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特開2025-39497プレス成型用部材、その製造方法、及びプレス成型用部材を用いたバッテリーケースの製造方法
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  • 特開-プレス成型用部材、その製造方法、及びプレス成型用部材を用いたバッテリーケースの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025039497
(43)【公開日】2025-03-21
(54)【発明の名称】プレス成型用部材、その製造方法、及びプレス成型用部材を用いたバッテリーケースの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/04 20060101AFI20250313BHJP
   B32B 5/24 20060101ALI20250313BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20250313BHJP
   B32B 27/12 20060101ALI20250313BHJP
【FI】
C08J5/04 CFC
C08J5/04 CFD
B32B5/24
B32B15/08 A
B32B27/12
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024011545
(22)【出願日】2024-01-30
(62)【分割の表示】P 2023145927の分割
【原出願日】2023-09-08
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】514154503
【氏名又は名称】株式会社The MOT Company
(74)【代理人】
【識別番号】100149799
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 陽一郎
(72)【発明者】
【氏名】▲済▼藤 友明
(72)【発明者】
【氏名】首藤 祥史
【テーマコード(参考)】
4F072
4F100
【Fターム(参考)】
4F072AA04
4F072AA07
4F072AB09
4F072AB10
4F072AB22
4F072AB28
4F072AD23
4F072AD38
4F072AG03
4F072AG19
4F072AH06
4F072AH42
4F072AH49
4F072AJ03
4F072AJ04
4F072AJ22
4F072AK05
4F072AK14
4F072AL09
4F072AL11
4F100AB33A
4F100AD11D
4F100AG00D
4F100AK41C
4F100AK41E
4F100AK53C
4F100AK53E
4F100AT00B
4F100BA04
4F100BA05
4F100CA23C
4F100CA23E
4F100CB00B
4F100DD05A
4F100DG01D
4F100DG12D
4F100GB48
4F100JB13C
4F100JB13E
4F100JB15C
4F100JB15E
(57)【要約】
【課題】
プレス成型の時に繊維織物又は一方向繊維と金属箔とがずれずにプレスすることができ、熱伝導率が高く使用時に内部の熱を外へ放出しやすく、電磁波の遮蔽が可能である半硬化樹脂繊維強化複合材料中間体、及びそれを加工して得られるバッテリーケース。
【解決手段】
少なくとも2枚以上の半硬化樹脂シートと、繊維織物又は一方向繊維と、金属箔とが積層され一体化されている金属箔含有半硬化繊維強化複合材料中間材料を含むプレス成型用部材。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2枚以上の半硬化樹脂シートと、繊維織物又は一方向繊維と、金属箔とが積層され一体化されている金属箔含有半硬化繊維強化複合材料中間材料を含むプレス成型用部材。
【請求項2】
前記半硬化樹脂シートの樹脂が熱硬化性エポキシ樹脂である、請求項1に記載のプレス成型用部材。
【請求項3】
前記半硬化樹脂シートの樹脂が充填材含有飽和又は不飽和ポリエステル樹脂である、請求項1に記載のプレス成型用部材。
【請求項4】
前記金属箔は前記樹脂シートに接着するための接着シートを有する、請求項1に記載のプレス成型部材。
【請求項5】
前記金属箔の表面に直線状の溝が設けられている、請求項1に記載のプレス成型部材。
【請求項6】
前記繊維織物又は前記一方向繊維がガラス繊維である、請求項1に記載のプレス成形用部材。
【請求項7】
