(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025039206
(43)【公開日】2025-03-21
(54)【発明の名称】位置推定装置及び位置推定方法
(51)【国際特許分類】
G01C 21/28 20060101AFI20250313BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20250313BHJP
【FI】
G01C21/28
G08G1/16 D
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023146115
(22)【出願日】2023-09-08
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2025-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤巻 由太
(72)【発明者】
【氏名】堀米 辰弥
【テーマコード(参考)】
2F129
5H181
【Fターム(参考)】
2F129AA03
2F129BB03
2F129BB20
2F129BB22
2F129BB26
2F129BB33
2F129EE02
2F129EE45
2F129EE78
2F129EE86
2F129GG17
2F129HH20
2F129HH21
5H181AA01
5H181BB13
5H181BB15
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC14
5H181CC24
5H181CC27
5H181EE02
5H181FF04
5H181FF14
5H181FF22
5H181FF27
5H181LL01
5H181LL04
5H181LL09
5H181LL15
(57)【要約】
【課題】適切なタイミングでロケータを用いた位置推定に切り替える。
【解決手段】位置推定装置30は、車両の周囲の照度を取得する取得部321と、第1時刻における車両の位置と、車両の車速と、車線情報を含む地図情報と、に基づいて、第1時刻から第1時間が経過した第2時刻における車両の位置及び向きを推定する推定部322と、第1時刻における車両の周囲の照度が閾値以上であり、かつ第2時刻において車両が備える撮像装置10の撮像方向が太陽を向いている場合、少なくとも第2時刻に達する前に、撮像装置10を用いて車両の位置を推定する第1位置推定から、車両が備えるロケータを用いて車両の位置を推定する第2位置推定に切り替える切替部323と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の周囲の照度を取得する取得部と、
第1時刻における車両の位置と、前記車両の車速と、車線情報を含む地図情報と、に基づいて、前記第1時刻から第1時間が経過した第2時刻における前記車両の位置及び向きを推定する推定部と、
前記第1時刻における前記車両の周囲の照度が閾値以上であり、かつ前記第2時刻において前記車両が備える撮像装置の撮像方向が太陽を向いている場合、少なくとも前記第2時刻に達する前に、前記撮像装置を用いて前記車両の位置を推定する第1位置推定から、前記車両が備えるロケータを用いて前記車両の位置を推定する第2位置推定に切り替える切替部と、
を有する位置推定装置。
【請求項2】
前記切替部は、前記第1位置推定から前記第2位置推定に切り替えた時刻から後の時刻において、前記照度が前記閾値以上の状態から前記照度が前記閾値未満の状態に変化したこと、又は前記撮像方向が太陽を向いている状態から前記撮像方向が太陽を向いていない状態に変化したことを条件として、前記第2位置推定から前記第1位置推定に切り替える、
請求項1に記載の位置推定装置。
【請求項3】
前記推定部は、前記第2時刻から第3時刻までの第2時間における前記車両の位置及び向きを推定し、
前記切替部は、前記第1時刻における前記照度が前記閾値以上である場合、前記第2時間における、太陽の位置及び高さと前記車両の位置及び向きとに基づいて、前記撮像方向が太陽を向いていると判定した期間が、前記第2時間に所定の回数未満であることを条件として、前記第2位置推定から前記第1位置推定に切り替える、
請求項1に記載の位置推定装置。
【請求項4】
前記撮像装置を用いて推定した前記車両の推定位置と、前記撮像装置が撮像した撮像画像に基づく前記車両の目標位置と、の第1誤差、又は前記ロケータを用いて推定した前記車両の推定位置と、前記地図情報に基づく目標位置と、の第2誤差に基づいて、前記車両の操舵角及び操舵トルクを決定する決定部をさらに有し、
前記決定部は、前記切替部が、前記第1位置推定と前記第2位置推定とを切り替えた時刻から所定の時間が経過した時刻に、前記第1誤差と前記第2誤差とが一致するように、前記第1誤差又は前記第2誤差を補正する、
請求項1に記載の位置推定装置。
【請求項5】
前記切替部は、前記車両の周囲の前記照度が前記閾値未満である場合、又は前記照度が前記閾値以上かつ前記撮像方向が太陽を向いていないと判定した場合、前記推定部が推定した、前記第2時刻における前記車両の位置から所定の範囲内に、車線の分岐点又は合流点があるとことを条件として、前記第1位置推定から前記第2位置推定に切り替える、
請求項1に記載の位置推定装置。
【請求項6】
前記切替部は、前記第1位置推定から前記第2位置推定に切り替えた時刻から後の時刻において、前記照度が前記閾値未満又は前記撮像方向が太陽を向いていない状態であること、かつ前記車両の位置から前記所定の範囲内に車線の分岐点又は合流点がある状態から、前記車両の位置から前記所定の範囲内に車線の分岐点又は合流点がない状態に変化したことを条件として、前記第2位置推定から前記第1位置推定に切り替える、
請求項5に記載の位置推定装置。
【請求項7】
前記切替部は、前記車両の周囲の前記照度が前記閾値未満である場合、又は前記照度が閾値以上かつ前記撮像方向が太陽を向いていないと判定した場合、前記第1時刻における前記車両の位置と、前記第1時刻における前記車両の先行車の位置と、の距離が所定の距離未満であることを条件として、前記第1位置推定から前記第2位置推定に切り替える、
