(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025003964
(43)【公開日】2025-01-14
(54)【発明の名称】抗癌ワクチンのための共有腫瘍抗原としてのHERV-K由来抗原
(51)【国際特許分類】
C07K 14/15 20060101AFI20250106BHJP
C12N 15/48 20060101ALI20250106BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20250106BHJP
【FI】
C07K14/15 ZNA
C12N15/48
C12N15/63 Z
C07K14/15
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024155019
(22)【出願日】2024-09-09
(62)【分割の表示】P 2021512759の分割
【原出願日】2019-09-06
(31)【優先権主張番号】18306173.8
(32)【優先日】2018-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】504217063
【氏名又は名称】サントル レオン ベラール
(71)【出願人】
【識別番号】511196870
【氏名又は名称】ユニベルシテ クロード ベルナール リヨン プルミエ
(71)【出願人】
【識別番号】501089863
【氏名又は名称】サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェ サイアンティフィク
(71)【出願人】
【識別番号】500248467
【氏名又は名称】アンスティテュ ナシオナル ドゥ ラ サントゥ エ ドゥ ラ ルシェルシェ メディカル(イーエヌエスエーエールエム)
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100170852
【弁理士】
【氏名又は名称】白樫 依子
(72)【発明者】
【氏名】ステファーヌ ドゥピル
(72)【発明者】
【氏名】ロリー トノン
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ コー
(72)【発明者】
【氏名】パオラ ボナベンチュラ
(72)【発明者】
【氏名】ジェニー バラドー
(57)【要約】
【課題】共有HERV-K由来抗原からなるか又はそれらを含む少なくとも1つのペプチド又は前記少なくとも1つのペプチドの発現をインビボで誘導する発現ベクター、及び薬学的に許容されるビヒクル又は賦形剤を含む組成物又はワクチン。
【解決手段】そのようなペプチドで治療された患者の細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を含む、又はそのようなペプチドを認識するT細胞受容体(TCR)改変T細胞を含む組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
―9~100個のアミノ酸残基を有する、2、3、4、5、6、又は7個のペプチドであって、各ペプチドは配列番号1~7の配列のエピトープの少なくとも1つを含み、そして各ペプチドは他のペプチドに対して少なくとも1つの異なるエピトープを含む前記ペプチド、又は前記2、3、4、5、6、又は7個のペプチドの発現をインビボで誘導する1又は複数の発現ベクター、又は
―9~100個のアミノ酸残基を有し、そして配列番号1~7の配列のエピトープを2、3、4、5、6、又は7個含む少なくとも1つのペプチド、又は前記少なくとも1つのペプチドの発現をインビボで誘導する発現ベクター、及び
薬学的に許容されるビヒクル又は賦形剤
を含む、組成物。
【請求項2】
配列番号1及び/又は6の配列のエピトープを含む1又は複数のペプチドを含むか又は発現する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
配列番号1~7の配列のエピトープを含む3、4、5、6、又は7個のペプチドを含むか又は発現する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ペプチドが、9~100、70、50、40、30、25、又は20個のアミノ酸残基及び前記配列番号1~7の配列のエピトープの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
9~100、70、50、40、30、25、又は20個のアミノ酸残基の各ペプチドが、配列番号1、2、3、4、5、6、又は7のうち1つの特定のエピトープを含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記ペプチドが、前記配列番号1~7の配列のエピトープの少なくとも1つを含む、HERV gag又はpolの9~100、70、50、40、30、25、又は20個の連続したアミノ酸残基を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記ペプチドが、前記配列番号1~7の配列のエピトープの少なくとも1つを含む、HERV gag又はpolの13、14、15、16、17、又は18個の連続したアミノ酸残基を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記ペプチドが、配列番号8~14からなる群から選択され、そして前記組成物が、それらの2、3、4、5、6、又は7個を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記ペプチドが、9アミノ酸長エピトープを含む、配列番号8~14の配列の9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28個の連続するアミノ酸残基からなり、そして前記組成物がそれらの2、3、4、5、6、又は7個を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物と、薬学的に許容されるビヒクル又は賦形剤、及び好ましくはアジュバントとを含む、ワクチン又は免疫原性組成物。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか一項に記載のペプチドで治療された患者の細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、又は請求項1~7のいずれか一項に記載のペプチドを認識するT細胞受容体(TCR)改変T細胞、及び薬学的ビヒクルを含む、組成物。
【請求項12】
癌、特に、トリプルネガティブ乳癌を含む乳癌、卵巣癌、黒色腫、肉腫、奇形癌、膀胱癌、肺癌(非小細胞肺癌及び小細胞肺癌)、頭頸部癌、結腸直腸癌、神経膠芽細胞腫、及び白血病の治療に使用するための、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
配列番号2~14の配列のペプチドからなる群から選択される単離ペプチドであって、前記ペプチドは、10~100、70、50、40、30、25、又は20個のアミノ酸を有し、そして前記配列番号2~7のペプチドの少なくとも1つを含む、前記単離ペプチド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一部の腫瘍サブタイプで共有され、診断、予後予測、及び免疫モニタリング、並びに抗原性組成物、免疫原性組成物、抗癌ワクチン又はT細胞に基づく免疫療法に使用できるHERV-K抗原に由来するエピトープ又はネオエピトープの同定に関する。よって、本発明は、癌及び免疫療法の分野、一又は複数、好ましくはいくつかのこれらのエピトープを含み、診断、予後予測、及び免疫モニタリング、及び癌の治療及び予防において有用なペプチドに基づく抗原性免疫原性組成物の開発、並びに癌の治療及び予防のための1又は複数、好ましくはいくつかのこれらのエピトープを含む免疫原性組成物及びワクチンの開発に関する。あるいは、本発明の組成物は、インビボで前記ペプチドの発現を実行する又はその発現をもたらす1又は複数のベクターを含み、例えば、ベクターは、DNA若しくはRNAベクター、又は細菌若しくはウイルスベクターであり得る。
【背景技術】
【0002】
ヒト内在性レトロウイルス(HERV)は、ヒトゲノムの8%を占めている。それらはおそらく、外因性レトロウイルスの古代の生殖細胞系列感染の残遺物に対応する。ほとんどのHERV遺伝子は、DNA組換え、変異、及び欠失のために機能しないが、群特異性抗原(Gag)、逆転写酵素を伴うポリメラーゼ(Pol)、エンベロープ(Env)表面ユニットなどの機能性タンパク質を生成するものもいる。HERVの発現は、エピジェネティックなメカニズムによって正常細胞で抑制される。
【0003】
HERVは、「ウイルス模倣」に関連する強力な免疫原性特性を有しており、脱メチル化により一部の固形腫瘍でその発現が増加される。HERVは、挿入変異誘発又は染色体異常への関与によって作用する可能性のある発癌における可能性のある病原体を表すと考えられている。HERV-K RecやNp9などの一部のHERVタンパク質も、推定癌遺伝子である。
【0004】
癌におけるHERVの発現は、免疫系に対する以下の様々な影響と関連している:
―Envユニットの免疫抑制ドメインを介した免疫調節、
―HERV dsRNAによる自然免疫の活性化(先天性I型インターフェロンシグナル伝達の誘導)、
―HERV抗原に対する適応免疫応答の誘導。
【発明の概要】
【0005】
よって、本発明によれば、単離又は精製ペプチドであって、FLQFKTWWI(配列番号1)、RLIPYDWEI(配列番号2)、KLIDCYTFL(配列番号3)、YLSFIKILL(配列番号4)、AMIPKDWPL(配列番号5)、YAMSNLFSI(配列番号6)、及び/又はSMDDQLNQL(配列番号7)からなる群から選択される配列からなるエピトープからなる又はそのようなエピトープを含む前記ペプチド、並びに少なくとも1つのそのようなペプチドを含む組成物、又はインビボで前記少なくとも1つのそのようなペプチドの発現を誘導する発現ベクターを提供する。前記組成物は、適切な液体、バッファー、又はビヒクルをさらに含み得る。ヒトの治療に使用するための前記組成物において、前記組成物は、薬学的に許容されるビヒクル、担体、又は賦形剤をさらに含む。
【0006】
特に、少なくとも1つのペプチドであって、FLQFKTWWI(配列番号1)、RLIPYDWEI(配列番号2)、KLIDCYTFL(配列番号3)、YLSFIKILL(配列番号4)、AMIPKDWPL(配列番号5)、YAMSNLFSI(配列番号6)、及び/又はSMDDQLNQL(配列番号7)からなる群から選択される配列からなるエピトープからなる又はそのようなエピトープを含む前記ペプチド、又はインビボで前記少なくとも1つのペプチドの発現を誘導する発現ベクター、及び薬学的に許容されるビヒクル、担体、又は賦形剤を含む免疫原性組成物を提供する。
【0007】
少なくとも1つのペプチドであって、FLQFKTWWI(配列番号1)、RLIPYDWEI(配列番号2)、KLIDCYTFL(配列番号3)、YLSFIKILL(配列番号4)、AMIPKDWPL(配列番号5)、YAMSNLFSI(配列番号6)、及び/又はSMDDQLNQL(配列番号7)からなる群から選択される配列からなるエピトープからなる又はそのようなエピトープを含む前記ペプチド、又はインビボで前記少なくとも1つのペプチドの発現を誘導する発現ベクター、及び薬学的に許容されるビヒクル、担体、又は賦形剤を含むワクチン又は抗癌ワクチンを提供する。
【0008】
本発明に係る組成物は、特に以下を含み得る:
9~100個のアミノ酸残基を有する、2、3、4、5、6、又は7個のペプチドであって、各ペプチドは配列番号1~7の配列のエピトープの少なくとも1つ、特に1つを含み、及び各ペプチドは他のペプチドに対して少なくとも1つの異なるエピトープを含む前記ペプチド、又は前記2、3、4、5、6、又は7個のペプチドの発現をインビボで誘導する1又は複数の発現ベクター、又は