前記繊維織物又は前記一方向繊維が炭素繊維である、請求項1に記載のプレス成形用部材。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載のプレス成型用材料を加熱プレス成型する工程を含むバッテリーケースの製造方法であって、前記金属箔側はバッテリーケースの内側に配置される、バッテリーケースの製造方法。
【請求項9】
請求項1に記載の前記金属箔含有半硬化樹脂繊維強化複合材料中間材料は、ダブルベルト方式で一体化される工程を含む、プレス成型用部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス成型用部材、プレス成型用部材を用いるバッテリーケース、及びそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維と樹脂から構成される繊維強化樹脂材は、軽量で強度に優れることから、自動車部品、航空機部品、鉄道部品等、各種産業用途に幅広く使用されている。特にバッテリーで駆動する電気自動車は重いバッテリーを車載しており、ガソリン自動車に比べて長い距離を走行できないことから、電気自動車全体の重量を軽くすることが非常に重要である。
【0003】
特許文献1は、炭素繊維をランダム分散状態で含有させた繊維強化樹脂材を用いて、電気自動車のバッテリーケースを製造することを開示している。
【0004】
【特許文献1】特開2012-109452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の電気自動車のバッテリーケースは軽量化及び強度の観点から材料としてアルミニウムが用いられてきたが、強度の観点を考慮すると所定の厚さを有することが好ましく、その結果、アルミニウムだけでは十分軽量なものを得ることができない。
【0006】
そこで、近年ではバッテリーケースの材料として、従来からアルミニウムの代わりに軽く、高強度な繊維強化複合材料の使用が検討されている。しかしながら、繊維強化複合材料は、電磁波の遮蔽効果が極めて低く、また、熱伝導度も低いため、バッテリーケースの内部の熱を外に放出しにくいというデメリットがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、半硬化樹脂シートと、織物もしくは一方向繊維と、金属箔とが積層され一体化させた金属箔含有半硬化樹脂繊維強化複合材料中間材料を用いることにより、プレス成型の時に繊維と金属箔とがずれずにプレスすることができることを発見した。さらに、プレス成型によって得られるバッテリーケースは熱伝導率が高いため、使用時に内部の熱を外へ放出しやすく、また、金属箔を用いることによりの電磁波の遮蔽が可能であるということを発見し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、以下を包含する。
[1] 少なくとも2枚以上の半硬化樹脂シートと、繊維織物又は一方向繊維と、金属箔とが積層され一体化されている金属箔含有半硬化繊維強化複合材料中間材料を含むプレス成型用部材。
[2] 前記半硬化樹脂シートの樹脂が熱硬化性エポキシ樹脂である、[1]に記載のプレス成型用部材。
[3] 前記半硬化樹脂シートの樹脂が充填材含有飽和又は不飽和ポリエステル樹脂である、[1]に記載のプレス成型用部材。
[4] 前記金属箔は前記樹脂シートに接着するための接着シートを有する、[1]に記載のプレス成型部材。
[5] 前記金属箔の表面に直線状の溝が設けられている、[1]に記載のプレス成型部材。
[6] 前記繊維織物又は前記一方向繊維がガラス繊維である、[1]に記載のプレス成形用部材。
[7] 前記繊維織物又は前記一方向繊維が炭素繊維である、[1]に記載のプレス成形用部材。
[8] [1]乃至[7]のいずれか一項に記載のプレス成型用材料を加熱プレス成型する工程を含むバッテリーケースの製造方法であって、前記金属箔側はバッテリーケースの内側に配置される、バッテリーケースの製造方法。
[9] [1]に記載の前記金属箔含有半硬化樹脂繊維強化複合材料中間材料は、ダブルベルト方式で一体化される工程を含む、プレス成型用部材の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
