(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025003932
(43)【公開日】2025-01-14
(54)【発明の名称】ナノファイバー量子コンピューティングシステム及び関連方法
(51)【国際特許分類】
G06N 10/20 20220101AFI20250106BHJP
G06F 7/38 20060101ALI20250106BHJP
G02B 21/36 20060101ALI20250106BHJP
G02B 21/32 20060101ALI20250106BHJP
【FI】
G06N10/20
G06F7/38 510
G02B21/36
G02B21/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024087216
(22)【出願日】2024-05-29
(31)【優先権主張番号】18/325,901
(32)【優先日】2023-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】523117915
【氏名又は名称】株式会社Nanofiber Quantum Technologies
(74)【代理人】
【識別番号】110003476
【氏名又は名称】弁理士法人瑛彩知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】碁盤 晃久
(72)【発明者】
【氏名】加藤 真也
(72)【発明者】
【氏名】井上 遼太郎
(72)【発明者】
【氏名】青木 隆朗
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明は量子コンピュータセルシステムを提供する。
【解決手段】量子コンピューティングセルデバイスは、ファイバーオプティックケーブルの中心部分から構成され、第1ファイバーブラッググレーティングと第2ファイバーブラッググレーティングの間に結合されたナノファイバー領域を有する。ファイバーオプティックケーブルは、第1ファイバーブラッググレーティングの近傍にあるナノファイバー領域の第1部分から構成される第1テーパー領域及び第2ファイバーブラッググレーティングの近傍にあるナノファイバー領域の第2部分から構成される第2テーパー領域を有し、かつ、ナノファイバー領域にエバネセント結合された複数の原子を有し、光ピンセットアレイを生成し、1つ又は複数の原子から放出される1つ又は複数の光子を検出するカメラを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
量子コンピュータセルシステムであって、
第1の端部領域と第2の端部領域とを備えるファイバー光ケーブルであって、該第1の端部領域は第1の端部を備え、該第2の端部領域は第2の端部を備え、コア領域の内部に分散されたドーパント材料実体を有する二酸化ケイ素材料を含む、ファイバー光ケーブルと、
前記第1の端部領域に構成される第1のファイバーブラッググレーティングと、
前記第2の端部領域に構成される第2のファイバーブラッググレーティングと、
前記ファイバー光ケーブルの中央部分から構成され、前記第1の端部領域と前記第2の端部領域の間に結合されたナノファイバー領域と、
前記第1のファイバーブラッググレーティングの近傍にある前記ナノファイバー領域の第1の部分から構成された第1のテーパー領域と、
前記第2のファイバーブラッググレーティングの近傍にある前記ナノファイバー領域の第2の部分から構成された第2のテーパー領域と、
前記第1のファイバーブラッググレーティングと前記第2のファイバーブラッググレーティングとの間に形成され、前記テーパー領域と前記ナノファイバー領域を含むキャビティと、
セシウム及びルビジウムを含むアルカリ金属原子、イッテルビウム及びストロンチウムを含むアルカリ土類金属原子及びアルカリ土類類似原子、ならびに他のレーザー冷却可能な原子を含む、原子の数が1~100,000の範囲であり、前記第1のファイバーブラッググレーティングと前記第2のファイバーブラッググレーティングとの間の前記ナノファイバー領域にエバネセント結合するような複数の原子と、
開口数が0.1以上であることを特徴とする撮像システムであって、光ピンセットアレイ及び光アドレス指定アレイを生成し、前記複数の原子のうちの1つ以上に由来する1つ以上の光子を400ナノメートル以上の空間分解能の範囲で検出するように構成された撮像システムと、
を備える、システム。
【請求項2】
前記ナノファイバー領域は99%以上の透過率を有し、
前記ナノファイバー領域は、300ナノメートルから1.5マイクロメートルの範囲の直径を有し、
前記ナノファイバー領域の長さは10マイクロメートルから10センチメートルの範囲であり、
