(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025040127
(43)【公開日】2025-03-24
(54)【発明の名称】情報処理システム、情報処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 40/12 20230101AFI20250314BHJP
【FI】
G06Q40/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023146847
(22)【出願日】2023-09-11
(71)【出願人】
【識別番号】513040384
【氏名又は名称】株式会社マネーフォワード
(74)【代理人】
【識別番号】110002789
【氏名又は名称】弁理士法人IPX
(72)【発明者】
【氏名】増田 樹
(72)【発明者】
【氏名】星野 崇宏
(72)【発明者】
【氏名】北岸 郁雄
【テーマコード(参考)】
5L040
5L055
【Fターム(参考)】
5L040BB63
5L055BB63
(57)【要約】
【課題】自動仕訳に勘定科目のテーブルを不要とすることができる情報処理システム等を提供する。
【解決手段】本発明の一態様によれば、情報処理システムが提供される。この情報処理システムは、プロセッサを備え、プロセッサが、取得ステップでは、取引の内容を示す取引データを取得する。入力ステップでは、取得された取引データを人工知能モジュールに入力し、人工知能モジュールは、既存の取引の内容と既存の勘定科目との対応を少なくとも示すデータ群を学習したモデルを有する。表示ステップでは、取得された取引データを入力された人工知能モジュールがモデルに基づき出力する語句を、勘定科目を示す語句として表示させるための処理を行い、勘定科目を示す語句には、既存の勘定科目とは異なる新規の勘定科目を示す語句が含まれ得る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報処理システムであって、
プロセッサを備え、前記プロセッサが、
取得ステップでは、取引の内容を示す取引データを取得し、
入力ステップでは、取得された前記取引データを人工知能モジュールに入力し、前記人工知能モジュールは、既存の取引の内容と既存の勘定科目との対応を少なくとも示すデータ群を学習したモデルを有し、
表示ステップでは、取得された前記取引データを入力された前記人工知能モジュールが前記モデルに基づき出力する語句を、勘定科目を示す語句として表示させるための処理を行い、前記勘定科目を示す語句には、前記既存の勘定科目とは異なる新規の勘定科目を示す語句が含まれ得る、
情報処理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の情報処理システムにおいて、
前記プロセッサが、
前記表示ステップでは、前記新規の勘定科目を前記既存の勘定科目とは異なる態様で表示させる、
情報処理システム。
【請求項3】
請求項1に記載の情報処理システムにおいて、
前記プロセッサが、
第1算出ステップでは、前記新規の勘定科目と前記既存の勘定科目との類似度を算出し、
前記表示ステップでは、前記新規の勘定科目を表示させる場合、当該新規の勘定科目との類似度が閾値以上である前記既存の勘定科目を当該新規の勘定科目に対応付けて表示させる、
情報処理システム。
【請求項4】
請求項1に記載の情報処理システムにおいて、
前記プロセッサが、
第1算出ステップでは、前記新規の勘定科目と前記既存の勘定科目との類似度を算出し、
前記表示ステップでは、前記新規の勘定科目を表示させる場合、当該新規の勘定科目について算出された類似度を当該新規の勘定科目に対応付けて表示させる、
情報処理システム。
【請求項5】
請求項1に記載の情報処理システムにおいて、
前記プロセッサが、
第2算出ステップでは、出力された前記語句の勘定科目としての確度を算出し、
前記表示ステップでは、前記新規の勘定科目を、当該新規の勘定科目について算出された確度に応じた数の既存の勘定科目に対応付けて表示させる、
情報処理システム。
【請求項6】
請求項1に記載の情報処理システムにおいて、
前記人工知能モジュールは、入力された前記取引データが示す取引の内容に含まれる語句の最小単位を示す単位語句のうち、前記既存の勘定科目との関連性が高い単位語句を前記関連性の高さの順番で出力し、
前記プロセッサが、