請求項1に記載の位置推定装置。
【請求項8】
前記切替部は、前記第1位置推定から前記第2位置推定に切り替えた時刻から後の時刻において、前記照度が前記閾値未満又は前記撮像方向が太陽を向いていない状態であること、かつ前記車両の位置と前記車両の先行車の位置との距離が前記所定の距離未満から前記所定の距離以上に変化したことを条件として、前記第2位置推定から前記第1位置推定に切り替える、
請求項7に記載の位置推定装置。
【請求項9】
プロセッサが実行する、
車両の周囲の照度を取得する取得工程と、
第1時刻における車両の位置と、前記車両の車速と、車線情報を含む地図情報と、に基づいて、前記第1時刻から第1時間が経過した第2時刻における前記車両の位置及び向きを推定する推定工程と、
前記第1時刻における前記車両の周囲の照度が閾値以上であり、かつ前記第2時刻において前記車両が備える撮像装置の撮像方向が太陽を向いている場合、少なくとも前記第2時刻に達する前に、前記撮像装置を用いて前記車両の位置を推定する第1位置推定から、前記車両が備えるロケータを用いて前記車両の位置を推定する第2位置推定に切り替える切替工程と、
を有する位置推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置推定装置及び位置推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の悪環境判定装置は、車両が備えるカメラが西日の影響を受けている可能性があると判定した場合は、カメラの撮像画像に基づく位置推定から、ロケータを用いた位置推定に切り替えることにより、車両の位置が推定できない状態を回避する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来においては、カメラの撮像画像に基づく位置推定の信頼性が低下したことを受けて、ロケータを用いた位置推定に切り替えるため、ロケータを用いた位置推定に切り替える直前においては、位置推定の精度が低下する。その結果、位置推定に基づく車両の自動操舵を行うと車両の挙動が乱れるタイミングがあるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、適切なタイミングでロケータを用いた位置推定に切り替えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係る位置推定装置は、車両の周囲の照度を取得する取得部と、第1時刻における車両の位置と、前記車両の車速と、車線情報を含む地図情報と、に基づいて、前記第1時刻から第1時間が経過した第2時刻における前記車両の位置及び向きを推定する推定部と、前記第1時刻における前記車両の周囲の照度が閾値以上であり、かつ前記第2時刻において前記車両が備える撮像装置の撮像方向が太陽を向いている場合、少なくとも前記第2時刻に達する前に、 前記撮像装置を用いて前記車両の位置を推定する第1位置推定 から、前記車両が備えるロケータを用いて前記車両の位置を推定する第2位置推定に切り替える切替部と、を有する。
【0007】
前記切替部は、前記第1位置推定から前記第2位置推定に切り替えた時刻から後の時刻において、前記照度が前記閾値以上の状態から前記照度が前記閾値未満の状態に変化したこと、又は前記撮像方向が太陽を向いている状態から前記撮像方向が太陽を向いていない状態に変化したことを条件として、前記第2位置推定から前記第1位置推定に切り替えてもよい。
【0008】
前記推定部は、前記第2時刻から第3時刻までの第2時間における前記車両の位置及び向きを推定し、前記切替部は、前記第1時刻における前記照度が前記閾値以上である場合、前記第2時間における、太陽の位置及び高さと前記車両の位置及び向きとに基づいて、前記撮像方向が太陽を向いていると判定した期間が、前記第2時間に所定の回数未満であることを条件として、前記第2位置推定から前記第1位置推定に切り替えてもよい。
【0009】
前記撮像装置を用いて推定した前記車両の推定位置と、前記撮像装置が撮像した撮像画像に基づく前記車両の目標位置と、の第1誤差、又は前記ロケータを用いて推定した前記車両の推定位置と、前記地図情報に基づく目標位置と、の第2誤差に基づいて、前記車両の操舵角及び操舵トルクを決定する決定部をさらに有し、前記決定部は、前記切替部が、前記第1位置推定と前記第2位置推定とを切り替えた時刻から所定の時間が経過した時刻に、前記第1誤差と前記第2誤差とが一致するように、前記第1誤差又は前記第2誤差を補正してもよい。
【0010】
前記切替部は、前記車両の周囲の前記照度が前記閾値未満である場合、又は前記照度が前記閾値以上かつ前記撮像方向が太陽を向いていないと判定した場合、前記推定部が推定した、前記第2時刻における前記車両の位置から所定の範囲内に、車線の分岐点又は合流点があるとことを条件として、前記第1位置推定から前記第2位置推定に切り替えてもよい。
【0011】
前記切替部は、前記第1位置推定から前記第2位置推定に切り替えた時刻から後の時刻において、前記照度が前記閾値未満又は前記撮像方向が太陽を向いていない状態であること、かつ前記車両の位置から前記所定の範囲内に車線の分岐点又は合流点がある状態から、前記車両の位置から前記所定の範囲内に車線の分岐点又は合流点がない状態に変化したことを条件として、前記第2位置推定から前記第1位置推定に切り替えてもよい。
【0012】
前記切替部は、前記車両の周囲の前記照度が前記閾値未満である場合、又は前記照度が閾値以上かつ前記撮像方向が太陽を向いていないと判定した場合、前記第1時刻における前記車両の位置と、前記第1時刻における前記車両の先行車の位置と、の距離が所定の距離未満であることを条件として、前記第1位置推定から前記第2位置推定に切り替えてもよい。
【0013】