光子検出システムであり、前記ナノファイバー領域から、ファイバー光ケーブルの少なくとも第1の端部又は第2の端部に結合された該光子検出システムを用いて光子が収集されるように該ファイバー光ケーブルに結合された前記キャビティ近傍に捕捉された前記複数の原子のうちの1つ以上から放出された光子によって構成された該ファイバー光ケーブルへの収集効率が99%以上であることを特徴とする光子検出システムをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記撮像システムは第1のレンズから第nのレンズまでを備え、nは1より大きい整数であり、3倍から50倍の範囲で画像を拡大し、100×100画素以上で構成された画素のアレイを使用して、所定のスペクトル範囲内で拡大された画像をキャプチャし、0.1×0.1ミリメートルからそれ以上の空間領域で0.5ミクロンから2ミクロンの範囲の空間分解能を作成するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記撮像システムは画像処理装置と結合されており、該画像処理装置は、前記撮像された画像を含むデータストリームを受信するように構成され、前記撮像された画像を処理してナノファイバー領域の一部の空間的位置を特定するように構成され、前記撮像システムをナノファイバー領域に合わせるために、前記撮像システム内の1つ以上のレンズの空間的位置を変更するためのフィードバックを提供するように構成される、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記撮像システムは所定の波長範囲に構成されたレーザー光源を含み、
該レーザー光源は、レーザービームを反射又は透過するように構成されたダイクロイックミラーを備えており、対物レンズを通って前記ナノファイバー領域の選択された部分に焦点を合わせるように構成され、
該レーザービームは光ピンセット及び光アドレッシング指定ビームとして構成され、
該レーザービームの一部は該ダイクロイックミラーを通して前記ナノファイバー領域から反射され、カメラの画素アレイに結像され、
該レーザー光源は、波長が400nmから2000nmの範囲のシングルモードレーザーであり、
さらに、前記ナノファイバー領域を所定の真空環境及び室温から4ケルビンの範囲の所定の温度環境に維持するように構成された真空チェンバーを含み、
該真空チェンバーは外部の磁場変動が内部に影響を与えないように磁場シールド装置を使用して内部を保護し、
該真空チャンバーの内部は、複数の原子の1つ以上に影響を与える可能性のある外部環境の磁場変動が実質的にない状態に保たれる、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記第1ファイバーブラッググレーティング及び前記第2ファイバーブラッググレーティングの反射率がそれぞれ98.0%以上であり、前記ナノファイバー領域が第1ナノファイバー領域から第2ナノファイバー領域まで、直径は90%以内の範囲で一定であることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記第1のファイバーブラッググレーティング及び前記第2のファイバーブラッググレーティングは、前記ファイバー光ケーブルのコアに複数の屈折率変調構造を備え、該屈折率変調構造は、電子ビームリソグラフィーにより製造された位相シフトマスクにおけるレーザービームの回折により作成された紫外レーザーの強度のパターンにより刻印されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
さらに、前記第1のファイバーブラッググレーティング及び/又は前記第2のファイバーブラッググレーティングと結合し、赤外電磁放射を吸収するように構成されたシリコンウェハー上に搭載された1つ以上のレーザーデバイスを備え、該各レーザーデバイスは、前記第1のファイバーブラッググレーティング及び前記第2のファイバーブラッググレーティングの各中心周波数を制御して、反射率を98.0%から99.999%の範囲で独立して調整するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記ナノファイバー領域に結合されたレーザーデバイスをさらに備え、該レーザーデバイスは、前記ナノファイバー領域の温度を変えることにより、選択された原子及び複数の原子の遷移周波数にキャビティ共鳴周波数を制御するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記キャビティが真空環境で維持され、3つの直交する空間方向からの磁場勾配とレーザー照射の組み合わせから生じる磁気光学トラッピングにより、前記複数の原子は絶対零度付近の1ミリケルビン以下の温度まで冷却され、
その後、ピンセットアレイに捕捉された原子はレーザー冷却により運動自由度が基底状態又は基底状態に近い状態に冷却される、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記光ピンセットアレイは、前記ナノファイバー領域に対して空間的に整列し、前記ナノファイバー領域から得られる光信号をモニタリングするフィードバックプロセスによって安定化されるように構成された、1つ以上の光ピンセットスポットを生成するように構成された光ピンセットデバイスを備え、そして