前記表示ステップでは、前記人工知能モジュールが出力した単位語句を繋げた文字列を、前後の単位語句との関連性が低い箇所で分割し、前後が分割された文字列によって示される語句を勘定科目として表示させる、
情報処理システム。
【請求項7】
請求項1に記載の情報処理システムにおいて、
前記人工知能モジュールは、特定の団体の既存の取引の内容と前記団体が使用する勘定科目との対応を少なくとも示すデータ群を学習したモデルを有する、
情報処理システム。
【請求項8】
情報処理方法であって、
請求項1~請求項7の何れか1つに記載の情報処理システムの各ステップを備える、
情報処理方法。
【請求項9】
プログラムであって、
コンピュータに、請求項1~請求項7の何れか1つに記載の情報処理システムの各ステップを実行させる
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理システム、情報処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、仕訳パターンマスタのデータ区分と売上区分の組み合わせを基に、当該組み合わせを含む売上情報テーブル中のレコードまたは出荷情報テーブル中のレコードを特定し、当該特定されたレコードならびに当該組み合わせと紐付く仕訳パターンマスタ中の借方勘定科目および貸方補助科目を基に、売上の仕訳情報テーブルまたは出荷の仕訳情報テーブルを作成する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
取引の内容を示すデータに基づいて勘定科目を判定しようとする場合に、例えば、取引の内容を示す単語と勘定科目とを対応付けたテーブルを用いると、勘定科目に変更がある場合にテーブルの修正が必要になり手間がかかってしまう。
【0005】
本発明では上記事情に鑑み、自動仕訳に勘定科目のテーブルを不要とすることができる情報処理システム等を提供することとした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、情報処理システムが提供される。この情報処理システムは、プロセッサを備え、プロセッサが、取得ステップでは、取引の内容を示す取引データを取得する。入力ステップでは、取得された取引データを人工知能モジュールに入力し、人工知能モジュールは、既存の取引の内容と既存の勘定科目との対応を少なくとも示すデータ群を学習したモデルを有する。表示ステップでは、取得された取引データを入力された人工知能モジュールがモデルに基づき出力する語句を、勘定科目を示す語句として表示させるための処理を行い、勘定科目を示す語句には、既存の勘定科目とは異なる新規の勘定科目を示す語句が含まれ得る。
【0007】
このような態様によれば、自動仕訳に勘定科目のテーブルを不要とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】自動仕訳支援システム1の全体構成の一例を示す図である。
【
図2】会計処理サーバ装置10のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図3】ユーザ端末40のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図4】仕訳支援処理の一例を示すアクティビティ図である。
【
図5】蓄積されたアグリゲーションデータの一例を示す図である。
【
図6】表示された取引データの一覧の一例を示す図である。
【
図7】AIモジュール100の出力の一例を示す図である。
【
図8】抽出される勘定科目の候補情報の一例を示す図である。
【
図9】表示された推奨仕訳データの一例を示す図である。
【
図10】選択された勘定科目の一例を示す図である。
【
図12】表示された推奨仕訳データの別の一例を示す図である。
【
図13】表示された推奨仕訳データの別の一例を示す図である。
【
図14】表示された推奨仕訳データの別の一例を示す図である。
【
図15】表示された推奨仕訳データの別の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。
【0010】
ところで、本実施形態に登場するソフトウェアを実現するためのプログラムは、コンピュータが読み取り可能な非一時的な記録媒体(Non-Transitory Computer-Readable Medium)として提供されてもよいし、外部のサーバからダウンロード可能に提供されてもよいし、外部のコンピュータで当該プログラムを起動させてクライアント端末でその機能を実現(いわゆるクラウドコンピューティング)するように提供されてもよい。
