(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025003938
(43)【公開日】2025-01-14
(54)【発明の名称】スピン軌道-スピン軌道ロジック
(51)【国際特許分類】
H10D 48/40 20250101AFI20250106BHJP
【FI】
H01L29/82 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】26
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024097248
(22)【出願日】2024-06-17
(31)【優先権主張番号】63/521,306
(32)【優先日】2023-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】18/645,189
(32)【優先日】2024-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京科学大学
(71)【出願人】
【識別番号】504056130
【氏名又は名称】ウェスタン デジタル テクノロジーズ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】ファム ナム ハイ
(72)【発明者】
【氏名】クアン レイ
(72)【発明者】
【氏名】リウ シャオユン
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン アール ヨーク
(72)【発明者】
【氏名】チャーニー ファン
(72)【発明者】
【氏名】高野 公史
(57)【要約】 (修正有)
【課題】スピン軌道-スピン軌道(SO-SO)ロジックセルを利用する集積回路を提供する。
【解決手段】集積回路は、複数のSO-SOロジックセル250を備え、各SO-SOロジックセルは、第1スピン軌道トルク(SOT1)層204と、第2スピン軌道トルク(SOT2)層214と、SOT1層とSOT2層との間に配置された強磁性層(FM)208と、を備える。各SO-SOロジックセルは、SOT1層の平面の面内にある第1電流経路I
inputと、SOT2層の平面に対して垂直である第2電流経路I
supplyと、を備え、第2電流経路は強磁性層に延びる。集積回路はさらに、各SOTデバイスに接続された共通の電圧源と、複数のSOTデバイスの隣接するSOTデバイスの間に配置され、隣接するSOTデバイス同士を接続する1つまたは複数の相互接続を備える。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デバイスであって、
第1スピン軌道トルク(SOT1)層と、
第2スピン軌道トルク(SOT2)層と、
前記SOT1層と前記SOT2層との間に配置された強磁性層と、を備え、
前記デバイスは、前記SOT1層の平面の面内にある第1電流経路と、強磁性層に延びるように構成された、前記SOT2層の平面に対して垂直な第2電流経路と、のために構成される、
デバイス。
【請求項2】
前記デバイスは、さらに、前記第1電流経路において入力電流を受けるように構成され、
前記SOT1層は、前記入力電流による前記強磁性層の磁化方向に影響を与えるように構成されている、
請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記デバイスは、さらに、前記第2電流経路において供給電流を受け、前記SOT2層を介して、前記強磁性層の磁化方向に応答する出力電流を生成するように構成されている、
請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記強磁性層と前記SOT2層との間に配置されたMgO層をさらに備える、
請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
約8nmから約20nmの間の幅を有する、
請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記SOT1層および前記SOT2層は、それぞれ個別にアンドープBiSbを含む、
請求項1のデバイス。
【請求項7】
前記SOT1層および前記SOT2層が、それぞれ個別にドープされたBiSbXからなり、ドーパントは、約10at.%未満であり、
Xは、B、N、Al、Si、Ti、V、Ni、Cu、Ge、Y、Zr、Ru、Mo、Ag、Hf、Re、W、およびIrからなる群から選択される材料である、
請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
前記第1SOT層および前記第2SOT層は、それぞれ個別に(012)配向を有する、
請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
前記第1SOT層および前記第2SOT層は、それぞれ個別にYPtBiを含む、
請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
請求項1に記載のデバイスを含む、
集積回路。
【請求項11】
第1スピン軌道トルク層と、第1出力端子に結合された第2スピン軌道トルク層と、前記第1スピン軌道トルク層と前記第2スピン軌道トルク層との間に配置された強磁性層と、を備える第1スピン軌道トルク(SOT)デバイスと、
第1入力端子に結合された第1スピン軌道トルク層と、第2スピン軌道トルク層と、当該第1スピン軌道トルク層と当該第2スピン軌道トルク層との間に配置された強磁性層と、を備える第2SOTデバイスと、
前記第1SOTデバイスの前記第1出力端子と前記第2SOTデバイスの前記第1入力端子との間に配置された第1相互接続と、を備える、
集積回路。
【請求項12】
前記第1SOTデバイスは、前記強磁性層と前記第2スピン軌道トルク層との間に配置されたMgO層をさらに備え、
前記第2SOTデバイスは、前記強磁性層と前記第2スピン軌道トルク層との間に配置されたMgO層をさらに備える、
請求項11に記載の集積回路。
【請求項13】
前記第2SOTデバイスの前記第2スピン軌道トルク層は、第2出力端子に結合され、
前記デバイスは、
第2入力端子に結合された第1スピン軌道トルク層を備える第3SOTデバイスと、
第2スピン軌道トルク層と、
前記第1スピン軌道トルク層と前記第2スピン軌道トルク層の間に配置された強磁性層と、をさらに備え、