前記複数の原子のうち1つ以上が、該光学ピンセットアレイの光学ピンセットデバイスを使用して捕捉され、該光学ピンセットデバイスは、前記ナノファイバー領域から100ナノメートルから1マイクロメートルの距離で均一な前記光学ピンセットアレイを生成するために、前記原子からの蛍光信号を受信するためのフィードバックプロセスを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記光アドレス指定アレイは、前記ナノファイバー領域に対して空間的に整列し、前記ナノファイバー領域から得られる光信号をモニタリングするフィードバックプロセスによって安定化されるように構成された、1つ以上の光ビームスポットを生成するように構成された光アドレス指定デバイスを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記複数の原子のうちの1つ以上が、撮像システムによって捕捉されるように構成された光子を放出し、前記1つ以上の原子が空間的に配置されており、該撮像システムは前記1つ以上の原子から放出された光子の空間的画像を捕捉するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記複数の原子の少なくとも1つ及び前記キャビティからの反射光子は、制御された位相反転ゲートを操作させるように構成された、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記複数の原子のうち少なくとも2つは、単一光子を反射させることにより制御された位相反転ゲートを操作するように構成され、N個の原子は、単一光子を反射させることによりN量子ビットトッフォリゲートを操作するように構成された(Nは3以上の整数である)、請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
前記複数の原子のうち少なくとも2つは、前記キャビティを介して仮想光子を交換することにより、制御された位相反転ゲートを含むスピン-スピン相互作用を操作するように構成された、請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
前記複数の原子のうち1つ以上が、前記ナノファイバー領域に集光され、前記ナノファイバー領域に結合された前記ファイバー光ケーブルに伝送されるように構成された複数の光子を放出する、請求項1に記載のシステム。
【請求項18】
偏光分析装置デバイスと、少なくとも前記ファイバー光ケーブルの前記第1端又は前記第2端に結合された1つ以上の単一光子検出器をさらに備え、
前記キャビティから反射された光量子ビットの状態が診断され、投影される、請求項1に記載のシステム。
【請求項19】
前記システムは分散システムを構成する複数のデバイスのうちの1つである、請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、量子コンピューティング技術全般に関する。特に、本発明は、ナノファイバーキャビティ(cavity;共振器)量子電磁力学(QED)システムを含むシステム及び方法を提供する。このシステムは、ナノファイバー領域と一対のリフレクターとを含む光学ケーブルと、ナノファイバー領域にエバネセント結合した原子とで構成され、量子コンピューティングデバイスのための原子-キャビティシステムを可能にする。単に例として、この発明は、暗号、創薬、最適化、機械学習及び人工知能、金融、天気予報、化学、機械、電気、土木、核融合及び核分裂、経済学、材料、その他あらゆる複雑な人間的な又は非人間的な事柄など、さまざまな用途に適用できる。
【0002】
量子コンピューティングとは、量子力学を利用して、古典的なコンピューティングよりも効率的に特定のタスクを実行するコンピューティングの一種である。古典的なコンピューティングでは、ビットは0又は1の2つの状態のうちの1つしか存在し得ないが、量子コンピューティングでは、量子ビットは0と1の両方の状態の重ね合わせを同時に存在させることができる。これにより、量子コンピュータは、大きな数の因数分解、最適化問題、量子システムのシミュレーションなど、特定の計算を古典コンピュータよりも指数関数的に高速に行うことができる。
【0003】
しかし、量子コンピューティングにはいくつかの欠点もある。大きな課題の1つは、量子ビットがノイズやデコヒーレンスに非常に影響を受けやすく、計算エラーの原因となることである。そのため、量子コンピュータは、計算の正確性を維持するために、慎重なエラー訂正技術が必要となる。実用的なフォールトトレラント量子計算には、100万個を超える量子ビットが必要であるが、これは、1つの量子計算デバイスあたりの量子ビット数の制限により、既存の量子計算プラットフォームの範囲を超える。スケーラブルな量子コンピューティングを実現するためには、量子コンピューティングデバイス1台あたりの処理能力の向上と、光ファイバーネットワークを用いた遠隔量子コンピューティングデバイス間の相互接続機能の両方が必要となる。
【0004】
以上のことから、接続可能な量子コンピューティングデバイスのためのプラットフォームと技術が望まれていることがわかる。
【発明の概要】
【0005】
一例として、本発明は量子コンピュータセルシステムを提供する。一例では、システムは、第1の端部領域と第2の端部領域を有するファイバー光ケーブルを備えている。第1の端部領域は第1の端部を有し、第2の端部領域は第2の端部を有する。一例では、システムは、第1の端部領域上に構成された第1ファイバーブラッググレーティングと、第2の端部領域上に構成された第2ファイバーブラッググレーティングとを有する。一例では、システムは、ファイバー光ケーブルの中央部分から構成され、第1の端部領域と第2の端部領域の間に結合されたナノファイバー領域を有する。一例では、システムは、第1のファイバーブラッググレーティングの近傍にあるナノファイバー領域の第1の部分から構成される第1のテーパー領域、及び、第2のファイバーブラッググレーティングの近傍にあるナノファイバー領域の第2の部分から構成される第2のテーパー領域を有する。一例では、システムは、テーパー領域及びナノファイバー領域を含み、第1のファイバーブラッググレーティングと第2のファイバーブラッググレーティングとの間に形成されたキャビティを有する。一例では、システムは、第1のファイバーブラッググレーティングと第2のファイバーブラッググレーティングとの間のナノファイバー領域にエバネセント結合した複数の原子を有する。一例では、システムは、光学ピンセットアレイを生成し、400ナノメートル以上の空間分解能で1つ又は複数の原子由来の1つ又は複数の光子を検出するように構成された撮像システムを含むが、バリエーションを含むことができる。
