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特開2025-3936トポロジカル絶縁体材料による局所的および非局所的スピン軌道トルク(SOT)書き込みヘッド
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025003936
(43)【公開日】2025-01-14
(54)【発明の名称】トポロジカル絶縁体材料による局所的および非局所的スピン軌道トルク(SOT)書き込みヘッド
(51)【国際特許分類】
   G11B 5/31 20060101AFI20250106BHJP
   G11B 5/02 20060101ALI20250106BHJP
【FI】
G11B5/31 A
G11B5/02 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】45
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024096188
(22)【出願日】2024-06-13
(31)【優先権主張番号】63/472,944
(32)【優先日】2023-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/523,750
(32)【優先日】2023-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】18/361,631
(32)【優先日】2023-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】18/229,785
(32)【優先日】2023-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京科学大学
(71)【出願人】
【識別番号】504056130
【氏名又は名称】ウェスタン デジタル テクノロジーズ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】ファム ナム ハイ
(72)【発明者】
【氏名】クアン レイ
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン アール ヨーク
(72)【発明者】
【氏名】リウ シャオユン
(72)【発明者】
【氏名】チャーニー ファン
(72)【発明者】
【氏名】ハッサン オスマン
(72)【発明者】
【氏名】ソン ティー レイ
(72)【発明者】
【氏名】シャロン バイン
(72)【発明者】
【氏名】前田 麻貴
(72)【発明者】
【氏名】トゥオ ファン
(72)【発明者】
【氏名】ユ タオ
(72)【発明者】
【氏名】高野 公史
(57)【要約】      (修正有)
【課題】改良されたスピントロニクスデバイスを備える磁気ヘッドを提供する。
【解決手段】磁気媒体ドライブなどの磁気媒体用の局所または非局所SOTスピントロニクスデバイスを備える磁気記録ヘッドで、局所SOTスピントロニクスデバイスを有する磁気記録ヘッドの場合、主磁極と、シールドと、主磁極の上に配置されたバッファ層と、バッファ層の上に配置されたスピンホール層と、スピンホール層の上に配置された中間層と、を有し、バッファ層は所定の材料を含む。非局所SOTスピントロニクスデバイスを備えた磁気記録ヘッド1300の場合、主磁極1302と、シールド1304と、スピンブロッキング層1310と、非磁性層と、スピン軌道トルク(SOT)層1308と、を備え、SOT層は、媒体対向面(MFS)から約20nm~約100nmの距離後退している。SOT層の長さとSOT層の厚さの比は1より大きい。SOT層はBiSbで構成される。
【選択図】図10A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主磁極と、
シールドと、
前記主磁極と前記シールドとの間に配置された局所スピントロニクスデバイスと、を備え、
前記局所スピントロニクスデバイスは、前記主磁極の上に配置されたバッファ層と、前記バッファ層の上に配置されたスピンホール層と、スピンホール層の上に配置された中間層と、を有し、
前記バッファ層は、グループB、グループC、グループD、グループE、グループF、グループG、またはグループHからなる群から選択される材料を含み、
グループBは、面心立方(FCC:Face Centered Cubic)酸化物材料で構成され、
グループCは、成膜条件によってはアモルファスからナノ結晶の薄膜として成膜でき、抵抗率が100μΩ・cmを超える材料で構成され、
グループDは、FeVAl、CrCoAl、CoTiSb、MnVSi、VAl、[Mn0.5Co0.5VAl、[Mn0.75Co0.25VSi、CoMnNbAl、CoZrFeAl、TiMnAlを含む非磁性ホイスラー材料で構成され、
グループEは、スピン分極が大きくスピンホール層と混ざりにくい磁性合金またはホイスラー合金を用いた結晶性の高スピン分極層で構成され、
グループFは、強い(012)BiSbXテクスチャまたは成長を促進しないアモルファスの非磁性で高抵抗の電気的シャントブロック層で構成され、
グループGは、2.19A~2.02Aのd間隔の範囲に最近接X線回折ピークを有する金属アモルファスまたはセラミックアモルファスの材料で構成され、
グループHは、アモルファスまたは結晶の材料である高垂直磁気異方性(PMA:Perpendicular Magnetic Anisotropy)材料で構成され、
前記スピンホール層は、アンドープBiSbまたはドープされたBiSbX(Xは、ドーパントである。)を含み、
前記中間層は、グループB、C、D、E、F、G、およびHからなる群から選択される材料を含む、
磁気ヘッド。
【請求項2】
グループEは、CoMnSb、CoFeX、NiFeX(X=Si、Al、Mn、またはGe)、CoFe、NiFe、CoMnGe、CoMnSb、NiMnSb、CoFeGe、CoMnSn、およびCoMnFeGeのうちの1つ以上で構成される、
請求項1に記載の磁気ヘッド。
【請求項3】
グループFは、SiO、Al、SiN、AlN、SiC、SiCrOx、NiX、FeX、またはCoXで構成され、Xは、Fe、Co、Ni、Ta、Hf、W、Ir、Pt、Ti、Zr、N、Ru、GeおよびBのうちの1つ以上である、
請求項1に記載の磁気ヘッド。
【請求項4】
グループGは、Cu、Ag、Ge、Al、Mg、Si、Mn、Ni、Co、Mo、Zr、Y、Bi、Hf、Ta、W、Ir、Pt、Ti、またはBのうちの1つ以上の元素で積層または合金化されている、グループA、D、またはEからの非磁性材料および磁性材料で構成され、
グループAは、体心立方(BCC:body centered cubic)材料で構成される、
請求項1に記載の磁気ヘッド。
【請求項5】
グループAが、V、VAl、MnAl、Nb、Mo、W、Ta、WTi50、または(100)テクスチャ層と組み合わせて使用されるBCC材料で構成され、
請求項4に記載の磁気ヘッド。
【請求項6】
グループAは、Cr、RuAl、IrAl、CoAl、NiAl、CrMo、またはCrXで構成され、Xは、Ru、Ti、WおよびMoから選択される、
請求項4に記載の磁気ヘッド。
【請求項7】
グループGは、a-Ge、a-NiPおよびCu、Ag、Ge、Al、Mg、Si、Mn、Ni、Co、Mo、Zr、Y、Bi、Hf、Ta、W、Ir、Pt、Ti、またはBのうちの1つ以上の元素を含む、強い(012)BiSbテクスチャを促進するアモルファスまたはナノ結晶の合金で構成される、
請求項1に記載の磁気ヘッド。
【請求項8】
グループHは、高PMAを有するアモルファス希土類遷移金属(RE-TM)で構成される、
請求項1に記載の磁気ヘッド。
【請求項9】
グループHは、TbFeCo、TbFeB、Nd、Pr、Sm(Fe,Co)B、またはCoZrTaBで構成される、
請求項6に記載の磁気ヘッド。
【請求項10】
グループHは、
Co/Pt、Co/Pd、CoFe/Pt、Co/Tb、またはCoFe/Tb(「/」は、多層スタックの層の分離を示す。)の多結晶スタック、または
(012)テクスチャ成長のためにスピンホール層の隣りのアモルファスの高スピン分極層を有する、高KuのCoPt、CoPtCr、CoFePt、およびFePtの単層PMA材料で構成される、
請求項1に記載の磁気ヘッド。
【請求項11】
グループBは、FeO、CoO、NiO、ZrO、MgO、TiO、MgTiO、またはMnOで構成される、
請求項1に記載の磁気ヘッド。
【請求項12】
前記主磁極は、媒体対向面(MFS:Media Facing Surface)に配置された第1の表面を有し、
前記シールドは、前記MFSに配置された第2の表面を有し、
前記磁気ヘッドは、前記主磁極と前記シールドとの間に配置された、前記MFSに配置された第3の表面を有する第1の絶縁層をさらに備え、
前記局所スピントロニクスデバイスは、前記主磁極と前記シールドとの間に配置され、前記MFSから後退している、
請求項1に記載の磁気ヘッド。
【請求項13】
請求項1に記載の磁気ヘッドを備える、
磁気記録装置。
【請求項14】
主磁極と、
シールドと、
前記主磁極と前記シールドとの間に配置された局所スピントロニクスデバイスと、を備え、
前記局所スピントロニクスデバイスは、
第1のバッファ層と、
アンドープBiSbまたはドープされたBiSbX(Xは、ドーパントである。)を含む、前記第1のバッファ層の上に配置された第1のスピンホール層と、
前記第1のスピンホール層の上に配置された第1の中間層と、
前記第1の中間層の上に配置された絶縁層と、
前記絶縁層の上に配置された第2のバッファ層と、
アンドープBiSbまたはドープされたBiSbX(Xは、ドーパントである。)を含む、前記第2のバッファ層の上に配置された第2のスピンホール層と、
前記第2のスピンホール層の上に配置された第2の中間層と、を有する、
磁気ヘッド。
【請求項15】
前記第1のバッファ層は、多層構造を含む、
請求項14に記載の磁気ヘッド。
【請求項16】
前記第2の中間層は、多層構造を含む、
請求項14に記載の磁気ヘッド。
【請求項17】
請求項14に記載の磁気ヘッドを備える、
磁気記録装置。
【請求項18】
主磁極と、
シールドと、
前記主磁極と前記シールドとの間に配置された局所スピントロニクスデバイスと、
前記局所スピントロニクスデバイスと前記主磁極または前記シールドとの間に配置された絶縁層と、を備え、
前記局所スピントロニクスデバイスは、
バッファ層と、
アンドープBiSbまたはドープされたBiSbX(Xは、ドーパントである。)を含む、前記バッファ層の上に配置されたスピンホール層と、
前記スピンホール層の上に配置された中間層と、を有する、
磁気ヘッド。
【請求項19】
前記バッファ層および前記中間層は、複数の層をそれぞれ含む、
請求項18に記載の磁気ヘッド。
【請求項20】
前記スピンホール層は、媒体対向面から後退している、
請求項18に記載の磁気ヘッド。
【請求項21】
請求項18に記載の磁気ヘッドを備える、
磁気記録装置。
【請求項22】
媒体対向面(MFS:Media Facing Surface)に配置された主磁極と、
前記MFSに配置されたシールドと、
非局所SOTスピントロニクスデバイスと、を備え、
前記非局所SOTスピントロニクスデバイスは、
前記主磁極と前記シールドとの間において前記MFSに配置された非磁性層と、
前記MFSから20nm~100nmの距離後退しており、前記非磁性層の上に配置されたスピン軌道トルク(SOT:Spin Orbit Torque)層と、を有する、
磁気記録ヘッド。
【請求項23】
前記SOT層の厚さに対する前記SOT層の長さの比は、1より大きい、
請求項22に記載の磁気記録ヘッド。
【請求項24】
前記非磁性層は、テーパー形状であり、
前記非磁性層の長さは、前記SOT層の長さに実質的に等しい、
請求項22に記載の磁気記録ヘッド。
【請求項25】
前記SOT層は、アンドープBiSbを含む、
請求項22に記載の磁気記録ヘッド。
【請求項26】
前記SOT層は、ドープされたBiSbXを含み、ドーパントが、約10at.%未満であり、Xは、B、N、Al、Si、Ti、V、Cr、Fe、Ni、Cu、Ge、Y、Zr、Ru、Mo、Ag、Hf、Ta、WおよびIrからなる群から選択される材料である、
請求項22に記載の磁気記録ヘッド。
【請求項27】
前記シールドと前記非磁性層との間に配置されたスピンブロッキング層をさらに備え、
前記SOT層は、前記非磁性層のトレーリング側対向面上に配置されている、
請求項22に記載の磁気記録ヘッド。
【請求項28】
前記主磁極と前記非磁性層との間に配置されたスピンブロッキング層をさらに備え、
前記SOT層は、前記非磁性層の主磁極対向面上に配置されている、
請求項22に記載の磁気記録ヘッド。
【請求項29】
請求項22に記載の磁気記録ヘッドを備える、
磁気記録装置。
【請求項30】
前記SOT層を通して電流を流し、前記SOT層から前記非磁性層を通して前記主磁極にスピン流を流すように構成された制御ユニットをさらに備える、
請求項29に記載の磁気記録装置。
【請求項31】
前記SOT層を通して電流を流し、前記SOT層から前記非磁性層を通して前記シールドにスピン流を流すように構成された制御ユニットをさらに備える、
