、当該パイロット圧によって弁体84が開弁しないように設定される。そのため、シリンダ15の通常の動作時(言い換えれば、油圧ショベルに搭載されたパイロットポンプ5が運転状態であってパイロットポンプ5の駆動時)には弁体84は閉弁し、パイロット室23とドレン室51は排出通路81を通じて連通しないため、気体抜き装置80がシリンダ15の動作に悪影響を及ぼすことはない。
【0093】
以上の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0094】
油圧制御装置100では、パイロット室23側の気体抜き時に流路断面積の大きい排出通路81を通じてパイロット室23の空気をドレン室51へ排出することができるため、パイロット室23側の空気を効率良く短時間でドレン室51に排出することができる。
【0095】
油圧制御装置100では、パイロット室23側の気体抜き時に流体を排出通路81から第1ドレン通路76aに導いた際に、オリフィス79によりパイロット室23側の圧力が上昇する。これにより、パイロット室23側の空気を圧縮させるとともに圧縮された高圧の空気を流体に溶け込ませることができるため、効率良くパイロット室23側の空気をドレン室51に排出することができる。
【0096】
油圧制御装置100では、シリンダ15の通常の動作時には弁体84は閉弁し、パイロット室23に導かれるパイロット圧によって開弁することがないため、気体抜き装置80がシリンダ15の動作に悪影響を及ぼすことはない。
【0097】
次のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、上述の異なる実施形態で説明した構成同士を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせることも可能である。
【0098】
<変形例1>
上記実施形態では、油圧制御装置100は、油圧ショベルのブーム14を駆動するシリンダ15の伸縮作動を制御するものである。これに限らず、油圧制御装置100は、油圧ショベルのアーム1を駆動するシリンダ2の伸縮作動を制御するものであってもよい。この構成では、シリンダ2のロッド側室2aが第1メイン通路7と接続され、反ロッド側室2bが第2メイン通路8と接続される。制御弁6が位置6Aに切り換わると、ポンプ4から第1メイン通路7を通じてロッド側室2aに作動油が供給されると共に、反ロッド側室2bの作動油が第2メイン通路8を通じてタンクTへと排出され、シリンダ2は収縮作動する。制御弁6が位置6Bに切り換わると、ポンプ4から第2メイン通路8を通じて反ロッド側室2bに作動油が供給されると共に、ロッド側室2aの作動油が第1メイン通路7を通じてタンクTへと排出され、シリンダ2は伸長作動する。制御弁6が位置6Cとなると、シリンダ2に対する作動油の給排が遮断され、アーム1は停止した状態を保つ。アーム1を駆動するシリンダ2においては、ロッド側室2aが、制御弁6が中立位置6Cの場合に負荷圧が作用する負荷側圧力室となる。このような構成であっても、上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0099】
<変形例2>
上記実施形態では、パイロット室23側の気体抜き時に、ロッド駆動部としてのセットスクリュ83が回転され、ロッド82が排出通路81内において前進することにより、弁体84を開弁させる。しかしながら、ロッド82を移動させるロッド駆動部はセットスクリュ83に限らず、例えば、ソレノイドであってもよい。この場合には、ソレノイドが制御されることにより、パイロット室23側の気体抜き時にロッド82が排出通路81内において前進することにより、弁体84を開弁させる。このような構成であっても、上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0100】
<変形例3>
上記実施形態では、第1ドレン通路76aには、オリフィス79が設けられる。これにより、パイロット室23側の気体抜き時に流体を排出通路81から第1ドレン通路76aに導いた際に、オリフィス79によりパイロット室23側の圧力が上昇するため、パイロット室23側の空気を圧縮させるとともに圧縮された高圧の空気を流体に溶け込ませることができ、効率良くパイロット室23側の空気をドレン室51に排出することができる。しかしながら、オリフィス79は必須の構成ではない。
【0101】
<変形例4>
上記実施形態では、ロッド82は、頭部82aと、軸部82bと、押圧部82cと、を有する。これに加えて、
図6に示すように、ロッド82は、軸部82bの先端部に形成される切り欠き部82eを有してもよい。切り欠き部82eは、軸部82bにおける弁座81aに対向する位置に形成される。これにより、パイロット室23側の空気をドレン室51に排出する際に、ロッド82の
押圧部82cが弁体84を開弁するとともに軸部82bが弁座81aに当接する位置にあっても、軸部82bと弁座81aの間には切り欠き部82eにより空間が形成されるため、パイロット室23からドレン室51への流体の流れが許容される。よって、パイロット室23側の気体抜きをすることができる。
【0102】
<変形例5>
上記実施形態では、気体抜き装置80は、パイロット室23側の気体抜きのみに用いられる。これに加えて、気体抜き装置80は、パイロットポンプ5故障等の異常時にシリンダ15から作動流体を排出するためにも用いられてもよい。具体的には、
図7に示すように、ロッド82は、弁体84を開弁させた後、セットスクリュ83によりさらに前進することにより、ピストン50に当接しピストン50及びスプール56を移動させる。これにより、スプール56を、パイロット圧によってではなく、セットスクリュ83の移動により直接移動させることができる。そのため、パイロットポンプ5の故障等の異常でパイロット圧が供給されない場合であっても、セットスクリュ83を用いてスプール56を移動させて切換弁22を遮断位置22Aから第1連通位置22Bに切り換えることができる。これにより、シリンダ15の反ロッド側室15bから作動油を排出させてシリンダ15を収縮させ、ブーム14を下降させ安全な状態にすることができる。
