(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025039208
(43)【公開日】2025-03-21
(54)【発明の名称】静止誘導電器および静止誘導電器組立体
(51)【国際特許分類】
H01F 27/28 20060101AFI20250313BHJP
H01F 27/20 20060101ALI20250313BHJP
【FI】
H01F27/28 176
H01F27/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023146117
(22)【出願日】2023-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】蒲原 聖也
(72)【発明者】
【氏名】内田 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】野口 直樹
(72)【発明者】
【氏名】中楯 真澄
(72)【発明者】
【氏名】高野 啓
【テーマコード(参考)】
5E043
5E050
【Fターム(参考)】
5E043AA05
5E043DA01
5E043DA06
5E050BA02
5E050CA03
5E050HA06
(57)【要約】
【課題】冷却性能の向上および小型化を図ることができる静止誘導電器および静止誘導電器組立体を提供することである。
【解決手段】実施形態の静止誘導電器は、巻線と、内側筒と、外側筒と、内側制流板と、外側制流板と、を持つ。内側筒は、巻線との間に第1間隔を置いて配置される。外側筒は、巻線との間に第2間隔を置いて配置される。内側制流板および外側制流板は、軸方向に間隔を置いて交互に配置される。内側制流板は、外側筒との間に第2間隔以上の間隔を有する。内側制流板は、内側筒との間に第1間隔未満の第3間隔を有する。外側制流板は、内側筒との間に第1間隔以上の間隔を有する。外側制流板は、外側筒との間に第2間隔未満の第4間隔を有する。第1間隔が第2間隔より大きい場合には第3間隔が第4間隔より大きい。第2間隔が第1間隔より大きい場合には第4間隔が第3間隔より大きい。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円盤環状に巻回された巻線と、
前記巻線の径方向において前記巻線との間に第1間隔を置いて前記巻線の内側に配置された内側筒と、
前記径方向において前記巻線との間に第2間隔を置いて前記巻線の外側に配置された外側筒と、
前記巻線の軸方向において隣り合う前記巻線の間に配置され、前記径方向において前記外側筒との間に前記第2間隔以上の間隔を有し、前記径方向において前記内側筒との間に前記第1間隔未満の第3間隔を有する、内側制流板と、
前記軸方向において隣り合う前記巻線の間に配置され、前記径方向において前記内側筒との間に前記第1間隔以上の間隔を有し、前記径方向において前記外側筒との間に前記第2間隔未満の第4間隔を有する、外側制流板と、を有し、
前記内側制流板および前記外側制流板は、前記軸方向に間隔を置いて交互に配置され、
前記第1間隔が前記第2間隔より大きい場合には前記第3間隔が前記第4間隔より大きく、前記第2間隔が前記第1間隔より大きい場合には前記第4間隔が前記第3間隔より大きい、
静止誘導電器。
【請求項2】
前記第2間隔が前記第1間隔より大きく、前記第4間隔が前記第3間隔より大きい、
請求項1に記載の静止誘導電器。
【請求項3】
前記軸方向において隣り合う前記巻線の間に配置され、前記巻線の周方向に離間して配置された巻線スペーサと、
前記径方向において前記巻線と前記内側筒との間に配置され、前記周方向に離間して配置された内側スペーサと、
前記径方向において前記巻線と前記外側筒との間に配置され、前記周方向に離間して配置された外側スペーサと、をさらに有する、
請求項1または2に記載の静止誘導電器。
【請求項4】
鉄心と、
前記鉄心の径方向において前記鉄心の外側に配置される第1ユニットと、
前記径方向において前記第1ユニットの外側に配置される第2ユニットと、
前記鉄心の軸方向において前記第1ユニットおよび前記第2ユニットの外側に配置される押圧板と、