9~100個のアミノ酸残基を有し、配列番号1~7の配列のエピトープを2、3、4、5、6、又は7個含む少なくとも1つのペプチド、又は前記少なくとも1つのペプチドの発現をインビボで誘導する発現ベクター。
【0009】
一実施形態では、本発明に係る組成物は、特に以下を含み得る:
9~100個のアミノ酸残基を有する、2、3、4、5、6、又は7個のペプチドであって、1つのペプチドは配列番号1又は6の配列のエピトープを含み、少なくとも1つの別のペプチドは配列番号1~7の配列の他のエピトープの少なくとも1つを含む少なくとも1つを含み、及び各ペプチドは他のペプチドに対して少なくとも1つの異なるエピトープを含む前記ペプチド、又は
9~100個のアミノ酸残基を有し、配列番号1又は6(特に両方)の配列のエピトープを含む配列番号1~7の配列のエピトープを2、3、4、5、6、又は7個含む、少なくとも1つのペプチド、又は前記少なくとも1つのペプチドの発現をインビボで誘導する発現ベクター。
【0010】
本明細書で後述されるように、本発明による組成物は、以下の実施形態を含み得る(しかしながら、他の実施形態もまた、他の説明部分から明らかである):
―前記組成物は、配列番号1~7の配列の2、3、4、5、6、又は7個のペプチドを含み、又は前記組成物は、これらのペプチドのインビボ発現を含む1又は複数の発現ベクターを含み、一実施形態では、配列番号1又は6の配列のペプチド又はこれら両方ペプチドが存在する又は発現される、
―前記組成物は、9~100アミノ酸残基及び少なくとも配列番号1~7の配列のペプチドを含み、前記ペプチドは、2、3、4、5、6、又は7個の開示されたペプチドを含み得、一実施形態では、前記組成物は、本明細書に開示されるように、gag(ギャグ)エピトープ及び/又はpol(ポル)エピトープ、又はこれらのgag及び/又はpolエピトープの少なくとも2つ又は3つを含み得、又は前記組成物は、この又はこれらのペプチドのインビボ発現を含む一又は複数の発現ベクターを含み、一実施形態では、含まれる又は発現されるペプチドは、配列番号1又は6の配列のペプチド又はこれら両方のペプチドを含む、
―前記組成物は、9~100個のアミノ酸残基を有する2、3、4、5、6、又は7個のペプチドを含み、各ペプチドは、配列番号1~7の配列のエピトープを少なくとも1つ、好ましくは1つ含み、及び各ペプチドは他のペプチドに対して少なくとも1つの異なるエピトープを含む、又は前記組成物は、これらのペプチドのインビボ発現を含む1又は複数の発現ベクターを含み、一実施形態では、配列番号1又は6の配列のペプチド又はこれら両方のペプチドが存在する又は発現される、
―含まれる又は発現される9~100個のアミノ酸残基のペプチドは、それぞれ配列番号1、2、3、4、5、6、又は7の1つの特定の(前記組成物において他のペプチドと異なる)エピトープを含む、
―前記含まれる又は発現されるペプチド(1又は複数)は、配列番号1~7の配列の前記ペプチドの少なくとも1つを含むHERV gag又はpolの9~50個のアミノ酸残基を含む、
―前記組成物は、配列番号8~14のペプチドからなる群から選択される1、2、3、4、5、6、又は7個のペプチドを含む、又は―前記組成物は、この又はこれらのペプチドのインビボ発現を含む1又は複数の発現ベクターを含み、一実施形態では、配列番号8又は13の配列のペプチド又はこれら両方ペプチドが存在する又は発現される。
【0011】
配列番号4、2、及び1の配列のエピトープは、HERV-K gagに由来する。配列番号5、3、6、及び7の配列のエピトープは、HERV-K polに由来する。これらはMHCクラスIHLA-A2エピトープである。一実施形態では、前記組成物は、1つ、2つ、又は3つのHERV-K gagエピトープを含む又は発現する。一実施形態では、前記組成物は、1、2、3、又は4つのHERV-K polエピトープを含む又は発現する。
【0012】
前記組成物である本発明に係る免疫原性組成物又はワクチンという観点から、前記含まれる又は発現されるペプチドは、9~100、特に9~70、又は9~50、40、30、25、20の連続する残基を含み得、好ましくはこれらの残基は、前記エピトープの少なくとも1つを含む、HERV-K gag及び/又はpol、より好ましくはネイティブのコンセンサスHERV-K gag及び/又はpol配列由来である。前記ペプチドは、長さが9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、又は45残基など50残基未満であり得る。
【0013】
前記組成物である本発明に係る免疫原性組成物又はワクチン(以下、特に断りのない限り「組成物」とする)は、特にgag及び/又はpol由来のHERV-Kのペプチドの2以上、又は特にgag及び/又はpol由来のHERV-Kのこれらのペプチドの2以上のインビボ発現を誘導する発現ベクター、若しくは特にgag及び/又はpol由来のHERV-Kの(これらのペプチドのうち)異なるペプチドのインビボ発現を誘導するいくつか(2以上)の発現ベクターのそれぞれを含み得る。
【0014】
一実施形態では、前記ペプチド(9残基以上を有する)は、9アミノ酸長(9-mer)エピトープと、所定の長さのペプチドを形成するN末端及び/又はC末端に隣接するアミノ酸とを含むネイティブのHERV-K断片である。一実施形態では、前記ペプチドは、2以上のHERV-Kエピトープ(例えば、開示されたエピトープの2、3、4、5、6、又は7個)を含む。
【0015】
一実施形態では、前記ペプチド(9残基以上を有する)は、9アミノ酸長エピトープと、N末端及び/又はC末端に隣接するアミノ酸と、所定の長さのペプチドを形成する追加の外来アミノ酸とを含むネイティブのHERV-K断片である。一実施形態では、前記ペプチドは、2以上のHERV-Kエピトープ(例えば、開示されたエピトープの2、3、4、5、6、又は7個)を含む。
【0016】
別の実施形態では、前記組成物に含まれる又は発現されるペプチドのペプチド配列の全部又は一部は、HERV-Kに対して外来性である。本実施形態では、ペプチドは、2個より多いHERV-Kエピトープ、例えば、開示されたエピトープの2、3、4、5、6、又は7個を容易に含み得る。前記ペプチドの長さは、エピトープの数、及び可能な追加のアミノ酸を含むのに適している。したがって、前記ペプチドは、9又は10~69ペプチド長又はそれ以上であり得る。
【0017】
好ましくは、前記組成物は2、3、4、5、6、又は7個の異なるペプチドを含み、又は前記ベクターはそれらペプチドの発現を誘導し、各ペプチドは、FLQFKTWWI(配列番号1)、RLIPYDWEI(配列番号2)、KLIDCYTFL(配列番号3)、YLSFIKILL(配列番号4)、AMIPKDWPL(配列番号5)、YAMSNLFSI(配列番号6)、SMDDQLNQL(配列番号7)からなる群から選択される配列からなる異なるエピトープを含む又はからなる。
【0018】
一実施形態では、FLQFKTWWI(配列番号1)、RLIPYDWEI(配列番号2)、KLIDCYTFL(配列番号3)、YLSFIKILL(配列番号4)、AMIPKDWPL(配列番号5)、YAMSNLFSI(配列番号6)、SMDDQLNQL(配列番号7)からなる群から選択される配列からなる少なくとも2つの異なるエピトープを含む又はからなる少なくとも1つのペプチドを、前記組成物は含む又は前記ベクターはその発現を誘導する。一実施形態では、前記ペプチドは2、3、4、5、6、又は7個の前記エピトープを含み、前記発現ベクターは、2、3、4、5、6、又は7個の前記エピトープを含むペプチドの発現を誘導する。
【0019】
同じ患者のインビボでの組成物又は発現産物に異なるエピトープを表すためのいくつかの解決策が存在する。FLQFKTWWI(配列番号1)、RLIPYDWEI(配列番号2)、KLIDCYTFL(配列番号3)、YLSFIKILL(配列番号4)、AMIPKDWPL(配列番号5)、YAMSNLFSI(配列番号6)、SMDDQLNQL(配列番号7)の前記エピトープの2、3、4、5、6、又は7個が組成物中に存在するか発現するように、前記群の異なるエピトープの1又は複数を含む1又は複数のペプチドを、前記組成物は含み得る又は前記ベクターはその発現を誘導する。
【0020】
本発明に従って複数のペプチドの発現を誘導する発現ベクターについて述べる場合、いくつかのペプチドの発現を誘導するベクターを含む組成物(ペプチドは、前記群のエピトープを1又は複数、例えば、前記エピトープの2、3、4、5、6、7個を含み得る)、又は少なくとも2つの発現ベクターであって、いくつかのベクターはそれぞれ、少なくとも1つのペプチドの発現を誘導する。一実施形態では、前記組成物は、1個のベクター又はいくつかのベクターを含み、前記ベクターは、1又は複数のペプチド及び2、3、4、5、6、又は7個の前記エピトープの発現を誘導する。
【0021】
本発明に係るエピトープ及び他のgag又はpolアミノ酸残基を含む単離又は精製29アミノ酸長(29-mer)ペプチドの例は以下である:
KSKIKSKYASYLSFIKILLKRGGVKVSTK(配列番号8)、
TLLDSIAHGHRLIPYDWEILAKSSLSPSQ(配列番号9)、
LAKSSLSPSQFLQFKTWWIDGVQEQVRRN(配列番号10)、
GPLQPGLPSPAMIPKDWPLLIIIDLKDCF(配列番号11)、
KLIDCYTFLQAEVANAGLAIASDKIQTST(配列番号12)、
WIRPTLGIPTYAMSNLFSILRGDSDLNSK(配列番号13)、及び
RDVETALIKYSMDDQLNQLFNLLQQTVRK(配列番号14)。
これらの単離又は精製29アミノ酸長ペプチド又は断片、又は28~10個のアミノ酸残基は、9アミノ酸長エピトープを含み、単離又は精製形態であり、それぞれ本発明の目的である。前記ペプチドの長さは、9アミノ酸長エピトープを含む、配列番号8~14の配列の9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28残基など、29残基未満であり得る。興味深いことに、前記エピトープに付加されたアミノ酸配列は、配列番号8~14のペプチドの場合のように、他の潜在的なCD4及び/又はCD8Tエピトープを含み得る。本発明は、本明細書に開示されるようなエピトープ及びC末端及び/又はN末端に「さらなるアミノ酸」を含むペプチドを提供する。これらのさらなるアミノ酸は、配列番号1~16の配列と共に本明細書に開示されるようなgag又はpol配列であり得る。しかしながら、本発明は、これらのgag/pol配列内のこれらの「さらなるアミノ酸」のレベルでのアミノ酸のバリエーションを包含する。よって、本発明は、配列番号1~16の配列を含むそれらの配列を包含し、さらなるアミノ酸配列は、それらのgag/pol配列に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性(%)を有する。
【0022】
一実施形態では、本発明の組成物は、配列番号8、配列番号13のペプチド、又は配列番号8及び13の両方のペプチド、及び配列番号8~14の他のペプチドの1、2、3、4、又は5つを含む又は発現する。
【0023】
一実施形態では、前記組成物はさらにアジュバントを含む。
【0024】
単離又は精製形態のペプチドRLIPYDWEI(配列番号2)は、本発明の目的である。
【0025】
単離又は精製形態のペプチドKLIDCYTFL(配列番号3)は、本発明の目的である。
【0026】
単離又は精製形態のペプチドYLSFIKILL(配列番号4)は、本発明の目的である。
【0027】
単離又は精製形態のペプチドAMIPKDWPL(配列番号5)は、本発明の目的である。
【0028】
単離又は精製形態のペプチドYAMSNLFSI(配列番号6)は、本発明の目的である。
【0029】
単離又は精製形態のペプチドSMDDQLNQL(配列番号7)は、本発明の目的である。
【0030】
単離又は精製形態の配列番号1~7の前記ペプチドの少なくとも1つを含む10~100個のアミノ酸のペプチドは、本発明の目的である。