【0006】
例によっては、本発明は、これらの利益及び/又は利点の1つ以上を達成することができる。一実施例では、本発明は、ナノファイバー領域及び一対のリフレクターを含む光ケーブルと、ナノファイバー領域にエバネセント結合された原子と、で構成されたナノファイバーキャビティQEDシステムを使用して、量子コンピューティング用の原子-キャビティシステムを形成する、量子コンピューティングデバイスを提供する。一実施例では、デバイスは従来の光学技術を使用し、ファイバー光デバイスを使用することにより、コンパクトで効率的に集積される。一実施例では、本発明は、長距離量子通信と離れた量子コンピューティングセル間の効率的な相互接続に適した原子及び光子を利用することにより、静止量子ビットと飛行量子ビットの両方の利点を提供する。好ましい例では、本システムは、本撮像システムを用いて個々の原子を1つずつ制御することを可能にする。これらの及び他の利益及び/又は利点は、本発明のデバイス及び関連する方法により達成可能である。これらの利益及び/又は利点の更なる詳細は、本明細書全体を通して、より詳細には以下に見出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の例による量子コンピューティングセルデバイスを示す簡略図である。
【
図2】本発明の例による量子コンピューティングセルデバイスを作動させる方法を示す簡略図である。
【
図3】本発明の例による量子コンピューティングセルデバイスで構成された真空チェンバーの簡略図である。
【
図4】本発明の例によるナノファイバー領域に配置された定在波を使用する光ピンセットデバイスの簡略図である。
【
図5】本発明の例による量子ビットのグローバルマイクロ波制御を示す簡略図である。
【
図6】本発明の例によるローカルにアドレス指定するレーザービームと組み合わせた量子ビットのローカルマイクロ波制御を示す簡略図である。
【
図7】本発明の例による一対のレーザーによるグローバル量子ビット制御を示す簡略図である。
【
図8】本発明の例に対するローカルアドレスレーザービームと組み合わせた一対のグローバルアドレスレーザによるローカル量子ビット制御を示す簡略化された図である。
【
図9】本発明の例による一対のレーザによるローカル量子ビット制御を示す簡略図である。
【
図10】本発明の例による制御された位相反転ゲートを示す簡略図である。
【
図11】本発明の例によるキャビティ内の原子の連結性の制御を示す簡略図である。
【
図12】本発明の例による分散量子コンピューティングシステムを示す簡略図である。
【
図13】本発明の例による分散量子コンピューティングシステムを簡略化して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、一般に量子コンピューティング技術に関する。特に、本発明は、量子コンピューティングデバイスのための原子キャビティシステムを可能にするために、ナノファイバー領域と一対のリフレクターとを含む光学ケーブルを用いて構成され、ナノファイバー領域に原子をエバネセント結合させたナノファイバーキャビティQEDシステムを含むシステム及び方法を提供する。単なる例として、本発明は、暗号化、創薬、最適化、機械学習及び人工知能、金融、天気予報、化学、機械、電気、土木、核融合及び核分裂、経済、材料、及び他のあらゆる複雑な人間的な又は非人間的な事柄などの様々な用途に適用することができる。
【0009】
さらなる背景として、量子コンピューティングは、量子力学の原理を利用して古典的なコンピュータでは困難な計算を実行することにより、コンピューティングに革命をもたらす進歩的な分野であり、様々な応用が存在する。暗号、創薬、最適化、機械学習、人工知能、金融、天気予報、化学、機械、電気、土木、核融合及び核分裂、経済、材料、その他人間や非人間的な事柄が含まれる。量子コンピューティングは、現在使われている暗号の多くを解読するのに使うことができる。量子コンピューターは複雑な分子間相互作用をシミュレートできるため、新薬の発見や既存薬の改良に役立つ。量子コンピューティングは、新薬の開発を劇的にスピードアップさせる可能性がある。
【0010】
さらに、ロジスティクスや資源配分など、現実世界の問題の多くは、複雑なシステムの最適化を伴う。量子コンピューティングは、これらの問題を古典的なコンピュータよりも指数関数的に高速に解くことができる。量子コンピューティングは、機械学習アルゴリズムの訓練と最適化に使用でき、画像認識や音声認識、自然言語処理、ロボット工学などの分野で新たなブレークスルーをもたらす可能性がある。量子コンピューティングは、ポートフォリオ管理、リスク分析、デリバティブのプライシングに関連する最適化問題の解決に利用できる。量子コンピューティングは量子系のシミュレーションが可能であり、物質科学、凝縮系物理学、高エネルギー物理学の問題解決に役立つ可能性がある。我々の本システムと関連する方法の更なる詳細は、本明細書全体を通して、そしてより特に以下に見出すことができる。