前記切替部は、前記第1位置推定から前記第2位置推定に切り替えた時刻から後の時刻において、前記照度が前記閾値未満又は前記撮像方向が太陽を向いていない状態であること、かつ前記車両の位置と前記車両の先行車の位置との距離が前記所定の距離未満から前記所定の距離以上に変化したことを条件として、前記第2位置推定から前記第1位置推定に切り替えてもよい。
【0014】
本発明の第2の態様に係る位置推定方法は、プロセッサが実行する、車両の周囲の照度を取得する取得工程と、第1時刻における車両の位置と、前記車両の車速と、車線情報を含む地図情報と、に基づいて、前記第1時刻から第1時間が経過した第2時刻における前記車両の位置及び向きを推定する推定工程と、前記第1時刻における前記車両の周囲の照度が閾値以上であり、かつ前記第2時刻において前記車両が備える撮像装置の撮像方向が太陽を向いている場合、少なくとも前記第2時刻に達する前に、前記撮像装置を用いて前記車両の位置を推定する第1位置推定から、前記車両が備えるロケータを用いて前記車両の位置を推定する第2位置推定に切り替える切替工程と、を有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、適切なタイミングでロケータを用いた位置推定に切り替えるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態に係る車両Sの概要を説明するための図である。
【
図2】車両Sが備える撮像装置10の撮像方向を示す図である。
【
図3】位置推定処理を切り替える動作を説明するための図である。
【
図4】複数のカーブ路を含む車線を走行する車両Sを説明するための図である。
【
図5】第1位置推定から第2位置推定に切り替える動作を示すシーケンスである。
【
図6】第2位置推定から第1位置推定に切り替える動作を示すシーケンスである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<車両Sの概要>
図1は、本実施形態に係る車両Sの概要を説明するための図である。
図1に示す車両Sは、撮像装置10と、白線認識装置11と、受信装置12と、慣性計測装置13と、自己位置認識装置14と、照度センサ15と、車速センサ16と、操舵制御装置20と、位置推定装置30と、を備える。
【0018】
車両Sは、所定時間(例えば20ミリ秒)が経過した時刻毎に、車両Sが走行中の車線と当該車線における車両Sの位置及び向きとを特定し、車両Sが車線における目標軌跡を走行するように操舵角と操舵トルクとを決定することで、自動操舵を行う機能を有する。目標軌跡は、例えば、車線の幅方向における当該車線の中央の位置(以下、「目標位置」という場合がある)を、車線の長さ方向に、車線の形状に沿って連結した線である。また、車両Sは、自動操舵を行わない場合、操作者が手動操舵を行うことにより走行する。
【0019】
撮像装置10は、車両Sの周囲を撮像して撮像画像を生成するためのカメラであり、車両Sが走行する車線の車線区画線(例えば、白線)を含む領域を撮像した撮像画像を生成する。
【0020】
白線認識装置11は、車両Sの位置と、車両Sが走行中の車線における、車両Sの位置に対応する目標位置と、の距離(以下、「第1推定距離」という)を推定するための第1位置推定装置である。一例として、車両Sの位置は、車両Sの車幅方向における車両Sの中央であり、かつ、車両Sの長さ方向における車両Sの中央であるが、これに限らない。車両Sの位置は、車両Sの運転席の中央を示す位置であってもよいし、車両Sの前方の端部において、車両Sの車幅方向における中央であってもよい。車両Sの位置に対応する目標位置は、例えば、車両Sが走行中の車線において幅方向の中央の位置である。
【0021】
白線認識装置11は、例えば、撮像装置10が生成した撮像画像から白線を抽出することにより、車両Sの位置に対応する目標位置と当該車両Sの中央の位置とを特定し、第1推定距離を推定する。また、白線認識装置11は、撮像画像から白線を抽出することにより車両Sの向き(以下、「第1推定向き」という)を推定する。以下の説明においては、白線認識装置11が第1推定距離及び第1推定向きを推定する処理を「第1位置推定」という。
【0022】
受信装置12は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)等の外部の測位システムから電波を受信するための装置である。受信装置12は、受信した電波に含まれている情報に基づいて、車両Sの位置(例えば、緯度及び経度)を算出したり、現在の時刻(日時を含む)を特定したりする。なお、本実施形態における「時刻」は、「日時」を含むものとする。慣性計測装置13は、例えば、IMU(Inertial Measurement Unit)であり、車両Sの角速度を検出するジャイロセンサと車両Sの加速度を検出する加速度センサとを含む。慣性計測装置13は、検出した角速度に基づいて車両Sの向き(以下、「第2推定向き」という場合がある)を特定する。慣性計測装置13が第2推定向きを特定することで、車両Sは、白線認識装置11が第1推定向きを推定できない場合であっても、第2推定向きを用いて自動操舵を行うことができる。
【0023】
自己位置認識装置14は、車両Sの位置と、車両Sが走行中の車線における、車両Sの位置に対応する目標位置と、の距離(以下、「第2推定距離」という)を推定するための第2位置推定装置であり、いわゆるロケータである。自己位置認識装置14は、例えば、受信装置12から取得した車両Sの位置と、車線の車両区画線の位置を含む地図情報と、に基づいて、車両Sが走行中の車線における、車両Sの位置に対応する目標位置と車両Sの位置とを推定する。そして、自己位置認識装置14は、推定した目標位置と車両Sの位置とに基づいて、第2推定距離を推定する。自己位置認識装置14が第2推定距離を推定することで、車両Sは、白線認識装置11が第1推定距離を推定できない場合であっても、自己位置認識装置14が推定した第2推定距離を用いて自動操舵を行うことができる。以下の説明においては、自己位置認識装置14が第2推定距離を推定し、慣性計測装置13が第2推定向きを特定する処理を「第2位置推定」という。
【0024】