第2相互接続が、前記第2SOTデバイスの前記第2出力端子と前記第3SOTデバイスの前記第2入力端子との間に配置される、
請求項12に記載の集積回路。
【請求項14】
前記第1、第2、第3SOTデバイスのための共通の電圧源と、前記電圧源と前記第1、第2、第3SOTデバイスとの間のクロッキング制御素子と、をさらに備える、
請求項13に記載の集積回路。
【請求項15】
前記第1SOTデバイスの前記第1スピン軌道トルク層は、第1接地端子に接続され、
前記第2SOTデバイスの前記第2スピン軌道トルク層は、第2接地端子に接続される、
請求項11に記載の集積回路。
【請求項16】
前記第1SOTデバイスの前記第1スピン軌道トルク層、前記第1SOTデバイスの前記第2スピン軌道トルク層、前記第2SOTデバイスの前記第1スピン軌道トルク層、および前記第2SOTデバイスの前記第2スピン軌道トルク層は、それぞれ個別にBiSbを含む、
請求項11に記載の集積回路。
【請求項17】
前記第1SOTデバイスおよび前記第2SOTデバイスは、それぞれ個別に約8nmから約20nmの間の幅を有する、
請求項11に記載の集積回路。
【請求項18】
前記第1SOTデバイスは、
前記第1スピン軌道トルク層の平面の面内にある第1電流経路と、
前記強磁性層に延びるように構成された、前記第2スピン軌道トルク層の平面に対して垂直な第2電流経路と、のために構成され、
前記第2SOTデバイスは、
前記第1スピン軌道トルク層の平面の面内にある第1電流経路と、
前記強磁性層に延びるように構成された、前記第2スピン軌道トルク層の平面に対して垂直な第2電流経路と、のために構成された、
請求項11に記載の集積回路。
【請求項19】
前記第1SOT層および前記第2SOT層は、それぞれ個別にYPtBiを含む、
請求項11に記載の集積回路。
【請求項20】
複数のスピン軌道トルク(SOT)デバイスを備え、各SOTデバイスは、
第1スピン軌道トルク(SOT1)層と、
第2スピン軌道トルク(SOT2)層と、
前記SOT1層と前記SOT2層との間に配置された強磁性層と、
前記強磁性層と前記SOT2との間に配置されたMgO層と、を備え、
各SOTデバイスは、
前記SOT1層の平面の面内にある第1電流経路と、前記強磁性層に延びるように構成された、前記SOT2層の平面に対して垂直な第2電流経路と、のために構成され、
共通の電圧源が、各SOTデバイスに接続され、
1つまたは複数の相互接続が、前記複数のSOTデバイスの隣接するSOTデバイスの間に配置され、前記隣接するSOTデバイス同士を接続する、
集積回路。
【請求項21】
各SOTデバイスは、さらに、前記第1電流経路において入力電流を受けるように構成され、
前記SOT1層は、前記入力電流による前記強磁性層の磁化方向に影響を与えるように構成される、
請求項20に記載の集積回路。
【請求項22】
各SOTデバイスは、さらに、前記第2電流経路において供給電流を受け、前記SOT2層を介して、前記強磁性層の磁化方向に応答する出力電流を生成するように構成されている、
請求項20に記載の集積回路。
【請求項23】
前記第1SOT層および前記第2SOT層は、それぞれ個別にYPtBiを含む、
請求項20に記載の集積回路。
【請求項24】
ニューラルネットワークノードへの入力を受け入れるように構成され、入力相互接続に結合された第1スピン軌道トルク層と、出力相互接続に結合された第2スピン軌道トルク層と、第1スピン軌道トルク層と第2スピン軌道トルク層との間に配置され、重みを符号化するように構成された強磁性層と、を備える第1スピン軌道トルク(SOT)デバイスと、
ニューラルネットワークノードへの入力を受け入れるように構成され、入力相互接続に結合された第1スピン軌道トルク層と、出力相互接続に結合された第2スピン軌道トルク層と、前記第1スピン軌道トルク層と前記第2スピン軌道トルク層との間に配置され、重みを符号化するように構成された強磁性層と、を備える第2SOTデバイスと、を備え、
前記第1SOTデバイスおよび前記第2SOTデバイスの前記出力相互接続は、合計出力相互接続に結合される、
集積回路。
【請求項25】
第3SOTデバイスをさらに備え、
前記第3SOTデバイスは、
前記合計出力相互接続に結合された第1スピン軌道トルク層と、
前記第3SOTデバイスのための出力相互接続に結合された第2スピン軌道トルク層と、
前記第1スピン軌道トルク層と前記第2スピン軌道トルク層との間に配置され、活性化関数のしきい値を符号化するように構成された強磁性層と、を備える、
請求項24に記載の集積回路。
【請求項26】
前記第1SOT層および前記第2SOT層は、それぞれ個別にYPtBiを含む、
請求項24に記載の集積回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2023年6月15日に出願された米国仮特許出願63/521,306の利益を主張するものであり、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示の実施形態は、一般に、スピン軌道-スピン軌道ロジックを利用する集積回路に関する。
【背景技術】
【0003】
関連技術の説明
過去数十年にわたり、集積回路における機能の微細化は、成長し続ける半導体産業の原動力となってきた。微細化により、半導体チップの限られた領域で機能ユニットの集積度を高めることができる。例えば、トランジスタ・サイズの縮小は、チップ上にメモリデバイスやロジックデバイスの数を増やすことを可能にし、大容量製品の製造に貢献する。
【0004】
磁気電気スピン軌道(MESO:Magneto Electric Spin Orbital)構造は、例えば相補型金属-酸化膜半導体(CMOS:Complementary Metal Oxide Semiconductor)トランジスタに比べてスイッチングに必要な電圧が少なくとも10倍低く、エネルギー効率がはるかに高いため、新しい論理素子として最近提案され、使用されている。しかしながら、MESO構造は製造が難しく、適切なバイアスをかけるのも難しい。MESO構造のバイアスが不適切な場合、デバイスの各部分間で電流と電圧を制御することができない。
【0005】
さらに、MESO構造は入力と出力とで異なるメカニズムを使用する。入力段は磁気電気効果の素子、典型的にはBiFeO3のようなマルチフェロイック材料を用いて電荷からスピンへの変換を行い、出力段は逆スピンホール効果のようなスピン軌道結合を用いてスピンから電荷への変換を行う。したがって、入力段と出力段とを分離する必要があり、MESOはより大きな面積を消費する。