【0103】
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0104】
負荷(ブーム14,アーム1)を駆動するシリンダ15,2の伸縮作動を制御する流体圧制御装置100は、流体圧供給源としてのポンプ4からシリンダ15,2への作動流体の供給を制御する制御弁6と、パイロット圧供給源としてのパイロットポンプ5から制御弁6に導かれるパイロット圧を制御するパイロット制御弁9と、制御弁6が中立位置6Cの場合に負荷による負荷圧が作用するシリンダ15,2の負荷側圧力室15b,2aと制御弁6とを接続するメイン通路7と、メイン通路7に設けられる負荷保持機構20と、を備え、負荷保持機構20は、制御弁6から負荷側圧力室15b,2aへの作動流体の流れを許容する一方、背圧に応じて負荷側圧力室15b,2aから制御弁6への作動流体の流れを許容するオペレートチェック弁21と、パイロット制御弁9を通じて導かれるパイロット圧によって制御弁6と連動して動作し、オペレートチェック弁21の作動を切り換えるための切換弁22と、を有し、切換弁22は、パイロット制御弁9を通じてパイロット圧が導かれるパイロット室23と、パイロット室23のパイロット圧に応じて移動するスプール56と、パイロット圧を受けてスプール56に推力を付与するピストン50と、スプール56とピストン50によって区画されるドレン室51と、ピストン50に対向して設けられ、パイロット室23を区画する区画部材としてのパイロットキャップ58と、ピストン50とパイロットキャップ58に設けられ、パイロット室23からドレン室51へ気体を排出するための気体抜き装置80と、を有し、気体抜き装置80は、パイロット室23とドレン室51に亘ってピストン50に形成され、パイロット室23からドレン室51へ流体を排出するための排出通路81と、パイロットキャップ58に移動自在に支持されたロッド82と、排出通路81内においてロッド82を前進させるロッド駆動部(セットスクリュ83)と、排出通路81に設けられ、排出通路81を開閉する弁体84と、排出通路81に設けられ、弁体84を閉方向に付勢する付勢部材としてのスプリング85と、を有し、ロッド駆動部によりロッド82が排出通路81内において前進することにより、ロッド82は弁体84をスプリング85の付勢力に抗して開弁させ、パイロット室23からドレン室51への流体の流れが許容される。
【0105】
この構成では、ロッド駆動部によりロッド82を前進させることで、排出通路81に設けられる弁体84を開弁させ、パイロット室23とドレン室51とを排出通路81を通じて連通させることができる。よって、パイロット室23側の気体抜き時に環状隙間のような流路断面積の小さい通路ではなく、流路断面積の大きい排出通路81を通じてパイロット室23の空気をドレン室51へ排出することができる。そのため、パイロット室23側の空気を効率良くドレン室51に排出することができる。
【0106】
また、切換弁22は、パイロット室23に接続されるドレン通路76をさらに有し、ドレン通路76には、通過する作動流体に抵抗を付与する絞りとしてのオリフィス79が設けられる。
【0107】
この構成では、パイロット室23側の気体抜き時に流体を排出通路81からドレン通路76に導いた際に、オリフィス79によりパイロット室23側の圧力が上昇するため、パイロット室23側の気体を圧縮させるとともに流体に溶け込ませることができる。よって、効率良くパイロット室23側の空気をドレン室51に排出することができる。
【0108】
また、ロッド82は、弁体84を開弁させた後、ロッド駆動部(セットスクリュ83)によりさらに前進することにより、ピストン50に当接しピストン50及びスプール56を移動させる。
【0109】
この構成では、パイロットポンプ5の故障等の異常時にも、ロッド駆動部によりロッド82を前進させてスプール56を移動させることができる。よって、異常時にもシリンダ15,2から作動流体を排出させてシリンダ15,2を作動させることができる。このように、気体抜き装置80により、パイロット室23側の気体抜きと、異常時にシリンダ15,2から作動流体を排出することの二つを行うことができる。
【0110】
また、スプリング85の付勢力は、パイロットポンプ5の駆動時であってパイロット室23にパイロット圧が導かれる場合において、当該パイロット圧によって弁体84が開弁しないように設定される。
【0111】
この構成では、シリンダ15,2の通常の動作時には弁体84は閉弁するため、気体抜き装置80がシリンダ15,2の動作に悪影響を及ぼすことはない。
【0112】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0113】
100・・・油圧制御装置(流体圧制御装置)、1…アーム(負荷)、2…シリンダ、2a…ロッド側室(負荷側圧力室)、4…ポンプ(流体圧供給源)、5…パイロットポンプ(パイロット圧供給源)、6…制御弁、6C…中立位置、7…第一メイン通路(メイン通路)、9…パイロット制御弁、14…ブーム(負荷)、15…シリンダ、15b…反ロッド側室(負荷側圧力室)、20…負荷保持機構、21…オペレートチェック弁、22…切換弁、23…パイロット室、50…ピストン、51…ドレン室、56…スプール、58…パイロットキャップ(区画部材)、76…ドレン通路、79…オリフィス(絞り)、80…気体抜き装置、81…排出通路、82…ロッド、83…セットスクリュ(ロッド駆動部)、84…弁体、85…スプリング(付勢部材)