照度センサ15は、車両Sの周囲の照度を検出するためのセンサである。車速センサ16は、車両Sの車速を検出するためのセンサである。操舵制御装置20は、位置推定装置30が決定した車両Sの操舵角及び操舵トルクに基づいて、車両Sが走行する向きを調整するための装置である。
【0025】
位置推定装置30は、電子部品を含む筐体又は電子部品が実装されたプリント基板である。位置推定装置30は、白線認識装置11が推定した第1推定距離及び第1推定向き、又は自己位置認識装置14が推定した第2推定距離及び慣性計測装置13が特定した第2推定向き、に基づいて、車両Sが目標軌跡を走行するための操舵角及び操舵トルクを決定する処理を実行する。位置推定装置30は、決定した操舵角及び操舵トルクを操舵制御装置20に出力することにより、車両Sの自動操舵を実行させる。
【0026】
白線認識装置11が推定した第1推定距離は、自己位置認識装置14が推定した第2推定距離よりも、実際の距離との誤差が小さい。したがって、位置推定装置30は、自己位置認識装置14が推定した第2推定距離を用いずに、白線認識装置11が推定した第1推定距離を用いて操舵トルクを決定することで、高い精度で自動操舵を実行させることができる。しかしながら、撮像装置10の撮像方向が太陽を向いている状態(いわゆる、逆光の状態)である場合、白線認識装置11は、撮像画像から車両区画線を抽出できないことにより、第1推定距離及び第1推定向きを誤って推定する場合がある。
【0027】
このため、従来の車両Sは、逆光の状態を検出したことにより、第1位置推定から、第2位置推定に切り替える。すなわち、従来の位置推定装置30は、逆光の状態を検出していない場合は、第1推定距離及び第1推定向きを用いて操舵角及び操舵トルクを決定し、逆光の状態を検出した場合は、第2推定距離及び第2推定向きを用いて操舵角及び操舵トルクを決定する。
【0028】
しかし、逆光を検出してから第2位置推定への切り替えが完了する迄には、時間を要する。このため、逆光の検出から第2位置推定までの切り替えの間に、白線認識装置11が推定した第1推定距離及び第1推定向きと実際の距離及び向きとの誤差が大きくなると、位置推定装置30は、誤った操舵角及び操舵トルクを決定してしまう。
【0029】
そこで、位置推定装置30は、所定時間(例えば3分)が経過した時刻における車両Sの位置及び向きを推定し、推定した車両Sの位置及び向きと、当該時刻における太陽の位置及び高さとに基づいて、撮像方向が逆光の状態であるか否かを判定する。そして、位置推定装置30は、所定時間が経過した時刻に撮像方向が逆光の状態であると判定した場合に、第1位置推定から第2位置推定に切り替える。このように、位置推定装置30が、撮像方向が逆光の状態になる時刻よりも十分に前の現在の時刻に第1位置推定から第2位置推定に切り替えることで、所定時間が経過した時刻において誤った推定結果を用いて操舵角及び操舵トルクを決定することを抑制できる。その結果、位置推定装置30は、自動操舵による車両Sの挙動の乱れを抑制することができる。
以下、位置推定装置30の構成及び動作を詳細に説明する。
【0030】
<位置推定装置30の構成>
位置推定装置30は、記憶部31と、制御部32と、を有する。制御部32は、取得部321と、推定部322と、切替部323と、決定部324と、を有する。
【0031】
記憶部31は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)等の記憶媒体を有する。記憶部31は、制御部32が実行するプログラムと、車両Sの操舵角及び操舵トルクを決定するための各種の情報と、を記憶している。各種の情報の一例として、記憶部31は、車線の車両区画線の位置を示す車線情報を含む地図情報、日時毎の太陽の位置と太陽の高さとを示す日射情報を記憶している。
【0032】
制御部32は、例えばCPU(Central Processing Unit)又はECU(Electronic Control Unit)等のプロセッサである。制御部32は、記憶部31に記憶されたプログラムを実行することにより、取得部321、推定部322、切替部323及び決定部324として機能する。なお、制御部32は、1つのプロセッサで構成されていてもよいし、複数のプロセッサ又は1以上のプロセッサと電子回路との組み合わせにより構成されていてもよい。
以下、制御部32により実現される各部の構成を説明する。
【0033】
取得部321は、単位時間が経過した時刻毎に、車線における車両Sの目標位置と車両Sの位置との距離、車両Sの向き、車両Sの周囲の照度、車両Sの車速、車両Sの位置、及び現在の時刻を取得する。単位時間は、例えば20ミリ秒である。取得部321は、例えば、白線認識装置11が推定した、車線における車両Sの目標位置と車両Sの位置との第1推定距離、及び車両Sの第1推定向きを取得する。取得部321は、例えば、自己位置認識装置14が推定した、車線における車両Sの目標位置と車両Sの位置との第2推定距離及び慣性計測装置13が特定した車両Sの第2推定向きを取得する。
【0034】
取得部321は、照度センサ15が検出した車両Sの周囲の照度を取得する。取得部321は、車速センサ16が検出した車両Sの車速を取得する。取得部321は、受信装置12から、車両Sの位置及び現在の時刻を取得する。取得部321は、車両Sが備えるLiDAR(Light Detection And Ranging)等の三次元レーザ測定機(不図示)が測定して生成した点群データ、又は撮像装置10が撮像して生成した撮像画像から外部の装置(不図示)が算出した車間距離を取得する。車間距離は、車両Sと当該車両Sの先行車との距離である。なお、取得部321は、上記の機器と異なる他の機器から、上記のパラメータを取得してもよい。すなわち、取得部321が取得するデータのソース(出力元)は、上記の構成に限らず、上記と異なる他の検出器、又は検出方法であってもよい。
【0035】