請求項29に記載の磁気記録装置。
【請求項32】
媒体対向面(MFS:Media Facing Surface)に配置された主磁極と、
非局所SOTスピントロニクスデバイスと、を備え、
前記非局所SOTスピントロニクスデバイスは、
前記主磁極の上において前記MFSに配置された第1の非磁性層と、
前記第1の非磁性層の上において前記MFSに配置された第2の非磁性層と、
前記第2の非磁性層の上に配置されたシールドと、
前記第1の非磁性層と前記第2の非磁性層との間に配置され、前記MFSから20nm~100nmの距離後退しているスピン軌道トルク(SOT:Spin Orbit Torque)層と、を有する、
磁気記録ヘッド。
【請求項33】
前記SOT層の厚さに対する前記SOT層の長さの比は、1より大きく、
前記SOT層は、アンドープBiSbまたはドープされたBiSbXを含み、ドーパントは、10at.%未満であり、Xは、B、N、Al、Si、Ti、V、Cr、Fe、Ni、Cu、Ge、Y、Zr、Ru、Mo、Ag、Hf、Ta、W、およびIrからなる群から選択される材料である、
請求項32に記載の磁気記録ヘッド。
【請求項34】
前記第1の非磁性層と前記第2の非磁性層との間において、前記MFSに配置されたスピンブロッキング層をさらに備える、
請求項32に記載の磁気記録ヘッド。
【請求項35】
前記スピンブロッキング層は、Ti、Ru、TiとRu、Pt、またはMnとの二層、RuとPtまたはMnとの二層、およびそれらの合金、AlOx(xは、1以上の整数である。)、SiN、およびMgOからなる群から選択される材料を含む、
請求項34に記載の磁気記録ヘッド。
【請求項36】
前記第1の非磁性層および前記第2の非磁性層は、それぞれ個別にCuまたはAlを含む、
請求項32に記載の磁気記録ヘッド。
【請求項37】
請求項32に記載の磁気記録ヘッドを備える、
磁気記録装置。
【請求項38】
前記SOT層を通して電流を流し、前記SOT層から前記第1の非磁性層を通して前記主磁極に第1のスピン流を流し、前記SOT層から前記第2の非磁性層を通して前記シールドに第2のスピン流を流すように構成された制御ユニットをさらに備える、
請求項37に記載の磁気記録装置。
【請求項39】
媒体対向面(MFS:Media Facing Surface)に配置された主磁極と、
非局所SOTスピントロニクスデバイスと、を備え、
前記非局所SOTスピントロニクスデバイスは、
前記主磁極の上において前記MFSに配置された第1の非磁性層と、
前記第1の非磁性層の上に配置されたスピンブロッキング層と、
前記スピンブロッキング層の上において前記MFSに配置された第2の非磁性層と、
前記第2の非磁性層の上に配置されたトレーリングシールドと、
前記第1の非磁性層の前記主磁極に対向する面の上に配置された第1のスピン軌道トルク(SOT:Spin Orbit Torque)層と、
前記第2の非磁性層の上に配置された第2のSOT層と、を有し、
前記第1のSOT層および前記第2のSOT層は、前記MFSから20nm~100nmの距離それぞれ個別に後退している、
磁気記録ヘッド。
【請求項40】
前記第1のSOT層の厚さに対する前記第1のSOT層の長さの比は、1より大きく、
前記第2のSOT層の厚さに対する前記第2のSOT層の長さの比は、1より大きく、
前記第1のSOT層および前記第2のSOT層は、それぞれ個別にBiSbを含む、
請求項39に記載の磁気記録ヘッド。
【請求項41】
前記第1の非磁性層および前記第2の非磁性層は、それぞれ個別にテーパー形状であり、
前記第1のSOT層は、前記第1の非磁性層の主磁極対向面上に配置され、
前記第2のSOT層は、前記第2の非磁性層のトレーリングシールド対向面上に配置される、
請求項39に記載の磁気記録ヘッド。
【請求項42】
前記第1の非磁性層および前記第2の非磁性層は、それぞれ個別に、酸化物、窒化物、アモルファスの非磁性シャントブロック層、または2.19Å~2.02Åのd間隔の範囲に最近接X線回折ピークを有する金属を含む、
請求項39に記載の磁気記録ヘッド。
【請求項43】
前記スピンブロッキング層は、前記第1のSOT層と前記第2のSOT層との間において延在する、
請求項39に記載の磁気記録ヘッド。
【請求項44】
請求項39に記載の磁気記録ヘッドを備える、
磁気記録装置。
【請求項45】
前記第1のSOT層を通して第1の電流を流し、前記第1のSOT層から前記第1の非磁性層を通して前記主磁極に第1のスピン流を流し、前記第2のSOT層を通して第2の電流を流し、前記第2のSOT層から前記第2の非磁性層を通して前記トレーリングシールドに第2のスピン流を流すように構成された制御ユニットをさらに備える、
請求項44に記載の磁気記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、一般に、磁気媒体ドライブまたはハードディスクドライブなどの磁気媒体用のスピントロニクスデバイスを備える磁気記録ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術の説明
コンピュータの心臓部は、ハードディスクドライブである。ディスクの磁気面に非常に接近して配置された読み取りヘッドおよび書き込みヘッドを通過してディスクが回転すると、ディスクへの情報の書き込みおよびディスクからの情報の読み取りが行われる。マイクロ波アシスト磁気記録(MAMR:Microwave Assisted Magnetic Recording)は、磁気記録媒体の記録密度を向上させるエネルギーアシスト記録技術の一種である。
【0003】
MAMRでは、高周波の交流磁界を発生させるために、スピントロニクスデバイスが書き込み素子の近くに配置される。交流磁界は磁気記録媒体の実効保磁力を低下させ、書き込み極からの書き込み磁界を低くすることができる。低い書き込み磁界のため、MAMRによって磁気記録媒体の高い記録密度が達成される可能性がある。より一般的には、スピントロニクス効果に基づく様々なエネルギー補助記録アプローチが検討されており、磁気記録デバイスに使用するための改良されたスピントロニクスデバイスが当技術分野で必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、一般に、磁気媒体ドライブなどの磁気媒体用のスピントロニクスデバイスを備える磁気記録ヘッドに関する。
【0005】
スピントロニクスデバイスは、局所または非局所のスピン軌道トルク(SOT:Spin-Orbit Torque)スピントロニクスデバイスである。
【0006】
局所SOTスピントロニクスデバイスは、少なくとも1つのスピンホール層と、少なくとも1つのバッファ層と、少なくとも1つの中間層と、を含む。バッファ層は書き込みヘッドの主磁極に近接して配置され、中間層は書き込みヘッドのシールドに近接して配置される。スピンホール層は、バッファ層と中間層との間に配置される。スピントロニクスデバイスは、媒体対向面(MFS:Media Facing Surface)に配置されてもよいし、MFSから離れた位置に配置されてもよい。スピントロニクスデバイスは、主磁極、シールド、またはその両方にスピン流を注入できる。
【0007】
一つの実施形態では、局所SOTスピントロニクスデバイスを備えた磁気記録ヘッドは、主磁極と、シールドと、主磁極とシールドとの間に配置されたスピントロニクスデバイスと、を備える。スピントロニクスデバイスは、グループB、グループC、グループD、グループE、グループF、グループG、およびグループHから選択される材料を含む主磁極の上に配置されたバッファ層と、アンドープBiSbまたはドープされたBiSbX(Xは、ドーパントである。)を含むバッファ層の上に配置されたスピンホール層と、グループB、C、D、E、F、G、およびHから選択される材料を含む、スピンホール層の上に配置された中間層を含む。グループBは、面心立方(FCC:Face Centered Cubic)酸化物材料で構成される。グループCは、100μΩ・cmを超える抵抗率を有する、成膜条件によってはアモルファスからナノ結晶の薄膜として成膜可能な材料で構成される。グループDは、FeVAl、CrCoAl、CoTiSb、MnVSi、VAl、[Mn0.5Co0.5VAl、[Mn0.75Co0.25VSi、CoMnNbAl、CoZrFeAl、TiMnAlを含む非磁性ホイスラー材料で構成される。グループEは、スピン分極率が大きく、スピンホール層と混ざりにくい磁性合金またはホイスラー合金を用いた結晶性の高分極率層で構成される。グループFは、強い(012)BiSbXのテクスチャまたは成長を促進しないアモルファスの非磁性で高抵抗な電気的シャントブロック層で構成される。グループGは、2.19A~2.02Aのd間隔に最近接X線回折ピークを有する金属アモルファスまたはセラミックアモルファス材料で構成される。グループHは、アモルファスまたは結晶材料である高垂直磁気異方性(PMA:Perpendicular Magnetic Anisotropy)材料で構成される。
【0008】
別の実施形態では、局所SOTスピントロニクスデバイスを備えた磁気ヘッドは、主磁極と、シールドと、主磁極とシールドとの間に配置されたスピントロニクスデバイスと、を備える。スピントロニクスデバイスは、第1のバッファ層と、アンドープBiSbまたはドープされたBiSbX(Xは、ドーパントである。)を含む、バッファ層の上に配置された第1のスピンホール層と、第1のスピンホール層の上に配置された第1の中間層と、第1の中間層の上に配置された絶縁層と、絶縁層の上に配置された第2のバッファ層と、アンドープBiSbまたはドープされたBiSbX(Xは、ドーパントである。)を含む、第2のバッファ層の上に配置された第2のスピンホール層と、第2のスピンホール層の上に配置された第2の中間層を含む。
【0009】
非局所SOTスピントロニクスデバイスを備えた磁気記録ヘッドは、媒体対向面(MFS)に配置された主磁極と、MFSに配置されたシールドと、シールドと主磁極との間に配置されたスピンブロッキング層と、主磁極とシールドとの間においてMFSに配置された少なくとも1つの非磁性層と、非磁性層の上に配置され、MFSから約20nm~約100nmの距離後退している少なくとも1つのスピン軌道トルク(SOT)層と、を備える。少なくとも1つのSOT層は、BiSbを含む。
【0010】
一つの実施形態では、非局所SOTスピントロニクスデバイスを備えた磁気記録ヘッドは、媒体対向面(MFS)に配置された主磁極と、MFSに配置されたシールドと、主磁極とシールドとの間においてMFSに配置された非磁性層と、MFSから約20nm~約100nmの距離後退している、非磁性層の上に配置されたスピン軌道トルク(SOT)層と、を備える。
【0011】
さらに別の実施形態では、非局所SOTスピントロニクスデバイスを備えた磁気記録ヘッドは、媒体対向面(MFS)に配置された主磁極と、主磁極の上においてMFSに配置された第1の非磁性層と、第1の非磁性層の上に配置されたスピンブロッキング層と、スピンブロッキング層の上においてMFSに配置された第2の非磁性層と、第2の非磁性層の上に配置されたトレーリングシールドと、第1の非磁性層の上に配置された第1のスピン軌道トルク(SOT)層と、第2の非磁性層の上に配置された第2のSOT層と、を備える。第1のSOT層および第2のSOT層は、約20nm~約100nmの距離MFSからそれぞれ後退している。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本開示の上述の特徴が詳細に理解され得るように、上記で簡単に要約された本開示のより具体的な説明は、添付図面にその一部が例示される実施形態を参照することによって有することができる。しかしながら、添付図面は、本開示の典型的な実施形態のみを図示しており、したがって、本開示は、他の同様に有効な実施形態を認めることができるため、その範囲を限定するものとみなされないことに留意されたい。
図1図1は、本開示を具体化したディスク・ドライブを示している。
図2図2は、一つの実施形態による、磁気媒体に面する読み取り/書き込みヘッドの中心を通る断片的な断面側面図である。
図3A-3B】図3Aおよび図3Bは、様々な実施形態による局所SOTスピントロニクスデバイスを備えた書き込みヘッドの概略断面図である。
図4A-4D】図4Aは、一つの実施形態による局所SOTスピントロニクスデバイスを備えた書き込みヘッドの概略図である。図4Bは、図4Aの書き込みヘッドのスピントロニクスデバイスの分解図である。図4Cは、一つの実施形態による多層バッファ層の概略図である。図4Dは、一つの実施形態による多層中間層の概略図である。
図5A-5D】図5Aは、別の実施形態による局所SOTスピントロニクスデバイスを備えた書き込みヘッドの概略図である。図5Bは、図5Aの書き込みヘッドのスピントロニクスデバイスの分解図である。図5Cは、一つの実施形態による多層バッファ層の概略図である。図5Dは、一つの実施形態による多層中間層の概略図である。
図6A-6D】図6Aは、別の実施形態による局所SOTスピントロニクスデバイスを備えた書き込みヘッドの概略図である。図6Bは、図6Aの書き込みヘッドのスピントロニクスデバイスの分解図である。図6Cは、一つの実施形態による多層中間層の概略図である。図6Dは、一つの実施形態による多層絶縁層の概略図である。