【0006】
さらに、入力段のマルチフェロイック材料であるBiFeO3は、強誘電極性のスイッチングしきい値電圧のバラツキが大きい。例えば、厚さ20nmのBiFeO3層は、スイッチング電圧が0.15Vから1.5Vまでバラツキがある。ウェーハスケールでのスイッチングしきい値電圧のこのような大きな変動は、集積回路には好ましくない。
【0007】
そのため、当技術分野では半導体ロジックの改良が求められている。
【発明の概要】
【0008】
本開示は、一般に、スピン軌道-スピン軌道(Spinorbit-Spinorbitであり、以下「SO-SO」と省略する。)ロジックを利用する集積回路に関する。集積回路は、複数のSO-SOロジックセルを備え、各SO-SOロジックセルは、第1スピン軌道トルク(SOT1)層と、第2スピン軌道トルク(SOT2)層と、SOT1層とSOT2層との間に配置された強磁性層とを備える。各SO-SOロジックセルは、SOT1層の平面の面内にある第1電流経路と、SOT2層の平面に対して垂直である第2電流経路と、のために構成され、第2電流経路は強磁性層に延びるように構成される。集積回路はさらに、各SOTデバイスに接続された共通の電圧源と、複数のSOTデバイスの隣接するSOTデバイスの間に配置された1つまたは複数の相互接続とを備え、1つまたは複数の相互接続は、隣接するSOTデバイス同士を接続する。
【0009】
一実施形態では、デバイスは、第1スピン軌道トルク(SOT1)層と、第2スピン軌道トルク(SOT2)層と、SOT1層とSOT2層との間に配置された強磁性層と、を備え、デバイスは、SOT1層の平面の面内にある第1電流経路と、SOT2層の平面に対して垂直である第2電流経路と、を有するように構成され、第2電流経路は、強磁性層に延びるように構成される。
【0010】
別の実施形態では、集積回路(IC)は、第1スピン軌道トルク層と、第1出力端子に結合された第2スピン軌道トルク層と、第1スピン軌道トルク層と第2スピン軌道トルク層との間に配置された強磁性層と、を備える第1スピン軌道トルク(SOT)デバイスと、第1入力端子に結合された第1スピン軌道トルク層と、第2スピン軌道トルク層と、第1スピン軌道トルク層と第2スピン軌道トルク層との間に配置された強磁性層と、備える第2SOTデバイスと、第1SOTデバイスの第1出力端子と第2SOTデバイスの第1入力端子との間に配置された第1相互接続とを備える。
【0011】
さらに別の実施形態では、集積回路(IC)は、複数のスピン軌道トルク(SOT)デバイスと、各SOTデバイスに接続された共通の電圧源と、複数のSOTデバイスの隣接するSOTデバイスの間に配置され、隣接するSOTデバイス同士を接続する1つまたは複数の相互接続と、を備える。各SOTデバイスは、第1スピン軌道トルク(SOT1)層と、第2スピン軌道トルク(SOT2)層と、SOT1層とSOT2層との間に配置された強磁性層と、強磁性層とSOT2層との間に配置されたMgO層と、を備える。各SOTデバイスは、SOT1層の平面の面内にある第1電流経路と、SOT2層の平面に対して垂直であり、強磁性層に延びるように構成された第2電流経路と、のために構成される。
【0012】
別の実施形態では、集積回路(IC)は、ニューラルネットワークノードへの入力を受け入れるように構成され、入力相互接続に結合された第1スピン軌道トルク層と、出力相互接続に結合された第2スピン軌道トルク層と、第1スピン軌道トルク層と第2スピン軌道トルク層との間に配置され、重みを符号化するように構成された強磁性層と、を備える第1スピン軌道トルク(SOT)デバイスと、ニューラルネットワークノードへの入力を受け入れるように構成され、入力相互接続に結合された第1スピン軌道トルク層と、出力相互接続に結合された第2スピン軌道トルク層と、第1スピン軌道トルクと第2スピン軌道トルク層との間に配置され、重みをエンコードするように構成された強磁性層と、を備える第2SOTデバイスと、を備え、第1SOTデバイスおよび第2SOTデバイスの出力相互接続は、合計出力相互接続に結合される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本開示の上述の特徴を詳細に理解することができるように、上記で簡単に要約された本開示のより具体的な説明は、添付図面に例示される実施形態を参照することによって行うことができる。しかしながら、添付図面は、本開示の典型的な実施形態のみを図示しており、したがって、本開示は、他の同様に有効な実施形態を認めることができるため、その範囲を限定するものとみなされないことに留意されたい。
【
図1A】
図1Aは、従来の電気磁気スピン軌道(MESO)構造を示している。
【
図1B】
図1Bは、
図1AのMESO構造を構成する従来のMESOトランジスタにおけるバイアスの問題を示している。
【
図2A】
図2Aは、一実施形態によるスピン軌道-スピン軌道(SO-SO)ロジックセルを示す。
【
図2B】
図2Bは、一実施形態による、
図2AのSO-SOロジックセルを含むSO-SOロジックデバイスを示す。
【
図3】
図3は、一実施形態による、
図2BのSO-SOロジックデバイスの出力電流密度対デバイス幅のグラフを示す。
【
図4】
図4は、一実施形態による、
図2BのSO-SOロジックデバイスのデバイス幅に対するロジック・セル当たりの総エネルギー消費のグラフを示す。
【
図5】
図5は、ニューラルネットワークの例を示す。
【
図6】
図6は、一実施形態による、ニューロンノードのMAC(Multiply- Accumulate)演算を実行するように構成されたSO-SOロジックデバイスを示す。
【
図7】
図7は、一実施形態による、ニューロンノードの活性化関数を実行するように構成されたSO-SOロジックデバイスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
理解を容易にするために、図に共通する同一の要素を指定するために、可能な限り同一の参照数字が使用されている。ある実施形態に開示された要素は、具体的に説明することなく、他の実施形態に有益に利用され得るとする。
【0015】
