(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025003943
(43)【公開日】2025-01-14
(54)【発明の名称】調整可能誘導-容量タンク回路に基づく液位検出
(51)【国際特許分類】
G01F 23/263 20220101AFI20250106BHJP
【FI】
G01F23/263
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024135188
(22)【出願日】2024-08-14
(62)【分割の表示】P 2023016567の分割
【原出願日】2023-02-07
(31)【優先権主張番号】17/887,658
(32)【優先日】2022-08-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.JAVA
(71)【出願人】
【識別番号】506391864
【氏名又は名称】インストゥルメンテーション ラボラトリー カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ヘバート,リード
(72)【発明者】
【氏名】ニュートン,ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】メリル,レン
(57)【要約】
【課題】調整可能誘導-容量タンク回路に基づく液位検出を提供する。
【解決手段】装置は、検出回路のインダクタンス-キャパシタンス(LC)回路104のキャパシタンスの少なくとも一部を提供するよう構成されたプローブ108を備え、LC回路のキャパシタンスは、生化学分析システム100内のプローブ108と液体118の表面122の間の距離に依存する。装置は、プローブ108を移動させるよう構成された移動機構110を備える。装置は、移動機構110にプローブ108を液体118に対して移動させること、検出回路104の出力信号の1つ又は複数の特徴であって、LC回路のキャパシタンスに依存する1つ又は複数の特徴を測定すること、出力信号の1つ又は複数の特徴に基づいて、プローブ108と液体118の表面122との間の接触を検出することを含む動作を実行するよう構成された回路構成を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置であって、
検出回路のインダクタンス-キャパシタンス(LC)回路のキャパシタンスの少なくとも一部を提供するよう構成されたプローブであって、前記LC回路の前記キャパシタンスが、生化学分析システム内の前記プローブと液体の表面との間の距離に依存する、プローブ、
前記プローブを移動させるよう構成された移動機構、及び
回路構成であって、
前記移動機構に前記プローブを前記液体に対して移動させること、
前記検出回路の出力信号の1つ又は複数の特徴であって、前記LC回路の前記キャパシタンスに依存する1つ又は複数の特徴を測定すること、及び
前記出力信号の前記1つ又は複数の特徴に基づいて、前記プローブと前記液体の前記表面との間の接触を検出すること
を含む動作を実行するよう構成された回路構成
を備える装置。
【請求項2】
前記LC回路が、調整可能LCタンク回路を含み、任意選択により、前記LCタンク回路が、前記検出回路内の前記プローブに加えて、インダクタ及びコンデンサを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記プローブと前記液体の前記表面との間の前記接触が、前記プローブの遠位端と前記液体の前記表面との間の接触を含む、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記検出回路がバンドパスフィルタ回路を備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記液体が1mS/cm未満のイオン伝導率を有し、任意選択により、前記液体が脱イオン水を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記動作が、前記1つ又は複数の特徴に基づいて、前記プローブが気泡と接触しているか否かを特定することを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
(a)前記出力信号の前記1つ又は複数の特徴を測定することが、
特定の周波数である入力信号を前記検出回路に提供することと、
前記出力信号の振幅を前記出力信号の前記1つ又は複数の特徴の少なくとも一部として測定することであって、前記特定の周波数は、(i)1MHzから10MHz、又は(ii)前記検出回路の共振周波数の5%以内である、測定することと
を含むか、又は
(b)前記出力信号が正弦波信号を含み、前記出力信号の前記1つ又は複数の特徴を測定することが、
前記出力信号を整流することと、
前記整流された出力信号の1つ又は複数の特徴を特定することと
を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記出力信号の前記1つ又は複数の特徴を測定することは、前記1つ又は複数の特徴におけるステップを識別することを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記動作が、
前記出力信号をデジタル化すること、及び
前記デジタル化された出力信号の周波数ドメイン表現に基づいて、前記1つ又は複数の特徴を測定すること
を含み、任意選択により、前記動作が、
前記周波数ドメイン表現を処理して干渉信号を除外すること
を含み、任意選択により、前記周波数ドメイン表現を処理することが、
前記デジタル化された出力信号のうち、前記検出回路に提供された入力信号の周波数と合致する周波数を有する成分を特定すること
を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記1つ又は複数の特徴が、前記出力信号の振幅を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記移動機構に前記プローブを前記液体に対して移動させることが、
前記移動機構に前記プローブを前記液体の前記表面の平面に平行な第一の方向に移動させること、及び
前記移動機構に前記プローブを前記液体の前記表面の前記平面に垂直な第二の方向に前記液体に向かって移動させること
を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
インダクタンス-キャパシタンス(LC)回路を含む検出回路のキャパシタンスの少なくとも一部を提供するよう構成されたプローブであって、前記LC回路の前記キャパシタンスが、当該プローブと参照構造との間の距離に依存する、プローブ、
前記参照構造、
前記プローブを移動させるよう構成された移動機構、及び
回路構成であって、
前記移動機構に前記プローブを前記参照構造に対して移動させること、
前記検出回路の出力信号の1つ又は複数の特徴であって、前記LC回路の前記キャパシタンスに依存する1つ又は複数の特徴を測定すること、及び
前記出力信号の前記1つ又は複数の特徴に基づいて、前記プローブと前記参照構造との間の前記距離を特定すること
を含む動作を実行するよう構成された回路構成
を備える装置。
【請求項13】
検出回路のキャパシタンスの少なくとも一部を提供するよう構成されたプローブであって、前記検出回路の前記キャパシタンスは、生化学分析システム内の当該プローブと液体の表面との間の距離に依存する、プローブ、
前記プローブを移動させるよう構成された移動機構、及び
回路構成であって、
前記移動機構に前記プローブを前記液体に対して移動させること、
前記検出回路の共振周波数の5%以内の周波数を有する入力信号を前記検出回路内に提供すること、
前記検出回路の出力信号の1つ又は複数の特徴であって、前記検出回路の前記キャパシタンスに依存する1つ又は複数の特徴を測定すること、及び
前記出力信号の前記1つ又は複数の特徴に基づいて、前記プローブと前記液体の前記表面との間の接触を検出すること
を含む動作を実行するよう構成された回路構成
を備える装置。
【請求項14】
液体サンプル分析システム内のプローブと液体の表面との間の接触を検出する方法であって、
請求項1から11又は13のいずれか一項に記載の装置を提供すること、
前記移動機構に前記プローブを前記液体に対して移動させること、
任意選択により、前記検出回路の共振周波数の5%以内の周波数を有する入力信号を前記検出回路内に提供すること、
前記検出回路の出力信号の1つ又は複数の特徴であって、前記検出回路又は前記LC回路の前記キャパシタンスに依存する1つ又は複数の特徴を測定すること、及び
前記出力信号の前記1つ又は複数の特徴に基づいて、前記プローブと前記液体の前記表面との間の接触を検出すること
を含む方法。
【請求項15】
液体サンプル分析システム内の参照構造の存在及び/又はプローブと参照構造との間の距離を検出する方法であって、
請求項12に記載の装置を提供すること、
前記移動機構に前記プローブを前記参照構造に対して移動させること、
前記検出回路の出力信号の1つ又は複数の特徴であって、前記LC回路の前記キャパシタンスに依存する1つ又は複数の特徴を測定すること、
前記出力信号の前記1つ又は複数の特徴に基づいて、前記参照構造の前記存在及び/又は前記プローブと前記参照構造との間の前記距離を特定すること
