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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025039225
(43)【公開日】2025-03-21
(54)【発明の名称】エンジン診断装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 29/00 20060101AFI20250313BHJP
【FI】
F02D29/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023146139
(22)【出願日】2023-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 純司
【テーマコード(参考)】
3G093
【Fターム(参考)】
3G093AA08
3G093BA04
3G093CA01
3G093DA01
3G093DB23
(57)【要約】
【課題】作業機械のエンジンの始動性診断をより容易かつ高精度に行うことが可能なエンジン診断装置を提供する。
【解決手段】エンジン診断装置は、エンジンの始動時間T1のヒストグラムにおいて、始動時間T1の頻度が増加から減少に転じる境界の第1特徴点SP1と、始動時間T1の頻度が減少から増加に転じる境界の第2特徴点SP2と、その第2特徴点SP2における始動時間T1よりも長くかつ始動時間T1の頻度が増加から減少に転じる境界の第3特徴点SP3のうち、任意の二つの特徴点の間の始動時間T1の差DT13,DT12,DT23に基いて、エンジンの始動性の良否を判定する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧ポンプと、該油圧ポンプを回転させるエンジンと、該エンジンの回転数を検出する回転数検出装置と、を有する作業機械を対象として、前記エンジンの始動性を診断するエンジン診断装置であって、
前記回転数検出装置から取得する前記エンジンの回転数に基いて前記エンジンの始動から前記エンジンの回転数が所定の回転数に達するまでの始動時間を算出して履歴データとして記録する履歴データ記録部と、
前記履歴データ記録部により記録された前記履歴データに基いて前記始動時間のヒストグラムを生成するヒストグラム生成部と、
前記ヒストグラム生成部により生成された前記ヒストグラムにおいて、前記始動時間の頻度が増加から減少に転じる境界の第1特徴点と、前記始動時間の頻度が減少から増加に転じる境界の第2特徴点と、該第2特徴点における前記始動時間よりも長くかつ前記始動時間の頻度が増加から減少に転じる境界の第3特徴点のうち、任意の二つの特徴点の間の前記始動時間の差に基いて、前記エンジンの始動性の良否を判定する始動性判定部と、
を有することを特徴とするエンジン診断装置。
【請求項2】
前記始動性判定部は、前記第1特徴点と前記第3特徴点との間の前記始動時間の差が第1閾値を超える場合に、前記エンジンの始動性不良を判定することを特徴とする請求項1に記載のエンジン診断装置。
【請求項3】
前記始動性判定部は、前記第1特徴点と前記第2特徴点との間の前記始動時間の差が第2閾値を超える場合に、前記エンジンの始動性不良を判定することを特徴とする請求項1に記載のエンジン診断装置。
【請求項4】
前記始動性判定部は、前記第2特徴点と前記第3特徴点との間の前記始動時間の差が第3閾値を超える場合に、前記エンジンの始動性不良を判定することを特徴とする請求項1に記載のエンジン診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エンジン診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から建設機械に用いられるエンジンの始動性能を診断する建設機械のエンジン診断装置に関する発明が知られている(下記特許文献1を参照)。特許文献1に記載された従来のエンジン診断装置は、演算部と、診断部とを備えている。演算部は、エンジンの回転数を計測する回転数センサにより計測されたエンジンの回転数に基いて、エンジンの回転数が予め設定された閾値に到達するまでの時間を演算する。診断部は、前記演算部により演算された前記時間に基いて、予め設定された基準値と比較することでエンジンの始動性能を診断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-68776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のエンジン診断装置の演算部は、第1閾値よりも低いエンジン回転数の点P1と、第1閾値よりも高いエンジン回転数の点P2と、を用いた外挿処理によって、エンジン始動からエンジン回転数が第1閾値に到達するまでの時間t1を求めている(特許文献1、第0043段落、図8等を参照)。これは、サンプリング時間毎に収集される回転数データに、データ転送遅れなどの原因で時間誤差を生じる場合があるためである。
【0005】