【0011】
また、本実施形態において「部」とは、例えば、広義の回路によって実施されるハードウェア資源と、これらのハードウェア資源によって具体的に実現されうるソフトウェアの情報処理とを合わせたものも含みうる。また、本実施形態においては様々な情報を取り扱うが、これら情報は、例えば電圧・電流を表す信号値の物理的な値、0又は1で構成される2進数のビット集団体としての信号値の高低、又は量子的な重ね合わせ(いわゆる量子ビット)によって表され、広義の回路上で通信・演算が実行されうる。
【0012】
また、広義の回路とは、回路(Circuit)、回路類(Circuitry)、プロセッサ(Processor)、及びメモリ(Memory)等を少なくとも適当に組み合わせることによって実現される回路である。すなわち、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等を含むものである。
【0013】
<実施形態1>
1.システム構成
以下、実施形態1に係るシステム構成を説明する。
図1は、自動仕訳支援システム1の全体構成の一例を示す図である。
図1においては、自動仕訳支援システム1が備える各装置と、それらの装置を使用するユーザの概要が示されている。各概要については、他の図も参照しながら随時説明する。自動仕訳支援システム1は、過去に行われた取引について、取引内容の性質を表す勘定科目と取引の金額とをまとめる仕訳の作業を支援するための情報処理(以下「仕訳支援処理」と言う)を実行する情報処理システムである。
【0014】
自動仕訳支援システム1は、通信回線2と、会計処理サーバ装置10と、アグリゲーションサーバ装置20と、取引先サーバ装置30-1、30-2及び30-3等(それぞれを区別しない場合は「取引先サーバ装置30」と言う)と、ユーザ端末40とを備える。
【0015】
通信回線2は、特に限定されるものではないが、例えば、インターネット網によって構成されている。また、通信回線2は、ローカルエリアネットワーク、移動体通信網及びVPN(Virtual Private Network)等を含んでいてもよい。通信回線2は、自回線に接続する装置同士のデータのやり取りを仲介する。
図1の例では、通信回線2には、会計処理サーバ装置10、アグリゲーションサーバ装置20及び取引先サーバ装置30が有線で接続され、ユーザ端末40が無線で接続されている。なお、各装置の通信回線2との接続は有線でも無線でもよい。
【0016】
ユーザ端末40は、ユーザによって使用される端末であり、例えばスマートフォン、タブレット端末又はパーソナルコンピュータ等である。ユーザ端末40は、仕訳支援処理における画像の表示及びユーザによる操作の受け付け等を実行する。
【0017】
取引先サーバ装置30は、ユーザが取引を行う可能性がある取引先が商品又はサービスを提供するための情報処理を行う情報処理装置である。取引先サーバ装置30は、例えば、EC(Electronic Commerce)サイトや、旅行会社のウェブサイト又はクレジットカード会社のウェブサイト等を介してサービスを提供する。取引先サーバ装置30が提供するサービスのアカウント情報をユーザが登録すると、取引先サーバ装置30は、登録されたアカウント情報を記憶して、ユーザ毎に各種の取引を行う。取引先サーバ装置30は、実行した取引の内容を示す取引データを、アカウント情報に対応付けて記憶する。以下では、「アカウント情報」と言えば、取引先サーバ装置30が提供するサービスのアカウント情報を示すものとする。
【0018】
アグリゲーションサーバ装置20は、多種多様なソースからデータを収集し、それらを共通のデータベースにまとめるデータアグリゲーションに関する情報処理を実行する情報処理装置である。アグリゲーションサーバ装置20は、ユーザが登録した上記のアカウント情報をユーザ端末40から受け取り、受け取ったアカウント情報に対応付けられている取引データをアグリゲーションデータとして取引先サーバ装置30から収集して記憶しておく。
【0019】
会計処理サーバ装置10は、会計に関する処理である会計処理を実行する情報処理装置である。会計処理サーバ装置10は、アグリゲーションサーバ装置20からユーザの取引データを取得して、取得した取引データに基づいて仕訳支援処理を実行する。会計処理サーバ装置10は、例えば、取引データが示す取引の内容に基づいて仕訳を行う場合に、勘定科目を生成する処理を仕訳支援処理として実行する。
【0020】