推定部322は、第1時刻における車両Sの位置と、車両Sの車速と、記憶部31に記憶された地図情報と、に基づいて、第1時刻から第1時間が経過した第2時刻における車両Sの位置及び向きを推定する。第1時刻は、例えば、取得部321が取得した現在の時刻(日時)である。単位時間が経過した時刻と第1時刻とは、同じ時刻であってもよいし異なる時刻であってもよい。第1時間は、例えば、3分以上5分以下の固定値である。推定部322は、例えば、単位時間毎に、第2時刻における車両Sの位置及び向きを推定する。
【0036】
推定部322は、例えば、記憶部31に記憶された地図情報を参照することにより、取得部321が取得した車両Sの位置を含む車線を特定し、取得部321が慣性計測装置13から取得した第2推定向きに基づいて、車両Sの進行方向を特定する。そして、推定部322は、取得部321が取得した車両Sの車速に基づいて、現在の時刻から第1時間が経過した第2時刻における車両Sの位置及び向きを推定する。
【0037】
推定部322は、車両Sの操作者が予め設定した走行経路(走行ルート)を示す走行計画情報を参照することにより、第2推定位置及び第2推定向きを推定してもよい。推定部322は、例えば、記憶部31に記憶された走行計画情報を参照することにより、走行ルートにおける、取得部321が取得した車両Sの位置(第1時刻の車両Sの位置)を特定する。そして、推定部322は、車両Sの車速と走行ルートとに基づいて、走行ルートにおける第2時刻の車両Sの位置を推定し、推定した車両Sの位置と走行ルートとに基づいて第2推定位置及び第2推定向きを推定する。
【0038】
推定部322は、第2時刻から第3時刻までの第2時間における車両Sの位置及び向きをさらに推定してもよい。第2時間は、例えば、3分以上5分以下の固定値であるが、第1時間と同じ時間であってもよいし、第1時間と異なる時間であってもよい。推定部322は、例えば、記憶部31に記憶された地図情報を参照することにより、第2時間において、推定部322が推定した、第2時刻における車両Sの位置から、取得部321が取得した車速で車両Sが走行する場合の経路を推定する。そして、推定部322は、推定した経路に基づいて、第2時刻から所定の時間が経過した時刻毎の車両Sの位置及び向きを推定する。推定部322がこのように動作することで、切替部323は、撮像方向が太陽を向いている状態と撮像方向が太陽を向いていない状態とが切り替わる回数を知ることができる。切替部323の詳細は後述する。
【0039】
切替部323は、決定部324が操舵角及び操舵トルクを決定するための車両Sの位置推定処理(すなわち、第1位置推定及び第2位置推定)を切り替える。すなわち、切替部323は、決定部324が、第1推定距離及び第1推定向きを用いて操舵角及び操舵トルクを決定するか、第2推定距離及び第2推定向きを用いて操舵角及び操舵トルクを決定するか、を制御する。
【0040】
切替部323は、第1時刻における車両Sの周囲の照度が閾値以上であり、かつ第2時刻において車両Sが備える撮像装置10の撮像方向が太陽を向いている場合、少なくとも第2時刻に達する前に、第1位置推定から第2位置推定に切り替える。閾値は、撮像装置10の画角に直射日光があたる場合の下限値であり、実験又はシミュレーションにより決定される。
以下、切替部323が、撮像装置10を用いて車両Sの位置を推定する第1位置推定から、車両Sが備える自己位置認識装置(すなわち、ロケータ)を用いて車両Sの位置を推定する第2位置推定に切り替える動作を詳細に説明する。
【0041】
まず、切替部323は、第1時刻における車両Sの周囲の照度が閾値以上である場合、第2時刻における太陽の位置及び高さと、第2時刻における車両Sの位置及び向きと、に基づいて、車両Sが備える撮像装置10の撮像方向が太陽を向いているか否かを判定する。なお、本実施形態においては、説明を簡単にするために、太陽の位置及び高さのうち、太陽の位置に基づいて、撮像方向が太陽を向いているか否かを判定する動作を説明する。
【0042】
図2は、車両Sが備える撮像装置10の撮像方向を示す図である。
図2において、実線で示す車両S1は、第1時刻(すなわち、現在の時刻)の車両S、破線で示す車両S2は、第2時刻の車両S、一点鎖線で示す車両S3は、第3時刻の車両Sである。
図2においては、第1時刻における撮像装置10の撮像方向D1及び撮像範囲A1、第2時刻における撮像装置10の撮像方向D2及び撮像範囲A2、第3時刻における撮像装置10の撮像方向D3及び撮像範囲A3、車線R1、太陽F、及び太陽光Lを示す。第1時刻においては、撮像装置10の撮像方向D1と太陽光Lとは直交するため、車両S1が備える撮像装置10の撮像方向は、太陽を向いていない。
【0043】
例えば、取得部321が取得した、第1時刻における車両S1の周囲の照度が閾値以上である場合、切替部323は、記憶部31に記憶された日射情報を参照することにより、第2時刻における太陽Fの位置を特定する。切替部323は、推定部322が推定した、第2時刻における車両S(すなわち、車両S2)の位置及び向きと、特定した太陽Fの位置とに基づいて、撮像方向D2が太陽Fの方向を向いているか否かを判定する。具体的には、切替部323は、
図2に示す撮像方向D2と太陽光Lの方向との角度θが所定の角度以上である場合、切替部323は、撮像方向が太陽を向いていると判定し、角度θが所定の角度未満である場合、切替部323は、撮像方向が太陽を向いていないと判定する。所定の角度は、逆光の状態であると特定できる角度であり、実験又はシミュレーションにより決定される。
【0044】
続いて、切替部323は、撮像方向が太陽を向いていると判定したことを条件として、第2時刻に達する前に、撮像装置10を用いた車両Sの第1位置推定から車両Sが備えるロケータ(
図1に示す自己位置認識装置14)を用いた第2位置推定に切り替える。
図3は、位置推定処理を切り替える動作を説明するための図である。
図3の横軸は、時刻を示す。
図3の縦軸は、取得部321が取得した「照度」、各時刻の「撮像方向」、各時刻から第1時間が経過した第2時刻の「推定撮像方向」、切替部323が切り替えた「位置推定処理」、第2時刻における車両Sの周囲の分岐点又は合流点の有無を示す「分岐・合流」及び各時刻における車両Sと車両Sの先行車との「車間距離」を示す。