前記鉄心、前記第1ユニット、前記第2ユニットおよび前記押圧板を収容するタンクと、を有し、
前記第1ユニットおよび前記第2ユニットは、
円盤環状に巻回された巻線と、
前記径方向において前記巻線の内側に配置された内側筒と、
前記径方向において前記巻線の外側に配置された外側筒と、
前記軸方向において隣り合う前記巻線の間に配置され、前記径方向において前記外側筒から離間して配置される内側制流板と、
前記軸方向において隣り合う前記巻線の間に配置され、前記径方向において前記内側筒から離間して配置される外側制流板と、を有し、
前記内側制流板および前記外側制流板は、前記軸方向に間隔を置いて交互に配置され、
前記軸方向における前記第2ユニットの端部には、前記内側制流板が配置され、
前記押圧板は、前記第1ユニットの前記巻線および前記第2ユニットの前記巻線を前記軸方向に押圧し、
前記押圧板は、前記径方向において前記タンクから離間して配置され、
前記軸方向において、前記第2ユニットの前記外側筒の第1側の端部は、前記第2ユニットの前記第1側の端部に配置された前記内側制流板より、内側に配置され、
前記第2ユニットの前記外側筒と前記タンクとの間には、両者間を閉塞する閉塞板が設置される、
静止誘導電器組立体。
【請求項5】
前記押圧板は、前記径方向において前記第1ユニットの前記内側筒から離間して配置される、
請求項4に記載の静止誘導電器組立体。
【請求項6】
前記押圧板は、前記押圧板を前記軸方向に貫通する貫通空間を有する、
請求項4または5に記載の静止誘導電器組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、静止誘導電器および静止誘導電器組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
静止誘導電器の巻線は、通電により発熱する。巻線を冷却するため、静止誘導電器に冷却剤が流通する。静止誘導電器には、冷却性能の向上や小型化が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-033940号公報
【特許文献2】特開平9-162040号公報
【特許文献3】特開平6-275444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、冷却性能の向上や小型化を図ることができる静止誘導電器および静止誘導電器組立体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の静止誘導電器は、巻線と、内側筒と、外側筒と、内側制流板と、外側制流板と、を持つ。巻線は、円盤環状に巻回される。内側筒は、巻線の径方向において巻線との間に第1間隔を置いて巻線の内側に配置される。外側筒は、径方向において巻線との間に第2間隔を置いて巻線の外側に配置される。内側制流板は、巻線の軸方向において隣り合う巻線の間に配置される。内側制流板は、径方向において外側筒との間に第2間隔以上の間隔を有する。内側制流板は、径方向において内側筒との間に第1間隔未満の第3間隔を有する。外側制流板は、軸方向において隣り合う巻線の間に配置される。外側制流板は、径方向において内側筒との間に第1間隔以上の間隔を有する。外側制流板は、径方向において外側筒との間に第2間隔未満の第4間隔を有する。内側制流板および外側制流板は、軸方向に間隔を置いて交互に配置される。第1間隔が第2間隔より大きい場合には第3間隔が第4間隔より大きい。第2間隔が第1間隔より大きい場合には第4間隔が第3間隔より大きい。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1の実施形態における静止誘導電器の平面断面図。
【
図4】第2の実施形態における静止誘導電器組立体の概略構成図。
【
図5】第2の実施形態の変形例における静止誘導電器組立体の概略構成図。
【
図6】従来技術における静止誘導電器組立体の概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の静止誘導電器および静止誘導電器組立体を、図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1は、