会計処理サーバ装置10は、AIモジュール100を備えている。AIモジュール100は、AI(Artificial Intelligence)の技術を用いて、所定の入力に対して所定の出力が得られるように調整(チューニング)されたモジュールである。AIモジュール100は、例えば、様々な取引の内容と勘定科目との対応付けを学習した学習モデルを有するAIモジュールである。なお、AIモジュール100は、これに限らず、例えば、LLM(Large Language Models)と呼ばれる大規模なデータセットを用いた機械学習によって精度を高めた自然言語処理モデル等を有していてもよい。
【0021】
2.ハードウェア構成
以下、実施形態1に係るハードウェア構成を説明する。
図2は、会計処理サーバ装置10のハードウェア構成の一例を示す図である。会計処理サーバ装置10は、制御部11と、記憶部12と、通信部13と、バス14とを備える。バス14は、会計処理サーバ装置10が備える各部を電気的に接続する。
【0022】
(制御部11)
制御部11は、少なくとも1つのプロセッサを有している。少なくとも1つのプロセッサは、例えば不図示の中央処理装置(Central Processing Unit:CPU)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、1以上のIntegrated Circuit、1以上のDiscrete Circuit、及び、これらの組合せによって構成されてもよい。
【0023】
制御部11は、記憶部12に記憶された所定のプログラムを読み出すことによって、自動仕訳支援システム1に係る種々の機能を実現するコンピュータである。すなわち、記憶部12に記憶されているソフトウェアによる情報処理が、ハードウェアの一例である制御部11によって具体的に実現されることで、制御部11に含まれる各機能部として実行されうる。なお、制御部11は単一であることに限定されず、機能ごとに複数の制御部11を有するように実施してもよい。またそれらの組合せであってもよい。
【0024】
(記憶部12)
記憶部12は、前述の記載により定義される様々な情報を記憶する。これは、例えば、制御部11によって実行される自動仕訳支援システム1に係る種々のプログラム等を記憶するソリッドステートドライブ(Solid State Drive:SSD)やHDD(Hard Disk Drive)等のストレージデバイスとして、あるいは、プログラムの演算に係る一時的に必要な情報(引数、配列等)を記憶するランダムアクセスメモリ(Random Access Memory:RAM)等のメモリとして実施されうる。記憶部12は、制御部11によって実行される自動仕訳支援システム1に係る種々のプログラムや変数等を記憶している。
【0025】
(通信部13)
通信部13は、通信モジュールによって構成される。通信モジュールは、IEEE802.11a/b/g/n/ac/ax、LTE、5G、6G等の規格に準拠する無線通信モジュールであってもよく、IEEE802.3等の規格に準拠する有線通信モジュールであってもよい。通信部13は、会計処理サーバ装置10から種々の電気信号を外部の構成要素に送信可能に構成される。また、通信部13は、外部の構成要素から会計処理サーバ装置10への種々の電気信号を受信可能に構成される。さらに好ましくは、通信部13がネットワーク通信機能を有し、これにより通信回線2を介して、会計処理サーバ装置10と外部機器との間で種々の情報を通信可能に実施してもよい。
【0026】
アグリゲーションサーバ装置20及び取引先サーバ装置30は、いずれも会計処理サーバ装置10と同様のハードウェア構成を備える。なお、アグリゲーションサーバ装置20の制御部及び取引先サーバ装置30の制御部は、会計処理サーバ装置10の制御部11と区別するため、それぞれ制御部21及び制御部31という符号を付して説明する。
【0027】
図3は、ユーザ端末40のハードウェア構成の一例を示す図である。ユーザ端末40は、制御部21と、記憶部22と、通信部23と、入力部24と、出力部25と、バス26とを備える。バス26は、ユーザ端末40が備える各部を電気的に接続する。制御部21、記憶部22及び通信部23は、
図2に示す制御部11、記憶部12及び通信部13と、スペック、モデル等は異なっていてもよいが、同様のハードウェアである。
【0028】
(入力部24)
入力部24は、キー、ボタン、タッチスクリーン及びマウス等を有し、ユーザによる入力を受け付ける。また、入力部24は、マイクロフォンを有し、ユーザによる音声の入力を受け付けてもよい。
