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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025003995
(43)【公開日】2025-01-14
(54)【発明の名称】脾臓に分布する神経の刺激
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/36 20060101AFI20250106BHJP
   A61N 1/05 20060101ALI20250106BHJP
【FI】
A61N1/36
A61N1/05
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024159164
(22)【出願日】2024-09-13
(62)【分割の表示】P 2020533701の分割
【原出願日】2018-12-20
(31)【優先権主張番号】62/608,392
(32)【優先日】2017-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】517155196
【氏名又は名称】ガルバニ バイオエレクトロニクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドネガ,マッテオ
(72)【発明者】
【氏名】チュー,ダニエル ジョン
(72)【発明者】
【氏名】グプタ,イーシャ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明は、オフターゲット効果を最小化させる炎症障害の改善された治療方法を提供する。
【解決手段】神経血管束と関連している脾臓に分布する神経における神経活動を刺激することで、炎症性及び抗炎症性分子レベルを調節することによって、炎症を低下させ、炎症障害の治療方法を提供することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経血管束、好ましくは脾動脈神経と関連している脾臓に分布する神経の神経活動を刺激するシステムであって、
前記神経と信号伝達的に接触しているための少なくとも一つの電極、及び
前記少なくとも一つの電極に電気的に結合された少なくとも一つの制御装置
を含み、前記少なくとも一つの制御装置が、前記少なくとも一つの電極の動作を制御することにより前記神経に電気信号を印加するように構成されており、前記電気信号が、≦300Hzの周波数を有し、周期的なオン-オフパターンで印加されるか、≦50Hzの周波数を有し、連続的に印加されるシステム。
【請求項2】
前記電気信号が≦300Hzの周波数を有し、オン-オフパターンで印加され、好ましくは前記電気信号が、≦50Hz、より好ましくは≦10Hzの周波数を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記周期的オン-オフパターンが0.1~10秒のオン期間及び0.5~30秒のオフ期間を有し、好ましくは前記オン期間:前記オフ期間の比が1:5であり、さらに好ましくは前記比が1:6、1:7、1:8、1:9、1:10、1:20、又は1:30であり;任意に、前記オン期間が2秒であり、前記オフ期間が2秒であり、さらに任意に、前記オン期間が0.5秒であり、前記オフ期間が10秒である、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記電気信号が≦50Hzの周波数を有し、連続的に印加され、好ましくは前記電気信号が≦10Hz、より好ましくは≦2Hz、さらにより好ましくは≦1Hzの周波数を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記電気信号がパルス列を含み、当該パルス列が複数のパルスを含む、前記請求項1~4のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
前記パルスが方形パルスである、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記パルスが、荷電平衡、二相、対称、及び非対称、好ましくは:二相、荷電平衡、及び非対称の少なくとも一つである、請求項5~6のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
前記電気信号が250~1000μs、好ましくは400~1000μsのパルス幅を有する、請求項5~7のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項9】
前記電気信号が対象者における生理パラメータに改善を生じさせ、前記生理パラメータにおける改善が、炎症性サイトカインの減少、抗炎症サイトカイン及び/又は収束促進性メディエータの増加、カテコールアミンの増加、免疫細胞群若しくは免疫細胞表面共刺激分子における変化、炎症カスケードに関与する因子の減少、及び/又は免疫応答メディエータの減少からなる群の1以上である、前記請求項1~8のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項10】
前記システムが対象者における炎症障害を治療するためのものである、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記電気信号が1日を通してエピソード的に印加され、各エピソードが50~10000、好ましくは60~3000、至適には100~2400パルスの前記電気信号を含む、請求項5に従属する場合の、請求項5~10のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項12】
前記電気信号を、前記対象者にエピソード的に、2~3時間ごとに1回、1日最大6回印加する、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記神経周囲に好適に設置するための神経インターフェースをさらに含み、当該神経インターフェースが前記少なくとも一つの電極を含む、前記請求項1~12のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項14】
前記神経インターフェースが少なくとも二つの対向する端部を有し、それらの端部は一緒になった場合、前記神経インターフェースを前記神経上に固定するためのカフを形成する、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
全身動脈血圧、脾臓における血流速度、脾動脈における血流速度、脾静脈における血流速度、脾臓体積、脾臓組織潅流、神経における神経活動、少なくとも一つの電極のインピーダンス、又は刺激要因電圧コンプライアンスの1以上を検出するよう構成されている少なくとも一つの検出器をさらに含む、前記請求項1~14のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項16】
前記少なくとも一つの制御装置が、前記神経に電気信号を印加する前に、当該神経と信号伝達的に接触している神経インターフェースが正しく設置されていることを確認するために前記神経に電気信号を印加するよう構成されており、前記電気信号が≦300Hzの周波数を有し、≦3時間の期間にわたり連続的に印加される、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記検出器が、全身動脈血圧、脾臓における血流速度、脾動脈における血流速度、及び脾静脈における血流速度の1以上を検出するように構成されており、前記少なくとも一つの制御装置がさらに、検出された血流が基底線血流と異なっているか否かを確認し、異なっている場合には、前記神経インターフェースが前記神経と信号伝達的に接触して正しく設置されていることをオペレータに示すよう構成されている、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記検出器が、電気インピーダンストモグラフィー、ドプラ血流、超音波、歪み測定、圧力及び電気インピーダンスの1以上を用いて血流を測定するよう構成されている、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記検出器が前記神経における神経活動を検出するよう構成されており、前記少なくとも一つの制御装置がさらに、検出された神経活動が基底線神経活動より高いか否かを確認し、高い場合には、前記神経インターフェースが前記神経と信号伝達的に接触して正しく設置されていることをオペレータに示すよう構成されている、請求項16に記載のシステム。
【請求項20】
前記検出器が1以上の記録電極を含む、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記検出器が脾臓体積を検出するように構成されており、前記少なくとも一つの制御装置がさらに、検出された脾臓体積が基底線脾臓体積より小さいか否かを確認し、低い場合には、前記神経インターフェースが前記神経と信号伝達的に接触して正しく設置されていることをオペレータに示すよう構成されている、請求項16に記載のシステム。
【請求項22】
前記検出器が超音波を用いて脾臓体積を測定するよう構成されている、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記検出器が前記少なくとも一つの電極のインピーダンスを検出するよう構成されており、前記少なくとも一つの制御装置がさらに、検出されたインピーダンスが基底線インピーダンスと異なるか否かを確認し、異なっている場合には、前記神経インターフェースが前記神経と信号伝達的に接触して正しく設置されていることをオペレータに示すよう構成されている、請求項16に記載のシステム。
【請求項24】
前記検出器が、インピーダンス計を用いてインピーダンスを測定するよう構成されている、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記システムがさらにディスプレイを含み、前記少なくとも一つの制御装置がさらに、神経インターフェースが正しく設置されていることを前記ディスプレイを介してオペレータに示すよう構成されている、請求項17~24のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項26】
前記電気信号によって前記神経に印加される前記相当たり電荷密度が5μC~1100μC/cm/相、任意に5μC~450μC/cm/相、任意に5μC~150μC/cm/相、任意に50μC~450μC/cm/相、さらに任意に50μC~160μC/cm/相である、前記請求項1~25のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項27】
前記システムが信号発生器を含み、当該信号発生器が、前記制御装置からの制御操作に応答して前記少なくとも一つの電極に電気信号を送るよう構成されている、前記請求項1~26のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項28】
前記信号発生器が少なくとも一つの電流源又は電圧源を含む、請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
前記少なくとも一つの電極が第1の電極及び第2の電極を含む、前記請求項1~28のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項30】
前記第1の電極が陽極であり、前記第2の電極が陰極である、請求項29に記載のシステム。
【請求項31】
前記第2の電極が前記神経と信号伝達的に接触しているように構成されており、前記第1の電極が前記神経と信号伝達的に接触しないように構成されており、任意に前記第1の電極が接地されており、任意に前記第1及び第2の電極が単極構成を形成している、請求項29又は30に記載のシステム。
【請求項32】
前記少なくとも一つの電極がさらに第3の電極を含み、前記第2の電極が前記神経の長軸方向で前記第1の電極と前記第3の電極の間に位置している、請求項29又は30に記載のシステム。
【請求項33】
前記第3の電極が陽極である、請求項32に記載のシステム。
【請求項34】
前記第1の電極及び前記第3の電極の幅が0.5~4mm、任意に0.5~2mm、任意に0.5~1.5mm、さらに任意に0.7~1mm;任意に1~4mm、任意に1~3mm、任意に2~4mm、任意に2~3mmである、請求項29~33のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項35】
前記第1の電極と前記第2の電極の間の距離及び/又は前記第2の電極と前記第3の電極の間の距離が、請求項33、34又は35に従属する場合、5mm~7mm、任意に5.5mm~6.5mm、さらに任意に6.2mm~6.4mmである、請求項29~34のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項36】
前記少なくとも一つの制御装置が、プロセッサ、並びに、非一時的コンピュータ可読記憶媒体を含み、前記非一時的コンピュータ可読記憶媒体は、前記プロセッサにロードされ、動作すると、前記プロセッサを、前記少なくとも一つの電極の動作を少なくとも制御するようにさせるコード部分を含む実行可能コンピュータプログラムを有する、前記請求項1~35のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項37】
神経血管束と関連している脾臓に分布する神経、好ましくは脾動脈神経における神経活動を可逆的に刺激する方法であって、
請求項1~36のいずれか1項のシステムを提供すること;
少なくとも一つの電極を前記神経と信号伝達的に接触するよう位置決めすること;及び 前記少なくとも一つの電極の動作を少なくとも一つの制御装置で制御することにより、前記神経に電気信号を印加して神経活動を刺激すること
を含む方法。
【請求項38】
前記方法が対象者における炎症障害を治療するためのものである。請求項37に記載の方法。
【請求項39】
神経インターフェースが、神経血管束と関連している脾臓に分布する神経、好ましくは脾動脈神経と信号伝達的に接触して正しく設置されているか否かを確認する方法であって、
請求項13、又は請求項13に従属している場合に請求項14~36のいずれか1項のシステムを提供すること;
前記神経の周囲に前記神経インターフェースを位置決めすること;
前記少なくとも一つの電極の動作を少なくとも一つの制御装置で制御することにより、前記神経に電気信号を印加すること;
脾臓、脾動脈、脾静脈における血流速度若しくは血圧の変化、脾臓体積の低下、神経における神経活動の上昇、心拍数の変化、全身動脈血圧の変化、前記少なくとも一つの電極のインピーダンスの低下、刺激要因電圧コンプライアンスの低下の少なくとも一つを確認すること;並びに
前記神経インターフェースが前記神経と信号伝達的に接触して正しく設置されていたことをオペレータに示すこと
を含む方法。
【請求項40】
神経血管束と関連する脾臓に分布する神経、好ましくは脾動脈神経における神経活動を可逆的に刺激するコンピュータに実装された方法であって、請求項36のシステムの少なくとも一つの電極の動作を制御することにより、前記神経に信号を印加して、神経活動を刺激することを含む方法。
【請求項41】
前記方法が、対象者における炎症障害を治療するためのものである、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
神経インターフェースが、神経血管束と関連している脾臓に分布する神経、好ましくは脾動脈神経と信号伝達的に接触して正しく設置されているか否かを確認するコンピュータに実装された方法であって、
請求項36のシステムの少なくとも一つの電極の動作を制御することにより、前記神経に信号を印加すること;
脾臓、脾動脈、脾静脈における血流速度若しくは血圧の変化、脾臓体積の低下、神経における神経活動の上昇、心拍数の変化、全身動脈血圧の変化、前記少なくとも一つの電極のインピーダンスの低下、又は刺激要因電圧コンプライアンスの低下の少なくとも一つを確認すること;及び
前記神経インターフェースが前記神経と信号伝達的に接触して正しく設置されていたことをオペレータに示すこと
を含む方法。
【請求項43】
対象者における炎症障害の治療で使用される神経刺激電気信号であって、前記電気信号が請求項1~10のいずれか1項の電気信号である神経刺激電気信号。
【請求項44】
神経血管束と関連している脾臓に分布する改変された神経、好ましくは脾動脈神経であって、当該神経に請求項1~36のいずれか1項のシステムが信号伝達的に接触しており、前記少なくとも一つの電極が当該神経と信号伝達的に接触していることから、当該神経がそれの自然な状態で当該神経と区別することができ、当該神経が、炎症障害を患う又は炎症障害のリスクを有する対象者にある改変された神経。
【請求項45】
請求項37~42のいずれか1項の方法に従って、神経の神経活動を刺激することで得ることができる、神経血管束と関連している脾臓に分布する改変された神経、好ましくは脾動脈神経。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脾臓に分布する神経の神経調節、詳細には、神経における神経活動を刺激する装置、システム及び方法、さらに詳細には、信号パラメータ及び電極設計に関するものである。本発明は、炎症障害の治療のために神経における神経活動を刺激する装置、システム及び方法に関するものでもある。
【背景技術】
【0002】
炎症は、宿主防御及び免疫介在疾患の進行において基本的な役割を果たす([1]で総覧)。炎症応答は、化学伝達物質(例えば、サイトカイン類及びプロスタグランジン類)及び炎症細胞(例えば、白血球)による傷害及び/又は感染に応じて開始される。制御された炎症応答は、例えば、有害物の除去及び感染に対する保護を提供する損傷組織の修復の開始において有用である。しかしながら、炎症応答は、調節されない場合は有害となり、各種の炎症障害、例えば関節リウマチ、骨関節炎、喘息、アレルギー、敗血症ショック症候群、アテローム性動脈硬化、及び炎症性大腸炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、及び慢性炎症が介在する他の臨床状態に至り得る。
【0003】
脾臓は、身体の単球群の半分を含むことで、この臓器は炎症において主要な寄与をなすものである。この臓器は、異なる神経枝による支配を受けることが知られている([2]に総覧)。脾臓の副交感神経支配は、Daleによる脾臓からのアセチルコリン(ACh)単離以来、論争の的となっている[2]。Buijらが、齧歯類において脾臓の副交感神経支配を提唱しているが[3,4]、この神経へのヒトの相関は不明である。脾臓神経支配の伝統的な像は、神経解剖学的及び神経化学的証拠によって示されているように98%交感神経性であると提案されている[2]。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
機能的観点からすると、迷走神経刺激([5]に総覧)並びに本明細書において脾動脈神経と称される脾動脈を囲む神経叢が、マウスでのLPS誘発TNF放出を阻害する[6]。Traceyらによれば、脾動脈神経活動は、遠心性迷走神経枝を起源とするコリン作動性抗炎症経路(CAP)によって直接制御される[5]。炎症性緊張及び炎症反射の迷走神経制御がかなり注目されていたが、他の研究者らは迷走神経と脾動脈神経の間の結合に異議を唱えていた。一部の著者らは、マウスでの脾動脈神経の除神経によって、CAPの阻害が生じたことを示している[6]。しかしながら、Martelliらは、脾動脈神経が、迷走神経に直接つながっているのではなく[7]、むしろ脾動脈神経活動を制御する大内臓神経の独立の枝として生じた[8,9]ことを示すことによって、この考え方に疑問を呈している。これらの著者らは、炎症マーカーの神経センシングが体液性であって、神経性ではないという考え方に反論もしている[10]。さらに、炎症反射応答の遠心性アームが交感神経性であるか副交感神経性であるかについての議論がある。
【0005】
迷走神経の電気刺激は、臨床試験において関節リウマチの症状を緩和させることが明らかになっている[11]。しかしながら、迷走神経は心臓、肝臓及び消化管などの臓器のほとんどを神経支配するいくつかの束からなることから、迷走神経の刺激が望ましくない非特異的CNS効果を生じ得るという懸念がある。
【0006】
脾臓神経の電気刺激は、脾臓の血管応答に関連している[12]。参考文献[6、13、14、15]に、炎症障害の治療のための脾動脈神経の電気刺激が記載されている。しかしながら、神経活動の刺激を引き起こすのにこれらの参考文献で使用される電気パラメータは、脾動脈及び静脈血流における変化などの標的外効果、並びに全身動脈血圧及び心拍数の変化を生じ得る。
【0007】
従って、炎症障害、例えば自己免疫障害(例えば、関節リウマチ、骨関節炎、乾癬性関節炎、脊椎関節症、強直性脊椎炎、乾癬、紅斑性狼瘡、多発性硬化症、炎症性大腸炎、クローン病、及び潰瘍性大腸炎)及び敗血症の治療のために、脾臓に分布する神経における神経活動を刺激する別の及び改善された方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、神経血管束と関連している脾臓に分布する神経(例えば、脾動脈神経)の神経刺激の刺激パラメータを、脾臓、脾動脈又は脾静脈内の血流変化を測定することによって至適化することが可能であることを見出した。特に、脾動脈神経の神経生理学的特性を用いて、可能な全身効果(例えば、全身動脈血圧及び心拍数における変化)を低減しながら免疫抑制効果を高める至適な刺激パターンを決定することができることを、本発明者らは見出した。本発明者らはまた、組織学的及び電気生理学的データを用いて、脾動脈神経の電気刺激のための至適な電極及び神経インターフェース設計を見出した。
【0009】
従って、本発明は、神経血管束と関連している脾臓に分布する神経(例えば、脾動脈神経)の神経活動を刺激するシステムを提供する。当該システムは、前記神経と信号伝達的に接触している少なくとも一つの電極、及び前記少なくとも一つの電極に電気的に結合された少なくとも一つの制御装置を含む。前記少なくとも一つの制御装置は、前記少なくとも一つの電極の動作を制御することにより前記神経に電気信号を印加するように構成されている。前記電気信号は、≦300Hzの周波数を有し、周期的なオン-オフパターンで印加されるか、≦50Hzの周波数を有し、連続的に印加される。オン-オフパターン刺激は、連射刺激(バースト刺激)又は周期的刺激と称することもできる。
【0010】
本発明は、対象者における炎症障害の治療方法も提供する。当該方法は、本発明のシステムを提供すること、神経血管束と関連している脾臓に分布する神経(例えば、脾動脈神経)と信号伝達的に接触している少なくとも一つの電極を位置決めすること、及び前記少なくとも一つの電極の動作を少なくとも一つの制御装置で制御して、前記神経に電気信号を印加して、神経活動を刺激することを含む。
【0011】
本発明は、神経血管束と関連している脾臓に分布する神経(例えば、脾動脈神経)における神経活動を可逆的に刺激する方法も提供する。当該方法は、本発明のシステムを提供すること、少なくとも一つの電極を前記神経と信号伝達的に接触するよう位置決めすること、及び前記少なくとも一つの電極の動作を少なくとも一つの制御装置で制御することにより、前記神経に電気信号を印加して神経活動を刺激することを含む。
【0012】
