(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025003937
(43)【公開日】2025-01-14
(54)【発明の名称】スピン軌道トルク層とハイブリッドした非局在スピンバルブ読み取りセンサ
(51)【国際特許分類】
G11B 5/31 20060101AFI20250106BHJP
G11B 5/39 20060101ALI20250106BHJP
G11B 5/02 20060101ALI20250106BHJP
G11B 5/09 20060101ALI20250106BHJP
【FI】
G11B5/31 A
G11B5/31 E
G11B5/31 Q
G11B5/39
G11B5/02 R
G11B5/09 321Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】30
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024097247
(22)【出願日】2024-06-17
(31)【優先権主張番号】63/521,819
(32)【優先日】2023-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】18/367,877
(32)【優先日】2023-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京科学大学
(71)【出願人】
【識別番号】504056130
【氏名又は名称】ウェスタン デジタル テクノロジーズ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】ファム ナム ハイ
(72)【発明者】
【氏名】クアン レイ
(72)【発明者】
【氏名】リウ シャオユン
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン アール ヨーク
(72)【発明者】
【氏名】チャーニー ファン
(72)【発明者】
【氏名】ソン ティー レイ
(72)【発明者】
【氏名】高野 公史
(72)【発明者】
【氏名】トゥオ ファン
(72)【発明者】
【氏名】ハッサン オスマン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】磁気記録装置で使用するための高信号出力を有する読み取りヘッドを含む磁気記録ヘッドを提供する。
【解決手段】読み取りヘッド500は、媒体対向面(MFS)に配置されたセンサ540と、センサから離れて配置され、MFSから後退したスピン発生器550と、を備える。センサ及びスピン発生器は、非磁性層406の上に配置されている。センサは自由層を含み、スピン発生器は少なくとも1つのスピン軌道トルク(SOT)層510を含む。SOT層は、BiSbのようなトポロジカル材料で構成される。センサは、第1の電圧リード線V
+および第2の電圧リード線V
-を用いて読み取り信号を検出する。スピン発生器は、第1の電流リードI
+および第2の電流リード線I
-を用いて、非磁性層を介してセンサにスピン流を注入するリード線。非磁性層の形状は、スピン流をさらに集中させるために三角形または台形である。
【選択図】
図5A-5B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のシールドと、
第2のシールドと、
前記第1のシールドと前記第2のシールドとの間に配置された非磁性層と、
媒体対向面(MFS:Media Facing Surface)において前記非磁性層と前記第2のシールドとの間に配置された、自由層を含むセンサと、
前記非磁性層に隣接して配置され、前記MFSから第1の距離後退したスピン発生器と、を備え、
前記スピン発生器は、前記センサから離れており、スピン軌道トルク(SOT:Spin Orbit Torque)層を含み、
前記第1の距離は、前記MFSから測定される前記自由層の高さよりも大きい、
読み取りヘッド。
【請求項2】
前記スピン発生器は、前記非磁性層と前記第2のシールドとの間に配置されている、
請求項1に記載の読み取りヘッド。
【請求項3】
前記第1のシールドに接続された負電圧リード線と、
前記第2のシールドに接続された正電圧リード線と、
前記SOT層に接続された正電流リード線と、
前記SOT層に接続された負電流リード線と、をさらに備え、
前記正電流リード線および前記負電流リード線は、クロストラック方向に前記SOT層を貫通する電流経路を提供するように位置合わせされている、
請求項1に記載の読み取りヘッド。
【請求項4】
前記非磁性層に接続された負電圧リード線と、
前記第2のシールドに接続された正電圧リード線と、
前記SOT層に接続された正電流リード線と、
前記SOT層に接続された負電流リード線と、をさらに備え、
前記正電流リード線および前記負電流リード線は、クロストラック方向に前記SOT層を貫通する電流経路を提供するように位置合わせされている、
請求項1に記載の読み取りヘッド。
【請求項5】
前記第1のシールドに接続された負電流リード線と、
前記第2のシールドに接続された正電流リード線と、
前記SOT層に接続された正電圧リード線と、
前記SOT層に接続された負電圧リード線と、をさらに備える、
請求項1に記載の読み取りヘッド。
【請求項6】
前記非磁性層に接続された負電流リード線と、
前記第2のシールドに接続された正電流リード線と、
前記SOT層に接続された正電圧リード線と、
前記SOT層に接続された負電圧リード線と、をさらに備える、
請求項1に記載の読み取りヘッド。
【請求項7】
前記SOT層は、トポロジカル絶縁材料を含む、
請求項1に記載の読み取りヘッド。
【請求項8】
前記トポロジカル絶縁材料は、BiSbである、
請求項7に記載の読み取りヘッド。
【請求項9】
前記非磁性層は、第1の部分および第2の部分を含み、
前記第1の部分は、前記第2の部分よりも大きい幅を有し、
前記第1の部分は、前記スピン発生器に隣接して配置され、
前記第2の部分は、前記センサに隣接して配置される、
請求項1に記載の読み取りヘッド。
【請求項10】
前記スピン発生器は、前記非磁性層の上に配置されたシード層と、前記SOT層の上に配置されたキャップ層とをさらに含み、
前記センサは、前記非磁性層の上に配置された第1のトンネルバリア層と、前記自由層の上に配置されたキャップ層とをさらに含む、
請求項1に記載の読み取りヘッド。
【請求項11】
前記スピン発生器は、前記非磁性層と前記第1のシールドとの間に配置されている、
請求項1に記載の読み取りヘッド。
【請求項12】
請求項1に記載の読み取りヘッドを備える、
磁気記録ヘッド。
【請求項13】
請求項12に記載の磁気記録ヘッドを備える、
磁気記録装置。
【請求項14】
読み取りヘッドを備え、
前記読み取りヘッドは、
シールドノッチを含む第1のシールドと、
第2のシールドと、
前記シールドノッチと前記第2のシールドとの間に配置された非磁性層と、
媒体対向面(MFS:Media Facing Surface)において前記非磁性層と前記第2のシールドとの間に配置された、自由層を含むセンサと、
前記MFSから後退して配置されており、前記センサから離れているスピン発生器と、を備え、
前記スピン発生器は、前記第1のシールドと前記非磁性層との間に配置された第1のスピン軌道トルク(SOT:Spin Orbit Torque)層と、前記非磁性層と前記第2のシールドとの間に配置された第2のSOT層と、を含む、
磁気記録ヘッド。
【請求項15】
前記第1のSOT層は、前記シールドノッチと隣り合って配置され、
前記第2のSOT層は、前記自由層と隣り合って配置される、
請求項14に記載の磁気記録ヘッド。
【請求項16】
前記非磁性層は、前記センサと前記スピン発生器との間において延在し、100nm~300nmの高さを有する、
請求項14に記載の磁気記録ヘッド。
【請求項17】
前記読み取りヘッドは、
前記第1のSOT層に接続された第1の負電流リード線と、
前記第1のSOT層に接続された第1の正電流リード線と、
前記第2のSOT層に接続され、前記第1の負電流リード線と隣り合って配置された第2の正電流リード線と、
前記第2のSOT層に接続され、前記第1の正電流リード線と隣り合って配置された第2の負電流リード線と、をさらに備える、
請求項14に記載の磁気記録ヘッド。
【請求項18】
前記読み取りヘッドは、
前記第1のSOT層に接続された第1の負電圧リード線と、
前記第1のSOT層に接続された第1の正電圧リード線と、
前記第2のSOT層に接続され、前記第1の負電圧リード線と隣り合って配置された第2の正電圧リード線と、
前記第2のSOT層に接続され、前記第1の正電圧リード線と隣り合って配置された第2の負電圧リード線と、をさらに備える、
請求項14に記載の磁気記録ヘッド。
【請求項19】
前記読み取りヘッドは、前記シールドノッチと前記非磁性層との間に配置された非磁性ノッチをさらに備える、
請求項14に記載の磁気記録ヘッド。
【請求項20】
前記スピン発生器は、前記第1のシールドと前記第2のシールドとの間に配置されている、
請求項14に記載の磁気記録ヘッド。
【請求項21】
請求項14に記載の磁気記録ヘッドを備える、
磁気記録装置。
【請求項22】
読み取りヘッドを備え、
前記読み取りヘッドは、
第1のシールドと、
第2のシールドと、
前記第1のシールドと前記第2のシールドとの間に配置された非磁性層と、
媒体対向面(MFS:Media Facing Surface)において前記第1のシールドと前記第2のシールドとの間に配置された、第1の自由層および第2の自由層を含むセンサと、