しかし、上記第1閾値付近のエンジン回転数においてデータ転送遅れが発生すると、上記の点P1と点P2との間のエンジン回転数の差が減少し、外挿処理によって求められるエンジンの始動点P0の誤差が増大するおそれがある。エンジンの始動点P0の誤差が増大すると、エンジン始動からエンジン回転数が所定の回転数に達するまでの始動時間が実際とは大きく異なる始動時間データの外れ値が発生する。
【0006】
このようなエンジン回転数データの転送遅れに起因する始動時間データの外れ値を、始動時間データの時系列分布から除外するために、始動時間の閾値を設定することが考えられる。しかし、始動時間データの時系列の分布に基いて始動時間の閾値を設定することになるため、より容易かつ高精度にエンジンの始動性診断を行うことに課題がある。
【0007】
本開示は、作業機械のエンジンの始動性診断をより容易かつ高精度に行うことが可能なエンジン診断装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様は、油圧ポンプと、該油圧ポンプを回転させるエンジンと、該エンジンの回転数を検出する回転数検出装置と、を有する作業機械を対象として、前記エンジンの始動性を診断するエンジン診断装置であって、前記回転数検出装置から取得する前記エンジンの回転数に基いて前記エンジンの始動から前記エンジンの回転数が所定の回転数に達するまでの始動時間を算出して履歴データとして記録する履歴データ記録部と、前記履歴データ記録部により記録された前記履歴データに基いて前記始動時間のヒストグラムを生成するヒストグラム生成部と、前記ヒストグラム生成部により生成された前記ヒストグラムにおいて、前記始動時間の頻度が増加から減少に転じる境界の第1特徴点と、前記始動時間の頻度が減少から増加に転じる境界の第2特徴点と、該第2特徴点における前記始動時間よりも長くかつ前記始動時間の頻度が増加から減少に転じる境界の第3特徴点のうち、任意の二つの特徴点の間の前記始動時間の差に基いて、前記エンジンの始動性の良否を判定する始動性判定部と、を有することを特徴とするエンジン診断装置である。
【発明の効果】
【0009】
本開示の上記一態様によれば、作業機械のエンジンの始動性診断をより容易かつ高精度に行うことが可能なエンジン診断装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示に係るエンジン診断装置の一実施形態を示す作業機械のブロック図。
図2図1の作業機械に搭載されたエンジン診断装置の機能ブロック図。
図3図2のエンジン診断装置の動作の一例を説明するフロー図。
図4図3のデータ収集の詳細を説明するフロー図。
図5図3のデータ処理の詳細を説明するフロー図。
図6図3のデータ評価で生成されるエンジンの始動時間のヒストグラムの一例。
図7図3のデータ評価の詳細を説明するフロー図(第1実施形態)。
図8図3の始動性診断の詳細を説明するフロー図。
図9図3のデータ評価の詳細を説明するフロー図(第2実施形態)。
図10図3のデータ評価の詳細を説明するフロー図(第3実施形態)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本開示に係るエンジン診断装置の実施形態を説明する。
【0012】
図1は、本開示に係るエンジン診断装置の一実施形態を示す作業機械のブロック図である。なお、図1では、動力の伝達を太い矢印で示し、電力または信号の出力を細い実線の矢印で示し、燃料の供給を一点鎖線の矢印で示している。本実施形態のエンジン診断装置200は、作業機械100に搭載されたエンジン102の始動性の良否を診断する装置である。
【0013】
エンジン診断装置200の診断対象は、たとえば、油圧ポンプ101と、その油圧ポンプ101を回転させるエンジン102と、そのエンジン102の回転数を検出する回転数検出装置111と、を有する作業機械100である。より具体的には、本実施形態のエンジン診断装置200の診断対象である作業機械100は、たとえば、油圧ショベル、ホイールローダ、またはダンプトラックなどの建設機械である。
【0014】
エンジン診断装置200は、たとえば、作業機械100に搭載される制御装置120によって構成することができる。また、エンジン診断装置200は、たとえば、作業機械100の制御装置120と通信可能に設けられた作業機械100の外部のコンピュータによって構成してもよい。
【0015】
作業機械100は、たとえば、前述の油圧ポンプ101と、エンジン102と、回転数検出装置111と、制御装置120の他に、オルタネータ103と、バッテリ104と、スタータ105と、燃料ポンプ106と、複数の検出装置110と、を備えている。油圧ポンプ101は、たとえば、斜板式可変容量ピストンポンプであり、エンジン102の出力軸に機械的に接続され、作業機械100の油圧装置に作動油を供給する。エンジン102は、たとえば、4気筒の内燃機関であり、油圧ポンプ101を回転させるとともに、オルタネータ103を回転させる動力源である。
【0016】