図7A-7D】図7Aは、別の実施形態による局所SOTスピントロニクスデバイスを備えた書き込みヘッドの概略図である。図7Bは、図7Aの書き込みヘッドのスピントロニクスデバイスの分解図である。図7Cは、一つの実施形態による多層バッファ層の概略図である。図7Dは、一つの実施形態による多層絶縁層の概略図である。
図8A-8D】図8Aは、別の実施形態による局所SOTスピントロニクスデバイスを備えた書き込みヘッドの概略図である。図8Bは、図8Aの書き込みヘッドのスピントロニクスデバイスの分解図である。図8Cは、一つの実施形態による多層バッファ層の概略図である。図8Dは、一つの実施形態による多層中間層の概略図である。
図9A-9D】図9Aは、別の実施形態による局所SOTスピントロニクスデバイスを備えた書き込みヘッドの概略図である。図9Bは、図9Aの書き込みヘッドのスピントロニクスデバイスの分解図である。図9Cは、一つの実施形態による多層バッファ層の概略図である。図9Dは、一つの実施形態による多層中間層の概略図である。
図10A図10Aは、一つの実施形態による、非局所SOTスピントロニクスデバイスを備えた書き込みヘッドの透視図である。
図10B図10Bは、図10Aの書き込みヘッドの一部を示す。
図11図11は、別の実施形態による、非局所SOTスピントロニクスデバイスを備えた書き込みヘッドの透視図である。
図12図12は、さらなる別の実施形態による、非局所SOTスピントロニクスデバイスを備えた書き込みヘッドの透視図である。
図13図13は、一つの実施形態による、非局所SOTスピントロニクスデバイスを備えた書き込みヘッドの透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
理解を容易にするために、図に共通する同一の要素を指定するために、可能な限り同一の参照数字が使用されている。ある実施形態に開示された要素は、具体的に説明することなく、他の実施形態に有益に利用され得るとする。
【0014】
詳細説明
以下では、本開示の実施形態について言及する。しかしながら、本開示は、具体的に記載された実施形態に限定されないことが理解されるべきである。その代わりに、異なる実施形態に関連するか否かにかかわらず、以下の特徴および要素の任意の組み合わせが、本開示を実施および実践するために企図される。さらに、本開示の実施形態は、他の可能な解決策に対する、および/または従来技術に対する利点を達成し得るが、特定の利点が所与の実施形態によって達成されるか否かは、本開示を限定するものではない。したがって、以下の態様、特徴、実施形態、および利点は、単に例示であり、請求項(複数可)に明示的に記載されている場合を除き、添付の請求項の要素または限定とはみなされない。同様に、「本開示」への言及は、本明細書において開示される任意の発明的主題の一般化として解釈されず、請求項において明示的に記載される場合を除き、添付の請求項の要素または限定とはみなされない。
【0015】
本開示は、一般に、磁気媒体ドライブなどの磁気媒体用の局所SOTスピントロニクスデバイスを含む磁気記録ヘッドに関する。スピントロニクスデバイスは、少なくとも1つのスピンホール層と、少なくとも1つのバッファ層と、少なくとも1つの中間層とを含む。バッファ層は、書き込みヘッドの主磁極に近接して配置され、中間層は、書き込みヘッドのトレーリングシールドに近接して配置される。スピンホール層は、バッファ層と中間層との間に配置される。スピントロニクスデバイスは、媒体対向面(MFS)に配置されていてもよいし、MFSから後退してもよい。スピントロニクスデバイスは、主磁極、トレイリングシールド、またはその両方にスピン流を注入できる。
【0016】
図1は、一つの実施形態による磁気記録装置100の概略図である。磁気記録装置100は、書き込みヘッドなどの磁気記録ヘッドを含む。磁気記録装置100は、ハードディスクドライブ(HDD:Hard Disk Drive)などの磁気媒体ドライブである。このような磁気媒体ドライブは、単一のドライブ/デバイスであってもよいし、複数のドライブ/デバイスを含んでもよい。図示を容易にするために、図1に示される実施態様では、単一のディスクドライブが磁気記録装置100として示されている。磁気記録装置100(例えば、ディスクドライブ)は、スピンドル114上に支持され、駆動モータ118によって回転される少なくとも1つの回転可能な磁気ディスク112を含む。各回転可能磁気ディスク112上の磁気記録は、回転可能磁気ディスク112上の同心データトラックの環状パターンなど、データトラックの任意の適切なパターンの形態である。
【0017】
少なくとも1つのスライダ113が回転可能な磁気ディスク112の近傍に配置されている。各スライダ113はヘッドアセンブリ121を支持する。ヘッドアセンブリ121は、スピントロニクスデバイスを含む書き込みヘッドなどの1つ以上の磁気記録ヘッド(読み取り/書き込みヘッドなど)を含む。回転可能磁気ディスク112が回転すると、ヘッドアセンブリ121が、所望のデータが書き込まれる回転可能磁気ディスク112の異なるトラックにアクセスできるように、スライダ113は、ディスク表面122上を半径方向に出入りする。各スライダ113は、サスペンション115を介してアクチュエータアーム119に取り付けられている。サスペンション115は、スライダ113をディスク表面122に向かって付勢するわずかなばね力を提供する。各アクチュエータアーム119は、アクチュエータ127に取り付けられている。図1に示すアクチュエータ127は、ボイスコイルモータ(VCM:Voice Coil Motor)であってよい。VCMは、固定磁界内で移動可能なコイルを含み、コイル移動の方向および速度は、制御ユニット129から供給されるモータ電流信号によって制御される。
【0018】
ヘッドアセンブリ121の書き込みヘッドなどのヘッドアセンブリ121は、ディスク表面122に面する空気軸受面(ABS:Air Bearing Surface)などの媒体対向面(MFS)を含む。磁気記録装置100の動作中、回転可能な磁気ディスク112の回転により、スライダ113とディスク表面122との間に空気または気体の軸受が発生し、この軸受がスライダ113に上向きの力または揚力を及ぼす。このようにして、空気または気体軸受は、サスペンション115のわずかなばね力に対抗し、動作中、スライダ113を、ディスク表面122から外れて、実質的に一定の小さな間隔だけわずかに上方に支持する。
【0019】
磁気記録装置100の各構成要素は、アクセス制御信号および内部クロック信号など、制御ユニット129が生成する制御信号によって動作制御される。制御ユニット129は、論理制御回路、記憶手段、マイクロプロセッサを含む。制御ユニット129は、ライン123上の駆動モータ制御信号、ライン128上のヘッド位置およびシーク制御信号など、様々なシステム動作を制御するための制御信号を生成する。ライン128上の制御信号は、スライダ113を回転可能磁気ディスク112上の所望のデータトラックに最適に移動および位置決めするための所望の電流プロファイルを提供する。書き込み信号および読み出し信号は、記録チャネル125によってヘッドアセンブリ121との間で通信される。他の実施形態と組み合わせることができる一つの実施形態では、磁気記録装置100は、複数の媒体、またはディスク、複数のアクチュエータ、および/または複数のスライダをさらに含むことができる。
【0020】
図2は、一つの実施態様による、図1に示す回転可能磁気ディスク112または他の磁気記憶媒体に面するヘッドアセンブリ200の断面側面図の概略図である。ヘッドアセンブリ200は、図1で説明したヘッドアセンブリ121に対応することができる。ヘッドアセンブリ200は、回転可能磁気ディスク112に面するABSなどのMFS212を含む。図2に示すように、回転可能磁気ディスク112は矢印232で示す方向に相対的に移動し、ヘッドアセンブリ200は矢印234で示す方向に相対的に移動する。
【0021】
他の実施形態と組み合わせることができる一つの実施形態では、ヘッドアセンブリ200は、磁気読み取りヘッド211を含む。磁気読み取りヘッド211は、シールドS1およびS2の間に配置された検知素子204を含むことができる。検知素子204は、磁気抵抗(MR:Magnetoresistive)検知素子であり、このような素子は、トンネル磁気抵抗(TMR:Tunneling Magneto-Resistive)効果、巨大磁気抵抗(GMR:Giant Magneto Resistive)効果、異常磁気抵抗(EMR:Extraordinary Magneto-Resistive)効果、またはスピントルク発振器(STO:Spin Torque Oscillator)効果を発揮する。回転可能な磁気ディスク112内の磁化された領域の磁界は、垂直記録ビットまたは長手方向記録ビットのように、記録ビットとして検知素子204によって検出可能である。
【0022】
ヘッドアセンブリ200は、書き込みヘッド210を含む。他の実施形態と組み合わせることができる一つの実施形態では、書き込みヘッド210は、主磁極220と、リーディングシールド206と、トレーリングシールド(TS:Trailing Shield)240と、主磁極220とTS240との間に配置されたスピントロニクスデバイス230とを含む。主磁極220、スピントロニクスデバイス230、リーディングシールド206、およびTS240のそれぞれは、MFSにおいてフロント部分を有する。様々な実施形態は、(SOTベースのデバイスの形態の)スピントロニクスデバイス230を主磁極220とTS240との間の隙間に配置した状態で図示されているが、スピントロニクスデバイス230は、主磁極220と主磁極の他のシールド(例えば、サイドシールドまたはリーディングシールド)との間に配置できることに留意されたい。したがって、以下のトレーリングシールドの言及は、リーディングシールドまたはサイドシールドなどの他のシールドで代用することができる。このようなトレーリングシールドの実装は、例示のために提供されるものであり、実施形態の範囲を限定することを意図するものではない。
【0023】
主磁極220は、CoFe、CoFeNi、NiFeまたはFeNiReなどの磁性材料、他の適切な磁性材料を含む。他の実施形態と組み合わせることができる一つの実施形態では、主磁極220は、ランダムなテクスチャで形成された体心立方(BCC)材料などのランダムなテクスチャの磁性材料の小粒を含む。一例では、主磁極220のランダムなテクスチャは、メッキによって形成される。書き込みヘッド210は、回転可能磁気ディスク112の磁気記録媒体に影響を与えるための書き込み磁界を生成するために主磁極220を励起するコイル218を主磁極220の周囲に含む。コイル218は、らせん構造であってもよいし、1組以上のパンケーキ構造であってもよい。
【0024】
他の実施形態と組み合わせることができる一つ実施形態では、主磁極220は、トレーリングテーパ242およびリーディングテーパ244を含む。トレーリングテーパ242は、MFS212の離れた位置からMFS212まで延びている。リーディングテーパ244は、MFS212の離れた位置からMFS212まで延びている。トレーリングテーパ242およびリーディングテーパ244は、主磁極220の長手方向軸260に対して同じ程度のテーパを有してもよいし、異なる程度のテーパを有してもよい。他の実施形態と組み合わせることができる一つの実施形態では、主磁極220は、トレーリングテーパ242およびリーディングテーパ244を含まない。このような実施形態では、主磁極220は、実質的に平行であるトレーリングサイトおよびリーディングサイトを含む。
【0025】
TS240は、FeNiなどの磁性材料または他の適切な磁性材料を含み、第2の電極および主磁極220の戻り極として機能する。リーディングシールド206は、電磁シールド機能を提供することができ、リーディングギャップ254によって主磁極220から分離されている。
【0026】
いくつかの実施形態では、スピントロニクスデバイス230は、SHEに基づく局所SOTデバイスであり、書き込みを補助するために主磁極220に近接して配置される。そのような実施形態では、電流源270からスピントロニクスデバイス230に電流が印加される。スピンホール効果(SHE:Spin Hall Effect)層とも呼ばれるスピンホール層からのスピン軌道トルク(SOT)は、主磁極またはトレーリングシールドにこの補助を提供する。SHE層内の面内電流(CIP:Current In Plane)により、面に垂直に生成されたスピン流がSHE層の上面と下面に蓄積される。SHE層と接触している磁性層(例えば、主磁極またはトレイリングシールド)は、CIPに対して横方向のトルクを受けることになり、書き込み可能性を向上させるために書き込み極を磁化するのに役立つ可能性がある。CIPに対して横方向のトルクは、主磁極の高速スイッチングを補助し、主磁極は高速スイッチングのためにより速く磁化するため、CIPに対して横方向のトルクにより書き込み性が向上する。
【0027】