図2のI-I線における静止誘導電器1の平面断面図である。
図2は、
図1のII-II線における静止誘導電器の側面断面図である。
【0008】
本願において、円筒座標系のZ方向、R方向およびθ方向が、以下のように定義される。Z方向は、巻線3(または鉄心)の軸方向である。例えば、Z方向は鉛直方向であり、+Z側は上側であり、-Z側は下側である。Z方向において、静止誘導電器1の中央に接近する方向を内側と呼び、中央から離反する方向を外側と呼ぶ場合がある。R方向は、巻線3(または鉄心)の径方向である。+R側は径方向の外側であり、-R側は径方向の内側である。θ方向は、巻線3(または鉄心)の周方向である。例えば、R方向およびθ方向は水平方向である。
【0009】
静止誘導電器1は、例えば変圧器やリアクトルなどである。静止誘導電器1は、巻線3と、内側筒(内側絶縁筒)4と、外側筒(外側絶縁筒)5と、を有する。
巻線3は、線材を巻回して形成される。線材は、線状の導体および導体の表面を覆うフィルムにより構成される。導体は、銅などの導電性を有する金属材料等により形成される。導体は、例えば断面が矩形状の平角銅線である。フィルムは、電気絶縁性を有する樹脂材料等により形成される。
【0010】
巻線3は、円盤環状に形成される。複数の巻線3が、Z方向に並んで配置される。Z方向に隣り合う巻線3の間に、巻線スペーサ(水平間隔片)23が配置される。巻線スペーサ23は、電気絶縁性を有する材料により、矩形の平板状に形成される。複数の巻線スペーサ23が、θ方向に等角度間隔で配置される。Z方向に隣り合う巻線3の間であって、θ方向に隣り合う巻線スペーサ23の間に、冷却ガスが流通する巻線流路(水平冷却路)13が形成される。
【0011】
内側筒4は、電気絶縁性を有する材料により、円筒状に形成される。内側筒4は、巻線3と同軸状に、巻線3の-R側に配置される。巻線3と内側筒4との間に、内側スペーサ(内側垂直間隔片)24が配置される。内側スペーサ24は、電気絶縁性を有する材料により、断面が矩形の棒状に形成される。内側スペーサ24により、巻線3および内側筒4は、R方向に第1間隔(内側垂直冷却路寸法)3eを置いて配置される。巻線スペーサ23の-R側の端部が、内側スペーサ24に接続される。複数の内側スペーサ24が、θ方向に等角度間隔で配置される。巻線3と内側筒4との間であって、θ方向に隣り合う内側スペーサ24の間に、冷却ガスが流通する内側流路(内側垂直冷却路)14が形成される。
【0012】
外側筒5は、電気絶縁性を有する材料により、円筒状に形成される。外側筒5は、巻線3と同軸状に、巻線3の+R側に配置される。巻線3と外側筒5との間に、外側スペーサ(外側垂直間隔片)25が配置される。外側スペーサ25は、電気絶縁性を有する材料により、断面が矩形の棒状に形成される。外側スペーサ25により、巻線3および外側筒5は、R方向に第2間隔(外側垂直冷却路寸法)3fを置いて配置される。巻線スペーサ23の+R側の端部が、外側スペーサ25に接続される。複数の外側スペーサ25が、θ方向に等角度間隔で配置される。巻線3と外側筒5との間であって、θ方向に隣り合う外側スペーサ25の間に、冷却ガスが流通する外側流路(外側垂直冷却路)15が形成される。
【0013】
図2に示されるように、静止誘導電器1は、内側制流板(内側閉塞板)7と、外側制流板(外側閉塞板)8と、を有する。
内側制流板7および外側制流板8は、電気絶縁性を有する材料により、円盤環状に形成される。内側制流板7および外側制流板8は、巻線3と同軸状に配置される。内側制流板7および外側制流板8は、Z方向に隣り合う巻線3の間に配置される。内側制流板7および外側制流板8は、巻線スペーサ23(
図1参照)により支持される。
【0014】
内側制流板7の外径は、外側筒5の内径より小さい。内側制流板7の+R側は、外側筒5からR方向に離間している。内側制流板7は、R方向において外側筒5との間に間隔7fを有する。
外側制流板8の内径は、内側筒4の外径より大きい。外側制流板8の-R側は、内側筒4からR方向に離間している。外側制流板8は、R方向において内側筒4との間に間隔8eを有する。
【0015】