回転数検出装置111は、エンジン102の回転数を検出し、エンジン102の回転数に応じた信号を制御装置120へ出力する。制御装置120は、たとえば、CPUなどの処理装置121と、RAMやROMなどの記憶装置122と、タイマと、入出力部とを含む、一つ以上のマイクロコントローラによって構成された電子制御装置である。制御装置120は、たとえば、エンジン102に対して制御信号を出力し、燃料噴射量と点火時期を制御する。
【0017】
オルタネータ103は、たとえば、エンジン102の動力によって回転されて発電し、発電した電力をバッテリ104へ供給する。バッテリ104は、たとえば、オルタネータ103から供給される電力によって充電され、スタータ105、燃料ポンプ106、回転数検出装置111、および、他の複数の検出装置110に対して電力を供給する。スタータ105は、たとえば、バッテリ104から供給される電力により回転してエンジン102を始動させる。燃料ポンプ106は、たとえば、バッテリ104から供給される電力により駆動されてエンジン102へ燃料を供給する。
【0018】
複数の検出装置110は、たとえば、前述の回転数検出装置111の他に、トルク検出装置112と、燃料流量検出装置113と、油温検出装置114と、傾転角検出装置115と、電圧値検出装置116と、を含む。これらの検出装置110は、それぞれ、エンジン102のトルクと、燃料ポンプ106が供給する燃料の流量と、油圧ポンプ101が供給する作動油の温度と、油圧ポンプ101の斜板の傾転角と、エンジン始動時のバッテリ104の電圧とを検出し、それらの検出値に応じた信号を制御装置120へ出力する。
【0019】
図2は、図1の作業機械100に搭載されたエンジン診断装置200の機能ブロック図である。前述のように、本実施形態のエンジン診断装置200は、たとえば、作業機械100に搭載された制御装置120によって構成され、履歴データ記録部201と、ヒストグラム生成部202と、始動性判定部203とを有している。これらエンジン診断装置200の各部は、たとえば、記憶装置122に記憶されたプログラムを処理装置121によって実行することで実現されるエンジン診断装置200の各機能を表している。エンジン診断装置200は、たとえば、作業機械100の運転室に設置された液晶表示装置などのモニタ107に接続されていてもよい。
【0020】
以下、本実施形態のエンジン診断装置200の動作の一例を説明する。図3は、エンジン診断装置200の動作の一例を説明するフロー図である。図3の処理フローが開始されると、エンジン診断装置200は、たとえば、履歴データ記録部201により、キーポジション信号KPおよびエンジン状態信号ESを取得する処理P1を実行する。
【0021】
キーポジション信号KPは、たとえば、作業機械100のオペレータのキー操作によって、0から3までいずれかの整数を表す信号に切り替わる。より具体的には、たとえば、キーポジション信号KPの0,1,2,3が、それぞれ、キーポジションの「OFF」、「アクセサリ状態」、「ON」、および「エンジン始動(クランキング)」に対応している。エンジン状態信号ESの0と1がそれぞれ、「エンジン停止状態」と「エンジン稼働状態」に対応している。
【0022】
次に、履歴データ記録部201は、たとえば、エンジン始動判定処理P2を実行する。この処理P2において、履歴データ記録部201は、たとえば、前の処理P1で取得したキーポジション信号KPが2未満、または、エンジン状態信号ESが1であること(NO)を判定すると、処理P1および処理P2を所定の周期で繰り返し実行する。また、履歴データ記録部201は、たとえば、処理P2において、キーポジション信号KPが2以上であり、エンジン状態信号ESが0であること(YES)を判定すると、データ収集P3を実行する。
【0023】
この場合、作業機械100のオペレータの操作によるキーポジションは「ON」になっている。そのため、バッテリ104から回転数検出装置111を含む複数の検出装置110へ電力が供給され、複数の検出装置110によってエンジン102の回転数を含む始動関連データの検出と記憶装置122への記録が開始されている。
【0024】
図4は、図3に示すデータ収集P3の詳細を示すフロー図である。履歴データ記録部201は、たとえば、図4に示すデータ収集P3を開始すると、まず、始動関連データを収集する処理P31を実行する。この処理P31において、履歴データ記録部201は、たとえば、データカウントのためのパラメータnを、初期値であるゼロに設定する(n=0)。
【0025】
また、履歴データ記録部201は、たとえば、定周期クロックを基準に所定の周期でカウントを開始する。また、履歴データ記録部201は、たとえば、カウントに同期して燃料流量検出装置113、油温検出装置114、および傾転角検出装置115によって検出された燃料の流量、作動油の温度、および油圧ポンプ101の斜板の傾転角を含む始動関連データを取得する。さらに、履歴データ記録部201は、始動関連データを取得する都度、データカウントのためのパラメータnに1を加算する(n=n+1)。履歴データ記録部201は、たとえば、取得した始動関連データをパラメータnとともにグループ化して記憶装置122に格納する。
【0026】