バッテリーケースなどの自動車に用いられる部材は、平らな部分と複雑な形状をした部分が複合化している。複雑形状用の材料としては、半硬化樹脂繊維強化複合材料のひとつである短繊維を用いたSMCの様な材料がその代表であるが、軽量化効果や強度などが不十分で有り、補うために長繊維系の半硬化繊維強化複合材料であるプリプレグを積層する技術も進められている。2つの半硬化樹脂シートを積層する場合、金属との界面がずれ期待する性能が発現しないことが課題となる場合がある。長繊維系金属箔含有半硬化樹脂繊維強化複合材料中間体である、半硬化樹脂シートと、繊維織物又は一方向繊維と、金属箔とが積層され一体化されている中間材料を用いることにより、プレス成型プロセスにおいて、金属箔の効果により界面や繊維がずれずにプレスすることができ、また、プレスによって得られる金属箔を含有したプレス成型用部材を硬化した材料により構成されるバッテリーケースは、連続した金属層を備えるため熱伝導率が高く、使用時に内部の熱を外へ放出しやすい。プロセスにおいても、性能においても、部材として課題を解決する効果が大きい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第一態様である金属箔含有半硬化繊維強化複合材料中間体1Aの断面図である。
図2図2は、第二態様である金属箔含有半硬化繊維強化複合材料中間体1Bの断面図である。
図3図3は、第三態様である金属箔含有半硬化繊維強化複合材料中間体1Cの断面図である。
図4図4は、金属箔含有半硬化繊維強化複合材料中間体1Aの製造工程を説明する模式図である。
図5図5は、金属箔含有半硬化繊維強化複合材料中間体の金属箔面に設けられた溝9を示す模式図である。
図6図6は、繊維強化複合材料プレス済成型部材11Aの製造工程を説明する模式図である。
図7図7は、繊維強化複合材料プレス済成型部材11Aをプレス成型することで得られるバッテリーケースの材料の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[半硬化繊維強化複合材料中間体]
図1は、本発明の第一態様である金属箔含有半硬化樹脂繊維強化複合材料中間体1Aの断面図である。金属箔含有半硬化樹脂繊維強化複合材料中間体1Aは、上から、半硬化樹脂シート5、繊維織物4、半硬化樹脂シート5、接着シート3、金属箔2をこの順に積層したものである。
【0011】
このような構成の金属箔含有半硬化樹脂繊維強化複合材料中間体1Aは、接着シート3によって繊維強化樹脂層5と金属箔2がしっかりと接着されているため、プレス成型の時に繊維織物4と金属箔2とがずれずにプレスすることができる。
【0012】
金属箔含有半硬化樹脂繊維強化複合材料中間体1Aをプレス成型によって得られる繊維強化複合材料プレス済成型部材11Aを含むバッテリーケースは、金属箔2が用いられているため熱伝導率が高く、使用時に内部の熱を外へ放出しやすい他、電磁波遮蔽効果がある。
【0013】
金属箔含有半硬化樹脂繊維強化複合材料中間体1Aの樹脂層5を構成する樹脂とは、加熱プレスをすることにより、繊維強化複合材料プレス済成型部材11Aを製造することができる材料であれば特に限定されるものではなく、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂のいずれでもよいが、成型のしやすさ、成型済金属複合体11Aの用途から、熱硬化性樹脂であることが好ましい。
使用できる樹脂の具体例としては、熱硬化性又は熱可塑性エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、塩化ビニール樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、複数混合して用いてもよい。
なお、金属箔含有半硬化樹脂繊維強化複合材料中間体1Aの状態では、樹脂は半硬化状態であるが、バッテリーケースの製造のため加熱プレスするときに硬化する。
【0014】
ここで樹脂の半硬化状態とは、金属箔含有半硬化樹脂繊維強化複合材料中間体1Aの製造において、樹脂中の硬化が始まる温度より低い温度で処理した状態を指す。半硬化であり、完全に硬化していないため、加熱プレスにより所定の形状に成型可能な状態である。
【0015】
繊維織物4とは、繊維を平織又は綾織することにより、生地のようにシート状にしたものである。繊維織物4の繊維としては、加熱プレスで成型できる材料であれば特に限定されるものではなく、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維(化学繊維および天然繊維)、ポリビニルアルコール系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリエチレン系繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維などが挙げられる。ガラス繊維としては、Eガラス、Sガラス、Dガラス、Qガラス等を用いたガラス繊維が挙げられる。また、ポリアクリルニトリルを原料とするPAN系炭素繊維とピッチを原料とするピッチ系炭素繊維等を用いることが出来る。プリプレグ中の炭素繊維としては、PAN系炭素繊維が好ましいが、それに限定されるものではない。
【0016】
また、繊維織物4の厚さとしては、0.1mm~0.5mmの厚さの炭素繊維材又はガラス繊維が好ましいが、それに限定されるものではない。