前記MFSから後退して配置されており、前記センサから離れているスピン発生器と、を備え、
前記スピン発生器は、前記第1のシールドと前記非磁性層との間に配置された第1のスピン軌道トルク(SOT:Spin Orbit Torque)層と、前記非磁性層と前記第2のシールドとの間に配置された第2のSOT層と、を含む、
磁気記録装置。
【請求項23】
前記読み取りヘッドは、
前記第1のSOT層に接続された第1の負電流リード線と、
前記第1のSOT層に接続された第1の正電流リード線と、
前記第2のSOT層に接続され、前記第1の負電流リード線と隣り合って配置された第2の正電流リード線と、
前記第2のSOT層に接続され、前記第1の正電流リード線と隣り合って配置された第2の負電流リード線と、をさらに備える、
請求項22に記載の磁気記録装置。
【請求項24】
前記読み取りヘッドは、
前記第1のSOT層に接続された第1の負電圧リード線と、
前記第1のSOT層に接続された第1の正電圧リード線と、
前記第2のSOT層に接続され、前記第1の負電圧リード線と隣り合って配置された第2の正電圧リード線と、
前記第2のSOT層に接続され、前記第1の正電圧リード線と隣り合って配置された第2の負電圧リード線と、をさらに備える、
請求項22に記載の磁気記録装置。
【請求項25】
前記第1の自由層は、前記第1のシールドと前記非磁性層との間に配置され、
前記第2の自由層は、前記非磁性層と前記第2のシールドとの間に配置される、
請求項22に記載の磁気記録装置。
【請求項26】
前記読み取りヘッドは、
前記MFSにおいて前記第1の自由層と隣り合って配置された第1のソフトバイアス側シールドと、
前記MFSにおいて前記第1の自由層と隣り合って配置された第2のソフトバイアス側シールドと、
前記MFSにおいて前記第2の自由層と隣り合って配置された第3のソフトバイアス側シールドと、
前記MFSにおいて前記第2の自由層と隣り合って配置された第4のソフトバイアス側シールドと、
前記第1のソフトバイアス側シールドと前記第3のソフトバイアス側シールドとの間に配置された第1のRu層と、
前記第2のソフトバイアス側シールドと前記第4のソフトバイアス側シールドとの間に配置された第2のRu層と、をさらに備える、
請求項22に記載の磁気記録装置。
【請求項27】
前記第1の自由層は、第1の絶縁層によって前記第1のSOT層から離され、
前記第2の自由層は、第2の絶縁層によって前記第2のSOT層から離される、
請求項22に記載の磁気記録装置。
【請求項28】
前記第1のSOT層および前記第2のSOT層は、それぞれ個別に、5nm~20nmの厚さ、100nm~1μmの高さ、および100nm未満の幅を有する、
請求項22に記載の磁気記録装置。
【請求項29】
前記非磁性層は、前記センサと前記スピン発生器との間において延在し、100nm~300nmの高さを有し、第1の部分および第2の部分を含み、
前記第1の部分は、前記第2の部分よりも大きい幅を有し、前記スピン発生器に隣接して配置され、
前記第2の部分は、前記センサに隣接して配置される、
請求項22に記載の磁気記録装置。
【請求項30】
前記スピン発生器は、前記第1のシールドと前記第2のシールドとの間に配置されている、
請求項22に記載の磁気記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本出願は、2023年6月19日に出願された米国仮特許出願63/521,819の利益を主張するものであり、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
開示の背景
本開示の実施形態は、一般に、磁気媒体ドライブまたはハードディスクドライブなどの読み取りヘッドを含む磁気記録ヘッドに関する。
【背景技術】
【0003】
関連技術の説明
コンピュータの心臓部はハードディスクドライブである。ディスクの磁気面に非常に接近して配置された読み取りヘッドおよび書き込みヘッドを通過してディスクが回転すると、ディスクへの情報の書き込みおよびディスクからの情報の読み出しが行われる。トンネル磁気抵抗(TMR:Tunneling Magneto-Resistive)効果、巨大磁気抵抗(GMR:Giant Magneto Resistive)効果、異常磁気抵抗(EMR:Extraordinary Magneto-Resistive)効果、スピントルク発振器(STO:Spin Torque Oscillator)効果、非局在スピンバルブ(NLSV:Mon-Localize Spin Valve)など、様々な物理的メカニズムに基づき、線形密度を高めるために様々な読み取りヘッド設計が提案されてきた。
【0004】
NLSV設計では、リードヘッドは空間的に分離した2つのトンネル接合構造を含むことがあり、一方のトンネル接合構造は媒体対向面(MFS:Media Facing Surface)から後退しており、他方のトンネル接合構造はMFSに配置されている。後退した構造は、多くの場合、スピン注入用の固定磁化を有するピン止め層および強磁性層を含む。しかしながら、このような読み取りヘッドにおける読み取り信号出力は、1未満のスピン分極を有するピン止め層からのスピン注入効率によって制限される。このように、スピン流注入効率が比較的低いため、信号出力が悪くなり、データを正確に読み取る読み取りヘッドの能力に悪影響を及ぼす。
【0005】
したがって、磁気記録装置で使用するための高信号出力を有する改良型の読み取りヘッドに対するニーズが当技術分野において存在する。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、一般に、読み取りヘッドを含む磁気記録ヘッドに関する。読み取りヘッドは、媒体対向面(MFS)に配置されたセンサと、センサから離れており、MFSから後退したスピン発生器とを備える。センサおよびスピン発生器は、非磁性層の上に配置されている。センサは自由層を含み、スピン発生器は少なくとも1つのスピン軌道トルク(SOT:Spin Orbit Torque)層を含む。SOT層は、BiSbで構成されてもよい。センサは、第1の電圧リード線および第2の電圧リード線を用いて読み取り信号を検出するように構成されている。スピン発生器は、第1の電流リード線および第2の電流リード線を用いて、非磁性層を介してセンサにスピン流を注入するように構成される。非磁性層の形状は、スピン流をさらに集中させるために三角形または台形である。
【0007】
一実施形態では、読み取りヘッドは、第1のシールドと、第2のシールドと、第1のシールドと第2のシールドとの間に配置された非磁性層と、媒体対向面(MFS)において非磁性層と第2のシールドとの間に配置された自由層とを含むセンサと、非磁性層に隣接しており、MFSから第1の距離後退したスピン発生器とを備える。スピン発生器は、センサから離れており、スピン軌道トルク(SOT)層を含む。また、第1の距離は、MFSから測定される自由層の高さよりも大きい。
【0008】
別の実施形態では、磁気記録装置の読み取りヘッドは、シールドノッチを含む第1のシールドと、第2のシールドと、シールドノッチと第2のシールドとの間に配置された非磁性層と、媒体対向面(MFS)において非磁性層と第2のシールドとの間に配置された、自由層を含むセンサと、MFSから後退したスピン発生器とを備える。スピン発生器は、第1のシールドと非磁性層との間に配置された第1のスピン軌道トルク(SOT)層と、非磁性層と第2のシールドとの間に配置された第2のSOT層とを備える。
【0009】
さらに別の実施形態では、磁気記録装置の読み取りヘッドは、第1のシールドと、第2のシールドと、第1のシールドと第2のシールドとの間に配置された非磁性層と、媒体対向面(MFS)において第1のシールドと第2のシールドとの間に配置された、第1の自由層および第2の自由層を含むセンサと、MFSから離れたスピン発生器とを備える。スピン発生器は、第1のシールドと非磁性層との間に配置された第1のスピン軌道トルク(SOT)層、および非磁性層と第2のシールドとの間に配置された第2のSOT層を備える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本開示の上述の特徴が詳細に理解され得るように、上記で簡単に要約された本開示のより具体的な説明は、添付図面にその一部が例示される実施形態を参照することによって有することができる。しかしながら、添付図面は、本開示の典型的な実施形態のみを図示しており、したがって、本開示は、他の同様に有効な実施形態を認めることができるため、その範囲を限定するものとみなされないことに留意されたい。
【
図1】
図1は、本開示を具体化したハードディスクドライブを示す図である。
【
図2】
図2は、一実施形態による、磁気媒体に面する読み取り/書き込みヘッドの中心を通る断片的な断面側面図である。
【
図3】
図3は、NLSVに基づくリードヘッドの先行技術を示す。
【
図4A-4B】
図4A~4Bは、一実施形態による読み取りヘッドを示す。
【
図4C-4D】
図4C~4Dは、別の実施形態による読み取りヘッドを示す。
【
図5A-5B】
図5A~5Bは、一実施形態による磁気記録ヘッドの読み取りヘッドを示す図である。
【
図5C-5D】
図5C~5Dは、別の実施形態による磁気記録ヘッドの読み取りヘッドを示す図である。
【
図6A-6B】
図6A~6Bは、さらに別の実施形態による磁気記録ヘッドの読み取りヘッドを示す図である。
【
図6C-6D】