次に、履歴データ記録部201は、たとえば、始動判定処理P32を実行する。この処理P32において、履歴データ記録部201は、たとえば、キーポジション信号KPとエンジン状態信号ESを取得し、KP=3かつES=1を満たすか否かを判定する。履歴データ記録部201は、KP=3かつES=1を満たさないこと(NO)を判定すると、処理P32を繰り返し実行する。また、履歴データ記録部201は、KP=3かつES=1を満たすこと(YES)を判定した場合、すなわち、キーポジションがエンジン始動であり、エンジン102がエンジン始動(クランキング)状態である場合に、燃料供給判定処理P33を実行する。
【0027】
この処理P33において、履歴データ記録部201は、たとえば、燃料流量検出装置113から取得した燃料流量FFがゼロより大であるか否かを判定する。履歴データ記録部201は、燃料流量FFがゼロであること(NO)を判定すると、処理P33を繰り返し実行する。また、履歴データ記録部201は、燃料流量FFがゼロより大であること(YES)を判定すると、回転数検出装置111から取得したエンジン102の回転数を、初爆回転数f(x)に設定する処理P34を実行する。
【0028】
次に、履歴データ記録部201は、たとえば、回転数検出装置111から取得した現在のエンジン102の回転数f(n)が初爆回転数f(x)より大であるか否かを判定する処理P35を実行する。回転数f(n)が初爆回転数f(x)以下である場合(NO)、履歴データ記録部201は処理P35を繰り返す。回転数f(n)が初爆回転数f(x)より大である場合(YES)、履歴データ記録部201は、アイドル回転判定処理P36を実行する。
【0029】
この処理P36において、履歴データ記録部201は、たとえば、回転数検出装置111から取得した現在のエンジン102の回転数f(n)が、前回取得した回転数f(n-1)より大であること(NO)を判定すると、処理P34から処理P36までを繰り返す。また、履歴データ記録部201は、たとえば、回転数検出装置111から取得した現在のエンジン102の回転数f(n)が、前回取得した回転数f(n-1)以下であること(YES)を判定した場合、すなわち、現在のエンジン102の回転数f(n)がアイドル回転数に達した場合に、次の処理P37を実行する。
【0030】
この処理P37において、履歴データ記録部201は、たとえば、アイドル回転数に達した回転数f(n)よりも後の回転数f(n+1)以降のエンジン102の回転数データを削除する。その後、エンジン診断装置200は、図3および図4に示すデータ収集P3を終了させ、図3に示すデータ処理P4を実行する。
【0031】
図5は、図3に示すデータ処理P4の詳細を説明するフロー図である。なお、本実施形態のデータ処理P4は、前述の特許文献1の第0039段落から第0046段落、図7および図8に記載されたデータ処理と同様であるため、適宜、説明を省略する。
【0032】
履歴データ記録部201は、たとえば、図5に示すデータ処理P4を開始すると、まず、油圧ポンプ101の傾転角を取得する処理P401を実行する。この処理P401において、履歴データ記録部201は、たとえば、傾転角検出装置115によって検出されて記憶装置122に記録された油圧ポンプ101の斜板の傾転角を取得する。その後、履歴データ記録部201は、たとえば、図5の処理P402から処理P405までを実行する。
【0033】
これにより、履歴データ記録部201は、たとえば、処理P401で取得した油圧ポンプ101の斜板の傾転角に基いて、油圧ポンプ101に満たされた作動油の影響によるエンジン102の始動特性の遅れ時間を算出することができる。また、履歴データ記録部201は、算出した遅れ時間に基いて、作動油の粘性抵抗力の影響によるエンジン102の回転数の立ち上がりの遅れを除外したエンジン102単体の始動特性を模擬することができる。
【0034】
さらに、履歴データ記録部201は、たとえば、図5の処理P406から処理P410までを実行する。これにより、履歴データ記録部201は、たとえば、エンジン102の回転数が、エンジン102の始動から第1閾値に達するまでの時間t1と、その第1閾値から第2閾値に達するまでの時間t2を算出することができる。第1閾値は、たとえば、初爆回転数の75%以上かつ90%以下の回転数に設定され、第2閾値は、たとえば、アイドル回転数の75%以上かつ90%以下の回転数に設定される。
【0035】
また、履歴データ記録部201は、たとえば、時間t1および時間t2を用いた外挿により、エンジン102の回転数がゼロから初爆回転数に達するまでの始動時間T1と、初爆回転数からアイドル回転数に達するまでの時間T2とを算出することができる。その後、履歴データ記録部201は、たとえば、処理P409および処理P410で算出された時間T1,T2を記憶装置122に格納する処理P411を実行し、図3および図5に示すデータ処理P4を終了する。その後、エンジン診断装置200は、データ処理P4で処理されたデータに基いて、図3に示すデータ評価P5を実行し、エンジン102の始動性の良否を判定する。
【0036】