【0031】
FLQFKTWWI(配列番号1)、RLIPYDWEI(配列番号2)、KLIDCYTFL(配列番号3)、YLSFIKILL(配列番号4)、AMIPKDWPL(配列番号5)、YAMSNLFSI(配列番号6)、及びSMDDQLNQL(配列番号7)のエピトープのうち2、3、4、5、6、又は7個を含む、単離又は精製形態のペプチドは、本発明の目的である。前記ペプチドは、好ましくはFLQFKTWWI(配列番号1)及び/又はYAMSNLFSI(配列番号6)からなる。
【0032】
一実施形態では、このペプチドは、上記エピトープの少なくとも1つを含む、好ましくはHERV-K gag及び/又はpol、より好ましくはネイティブのコンセンサスHERV-K gag及び/又はpol配列の、9~100、特に9~70、又は9~50、40、30、25、20、さらには10~30、12~25、好ましくは14~18、例えば14、15、16、17、又は18個の連続する残基を含み得、配列番号1~7の配列の対応するエピトープ以外のアミノ酸は、本明細書に開示されるHERV-K gag又はpolに存在するネイティブのアミノ酸であり、前記エピトープの5’、3’、又は5’及び3’に延びる。前記ペプチドは、長さが9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、又は45残基、典型的には14、15、16、17、又は18残基など50残基未満であり得る。本発明の別の目的は、FLQFKTWWI(配列番号1)、RLIPYDWEI(配列番号2)、KLIDCYTFL(配列番号3)、YLSFIKILL(配列番号4)、AMIPKDWPL(配列番号5)、YAMSNLFSI(配列番号6)、SMDDQLNQL(配列番号)、及びそれらの配列の少なくとも2つ(特にそれらの2、3、4、5、6、又は7個)からなる群から選択されるアミノ酸をコードする核酸、及び患者において核酸(ポリヌクレオチド)のインビボ発現に至るために必要な要素を含む発現ベクターである。
【0033】
3個のgagエピトープを含むHERVK-gagポリペプチドの例:
MGQTKSKIKSKYASYLSFIKILLKRGGVKVSTKNLIKLFQIIEQFCPWFPEQGTLDLKDWSQKETEGLHCEYVAEPVMAQSTQNVDYNQLQEVIYPETLKLEESKPRGTSPLPAGQVPVTLQPQKQVKENKTQPPVAYQYWPPAELQYRPPPESQYGYPGMPPAPQGRAPYPQPPTRRLNPTAPPSRQGSKLHEIAQEGEPPTVEARYKSFSIKKLKDMKEGVKQYGPNSPYMRTLLDSIAHGHRLIPYDWEILAKSSLSPSQFLQFKTWWIDGVQEQVRRNRAANPPVNIDADQLLGIGQNWSTISQQALMQNEAIEQVRAICLRAWEKIQDPSKEPYPDFVARLQDVAQKSIADEKARKVIVELMAYENANPECQSAIKPLKGKVPAGSDVISEYVKACDGIGGAMHKAMLMAQAITGVVLGGQVRTFGRKCYNCGQIGHLKKNCPVLNKQNITIQATTTGREPPDLCNEQRGQPQAPQQTGAFPIQPFVPQGFQGQQPPLSQVFQGISQLPQYNNCPPP(配列番号15)。
【0034】
4個のpolエピトープを含むHERVK-polポリペプチドの例:
NKSRKRRNRESLLGAATVEPPKPIPLTWKTEKPVWVNQWPLPKQKLEALHLLANEQLEKGHIEPSFSPWNSPVFVIQKKSGKWRMLTDLRAVNAVIQPMGPLQPGLPSPAMIPKDWPLIIIDLKDCFFTIPLAEQDCEKFAFTIPAINNKEPATRFQWKVLPQGMLNSPTICQTFVGRALQPVREKFSDCYIIHCIDDILCAAETKDKLIDCYTFLQAEVANAGLAIASDKIQTSTPFHYLGMQIENRKIKPQKIEIRKDTLKTLNDFQKLLGDINWIRPTLGIPTYAMSNLFSILRGDSDLNSKRMLTPEATKEIKLVEEKIQSAQINRIDPLAPLQLLIFATAHSPTGIIIQNTDLVEWSFLPHSTVKTFTLYLDQIATLIGQTRLRIIKLCGNDPDKIVVLTKEQVRQAFINSGAWKIGLANFVGIIDNHYPKTKIFQFLKLTTWILPKITRREPLENALTVFTDGSSNGKAAYTGPKERVIKTPYQSAQRAELVAVITVLQDFDQPINIISDSAYVVQATRDVETALIKYSMDDQLNQLFNLLQQTVRKRNFPFYITHIRAHTNLPGPLTKANEQADLLVSSALIKAQELHALTHVNAAGLKNKFDVTWKQAKDIVQHCTQCQVLHLPTQEAGVNPRGLCPNALWQMDVTHVPSFGRLSYVHVTVDTYSHFIWATCQSTSHVKKHLLSCFAVMGVPEKIKTDNGPGYCSKAFQKFLSQWKISHTTGIPYNSQGQAIVERTNRTLKTQLVKQKEGGDSKCTTPQMQLNLALYTLNFLNIYRNQTTTSAEQHLTGKKSPGENQLPVWIPTRHLKFYNEPIRDAKKSTSA(配列番号16)。
【0035】
配列番号15及び16の単離又は精製ポリペプチドは、本明細書で定義され、配列番号15及び/又は配列番号16のポリペプチドを含む又は発現する組成物、免疫原性組成物、及び抗癌ワクチンと同様に、本発明の目的である。
【0036】
一実施形態では、前記発現ベクターは、9~100、特に9~70、又は9~50、40、30、25、20個のアミノ酸ペプチドをコードする核酸(前記コードされたペプチドは、長さが9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、又は45残基など50残基未満であり得る)を含み、FLQFKTWWI(配列番号1)、RLIPYDWEI(配列番号2)、KLIDCYTFL(配列番号3)、YLSFIKILL(配列番号4)、AMIPKDWPL(配列番号5)、YAMSNLFSI(配列番号6)、SMDDQLNQL(配列番号7)の群から選択されるエピトープ、及び患者における核酸(ポリヌクレオチド)のインビボ発現に必要な要素を含む。上記のように、前記ベクターが、2、3、4、5、6、又は7個のエピトープ含有ペプチドの発現を誘導する又は2、3、4、5、6、又は7個の前記エピトープを含むペプチドの発現を誘導するように、前記ベクターは、核酸配列を含み得る。また上記のように、前記ベクターは、これらのエピトープの1つ又はいくつかを含むペプチドをコードする核酸、及び関連するエピトープに加えてアミノ酸残基を含み得、追加の残基は、pol又はgagに由来するか、gag又はpolに対して外来性であり得る。
【0037】
前記発現コンストラクト又はベクターは、細菌発現コンストラクト、DNA又はRNA発現コンストラクト、又はウイルス発現コンストラクトなどの非ウイルス発現コンストラクトであり得る。前記発現コンストラクトは、抗原提示細胞に位置し得る。前記コンストラクトは、発現コンストラクトの細胞のゲノムへの統合をもたらす可能性がある。
【0038】
本発明はまた、癌の治療に使用するためのこれらの組成物に関する。この使用に関係する癌が、特に(限定されないが)以下の癌から選択され得る:トリプルネガティブ乳癌を含む乳癌、卵巣癌、黒色腫、肉腫、奇形癌、膀胱癌、肺癌(非小細胞肺癌及び小細胞肺癌)、頭頸部癌、結腸直腸癌、神経膠芽細胞腫、及び白血病であり、例えば、トリプルネガティブ乳癌を含む乳癌、卵巣癌、黒色腫、肉腫、奇形癌、膀胱癌、及び白血病。
【0039】
前記使用は、患者、例えば乳癌患者において、T細胞応答、B細胞応答、又はその両方を活性化することを目的とし得る。
【0040】
本発明はまた、本明細書に開示されるような癌を治療するための免疫原性組成物またはワクチンの製造のための、本明細書に開示されるような1つの9アミノ酸長エピトープ又はいくつかの9アミノ酸長エピトープ、本明細書に開示される1つ又はいくつかのペプチド、本明細書に開示される1つの発現ベクター又はいくつかの発現ベクター、又は本明細書に開示される組成物の使用に関する。
【0041】
本発明の別の目的は、癌を治療するための方法であって、それを必要とする患者に、本明細書に開示されるような治療有効量の免疫原性組成物又はワクチンを投与することを含む、前記方法である。上述のように、前記組成物は、1又は複数のペプチド、又は1又は複数の発現ベクター若しくはコンストラクトを含み得る。前記方法は、前記ワクチンを2回以上投与することを含み得る。投与されるペプチドの1日治療有効量(本発明によるペプチドの総量)は、0.01mg~10mgの範囲内、0.025mg~5.0mgの範囲内、又は0.025mg~1.0mgの範囲内であり得る。
【0042】
本発明の別の目的は、患者の癌を治療するための方法であって、(a)癌治療を必要とする患者の細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を本発明による組成物又は免疫原性組成物と接触させること、及び(b)工程(a)の治療有効量のCTLを患者に投与すること、を含む前記方法である。前記方法は、投与前にエクスビボ又はインビボの方法によって前記CTLを増殖させることをさらに含み得る。接触させることは、本発明のペプチドをロードした抗原提示細胞を提供すること、又は発現コンストラクトら前記ペプチド又はポリペプチドを発現させることを含み得る。治療効果を提供するために必要な治療有効量のCTL細胞は前記対象の体重1キログラムあたり約0.1×104~約5×109個の細胞であり得る。前記方法は、工程(b)を2回以上行うことを含み得る。
【0043】
本発明はまた、癌治療を必要とする患者の細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を本発明に係る組成物又は免疫原性組成物と接触させること、及び場合によっては前記CTLをエクスビボで増殖させることを含む、CTLを調製する方法に関する。接触させることは、本発明のペプチドをロードした抗原提示細胞を提供すること、又は発現コンストラクトら前記ペプチド又はポリペプチドを発現させることを含み得る。
【0044】
上記のように調製された、薬学的ビヒクル中にそのようなCTLを含む組成物もまた、本発明の目的である。
【0045】
本発明の別の目的は、本発明からのエピトープペプチドを認識するT細胞受容体(TCR)改変T細胞及び薬学的ビヒクル中にそのようなT細胞を含む組成物である。これらのT細胞を調製するプロセスは、当業者に公知である。それは以下のようになり得る(そしてそのプロセスも本発明の目的である):(i)TCRα及びβ鎖は、本発明のエピトープペプチドを認識するT細胞から単離され、ベクター(レンチウイルス又はレトロウイルスなど)に挿入される、(ii)患者又はドナーの末梢血から分離されたT細胞は、このようなベクター(レンチウイルスやレトロウイルスなど)で修飾され、目的のTCRαβ配列をコードする、(iii)次に、これらの修飾T細胞をインビトロで増殖させて、治療に充分な数を取得し、患者に投与する。注目すべきことに、TCR配列は、TCR親和性を最適化するために変更してもよい。これらのT細胞の使用方法、例えば癌の治療は、本発明の別の目的であり、それを必要とする対象に効率的な量のそれらのT細胞を投与することを含む。治療効果を提供するために必要な治療有効量のT細胞は、前記対象の体重1キログラムあたり約0.1×104~約5×109個の細胞であり得る。
【0046】
一実施形態では、前記癌は、トリプルネガティブ乳癌、その他の乳癌、卵巣癌、黒色腫、肉腫、奇形癌、膀胱癌、肺癌(非小細胞肺癌及び小細胞肺癌)、頭頸部癌、結腸直腸癌、神経膠芽細胞腫、及び白血病であり、例えば、トリプルネガティブ乳癌を含む乳癌、卵巣癌、黒色腫、肉腫、奇形癌、膀胱癌、及び白血病である。
【0047】
本明細書に開示されるように作製又は前記エピトープを含む抗原はまた、抗HERV-K抗体を生成し、HERV-K+癌患者における抗HERV-K抗体の存在を検出するために使用され得る。