【0011】
図1は、本発明の一例での量子コンピューティングセルデバイスを示す簡略図である。図示されるように、この図はデバイス及び関連システムを含む。デバイスは、直径がより細いナノファイバー領域を含む。複数の原子がナノファイバー領域の表面よりわずかに上に配置されている。一例では、原子は、400~600ナノメートルのナノファイバー直径の場合、ナノファイバー表面の約200~400ナノメートル上方に局在しているが、変動はあり得る。一例では、ナノファイバー領域の各面は、ファイバーブラッググレーティング構造に接続されるテーパー領域で構成される。ファイバーブラッググレーティング構造の各端部は、光子検出システムに設けられた光検出デバイスを有する光ケーブルに接続される。
【0012】
一例では、システムは撮像システムを有する。撮像システムは撮像デバイスと光源を有する。デバイスはまた、対物レンズと、撮像デバイスと光源との間に構成されたダイクロイックミラーデバイスとを含む様々な光学系を有する。撮像デバイスは、画素アレイを含むCMOS又は電荷結合素子カメラを含む。
【0013】
一例では、システムはまた、撮像システム及び光源に結合されたコントローラを有する。コントローラはまた、コンピューティングデバイス、人工知能エンジン、及び画像プロセッサに結合される。コントローラは、コンピュータとインターフェースで接続するように構成された複数のアナログ-デジタル/デジタル-アナログ変換デバイスを含む任意の適切なコントローラデバイスとすることができる。このように、量子コンピュータデバイスからの信号を制御するコントローラは、量子コンピューティングシステムとインターフェースで接続し、デバイスが送受信する信号を操作するように設計された特殊な電子システムである。コントローラは、量子アルゴリズムや量子測定の実行に必要な複雑な操作を指揮する役割を担うため、量子コンピューティングにおいて重要な役割を果たす。
【0014】
一例では、コントローラは通常、入出力インターフェース、デジタル信号処理回路、制御ロジックを含むいくつかの構成要素を有する。入出力インターフェースは、量子デバイスとの通信に使用され、量子デバイスから信号を受信し、制御信号を送信する。これらの信号は通常、電気信号、マイクロ波信号、ラジオ周波数信号の形をしている。デジタル信号処理回路は、量子デバイスから受信した信号を処理し、エラーやノイズを補正し、パルス整形やタイミングなどの演算を行う。これには、量子コンピューティングアプリケーションに最適化された特殊なアルゴリズムと処理技術が必要となる。制御ロジックは、コントローラと量子デバイスの操作を調整し、量子アルゴリズムや量子計測を実行するための適切な操作順序を決定する役割を担う。制御ロジックは、通常、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)やカスタム特定用途向け集積回路(ASIC)を含むソフトウェアとハードウェアの組み合わせで実装される。
【0015】
好ましい例では、システムは、原子や分子などの微視的物体を捕捉し操作するために集束レーザービームを使用するデバイスである光ピンセットを含む。一例では、光ピンセットの基本原理は、レーザービームが光の強度の勾配に比例した力を物体に与えることである。原子を操作する例では、光ピンセットには通常、高開口数の対物レンズを使用して回折限界スポットまで集光されたレーザービームが使用される。レーザービームは通常、赤外又は可視域のもので、固体レーザーやダイオードレーザーによって生成される。適切な波長のレーザービームが原子に集光されると、原子をビームの中心に引き寄せる力が生じる。これは光トラッピング、又は"光ピンセット"として知られている。捕捉力の強さは、レーザービームの強度と原子の分極率に依存する。レーザービームの位置と強度を操作することで、入射ピンセットビームとナノファイバーからの散乱との干渉により、ナノファイバー表面から一定の距離に原子を捕捉することができる。
【0016】
一例では、本発明は量子コンピュータセルシステムを提供する。一例では、システムは、第1の端部領域と第2の端部領域とを有するファイバー光ケーブルを有する。第1の端部領域は第1の端部を有し、第2の端部領域は第2の端部を有する。一例では、ファイバー光ケーブルは、コア領域内にドーパント材料(ゲルマニウムなど)が分布した二酸化ケイ素材料で構成される。
【0017】
一例では、システムは、第1の端部領域に構成された第1のファイバーブラッググレーティングと、第2の端部領域に構成された第2のファイバーブラッググレーティングとを有する。一例では、システムは、ファイバー光ケーブルの中央部分から構成され、第1の端部領域と第2の端部領域との間に結合されたナノファイバー領域を有する。ナノファイバー領域は99%以上の透過率を有する。一例では、ナノファイバー領域は300ナノメートルから1.5マイクロメートルの範囲の直径を有する。一例では、ナノファイバー領域の長さは10マイクロメートルから10センチメートルの範囲である。
【0018】