図6は、ヒストグラム生成部202が生成する始動時間T1のヒストグラムの一例である。データ評価P5において、ヒストグラム生成部202は、履歴データ記録部201により記録された始動時間T1の履歴データに基いて、始動時間T1のヒストグラムを生成する。また、始動性判定部203は、ヒストグラム生成部202が生成した始動時間T1のヒストグラムにおいて、第1特徴点SP1と、第2特徴点SP2と、第3特徴点SP3のうち、任意の二つの特徴点の間の始動時間T1の差DT13,DT12,DT23に基いて、エンジン102の始動性の良否を判定する。
【0037】
なお、上記の第1特徴点SP1は、たとえば、ヒストグラム生成部202により生成されたヒストグラムにおいて、始動時間T1の頻度が、一回目の増加から減少に転じる境界となる始動時間T1であり、頻度が最初のピークを迎える始動時間T1である。また、上記の第2特徴点SP2は、たとえば、始動時間T1の頻度が、一回目の減少から増加に転じる境界となる始動時間T1であり、頻度が最初の谷底となる始動時間T1である。また、上記の第3特徴点SP3は、第2特徴点SP2における始動時間T1よりも長く、かつ始動時間T1の頻度が、二回目の増加から減少に転じる境界の始動時間T1であり、頻度が二番目のピークを迎える始動時間T1である。
【0038】
図7は、図3のデータ評価P5において、第1特徴点SP1と第3特徴点SP3を用いる第1実施形態の詳細を示すフロー図である。エンジン診断装置200は、図7に示すデータ評価P5を開始すると、過去に履歴データ記録部201によって記憶装置122に格納された始動時間T1の履歴データを取得する処理P501と、始動時間T1のヒストグラムを生成する処理P502を実行する。
【0039】
ヒストグラム生成部202は、たとえば、処理P501において、回転数ゼロから初爆回転数に達するまでの始動時間T1の過去の履歴データを記憶装置122から取得し、処理P502において、始動時間T1のヒストグラムを生成する。ヒストグラム生成部202は、たとえば、処理P502において、前の処理P501で取得した始動時間T1の履歴データの数を所定の階級幅ごとに累積した頻度を演算することで、図6に示すように、エンジン102の回転数がゼロから初爆回転数に達するまでの始動時間T1のヒストグラムを生成する。
【0040】
次に、始動性判定部203は、たとえば、始動時間T1のヒストグラムの各階級に対し、始動時間T1が短い階級から順に番号を付与する処理P503と、階級をカウントするためのパラメータnをゼロに設定する処理P504を実行する。さらに、始動性判定部203は、始動時間T1のヒストグラムのn番目の階級の頻度をfr(n)と定義し、パラメータnに1を加算する処理P505を実行する。
【0041】
次に、始動性判定部203は、始動時間T1のヒストグラムのn番目の階級の度数fr(n)が、n+1番目の階級の度数fr(n+1)以下であるか否かを判定する処理P506を実施する。始動性判定部203は、頻度の増加傾向が続き、処理P506で条件を満たすこと(YES)を判定すると、処理P505と処理P506を繰り返してパラメータnを1ずつ増加させていく。
【0042】
一方、始動性判定部203は、頻度が増加から減少に転じ、処理P506で条件を満たさなくなったこと(NO)を判定すると、第1特徴点SP1を記憶装置122に記録する処理P507を実行する。ここで、始動性判定部203は、たとえば、処理P506の条件を満たさなくなったときのパラメータnに対応する番号の階級における始動時間T1の最小値、平均値、中央値、または最大値を、第1特徴点SP1として記憶装置122に記録する。この第1特徴点SP1は、たとえば、図6のヒストグラムにおける最初のピークに対応する。
【0043】
その後、始動性判定部203は、パラメータnに1を加算する処理P508と、始動時間T1のヒストグラムのn番目の階級の度数fr(n)が、n+1番目の階級の度数fr(n+1)以上であるか否かを判定する処理P509を実施する。始動性判定部203は、頻度の減少傾向が続き、処理P509で条件を満たすこと(YES)を判定すると、処理P508と処理P509を繰り返してパラメータnを1ずつ増加させていく。
【0044】
また、始動性判定部203は、頻度が減少から増加に転じ、処理P509で条件を満たさなくなったこと(NO)を判定すると、パラメータnに1を加算する処理P510と、始動時間T1のヒストグラムのn番目の階級の度数fr(n)が、n+1番目の階級の度数fr(n+1)以下であるか否かを判定する処理P511を実施する。始動性判定部203は、頻度の増加傾向が続き、処理P511で条件を満たすこと(YES)を判定すると、処理P510と処理P511を繰り返してパラメータnを1ずつ増加させていく。
【0045】
また、始動性判定部203は、頻度が増加から減少に転じ、処理P511で条件を満たさなくなったこと(NO)を判定すると、第3特徴点SP3を記憶装置122に記録する処理P512を実行する。ここで、始動性判定部203は、たとえば、処理P511の条件を満たさなくなったときのパラメータnに対応する番号の階級における始動時間T1の最小値、平均値、中央値、または最大値を、第3特徴点SP3として記憶装置122に記録する。この第3特徴点SP3は、たとえば、図6のヒストグラムにおける二番目のピークに対応する。