【0048】
本発明によるエピトープ及び少なくとも1つの抗原ペプチドを含む組成物は、診断、予後予測、又は免疫モニタリング法において使用され得る。特に、本発明はまた、患者における免疫応答の免疫モニタリングのための方法に関する。免疫療法(前記エピトープ又は本発明の組成物を使用するワクチン、又は適応抗腫瘍T細胞応答を誘導する任意の他の免疫療法)後の抗腫瘍適応応答の誘導は、本発明のHERVエピトープに対する特定のT細胞応答の測定によって評価される。測定は、例えば、本発明に記載のエピトープを含むマルチマーを使用することにより、直接又は本発明に記載のペプチドによるエクスビボ刺激の後に実施され得る。T細胞応答の測定はまた、蛍光活性化セルソーティング(FACS)分析、酵素結合免疫吸着法(ELISA)、酵素結合免疫スポット(ELISPOT)、又は他の方法を使用して特定のT細胞活性化を検出することにより、本発明のペプチドによるエクスビボ刺激後に実施され得る。
【0049】
一実施形態では、生体試料は、血液、腫瘍からの循環細胞又はリンパ球を含む血液誘導体である。好ましくは、前記方法は、血液中の一部かのリンパ球が、インビトロ刺激時に目的のペプチドを特異的に認識し、及び/又は特異的に再活性化できることを決定することを含む。
【0050】
当業者は、腫瘍関連ペプチドに対する免疫応答が生成されたかどうかを決定するための様々なアッセイを知っているであろう。「免疫応答」という語句には、細胞性免疫応答及び体液性免疫応答の両方が含まれる。ELISA、クロム放出アッセイなどの細胞傷害性Tリンパ球(CTL)アッセイ、末梢血リンパ球(PBL)を使用した増殖アッセイ、テトラマーアッセイ、サイトカイン産生アッセイなど、様々なBリンパ球及びTリンパ球アッセイが周知である。参照により本明細書に援用されるBenjamini et al. (1991)を参照。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本発明者らは、HERV配列をヒトゲノムに局在化し、HERVのRNAseq分析を開発した。公開データベースの84個の乳癌(42個のトリプルネガティブ乳癌(TNBC)及び42個のER+サブタイプ)のRNAseqデータを使用して、この発現を正常な乳房組織試料(51個は腫瘍周囲領域から、5個は乳房縮小術試料から)のRNAseqと比較した。19個のHERVはTNBCで特異的に過剰発現しており、その大部分はHERV-Kファミリーに属している。
【0052】
多重成分分析は、HERVを使用してトリプルネガティブサブタイプを特徴付けることができることを示した。HERVの発現は、TNBCのOCT4(POU5F1)の上昇及びTRIM28のレベルの低下に関連しており、これらはHERVの転写をそれぞれ正と負に調節する2つの因子である。EMTシグネチャーとの関係も観察された。これは、TNBCの幹細胞性機能に関連している可能性がある。興味深いことに、HERVの発現は、T細胞及び細胞傷害性リンパ球のトランスクリプトームシグネチャーと有意に相関した。これは、I型インターフェロン(IFN)応答及び抗原提示細胞シグネチャーの存在によって説明され得る。エフェクターT細胞シグネチャーは、免疫調節シグネチャー(負の免疫チェックポイント及びIDO1/2を含む)とサプレッサー細胞(制御性T細胞及びMDSCを含む)とによって相殺された。
【0053】
HERVの多型は、特定のHERV抗原に対するT細胞応答を特徴付ける、又は癌ワクチン接種の戦略でそれらを使用するための主な障害と見なされることがよくある。TNBCを特徴付ける限られた数のHERVの特異的発現に基づいて、TNBCで発現する異なるHERV間で共有されるGag(ギャグ)タンパク質及びPol(ポル)タンパク質内の共通領域を同定し、これらのドメインに存在するT細胞エピトープを決定できる可能性があるという仮説が立てた。TNBCで過剰発現し、各タンパク質のインタクトなORFを含むいくつかのHERV-KのGag及びPolの共通領域が効果的に見つかった。興味深いことに、これらの共有ドメインには、様々なエピトープ予測ツール(NetMHC I及びIIを含む)を使用して、最も高頻度なMHCクラスI及びII対立遺伝子の潜在的な強力なエピトープバインダーが豊富ないくつかの領域が含まれる。
【0054】
予測されたHLA-A2エピトープに対応する9アミノ酸長ペプチドを合成し、末梢血単核細胞(PBMC)を刺激して目的のペプチドに対して特異的応答を誘導することからなる、インビトロプロトコルに使用した。特定のCD8+T細胞の存在はマルチマー染色によって評価し、機能的応答(IFN-γ産生及び脱顆粒)は同族ペプチドでパルスされたT2細胞に対してさらに評価したところ、本発明に従って作製されたHERVペプチドに対するCD8+T細胞の特異的活性化が見られた。さらに、HERV発現腫瘍細胞株に対するHERV特異的CD8+T細胞の細胞傷害性は、ペプチド配列番号1に特異的なCD8+T細胞を使用して実証され、これらのペプチドによって生成されたT細胞の機能的抗腫瘍特性を確認した。
【0055】
腫瘍細胞におけるHERV発現の増強と得られた結果を考慮すると、以下の結論となり得る。
―HERVは腫瘍で優先的に発現し、19のHERVサブタイプがトリプルネガティブ乳癌(TNBC)を特徴付け、そのほとんどがHERV-Kファミリーに属している。
―T細胞エピトープを含む一般的な配列は、これらの19のHERVサブタイプ間に見られる。
―以下の7つの9アミノ酸長ペプチドが強力なHLA-A2バインダーとして同定され、同族ペプチドでパルスされたT2細胞又はHERV発現腫瘍細胞株に対して特異的な細胞傷害性応答を伴う特定のCD8+T細胞応答を誘発することができた:FLQFKTWWI(配列番号1)、RLIPYDWEI(配列番号2)、KLIDCYTFL(配列番号3)、YLSFIKILL(配列番号4)、AMIPKDWPL(配列番号5)、YAMSNLFSI(配列番号6)、SMDDQLNQL(配列番号7)。
―HERV産物は、機能的なT細胞応答を誘導可能なこのように共有される腫瘍抗原を表している。HERV由来の腫瘍抗原は、癌ワクチンの開発や適応免疫応答のモニタリングに使用され得る。
【0056】
定義
「単離(した/された)」、「精製(した/された)」、又は「生物学的に純粋な」という語句は、ネイティブ状態で見られるように通常材料に付随する成分を実質的又は本質的に含まない材料を指す。したがって、本発明による単離ペプチドは、好ましくは、それらのインサイチュ環境においてペプチドに通常関連する材料を含まない。
【0057】
「主要組織適合遺伝子複合体」又は「MHC」は、生理学的免疫応答に関与する細胞相互作用の制御に役割を果たす遺伝子のクラスターである。ヒトでは、MHC複合体はHLA複合体としても知られている。MHC複合体及びHLA複合体の詳細な説明について。
【0058】
「ヒト白血球抗原」又は「HLA」は、ヒトクラスI又はクラスIIの主要組織適合遺伝子複合体(MHC)タンパク質である。
【0059】
「薬学的に許容される」又は「薬理学的に許容される」という語句は、ヒトに投与された場合にアレルギー又は同様の有害な反応を生じない分子実体及び組成物を指す。有効成分としてタンパク質を含む水性組成物の調製は、当技術分野でよく理解されている。典型的には、そのような組成物は、液体溶液又は懸濁液のいずれかとして、薬学的に許容される通常のビヒクル、賦形剤、又は担体を注射可能に調製され、注射前の液体への溶解または液体への懸濁に適した固体形態にも調製され得る。
【0060】
本明細書で使用される場合、「ビヒクル、賦形剤、担体」には、任意の全ての溶媒、分散媒体、ビヒクル、コーティング、希釈剤、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤、緩衝液、担体溶液、懸濁液、コロイドなどが含まれる。医薬活性物質のためのそのような媒体及び薬剤の使用は、当技術分野で周知である。
【0061】
「免疫原性ペプチド」は、ペプチドが患者の免疫系に提示されると、体液性及び/又は細胞性免疫応答を誘発する可能性があり、この応答は免疫原性であるが、必ずしも保護的(防御的)ではないことを意味する。これは「免疫原性組成物」に適用される。
【0062】
「免疫原性応答」は、感染性病原体又は腫瘍抗原に由来する抗原に対するCTL及び/又はHTL応答を指す。免疫応答には、ヘルパーT細胞の刺激によって促進された抗体応答も含まれる場合がある。
【0063】
特に、免疫原性組成物は、組成物中に存在するHERVペプチドに対して、及び/又は腫瘍細胞で発現される同様のエピトープを含むHERVペプチド又はポリペプチドに対して、CD8+T細胞のインビボ活性化を誘導し得る。
【0064】
「ワクチン組成物」又は「ワクチンペプチド」は、患者に投与され、それぞれ患者の免疫系に提示されると、組成物又はペプチドが、体液性及び/又は細胞性免疫応答を誘導し得、この免疫応答が保護的(防御的)であることを意味する。
【0065】
「保護(protective)免疫応答」は、感染性病原体又は腫瘍抗原に由来する抗原に対するCTL及び/又はHTL応答を指し、これは、疾患の症状又は進行を予防するか、又は少なくとも部分的に阻止する。免疫応答には、ヘルパーT細胞の刺激によって促進された抗体応答も含まれる場合がある。
【0066】
「免疫原性」とは、ペプチド又はエピトープが患者、特に患者の血液、組織、又は臓器に存在すると、体液性及び/又は細胞性免疫応答を誘発できることを意味する。
【0067】
組成物又はベクターが「発現を誘導する」とは、ペプチドをコードする、核酸、DNA又はRNAを含む1又は複数の発現ベクターを含むことを意味する。前記ベクターは、特に、RNAベクター、DNAベクター若しくはプラスミド、ウイルスベクター、又は細菌ベクターであり得る。ベクターの性質に応じて、そして当業者に周知のように、発現カセットの宿主細胞ゲノムへの組み込みがあり得るか、または組み込みがあり得ない。発現ベクター又は発現カセットは、患者における核酸(ポリヌクレオチド)のインビボ発現に必要な要素をさらに含み得る。最低限として、開始コドン(ATG)、終止コドン、及びプロモーター、並びにプラスミドやポックスウイルス以外のウイルスベクターなどの特定のベクターのポリアデニル化配列からなる。ATGはリーディングフレームの5’に配置され、終止コドンは3’に配置される。周知のように、発現を制御することを可能にする他の要素、例えば、エンハンサー配列、安定化配列、及びペプチドの分泌を可能にするシグナル配列が存在し得る。
【0068】
タンパク質又はペプチドは、標準的な分子生物学的技術によるタンパク質、ポリペプチド、又はペプチドの発現、天然源からのタンパク質又はペプチドの単離、又はタンパク質又はペプチドの化学合成を含む、当業者に公知の任意の技術によって作製され得る。合成ペプチドは通常約35残基の長さであり、これはApplied Biosystems(カリフォルニア州フォスターシティ)から入手可能な自動ペプチド合成装置のおおよその長さの上限である。より長いペプチドもまた、例えば、組換え手段によって調製され得る。
【0069】
「ペプチドエピトープ」又は「エピトープ」は、ペプチドがHLA分子に結合し、CTL及び/又はHTL応答を誘導するような対立遺伝子特異的モチーフ又はスーパーモチーフを含むペプチドである。したがって、少なくとも1つの「ペプチドエピトープ」を含む本発明の免疫原性又はワクチン用ペプチドは、適切なHLA分子に結合し、その後、免疫原性又はワクチン用ペプチドが由来する抗原に対して細胞傷害性T細胞応答又はヘルパーT細胞応答を誘導することができる。
【0070】
本発明のペプチドは、置換、挿入、又は欠失バリアントなどのアミノ酸配列バリアントをさらに使用し得ることが企図される。欠失バリアントは、ネイティブのタンパク質の1又は複数の残基を欠失している。挿入バリアントは、通常、ポリペプチドの非末端点での物質の付加を伴う。置換は、既存のアミノ酸への変更である。これらの配列バリアントは、トランケーション(短縮化)、点突然変異、及びフレームシフト突然変異を生成する可能性がある。当業者に公知のように、合成ペプチドは、これらの突然変異によって生成され得る。