実施例では、繊維織物を用いた例を挙げたが、繊維織物4だけでなく、一方向繊維(ガラスウールを除く)を用いてもよい。
【0017】
なお、金属箔含有半硬化樹脂繊維強化複合材料中間体1Aにおける2枚の半硬化樹脂シート5と繊維織物4とは、市販されているプリプレグ(2層の樹脂層とそれに挟まれた平織又は綾織繊維で構成されたプリプレグ)を用いてもよい。当該プリプレグを用いた態様であっても、得られる積層体は、金属箔含有半硬化樹脂繊維強化複合材料中間体に含まれるものとする。
【0018】
金属層2を構成する金属とは、室温~300℃で安定した金属でれば特に限定されるものではなく、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム合金、チタン、チタン合金、鋼、銅、銅合金などが挙げられる。アルミニウム合金としては、Al-Mg系であるA5052等の5000番台やAl-Cu系であるA2014等の2000番台、ダイカスト用のAl-Si-Cu系合金(JIS規格 ADC12やADC10等)などを用いることができるが、これに限定されない。
金属層2の厚みは通常、0.02~2mmであり、特に0.05~1.5mm程度が好適である。プレス成型により所望の形状に容易に形成するために好適である。また、金属層2の厚みが0.02mmよりも小さいと磁界シールド性が低Hz領域(特に10MHz以下)で低下する場合がある。金属層2の厚みが過度に大きいと金属箔含有半硬化樹脂繊維強化複合材料中間体1Aの重量が大きくなる場合がある。
【0019】
接着シート3は、繊維織物4を含む半硬化樹脂シート5と、金属箔2とを接着させるためのものである。従来技術では、樹脂に含浸した繊維織物と金属箔を単に重ねて、押圧することによりプレス済積層体としていたが、この場合、プレス時に樹脂と金属箔とがずれてしまい、所望のプレス済積層体を得ることが難しく、事実上実施ができなかった。金属箔含有半硬化繊維強化複合材料中間体1Aでは、繊維織物4と金属箔2とが接着シート3でしっかり接着されて一体化されているため、金属層2がずれることがなく、加熱プレスにより所望の繊維強化複合材料プレス済成型部材11Aを製造することができる
【0020】
接着シート3の接着成分の材料としては特に限定されないが、エポキシ、アクリル、ウレタン等が挙げられる。半硬化性樹脂5を、半硬化のままで金属層2に接着させるために、常温でも接着性を有する接着シートが好ましい。なお、接着シート3の代わりに液体状の接着剤を用いてもよいが、下記するダブルベルト方式により製造する場合は、接着シートを用いることが好ましい。
【0021】
図2は、第二態様である金属箔含有半硬化樹脂維強化複合材料中間体1Bの断面図である。金属箔含有半硬化樹脂繊維強化複合材料中間体1Bは、上から、半硬化樹脂シート5、繊維織物4、半硬化樹脂シート5、繊維織物4、半硬化樹脂シート5、接着シート3、金属箔2を積層したものである。
【0022】
すなわち、金属箔含有半硬化樹脂繊維強化複合材料中間体1Bは、金属箔含有半硬化樹脂繊維強化複合材料中間体1Aよりもさらに半硬化性樹脂5及び繊維織物4を積層させたものである。なお、図1及び図2の複数ある半硬化性樹脂5の厚さは同じでも異なっていてもよく、また、複数ある半硬化性樹脂5の樹脂の種類についても同じでも異なっていてもよい。
また、このように、金属箔含有半硬化樹脂繊維強化複合材料中間体1Bの金属層の反対側の面さらに半硬化性樹脂層5と繊維織物4を繰り返し積層させてもよい。
【0023】
図3は、第三態様である金属箔含有半硬化樹脂繊維強化複合材料中間体1Cの断面図である。第三態様は、金属箔含有半硬化樹脂繊維強化複合材料中間体1Aの半硬化樹脂層5の一つを、充填材含有飽和又は不飽和ポリエステル樹脂7にしたものである。充填材含有飽和又は不飽和ポリエステル樹脂は、扱いやすい上に充填剤を含むために強度が非常に高い。充填材含有飽和又は不飽和ポリエステル樹脂も半硬化状態であり、半硬化樹脂に含まれる。
樹脂中に含まれる充填材は、炭素繊維、ガラス繊維に加えて、黒鉛、マイカ、鉱物系の粒子状充填材などを使用することができる。
【0024】
[金属箔含有半硬化樹脂繊維強化複合材料中間体の製造方法]
金属箔含有半硬化樹脂繊維強化複合材料中間体の製造は、例えば、図4に図示するようにダブルベルトプレス方式によって行われる。図4は、金属箔含有半硬化樹脂繊維強化複合材料中間体1Aの製造を例として示している。
ダブルベルトプレス方式は、加熱ヒータブロックを内蔵した2台のコンベヤを上下に配置したダブルベルト装置8によって、上下よりワークを加熱、プレス、圧延、成形するものである。ただし、プレス成型用金属箔貼付プリプレグ1Aを製造する際は、加熱を実施せず、常温で行うこともできる。半硬化樹脂の状態のままで積層するからである。
【0025】