【0046】
その後、エンジン診断装置200は、図7および図3に示すデータ評価P5を終了し、エンジン102がアイドル回転を継続したアイドル時間Tidが所定の閾値Tthを超えているか否かを判定する処理P6を実行する。ここで、閾値Tthは、たとえば、30秒など、エンジン102の始動性診断に必要な始動関連データを十分に記憶装置122に記録可能な時間に設定することができる。なお、始動関連データは、たとえば、回転数、燃料流量FF、作動油温度、燃料ポンプ106の斜板の傾転角などを含む。
【0047】
この処理P6において、始動性判定部203は、たとえば、アイドル時間Tidが所定の閾値Tth以下であること(NO)を判定すると、処理P6を繰り返す。また、始動性判定部203は、アイドル時間Tidが所定の閾値Tthを超えていること(YES)を判定すると、作業の継続を判定する処理P7を実行する。この処理P7において、始動性判定部203は、たとえば、作業機械100が作業を継続するか否かを判定する。
【0048】
始動性判定部203は、処理P7において、たとえば、エンジン102の回転数がアイドル回転数よりも高い場合、または、燃料ポンプ106の斜板の傾転角が所定の角度より大きい場合に、作業機械100が作業を継続すること(YES)を判定して、処理P7を繰り返す。一方、始動性判定部203は、処理P7において、たとえば、エンジン102の回転数がアイドル回転数である場合、または、燃料ポンプ106の斜板の傾転角が所定の角度以下の場合に、作業機械100が作業を継続しないこと(NO)を判定して、エンジン102の回転数をアイドル回転数まで低下させてエンジン102を停止する処理P8を実行する。その後、エンジン診断装置200は、たとえば、図3に示すように、エンジン102の始動性診断P9を実行する。
【0049】
図8は、図3の始動性診断P9の詳細を説明するフロー図である。エンジン診断装置200は、たとえば、図8に示す始動性診断P9を開始すると、たとえば、前回の始動性診断P9で異常を診断したか否かを判定する処理P901を実行する。
【0050】
この処理P901において、始動性判定部203は、たとえば、前回の始動性診断P9の後述する処理P906でエンジン102の始動性が良好であることが診断されてその診断結果が記憶装置122に格納されている場合に、条件を満たさないこと(NO)を判定する。この場合、始動性判定部203は、たとえば、処理P902を実行して、エンジン102の始動性が複数回にわたって連続して不良と判定された回数をカウントするためのパラメータNをゼロに設定する。その後、始動性判定部203は、図6に示すヒストグラムの特徴点SP1,SP2,SP3の中から二つの特徴点を選択する処理P903を実行する。
【0051】
また、処理P901において、始動性判定部203は、たとえば、前回の始動性診断P9の後述する処理P909においてエンジン102の始動性不良が診断されて、その診断結果が記憶装置122に格納されている場合に、条件を満たすこと(YES)を判定する。この場合、始動性判定部203は、たとえば、前述の始動性不良のカウント用のパラメータNをゼロに設定する処理P902を実行することなく、次の処理P903を実行する。
【0052】
処理P903において、始動性判定部203は、図6に示すエンジン102の始動時間T1のヒストグラムにおける第1特徴点SP1、第2特徴点SP2、および第3特徴点SP3の中から、二つの特徴点を選択する。ここでは、始動性判定部203が第1特徴点SP1と第3特徴点SP3を選択する第1実施形態を説明する。なお、始動性判定部203が選択する二つの特徴点は、予め決定されていてもよく、作業機械100のユーザの操作によって選択されてもよい。
【0053】
次に、処理P904において、始動性判定部203は、選択した二つの特徴点の間の始動時間T1の差を算出する。第1実施形態において、始動性判定部203は、図6に示すように、第3特徴点SP3に対応する始動時間T1から第1特徴点SP1に対応する始動時間T1を減算した始動時間T1の差DT13を算出して、記憶装置122に格納する。次に、始動性判定部203は、たとえば、始動時間T1の差DT13が閾値THを超えているか否かを判定する処理P905を実行する。
【0054】
ここで、閾値THは、たとえば、診断対象の作業機械100または同種の他の作業機械100において取得された特徴点SP1,SP2,SP3の履歴データと、それに対応するエンジン102の始動性の良否の判定結果に基いて、予め設定することができる。より具体的には、たとえば、上記履歴データにおいて、選択された二つの特徴点の間の始動時間T1の差の平均値の2倍を閾値THとして設定することができる。また、作業機械100の個体差に基いて閾値THを設定してもよい。以下では、第1特徴点SP1と第3特徴点SP3との間の始動時間T1の差DT13の閾値THを第1閾値TH1と呼ぶ。
【0055】