【0071】
アミノ酸配列バリアントは、追加のN末端又はC末端アミノ酸などの追加の残基を含み得るが、それでも、配列が生物学的活性の維持を含む上記の基準を満たしている限り、本質的に本明細書に開示される配列の1つに記載されている通りであることが理解されよう。
【0072】
以下は、本発明のペプチド又はタンパク質などのタンパク質のアミノ酸を変更して、変異、短縮、又は修飾されたタンパク質を作製することに基づく検討である。例えば、特定のアミノ酸は、腫瘍関連ペプチド又はタンパク質の他のアミノ酸と置換され、より大きなCTL免疫応答をもたらし得る。タンパク質の生物学的機能活性を定義するのはタンパク質の相互作用能力及び性質であるため、特定のアミノ酸置換をタンパク質配列及びその基礎となる核酸コード配列で行うことができ、それによって変異、短縮、又は修飾タンパク質を産生する。
【0073】
このような変化を作製する際に、アミノ酸の親水性・疎水性指標(hydropathic index)が考慮され得る。タンパク質に相互作用的な生物学的機能を付与する際の親水性・疎水性指標の重要性は、当技術分野で通常理解されている。アミノ酸の相対的な親水性・疎水性特性が、得られるタンパク質の二次構造に寄与し、それが次に、タンパク質と他の分子、例えば、酵素、基質、受容体、DNA、抗体、抗原などとの相互作用を定義することが認められている。
【0074】
同様のアミノ酸の置換は、親水性に基づいて効果的に行うことができることも当技術分野で理解されている。本明細書に参照として援用される米国特許第4,554,101号には、隣接するアミノ酸の親水性によって支配される、タンパク質の最大の局所平均親水性は、タンパク質の生物学的特性と相関することが記載されている。以下の親水性値がアミノ酸残基に割り当てられている:塩基性アミノ酸:アルギニン(+3.0)、リジン(+3.0)、及びヒスチジン(-0.5);酸性アミノ酸:アスパラギン酸(+3.0±1)、グルタミン酸(+3.0±1)、アスパラギン(+0.2)、及びグルタミン(+0.2);親水性非イオン性アミノ酸:セリン(+0.3)、アスパラギン(+0.2)、グルタミン(+0.2)、及びスレオニン(-0.4);硫黄含有アミノ酸:システイン(-1.0)及びメチオニン(-1.3);疎水性非芳香族アミノ酸:バリン(-1.5)、ロイシン(-1.8)、イソロイシン(-1.8)、プロリン(-0.5±1)、アラニン(-0.5)、及びグリシン(0);疎水性芳香族アミノ酸:トリプトファン(-3.4)、フェニルアラニン(-2.5)、及びチロシン(-2.3)。
【0075】
アミノ酸は、同様の親水性を有する別のものと置換することができ、生物学的又は免疫学的に修飾されたタンパク質を産生できることが理解される。そのような変化において、親水性値が±2以内であるアミノ酸の置換が好ましく、±1以内であるものが特に好ましく、そして±0.5以内のものがさらに特に好ましい。
【0076】
上で概説したように、アミノ酸置換は、通常、アミノ酸側鎖置換基の相対的類似性、例えば、それらの疎水性、親水性、電荷、サイズなどに基づく。前述の様々な特性を考慮に入れる例示的な置換は、当業者に周知であり、以下を含む:アルギニン及びリジン;グルタミン酸及びアスパラギン酸;セリン及びスレオニン;グルタミン及びアスパラギン;並びにバリン、ロイシン、及びイソロイシン。
【0077】
その他の構成要素
本発明の他の実施形態では、前記組成物は、追加の免疫刺激剤又はそのような薬剤をコードする核酸を含み得る。免疫刺激剤には、追加の抗原、免疫調節剤、抗原提示細胞、又はアジュバントが含まれるが、これらに限定されない。他の実施形態では、1又は複数の追加の薬剤がペプチドに共有結合している。キトサンを含む多糖類などの他の免疫増強化合物もまた、本発明の組成物と共に使用することが企図されている。複数の(2以上の)エピトープ又はペプチドは、互いに架橋され得る(例えば、重合され得る)。
【0078】
免疫化又はワクチン接種のための小さなペプチドの使用はまた、典型的には、最終産物又は標的ペプチド若しくはエピトープに免疫原性又は最強の免疫原性を与える担体ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質へのペプチドの結合を必要とし得る。よって、本発明の一実施形態では、FLQFKTWWI(配列番号1)、RLIPYDWEI(配列番号2)、KLIDCYTFL(配列番号3)、YLSFIKILL(配列番号4)、AMIPKDWPL(配列番号5)、YAMSNLFSI(配列番号6)、及びSMDDQLNQL(配列番号7)から選択される各ペプチドは、本発明の結合産物又はペプチドに免疫原性又は最強の免疫原性を付与するペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質(追加のアミノ酸残基)に結合又はペプチド結合を介して結合される。
【0079】
一実施形態では、FLQFKTWWI(配列番号1)、RLIPYDWEI(配列番号2)、KLIDCYTFL(配列番号3)、YLSFIKILL(配列番号4)、AMIPKDWPL(配列番号5)、YAMSNLFSI(配列番号6)、及び/又はSMDDQLNQL(配列番号7)のペプチド又はエピトープは、より長いペプチド又はポリペプチド、特にHERV-Kペプチド又はポリペプチドに存在し、好ましくは、エピトープが由来するHERV-Kにおけるエピトープを含む天然のより長いペプチド又はポリペプチドである。したがって、より長い配列は、例として、配列番号8~14の配列で提示される。バリアントでは、いくつかのエピトープが同じ長いペプチドの一部である。それらのより長いペプチドを、結合した最終産物に免疫原性又は最強の免疫原性を付与するペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質に結合させることも本発明に包含される。
【0080】
本発明に係る免疫原性組成物又はワクチンにおいて、それに含まれる、又はベクターによって発現されるペプチドは、免疫原性であるか、又は保護(防御)免疫応答を誘導することができる。
【0081】
前記組成物又はペプチド若しくはエピトープが、免疫モニタリングなどの診断またはアッセイの目的で使用される場合、前記ペプチド若しくはエピトープは抗原性であり得る。よって、前記組成物の一実施形態では、FLQFKTWWI(配列番号1)、RLIPYDWEI(配列番号2)、KLIDCYTFL(配列番号3)、YLSFIKILL(配列番号4)、AMIPKDWPL(配列番号5)、YAMSNLFSI(配列番号6)、及び/又はSMDDQLNQL(配列番号7)のペプチド若しくはエピトープ、又はそのようなエピトープを含むペプチド若しくはエピトープは、抗原性である。抗原性ペプチド又はエピトープは、本明細書に開示されるように、非結合形態(エピトープ配列配列番号1~7からなる)であり得るか、又はペプチド若しくはポリペプチド部分に結合され得る。
【0082】
当業者は、腫瘍関連ペプチドに対する免疫応答が生成されたかどうかを決定するための様々なアッセイを知っているであろう。「免疫応答」という語句には、細胞性免疫応答及び体液性免疫応答の両方が含まれる。ELISA、クロム放出アッセイなどの細胞傷害性Tリンパ球(CTL)アッセイ、末梢血リンパ球(PBL)を使用した増殖アッセイ、テトラマーアッセイ、サイトカイン産生アッセイなど、様々なBリンパ球及びTリンパ球アッセイが周知である。参照により本明細書に援用されるBenjamini et al. (1991)を参照。
【0083】
アジュバント
当技術分野でも周知のように、特定の免疫原組成物の免疫原性は、アジュバントとして知られる免疫応答の非特異的刺激因子の使用によって増強されてもよい。一部のアジュバントは、抗原の提示方法に影響を与える。例えば、タンパク質抗原がミョウバンによって沈殿すると、免疫応答が増加する。抗原の乳化はまた、抗原提示の期間を延長する。適切な分子アジュバントには、サイトカイン、毒素、又は合成組成物などの全ての許容可能な免疫刺激化合物が含まれる。
【0084】
例示的な、しばしば好ましいアジュバントには、完全フロイントアジュバント(死滅結核菌を含む免疫応答の非特異的刺激剤)、不完全フロイントアジュバント、及び水酸化アルミニウムアジュバントが含まれる。使用され得る他のアジュバントには、IL-1、IL-2、IL-4、IL-7、IL-12、インターフェロン、GM-CSF、BCG、水酸化アルミニウム、thur-MDP及びnor-MDPなどのMDP化合物、CGP(MTP-PE)、リピドA、及びモノホスホリルリピドA(MPL)が挙げられる。細菌から抽出された3つの成分、MPL、トレハロースジミコレート(TDM)、及び細胞壁骨格(CWS)を2%スクアレン/Tween80エマルジョンに含むRIBIも検討される。MHC抗原を使用することも可能である。
【0085】
一態様では、アジュバント効果は、リン酸緩衝生理食塩水中の約0.05~約0.1%の溶液で使用されるミョウバンなどの薬剤の使用によって達成される。あるいは、前記抗原は、約0.25%の溶液として使用される糖の合成ポリマー(Carbopol(登録商標))との混合物として作製される。アジュバント効果はまた、それぞれ約70℃~約101℃の範囲内の温度で30秒~2分間の熱処理によって、ワクチン中の抗原の凝集をもたらし得る。アルブミンに対するペプシン処理(Fab)抗体、クリプトスポリジウム・パルバム(C.parvum)などの細菌細胞との混合物、グラム陰性菌のエンドトキシン又はリポ多糖成分、モノオレイン酸マンニド(Aracel A)などの生理学的に許容される油性ビヒクル中のエマルジョン、ブロック代替品として使用されるパーフルオロカーボン(Fluosol-DA(登録商標))の20%溶液を含むエマルジョンで再活性化することによる凝集もまた採用され得る。
【0086】
いくつかのアジュバント、例えば、細菌から得られる特定の有機分子は、抗原ではなく宿主に作用する。例として、細菌性ペプチドグリカンであるムラミルジペプチド(N-アセチルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミン[MDP])が挙げられる。MDPはマクロファージを刺激するが、B細胞を直接刺激するようにも見える。
【0087】
特定の実施形態において、ヘモシアニン及びヘモエリスリンもまた、本発明において使用され得る。特定の実施形態では、キーホールリンペット(keyhole limpet、KLH)からのヘモシアニンの使用が好ましいが、他の軟体動物及び節足動物のヘモシアニン及びヘモエリスリンを使用してもよい。
【0088】
様々な多糖アジュバントも使用され得る。例えば、マウスの抗体応答に対する様々な肺炎球菌多糖体アジュバントの使用が記述されている。脱アセチル化キチンを含む、キチン及びキトサンなどの多糖類のポリアミン種が特に好ましい。
【0089】
アジュバントの別の群は、細菌ペプチドグリカンのムラミルジペプチド(MDP、N-アセチルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミン)群である。アミノ酸誘導体スレオニル-MDP、及び脂肪酸誘導体MTPPEなどのムラミルジペプチドの誘導体もまた企図される。米国特許第4,950,645号には、ムラミルジペプチドの親油性二糖-トリペプチド誘導体が記載され、ホスファチジルコリン及びホスファチジルグリセロールから形成された人工リポソームでの使用を目的として記載されている。
【0090】
BCG(マイコバクテリウム(Mycobacterium)の弱毒化株であるカルメット・ゲラン(Calmette-Guerin)桿菌)及びBCG細胞壁骨格(CWS)もまた、トレハロースジミコレートの有無にかかわらず、アジュバントとして使用され得る。トレハロースジミコレート自体を使用してもよい。BCGは、その免疫刺激特性のために重要な臨床ツールである。
【0091】