いくつかの実施形態では、スピントロニクスデバイス230は、SHEに基づく非局所SOTデバイスであり、書き込みを補助するために主磁極220に近接して配置される。スピンホール効果(SHE)層またはSOT層からのスピン軌道トルク(SOT)は、実施形態によっては、主磁極および/またはトレーリングシールドと接触している非磁性層にスピン流を注入する。スピン流は、主磁極および/またはトレーリングシールドを磁化し、書き込みギャップ磁界を減少させるため、主磁極および/またはトレーリングシールドの磁化の切り替えを補助し、書き込み性を向上させる。
【0028】
図3Aおよび図3Bは、様々な実施形態による局所SOTスピントロニクスデバイスを備えた書き込みヘッドの概略断面図である。図3Aに示すように、電流(Jc)は、主磁極306とトレーリングシールド308との間に延びる軸に垂直にスピンホール層302に注入される。スピンホール層302は主磁極306およびトレーリングシールド308の両方に直接接触しているため、Jcの100%がSHL層302の内部を流れるわけではない電流シャントが発生する。トレーリングシールド308とスピンホール層302との間、および主磁極306とスピンホール層302との間に、高い抵抗率を有する図3Bに示すスピンブロッキング層(SBL:Spin Blocking Layer)304を挿入することにより、SBL304の抵抗率がSHE材料の抵抗率よりも高いため、シャントが遮断される。SBL304は、一つの実施形態では、SHE材料によるSOTを受け、および/またはトレーリングシールド308もしくは主磁極306との交換結合をする磁性体である。
【0029】
図4Aは、一つの実施形態による局所SOTスピントロニクスデバイスを備えた書き込みヘッド400の概略図である。図4Bは、図4Aの書き込みヘッド400の局所SOTスピントロニクスデバイスの分解図である。書き込みヘッド400は、主磁極402、トレーリングシールド404、およびサイドシールド406を含む。局所SOTスピントロニクスデバイス408は、主磁極402とトレーリングシールド404との間に配置される。局所SOTスピントロニクスデバイス408は、バッファ層410、スピンホール層412、および中間層414を含む。
【0030】
局所SOTスピントロニクスデバイス408は、トレーリングシールド404、主磁極402、およびサイドシールド406と同様に、MFS430にある。特に、バッファ層410、スピンホール層412、および中間層414はそれぞれMFSに表面を有している。MFSにおける表面は、「X」方向に延びる幅wおよび「Y」方向に延びる高さhを有し、スピントロニクスデバイスのそれぞれの層は、「Z」方向に延びる深さdも有する。深さは、MFSに垂直なヘッド内の寸法である。高さは、主磁極402とトレーリングシールド404との間に延びる寸法である。幅は、MFSに沿って高さに垂直な寸法である。図4Aおよび図4Bに示すように、バッファ層410、スピンホール層412、および中間層414はすべて同じ深さおよび幅を有するが、バッファ層410、スピンホール層412、および中間層414が異なる幅および深さを有してもよい。さらに、バッファ層410、スピンホール層412、および中間層414は異なる高さを有するように示されているが、バッファ層410、スピンホール層412、および中間層414が同一の高さを有してもよい。
【0031】
動作中、電流(Jc)はスピンホール層412に注入され、平面に対して横方向に流れ、スピンはSHEからスピンホール層の上下に蓄積される。スピン流(Js)は自然に発生し、トレーリングシールド404および主磁極402に流れる。中間層414およびバッファ層410は、スピンホール層を(012)配向に最適化し、その間に拡散と粗さを最小にすることで、トレーリングシールド404および主磁極402の上のスピンホール層によるトルクを高め、書き込み性を向上させる。
【0032】
テクスチャ(100)またはアモルファスシード層を使用してテクスチャ付きスピンホール層BiSb(012)成長を行う局所SOTスピントロニクスデバイスには、多数の材料を使用できる。材料の一群であるグループAは、V、VAl、MnAl、Nb、Mo、W、Ta、WTi50のような体心立方(BCC:Body Centered Cubic)材料、またはCr(~250℃以上で加熱)、RuAl、IrAl、CoAl、B2相、NiAl-B2相、CrMo(Mo~20~50at.%)-A2,B2相、A2CrX(Xは、約10at.%であり、~250℃以上で加熱され、Ru、Ti、W、およびMoから選択される。)のような(100)テクスチャ層と組み合わせて使用されるBCC材料を含む。
【0033】
グループAの材料は、トレーリングの層にテクスチャリングを提供し、MgO(100)テクスチャリング層スタックと呼ばれることがある。一般的に言えば、タンタル、タングステン、チタンの合金のようなホウ素親和性の高い元素または合金を蒸着し、次にホウ素を含む磁性層を蒸着すると、コバルト鉄ホウ素またはコバルトホウ素のような非晶質磁性層材料が形成されるが、ホウ素は磁性コバルト鉄またはコバルト層を残して引き抜かれる。その層の上に、(100)テクスチャを持つMgOを形成することができる。MgO(100)を作る他の方法としては、加熱したクロムおよびルテニウムアルミニウムをテクスチャ状に成長させることが挙げられる。MgO(100)テクスチャ層スタックは、Hf、Ta、W、Ti、またはこれらの元素を含む合金の薄い高Bゲッタリング合金シード層の上にCoFeBの磁性ボロン合金またはCoBを堆積させ、さらに、その上にCoまたはCoFeを堆積させた磁性二重層の上に薄いMgOを堆積させることによっても製造できる。
【0034】
別の材料グループであるグループBは、FeO、CoO、NiO、ZrO、MgO、TiO、MgTiO、MnOなどの面心立方(FCC)酸化物材料を含む。別のグループCは、ScN、TiN、NbN、ZrN、HfN、TaN、VN、CrN、ScC、TiC、NbC、ZrC、HfC、TaC、WC、VC、W0.8Zr0.2CなどのFCC窒化物および炭化物を含む。グループCの材料は、成膜条件によってはアモルファスからナノ結晶の薄膜として成膜できる。グループCの材料の抵抗率は、100~200μΩ・cmを超える。
【0035】
別のグループDは、FeVAl、CrCoAl、CoTiSb、MnVSi、VAl、[Mn0.5Co0.5VAl、[Mn0.75Co0.25VSi、CoMnNbAl、CoZrFeAl、TiMnAlなどの非磁性ホイスラー材料を含む。別の一つのグループEは、CoMnSb、CoFeX、NiFeX(X=Si、Al、Mn、またはGe)、CoFe、NiFe、CoMnGe、CoMnSb、NiMnSb、CoFeGe、CoMnSn、およびCoMnFeGeを含む、スピン分極が大きく、スピンホール層と混ざりにくい磁性合金またはホイスラー合金を用いた結晶性の高分極層である。別の一つのグループFは、強い(012)BiSbXテクスチャまたは成長を促進しないアモルファスの非磁性で高抵抗の電気的シャントブロック層を含む。これらには、SiO、Al、SiN、AlN、SiC、SiCrOx、NiX、FeX、およびCoXが含まれ、Xは、Fe、Co、Ni、Ta、Hf、W、Ir、Pt、Ti、Zr、N、Ru、Ge、およびBを含むこれらの元素の1つまたは複数であり得る。
【0036】
別の一つの材料グループGは、最近傍X線回折ピークが2.19A~2.02Aのd間隔の範囲にある金属非晶質材料またはセラミック非晶質材料で構成される。このような材料は、グループA、D、またはEの非磁性材料および磁性材料を含み、これらの材料は、Cu、Ag、Ge、Al、Mg、Si、Mn、Ni、Co、Mo、Zr、Y、Bi、Hf、Ta、W、Ir、Pt、Ti、またはBのうちの1つ以上の元素と積層または合金化されている。これらは効果的に非磁性アモルファス層を形成し、アモルファス材料を生成するか、a-Ge、a-NiPなどのアモルファス材料から始まる。グループGはまた、a-Ge、a-NiPおよびCu、Ag、Ge、Al、Mg、Si、Mn、Ni、Co、Mo、Zr、Y、Bi、Hf、Ta、W、Ir、Pt、Ti、またはBのうちの1つ以上の元素を含む、強い(012)BiSbテクスチャを促進するアモルファス/ナノ結晶合金を含んでよい。
【0037】
さらに別の材料グループであるグループHは、アモルファスまたは結晶材料であり得る高垂直磁気異方性(PMA)材料である。TbFeCo、TbFeB、Nd、Pr、Sm(Fe,Co)Bのような高いPMAを持つアモルファス希土類遷移金属(RE-TM:Rare Earth Transition Metals)、またはCoZrTaBのような重金属を使用できる。このCo/Pt、Co/Pd、CoFe/Pt、Co/Tb、またはCoFe/Tbの多層多結晶スタック(「/」は、多層スタック内の層の分離を示す。)、または高いKuを有するCoPt、CoPtCr、CoFePt、およびFePtのような単層PMA材料は、(012)テクスチャ成長のためにスピンホール層の隣りにアモルファスの高スピン分極層と共に使用できる。
【0038】
図4Aおよび図4Bの実施形態では、バッファ層410は、MFSから磁極内および磁極を横切って延在していてもよい。一つの実施形態では、バッファ層410は、図4Cに示すような多層構造であってよく、主磁極402に隣接する最下層410AがグループD、E、またはHからの材料で構成され、最下層410Aに隣接する中間層410BがグループB、C、F、またはGからの材料で構成され、スピンホール層412に隣接する最上層410CがグループGからの材料を含む。
【0039】
中間層414は、グループB、C、D、E、F、G、およびHからの材料で構成されてよい。一つの実施形態では、中間層414は、図4Dに示すように多層構造であってよく、スピンホール層412に隣接する最下層414Aが、グループB、C、E、F、またはGからの材料で構成され、トレーリングシールド404に隣接する最上層414Bが、グループD、E、またはHからの材料を含む。
【0040】
スピンホール層412は、アンドープBiSbまたはドープされたBiSbXで構成されてもよく、ここで、ドーパントは約10at.%未満であり、Xは、B、N、Al、Si、Ti、V、Cr、Fe、Ni、Cu、Ge、Y、Zr、Ru、Mo、Ag、Hf、Ta、W、またはIrのようなBiと容易に反応しない元素から抽出されるか、またはCuAg、CuNi、RuGeなどのような前述の元素の1つ以上との合金の組み合わせである。スピンホール層412は、(012)結晶方位を有することができる。
【0041】
図5Aは、別の実施形態による、局所SOTスピントロニクスデバイスを備えた書き込みヘッド500の概略図である。図5Bは、図5Aの書き込みヘッド500の局所SOTスピントロニクスデバイス508の分解図である。書き込みヘッド500は、主磁極502、トレーリングシールド504、およびサイドシールド506を備える。局所SOTスピントロニクスデバイス508は、主磁極502とトレーリングシールド504との間に配置される。スピントロニクスデバイス508は、第1のバッファ層510、第1のスピンホール層512、第1の中間層514、絶縁層516、第2のバッファ層518、第2のスピンホール層520、および第2の中間層522を含む。
【0042】
MFSの表面は、「X」方向に伸びる幅wと「Y」方向に伸びる高さhとを有し、局所SOTスピントロニクスデバイスのそれぞれの層は、「Z」方向に伸びる深さdも有する。深さは、MFSに垂直なヘッド内の寸法である。高さは、主磁極502とトレーリングシールド504との間において延びる寸法である。幅は、MFSに沿って高さに垂直な寸法である。スピントロニクスデバイス508は、トレーリングシールド504、主磁極502、およびサイドシールド506と同様にMFSにある。特に、バッファ層510、518、スピンホール層512、520、絶縁層516、および中間層514、522は、それぞれMFSに表面を有している。MFSの表面は幅および高さを有し、スピントロニクスデバイスのそれぞれの層は深さも有する。
【0043】
図5Aおよび図5Bに示すように、バッファ層510、518、スピンホール層512、520、絶縁層516、および中間層514、522はすべて同じ深さおよび幅を有するが、バッファ層510、518、スピンホール層512、520、絶縁層516、および中間層514、522は異なる幅および深さを有してもよい。
【0044】
動作中、電流(Jc)は各スピンホール層に注入され、平面に対して横方向に流れる。トレーリングシールド504および主磁極502の電源には別の電流源が使用される。スピンは、SHEから各スピンホール層512、520の上下に蓄積され、トレーリングシールド504および主磁極502にトルクを生じさせ、書き込み性を向上させる。絶縁層516は、2つのスタックを分離するために使用され、第1のスタックは、第1のバッファ層510、第1のスピンホール層512、および第1の中間層514であり、第2のスタックは、第2のバッファ層518、第2のスピンホール層520、および第2の中間層522である。
【0045】
図5Aおよび図5Bの実施形態では、第1のバッファ層510は、グループB、C、D、E、F、G、およびHからの材料で構成され得る。一つの実施形態では、第1のバッファ層510は、図5Cに示すような多層構造であってよく、主磁極502に隣接する最下層510Aが、グループD、E、またはHからの材料で構成され、最下層510Aに隣接する中間層510Bが、グループB、C、F、またはGからの材料で構成され、第1のスピンホール層512に隣接する最上層510Cが、グループGからの材料を含む。全体として、スピントロニクスデバイス508、特に最下層510A、中間層510B、および最上層510Cは、書き込みギャップ内に収まる。