図6C~6Dは、一実施形態による磁気記録ヘッドの読み取りヘッドを示す図である。
【
図7A-7B】
図7A~7Bは、別の実施形態による磁気記録ヘッドの読み取りヘッドを示す図である。
【
図7C-7D】
図7C~7Dは、さらに別の実施形態による磁気記録ヘッドの読み取りヘッドを示す図である。
【
図8A-8B】
図8A~8Bは、別の実施形態による磁気記録ヘッドの読み取りヘッドを示す図である。
【
図8C-8D】
図8C~8Dは、一実施形態による磁気記録ヘッドの読み取りヘッドを示す図である。
【
図9A-9B】
図9A~9Bは、さらに別の実施形態による磁気記録ヘッドの読み取りヘッドを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
理解を容易にするために、図に共通する同一の要素を指定するために、可能な限り同一の参照数字が使用されている。ある実施形態に開示された要素は、具体的に説明することなく、他の実施形態に有益に利用され得ることとする。
【0012】
詳細説明
以下では、本開示の実施形態について言及する。しかしながら、本開示は、特定の記載された実施形態に限定されないことが理解されるべきである。その代わりに、異なる実施形態に関連するか否かにかかわらず、以下の特徴および要素の任意の組み合わせが、本開示を実施および実践するためとする。さらに、本開示の実施形態は、他の可能な解決策に対する、および/または従来技術に対する利点を達成し得るが、特定の利点が所与の実施形態によって達成されるか否かは、本開示を限定するものではない。したがって、以下の態様、特徴、実施形態および利点は、単に例示であり、請求項(複数可)に明示的に記載されている場合を除き、添付の請求項の要素または限定とはみなされない。同様に、「本開示」への言及は、本明細書において開示される任意の発明的主題の一般化として解釈されず、請求項において明示的に記載される場合を除き、添付の請求項の要素または限定とはみなされない。
【0013】
本開示は、一般に、読み取りヘッドを含む磁気記録ヘッドに関する。読み取りヘッドは、媒体対向面(MFS)に配置されたセンサと、センサから間隔をあけて配置され、MFSから離れたスピン発生器とを備える。センサとスピン発生器は非磁性層上に配置されている。センサは自由層からなり、スピン発生器は少なくとも1つのスピン軌道トルク(SOT)層からなる。SOT層はBiSbから構成されてもよい。センサは、第1の電圧リードと第2の電圧リードを用いて読み取り信号を検出するように構成されている。スピン発生器は、第1の電流リードおよび第2の電流リードを用いて、非磁性層を介してセンサにスピン流を注入するように構成される。非磁性層の形状は、スピン流をさらに集中させるために三角形または台形である。
【0014】
図1は、一実施形態による磁気記録装置100の概略図である。磁気記録装置100は、書き込みヘッドなどの磁気記録ヘッドを含む。磁気記録装置100は、ハードディスクドライブ(HDD:Hard Disk Drive)などの磁気媒体ドライブである。このような磁気媒体ドライブは、単一のドライブ/デバイスであってもよいし、複数のドライブ/デバイスを含んでもよい。図示を容易にするために、
図1に示される実施態様では、単一のディスクドライブが磁気記録装置100として示されている。磁気記録装置100(例えば、ディスクドライブ)は、スピンドル114上に支持され、駆動モータ118によって回転される少なくとも1つの回転可能な磁気ディスク112を含む。各回転可能磁気ディスク112上の磁気記録は、回転可能磁気ディスク112上の同心データトラックの環状パターンなど、データトラックの任意の適切なパターンの形態である。
【0015】
少なくとも1つのスライダ113が回転可能な磁気ディスク112の近傍に配置されている。各スライダ113はヘッドアセンブリ121を支持する。ヘッドアセンブリ121は、スピントロニクス装置を含む書き込みヘッドなどの1つ以上の磁気記録ヘッド(読み取り/書き込みヘッドなど)を含む。回転可能磁気ディスク112が回転すると、ヘッドアセンブリ121が、所望のデータが書き込まれる回転可能磁気ディスク112の異なるトラックにアクセスできるように、スライダ113がディスク表面122上を半径方向に出入りする。各スライダ113は、サスペンション115を介してアクチュエータアーム119に取り付けられている。サスペンション115は、スライダ113をディスク表面122に向かって付勢するわずかなばね力を提供する。各アクチュエータアーム119はアクチュエータ127に取り付けられている。
図1に示すアクチュエータ127は、ボイスコイルモータ(VCM:Voice Coil Motor)であってもよい。VCMは、固定磁界内で移動可能なコイルを含み、コイル移動の方向および速度は、制御ユニット129から供給されるモータ電流信号によって制御される。
【0016】
ヘッドアセンブリ121の書き込みヘッドなどのヘッドアセンブリ121は、ディスク表面122に面する空気軸受面(ABS:Air Bearing Surface)などの媒体対向面(MFS::Media Facing Surface)を含む。磁気記録装置100の動作中、回転可能な磁気ディスク112の回転により、スライダ113とディスク表面122との間に空気または気体の軸受が発生し、この軸受がスライダ113に上向きの力または揚力を及ぼす。このようにして、空気または気体軸受は、サスペンション115のわずかなばね力に対抗し、動作中、スライダ113を、実質的に一定の小さな間隔だけ、ディスク表面122から外れてわずかに上方に支持する。
【0017】
磁気記録装置100の各構成要素は、アクセス制御信号および内部クロック信号など、制御ユニット129が生成する制御信号によって動作制御される。制御ユニット129は、論理制御回路、記憶手段、マイクロプロセッサを含む。制御ユニット129は、ライン123上の駆動モータ制御信号、ライン128上のヘッド位置およびシーク制御信号など、様々なシステム動作を制御するための制御信号を生成する。ライン128上の制御信号は、スライダ113を回転可能磁気ディスク112上の所望のデータトラックに最適に移動および位置決めするための所望の電流プロファイルを提供する。書き込み信号および読み出し信号は、記録チャネル125によってヘッドアセンブリ121との間で通信される。一実施形態は他の実施形態と組み合わせることができ、磁気記録装置100は、複数の媒体、またはディスク、複数のアクチュエータ、および/または複数のスライダをさらに含むことができる。
【0018】
図2は、一実施態様による、
図1に示す回転可能磁気ディスク112または他の磁気記憶媒体に面するヘッドアセンブリ200の断面側面図の概略図である。ヘッドアセンブリ200は、
図1で説明したヘッドアセンブリ121に対応できる。ヘッドアセンブリ200は、回転可能磁気ディスク112に面するABSなどのMFS212を含む。
図2に示すように、回転可能磁気ディスク112は矢印232で示す方向に相対的に移動し、ヘッドアセンブリ200は矢印234で示す方向に相対的に移動する。
【0019】
一実施形態は他の実施形態と組み合わせることができ、ヘッドアセンブリ200は磁気読み取りヘッド211を含む。磁気読み取りヘッド211は、シールドS1およびS2の間に配置された検知素子204を含むことができる。検知素子204および関連構造は、本開示に示される様々な実施形態に関してさらに説明される。垂直記録ビットまたは長手記録ビットのような、回転可能磁気ディスク112内の磁化された領域の磁界は、記録ビットとして検知素子204によって検出可能である。
【0020】
ヘッドアセンブリ200は、書き込みヘッド210を含む。一実施形態は他の実施形態と組み合わせることができ、書き込みヘッド210は、主磁極220と、リーディングシールド206と、トレーリングシールド(TS:Trailing Shield)240と、主磁極220とTS240との間に配置されたスピントロニクスデバイス250とを含む。主磁極220、スピントロニクスデバイス250、リーディングシールド206、およびTS240の各々は、MFSにおいて前部を有する。
【0021】
主磁極220は、CoFe、CoFeNi、NiFeまたはFeNiReなどの磁性材料、他の適切な磁性材料を含む。一実施形態は、他の実施形態と組み合わせることができ、主磁極220は、ランダムなテクスチャで形成された体心立方(BCC:Body-Centered Cubic)材料などのランダムなテクスチャの磁性材料の小さい粒子を含む。一例では、主磁極220のランダムなテクスチャは、メッキによって形成される。書き込みヘッド210は、回転可能磁気ディスク112の磁気記録媒体に影響を与えるための書き込み磁界を生成するために主磁極220を励起するコイル218を主磁極220の周囲に含む。コイル218は、らせん構造であってもよいし、1組以上のパンケーキ構造であってもよい。
【0022】
一実施形態は他の実施形態と組み合わせることができ、主磁極220は、トレーリングテーパ242およびリーディングテーパ244を含む。トレーリングテーパ242は、MFS212から後退した位置からMFS212に向かって延びている。リーディングテーパ244は、MFS212から後退した位置からMFS212に向かって延びている。トレーリングテーパ242およびリーディングテーパ244は、主磁極220の長手方向軸260に対して同じ程度のテーパを有していてもよいし、異なる程度のテーパを有していてもよい。一実施形態は他の実施形態と組み合わせることができ、主磁極220は、トレーリングテーパ242およびリーディングテーパ244を含まない。このような実施形態では、主磁極220は、トレーリング側とリーディング側とが実質的に平行であるトレーリング側とリーディング側とを含む。