【0029】
(出力部25)
出力部25は、ディスプレイ及びスピーカ等を有し、ディスプレイの表示面に画面、画像、アイコン、テキスト等といった、ユーザが視認可能な態様で生成された視覚情報を表示し、音声を含む音を出力する。
【0030】
3.情報処理
以下、実施形態1に係る情報処理を説明する。以下の説明では、会計処理サーバ装置10の制御部11、アグリゲーションサーバ装置20の制御部21、取引先サーバ装置30の制御部31及びユーザ端末40の制御部41を各情報処理の主体として記載するが、それらの情報処理は、各制御部が有するプロセッサによって実行されている。
【0031】
図4は、仕訳支援処理の一例を示すアクティビティ図である。
図4に示す仕訳支援処理は、ユーザ端末40のユーザが、1以上のアカウント情報(取引先サーバ装置30が提供するサービスのアカウント情報)を入力して、入力した1以上のアカウント情報をアグリゲーションサーバ装置20に登録する操作を行うことを契機に開始される。ここで登録されるアカウント情報は、作業者であるユーザ自身のアカウント情報だけでもよいし、他のユーザのアカウント情報も含まれていてもよい。
【0032】
まず、ユーザ端末40の制御部41は、ユーザにより入力された1以上のアカウント情報の登録の要求を示す要求データをアグリゲーションサーバ装置20に送信する(アクティビティA11)。次に、アグリゲーションサーバ装置20の制御部21は、送信されてきた要求データが示す1以上のアカウント情報を自装置に記憶させて登録する。続いて、制御部21は、取引先サーバ装置30に対して、登録したアカウント情報に対応する取引データを要求する。
【0033】
取引先サーバ装置30の制御部31は、要求された取引データを読み出してアグリゲーションサーバ装置20に送信する(アクティビティA12)。アグリゲーションサーバ装置20の制御部21は、送信されてきた取引データを受け取ると、受け取った取引データを対応するアカウント情報に対応付けて記憶する。制御部21は、このようにして取引データをアグリゲーションデータとして収集し、蓄積する(アクティビティA13)。
【0034】
図5は、蓄積されたアグリゲーションデータの一例を示す図である。
図5に示すアグリゲーションデータAD1には、「業種」、「収集元」、「取引内容」及び「金額」等のデータが含まれている。「業種」は、取引が行われた製品又はサービスの属する業種を示し、例えば、「製造」、「金融」、「流通」、「医療」、「運輸」及び「旅行」等である。「収集元」は、アグリゲーションデータAD1の収集元となったサービスやシステムの名称を示す。「取引内容」は、収集されたアグリゲーションデータAD1の内容、すなわち、取引の内容を示す。「金額」は、取引の金額を示す。
【0035】
次に、ユーザは、収集された取引データが示す取引に対して仕訳を行うため、仕訳作業を開始する操作を行う。ユーザ端末40の制御部41は、仕訳作業の開始操作を受け付けると、仕訳作業開始の指示を示す指示データを会計処理サーバ装置10に送信する(アクティビティA21)。会計処理サーバ装置10の制御部11は、指示データを受け取ると、受け取った指示データが示す取引データを要求する要求データをアグリゲーションサーバ装置20に送信する。
【0036】
アグリゲーションサーバ装置20の制御部21は、送信されてきた要求データが示す取引データを読み出して会計処理サーバ装置10に送信する(アクティビティA22)。会計処理サーバ装置10の制御部11は、送信されてきた取引データを取得する(アクティビティA23)。制御部11は、取得した取引データに基づいて、取引データの一覧を生成してユーザ端末40に送信する(アクティビティA24)。ユーザ端末40の制御部41は、送信されてきた取引データの一覧を表示する(アクティビティA25)。
【0037】
図6は、表示された取引データの一覧の一例を示す図である。ユーザ端末40の制御部41は、自動仕訳支援システム1のシステム画面G11を表示している。システム画面G11には、「仕訳対象を選択してください。」という文字列と、取引データの一覧C11と、仕訳開始ボタンB11とが表示されている。取引データの一覧C11には、
図5に示す「業種」、「収集元」、「取引内容」及び「金額」という各項目に加え、「勘定科目」の表示欄D11が含まれている。
図6の例では、表示欄D11には、いずれも「未仕訳」という文字列が表示されている。
【0038】