【0046】
第1の中間層514はx方向と-x方向に延びており、電気的接続を作るために均一であるのに対し、絶縁層516およびバッファ層518も延びており、これも均一である。絶縁層516および第2のバッファ層518は、共にシャントを防止するために非導電性である。第1の中間層514は、グループB、C、F、またはGの材料で構成されてよい。第1の中間層514は、絶縁層516および第2のバッファ層518の幅と実質的に等しい幅を有するべきである。
【0047】
第1のスピンホール層512は、アンドープBiSbまたはドープされたBiSbXで構成されてもよく、ここで、ドーパントは約10at.%未満であり、Xは、B、N、Al、Si、Ti、V、Cr、Fe、Ni、Cu、Ge、Y、Zr、Ru、Mo、Ag、Hf、Ta、W、またはIrのようなBiと容易に反応しない元素から抽出されるか、またはCuAg、CuNi、RuGeなどのような前述の元素の1つ以上との合金の組み合わせである。第1のスピンホール層512は、(012)結晶方位を有することができる。
【0048】
上述のように、絶縁層516は、第1の中間層514および第2のバッファ層518の幅と実質的に等しい幅を有することができる。
【0049】
一つの実施形態では、第2のバッファ層518および絶縁層516は、第1の中間層514がグループBまたはグループCの材料で構成され、第1の中間層514が、第2のスピンホール層520を(012)の結晶方位にエピタキシャル成長させるために使用される場合に、任意である。
【0050】
第2のスピンホール層520は、電気的接続を行うことができるように、第1のスピンホール層512の幅よりも小さい幅を有することができる。第2のスピンホール層520は、ドーパントが約10at.%未満であり、Xが、B、N、Al、Si、Ti、V、Cr、Fe、Ni、Cu、Ge、Y、Zr、Ru、Mo、Ag、Hf、Ta、W、またはIrのようなBiと容易に反応しない元素から抽出されるか、またはCuAg、CuNi、RuGeなどのような前述の元素の1つ以上との合金の組み合わせで抽出される、アンドープBiSbまたはドープされたBiSbXで構成されてもよい。第2のスピンホール層520は、(012)結晶方位を有することができる。
【0051】
第2の中間層522は、デバイスに電力を供給するために使用されるリードの幅に実質的に等しい幅を有することができる。第2の中間層522は、グループB、C、D、E、F、GおよびHからの材料で構成されてよい。一つの実施形態では、第2の中間層522は、図5Dに示すように多層構造であってよく、第2のスピンホール層520に隣接する最下層522Aが、グループB、C、F、またはGの材料で構成され、トレーリングシールド504に隣接する最上層522Bが、グループD、E、またはHの材料を含む。
【0052】
図6Aは、別の実施形態による局所SOTスピントロニクスデバイスを備えた書き込みヘッド600の概略図である。図6Bは、図6Aの書き込みヘッド600の局所SOTスピントロニクスデバイス608の分解図である。書き込みヘッド600は、主磁極602、トレーリングシールド604、およびサイドシールド606を備える。スピントロニクスデバイス608は、主磁極602とトレーリングシールド604との間に配置される。スピントロニクスデバイス608は、絶縁層610、バッファ層612、スピンホール層614、および中間層616を含む。
【0053】
MFSの表面は、「X」方向に延びる幅wと「Y」方向に延びる高さhを有し、スピントロニクスデバイスのそれぞれの層は、「Z」方向に延びる深さdも有する。深さは、MFSに垂直なヘッド内の寸法である。高さは、主磁極602とトレーリングシールド604との間に延びる寸法である。幅は、MFSに沿って高さに垂直な寸法である。局所SOTスピントロニクスデバイス608は、トレーリングシールド604、主磁極602、およびサイドシールド606と同様にMFSにある。特に、バッファ層612、スピンホール層614、絶縁層610、および中間層616はそれぞれ、MFSに表面を有する。MFSの表面は幅および高さを有し、スピントロニクスデバイスのそれぞれの層は深さも有する。
【0054】
図6Aおよび図6Bに示すように、バッファ層612、スピンホール層614、絶縁層610、および中間層616はすべて同じ深さおよび幅を有するが、バッファ層612、スピンホール層614、絶縁層610、および中間層616は異なる幅および深さを有してもよい。
【0055】
動作中、電流(Jc)はスピンホール層614に注入され、平面に対して横方向に流れる。バッファ層612の下方で主磁極602と接触する絶縁層610は、トルクが主磁極602に影響するのを阻止するために使用される。スピンはSHEからスピンホール層614の上部に蓄積され、これによりトレーリングシールド504にのみトルクが発生し、書き込み性が改善される。
【0056】
図6Aおよび図6Bの実施形態では、バッファ層612は、グループGからの材料で構成されてもよい。中間層616は、グループB、C、D、E、F、G、およびHからの材料で構成されてもよい。一つの実施形態では、中間層616は、図6Cに示されるような多層構造であってもよく、スピンホール層614に隣接する最下層616Aが、グループB、C、E、F、またはGからの材料で構成され、トレーリングシールド604に隣接する最上層616Bが、グループD、E、またはHからの材料を含む。
【0057】
スピンホール層614は、ドーパントが約10at.%未満であり、Xが、B、N、Al、Si、Ti、V、Cr、Fe、Ni、Cu、Ge、Y、Zr、Ru、Mo、Ag、Hf、Ta、W、またはIrのようなBiと容易に反応しない元素から抽出されるか、またはCuAg、CuNi、RuGeなどのような前述の元素の1つ以上との合金の組み合わせで抽出される、アンドープBiSbまたはドープされたBiSbXで構成されてもよい。スピンホール層614は、(012)結晶方位を有することができる。
【0058】
絶縁層610は、グループB、C、D、E、F、G、およびHの材料で構成されてもよい。一つの実施形態では、絶縁層610は、図6Dに示すように多層構造であってもよく、主磁極602に隣接する最下層610Aが、グループD、E、またはHの材料で構成され、バッファ層612に隣接する最上層610Bが、グループB、C、F、またはGの材料を含む。
【0059】
図7Aは、別の実施形態による局所SOTスピントロニクスデバイスを備えた書き込みヘッド700の概略図である。図7Bは、図7Aの書き込みヘッド700の局所SOTスピントロニクスデバイス708の分解図である。書き込みヘッド700は、主磁極702、トレーリングシールド704、およびサイドシールド706を含む。スピントロニクスデバイス708は、主磁極702とトレーリングシールド704との間に配置される。スピントロニクスデバイス708は、バッファ層710、スピンホール層712、中間層714、および絶縁層716を含む。
【0060】
MFSの表面は、「X」方向に延びる幅wと「Y」方向に延びる高さhを有し、スピントロニクスデバイスのそれぞれの層は、「Z」方向に延びる深さdも有する。深さは、MFSに垂直なヘッド内の寸法である。高さは、主磁極702とトレーリングシールド704との間に延びる寸法である。幅は、MFSに沿って高さに垂直な寸法である。スピントロニクスデバイス708は、トレーリングシールド704、主磁極702、およびサイドシールド706と同様にMFSにある。特に、バッファ層710、スピンホール層712、絶縁層716、および中間層714はそれぞれMFSに表面を有する。MFSの表面は幅と高さを有し、スピントロニクスデバイスのそれぞれの層は深さも有する。
【0061】
図7Aおよび図7Bに示すように、バッファ層710、スピンホール層712、絶縁層716、および中間層714はすべて同じ深さおよび幅を有するが、バッファ層710、スピンホール層712、絶縁層716、および中間層714は異なる幅および深さを有してもよい。
【0062】
動作中、電流(Jc)はスピンホール層712に注入され、平面に対して横方向に流れる。中間層714の上方でトレーリングシールド704と接触する絶縁層716は、トルクがトレーリングシールド704に影響するのを阻止するために使用される。スピンは、SHEからスピンホール層712の底部に蓄積され、これにより主磁極702にのみトルクが発生し、書き込み性が向上する。
【0063】
図7Aおよび図7Bの実施形態では、バッファ層710は、グループB、C、D、E、F、G、およびHからの材料で構成され得る。一つの実施形態では、バッファ層710は、図7Cに示すような多層構造であってもよく、主磁極702に隣接する最下層710Aが、グループD、E、またはHからの材料で構成され、最下層710Aに隣接する中間層710Bが、グループB、C、F、またはGからの材料で構成され、スピンホール層712に隣接する最上層710CがグループGからの材料を含む。最下層710A、中間層710B、および最上層710Cは、スピンホール層712の高さに実質的に等しい高さを有してもよい。
【0064】
スピンホール層712は、ドーパントが約10at.%未満であるアンドープBiSbまたはドープされたBiSbXで構成されてもよい。ここで、Xは、B、N、Al、Si、Ti、V、Cr、Fe、Ni、Cu、Ge、Y、Zr、Ru、Mo、Ag、Hf、Ta、W、またはIrのような、Biと容易に反応しない元素から抽出されるか、またはCuAg、CuNi、RuGeのような、前述の元素の1つ以上との合金の組み合わせから抽出される。スピンホール層712は、(012)結晶方位を有することができる。
【0065】
絶縁層716は、スピンホール層712を露出させないのに十分な幅を有してもよい。絶縁層716は、グループB、C、D、E、F、G、およびHからの材料で構成されてもよい。一つの実施形態では、絶縁層716は、図7Dに示されるような多層構造であってもよく、中間層714に隣接する最下層716Aが、グループB、C、F、またはGからの材料で構成され、トレーリングシールド704に隣接する最上層716Bが、グループD、E、またはHからの材料を含む。最下層716Aおよび最上層716Bは、スピンホール層712を露出させないのに十分な高さを有する。
【0066】
図8Aは、別の実施形態による局所SOTスピントロニクスデバイスを備えた書き込みヘッド800の概略図である。図8Bは、図8Aの書き込みヘッド800の局所SOTスピントロニクスデバイス808の分解図である。書き込みヘッド800は、主磁極802、トレーリングシールド804、およびサイドシールド806を備える。スピントロニクスデバイス808は、主磁極802とトレーリングシールド804との間に配置される。スピントロニクスデバイス808は、バッファ層810、スピンホール層812、中間層814、および絶縁層816を含む。
【0067】
MFSの表面は、「X」方向に伸びる幅wおよび「Y」方向に伸びる高さhを有し、スピントロニクスデバイスのそれぞれの層は、「Z」方向に伸びる深さdも有する。深さは、MFSに垂直なヘッド内の寸法である。高さは、主磁極802とトレーリングシールド804との間に延びる寸法である。幅はMFSに沿って高さに垂直な寸法である。スピントロニクスデバイス808のバッファ層810、スピンホール層812、および中間層814は、MFSから後退している。絶縁層816、トレーリングシールド804、主磁極802、およびサイドシールド806はすべて、MFSに表面を有する。
【0068】
図8Aおよび図8Bに示すように、バッファ層810、スピンホール層812、および中間層814はすべて同じ深さおよび幅を有するが、バッファ層810、スピンホール層812、および中間層814は異なる幅および深さを有してもよい。
【0069】
動作中、電流(Jc)はスピンホール層812に注入され、平面に対して横方向に流れる。バッファ層810、スピンホール層812、および中間層814の前にある絶縁層816は、バッファ層810、スピンホール層812、および中間層814を信頼性および拡散の問題から守る。スピンは、SHEからスピンホール層812の上部および下部に蓄積され、主磁極802およびトレーリングシールド804にトルクを生じさせ、書き込み性を向上させる。
【0070】
図8Aおよび図8Bの実施形態では、バッファ層810は、スピンホール層812が露出しないように十分な幅を有することができる。バッファ層810は、グループB、C、D、E、F、GおよびHからの材料で構成されてよい。一つの実施形態では、バッファ層810は、図8Cに示すような多層構造であってもよく、主磁極802に隣接する最下層810Aが、グループD、E、またはHからの材料で構成され、最下層810Aに隣接する中間層810Bが、グループB、C、F、またはGからの材料で構成され、スピンホール層812に隣接する最上層810Cが、グループGからの材料を含む。最下層810A、中間層810B、および最上層810Cは、スピンホール層812が露出しないように十分な高さを有する。
【0071】