本発明は、神経インターフェースが神経血管束と関連している脾臓に分布する神経(例えば、脾動脈神経)と信号伝達的に接触して正しく配置されているか否かを確認する方法も提供する。当該方法は、本発明のシステムを提供すること、前記神経と信号伝達的に接触している神経インターフェースを位置決めすること、前記少なくとも一つの電極の動作を少なくとも一つの制御装置で制御することにより、前記神経に電気信号を印加すること、脾臓、脾動脈、脾静脈における血流速度の変化、脾臓体積の低下、神経における神経活動の上昇、又は少なくとも一つの電極のインピーダンスの変化が検出されていることを確認すること(決定すること)、及び前記神経インターフェースが前記神経と信号伝達的に接触して正しく配置されていたことをオペレータに示すことを含む。
【0013】
即ち、本発明は、異なる機能についての刺激パラメータを提供する。より具体的には、連続刺激を用いて、実験的に(on-table)又は周術的に、良好な電極設置、良好な標的(神経)エンゲージメント、及び/又は振幅決定の指標として検出及び使用することができる脾臓血管系内の血流変化を誘発することができ;及び連射又は低周波数連続刺激(≦1Hz)を好ましい治療パラダイムとして用いることができ、それによって、医療としての効力を維持しながら、そのような血流変化及び/又は他の可能な全身心臓血管効果が回避される。
【0014】
従って、前記電気信号は、≦300Hzの周波数を有し、治療のためにオン-オフパターンで印加されるか、>1Hz及び≦50Hzの周波数を有し、電極設置の指示、標的(神経)エンゲージメント及び/又は振幅決定のために連続的に印加される。これらの異なる機能を考慮すると、前記連続印加を、最初に、電極設置の指示、標的(神経)エンゲージメント、及び/又は振幅決定に用いることができ、次に、電極設置、標的(神経)エンゲージメント、及び/又は振幅が確認されたら、連射オン-オフパターン刺激を用いることができる。
【0015】
例えば、連続刺激≦10Hzは、効力及び/又は治療に用いることができ;及び/又は連続刺激≦30Hz及び≧5Hzは血流検出に用いることができ;及び/又は連射刺激≧10Hz(任意に、≧5Hz)又は連続低周波数(≦1Hz)は、効力及び/又は治療に用いることができる。
【0016】
本発明は、対象者における炎症障害を治療するコンピュータ実装方法(コンピューターに実装された方法)も提供する。当該方法は、本発明のシステムの少なくとも一つの電極の動作を制御することにより、神経血管束と関連している脾臓に分布する神経(例えば、脾動脈神経)にシグナルを印加して、神経活動を刺激することを含む。
【0017】
本発明は、神経血管束と関連している脾臓に分布する神経(例えば、脾動脈神経)における神経活動を可逆的に刺激するコンピュータ実装方法も提供する。当該方法は、本発明のシステムの少なくとも一つの電極の動作を制御することにより、前記神経にシグナルを印加して、神経活動を刺激することを含む。
【0018】
本発明は、神経インターフェースが神経血管束と関連している脾臓に分布する神経(例えば、脾動脈神経)と信号伝達的に接触して正しく設置されているか否かを確認するコンピュータ実装方法も提供する。当該方法は、本発明のシステムの少なくとも一つの電極の動作を制御することにより前記神経に電気信号を印加すること、脾臓、脾動脈、脾静脈における血流量の変化、脾臓体積の低下、神経における神経活動上昇、又は少なくとも一つの電極のインピーダンス変化が検出されていることを確認すること、及び前記神経インターフェースが前記神経と信号伝達的に接触して正しく設置されていたことをオペレータに示すことを含む。
【0019】
本発明は、対象者における炎症障害の治療に使用される神経刺激電気信号であって、前記電気信号が本発明によるいずれかの電気信号である電気信号も提供する。
【0020】
本発明は、本発明のシステムが信号伝達的に接触している神経血管束と関連している脾臓に分布する修正神経(例えば、脾動脈神経)であって、前記少なくとも一つの電極が前記神経と信号伝達的に接触していることで、前記神経を、それの自然な状態での神経から区別することができ;前記神経が炎症障害を患う又はそのリスクを有する対象者にある修正神経(改変された神経)も提供する。
【0021】
本発明は、神経膜によって囲まれた神経血管束と関連している脾臓に分布する修正神経(例えば、脾動脈神経)であって、前記神経の膜電位を変えることで、正常状態において前記神経に沿って活動電位を伝播するために前記神経膜を超えて移動可能なカリウム及びナトリウムイオンの分布を含み;前記神経の少なくとも一部が、神経内のカリウム及びナトリウムイオンの濃度を変えることで、混乱状態で神経膜の脱分極を引き起こして、その部分を横断する活動電位をデノボ(de novo)で一時的に発生させる一時的外部電場の印加を受け;前記外部電場が除かれると、前記神経がそれの正常状態に戻る、修正神経(改変された神経)も提供する。
【0022】
本発明は、本発明の方法によって神経の神経活動を刺激することで得られる神経血管束と関連している脾臓に分布する修正神経(例えば、脾動脈神経)も提供する。
【0023】
本発明は、複数の脾動脈神経周囲の設置に好適な神経インターフェースであって、前記神経インターフェースが前記複数の脾動脈神経を完全に囲み、少なくとも一つの電極を含む神経インターフェースも提供する。
【0024】
本発明は少なくとも一つの脾動脈神経及び脾動脈周囲の設置に好適な神経インターフェースであって、前記神経インターフェースが脾動脈及び前記少なくとも一つの脾臓神経を少なくとも50%、好ましくは少なくとも75%囲み、少なくとも一つの電極を含む神経インターフェースも提供する。
【0025】
本発明は、神経血管束と関連している脾臓に分布する神経(例えば、脾動脈神経)と信号伝達的に接触して設置されている本発明のシステムの制御方法であって、前記システムに制御指示を送る段階を含み、それに応じて前記システムが前記神経に信号を印加する方法も提供する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
脾臓を囲む神経
脾臓の神経支配は、主として交感神経性又はノルアドレナリン作動性であり、ペプチドニューロンが残りのニューロンの大部分を代表する可能性が高い。ヒト脾臓は伝統的に、脾動脈のみを囲む脾臓叢によって神経支配されると考えられている。脾動脈は神経組織で覆われており、その神経組織は腹腔叢由来であり、脾動脈とともに脾臓叢として脾臓に続いている。脾臓叢は、脾門で脾臓に入り、脾動脈は末梢枝に分岐しており、脾臓叢はこれらの分岐とともに脾臓の柔組織内に続いている。
【0027】
脾臓叢はいくつかの神経束を含み、それは腹腔動脈から脾臓まで主脾動脈を囲んでおり、各神経束は神経線維の小さい束を含む。脾臓神経を囲む神経束(又は、動脈周囲神経束とも称される)は、本明細書において脾動脈神経と称される。
【0028】
本発明は、脾臓に分布する神経に電気信号を印加すること、及びそれによって神経血管束に関連している脾臓に分布する神経の神経活動を調節することに関する。好ましくは、当該神経は脾動脈神経である。
【0029】
一部の実施形態において、当該神経は交感神経性神経である。
【0030】
一部の実施形態において、本発明は、一つの脾動脈神経にシグナルを印加することが関与し得る。他の実施形態において、本発明には、複数(即ち、束)の脾動脈神経に関し得る。
【0031】
他の実施形態において、本発明は、少なくとも一つの脾動脈神経及び脾動脈に電気信号を印加することが関与し得る。他の実施形態において、本発明には、全ての脾動脈神経及び脾動脈に電気信号を印加することに関し得る。
【0032】
脾臓に分布する神経の刺激
本発明は、神経血管束と関連している脾臓に分布する神経(例えば、脾動脈神経)に電気信号を印加して、前記神経での神経活動を刺激することに関する。刺激は、神経の少なくとも一部において信号伝達活動が、その神経のその部分での基底線神経活動と比較して上昇していることを指し、基底線神経活動は、介入前の対象者における神経の信号伝達活動である。言い換えれば、刺激により、神経活動が作り出され、それによって神経のその部分での総神経活動が上昇する。
【0033】
神経の「神経活動」は、神経の信号伝達活動、例えばその神経における活動電位の振幅、周波数及び/又はパターンを指す。神経における活動電位の文脈で本明細書において使用される、「パターン」という用語は、神経又はそこのニューロンの下位群(例えば、神経束)における活動電位の局所電場電位、複合活動電位、集合体活動電位、さらには振幅、周波数、曲線下面積及び他のパターンの1以上を含むものである。
【0034】
刺激は代表的には、神経活動の上昇、例えば、神経の少なくとも一部における刺激点を越えた活動電位の発生を伴う。軸索に沿ったいずれかの箇所で、機能性神経は、神経膜を横断するカリウム及びナトリウムイオンの分布を有する。軸索に沿った1箇所での分布が、その箇所での軸索の膜電位を決定し、それが次に、隣接箇所でのカリウム及びナトリウムイオンの分布を決定して、それが次に、その箇所での軸索の膜電位を決定する。これは、正常な状態で動作する神経であり、活動電位は軸索に沿ってある箇所から隣接箇所に伝播し、それは従来の実験を用いて観察することができる。
【0035】
神経活動の刺激を特徴付ける一つの手法は、軸索における1以上の箇所でのカリウム及びナトリウムイオンの分布であり、それは伝播活動電位の結果としての神経の隣接する箇所若しくは複数箇所での膜電位によって生じるのではなく、一時的外部電場の印加によって生じるものである。一時的外部電場は、神経におけるある箇所内のカリウム及びナトリウムイオンの分布を人為的に変えることで、それがなければ起こらない神経膜の脱分極を引き起こす。一時的外部電場によって引き起こされる神経膜の脱分極は、その箇所を横断するデノボ活動電位を発生させる。これは、隣接箇所の膜電位によって影響も決定もされない膜電位を有する軸索におけるある箇所(刺激されていた箇所)でのカリウム及びナトリウムイオンの分布によって観察され得る、混乱状態(撹乱状態)で動作する神経である。
【0036】
従って、神経活動の刺激は、信号印加の箇所を越えて続くことで神経活動を高めていると理解される。従って、信号印加の箇所での神経は、神経膜が電場によって可逆的に脱分極するという点で修正され(改変され)、それによってデノボ活動電位が発生し、その修正神経を介して伝播する。従って、信号印加の箇所での神経は、デノボ活動電位が発生するという点で修正されている(改変されている)。
【0037】
前記信号が電気信号である場合、刺激は、神経膜を横断するイオンの分布に対する電流の影響(例えば、神経と信号伝達的に接触している電極における1以上の電子、又は、例えば、その神経外若しくは神経内の1以上のイオンであり得る荷電粒子)に基づくものである。
【0038】
神経活動の刺激は、神経における神経活動の完全刺激を包含する、即ち、総神経活動が神経全体で上昇する実施形態を包含する。
【0039】
神経活動の刺激は、部分刺激であり得る。部分刺激は、神経全体の総信号伝達活動が部分的に上昇し得るものであり得るか、又は神経の神経線維の小集合の総信号伝達活動が完全に上昇するか(即ち、神経の線維のその小集合において神経活動が全くない。)、又はその神経の神経線維の小集合の総信号伝達が、その神経の線維の小集合における基底線神経活動と比較して部分的に上昇するようなものであり得る。例えば、≦5%、≦10%、≦15%、≦20%、≦25%、≦30%、≦35%、≦40%、≦45%、≦50%、≦60%、≦70%、≦80%、≦90%又は≦95%の神経活動における上昇、又は神経の神経線維の小集合における神経活動の上昇である。神経活動は、当業界で公知の方法によって、例えば、軸索を通って伝播する活動電位の数及び/又は活動電位の合計活動を反映する局所電場電位の振幅によって測定することができる。
【0040】
神経活動の刺激は、活動電位のパターンにおける変化であり得る。全体の周波数又は振幅を必ずしも変えることなく、活動電位のパターンを調節することができることは明らかであろう。例えば、神経活動の刺激は、(少なくとも部分的に)矯正的であり得る。本明細書で使用される場合、「矯正的」とは、調節された神経活動が、神経活動を、健常対象者での神経活動のパターンとなるように変えることを意味するものとされ、これは、軸索調節療法と称される。即ち、信号印加が停止されると、神経における神経活動は、信号印加前に比べて、健常対象者で認められる神経での活動電位のパターンにより似るものとなる(理想的には、実質的に完全に似ている)。そのような矯正的刺激は、本明細書で定義のいずれかの刺激であり得る。
【0041】
例えば、信号の印加により、神経活動の上昇が生じ得て、信号印加が停止すると、神経における活動電位のパターンが、健常対象者で認められる活動電位のパターンに似る。さらに例を挙げると、信号の印加によって、健常対象者で認められる活動電位のパターンに似る神経活動が生じ得て、信号を停止すると、神経における活動電位のパターンが、健常対象者で認められる活動電位のパターンに留まる。
【0042】
神経活動の刺激は、各種の他の形で神経活動を変えること、例えば基底線神経活動の特定の部分を上昇させること及び/又は新たな活動要素、例えば、特には特定のパターンによる時間間隔、特には周波数バンドなどを刺激することを含み得る。
【0043】
本発明の一つの利点は、神経活動の刺激が可逆的であるという点である。従って、神経活動の調節は永久的ではない。例えば、信号印加を停止すると、神経における神経活動は、1~60秒以内、又は1~60分以内、又は1~24時間以内(例えば、1~12時間、1~6時間、1~4時間、1~2時間以内)、又は1~7日(例えば、1~4日、1~2日)以内に基底線神経活動の方に実質的に戻る。可逆的刺激の一部の例において、神経活動は、実質的に完全に基底線神経活動に戻る。即ち、信号印加停止後の神経活動は、信号を印加する前の神経活動と実質的に同じである。従って、神経又は神経の一部は、活動電位を伝播するそれの正常な生理的能力を取り戻している。
【0044】
他の実施形態において、神経活動の刺激は実質的に持続的であり得る。本明細書で使用される場合、「持続的」は、神経活動が長期的効果を有することを意味するものと取られる。例えば、信号印加を停止すると、神経における神経活動は、その信号が印加されていた時と実質的に同じに留まる、即ち、信号印加時及び信号印加後の神経活動は実質的に同じである。可逆的調節が好ましい。
【0045】
電気信号の好適な形態
本発明は、神経血管束と関連している脾臓に分布する神経(例えば、脾動脈神経)と信号伝達的に接触して設置された少なくとも一つの電極を介して印加される電気信号を用いる。本明細書で使用される場合、「信号伝達的接触」は、前記少なくとも一つの電極を介して印加される電気信号の少なくとも一部が神経で受け取られるということである。
【0046】
本発明によって印加される電気信号は、理想的には非破壊的である。本明細書で使用される場合、「非破壊的信号」は、印加された場合に、神経の基礎となる神経信号伝達能力を不可逆的に破壊しない信号である。即ち、非破壊的信号の印加は、伝導が、実際には、非破壊的信号の印加の結果として人工的に刺激されたものであったとしても、信号を印加される神経若しくはそれの線維又は他の神経組織が、信号印加が停止した時に活動電位を伝導する能力を維持するものである。
【0047】
本発明に従って印加される電気信号は、電圧若しくは電流波形であり得る。
【0048】
電気信号は、1以上の電気信号パラメータによって特徴付けることができる。電気信号パラメータには、波形、周波数、及び振幅などがある。
【0049】
或いは又はさらに、電気信号は、電気信号の神経への印加のパターンによって特徴付けられ得る。印加のパターンは、神経への電気信号の印加のタイミングを指す。印加のパターンは、連続印加又は周期的印加、及び/又はエピソード的印加であり得る。
【0050】
エピソード的印加は、1日を通じて離散的数のエピソードのために神経に電気信号を印加することを指す。各エピソードは、電気信号の設定期間又は設定数の反復によって定義され得る。
【0051】
連続印加は、電気信号を神経に連続的に印加することを指す。電気信号を連続的又はエピソード的に印加する場合、それは、印加の各エピソードのために信号を連続的に印加することを意味する。電気信号が一連のパルスである実施形態において、それらのパルス間のギャップ(即ち、パルス幅と位相持続時間の間)は、信号が連続的に印加されないことを意味するものではない。
【0052】
周期的印加は、電気信号が反復パターン(例えば、オン-オフパターン)で神経に印加されることを指す。電気信号を周期的及び一時的に印加する場合、それは、その信号を印加の各エピソードのために定期的に印加することを意味する。
【0053】
本発明者らは、神経血管束と関連している脾臓に分布する神経(例えば、脾動脈神経)における神経活動を刺激するための好ましい電気信号パラメータ及び信号印加のパターンを見出し、それによって、脾動脈神経における神経活動を刺激する場合に、可能な全身効果を低減しながら免疫抑制効果が高められることになる。好ましい信号パラメータ及び印加のパターンについて、下記で詳細に議論する。
【0054】
波形
神経血管束と関連している脾臓に分布する神経(例えば、脾動脈神経)の調節(例えば、刺激)は、神経の正常な神経活動を再現する上で役立つ電気信号を用いて達成することができる。従って、電気信号の波形は、それぞれが規定のパルス幅を有する1以上のパルス列を含む。そのパルスは、好ましくは方形パルスである。しかしながら、のこぎり波、正弦波、三角、台形、準台形又は複合波形などの他のパルス波形も本発明で用いることができる。
【0055】
パルスは、性質上、二相性であり得る。「二相性」という用語は、正電荷及び負電荷の両方(陽極相及び陰極相)を経時的に神経に印加するパルスを指す。二相性パルスは、好ましくは荷電平衡したものである。
【0056】
パルスは荷電平衡したものであり得る。荷電平衡パルスは、パルスの期間にわたり、等量(又はほぼ等量)の正電荷及び負電荷を神経に印加するパルスを指す。
【0057】
パルスは対称又は非対称であり得る。対称パルスは、神経に正電荷を印加する時の波形が、神経に負電荷を印加する時の波形に対して対称であるパルスである。非対称パルスは、神経に正電荷を印加する時の波形が、神経に負電荷を印加する時の波形と対称ではないパルスである。
【0058】
パルスは、250~1000μs、好ましくは400~1000μs(これは、二相パルスの場合、パルスの正相及び負相の両方に適用可能である。)の(各相の)パルス幅を有することができる。例えば、パルス幅は、≦500μs、≦600μs、≦700μs、≦800μs、≦900μs、又は≦1000μsであり得る。さらに又は或いは、パルス幅は≧400μs、≧500μs、≧600μs、≧700μs、≧800μs、又は≧900μsであり得る。上記の上限及び下限のいずれの組み合わせも可能である。パルス幅はさらに、周波数によって制限され得る。
【0059】
パルス幅は、波形の主要相の幅(又は時間)を指す。パルスが主要相である第1の相及び回復期である第2の相、例えば陽極相及び/又は陰極相を含む場合、パルス幅は、第1の相の幅(又は期間)を指す。
【0060】
二相パルスが非対称であるが、電荷平衡状態のままである場合、反対の相の面積は等しくなければならない。振幅(下記参照)は低下し得るが、パルス幅は曲線下面積が一致するようにするために大きくする必要があると考えられる。
【0061】
例示的実施形態において、波形は、二相、非対称、電荷平衡方形パルスを有するパルス列である。
【0062】
振幅
本発明に関して、振幅は、本明細書においては、相当たりの電荷密度に関して言及されるものである。電気信号によって神経に印加される相当たり電荷密度は、一つの相全体の(例えば、電荷平衡二相パルスの場合には二相パルスのうちの一つの相全体の)電流の積分と定義される。従って、電気信号によって神経に印加される相当たり電荷密度は、少なくとも一つの電極と神経の間の単位接触面積当たりの電荷、さらには信号波形の一つの相全体の電流密度の積分である。言い換えれば、電気信号によって神経に印加される相当たり電荷密度は、電気信号によって神経に印加される相当たり電荷を、少なくとも一つの電極(一般的に陰極)と神経の間の接触面積によって割ったものである。
【0063】
本発明によって必要とされる相当たり電荷密度は、免疫抑制効果を高めるために神経血管束と関連している脾臓に分布する神経(例えば、脾動脈神経)における神経活動を刺激するのに必要なエネルギー量を表す。
【0064】
本発明者らは、血管外カフを用いてブタ脾動脈神経における神経活動を刺激するのに必要な相当たり電荷密度が5μC~150μC/cm/相、又は場合により、5μC~180μC/cm/相であることを見出した(値は、電極設計によって若干影響を受け得る。)。例えば、電気信号によって印加される相当たり電荷密度は、≦10μC/cm/相、≦15μC/cm/相、≦20μC/cm/相、≦25μC/cm/相、≦30μC/cm/相、≦40μC/cm/相、≦50μC/cm/相、≦75μC/cm/相、≦100μC/cm/相、≦125μC/cm/相、≦150μC/cm/相、又は≦180μC/cm/相であり得る。さらに又は或いは、電気信号によって印加される相当たり電荷密度は、≧5μC/cm/相、≧10μC/cm/相、≧15μC/cm/相、≧20μC/cm/相、≧25μC/cm/相、≧30μC/cm/相、≧40μC/cm/相、≧50μC/cm/相、≧75μC/cm/相、≧100μC/cm/相、≧125μC/cm/相、又は≧150μC/cm/相であり得る。上記の上限及び下限のいずれの組み合わせも可能である。
【0065】
本発明者らはさらに、ヒト脾動脈神経において神経活動を刺激するのに必要な相当たり電荷密度の示された推算値が約70~1300μC/cmであることを見出した。例えば、電気信号によって印加される相当たり電荷密度は、≦80μC/cm/相、≦140μC/cm/相、≦170μC/cm/相、≦230μC/cm/相、≦250μC/cm/相、≦300μC/cm/相、≦350μC/cm/相、≦400μC/cm/相、≦450μC/cm/相、≦500μC/cm/相、≦1100μC/cm/相、又は≦1300μC/cm/相であり得る。さらに又は或いは、電気信号によって印加される相当たり電荷密度は、≧70μC/cm/相、≧140μC/cm/相、≧170μC/cm/相、≧230μC/cm/相、≧250μC/cm/相、≧300μC/cm/相、≧350μC/cm/相、≧400μC/cm/相、≧450μC/cm/相、≧500μC/cm/相、≧1100μC/cm/相、又は≧1300μC/cm/相であり得る。上記の上限及び下限のいずれの組み合わせも可能である。いずれか所定の期間における電気信号によって神経に印加される総電荷は、信号の周波数、信号印加のパターン及少なくとも一つの電極と神経の間の接触面積に加えて、信号の相当たり電荷密度の結果である。信号の周波数、信号印加のパターン及少なくとも一つの電極と神経の間の接触面積については、本明細書においてさらに議論する。
【0066】
神経活動の所定の刺激を達成するのに必要な印加電気信号の振幅が、電極の位置決め及び関連する電気生理学的特性(例えば、インピーダンス)によって決まることは、当業者には明らかであろう。所定の対象者における神経活動の所期の調節を達成するための適切な電流振幅を決定することは、当業者の能力の範囲内である。
【0067】
当然のことながら、神経に印加される電気信号が臨床安全域(例えば、神経信号伝達機能の維持に好適な、神経完全性を維持するのに好適な、及び対象者の安全性を維持するのに好適な)内であることは当業界では当然理解される。臨床安全域内の電気パラメータは代表的には、前臨床試験によって決定される。
【0068】
エピソード的印加
エピソード的印加は、1日を通して離散的数のエピソードに対して、電気信号を神経に印加することを指す。本発明による電気信号は、最大6エピソード/日に対して印加され得る。例えば、1日当たりの信号印加のエピソード数は、1、2、3、4、5若しくは6であり得る。
【0069】
電気信号は、エピソード的に2~3時間ごとに印加することができる。例えば、電気信号は、エピソード的に2時間、2時間15分、2時間30分、2時間45分、3時間ごとに1回印加することができる。
【0070】