図3においては、撮像方向が太陽を向いている状態を「逆光」、撮像方向が太陽を向いていない状態を「順光」と示す。
【0045】
切替部323は、例えば、時刻T1を経過した時刻において、時刻T1から第1時間が経過した時刻T2における撮像方向(すなわち、時刻T1を経過した時刻における「推定撮像方向」)が逆光であると判定する。そして、切替部323は、時刻T2よりも前の時刻に、位置推定処理を、撮像装置10を用いた第1位置推定から自己位置認識装置14(すなわち、ロケータ)を用いた第2位置推定に切り替える。切替部323が上記のように動作することで、切替部323は、撮像方向が逆光の状態になる時刻よりも十分に前の時刻に第1位置推定から第2位置推定に切り替えることができる。
以上、切替部323が第1位置推定から第2位置推定に切り替える動作を詳細に説明した。
【0046】
ところで、白線認識装置11を用いた第1位置推定においては、撮像装置10の撮像方向が太陽を向いていない状態であっても、車線の分岐点又は合流点のように車線区画線の幅が変化する位置においては、第1推定距離及び第1推定向きを推定する精度が低下する。そこで、切替部323は、車両Sの周囲の照度が閾値未満である場合、又は照度が閾値以上かつ撮像方向が太陽を向いていないと判定した場合、所定の条件を満たしたことにより、第1位置推定から第2位置推定に切り替えてもよい。所定の条件は、推定部322が推定した、第2時刻における車両Sの位置から所定の範囲内に、車線の分岐点又は合流点があることである。所定の範囲は、例えば、1キロメートルである。
【0047】
切替部323は、例えば、記憶部31に記憶された、車線の分岐点及び合流点を示す地図情報を参照することにより、第2時刻における車両Sの位置から所定の範囲内に分岐点又は合流点があるか否かを判定する。切替部323は、例えば、
図3の時刻T4が経過した時刻において、第1時間が経過した時刻における車両Sの位置の周囲に分岐点又は合流点があると判定したことにより、第1位置推定から第2位置推定に切り替える。切替部323がこのように動作することで、所定時間が経過した時刻において、撮像方向が太陽を向いていない状態であっても、第1位置推定の精度の低下を推定し、第2位置推定に切り替えることができる。
【0048】
さらに、白線認識装置11を用いた第1位置推定においては、車両Sと当該車両Sの先行車との距離(いわゆる、車間距離)が短い場合は、撮像装置10の撮像方向が太陽を向いていない場合であっても、撮像装置10が車線区画線を含む撮像画像を撮像できない場合がある。この場合、白線認識装置11は、撮像画像から車両区画線を抽出できないため、第1推定距離及び第1推定向きを推定する精度が低下する。
【0049】
そこで、切替部323は、車両の周囲の照度が閾値未満である場合、又は照度が閾値以上かつ撮像方向が太陽を向いていないと判定した場合、第1時刻における車両Sの位置と、第1時刻における車両Sの先行車の位置と、の距離が所定の距離未満であることを所定の条件としてもよい。所定の距離は、例えば、5メートルであり、実験又はシミュレーションにより決定される。切替部323がこのように動作することで、撮像方向が太陽を向いていない状態であっても、車両Sと先行車との車間距離が短いことにより、撮像画像に車両区画線が含まれない場合は、第1位置推定から第2位置推定に切り替えることができる。
【0050】
切替部323は、第1位置推定から第2位置推定に切り替えた時刻から後の時刻において、所定の条件を満たしたことにより、第2位置推定から第1位置推定に切り替える。所定の条件は、照度が閾値以上の状態から照度が閾値未満の状態に変化したこと、又は撮像方向が太陽を向いている状態から撮像方向が太陽を向いていない状態に変化したことである。切替部323は、例えば、第1位置推定から第2位置推定に切り替えた後の時刻においては、単位時間が経過した時刻毎に、当該時刻の照度が閾値以上であるか否か、及び当該時刻の車両Sの位置及び向きに基づく撮像方向が太陽を向いているか否かを判定する。そして、切替部323は、判定結果が所定の条件を満たしたことにより、第2位置推定から第1位置推定に切り替える。
【0051】
例えば、
図3に示すように、切替部323は、時刻T3が経過した時刻における撮像方向(
図3に示す「撮像方向」)が「順光」であると判定したことにより、第2位置推定から第1位置推定に切り替える。切替部323がこのように動作することで、切替部323は、撮像装置10が逆光の状態から逆光ではない状態に変化した場合は、第2位置推定から、第2位置推定よりも精度が高い第1位置推定に速やかに切り替えることができる。
【0052】
切替部323は、第1位置推定から第2位置推定に切り替えた時刻から後の時刻において、分岐点又は合流点に関する所定の条件を満たしたことにより、第2位置推定から第1位置推定に切り替えてもよい。所定の条件は、照度が閾値未満又は撮像方向が太陽を向いていない状態であること、かつ車両Sの位置から所定の範囲内に車線の分岐点又は合流点がある状態から、車両Sの位置から所定の範囲内に車線の分岐点又は合流点がない状態に変化したことである。
【0053】
例えば、第1位置推定から第2位置推定に切り替えた時刻から後の時刻において、照度が閾値未満又は撮像方向が太陽を向いていない状態であるとする。この場合、切替部323は、第1位置推定から第2位置推定に切り替えた時刻から後の時刻において、車両Sの位置から所定の範囲内に車線の分岐点又は合流点があると判定した後に、当該車線の分岐点又は合流点がないと判定が変化したことにより、第2位置推定から第1位置推定に切り替える。切替部323がこのように動作することで、適切なタイミングで第2位置推定よりも精度が高い第1位置推定を用いることができる。
【0054】
切替部323は、第1位置推定から第2位置推定に切り替えた時刻から後の時刻において、照度又は撮像方向、及び車両Sと当該車両Sの先行車との車間距離に関する所定の条件を満たしたことにより、第2位置推定から第1位置推定に切り替えてもよい。所定の条件は、照度が閾値未満又は撮像方向が太陽を向いていない状態であること、かつ車両Sの位置と車両Sの先行車の位置との距離が所定の距離未満から所定の距離以上に変化したことである。