中間層814は、グループB、C、D、E、F、G、およびHからの材料で構成されてよい。一つの実施形態では、中間層814は、図8Dに示すような多層構造であってよく、スピンホール層812に隣接する最下層814Aが、グループB、C、E、F、またはGの材料で構成され、トレーリングシールド804に隣接する最上層814Bが、グループD、E、またはHの材料を含む。
【0072】
スピンホール層812は、アンドープBiSbまたはドープされたBiSbXで構成されてもよく、ここで、ドーパントは約10at.%未満であり、Xは、B、N、Al、Si、Ti、V、Cr、Fe、Ni、Cu、Ge、Y、Zr、Ru、Mo、Ag、Hf、Ta、W、またはIrのようなBiと容易に反応しない元素から抽出されるか、またはCuAg、CuNi、RuGeなどのような前述の元素の1つ以上との合金の組み合わせである。スピンホール層812は、(012)結晶方位を有することができる。
【0073】
絶縁層816は、グループB、C、またはFの材料で構成されてよい。
【0074】
図9Aは、別の実施形態による、局所SOTスピントロニクスデバイスを備えた書き込みヘッド900の概略図である。図9Bは、図9Aの書き込みヘッド900の局所SOTスピントロニクスデバイス908の分解図である。書き込みヘッド900は、主磁極902、トレーリングシールド904、およびサイドシールド906を備える。スピントロニクスデバイス908は、主磁極902とトレーリングシールド904との間に配置される。スピントロニクスデバイス908は、バッファ層910、スピンホール層912、中間層914、および絶縁層916を含む。
【0075】
MFSの表面は、「X」方向に伸びる幅wおよび「Y」方向に伸びる高さhを有し、スピントロニクスデバイスのそれぞれの層は、「Z」方向に伸びる深さdも有する。深さは、MFSに垂直なヘッド内の寸法である。高さは、主磁極902とトレーリングシールド904との間に延びる寸法である。幅はMFSに沿って高さに垂直な寸法である。スピントロニクスデバイス908のバッファ層910、スピンホール層912、および中間層914は、MFSから後退している。絶縁層916、トレーリングシールド904、主磁極902、およびサイドシールド906はすべて、MFSに表面を有する。
【0076】
図9Aおよび図9Bに示すように、バッファ層910、スピンホール層912、および中間層914はすべて同じ深さおよび幅を有するが、バッファ層910、スピンホール層912、および中間層914は異なる幅および深さを有してもよい。さらに、主磁極902は、バッファ層910に面する傾斜面918を有する。同様に、トレーリングシールド904は、中間層914に面する傾斜面920を有する。
【0077】
動作中、電流(Jc)はスピンホール層912に注入され、平面に対して横方向に流れる。バッファ層910、スピンホール層912、および中間層914の前にある絶縁層916は、バッファ層910、スピンホール層912、および中間層914を信頼性および拡散の問題から守る。スピンはSHEからスピンホール層912の上部および下部に蓄積され、主磁極902およびトレーリングシールド904にトルクを発生させ、書き込み性を向上させる。
【0078】
図9Aおよび図9Bの実施形態では、バッファ層910は、グループB、C、D、E、F、G、およびHからの材料から構成され得る。一つの実施形態では、バッファ層910は、図9Cに示すような多層構造であってもよく、主磁極902に隣接する最下層910Aが、グループD、E、またはHからの材料で構成され、最下層910Aに隣接する中間層910Bが、グループB、C、F、またはGからの材料で構成され、スピンホール層912に隣接する最上層910Cが、グループGからの材料を含む。傾斜面918により、バッファ層910は非晶質であってもよい。最下層910A、中間層910B、および最上層910Cは、スピンホール層912が露出しないように十分な高さを有する。
【0079】
中間層914は、グループB、C、D、E、F、G、およびHからの材料で構成されてよい。一つの実施形態では、中間層914は、図9Dに示すような多層構造であってもよく、スピンホール層912に隣接する最下層914Aが、グループB、C、F、またはGからの材料で構成され、トレーリングシールド904に隣接する最上層914Bが、グループD、E、またはHからの材料を含む。最下層914Aおよび最上層914Bは、スピンホール層912が露出しないように十分な高さを有する。
【0080】
スピンホール層912は、ドーパントが約10at.%未満であり、Xが、B、N、Al、Si、Ti、V、Cr、Fe、Ni、Cu、Ge、Y、Zr、Ru、Mo、Ag、Hf、Ta、W、またはIrのようなBiと容易に反応しない元素から抽出されるか、またはCuAg、CuNi、RuGeなどのような前述の元素の1つ以上との合金の組み合わせで抽出される、アンドープBiSbまたはドープされたBiSbXで構成されてもよい。スピンホール層912は、(012)結晶方位を有することができる。
【0081】
絶縁層916は、グループB、C、またはFの材料で構成できる。
【0082】
少なくとも1つのスピンホール層、少なくとも1つのバッファ層、および少なくとも1つの中間層を有する局所的なSOTスピントロニクスデバイスを利用することにより、SHEは、主磁極またはトレーリングシールドのいずれか、または両方にスピン流を注入するように改善できる。スピントロニクスデバイスは、主磁極およびトレーリングシールドにトルクを受けさせ、主磁極およびトレーリングシールドを磁化することで、書き込みヘッドの書き込み可能性を改善する。バッファ層および中間層は、スピンホール層と主磁極との間、およびスピンホール層とトレーリングシールドとの間のSHEシャントの遮断部として機能する。
【0083】
一つの実施形態では、磁気記録ヘッドは、主磁極と、トレーリングシールドと、主磁極とトレーリングシールドとの間に配置された局所SOTスピントロニクスデバイスと、を備える。スピントロニクスデバイスは、主磁極の上に配置された、グループB、グループC、グループD、グループE、グループF、グループG、またはグループHからなる群から選択される材料を含むバッファ層と、バッファ層の上に配置された、アンドープBiSbまたはドープされたBiSbX(Xは、ドーパントである。)を含むスピンホール層と、スピンホール層の上に配置された、グループB、C、D、E、F、G、およびHからなる群から選択される材料を含む中間層と、を含む。グループBは、面心立方(FCC)酸化物材料で構成される。グループCは、100μΩ・cmを超える抵抗率を有し、成膜条件によってはアモルファスからナノ結晶の薄膜として成膜可能な材料で構成される。グループDは、FeVAl、CrCoAl、CoTiSb、MnVSi、VAl、[Mn0.5Co0.5VAl、[Mn0.75Co0.25VSi、CoMnNbAl、CoZrFeAl、TiMnAlを含む非磁性ホイスラー材料で構成される。グループEは、スピン分極が大きく、スピンホール層と混ざりにくい磁性合金またはホイスラー合金を用いた結晶性の高スピン分極層で構成される。グループFは、強い(012)BiSbXのテクスチャまたは成長を促進しないアモルファスの非磁性で高抵抗の電気的シャントブロック層で構成される。グループGは、2.19A~2.02Aのd間隔に最近接X線回折ピークを有する金属アモルファスまたはセラミックアモルファス材料で構成される。グループHは、アモルファスまたは結晶性材料であり得る高垂直磁気異方性(PMA)材料で構成される。グループEは、CoMnSb、CoFeX、NiFeX(X=Si、Al、Mn、またはGe)、CoFe、NiFe、CoMnGe、CoMnSb、NiMnSb、CoFeGe、CoMnSn、およびCoMnFeGeのうちの1つ以上で構成される。グループFは、SiO、Al、SiN、AlN、SiC、SiCrOx、NiX、FeX、またはCoXで構成され、Xは、Fe、Co、Ni、Ta、Hf、W、Ir、Pt、Ti、Zr、N、Ru、GeおよびBのうちの1つ以上である。グループGは、グループA、グループD、グループEの非磁性材料および磁性材料で構成され、Cu、Ag、Ge、Al、Mg、Si、Mn、Ni、Co、Mo、Zr、Y、Bi、Hf、Ta、W、Ir、Pt、Ti、またはBの元素のうちの1つ以上と積層または合金化され、ここで、グループAは、体心立方(BCC)材料で構成される。グループAは、V、VAl、MnAl、Nb、Mo、W、Ta、WTi50、または(100)テクスチャ層と組み合わせて使用されるBCC材料で構成される。グループAは、Cr、RuAl、IrAl、CoAl、NiAl、CrMo、またはCrXで構成され、ここで、Xは、Ru、Ti、WおよびMoから選択される。グループGは、a-Ge、a-NiPおよびCu、Ag、Ge、Al、Mg、Si、Mn、Ni、Co、Mo、Zr、Y、Bi、Hf、Ta、W、Ir、Pt、Ti、またはBの元素のうちの1つ以上を含む、強い(012)BiSbテクスチャを促進するアモルファスまたはナノ結晶合金で構成される。グループHは、高いPMAを有するアモルファスの希土類遷移金属(RE-TM)で構成される。グループHは、TbFeCo、TbFeB、Nd、Pr、Sm(Fe,Co)B、またはCoZrTaBで構成される。グループHは、Co/Pt、Co/Pd、CoFe/Pt、Co/Tb、またはCoFe/Tbの多結晶スタック(「/」は、多層スタックにおける層の分離を示す)、またはスピンホール層の隣に(012)テクスチャ成長のためのアモルファス高偏光層を有する高KuのCoPt、CoPtCr、CoFePt、およびFePtの単層PMA材料からなる。グループBは、FeO、CoO、NiO、ZrO、MgO、TiO、MgTiO、またはMnOからなる。主磁極は、媒体対向面(MFS)に配置された第1の表面を有し、トレーリングシールドは、MFSに配置された第2の表面を有する。磁気ヘッドは、主磁極とトレーリングシールドとの間に配置され、MFSに配置された第3の表面を有する第1の絶縁層をさらに備える。スピントロニクスデバイスは、主磁極とトレーリングシールドとの間に配置され、MFSから離れている。また、磁気記録装置は磁気ヘッドを含む。
【0084】
別の実施形態では、磁気ヘッドは、主磁極と、トレーリングシールドと、主磁極とトレーリングシールドとの間に配置された局所SOTスピントロニクスデバイスと、を備える。スピントロニクスデバイスは、第1のバッファ層と、バッファ層の上に配置されたアンドープBiSbまたはドープされたBiSbX(Xは、ドーパントである。)を含む第1のスピンホール層と、第1のスピンホール層の上に配置された第1の中間層と、第1の中間層の上に配置された絶縁層と、絶縁層の上に配置された第2のバッファ層と、第2のバッファ層の上に配置されたアンドープBiSbまたはドープされたBiSbX(Xは、ドーパントである。)を含む第2のスピンホール層と、第2のスピンホール層の上に配置された第2の中間層と、を含む。第1のバッファ層は、多層構造を含む。第2の中間層は、多層構造を含む。スピンホール層は、媒体対向面から後退している。磁気記録装置は、磁気ヘッドを含む。
【0085】
別の実施形態では、磁気ヘッドは、主磁極と、トレーリングシールドと、主磁極とトレーリングシールドとの間に配置された局所SOTスピントロニクスデバイスと、を備える。スピントロニクスデバイスは、バッファ層と、バッファ層の上に配置されたアンドープBiSbまたはドープされたBiSbX(Xは、ドーパントである。)を含むスピンホール層と、スピンホール層の上に配置された中間層と、スピントロニクスデバイスと主磁極またはトレーリングシールドとの間に配置された絶縁層と、を備える。バッファ層および中間層は、それぞれ複数の層を含む。磁気記録装置は、磁気ヘッドを含む。
【0086】
図10A~13は、様々な実施形態による、非局所SOTスピントロニクスデバイスを備えた書き込みヘッド1300、1400、1500、1600の斜視図である。図10Bは、図10Aの書き込みヘッド1300の一部を示す。各書き込みヘッド1300、1400、1500、1600は、図2の書き込みヘッド210であってもよく、図1の磁気記録装置100の一部であってもよい。様々な書き込みヘッド1300、1400、1500、1600の態様は、互いに組み合わせて使用されてもよい。
【0087】
図10Aの非局所SOTスピントロニクスデバイスを備えた書込みヘッド1300は、MFSまで延びる主磁極1302と、MFSまで延びるトレーリングシールド1304と、主磁極1302とトレーリングシールド1304との間に配置された非磁性(NM:Non-Magnetic)層1306とを備える。NM層1306は、MFSまで延び、トレーリングギャップ1311に配置される。スピンブロッキング層(SBL)1310、またはスピン吸収層は、トレーリングギャップ1311内のトレーリングシールド1304とNM層1306との間に配置される。このように、トレーリングシールド1304は、NM層1306から間隔を置いて配置される。いくつかの実施形態では、絶縁層(図示せず)が、トレーリングシールド1304の一部とNM層1306との間、および/または主磁極1302とNM層1306との間に配置されてもよい。NM層1306は、本明細書では非磁性スピン輸送層1306と呼ばれることがある。
【0088】