以下では、本開示の実施形態について言及する。しかしながら、本開示は、特定の記載された実施形態に限定されないことが理解されるべきである。その代わりに、異なる実施形態に関連するか否かにかかわらず、以下の特徴および要素の任意の組み合わせが、本開示を実施および実践するためとする。さらに、本開示の実施形態は、他の可能な解決策に対する、および/または従来技術に対する利点を達成し得るが、特定の利点が所与の実施形態によって達成されるか否かは、本開示を限定するものではない。したがって、以下の態様、特徴、実施形態および利点は、単に例示であり、請求項(複数可)に明示的に記載されている場合を除き、添付の請求項の要素または限定とはみなされない。同様に、「本開示」への言及は、本明細書において開示される任意の発明的主題の一般化として解釈されず、請求項において明示的に記載される場合を除き、添付の請求項の要素または限定とはみなされない。
【0016】
本開示は、一般に、スピン軌道-スピン軌道(SO-SO)ロジックを利用する集積回路に関し、強磁性層が論理状態を符号化するために使用され、ロジックセルの入力(書き込み)および出力(読み出し)の両方がスピン軌道の機構に基づく。集積回路は、複数のSO-SOロジックセルを備え、各SO-SOロジックセルは、第1スピン軌道トルク(SOT1)層と、第2スピン軌道トルク(SOT2)層と、SOT1層とSOT2層との間に配置された強磁性層とを備える。各SO-SOロジックセルは、SOT1層の平面の面内にある第1電流経路と、SOT2層の平面に対して垂直である第2電流経路と、を有するように構成され、第2電流経路は強磁性層に延びるように構成される。集積回路はさらに、各SOTデバイスに接続された共通の電圧源と、複数のSOTデバイスの隣接するSOTデバイスの間に配置され、隣接するSOTデバイス同士を接続する1つまたは複数の相互接続とを備える。
【0017】
図1Aは、従来の磁気電気スピン軌道(MESO)構造150を示す図である。
図1Bは、
図1Aの1つまたは複数のMESO構造150を備える従来のMESOトランジスタ100を示す。
【0018】
従来のMESO構造150は、電流入力(Ic(入力))用の第1相互接続152を備える。第1相互接続152は、磁気電気材料154が第1相互接続152上に-z方向に積層されるように、磁気電気材料154に結合される。磁気電気材料154は、ナノ磁石156が磁気電気材料154上に-z方向に積層されるように、ナノ磁石または強磁性体156に結合されている。ナノ磁石156はy方向に延びており、ナノ磁石156は-z方向に第1接触部164に結合され、z方向にスピン注入層158に結合されている。スピン注入層158は、スピン注入層158がスピン軌道結合スタック160上に積層されるように、スピン軌道結合スタック160に結合される。スピン軌道結合スタック160は、次に、x方向の第2相互接続162に結合され、第2相互接続は、電流出力用(Ic(出力))である。スピン軌道結合スタック160はさらに、z方向において第2接触部166に結合される。第1接触部164および第2接触部166は、電子機器および電源に接続されている。第2接触部166はさらにグランドに接続されている。
【0019】
MESO構造150では、入力電流(I
c(入力))が第1相互接続152を介して供給され、磁気電気材料154に結合され、入力電流をナノ磁石156の磁化方向を切り替える磁気に変換する。ナノ磁石156の方向は、MESO構造150のオン/オフ状態を表す。ナノ磁石156の状態を読み出すために、供給電流(I
supply)がナノ磁石156に垂直に印加され、スピン注入層158によってスピン軌道結合スタック160にスピン偏極電流が注入される。スピン軌道結合スタック160は、スピン偏極電流を電荷電流に変換し、第2相互接続162に送られる電流出力(I
c(出力))を形成する。この場合、出力は入力と反転する。MESO構造150(
図1BのMESO構造150a)の出力は、第2MESO構造150(
図1BのMESO構造150b)の入力に接続され、
図1Bに示すように、複数のデバイスが配置されて様々な論理回路が構築される。なお、簡略化のため、第2MESO構造150bについては、供給電流経路および関連する接触部164、166を図示していない。
【0020】
図1BのMESOトランジスタ100に示すように、第1MESO構造150aのスピン軌道結合スタック160は第1電位点170を有し、第2MESO構造150bのナノ磁石156は第2電位点168を有する。第1電位点170の電位は、第2電位点168の電位と同じでなければならない。第1点170および第2点168の電位が同じでない場合、MESOトランジスタ100内で電流および電圧を制御することができない。このように、MESOトランジスタ100のバイアスは複雑である。
【0021】
さらに、MESO構造は入力と出力とで異なるメカニズムを使用する。入力段は磁気電気素子、典型的にはBiFeO3のようなマルチフェロイック材料を用いて電荷からスピンへの変換を行い、出力段は逆スピンホール効果のようなスピン軌道結合を用いてスピンから電荷への変換を行う。したがって、入力段と出力段とを分離する必要があり、MESOはより大きな面積を消費する。
【0022】
さらに、入力段のマルチフェロイック材料であるBiFeO3は、強誘電極性のスイッチングしきい値電圧のバラツキが大きい。例えば、厚さ20nmのBiFeO3層のスイッチング電圧は、0.15Vから1.5Vまでのバラツキがある。ウェーハスケールでのスイッチングしきい値電圧のこのような大きなバラツキは、集積回路には好ましくない。
【0023】
上述したように、MESO構造の入力部分は、変換のために磁気電気効果に依存している(MESOの「ME」部分)。対照的に、本開示は、一般に、スピン軌道-スピン軌道(SO-SO)ロジックを利用する集積回路に関し、強磁性層が論理状態を符号化するために使用され、ロジックセルの入力(書き込み)および出力(読み出し)の両方がスピン軌道に基づく機構に基づく。
図2Aは、一実施形態によるスピン軌道-スピン軌道(SO-SO)ロジックセル250を示す図である。
図2Bは、一実施形態による、
図2Aの1つまたは複数のSO-SOロジックセル250a、250b、250cを備える集積回路またはSO-SOロジックデバイス200を示す。SO-SOロジックセル250の様々な層は縮尺通りに描かれておらず、例示のみを目的としている。SO-SOロジックセルは、本明細書ではSOTデバイスと呼ばれることがある。
【0024】