各エピソードは、電気信号の設定期間又は設定反復数によって定義され得る。一部の実施形態において、各エピソードは、50~10000、例えば60~3000パルスの電気信号、100~2400パルスの電気信号、200~1200パルスの電気信号、400~600パルスの電気信号などを神経に印加することを含む。例えば、各エピソードは、≦400、≦800、≦1200、≦1600、≦2000、≦2400、≦3000、又は≦10000パルスの電気信号を印加することを含み得る。別の例において、各エピソードは、≦200、≦400、≦600、≦800、≦1000、又は≦1200パルスの電気信号を印加することを含み得る。さらに別の例において、各エピソードは、≦400、≦425、≦450、≦475、≦500、≦525、≦550、≦575、又は≦600パルスの電気信号を印加することを含み得る。
【0071】
他の実施形態において、各エピソードは、20~40反復の周期的パターンを含む。例えば、各エピソードは、20、25、30、35、又は40反復の周期的パターン、又はその間のいずれかの数印加することを含む。周波数が高いほど、反復回数が低い。
【0072】
一部の実施形態において、エピソードは、対象者の睡眠覚醒サイクルに基づくことができ、特に、エピソードは、対象者が眠っている間のものであり得る。一部のそのような実施形態において、エピソードは、午後10~午前6時に印加することができる。睡眠覚醒サイクルは、対象者の概日リズム位相マーカー(例えば、コルチゾールレベル、メラトニンレベル又は中核体温)を検出することにより公知の方法、及び/又は対象者の運動を検出するための検出器によって測定することができる。
【0073】
周期的印加
周期的印加は、電気信号を繰り返しパターンで神経に印加することを指す。好ましい繰り返しパターンは、信号を第1の期間(本明細書では「オン」期間と称される)に印加し、次に第2の期間(本明細書では「オフ」期間と称される)に停止し、次に再度第1の期間で印加し、次に再度第2の期間で停止する等のオン-オフパターンである。
【0074】
周期的オン-オフパターンは好ましくは、0.1~10秒のオン期間及び0.5~30秒のオフ期間を有する。例えば、オン期間(一定の周波数及び振幅のパルスが神経に送られる時間と称される)は、≦0.2秒、≦0.5秒、≦1秒、≦2秒、≦5秒、又は≦10秒であり得る。或いは又はさらに、オン期間は、≧0.1秒、≧0.2秒、≧0.5秒、≧1秒、≧2秒、又は≧5秒であり得る。オン期間についての上記の上限及び下限のいずれの組み合わせも可能である。例えば、オフ期間(神経にパルスが全く送られない、オン期間の間の時間と称される)は、≦1秒、≦3秒、≦5秒、≦10秒、≦15秒、≦20秒、≦25秒、又は≦30秒であり得る。或いは又はさらに、オフ期間は、≧0.5秒、≧1秒、≧2秒、≧5秒、≧10秒、≧15秒、≧20秒、又は≦25秒であり得る。オフ期間についての上記の上限及び下限のいずれの組み合わせも可能である。
【0075】
例示的な実施形態において、周期的オン-オフパターンは、0.5秒オンのオン期間、及び4.5秒オフを有する。別の例では、周期的オン-オフパターンは、最大10Hzパルスについて0.5秒オンのオン期間、及び5秒オフを有する。10Hzより高い周波数の場合(例えば、30Hz)、例示的な周期的オン-オフパターンは、0.1秒オンのオン期間又は3秒のオフ期間を有する。即ち、オン期間:オフ期間の比は1:5であることができ、さらに好ましくは、その比は1:6、1:7、1:8、1:9、1:10、1:20又は1:30である。オン期間:オフ期間の比は、10Hz以下のパルス周波数については1:10であることができ、オン期間:オフ期間の比は10Hzより高いパルス周波数については1:30であり得る。
【0076】
電気信号を周期的及びエピソード的に印加する場合、それは、印加の各エピソードについて周期的に信号を印加することを意味する。
【0077】
周期的印加は、デューティサイクル印加と称することもできる。デューティサイクルは、周期的パターンのサイクルにおいて信号を神経に印加する時間のパーセントを表す。例えば、20%のデューティサイクルは、2秒のオン期間及び10秒のオフ期間を有する周期的パターンを表すことができる。或いは、20%のデューティサイクルは、1秒のオン期間及び5秒のオフ期間を有する周期的パターンを表すことができる。即ち、周期的印加は、オン-オフパターン刺激又は連射刺激とも称することができる。
【0078】
本発明に好適なデューティサイクルは、0.1%~100%である。
【0079】
周波数
周波数は、電気波形の位相持続時間の逆数(即ち、1/位相)と定義される。
【0080】
本発明者らは、神経血管束と関連している脾臓に分布する神経(例えば、脾動脈神経)の刺激に好ましい周波数を見出した。特に、本発明者らは、電気信号を周期的に印加する実施形態及び電気信号を連続的に印加する実施形態に好ましい周波数を見出した。
【0081】
先述の通り、電気信号を周期的に印加する実施形態及び電気信号を連続的に印加する実施形態は、異なる刺激パラメータを用いる異なる機能を提供する。連続刺激は、実験的に(on-table)又は周術的に、良好な電極設置及び/又は振幅決定の指標として検出及び用いることができる脾臓血管系内の血流変化を誘発するのに用いることができ;周期的刺激は、好ましい治療パラダイムとして用いることができ、それによって、治療としての効力を維持しながら、そのような血流変化及び/又は他の可能な全身心臓血管効果が軽減若しくは回避される。
【0082】
電気信号を周期的に印加する実施形態では、電気信号は≦300Hz、好ましくは≦50Hz、より好ましくは≦10Hzの周波数を有する。例えば、電気信号の周波数は、≦50Hz、≦100Hz、≦150Hz、≦200Hz、≦250Hz又は≦300Hzであり得る。他の例では、電気信号の周波数は、≦10Hz、≦15Hz、≦20Hz、≦25Hz、≦30Hz、≦35Hz、≦40Hz、≦45Hz、又は≦50Hzであり得る。さらなる例では、周波数は≦1Hz、≦2Hz、≦5Hz、又は≦10Hzであり得る。さらに又は或いは、電気信号の周波数は、≧10Hz、≧15Hz、≧20Hz、≧25Hz、≧30Hz、≧35Hz≧40Hz、≧45Hz、又は≧50Hzであり得る。他の例において、電気信号の周波数は、≧0.1Hz、≧0.2Hz、≧0.5Hz、≧1Hz、≧2Hz、又は≧5Hzであり得る。上記の上限及び下限のいずれの組み合わせも可能である。
【0083】
電気信号を連続的に印加する実施形態では、電気信号は、≦50Hz、好ましくは≦10Hz、より好ましくは≦2Hz、さらにより好ましくは≦1Hzの周波数を有する。例えば、その周波数は、≦1Hz、≦2Hz、≦5Hz、又は≦10Hzであり得る。他の例において、前記周波数は、≦0.1Hz、≦0.2Hz、≦0.3Hz、≦0.4Hz≦0.5Hz、≦0.6Hz≦0.7Hz、≦0.8Hz、又は≦0.9Hzであり得る。さらに又は或いは、電気信号の周波数は、≧0.1Hz、≧0.2Hz、≧0.5Hz、≧1Hz、≧2Hz、又は≧5Hzであり得る。上記の上限及び下限のいずれの組み合わせも可能である。
【0084】
信号波形がパルス列を含む場合、そのパルスは、上記周波数に従った間隔で神経に印加される。例えば、50Hzの周波数により、神経に毎秒50パルスが印加されることになる。
【0085】
電極及び神経インターフェース設計
電気信号は、神経と信号伝達的に接触している少なくとも一つの電極を介して、神経血管束と関連している脾臓に分布する神経(例えば、脾動脈神経)に印加される。その少なくとも一つの電極は、神経インターフェース10上に配置することができる。
【0086】
一部の実施形態において、電極及び/又は神経インターフェースは、少なくとも一つの脾動脈神経周囲及び/又は脾動脈周囲に配置されるように構成されている。そのような実施形態において、神経インターフェースは、カフ型インターフェースであり得るが、神経を部分的又は完全に囲む他のインターフェースを用いることができる。
【0087】
他の実施形態において、神経インターフェース10は、少なくとも一つの脾動脈神経上及び/又は脾動脈上に配置されるように構成されている。そのような実施形態において、神経インターフェース10は、パッチ型若しくはクリップ型インターフェースであり得る。
【0088】
他の実施形態において、神経インターフェース10は、脾動脈内に配置されるように構成されている。そのような実施形態において、神経インターフェースは、カテーテル又はプローブ型インターフェースであり得る。
【0089】
他の実施形態において、神経インターフェース10は、少なくとも一つの脾動脈神経内に配置されるように構成されている。そのような実施形態において、神経インターフェースはピン型インターフェースであり得る。
【0090】
神経インターフェースは、少なくとも一つの電極を含む。電極は、高電荷容量材料、例えば白金黒、酸化イリジウム、窒化チタン、タンタル、ポリ(エチレンジオキシチオフェン)及びこれらの好適な組み合わせから作られていることができるか、部分的若しくは全体にそれらでコーティングされていることができる。
【0091】
特に、神経インターフェース10が神経上に固定された時にその神経及び/又は脾動脈を囲むようにするために、神経インターフェースが少なくとも一つの脾動脈神経及び/又は脾動脈上若しくは周囲に配置されるように構成されている実施形態において、前記少なくとも一つの電極は、可撓性であるフラットインターフェース電極であり得る。しかしながら、他の電極型も、本発明での使用に好適である。
【0092】
本発明に好適な他の電極型には、カフ電極(例えば、渦巻き形カフ、らせん形カフ又はフラットインターフェース);半カフ電極;メッシュ、線棒形リード、パドル形リード若しくはディスクコンタクト型電極(マルチディスクコンタクト型電極など);フック電極;スリング型電極;束内電極;ガラス吸引電極;パドル電極;及び経皮円筒電極などがある。
【0093】
前記少なくとも一つの電極は、第1の電極11及び第2の電極12を含むことができ、本明細書において双極電極構成と称される。図1は、電極が少なくとも一つの脾動脈神経及び/又は脾動脈と信号伝達的に接触して設置されている、例示的な双極電極構成の模式図である。本明細書の他の箇所で説明するように、好適な信号伝達接触は、神経及び/又は動脈周囲(即ち、部分的に又は完全に囲む)に、神経及び/又は動脈上に、又は脾臓神経内に、又は動脈内に電極を配置することで達成することができる。
【0094】
図1に示したように、第1の電極11及び第2の電極12は、神経の長軸に沿って配置される。第1の電極11が陽極となり、第2の電極12が陰極となるように、電気信号を電極に印加することができる。或いは、第1の電極11が陰極であり、第2の電極12が陽極であり得る。
【0095】
他の実施形態において、前記少なくとも一つの電極は、第1の電極、第2の電極及び第3の電極を含むことができ、本明細書においては三極電極構成と称される。
【0096】
双極構成と同様に、第1、第2及び第3の電極は、神経の長軸に沿って配置することができ、1例において、第2の電極は、第1の電極11と第3の電極13の間に配置することができる。
【0097】
電極は、少なくとも部分的に、非導電性生体適合性材料によって互いに絶縁されていることができる。そのためには、神経インターフェースは、装置が使用中の時に神経に沿って横方向に間隔を置いて配置された非導電性生体適合性材料を含み得る。
【0098】
本発明者らは、少なくとも一つの脾動脈神経に電気信号を印加するのに好ましい電極の大きさを見出した。電極の総表面積は0.1~0.3mmであり得る。好ましくは、電極の総表面積は、0.2cm未満である。
【0099】
好ましい電極構成において、第1の電極11及び第2の電極12のそれぞれの幅は、1~4mmであり得る。例えば、その幅は、1mm~3mm、又は2mm~4mm、又は2mm~3mmであり得る。
【0100】
制御装置(コントローラ)
図1を参照すると、神経インターフェースを含み得る本発明のシステム50は、神経インターフェース10の少なくとも一つの電極に電気的に結合され、前記少なくとも一つの電極の動作を制御するよう構成されている少なくとも一つの制御装置(制御部)、例えばマイクロプロセッサ60を含むこともできる。前記少なくとも一つの制御装置(コントローラ)は、少なくとも一つの電極によって神経に送られる信号の開始及び/又は終わりをトリガーすることを担当することができる。任意に、前記少なくとも一つの制御装置(コントローラ)は、信号パラメータを発生及び/又は制御することも担当し得る。
【0101】
前記少なくとも一つの制御装置は、所定の信号(上記のもの)を、外部トリガーを用いて又は用いずに、そして制御機構やフィードバック機構なしに、所定の印加パターン(やはり、上記のもの)で神経に送る、オープンループ型で動作するよう構成されていることができる。或いは、前記少なくとも一つの制御装置は、制御機構若しくはフィードバック機構に基づいて信号を印加するクローズドループ型で動作するよう構成されていることができる。
【0102】
前記少なくとも一つの制御装置は好ましくは、使用時に、システム50での入力から独立である事前設定された及び/又はオペレータ選択可能な信号を発生するように構築されている。その事前設定された及び/又はオペレータ選択可能な信号は、前述の電気信号のいずれか一つであり得る。他の実施形態において、前記少なくとも一つの制御装置は、外部信号、より好ましくは対象者の1以上の生理的パラメータに関するものであるがまだ前述の信号の範囲内である情報(例えば、データ)に応答する。
【0103】
前記少なくとも一つの制御装置は、対象者に埋め込まれるのに好適なシステム50中のマイクロプロセッサ60であり得る。
【0104】
或いは又はさらに、前記少なくとも一つの制御装置は、対象者にとって外部の制御装置であり得る。
【0105】
前記少なくとも一つの制御装置は、オペレータ、例えば医師又は装置106を埋め込んでいる対象者によって発生された信号を受け取ったらトリガーされ得る。そのためには、システム50はさらに、制御装置101を含む外部システム80を含み得る。そのようなシステムの1例について、図2を参照して下記で説明する。
【0106】
より広いシステム100の外部システム80は、システム50に対して外部であり、対象者に対して外部であり、制御装置101を含む。制御装置101は、システム50を制御し、及び/又はそれに電力供給するのに用いることができる。そのためには、制御装置101は、電源ユニット102及び/又はプログラミングユニット103を含み得る。外部システム80はさらに、下記でさらに説明される送電アンテナ104及びデータ送信アンテナ105を含み得る。
【0107】
マイクロプロセッサ60及び制御装置101などの前記少なくとも一つの制御装置は、プロセッサにロードされ、動作すると、プロセッサに、少なくとも一つの電極の動作を少なくとも制御させるコード部分を含む実行可能コンピュータプログラムを有するメモリー(即ち、非一時的コンピュータ可読記憶媒体)に接続されたプロセッサであり得る。動作を制御するとは、少なくとも一つの制御装置が、少なくとも一つの電極を、信号パラメータ及び前述の印加のパターンのいずれかを用いて神経に電気信号を印加させることを意味する。
【0108】
神経刺激システム
神経インターフェース10及び少なくとも一つの制御装置60に加えて、システム50は、少なくとも一つの制御装置からの制御操作に応答して少なくとも一つの電極に上記の電気信号を送るように構成されている信号発生器113を含み得る。信号発生器は、少なくとも一つの電流源若しくは電圧源を含み得る。
【0109】
信号発生器113は、少なくとも一つの制御装置及び少なくとも一つの電極に電気的に結合されていることができる。一部の実施形態において、少なくとも一つの電極は、導線107を介して信号発生器113に接続されていることができる。一部の実施形態において、導線は、前述のインターコネクタに接続されていることができる。或いは、信号発生器113は、導線なしで少なくとも一つの電極に直接統合されていることができる。いずれの場合も、システム50は、対象者に埋め込むことができ、任意にコンデンサ及び/又は誘導子に基づく、全ての出力チャンネル(例えば、少なくとも一つの電極又は生理学的センサー111への出力)に基づくDC直流電流ブロッキング出力回路(又はAC直流電流ブロッキング出力回路)を含み得る装置106を含むことができる。
【0110】
神経インターフェース10、少なくとも一つの電極、少なくとも一つの制御装置及び信号発生器113に加えて、システム50は、次の構成要素:埋込型トランシーバ110;電源112;メモリー114(或いは、非一時的コンピュータ可読記憶装置と称される);生理学的センサー111;及び生理データ処理モジュール115のうちの1以上を含み得る。生理学的センサー111及び生理データ処理モジュール115は、本明細書において検出器と称される。
【0111】
システム50の各種構成要素は、好ましくは、図2に示したように、共通の筐体を共有しているか、導線によって接続された相互接続構成要素の物理的に分離された集合体である、単一の物理的装置の一部である。しかしながら、別形態として、本発明は、構成要素が物理的に分離しており、無線で通信するシステムを用いることができる。従って、例えば、前記少なくとも一つの電極及び前記埋込型装置(例えば、埋込型装置106)は、単位装置の一部であり得るか、一緒になって、システム(例えば、システム50)を形成することができる。両方の場合で、さらなる構成要素が存在して、より広いシステム(例えば、システム100)を形成することもできる。
【0112】
例えば、一部の実施形態において、次の構成要素:埋込型装置106:電源112;メモリー114;及び生理データ処理モジュール115のうちの1以上が含まれていることができる。
【0113】
電源112は、信号発生器113に電力を提供するための電流源及び/又は電圧源を含み得る。電源112は、埋込型装置106及び/又はシステム50の他の構成要素、例えばマイクロプロセッサ60、メモリー114、及び埋込型トランシーバ110に電力を提供することもできる。電源112はバッテリーを含むことができ、バッテリーは充電式であり得る。
【0114】
電力の利用性は埋込型装置において制限されていることは明らかであろうし、本発明はこの制限に留意して考案されたものである。埋込型装置106及び/又はシステム50は、誘導型電源又は充電型電源によって電力供給されることができる。
【0115】
メモリー114は、電力データ及び1以上の生理パラメータに関係するデータを記憶することができる。例えば、メモリー114は、検出器によって検出される前記1以上の生理パラメータ(例えば、生理学的センサー111を介して、及び/又は生理データ処理モジュール115を介して求められた前記1以上の相当する生理パラメータ)を示す1以上の信号に関するデータを記憶することができる。さらに又は或いは、メモリー114は、電力データ及び埋込型トランシーバ110を介して外部システム80からの1以上の生理パラメータに関するデータを記憶することができる。このためには、埋込型トランシーバ110は、下記でさらに議論される、より広いシステム100の通信サブシステムの一部を形成することができる。
【0116】
生理データ処理モジュール115は、生理学的センサー111によって検出される1以上の生理パラメータを示す1以上の信号を処理して、1以上の相当する生理パラメータを求めるように構成されている。生理データ処理モジュール115は、メモリー114に記憶させ及び/又は埋込型トランシーバ110を介して外部システムに送信するために、1以上の生理パラメータに関連するデータのサイズを低下させるように構成されていることができる。埋込型トランシーバ110は、1以上のアンテナを含み得る。埋込型トランシーバ100は、例えばシステム50が一つの部分であるより広いシステム100に体外からの信号を送信するために、RF、無線、赤外線などの好適な信号伝達プロセスを用いることができる。
【0117】
或いは又はさらに、生理データ処理モジュール115は、1以上の生理パラメータを示す信号を処理し、及び/又は測定した1以上の生理パラメータを処理して対象者における疾患の進化を求めるように構成されていることができる。そのような場合、システム50、特には埋込型装置106は、対象者の前記1以上の生理パラメータ及び対象者での疾患の測定された進展に基づいて信号パラメータを計算及び調整する能力を含むことになる。
【0118】
生理データ処理モジュール115及び前記少なくとも一つの生理学的センサー111は、システム50の一部として、埋込型装置106の一部として、又はシステムに対して外部のいずれかで本明細書において検出器とも称される生理学的センサーサブシステムを形成することができる。
【0119】
炎症障害の治療に関係する1以上の生理パラメータを検出するよう構成された少なくとも一つの検出器があっても良い。例えば、下記でさらに議論する、炎症性サイトカイン及びケモカインの減少、抗炎症サイトカイン(例えば、IL-10)及び/又は収束作用を有するメディエータ(例えば、レゾルビン類、リポキシン類、エイコサノイド類、マレシン類及びプロテクチン類)の増加、カテコールアミン類及びアセチルコリンの増加、血液学及び細胞数の変化;例えば、免疫細胞群又は免疫細胞表面共刺激分子における変化、炎症カスケードに関与する因子の減少、及び/又は免疫応答メディエータの減少である。例えば、検出器は、電気的、RF若しくは光学的(可視、赤外)生化学センサーを用いて生体分子濃度を検出するよう構成されていても良い。
【0120】
他の生理パラメータ、例えば脾臓での血流速度、脾動脈での血流速度、脾静脈での血流速度、脾臓体積、少なくとも一つの脾動脈神経での神経活動、又は少なくとも一つの電極のインピーダンスを検出するよう構成されている少なくとも一つの検出器があっても良い。
【0121】
例えば、検出器は、動脈又は静脈内若しくは周囲の血管内若しくは血管周囲流管を用いて血流を検出するよう構成されていることができる。或いは、検出器は、電気インピーダンストモグラフィー、電気インピーダンス、刺激要因電圧コンプライアンス、ドプラ血流、脾臓組織潅流、超音波、歪み測定又は圧力を用いて、脾動脈収縮及び血流変化を検出することができる。
【0122】
他の例において、検出器は、電気センサーを用いて少なくとも一つの脾動脈神経の神経活動を検出するよう構成されていることができる。検出器が単一の脾動脈神経の神経活動を検出するよう構成されている場合、その検出器は活動電位を検出することができる。検出器が複数の脾動脈神経の神経活動を検出するよう構成されている場合、その検出器は、化合物活動電位を検出することができる。
【0123】
さらなる例において、検出器は、超音波を用いて脾臓体積を検出するよう構成されていることができる。
【0124】
他の例において、検出器は、インピーダンス計、好ましくは低電流AC(例えば、1kHz)インピーダンス計を用いて前記少なくとも一つの電極のインピーダンスを検出するよう構成されていることができる。特に、その検出器は、前記少なくとも一つの電極と地面との間の、及び/又は前記少なくとも一つの電極の電極対(複数の電極がある場合)間のインピーダンスを検出することができる。そのような例において、前記少なくとも一つの電極は、神経上又は神経周囲に設置するのに好適である。
【0125】
他の例において、検出器は、加速度計を用いて対象者の動きを検出するよう構成されていることができる。加速度計は、その対象者が横たわっているか否か、即ち、その対象者が実質的に横たわった姿勢を維持している長期間(例えば、>70分)があったか否かを決定することで、対象者がいつ眠っているかを確認するものである。その測定は、加速度計が経験及び測定した方向及び加速度に基づくものである。
【0126】