内側制流板7および外側制流板8は、Z方向に間隔を置いて交互に配置される。Z方向に隣り合う内側制流板7と外側制流板8との間に、サブユニット9が形成される。1つのサブユニット9には、複数の巻線3が含まれる。1つのサブユニット9内でZ方向に隣り合う巻線3の間には、内側制流板7および外側制流板8が配置されない。静止誘導電器1には、複数のサブユニット9がZ方向に並んで形成される。複数のサブユニット9のうち、-Z側の端部のサブユニット9が、第1のサブユニット9である。第1のサブユニット9の+Z側に隣り合うサブユニット9が、第2のサブユニット9である。複数のサブユニット9に含まれる巻線3の個数は、相互に同じでもよく、異なってもよい。
【0016】
静止誘導電器1の巻線3は、冷却剤により冷却される。冷却剤は、冷却ガスであるが、冷却液でもよい。冷却ガスは、SF6や空気、N2、CO2などである。冷却ガスは、静止誘導電器1の-Z側から流入し、+Z側に流出する。
【0017】
例えば、静止誘導電器1の-Z方向の端部に、内側制流板7が配置される。冷却ガスは、この内側制流板7の+R側を通り、第1のサブユニット9の外側流路15に流入する。冷却ガスは、巻線流路13を通り、内側流路14に流入する。冷却ガスは、第1のサブユニット9を流通する過程で、第1のサブユニット9に含まれる複数の巻線3を冷却する。冷却ガスは、外側制流板8の-R側を通り、第2のサブユニット9の内側流路14に流入する。
【0018】
冷却ガスは、静止誘導電器1の内部を、蛇腹状に流通する。例えば、静止誘導電器1の+Z側の端部には、内側制流板7が配置される。冷却ガスは、この内側制流板7の+R側を通り、静止誘導電器1から流出する。
【0019】
図3は、
図2のIII部における静止誘導電器1の側面断面の拡大図である。前述されたように、内側制流板7は、R方向において外側筒5との間に間隔7fを有する。間隔7fの大きさは、巻線3と外側筒5との間の第2間隔3f以上である。すなわち、内側制流板7は、巻線3の+R側の端部から、+R側に突出しない。内側制流板7は、外側流路15における冷却ガスの+Z側への流れを阻害しない。
【0020】
これに加えて、内側制流板7は、R方向において内側筒4との間に第3間隔(内側閉塞板漏れ寸法)7eを有する。第3間隔7eの大きさは、巻線3と内側筒4との間の第1間隔3e未満である。すなわち、内側制流板7は、巻線3の-R側の端部から、-R側に突出する。内側流路14を+Z側に流れる冷却ガスの一部は、内側制流板7に衝突し、巻線流路13に流入する。その一方で、冷却ガスの残部は、内側制流板7の-R側を通り、+Z側に隣り合うサブユニット9の内側流路14に流入する。これにより、冷却ガスの圧力損失が抑制される。
【0021】
前述されたように、外側制流板8は、R方向において内側筒4との間に間隔8eを有する。間隔8eの大きさは、巻線3と内側筒4との間の第1間隔3e以上である。すなわち、外側制流板8は、巻線3の-R側の端部から、-R側に突出しない。外側制流板8は、内側流路14における冷却ガスの+Z側への流れを阻害しない。
【0022】
これに加えて、外側制流板8は、R方向において外側筒5との間に第4間隔(外側閉塞板漏れ寸法)8fを有する。第4間隔8fの大きさは、巻線3と外側筒5との間の第2間隔3f未満である。すなわち、外側制流板8は、巻線3の+R側の端部から、+R側に突出する。外側流路15を+Z側に流れる冷却ガスの一部は、外側制流板8に衝突し、巻線流路13に流入する。その一方で、冷却ガスの残部は、外側制流板8の+R側を通り、+Z側に隣り合うサブユニット9の外側流路15に流入する。これにより、冷却ガスの圧力損失が抑制される。
【0023】
第1間隔3eと第2間隔3fとの間に差異が存在する場合がある。この場合に、第3間隔7eと第4間隔8fとの間にも差異を設ける。第1間隔3eが第2間隔3fより大きい場合には、第3間隔7eを第4間隔8fより大きくする。第2間隔3fが第1間隔3eより大きい場合には、第4間隔8fを第3間隔7eより大きくする。これにより、内側流路14および外側流路15を流通する冷却ガスの圧力損失が抑制される。
【0024】
第2間隔3fが第1間隔3eより大きく、第4間隔8fが第3間隔7eより大きいことが望ましい。