【0055】
例えば、第1位置推定から第2位置推定に切り替えた時刻から後の時刻において、照度が閾値未満又は撮像方向が太陽を向いていない状態であるとする。この場合、切替部323は、第1位置推定から第2位置推定に切り替えた時刻から後の時刻において、車両Sと当該車両Sの先行車との車間距離が所定の距離以上であると判定した後に、当該車間距離が所定の距離未満であると判定が変化したことにより、第2位置推定から第1位置推定に切り替える。切替部323がこのように動作することで、適切なタイミングで第2位置推定よりも精度が高い第1位置推定を用いることができる。
【0056】
車両Sが走行中の車線に複数のカーブ路が含まれる場合、撮像方向が太陽を向いている状態と撮像方向が太陽を向いていない状態とが短時間で変化する場合がある。このような場合、切替部323が第1位置推定と第2位置推定とを頻繁に切り替えると、車両Sの挙動が不安定になる場合がある。そこで、切替部323は、第1位置推定から第2位置推定に切り替えた後に、第2時刻から第3時刻までの第2時間における、太陽の位置及び高さと車両Sの位置及び向きとに基づいて、第2位置推定から第1位置推定に切り替えるか否かを決定してもよい。切替部323は、例えば、第1時刻における照度が閾値以上である場合、所定の条件を満たした場合に、第2位置推定から第1位置推定に切り替える。所定の条件は、撮像方向が太陽を向いていると判定した期間が、第2時間に所定の回数未満であることである。所定の回数は、例えば、2回である。
【0057】
図4は、複数のカーブ路を含む車線を走行する車両Sを説明するための図である。
図4に示す車線R2おいて、斜線で示す区間B1、区間B3、区間B5は、撮像方向が太陽を向いていないと判定する区間である。また、区間B1と区間B3との間の区間B2、及び区間B3と区間B5との間の区間B4は、撮像方向が太陽を向いていると判定する区間である。車両Sは、第2時間において、区間B1から区間B5までを走行する。
【0058】
切替部323は、推定部322が推定した、記憶部31に記憶された地図情報を参照することにより、第2時間における太陽の位置及び高さを特定する。切替部323は、推定部322が推定した、第2時間における車両Sの位置及び向きを取得する。
図4に示す車線R2において照度が閾値以上である場合、切替部323、車両Sが区間B1から区間B2に移動した時刻、及び区間B3から区間B4に移動した時刻において、撮像方向が太陽を向いていると判定した期間に変化したと判定する。切替部323は、撮像方向が太陽を向いていると判定した期間が2回であることにより、所定の条件を満たさないと判定し、第2位置推定から第1位置推定に切り替えない。切替部323がこのように動作することで、位置推定処理を頻繁に切り替えることにより車両Sの挙動が不安定になることを抑制できる。
【0059】
決定部324は、撮像装置10を用いて推定した車両Sの推定位置と、撮像装置10が撮像した撮像画像に基づく車両Sの目標位置と、の第1推定距離及び車両Sの第1推定向きを取得する。決定部324は、ロケータ(
図1に示す自己位置認識装置14)を用いて推定した車両Sの推定位置と、地図情報に基づく目標位置と、の第2推定距離、及び慣性計測装置13が特定した第2推定向きを取得する。そして、決定部324は、第1推定距離及び第1推定向き、又は第2推定距離及び第2推定向きに基づいて、車両Sの操舵角及び操舵トルクを決定する。
【0060】
決定部324は、例えば、切替部323が第1位置推定から第2位置推定に切り替えた場合は、第2推定距離及び第2推定向きに基づく車両Sの操舵角及び操舵トルクを決定する。決定部324は、切替部323が第2位置推定から第1位置推定に切り替えた場合は、第1推定距離及び第1推定向きに基づく車両Sの操舵角及び操舵トルクを決定する。決定部324は、例えば、第1推定距離又は第2推定距離が、単位時間が経過した時刻毎に小さくなるように、車両Sの操舵角及び操舵トルクを決定する。
【0061】
ところで、撮像画像から抽出した車両区画線の位置に基づく第1推定距離は、受信装置12が特定した車両Sの位置に基づく第2推定距離よりも実際の距離との誤差が小さいため、同じ時刻に推定した距離であっても異なる距離が推定される。したがって、第1位置推定と第2位置推定とを切り替えた直後の時刻においては、車両Sの位置と目標位置との距離が大きく変換してしまう。そこで、決定部324は、切替部323が、第1位置推定と第2位置推定とを切り替えた時刻から所定の時間が経過した時刻に、第1推定距離と第2推定距離とが一致するように、所定の時間において第1推定距離又は第2推定距離を補正する。所定の時間は、例えば、0.5秒である。
【0062】
一例として、決定部324は、切替部323が第1位置推定と第2位置推定とを切り替えた際の第1推定距離と第2推定距離との差を算出する。決定部324は、算出した差を、所定の時間において単位時間が経過する回数(例えば、所定の時間が0.5秒であり、単位時間が20ミリ秒である場合、25回)で除算した除算値を算出する。決定部324は、所定の時間において、切替部323が切り替える前の位置推定処理により取得した第1推定距離又は第2推定距離に算出した除算値を加算又は減算することにより、第1推定距離又は第2推定距離を補正する。
【0063】
決定部324がこのように動作することで、第1位置推定と第2位置推定とを切り替えることにより、推定距離が大きく変化した場合であっても、所定の時間が経過した時刻においては、切り替えた後の推定距離に類似又は一致する値で操舵角及び操舵トルクを決定できる。さらに、第1位置推定と第2位置推定とを切り替えることにより、推定距離が大きく変化した場合であっても、操舵角及び操舵トルクが大きく変化して車両Sの挙動が不安定になることを抑制できる。
【0064】
<位置推定装置30における処理シーケンス>
図5及び
図6は、位置推定装置30における処理シーケンスの例を示す図である。