処理P905において、たとえば、第1特徴点SP1と第3特徴点SP3との始動時間T1の差DT13が第1閾値TH1を超えていない場合、始動性判定部203は、条件を満たさないこと(NO)を判定する。この場合、始動性判定部203は、エンジン102の始動性診断の結果として、始動性が良好であることを記憶装置122に格納する処理P906を実行する。その後、エンジン診断装置200は、図3および図8の始動性診断P9を終了し、図3に示す処理フローを終了させて所定の周期で繰り返す。
【0056】
一方、処理P905において、たとえば、第1特徴点SP1と第3特徴点SP3との始動時間T1の差DT13が第1閾値TH1を超えている場合、始動性判定部203は、条件を満たすこと(YES)を判定する。この場合、始動性判定部203は、エンジン102の始動性が不良となった回数をカウントするためのパラメータNに1を加算する処理P907と、パラメータNが所定値に達したか否かを判定する処理P908を実行する。ここでは、パラメータNの所定値が3に設定されている例を説明するが、この所定値は任意の整数に設定することができる。
【0057】
処理P908において、たとえば、パラメータNが3未満である場合、始動性判定部203は、条件を満たさないこと(NO)を判定する。この場合、エンジン診断装置200は、図3および図8の始動性診断P9を終了し、図3に示す処理フローを終了させて所定の周期で繰り返す。一方、処理P908において、たとえば、パラメータNが3に達した場合、すなわち、エンジン102の始動性の不良が連続して複数回にわたって診断された場合に、始動性判定部203は、条件を満たすこと(YES)を判定する。
【0058】
この場合、始動性判定部203は、たとえば、エンジン102の始動性診断の結果として、始動性が不良であることを記憶装置122に格納する処理P909を実行する。このように、本実施形態のエンジン診断装置200は、エンジン102の始動性不良が連続して複数回にわたって診断された場合だけに、始動性不良の診断を確定させる。これにより、始動時間T1の差DT13が突発的に増加して第1閾値TH1を超え、その後、継続して第1閾値TH1を下回るような場合に、不必要に始動性不良を判定することが防止される。
【0059】
その後、始動性判定部203は、たとえば、エンジン102の始動性不良が診断されたことを警告する処理P910を実行する。この処理P910において、始動性判定部203は、たとえば、モニタ107に警告を表示したり、作業機械100の運転室に設置されたスピーカやブザーを介して音声や警告音を発したり、無線通信回線やネットワークを介して警告情報を送信したりする。
【0060】
これにより、作業機械100のユーザ、管理者、またはサービス担当者は、作業機械100のエンジン102の始動性不良が診断されたことを認識して、適切な対策を取ることができる。その後、エンジン診断装置200は、図3および図8の始動性診断P9を終了させ、図3に示す処理フローを終了させて所定の周期で繰り返す。
【0061】
以上のように、本実施形態のエンジン診断装置200は、油圧ポンプ101と、その油圧ポンプ101を回転させるエンジン102と、そのエンジン102の回転数を検出する回転数検出装置111と、を有する作業機械100を対象として、エンジン102の始動性を診断する。エンジン診断装置200は、履歴データ記録部201と、ヒストグラム生成部202と、始動性判定部203と、を備えている。履歴データ記録部201は、回転数検出装置111から取得するエンジン102の回転数に基いてエンジン102の始動からエンジン102の回転数が所定の回転数に達するまでの始動時間T1を算出して履歴データとして記録する。ヒストグラム生成部202は、履歴データ記録部201により記録された始動時間T1の履歴データに基いて始動時間T1のヒストグラムを生成する。始動性判定部203は、ヒストグラム生成部202により生成されたヒストグラムにおいて、第1特徴点SP1と第2特徴点SP2と第3特徴点SP3とのうち、任意の二つの特徴点の始動時間T1の差DT13,DT12,DT23に基いて、エンジン102の始動性の良否を判定する。上記の第1特徴点SP1は、始動時間T1のヒストグラムにおいて、始動時間T1の頻度が増加から減少に転じる境界である。上記の第2特徴点SP2は、始動時間T1の頻度が減少から増加に転じる境界である。上記の第3特徴点SP3は、第2特徴点SP2における始動時間T1よりも長くかつ始動時間T1の頻度が増加から減少に転じる境界である。
【0062】
このような構成により、本実施形態のエンジン診断装置200は、油圧ポンプ101を回転させるエンジン102の始動時間T1の履歴データに基いて生成されるヒストグラムに特有の特徴点SP1,SP2,SP3に基いて、エンジン102の始動性の良否を診断することができる。より具体的には、図6に示すように、始動時間T1のヒストグラムには、たとえば、頻度が最初にピークを迎える第1特徴点SP1と、頻度が最初のピークを越えた後に減少して谷底となる第2特徴点SP2と、頻度が二回目のピークを迎える第3特徴点SP3のような特徴点が現れる。このような特徴点SP1,SP2,SP3は、たとえば、油圧ポンプ101に機械的に接続された4気筒のエンジン102において特に顕著に現れる。これは、4気筒のエンジン102では、最初の燃料噴射および着火が第1気筒において生じるため、始動前のクランク軸角度の違いが始動時間T1に影響することが理由である。本実施形態のエンジン診断装置200は、たとえば、これらの特徴点SP1,SP2,SP3のうち、二つの特徴点の間の始動時間T1の差DT13,DT12,DT23をそれぞれの閾値THと比較することで、エンジン102の始動性の良否を診断することができる。したがって、本実施形態のエンジン診断装置200によれば、始動時間データの時系列の分布に基いて始動時間T1の閾値を設定する場合と比較して、より容易かつ高精度にエンジン102の始動性診断を行うことができる。