検出器が測定した生理パラメータは、マイクロプロセッサ60とトリガーして、少なくとも一つの電極を用いて上記の種類の信号を神経に送らせるのに用いることができる。生理学的センサー111から受け取った生理パラメータを示す信号を受信したら、生理学的データプロセッサ115が、当業界で公知の技術に従って計算することで、対象者の生理パラメータ及び疾患の進展を確認することができる。例えば、循環における過剰のサイトカイン(例えば、TNF)濃度を示す信号が検出された場合、プロセッサは、本明細書の他の箇所で説明したように、個々の信号伝達分子の分泌を減らす信号の送信をトリガーすることができる。
【0127】
メモリー114は、1以上の生理パラメータの正常レベルに関係する生理学的データを記憶することができる。そのデータは、システム50を埋め込む対象者に特異的であり、当業界で公知の各種試験から収集することができる。生理学的センサー111から受信される生理パラメータを示す信号を受けたら、或いは定期的に、又は生理学的センサー111からの要求に応じて、生理学的データプロセッサ115は、生理学的センサー111から受信される信号から決定される生理パラメータをメモリー114に記憶された生理パラメータの正常レベルに関係するデータと比較し、受信された信号が不十分若しくは過剰な特定の生理パラメータを示すことから、対象者における疾患の進展を示すか否かを決定することができる。
【0128】
システム50及び/又は埋込型装置106は、不十分若しくは過剰なレベルの生理パラメータが生理学的データプロセッサ115によって測定される場合及びその時に、生理学的データプロセッサ115が本明細書の別の箇所で記載の方法で、少なくとも一つの電極による神経への信号の送信をトリガーするように構成されていることができる。例えば、生理パラメータ及び/又は疾患のいずれかの悪化を示す生理パラメータが測定される場合、生理学的データプロセッサ115が、本明細書の別の箇所で記載のように、個々の生化学物質の分泌を減少させる信号の送信をトリガーすることができる。本発明に関係する特定の生理パラメータについては上記で記載されている。生理学的データプロセッサ115がこれらの生理パラメータの1以上を示す1以上の信号を受信すると、前記少なくとも一つの電極を介して神経に信号を印加することができる。
【0129】
一部の実施形態において、制御装置101は、システム50の操作に対して調整を行うように構成されていることができる。例えば、それは、通信サブシステム(下記でさらに議論)を介して、脾臓から分泌される信号伝達分子の正常レベルに関係する生理パラメータデータを送信することができる。そのデータは、装置を埋め込む対象者に特異的であり得る。制御装置101は、電源112、信号発生器113及び処理要素60、115及び/又は電極の動作に調節を行うことで、神経インターフェース10によって神経に送られる信号を調整するように構成されていることもできる。
【0130】
システム50及び/又は埋込型装置106が対象者の生理パラメータに応答する能力に代わるものとして、又はそれに加えて、オペレータ(例えば、医師又はシステム50が埋め込まれた対象者)によって発生する信号の受信時に、マイクロプロセッサ60をトリガーすることができる。そのために、システム50は、下記でさらに議論される、外部システム80及び制御装置101を含む、より広いシステム100の一部であり得る。
【0131】
神経刺激システムを超えて
神経刺激システム50は、多くのサブシステム、例えば外部システム80を含むより広いシステム100の一部であり得る(図2参照)。外部システム80は、ヒトの皮膚及び下層組織から神経刺激システム50に電力供給し、プログラムするために用いることができる。
【0132】
外部サブシステム80は、制御装置101に加えて、埋込型装置106に電力供給するのに使用される電源112のバッテリーを無線で再充電するための電源ユニット102;及び埋込型トランシーバ110と通信するよう構成されたプログラミングユニット103の1以上を含み得る。プログラミングユニット103及び埋込型トランシーバ110は、通信サブシステムを形成することができる。一部の実施形態において、電源ユニット102は、プログラミングユニット103とともに収容されている。他の実施形態において、それらは別の装置に収容されていることができる。
【0133】
外部サブシステム80は、送電アンテナ104;及びデータ送信アンテナ105の1以上を含むこともできる。送電アンテナ104は、低周波数(例えば、30kHz~10MHz)で電磁場を送るよう構成されていることができる。データ送信アンテナ105は、埋込型装置106をプログラミング又は再プログラミングするためのデータを送信するよう構成されていることができ、高周波数(例えば、1MHz~10GHz)で電磁場を送るために、送電アンテナ104に加えて使用することができる。送電アンテナ104の動作時に、皮膚温度は、周囲組織より2℃を超えて高くなることはない。埋込型トランシーバ110の前記少なくとも一つのアンテナは、送電アンテナ104によって発生した外部電磁場から電力を受け取るように構成されていることができ、それは電源112の充電式バッテリーに充電するのに用いることができる。
【0134】
送電アンテナ104、データ送信アンテナ105、及び埋込型トランシーバ110の前記少なくとも一つのアンテナは、共振周波数及び品質係数(Q)などのある種の特性を有する。アンテナの一つの具体例は、規定のインダクタンスを有する誘導子を形成するフェライト磁心を有する又は有さない電線コイルである。この誘導子は、共振コンデンサ及び抵抗損失と一体となって共振回路を形成していることができる。周波数は、送電アンテナ105によって発生する電磁場の周波数と一致するように設定される。埋込型トランシーバ110の少なくとも一つのアンテナの第2のアンテナを、外部システム80から/へのデータ受信及び送信のためにシステム50で用いることができる。システム50で複数のアンテナを用いる場合、これらのアンテナを互いに30゜回転させることで、送電アンテナ104によるわずかなミスアラインメント時に、より良好な程度の電力伝達効率が達成される。
【0135】
外部システム80は、1以上の生理パラメータを示す信号を検出するために1以上の外部装着式生理学的センサー121(不図示)を含み得る。信号は、埋込型トランシーバ110の少なくとも一つのアンテナを介してシステム50に送ることができる。或いは又はさらに、信号は、外部システム50に送られ、次に埋込型トランシーバ110の少なくとも一つのアンテナを介してシステム50に送られ得る。埋込生理学的センサー111によって検出された1以上の生理パラメータを示す信号と同様に、外部センサー121によって検出された1以上の生理パラメータを示す信号を生理データ処理モジュール115によって処理して1以上の生理パラメータを求め、及び/又はメモリー114に記憶させて、閉ループ的にシステム50を操作することができる。外部センサー121から受信した信号を介して求めた対象者の生理パラメータを、埋込生理学的センサー111から受信した信号を介して求めた生理パラメータに加えて又はそれに代えて用いることができる。
【0136】
例えば、特定の実施形態において、埋込型装置に対して外部の検出器には、非侵襲性血流モニター、例えば超音波流量計及び/又は非侵襲性血圧モニター、及び生理パラメータ、特には上記の生理パラメータにおける変化の測定などがあり得る。上記で説明したように、これら生理パラメータの1以上の測定に応答して、検出器は、少なくとも一つの電極による脾動脈神経への信号の送信をトリガーすることができるか、送られる信号又は将来的に少なくとも一つの電極によって神経に送られるべき信号のパラメータを変えることができる。
【0137】
システム100は、次の例示的事象:システム50の異常動作(例えば、過大電圧);埋込生理学的センサー111からの異常読み出し(例えば、2℃を超える温度上昇又は電極-組織インターフェースでの過度に高い若しくは低い電気インピーダンス);外部装着式生理学的センサー121(不図示)からの異常読み出し;又はオペレータ(例えば、医師又は対象者)によって検出される刺激に対する異常応答での神経の電気刺激を中止する安全保護機能を含み得る。その安全保護機能は、制御装置101を介して実行され、システム50に、又は内部的にシステム50内で伝えられ得る。
【0138】
外部システム80は、オペレータ(例えば、医師又は対象者)が押すと、制御装置101及び個々の通信サブシステムを介して信号を送って、システム50のマイクロプロセッサ60をトリガーして、少なくとも一つの電極によって神経に信号を送らせるアクチュエータ120(不図示)を含み得る。
【0139】
外部システム80は、オペレータ(例えば、医師又は対象者)に対して、システム又は対象者の状態についての警告を行うための、マイクロコントローラ60又は制御装置101用ディスプレイ109を含み得る。ディスプレイ109は、LEDモニターなどのモニターであり得るか、LEDなどの可視的表示器であり得る。
【0140】
外部システム80を含むが特にはシステム50を含まない本発明のシステム100は、好ましくは、生体安定性及び生体適合性材料から作られているか、それでコーティングされている。これは、そのシステムが、身体の組織への曝露が原因の損傷から保護され、しかも同時に、システムが宿主による望ましくない反応(最終的には拒絶に至る可能性があるもの)を引き起こすリスクを軽減することを意味する。システムを構成するかコーティングするのに用いられる材料は、理想的には、バイオフィルムの形成に抵抗性であるべきである。好適な材料には、ポリ(p-キシリレン)ポリマー(パリレン類と称される)及びポリテトラフルオロエチレンなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0141】
本発明の埋込型装置106は通常、50g未満の重量であろう。
【0142】
神経インターフェースの正しい設置の決定
本発明は、神経インターフェース10が神経血管束と関連している脾臓に分布する神経(例えば、脾動脈神経)と信号伝達的に接触して正しく設置されているか否かを決定する方法も提供する。その方法は、次の段階:
A.本発明のシステムを提供すること;
B.神経と信号伝達的に接触している電極及び/又は神経インターフェースを位置決めすること;
C.前記少なくとも一つの電極の動作を少なくとも一つの制御装置で制御することにより、前記神経に電気信号を印加すること;
D.脾臓、脾動脈、脾静脈における血流速度変化、脾臓体積の減少、脾臓潅流の減少、全身動脈血圧及び心拍数の変化、電気インピーダンス又は電圧コンプライアンスの低下、神経での神経活動の上昇、又は少なくとも一つの電極のインピーダンスの変化が検出されていることを決定すること;
E.前記神経インターフェースが前記神経と信号伝達的に接触して正しく設置されたことを、オペレータに示すこと
を含む。
【0143】
当該方法の段階Aについて説明すると、提供される本発明のシステムは、少なくとも一つの電極を有する神経インターフェース、少なくとも一つの制御装置、及び少なくとも一つの検出器を含み得る。本明細書に記載のシステムのいずれの他の特徴も提供され得る。
【0144】
段階Bにおいて、電極及び/又は神経インターフェースは好ましくは、神経と信号伝達的に接触して設置される。当該方法の一部の実施形態において、段階Bは省略することができる。例えば、段階Bは、以前に埋め込んだ電極及び/又は神経インターフェースが時間経過により移動したか否かを確認した場合には省略することができる。
【0145】
段階Cにおいて、前記少なくとも一つの制御装置は、少なくとも一つの電極の動作を制御することにより、神経に電気信号を印加する。その電気信号は、同じ波形を有して、やはり神経に対して同じ相当たり電荷密度を印加し得るという点で、上記の神経活動を刺激するのに用いられる電気信号と同様であり得る。しかしながら、神経に印加される全体の電荷は、好ましくはそれより高い。これは、周期的信号印加に代えて連続信号印加を用いることで、及び/又は上記の連続信号印加について記載の周波数より高い周波数を用いることで達成することができる。
【0146】
特に、信号は、周期的信号印加について以前に記載した割合(rate)の周波数で連続的に印加することができる。従って、その電気信号は、≦300Hz、好ましくは≦50Hz、より好ましくは≦10Hzの周波数を有することができる。例えば、連続刺激≦10Hzを、効力及び/又は治療に用いることができ;及び/又は連続刺激≦30Hz及び≧5Hzを、脾動脈血流変化検出に用いることができ;及び/又は周期的刺激≧10Hz(又は任意に≧5Hz)を、効力及び/又は治療に用いることができる。例えば、電気信号の周波数は、≦50Hz、≦100Hz、≦150Hz、≦200Hz、≦250Hz又は≦300Hzであり得る。他の例において、電気信号の周波数は、≦10Hz、≦15Hz、≦20Hz、≦25Hz、≦30Hz、≦35Hz、≦40Hz、≦45Hz、又は≦50Hzであり得る。さらなる実施例において、周波数は、≦1Hz、≦2Hz、≦5Hz、又は≦10Hzであり得る。さらに又は或いは、電気信号の周波数は、≧10Hz、≧15Hz、≧20Hz、≧25Hz、≧30Hz、≧35Hz≧40Hz、≧45Hz、又は≧50Hzであり得る。他の例において、電気信号の周波数は、≧0.1Hz、≧0.2Hz、≧0.5Hz、≧1Hz、≧2Hz、又は≧5Hzであり得る。上記の上限及び下限のいずれの組み合わせも可能である。
【0147】
前記電気信号は、前述の印加エピソードの一つ(例えば、400~600パルス)において連続的に印加することができる。或いは、電気信号は、設定期間によって定義されるエピソードにおいて連続的に印加することができる。好ましくは、電気信号印加の前記設定期間は≦3時間である。例えば、その設定期間は、≦1分、≦2分、≦5分、≦10分、≦20分、≦30分、≦1時間、≦2時間、又は≦3時間であり得る。さらに又は或いは、その設定期間は、≧1分、≧2分、≧5分、≧10分、≧20分、≧30分、≧1時間、又は≧2時間であり得る。上記の上限及び下限のいずれの組み合わせも可能である。
【0148】
段階Dにおいて、前記少なくとも一つの検出器は、脾臓における血流速度、脾動脈における血流速度、脾静脈における血流速度、脾臓体積、神経での神経活動、又は前記少なくとも一つの電極のインピーダンスの1以上を検出することができる。これらの生理パラメータを検出するのに好適な検出器については、上記で説明されている。
【0149】
検出器が脾臓における血流速度、脾動脈における血流速度、及び/又は脾静脈における血流速度を検出するよう構成されている場合、電極及び/又は神経インターフェースは、検出される血流が基底線血流と異なっている場合に、神経と信号伝達的に接触して正しく設置されるように決定することができる。
【0150】
検出器が神経での神経活動を検出するように構成されている場合、電極及び/又は神経インターフェースは、検出される神経活動が基底線神経活動より高い場合に、神経と信号伝達的に接触して、正しく設置されるように決定することができる。
【0151】
検出器が脾臓体積を検出するように構成されている場合、電極及び/又は神経インターフェースは、検出される脾臓体積が基底線脾臓体積より小さい場合に、神経と信号伝達的に接触して、正しく設置されるように決定することができる。言い換えれば、脾臓が収縮している場合である。
【0152】
検出器が少なくとも一つの電極のインピーダンスを検出するように構成されている場合、電極及び/又は神経インターフェースは、検出されるインピーダンスが基底線インピーダンスと異なる場合に、神経と信号伝達的に接触して、正しく設置されるように決定することができる。検出されるインピーダンスは、神経に信号を印加しながら測定される少なくとも一つの電極の第1の電極と第2の電極の間のインピーダンスである。「基底線インピーダンス」は、信号を神経に印加する前の第1の電極と第2の電極の間のインピーダンスである。
【0153】
段階Eによれば、神経インターフェースが神経上に正しく設置されていることを、少なくとも一つの制御装置が確定したら、前記少なくとも一つの制御装置は、それをオペレータに指示することができる。オペレータへの指示は、そのシステムのディスプレイ109、点滅LEDなどでの通知の形態を取ることができる。
【0154】
電極及び/又は神経インターフェースが神経と信号伝達的に接触して正しく設置されていないことを検出器が確認した場合、前記少なくとも一つの制御装置は、神経インターフェースが神経と信号伝達的に接触して正しく設置されていないことを、ディスプレイ109を介してオペレータに指示することができる。
【0155】
神経インターフェースが正しく設置されていなかった場合、神経インターフェースが神経と信号伝達的に接触して正しく設置されるまで、段階B~Eを繰り返すことができる。
【0156】
当該方法の段階C、D及びEは、少なくとも一つの制御装置によって実行可能である。前記少なくとも一つの制御装置は、プロセッサにロードされ、動作すると、プロセッサに段階C、D及びEを実行させるようにするコード部分を含む実行可能コンピュータプログラムを有するメモリー(即ち、非一時的コンピュータ可読記憶媒体)に接続されたプロセッサを含む。
【0157】
前記の神経インターフェースの設置を確認する方法は、患者の生涯を通じて術後に本発明のシステム(即ち、対象者に埋め込まれているもの)が奏功していることを追跡する(例えば、外部経皮的脾臓血流測定又は良好な神経-電極相互作用(intercation)のマーカーとしての全身動脈血圧を使用)のに用いることもできる。従って、正しい設置を確保する方途に加えて、当該方法は、好適な効力(サイトカイン読み出しができないであろう場合)を決定する方途を提供する。
【0158】
炎症障害
本発明は、生理的恒常性状態と比較して炎症性及び抗炎症サイトカインプロファイルの不均衡に関連する状態、例えば炎症障害(例えば、慢性炎症障害)を治療するのに有用である。
【0159】
炎症障害は代表的には、正常な生理的恒常性状態と比較して炎症性及び抗炎症サイトカインプロファイルの不均衡を特徴とするものであり、例えば、正常な生理的恒常性状態と比較して炎症性サイトカインレベル上昇及び/又は抗炎症サイトカインレベル低下である。
【0160】
従って、本発明は、炎症障害を患う対象者、又はそれを発症するリスクのある対象者を治療する上で有用である。本発明は、炎症を軽減することで、炎症障害を治療又はその効果を改善することができる。これは、神経血管束と関連している脾臓に分布する神経を可逆的に電気刺激することで、脾臓からの炎症性サイトカインの産生及び放出を低下させ、及び/又は抗炎症サイトカイン及び/又は収束作用を有するメディエータ(例えば、プロレゾルビン類)の産生及び放出を上昇させることによって達成することができる。
【0161】
炎症障害には、自己免疫障害、例えば関節炎(例えば、関節リウマチ、骨関節炎、乾癬性関節炎)、グレーブス病、重症筋無力症、甲状腺炎、全身性エリテマトーデス、グッドパスチャー症候群、ベーチェット症候群、同種移植拒絶反応、移植片対宿主病、強直性脊椎炎、ビュルガー病、I型糖尿病などの糖尿病、ライター症候群、脊椎関節症乾癬、多発性硬化症、炎症性大腸炎、クローン病、アジソン病、自己免疫介在脱毛(例えば、円形脱毛症)及び潰瘍性大腸炎などがある。
【0162】
炎症障害のある種の例には、消化管及び関連する組織が関与する疾患、例えば虫垂炎、消化性潰瘍、胃潰瘍及び十二指腸潰瘍、腹膜炎、膵炎、潰瘍性大腸炎、偽膜性大腸炎、急性大腸炎及び虚血性大腸炎、憩室炎、胆管炎、胆嚢炎、クローン病、ウィップル病、肝炎、腹部閉塞、腸軸捻、術後腸閉塞、腸閉塞、セリアック病、歯周病、悪性貧血、アメーバ症及び腸炎などがある。
【0163】
さらなる例には、全身若しくは局所炎症性の疾患及び状態、例えば喘息、アレルギー、アナフィラキシーショック、免疫複合体病、敗血症(sepsis)、敗血症(septicemia)、内毒素性ショック、好酸球性肉芽腫、肉芽腫症、臓器虚血、再潅流傷害、臓器壊死、花粉症、悪液質、過酸素症(hyperexia)、敗血性流産、HIV感染、ヘルペス感染、同種移植拒絶反応、播種性菌血症、デング熱、マラリア及びサルコイドーシスなどがある。
【0164】
他の例には、泌尿生殖器系及び関連組織が関与する疾患、例えば精巣上体炎、膣炎、精巣炎、尿路感染、腎臓結石、前立腺炎、尿道炎、骨盤内炎症性大腸炎、造影剤誘発性腎症、再潅流腎傷害、急性腎傷害、感染性腎臓結石、ヘルペス感染及びカンジダ症などの疾患などがある。
【0165】
他の例には、呼吸器系及び関連組織、例えば気管支炎、喘息、花粉症、人工呼吸器誘発肺損傷、嚢胞性線維症、成人呼吸窮迫症候群、肺炎、肺胞炎、喉頭蓋炎、鼻炎、アカラシア(achlasia)、呼吸器合胞体ウィルス、咽頭炎、副鼻腔炎、肺炎、肺胞炎、インフルエンザ、肺塞栓、包虫嚢胞及び/又は細気管支炎などがある。
【0166】
さらなる例は、皮膚疾患及び皮膚の状態(例えば、熱傷、皮膚炎、皮膚筋炎、やけど、蜂巣炎、膿瘍、接触性皮膚炎、皮膚筋炎、疣、膨疹、日焼け、蕁麻疹様疣(urticaria warts)、及び膨疹);心血管系および関連組織が関与する疾患(例えば、心筋梗塞、心臓タンポナーデ、脈管炎、大動脈解離、冠動脈疾患、末梢血管疾患、腹部大動脈瘤、血管炎、心内膜炎、動脈炎、アテローム性動脈硬化、血栓性静脈炎、心膜炎、心筋炎、心筋虚血、鬱血性心不全、結節性動脈周囲炎、及びリウマチ熱、フィラリア症、血栓性静脈炎、深部静脈血栓症);並びに各種がん、腫瘍及び増殖性障害(例えば、ホジキン病)、院内感染;及び、いずれの場合でも、原発性疾患に対する炎症若しくは免疫宿主応答である。
【0167】
炎症障害の他の例には、中枢神経系若しくは末梢神経系及び関連組織が関与する疾患、例えばアルツハイマー病、抑鬱、多発性硬化症、脳硬塞、脳塞栓、頸動脈疾患、脳しんとう、硬膜下血腫、硬膜外血腫、一過性脳虚血発作、側頭動脈炎、造影所見のない脊髄損傷(SCIWORA)、脊髄圧迫、髄膜炎、脳炎、心停止、ギラン・バレー、脊髄損傷、脳静脈血栓症及び麻痺などがある。
【0168】
炎症障害には、免疫又は炎症応答関連の状態(即ち、急性炎症エピソード)などもあり、神経その他の組織への傷害及び神経若しくは他の組織に関連する疼痛などがある。傷害は、物理的、化学的又は機械的外傷のためであり得る。傷害の非限定的な例には、急性外傷、火傷、むち打ち症、筋骨格挫傷、及び術後合併症、例えばDVT、不整脈、人工呼吸器誘発肺損傷、及び術後腸閉塞などがある。
【0169】
眼球又は耳などの特定の臓器に関連する状態は、免疫又は炎症応答、例えば結膜炎、虹彩炎、緑内障、上強膜炎、急性網膜閉塞、眼球破裂、中耳炎、外耳炎、ブドウ膜炎及びメニエール病などもあり得る。
【0170】
炎症障害の別の例は、術後腸閉塞(POI)である。POIは、腹部手術を受ける患者の大多数が経験する。POIは、GI管に沿った消化管(GI)機能の一時的障害並びに患者の疼痛及び不快感及び入院コスト上昇を特徴とする。
【0171】
GI機能の障害は、手術部位に限定されるものではなく、例えば、開腹術を受けた患者は、結腸又は第一胃機能不全を経験し得る。POIには、少なくとも部分的に、手術部位での炎症性サイトカインレベル上昇及び白血球の浸潤が介在する。炎症に応じて活性化された神経阻害経路が、手術部位に対して遠位の二次GI臓器の麻痺に寄与する。従って、本明細書で記載の神経活動の刺激は、POIの治療若しくは予防で有効であり得る。
【0172】
本発明は、自己免疫障害(例えば、関節リウマチ、骨関節炎、乾癬性関節炎、脊椎関節症、強直性脊椎炎、乾癬、全身性エリテマトーデス(SLE)、多発性硬化症、炎症性大腸炎、クローン病、及び潰瘍性大腸炎)及び敗血症を治療する上で特に有用である。
【0173】
本発明は、B細胞介在自己免疫障害(例えば、全身性エリテマトーデス(SLE)及び関節リウマチ(RA))の治療において特に有用である。
【0174】
