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特開2025-40064信号処理装置、超音波センサ、および車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025040064
(43)【公開日】2025-03-24
(54)【発明の名称】信号処理装置、超音波センサ、および車両
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/537 20060101AFI20250314BHJP
   G01S 15/931 20200101ALI20250314BHJP
【FI】
G01S7/537
G01S15/931
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023146736
(22)【出願日】2023-09-11
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 弘治
【テーマコード(参考)】
5J083
【Fターム(参考)】
5J083AA02
5J083AB13
5J083AC11
5J083AD04
5J083AE01
5J083AE08
5J083AF09
5J083BA12
5J083BB12
5J083BE08
5J083BE11
5J083BE12
5J083BE39
5J083CA01
5J083CB01
(57)【要約】
【課題】反射波の識別を効果的に行うことができる信号処理装置を提供する。
【解決手段】信号処理装置(10)は、超音波受信素子(3)の出力に基づいて受信信号(RS)を生成するように構成される受信部(4)と、前記受信信号の周波数を検出するように構成される周波数検出部(53)と、一定区間における前記受信信号の周波数の変動と、前記変動の期待値との一致度を算出するように構成される一致度算出部(54)と、を備え、前記一致度算出部は、前記超音波送信素子により送信しようとした前記搬送波の周波数変化に対する応答の遅れを考慮した周波数パターンを前記期待値として、前記一致度を算出する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波受信素子の出力に基づいて受信信号を生成するように構成される受信部と、
前記受信信号の周波数を検出するように構成される周波数検出部と、
一定区間における前記受信信号の周波数の変動と、前記変動の期待値との一致度を算出するように構成される一致度算出部と、
を備え、
前記一致度算出部は、前記超音波送信素子により送信しようとした前記搬送波の周波数変化に対する応答の遅れを考慮した周波数パターンを前記期待値として、前記一致度を算出する、信号処理装置。
【請求項2】
前記一致度算出部は、
前記周波数検出部から出力される周波数信号のデータを格納するように構成されるバッファメモリと、
前記バッファメモリに格納されるデータと、前記期待値のデータとに基づいて誤差積分値を算出するように構成される誤差積分部と、
を有する、請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項3】
前記一致度算出部は、
前記バッファメモリに格納されるデータと、基準点と、前記期待値のデータに基づいてシフト量を決定するように構成されるシフト量決定部と、
前記バッファメモリに格納されるデータを前記シフト量を用いてシフト補正するように構成される補正部と、
を有する、請求項2に記載の信号処理装置。
【請求項4】
前記一致度算出部は、
前記バッファメモリに格納されるデータと、基準点と、前記期待値のデータに基づいてシフト量を決定するように構成されるシフト量決定部と、
前記期待値のデータを前記シフト量を用いてシフト補正するように構成される補正部と、
を有する、請求項2に記載の信号処理装置。
【請求項5】
前記一致度算出部は、前記受信信号の周波数データおよび前記期待値のデータのそれぞれの基準点におけるデータに基づいて補正量を算出し、前記周波数データあるいは前記期待値のデータを前記補正量で補正し、前記一致度を算出する、請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項6】
前記受信信号から振幅信号を抽出するように構成される振幅検出部と、
前記振幅信号と第1しきい値を比較する比較器と、
を備え、