【0023】
TS240は、FeNiなどの磁性材料または他の適切な磁性材料を含み、第2の電極および主磁極220の戻り極として機能する。リーディングシールド206は、電磁シールド機能を提供することができ、リーディングギャップ254によって主磁極220から分離されている。
【0024】
図3は、NLSVを用いた従来技術に基づく読み取りヘッド300を示す。読み取りヘッド300は、媒体301に隣接するMFSに配置された読み取りセンサ340と、MFSから後退したスピン発生器350とを備える。読み取りセンサ340およびスピン発生器350は、それぞれ個別に、第1のシールド(図示せず)と第2のシールド(図示せず)との間に配置され、分離されており、読み取りセンサ340はMFSに露出し、スピン発生器350はMFSから後退している。また、読み取りセンサ340およびスピン発生器350は、ある有限の距離互いに離れている。非磁性層306は、センサ340およびスピン発生器350のそれぞれに隣接して配置される。非磁性層306は、例えばAlで構成されてよい。
【0025】
読み取りセンサ340は、第1の自由層344と、第1の自由層344と非磁性層306との間に配置された第1のトンネルバリア層342とを含む。電圧リード線は、読み取りセンサ340を通して読み取り信号を検出するために、非磁性層306および第1の自由層344に接続されている。
【0026】
スピン発生器350は、参照層336と、参照層336上に配置されたキャップ層332と、非磁性層306と第2のトンネル障壁層332との間に配置された第2の磁性層(FM)層334とを備える。スピン発生器350は、読み取りセンサ340から非磁性層306のスピン拡散長までの距離だけ離間している。例えば、非磁性層306がCu製である場合、その距離は約100nm~約300nmまでとすることができる。電流リード線は、非磁性層306および参照層336に接続されている。動作中、電流が印加され、スピン発生器350を通して印加されると、スピン流がスピン発生器350から非磁性層306を通って読み取りセンサ340まで移動する。スピン注入により、スピン流が読み取りセンサ340に流れ、データ読み取り時に第1の自由層344の磁化変化からの信号検出が可能になる。
【0027】
しかしながら、スピン発生器350は、固定された磁化方向を有する参照層336を含むため、スピン注入効率は、参照層336のスピン分極率(約1未満)によって制限され、そのようなものとして、読み取りヘッド300の読み取り信号出力は制限される。
【0028】
図4A~4Bは、一実施形態による読み取りヘッド400を示す。
図4Aは、読み取りヘッド400の断面図を示し、
図4Bは、読み取りヘッド400の上面図を示す。読み取りヘッド400は、
図2の読み取りヘッド211の内にあってもよい。読み取りヘッド400は、
図1の磁気記録装置100の一部であってもよい。
図4Bの上面図において、第1のシールド(S1)402および第2のシールド(S2)404は、明瞭にするために図示されていない。第1のシールド402は
図2のS1であってもよく、第2のシールド404は
図2のS2であってもよい。
【0029】
読み取りヘッド400は、MFSに配置された読み取りセンサ440と、MFSから後退したスピン発生器450とを備える。読み取りセンサ440は、第1のシールド402と第2のシールド404との間に配置されている。非磁性スピン輸送層406は、第2のシールド404の間、および読み取りセンサ440とスピン発生器450との間に配置される。非磁性層406は、MFSからスピン発生器450の後端まで延びており、MFSから第1および第2のシールド402、404と同じ高さを有することができる。
【0030】
いくつかの実施形態では、非磁性層406は、第1および第2のシールド402、404よりも大きい高さ、または第1および第2のシールド402、404よりも小さい高さを有することができる(
図4Aに示す構成)。非磁性層406は、非磁性層406に使用される材料にもよるが、一般に約100nm~約300nmの、非磁性層406のスピン拡散長よりも小さい、またはそれに近い高さ452を有する。非磁性層406は、Cu、Al、またはグラフェンなどの他の2D材料、およびMoS
2、HfS
2などの他のファンデルワールス材料のような、長いスピン拡散長を有する材料で構成されてもよい。読み取りセンサ440は、スピン発生器450から約100nmから約300nmの距離444離れている。さらに、第1および第2のシールド402および404は、異なる寸法(MFSからの高さが異なる)を有していてもよい。
【0031】
(1)第1のシールド402および第2のシールド404のそれぞれの高さ、および(2)非磁性層406のスピン拡散特性(スピン発生器450の後退した距離に影響する)に応じて、スピン発生器450は、2つのシールドの間にあってもなくてもよい。
図4A~9Bは、シールドの間に1つ以上のスピン発生器を示し、シールドは比較的類似しているか、または同じ寸法であるが、本開示はそれほど限定されず、スピン発生器450が2つのシールドの間になくてもよい他の実施形態が存在する。それらの実施形態では、センサと重なる非磁性層406の一部は、2つのシールドの間にあり得るが、スピン発生器450と重なる非磁性層406の別の部分は、そうでなくてもよい。
【0032】
読み取りセンサ440は、第1のシールド402に隣接して配置された自由層418と、自由層418と非磁性層406との間に配置されたトンネルバリア層442を備える。自由層418は、Co-Fe、Co-Fe-B、Pt、またはホイスラー合金の1つまたは複数の層のような磁性材料で構成されてよい。トンネルバリア層442は、例えば、MgOまたはAlOx(xは、1より大きい数字である。)で構成されてよい。電圧リード線は、読み取りセンサ440を介して読み取り信号を検出するために、第1および第2のシールド402、404に接続される。
【0033】
スピン発生器450は、多層構造である。スピン発生器450、または離れた読み取りセンサ450は、
図5A~9Bで後述する読み取りセンサ500~900のいずれかを指す。電流リード線は、スピン注入のためにスピン発生器450に接続される。動作中、電流が読み取りヘッド400内部のスピン発生器450面内に印加されると、スピンホール効果により、スピン発生器450を横切って非磁性層406に流れるスピン流が発生する。このスピン流は、スピン発生器450から非磁性層406を通って読み取りセンサ440まで流れる。読み取りセンサ440を流れるこのスピン流は、データを読み取る際に自由層418が磁化方向を回転させると、センサ440を横切る電気信号の発生を可能にする。
【0034】
図4Bに示すように、非磁性層406は、非磁性層406がMFSから離れるほど広くなり、非磁性層406がMFSに近づくほど狭くなるような三角形または台形の形状を有することができる。このような実施形態では、非磁性層406の広い部分は約100nm以下の幅454を有し、非磁性層406の狭い部分は約10nm~約20nmの幅456を有し、これは読み取りセンサ440のトラック幅(TW:Track Width)に近い。センサ440の自由層418は、非磁性層406の狭い部分と同じ幅456を有してもよい。スピン発生器450は、非磁性層406の幅が変化する場合、非磁性層406のより広い部分に配置される。サイドシールド448は、自由層418の適切なバイアスのために、MFSにおいて読み取りセンサ440の両側に配置される。
【0035】
図4C~4Dは、一実施形態による読み取りヘッド401を示す。
図4Cは、読み取りヘッド401の断面図を示し、
図4Dは、読み取りヘッド401の上面図を示す。読み取りヘッド401は、
図2の読み取りヘッド211内にあってもよい。読み取りヘッド401は、
図1の磁気記録装置100の一部であってもよい。
図4Dの上面図において、第1のシールド(S1)402および第2のシールド(S2)404は、明瞭にするために図示されていない。
【0036】
図4C~4Dの読み取りヘッド401は、
図4A~4Bの読み取りヘッド400と類似しているが、スピン発生器450はスピン検出の機能を果たし、本明細書ではスピン検出器450またはスピン検出層450と呼ばれ、電流リード線と電圧リード線とが逆になっており、その結果、生成されたスピン流が非磁性層406を通って流れる方向が逆になる。読み取りヘッド401では、入力電流リード線(I)が第1のシールド402および第2のシールド404に接続され、電圧リード線(V)がスピン検出器450に接続される。動作中、電流が読み取りヘッド401に印加されると、FL418からのスピン流(I
s)が発生し、読み取りセンサ440を横切って非磁性層406に流れ込む。スピン流は、読み取りセンサ440から非磁性層406を通ってスピン検出器450まで流れる。スピン検出器450を流れる垂直スピン流は、逆スピンホール効果により、スピン検出器450の側面(クロストラック方向)を横切る電気信号/電圧の発生を可能にする。データを読み取る際に自由層418がその磁化方向を回転させると、スピン流のスピン分極(I
s)が変化し、その結果、スピン検出器450を横切る出力電圧(V
out)が記録トラック上の磁気ビット情報を反映する。
【0037】