本発明は、細菌感染関連の炎症状態を治療する上で特に有用である。例えば、本発明は、大腸菌(Escherichia coli)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、肺炎球菌、インフルエンザ菌(Haemophilus influenza)、髄膜炎菌(Neisseria meningitides)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumonia)、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(MRSA)、クレブシエラ菌又はエンテロバクター感染が原因の又はそれによって増悪した炎症状態を治療する上で特に有用である。
【0175】
炎症障害の治療
炎症障害の治療は、各種形態で評価できるが、代表的には、対象者の1以上の生理パラメータにおける改善を測定することが関与する。
【0176】
本発明の有用な生理パラメータは、炎症性サイトカインのレベル、抗炎症サイトカイン及び/又は収束作用を有するメディエータのレベル、カテコールアミンのレベル、免疫細胞群のレベル、赤血球のレベル、免疫細胞表面共刺激分子のレベル、炎症カスケードに関与する因子のレベル、免疫応答メディエータのレベル、並びに臨床観察及び評点システム(例えば、疾患活動性スコア又は他の適切な方法)からなる群の1以上であり得る。
【0177】
本明細書で使用される場合、「測定生理パラメータにおける改善」は、所定の生理パラメータにおいて、改善が、その値についての正常値若しくは正常範囲に向かっての、即ち健常対象者での予想値に向かっての、対象者におけるそのパラメータの値における変化であることを意味するものと理解される。本明細書で使用される場合、「測定生理パラメータの悪化」は、所定の生理パラメータにおいて、悪化が、その値についての正常値若しくは正常範囲から遠のく、即ち健常対象者での予想値から遠のく、対象者におけるそのパラメータの値における変化であることを意味するものと理解される。
【0178】
本発明による測定生理パラメータにおける改善は、炎症性サイトカインの低減、抗炎症サイトカイン及び/又は収束作用を有するメディエータの増加、カテコールアミンの増加、赤血球のレベル、免疫細胞群の変化、免疫細胞表面共刺激分子の変化、炎症カスケードに関与する因子の低減、及び免疫応答メディエータのレベルの変化からなる群の1以上によって示される。本発明は、これらパラメータの全てにおいて変化を生じさせるものではない可能性がある。
【0179】
脾動脈神経を刺激することで、脾臓は、(a)基底線分泌と比較して炎症性サイトカインの分泌を減少させ;及び/又は(b)基底線分泌と比較して抗炎症サイトカイン及び/又は収束作用を有するメディエータの分泌を増加させることができる。例えば、炎症性サイトカイン分泌の減少は、≦5%、≦10%、≦15%、≦20%、≦25%、≦30%、≦35%、≦40%、≦45%、≦50%、≦60%、≦70%、≦80%、≦90%又は≦95%であり得る。抗炎症サイトカイン分泌の増加は、≦5%、≦10%、≦15%、≦20%、≦25%、≦30%、≦35%、≦40%、≦45%、≦50%、≦60%、≦70%、≦80%、≦90%、≦95%、≦100%、≦150%、≦200%、又は≦500~1000%であり得る。
【0180】
サイトカインが循環中に分泌されると、循環中でのそれの濃度は薄くなる。脾動脈神経の刺激によって、(a)血漿若しくは血清中の炎症性サイトカインレベルが≦5%、≦10%、≦15%、≦20%、≦25%、≦30%、≦35%、≦40%、≦45%、≦50%、≦60%、≦70%、≦80%、≦90%、又は≦95%低下し;及び/又は(b)血漿若しくは血清中の抗炎症サイトカイン及び/又は収束作用を有するメディエータのレベルが≦5%、≦10%、≦15%、≦20%、≦25%、≦30%、≦35%、≦40%、≦45%、≦50%、≦60%、≦70%、≦80%、≦90%、≦95%、≦100%、≦150%又は≦200%上昇し得る。好ましくは、血清中のレベルを測定する。
【0181】
脾動脈神経を刺激することで、カテコールアミン(例えば、ノルエピネフリン又はエピネフリン)のレベル、例えば、脾臓又は脾静脈でのそれのレベルは、例えば、≦5%、≦10%、≦15%、≦20%、≦25%、≦30%、≦35%、≦40%、≦45%、≦50%、≦60%、≦70%、≦80%、≦90%、≦95%、≦100%、≦150%又は≦200%上昇し得る。
【0182】
例えば、本発明者らは、脾動脈神経の刺激が、血清中の炎症性サイトカイン(例えば、TNFα)のレベルを30%~60%低下させ得ることを見出した。
【0183】
炎症性サイトカインは当業界で公知である。これらの例には、腫瘍壊死因子(TNF;TNFα又はカケクチンとも称される)、インターロイキン(IL)-1α、IL-1β、IL-2;IL-5、IL-6、IL-8、IL-15、IL-18、インターフェロンγ(IFN-γ);血小板活性化因子(PAF)、トロンボキサン;可溶性接着分子;血管作動性神経ペプチド;ホスホリパーゼA2;プラスミノゲン活性化因子阻害剤(PAI-1);フリーラジカル発生;ネオプテリン;CD14;プロスタサイクリン;好中球エラスターゼ;タンパク質キナーゼ;単球走化性タンパク質1及び2(MCP-1、MCP-2);マクロファージ遊走阻止因子(MIF)、高移動度群ボックスタンパク質1(HMGB-1)、及び他の公知の因子などがある。
【0184】
抗炎症サイトカインは、当業界で公知である。これらの例には、IL-4、IL-10、IL-17、IL-13、IL-1α、及びTNFα受容体などがある。
【0185】
収束促進性メディエータも当業界で公知である。特に、特殊化した収束促進性メディエータは、いくつかの酵素(例えば、リポキシゲナーゼ、シクロオキシゲナーゼ、シトクロムP450及びその他)の作用を介して多価不飽和脂肪酸の代謝時に産生される種類の分子である。それらは、急性及び慢性の炎症を解消させる。例としては、リポキシン類、レゾルビン類、プロテクチン類及びマレシン類などがある。
【0186】
炎症性サイトカインの一部は、ある種の環境で抗炎症サイトカインとして作用し得るものであり、その逆も言えることは明らかであろう。そのようなサイトカイン類は、代表的には、多機能性サイトカイン類と称される。
【0187】
免疫応答に関与する因子は、本発明において有用な測定可能パラメータであることができ、例えばTGF、PDGF、VEGF、EGF、FGF、I-CAM、一酸化窒素である。
【0188】
ケモカイン類も、本発明に有用な測定可能パラメータであることができ、例えば6cKine及びMIP3β、及びケモカイン受容体、例えばCCR7受容体である。
【0189】
免疫細胞群(ランゲルハンス細胞、樹枝状細胞、リンパ球、単球、マクロファージ)、又は免疫細胞表面共刺激分子(主要組織適合性、CD80、CD86、CD28、CD40)における変化も、本発明に有用な測定可能パラメータであり得る。本発明による神経への信号の印加は、循環若しくは組織特異的(例えば、関節リウマチの場合は関節特異的)白血球(例えば、単球及びマクロファージ、リンパ球、好中球など)の総数の低下を引き起こし得る。
【0190】
炎症カスケードに関与する因子も、本発明に有用な測定可能パラメータであり得る。例えば、信号変換カスケードは、NFκ-B、Egr-1、Smads、トール様受容体及びMAPキナーゼ類などの因子を含む。
【0191】
これらの生理パラメータの評価方法は当業界で公知である。前記測定可能パラメータのいずれかの検出は、神経における神経活動の調節の前、最中及び/又は後に行うことができる。
【0192】
例えば、サイトカイン、ケモカイン、又はカテコールアミン(例えば、ノルエピネフリン又はエピネフリン)は、例えば、ELISAによって直接検出することができる。或いは、本明細書に記載のポリペプチドをコードするポリリボヌクレオチドなどの核酸の存在又は量は、ポリペプチドの存在又は量の尺度として役立ち得る。従って、ポリペプチドの存在又は量の検出は、そのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの存在又は量の検出を含むことは理解されよう。特殊化した収束促進性メディエータは、記載の及び当業界で利用可能な方法を用いて直接測定及び定量することもできる。そのような方法には、液体クロマトグラフィー及びタンデム質量分析などがある。
【0193】
生体分子(例えば、サイトカイン及び収束促進性メディエータ)の定量的変化は、尿又は血漿などの生体検体で測定することができる。この生体分子の検出は、対象者から採取した検体で直接行うことができるか、対象者からの採取と分析の間で検体を処理することができる。例えば、血液検体は、抗凝血剤(例えば、EDTA)を加え、次に細胞及び細胞残屑を除去して、分析のための関連分子(例えば、サイトカイン及び収束促進性メディエータ)を含む血漿を残すことで処理することができる。或いは、血液検体を凝固させ、次に細胞及び各種凝固因子を除去して、分析のための関連分子(例えば、サイトカイン及び収束促進性メディエータ)を含む血清を残すことができる。
【0194】
対象者が眠っている間に信号を印加する実施形態では、本発明には、対象者の概日リズム相マーカー、例えばコルチゾール(又はそれの代謝物)のレベル、メラトニン(又はそれの代謝物)のレベル又は中核体温の測定が関与し得る。コルチゾール又はメラトニンレベルは、血液(例えば、血漿又は血清)、唾液又は尿で測定することができる。これらのマーカーのレベルを測定する方法は当業界で公知であり、例えば酵素免疫測定吸着法(ELISA)又はラジオイムノアッセイによって行う。対象者の概日リズム相マーカーの測定が、本発明のシステムを用いる信号の印加によって有効に制御可能な炎症マーカーの日周振動を示す場合、対象者の概日リズムに従って好適な周期性で深夜/早朝(コルチゾールレベルが上昇し始める時)での信号の印加が適切であり得る。
【0195】
本明細書で使用される場合、生理パラメータは、そのパラメータが、その対象者又は介入が全く行われなかった場合の対象者が示すそのパラメータのその値についての正常値又は正常範囲から変化しない(神経調節に応答して)場合、脾臓神経活動の調節(例えば、刺激)による影響を受けない、即ち、それは、そのパラメータについての基底線値から逸脱しない。そのような生理パラメータは、動脈圧、心拍数又はグルコース代謝であり得る。これらの生理パラメータにおける変化を測定する好適な方法は、当業者には明らかであると考えられる。
【0196】
対象者におけるいずれかの神経活動又は生理パラメータについての基底線は、固定値や特定値である必要はなく、むしろ、正常範囲内で変動し得るものであるか、関連する誤差及び信頼区間での平均値であり得ることは、当業者には明らかであろう。基底線値を測定する好適な方法は、当業者には公知である。
【0197】
本明細書で使用される場合、生理パラメータは、検出の時点で対象者が示すそのパラメータについての値を測定する時に、対象者で測定される。検出器(例えば、生理学的センサーサブシステム、生理データ処理モジュール、生理学的センサーなど)は、そのような測定を行うことができるあらゆる要素である。
【0198】
従って、ある種の実施形態において、本発明はさらに、対象者の1以上の生理パラメータを測定する段階を含み、測定された生理パラメータが所定の閾値を満足するか超える場合にのみ信号を印加する。対象者の複数の生理パラメータを測定するそのような実施形態において、測定された生理パラメータのいずれか一つがそれの閾値を満足又は超える場合に、或いは測定された生理パラメータの全てがそれらの閾値を満足又は超える場合にのみ、信号を印加することができる。本発明のシステムによって信号を印加するある種の実施形態において、当該システムはさらに、対象者の1以上の生理パラメータを測定するよう構成されている少なくとも一つの検出器を含む。
【0199】
ある種の実施形態において、生理パラメータは、対象者の神経での活動電位又は活動電位のパターンであり、前記活動電位又は活動電位のパターンは、治療されるべき状態に関連している。
【0200】
いずれか二つの生理パラメータを並行実施形態で測定することができ、対象者における活動電位耐性のパターンを検出するのに制御装置(コントローラ)を組み合わせることは明らかであろう。
【0201】
生理パラメータについての所定の閾値は、対象者又は指定の介入が適用される前の対象者によって示されなければならないパラメータについての最小(又は最大)値である。いずれか所定のパラメータに関して、前記閾値は、病的状態又は疾患状態を示す値として定義され得る。その閾値は、病的状態又は疾患状態の発症を示す値と定義され得る。従って、所定の閾値に応じて、本発明を治療として用いることができる。或いは、当該閾値は、対象者の生理状態を示す値と定義され得る(対象者は、例えば、眠っているか、食後であるか、運動中である。)。いずれか所定の生理パラメータについての適切な値は、当業者が簡単に測定するものと考えられる(例えば、医学行為基準を参照)。
【0202】
対象者によって示された値が閾値を超えた場合、所定の生理パラメータについてのそのような閾値は超えられる。即ち、示された値は、所定の閾値と比較して、その生理パラメータについての正常値若しくは健常値からのより大きい逸脱である。
【0203】
本発明の対象者は、インプラントを有していることに加えて、その状態のための医薬投与を受けることができる。例えば、本発明によるインプラントを有する対象者は、抗炎症薬(通常は、インプラントを埋め込む前に行っている投薬を続けるであろう。)の投与を受けることができる。そのような医薬には、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、ステロイド類、5ASA類、アザチオプリン、メトトレキサート及びシクロスポリンのような疾患修飾性抗炎症薬(DMARD)、インフリキシマブ及びアダリムマブのような生物学的製剤、及びJak阻害剤のような新たな経口DMARDなどがある。従って、本発明は、本発明のシステムと組み合わせての、これら薬剤の使用を提供する。
【0204】
全般
本明細書に記載の方法は、有形の記憶媒体上の機械可読形態での、例えば、プログラムがコンピュータ上で動作している時に本明細書に記載の方法のいずれかの全ての段階を実施するよう調整されたコンピュータプログラムコード手段を含むコンピュータプログラム(そのコンピュータプログラムは、コンピュータ可読媒体上で具現され得る。)の形態でのソフトウェアによって実施され得る。有形の(又は非一時的)記憶媒体の例には、ディスク、サムドライブ、メモリーカードなどがあり、伝播信号は含まれない。そのソフトウェアは、パラレルプロセッサ又はシリアルプロセッサ上で動作するのに好適であることができ、それによって、前記方法段階は、いずれか好適な順序で、又は同時に実行することができる。それは、ファームウェア及びソフトウェアが貴重な別個に交換可能な商品であり得ることを証明するものである。それは、「ダム」又は標準ハードウェア上で動作するかそれを制御することで、所望の機能を実行するソフトウェアを包含するものである。それは、シリコンチップを設計し、又は汎用プログラマブルチップを構成して所望の機能を実施するために使用される、ハードウェアの構成を「記述」又は定義するソフトウェア、例えばHDL(ハードウェア記述言語)ソフトウェアを包含するものでもある。
【0205】
プログラム命令を記憶するのに使用される記憶装置をネットワークを経由して分配することが可能であることは、当業者は理解するであろう。例えば、リモートコンピュータが、ソフトウェアとして記載されたプロセスの1例を記憶することができる。ローカルコンピュータ若しくは端末コンピュータは、リモートコンピュータにアクセスし、プログラムを動作させるためのソフトウェアの一部又は全てをダウンロードすることができる。或いは、ローカルコンピュータは、必要に応じて複数のソフトウェアをダウンロードするか、ローカル端末コンピュータで一部のソフトウェア命令を実行し、リモートコンピュータ(又はコンピュータネットワーク)で一部を実行することができる。当業者はやはり、当業者に公知の従来の技術を利用することで、ソフトウェア命令の全て又は一部を専用の回路、例えばDSP、プログラマブル論理アレイなどによって実行可能であることを理解するであろう。
【0206】
別段の断りがない限り、本明細書に記載の各実施形態を、本明細書に記載の別の実施形態と組み合わせることが可能である。「含む(comprising)という用語は「含む(including)」並びに「なる(consisting)」を包含する。例えば、Xを「含む(comprising)」組成物は、専らXからなるものであり得るか、何か別のものを含むことができ、例えば、X+Yであり得る。
【0207】
上記の利益及び利点が、一つの実施形態に関係するものであり得るか、いくつかの実施形態に関係するものであり得ることは明らかであろう。その実施形態は、前述の課題のいずれか若しくは全てを解決するものや、前述の利益及び利点のいずれか若しくは全てを有するものに限定されるものではない。
【0208】
好ましい実施形態についての上記の説明は、例示のみを目的として提供されたものであり、当業者が各種の変更を行い得ることは理解されよう。ある程度詳細に、又は1以上の個々の実施形態を参照しながら、各種実施形態について上記で説明してきたが、当業者は、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、開示の実施形態に対して多くの改変を行うことができると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0209】
以下、例として、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
図1図1は、神経刺激システムを示す。
図2図2は、神経刺激システムを含むより広いシステムを示す。
図3-1】図3は、ブタ脾臓神経の組織学的及び電気生理学的特徴を示す。図3Aは、トルイジンブルーで染色したSpA(脾動脈)/SpN(脾動脈神経)の半薄切片(厚さ0.5μm)の顕微鏡写真である。画像では、有髄軸索は全く観察できない。
図3-2】図3Bは、動脈周囲カフ(全SpN叢周囲の)又はSpN束のわずかな束周囲の小さいカフで1Hzで刺激した場合の、動脈から切開した動脈周囲脾臓神経の束から記録された誘発化合物活動電位(eCAP)の代表的なトレースである。そのトレースは、10の応答の平均である。図3Cは、eCAPの異なる構成要素の伝導速度の範囲を示す。
図3-3】図3D及び3Eは、全叢(図3D)又はいくつかの切開束(図3E)を刺激することで得られるSpNの強度-期間曲線を示す。これらのグラフは、異なる刺激振幅で閾値eCAPを得るための相対電荷密度も示している。いずれの刺激も1Hzで行って、神経での刺激誘発活動電位伝導減速を制限した。
図4-1】図4は、SpN刺激によって引き起こされる刺激強度依存性であるmSpA BF、mSpV BF、sMABP及びHRにおける一時的変化を示す。図4Aは、異なる電流振幅(3.5~20mA)でのSpN叢の1分間刺激(対称方形二相パルス、10Hzで400μsPW)中のmSpA BF(-30~+180秒、刺激開始に対して)における平均(n=8)変化を示す。
図4-2】図4Bは、異なる電流振幅でのSpN叢の1分間刺激(対称方形二相パルス、10Hzで400μsPW)中に達したmSpA BFにおける最大低下を示す。各線は、被験動物を表す。図4Cは、異なる電流振幅で及び二つの異なるPW:400(黒丸)及び200(黒四角)μsでのSpN叢の1分間刺激(対称二相パルス、10Hzで400μs又は200μsPW)中に達したmSpA BFにおける平均(n≧3)最大低下を示す。
図4-3】図4Dは、異なる電流振幅(3.5~12mA)でのSpN叢の1分間刺激(対称二相パルス、10Hzで400μsPW)中のmSpV BF(-30~+180秒、刺激開始に対して)における変化を示す。
図4-4】。図4Eは、異なる電流振幅(3.5~20mA)でのSpN叢の1分間刺激(対称二相パルス、10Hzで400μsPW)中のsMABP及びHR(-30~+180秒、刺激開始に対して)における平均(n=3)変化を示す。
図4-5】図4F及び4Gは、異なる電流振幅でのSpN叢(図4F)又はいくつかの切開SpN束(図4G)の1分間刺激(対称二相パルス、10Hzで400μsPW)中のmSpA BF、sMABP、HR及びRRにおける平均(n=3)最大変化をまとめている。両方のグラフとも、記録されたeCAPの振幅(応答の曲線下の面積として測定)を示す(最大応答に対する%として表される)。SpA BF変化は、%での基底線からの最大低下として表され、HR変化は、回/分(bpm)として表され、sMABP変化は、mmHgとして表され、RR変化は、呼吸/分(bpm)として表される。その二つのグラフも、使用される刺激振幅に対する相当たり電荷密度を報告している。
図4-6】図4F及び4Gは、異なる電流振幅でのSpN叢(図4F)又はいくつかの切開SpN束(図4G)の1分間刺激(対称二相パルス、10Hzで400μsPW)中のmSpA BF、sMABP、HR及びRRにおける平均(n=3)最大変化をまとめている。両方のグラフとも、記録されたeCAPの振幅(応答の曲線下の面積として測定)を示す(最大応答に対する%として表される)。SpA BF変化は、%での基底線からの最大低下として表され、HR変化は、回/分(bpm)として表され、sMABP変化は、mmHgとして表され、RR変化は、呼吸/分(bpm)として表される。その二つのグラフも、使用される刺激振幅に対する相当たり電荷密度を報告している。
図5a図5は、SpN刺激中のmSpA BF、mSpV BF、sMABP及びHRにおける変化が周波数依存性であったことを示す。図5Aは、異なる周波数(0.25~100Hz)でのSpN叢の1分間刺激(対称二相パルス、約36.9μC/cm/相で400μsPW)中のmSpA BF(-30~+180秒、刺激に対して)における平均(n=3)変化を示す。
図5b図5Bは、異なる周波数(0.25~100Hz)でのSpN叢の1分間刺激(対称二相パルス、約36.9μC/cm/相で400μsPW)中に観察されたmSpA BFにおける平均(n=3)最大低下を示す。
図5c図5C~5Dにおいて、それらのグラフは、異なる周波数(0.25~100Hz)でのSpN叢の1分間刺激(対称二相パルス、約36.9μC/cm/相で400μsPW)中のmSpV BF、sMABP、HR(刺激前基底線に対する%として表される)における変化を示す。図5Aにおけるデータは、平均±標準偏差として表される。図5A及び5C~5Dにおいて、囲みは、刺激時間ウィンドウを表す。
図5d図5C~5Dにおいて、それらのグラフは、異なる周波数(0.25~100Hz)でのSpN叢の1分間刺激(対称二相パルス、約36.9μC/cm/相で400μsPW)中のmSpV BF、sMABP、HR(刺激前基底線に対する%として表される)における変化を示す。図5Aにおけるデータは、平均±標準偏差として表される。図5A及び5C~5Dにおいて、囲みは、刺激時間ウィンドウを表す。
図6図6は、異なる周波数でのいくつかの切開SpN束の局所及び全身効果を示す。特に、図6は、動脈から切開したいくつかのSpN束の異なる周波数による刺激に関連する局所及び全身変化の代表的な実験記録を示す。HR、sMABP、刺激入力、eCAP、SpA BF生及びmSpA BFデータは、周波数が3~300Hzの範囲である代表的実験からのものを示している。
図7図7は、手術中脾臓超音波検査を介してモニタリングしたSpA血流変化を示す。図7の画像は、SpN刺激中の二頭の異なる動物から得られたものである。刺激中のドプラトレース低下(中央パネル)と刺激前及び刺激後(それぞれ、上及び下のパネル)に留意する。
図8-1】図8は、SpN eCAP振幅及び伝導速度の活性依存的変動を示す。図8Aは、異なる周波数(1、10及び30Hz、左から右)での1分間刺激中にSpNから記録されたeCAPを示す。各画像は、全ての誘発応答の重ね合わせを示している。1Hz刺激の場合、60の応答を重ね合わせた。10及び30Hzについては、各トレースは、5連続応答の平均を表す。留意すべき点として、10及び30Hzでの応答が経時的に右方向にシフトしており、振幅は経時的に小さくなっている。