両親媒性界面活性剤、例えば、サポニン及びQS21(Cambridge Biotech社)などの誘導体は、本発明の免疫原と共に使用するためのさらに別の群のアジュバントを形成する。非イオン性ブロック共重合体界面活性剤も使用され得る。オリゴヌクレオチドは、アジュバントの別の有用な群である。Quil-A(登録商標)及びレンチナンは、本発明の特定の実施形態において使用され得る他のアジュバントである。
【0092】
アジュバントの別の群は、米国特許第4,866,034号の精製無毒化エンドトキシンなどの無毒化エンドトキシンである。
【0093】
当業者は、本発明に従って細胞ワクチンにコンジュゲート可能な様々な種類のアジュバントを知っており、これらには、中でもアルキルリゾリン脂質(ALP)、BCG、及びビオチン(ビオチン化誘導体を含む)が含まれる。使用が特に企図されている特定のアジュバントは、グラム細胞からのテイコ酸である。これらには、リポテイコ酸(LTA)、リビトールテイコ酸(RTA)、及びグリセロールテイコ酸(GTA)が含まれる。それらの合成対応物の活性形態もまた、本発明に関連して使用され得る。
【0094】
アジュバントは、核酸(例えば、DNA又はRNA)によってコードされ得る。そのようなアジュバントはまた、抗原をコードする核酸(例えば、発現ベクター)、又は別個のベクター若しくは他のコンストラクトにコードされ得ることが企図される。アジュバントをコードする核酸は、例えば脂質又はリポソームとともに、直接送達されてもよい。そのようなアジュバントの例は、ポリ-ICLCである。
【0095】
発現ベクター
本発明によるペプチドは、患者の身体においてインビボで産生され得る。
【0096】
免疫原性組成物又はワクチンは、ペプチドがインサイチュで生成されるように、上記のようにペプチドの1又は複数をコードするRNA又はDNAを含み得る。RNA又はDNAは、核酸発現システム(ヌードDNA又はプラスミド、RNAベクター)、細菌又はウイルス発現システムを含む、当技術分野の当業者に公知の様々な送達システムのいずれかに存在し得る。適切な核酸発現システムには、患者での発現に必要なRNA又はDNA配列(適切なプロモーターや終結シグナルなど)が含まれている。細菌送達システムは、その細胞表面上のポリペプチドの免疫原性部分の発現を誘導する細菌(カルメット・ゲラン桿菌など)の投与を伴う。好ましい実施形態において、RNA又はDNAは、非病原性(欠陥)の複製能力のあるウイルスの使用を含み得るウイルス発現システム(例えば、ワクシニア若しくは他のポックスウイルス、レトロウイルス、又はアデノウイルス)を使用して導入され得る。そのような発現系にRNA又はDNAを組み込むための技術は、当業者に周知である。DNAは、例えばUlmer et al., Science 259:1745-1749 (1993)に記載され、Cohen, Science 259:1691-1692 (1993)において再検討されるように「ネイキッド(naked)」であってもよい。ネイキッドDNAの取り込みは、細胞に効率的に輸送される生分解性ビーズにDNAをコーティングすることによって増加させることができる。
【0097】
好ましいベクターには、DNAベクター、RNAベクター、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ワクシニアウイルス及び弱毒化ポックスウイルス(改変ワクシニアウイルスアンカラ(MVA)、NYVAC、ALVAC、TROVACなど)などのポックスウイルスなどのウイルスベクター、シンドビスウイルス、サイトメガロウイルス、単純ヘルペスウイルスなどの他のウイルスベクター、並びに細菌ベクターが挙げられる。
【0098】
「発現」という用語は、その最も一般的な意味で本発明に従って使用され、例えば転写及び/又は翻訳によるRNA及び/又はペプチド若しくはポリペプチドの産生を含む。RNAに関して、「発現」又は「翻訳」という用語は、特にペプチド又はポリペプチドの産生に関連している。また、核酸の部分的な発現も含まれる。さらに、発現は一過性又は安定的であり得る。
【0099】
発現ベクターを細胞に導入可能な方法はいくつかある。本発明の特定の実施形態において、発現ベクターは、ウイルス又はウイルスゲノムに由来する改変ベクターを含む。特定のウイルスが受容体を介したエンドサイトーシスを介して細胞に侵入し、宿主細胞のゲノムに組み込まれ、ウイルス遺伝子を安定的かつ効率的に発現する能力により、外来遺伝子を哺乳動物細胞に導入するための有望な候補となっている。遺伝子ベクターとして使用された最初のウイルスは、パポーバウイルス(シミアンウイルス40、ウシ乳頭腫ウイルス、及びポリオーマ)及びアデノウイルスを含むDNAウイルスであった。
【0100】
核酸の送達のための特定の方法は、アデノウイルス発現ベクターの使用を含む。アデノウイルスベクターはゲノムDNAに組み込む能力が低いことが知られているが、この機能は、これらのベクターによってもたらされる遺伝子導入の高効率によって埋め合わせられる。「アデノウイルス発現ベクター」は、(a)コンストラクトのパッケージングをサポートし、(b)その中にクローン化された組織又は細胞特異的コンストラクトを最終的に発現するのに十分なアデノウイルス配列を含むコンストラクトを含むことを意味する。遺伝子構成又はアデノウイルス、36kbの線状二本鎖DNAウイルスの知識により、アデノウイルスDNAの大きな断片を最大7kbの外来配列で置換可能である。
【0101】
核酸は、アデノウイルス支援トランスフェクションを使用して細胞に導入され得る。アデノウイルス結合システムを使用した細胞システムでは、トランスフェクション効率の向上が報告されている(Kelleher and Vos, 1994;Cotten et al., 1992;Curiel, 1994)。アデノ随伴ウイルス(AAV)は、本発明のワクチンで使用するための有望なベクターシステムである。AAVは感染性の広い宿主範囲を有する。rAAVベクターの生成と使用に関する詳細については、それぞれ参照により本明細書に援用される米国特許第5,139,941号及び第4,797,368号に記載されている。
【0102】
レトロウイルスは、遺伝子を宿主ゲノムに統合し、大量の外来遺伝物質を伝達し、広範囲の種や細胞型に感染し、特別な細胞株にパッケージングされるため、ワクチンの遺伝子送達ベクターとして有望である。レトロウイルスベクターを構築するために、特定のウイルス配列の代わりに核酸(例えば、目的の抗原をコードするもの)をウイルスゲノムに挿入して、複製欠損ウイルスを産生する。ビリオンを生成するために、gag、pol、及びenv遺伝子を含むが、LTR及びパッケージング成分を含まないパッケージング細胞株が構築される。レトロウイルスLTR及びパッケージング配列とともにcDNAを含む組換えプラスミドが特別な細胞株に導入されると(例えば、リン酸カルシウム沈殿によって)、パッケージング配列により、組換えプラスミドのRNA転写物をウイルス粒子にパッケージングすることができ、ウイルス粒子は培地に分泌される。次に、組換えレトロウイルスを含む培地を収集し、所望により濃縮し、遺伝子導入に使用する。
【0103】
レンチウイルスは複雑なレトロウイルスであり、一般的なレトロウイルス遺伝子であるgag、pol、及びenvに加えて、調節機能又は構造機能を有する他の遺伝子が含まれている。レンチウイルスベクターは当技術分野で周知である(例えば、米国特許第6,013,516号及び第5,994,136号を参照)。レンチウイルスのいくつかの例には、ヒト免疫不全ウイルス(HIV-1、HIV-2)、及びサル免疫不全ウイルス(SIV)が含まれる。レンチウイルスベクターは、HIV病原性遺伝子を多重に弱毒化することによって生成され、例えば、env、vif、vpr、vpu、及びnef遺伝子が欠失され、ベクターが生物学的に安全になっている。
【0104】
組換えレンチウイルスベクターは、非分裂細胞に感染することができ、インビボ及びエクスビボの両方の遺伝子導入及び核酸配列の発現に使用可能である。例えば、適切な宿主細胞が、パッケージング機能、すなわち、gag、pol、及びenv、並びにrev及びtatを運ぶ2以上のベクターでトランスフェクトされる非分裂細胞に感染可能な組換えレンチウイルスが、参照により本明細書に援用される米国特許第5,994,136号に記載されている。特定の細胞型の受容体を標的とするために、エンベロープタンパク質を抗体又は特定のリガンドと結合させることによって組換えウイルスを標的にすることができる。目的の配列(調節領域を含む)を、特定の標的細胞上の受容体のリガンドをコードする別の遺伝子とともにウイルスベクターに挿入することにより、例えば、当該ベクターは標的特異的である。
【0105】
免疫原性組成物又はワクチン投与
本発明の方法及び組成物を使用して、細胞を死滅させ、細胞増殖を阻害し、転移を阻害し、腫瘍又は組織のサイズを減少させ、そうでなければ腫瘍細胞の悪性表現型を逆転又は減少させるためには、当業者は通常本発明のペプチドを投与して(又は発現させて)、標的の癌細胞を認識して死滅させることが可能なT細胞を誘導するであろう。投与経路は、当然、病変の位置及び性質によって異なり、例えば、皮内、経皮、非経口、静脈内、筋肉内、鼻腔内、皮下、経皮、気管内、腹腔内、腫瘍内、灌流、洗浄、直接注射、及び経口投与が含まれる。
【0106】
腫瘍内注射、又は腫瘍血管系への注射は、個別の、固形の、アクセス可能な腫瘍のために特に企図されている。局在的、局所的、又は全身的な管理も適切であり得る。4cmを超える腫瘍の場合、投与容量は約4~10mL(好ましくは10mL)であり、一方、4cm未満の腫瘍の場合、約1~3mL容量が使用される(好ましくは3mL)。単回投与として送達される複数回の注射は、約0.1~約0.5mLの容量を含む。ウイルス粒子は、約1cm間隔でスペースを空けて腫瘍に複数回注射することによって有利に接触させることができる。
【0107】
外科的介入の場合、本発明を術前に使用して、手術不能な腫瘍を切除の対象にしてもよい。あるいは、本発明は、手術時、及び/又はその後、残存又は転移性疾患を治療するために使用され得る。例えば、切除された腫瘍床は、腫瘍関連ペプチド、ポリペプチド、又はそれらをコードするコンストラクトを含む製剤で注射又は灌流され得る。灌流は、例えば、手術部位にカテーテルを移植したままにすることによって、切除後も継続することができる。定期的な術後治療も想定される。
【0108】
継続的な投与はまた、適切な場合、例えば、腫瘍が切除され、腫瘍床が残存する顕微鏡的疾患を排除するために治療される場合に適用され得る。
【0109】
シリンジ又はカテーテルによる送達が好ましい。そのような連続灌流は、治療開始後約1~2時間、約2~6時間、約6~12時間、約12~24時間、約1~2日、約1~2週間以上の期間にわたって起こり得る。通常、連続灌流による治療用組成物の用量は、灌流が発生する期間にわたって調整された、単回又は複数回の注射によって与えられる用量と同等であろう。特に黒色腫及び肉腫の治療において、四肢灌流を使用して、本発明の治療用組成物を投与することができることがさらに企図される。
【0110】
治療計画も様々であり、多くの場合、腫瘍の種類、腫瘍の位置、疾患の進行、及び患者の健康や年齢によって異なり得る。明らかに、特定の種類の腫瘍はより積極的な治療を必要とするであろうが、同時に、特定の患者はより困難なプロトコルに耐えられない場合がある。臨床医は、治療用製剤の既知の有効性及び毒性(もしあれば)に基づいてそのような決定を下すのに最も適しているであろう。
【0111】
医薬免疫原性又はワクチン組成物の有効量は、通常、疾患若しくは状態又はその症状の程度を検出可能かつ反復的に改善、低減、最小化、又は制限するのに十分な量として定義される。疾患の除去、根絶、又は治癒を含む、より厳密な定義がワクチン組成物に適用され得る。
【0112】
特定の実施形態では、治療される腫瘍は、少なくとも最初は切除可能ではない場合がある。治療用ウイルスコンストラクトによる治療は、腫瘍縁での縮小により、又は特定の特に浸潤部分の除去によって、腫瘍の切除可能性を高め得る。治療後、切除が可能となり得る。切除後の追加治療は、腫瘍部位の顕微鏡的残存病変を排除するのに役立つであろう。
【0113】