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
[0001] 本開示は、概して、液位検出に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
[0002] 自動アッセイマシン及び凝固分析装置等の科学的及び医用サンプル分析器は、液体混合及び転送作業を実行する。結果として得られる測定値の正確さは、サンプル、試薬、溶剤又は他の液体の体積等、液体体積の正確な把握に依存する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
概要
[0003] 本開示の幾つかの態様は、装置を説明する。この装置は、検出回路のインダクタンス-キャパシタンス(LC)回路のキャパシタンスの少なくとも一部を提供するよう構成されたプローブを含み、LC回路のキャパシタンスは、生化学分析システム内のプローブと液体の表面との間の距離に依存する。装置は、プローブを移動させるよう構成された移動機構を含む。装置は、移動機構にプローブを液体に対して移動させることと、検出回路の出力信号の1つ又は複数の特徴であって、LC回路のキャパシタンスに依存する1つ又は複数の特徴を測定することと、出力信号の1つ又は複数の特徴に基づいて、プローブと液体の表面との間の接触を検出することとを含む動作を実行するよう構成された回路構成を含む。
【0004】
[0004] 本明細書に記載のこの及び他の装置は、少なくとも以下の特徴のいずれか1つ又は複数を有することができる。
【0005】
[0005] 幾つかの実装形態において、LC回路は、調整可能LCタンク回路を含む。
【0006】
[0006] 幾つかの実装形態において、LCタンク回路は、検出回路内のプローブに加えて、インダクタ及びコンデンサを含む。
【0007】
[0007] 幾つかの実装形態において、プローブと液体の表面との間の接触は、プローブの遠位端と液体の表面との間の接触を含む。
【0008】
[0008] 幾つかの実装形態において、検出回路は、バンドパスフィルタ回路を含む。
【0009】
[0009] 幾つかの実装形態において、液体は、1mS/cm未満のイオン伝導率を有する。
【0010】
[0010] 幾つかの実装形態において、液体は、脱イオン水を含む。
【0011】
[0011] 幾つかの実装形態において、動作は、1つ又は複数の特徴に基づいて、プローブが気泡と接触しているか否かを特定することを含む。
【0012】
[0012] 幾つかの実装形態において、出力信号の1つ又は複数の特徴を測定することは、特定の周波数のものである入力信号を検出回路に提供することと、出力信号の振幅を出力信号の1つ又は複数の特徴の少なくとも一部として測定することとを含む。
【0013】
[0013] 幾つかの実装形態において、特定の周波数は、1MHzから10MHzである。
【0014】
[0014] 幾つかの実装形態において、特定の周波数は、検出回路の共振周波数の5%以内である。
【0015】
[0015] 幾つかの実装形態において、出力信号の1つ又は複数の特徴を測定することは、1つ又は複数の特徴におけるステップを識別することを含む。
【0016】
[0016] 幾つかの実装形態において、出力信号は、正弦波信号を含み、出力信号の1つ又は複数の特徴を測定することは、出力信号を整流することと、整流された出力信号の1つ又は複数の特徴を特定することとを含む。
【0017】
[0017] 幾つかの実装形態において、動作は、出力信号をデジタル化することと、デジタル化された出力信号の周波数ドメイン表現に基づいて、1つ又は複数の特徴を測定することとを含む。
【0018】
[0018] 幾つかの実装形態において、動作は、周波数ドメイン表現を処理して干渉信号を除外することを含む。
【0019】
[0019] 幾つかの実装形態において、周波数ドメイン表現を処理することは、デジタル化された出力信号のうち、検出回路に提供された入力信号の周波数と合致する周波数を有する成分を特定することを含む。
【0020】
[0020] 幾つかの実装形態において、1つ又は複数の特徴は、出力信号の振幅を含む。
【0021】
[0021] 幾つかの実装形態において、移動機構にプローブを液体に対して移動させることは、移動機構にプローブを液体の表面の平面に平行な第一の方向に移動させることと、移動機構にプローブを液体の表面の平面に垂直な第二の方向に液体に向かって移動させることとを含む。
【0022】
[0022] 本開示の幾つかの態様は、他の装置を説明する。この装置は、少なくとも上述の特徴の幾つか又は全てを有することができる。装置は、インダクタンス-キャパシタンス(LC)回路を含む検出回路のキャパシタンスの少なくとも一部を提供するよう構成されたプローブを含み、LC回路のキャパシタンスは、プローブと参照構造との間の距離に依存する。装置は、参照構造を含む。装置は、プローブを移動させるよう構成された移動機構を含む。装置は、移動機構にプローブを参照構造に対して移動させることと、検出回路の出力信号の1つ又は複数の特徴であって、LC回路のキャパシタンスに依存する1つ又は複数の特徴を測定することと、出力信号の1つ又は複数の特徴に基づいて、プローブと参照構造との間の距離を特定することとを含む動作を実行するよう構成された回路構成を含む。
【0023】
[0023] 本開示の幾つかの態様は、他の装置を説明する。この装置は、少なくとも上述の特徴の幾つか又は全てを有することができる。装置は、検出回路のキャパシタンスの少なくとも一部を提供するよう構成されたプローブを含み、検出回路のキャパシタンスは、生化学分析システム内のプローブと液体の表面との間の距離に依存する。装置は、プローブを移動させるよう構成された移動機構を含む。装置は、移動機構にプローブを液体に対して移動させることと、検出回路の共振周波数の5%以内の周波数を有する入力信号を検出回路内に提供することと、検出回路の出力信号の1つ又は複数の特徴であって、検出回路のキャパシタンスに依存する1つ又は複数の特徴を測定することと、出力信号の1つ又は複数の特徴に基づいて、プローブと液体の表面との間の接触を検出することとを含む動作を実行するよう構成された回路構成を含む。
【0024】
[0024] 本開示の幾つかの態様は、液体サンプル分析システム内のプローブと液体の表面との間の接触を検出する方法を説明し、この方法は、本明細書に記載の装置を提供することと、移動機構にプローブを液体に対して移動させることと、任意選択により、検出回路の共振周波数の5%以内の周波数を有する入力信号を検出回路内に提供することと、検出回路の出力信号の1つ又は複数の特徴であって、検出回路又はLC回路のキャパシタンスに依存する1つ又は複数の特徴を測定することと、出力信号の1つ又は複数の特徴に基づいて、プローブと液体の表面との間の接触を検出することとを含む。
【0025】
[0025] 本開示の幾つかの態様は、液体サンプル分析システム内の参照構造の存在及び/又はプローブと参照構造との間の距離を検出する方法を説明し、この方法は、本明細書に記載の装置を提供することと、移動機構にプローブを参照構造に対して移動させることと、検出回路の出力信号の1つ又は複数の特徴であって、LC回路のキャパシタンスに依存する1つ又は複数の特徴を測定することと、出力信号の1つ又は複数の特徴に基づいて、参照構造の存在及び/又はプローブと参照構造との間の距離を特定することとを含む。
【0026】
[0026] 幾つかの実装形態において、方法は、プローブの遠位端と液体の表面との間の接触を検出することを含む。
【0027】
[0027] 幾つかの実装形態において、方法は、出力信号の1つ又は複数の特徴に基づいて、プローブが気泡と接触しているか否かを特定することを含む。
【0028】
[0028] 幾つかの実装形態において、方法は、特定の周波数の入力信号を検出回路に提供することと、出力信号の振幅を出力信号の1つ又は複数の特徴の少なくとも一部として測定することとを含む。
【0029】
[0029] 幾つかの実装形態において、方法は、検出回路に1MHzから10MHz又は検出回路の共振周波数の5%以内の入力信号を提供することを含む。
【0030】
[0030] 幾つかの実装形態において、方法は、出力信号の1つ又は複数の特徴におけるステップを識別することを含む。
【0031】
[0031] 幾つかの実装形態において、出力信号は、正弦波を含み、出力信号の1つ又は複数の特徴を測定することは、出力信号を整流することと、整流された出力信号の1つ又は複数の特徴を特定することとを含む。
【0032】
[0032] 幾つかの実装形態において、方法は、デジタル化された出力信号の周波数ドメイン表現に基づいて、出力信号の1つ又は複数の特徴を測定することと、任意選択により、周波数ドメイン表現を処理して干渉信号を排除することとを含み、任意選択により、周波数ドメイン表現を処理することは、デジタル化された出力信号のうち、検出回路に提供された入力信号の周波数と合致する周波数を有する成分を特定することを含む。
【0033】
[0033] 幾つかの実装形態において、方法は、出力信号の振幅を測定することを含む。
【0034】
[0034] 幾つかの実装形態において、方法は、移動機構にプローブを液体の表面の平面に平行な第一の方向に移動させることと、移動機構にプローブを液体の表面の平面に垂直な第二の方向に液体に向かって移動させることとを含む。
【0035】