図8-2】図8Bは、5若しくは10秒のオフ期によって隔てられた5若しくは10パルスの連射で10Hzで送られる1分間刺激中にSpNから記録されたeCAPを示す。各画像は、経時的に右へのシフトを示し、振幅は小さくなっている。
図8-3】図8Bは、5若しくは10秒のオフ期によって隔てられた5若しくは10パルスの連射で10Hzで送られる1分間刺激中にSpNから記録されたeCAPを示す。各画像は、経時的に右へのシフトを示し、振幅は小さくなっている。
図8-4】図8Cは、異なる刺激パラダイムの各記録されたeCAPの曲線下面積(AUC)の定量化を示す。特に、図8Cは、異なるパラダイムで送られた1パルスと60パルスの間の値の比較を示す。
図8-5】図8Dは、図8A~Cに示した刺激の異なるパターンでの600連続パルスにおけるeCAP潜時(第1の応答の潜時に対する%として表される)を示す。データは平均として示されている(N≧3)。点線は、95%信頼区間を表す。図8Eは、図8A~Cに示した刺激の異なるパターンでの600連続パルスにおけるeCAP振幅(第1の応答の振幅に対する%として表す)を示す。データは平均として示されている(N≧3)。最小二乗回帰曲線を、潜時データ(図8Dに示したもの)及び振幅データ(図8Eに示したもの)に対して適合させた。点線は、95%信頼区間を表す。
図8-6】図8Fは、10Hz(黒)、1Hz(ライトグレー)又は連射刺激(10Hz、10秒ごとに5パルス、グレー)で送られた400μsPW及び12mA(対称、二相方形パルス)を用いるブタ脾臓神経血管束(NVB)の60秒刺激中のSpA mBF(円形)及びsMABP(三角形)における変化を示す。データは、同一動物内での代表的な刺激からのものである。図8Gは、図8Fに示した異なる刺激パターンで送られた60秒刺激中に記録されたSpA mBF及びsMABP最大変化を示す。値は、10Hzで得られた最大変化に対する%として表している。データは、平均(N=4)±標準偏差として示している。図8Cにおける統計解析は、一元配置ANOVA及び複数比較についてのテューキー事後補正を用いて行った。、P≦0.05;**、P≦0.005;***、P≦0.001;****、P≦0.0001。
図9図9は、連射及び1Hz刺激が、mSpA BFにおいて最小変化を生じさせたことを示す。特に、図9は、10Hzで送られた二相対称パルスによる60秒刺激中に得られた変化に対する%として表されるmSpA BFにおける最大変化を示す(黒色)。同じ電流振幅で送られた異なる刺激パラダイムを比較している:対称又は非対称二相パルスによる連続10Hz、連続1Hz及び連射刺激(5秒ごとに10Hzで5パルス)。
図10図10は、脾臓叢の解剖学的特徴(脾臓、神経、動脈及び静脈)を強調しているブタ左腹部の模式図である。動脈周囲SpN刺激の実験時のカフ設置の位置を示してある。神経は黒色で表してあり、動脈及び静脈はグレーである。
図11-1】図11は、ブタでのSpNの刺激がイン・ビボでのLPS誘発サイトカイン産生における減少を引き起こすことを示す。図11A及び11Bは、大腸菌(E. coli)LPS 0.25μgを投与した終末麻酔を施したブタによって採取した血漿から直接測定したTNFα及びIL-6における動的変化を示す図である。
図11-2】図11C及び11Eは、異なる群でのLPS投与後の血漿で測定されたTNFα及びIL-6のピーク値を示す。図11D及び11Fは、TNFα及びIL-6の両方の曲線下面積(AUC)の定量化を示す。データは、平均+/-SDとして表している(シャム:N=6、デキサメタゾン:N=2、LVNS:N=5、eLVNS:N=5、SpNS:N=6)。
図12-1】図12は、主SpA及び短胃動脈及び大網動脈に沿ったSpNの解剖学的及び組織学的分析を示す図である。図12Aは、組織学的分析を行った領域を強調した(点線)脾臓神経構造の模式的表示である。図12B~12Dは、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)で染色した、異なるレベルのSpN、主脾動脈(図12B)、短胃(SG)動脈(図12C)及び胃大網(GEP)動脈(図12D)の切片を示す。
図12-2】図12B~12Dは、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)で染色した、異なるレベルのSpN、主脾動脈(図12B)、短胃(SG)動脈(図12C)及び胃大網(GEP)動脈(図12D)の切片を示す。図12C及び図12Dにおける神経は、矢印によって示されている。図12Dにおいて、挿入図は、一つの神経束の高倍率キャプションを示している。
図12-3】図12Eは、異なる位置でのSpN束の数の定量化を報告するボックスプロット(上パネル)及び異なる位置での同じ束の平均直径分布(下パネル)を示している。図12Fは、異なる位置での束の数及びそれらの相対平均直径を示している。
図13-1】図13は、ヒト脾臓神経が伝導速度の遅い軸索を含む動脈周囲束の叢であることを示す。図13は、次の小区分を含む:A)ドナーから摘出したばかりのSpA、SpN、結合組織、膵臓及びリンパ節を含むヒト脾臓神経血管束(NVB)。二つの小カフ電極(直径650μm)を特定のいくつかの切開束上に設置した。標本の模式図は、刺激カフ及び記録カフの位置(a及びb)を示している。点線は、B及びCで示した切片を取った領域を示している。
図13-2】(B)ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)で染色したヒトNVBの切片。SpN束は丸く囲んである。;(C)電気生理学的試験に摘出した刺激束の切片。その切片はH&Eで染色されており、神経束(丸く囲んでいる)及び脂肪/結合組織を示している。
図13-3】(D)刺激カフと記録カフの間の神経を圧壊する前(上パネル)及び後(下パネル)に1Hz及び400μsPWでヒトSpNの単極単相刺激を印加した時に記録されたeCAP。左のボックスは刺激アーチファクトを示し、右のそれより大きいボックスは、eCAPが観察されるべき領域を示し、矢印はeCAPを示している。;(E)eCAP振幅(最大応答の%として表される)対刺激振幅を定量化するヒトSpNの動員曲線。各点は、1Hz及び400μsPWで送られた8連続単極単相パルスの平均振幅を表す。
図13-4】(F)ヒト、ブタ(豚)及びラットSpNから記録された全てのeCAP構成要素の伝導速度;(G)切開された束を刺激することで得られたヒトSpNの強度-期間関係(黒丸)。そのデータは、調べた異なるPWでの検出可能なeCAPをトリガーするのに必要な最小電流を表す。グラフは、異なる刺激の相当する電荷密度(黒三角)(右Y軸と称される)も示している。最小二乗回帰曲線を、強度-期間及び電荷密度データに対してプロットした。
図13-5】(H)異なるPWでの3種類の異なる生物種のSpNを刺激するのにひつような電荷密度。データは線形回帰と適合させた。スケールバー:B=2mm;C=100μm。
図14-1】図14は、A)腹腔に近い近位端を示す縫合があるヒト脾臓検体の例、(B)組織学のためのブロックにおける組織の切片の概念的表示、(C)ブロックの一つからのヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色スライドグラス、及び(D)組織形態計測的推算方法を示す。
図14-2】図14は、A)腹腔に近い近位端を示す縫合があるヒト脾臓検体の例、(B)組織学のためのブロックにおける組織の切片の概念的表示、(C)ブロックの一つからのヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色スライドグラス、及び(D)組織形態計測的推算方法を示す。
図14-3】図14は、A)腹腔に近い近位端を示す縫合があるヒト脾臓検体の例、(B)組織学のためのブロックにおける組織の切片の概念的表示、(C)ブロックの一つからのヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色スライドグラス、及び(D)組織形態計測的推算方法を示す。
図15図15は、(左)束直径、(中央)脾臓神経血管束(NVB)の近位、中央及び遠位部分についての外膜(外側脾動脈壁)周囲に広がる束、及び(右)束-外膜からの距離のパーセントを示す。
図16-1】図16は、ブタ脾臓神経血管束刺激からのイン・ビボデータ;(A)群動員曲線、(B)強度-期間曲線を示す。
図16-2】図16は、ブタ脾臓神経血管束刺激からのイン・ビボデータ;(A)群動員曲線、(B)強度-期間曲線を示す。
図17-1】図17は、(A)X軸が400μsパルスでの電荷注入推算値を表す、ブタでのイン・シリコモデリングからの動員曲線、(B)X軸が刺激振幅を反映する、同じ動員曲線、(C)X軸が400μs(青)及び1msパルス(赤)での電荷注入推算値を表す、ヒトでのイン・シリコモデリングからの動員曲線、(D)X軸が刺激振幅(mA)を反映している同じ動員曲線を示す。
図17-2】図17は、(A)X軸が400μsパルスでの電荷注入推算値を表す、ブタでのイン・シリコモデリングからの動員曲線、(B)X軸が刺激振幅を反映する、同じ動員曲線、(C)X軸が400μs(青)及び1msパルス(赤)での電荷注入推算値を表す、ヒトでのイン・シリコモデリングからの動員曲線、(D)X軸が刺激振幅(mA)を反映している同じ動員曲線を示す。
【0210】
ブタデータ
ブタにおける脾動脈神経の電気刺激
材料及び方法
ブタ合計8頭(体重:40~50kg)を、脾臓神経の組織学的及び電気生理学的特性決定に用いた。
【0211】
実験当日、筋肉注射によって投与されるケタミン(1.5mg/kg)及びミダゾラム(0.5mg/kg)で、動物を鎮静させた。静脈カテーテルを片方の耳介静脈に設置し、静脈注射したプロポフォール(2mg/kg)によって麻酔を施した。気管内チューブを設置し、フェンタニルの連続速度注入(CRI)(0.2μg/kg/分)と組み合わせたセボフルランで麻酔を維持した。
【0212】
全身麻酔を施した後、超音波ガイダンス下で両側留置尾静脈カテーテル及び大腿動脈カテーテル1本を設置するために、動物を背殿位とした。次に、SpNカフ埋込を行う動物を、右横向きに寝る姿勢を取らせた。
【0213】
SpNカフ埋込の外科的アプローチは次の通りであった。胸腰椎移行部を支え、砂袋を用いて若干高くした。適切な手術準備(クリッピング及びグルコン酸クロルヘキシジン及びアルコールによる無菌的手洗い)後、左脇腹にドレープをかけ、最後から2番目の肋骨を中心とする20×25cm領域を露出させた。モノポーラ電気メスを用いて最後から2番目の肋間腔で、15cm皮膚切開を行った。皮下組織及び肋間筋系を通過して腹膜が露出されるまで、切開を続けた。肋骨を係合するように注意を払いながら、2個のフィノチエットリブリトラクターを腹膜後方に設置した。その後数分かけて、リトラクターを徐々に開いて、約10×8cmの大きさで左脇腹を露出させた。リトラクターのブレードを、カルボキシメチルセルロース(CMC)に浸したガーゼスポンジで覆った。腹膜を縦方向に切開し、皮膚に縫合して(バイクリル2-0;フォードインターロッキング縫合パターン)リトラクターのブレードを覆って、扱っている際の脾臓裂傷のリスクを低下させる。注意深い指操作を使って、脾臓を体外に出し、脾動脈(SpA)を、それの内臓表面に沿って確認した。左胃大網動脈に分岐するSpAに近位の脾臓中央部分で、1mm超音波フロープローブ(Transonic)を設置するために、SpAの短い部分を、周囲の軟組織がないように注意深く切開した。プローブを設置した後、脾臓を腹部に戻した。
【0214】
脾臓内臓底をオペレータに対して若干回転させ、脾臓に緩い腹部牽引をかけることで、脾門の胃脾間膜を、メッツェンバウム剪刀を用いて切開して、SpAを露出させた。その動脈を背方向にたどって、それの基点(即ち、左胃動脈(LGA)とSpAへの腹腔動脈の分岐点)に至った。この分岐点に対して直接遠位の、無傷の動脈周囲SpN回路網を有するSpAの約1cm断片を、メッツェンバウム剪刀を用いる鈍的剥離によって円周状に摘出した。ストレート形状顕微解剖鉗子を用いて手術野に導入した2.5mm直径CorTecカフの片方のフラップを把持しながら、湾曲ミクスター動脈鉗子を、尾から頭蓋にかけての当該動脈下に挿入した。適切に設置された時にカフの二つのフラップを並置するように注意しながら、ミクスター鉗子の動きを逆にすることで、カフをSpA及び無傷の動脈周囲SpN回路網周囲に設置した。次に、脾臓及び動脈上の緊張を緩めた。SpA血流読み取り値を調べ、最後に、肋骨リトラクターを一部閉じ、露出切開部を生理食塩水に浸したガーゼスポンジで覆った。
【0215】
電気生理学的実験では通常、全SpN叢又はいくつかの束の刺激時の誘発化合物活動電位(eCAP)記録を可能とするために、刺激カフに対して数センチメートル遠位(脾臓にはより近い)の一つ若しくはいくつかの別個のSpN束の切開及びカフィング(500μm直径双極又は三極CorTecカフを使用)を行った(図3参照)。さらに、刺激部位の上流若しくは下流での神経信号伝達遮断の異なる組み合わせ(例えば、局所麻酔剤の局所投与、又はSpN束の切断を用いて)を行った。
【0216】
記録されたeCAPを、1800 2-チャンネル微小電極AC増幅器(A-Mシステム)を用いて増幅及びフィルター処理した(100~1000Hz)。神経活動を、オシロスコープを用いて連続的にモニタリングし、16チャンネルPowerLab(AD Instruments)取得システム及び20kHzのサンプリング速度を用いるLabChart 8ソフトウェアを用いてコンピュータに記録した。eCAPの平均を求め(8~10パルス)、平均応答のピーク間若しくは曲線下面積(AUC)を定量化した。SpNのeCAP構成要素の伝導速度を、刺激部位と記録部位の間の距離及びeCAP信号の潜時から計算した。
【0217】
手術の期間を通じて、心電図(ECG)、心拍数(HR)、動脈血圧、呼吸数(RR)、パルス酸素濃度、カプノグラフィー、肺活量をモニタリングした。鼻腔内プローブによって体温を連続的に記録した。実験を通して、動脈血ガスを分析して、pH、グルコース、pO及びpCO、Kレベルをモニタリングした。全ての生理パラメータ並びに使用したセボフルランのレベルを、記録シートに記録した(5~10分ごと)。生理学的データも、Powerlab取得システム及びLabChartソフトウェアを用いてデジタル化した。全てのパラメータは、0.1~2kHzの周波数でサンプリングした。
【0218】
麻酔の深さを、眼瞼反射、角膜反射、中前(medioventral)眼球位置及び顎の緊張(jaw tone)によって評価した。
【0219】
さらに、生理パラメータ並びにバイスペクトラルインデックスモニタリングシステム(30~60のレベル)を用いて、麻酔レベルを調節した。場合により、プロポフォールのボラス投与を用いた。
【0220】
場合により、SpN刺激時のSpA血流変化のリアルタイムモニタリングのために、脾臓の手術中超音波検査を用いた。その手法のために、手術中プローブ(i12L-RS線形手術中変換器4-10MHz、29×10mmフットプリント、25mm視野;GE Vivid-i)を用いた。
【0221】
SpA血流変化を、カラードプラ及び連続波スペクトルトレースによって評価した。脾門に対して2~3cm遠位の脾臓柔組織内のSpAのカラードプラ確認後、ウィンドウカーソルをSpA管腔の中心に向けることで、SpA流の連続波スペクトルトレースを得た。代表的な信号を得た後、超音波検査プローブ及びカーソルウィンドウを適切な位置に置いた状態で、SpN刺激を開始した。
【0222】
統計解析はいずれも、市販の統計ソフトウェア(JMP Pro 13.0.0又はGraphPad Prism 5.0)を用いて行った。
【0223】
結果
動脈周囲カフを取り付けた全SpN叢、又はより小さいカフを取り付けた少数束の刺激のSpN刺激時に生じたeCAPの記録によって、刺激部位と記録部位の間の距離に応じた特定の潜時のあるeCAPが生じた(図3B)。eCAPの異なる構成要素の伝導速度の範囲を図3Cに示している。全叢又は少数束のいずれかの刺激によって、1m/s以下の平均速度でeCAPが生じた(図3C)。この伝導速度は、SpNが無髄神経であることを示す下記の特性決定データにおける組織学所見と一致している。全叢又は少数束を刺激するeCAPを誘発するのに必要な電流振幅とパルス期間の間の関係を、図3D及び3Eに示している(それぞれ)。全叢を動脈周囲カフで刺激する場合、神経応答の閾値は、7.692~15.58μC/cm/相であることが認められた。少数の切開束をより小さいカフで刺激する場合、閾値は、5.796~11.594μC/cm/相であることが認められた。両方の場合とも、eCAP記録についての電流密度の閾値は、パルス幅(PW)が短いほど低かった。
【0224】
特定の電流閾値より上の10Hz及び400μsPWでの1分間のSpN二相刺激は、血管周囲流プローブを介して測定された遠位SpA内での一時的血流低下を常に引き起こした。送られた電流と血流低下の間に明瞭な用量-応答関係があった。即ち、振幅が大きいほど、観察される血流低下が大きかった(図4A)。刺激前基底線と比較して平均SpA血流(mSpA BF)での5%変化と定義される血流変化閾値が、およそ4.5mA(400μsPWで)及びおよそ12mA(200μsパルス幅で)で認められた(図10B及び10C)。血流変化を引き起こすための閾値の相当たり電荷密度を計算すると、その値は非常に類似しており、400μsで約13.8μC/cm/相及び200μsで18.46μC/cm/相であった。12mA及び400μsPW(36.9μC/cm/相)による刺激は、基底線値から約40%のSpAにおける平均最大BF低下を引き起こした。
【0225】
並行して、脾静脈(SpV)内の血流を、その静脈が脾門を出る脾臓底に設置されたドプラ血流プローブを用いることで記録した。興味深いことに、刺激(対称二相パルス、400、10Hz、1分間)によって、電流振幅依存性である平均SpV血流(mSpVBF)の増加が生じた。12mA及び400μsPW(36.9μC/cm/相)による刺激によって、基底線mSpV BFと比較した場合に約200%の最大増加が生じた。mSpA BFの一時的低下には、全身平均動脈血圧(sMABP)の一時的上昇も伴った。基底線からのこの上昇(平均で1~6mmHg)もやはり、刺激強度と相関していた(図4E)。刺激によって一貫したsMABP変化が認められ、SpA血流に20~30%低下が生じた。対照的に、HRはごくわずかに影響されたが(<3bpm変化、上昇又は低下)、高刺激振幅によってのみ一貫性が高くなった(>45μC/cm/相、3~10bpm変化が生じた)(図4G)。SpN刺激は、調べた条件では呼吸数(RR)に影響しなかった。
【0226】
異なる電流振幅(1~50mA、3.076~153.8μC/cm/相に相当)での1分間刺激(対称二相パルス、10Hz、400μsPW)中にmSpA BF、sMABP、HR、RRで観察された変化を図4Fにまとめてある。図4Fにおいて、これらの変化の大きさがSpNからのeCAP(黒線又は丸)の記録とどの程度相関していたかを観察することができる。動員された線維の数(最大記録応答に対するeCAP%として測定)の数が大きいほど、mSpA BF及び他の関連する変化における低下が大きかった。
【0227】
SpA(500μm直径カフを用いて)から切開した個別のSpN束の直接刺激によって、mSpA BF、sMABP及びHRにおいて同様の変化が誘発された。1分間(対称二相パルス、1Hz、400μsPW)及び異なる電流振幅(0.1~2.5mA、3.86~96.61μC/cm/相に相当)で起こるこれらの変化を、図4Gにまとめてある。この場合であっても、関連する変化は、刺激によって動員された線維の割合(黒で示したeCAP)に依存していた。最大eCAP(従って、最大変化)は、全叢を刺激した場合に約153μC/cm/相で、そして約70μC/cm/相で得られた。少数束を刺激した場合の変化の大きさは、全叢を刺激した場合に得られたものより低く、これは、刺激された線維の総数がより低く、周波数がより低かったことから予想されたものである。
【0228】
mSpAにおける血流変化も、刺激の異なる周波数によって影響を受けた。異なる周波数(0.25~100Hz)で刺激した場合(対称二相パルス、約36.9μC/cm/相での1分間の400μsPW)、30~50HzがSpAにおいて最も強い血流低下を確実に引き起こした(図5A)。50Hz(70~100Hz)より高いと、BF低下は実際には小さくなり、10Hz刺激で得られた低下の範囲であった(図5B)。mSpV BF、sMABP及びHRにおける変化も、印加した刺激の周波数に依存していることが認められた。最も強い効果はやはり、30~50Hzで観察された(図5C~5D)。
【0229】
これもやはり、動脈を切開した少数束のみを最大に(ほぼ70μC/cm/相)刺激した場合に観察された。周波数分析時に全叢について使用した刺激振幅と比較して高い神経線維動員があったため、mSpA BFにおけるより強い低下が、相対的に低い周波数(1Hz及びそれ以下)で既に生じていた。しかしながら、一貫して、最低低下は、30~50Hzで観察された(図5D)。
【0230】
SpABFでの観察された変化が直接神経細胞活性化(平滑筋の刺激ではなく)によるものであったことをさらに確認するため、リドカイン(2%リドカイン塩酸塩溶液)を、埋め込まれたSpNカフ(動脈周囲カフ又は切開束用のカフ)周囲に局所的に適用した。リドカインは、高速電圧依存性Naチャンネルの特異的ブロッカーである。リドカインは、SpA BFにおける変化を遮断することができた。さらに、BFを最高80%低下させることができるSpAの機械的閉塞は、sMABPやHRにおいて全く変化を生じさせなかった。さらに、SpNの中心端(カフに対して近位)の離断は、SpA血流、sMABP及びHRに対する刺激効果を無効化しなかった。さらに、GEP及びSG断片内のSpNの離断は、これらの変化を防止しなかった。興味深いことに、これらの効果は全て、SpNの末梢端(カフに対して遠位)を切った場合にのみ無効となった。これらのデータは全て、SpA BF及びSpV BFにおける変化がニューロン駆動であり、SpAの狭窄並びに脾嚢の収縮に関係したものであったことを示唆している。他方、sMABP及びHRにおける変化は、恐らくは、脳に向かうニューロン経路の活性化によるものではなく、心臓に向かう脾臓からの血液流出増加によるものであった。
【0231】
少数の動物において、刺激時のSpA血流変化も、脾門での手術中超音波検査を用いてモニタリングした。カラードプラによってSpAを確認した後、BFにおける変化を、図7に示したようにドプラ信号としてモニタリングした。10Hzでの刺激の際、BFにおける低下は、変化した振幅及び血流トレースの形状によって示されるように容易に観察することができると考えられる。
【0232】
考察
脾臓神経刺激は、mSpA BF及びmSpV BF並びに脾臓収縮における一時的局所変化に関連していた。これらの変化は、SpAの平滑筋の直接刺激ではなく、SpNの直接活性化によるものであった。SpN刺激時の脾臓収縮は、他の動物種でも既報である[16]。mSpA BFにおける観察された変化は、動物間で非常に一貫していた。変動は恐らく、主として、異なる動物におけるSpN叢周囲のカフの異なる取り付け具に起因するものであった。SpA BFにおける変化は、非侵襲性の超音波によって容易にモニタリングすることができると考えられることから、臨床状況でもSpNの有効な刺激を評価するためのマーカーとして用いることができると考えられる。
【0233】
SpN刺激時に観察された一時的変化は、振幅及び周波数依存的であることが明らかになった。異なる電流振幅での1分間の刺激の際、最も強いmSpA BF低下は、記録されたeCAPのピークに相当する調べた最高の電流振幅で観察された。全SpN叢を刺激した場合(動脈周囲カフで)又はより小さいカフ内の少数束のみを刺激した場合に、これは当てはまった。SpN叢から及びSpN束から最大eCAPを得るのに必要な総電荷密度における差は、使用した2.5mmカフによる叢の部分的被覆によって説明できると考えられる。実際、ほとんどのブタで、このカフによって、270~300゜の円周被覆しかなされなかった。動脈から切開したSpNの少数束のみでのカフ取り付け時は、被覆はほぼ全体であった。従って、SpN束の至適動員を得るのに必要な電荷密度を制限するためには、動脈の至適な円周被覆が必要であろう。