一例では、システムは、第1のファイバーブラッググレーティングの近傍内のナノファイバー領域の第1の部分から構成された第1のテーパー領域と、第2のファイバーブラッググレーティングの近傍内のナノファイバー領域の第2の部分から構成された第2のテーパー領域とを有する。一例では、システムは、テーパー領域とナノファイバー領域とを含む第1のファイバーブラッググレーティングと第2のファイバーブラッググレーティングとの間に形成されたキャビティを有する。
【0019】
一例では、セシウム及びルビジウムを含むアルカリ金属原子、イッテルビウム及びストロンチウムを含むアルカリ土類金属原子及びアルカリ土類類似原子、ならびに他のレーザー冷却可能な原子を含む、原子の数が1~100,000の範囲であり、前記第1のファイバーブラッググレーティングと前記第2のファイバーブラッググレーティングとの間の前記ナノファイバー領域にエバネセント結合するような複数の原子を有する。
【0020】
一例では、システムは、バリエーションがあり得るが、0.1以上の開口数であることを特徴とする撮像システムを有する。一例では、撮像システムは、光ピンセットアレイを生成し、複数の原子のうちの1つ以上に由来する1つ以上の光子を400ナノメートル以上の空間分解能の範囲で検出するように構成される。
【0021】
一例では、ナノファイバー領域から、キャビティ近傍に捕捉された複数の原子のうちの1つ以上から放出された光子がファイバー光ケーブルに結合され、ファイバー光ケーブルへの収集効率が99%以上であることを特徴とする光子検出システムである。一例では、光子は、ファイバー光ケーブルの少なくとも第1の端部又は第2の端部に結合された光子検出システムを使用して収集される。
【0022】
一例では、撮像システムは、第1のレンズから第nのレンズまでを備え、nは1より大きい整数である。一例では、一つ以上のレンズは、3倍から50倍の範囲で画像を拡大し、画素のアレイを使用して所定のスペクトル範囲内で拡大された画像をキャプチャするように構成される。画素のアレイは、少なくとも100×100画素を備えることができ、0.1×0.1ミリメートル以上の空間領域にわたって0.5ミクロンから2ミクロンの範囲の空間解像度を作成する。
【0023】
撮像システムは、一例では画像処理デバイスに結合される。画像処理デバイスは、撮像された画像を含むデータストリームを受信するように構成され、撮像された画像をグレイスケール画像マップに処理し、グレイスケール画像マップを閾値処理し、複数の原子のうちの1つ以上を識別するために撮像された画像の二値表現を出力するように構成される。
【0024】
一例では、撮像システムは、ナノファイバー領域を撮像システムに位置合わせするように構成される。一例では、画像処理デバイスは、撮像された画像を備えるデータのストリームを受信するように構成され、前記撮像された画像を処理してナノファイバー領域の一部の空間的位置を特定するように構成される。好ましい例では、画像処理デバイスは、撮像システムをナノファイバー領域に位置合わせするために対物レンズ及び他のレンズの空間的位置を変更するためのフィードバックを提供するように構成される。
【0025】
一例では、撮像システムは、所定の波長範囲に構成されたレーザー光源を備える。レーザー光源は、光学ピンセットアレイとして構成された複数のレーザービームをナノファイバー領域の選択された部分に集光するように、対物レンズで構成された空間光変調器を備える。レーザー光源は、レーザービームを反射又は透過するように構成されたダイクロイックミラーを備え、対物レンズを通ってナノファイバー領域の選択された部分に焦点を合わせるように構成され、レーザービームの一部がダイクロイックミラーを通してナノファイバー領域から反射されて画素のアレイに結像されるように構成される。一例では、レーザービームは、他の波長範囲も含むが特に400nmから2000nmの範囲の波長を有する周波数の単一モードによって特徴付けられる。
【0026】
一例では、レーザー光源は、ナノファイバー領域の選択された部分に焦点を合わせるための光アドレスアレイとして構成された複数のレーザービームを形成するために、対物レンズと共に構成された空間光変調器と共に構成される。レーザービームの一部はダイクロイックミラーを通して反射され、画素のアレイ上に結像される。
【0027】
図2は、本発明の例による量子コンピューティングセルデバイスを操作する方法の簡略図である。図示のように、この方法はSTARTで開始される。この方法は、レーザー光源を用いてレーザービームを生成する。レーザービームは空間光変調器にかけられ、複数の光ビームを生成する。複数のビームは対物レンズを透過し、ナノファイバー領域に集光される。複数のビームは、ナノファイバー領域と撮像システムとの間のアライメントを決定するために一部反射される。アライメントが所定の基準内にない場合、撮像システムとナノファイバー領域との間の関係は、対物レンズの欠陥を含むあらゆるミスアライメントに対応するように空間的に調整される。一旦関係が調整されると、この方法は、アライメントが所定の基準を満たすかどうかを判定するために繰り返される。
【0028】
一例では、次にこの方法は、光ビームを使用して原子を捕捉し、ナノファイバー領域の選択された部分に原子を配置する。原子が配置されると、複数のレーザービームを用いて原子を励起する。励起された原子は光子を放出し、光子は対物レンズを透過する。光子は所定の波長で帯域フィルターを透過する。その後、画素アレイを含むカメラアセンブリである撮像デバイスを用いて、透過した光子が捕捉される。本方法の更なる詳細は、本明細書全体を通じて見出すことができ、より詳細には以下の通りである。
【0029】