[0035] 本明細書に記載の実装形態は、様々な利点を提供することができる。例えば、幾つかの実装形態において、液体検出システム内で調整可能LC回路をプローブと共に使用することにより、システムの共振周波数を高い周波数(例えば、3~30MHz)に調整することが可能となり、それにより、したがってシステムをプローブの先端における液体の検出感度の高いものとすることができる。高い感度により、クリーニング、ポンプ流量キャリブレーション等のために液体分析システムで使用されることの多いイオン含有量の低い液体(脱イオン水等)の検出を容易にし得る。本開示によるシステムの高い感度は、システムの出力の高速処理も容易にし得、それによりプローブを液体の表面に向かって迅速に移動させることができる。回路の調整可能性は、共振周波数の時変数に対応し得、これは、例えば、温度、湿度、他の物体との近接度等の環境パラメータに応じて変化して、システムの高い感度を保持することができる最適周波数の選択を容易にし得る。本開示によるLC回路の出力をデジタル化することにより、例えばバンドパスフィルタを用いて、既知の周波数で予想される関心対象の信号を分離する等の高度な信号処理技術を実装することが可能となり得る。それは、したがって、有効な干渉緩和を容易にし、おそらく複数の干渉源があったとしてもシステムが高い信頼性で動作できるようにする。幾つかの実装形態において、本開示によるシステムは、プローブが液体分析システムの金属キャリブレーションポスト等の特定の物体に接近しているか否かを検出するために使用され得る。このような機能性を提供することにより、本開示によるシステムは、キャリブレーションポストによって画定される座標系内でのプローブの移動の高速キャリブレーションを容易にしながら、おそらくプローブが物体と接触する機会を排除することができる。
【0036】
[0036] 本開示において説明される方法は、少なくともシステム、装置及び非一時的コンピュータ可読記憶媒体として及びそれらを用いて実装され得る。本開示による実装形態の詳細は、添付の図面及び以下の説明に示されている。他の特徴、目的及び利点は、説明、図面及び特許請求の範囲から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】[0037]本開示の幾つかの実装形態によるサンプル分析システムの一例を図解する概略図である。
【
図2】[0038]本開示の幾つかの実装形態による検出回路の一例を図解する概略図である。
【
図3A】[0039]本開示の幾つかの実装形態による検出回路の一例を図解する概略図である。
【
図3B】[0040]本開示の幾つかの実装形態による入力及び出力信号の例を図解するプロットである。
【
図4A】[0041]本開示の幾つかの実装形態による信号測定システムの例を図解する概略図である。
【
図4B】[0041]本開示の幾つかの実装形態による信号測定システムの例を図解する概略図である。
【
図5】[0042]本開示の幾つかの実装形態による入力信号周波数に応じた出力信号の振幅の例を示すプロットである。
【
図6】[0043]本明細書に記載の技術による、時間に応じた出力信号の振幅に基づく気泡の検出を図解するプロットである。
【
図7A】[0044]本開示の幾つかの実装形態による、プローブが移動する空間のキャリブレーションを図解する概略図である。
【
図7B】[0044]本開示の幾つかの実装形態による、プローブが移動する空間のキャリブレーションを図解する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
[0045] 各種の図面で使用される同じ参照記号は、同様の要素を示す。
【0039】
詳細な説明
[0046] 本明細書は、液体又は生化学分析システム、例えば全血又は全血の成分を分析するシステムで使用されるキュベット等の容器内の液体の表面(又は高さ)を検出するシステムに調整可能誘導-容量(LC)回路が組み込まれる技術を説明する。これにより、回路の共振周波数の高い数値(例えば、2~10MHzの範囲以上、例えば3MHzから30MHz)に調整して、システムをこのように高い周波数で動作させることができ、その場合、システムは、システムに関連付けられるプローブの先端又はその付近で液体(又は他の物体)の存在を検出する感度が高くなる。本開示によるシステムのこのような高い感度により、血液又は他の液体分析システムのキャリブレーション、クリーニング等で使用されることの多いイオン含有量の低い液体(例えば、脱イオン水)の検出が可能となる。本開示によるシステムの調整可能性は、温度、湿度、他の物体との近接度等の様々な環境パラメータの関数であり得る共振周波数の時変数に対応し得、それにより時変数にかかわらずシステムの高い感度を確実に保持する動作周波数の選択が可能となる。幾つかの場合、液面又は液位検出のための調整可能LC回路は、中実物体の表面を検出するようにも適応され得る。例えば、本開示によるシステムの出力におけるわずかな変化は、プローブが特定の物体(例えば、金属製物体)に接近する際に検出することでき、それにより、プローブは、物体に接触せずにその物体の位置を特定することができる。これにより、したがって特定の物体(例えば、金属製キャリブレーションポスト)の位置を正確に識別することに依存するシステムの高速キャリブレーションが可能となり得る。例えば、幾つかの分析システムでは、本開示による技術の使用により、プローブが移動する座標空間のキャリブレーションを、1MHz未満の範囲の周波数での振動信号又は弛張型発振器の計数サイクルに依存する回路を使用する場合よりも5倍超高速化することができる。
【0040】
[0047] サンプル分析システム、例えば液体分析器、血液分析システム及び他の生化学分析システムは、血液成分若しくは全血、試薬、クリーニング液又は他の液体等の液体をキュベット等の容器から及びその中に輸送して、分析用サンプルを調製し、及び/又はサンプル試験を実行する。サンプル調製及び分析動作の一例において、ロボット制御プローブが容器(例えば、キュベット又はバイアル)にアクセスして、容器から液体を吸引するか若しくはその中に液体を吸引し、及び/又はその中に分注する。
【0041】
[0048] このようなサンプル分析システムの様々な動作のために、容器内の液体の表面高さを知ることが有益であり得る。例えば、一部のサンプル分析システムでは、システムの始動時、液体分注機構が所期の通りに及びキャリブレーションの通りに機能することを確認するための試験が行われ得る。そのために、プローブは、液体を容器内に分注するために容器の上方に位置付けられ得る。液体の表面の(プローブ又は容器の底に対する)位置を検出することにより、液柱の高さ(及びしたがって容器内の液体の体積)が特定されて、分注予定の体積と比較され得る(例えば、液体分注機構を通るキャリブレートされた流量に基づく)。測定された体積が予定体積と合致する場合、システムは、正しく機能していると判断される。幾つかの場合、例えばプローブの先端が液体中に深く入り込むことを防止するために、プローブが液体の表面を突き破る位置を正確に特定することが重要であり得る。さらに、幾つかの場合、サンプル分析システムで使用される容器は、既知の幾何学形状を有するため、容器内の液体の体積は、プローブが容器内の液体を検出した深さ(これは、容器内の液柱の高さも表し、それは、本明細書で液位と呼ばれ得る)に関する情報に基づいて特定され得る。
【0042】
[0049] 各種のサンプル分析システムは、前述のキャリブレーション目的のために脱イオン水等のイオン含有量の低い液体を使用する。脱イオン水は、キュベット等の容器からサンプル/試薬をクリーニングするためにも使用され得る。液体検出は、このようにイオン含有量の低い液体の場合に困難であり得、なぜなら、このような液体は、低い導電性の電気経路のみを提供し、その結果、プローブ内の寄生キャパシタンスが低くなるからである。例えば、イオン含有量の低い液体は、1mS/cm未満のイオン伝導率を有し得る。振動周波数が主に寄生キャパシタンスに依存する回路で出力の変化を検出することは、困難であり得る。例えば、寄生キャパシタンスが低いと、回路の共振周波数が低くなる(例えば、5~10KHzの範囲内)可能性があり、これではプローブ先端が液面に接近し、及び/又は低いイオン含有量の液体の表面と接触するときに回路の出力(例えば、出力電圧)の認識可能な変化を生じさせない場合がある。本明細書に記載の技術は、調整可能LC回路を提供することによって上述の課題に対処することを試みるものであり、この回路では、共振周波数を実質的に高い数値(例えば、5~10MHzの範囲内)に調整することができ、その場合、寄生キャパシタンスの小さい変化に対する回路の感度が高くなる。本開示による技術は、システムを高い共振周波数付近の周波数で動作させて、寄生キャパシタンスの小さい変化の検出をさらに最適化することも含む。そのため、本明細書に記載の技術は、プローブ先端と、表面又は脱イオン水等のイオン含有量の低い液体と接触するプローブ先端との間の距離の変化から生じる寄生キャパシタンスのわずかな変化に応答した出力の認識可能な変化(例えば、高周波数の正弦波入力信号によって誘導される出力電圧)を生成する高感度の検出回路を提供する。
【0043】
[0050] 加えて、高周波数出力信号をデジタル化することにより、単位時間当たりのサンプル数が多くなり、それにより高速処理及び即時判断が可能となり、その結果、本開示による液体検出システムは、非常に効率的となる。これを利用して、例えばプローブを、プローブが液体に近付くまで第一の速度で移動させ、その後、第一の速度より遅い第二の速度で移動させて液体と接触させることができる。