さらに、電流リード線(I)が第1のシールド402および第2のシールド404に接続され、電圧リード線(V)がスピン検出器450に接続される場合、非磁性層406は長方形の形状を有する。このような実施形態では、非磁性層406は、約10nm~約20nmの一貫した狭い幅456を有し、これは読み取りセンサ440のトラック幅(TW)に近い。
【0038】
図5A~9Bは、様々な実施形態による、それぞれ読み取りヘッド500、501、600、601、700、701、800、801、900の様々な実施形態を示す。各読み取りヘッド500、600、700、800、900は、個別に、
図4A~4Bの読み取りヘッド400であってもよい。各読み取りヘッド501、601、701、801は、個別に、
図4C~4Dの読み取りヘッド401であってもよい。各読み取りヘッド500、501、600、601、700、701、800、801、900は、個別に、
図2の読み取りヘッド211内であってもよい。各読み取りヘッド500、501、600、601、700、701、800、801、900は、個別に、
図1の磁気記録装置100の一部であってもよい。
図5A~9Bの側面は、X方向における第1および第2のシールド402、404の高さなど、縮尺通りに示されていない場合がある。さらに、各読み取りヘッド500、501、600、601、700、701、800、801、900の側面は、互いに組み合わせて、および/または
図4A~4Bの読み取りヘッド400および/または
図4C~4Dの読み取りヘッド401と組み合わせて使用できる。このように、読み取りヘッド400、401、500、501、600、601、700、701、800、801、900の様々な層および/または態様は、一貫した参照数字を有することができる。
【0039】
図5A~5Bは、一実施形態による磁気記録ヘッドの読み取りヘッド500を示す図である。
図5Aは、読み取りヘッド500の断面図を示し、
図5Bは、読み取りヘッド500のMFS図を示す。
【0040】
読み取りヘッド500は、第1のシールド402、第2のシールド404、非磁性層406、MFSに配置された読み取りセンサ540、およびMFSから後退したスピン発生器またはスピン発生構造550を備える。ノッチ516は、MFSから後退した第1のシールド402と非磁性層406との間に配置される。ノッチ516は、MFSから約0nm~約20nmの距離後退してよい。ノッチ516は、Y方向の厚さが約5nm~約20nm、X方向の高さが約5nm~約20nmである。誘電体層515は、MFSにおけるノッチ516の前方およびMFSから後退しており、ノッチ516の後方に配置されている。誘電体層515は、非磁性層406から第1のシールド402を離す。誘電体層515は、SiN、SiO
2、MgO、AlO、AlN、またはそれらの組み合わせで構成され得る。読み取りセンサ540は、非磁性層406の上に配置された第1のトンネルバリア層520と、第1のトンネルバリア層520の上に配置された自由層418と、自由層418の上に配置され、第2のシールド404と接触している、導電性材料で構成され得るキャップ層522とを備える。
図5Bに示すように、スピン軌道トルク(SOT)層510は、X方向およびZ方向に沿って、自由層418よりも大きな全体サイズを有する。自由層418の磁化(M)方向は動作中-Z方向であり、これはソフトバイアス(SB:Soft Bias)側シールド526の磁化方向と同じ方向である。
【0041】
図5Aに示すように、絶縁層514は、センサ540の背後にMFSから後退して配置されている。スピン発生器550は、絶縁層514に隣接して配置される。スピン発生器550は、非磁性層406の上に配置されたシード層508と、シード層508の上に配置されたSOT層510(SOT層がBiSbで構成される特定の実施形態では、本明細書ではBiSb層510と呼ぶことがある。)と、SOT層510の上に配置されたキャップ層512とを備える。キャップ層512は、例えば、Ru、NiFeGe、またはいくつかの酸化物材料などの非磁性、高抵抗率材料で構成され得る。いくつかの実施形態では、絶縁層514は、
図5Aに示されるように、キャップ層512の上およびスピン発生器550の後方に延在する。絶縁層514は、SiN、SiO
2、MgO、AlO、ALN、またはそれらの組み合わせで構成されてもよい。上述したように、第1の電圧リード線(V
-)は第1のシールド402に接続され、第2の電圧リード線(V
+)は、第1の読み取りセンサ540を横切る読み取り信号検出のために第2のシールド404に接続される。第1のシールド402、第2のシールド404、およびノッチ516は、それぞれ個別に、例えば、NiFe、NiFe/CoFe積層体、NiFe/NiFeCr積層体、またはNiFe/W積層体などの、ソフトバイアス材料と同様の磁性材料で構成されてもよい(ここで使用される「/」は、多層スタック内の各層を示す)。
【0042】
図5BのMFS図に示すように、読み取りヘッド500は、センサ540に隣接する第1のソフトバイアス(SB)側シールド524および第2のSB側シールド526をそれぞれさらに備える。第1および第2のSB側シールド524、526はそれぞれ、トラック(すなわち、
図5BのZ方向)を横切る適切な自由層バイアスのために、NiFe、CoFe、および他の磁性材料から個別に構成され得る。第1の電流リード線(I
+)および第2の電流リード線(I
-)は、スピン注入のためにSOT層510に接続される。
図4Aから、電流はSOT層510を通ってページに、すなわちZ方向に流れる。動作中、この面内(SOT層510の面内)電流が読み取りヘッド500に印加されると、スピン蓄積が発生し、その結果、スピンホール効果により非磁性層406にスピン流が発生する。このスピン流は、スピン発生器550から非磁性層406を通って読み取りセンサ540に流れる。読み取りセンサ540に流れるこのスピン流は、データを読み取る際に自由層418がその磁化方向を回転させると、センサ540を横切る電気信号の発生を可能にする。
【0043】
SOT層510は、Ta、Pt、W、Hfなどのスピン軌道結合の強い重金属で構成される。SOT層510は、BiSe、WTe、YBiPt、またはBiSbなどのトポロジカル絶縁材料で構成され得る。SOT層510は、(012)配向のBiSbで構成され得る。SOT層510は、アンドープBiSbまたはドープされたBiSbXで構成されてもよく、ここで、ドーパントは約at.10%未満であり、Xは、Biと容易に反応しない元素、例えば、B、N、Al、Si、Ti、V、Cr、Fe、Ni、Cu、Ge、Y、Zr、Ru、Mo、Ag、Hf、Ta、W、またはIrから抽出されるか、またはCuAg、CuNi、RuGeなどのような前述の元素の1つ以上との合金の組み合わせである。より一般的には、列挙したドーパントのいくつかは、BiSb以外の他のトポロジカル絶縁材料と共に使用できる。SOT層510は、約5nm~約20nmのY方向(例えば、ダウントラック方向)の厚さ558、約100nm~約1μmのX方向の高さ560(例えば、ストライプ高さ)、および約100nm未満のZ方向の幅562(例えば、クロストラック方向)を有する。
【0044】
テクスチャ(100)またはアモルファス・シード層を使用してテクスチャSOT層510(012)を成長させるために、多数の材料をシード層508として利用できる。材料群の1つであるグループAには、V、V3Al、Mn3Al、Nb、Mo、W、Ta、WTi50、NiAl、RhAlなどの体心立方(BCC)、または類似の格子定数を有するこれらの材料の合金組み合わせ、あるいはCr(約250℃以上で加熱)、RuAl、IrAl、CoAl、B2相、NiAl-B2相、CrMo(Moが、約20~50at.%)またはB2相、A2CrX(Xは、約10at.%であり、約250℃以上で加熱され、Ru、Ti、W、およびMoから選択される。)。
【0045】
グループAの材料は、後続の層にテクスチャリングを提供し、MgO(100)テクスチャリング層スタックと呼ばれることがある。一般的に言えば、タンタル、タングステン、チタンの合金のようなホウ素親和性の高い元素または合金を蒸着し、次にホウ素を含む磁性層を蒸着すると、コバルト鉄ホウ素またはコバルトホウ素のような非晶質磁性層材料が形成されるが、ホウ素は磁性コバルト鉄またはコバルト層を残して引き抜かれる。その層の上に、(100)テクスチャを持つMgOを形成することができる。MgO(100)を作る他の方法としては、加熱したクロムまたはルテニウムアルミニウムをテクスチャ状に成長させることが挙げられる。MgO(100)テクスチャ層スタックは、Hf、Ta、W、Ti、またはこれらの元素を含む合金の薄い高Bゲッタリング合金シード層の上にCoFeBまたはCoBの磁性ボロン合金を堆積させ、さらにその上にCoあるいはCoFeの磁性二重層と薄いMgOを堆積させることによっても製造できる。
【0046】
別の材料グループBは、FeO、CoO、NiO、ZrO、MgO、TiO、MgTiO、MnOなどの面心立方(FCC:Face Centered Cubic)酸化物材料を含む。別のグループCは、ScN、TiN、NbN、ZrN、HfN、TaN、VN、CrN、ScC、TiC、NbC、ZrC、HfC、TaC、WC、VC、W0.8Zr0.2CなどのFCC窒化物および炭化物を含む。グループCの材料は、成膜条件によってはアモルファスからナノ結晶の薄膜として成膜できる。グループCの材料の抵抗率は、100~200μΩ・cmである。
【0047】