図3は、本発明の例による量子コンピューティングセルデバイスで構成された真空チェンバーの簡略図である。図示のように、真空チェンバーはナノファイバーキャビティデバイスの周囲に構成される。一例では、真空チェンバーは、ナノファイバー領域を所定の真空環境、例えば10
-10Torrに維持するように構成される。一例では、チェンバーは、室温から4ケルビンの範囲の所定の温度環境に維持されるが、他の温度環境でもよい。一例では、チェンバーは、複数の原子のうちの1つ以上と相互作用する可能性のある磁場変動が実質的にない状態に保たれる。好ましくは、周囲からの磁場変動は、真空チェンバーと共に構成された磁場シールドデバイスを用いて、真空チェンバーの内部から遮断される。一例では、3つの直交する空間方向からの磁場勾配とレーザー照射の組み合わせから生じる磁気光学トラッピングにより、複数の原子は絶対零度付近の1ミリケルビン以下の温度まで冷却され、その後、ピンセットアレイに捕捉された原子は、レーザー冷却により、運動自由度が基底状態又は基底状態に近い状態に冷却される。
【0030】
図4は、本発明の例によるナノファイバー領域におけるキャビティモードの定在波パターンに対する空間位置を制御するように構成された光学ピンセットデバイスの簡略図である。図示のように、キャビティモードの振幅は、ナノファイバー領域を含む一対のファイバーブラッググレーティング間に定在波パターンを形成する。図示のように、1つ以上の原子は、ナノファイバー領域の表面近傍内の領域に結合されるように構成される。図示のように、1つ以上の原子は、ブラッググレーティング間で共振する定在波の振幅の近傍内に配置される。操作中、光ピンセットデバイスは原子を捕捉し、定在波の最大振幅位置に個々の原子を配置する。振幅領域の頂点では、原子-光子結合が最大化され、励起される原子の検出が可能となる。より強い原子-光子結合はまた、より高い忠実度で光子の反射のための論理ゲートを容易にする。
【0031】
図5は、本発明の例による量子ビットのグローバルマイクロ波制御を示す簡略図である。一例では、マイクロ波放射は、ナノファイバー領域近傍の全ての捕捉された原子に照射される。マイクロ波は、量子ビットの状態をアップからダウン、又はダウンからアップ、及び他のバリエーションに反転させる。
【0032】
図6は、本発明の例による量子ビットのローカルマイクロ波制御を示す簡略図である。一例では、マイクロ波は、1つ以上の原子の共鳴周波数をシフトさせるために、光アドレスアレイを用いて選択された1つ以上の原子に照射される。
【0033】
図7は、本発明の例による一対のレーザーによるグローバル量子ビット制御を示す簡略図である。一例では、一対のレーザーはナノファイバー領域近傍に捕捉された原子すべてに照射される。一対のレーザーは、アップからダウン、又はダウンからアップ、及び他のバリエーションへと任意の量子ビット状態を制御する。
【0034】
図8は、本発明の例による光アドレス指定アレイと一対のレーザーの組み合わせによるローカル量子ビット制御を示す簡略図である。一例では、一対のレーザーは、1つ以上の原子の共鳴周波数をシフトさせるために、光アドレス指定アレイを用いて選択された1つ以上の原子に照射される。
【0035】
図9は、本発明の例による一対のレーザーによるローカル量子ビット制御を示す簡略図である。一例では、光アドレス指定アレイからの一対のレーザーは、1つ以上の原子を選択し、その任意の量子ビット状態をアップからダウン、又はダウンからアップ、及び他のバリエーションへと制御する。
【0036】
図10は、本発明の例による制御された位相反転ゲートを示す簡略図である(非特許文献1,2)。図示されるように、原子がキャビティに結合されると、結果として生じる光子はファイバーブラッググレーティングから反射される。原子がキャビティに結合していない場合、光子はキャビティに入射し、180度の相対位相差でキャビティから出射する。また、2つ以上の原子(例えば、n個の原子)がある場合、n個の原子のうちの1つがキャビティに結合すると、結果として生じる光子はファイバーブラッググレーティングから反射される。原子がキャビティに結合していない場合、結果として生じる光子はキャビティに入り、180度の相対位相差でキャビティから放出される。
図11は、本発明の例(非特許文献3)によるキャビティを媒介とするスピン-スピン相互作用を示す簡略図である。図示のように、光学アドレス指定アレイは、i番目の原子がキャビティに仮想光子を放出し、それに応じてスピンを反転させ、j番目の原子が同じ仮想光子を吸収し、j番目の原子のスピンを反転させるように構成される(iとjは整数)。このスピン-スピン相互作用により、単一量子ビット制御を組み合わせて位相反転ゲートを制御することができる。
【0037】
図12は、本発明の例によるキャビティ内の原子の接続性の制御を簡略化して示した図である。図示のように、光学アドレス指定アレイは、キャビティに結合された複数の原子の中から1つ以上の原子を選択的に選択するように構成されている。
【0038】
図13は、本発明の例による分散量子コンピューティングシステムの簡略図である。図示のように、このシステムは、直列構成で結合された複数のナノファイバーキャビティQEDシステムを含む。各ナノファイバーキャビティQEDシステムは、個別の量子コンピュータデバイスである。操作時には、図に示すように、単一光子のうちの1つが各ナノファイバーキャビティQEDシステムを通過するように構成される。本技術のさらなる詳細は、本明細書全体、特に以下に記載される。