【0044】
[0051] 幾つかの実装形態において、本開示によるシステムの、キャパシタンスの小さい変化の検出における高い感度は、各種の物体、特に金属製物体等の導電性物体との近接度を検出するために利用され得る。このような導電性物体は、離れていてもプローブ上の寄生キャパシタンスの大きい変化を引き起こし得、それによりシステムの出力に変化が生じる。幾つかの場合、出力における変化量は、特定の物体からのプローブの距離の関数であり得、この特性は、したがって、プローブを物体と接触させずに物体の存在(及び/又は物体からのプローブの距離)の検出において使用され得る。例えば、プローブのための移動機構が特定の参照構造(例えば、既知の場所に位置付けられた金属製ポスト)に基づいてキャリブレーションを行わなければならないシステムでは、本開示による技術は、このようなキャリブレーションを効率的に行うために使用され得る。例えば、本開示による回路の出力は、参照構造からの距離を示すことができ、デジタル処理を介して出力を高速で処理できるため、プローブを、このような参照構造が存在する空間内で迅速に移動させることができ、移動は、プローブが参照構造から閾値距離内にあるときにのみ低速化させることができる。それにより、したがって、参照構造が、プローブが構造と接触しているとき又は構造からごく短距離にあるときにのみ検出できるより低感度の回路と比較して、キャリブレーション時間の短縮が可能となる。このような低感度の回路の場合、プローブは、キャリブレーションプロセス中、ゆっくりと小刻みに移動させて、プローブと参照構造との間の衝撃の大きい接触を避けなければならず、プローブは、キャリブレーションを行うために参照構造と接触する必要があり得る。それに対して、本開示による技術によって実現可能な高い感度であれば、プローブを継続的に移動させて、参照構造との閾値近接度内でのみ低速化させることができる。これにより、したがってプローブ移動のための座標系の高速の非接触キャリブレーションを可能にすることができ、プローブに損傷を与えるリスクが実質的に低い。
【0045】
[0052]
図1に示されるように、サンプル分析システム100は、コントローラ102と、移動機構110と、検出回路104と、を含む。幾つかの実装形態において、サンプル分析システム100は、液体118を保持するよう構成された容器106を含む。移動機構110は、サンプル分析システム100のプローブ108を移動させて、液位検出、プローブ位置キャリブレーション及び/又は検出回路104を用いて他の動作を実行するよう構成される。プローブ108は、全体的又は部分的に導電性を有し、プローブ108がさらされることになる液体による腐食に対して耐性を有する材料で形成され得る。例えば、プローブ108は、ステンレス鋼で形成され得る。幾つかの実装形態において、プローブ108は、ピペット要素と一体化され得る。例えば、プローブ108は、液体を容器内に又はそれから移すために使用されるチャネルを含み得る。
【0046】
[0053] 移動機構110は、1つ又は複数の適当なアタッチメント112、例えば可動アーム、トラック付きマウント又は他のコンポーネントによってプローブに機械的に連結される。この例では、移動機構110及びアタッチメント112は、プローブ108を移動させて容器106内の液体118と接触させるよう構成される。幾つかの実装形態において、移動機構110及びアタッチメント112は、代わりに又は加えて、プローブ108を移動させて、サンプル分析システム100の1つ又は複数の他の要素と接触させるか又はそれに近接させるよう構成される。幾つかの実装形態において、移動機構110及びアタッチメント112は、プローブ108を3次元内で例えば複数の軸に沿って同時に及び/又は一度に複数の軸の1つに沿って移動させるよう構成される。移動機構110は、1つ又は複数の適当なモータ、例えばサーボモータ又はステップモータを含み、アタッチメント112の移動を制御することができる。
【0047】
[0054] 幾つかの実装形態において、横方向移動平面116は、液体118の表面122に平行であり、縦方向移動軸114は、横方向移動平面116に垂直である。幾つかの実装形態において、容器106内の液体を検出する(又は液位を特定する)プロセスでは、移動機構110は、プローブ108を横方向移動平面116に沿って移動させて、プローブ108が容器106の直上に位置付けられるようにする。移動機構110は、その後、プローブ108を縦方向移動軸114に沿って液体118に向かって、例えばプローブ108が液体118と接触していると特定されるまで移動させる。幾つかの実装形態において、サンプル分析システムは、例えば、サンプル分析システム100について示されているように、1つの容器を含む。幾つかの実装形態において、サンプル分析システムは、複数の容器を含み、これらは、例えば、列状において、その列の1つ又は複数の容器内の液体の表面が横方向移動平面116に平行になるように配置される。プローブ108は、横方向移動平面116において移動させて、その列の選択された容器の上になるようにすることができ、その後、縦方向移動軸114に沿って、選択された容器の液体に向かって移動させることができる。
【0048】
[0055] 幾つかの実装形態において、縦方向移動軸114に沿った移動は、少なくとも2つのフェーズを含む。第一のフェーズでは、移動機構110は、プローブ108を液体118に向かって第一の速度で移動させる。プローブが容器内に挿入され、所定の位置から閾値距離内まで移動されると、移動機構110は、プローブ108の降下を第一の速度より遅い第二の速度まで低速化させるよう構成され得る。例えば、閾値距離は、容器内の最後の既知の液位より上の所定の距離(例えば、5mm)であり得る。プローブ108が液体118の付近にあるとき、より低速の移動を使用することにより、プローブ108が液体118と接触したときの液体118の飛散を軽減させることができ(それによりおそらく気泡の形成又はプローブの汚染を防止又は最小化する)、及び/又はプローブ108が液体中に深く挿入されすぎないようにする(例えば、その後、プローブ先端を洗浄するのに必要な液体の量を最小化するため)。例えば、より速い速度は、250mm/秒超(例えば、300から600mm/秒)であり得、より遅い速度は、250mm/秒未満(例えば、50から200mm/秒)であり得る。
【0049】
[0056] 幾つかの実装形態において、閾値距離におけるプローブ速度の調整の代わりに又はそれに加えて、液位検出は、プローブが所定の位置から閾値距離内まで移動されることに応答して開始し得る。例えば、プローブが閾値距離内で移動されることに応答して、入力信号(例えば、入力信号203)を検出回路に提供することができ、データ信号(例えば、データ信号410又は430)をコントローラに提供するか、又はコントローラによって読み取ることができ、及び/又はコントローラは、データの分析を開始して液位を識別することができる。
【0050】
[0057] コントローラ102は、1つ又は複数のプロセッサ等の1つ又は複数のコンピューティングデバイス、1つ又は複数のメモリデバイス及び1つ又は複数の記憶装置を含む回路を含む。幾つかの実装形態において、回路は、1つ又は複数の整流器、アナログ-デジタル変換器、フィルタ及び/又はデジタル信号プロセッサも含む。幾つかの実装形態において、コントローラ102は、例えば、ユーザからの入力を受信し、及び/又はコントローラ102に通信可能に連結された1つ又は複数のコンピューティングシステムからデータ(例えば、命令)を受信するために、インタフェース及び/又はネットワークコンポーネントを含む。
【0051】
[0058] 幾つかの実装形態において、
図1に示されるように、信号測定システム120は、コントローラ102及び検出回路104に電気的及び/又は通信可能に連結される(例えば、信号の伝送及び/又は検出のため)。信号測定システム120は、検出回路104からの出力信号を処理して、変調された出力信号及び/又は出力信号の特徴をコントローラ102に提供するよう構成される。コントローラ102は、変調された出力信号及び/又は出力信号の特徴に基づいて、プローブ108が液体118の表面122と接触しているか否かを特定することができる。例えば、プローブ108が液体118に向かって降下すると、コントローラ102は、入力信号に応答して出力信号(例えば、検出回路の出力電圧又は出力電流)をモニタして、例えば出力信号の振幅(又は他の特徴)の変化が閾値条件を満たした場合、液面との接触を特定することができる。
【0052】
[0059] 検出回路104は、信号測定システム120及び/又はコントローラ102と共に共通のエンクロージャ内に格納され得る。例えば、検出回路104は、集積回路及び/又はプリント回路基板(PCB)内の回路素子を含むことができ、この集積回路及び/又はPCBは、サンプル分析システム100のエンクロージャの内部の信号測定システム120及び/又はコントローラ102に電気的に連結される。幾つか実装形態において、集積回路及び/又はPCBは、検出回路104と信号測定システム120及び/又はコントローラ102との両方を含むことができる。幾つかの実装形態において、検出回路104及び/又は信号測定システム120の少なくとも一部は、例えば、プローブ108と共に移動するために、プローブ108に取り付けることができる。例えば、PCBは、プローブ108に取り付けられた耐水性エンクロージャ内に提供され得、PCBは、検出回路104及び/又は信号測定システム120をホストする。