別のグループDは、Fe2VAl、Cr2CoAl、CoTiSb、Mn2VSi、V2Al、[Mn0.5Co0.5]2VAl、[Mn0.75Co0.25]2VSi、CoMnNbAl、CoZrFeAl、Ti2MnAlなどの非磁性ホイスラー材料を含む。別の一つのグループEは、Co2MnSb、CoFeX、NiFeX、(Xは、Si、Al、Mn、Geのうちの1つ以上である。)CoFe、NiFe、Co2MnGe、CoMnSb、NiMnSb、Co2FeGe、Co2MnSn、Co2MnFeGeを含む、スピン分極が大きく、スピンホール層と混ざりにくい磁性合金またはホイスラー合金を用いた結晶性の高分極層である。もう一つのグループFは、強い(012)BiSbXテクスチャまたは成長を促進しないアモルファスの非磁性の高抵抗の電気的シャントブロック層を含む。これらは、SiO2、Al2O3、SiN、AlN、SiC、SiCrOx、NiX、FeX、およびCoXを含み、Xは、Fe、Co、Ni、Ta、Hf、W、Ir、Pt、Ti、Zr、N、Ru、Ge、および/またはBを含むこれらの元素の1つまたは複数であり得る。
【0048】
もう一つのグループGは、2.19Å~2.02Åのd間隔の範囲に最近接X線回折ピークを有する金属アモルファスまたはセラミックアモルファス材料を含む。このような材料は、グループA、D、またはEの非磁性材料および磁性材料を含み、これらの材料は、Cu、Ag、Ge、Al、Mg、Si、Mn、Ni、Co、Mo、Zr、Y、Bi、Hf、Ta、W、Ir、Pt、Ti、またはBの1つ以上の元素と積層または合金化される。これらは効果的に非磁性のアモルファス層を形成し、アモルファス材料を生成するか、またはa-Ge、a-NiPX合金(Xは、Ru、Rh、Y、Zr、Mo、Hf、Ta、W、Re、Pt、またはIrの1つである。)などのアモルファス材料から出発する。グループGはまた、a-Ge、a-NiPおよびCu、Ag、Ge、Al、Mg、Si、Mn、Ni、Co、Mo、Zr、Y、Bi、Hf、Ta、W、Ir、Pt、Ti、またはBの1つ以上の元素を有する、強いBiSb(012)テクスチャを促進するアモルファス/ナノ結晶の合金を含む。
【0049】
さらにもう一つのグループHは、アモルファスまたは結晶材料である高垂直磁気異方性(PMA:Perpendicular Magnetic Anisotropy)材料である。TbFeCo、TbFeB、Nd、Pr、Sm(Fe,Co)Bのような高いPMAを有するアモルファスの希土類遷移金属(RE-TM:Rare Earth Transition Metals)またはCoZrTaBのような重金属を使用できる。このCo/Pt、Co/Pd、CoFe/Pt、Co/Tb、またはCoFe/Tb(「/」は、層分離を示す。)の多層多結晶スタック、または高いKuを有するCoPt、CoPtCr、CoFePt、およびFePtのような単層PMA材料は、(012)テクスチャ成長のためにスピンホール層の隣りにアモルファスの高スピン分極層と共に使用できる。
【0050】
図5C~5Dは、一実施形態による磁気記録ヘッドの読み取りヘッド501を示す。
図5Cは、読み取りヘッド501の断面図を示し、
図5Dは、読み取りヘッド501のMFS図を示す。読み取りヘッド501において、非磁性層406は、
図4A~4Dに示され上述されたような矩形状であってもよい。
【0051】
読み取りヘッド501は、
図5A~5Bの読み取りヘッド500と同様であるが、電流リード線と電圧リード線とが逆になっている。読み取りヘッド501では、スピン注入のために、第1の電流リード線(I
+)が第2のシールド404に接続され、第2の電流リード線(I
-)が第1のシールド402に接続される。第1の電圧リード(V
-)および第2の電圧リード線(V
+)は、スピン検出器550を介した読み取り信号検出のためにSOT層510に接続される。
【0052】
図5Cから、電流は読み取りセンサ540および非磁性層406をX方向に流れる。動作中、電流が読み取りヘッド501に印加されると、スピン蓄積が発生するため、自由層418から非磁性層406にスピン流が注入され、非磁性層406に沿ってスピン流が発生する。スピン流は、非磁性層406を通って読み取りセンサ540を横切ってスピン検出器550に移動し、スピン流はSOT層510を通って面外(すなわちY方向)に流れる。スピン検出器550に流れるスピン流は、データを読み取る際に自由層418がその磁化方向を回転させると、Z方向に沿ってSOT層510を横切る電気信号の発生を可能にする。
【0053】
図6A~6Bは、別の実施形態による、磁気記録ヘッドの読み取りヘッド600を示す図である。
図6Aは、読み取りヘッド600の断面図を示し、
図6Bは、読み取りヘッド600のMFS図を示す。
【0054】
読み取りヘッド600は、
図5A~5Bの読み取りヘッド500に類似しているが、読み取りヘッド600は、ノッチ516を備えない。むしろ、誘電体層515は、第1のシールド402と非磁性層406との間に延在している。さらに、第1の電圧リード線(V
-)は、第1のシールド402の代わりに非磁性層406の背面に接続される。
【0055】
図6C~6Dは、一実施形態による磁気記録ヘッドの読み取りヘッド601を示す。
図6Cは、読み取りヘッド601の断面図を示し、
図6Dは、読み取りヘッド601のMFS図を示す。読み取りヘッド601において、非磁性層406は、
図4A~4Dに示され上述されたような矩形状であってもよい。
【0056】
読み取りヘッド601は、
図6A~6Bの読み取りヘッド600と同様であるが、電流リード線と電圧リード線とが逆になっている。読み取りヘッド601では、第1の電流リード線(I
+)が第2のシールド404に接続され、第2の電流リード線(I
-)がスピン注入用非磁性層406に接続される。第1の電圧リード線(V
-)および第2の電圧リード線(V
+)は、スピン検出器650を介した読み取り信号検出のためにSOT層510に接続される。
【0057】
動作中、電流が読み取りヘッド601に印加されると、スピン蓄積が発生するため、スピン流が発生し、センサ640から非磁性層406に流れ込む。スピン流は、非磁性層406を通って読み取りセンサ640を横切ってスピン検出器650に移動し、スピン流はSOT層510を通って面外(すなわちY方向)に流れる。スピン検出器650に流れるスピン流は、データを読み取る際に自由層418がその磁化方向を回転させる際の逆スピンホール効果により、SOT層510を横切る電気信号の発生を可能にする。
【0058】
図7A~7Bは、さらに別の実施形態による、磁気記録ヘッドの読み取りヘッド700を示す図である。
図7Aは、読み取りヘッド700の断面図を示し、
図7Bは、読み取りヘッド700のMFS図を示す。読み取りヘッド700は、
図5A~5Bの読み取りヘッド500と同様であるが、読み取りヘッド700のセンサ740およびスピン発生器750は、X方向およびY方向の両方において位置合わせされていない。
【0059】
読み取りヘッド700では、スピン発生器750が第1のシールド402の上に配置されている。スピン発生器750は、シールドノッチ702によってMFSから後退している。シールドノッチ702は、第1のシールド402の一部と見なすことができる。シールドノッチ702は、第1のシールド402および/またはノッチ516と同じ材料で構成されてもよい。第1の絶縁層715は、シールドノッチ702とスピン発生器750との間に配置される。第1の絶縁層715は、第1のシールド402とシード層508との間にも延在してもよい。ノッチ516は、シールドノッチ702の上に配置される。非磁性層406は、ノッチ516、スピン発生器750、および第1の絶縁層715の上に配置される。センサ740は、MFSにおいて非磁性層406の上に配置されている。第2の絶縁層714は、センサ740の背後で非磁性層406の上に配置されている。第1および第2の絶縁層715、714の一部は、
図7Bに示すように、MFSにおいて露出していてもよく、それぞれ個別に絶縁層514と同じ材料で構成されていてもよい。第1のSB側シールド524および第2のSB側シールド526は、MFSにおいてセンサ740に隣接して配置される。
【0060】
負電圧リード線(V
-)は第1のシールド402に接続され、正電圧リード線(V
+)は第2のシールド404に接続される。負電流リード線(I
-)および正電流リード線(I
+)は、スピン注入のためにSOT層510に接続される。電流は、SOT層510を通ってページ内(
図5Aに関して)、すなわちZ方向に流れる。動作中、この面内(SOT層510の面内)電流が読み出しヘッド700に印加されると、スピン蓄積が生じ、したがって、スピンホール効果により非磁性層406にスピン流が発生する。このスピン流は、スピン発生器750から非磁性層406を通って読み取りセンサ740に流れる。読み取りセンサ740に流れるこのスピン流は、データを読み取る際に自由層418がその磁化方向を回転させると、センサ740を横切る電気信号の発生を可能にする。
【0061】
図7C~7Dは、一実施形態による磁気記録ヘッドの読み取りヘッド701を示す図である。
図7Cは、読み取りヘッド701の断面図を示し、
図7Dは、読み取りヘッド701のMFS図を示す。読み取りヘッド701において、非磁性層406は、
図4A~4Dに示され上述されたような矩形状であってもよい。
【0062】
読み取りヘッド701は、
図7A~7Bの読み取りヘッド700と同様であるが、電流リード線と電圧リード線とが逆になっている。読み取りヘッド701では、第1の電流リード線(I
+)が第2のシールド404に接続され、第2の電流リード線(I
-)がスピン注入のために第1のシールド402に接続される。第1の電圧リード線(V