【0234】
最も強い変化(mSpA BF及びsMABPにおける)は、30~50Hzの周波数で観察された。送られたパルスの総数が、この変化の大きさを求める上で重要な要素であり得るが、確かに、異なる周波数で送られた同じ数のパルスで生じた変化を比較した場合、30~50Hzの範囲がやはり、最も強い変化を生じさせた。これは、ネコ脾臓からのNAの最大放出が30Hzで観察されたことを示す既報のデータで説明できるものと考えられる[17,18]。NAの放出が相対的に大きいことで、この刺激範囲で観察される変化の大きさが相対的に大きいことを説明できるものと考えられる。
【0235】
信号パラメータの至適化
材料及び方法
至適化された刺激パラダイムを開発するために、本発明者らは、上記の材料及び方法を用いて上記のブタにおけるいくつかの信号パラメータ設定を調べた。
【0236】
パラメータの至適化は、標的効果の低下及びSpN応答の効力上昇に焦点を当てた。特に、SpN刺激によって生じる全身変化がSpAの局所狭窄及び脾臓の収縮に関係していたことから、これらの変化を最小化させることができるパラメータは、全身効果(例えば、sMABP及びHRにおける変化)が望ましくない慢性試験及び臨床試験に移されるべき至適なパラダイムを代表するものであると考えられる。
【0237】
結果
SpNの繰り返し刺激が、ある種の周波数で神経線維において疲労を引き起こすことが認められた。この効果は、i)SpN eCAP振幅の低下及びii)SpN伝導速度の低下という二つの特性からなるものであった。これらの特性の両方とも、1Hzより高い周波数で観察され、周波数が大きくなると疲労効果が大きくなった。実際、1分間の連続で10HzでのSpNの刺激によって、記録された応答に順応が生じ、経時的にeCAPの振幅が低下し(図8A)、記録されるeCAPピークのそれぞれの伝導速度が低下した。この効果は、周波数が高いほど強く(大きさで)、急速であった。例えば、1分間の連続で30HzでのSpNの刺激によって、eCAP振幅(図8A、8B)並びに伝導速度の両方でより急速且つより強い低下が生じた。60秒間の刺激後、10Hz(合計600パルス)パルスによって、eCAP最大振幅の約60%の低下が生じ、30Hzパルス(合計1800パルス)では約80%の低下となった(図8C、8E)。代わりに、1Hzで1分間SpNを刺激した場合、経時的なeCAPの低下(図8A及び8C)は非常に小さく、伝導速度における有意な低下は観察されなかった。同数のパルスでのeCAP振幅の低下を比較すると、10Hz及び30Hzがやはり、より急速且つより強い低下を生じた(図8C)。SpNの繰り返し刺激でのこの疲労効果は、刺激のオフ及びオンを定期的に切り換えることで軽減できるものと考えられる。SpNを連射パラダイムで刺激して、例えば5秒ごとに10Hzで送られる5パルスを提供した場合、eCAP及び伝導速度の低下は無くなった(図8C~8F)。
【0238】
さらに、10及び30Hzで連続的に刺激した場合、eCAP振幅における急速な増加が第1の5~20パルス以内で観察された。この相は、振幅及び速度における連続的低下に先行するものであった(図8C及び8E)。
【0239】
前述のように、刺激の周波数は、神経の応答に影響しただけでなく、生理学に異なった形でも影響した。30~50Hzの周波数によって、sMABPにおける変化を促進するmSpA BFにおける最も強い変化が生じた。それに比べて、≦1Hzの周波数によっては、mSpA BFにおいてほとんど変化は生じなかった。1~30Hzの周波数によっては、mSpA BFが大きくなる変化が生じた。高い電流振幅を選択することで(ほとんどのSpN線維を動員するため)、10Hz、二相、対称60秒刺激が、少なくとも、mSpA BFにおける50%最大低下を生じさせるのに十分である。同じ二相対称パルス及び電流振幅であるが1Hz周波数によるSpNの刺激によって、10Hz刺激で生じたもの(図9図8F及び8G)より約40%低い(ほぼ70%~ほぼ50%の低下)mSpA BFにおける低下が生じた。
【0240】
同じことが、二相パルス及び同じ電流振幅を用いて連射刺激(5秒ごとに10Hzで5パルス)を印加した場合に観察された(図9)。重要な点として、刺激を二相、非対称パルス(及び同じ電流振幅)として印加した場合、刺激パラダイムのそれぞれによって、それらの個々の二相、対称パラダイムと比較して低いmSpA BF低下を生じた(図9)。この場合であっても、1Hz及び連射刺激によって、mSpA BFにおいて最小変化が生じた。
【0241】
本明細書においては、治療法の標的プロファイルに応じて、生理的変化を有効に刺激する(高周波数)、又はそれらを回避する(低周波数又は連射周波数)ための選択肢を提供しながら、「神経疲労」無しに至適な神経活性化を提供する機会発見についての記述がある。手術中、血流変化を用いて、容易に視覚化された標的エンゲージメントプロファイルを誘発し、装置及び療法が適切に配置され、好適な振幅のものとなるようにすることが非常に有効であり得る。次に、連射又は低周波数刺激への切り換えによって、脾臓エンゲージメントでの効力のために理想的な神経エンゲージメントが確保され、それと同時に、覚醒患者での血流の臨床的に継続的な効果が回避される。
【0242】
考察
至適刺激(従って,効力)のためのパラメータは基本的に、i)非常に一貫し維持された神経の振幅応答を発生させ、ii)可能な最も短い時間ウィンドウで(治療効果を得るために)必要なだけの数のパルスを送って、エネルギー要件及び患者への不快感を低減させ、及びiii)最低スペクトラムのオフターゲット効果を有するべきである。1Hzより高い周波数でのSpNの刺激は、応答(eCAP)振幅及び伝導速度における明瞭な活性依存性変動を示した。この効果は、齧歯類及びヒトの両方で他の無随神経において以前に観察されている[19、20、21、22]。刺激間の間隔を変動させながら間欠的に挿入された0.25Hzコンディショニングパルスでの通常の刺激中、無髄線維は、挿入刺激の数に依存した伝導速度の漸減を示した[20]。同じ効果がSpNの刺激で観察され、その場合、繰り返し刺激によって、伝導速度の低下並びにeCPA振幅の低減が引き起こされた。この効果は、活動電位伝導の「準正常」と称されていた。
【0243】
SpNを10Hzで連続刺激した場合、短期間の応答上昇が観察されており、次に応答相の遅延及び低下があった。この他の期間は以前にも報告されており、「超正常」と称された。活動電位伝導の超正常及び準正常は、恐らく、短時間ウィンドウ(互いから1000ms以下)以内に送った時の膜の脱分極後期間及びその後の過分極の期間のためである[20,21,22]。eCAPを記録した時、電流活性化閾値の上昇を引き起こす軸索でのこの膜変化によって、記録される信号の振幅が小さくなった。これは単に、伝導速度の低下の効果ではなかった。即ち、記録されたeCAPが、より長い潜時にシフトし、全幅の広がり無しに振幅が低下した。実際、測定されたAUCは、経時的に小さくなった。しかしながら、eCAP振幅で観察された低下が活動電位の脱同期化のためであり、その後、化合物応答を記録した時にそれが相殺される可能性がまだある。SpNが実際にこの活性依存性変化を受けることを示すには、単一ユニット記録が理想的であると考えられる。
【0244】
ここで、低周波数刺激(1Hz以下)又は連射刺激(10Hz、5秒ごとで5パルス)によって生じたSpNでの疲労は限定的であったか皆無であり、生じたオフターゲット効果は最も低いものであったことが示された。現在までのところ、二相非対称パルスで送られるこれら二つのパラダイムは、免疫が介在する状態(例えば、炎症障害)の治療のためのSpNの至適刺激パターンを代表するものである。1Hzより高い周波数は血流及び血圧に変化を誘発し、電極位置決め時に神経-標的エンゲージメントを確認する上で有用であり得ると考えられる。
【0245】
イン・ビボLPSブタモデルでの連続電気刺激の効果
材料及び方法
動物
試験のこのセクションには、ブタ合計23頭(体重:65~70kg)を用いた。
【0246】
全般的設計
ブタに終末麻酔を施し、次の5群に分けた:シャム(電極を埋め込んだが刺激しない)、デキサメタゾン(SpNにアクセスし、次に、動物に-2時間及び0時間でデキサメタゾンを注射した。)、LVNS(頸部LVNで埋め込んだブタ)、eLVNS(結紮され、カフ電極に対して(心臓に対して)遠位で切断された頸部LVNで埋め込んだブタ、遠心性断端のみ刺激)、及びSpNS(動脈周囲SpNに埋め込んだブタ)。
【0247】
LVNS、eLVNS及びSpNSブタの埋込装置を、-2時間~+1時間(LPS注射に対して)にわたり1Hzで連続的に刺激した。大腸菌(E. coli)由来LPSを、全群に対して0時間で、用量0.25μg/kgで投与した。デキサメタゾンを陽性対照として用いた。
【0248】
LPS注射(基底線)の2時間前に、その後は半時間ごとに、注射後4時間まで、末梢静脈血を採取した。これら全ての時間点について、市販のELISAによってサイトカイン分析(TNFα及びIL-6)を行った。
【0249】
結果
サイトカイン定量化。全ての群について、LPS注射によって、基底線(LPS注射前)と比較して全ての注射後サンプルにおいてTNFαレベルに有意な上昇があり、ピーク応答は、注射後約1時間で観察された(図11A)。同様の傾向がIL-6でも観察された。IL-6応答は、注射後約2.5時間でピークとなった。
【0250】
サイトカインレベルを、-2時間~注射後+4時間の曲線下面積(AUC)を計算することで群間で比較した。TNFαレベルは、シャムと比較した場合に、SpN並びにLVNS及びeLVNS群において1.5時間でほぼ30%低下した。IL-6において、SpNS群でピーク応答値(図11E)及びAUC(図11F)の両方で低下があった。同様の低下は、シャム対照と比較したLVNS及びeLVNS群でも観察された。
【0251】
考察
炎症応答を模倣するためのイン・ビボでのLPS投与が、SpN刺激の効力を調べるための良好なモデルを提供した。65~70kgのブタでのLPS(0.25μg/kg)の投与によって、全ての被験動物の血液中のサイトカイン類(TNFα及びIL-6)の上昇が生じた。特に、TNFαは、注射後1時間で約5ng/mLのピーク値に到達したが、IL-6はLPS注射後2.5時間でほぼ0.5ng/mLのピークとなった。
【0252】
従って、このモデルは、SpN刺激が炎症刺激に対する応答を調節できることの証明を提供し、特にIL-6の低下によってわかるように、SpNの長期刺激が炎症性サイトカインのレベルを低下させることを示すものである。特に、迷走神経刺激が自己免疫障害の治療において有用であることを示す最近の証拠を考慮すると、これは、対象者における炎症応答の低下に有用である可能性がある。
【0253】
要約
要約すると、本発明者らは、脾臓に分布する神経、特には脾動脈神経の神経刺激が、イン・ビボLPS動物モデルにおいて生存促進効果を示すことを見出した。従って、脾臓神経の神経活動の刺激が、炎症障害の治療に特に有用となり得る。
【0254】
ブタにおける脾動脈神経の特性決定
材料及び方法
関連臓器とともに脾臓の肉眼的な解剖学的試験を、屠殺から1時間以内の雌ブタ死体12頭(体重22~120kg)で行った。次の測定を行った:脾臓の長さ及び幅;腹腔動脈の長さ(大動脈から左胃動脈及び脾臓動脈への分岐まで);脾動脈(SpA)の長さ(腹腔動脈の分岐から脾臓柔組織入り口まで);腹腔動脈に対して1cm遠位及び脾門で測定されるSpA直径;膵臓から脾臓までの距離;膵臓から脾臓リンパ節までの距離。さらに、腹部迷走神経枝、腹腔神経節、内臓神経及び脾臓神経の数及び経路を記録した。関連する脾臓神経を有するSpAを、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)組織学検査のために処理した。
【0255】
無傷の血管系及び神経支配を有する脾臓を雌ブタ死体12頭(体重22kg、n=6;体重45kg、n=6)から回収した。屠殺から1時間以内に全ての組織を回収し、10%中性緩衝ホルマリン中で直ちに固定した。無傷の血管周囲神経回路網を有するSpAを、腹腔動脈の分岐点にある原点から脾門まで5mmごとに切断した。これによって分岐点;近位SpA;中央SpA;遠位SpA及び脾門位置と定義される5個の切片が得られた。近位SpA切片は、上記で論じた下記の電気刺激試験でのカフ位置決めの場所に相当する。
【0256】
これら5箇所のそれぞれで、切片を通常のH&E染色用に処理した。近位、中央及び遠位SpA切片は、免疫組織化学検査用、及び半薄切除及び四酸化オスミウム及びトルイジンブルーによる染色用にも処理した。
【0257】
H&E染色切片のデジタル画像を倍率2倍で取得し、適切なソフトウェア(Image J 1.50i)を、下記で詳細に説明する組織形態計測分析に用いた。ROIマネージャー機能を用いることで全ての単一神経束をマニュアルで選択した後、動脈周囲神経束の数をカウントし、最小フェレット径(μm)を測定することで束の大きさを評価した。
【0258】
総神経面積(単位:μm)を計算し、動脈周囲束分布を束が確認された動脈周囲のパーセントを評価することで定量し、360゜分布を100%と定義した。各束から動脈外壁までの距離を、各束から動脈壁までの最も短い垂線を描くことで測定した。脾動脈の外径及び内径を、近位、中央及び遠位SpA位置で測定した。
【0259】
チロシンヒドロキシラーゼ(TH)及びアセチルコリントランスフェラーゼ(ChAT)による二重染色を、ニューロン表現型を評価するのに用いた。Neurofilament200(NF200)及び核染色剤4′,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)による対比染色により、NF200-TH二重陽性神経は交感神経性と見なされ、NF200-ChAT二重陽性は副交感神経性神経と見なされた。遠心性神経と求心性神経の割合を求めるため、同じ場所を遠心性マーカーであるTH及び求心性マーカーであるカルシトニン遺伝子関連ペプチド(GCRP)で二重染色した。二つの異なるデジタル画像を各神経から倍率20倍で無作為にキャプチャーし、適切なソフトウェア(AxioVision LE64)を用いて疑似カラー合成写真を作った。
【0260】
SpN軸索の髄鞘形成を、免疫蛍光染色により、並びに半薄切片から評価した。SpA及びSpNの異なる部分を、神経フィラメント及びβ-IIIチューブリン及びミエリン塩基性タンパク質(MBP)に対する抗体で染色した。上記の適切なソフトウェアを用いて、疑似カラー合成画像を作った。半薄切片を、オスミウム及びトルイジンブルーで染色した。デジタル画像を倍率100倍で得て、有髄及び無髄軸索の数を100×100μmの領域でマニュアルでカウントした。この手順を神経ごとに3回繰り返し、これらの平均をさらなる分析に用いた。さらに、この手順を、軸索密度(軸索数/mm)を導くのに用いた。
【0261】
統計解析は全て、市販の統計ソフトウェア(JMP Pro 13.0.0)によって行った。非正規分布のため、全ての組織形態計測測定値を、ウィルコクソンの順位和検定を用いて、異なるブタサイズとSpA位置の間で比較した。統計的有意性は、P<0.05と定義した。
【0262】
結果
神経血管構造は、内臓表面のみに沿って脾臓を出入りする。具体的には、大動脈の第1の主要腹部分枝、腹腔動脈、肝動脈への分岐、SpA及びLGAである(図10)。SpAは、脾臓底に対して遠位数センチメートルにある脾門で脾臓に入る。脾門で、SpAは直ちに、脾臓底に向かって走る一つの背枝と、脾臓尖に向かって内臓表面に沿って走る一つの腹枝に分岐する。左胃大網動脈は、ほぼ脾臓の中央と遠位1/3の間の移行部にあるこの腹SpA枝から始まる。
【0263】
脾臓底で、背SpA枝は、胃の大弯に向かって走る短胃動脈とされるいくつかの相対的に小さい動脈に分かれる。これらの動脈はSpAの終枝であると考えられているが、それらは、LGA及び左胃大網動脈の枝との吻合によって脾臓に側副血行を提供することができる。SpVは、尖部から脾門にかけて脾臓の内臓表面に沿ってSpAに平行に走る。脾門を出た後、SpVは、内側方向に進んで肝門静脈に流れるまで、短い距離にわたりSpAに密着して進み、その後、後大動脈に流れ出る。これは、その動脈及び静脈が数ミリメートルの軟組織によって隔てられて走る小さいスペースを残している。腹腔動脈のSpA及びLGAへの分岐点に対して直接遠位にあるこの領域は、下記の機能試験における至適インターフェース位置であることが確認されている。この位置で、SpA直径は、30kg動物において1.5~3mm;60kg動物において2~4mm、110kg動物において5~8mmである。
【0264】
SpNは、脾門に向かってSpAに沿って走る線維の叢からなる。これらの神経の始点を決めることは困難であるが、但し、線維が、腹腔動脈のSpA及びLGAへの分岐点に対して直接尾側にあるCGから生じていることは認められる。主として齧歯類で行われた過去の研究からのデータにより、SpNのほとんどが腹腔及び副腎神経節を起源としていることが確認されている。これはまだ、大型動物種では証明されていない。
【0265】
腹腔神経節があっても、迷走神経(VN)とSpNの間に直接の連結が存在することも仮説として提唱されている。横隔膜下VNが、腹腔動脈の側面を横切り、CG及び左副腎に向かって進むことが認められた。横隔膜下VNから来たいくつかの線維も、SpN叢内の線維と合体しているのが認められた。これらの線維は膵臓の神経支配を継続するものと考えられるが、VNと脾臓の間の直接連結は、これらの所見に基づいて排除はできない。齧歯類においては、VNとSpNの間に、そして、CGを介して内臓神経とSpNの間に直接連結が存在することが示されている。ブタでは、内臓神経の一部が、副腎及びCGに向かって走っているのが認められた。
【0266】
齧歯類では、動脈周囲SpNに加えて、他の神経が脾臓を神経支配すると報告されており、より具体的には、尖部神経(apical nerve)がラット及びマウスの胃脾間膜内にあることが報告されている。これは、恐らくは脊柱傍交感神経性神経から来る交感神経性神経(TH+)であり、胃脾間膜内で脾臓の頂部に向かって走っている。
【0267】
全ての組織学測定値を表1に示している。SpN-SpAの距離が、22kgブタに対して45kgブタで有意に大きい唯一の測定値であった(中央SpA及び遠位SpA位置で;P<0.001)。従って、他の全ての測定値について、全ブタからのデータを統計解析用に合わせた。近位から遠位までSpAに沿った動脈周囲神経束の数に減少があった。他の全ての位置に対して分岐点で統計的に有意に多い束があった(P<0.0001)。門では、神経束が、他の位置より有意に大きかった(P<0.0001)。SpA外径が、中央及び遠位SpA位置に対して近位SpA位置で有意に大きかった(それぞれ、P=0.0162及びP=0.0158)。SpN/SpA距離も近位から遠位にかけて低下した。45kgブタでは、その距離は、他の全ての位置に対して分岐点で有意に大きかった(P<0.001)。45kgブタでも、SpN/SpA距離は、近位、中央及び遠位SpA位置に対して門で有意に大きかった(P<0.008)。
【0268】
【表1】
【0269】
円周SpN分布は、中央及び遠位SpA位置に対して近位で有意に高かった(それぞれ、P=0.02及びP=0.15)。さらに、束は、近位ではSpA周囲でより均一に周囲分布していたが、中央及び遠位SpAでは、分布パターンは、二峰性がより高く、束は動脈の対向する両側に集まっていた。
【0270】
ブタにおいて、神経は、胃脾間膜内で短胃動脈及び胃-大網動脈の両方に沿って認められる(図12)。これらの神経は、主動脈周囲SpN叢の連続体であると思われ、胃に向かって(又は胃から)走っている。この位置で、免疫組織化学分析を行い、いずれの位置のSpNもTH+及びChAT-であることが認められた。興味深いことに、主SpAに沿って、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)に対して陽性の神経線維が確認され、それは一般に、求心性ニューロンマーカーとして使用される。
【0271】
これら二つの領域で観察された神経束の数及び束の大きさは、主SpAに沿って観察されたものと比較してかなり小さい。45~50kg農場ブタにおける主SpAに沿った及び他の異なる解剖学的位置に沿った神経束の数及び相対径の定量化を、図12E及び12Fに示している。
【0272】
さらなる組織化学的及び免疫組織化学的分析により、SpNが、>99.9%の無髄線維によって構成されていることが明らかになった。半薄切片のトルイジンブルー染色は、実際のところ、有髄軸索を示さなかった。それに一致して、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)についての染色によって、非常に少ない数の陽性軸索が明らかになった(<0.01%)。髄鞘形成を評価する技術の両方とも、図9で示されているように、SpNの調べた部分でほぼ完全にミエリンが存在しないことが明らかになった。
【0273】
考察
ここで行った組織学的分析により、SpNが、主SpA並びに短胃動脈及び胃大網動脈に沿って神経血管叢を構成していることが明らかになった。束の数は、予想外に高い。SpN軸索(直径約2μm)の平均の大きさを考慮すると、SpN叢が、主SpA(中央部分)のレベルで(最大で)合計約150K軸索を含むはずであると計算することができる。これらの軸索の一部はSpA内皮を神経支配するであろうし、これらの軸索の一部は代わりに、脾臓に入るであろうし、白髄と赤脾髄の間の境界域のレベルで、並びに他の生物種で既報の白髄内で、平滑筋若しくは免疫細胞のいずれかとシナプス結合を形成している[23、24、25、26、27]。身体中のいくつかの臓器を標的とするヒト迷走神経(ブタ迷走神経と同じ大きさを有する)が約100k軸索を含むと予想されると考えられる場合、軸索の数は高いと思われる。SpNにおける軸索数が多いのは、ヒト脾臓の約2~3倍の体積を有しているブタにおける脾臓の大きさ、SpNが神経支配すると予想される動脈の長さに関係していると考えられる。ヒトSpNにおける束及び軸索の数は、異なっていても良いと考えられる。
【0274】
ブタ(及びイヌなどの他の哺乳動物)の脾臓はまた、ヒト脾臓と比較して高い割合の平滑筋細胞を含むと考えられている[28]。しかしながら、いくつかの論文により、ヒト脾臓がストレスの多い条件、例えば無呼吸及び身体運動時に収縮し得ることも明らかになっている[29、30]。
【0275】
脾動脈及び静脈の血管構成は、ブタとヒトの間で若干異なる。ブタでは、SpA及びSpVは、脾臓に向かって及び脾臓から接近して走っている。さらに、SpV及びSpAは、ヒトで観察されたものと同様のループや畳み込み(convolutions)を示さない。従って、腹腔動脈の三分岐点に近いSpAの短い(約1~1.5cm)部分のみが、SpVからより良好に分離されている。当該動脈のこの部分は、上記の刺激試験における最良の介入ポイントとして選択された。この位置での神経血管束へのアクセスは、実際のところ、より安全であることから、切開時に神経並びに動脈及び静脈に損傷を与える可能性が低下することになる。
【0276】
ヒトデータ
ヒト脾臓神経の電気生理学的特性決定:
材料及び方法
ヒトSpN検体
脾臓神経血管束NVBを含むドナー患者からの一つの回収したばかりの組織を、輸送のために氷上の臓器移植に好適な溶液中で保存した。到着したら、検体を解剖顕微鏡下で氷冷クレブス液に入れ、サンプル当たり最小限の1個の個別のSpN束をSpAから注意深く分離し、次に2個の双極円周カフ電極(直径0.65mm、長さ5.5mm;CorTec GmbH)を約10mm離して取り付けて、CAPを誘発及び記録した。束電極被覆率は、全ての移植で100%であると推算された。