図5に示す処理シーケンスは、第1位置推定から第2位置推定に切り替える動作を示すシーケンスであり、
図6に示す処理シーケンスは、第2位置推定から第1位置推定に切り替える動作を示すシーケンスである。
図6においては、切替部323が第1位置推定から第2位置推定に切り替えた後の時刻における動作を示す。位置推定装置30は、
図5及び
図6に示す処理シーケンスを一定時間毎に(例えば、単位時間が経過した時刻毎に)繰り返す。
【0065】
まず、第1位置推定から第2位置推定に切り替える動作を説明する。取得部321は、第1時刻において受信装置12が算出した車両Sの位置、車両Sの車速、車両Sの周囲の照度を取得する(S10)。車両Sの周囲の照度が閾値Y1以上である場合(S11のYES)、推定部322は、第2時刻における車両Sの位置と向きとを推定する(S12)。切替部323は、記憶部31に記憶された日射情報を参照することにより、第2時刻における太陽の位置と高さとを特定する(S13)。
【0066】
切替部323は、車両Sの位置及び向きと太陽の位置及び高さとに基づいて、太陽光の方向と撮像方向との角度(
図2に示す角度θ)を算出する(S14)。算出した角度が閾値Y2未満である場合(S15のYES)、切替部323は、撮像方向が太陽を向いていると判定し、第1位置推定から第2位置推定に切り替える(S16)。算出した角度が閾値Y2以上である場合(S15のNO)、切替部323は、第1位置推定を継続する(S21)。
【0067】
車両Sの周囲の照度が閾値Y1未満である場合(S11のNO)、切替部323は、記憶部31を参照することにより、第2時刻における車両Sの位置の周囲の位置の地図を取得する(S17)。第2時刻における車両Sの位置の周囲の範囲に分岐点又は合流点がある場合(S18のNO)、切替部323は、第1位置推定から第2位置推定に切り替える(S16)。切替部323は、第2時刻における車両Sの位置の周囲の範囲に分岐点又は合流点がない場合(S18のYES)、第1時刻における車両Sと先行車との距離を取得する(S19)。取得した距離が所定距離以上である場合(S20のYES)、切替部323は、第1位置推定を継続する(S21)。取得した距離が所定距離未満である場合(S20のNO)、切替部323は、第1位置推定から第2位置推定に切り替える(S16)。
【0068】
次に、第2位置推定から第1位置推定に切り替える動作を説明する。取得部321は、第1時刻において受信装置12が算出した車両Sの位置、車両Sの車速、車両Sの周囲の照度を取得する(S30)。
図6において、第1時刻は、例えば、現在の時刻である。推定部322は、第1時刻における車両Sの位置と向きとを推定する(S31)。切替部323は、記憶部31に記憶された日射情報を参照することにより、第1時刻における太陽の位置と高さとを特定する(S32)。切替部323は、車両Sの位置及び向きと太陽の位置及び高さとに基づいて、太陽光の方向と撮像方向との角度(
図2に示す角度θ)を算出する(S33)。
【0069】
切替部323は、照度が閾値以上の状態から閾値未満の状態に変化せず、かつ太陽光と撮像方向との角度が、撮像方向が太陽を向いている状態から撮像方向が太陽を向いていない状態に変化していない場合(S34のNO)、第2位置推定を継続する(S35)。照度が閾値以上の状態から閾値未満の状態に変化、又は撮像方向が太陽を向いている状態から撮像方向が太陽を向いていない状態に変化した場合(S34のYES)、切替部323は、記憶部31を参照することにより、第1時刻における車両Sの周囲の地図を取得する(S36)。
【0070】
切替部323は、車両Sの周囲に分岐点又は合流点がある状態から、車両Sの周囲に分岐点又は合流点がない状態に変化していない場合(S37のNO)、第2位置推定を継続する(S35)。切替部323は、車両Sの周囲に分岐点又は合流点がある状態から、車両Sの周囲に分岐点又は合流点がない状態に変化した場合(S37のYES)、第1時刻における車両Sと先行車との距離を取得する(S38)。切替部323は、取得した距離が所定距離未満から所定距離以上に変化していない場合(S39のNO)、第2位置推定を継続する(S35)。切替部323は、取得した距離が所定距離未満から所定距離以上に変化した場合(S39のYES)、第2位置推定から第1位置推定に切り替える(S40)。
【0071】
<位置推定装置30における効果>
以上説明したように、位置推定装置30は、第1時刻における車両Sの位置と、車両Sの車速と、地図情報と、に基づいて、第1時刻から第1時間が経過した第2時刻における車両Sの位置及び向きを推定する推定部322と、第1時刻における車両Sの周囲の照度が閾値以上である場合、第2時刻における太陽の位置及び高さと、第2時刻における車両Sの位置及び向きと、に基づいて、車両Sが備える撮像装置10の撮像方向が太陽を向いていると判定したことを条件として、撮像装置10を用いた車両Sの第1位置推定から車両Sが備えるロケータを用いた第2位置推定に切り替える切替部323と、を有する。
【0072】
位置推定装置30がこのように構成されることで、第1時刻(例えば、現在の時刻)から第1時間が経過した第2時刻において、撮像方向が太陽を向いていると判定した場合に、第1時刻において、第1位置推定から第2位置推定に切り替えることを決定できる。その結果、位置推定装置30は、撮像方向が太陽を向いていることにより第1位置推定による第1推定距離及び第1推定向きの誤差が大きくなる第2時刻よりも前の第1時刻に第2位置推定に切り替えることができる。その結果、誤った推定距離及び推定向きに基づく操舵角及び操舵トルクを決定することを抑制できる。
【0073】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0074】
10 撮像装置
11 白線認識装置
12 受信装置
13 慣性計測装置
14 自己位置認識装置
15 照度センサ
16 車速センサ
20 操舵制御装置
30 位置推定装置
31 記憶部
32 制御部
321 取得部
322 推定部
323 切替部
324 決定部