ダブルベルトプレス方式は、従来から樹脂と繊維からなる通常のプリプレグを製造する際に用いられるが金属箔含有半硬化樹脂繊維強化複合材料中間体1Aの製造では、図4に図示するように、上から順に半硬化樹脂シート5、繊維4、半硬化樹脂シート5というように、2つの半硬化樹脂層シート5を設け、その間に繊維織物4を挟む。さらにその下に、半硬化樹脂シート5に接するように接着シート3、次いで接着シート3に接するように金属箔2を積層させ、さらにダブルベルトプレス方式により一体化させ、金属箔含有半硬化樹脂繊維強化複合材料中間体1Aの製造をすることができる。
【0026】
図示はしないが、上から、半硬化樹脂シート5、繊維織物4、半硬化樹脂シート5、繊維織物4、半硬化樹脂シート5、接着シート3、金属箔2を積層させ、さらにダブルベルトプレス方式により一体化させ、金属箔含有半硬化樹脂繊維強化複合材料中間体1Bの製造をすることができる。
【0027】
同様に図示はしないが、上から、充填材含有飽和又は不飽和ポリエステル樹脂7、繊維織物4、充填材含有飽和又は不飽和ポリエステル樹脂7、接着シート3、金属箔2を積層させ、さらにダブルベルトプレス方式により一体化させ、金属箔含有半硬化繊維強化複合材料中間体1Cの製造をすることができる。
【0028】
この際、金属箔2には図5で図示するような溝9が設けられていることが好ましいが、形状や本数は特に限定されるものではなく、例えば直線状の溝を複数本設けることができる。溝9を設けることにより、加熱プレスにより得られる繊維強化複合材料プレス済成型部材11Aを構成材料とするバッテリーケースにおいて、当該構成材料と空気の接触面積が増え、効率的に放熱することが可能となる。溝9を設ける際は、加熱プレスなどの成型方法で行っても熱を加えず、室温で実施してもよい。なお、溝9を直線状にすることにより、バッテリーケースの出口に向かって溝を設けることになり、効率的に放熱することができる。
【0029】
金属箔含有半硬化樹脂繊維強化複合材料中間体の製造の際のプレス加工の圧力は、特に限定されるものではなく、通常0.1~15MPaである。
【0030】
[プレス成型用部材及びプレス成型用部材の製造方法]
上記のように得られる金属箔含有半硬化樹脂繊維強化複合材料中間体1A、1B、1Cを用いて、プレス成型用部材を製造する。
プレス成型用部材は、金属箔含有半硬化樹脂繊維強化複合材料中間材料1A、1B、1Cをそのまま使用してもよいし、金属箔含有半硬化樹脂繊維強化複合材料中間材料1A、1B、1Cに加えて、さらに同種又は異種のプリプレグを重ねて、プレス成型用部材としてもよい。
金属箔含有半硬化樹脂繊維強化複合材料中間材料1A、1B、1Cに、プリプレグ等の別の材料を積層させる場合は、半硬化状態を維持するため、加熱をしないで単に積層させることが好ましい。なお、半硬化樹脂であるため、粘着性を有するため、互いの材料はプレスせずとも貼り合わせることはできる。
プレス成型用部材は、下記する加熱プレスに用いる材料となる。
【0031】
[繊維強化複合材料プレス済成型部材の製造方法]
このようにして得られるプレス成型用部材を加熱プレスすることにより、繊維強化複合材料プレス済成型部材11Aを製造することができる。
【0032】
例えば、図6(a)で図示するように、下型10Aと上型10Bを備えたプレス機に、第一態様であるプレス成型用部材(図では、金属箔含有半硬化繊維強化複合材料中間材料1Aをプレス成型用部材として使用)を配置する。繊維強化複合材料プレス済成型部材11Aを箱形状に成型する場合、効率の良い放熱のために金属層2が内側に配置されていることが好ましいため、金属層2が凸型の型に接するように配置する。具体的には、図6のような場合であれば下型10Aに接するように配置する。
【0033】
次に、図6(b)に図示するように、下型10Aと上型10Bによりプレス成型用部材を上下より押圧し、所望の形状に変形させ、繊維強化複合材料プレス済成型部材11Aとする。下型10Aと上型10Bによって圧力を加える際には型を加熱する。加熱方法としては、例えば一方または両方にヒーターを備えさせ、それを加熱する、熱風を吹き付ける、電磁誘導加熱等の方法で加熱できるが、加熱方法は特に限定されない。
押圧する際は、下型10Aを上に移動させることにより、又は上型10Bを下に移動させることにより、プレス成型用部材を押圧することができる。
【0034】
なお、プレス成型用部材に備えられた樹脂は半硬化状態であるが、上記加熱プレスの工程を経て硬化することが好ましい。
【0035】
次に、図6(c)に図示するように、下型10Aと上型10Bを成型済金属複合体11Aから取り外し、成型済金属複合体11Aを得る。
【0036】
上記のように所望の形状に加工した繊維強化複合材料プレス済成型部材11Aは、バッテリーケース、パソコン、OA機器、AV機器、携帯電話、電話機、ファクシミリ、家電製品、玩具用品、フラットパネルディスプレイなどの電子機器の筐体などの材料又は部品として好適に用いることができる。