前記比較器により反射波があると判定すると、前記一致度算出部は算出を開始する、請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項7】
前記受信信号から振幅信号を抽出するように構成される振幅検出部と、
前記振幅信号のピークを検出するように構成される振幅ピーク検出部と、
前記振幅信号のピークが検出されたタイミングから第1所定時間だけずれたタイミングの前後の期間における前記一致度の最大値を、確定一致度として決定するように構成される一致度決定部と、
を備える、請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項8】
前記受信信号から振幅信号を抽出するように構成される振幅検出部と、
前記振幅信号が第2しきい値を上回ったことを検出するように構成される検出部と、
前記検出部により検出されたタイミングから第2所定時間だけ後のタイミングの前後の期間における前記一致度の最大値を、確定一致度として決定するように構成される一致度決定部と、
を備える、請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項9】
前記受信信号から振幅信号を抽出するように構成される振幅検出部と、
前記振幅信号が第3しきい値を下回ったことを検出するように構成される検出部と、
前記検出部により検出されたタイミングから第3所定時間だけ前のタイミングの前後の期間における前記一致度の最大値を、確定一致度として決定するように構成される一致度決定部と、
を備える、請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項10】
前記期待値のデータは、自身の超音波センサから送信される搬送波の周波数変調に加えて、自身とは別の超音波センサから送信される搬送波の周波数変調に対応するよう、複数種類設定される、請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項11】
前記一致度をDA変換するように構成されるDAコンバータと、
前記DAコンバータから出力されるアナログデータを変換特性によってアナログ出力に変換するように構成される変換部と、
を備え、
前記変換特性において、前記アナログデータの第1区間では、前記アナログ出力が飽和し、前記第1区間よりも前記アナログデータが低い第2区間では、前記アナログデータに対する前記アナログ出力の傾きが前記第1区間に比べて大きい、請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の信号処理装置と、超音波送信素子と、超音波受信素子と、を備える、超音波センサ。
【請求項13】
請求項12に記載の超音波センサを備える、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、信号処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波を発生させて障害物からの反射波が返ってくるまでの時間TOF(Time
Of Flight)を計測することにより障害物までの距離を測定する超音波センサが知られて
いる(例えば、特許文献1)。このような超音波センサは車両に搭載されることが多く、一例として車載用クリアランスソナーが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2020/004609号
【0004】
[概要]
超音波センサでは、自身が送波した搬送波による反射波と、別の超音波センサが送波した搬送波による反射波とを識別する必要がある場合がある。
【0005】
上記状況に鑑み、本開示は、反射波の識別を効果的に行うことができる信号処理装置を提供することを目的とする。
【0006】
本開示の一態様に係る信号処理装置は、超音波受信素子の出力に基づいて受信信号を生成するように構成される受信部と、
前記受信信号の周波数を検出するように構成される周波数検出部と、
一定区間における前記受信信号の周波数の変動と、前記変動の期待値との一致度を算出するように構成される一致度算出部と、
を備え、
前記一致度算出部は、前記超音波送信素子により送信しようとした前記搬送波の周波数変化に対する応答の遅れを考慮した周波数パターンを前記期待値として、前記一致度を算出する構成としている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、超音波センサの構成例を示す図である。
図2図2は、搬送波および反射波に含まれる周波数信号の波形例を示す図である。