【0053】
[0060]
図2は、本開示の幾つかの実装形態による検出回路の一例を図解する概略図である。
図2に示されているように、検出回路104の一例は、コントローラ102に電気的に連結された励起発電モジュール202を含む。1つ又は複数の回路コンポーネント204(例えば、1つ又は複数の抵抗器、コンデンサ、インダクタ及び/又はスイッチ、ダイオード、トランジスタ等の他の回路コンポーネント)は、励起発電モジュール202及びプローブ206(例えば、
図1のプローブ108)に電気的に連結される。回路コンポーネント204の少なくとも幾つか及びプローブ206は、共同でインダクタンス-キャパシタンス(LC)回路を形成する。幾つかの実装形態において、回路コンポーネント204の少なくとも幾つか及びプローブ206は、共同で調整可能LCタンク回路210を形成する。検出回路104のこの例では、回路コンポーネント204は、インダクタンスL
1、キャパシタンスC
1及び抵抗R
1に関連付けられる。コントローラ102又は信号測定システム120は、回路コンポーネント204とプローブ206との間に電気的に連結される。
【0054】
[0061] LCタンク回路210のキャパシタンスは、プローブ206の環境に依存する。例えば、プローブ206は、プローブ206の環境208を通してアース214に接続され得る。プローブ206の環境208には、プローブ206に近接する1つ又は複数の物体が含まれ得る。例示的な物体としては、液体(例えば、その液位が特定される液体)、液体を保持する容器、参照構造及びサンプル分析システム100の、LCタンク回路210の全体的なキャパシタンスに影響を与える寄生キャパシタンスを生じさせ得る他の部分が含まれる。これらの物体の物性(例えば、それらの組成及び温度)及び物体とプローブ206との間の距離は、この寄生キャパシタンスに関連付けられるキャパシタンスC2に対して、例えばプローブ206とアース214との間の実効キャパシタンスの関数として影響を与え得る。
【0055】
[0062] プローブ環境208が十分な導電性を有する場合(例えば、プローブが金属製物体に近接しているか、又は食塩水等の導電性液体と接触している場合)、寄生キャパシタンスC2の数値が高く、入力信号203が変化しないままであっても出力信号205を大きく変化させる。他方で、プローブ環境208の導電性が低い場合(例えば、プローブが、脱イオン水等のイオン含有量の低い液体に近接している場合)、寄生キャパシタンスC2の数値は、低い。本明細書に記載の技術がなければ(例えば、共振周波数が1MHz未満の固定されたLC回路の場合)、このように低い寄生キャパシタンスの場合の出力信号の変化を検出することは、困難である。さらに、弛張型発振器の周波数に影響を与える寄生キャパシタンスの変化に依存する代替的な方法は、より高周波数に拡張できない場合があり、なぜなら、弛張型発振器のより高周波数での動作は、したがって、測定のためのより高周波数の参照クロックに依存するからである。参照クロック周波数対弛張型発振器周波数の比を高く維持できるほど高い周波数の参照クロックは、利用できないか、不安定であるか又は他に液位検出動作に不適であり得る。
【0056】
[0063] しかしながら、タンク回路210は、タンク回路210の共振周波数が高い範囲(例えば、3~10MHz)になるように調整することができる。タンク回路210をこのように高い共振周波数に近い周波数で励起させることにより、寄生キャパシタンスが小さくても(例えば、1pF以下の範囲)、出力信号205の測定可能な変化を生じさせることができる。そのため、検出回路104は、高感度のシステムを提供することができ、これは、本来であれば検出が困難な小さい寄生キャパシタンスでも検出することができる。これにより、検出回路は、脱イオン水等のイオン含有量の低い液体を検出することが可能となる。
【0057】
[0064] 励起発電モジュール202は、入力信号203をLCタンク回路210に提供するよう構成される。入力信号203は、実装形態ごとに異なる形状を有することができる。例えば、入力信号203は、周期的信号(例えば、正弦波信号)であり得、その振幅及び周波数は、実装形態ごとに異なり得る。幾つかの実装形態において、入力信号203の周波数は、1MHzから10MHz、例えば2MHzから6MHz又は3MHzから4MHzである。幾つかの実装形態において、入力信号203は、複合信号、例えば方形波信号、三角波信号、鋸歯状波信号、パルス信号若しくはその他又はこれら若しくは他の信号型の組合せである。
【0058】
[0065] 幾つかの実装形態において、入力信号203の周波数は、タンク回路210の共振周波数に基づいて選択され得る。入力信号周波数の選択は、
図5に関して例示されており、この図は、入力信号周波数に応じたシミュレーションによる出力信号の振幅の例示的な変化を図解するプロットである。具体的には、曲線502、504及び506は、LCタンク回路のキャパシタンス130pF、132pF及び134pFの場合の入力信号周波数に応じた出力信号の振幅の変化をそれぞれ表す。それぞれの場合において、対応する回路の共振周波数は、曲線502、504及び506のピークによって示されている。幾つかの実装形態において、入力信号の周波数は、キャパシタンスのばらつきによる出力電圧の変化が十分に検出可能となるように選択できる。
図5の例では、3.24MHzの入力信号の場合、これは、縦線508によって示されており、130pFに対する出力電圧の振幅は、0.8Vに近く、それは、134pFでは約0.64Vまで下がる。そのため、4pFのわずかな変化で出力電圧が約0.16V変化し、これは、容易に検出可能であろう。一般に、キャパシタンスの違いに対応する曲線間の電圧差が比較的大きい入力信号周波数を選択することにより、システムの高い感度を実現できる。
【0059】
[0066] 幾つかの実装形態において、入力信号周波数は、事前決定され、システム内に設定される。幾つかの実装形態において、入力周波数は、例えば、共振周波数の時変数に対応するために選択され得、例えば特定の実行前に最適化され得、時変数は、温度、湿度、他の物体との近接度等の環境パラメータの変化による。例えば、システムのキャリブレーション実行中、入力信号周波数をある範囲にわたって掃引して、出力信号の振幅が1つ又は複数の条件、例えば出力信号の振幅が入力信号周波数に対して最大の勾配を有すること等を満たす周波数を特定することができる。入力信号の対応する周波数を使用することにより、回路のキャパシタンスの小さい変化に対する振幅の差を確実に大きくすることができ、それによりシステムの高い感度が保持される。幾つかの実装形態において、本開示中に記載の検出回路は、500fF、1pF又は2pFのキャパシタンスの変化を高い信頼度で検出することができ(例えば、出力信号の特徴におけるノイズの振幅より大きいキャパシタンスの変化による出力信号の特徴の変化を検出できる)、それにより、液体が脱イオン水等のイオン含有量の低い場合でも、液体の感度の高い検出が可能となる。幾つかの実装形態において、入力信号の周波数は、代わりに又は加えて、その高さが検出されることになる液体の種類に基づいて特定される。例えば、ユーザは、液体の種類を示すユーザ入力をコントローラ102に提供することができるか、又は液体の種類は、例えば、各容器の状態を示す保存されたデータに基づいてコントローラ102によって自動的に特定され得る。
【0060】
[0067] 再び
図2を参照すると、励起発電モジュール202は、デジタル及び/又はアナログ回路の様々な組合せの1つ又は複数を含むことができる。幾つかの実装形態において、励起発電モジュール202は、デジタル又はアナログ関数発生器を含む。幾つかの実装形態において、励起発電モジュール202は、周期的信号を生成するよう構成された水晶発振器を含む。幾つかの実装形態において、励起発電モジュール202は、周期的信号を生成するよう構成されたクロック信号発生器を含む。幾つかの実装形態において、励起発電モジュール202は、デジタル-アナログ変換によって周期的信号を直接合成するよう構成されたデジタル回路(例えば、プロセッサ又はFPGA)を含む。入力信号203の所望の特徴を取得するために、他の様々な信号発生方法及び装置を代わりに又は加えて使用することができる。励起発電モジュール202は、コントローラ102により(例えば、コントローラ102によって提供される信号及び/又はデータにより)、励起のオン/オフを切り替え、及び/又は入力信号の特徴(例えば、周波数、振幅及び/又は信号波形)を変化させるように制御され得る。
【0061】
[0068] 幾つかの実装形態において、コントローラ102は、出力信号205を取得し、その1つ又は複数の特徴を特定するよう構成される。幾つかの実装形態において、信号測定システム120は、出力信号205に対して1つ又は複数の動作を実行し、変調された出力信号205又はその1つ若しくは複数の特徴をコントローラ102に提供するよう構成される。幾つかの実装形態において、コントローラ102は、出力信号の1つ又は複数の特徴に基づいて、プローブの先端における液体との接触を検出するよう構成され得る。
【0062】
[0069]