外側流路15の第2間隔3fと内側流路14の第1間隔3eとが同じであると仮定する。この場合に、外側流路15の流路断面積は、内側流路14の流路断面積より大きい。第2間隔3fが第1間隔3eより大きく、第4間隔8fが第3間隔7eより大きければ、外側流路15の流路断面積が、内側流路14の流路断面積に比べて、顕著に大きくなる。これにより、冷却ガスの圧力損失が顕著に抑制される。
【0025】
以上に詳述されたように、第1の実施形態の静止誘導電器1は、巻線3と、内側筒4と、外側筒5と、内側制流板7と、外側制流板8と、を持つ。巻線3は、円盤環状に巻回される。内側筒4は、R方向において巻線3との間に第1間隔3eを置いて巻線3の内側に配置される。外側筒5は、R方向において巻線3との間に第2間隔3fを置いて巻線3の外側に配置される。内側制流板7は、Z方向において隣り合う巻線3の間に配置される。内側制流板7は、R方向において外側筒5との間に第2間隔3f以上の間隔7fを有する。内側制流板7は、R方向において内側筒4との間に第1間隔3e未満の第3間隔7eを有する。外側制流板8は、Z方向において隣り合う巻線3の間に配置される。外側制流板8は、R方向において内側筒4との間に第1間隔3e以上の間隔8eを有する。外側制流板8は、R方向において外側筒5との間に第2間隔3f未満の第4間隔8fを有する。内側制流板7および外側制流板8は、Z方向に間隔を置いて交互に配置される。第1間隔3eが第2間隔3fより大きい場合には、第3間隔7eが第4間隔8fより大きい。第2間隔3fが第1間隔3eより大きい場合には、第4間隔8fが第3間隔7eより大きい。
これにより、内側流路14および外側流路15を流通する冷却ガスの圧力損失が抑制される。したがって、静止誘導電器1の冷却性能の向上を図ることができる。
【0026】
第2間隔3fが第1間隔3eより大きく、第4間隔8fが第3間隔7eより大きいことが望ましい。
この場合、冷却ガスが流通する外側流路15の流路断面積が、内側流路14の流路断面積に比べて、顕著に大きくなる。これにより、冷却ガスの圧力損失が抑制される。したがって、静止誘導電器1の冷却性能の向上を図ることができる。
【0027】
第1の実施形態の静止誘導電器1は、巻線スペーサ23と、内側スペーサ24と、外側スペーサ25と、を有する。巻線スペーサ23は、Z方向において隣り合う巻線3の間に配置され、θ方向に離間して配置される。内側スペーサ24は、R方向において巻線3と内側筒4との間に配置され、θ方向に離間して配置される。外側スペーサ25は、R方向において巻線3と外側筒5との間に配置され、θ方向に離間して配置される。
【0028】
巻線スペーサ23により、Z方向に隣り合う巻線3の間であって、θ方向に隣り合う巻線スペーサ23の間に、冷却ガスが流通する巻線流路13が形成される。内側スペーサ24により、巻線3と内側筒4との間であって、θ方向に隣り合う内側スペーサ24の間に、冷却ガスが流通する内側流路14が形成される。内側スペーサ24により、巻線3および内側筒4が、R方向に第1間隔3eを置いて配置される。外側スペーサ25により、巻線3と外側筒5との間であって、θ方向に隣り合う外側スペーサ25の間に、冷却ガスが流通する外側流路15が形成される。外側スペーサ25により、巻線3および外側筒5は、R方向に第2間隔3fを置いて配置される。これらにより、静止誘導電器1の冷却性能の向上を図ることができる。
【0029】
(第2の実施形態)
図4は、第2の実施形態における静止誘導電器組立体10の概略構成図である。第1の実施形態と同様である点に関する第2の実施形態の説明は省略される場合がある。
【0030】
静止誘導電器組立体10は、鉄心31と、第1ユニット1Aと、第2ユニット1Bと、タンク32と、押圧板(締付板)33と、を有する。
鉄心31は、鉄などの金属材料により円柱状に形成される。
第1ユニット1Aは、R方向において鉄心31の外側に配置される。
第2ユニット1Bは、R方向において第1ユニット1Aの外側に配置される。
【0031】
第1ユニット1Aおよび第2ユニット1Bはそれぞれ、巻線3と、内側筒4と、外側筒5と、内側制流板7と、外側制流板8と、を有する。
巻線3は、円盤環状に巻回される。複数の巻線3が、Z方向に並んで配置される。Z方向に隣り合う巻線3の間には、冷却ガスが流通する巻線流路13(