図3図3は、受信信号および周波数信号の波形例を示す図である。
図4図4は、周波数信号の波形例と期待値パターンの一例を示す図である。
図5図5は、反射波識別部の構成例を示す図である。
図6図6は、一致度算出部の第1構成例を示す図である。
図7図7は、各種信号の波形例を示す図である。
図8図8は、振幅信号および一致度の波形例を示す図である。
図9図9は、一致度算出部の第2構成例を示す図である。
図10図10は、周波数信号の補正例を示す図である。
図11図11は、一致度算出部の第3構成例を示す図である。
図12図12は、一致度をアナログ出力するための構成を示す図である。
図13図13は、変換部における変換特性の一例を示す図である。
図14図14は、車両の一例を示す外観図である。
【0008】
[詳細な説明]
以下、本開示の例示的な実施形態について、図面を参照して説明する。
【0009】
<超音波センサの全体構成>
図1は、超音波センサの構成例を示す図である。図1に示す超音波センサ100は、信号処理装置10と、超音波送受信素子3と、を備える。超音波送受信素子3Xは、超音波センサ100とは別の超音波センサに備えられる。
【0010】
超音波送受信素子3は、超音波を発するとともに、対象物200で反射した超音波(物体からの反射波)を受け取る。超音波送受信素子3は、圧電素子により構成される。なお、図1の構成とは異なり、圧電素子は、送信専用と受信専用に分けて設けてもよい。
【0011】
信号処理装置10は、超音波送受信素子3に供給する駆動信号および超音波送受信素子3から受け取る信号を処理する。なお、超音波送受信素子3と信号処理装置10との間には、トランスが設けられてもよく、トランスが設けられなくてもよい。
【0012】
信号処理装置10は、送波信号生成部1と、駆動部2と、受信部4と、反射波識別部5と、を備える。
【0013】
送波信号生成部1は、送波信号を生成する。
【0014】
駆動部2は、送波信号を増幅した駆動信号を超音波送受信素子3に供給して、超音波送受信素子3を駆動(振動)させる。これにより、超音波送受信素子3から超音波が送波される。
【0015】
受信部4は、超音波送受信素子3から出力される信号を受け取り、対象物200からの反射波に基づく受信信号RSを生成する。
【0016】
反射波識別部5は、受信信号RSに基づいて反射波を識別する。図1においては、超音波送受信素子3から送波される搬送波(超音波)US1が対象物200で反射して得られる反射波RUS1と、超音波送受信素子3Xから送波される搬送波US2が対象物200で反射して得られる反射波RUS2と、が存在するため、反射波識別部5は、反射波RUS,RUS2を識別する。これにより、自身の超音波センサ100から送波された搬送波US1と、別の超音波センサから送波された搬送波US2と、を識別できる。
【0017】
<反射波識別方法>
反射波を識別するために、本実施形態では、送波する搬送波において周波数変調を行って、搬送波のパターン化を行う。例えば、図2には、搬送波においてFSK(Frequency Shift Keying)を行う例を示す。FSKは、デジタル変調方式の一つで、2値(0,1)に応じて異なる周波数とする方式である。
【0018】
図2の上段には、搬送波に含まれる周波数信号Foの理想的な波形を示す。0,1の値に応じて周波数信号Foの異なる値が対応付けられ、0,1の値の変化のタイミングで周波数信号Foの値は急峻に変化している。図2の中段には、上記の理想的な周波数信号Foの搬送波が物体で反射して得られる反射波に含まれる周波数信号Frを示す。ここで示す周波数信号Frの波形は、理想的な波形であり、周波数信号Frの値が変化するときに急峻に変化する。このような周波数信号Frの値をあらかじめ設定される期待値EVと比較することで、反射波を識別できる。自身の超音波センサが出力する搬送波の周波数パターンと、別の超音波センサの周波数パターンをそれぞれ期待値として設定しておけば、自身と別の超音波センサによる反射波を識別できる。
【0019】
しかしながら、超音波送受信素子は、駆動信号にすぐに追従できないため、本来送信しようとした搬送波の周波数変化に対して、実際には応答が遅れる。従って、図2の下段に示すように、本来送信しようとした搬送波の周波数パターンを期待値EVとして設定すると、実際には周波数信号Frの値には変化の遅れが生じるため、周波数信号Frの波形が理想から崩れ、期待値EVからの乖離が大きくなってしまう。これにより、反射波の識別が行いにくい課題があった。
【0020】