【0277】
記録
神経活動をオシロスコープを用いて連続的にモニタリングし、サンプリング速度を20kHzに設定して1401デジタル取得システム及びSpike2ソフトウェア(Cambridge Electronic Design Ltd)を介してデジタル記録した。誘発CAPを平均し(8パルス)、平均応答のピーク間振幅を定量した。eCAP構成要素の伝導速度を、刺激部位と記録部位間の測定距離及びeCAP信号の潜時(刺激アーチファクトのピークからeCAPのピークまで測定)から計算した。
【0278】
結果
ブタサンプルと比較して、ヒトSpAは、既報のようなより回旋状のコースを示した(Michels 1942)。さらに、脾臓NVBをかなりの量の結合組織及び脂肪に埋め込み(図13A)、構造の全周からの記録ができるようにした。しかしながら、解剖顕微鏡を用いて、いくつかの神経束を肉眼で見えるようにし、その後、検体の組織切片によってそのまま確認した(図13B)。これらの束の一部に刺激及び記録カフ電極を取り付けた後(図13A、上下画像)、刺激によって明瞭なeCAPが得られた(図13D、上側トレース)。実験終了後に記録の妥当性を確認するため、刺激電極と記録電極の間で束を押しつぶし、再記録を試みた(図13D、下側トレース)。代表的な動員曲線が、特定のパルス幅で刺激を印加し(例えば、100、200、400、800及び1000μs;PW)、振幅を大きくした時に得られた(図13E)。
【0279】
計算された伝導速度は、無髄線維に代表的な値を示し、伝導速度の範囲及び平均は0.49m/sであり、それに対してブタ(0.7m/s)及びラット(0.72m/s)SpNであった(図13F)。さらに、ヒトSpNのeCAP記録は、神経動員のための電流振幅とパルス幅の間の代表的な強度-期間関係を示した(図13G)。eCAP閾値記録についての計算電荷密度値の線形回帰は、ゼロとは有意に異なる勾配(P=0.0084)を示し、最低PW(100μs)は13.44μC/cmを必要とし、最長PW(2000μs)は14.7μC/cmを必要とした。重要な点として、ヒトSpN束についての電荷密度における勾配は、ブタ束についての電荷密度の勾配と同様であることが認められた(図13H)。さらに、切開したヒト束の神経活性化のための電荷密度要件は、あらゆるPWでのブタSpN束の活性化に必要な電荷密度の約1.5~2倍であった(図13H)。
【0280】
考察
ヒトSpNは、他の哺乳動物と類似の解剖学的、形態学的及び電気生理学的特徴を有する(ブタ及び齧歯類)。ヒトSpNは、伝導速度によって確認されたように無髄軸索で構成されている。従って、ブタで至適化された刺激パラメータ(周波数及び波形)がヒト脾臓神経にも好適であると仮定することが適切である。しかしながら、電荷についての要件は、NVB全体から計算する必要がある。
【0281】
ヒト脾臓解剖学の組織形態計測的特性決定
本試験の目的は、ヒト脾臓解剖学についての理解を深め、組織学を用いて脾臓神経血管束(NVB)の大体の値を推算することにあった(表2参照)。当該試験を、移植患者から得た脾臓組織について実施した。管腔径、動脈壁、束径(平均フェレット径)及び各束の外膜からの大体の距離(脾動脈外壁)についての組織形態計測的推算値を計算した。
【0282】
材料及び方法:
Addenbrooke′s hospital, Cambridge, UKでの移植患者から、五つのヒト脾臓NVBの提供を受けた。切除後できるだけ速やかに、その組織を10%中性緩衝ホルマリン(NBF)に浸漬した。組織の写真を撮り、肉眼測定用に定規を置いた(図14A参照)。組織学検査のため、サンプルを0.5cm~1.5cmの連続ブロックに切り分けた(図14B参照)。動脈周囲の組織は、ブロックに含めるために保持した。切片を包埋し、各回で、各ブロックの同じ面(即ち、脾臓に対して近位又は遠位)をサンプリングするように切り分けた。その切片は通常厚さ4~5μmであり、ヘマトキシリン及びエオシン染色剤(H&E)で染色した(図14C参照)。最後に、病理学者が組織の品質チェックを行い、それらのスライドガラスを×20でスキャンした。留意すべき点として、文献のように、10%の組織収縮を計算に入れる。しかしながら、その動脈径は、圧力ゼロを代表するものである。移植患者から提供を受けた全てのサンプルで高い脂肪組織量が認められ、束が脂肪組織の厚い層に埋もれていることが認められた。
【0283】
【表2】
【0284】
定量化のため、脾臓組織を三つの部分:近位、中央及び遠位に分けた。これらの各部分は、いくつかのセクションからなるものであった。近位端は、図14Aで縫合糸とピンで示した腹腔に近く、遠位は脾臓に近い。これらは両方とも、神経インターフェース設置のための介入部位には適さないであろう。ループのある中央部分が可能な介入部位であると考えられる。
【0285】
要約すると、図15に示したように、束径は20~400μmの範囲である。束の広がりに関しては、神経線維の約半分が0~1mmの領域で、30%が1~2mmで、15%が2~3mmで、残りが約3~4mmの領域で認められた。
【0286】
ブタからヒト脾臓神経血管束への変換電荷要件
材料及び方法:
ブタ及びヒト脾臓組織学検査からの組織学データを用いて、3D Finite Element Modelコンピュータシミュレーションを作った。これは、本質的に脾動脈(管腔+動脈壁)及び血管外組織からなる。「血管外組織」は、組織に神経が埋め込まれている「脂肪組織」及び「結合組織」からなる。ブタについては、Cortecカフ(イン・ビボカフを代表する)にスプリットを有するモデルを用いた。ヒトモデルの場合、3アーム構造を有するカフを用いた。使用したカフの直径は9mmであった。
【0287】
ブタ組織学とヒト組織学の間の差の検討:ブタにおける束は動脈周囲に均一に分布しており、非常に近接しているが、ヒトでの束はより分散しているように見え、b)ブタにおける組織学は、血管外ではごくわずかな脂肪組織を示しており、それに対してヒトではかなりの量である。
【0288】
ブタからヒトへ刺激パラメータの推算値を変換するため、下記の二相でモデリングを行った。
相(a):Sim4Lifeシミュレーションツールでの3D Finite Element Model(FEM)の開発
Sim4Lifeを用いて、代表的な神経及び動脈モデル(組織学及び画像定量化に基づく)、カフ及び電極(CADによって規定された規格)及び3D電圧場を開発した。
相(b):同じツールでのFEM解の解析。Sim4Lifeを用いて、Sundt神経モデルを用いて軸索に沿って電圧を内挿し[31]、軸索シミュレーションによって強度-期間曲線及び群動員曲線を推算した。
【0289】
結果
図16Aは、動物5頭からのブタ脾臓神経血管束からのイン・ビボ急性データを表す。電荷要件についての動物5頭からの範囲は、<50mA、400μs及び10Hzで約20~160μC/cmと推算される。グレーで表される第3の動物の場合、電荷要件は30mA、400μs及び10Hzで約100μC/cmであり、それはイン・シリコシミュレーションデータと良好に相関している(図17A参照)。ブタでの計算モデルについてのバリデーションとしてイン・シリコ対イン・ビボの相関を用いて、電荷要件を、二つのパルス幅について組織学セクションを用いてヒト脾臓神経血管束に翻訳した。データを、図17C~D及び表3に提供している。
【0290】
【表3】
【0291】
100%の動員についてのヒト急性モデルにおける電荷要件は、約80~1300μC/cm(400μSパルス幅、12mm表面積を使用)及び70~1100μC/cm(1msパルス幅を使用)で変動し得ると推定される。当該要件の約70%が、350μC/cm下で示される。追加の30%動員は、埋込型装置によって適応可能なものを超える電荷要件の指数関数的上昇を必要とする。例えば、100%の要件は70~1300μC/cmで変動する可能性があり、80%動員の場合は70~450μC/cm、50%動員の場合は70~250μC/cm、30%動員の場合は70~170μC/cmであることがわかる。
【0292】
考察
ヒトにおける神経線維は、ブタと比較して分散性が高い。組織学プロファイリングによって示された脾動脈周囲に広がった束の範囲は、約1~3mmの範囲であり得る。組織形態計測データをさらに用いて、刺激パラメータを至適化し、計算モデルツールを用いて電荷要件をブタからヒトに翻訳した。Sundt C線維モデルを用いて、ヒトにおける電荷要件は、100%動員のためには約70~1000μC/cmの範囲であることが示されている。
【0293】
参考文献
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図1
図2
図3-1】
図3-2】
図3-3】
図4-1】
図4-2】
図4-3】
図4-4】
図4-5】
図4-6】
図5a
図5b
図5c
図5d
図6
図7
図8-1】
図8-2】
図8-3】
図8-4】
図8-5】
図8-6】
図9
図10
図11-1】
図11-2】
図12-1】
図12-2】
図12-3】
図13-1】
図13-2】
図13-3】
図13-4】
図13-5】
図14-1】
図14-2】
図14-3】
図15
図16-1】
図16-2】
図17-1】
図17-2】
【手続補正書】
【提出日】2024-10-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脾臓に分布する神経の神経活動を刺激するシステムであって、前記神経は神経血管束と関連しており、前記システムは、
前記神経と信号伝達的に接触している少なくとも一つの電極、及び
前記少なくとも一つの電極に電気的に結合された少なくとも一つの制御装置
を含み、前記少なくとも一つの制御装置が、前記少なくとも一つの電極の動作を制御することにより前記神経に電荷密度を有する電気信号を印加するように構成されており、前記電気信号によって前記神経に印加される相当たりの電荷密度が、≧70μC/cm/相であり、かつ、≦1100μC/cm/相であり、
前記電気信号が、対象者における生理パラメータに改善を生じさせ、前記生理パラメータにおける改善が、炎症性サイトカインの減少、抗炎症サイトカイン及び/又は収束促進性メディエータの増加、カテコールアミンの増加、免疫細胞群若しくは免疫細胞表面共刺激分子における変化、炎症カスケードに関与する因子の減少、及び/又は免疫応答メディエータの減少からなる群の1以上である、
前記システム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0292
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0292】
考察
ヒトにおける神経線維は、ブタと比較して分散性が高い。組織学プロファイリングによって示された脾動脈周囲に広がった束の範囲は、約1~3mmの範囲であり得る。組織形態計測データをさらに用いて、刺激パラメータを至適化し、計算モデルツールを用いて電荷要件をブタからヒトに翻訳した。Sundt C線維モデルを用いて、ヒトにおける電荷要件は、100%動員のためには約70~1000μC/cmの範囲であることが示されている。
本発明は、以下の実施形態を包含する。
[1]神経血管束、好ましくは脾動脈神経と関連している脾臓に分布する神経の神経活動を刺激するシステムであって、
前記神経と信号伝達的に接触しているための少なくとも一つの電極、及び
前記少なくとも一つの電極に電気的に結合された少なくとも一つの制御装置
を含み、前記少なくとも一つの制御装置が、前記少なくとも一つの電極の動作を制御することにより前記神経に電気信号を印加するように構成されており、前記電気信号が、≦300Hzの周波数を有し、周期的なオン-オフパターンで印加されるか、≦50Hzの周波数を有し、連続的に印加されるシステム。
[2]前記電気信号が≦300Hzの周波数を有し、オン-オフパターンで印加され、好ましくは前記電気信号が、≦50Hz、より好ましくは≦10Hzの周波数を有する、[1]に記載のシステム。
[3]前記周期的オン-オフパターンが0.1~10秒のオン期間及び0.5~30秒のオフ期間を有し、好ましくは前記オン期間:前記オフ期間の比が1:5であり、さらに好ましくは前記比が1:6、1:7、1:8、1:9、1:10、1:20、又は1:30であり;任意に、前記オン期間が2秒であり、前記オフ期間が2秒であり、さらに任意に、前記オン期間が0.5秒であり、前記オフ期間が10秒である、[2]に記載のシステム。
[4]前記電気信号が≦50Hzの周波数を有し、連続的に印加され、好ましくは前記電気信号が≦10Hz、より好ましくは≦2Hz、さらにより好ましくは≦1Hzの周波数を有する、[1]に記載のシステム。
[5]前記電気信号がパルス列を含み、当該パルス列が複数のパルスを含む、前記[1~4]のいずれか1項に記載のシステム。
[6]前記パルスが方形パルスである、[5]に記載のシステム。
[7]前記パルスが、荷電平衡、二相、対称、及び非対称、好ましくは:二相、荷電平衡、及び非対称の少なくとも一つである、[5]~[6]のいずれか1項に記載のシステム。
[8]前記電気信号が250~1000μs、好ましくは400~1000μsのパルス幅を有する、[5]~[7]のいずれか1項に記載のシステム。
[9]前記電気信号が対象者における生理パラメータに改善を生じさせ、前記生理パラメータにおける改善が、炎症性サイトカインの減少、抗炎症サイトカイン及び/又は収束促進性メディエータの増加、カテコールアミンの増加、免疫細胞群若しくは免疫細胞表面共刺激分子における変化、炎症カスケードに関与する因子の減少、及び/又は免疫応答メディエータの減少からなる群の1以上である、前記[1]~[8]のいずれか1項に記載のシステム。
[10]前記システムが対象者における炎症障害を治療するためのものである、[9]に記載のシステム。
[11]前記電気信号が1日を通してエピソード的に印加され、各エピソードが50~10000、好ましくは60~3000、至適には100~2400パルスの前記電気信号を含む、[5]に従属する場合の、[5]~[10]のいずれか1項に記載のシステム。
[12]前記電気信号を、前記対象者にエピソード的に、2~3時間ごとに1回、1日最大6回印加する、[11]に記載のシステム。
[13]前記神経周囲に好適に設置するための神経インターフェースをさらに含み、当該神経インターフェースが前記少なくとも一つの電極を含む、前記[1]~[12]のいずれか1項に記載のシステム。
[14]前記神経インターフェースが少なくとも二つの対向する端部を有し、それらの端部は一緒になった場合、前記神経インターフェースを前記神経上に固定するためのカフを形成する、[13]に記載のシステム。
[15]全身動脈血圧、脾臓における血流速度、脾動脈における血流速度、脾静脈における血流速度、脾臓体積、脾臓組織潅流、神経における神経活動、少なくとも一つの電極のインピーダンス、又は刺激要因電圧コンプライアンスの1以上を検出するよう構成されている少なくとも一つの検出器をさらに含む、前記[1]~[14]のいずれか1項に記載のシステム。
[16]前記少なくとも一つの制御装置が、前記神経に電気信号を印加する前に、当該神経と信号伝達的に接触している神経インターフェースが正しく設置されていることを確認するために前記神経に電気信号を印加するよう構成されており、前記電気信号が≦300Hzの周波数を有し、≦3時間の期間にわたり連続的に印加される、[15]に記載のシステム。
[17]前記検出器が、全身動脈血圧、脾臓における血流速度、脾動脈における血流速度、及び脾静脈における血流速度の1以上を検出するように構成されており、前記少なくとも一つの制御装置がさらに、検出された血流が基底線血流と異なっているか否かを確認し、異なっている場合には、前記神経インターフェースが前記神経と信号伝達的に接触して正しく設置されていることをオペレータに示すよう構成されている、[16]に記載のシステム。
[18]前記検出器が、電気インピーダンストモグラフィー、ドプラ血流、超音波、歪み測定、圧力及び電気インピーダンスの1以上を用いて血流を測定するよう構成されている、[17]に記載のシステム。
[19]前記検出器が前記神経における神経活動を検出するよう構成されており、前記少なくとも一つの制御装置がさらに、検出された神経活動が基底線神経活動より高いか否かを確認し、高い場合には、前記神経インターフェースが前記神経と信号伝達的に接触して正しく設置されていることをオペレータに示すよう構成されている、[16]に記載のシステム。
[20]前記検出器が1以上の記録電極を含む、[19]に記載のシステム。
[21]前記検出器が脾臓体積を検出するように構成されており、前記少なくとも一つの制御装置がさらに、検出された脾臓体積が基底線脾臓体積より小さいか否かを確認し、低い場合には、前記神経インターフェースが前記神経と信号伝達的に接触して正しく設置されていることをオペレータに示すよう構成されている、[16]に記載のシステム。
[22]前記検出器が超音波を用いて脾臓体積を測定するよう構成されている、[21]に記載のシステム。
[23]前記検出器が前記少なくとも一つの電極のインピーダンスを検出するよう構成されており、前記少なくとも一つの制御装置がさらに、検出されたインピーダンスが基底線インピーダンスと異なるか否かを確認し、異なっている場合には、前記神経インターフェースが前記神経と信号伝達的に接触して正しく設置されていることをオペレータに示すよう構成されている、[16]に記載のシステム。
[24]前記検出器が、インピーダンス計を用いてインピーダンスを測定するよう構成されている、[23]に記載のシステム。
[25]前記システムがさらにディスプレイを含み、前記少なくとも一つの制御装置がさらに、神経インターフェースが正しく設置されていることを前記ディスプレイを介してオペレータに示すよう構成されている、[17]~[24]のいずれか1項に記載のシステム。
[26]前記電気信号によって前記神経に印加される前記相当たり電荷密度が5μC~1100μC/cm /相、任意に5μC~450μC/cm /相、任意に5μC~150μC/cm /相、任意に50μC~450μC/cm /相、さらに任意に50μC~160μC/cm /相である、前記[1]~[25]のいずれか1項に記載のシステム。
[27]前記システムが信号発生器を含み、当該信号発生器が、前記制御装置からの制御操作に応答して前記少なくとも一つの電極に電気信号を送るよう構成されている、前記[1]~[26]のいずれか1項に記載のシステム。
[28]前記信号発生器が少なくとも一つの電流源又は電圧源を含む、[27]に記載のシステム。
[29]前記少なくとも一つの電極が第1の電極及び第2の電極を含む、前記[1]~[28]のいずれか1項に記載のシステム。
[30]前記第1の電極が陽極であり、前記第2の電極が陰極である、[29]に記載のシステム。
[31]前記第2の電極が前記神経と信号伝達的に接触しているように構成されており、前記第1の電極が前記神経と信号伝達的に接触しないように構成されており、任意に前記第1の電極が接地されており、任意に前記第1及び第2の電極が単極構成を形成している、[29]又は[30]に記載のシステム。
[32]前記少なくとも一つの電極がさらに第3の電極を含み、前記第2の電極が前記神経の長軸方向で前記第1の電極と前記第3の電極の間に位置している、[29]又は[30]に記載のシステム。
[33]前記第3の電極が陽極である、[32]に記載のシステム。
[34]前記第1の電極及び前記第3の電極の幅が0.5~4mm、任意に0.5~2mm、任意に0.5~1.5mm、さらに任意に0.7~1mm;任意に1~4mm、任意に1~3mm、任意に2~4mm、任意に2~3mmである、[29]~[33]のいずれか1項に記載のシステム。
[35]前記第1の電極と前記第2の電極の間の距離及び/又は前記第2の電極と前記第3の電極の間の距離が、[33]、[34]又は[35]に従属する場合、5mm~7mm、任意に5.5mm~6.5mm、さらに任意に6.2mm~6.4mmである、[29]~[34]のいずれか1項に記載のシステム。
[36]前記少なくとも一つの制御装置が、プロセッサ、並びに、非一時的コンピュータ可読記憶媒体を含み、前記非一時的コンピュータ可読記憶媒体は、前記プロセッサにロードされ、動作すると、前記プロセッサを、前記少なくとも一つの電極の動作を少なくとも制御するようにさせるコード部分を含む実行可能コンピュータプログラムを有する、前記[1]~[35]のいずれか1項に記載のシステム。
[37]神経血管束と関連している脾臓に分布する神経、好ましくは脾動脈神経における神経活動を可逆的に刺激する方法であって、
[1]~[36]のいずれか1項のシステムを提供すること;
少なくとも一つの電極を前記神経と信号伝達的に接触するよう位置決めすること;及び 前記少なくとも一つの電極の動作を少なくとも一つの制御装置で制御することにより、前記神経に電気信号を印加して神経活動を刺激すること
を含む方法。
[38]前記方法が対象者における炎症障害を治療するためのものである。[37]に記載の方法。
[39]神経インターフェースが、神経血管束と関連している脾臓に分布する神経、好ましくは脾動脈神経と信号伝達的に接触して正しく設置されているか否かを確認する方法であって、
[13]、又は[13]に従属している場合に[14]~[36]のいずれか1項のシステムを提供すること;
前記神経の周囲に前記神経インターフェースを位置決めすること;
前記少なくとも一つの電極の動作を少なくとも一つの制御装置で制御することにより、前記神経に電気信号を印加すること;
脾臓、脾動脈、脾静脈における血流速度若しくは血圧の変化、脾臓体積の低下、神経における神経活動の上昇、心拍数の変化、全身動脈血圧の変化、前記少なくとも一つの電極のインピーダンスの低下、刺激要因電圧コンプライアンスの低下の少なくとも一つを確認すること;並びに
前記神経インターフェースが前記神経と信号伝達的に接触して正しく設置されていたことをオペレータに示すこと
を含む方法。
[40]神経血管束と関連する脾臓に分布する神経、好ましくは脾動脈神経における神経活動を可逆的に刺激するコンピュータに実装された方法であって、[36]のシステムの少なくとも一つの電極の動作を制御することにより、前記神経に信号を印加して、神経活動を刺激することを含む方法。
[41]前記方法が、対象者における炎症障害を治療するためのものである、[40]に記載の方法。
[42]神経インターフェースが、神経血管束と関連している脾臓に分布する神経、好ましくは脾動脈神経と信号伝達的に接触して正しく設置されているか否かを確認するコンピュータに実装された方法であって、
[36]のシステムの少なくとも一つの電極の動作を制御することにより、前記神経に信号を印加すること;
脾臓、脾動脈、脾静脈における血流速度若しくは血圧の変化、脾臓体積の低下、神経における神経活動の上昇、心拍数の変化、全身動脈血圧の変化、前記少なくとも一つの電極のインピーダンスの低下、又は刺激要因電圧コンプライアンスの低下の少なくとも一つを確認すること;及び
前記神経インターフェースが前記神経と信号伝達的に接触して正しく設置されていたことをオペレータに示すこと
を含む方法。
[43]対象者における炎症障害の治療で使用される神経刺激電気信号であって、前記電気信号が[1]~[10]のいずれか1項の電気信号である神経刺激電気信号。
[44]
神経血管束と関連している脾臓に分布する改変された神経、好ましくは脾動脈神経であって、当該神経に[1]~[36]のいずれか1項のシステムが信号伝達的に接触しており、前記少なくとも一つの電極が当該神経と信号伝達的に接触していることから、当該神経がそれの自然な状態で当該神経と区別することができ、当該神経が、炎症障害を患う又は炎症障害のリスクを有する対象者にある改変された神経。
[45]
[37]~[42]のいずれか1項の方法に従って、神経の神経活動を刺激することで得ることができる、神経血管束と関連している脾臓に分布する改変された神経、好ましくは脾動脈神経。
【外国語明細書】