-)および第2の電圧リード線(V
+)は、スピン検出器750を介した読み取り信号検出のためにSOT層510に接続される。
【0063】
動作中、電流が読み取りヘッド701に印加されると、スピン蓄積が発生するため、スピン流がセンサ740から発生し、非磁性層406に流れ込む。スピン流は、非磁性層406を通って読み取りセンサ740を横切ってスピン検出器750に移動し、スピン流はSOT層510を通って面外(すなわち、Y方向)に流れる。スピン検出器750に流れるスピン流は、データを読み取る際に自由層418がその磁化方向を回転させる際の逆スピンホール効果により、SOT層510を横切る電気信号の発生を可能にする。
【0064】
図8A~8Bは、別の実施形態による磁気記録ヘッドの読み取りヘッド800を示す図である。
図8Aは、読み取りヘッド800の断面図を示し、
図8Bは、読み取りヘッド800のMFS図を示す。読み取りヘッド800は、
図5A~5Bの読み取りヘッド500と同様であるが、読み取りヘッド800は、第2のシード層808と、第2のSOT層810と、第2のキャップ層812とを備える。
【0065】
読み取りヘッド800において、第1のシールド402は、第1のシールド402とノッチ516との間のMFSに配置されたシールドノッチ802をさらに備える。シールドノッチ802は、第1のシールド402と同じ材料で構成されてもよい。第2のキャップ層812がシールドノッチ802の後方で第1のシールド402の上に配置され、第2のSOT層810が第2のキャップ層812の上に配置され、第2のシード層808が第2のSOT層810の上に配置される。第2のキャップ層812は、キャップ層512と同じ材料で構成されてもよい。非磁性層406は、第2のシード層808の上に配置される。第2の絶縁層814は、シールドノッチ802と、第2のキャップ層812、第2のSOT層810、および第2のシード層808との間に配置される。第2の絶縁層814は、絶縁層514と同様に、第1のシールド402と第2のキャップ層812との間、および第2のキャップ層812、第2のSOT層810、および第2のシード層808の背後に配置されてもよい。第2の絶縁層814は、第1の絶縁層514と同じ材料で構成されてよい。第2のSOT層810は、第1のSOT層510と同じ寸法(すなわち、
図5A~7BのSOT層510と同じ寸法)を有する。
【0066】
第1のシード層508は非磁性層406の上に配置され、第1のSOT層510は第1のシード層508の上に配置され、第1のキャップ層512は第1のSOT層510の上に配置される。第2のシールド404は、第1のキャップ層512の上に配置される。第1のキャップ層512は、第2のキャップ層812と同じ材料で構成されてもよく、第1のSOT層510は、第2のSOT層810と同じ材料で構成されてもよく、第1のシード層508は、第2のシード層808と同じ材料で構成されてもよい。第1のキャップ層512、第1のSOT層510、第1のシード層508、第1のシード層508と接触して配置された非磁性層406の一部、第2のシード層808、第2のSOT層810、および第2のキャップ層812は、集合的にスピン発生器850を形成する。
【0067】
第1の信号電圧リード線(V
-)はシールドノッチ802に接続され、第2の信号電圧リード線(V
+)は第2のシールド404に接続される。第1の負電流リード線(I
1-)および第1の正電流リード線(I
1+)が第2のSOT層810に接続され、第2の負電流リード線(I
2-)および第2の正電流リード線(I
2+)が第1のSOT層510に接続されている。第1の負電流リード線(I
1-)は第2の正電流リード線(I
2+)と隣り合って配置され、第1の正電流リード線(I
1+)は第2の負電流リード線(I
2-)と隣り合って配置される。動作中、第1の電流(I
1)が第2のSOT層810を通ってページの外(
図8Aに関して)、すなわちZ方向に流れ、第2の電流(I
2)が第1のSOT層510を通ってページの中(
図8Aに関して)、すなわち-Z方向に流れる。非磁性層406の両側に2つのSOT層を含むことにより、スピン発生器850から発生するスピン流の量、したがって非磁性層406へのスピン流は2倍になる。
【0068】
図8C~8Dは、一実施形態による磁気記録ヘッドの読み取りヘッド801を示す図である。
図8Cは、読み取りヘッド801の断面図を示し、
図8Dは、読み取りヘッド801のMFS図を示す。読み取りヘッド801において、非磁性層406は、
図4A~4Dに示され上述されたような矩形状であってもよい。
【0069】
読み取りヘッド801は、
図8A~8Bの読み取りヘッド800と同様であるが、電流リード線と電圧リード線が逆になっている。読み取りヘッド801では、第1の入力電流リード線(I
+)が第2のシールド404に接続され、第2の入力電流リード線(I
-)がスピン注入用のシールドノッチ802に接続される。第1の負電圧リード線(V
1-)および第1の正電圧リード線(V
1+)は、第2のSOT層810に接続され、第2の負電圧リード線(V
2-)および第2の正電圧リード線(V
2+)は、スピン検出器850を介した読み取り信号検出のために第1のSOT層510に接続される。第1の正電圧リード線(V
1+)は第2の負電圧リード線(V
2-)と隣り合って配置され、第1の負電圧リード線(V
1-)は第2の正電圧リード線(V
2+)と隣り合って配置される。第1の正電圧リード線(V
1+)および第2の負電圧リード線(V
2-)は、最終的な信号の読み出しが第1の負電圧リード線(V
1-)および第2の正電圧リード線(V
2+)で行われるように接続されている。
【0070】
動作中、入力電流が読み取りヘッド801に印加されると、スピン蓄積が発生するため、センサ840からスピン流が発生し、非磁性層406に流れ込む。スピン流は、読み取りセンサ840を横切って非磁性層406を通り、スピン検出器850まで移動する。その後、スピン流は、スピン流の半分が第2のSOT層810を通って下に流れ、スピン流の半分が第1のSOT層510を通って上に流れるように分割される(I
sと表示された矢印で示されるように)。スピン流は、各SOT層510、810を通って面外(すなわち、Y方向)に流れる。SOT層510、810に流れる垂直スピン流は、データを読み取る際に自由層418がその磁化方向を回転させる際に、逆スピンホール効果を介してSOT層510、810を横切る電気信号の生成を可能にする。2つに分割されたスピン流はY方向で反対に流れるため、
図8Dの電圧リード線V
2+/V
2-およびV
1+/V
1-で示されるように、生成される信号極性も反対になる。第1の正電圧リード線(V
1+)および第2の負電圧リード線(V
2-)は、最終的な信号が第1の負電圧リード線(V
1-)と第2の正電圧リード線(V
2+)で発生するように、一緒に接続されている。
【0071】
図9A~9Bは、さらに別の実施形態による、磁気記録ヘッドの読み取りヘッド900を示す図である。
図9Aは、読み取りヘッド900の断面図を示し、
図9Bは、読み取りヘッド900のMFS図を示す。読み取りヘッド900は、
図8A~8Bの読み取りヘッド800と同様であるが、シールドノッチ802を備えず、センサ940は、二重自由層(DFL:Dual Free Layer)構成のための第1の自由層418および第2の自由層918を備える。さらに、
図6A~7Bの読み取りヘッド600および700と同様に、読み取りヘッド900はノッチ516を備えない。
【0072】
読み取りヘッド900において、センサ940は、第1のシールド402の上に配置されたシード層920と、シード層920の上に配置された第2の自由層918と、第2の自由層918の上に配置された第2のトンネルバリア層922と、非磁性層406の上に配置された第1のトンネルバリア層520と、第1のトンネルバリア層520の上に配置された第1の自由層418と、第1の自由層418の上に配置されたキャップ層522とを備える。第2のトンネルバリア層922および第1のトンネルバリア層520と接触して配置された非磁性層406の一部も、センサ940の一部とみなすことができる。第2の自由層918は、第1の自由層418と同じ材料で構成されてもよい。
【0073】
第2の絶縁層914は、非磁性層406の下方のセンサ940とスピン発生器950との間に配置される。第2の絶縁層914は、第2のキャップ層812と第1のシールド402との間、ならびに第2のキャップ層812、第2のSOT層810、および第2のシード層808の背後に配置されてもよい。第2の絶縁層914は、絶縁層514と同じ材料で構成できる。第1および第2のトンネルバリア層520、922は、それぞれ同じ材料から構成されてもよい。シード層920およびキャップ層522は、同じ材料で構成されてもよい。
【0074】
第1および第2のSB側シールド524、526は、MFSにおいて第1の自由層418と隣り合って配置される。第3のSB側シールド924および第4のSB側シールド926は、MFSにおいて第2の自由層918と隣り合って配置される。第1、第2、第3および第4のSB側シールド524、526、924、926はすべて同じ材料で構成できる。第1のSB側シールド524は第3のSB側シールド924の上に配置され、第2のSB側シールド526は第4のSB側シールド926の上に配置される。第1のRu層925は、第1のSB側シールド524と第3のSB側シールド924との間に配置され、第2のRu層927は、第2のSB側シールド526と第4のSB側シールド926との間に配置される。第1のRu層925は、第1および第3のSB側シールド524、924の反強磁性結合を可能にするように調整され、第2のRu層927は、第2および第4のSB側シールド526、926の反強磁性結合を可能にするように調整される。第1および第2のSB側シールド524、526の磁化に対する第3および第4のSB側シールド924、926の磁化は、第1の自由層418および第2の自由層918がクロストラック方向(Z方向に沿って)において反対の磁化配向を有するように反対である。