ユーザは、未仕訳の取引データのうちからいずれかを選択する操作を行う。ユーザ端末40の制御部41は、取引データの選択を受け付けると、選択された取引データを会計処理サーバ装置10に送信する(アクティビティA31)。
図6の例では、上から2番目の取引データが選択された状態になっているので、この状態で仕訳開始ボタンB11を押す操作が行われると、制御部41は、選択された上から2番目の取引データを会計処理サーバ装置10に送信する。
【0039】
会計処理サーバ装置10の制御部11は、送信されてきた取引データを、
図1に示すAIモジュール100に入力する(アクティビティA32)。AIモジュール100は、自身が有する学習モデルに基づいて、入力された取引データに対応する情報を出力する。制御部11は、AIモジュール100から出力された情報を取得する(アクティビティA33)。
【0040】
図7は、AIモジュール100の出力の一例を示す図である。
図7の例では、AIモジュール100に対して、業種が「製造業」、収集元が「・・・」、取引内容が「医療法人・・・・・クリニック・・・/6月分 明細書」で金額が「・・・」という取引データが入力データIN11として入力されている。そして、AIモジュール100は、出力データOUT11を出力している。出力データOUT11には、入力データIN11に対応する勘定科目を示すテキストを構成すると予測される語句の最小単位である「Token」が「No.1」から「No.16」までの各ナンバーについて含まれている。
【0041】
「No.1」から「No.16」までの各Tokenにおいては、入力データIN11に対応する勘定科目を示すテキストを構成すると予測されるTokenが、勘定科目との関連性の高さを示す確率が高い方から3つ(TOP3)示されている。この確率は、数値が大きいほど勘定科目との関連性が高いことを示す。また、この確率は、同じナンバーのToken同士を比較した場合の相対的な関連性の高さを示しており、同じナンバーのTokenの確率を合計すると100%になるように求められている。
【0042】
例えば、「Token No.1」においては、確率90%の'売掛金'、確率8.0%の''(ブランク)、確率1.0%の'現金'という3つのTokenがTOP3として示されている。また、「Token No.2」においては、確率100%の''(ブランク)、確率0.0%の'('、確率0.0%の'・'という3つのTokenがTOP3として示されている。また、「Token No.3」においては、確率100%の'[C/D]'(Credit/Debit:賃借を表す単語)、確率0.0%の'[DIV]'(Divide:行を分けることを表す単語)、確率0.0%の'U'という3つのTokenがTOP3として示されている。
【0043】
また、「Token No.4」においては、確率97%の'売上高'、確率2.0%の'売掛金'、確率1.0%の''(ブランク)という3つのTokenがTOP3として示されている。また、「Token No.5」においては、確率99%の''(ブランク)、確率0.0%の'('、確率0.0%の'/'という3つのTokenがTOP3として示されている。また、「Token No.6」においては、確率99%の'先'、確率1.0%の'[SEP]' (Separate:テキストの境目を表す単語)、確率0.0%の'[DIV]'という3つのTokenがTOP3として示されている。
【0044】
また、「Token No.7」においては、確率100%の'端'、確率0.0%の'生'、確率0.0%の'機'という3つのTokenがTOP3として示されている。また、「Token No.8」においては、確率100%の'医'、確率0.0%の'支'、確率0.0%の'金'という3つのTokenがTOP3として示されている。また、「Token No.9」においては、確率98%の'療'、確率2.0%の'業'、確率0.0%の'事業'という3つのTokenがTOP3として示されている。
【0045】
また、「Token No.10」においては、確率99%の'事業'、確率0.0%の'収入'、確率0.0%の''(ブランク)という3つのTokenがTOP3として示されている。また、「Token No.11」においては、確率94%の''(ブランク)、確率3.0%の'収入'、確率1.0%の')'という3つのTokenがTOP3として示されている。また、「Token No.12」においては、確率95%の'[SEP]'、確率4.0%の'先'、確率0.0%の'[DIV]'という3つのTokenがTOP3として示されている。
【0046】