この繊維強化複合材料プレス済成型部材11Aは、プレス加工後は軽量で高剛性であるところから、特に図7で図示するような自動車に搭載される車載用の大型のバッテリーケースの加工に特に好適である。筐体やバッテリーケースの形状に特に制限はない。
【0037】
また、バッテリーケースなど箱形状に加工して用いる場合は、図7に図示するように内部の熱を効率的に逃がすため、金属箔2の面を内側にするような形状が好ましい。また、溝9を設けるために、金属箔2は、溝9を設けるために、金属箔2のみを用いてプレス成型してもよい。溝9は直線状で複数設けることができ、直線状の溝9は、互いに平行にすることができる。熱をもった維強化複合材料プレス済成型部材11Aにおいては、、溝9部分が相対的に熱を持ちやすく、溝9の配置方向によって熱を逃したい方向に誘導することができる。
【符号の説明】
【0038】
1A・・・本発明の第一態様である半硬化樹脂繊維強化複合材料中間体
1B・・・本発明の第二態様である半硬化樹脂繊維強化複合材料中間体
1C・・・本発明の第三態様である半硬化繊維強化複合材料中間体
2・・・金属箔
3・・・接着シート
4・・・繊維織物
5・・・半硬化樹脂シート
7・・・充填材含有飽和又は不飽和ポリエステル樹脂
8・・・ダブルベルト装置
9・・・溝
10A・・・下型
10B・・・上型
11A・・・繊維強化複合材料プレス済成型部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2024-01-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2枚以上の半硬化樹脂シートと、繊維織物又は一方向繊維と、金属箔とが積層され一体化されている金属箔含有半硬化樹脂繊維強化複合材料中間材料を含むバッテリーケース用プレス成型用部材の製造方法であって、前記金属箔含有半硬化樹脂繊維強化複合材料中間材料は、ダブルベルト方式で一体化される工程を含む、製造方法。
【請求項2】
前記半硬化樹脂シートの樹脂が熱硬化性エポキシ樹脂である、請求項1に記載のバッテリーケース用プレス成型用部材。
【請求項3】
前記半硬化樹脂シートの樹脂が充填材含有飽和又は不飽和ポリエステル樹脂である、請求項1に記載のバッテリーケース用プレス成型用部材。
【請求項4】
前記金属箔は前記樹脂シートに接着するための接着シートを有する、請求項1に記載のバッテリーケース用プレス成型部材。
【請求項5】
前記金属箔の表面に直線状の溝が設けられている、請求項1に記載のバッテリーケース用プレス成型部材。
【請求項6】
前記繊維織物又は前記一方向繊維がガラス繊維である、請求項1に記載のバッテリーケース用プレス成形用部材。
【請求項7】
前記繊維織物又は前記一方向繊維が炭素繊維である、請求項1に記載のバッテリーケース用プレス成形用部材。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載のバッテリーケース用プレス成型用部材を加熱プレス成型する工程を含むバッテリーケースの製造方法であって、前記金属箔はバッテリーケースの内側に配置される、バッテリーケースの製造方法。
【手続補正書】
【提出日】2024-07-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2枚以上の半硬化樹脂シートと、繊維織物又は一方向繊維と、金属箔とが積層され一体化されている金属箔含有半硬化樹脂繊維強化複合材料中間材料を含むバッテリーケース用プレス成型用部材の製造方法であって、前記金属箔含有半硬化樹脂繊維強化複合材料中間材料は、ダブルベルト方式で一体化される工程を含む、製造方法。
【請求項2】
前記半硬化樹脂シートの樹脂が熱硬化性エポキシ樹脂である、請求項1に記載の製造方法
【請求項3】
前記半硬化樹脂シートの樹脂が充填材含有飽和又は不飽和ポリエステル樹脂である、請求項1に記載の製造方法
【請求項4】
前記金属箔は前記樹脂シートに接着するための接着シートを有する、請求項1に記載の製造方法
【請求項5】
前記金属箔の表面に直線状の溝が設けられている、請求項1に記載の製造方法
【請求項6】
前記繊維織物又は前記一方向繊維がガラス繊維である、請求項1に記載の製造方法
【請求項7】
前記繊維織物又は前記一方向繊維が炭素繊維である、請求項1に記載の製造方法
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の製造方法によって得られたバッテリーケース用プレス成型用部材を加熱プレス成型する工程を含むバッテリーケースの製造方法であって、前記金属箔はバッテリーケースの内側に配置される、バッテリーケースの製造方法。