図3は、受信信号RSと、受信信号RSから抽出した周波数信号FSの波形例を示す図である。図3における受信信号RSは、搬送波にFSKを行った場合の反射波に基づく信号である。このように、周波数信号FSの値には変化の遅れが生じている。なお、受信信号RSが発生していない箇所における周波数信号FSの振幅の大きさは、ノイズによるものである。
【0021】
そこで、上記課題に鑑みて本実施形態では、実際の周波数信号FS(反射波に基づく周波数信号)における応答遅れを考慮して期待値を設定している。例えば図4には、実際の周波数信号FSの波形の一例を示す。図4において、縦軸方向に並ぶ値(-1~8)は、周波数信号の値を示す。図4の上方において、時間軸方向に並ぶ値は、期待値パターンPの値を示す。そして、図4におけるマス目には、期待値パターンPの値と周波数信号の値との誤差の値を示す。図4に示すように、誤差が周波数信号FSに対してなるべく0となるように期待値パターンPが設定されている。これにより、送信しようとした搬送波の周波数変化に対する応答の遅れが生じても、反射波を適切に識別することができる。
【0022】
なお、搬送波の周波数変調は、FSKに限らず、例えば周波数チャープなどとしてもよい。
【0023】
<反射波識別部の構成>
図5は、反射波識別部5の構成例を示す図である。反射波識別部5は、振幅検出部51と、比較器52と、周波数検出部53と、一致度算出部54と、一致度決定部55と、一致度比較部56と、振幅ピーク検出部57と、を有する。
【0024】
振幅検出部51は、受信信号RSを検波することにより、振幅信号ASを生成する。検波は、例えば包絡線検波、あるいは直交変換などが用いられる。比較器52は、振幅信号ASをしきい値THと比較し、比較結果として出力信号OUTを出力する。比較器52により、反射波の有無を検出できる。
【0025】
周波数検出部53は、位相検出部53Aと、微分処理部53Bと、を有する。位相検出部53Aは、受信信号RSを検波することで位相信号PSを生成する。検波は、例えば直交変換などが用いられる。微分処理部53Bは、位相信号PSに対して微分処理を行うことで周波数信号FSを生成する。
【0026】
一致度算出部54は、周波数信号FSと期待値パターンPに基づいて一致度Cを算出する。なお、期待値パターンPは、自身の超音波センサが送信する搬送波の周波数変調に対応する期待値パターンP1と、自身とは別の超音波センサが送信する搬送波の周波数変調に対応する期待値パターンP2~PNとが、あらかじめ設定される(Nは2以上の整数)。一致度Cについては、期待値パターンP1~PNのそれぞれについて一致度C1~CNがそれぞれ算出される。
【0027】
<一致度算出部の構成>
図6は、一致度算出部54の構成例を示す図である。一致度算出部54は、バッファメモリ54Aと、誤差積分部54Bと、逆数演算部54Cと、を有する。
【0028】
バッファメモリ54Aは、周波数信号FSのデータを格納する。バッファメモリ54Aには、周波数信号FSのデータF[0]~F[n-1](n個のデータ)が格納される。nは2以上の整数である。すなわち、バッファメモリ54Aには、直近の一定区間における周波数信号FSのデータが格納される。
【0029】
誤差積分部54Bは、
CX=∫|F[i]-P[i]|{i=0~n-1}
によって、周波数信号FSのデータF[0]~F[n-1]と期待値パターンPのデータP[0]~P[n-1]との誤差の積分を行い、積分値CXを算出する。
【0030】
逆数演算部54Cは、積分値CXの逆数演算をすることで一致度Cを算出する(C=1/CX)。誤差が小さいほど、積分値CXが小さくなり、一致度Cは大きくなる。
【0031】
図4の例であれば、n=16として、F[0]~F[15]と期待値パターンPのデータP[0]~P[15]との誤差の積分が行われる。現在のF[1]~F[n-1]のデータを次のF[0]~F[n-2]とし、次のF[n-1]のデータを新たなデータに更新しつつ、積分値CXを逐次演算する。期待値パターンPのデータP[0]~P[n-1]は、演算ごとに繰り返し使用される。
【0032】
<一致度を用いた反射波識別>
図7は、自身の超音波センサ100が送信した搬送波が物体で反射した反射を受信した場合の各種信号の波形例を示す図である。図7において、上段から順に、受信信号RS、振幅信号AS、周波数信号FS、一致度C1,C2を示す。
【0033】