スピンホール層またはスピンホール効果(SHE)層と称され得るスピン軌道トルク(SOT)層1308が、NM層1306のトレーリングシールド対向面1305上に配置される。図10Bに示すように、シード層1307が、SOT層1308とNM層1306との間に配置され、バッファ層1309が、SOT層1308上に配置される。シード層1307は、NM層1306およびSOT層1308の両方に接触して配置される。SOT層1308は、約20nm~約100nmのz方向の距離1322だけMFSから後退しており、いくつかの実施形態における後退距離は、非磁性スピン輸送層1306のスピン拡散長に等しいかそれより小さい距離である。SOT層1308およびNM層1306は、スピン流注入/輸送のためのスピントロニクスデバイスとして効果的に機能する。図10Bに示すように、SOT層1308は、x方向に約100nm以上の長さ(L)1312、y方向に約10nmの厚さ(T)1314、およびz方向に約30nmの幅1316を有する。SOT層1308の長さ1312は、SOT層1308の厚さ1314よりもかなり大きい。そのため、長さ1312と厚さ1314との比(L/T)は1より大きく、例えば約10以上である。
【0089】
いくつかの実施形態では、SOT層1308は、最高のスピンホール角(電流-スピン変換効率)を達成するためにBiSb(012)配向を有し、拡散および粗さを最小にするために(すなわち、SOT層1308がバッファ層と中間層との間に挟まれるような)下に何らかの適切なバッファ層および上に中間層を有する。NM層1306の内部を流れる変換されたスピン流1324は、MFSに向かって流れ、トレーリングシールド1304および主磁極1302にトルクを生じさせ、上述したように書き込み性を向上させる。SOT層1308は、ドーパントが約10at.%未満であり、Xが、B、N、Al、Si、Ti、V、Cr、Fe、Ni、Cu、Ge、Y、Zr、Ru、Mo、Ag、Hf、Ta、W、またはIrのような、Biと容易に反応しない元素から抽出されるか、またはCuAg、CuNi、RuGeなどのような、前述の元素の1つ以上との合金の組み合わせで抽出される、アンドープBiSbまたはドープされたBiSbXで構成されてもよい。
【0090】
テクスチャ(100)またはアモルファス・シード層を使用してテクスチャSOT層1308(012)を成長させるために、多数の材料をシード層1307およびバッファ層1309として利用することができる。材料の1つのグループAは、V、VAl、MnAl、Nb、Mo、W、Ta、WTi50、NiAl、RhAlなどの体心立方(BCC)、または類似の格子パラメータを有するこれらの材料の合金組み合わせ、またはCr(約250℃以上で加熱)、RuAl、IrAl、CoAl、B2相、NiAl-B2相、CrMo(約20~50at.%のMo)-A2などの(100)テクスチャ層と組み合わせて使用されるBCC材料、またはB2相、A2CrX(Xは、約10at.%であり、約250℃以上で加熱され、Ru、Ti、W、Moから選択される。)を含む。
【0091】
グループAの材料は、次の層にテクスチャリングを提供し、MgO(100)テクスチャリング層スタックと呼ばれることがある。一般的に言えば、タンタル、タングステン、チタンの合金のようなホウ素親和性の高い元素または合金を蒸着し、次にホウ素を含む磁性層を蒸着すると、コバルト鉄ホウ素またはコバルトホウ素のような非晶質磁性層材料が形成されるが、ホウ素は磁性コバルト鉄またはコバルト層を残して引き抜かれる。その層の上に、(100)テクスチャを有するMgOを形成できる。MgO(100)を作る他の方法としては、加熱したクロムまたはルテニウム・アルミニウムをテクスチャ状に成長させる方法がある。MgO(100)テクスチャ層スタックは、Hf、Ta、W、Ti、またはこれらの元素を含む合金の薄い高Bゲッタリング合金シード層の上にCoFeBの磁性ボロン合金またはCoBを堆積させ、さらに、CoまたはCoFeを堆積させた磁性二重層の上に薄いMgOを堆積させることによっても製造できる。
【0092】
別の材料グループであるグループBは、FeO、CoO、NiO、ZrO、MgO、TiO、MgTiO、MnOなどの面心立方(FCC)酸化物材料を含む。別のグループCは、ScN、TiN、NbN、ZrN、HfN、TaN、VN、CrN、ScC、TiC、NbC、ZrC、HfC、TaC、WC、VC、W0.8Zr0.2CなどのFCC窒化物および炭化物を含む。グループCの材料は、成膜条件によってアモルファスからナノ結晶薄膜として成膜できる。グループCの材料の抵抗率は、100~200μΩ・cmである。
【0093】
別のグループDは、FeVAl、CrCoAl、CoTiSb、MnVSi、VAl、[Mn0.5Co0.5VAl、[Mn0.75Co0.25VSi、CoMnNbAl、CoZrFeAl、TiMnAlなどの非磁性ホイスラー材料を含む。別の一つのグループEは、CoMnSb、CoFeX、NiFeX、(Xは、Si、Al、Mn、Geのうちの1つ以上である。)CoFe、NiFe、CoMnGe、CoMnSb、NiMnSb、CoFeGe、CoMnSn、CoMnFeGeを含む、スピン分極が大きく、スピンホール層と混ざりにくい磁性合金またはホイスラー合金を用いた結晶性の高分極層である。別の一つのグループFは、強い(012)BiSbXテクスチャまたは成長を促進しないアモルファスの非磁性で高抵抗の電気的シャントブロック層を含む。これらは、SiO、Al、SiN、AlN、SiC、SiCrOx、NiX、FeX、およびCoXを含み、Xは、Fe、Co、Ni、Ta、Hf、W、Ir、Pt、Ti、Zr、N、Ru、Ge、および/またはBを含むこれらの元素の1つまたは複数であり得る。
【0094】
別の一つのグループGは、2.19Å~2.02Åのd間隔の範囲に最近接X線回折ピークを有する金属アモルファスまたはセラミックアモルファス材料で構成される。このような材料には、グループA、D、またはEの非磁性材料および磁性材料が含まれ、これらの材料は、Cu、Ag、Ge、Al、Mg、Si、Mn、Ni、Co、Mo、Zr、Y、Bi、Hf、Ta、W、Ir、Pt、Ti、またはBのうちの1つ以上の元素と積層または合金化されている。これらは効果的に非磁性アモルファス層を形成し、アモルファス材料を生成するか、またはa-Ge、a-NiPX合金(Xは、Ru、Rh、Y、Zr、Mo、Hf、Ta、W、Re、Pt、またはIrの1つである。)などのアモルファス材料から出発する。グループGは、また、a-Ge、a-NiPおよびCu、Ag、Ge、Al、Mg、Si、Mn、Ni、Co、Mo、Zr、Y、Bi、Hf、Ta、W、Ir、Pt、Ti、またはBのうちの1つ以上の元素を有する、強い(012)BiSbテクスチャを促進するアモルファス/ナノ結晶合金を含むことができる。
【0095】
さらに別の一つのグループHは、アモルファスまたは結晶材料である高垂直磁気異方性(PMA)材料である。TbFeCo、TbFeB、Nd、Pr、Sm(Fe,Co)Bのような高いPMAを持つアモルファス希土類遷移金属(RE-TM)、またはCoZrTaBのような重金属を使用できる。このCo/Pt、Co/Pd、CoFe/Pt、Co/Tb、またはCoFe/Tb(「/」は層分離を示す)の多層多結晶スタック、または高いKuを有するCoPt、CoPtCr、CoFePt、およびFePtのような単層PMA材料は、(012)テクスチャ成長のためにスピンホール層の隣りにアモルファスの高スピン分極層と共に使用できる。
【0096】
NM層1306は、CuまたはAlなどの非磁性材料で構成されてもよい。一つの実施形態では、NM層1306は、多層構造であってもよい。NM層1306は、約10nmのy方向の厚さを有する。SBL1310は、トレーリングシールド1304に向かうスピン分極電流が存在しないように、より高い抵抗率材料およびより高いスピン散乱/より短いスピン拡散長から構成されてもよい。例えば、SBL1310は、Ti、Ru、TiとRu、Pt、またはMnとの組み合わせ、RuとPtまたはMnとの組み合わせ、およびそれらの合金、またはAlOx、SiN、またはMgOなどの絶縁体材料で構成されてもよく、xは1以上の整数である。SBL1310は、y方向の厚さが約2nm~約5nmであり、z方向の幅がNM層1306の幅とほぼ同様であり、x方向の長さが約30nm未満である。
【0097】
動作中、電流(Jc)1326が注入され、SOT層1308を通ってx方向に面に対して横方向に流れる。より高いスピンホール角(SHA)、したがって電流からスピン流への変換効率のために、図10Aに示されるように、SOT層1308からNM層1306に流れ込み、-y方向で主磁極1302に向かって下り、次いで-z方向でMFSに向かって下り、最終的にMFSの近くで主磁極1302に流れ込む純粋なスピン流(Js)1324が生成される。言い換えれば、SOT層1308は、純粋なスピン流1324をNM層1306に注入する。スピン流1324は、MFS側に近づくと主磁極1302にトルクを生じさせ、したがって、上述したように書き込み性を向上させる。NM層1306のテーパ形状は、スピン流1324を小さなトレーリングギャップ1311にさらに集中させ、書き込みプロセス中の主磁極の磁化の高速スイッチングをさらに改善する。SBL1310は、スピントルクがトレーリングシールド1304に作用するのを防止する。
【0098】
図10Bに示すように、NM層1306は、スピン流1324を主磁極1302の先端1302aにより集中させるために、約15nm~約25nmの長さ1318を有するなど、NM層1306がMFSに近いほどサイズが小さくなるテーパ状である。SOT層1308は、スピンホール効果によるスピン流発生を増加させるために、SOT層1308がNM層1306とより多くの重なりを有するように、約20nm~約100nmの長さ1320を有するように、MFSから離れたNM層1306のより長い部分上に配置される。いくつかの実施形態では、NM層1306の長い部分の長さ1320は、SOT層1308の長さ1312と実質的に同じである。SOT層1308を後退させることによって、信頼性を低下させる可能性のあるヘッド-メディア接触および加熱の問題からより良好に保護され、したがって、書き込みヘッド1300も信頼性が向上する。
【0099】
図11の非局所SOTスピントロニクスデバイスを有する書込みヘッド1400は、図10A~10Bの書込みヘッド1300に類似しているが、SBL1310は、トレーリングシールド1304とNM層1306との間ではなく、主磁極1302とNM層1306との間に配置される。いくつかの実施形態において、絶縁層(図示せず)は、上記で議論されたように、トレーリングシールド1304の一部とNM層1306との間、および/または主磁極1302とNM層1306との間に配置され得る。各層の材料および寸法は、図10A~10Bで上述したのと同じである。例えば、SOT層1308は、書き込みヘッド1300と同じL/T比を有し、同じ距離1322だけ後退している。SOT層1308およびNM層1306は、実質的にスピントロニクスデバイスとして機能する。図示されていないが、書き込みヘッド1400は、図10Bに示されているものと同様に、それぞれがSOT層1308と接触して配置されたシード層1307およびバッファ層1309を備える。
【0100】
SBL1310の位置が書き込みヘッド1300と異なるため、書き込みヘッド1400の動作中、電流(Jc)1326が注入され、SOT層1308を通って-x方向に面に対して横方向に流れる。スピン流(Js)1324は、SOT層1308からNM層1306を通ってトレーリングシールド1304に流れる。SOT層1308は、純粋なスピン流1324をNM層1306に注入する。スピン流1324は、小さなトレーリングギャップ1311に集束され、トレーリングシールド1304にトルクを生じさせ、上述したように書き込み性を向上させる。SBL1310は、スピントルクが主磁極1302に作用するのを防止する。このように、書込みヘッド1300は、トレーリングシールド1304の切り替えによって補助される。
【0101】
図12の非局所SOTスピントロニクスデバイスを有する書き込みヘッド1500は、図10A~10Bの書き込みヘッド1300および図11の書き込みヘッド1400に類似しているが、SOT層1308は、第1のNM層1306aと第2のNM層1306bとの間に配置されている。書き込みヘッド1500では、第1のNM層1306aが主磁極1302上に配置され、SOT層1308が第1のNM層1306a上に配置され、第2のNM層1306bがSOT層1308上に配置され、トレーリングシールド1304が第2のNM層1306b上に配置される。SBL1310は、第1のNM層1306aと第2のNM層1306bとの間に配置され、さらにSOT層1308とMFSとの間に配置される。SOT層1308およびNM層1306a、1306bは、実質的にスピントロニクスデバイスとして機能する。図示されていないが、書き込みヘッド1500は、シード層1307およびバッファ層1309を備え、それぞれがSOT層1308と接触して配置されている。
【0102】
いくつかの実施形態では、絶縁層(図示せず)は、トレーリングシールド1304の一部と第2のNM層1306bとの間、主磁極1302と第1のNM層1306aとの間、SBL1310と第1のNM層1306aとの間、SBL1310と第2のNM層1306bとの間、およびSBL1310とSOT層1308との間に配置されてもよい。このように、SBL1310は、第1のNM層1306a、第2のNM層1306b、およびSOT層1308から間隔を空けて配置され得る。