いくつかの実施形態では、SO-SOロジックセル250は、シード層202と、シード層202上に配置された第1スピン軌道トルク(SOT)層204(SOT1)と、第1SOT層204上に配置された第1中間層206と、第1中間層206上に配置された強磁性(FM:Ferromagnetic)層208と、FM層208上に配置されたMgO層210と、MgO層210上に配置された第2中間層212と、第2中間層212上に配置された第2SOT層214(SOT2)と、第2SOT層214上に配置されたバッファ層216と、およびバッファ層216上に配置されたキャップ層218と、を備える。第2SOT層214は、相互接続220a(
図2Bに示す)に結合され、相互接続220aは、第2SO-SOロジックセル250b(
図2Bに示す)の第1SOT層204に結合される。このように、複数のSO-SOロジックセル250a~250cが配置され、様々な論理回路が構築される。シード層202、中間層206および212、MgO層210およびキャップ層218は、いくつかの実施形態では任意である。これらの層は、SOT層204、214の特性を最適化するように調整することもできる(例えば、デバイス全体の効率を向上させる有効スピンホール角を増加させる)。
【0025】
動作時、SO-SOロジックセルはハイブリッドデバイスであり、書き込み経路にはスピンホール効果(SHE:Spin Hall Effect)を、読み出し経路には逆SHE(iSHE:inversive Spin Hall Effect)を利用する。論理状態を「書き込む」ために、入力電流(I
input)が面内電流(CIP:Current In Plane)電流として第1SOT層204に印加され、SHEの発生を介してFM層208のスイッチングを行う。FM層208の状態を「読み出す」ために、供給電流(I
supply)がSO-SOロジックセル250を介して垂直に、第2SOT層214に面直電流(CPP:Current Perpendicular to Plane)として印加される。FM層208を通る電流はスピン分極し、そのようなスピン偏極電流は第2SOT層214に注入され、iSHEを介して、スピン偏極電流の大きさに比例する電気電圧が第2SOT層214に誘導される。このような電圧ポテンシャルは、負荷が接続されている場合、電流出力(I
output)を形成する電荷電流を生成する。このように、I
outputは、論理状態を符号化するFM層208の磁化を反映する。このように、SO-SOロジックセル250は、
図1A~1BのMESO構造150やMESOトランジスタ100のような磁気電気効果を利用するのではなく、FM層208に符号化された論理状態の「書き込み」および「読み出し」の両方にスピン軌道の効果を利用する。
【0026】
上述したように、SO-SO素子は電荷-スピン変換とスピン-電荷変換に同じスピン軌道相互作用メカニズムを使用する。したがって、入力段および出力段を一緒に積み重ねることができ、デバイスのフットプリントを節約し、集積密度を高めることができる。
【0027】
上述したように、SO-SOロジックセル250は、第1SOT層204の平面の面内にある第1電流経路(I
input)と、第2SOT層214の平面に対して垂直である第2電流経路(I
supply)とを有するように構成され、また、第2電流経路は、FM層208に延びるように構成される。いくつかの実施形態では、第2電流経路は、第1SOT層204にも延びるように構成される。例えば、データを書き込むとき、SO-SOロジックデバイス200は、第1電流経路で入力電流(
図2Bに示すV
in[N]と記された端子で、Nは相互接続可能な個々のロジックセルを示す。)を受けるように構成され、第1SOT層204は、入力電流によりFM層208の磁化方向に影響を与えるように構成される。FM層208の磁化によって符号化された論理状態を読み出すとき、SO-SOロジックデバイス200は、第2電流経路で供給電流(I
supply)を受け、第2SOT層214を介して、FM層208の磁化方向に応答する出力電流(I
output)(
図2Bに示すV
out[N])を生成するように構成される。
【0028】
シード層202は、以下の層の組み合わせを含む多層構造であってよい:(1)NiTa、NiW、NiFeTa、NiFeWなどの1つまたは複数の非晶質調整層、(2)RuAlテクスチャリング層、(3)MgO層、および(4)NixRu(1-x)Al(ここで、xは0から1までである)合金、任意の結晶性またはナノ結晶性の非磁性元素、または2.93Åから3.03Åの範囲の等価BCCまたはB2格子定数を有する合金材料であって、SOTと反応せず、重金属を含まないもの。いくつかの実施形態では、シード層202は、NiFeTa/RuAl/NiFeGe、NiTa/NiFeGe、NiTa/NiFeGe/Ge、NiFeTa/RuAl/CuGe、NiTa/NixRu(1-x)Al/NiGeなどのような、アモルファス/結晶移行層とシード層の組み合わせで構成されたテクスチャシード層であってもよい(「/」は層分離を示す)。
【0029】
第1中間層206、第2中間層212、およびバッファ層216は、それぞれ個別に、NixRu(1-x)Al(ここで、xは0から1までである。)合金、任意の結晶性もしくはナノ結晶性の非磁性元素、またはSOTと反応せず、重金属を含まない、2.93Åから3.03Åの範囲の等価BCCもしくはB2格子定数を有する合金材料で構成されてよい。いくつかの実施形態では、第1中間層206、第2中間層212、およびバッファ層216はそれぞれ個別に、Ge、NiFeGe、NiGe、CuGe、Ge/NiAl、Ge/RuAl、RuGe、MgO/Ge、MgO/NiFeGe、NiAlGe、またはRuAlGeなどの非晶質/結晶質層または層の組み合わせで構成されてよい。
【0030】
キャップ層218は、MgO、第1中間層206、第2中間層212、またはバッファ層216の任意の材料、非晶質の高抵抗材料、またはMgOとNiFeGeまたは他の高抵抗材料の多層スタックのようなそれらの層の組み合わせで構成されてよい。キャップ層218は、TiO、TiN、MgO、MgOTiOのような複合材料、NiFeGe、またはGeのような高抵抗結晶性材料または非晶質材料の組み合わせで構成されたテクスチャキャップ層218であってもよい。FM層208は、CoFe、CoFeMnGe、CoFeGe、CoFeAl、CoFeSiなどのような、bccまたはホイスラーFM材料で構成されてよい。
【0031】