図7は一致度算出部54が一致度Cを常時演算している場合を示す。このように、自身から送信する搬送波の周波数変調に対応する期待値パターンP1に基づいて算出される一致度C1の値が一致度C2よりも大きくなっており、自身から送信する搬送波による反射波を識別できる。
【0034】
ここで、一致度決定部55(図5)による一致度決定動作について説明する。図8は、図7における振幅信号ASと一致度C1の一部を示す図である。一致度算出部54が一致度Cを常時演算している場合、比較器52の出力信号OUTにより振幅信号ASがしきい値THを上回ったことが検出されると(図8のタイミングT1)、一致度算出部54は、一致度決定部55への一致度Cの出力を開始する。一方、振幅ピーク検出部57は、比較器52の出力信号OUTにより振幅信号ASがしきい値THを上回ったことが検出されると(図8のタイミングT1)、振幅信号ASの監視を開始し、振幅信号ASのピークを検出すると(図8のタイミングT0)、その旨を示す検出信号PDを一致度決定部55に出力する。すると、一致度決定部55は、タイミングT0から所定の遅延時間Td0だけ遅れたタイミングの前後の期間Twにおける一致度Cの最大値を、確定一致度CDとして決定する。
【0035】
なお、一致度Cのピークが振幅信号ASのピークよりも前の場合も考慮して、タイミングT0から所定時間だけ前のタイミングの前後の期間における一致度Cの最大値を、確定一致度CDとして決定してもよい。
【0036】
また、振幅信号ASがしきい値THを上回るタイミングT1から所定の遅延時間Tddだけ遅延したタイミングの前後の期間Twにおける一致度Cの最大値を、確定一致度CDとして決定してもよい。
【0037】
また、振幅信号ASがしきい値THを下回るタイミングT2から所定時間Tfだけ前のタイミングの前後の期間Twにおける一致度Cの最大値を、確定一致度CDとして決定してもよい。
【0038】
なお、一致度算出部54は、一致度Cを常時演算すると消費電流が増加するため、異なる実施形態として、振幅信号ASがしきい値THを上回るタイミングT0で演算を開始するようにしてもよい。
【0039】
一致度決定部55からは、一致度C1~CNに対応して確定一致度CD1~CDNが出力される。一致度比較部56は、確定一致度CD1~CDNを比較することで最大値の確定一致度CDを判定する。これにより、自身あるいは別の超音波センサのいずれから送信された搬送波による反射波であるかを判定できる。
【0040】
<周波数ずれ>
ここで、送信した搬送波における周波数変調された周波数が、反射波においてずれる現象が生じる場合がある。このような現象は、例えば対象物が移動している場合に発生するドップラー効果により発生する。また、超音波センサのシステムクロックのばらつきにより周波数のずれが発生する場合もある。
【0041】
そこで、図9に示すような一致度算出部54の構成をとってもよい。ここでは、一致度算出部54は、図6の構成に加えて、シフト量決定部54Dおよび補正部54Eをさらに備える。
【0042】
シフト量決定部54Dは、バッファメモリ54Aに格納されるデータFと、基準点mと、期待値パターンPのデータに基づいてシフト量SHTを決定する。具体的には、基準点mに対応するデータF[m]と、基準点mに対応する期待値データP[m]との差分をシフト量SHTとして決定する。シフト量SHTは、正負の値をとりうる。
【0043】
補正部54Eは、バッファメモリ54Aに格納されるデータF[0]~F[n-1]のそれぞれに対して、決定されたシフト量SHTを加算してシフト補正を行い、補正データFsht[0]~Fsht[n-1]を生成する。
【0044】
例えば図10の例であれば、基準点m=5として、補正前のデータF[5]=4と、P[5]=1とから、シフト量SHT=1-4=-3が決定され、データF[0]~F[15]にシフト量SHTが加算され、補正データFsht[0]~Fsht[15]が生成される。
【0045】
そして、誤差積分部54Bは、補正データFshtと期待値パターンPとの誤差の積分を行い、積分値CXを算出する。
【0046】
これにより、反射波の周波数ずれが補正され、適正な一致度Cを算出することができる。
【0047】
また、本実施形態では、図11に示すような一致度算出部54の構成をとってもよい。図11に示す構成では、図9と異なり、補正部54Eは、シフト量決定部54Dにより決定されたシフト量SHTで期待値パターンPのデータP[0]~P[n-1]がシフト補正され、補正データPsht[0]~Psht[n-1]が生成される。誤差積分部54Bは、バッファメモリ54Aに格納されるデータF[0]~F[n-1]と、補正データPsht[0]~Psht[n-1]との誤差を積分することで積分値CXを算出する。このような構成であっても、上記と同様の効果を奏する。