また、「Token No.13」においては、確率45%の''(ブランク)、確率21.0%の'売'、確率12.0%の'売上高'という3つのTokenがTOP3として示されている。また、「Token No.14」においては、確率92%の'[SEP]'、確率7.0%の'先'、確率0.0%の'[DIV]'という3つのTokenがTOP3として示されている。また、「Token No.15」においては、確率43%の''(ブランク)、確率21.0%の'売'、確率12.0%の'売上高'という3つのTokenがTOP3として示されている。また、「Token No.16」においては、確率99%の'[SEP]'、確率1.0%の'先'、確率0.0%の'[DIV]'という3つのTokenがTOP3として示されている。
【0047】
[DIV]、[C/D]、[SEP]というTokenは、AIモジュール100が有する学習モデルの教師データに含まれているテキストであり、それぞれテキストの区切りを表している。以下ではこれらのTokenを「区切りToken」と言う。また、上記のTokenには、単語(キャラクタ)のみが含まれていたが、複数の単語からなる句(フレーズ)が含まれていてもよい。会計処理サーバ装置10の制御部11は、出力データOUT11から、勘定科目の候補情報を抽出する(アクティビティA34)。勘定科目の候補情報とは、取引データが示す取引内容に対して対応付ける勘定科目の候補を示す情報である。
【0048】
図8は、抽出される勘定科目の候補情報の一例を示す図である。
図8では、会計処理サーバ装置10の制御部11は、まず、
図7に示す出力データOUT11に含まれる各Tokenのうち、最も確率が高いToken(枠に囲まれた部分)を抽出する。制御部11は、
図8の例では、'売掛金'、''(ブランク)、'[C/D]'、'売上高'、''(ブランク)、'先'、'端'、'医'、'療'、'事業'、''(ブランク)、'[SEP]'、''(ブランク)、'[SEP]'、''(ブランク)及び'[SEP]'を抽出する。
【0049】
制御部11は、抽出したTokenについて、前後のTokenとの関連性が低い箇所で分割し、前後のTokenとの関連性が高い箇所ではTokenを繋げる処理を抽出処理として行う。制御部11は、Token同士の関連性の高さを、例えば、単語の共起性又は単語のベクトル表現等の周知技術を用いて判断する。制御部11は、
図8の例では、'売掛金'と、''(ブランク)と、'[C/D]'と、'売上高'と、''(ブランク)と、'先'とは互いの関連性が低いのでそれぞれ分割している。なお、制御部11は、''(ブランク)については、抽出処理の対象としてもよいし、全て削除して抽出処理の対象から外してもよい。
【0050】
また、制御部11は、'先'と'端'、'医'と'療'は互いの関連性が高いので'先端'と'医療'となるように繋げ、さらに、'先端'と'医療'と'事業'とは互いの関連性が高いので'先端医療事業'となるように繋げている。その結果、制御部11は、「売掛金 [C/D] 売上高 先端医療事業 [SEP] [SEP] [SEP]」という文字列を示す情報を勘定科目の候補情報E11として抽出している。
【0051】
次に、会計処理サーバ装置10の制御部11は、金額情報を抽出する(アクティビティA35)。制御部11は、例えば、アクティビティA31において送信されてきた取引データから、「金額」の部分を金額情報として抽出する。そして、制御部11は、抽出した勘定科目の候補情報と金額情報とに基づいて、推奨仕訳データを生成する(アクティビティA36)。推奨仕訳データは、取引データが示す取引内容から推奨される仕訳の内容を示すデータである。制御部11は、生成した推奨仕訳データをユーザ端末40に送信する。ユーザ端末40の制御部41は、送信されてきた推奨仕訳データを表示する(アクティビティA41)。
【0052】
図9は、表示された推奨仕訳データの一例を示す図である。ユーザ端末40の制御部41は、自動仕訳支援システム1のシステム画面G21を表示している。システム画面G21には、「勘定科目を選択してください。」という文字列と、取引データC21と、勘定科目の表示欄D21と、推奨勘定科目一覧F21と、選択ボタンB21、B22、B23とが表示されている。取引データC21は、
図6の取引データの一覧C11から選択された取引データである。勘定科目の表示欄D21には、まだ「未仕訳」が表示されている。
【0053】
推奨勘定科目一覧F21には、