図1-3参照)が形成される。なお、
図4-6では、巻線流路13の記載が省略されている。
【0032】
内側筒4は、R方向において巻線3の内側に配置される。巻線3と内側筒4との間には、冷却ガスが流通する内側流路14が形成される。
外側筒5は、R方向において巻線3の外側に配置される。巻線3と外側筒5との間には、冷却ガスが流通する外側流路15が形成される。
【0033】
内側制流板7は、Z方向において隣り合う巻線3の間に配置される。内側制流板7は、R方向において外側筒5から離間して配置される。
外側制流板8は、Z方向において隣り合う巻線3の間に配置される。外側制流板8は、R方向において内側筒4から離間して配置される。
内側制流板7および外側制流板8は、Z方向に間隔を置いて交互に配置される。
【0034】
タンク32は、鉄心31、第1ユニット1A、第2ユニット1Bおよび押圧板33を収容する。
押圧板33は、Z方向において第1ユニット1Aおよび第2ユニット1Bの外側に配置される。-Z側の押圧板33dおよび+Z側の押圧板33uは、締結部材等により相互に引き寄せられる。これにより、押圧板33は、第1ユニット1Aの巻線3および第2ユニット1Bの巻線3を、Z方向に押圧する。
【0035】
押圧板33は、R方向においてタンク32から離間して配置される。これにより、押圧板33の+R側に冷却ガスの流路が形成される。冷却ガスの流路が押圧板33の+R側に形成される場合には、-R側に形成される場合に比べて、流路断面積が大きくなる。これにより、冷却ガスの圧力損失が抑制される。
【0036】
押圧板33は、Z方向において第1ユニット1Aおよび第2ユニット1Bから離間して配置される。Z方向において、第1ユニット1Aおよび第2ユニット1Bと押圧板33との間には、冷却ガスが流通する第1流路11が形成される。具体的には、第1ユニット1Aおよび第2ユニット1Bの-Z側に第1流路11dが形成され、+Z側に第1流路11uが形成される。
【0037】
前述されたように、内側制流板7および外側制流板8は、Z方向に間隔を置いて交互に配置される。Z方向における第2ユニット1Bの端部には、内側制流板7d,7uが配置される。具体的には、-Z側の端部に内側制流板7dが配置され、+Z側の端部に内側制流板7uが配置される。
【0038】
Z方向において、第2ユニット1Bの外側筒5の-Z側(第1側)の端部には、切欠き6dが形成される。これにより、第2ユニット1Bの外側筒5の-Z側の端部5dは、内側制流板7dより、Z方向の内側(+Z側)に配置される。Z方向において、端部5dは、内側制流板7dの+Z側に隣り合う外側制流板8と同等の位置に配置される。これにより、-Z側の端部のサブユニット9dに含まれる全ての巻線流路13が、切欠き6dを通して+R方向に露出する。θ方向において、切欠き6dは、外側流路15と同等の範囲に形成される。
【0039】
Z方向において、第2ユニット1Bの外側筒5の+Z側(第1側)の端部には、切欠き6uが形成される。これにより、第2ユニット1Bの外側筒5の+Z側の端部5uは、内側制流板7uより、Z方向の内側(-Z側)に配置される。Z方向において、端部5uは、内側制流板7uの-Z側に隣り合う外側制流板8と同等の位置に配置される。これにより、+Z側の端部のサブユニット9uに含まれる全ての巻線流路13が、切欠き6uを通して+R方向に露出する。θ方向において、切欠き6uは、外側流路15と同等の範囲に形成される。
切欠き6dおよび切欠き6uは、両方が形成されてもよく、どちらか一方のみが形成されてもよい。
【0040】
第2ユニット1Bの外側筒5とタンク32との間には、閉塞板(制止板)35が設置される。閉塞板35は、第2ユニット1Bの外側筒5とタンク32との間を閉塞する。閉塞板35は、Z方向において任意の位置に配置される。例えば、閉塞板35は、Z方向において、第2ユニット1Bの外側筒5の-Z側の端部5dと同等の位置に配置される。
【0041】
冷却ガスの流れについて説明する。