図3Aは、プローブと機器アースとの間の、実効キャパシタンスを含む検出回路300の例を示す。入力信号308は、この例では周期的な正弦波信号であるが、検出回路300に入力として提供される。この例では、回路コンポーネント204は、1つ又は複数の抵抗器(抵抗R
1を有する抵抗素子306として表されている)、1つ又は複数のコンデンサ(キャパシタンスC
1を有する容量素子302として表されている)及び1つ又は複数のインダクタ(インダクタンスL
1を有する誘導素子304として表されている)を含む。検出回路300は、プローブの周囲環境の組成に基づいてプローブが寄与する寄生キャパシタンス(数値C
2の容量素子307を用いて表される)も含む。検出回路300は、インダクタンス-キャパシタンス(LC)回路である。まとめて、容量素子302、誘導素子304及び容量素子307は、LCタンク回路305を形成する。幾つかの実装形態において、容量素子307を含まない部分312は、タンク回路305の共振周波数が容量素子307の小さい変化を検出できるように十分に高い範囲内になるように調整可能であり得る。本明細書に記載の技術によれば、この高い共振周波数に近い周波数を有する適当な入力信号を検出回路300内に提供して、対応する出力信号の変化を高い感度で測定することができる。
【0063】
[0070]
図3Aの例では、LCタンク回路305の共振周波数は、
【数1】
である。したがって、入力信号308が振幅V
in(
図3Bにおいて振幅314として示される)及び周波数fを有し、出力信号310が振幅V
out(
図3Bにおいて振幅316として示される)を有するとき、V
out/V
in(又は均等に一定のV
in、V
outについて)は、f≒f
0である場合、すなわち入力周波数が共振周波数に近い場合に高い数値を有する。
【0064】
[0071] C
2は、典型的には、プローブがプローブ上の高い寄生キャパシタンスに寄与する物体に近接しているとき以外、C
1と比較して小さい。そのため、共振周波数は、
【数2】
であると仮定することができ、L
1及びC
1は、共振周波数を高い数値に調整するように選択され得る。入力信号308は、f
0に基づいて提供され得、これは、例えば、各種の実装形態において、f
0の1%以内、2%以内、5%以内又は10%以内である。幾つかの実装形態において、入力信号の周波数は、
図5に関して前述したように選択され得る。LCタンク回路312のような、プローブが寄与するキャパシタンスと異なる調整可能LCタンク回路を含めることは、有益であり得、なぜなら、少なくとも調整可能LCタンク回路によって検出回路の共振条件を予め事前設定できることになり、それにより入力信号308を共振周波数に近い周波数で提供できるためである。
【0065】
[0072] 幾つかの実装形態において、インダクタンスL1は、1μHから100μH、例えば5μHから40μHである。幾つかの実装形態において、キャパシタンスC1は、1pFから100pF、例えば10pFから50pFである。幾つかの実装形態において、インダクタンス及びキャパシタンスは、対応する共振周波数が1MHzから30MHz、例えば1MHzから10MHz、例えば2MHzから6MHz又は3MHzから4MHzとなるよう構成される。
【0066】
[0073] 検出回路300は、本開示に適合する検出回路をどのように実装できるかの一例である。本開示の範囲は、上述のように高い共振周波数を提供するように調整可能な他の回路構成も含むことができる。幾つかの実装形態において、信号測定システム120の少なくとも一部は、コントローラ102に組み込まれる。コントローラによって行われる動作及び/又は信号測定システム120の動作は、離散的回路、汎用コンピュータ又はそれらの組合せによって実行され得る。例えば、デジタル-アナログ変換は、個別のハードウェアによって表される専用のデジタル-アナログ変換モジュール(例えば、信号測定システム120内の専用の集積回路チップ)によって実行可能である。
【0067】
[0074]
図4Aに示されるように、幾つかの実装形態において、信号測定システムは、出力信号310に対して少なくとも何らかのアナログ処理を実行する。信号測定システム400では、整流器402は、振動する出力信号404を、整流された(DC)出力信号406に変換する。例えば、整流器402は、半波又は全波整流部分に平滑回路又はフィルタ、例えばRCシャントフィルタを組み合わせたものを含むことができる。幾つかの実装形態において、整流された出力信号406は、コントローラ102に入力として提供される。幾つかの実装形態において、信号測定システム400の振幅検出器408は、整流された出力信号406の大きさを測定し、データ信号410(例えば、デジタルデータ信号)をコントローラ102に出力するが、このデータ信号410は、整流された出力信号406の大きさ及び対応して出力信号404の振幅を示す。
【0068】
[0075]
図4Bに示されるように、幾つかの実装形態において、出力信号404は、さらに分析を行うためにデジタル化される。信号測定システム421では、アナログ-デジタル変換器(ADC)420は、デジタル化された出力信号422を生成する。幾つかの実装形態において、デジタル化された出力信号422は、コントローラ102に提供される。幾つかの実装形態において、デジタル化された出力信号422は、信号測定システム421により、例えばスペクトル分析でさらに処理される。
図4Bに示されるように、デジタル化された出力信号422は、例えば、信号測定システム421の高速フーリエ変換(FFT)モジュール424によって周波数成分426に分解される。この分解により、実際の出力信号に対応する標的成分(例えば、正弦波入力信号の周波数と合致する周波数を有する成分)が他の信号寄与に対応する成分、例えば内部及び外部ノイズ及び/又は干渉源から分離される。例えば、サンプル分析システム100の近くで使用されるワイヤレス機器から発せられる信号は、検出回路によってピックアップされ、出力信号404の一部として検出され得る。振幅検出器408は、周波数成分を分析し、コントローラ102に対して、標的成分の大きさ及び対応してノイズ並びに他の干渉による寄与が低いか又は全くない出力信号404の振幅を示すデータ信号430を出力するよう構成される。
【0069】
[0076] データ信号410又は430に基づいて、コントローラ102は、プローブが液体と接触するプローブ位置を識別する。例えば、コントローラ102は、時間又はプローブの位置に応じた出力信号404の振幅(又は出力信号404の成分、例えば周波数成分)の急速な変化を識別するよう構成され得る。例えば、コントローラ102は、所定の時間の長さ又は所定の位置変化にわたり、閾値より大きい振幅の変化を識別するよう構成され得る。幾つかの実装形態において、コントローラ102は、累積和制御等のアルゴリズム又は微分に基づく方式を実行して、プローブの移動中にリアルタイムでステップを検出するよう構成され、振幅のステップが検出されるか又は1つ若しくは複数の条件(例えば、ステップの高さ)を満たすステップが検出されると、コントローラは、プローブが液体と接触していると判断する。幾つかの実装形態において、コントローラ102は、データ信号410又は430を10kHzの速度(1秒間に10,000の振幅サンプル)で分析して、このような判断を行うことができる。プローブが液体と接触しているとコントローラが判断したときのプローブの位置は、液体の表面の位置に対応し得、それに基づいて液体の液位を特定することができる。
【0070】
[0077] 幾つかの実装形態において、気泡は、液面に存在し得、プローブは、液面ではなく、気泡と接触し得る。気泡の検出を行わないと、不利な点として、液体の代わりに空気がプローブ内に吸引されるか、又は液位が不正確に特定されて、それが不正確な分析結果につながり得る。プローブの先端が、液面ではなく、気泡に近接しているか又はそれと接触していると特定することにより、それに応答して1つ又は複数の動作を引き起こすことができ、これは、例えば、警告メッセージを発生させること、プローブを通した吸引を防止すること又はプローブを容器内により深く移動させて、プローブの先端が、液体の表面上の気泡ではなく、液体と接触するようにすることである。
【0071】
[0078]
図6は、時間に応じた、出力信号の振幅に基づく液体接触検出及び気泡検出を図解するプロットである。プローブの移動速度は、コントローラ102によって把握されているため、時間の関数としての信号振幅を示すデータは、プローブ位置の関数としての信号の振幅を示すデータに対応する。具体的には、曲線600は、徐々に液面に近付けられるプローブが液体の表面の気体/気泡と接触して、気泡の下の液体と接触する前に停止する場合を表す。曲線602は、プローブが気泡のない液面に徐々に近付けられる状況を表す。時間604中、プローブが徐々に液面に近付けられる間に寄生キャパシタンス発生の速度は、遅く、信号振幅は、わずかな漸減のみを示す。例えば、プローブが表面と接触する前の時間中、信号の振幅の変化は、1%未満又は0.5%未満であり得る。曲線600及び602は、領域606の内の時間に振幅の急激な大幅な減少を示し、これは、それぞれ気泡又は液面との接触を示す。例えば、幾つかの実装形態において、コントローラ102は、所定の期間又は所定のプローブ位置の変化にわたって少なくとも1%、少なくとも1.5%、少なくとも2%又は少なくとも他の所定の数値だけ振幅が変化したことに基づいて、接触が起こったことを特定する。しかしながら、この例では、振幅の変化は、気泡との接触の場合よりも液体と接触した場合の方が大きい。振幅の変化に基づいて、幾つかの実装形態では、コントローラ102は、プローブが液体と接触しているか又は気泡と接触しているかを特定することができる。例えば、振幅の変化が閾値より小さいことは、気泡との接触を示し得る一方、振幅の変化が閾値の気泡/液体値より大きい場合、液体との接触を示し得る。1つ又は複数の出力信号特徴の変化に基づいて気泡と液体とを区別するための他の又は追加的な方法も本開示の範囲に含まれる。例えば、プローブの先端と液体の表面との間の距離に応じた出力信号の振幅の変化速度は、気泡が液体の表面に存在するか否かを示すことができる。幾つかの実装形態において、液体との接触と、気体との接触とを区別する閾値(例えば、信号の振幅の閾値変化)は、液体の種類に基づき得る。