【0039】
一例では、本技術にはさまざまなバリエーションが存在する。一例では、第1ファイバーブラッググレーティング及び第2ファイバーブラッググレーティングはそれぞれ、99%以上の反射率で構成されている。一例では、ナノファイバー領域の直径は、90%以内の範囲で一定であることを特徴とする。一例では、第1のファイバーブラッググレーティング及び第2のファイバーブラッググレーティングはそれぞれ、光ファイバーケーブルのコアに複数の屈折率変調構造を備える。屈折率変調構造は、電子ビームリソグラフィーにより製造された位相シフトマスクにおけるレーザービームの回折により作成された紫外レーザーの強度のパターンにより刻印される。
【0040】
一例では、システムは、赤外電磁放射を吸収するように構成されたシリコンウェハー上に搭載され、第1ファイバーブラッググレーティング及び/又は第2ファイバーブラッググレーティングに結合された1つ以上のレーザーデバイスを有する。各レーザーデバイスは、第1ファイバーブラッググレーティング及び第2ファイバーブラッググレーティングの中心周波数を制御し、反射率を98.0%から99.999%の範囲で個別に調整するように構成されている。
【0041】
一例では、レーザーデバイスはナノファイバー領域に結合される。レーザーデバイスは、ナノファイバー領域の温度を変えることにより、選択された原子の遷移周波数にキャビティ共鳴周波数を制御するように構成されている。
【0042】
一例では、原子-光子の結合を最大にするために、キャビティモード偏光の主軸を光ピンセットの入射方向に平行になるように選ぶ。キャビティモード偏光は、ナノファイバー領域からの光散乱の強度によって特徴付けられる。
【0043】
一例では、光ピンセットアレイは、ナノファイバー領域に対して空間的に整列し、ナノファイバー領域から得られる光信号をモニタリングするフィードバックプロセスによって安定化されるように構成された、1つ以上の光ピンセットスポットを生成するように構成された光ピンセットデバイスを備える。一例では、複数の原子のうち1つ以上が、光学ピンセットアレイの光学ピンセットデバイスを使用して捕捉され、光学ピンセットデバイスは、ナノファイバー領域から100ナノメートルから1マイクロメートルの距離で均一な光学ピンセットアレイを生成するために、ナノファイバー領域から生じる光信号及び/又は原子からの蛍光信号を受信するためのフィードバックプロセスを備える。
【0044】
一例では、複数の原子のうちの1つ以上が、撮像システムによって捕捉されるように構成された光子を放出する。1つ以上の原子が空間的に配置されており、該撮像システムは前記1つ以上の原子から放出された光子の空間的画像を捕捉するように構成されている。
【0045】
一例では、システムは、原子-キャビティ結合とは独立して、1つ以上の原子を撮像しながら、原子の温度を低下させるために、3つの直交する空間方向から1つ以上の原子を照射するレーザーデバイスを備えている。一例では、レーザーデバイスは、原子-キャビティ共鳴から1テラヘルツ以上差がある操作波長によって特徴付けられる。
【0046】
一例では、複数の原子のうち1つ以上が、1マイクロ秒以上という保存時間を持つ量子状態を保存するように構成されている。一例では、複数の原子の少なくとも1つとキャビティからの反射光子は、制御された位相反転ゲートを操作するように構成されている。一例では、複数の原子のうち少なくとも2つは、単一光子を反射させることにより制御された位相反転ゲートを操作するように構成され、N個の原子は、単一光子を反射させることによりN量子ビットトッフォリゲートを操作するように構成される。
【0047】
一例では、複数の原子のうちの一つ以上が、ナノファイバー領域に集光され、ナノファイバー領域に結合された光ファイバーケーブルに伝送されるように構成された複数の光子を放出する。
【0048】
一例では、システムは光ファイバーケーブルに結合された光フィルタリングデバイスを有する。一例では、光フィルタリングデバイスは、原子からの光子を結合し、その原子から放出されない追加の光子及び/又は他のレーザーデバイスに由来する光子及び/又は材料から放出される光子を除去するように構成されている。
【0049】
一例では、システムは、光ファイバーケーブルの少なくとも第1端又は第2端にファイバー結合された1つ以上の単一光子検出器を有する。一例では、システムは、キャビティから反射されたフォトニック量子ビットの状態を診断し、投影する偏光アナライザデバイスを備えている。一例では、システムは、分散システム内に構成された複数のデバイスのうちの1つである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0050】
【非特許文献1】L.-M. Duan and H. J. Kimble Phys. Rev. Lett. 92, 127902 (2004)
【非特許文献2】L.-M. Duan, B. Wang, and H. J. Kimble Phys. Rev. A 72, 032333 (2005)
【非特許文献3】C-. L. Hung, A. Gonzalez-Tudela, J. I. Cirac and H. J. Kimble, Proceeding of National Academy of Science, 113, E4946 (2016).
【外国語明細書】