いくつかの実施形態では、第1SOT層204および第2SOT層214は、それぞれ個別にトポロジカル絶縁体材料で構成される。SOT層214は、BiSb、トポロジカル絶縁体、YPtBiのようなトポロジカルハーフホイスラー合金、および弱く酸化された重金属のうちの少なくとも1つから構成され得る。いくつかの実施形態では、トポロジカル絶縁体材料は、最高のスピンホール角(電流-スピン変換効率)を達成するために(012)配向を有するBiSbであり得る。BiSb材料は、52という大きな巨大スピンホール角および61という大きな逆スピンホール角を有することが示されており、したがって、第1SOT層204および第2SOT層214に適用することができる。さらに、BiSb層は、適切なシード層または中間層を使用することによりエピタキシャル成長させることができるため、ウェハスケールでのFM層のスイッチング電流密度のバラツキを大幅に低減できる。第1SOT層204および第2SOT層214は、拡散および粗さを最小限に抑えるために、適切なバッファ層216および/または中間層206、212と接触してそれぞれ個別に配置される。第1SOT層204および第2SOT層214は、それぞれ個別に、ドーパントが約10at.%未満であるアンドープBiSbまたはドープBiSbXで構成されてよい。ここで、Xは、B、N、Al、Si、Ti、V、Ni、Cu、Ge、Y、Zr、Ru、Mo、Ag、Hf、W、Re、IrのようなBiと容易に反応しない元素から選ぶか、またはCuAg、CuNi、RuGeのような前述の元素の1つ以上との合金の組み合わせから選ぶ。第1、第2SOT層204、214の材料の高スピンホール角の利点は、FM層208に符号化された論理状態または値の書き込みおよび読み出しの両方に利用される。
【0032】
図2Bは、一実施形態による、
図2Aの1つ以上のSO-SOロジックセル250a、250b、250cを備えるSO-SOロジックデバイス200を示す。SO-SOロジックデバイス200は、3つのSO-SOロジックセル250a、250b、250cを図示しているが、SO-SOロジックデバイス200は、任意の数のSO-SOロジックセル250を備えてよく、それらは、図示されたもの以外の配置で相互接続されてもよい。さらに、SO-SOロジックセル250a、250b、250cの各々の1つ以上の層は、明瞭にする目的だけのために図示されていない。SO-SOロジックデバイス200は、本明細書では集積回路(IC)と呼ばれることがある。
【0033】
第1SO-SOロジックセル250aは、第1相互接続220aに結合された第1SOT層204aと、第1SOT層204a上に配置されたFM層208aと、FM層208a上に配置されたMgO層210aと、MgO層210a上に配置された第2SOT層214aとを備える。第1相互接続220aは、第1電圧入力(Vin1)を第1SOT層204aの入力端子226aに供給する。第2相互接続220bは、出力端子228aで第2SOT層214aに結合され、第1電圧出力(Vout1)を提供する。第2相互接続220bはまた、第2SO-SOロジックセル250bの第1SOT層204bに入力端子226bで結合され、第2電圧入力(Vin2)を提供する。第1SOT層204aはさらに、接地端子222aに接続されている。
【0034】
同様に、第2SO-SOロジックセル250bは、第1SOT層204b上に配置されたFM層208bと、FM層208b上に配置されたMgO層210bと、MgO層210b上に配置された第2SOT層214bとを備える。第2SOT層214bは、出力端子228bで第3相互接続220cに結合され、第2電圧出力(Vout2)を提供する。第3相互接続220cは、第3電圧入力(Vin3)を供給する入力端子226cにおいて、第2SO-SOロジックセル250cの第1SOT層204cに結合されている。第2SOT層214bはさらに、接地端子222bに接続されている。
【0035】
第3SO-SOロジックセル250cは、第1SOT層204cに隣接して配置されたFM層208cと、FM層208c上に配置されたMgO層210cと、MgO層210c上に配置された第2SOT層214cとを備える。第2SOT層214cは、出力端子228cで第4相互接続220dに結合され、第3電圧出力(Vout3)の両方を提供する。第4相互接続220dは、入力端子(図示せず)において第4SO-SOロジックセル(図示せず)の第1SOT層に結合される。第1SOT層204cはさらに、接地端子222cに接続されている。
【0036】
各SO-SOロジックセル250a、250b、250cは、約5nm~約20nmのx方向の幅224を有し、これは、利用可能な半導体産業のプロセスノードに基づく論理設計規則によって定義される。第1、第2、第3相互接続220a、220b、220cは、それぞれ個別に、例えばCuで構成される。第1、第2、第3相互接続220a、220b、220cは、それぞれ個別に、約5nm~約100nmのx方向の幅を有し、これも密度要件に基づく論理設計ルールによって定義される。
【0037】
各SO-SOロジック・セル250a、250b、250cには電源電圧(VDD)が接続されている。クロッキング制御素子またはクロック230は、SO-SOロジックセル250a、250b、250cのそれぞれと電源電圧との間に接続されてもよい。各SO-SOロジックセル250a、250b、250c(本明細書ではSO-SOロジックセル250と総称する)のFM層208a、208b、208cと第2SOT層214a、214b、214cとの間に配置されたMgO層210a、210b、210cは、第1、第2、第3電圧出力を高め、さらに、第1、第2、第3電圧出力が次のSO-SOロジックセルの電圧入力よりも高く(小さく)なるようにする。また、MgO層210a、210b、210cは、出力電流による純スピン電流の逆流を防止するのに役立つ。
【0038】
各第1SOT層204a、204b、204c(本明細書では総称して第1SOT層204と呼ぶ。)および各第2SOT層214a、214b、214c(本明細書では総称して第2SOT層214と呼ぶ。)は、隣接するSO-SOロジックセルにおいて、それらの中間電位が同じになるように正しくバイアスされ、電圧出力と電圧入力との間に予期せぬ電流が生じないようにする。
【0039】