【0063】
その結果、作業機械100のユーザまたは管理者は、作業機械100のエンジン102の始動性診断結果に基いて、メンテナンス計画や新規の作業機械100の購入計画を策定することが可能になる。また、作業機械100のサービス担当者は、作業機械100のエンジン102の始動性診断結果を把握することで、作業機械100のユーザに作業機械100の修理や新規購入を提案することが可能になる。また、本実施形態のエンジン診断装置200は、前述のデータ処理P4において、前述の特許文献1の第0039段落から第0046段落、図7および図8に記載されたデータ処理と同様の処理を行っている。そのため、本実施形態のエンジン診断装置200によれば、特許文献1の第0029段落から第0031に記載された効果と同様の効果を奏することができる。
【0064】
また、本実施形態のエンジン診断装置200において、始動性判定部203は、第1特徴点SP1と第3特徴点SP3との間の始動時間T1の差DT13が第1閾値TH1を超える場合に、エンジン102の始動性不良を判定する。これにより、始動時間T1のヒストグラムにおいて比較的に顕著に現れる第1特徴点SP1と第3特徴点SP3との間の始動時間T1の差DT13に基いて、エンジン102の始動性の良否を診断することができる。したがって、本実施形態のエンジン診断装置200によれば、より容易かつ高精度にエンジン102の始動性診断を行うことができる。
【0065】
なお、前述のように、始動性判定部203は、第1特徴点SP1と第2特徴点SP2との間の始動時間T1の差DT12、または、第2特徴点SP2と第3特徴点SP3との間の始動時間T1の差DT23に基いて、エンジン102の始動性診断を行うこともできる。以下、これらの例を、それぞれ、第2実施形態および第3実施形態として説明する。
【0066】
図9は、第2実施形態における図3のデータ評価P5の詳細を説明するフロー図である。第2実施形態のデータ評価P5’の処理フローは、前述の処理509の後に、第3特徴点SP3を検出して記録するための処理P510から処理P512までを行うことなく、第2特徴点SP2を記録する処理P513を実施する点で、前述の実施形態1のデータ評価P5の処理フローと異なっている。
【0067】
すなわち、第2実施形態において、エンジン診断装置200の始動性判定部203は、図6に示すように、第1特徴点SP1と第2特徴点SP2との間の始動時間T1の差DT12が、第1閾値TH1とは別の閾値THである第2閾値TH2を超える場合に、エンジン102の始動性不良を判定する。これにより、第3特徴点SP3を検出して記録するための処理P510から処理P512を省略することができる。したがって、本実施形態のエンジン診断装置200によれば、より容易かつ高精度にエンジン102の始動性診断を行うことができる。
【0068】
図10は、第3実施形態における図3のデータ評価P5の詳細を説明するフロー図である。第3実施形態のデータ評価P5”の処理フローは、前述の第1特徴点SP1を記録する処理P507を省略し、前述の第2実施形態と同様に第2特徴点SP2を記録する処理P513を実施する点で、前述の実施形態1のデータ評価P5の処理フローと異なっている。
【0069】
すなわち、第3実施形態において、エンジン診断装置200の始動性判定部203は、図6に示すように、第2特徴点SP2と第3特徴点SP3との間の始動時間T1の差DT23が、第1閾値TH1および第2閾値TH2とは別の閾値THである第3閾値TH3を超える場合に、エンジン102の始動性不良を判定する。これにより、本実施形態のエンジン診断装置200によれば、第1実施形態および第2実施形態と同様に、より容易かつ高精度にエンジン102の始動性診断を行うことができる。
【0070】
以上、図面を用いて本開示に係るエンジン診断装置の実施形態を詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本開示に含まれるものである。
【符号の説明】
【0071】
100 作業機械
101 油圧ポンプ
102 エンジン
111 回転数検出装置
200 エンジン診断装置
201 履歴データ記録部
202 ヒストグラム生成部
203 始動性判定部
DT12 差
DT13 差
DT23 差
SP1 第1特徴点
SP2 第2特徴点
SP3 第3特徴点
T1 始動時間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10