【0075】
第1の信号電圧リード線(V-)は第1のシールド402に接続され、第2の信号電圧リード線(V+)は第2のシールド404に接続される。第1の負電流リード線(I1-)および第1の正電流リード線(I1+)が第2のSOT層810に接続され、第2の負電流リード線(I2-)および第2の正電流リード線(I2+)が第1のSOT層510に接続されている。第1の負電流リード線(I1-)は第2の正電流リード線(I2+)と隣り合って配置され、第1の正電流リード線(I1+)は第2の負電流リード線(I2-)と隣り合って配置される。
【0076】
動作中、第1の電流(I
1)が第2のSOT層810を通ってページの外側(
図9Aに関して)、すなわちZ方向に流れ、第2の電流(I
2)が第1のSOT層510を通ってページの内側(
図9Aに関して)、すなわち-Z方向に流れる。第2の自由層918の磁化方向はZ方向であり、第1の自由層418の磁化方向は-Z方向である。このように、第1の自由層418および第2の自由層918は、反平行な磁化方向を有する。スピン発生器950に2つのSOT層を含めることにより、スピン流は2倍になる。各自由層418、918から来る信号は、自由層の磁化と非磁性層406のスピン偏極(P)との間の相対角度によって決定される。センサ940に2つの自由層418、918を含めることで、生成される信号は2倍になる。
【0077】
MFSから離れた読み取りセンサに少なくとも1つのSOT層を含めることにより、上述の読み取りヘッドは、有効なスピン注入効率を1より大幅に大きくすることにより、より高いスピン流注入/分極を達成することができる。さらに、非磁性輸送層の台形形状により、スピン流がより集中し、MFSに配置された読み取りセンサでの信号出力が増加する。
【0078】
一実施形態では、読み取りヘッドは、第1のシールドと、第2のシールドと、第1のシールドと第2のシールドとの間に配置された非磁性層と、媒体対向面(MFS)において非磁性層と第2のシールドとの間に配置された、自由層を含むセンサと、非磁性層に隣接して配置された、MFSから第1の距離後退したスピン発生器とを備える。スピン発生器は、スピン軌道トルク(SOT)層を含み、第1の距離は、MFSから測定される自由層の高さよりも大きい。
【0079】
スピン発生器は、非磁性層と第2のシールドとの間に配置される。読み取りヘッドは、第1のシールドに接続された負電圧リード線と、第2のシールドに接続された正電圧リード線と、SOT層に接続された正電流リード線と、SOT層に接続された負電流リード線とをさらに備え、正電流リード線および負電流リード線は、クロストラック方向にSOT層を通る電流経路を提供するように位置合わせされる。読み取りヘッドは、非磁性層に接続された負電圧リード線と、第2のシールドに接続された正電圧リード線と、SOT層に接続された正電流リード線と、SOT層に接続された負電流リード線とをさらに備え、正および負電流リード線は、クロストラック方向にSOT層を通る電流経路を提供するように位置合わせされる。
【0080】
読み取りヘッドは、第1のシールドに接続された負電流リード線と、第2のシールドに接続された正電流リード線と、SOT層に接続された正電圧リード線と、SOT層に接続された負電圧リード線とをさらに備える。読み出しヘッドはさらに、非磁性層に接続された負電流リード線と、第2のシールドに接続された正電流リード線と、SOT層に接続された正電圧リード線と、SOT層に接続された負電圧リード線とを備える。SOT層はトポロジカル絶縁材料を含む。トポロジカル絶縁材料はBiSbである。非磁性層は、第1の部分および第2の部分を含み、第1の部分は第2の部分よりも大きな幅を有し、第1の部分はスピン発生器に隣接して配置され、第2の部分はセンサに隣接して配置される。スピン発生器は、非磁性層の上に配置されたシード層と、SOT層の上に配置されたキャップ層とをさらに備える。センサは、非磁性層の上に配置された第1のトンネルバリア層と、自由層の上に配置されたキャップ層とをさらに備える。スピン発生器は、非磁性層と第1のシールドとの間に配置される。磁気記録ヘッドは、読み取りヘッドを備える。磁気記録装置は、磁気記録ヘッドを備える。
【0081】
別の実施形態では、磁気記録装置は、読み取りヘッドを備え、読み取りヘッドは、シールドノッチを含む第1のシールドと、第2のシールドと、シールドノッチと第2のシールドとの間に配置された非磁性層と、媒体対向面(MFS)において非磁性層と第2のシールドとの間に配置された、自由層を含むセンサと、MFSから後退したスピン発生器とを備える。スピン発生器は、第1のシールドと非磁性層との間に配置された第1スピン軌道トルク(SOT)層と、非磁性層と第2のシールドとの間に配置された第2SOT層を含む。
【0082】
第1のSOT層はシールドノッチに隣接して配置され、第2のSOT層は自由層に隣接して配置される。非磁性層は、センサとスピン発生器との間に延在し、約100nm~約300nmの高さを有する。読み取りヘッドは、第1のSOT層に接続された第1の負電流リード線と、第1のSOT層に接続された第1の正電流リード線と、第2のSOT層に接続され、第1の負電流リード線と隣り合って配置された第2の正電流リード線と、第2のSOT層に接続され、第1の正電流リード線と隣り合って配置された第2の負電流リード線と、をさらに備える。
【0083】
読み取りヘッドは、第1のSOT層に接続された第1の負電圧リード線と、第1のSOT層に接続された第1の正電圧リード線と、第2のSOT層に接続され、第1の負電圧リード線と隣り合って配置された第2の正電圧リード線と、第2のSOT層に接続され、第1の正電圧リード線と隣り合って配置された第2の負電圧リード線と、をさらに備える。読み取りヘッドは、シールドノッチと非磁性層との間に配置された非磁性ノッチをさらに備える。スピン発生器は、第1のシールドと第2のシールドとの間に配置される。磁気記録装置は、磁気記録ヘッドを備える。
【0084】
さらに別の実施形態では、磁気記録デバイスは、読み取りヘッドを備え、読み取りヘッドは、第1のシールドと、第2のシールドと、第1のシールドと第2のシールドとの間に配置された非磁性層と、媒体対向面(MFS)において第1のシールドと第2のシールドとの間に配置された、第1の自由層および第2の自由層を含むセンサと、MFSから後退したスピン発生器を備える。スピン発生器は、第1のシールドと非磁性層との間に配置された第1のスピン軌道トルク(SOT)層、および非磁性層と第2のシールドとの間に配置された第2のSOT層を備える。
【0085】
読み取りヘッドはさらに、第1のSOT層に接続された第1の負電流リード線と、第1のSOT層に接続された第1の正電流リード線と、第2のSOT層に接続され、第1の負電流リード線と隣り合って配置された第2の正電流リード線と、第2のSOT層に接続され、第1の正電流リード線と隣り合って配置された第2の負電流リード線と、を備える。読み取りヘッドはさらに、第1のSOT層に接続された第1の負電圧リード線と、第1のSOT層に接続された第1の正電圧リード線と、第2のSOT層に接続され、第1の負電圧リード線と隣り合って配置された第2の正電圧リード線と、第2のSOT層に接続され、第1の正電圧リード線と隣り合って配置された第2の負電圧リード線と、を備える。
【0086】
第1の自由層は、第1のシールドと非磁性層との間に配置され、第2の自由層は、非磁性層と第2のシールドとの間に配置される。読み取りヘッドは、MFSにおいて第1の自由層と隣り合って配置された第1のソフトバイアス側シールドと、MFSにおいて第1の自由層と隣り合って配置された第2のソフトバイアス側シールドと、MFSにおいて第2の自由層と隣り合って配置された第3のソフトバイアス側シールドと、MFSにおいて第2の自由層と隣り合って配置された第4のソフトバイアス側シールドと、第1のソフトバイアス側シールドと第3のソフトバイアス側シールドとの間に配置された第1のRu層と、第2のソフトバイアス側シールドと第4のソフトバイアス側シールドとの間に配置された第2のRu層とをさらに備える。第1の自由層は、第1の絶縁層によって第1のSOT層から離され、第2の自由層は、第2の絶縁層によって第2のSOT層から離される。第1のSOT層および第2のSOT層は、それぞれ個別に、約5nm~約20nmの厚さ、約100nm~約1μmの高さ、および約100nm未満の幅を有する。非磁性層は、センサとスピン発生器との間に延在し、非磁性層は、約100nm~約300nmの高さを有し、非磁性は、第1の部分および第2の部分を含み、第1の部分は、第2の部分よりも大きな幅を有し、第1の部分は、スピン発生器に隣接して配置され、第2の部分は、センサに隣接して配置される。スピン発生器は、第1のシールドと第2のシールドとの間に配置される。磁気記録装置は、磁気記録ヘッドを備える。
【0087】
上記は、本開示の実施形態に向けられたものであるが、本開示の他のさらなる実施形態は、その基本的範囲から逸脱することなく考案することができ、その範囲は、後に続く特許請求の範囲によって決定される。
【外国語明細書】