各SO-SOロジックセル250a、250b、250cについて、3つのエネルギー項が存在する:ピラーを流れる電流によるエネルギーと、各SOT層204、214を流れる電流によるエネルギーである。巨大スピンホール角(52)と逆スピンホール角(61)を持つBiSb(012)のようなトポロジカル絶縁体材料が第1、第2SOT層204、214に利用される場合、ハイブリッドSO-SOロジックセル250は約1×106A/cm2を超える電流密度に達することができ、これは次段のSO-SOロジックセル入力を駆動するのに十分高い電流密度である。この状況では、FM層のSOTスイッチングにかかる消費電力は、ピラーにかかるエネルギーよりも大幅に小さくなる。総エネルギーは基本的に一定で、主にトランジスタ駆動電流によるピラーのエネルギーによって決まる。SO-SOロジックデバイス200の約50aJの推定エネルギーは、約300aJの推定エネルギーを有する従来のCMOSトランジスタのそれよりも小さい。このように、SO-SOロジックデバイス200は、エネルギー消費を大幅に削減する。
【0040】
図3は、一実施形態による、
図2BのSO-SOロジックデバイス200の電流密度(A/cm
2)対デバイス幅(nm)のグラフ300を示す。示されるように、各SO-SOロジックセル250が約8nmから約20nmの間の幅を有する場合、SO-SOロジックデバイス200は、約3×10
5A/cm
2と1×10
6A/cm
2の間の電流密度出力を達成し、これは次段またはSO-SOロジックセル入力を駆動するのに十分高い。
【0041】
図4は、一実施形態による、
図2BのSO-SOロジックデバイス200の、ロジック・セルあたりの総エネルギー(J)対デバイス幅(nm)のグラフ400を示す。線420は、各SOT層204、214からの総エネルギーを個別に表す。線410は、ピラーのエネルギーと総消費エネルギーを合わせたものである(ここでの線は重なっており、実質的に同じであることから、総エネルギーは主にトランジスタ駆動電流によるピラーのエネルギーによって決まることがわかる)。図示のように、各SO-SOロジックセル250の幅が約8nm~約20nmの場合、SO-SOロジックデバイス200は約50aJ(1aJ=10
-18J、Y軸の単位)の推定エネルギーを達成し、これは従来のCMOSトランジスタのエネルギーよりも大幅に小さい。
【0042】
図5~
図7は、ニューラルネットワーク構成におけるSO-SOロジックデバイスの例示的な実施形態を示す。
図5はニューラルネットワーク500の例を示す。ニューラル・ノード501が示されており、重みW
1・・・W
nを乗じることによって入力X
1・・・X
nの和をとる。これはMAC(Multiply-Accumulate)演算とも呼ばれる。このMAC演算の他に、ノードはMAC出力を活性化関数に与え、ノードの最終出力を提供する。活性化関数は、ReLU(Rectified Linear Unit)活性化関数のようなステップ状関数であってもよく、ニューラルネットワークの次の層のノード(複数可)への出力を生成する。いくつかの実施形態における出力は、MAC演算の結果がステップ状関数のしきい値を満たすかどうか(活性化されるか、活性化されないか)に依存する。
【0043】
MAC演算および活性化機能は、ニューロンノードの2つのコア機能を構成し、
図6~
図7は、SO-SOロジックデバイスを使用して各機能を実装する方法を示している。
図6は、一実施形態による、MAC演算を実行するように構成されたSO-SOロジックデバイスを示す。この例では、SO-SOロジックデバイス601~603のそれぞれは、
図2A~2Bで先に説明したように製造および構成することができる。ここで、入力バイアス電流I
1-n(
図2AのI
supplyに対応する)は、
図5のニューラルネットワーク入力X
1-n、すなわちニューロンノードへの入力値を表す。SO-SOロジックデバイス601~603のFM層における磁化状態は、ニューラルネットワークの重み(
図5のW
1-n)を符号化する。磁化(M)状態は、FM層内の磁壁の位置に応じて、+M(正)、-M(負)、またはその間の任意のアナログ値のいずれかになり得る。いくつかの実施形態では、磁化状態は、Control
1-n(
図2AのI
inputに対応)としてラベル付けされた入力電流を介して、設定電流パルス幅または振幅によって制御することができる。このようにして、各SO-SOロジックデバイス601~603は、入力X
n×重みW
nの論理乗算演算を実行する。さらに示すように、デバイス601~603の結果(Y
1-n)は、次に相互接続604で合計される。したがって、合計出力電流はY=Σ(X
iW
i)となり、
図5に示すMAC動作を表す。このように、SO-SOロジックデバイスは、MAC動作を実行するように一緒に構成することができる。
【0044】
図7は、一実施形態による、ニューロンノードの活性化機能を実行するように構成されたSO-SOロジックデバイスを示す。この図は、
図6の続きを示しており、合計された合計出力電流Y=Σ(X
iW
i)が出力SO-SOロジックデバイス701に供給され、一実施形態では、そのFM層のスイッチングのための急激なしきい値電流密度を有する。これは、磁化スイッチング機構がコヒーレントスイッチングとなるように、SO-SOロジックデバイス710のFM層のサイズを小さくすることによって実現することができる。したがって、この出力SO-SOロジックデバイス701は、
図5に示すステップ状の伝達関数として論理的に機能する。さらに、出力SO-SOロジックデバイス701の出力バイアス電流は、出力Zが次の段を駆動するのに十分高くなるように設定することができる。この最終出力Zは、次のニューロン層に提供される。このようにして、SO-SOロジックデバイスは、活性化関数動作を実行するように構成することができる。
図6-7は、複数のSO-SOロジックデバイスを構成して、ニューラルネットワークのニューロンノードの機能を実行する方法を示している。
【0045】
このように、複数のSO-SOロジックセルから構成され、各SO-SOロジックセルが第1SOT層と第2SOT層とから構成されるSO-SOロジックデバイスを利用することにより、SO-SOロジックデバイスは、エネルギー消費を抑えながら論理演算を行うことができる半導体デバイスとして有効に機能する。さらに、SO-SOロジックデバイスの簡素化された構造は、低エネルギー消費を維持しながら、スケーリング上の利点を有し、SO-SOロジックデバイスを量産しやすく、電圧のバイアスも容易である。
【0046】
一実施形態では、デバイスは、第1スピン軌道トルク(SOT1)層と、第2スピン軌道トルク(SOT2)層と、SOT1層とSOT2層との間に配置された強磁性層と、を備え、デバイスは、SOT1層の平面の面内にある第1電流経路と、SOT2層の平面に対して垂直である第2電流経路と、のために構成され、第2電流経路は、強磁性層に延びるように構成される。