冷却ガスは、-Z側の押圧板33dの-Z側から、押圧板33dの+R側を通って、押圧板33dの+Z側に流入する。冷却ガスは、閉塞板35に衝突し、-R側に進路を変更する。冷却ガスの一部は、第2ユニット1Bの外側筒5の切欠き6dを通り、外側流路15を横切って、巻線流路13に流入する。前述されたように、-Z側の端部のサブユニット9dに含まれる全ての巻線流路13が、切欠き6dを通して+R方向に露出している。冷却ガスは、サブユニット9dに含まれる全ての巻線流路13に流入可能である。
【0042】
冷却ガスは、第1の実施形態と同様に、第2ユニット1Bの内部を流通する。冷却ガスは、+Z側の端部のサブユニット9uに含まれる巻線流路13から、+R側に流出する。冷却ガスは、外側流路15を横切り、切欠き6uを通って、タンク32に衝突する。冷却ガスは、+Z側に進路を変更し、+Z側の押圧板33uの+R側を通って、押圧板33uの+Z側に流出する。
【0043】
前述されたように、冷却ガスは、閉塞板35に衝突し、-R側に進路を変更する。冷却ガスの一部は、第2ユニット1Bに流入する。冷却ガスの残部は、-Z側の第1流路11dに流入する。冷却ガスは、第1ユニット1Aの外側筒5と内側制流板7dとの間から、第1ユニット1Aに流入する。冷却ガスは、第1の実施形態と同様に、第1ユニット1Aの内部を流通する。冷却ガスは、外側筒5と内側制流板7uとの間から、+Z側の第1流路11uに流入する。第1流路11uから+R側に流出した冷却ガスは、第2ユニット1Bから流出した冷却ガスと同様に、押圧板33uの+Z側に流出する。
【0044】
図6は、従来技術における静止誘導電器組立体10の概略構成図である。この静止誘導電器組立体10では、第2ユニット1Bの外側筒5のZ方向の端部に、切欠きが形成されていない。冷却ガスは、第2ユニット1Bの内側筒4と外側制流板8との間を通り、第2ユニット1Bに流入および第2ユニット1Bから流出する。第2ユニット1Bにおける冷却ガスの流通量を確保するため、Z方向において第1流路11と第2ユニット1Bとの間に、第2流路12d,12uが形成される。冷却ガスの一部は、-Z側の第2流路12dを通って、第2ユニット1Bに流入する。冷却ガスは、+Z側の第2流路12uを通って、第2ユニット1Bから流出する。
【0045】
これに対して、
図4に示される第2の実施形態の静止誘導電器組立体10では、第2ユニット1Bの外側筒5のZ方向の端部に、切欠き6d,6uが形成される。冷却ガスの一部は、切欠き6dを通って、第2ユニット1Bに流入する。冷却ガスは、切欠き6uを通って、第2ユニット1Bから流出する。そのため、第1流路11と第2ユニット1Bとの間に、第2流路12d,12uを形成する必要がない。これにより、静止誘導電器組立体10をZ方向に小型化することができる。
【0046】
冷却ガスとして使用されるSF6ガスは、絶縁性能および冷却性能に優れているが、地球温暖化係数が高い。そのため、SF6の代替ガスとして、空気やN2、CO2などの自然由来ガスの利用が検討されている。自然由来ガスは、SF6ガスに比べて、絶縁性能および冷却性能に劣る。そのため、自然由来ガスを利用する場合には、静止誘導電器組立体10が大型化する。これに対して、第2の実施形態では、静止誘導電器組立体10を小型化することができる。
【0047】
前述されたように、
図6に示される静止誘導電器組立体10では、冷却ガスが、第2ユニット1Bの内側筒4と外側制流板8との間を通って、第2ユニット1Bに流入および第2ユニット1Bから流出する。そのため、冷却ガスが-Z側の押圧板33dの+R側を通過した後、2回の進路変更を経て、第2ユニット1Bに流入する。同様に、冷却ガスが第2ユニット1Bから流出した後、2回の進路変更を経て、+Z側の押圧板33uの+R側を通過する。
【0048】
これに対して、
図4に示される静止誘導電器組立体10では、冷却ガスが、第2ユニット1Bの外側筒5の切欠き6d,6uを通って、第2ユニット1Bに流入および第2ユニット1Bから流出する。そのため、冷却ガスが-Z側の押圧板33dの+R側を通過した後、1回の進路変更のみで、第2ユニット1Bに流入する。同様に、冷却ガスが第2ユニット1Bから流出した後、1回の進路変更のみで、+Z側の押圧板33uの+R側を通過する。これにより、冷却ガスの圧力損失が抑制される。
【0049】