【0072】
[0079] 幾つかの実装形態において、本開示のシステムの、キャパシタンスの小さい変化を検出することにおける高い感度は、様々な物体/標的、例えば導電性の高い物体(例えば、金属製物体)又はイオン含有量の高い液体、例えば食塩水との近接度を検出するために利用され得る。このような導電性の物体は、離れていてもプローブ上に大きい寄生キャパシタンスを誘導し得、それによりシステムの出力を変化させる。例えば、幾つかの実装形態において、コントローラ102、信号測定システム120及び/又は検出回路104は、共同で、プローブの導電性物体との近接度が1mmから20mm、例えば1mmから10mm、2mmから5mm又は5mmから10mmであるときに出力信号404の測定可能な変化(例えば、出力信号404の振幅の測定可能な変化)が検出されるよう構成される。測定可能な変化は、例えば、出力信号404内のノイズより大きいことによって検出可能な変化であり得る。幾つかの場合、出力の変化量は、プローブの特定の物体からの距離の関数であり得、この特性を、したがってプローブを物体と接触させずに物体の存在(及び/又はプローブのその物体からの距離)を検出するために使用され得る。
【0073】
[0080]
図7A~7Bは、本開示の幾つかの実装形態による、プローブが移動する空間のキャリブレーションを図解する概略図である。
図7A~7Bに示されるように、幾つかの実装形態において、サンプル分析システムは、参照構造702、例えばプローブが移動する空間座標系を画定/キャリブレートするための参照位置となる金属製キャリブレーションポストを含む。幾つかの実装形態において、参照構造702は、1つ又は複数の容器内の液体の表面に平行な平面708に垂直に延びる。平面708は、
図1に関して説明した横方向移動平面116と実質的に同じであり得る。例えば、参照構造702は、サンプル分析システムの土台、支持部又は他の部分に取り付けられたポストであり得る。幾つかの実装形態において、参照構造702は、少なくとも部分的に導電性を有し、例えばステンレス鋼等の金属で形成され、これは、プローブが参照構造と十分に近いときにプローブ上に大量の寄生キャパシタンスを生じさせる。例えば、幾つかの実装形態において、プローブ700と参照構造702との間のキャパシタンスは、プローブ700が参照構造702から1mmから5mmにあるとき、50から250pFである。
【0074】
[0081] 幾つかの実装形態において、
図7Aに示されるように、プローブ700は、第一の方向704に沿って、例えば横方向に平面708に平行に移動させて、参照構造702に近付けることができる。プローブ700の移動中、検出回路の出力信号の1つ又は複数の特徴をモニタして、プローブ700と参照構造702との間の距離、例えばプローブ700の側面710と参照構造702の側面712との間の距離706を特定する。検出回路は、液位検出に使用されるものと同じ検出回路、例えば検出回路104又は300であり得、検出回路の出力信号は、分析のためにコントローラ102又は信号測定システム120に提供され得る。
【0075】
[0082] 距離706は、1つ又は複数の特徴(及び/又はその変化)を距離に関係付ける所定の関数関係に基づいて特定することができる。例えば、コントローラ102は、関数A(r)を保存するか又はそれにアクセスすることができ、Aは、出力信号の振幅であり、及びrは、距離706である。この関数関係及び1つ又は複数の特徴に基づいてrを特定することができる。幾つかの実装形態において、距離706は、プローブ700の移動中に1つ又は複数の特徴をモニタし、その1つ又は複数の特徴におけるステップを識別することによって特定され、ステップの存在は、プローブ700が参照構造702に近接している(例えば、参照構造702の2mm以内である)ことを示し得る。幾つかの実装形態において、距離706又は近接度は、1つ又は複数の特徴をその1つ又は複数の特徴の初期値と比較することに基づいて特定される。例えば、出力信号の振幅は、プローブ700が参照構造702に近付いているとき、プローブ700が参照構造702から比較的遠くにある(例えば、様々な実装形態において少なくとも10mm離れている、少なくとも20mm離れている又は少なくとも50mm離れている)ときの振幅の初期値と比較して着実に縮小し得る。振幅がその初期値の閾値割合、例えばその初期値の0.95から0.99の閾値割合まで縮小したとき、コントローラ102は、プローブが参照構造702に近接したと特定することができる。代替的に又は追加的に、距離706は、振幅の関数として特定され得る。
【0076】
[0083] 幾つかの実装形態において、プローブ700が参照構造702から閾値距離内にあるか又はそれに近接したと特定されたとき、プローブ700の移動を停止又は後退させることができる(例えば、参照構造702と接触させない)。参照構造702は、座標系(例えば、平面708がxy平面であるx-y-z座標系)内の参照位置にあるため、プローブ700の位置をその座標系内で特定することができる。例えば、第一の方向704がx軸に沿っている場合、プローブ700のx座標を特定できる。同様のプロセスを用いて、例えばプローブ700を平面708に平行に及び第一の方向704に垂直な方向に移動させることにより、第二の座標(例えば、y座標)を特定することができる。
【0077】
[0084]
図7Bに示されるように、プローブ700は、縦方向において平面708に垂直に移動させて、例えば方向714(例えば、z方向)において参照構造に近付けることができる。プローブ700が移動する間、プローブ700と参照構造702の一部(例えば、遠位端720)との間の距離716が特定され、例えば出力信号の1つ又は複数の特徴の変化の存在に基づいて、距離716が所定の閾値より短いか又はプローブ700が参照構造に近接するプローブ700の位置が特定される。参照構造702の遠位端720の座標を示す保存データに基づいて、プローブ700の方向714への座標(例えば、z座標)を例えば参照構造702に接触することなく特定し得る。
【0078】
[0085] より感度の低いシステムは、プローブをゆっくり移動させることによって参照構造との接触を回避又は軽減することができるが、これによりキャリブレーションプロセスにかかる時間が長くなる。本開示による方法及び装置によって提供される高い感度により、キャリブレーション中のプローブの高速移動を可能にすることができ、それによりサンプル分析システムの始動後にアッセイを実行できるまでの「初回試験の時間」が短縮される。
図7A~7Bに関して説明した位置キャリブレーションは、各種のトリガに応答して、例えばサンプル分析システムの始動時、ユーザ若しくはコンピューティングシステムからの命令時又は定期的にサンプル分析システムの電源投入時に実行され得る。
【0079】
[0086] 参照構造は、中実であり、弾力に欠けるため、参照構造との接触は、特にプローブが参照構造内に移動し続けることと組み合わされて、プローブに損傷を与え得る。本明細書に記載のシステムより感度の低いシステムは、反復的なアプローチ-接触-引き戻しプロセスを用いてキャリブレーションを行い得る。このプロセスでは、プローブが上から参照構造に近付き、参照構造と接触し、参照構造から引き戻され、横方向に並進し、再び参照構造に近付き、接触しなくなるまでこのプロセスが繰り返される。本明細書で開示される方法及び装置の幾つかの実装形態は、それらの感度及び/又は高い検出速度により、例えば
図7A~7Bに関するプローブ位置キャリブレーションについて説明したように、プローブを標的に接触させずにプローブ位置のキャリブレーションを実行することができる。これは、プローブが参照構造702等の構造と接触することによるプローブ損傷の発生率を減らすことができる。加えて、本開示の幾つかの実装形態の高い感度は、縦方向のキャリブレーションに加えて、横方向のキャリブレーションに(例えば、
図7Aに示されるもの)も実行できることを意味する。それに対して、より感度の低いシステムでは、
図7Bに示されるような縦方向のキャリブレーションのみを高い信頼性で行うことができる。
【0080】
[0087] 記載される幾つかの特徴は、デジタル及び/又はアナログ電子回路又はハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア或いはそれらの組合せにおいて実装され得る。幾つかの特徴は、プログラマブルプロセッサによって実行されるように、情報キャリア、例えば機械可読記憶装置において有形で具現化されるコンピュータプログラム製品に実装され得る。方法ステップは、入力データに対して動作を行い、出力を生成することによって実装形態に記載の機能を行わせる命令のプログラムを実行するプログラマブルプロセッサ、アナログ及び/又はデジタル回路動作を実行する離散的回路構成又はこれらの組合せによって行われ得る。