【0103】
いくつかの層の材料および寸法は、図10A~10Bで上述したものと同じである。例えば、SOT層1308は、書き込みヘッド1300と同じL/T比を有し、同じ距離1322だけ後退している。しかしながら、Z方向におけるSBL1310の幅は、書き込みヘッド1300または1400よりも大きくてもよい。例えば、書き込みヘッド1500におけるSBL1310は、約20nmのMFSから約40nmのSOT層1308に向かって延びる幅が約100nm以上であってもよい。さらに、第1のNM層1306aおよび第2のNM層1306bの両方は、それぞれ個別に、図10A~11のNM層1306について上に列挙された材料のいずれかで構成されてもよい。
【0104】
書き込みヘッド1500の動作中、電流(Jc)1326が注入され、SOT層1308を通ってx方向に面に対して横方向に流れる。第1のスピン流(Js1)1324aが誘起され、SOT層1308から第1のNM層1306aを通って主磁極1302に流れ、第2のスピン流(Js2)1324bが誘起され、SOT層1308から第2のNM層1306bを通ってトレーリングシールド1304に流れる。第1のスピン流1324aは、主磁極1302の先端1302aを通って流れ出す。第2のスピン流1324bは、トレーリングシールド1304の先端を通って流れ出す。SOT層1308は、第1および第2のNM層1306a、1306bの両方に純粋なスピン流を注入する。
【0105】
第1および第2のスピン流1324a、1324bは、それぞれ、小さなトレーリングギャップ1311に個別に集束され、これにより、トレーリングシールド1304上および主磁極1302上にトルクが発生し、上述したように書き込み性が改善される。SBL1310は、第1のスピン流1324aと第2のスピン流1324bとの間の相互作用を防止する。したがって、書込みヘッド1500は、第1および第2のNM層1306a、1306bならびにそれらの間の共有のSOT層1308の利用により、主磁極1302のスピン流によるスイッチングおよびトレーリングシールド1304のスピン流によるスイッチングの両方によって支援される。
【0106】
図13の非局所SOTスピントロニクスデバイスを有する書き込みヘッド1600は、図12の書き込みヘッド1500と同様であるが、書き込みヘッド1600は、第1のSOT層1308aと第2のSOT層1308bとを備える。書き込みヘッド1600において、第1のNM層1306aは、主磁極1302上に配置され、第1のSOT層1308aは、主磁極1302の後方で第1のNM層1306aの主磁極対向面1303上に配置され、SBL1310は、第1のNM層1306aと第2のNM層1306bとの間に配置され、トレーリングシールド1304は、第2のNM層1306b上に配置され、第2のSOT層1307bは、トレーリングシールド1304の後方で第2のNM層1306bのトレーリングシールド対向面1305上に配置される。第1のSOT層1308aおよび第2のSOT層1308bの両方は、MFSから距離1322だけ後退している。図示されていないが、主磁極1302の一部は、第1のSOT層1308aの上および周囲に延在してもよく、トレーリングシールド1304の一部は、第2のSOT層1308bの上および周囲に延在してもよい。SOT層1308a、1308bおよびNM層1306a、1306bは、スピントロニクスデバイスとして効果的に機能する。
【0107】
図示していないが、非局所SOTスピントロニクスデバイスを備えた書き込みヘッド1600は、各SOT層1308a、1308bに接触して配置されたシード層1307およびバッファ層1309を備える。このように、書き込みヘッド1600は、2つのシード層1307および2つのバッファ層1309を備え、各SOT層1308a、1308bは、シード層1307とバッファ層1309との間に挟まれている。
【0108】
いくつかの実施形態では、絶縁層(図示せず)は、トレーリングシールド1304の一部と第2のNM層1306bとの間、主磁極1302と第1のNM層1306aとの間、およびSBL1310と第1および第2のNM層1306a、1306bとの間に配置されてもよい。このように、SBL1310は、第1のNM層1306aおよび第2のNM層1306bから間隔を空けていてもよい。さらに、図示しないが、1つまたは複数の絶縁層が、第1のSOT層1308aと主磁極1302との間、および第2のSOT層1308bとトレーリングシールド1304との間に配置されてもよい。
【0109】
各層の材料および寸法は、図10A~10Bで上述したものと同じである。例えば、SOT層1308は、書き込みヘッド1300と同じL/T比を有し、同じ距離1322だけ後退している。しかしながら、Z方向におけるSBL1310の高さまたは幅は、書込みヘッド1300、1400、および/または1500の場合よりも大きくてもよい。例えば、書き込みヘッド1600におけるSBL1310は、MFSから約20nm~約40nmの、第1および第2のSOT層1308a、1308bの間に延びる高さを有してもよい。さらに、第1のNM層1306aおよび第2のNM層1306bの両方は、それぞれ個別に、図10A~11のNM層1306について上に列挙された材料のいずれかから構成されてもよく、第1のSOT層1308aおよび第2のSOT層1308aの両方は、それぞれ個別に、図10A~11のSOT層1308について上に列挙された材料のいずれかで構成されてもよい。
【0110】
書き込みヘッド1600の動作中、第1の電流(Jc1)1326aが注入され、第1のSOT層1308aを通ってx方向に面に対して横方向に流れる。第1のスピン流(Js1)1324aは、第1のSOT層1308aから第1のNM層1306aを通って主磁極1302に流れる。第2の電流(Jc2)1326bが注入され、第2のSOT層1308bを通って-x方向に平面に対して横方向に流れる。第2のスピン流(Js2)1324bは、第2のSOT層1308bから第2のNM層1306bを通ってトレーリングシールド1304に流れる。第1のSOT層1308aは、第1のNM層1306aに純粋なスピン流を注入し、第2のSOT層1308bは、第2のNM層1306bに純粋なスピン流を注入する。
【0111】
第1および第2のスピン流1324a、1324bはそれぞれ、小さなトレーリングギャップ1311に個別に集束され、これによりスピン流密度が増加し、トレーリングシールド1304上および主磁極1302上により多くのトルクが生じ、上述したように書き込み性が改善される。SBL1310は、第1のスピン流1324aと第2のスピン流1324bとの間の磁気相互作用を防止する。したがって、書き込みヘッド1600は、第1および第2のNM層1306a、1306bならびに第1および第2のSOT層1308a、1308bの利用により、主磁極1302のスイッチングおよびトレーリングシールド1304のスイッチングの両方によって駆動される。
【0112】
このように、SOT層(単層または複数層)をMFSから後退させることにより、SOT層(複数可)がMFSまで延びるより大きなNM層の上に配置され、これと接触することで、より高いスピン流効率とより多くのスピン流を発生させることができ、スピン流をMFSにより集中させることができる。このため、MFSのみにSOT素子を有する書き込みヘッドに比べて、主磁極やトレーリングシールドの切り替えを高速に行うことができ、書き込み性が向上する。さらに、SOT層(単数または複数)はMFSから後退しているため、SOT層(単数または複数)は、MFSに配置されたSOT層(単数または複数)よりも応力および/または腐食が少なく、その結果、SOT層(単数または複数)の信頼性が向上する。
【0113】
一つの実施形態では、非局所SOTスピントロニクスデバイスを備えた磁気記録ヘッドは、媒体対向面(MFS)に配置された主磁極と、MFSに配置されたシールドと、主磁極とシールドとの間においてMFSに配置された非磁性層と、非磁性層の上に配置されたスピン軌道トルク(SOT)層と、を備える。SOT層は、非磁性スピン輸送層1306のスピン拡散長と等しいかそれより小さい距離(MFSから約20nm~約100nmまたはそれ以上)後退している。
【0114】
SOT層の厚さに対するSOT層の長さの比は、1より大きい。非磁性層は、テーパー形状であり、非磁性層の長さは、SOT層の長さに実質的に等しい。SOT層は、アンドープBiSbまたはドープされたBiSbXを含み、ドーパントは約10at.%未満であり、Xは、B、N、Al、Si、Ti、V、Cr、Fe、Ni、Cu、Ge、Y、Zr、Ru、Mo、Ag、Hf、Ta、W、およびIrからなる群から選択される材料である。磁気記録ヘッドは、シールドと非磁性層との間に配置されたスピンブロッキング層をさらに備え、SOT層は、非磁性層の側対向面上に配置されている。また、磁気記録ヘッドは、主磁極と非磁性層との間に配置されたスピンブロッキング層をさらに備え、SOT層は、非磁性層の主磁極対向面上に配置されている。磁気記録装置は、磁気記録ヘッドを備える。磁気記録装置は、SOT層に電流を流し、SOT層から非磁性層を通して主磁極にスピン流を流すように構成された制御部をさらに備える。磁気記録装置は、SOT層に電流を流し、SOT層から非磁性層を通してシールドにスピン流を流すように構成された制御部をさらに備える。
【0115】
別の実施形態では、非局所SOTスピントロニクスデバイスを備えた磁気記録ヘッドは、媒体対向面(MFS)に配置された主磁極と、主磁極の上においてMFSに配置された第1の非磁性層と、第1の非磁性層の上においてMFSに配置された第2の非磁性層と、第2の非磁性層の上に配置されたトレーリングシールドと、第1の非磁性層および第2の非磁性層の上に配置されたスピン軌道トルク(SOT)層と、を備える。SOT層は、MFSから約20nm~約100nmの距離で後退している。
【0116】
SOT層の厚さに対するSOT層の長さの比は、1より大きく、SOT層は、アンドープBiSbまたはドープされたBiSbXを含み、ドーパントは、約10at.%未満であり、Xは、B、N、Al、Si、Ti、V、Cr、Fe、Ni、Cu、Ge、Y、Zr、Ru、Mo、Ag、Hf、Ta、W、およびIrからなる群から選択される材料である。磁気記録ヘッドは、第1の非磁性層と第2の非磁性層との間においてMFSに配置されたスピンブロッキング層をさらに備える。スピンブロッキング層は、Ti、Ru、TiとRu、Pt、またはMnとの二層膜、RuとPtまたはMnとの二層膜、およびこれらの合金、AlOx、SiN、およびMgO(xは、1以上の整数である。)からなる群から選択される材料を含む。第1および第2の非磁性層は、それぞれ個別にCuまたはAlを含む。磁気記録装置は、磁気記録ヘッドを備える。磁気記録装置は、SOT層に電流を流し、SOT層から第1の非磁性層を通して主磁極に第1のスピン流を流し、SOT層から第2の非磁性層を通してトレーリングシールドに第2のスピン流を流すように構成された制御部をさらに備える。
【0117】
さらに別の実施形態では、非局所SOTスピントロニクスデバイスを備えた磁気記録ヘッドは、媒体対向面(MFS)に配置された主磁極と、主磁極の上においてMFSに配置された第1の非磁性層と、第1の非磁性層の上に配置されたスピンブロッキング層と、スピンブロッキング層の上においてMFSに配置された第2の非磁性層と、第2の非磁性層の上に配置されたトレーリングシールドと、第1の非磁性層の上に配置された第1のスピン軌道トルク(SOT)層と、第2の非磁性層の上に配置された第2のSOT層と、を備える。第1のSOT層および第2のSOT層は、それぞれ、約20nm~約100nmの距離MFSから個別に後退している。
【0118】
第1のSOT層の厚さに対する第1のSOT層の長さの比は、1より大きく、第2のSOT層の厚さに対する第2のSOT層の長さの比は、1より大きく、第1のSOT層および第2のSOT層は、それぞれ個別にBiSbを含む。第1の非磁性層および第2の非磁性層は、それぞれ個別にテーパ形状であり、第1のSOT層は、第1の非磁性層の主磁極対向面上に配置され、第2のSOT層は、第2の非磁性層のトレーリングシールド対向面上に配置される。第1の非磁性層および第2の非磁性層は、それぞれ個別に、酸化物、窒化物、アモルファスの非磁性シャントブロック層、または2.19Å~2.02Åのd間隔の範囲に最近接X線回折ピークを有する金属を含む。スピンブロック層は、第1のSOT層と第2のSOT層との間に延在している。磁気記録装置は、磁気記録ヘッドを備える。磁気記録装置は、第1の電流を第1のSOT層を通して流し、第1のスピン流を第1のSOT層から第1の非磁性層を通して主磁極に流し、第2の電流を第2のSOT層を通して流し、第2のスピン流を第2のSOT層から第2の非磁性層を通してトレーリングシールドに流すように構成された制御ユニットをさらに備える。
【0119】
上記は、本開示の実施形態に向けられたものであるが、本開示の他のさらなる実施形態は、その基本的範囲から逸脱することなく考案することができ、その範囲は、後に続く特許請求の範囲によって決定される。
図1
図2
図3A-3B】
図4A-4D】
図5A-5D】
図6A-6D】
図7A-7D】
図8A-8D】
図9A-9D】
図10A
図10B
図11
図12
図13
【外国語明細書】