以上に詳述されたように、第2の実施形態における静止誘導電器組立体10は、鉄心31と、第1ユニット1Aと、第2ユニット1Bと、押圧板33と、タンク32と、を持つ。第1ユニット1Aは、R方向において鉄心31の外側に配置される。第2ユニット1Bは、R方向において第1ユニット1Aの外側に配置される。押圧板33は、Z方向において第1ユニット1Aおよび第2ユニット1Bの外側に配置される。タンク32は、鉄心31、第1ユニット1A、第2ユニット1Bおよび押圧板33を収容する。第1ユニット1Aおよび第2ユニット1Bは、巻線3と、内側筒4と、外側筒5と、内側制流板7と、外側制流板8と、を有する。巻線3は、円盤環状に巻回される。内側筒4は、R方向において巻線3の内側に配置される。外側筒5は、R方向において巻線3の外側に配置される。内側制流板7は、Z方向において隣り合う巻線3の間に配置される。内側制流板7は、R方向において外側筒5から離間して配置される。外側制流板8は、Z方向において隣り合う巻線3の間に配置される。外側制流板8は、R方向において内側筒4から離間して配置される。内側制流板7および外側制流板8は、Z方向に間隔を置いて交互に配置される。Z方向における第2ユニット1Bの端部には、内側制流板7が配置される。押圧板33は、第1ユニット1Aの巻線3および第2ユニット1Bの巻線3をZ方向に押圧する。押圧板33は、R方向においてタンク32から離間して配置される。Z方向において、第2ユニット1Bの外側筒5の第1側の端部は、第2ユニット1Bの第1側の端部に配置された内側制流板7より、内側に配置される。第2ユニット1Bの外側筒5とタンク32との間には、両者間を閉塞する閉塞板35が設置される。
【0050】
第2ユニット1Bの外側筒5の端部には、切欠き6d,6uが形成される。冷却ガスは、切欠き6d,6uを通って、第2ユニット1Bに流入および第2ユニット1Bから流出する。冷却ガスを第2ユニット1Bに流入および第2ユニット1Bから流出させるため、第2流路12d,12uを形成する必要がない。これにより、静止誘導電器組立体10の小型化を図ることができる。これに伴って、冷却ガスの進路変更の回数が抑制される。したがって、冷却ガスの圧力損失が抑制され、静止誘導電器組立体10の冷却性能の向上を図ることができる。
【0051】
図5は、第2の実施形態の変形例における静止誘導電器組立体10の概略構成図である。第2の実施形態に対して、変形例の静止誘導電器組立体10では、押圧板33の形状が異なる。第2の実施形態と同様である点に関する変形例の説明は省略される場合がある。
【0052】
押圧板33は、R方向において第1ユニット1Aの内側筒4から離間して配置される。これにより、押圧板33の+R側に加えて、-R側にも冷却ガスの流路が形成される。
押圧板33は、押圧板33をZ方向に貫通する貫通空間34を有する。貫通空間34は、R方向において押圧板33の中間部に形成される。貫通空間34は、θ方向に伸びるスリットでもよく、θ方向に間隔を置いて配置される複数の貫通孔でもよい。
押圧板33は、-R側の流路および貫通空間34の両方を有してもよく、いずれか一方のみを有してもよい。
【0053】
押圧板33が-R側の流路または貫通空間34を有することにより、冷却ガスが第1ユニット1Aに流入および第1ユニット1Aから流出しやすくなる。したがって、冷却ガスの圧力損失が抑制され、静止誘導電器組立体10の冷却性能の向上を図ることができる。
【0054】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、第1間隔3eが第2間隔3fより大きい場合には、第3間隔7eが第4間隔8fより大きい。第2間隔3fが第1間隔3eより大きい場合には、第4間隔8fが第3間隔7eより大きい。これにより、冷却性能の向上を図ることができる。
【0055】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0056】
1…静止誘導電器、1A…第1ユニット、1B…第2ユニット、3…巻線、3e…第1間隔、3f…第2間隔、4…内側筒、5…外側筒、7…内側制流板、7e…第3間隔、8…外側制流板、8f…第4間隔、10…静止誘導電器組立体、23…巻線スペーサ、24…内側スペーサ、25…外側スペーサ、31…鉄心、32…タンク、33…押圧板、34…貫通空間、35…閉塞板。