原発腫瘍又は切除後の腫瘍床の典型的な治療方針には、複数回の投与が含まれるだろう。投与されるペプチドの1日治療有効量(本発明によるペプチドの総量)は、0.01mg~10mgの範囲内、特に0.025mg~5.0mgの範囲内、又は0.025mg~1.0mgの範囲であり得る。
【0114】
治療には、様々な「単位用量」が含まれ得る。単位用量は、所定量の治療用組成物を含むものとして定義される。投与される量及び特定の経路や製剤は、臨床分野の当業者の技能の範囲内であり、ペプチド組成物又は発現ベクター組成物のいずれかとしての組成物の性質に応じて変化し得る。単位用量は、単回注射として投与する必要はなく、設定された期間にわたる持続注入を含み得る。本発明の単位用量は、ウイルスコンストラクトのプラーク形成単位(pfu)に関して簡便に説明され得る。単位用量は、103、104、105、106、107、108、109、1010、1011、1012、又は1013pfu以上の範囲内である。あるいは、ベクターの種類と達成可能な力価に応じて、単位用量は1~100、10~50、100-1000、又は最大約1×104、1×105、1×106、1×107、1×108、1×109、1×1010、1×1011、1×1012、1×1013、1×1014、又は1×1015以上の感染性ウイルス粒子(vp)を患者又は患者の細胞へ送達するものである。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【
図1】
図1Aは、TNBCで過剰発現している19のHERVサブタイプの発現と免疫シグネチャーとの相関を示す図であり、抗原提示、細胞毒性、及び免疫調節経路との相関を表しており、正の相関は、各ドット(明るい灰色又は暗い灰色)で示される。
図1Bは、一例としてHERV-K10発現とT細胞シグネチャーとの相関を示す図である。
【
図2】
図2Aは、CMV pp65ペプチドによる刺激の有り無し(それぞれ上象限)及びHERVペプチドP5(配列番号5)による刺激の有り無し(それぞれ下象限)でのCD8
+T細胞のデキストラマー染色の代表的なプロットを示す図である。
図2Bは、数人のドナーのPBMCに対する特定のHERVペプチド(P1~P7:配列番号1~7)又はコントロールによる刺激の有り無しでの12日目のデキストラマー陽性CD8
+T細胞の割合(%)を示す図である。
【
図3】
図3Aは、陰性対照及び陽性対照(上象限)及びHERVペプチドP1、P2、及びP3(配列番号1、2、及び3)(下象限)でパルスしたT2細胞との接触後のCD8
+T細胞によるIFN-γ産生の代表的なプロットを示す図である。
図3Bは、数人のドナーのPBMCに対する特定のHERVペプチド(P1、P2、及びP3:配列番号1、2、及び3)又はコントロールによる刺激の有り無しでの12日目のIFN-γ陽性CD8
+T細胞の割合(%)を示す図である。
【
図4】
図4Aは、CMV pp65ペプチドによる刺激の有り無し(それぞれ上象限)及びHERVペプチドP1(配列番号1)による刺激の有り無し(それぞれ下象限)でのCD8
+T細胞のデキストラマー染色の代表的なプロットを示す図である。
図4Bは、数人のドナーのPBMCに対するペプチド刺激状態対非刺激状態(P1~P7:配列番号1~7)の12日目のデキストラマー陽性特異的CD8
+T細胞の割合(%)の倍率変化比を示す図である。
図4Cは、12日間の刺激後及び同族ペプチドでパルスしたT2細胞との24時間の接触後のIFN-γ
+スポット及びグランザイム(Granzyme)-β
+スポットの数の代表的なヒストグラムを示す図である。
【
図5】
図5Aは、ドナーaにおける陰性対照及び陽性対照(上象限)及びHERVペプチドP1、P2、及びP3(配列番号1~3)(下象限)でパルスしたT2細胞との接触後のCD8
+T細胞によるIFN-γ産生の代表的なプロットを示す図である。
図5A(続き)は、ドナーbにおける陰性対照及び陽性対照(上象限)及びHERVペプチドP4、P5、P6、及びP7(配列番号4~7)(下象限)でパルスしたT2細胞との接触後のCD8
+T細胞によるIFN-γ産生の代表的なプロットを示す図である。
図5Bは、数人のドナーのPBMCに対する特定のHERVペプチド(P1~P7:配列番号1~7)又はコントロールによる刺激の有り無しでの12日目のIFN-γ陽性CD8
+T細胞の割合(%)を示す図である。
【
図6】
図6Aは、特定のP1のCD8
+T細胞(右象限)及びそれらの陰性対応物(左象限)の選別及び増殖後のP1(配列番号1)のデキストラマー染色の代表的なプロットを示す図である。
図6Bは、P1(配列番号1)特異的CD8
+T細胞とP1又は陰性対照(ペプチド負荷なし)でパルスしたT2細胞の培養24時間後のIFN-γ+スポット及びグランザイム-β
+スポットの数の代表的なヒストグラムを示す図である。
図6Cは、MDA-MB-231細胞株(目的のペプチドとパルスを実施又は未実施)をP1(配列番号1)特異的CD8
+T細胞又はそれらの陰性対応物と共培養した際のリアルタイム細胞死定量化の代表的な曲線を示す図である。
図6Dは、目的のペプチドとパルスを実施又は非実施のMDA-MB-231細胞株との6時間の共培養後、P1(配列番号1)特異的CD8
+T細胞(黒)対それらの陰性対応物(非特異的CD8
+T細胞、白)のIFN-γ(PE)の細胞内染色の割合(%)の代表的なヒストグラムを示す図である。HLA-A2遮断抗体の添加を対照として使用した。
【
図7】
図7Aは、TNBCの小片から増殖したCD8
+細胞に見られるデキストラマー陽性腫瘍浸潤リンパ球(TIL)(黒色象限)の代表的なスキーマを示す図である。P1~P7(配列番号1~7)はペプチド1~7のデキストラマーを表し、TNBC1~TNBC4は4人の異なる患者を表す。
図7Bは、卵巣腫瘍の小片から増殖したCD8
+細胞に見られるデキストラマー陽性TIL(黒色象限)の代表的なスキーマを示す図である。P1~P7(配列番号1~7)はペプチド1~7のデキストラマーを表し、卵巣1~卵巣3は3人の異なる患者を表す。
【0116】
以下に、本発明について図面を参照して非限定的な実施例を使用して説明する。
【実施例0117】
HERV配列の同定
異なるファミリー(HERV-K、HERV-H、HERV-W、HERV-E、及びERV3を含む)からのHERVのDNA配列をGenbankデータベースから抽出した。BLASTを使用して、これらの配列をヒトゲノム(GRCH37)上に局在化し、問い合わせ配列の少なくとも85%で少なくとも98%の類似性を有し、ギャップのない位置を維持した。したがって、66の機能的HERV配列を同定した。
【0118】
TNBCにおけるHERV配列の分析
HERVの発現を、42のTNBCを含む84の乳癌試料の既存のデータベースで分析した。56の正常な乳房試料(51の腫瘍周囲試料及び5つの乳房縮小術試料)との比較を行った。DNAse処理及びポリA選択を行う新鮮な腫瘍生検組織からRNAを抽出した。充分な品質(RNA完全性番号>6.5)を示している場合、機能的HERV配列はRNAseqデータと一致している。
【0119】
66のヒト内在性レトロウイルス(HERV)サブタイプの多重成分分析を実施した。42のHERVが発現している。19のHERVは、正常組織及びER+サブタイプ(HERVK_10、17、22、7、6、21、25、11、20、16、23、1、及び5、HERVH_4及び7、並びにHERV3_1)におけるトリプルネガティブ乳癌(TNBC)を特異的に特徴付ける。
【0120】
ペプチドの選択及び合成
19の過剰発現HERV間で共有されるGagとPolとの共通領域は、参照ゲノム上のリードのアラインメント後に同定した。様々なエピトープ予測ツール(NetMHC I及びII)を使用して、最も高頻度のMHCI及びII対立遺伝子の潜在的な強力なエピトープバインダーを同定した。それらの中で、HLA-A*0201の以下の7つの予測される9アミノ酸長の強力なバインダーを選択し、合成した:4つのGagペプチド及び3つのPolペプチド(JPT Peptide Technologies社、ベルリン、ドイツ)。ペプチドの同一性は、販売業者による質量分析によって確認した。95%を超える純度が予想され、高速液体クロマトグラフィーによって決定した。凍結乾燥ペプチドを5%未満DMSOの脱イオン水に溶解し、等分して使用するまで-20℃で保存した。
【0121】
クラスIMHC(配列番号1~7)の9アミノ酸長ペプチドの強力なバインダーを含む29アミノ酸長のGMXペプチド(配列番号8~14)、及びクラスIIモチーフの側方配列(lateral sequences)(各側に10アミノ酸長(10-mer)、配列番号12のペプチドを除き、配列番号5の配列はC末端にある)を同定し、合成のために分析した。
【0122】
HERV発現とT細胞シグネチャーとの相関関係のバイオインフォマティクス分析
腫瘍の免疫特性を評価するために、以下の様々シグネチャーを使用した:対照分析のためのT細胞、CD8
+T細胞、NK細胞、細胞傷害性リンパ球、並びに線維芽細胞、好中球、及び内皮細胞のMCPカウンターシグネチャー(http://cit.ligue-cancer.net/?p=1338&lang=enを参照);ImmuneScore及びStromalScoreのためのESTIMATEパッケージ(http://bioinformatics.mdanderson.org/estimate/index.html);エフェクター細胞、免疫調節剤(免疫チェックポイント)、サプレッサー細胞(制御性T細胞及びMDSC)のイムノフェノグラム(Immunophenogram15)。EMTシグネチャー(SSGSEA及びJean-Paul Thierryシグネチャー)及び腫瘍サブタイプに特に関連するシグネチャーと同様に、特定の遺伝子(OCT4、TRIM28、SETDB1など)も評価される。これらのシグネチャーとHERVとの間の相関関係は、従来の統計手法を使用して分析される。
図1Aは、19個のHERVと、抗原提示関連、細胞毒性、又は免疫調節シグネチャーとしての特定の免疫シグネチャーとの間の有意な相関関係を示す図である。一例として、HERV-K 10の発現は、乳癌のT細胞シグネチャーと強く相関している(
図1B)。
【0123】
特異的CD8+HERV+刺激のためのPBMC培養
HLA-A2ドナーからのPBMCを、5%ABヒト血清(EFS Lyon病院からの5ドナーのプール、ろ過済)、及び5μg/mLのR848 (InvivoGen社、米国サンディエゴ)及び10μg/mLのPoly-IC (InvivoGen社)並びに目的のペプチド(10μM)で濃縮した20UI/mLのIL-2(PROLEUKIN(登録商標) aldesleukin、Prometheus社、ヴヴェイ、スイス)を添加したAIM-V培地(Thermo Fisher Scientific社)で12日間培養した。培養は、U底96ウェルプレートで、ウェルあたり1.5×105細胞で、各ペプチド条件で20ウェルに対して行った。100μLの培地を交換し、R848、Poly-IC、IL-2、及び目的のペプチド(配列番号1~7の配列のペプチド)で濃縮して、3日目に同じ最終濃度を達成した。IL-2及び目的のペプチドは6日目に添加し、10日目にIL-2のみを添加した。陽性対照は、デキストラマー(Dextramer(登録商標))実験で0.1μg/mLのPP65(JPT Peptide Technologies社)と共に培養した。PP65は、MHCクラスIによって提示され、CD8+T細胞を特異的に刺激するCMVペプチドである。IFN-γ実験では、0.4μg/mLのCEFペプチド(Mabtech社)を使用した。これは、CD8+T細胞を刺激してIFN-γを優先的に合成する、ヒトCMV、EBV、及びインフルエンザウイルス由来の23のMHCクラスI制限ウイルスペプチドのプールで構成されている。
【0124】
デキストラマーアッセイ及び選別