【0047】
デバイスはさらに、第1電流経路で入力電流を受けるように構成され、SOT1層は、入力電流による強磁性層の磁化方向に影響を与えるように構成される。デバイスはさらに、第2電流経路で供給電流を受け、SOT2層を介して、強磁性層の磁化方向に応答する出力電流を生成するように構成される。デバイスは、強磁性層と第2スピン軌道トルク層との間に配置されたMgO層をさらに備える。デバイスは、約8nmから約20nmの間の幅を有する。第1SOT層および第2SOT層は、それぞれ個別にアンドープBiSbを含む。第1SOT層および第2SOT層は、それぞれ個別にドープされたBiSbXを含み、ここで、ドーパントは約10at.%未満であり、Xは、B、N、Al、Si、Ti、V、Ni、Cu、Ge、Y、Zr、Ru、Mo、Ag、Hf、Re、W、およびIrからなる群から選択される材料である。第1SOT層および第2SOT層は、それぞれ個別に(012)配向を有する。集積回路は、デバイスを備える。第1SOT層および第2SOT層は、それぞれ個別にYPtBiを含む。
【0048】
別の実施形態では、集積回路(IC)は、第1スピン軌道トルク層と、第1出力端子に結合された第2スピン軌道トルク層と、第1スピン軌道トルク層と第2スピン軌道トルク層との間に配置された強磁性層と、を備える第1スピン軌道トルク(SOT)デバイスと、第1入力端子に結合された第1スピン軌道トルク層と、第2スピン軌道トルク層と、第1スピン軌道トルク層と第2スピン軌道トルク層との間に配置された強磁性層と、を備える第2SOTデバイスと、第1SOTデバイスの第1出力端子と第2SOTデバイスの第1入力端子との間に配置された第1相互接続とを備える。
【0049】
第1SOTデバイスは、強磁性層と第2スピン軌道トルク層との間に配置されたMgO層をさらに備え、第2SOTデバイスは、強磁性層と第2スピン軌道トルク層との間に配置されたMgO層をさらに備える。第2SOTデバイスの第2スピン軌道トルク層は、第2出力端子に結合され、デバイスは、第2入力端子に結合された第1スピン軌道トルク層と、第2スピン軌道トルク層と、第1スピン軌道トルク層とスピン軌道トルク層との間に配置された強磁性層とを備える第3SOTデバイスと、第2SOTデバイスの第2出力端子と第3SOTデバイスの第2入力端子との間に配置された第2相互接続と、をさらに備える。第1SOT層および第2SOT層は、それぞれ個別にYPtBiを含む。
【0050】
ICはさらに、第1、第2、第3SOTデバイスの共通の電圧源と、電圧源と第1、第2、第3SOTデバイスとの間のクロッキング制御素子とを備える。第1SOTデバイスの第1スピン軌道トルク層は、第1接地端子に接続され、第2SOTデバイスの第2スピン軌道トルク層は、第2接地端子に接続される。第1SOTデバイスの第1スピン軌道トルク層、第1SOTデバイスの第2スピン軌道トルク層、第2SOTデバイスの第1スピン軌道トルク層、および第2SOTデバイスの第2スピン軌道トルク層は、それぞれ個別にBiSbを含む。第1SOTデバイスおよび第2SOTデバイスは、それぞれ個別に約8nmから約20nmの間の幅を有する。第1SOTデバイスは、第1スピン軌道トルク層の平面の面内にある第1電流経路と、第2スピン軌道トルク層の平面に対して垂直である第2電流経路と、のために構成され、第2電流経路は、強磁性層に延びるように構成される。第2SOTデバイスは、第1スピン軌道トルク層の平面の面内にある第1電流経路と、第2スピン軌道トルク層の平面に対して垂直な第2電流経路と、のために構成され、第2電流経路は、強磁性層に延びるように構成される。
【0051】
さらに別の実施形態では、集積回路(IC)は、複数のスピン軌道トルク(SOT)デバイスと、各SOTデバイスに接続された共通の電圧源と、複数のSOTデバイスの隣接するSOTデバイスの間に配置され、隣接するSOTデバイス同士を接続する1つまたは複数の相互接続と、を備える。各SOTデバイスは、第1スピン軌道トルク(SOT1)層と、第2スピン軌道トルク(SOT2)層と、SOT1層とSOT2層との間に配置された強磁性層と、強磁性層とSOT2層との間に配置されたMgO層と、を備える。各SOTデバイスは、SOT1層の平面の面内である第1電流経路と、SOT2層の平面に対して垂直であり、強磁性層に延びるように構成された第2電流経路と、のために構成される。
【0052】
各SOTデバイスはさらに、第1電流経路で入力電流を受けるように構成され、SOT1層は、入力電流による強磁性層の磁化方向に影響を与えるように構成される。各SOTデバイスはさらに、第2電流経路で供給電流を受け、SOT2層を介して、強磁性層の磁化方向に応答する出力電流を生成するように構成される。第1SOT層および第2SOT層は、それぞれ個別にYPtBiを含む。
【0053】
別の実施形態では、集積回路(IC)は、ニューラルネットワークノードへの入力を受け入れるように構成され、入力相互接続に結合された第1スピン軌道トルク層と、出力相互接続に結合された第2スピン軌道トルク層と、第1スピン軌道トルク層と第2スピン軌道トルク層との間に配置され、重みを符号化するように構成された強磁性層と、を備える第1スピン軌道トルク(SOT)デバイスと、ニューラルネットワークノードへの入力を受け入れるように構成され、入力相互接続に結合された第1スピン軌道トルク層と、出力相互接続に結合された第2スピン軌道トルク層と、第1スピン軌道トルク層と第2スピン軌道トルク層との間に配置され、重みをエンコードするように構成された強磁性層と、を備える第2SOTデバイスと、第1SOTデバイスおよび第2SOTデバイスの出力相互接続は、合計出力相互接続に結合される。
【0054】
ICは、第3SOTデバイスをさらに備え、第3SOTデバイスは、合計出力相互接続に結合された第1スピン軌道トルク層と、第3SOTデバイスのための出力相互接続に結合された第2スピン軌道トルク層と、第1スピン軌道トルク層と第2スピン軌道トルク層との間に配置され、活性化関数のしきい値を符号化するように構成された強磁性層と、を備える。第1SOT層および第2SOT層は、それぞれ個別にYPtBiを含む。
【0055】
上記は、本開示の実施形態に向けられたものであるが、本開示の他のさらなる実施形態は、その基本的範囲から逸脱することなく考案することができ、その範囲は、後に続く特許請求の範囲によって決定される。
【外国語明細書】