【0081】
[0088] 記載される幾つかの特徴は、有利には、データ記憶システムからデータ及び命令を受信し、それにデータ及び命令を送信するように連結された少なくとも1つのプログラマブルプロセッサ、少なくとも1つの入力デバイス及び少なくとも1つの出力デバイスを含むプログラマブルシステム上で実行される1つ又は複数のコンピュータプログラムで実装され得る。コンピュータプログラムは、特定の活動を実行するか又は特定の結果をもたらすために、あるコンピュータ内において直接又は間接に使用され得る命令セットである。コンピュータプログラムは、コンパイル型又はインタープリタ型言語を含む何れの形態のプログラミング言語(例えば、オブジェクティブC、Java)でも記述され得、これは、独立型プログラムとして又はモジュール、コンポーネント、サブルーチン若しくはコンピューティング環境での使用に適した他のユニットを含む何れの形態でも展開され得る。
【0082】
[0089] 命令のプログラムを実行するのに適したプロセッサには、例えば、汎用及び特定用途の両方のマイクロプロセッサ並びにあらゆる種類のコンピュータの唯一のプロセッサ又は複数のプロセッサ若しくはコアの1つが含まれる。一般に、プロセッサは、命令及びデータをリードオンリメモリ若しくはランダムアクセスメモリ又はその両方から受け取る。コンピュータの基本的要素は、命令を実行するためのプロセッサと、命令及びデータを保存するための1つ又は複数のメモリとである。一般に、コンピュータは、データファイルを記憶するための大量記憶装置と通信し得る。これらの大量記憶装置は、磁気ディスク、例えば内部ハードディスク及びリムーバブルディスク、磁気光ディスク並びに光ディスクを含み得る。コンピュータプログラム命令及びデータを有形に具現化するのに適した記憶装置は、あらゆる形態の不揮発性メモリを含み、これには、例えば、EPROM、EEPROM及びフラッシュメモリデバイス等の半導体メモリデバイス、内部ハードディスク及びリムーバブルディスク等の磁気ディスク、磁気光ディスク並びにCD-ROM及びDVD-ROMディスクが含まれる。プロセッサ及びメモリは、ASIC(特定用途集積回路)によって補足されるか又はその中に組み込まれ得る。ユーザとの相互作用を可能にするための特徴は、CRT(陰極管)、LED(発光ダイオード)又はLCD(液晶表示体)ディスプレイ又はモニタ等、情報を著者に対して表示するための表示装置、キーボード及び著者がそれを用いてコンピュータに入力を提供し得るマウス又はトラックボール等のポインティングデバイスを有するコンピュータ上で実装され得る。
【0083】
[0090] 多数の実装形態が説明された。しかしながら、様々な改良形態がなされ得ることを理解されたい。1つ又は複数の実装形態の要素を組み合わせるか、削除するか、改良するか又は補足することにより、さらなる実装形態が形成され得る。また別の例として、図中に示される論理フローは、望ましい結果を実現するために、図示された特定の順序又は連続順序を必要としない。加えて、他のステップが提供され得るか、又は説明されたフローからステップが排除され得、また説明されているシステムに他のコンポーネントを追加するか又はそれから除去することができる。したがって、他の実装形態は、以下の特許請求の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0084】
100 サンプル分析システム
102 コントローラ
104、300 検出回路
106 容器
108、206、700 プローブ
110 移動機構
112 アタッチメント
114 縦方向移動軸
116 横方向移動平面
118 液体
120、400、421 信号測定システム
122 液体の表面
202 励起発電モジュール
203、308 入力信号
204 回路コンポーネント
205、310、404 出力信号
208 プローブ環境
210、305、312 LCタンク回路
214 アース
302、307 容量素子
304 誘導素子
306 抵抗素子
314、316 振幅
402 整流器
406 整流された出力信号
408、428 振幅検出器
410、430 データ信号
420 アナログ-デジタル変換器
422 デジタル化された出力信号
424 高速フーリエ変換モジュール
426 周波数成分
502、504、506、600、602 曲線
508 縦線
604 時間
606 領域
702 参照構造
704 第一の方向
706、716 プローブと参照構造との間の距離
708 平面
710 プローブの側面
712 参照構造の側面
714 方向
718 プローブの遠位端
720 参照構造の遠位端
【手続補正書】
【提出日】2024-10-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インダクタンス-キャパシタンス(LC)回路を含む検出回路のキャパシタンスの少なくとも一部を提供するよう構成されたプローブであって、前記LC回路の前記キャパシタンスが、当該プローブと1又は複数の参照構造との間の距離に依存する、プローブ、
前記参照構造、
前記プローブを移動させるよう構成された移動機構、及び
回路構成であって、
前記移動機構に前記プローブを前記参照構造に対して移動させること、
前記検出回路の出力信号の1つ又は複数の特徴であって、前記LC回路の前記キャパシタンスに依存する1つ又は複数の特徴を測定すること、及び
前記出力信号の前記1つ又は複数の特徴に基づいて、前記プローブと前記参照構造との間の前記距離を特定すること
を含む動作を実行するよう構成された回路構成
を備え、
前記出力信号の前記1つ又は複数の特徴を測定することが、
1MHzから10MHzの間である入力信号の周波数を前記検出回路に提供することと、
前記出力信号の振幅を前記出力信号の前記1つ又は複数の特徴の少なくとも一部として測定することと
を含む、装置。
【請求項2】
前記LC回路が調整可能LCタンク回路を含み、前記LCタンク回路が検出回路内のプローブに加えて、インダクタ及びコンデンサを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
参照構造が、少なくとも部分的に導電性を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
参照構造が、金属で形成される、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
参照構造が、前記プローブ上の寄生キャパシタンスに変化を生じさせる、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記参照構造の少なくとも1つがポストである、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記プローブが、前記参照構造と接触しない、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記回路が、前記移動機構に、前記プローブを、参照構造が存在する空間内で迅速に移動させ、前記プローブが前記参照構造から閾値距離内にあるときに低速に移動させる、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記参照構造が、前記プローブが移動する空間座標系をキャリブレートするための参照位置となる、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
プローブ及び前記参照構造の1つ以上の間の前記キャパシタンスは、前記プローブが前記参照構造から1mmから5mmにあるとき、50から250pFである、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記プローブが、縦方向において前記参照構造を含む平面に垂直に移動させることができる、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記LC回路の前記キャパシタンスが、前記プローブと液体の表面との間の距離に依存する、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記液体が、1mS/cm未満のイオン伝導率を有する、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記動作は、前記プローブが、前記液体中で気泡と接触しているか否かを特定することを含む、請求項12に記載の装置。
【請求項15】
液体サンプル分析システム内の参照構造の存在を特定する方法であって、
請求項1に記載の装置を提供すること、
前記移動機構に前記プローブを前記参照構造に対して移動させること、
前記検出回路の出力信号の1つ又は複数の特徴であって、前記LC回路の前記キャパシタンスに依存する1つ又は複数の特徴を測定すること、及び
前記出力信号の前記1つ又は複数の特徴に基づいて、前記参照構造の前記存在及び/又は前記プローブと前記参照構造との間の前記距離を特定すること
を含む方法。
【外国語明細書】