12日目に、同じ条件の細胞をポリプロピレンチューブに一緒にプールし、2mLのFACSバッファーで洗浄し、FACSバッファーに再懸濁した。条件を、10μLの対応するデキストラマー(Immudex社、コペンハーゲン、デンマーク)で、室温、暗所で15分間染色とした。Zombie NIR(商標)(近赤外線)Fixable Viability(固定可能な生存率)キット(Zombie NIR(商標)、BioLegend社、パリ、フランス)を1/400で使用して、生存率を評価した。次に、抗CD3(BV421、Biolegend社)抗体及び抗CD8(FITC、Beckman Coulter社、米国カリフォルニア州ブレア)抗体を各条件に加え(
図2のアッセイでは1/10、
図4では1/25)、4℃で暗所に20分間放置した後、細胞を2mLのFACSバッファーで2回洗浄し、分析まで350μLのFACSバッファーに再懸濁した。分析は、マルチマー特異的HERV CD8
+T細胞を識別するためにFACS Fortessa(商標)(BD社)で実施した。
【0125】
図2Aの結果は、非特異的(左パネル)及び特異的(右パネル)ペプチドパルスPBMCでデキストラマーによって染色された集団を示している。上のパネルでは、CD8
+T細胞の最大72%が、CMVからの陽性対照pp65ペプチドによる刺激後に陽性を示したのに対し、非刺激PBMCでは2.02%であった(以前の感染によるCMVに対するメモリーT細胞の存在の可能性を示している)。興味深いことに、HERVペプチド(例えば、下のパネルの配列番号5)で刺激したPBMCは、非刺激状態では0.04%であるのに対し、デキストラマー陽性CD8
+T細胞では34.2%となった。4人の異なるドナーで得られた結果を
図2Bに要約する。
【0126】
図4Aの結果は、非特異的(左パネル)及び特異的(右パネル)ペプチドパルスPBMCでデキストラマーによって染色された集団を示している。上のパネルでは、CD8+T細胞の最大23.40%が、CMVからの陽性対照pp65ペプチドによる刺激後に陽性を示したのに対し、非刺激PBMCでは3.63%であった(以前の感染によるCMVに対するメモリーT細胞の存在の可能性を示している)。興味深いことに、HERVペプチド(例えば、下のパネルの配列番号1)で刺激したPBMCは、非刺激状態では0.091%であるのに対し、デキストラマー陽性CD8
+T細胞では0.63%となった。12人の異なるドナーで得られた結果を
図4Bに要約すると、P1、P4、及びP6(例えば、配列番号1、4、及び6)ではデキストラマー陽性CD8
+T細胞が顕著に増加し、P2及びP3(例えば、配列番号2及び3)ではわずかに増加した。
【0127】
12日間の培養後のペプチド刺激PBMCを使用して、IFN-γ及びグランザイム-βのELISPOTアッセイを実施した(
図2C)。ウェルあたり2.10
5個の細胞を、目的のペプチドに特異的なT2細胞と10:1の比率で共培養した。ELISPOTは24時間後に明らかになり、P1及びP6に特異的なIFN-γ及びグランザイム-βスポットが示された(例えば、配列番号1及び6)。
【0128】
T2細胞接触による細胞毒性アッセイ
PBMC培養の12日目に、T2細胞をRPMIで洗浄し、AIM-V培地(Thermo Fisher Scientific社)に再懸濁した。T2(SD細胞株)は、抗原処理(TAP)タンパク質に関連するトランスポーターが欠損しているリンパ芽球細胞株であるため、クラスIのMHCに内因性ペプチドを提示することはできないが、非競合環境で目的の外因性抗原に対するCTL応答をモニタリングするために使用できる。T2細胞を、最初に10μg/mLの対応するペプチドを2MのT2細胞に37℃で2時間添加することにより、HERVペプチドでパルスした。PBMCをプールしてカウントし、対応するT2細胞とそれぞれ1:5の濃度で共培養して新しいU底96ウェルプレートに加えた。
【0129】
37℃で4時間インキュベートした後、共培養した細胞を洗浄し、FACSバッファーでの染色条件に従ってV底ウェルプレートにプールした。Zombie NIR(商標)(BioLegend社)は、生存率を評価するために1/400で使用した。抗CD3(PerCP、BioLegend社)抗体及び抗CD8(FITC、Beckman Coulter社)抗体を条件ごとに1/10で添加し、4℃で25分間放置した。細胞を再度洗浄した後、固定/透過処理溶液キット(Invitrogen社、米国カリフォルニア州カールスバッド)を使用して、製造業者の指示に従って室温で15分間固定した。細胞をFACSバッファーで2回洗浄し、4℃に維持した。
【0130】
13日目に、細胞を透過処理溶液キット(Invitrogen社)で室温で5分間透過処理し、抗IFN-γ(PE、BioLegend社)抗体を溶液に1/20で4℃でさらに25分間添加した。細胞を2回洗浄し、FACS分析の前に350μLのFACSバッファーに再懸濁した。分析は、HERV配列を発現するT2細胞に対する特定の細胞毒性及び脱顆粒を調べるためにFACS Fortessa(商標)(BD社)で実施した。
【0131】
図3Aの結果は、非パルスT2細胞(P0:左上パネル)、異なるペプチドで(P(-):中央上パネル)、又は各同族ペプチド(陽性対照P(+):上/右パネル、下パネルの配列番号1、2、及び3のHERVペプチド)でパルスしたT2細胞に対する刺激CD8
+T細胞のIFN-y産生を示している。結果は、HERVペプチドを発現するT2細胞に対する特異的なIFN-γ産生を示している。5人の異なるドナーの結果を
図3Bに要約すると、P1(配列番号1)で刺激したCD8
+T細胞の約10%(中央値)及びP2又はP3(配列番号2及び3)で刺激したCD8
+T細胞の約5%(中央値)でのIFN-γ産生を示している。
【0132】
図5Aの結果は、非パルスT2細胞(P0:左上パネル、ドナーa及びドナーbの両方の象限)、異なるペプチドで(陰性対照P(-):中央上パネル、ドナーaとドナーbの両方の象限)、又は各同族ペプチド(陽性対照P(+):上/右パネル、トナーaの下パネルの配列番号1~3のHERVペプチド及びトナーbの下パネルの配列番号4~7のHERVペプチド)でパルスしたT2細胞に対する刺激CD8
+T細胞のIFN-y産生を示している。結果は、HERVペプチドを発現するT2細胞に対する特異的なIFN-γ産生を示している。12人の異なるドナーの結果を
図5Bに要約すると、かなりの数のP1(配列番号1)で刺激したCD8
+T細胞及びP2及びP3(配列番号2及び3)で刺激したCD8
+T細胞、及び中程度の数のP6(配列番号6)で刺激したCD8
+T細胞におけるIFN-γ産生を示している。
【0133】
P1特異的CD8
+T細胞の細胞傷害性
デキストラマー染色細胞をFACS Aria(BD社)で選別し、ペプチド特異的CD8
+T細胞を非特異的な対応物から分離した。両方の画分を収集し、丸底96ウェルプレートのフィーダーセルで14日間別々に増殖させた。特異的画分対非特異的画分の純度を14日目に評価したところ(
図6A)、陽性画分では90%超のデキストラマー陽性CD8
+T細胞であり、陰性画分では5%未満であった。これらの細胞は細胞毒性実験に使用した。
【0134】
選別及び増殖したCD8
+T細胞を、ELISPOTアッセイ(Cellular Technology Limited (CTL)社)によって細胞傷害性の可能性について評価した。4.10
4個のP1特異的CD8
+T細胞を、ペプチドP1で事前にパルスしたT2細胞と共培養した。カウントしたスポット数は、陰性対照と比較して、同族ペプチドでパルスした標的細胞に対するP1特異的CD8
+T細胞によるIFN-γ及びグランザイム-βの産生(両方のサイトカインで約800スポット)を示している(
図6B)。これらの実験は、それらの細胞が特異的かつ機能的であることを示している。
【0135】
HMEC細胞株(HLA-A2ヒト乳腺上皮細胞)及びMDA-MB-231細胞株(HLA-A2トリプルネガティブ乳癌細胞株)で実施したHERV発現のインシリコ分析は、HMECと比較したMDA-MB-231細胞株におけるHERVの過剰発現を示した。
【0136】
HLA-A2 TNBC細胞株のMDA-MB-231は、P1特異的CD8
+T細胞によって誘導される細胞死のリアルタイム分析の標的として使用した。5.10
3個のMDA-MB-231細胞にペプチドP1にパルスを実施し又は実施せずに、96ウェルプレートに接着させた。接着後、P1のCD8
+T細胞又はそれらの陰性対応物(対照)をウェルに加えた。共培養は、細胞膜の完全性が低下する際に細胞に入り、デオキシリボ核酸(DNA)に結合すると蛍光が100~1000倍増加するCytotox Green Dye(Essen BioScience社)の存在下で行った。MDA-MB-231をP1特異的T細胞と共培養すると、細胞死における動態が陰性対応物と比較して顕著に増加することを示している。予想通り、標的MDA-MB-231細胞にP1をパルスし、P1特異的T細胞と共培養すると、細胞死のさらなる増加が観察された(おそらく標的細胞上のHLA-ペプチド1複合体の数の増加によるものである)(
図6C)。
【0137】
さらに、P1特異的CD8
+T細胞又はそれらの陰性対応物とMDA-MB-231 HLA-A2 TNBC細胞株との間の6時間の共培養後、IFN-γの細胞内染色をFACSによって実施した(
図6D)。結果は、P1特異的細胞が共培養されている場合、陰性対応物との共培養と比較して、IFN-γ産生細胞の割合(%)が増加していることを示している。MDA-MB-231を事前にP1でパルスした場合、この割合(%)はわずかに増加する。抗HLA-A2特異的遮断抗体を使用すると、この効果を逆転させることができ、その特異性が実証される。
【0138】
まとめると、これらの実験は、P1特異的CD8+T細胞が同族ペプチドを提示する標的細胞(この実験ではT2細胞)を特異的に認識して機能し、内因的にHERV由来の抗原(この実験ではMDA-MB-231 TNBC細胞株))を発現する腫瘍細胞を特異的に認識して死滅させることを示している。
【0139】
TNBC及び卵巣癌からの腫瘍浸潤リンパ球(TIL)のデキストラマー染色
腫瘍を小片に分割し、コラゲナーゼIV及びDNAseで45分間消化した。得られた細胞を5%ヒト血清RPMIに再懸濁し、96ウェルに分注した(ウェルあたり5.104細胞)。抗CD3/CD28マイクロビーズ(Miltenyi Biotec社)を、IL-2(終濃度100IU/mL)の存在下で細胞と1:4の比率でウェルに添加した。5、7、9、及び12日目に培地を交換してTILを14日間培養し、細胞数を0.5×106 細胞/mLに調整した。
【0140】
14日目に、目的の7つのペプチド(P1~P7:配列番号1~7)に対してデキストラマー染色を行い(デキストラマーアッセイの段落を参照)、デキストラマー特異的CD8
+T細胞をTNBC(
図7A)及び卵巣癌(
図7B)でのFACS分析によって同定した。結果は、目的の全てのペプチドに特異的なCD8
+T細胞が腫瘍に見られることを示しているが、試料によって多少の違いがある。これにより、ペプチドのインビボ免疫原性が確認され、これらのペプチドが自然に処理され得、腫瘍発生中に検出可能な免疫応答を誘導し得ることを示している。P1及びP6に特異的なCD8
+T細胞は、腫瘍でより高頻度に提示され、ワクチン又は免疫原性組成物の基礎として選択されるペプチドである。これらの結果はまた、この反応性に関して状態が不明の患者に使用可能であり、好ましくはP1及び/又はP6を含むワクチン又は免疫原性組成物を提供するために、いくつかのペプチドの組み合わせを支持する。
―9~100個のアミノ酸残基を有する、2、3、4、5、6、又は7個のペプチドであって、各ペプチドは配列番号1~7の配列のエピトープの少なくとも1つを含み、そして各ペプチドは他のペプチドに対して少なくとも1つの異なるエピトープを含む前記ペプチド、又は前記2、3、4、5、6、又は7個のペプチドの発現をインビボで誘導する1又は複数の発現ベクター、又は
―9~100個のアミノ酸残基を有し、そして配列番号1~7の配列のエピトープを2、3、4、5、6、又は7個含む少なくとも1つのペプチド、又は前記少なくとも1つのペプチドの発現をインビボで誘導する発現ベクター、及び
薬学的に許容されるビヒクル又は賦形剤
を含む、組成物。