【0048】
<一致度のアナログ出力>
図12は、一致度Cをアナログ出力するための構成を示す図である。アナログ出力部58は、一致度算出部54に対して設けられる。
【0049】
アナログ出力部58は、DAC(DAコンバータ)58Aと、変換部58Bと、を有する。DAC58Aは、一致度算出部54から出力される一致度CをDA変換し、アナログデータADを生成する。変換部58Bは、アナログデータADをアナログ出力COUTに変換して出力する。
【0050】
図13は、変換部58BにおけるアナログデータADとアナログ出力COUTと間の変換特性の一例を示す図である。図13に示すように、一致度CのアナログデータADの値が大きい区間A1ではアナログ出力COUTが最大値に飽和し、区間A1よりもアナログデータADの値が低い区間A2では、アナログデータADに対するアナログ出力COUTの傾きが区間A1に比べて大きい。
【0051】
このような構成により生成されるアナログ出力COUTにより、例えば期待値パターンの調整などが行いやすくなる。
【0052】
<車両用ソナー>
図14は、車両の一例を示す外観図である。車両XXのフロントバンパーには、その左右角部と中央部にそれぞれフロントソナーX1(L、R、C)が設けられている。また、車両XXのリアバンパーにも、その左右角部と中央部にそれぞれバックソナーX2(L、R、C)が設けられている(ただし、図示の便宜上、バックソナーX2RおよびX2Cは不図示)。
【0053】
このように、車両XXにフロントソナーX1(L、R、C)およびバックソナーX2(L、R、C)を搭載することにより、車両XXの周囲における物体(=障害物、他車、または、通行人など)の接近検知あるいは距離測定を行うことができるので、ドライバーの安全運転を支援することが可能となる。
【0054】
なお、上記のフロントソナーX1(L、R、C)およびバックソナーX2(L、R、C)としては、それぞれ、これまでに説明してきた各種実施形態に係る超音波センサを適用することができる。
【0055】
<その他>
本開示の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。これまでに説明してきた各種の実施形態は、矛盾のない範囲で適宜組み合わせて実施してもよい。以上の実施形態は、あくまでも、本開示の実施形態の例であって、本開示ないし各構成要件の用語の意義は、以上の実施形態に記載されたものに制限されるものではない。
【0056】
<付記>
以上のように、本開示の一態様に係る信号処理装置(10)は、
超音波受信素子(3)の出力に基づいて受信信号(RS)を生成するように構成される受信部(4)と、
前記受信信号の周波数を検出するように構成される周波数検出部(53)と、
一定区間における前記受信信号の周波数の変動と、前記変動の期待値との一致度を算出するように構成される一致度算出部(54)と、
を備え、
前記一致度算出部は、前記超音波送信素子により送信しようとした前記搬送波の周波数変化に対する応答の遅れを考慮した周波数パターンを前記期待値として、前記一致度を算出する構成としている(第1の構成)。
【0057】
また、上記第1の構成において、前記一致度算出部(54)は、
前記周波数検出部から出力される周波数信号のデータを格納するように構成されるバッファメモリ(54A)と、
前記バッファメモリに格納されるデータと、前記期待値のデータとに基づいて誤差積分値(CX)を算出するように構成される誤差積分部(54B)と、を有する構成としてもよい(第2の構成)。
【0058】
また、上記第2の構成において、前記一致度算出部(54)は、
前記バッファメモリに格納されるデータと、基準点(m)と、前記期待値のデータに基づいてシフト量を決定するように構成されるシフト量決定部(54D)と、
前記バッファメモリに格納されるデータを前記シフト量を用いてシフト補正するように構成される補正部(54E)と、を有する構成としてもよい(第3の構成)。
【0059】
また、上記第2の構成において、前記一致度算出部(54)は、
前記バッファメモリに格納されるデータと、基準点と、前記期待値のデータに基づいてシフト量を決定するように構成されるシフト量決定部(54D)と、
前記期待値のデータを前記シフト量を用いてシフト補正するように構成される補正部(54E)と、を有する構成としてもよい(第4の構成)。
【0060】
また、上記第1から第4のいずれかの構成において、前記一致度算出部(54)は、前記受信信号の周波数データおよび前記期待値のデータのそれぞれの基準点におけるデータに基づいて補正量を算出し、前記周波数データあるいは前記期待値のデータを前記補正量で補正し、前記一致度を算出する構成としてもよい(第5の構成)。
【0061】
また、上記第1から第5のいずれかの構成において、前記受信信号から振幅信号(AS)を抽出するように構成される振幅検出部(51)と、
前記振幅信号と第1しきい値(TH)を比較する比較器(52)と、
を備え、
前記比較器により反射波があると判定すると、前記一致度算出部(54)は算出を開始する構成としてもよい(第6の構成)。
【0062】
また、上記第1から第6のいずれかの構成において、前記受信信号から振幅信号を抽出するように構成される振幅検出部(51)と、
前記振幅信号のピークを検出するように構成される振幅ピーク検出部(57)と、
前記振幅信号のピークが検出されたタイミングから第1所定時間(Td0)だけずれたタイミングの前後の期間(Tw)における前記一致度の最大値を、確定一致度(CD)として決定するように構成される一致度決定部(55)と、を備える構成としてもよい(第7の構成)。
【0063】
また、上記第1から第6のいずれかの構成において、前記受信信号から振幅信号を抽出するように構成される振幅検出部(51)と、
前記振幅信号が第2しきい値(TH)を上回ったことを検出するように構成される検出部(52)と、
前記検出部により検出されたタイミングから第2所定時間(Tdd)だけ後のタイミングの前後の期間(Tw)における前記一致度の最大値を、確定一致度として決定するように構成される一致度決定部(55)と、を備える構成としてもよい(第8の構成)。
【0064】
また、上記第1から第6のいずれかの構成において、前記受信信号から振幅信号を抽出するように構成される振幅検出部(51)と、
前記振幅信号が第3しきい値(TH)を下回ったことを検出するように構成される検出部(52)と、
前記検出部により検出されたタイミングから第3所定時間(Tf)だけ前のタイミングの前後の期間(Tw)における前記一致度の最大値を、確定一致度として決定するように構成される一致度決定部(55)と、を備える構成としてもよい(第9の構成)。
【0065】
また、上記第1から第9のいずれかの構成において、前記期待値のデータは、自身の超音波センサから送信される搬送波の周波数変調に加えて、自身とは別の超音波センサから送信される搬送波の周波数変調に対応するよう、複数種類設定される構成としてもよい(第10の構成)。
【0066】
また、上記第1から第10のいずれかの構成において、前記一致度をDA変換するように構成されるDAコンバータ(58A)と、
前記DAコンバータから出力されるアナログデータ(AA)を変換特性によってアナログ出力(COUT)に変換するように構成される変換部(58B)と、
を備え、
前記変換特性において、前記アナログデータの第1区間(A1)では、前記アナログ出力が飽和し、前記第1区間よりも前記アナログデータが低い第2区間(A2)では、前記アナログデータに対する前記アナログ出力の傾きが前記第1区間に比べて大きい構成としてもよい(第11の構成)。
【0067】
また、本開示の一態様に係る超音波センサ(100)は、上記第1から第11のいずれかの構成の信号処理装置(10)と、超音波送信素子(3)と、超音波受信素子(3)と、を備える(第12の構成)。
【0068】
また、本開示の一態様に係る車両(XX)は、上記第12の構成の超音波センサ(100)を備える(第13の構成)。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本開示は、例えば車載用などの超音波センサに利用することが可能である。
【符号の説明】
【0070】
1 送波信号生成部
2 駆動部
3 超音波送受信素子
3X 超音波送受信素子
4 受信部
5 反射波識別部
10 信号処理装置
51 振幅検出部
52 比較器
53 周波数検出部
53A 位相検出部
53B 微分処理部
54 一致度算出部
54A バッファメモリ
54B 誤差積分部
54C 逆数演算部
54D シフト量決定部
54E 補正部
55 一致度決定部
56 一致度比較部
57 振幅ピーク検出部
58 アナログ出力部
58A DAC
58B 変換部
100 超音波センサ
200 対象物
XX 車両
図1
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