図8に示す勘定科目の候補情報E11から、ブランク又は区切りTokenによって区切られた語句である「売掛金」、「売上高」及び「先端医療事業」が示されている。「売掛金」、「売上高」及び「先端医療事業」には、それぞれ選択ボタンB21、B22及びB23が対応付けて表示されている。ユーザは、表示された勘定科目の候補情報E11を見て、取引データが示す取引内容に対応付ける勘定科目を選択する(アクティビティA42)。
【0054】
図10は、選択された勘定科目の一例を示す図である。
図10では、
図9に示すシステム画面G21において選択ボタンB23が操作された場合を示している。ユーザ端末40の制御部41は、選択ボタンB23に対応付けられている「先端医療事業」を選択された勘定科目として、勘定科目の表示欄D21に表示している。制御部41は、選択された勘定科目を対応付けた取引データC21を、会計処理サーバ装置10に送信する。会計処理サーバ装置10の制御部11は、送信されてきた取引データC21を仕訳データベースに格納して保存する(アクティビティA43)。仕訳データベースは、仕訳された取引内容を格納するデータベースである。
【0055】
図11は、仕訳データベースの一例を示す図である。
図11に示す仕訳データベースDB1には、取引データが示す「取引内容」と、アクティビティA35で抽出された「金額」と、「勘定科目」とが対応付けて格納されている。勘定科目には、アクティビティA42において選択された「先端医療事業」が格納されており、それ以外は「未仕訳」の状態を示す情報が格納されている。会計処理サーバ装置10の制御部11は、未仕訳が残っている場合、その旨をユーザ端末40に通知する。
【0056】
ユーザ端末40の制御部41は、この通知を受け取ると、
図6と同様の仕訳対象を選択させるための取引データの一覧を表示する(アクティビティA25)。以下、
図4に示すアクティビティA25からA43までのアクティビティが繰り返されることで、
図6に示す取引データの一覧C11に含まれる各取引データが示す取引について勘定科目が選択されていく。仕訳データベースDB1に格納されている取引データの全てについて勘定科目が格納されると、未仕訳の取引データがなくなるので、
図4に示す仕訳支援処理が終了する。
【0057】
以上のとおり、自動仕訳支援システム1においては、会計処理サーバ装置10の制御部11は、取引の内容を示す取引データを取得する取得ステップを実行する。制御部11は、例えば、
図4に示すアクティビティA23において、アグリゲーションサーバ装置20から取引データを取得する。なお、上述した取引データの取得方法は一例であり、これに限らない。制御部11は、例えば、ユーザ端末40を介して入力された取引データを取得してもよいし、取引先サーバ装置30から取引データを直接取得してもよい。
【0058】
また、制御部11は、取得した取引データを人工知能モジュールに入力する入力ステップを実行する。人工知能モジュールは、例えば
図1に示すAIモジュール100であり、既存の取引の内容と既存の勘定科目との対応を少なくとも示すデータ群を学習したモデルを有する。制御部11は、例えば、
図4に示すアクティビティA32において、AIモジュール100に入力する。
【0059】
そして、制御部11は、取得した取引データを入力された人工知能モジュールがモデルに基づき出力する語句を、勘定科目を示す語句として表示させるための処理を行う表示ステップを実行する。制御部11は、例えば、
図4に示すアクティビティA36において、AIモジュール100から出力された出力データOUT11の一部の文字列(「売掛金」、「売上高」、「先端医療事業」)を含む推奨仕訳データを生成している。この推奨仕訳データを生成する処理は、
図9に示す推奨勘定科目(勘定科目を示す語句の一例)を表示させるための処理である。
【0060】
AIモジュール100は、前述したように、既存の取引の内容と既存の勘定科目との対応を少なくとも示すデータ群を学習したモデルを有するが、入力される取引データは、既存の取引の内容だけではなく、新規の取引の内容を示す場合もある。その場合でも、AIモジュール100は、必ず何らかの語句を、入力された取引データが示す取引の内容に対応する勘定科目を示す語句として出力する。
図7の例であれば、'売掛金'及び'売上高'は既存の勘定科目がそのまま出力されているが、'先'、'端'、'医'、'療'及び'事業'は、新規の勘定科目を示す語句として出力されている。
【0061】
このように、制御部11によって表示される勘定科目を示す語句には、既存の勘定科目とは異なる新規の勘定科目を示す語句が含まれ得る。もし仮に、自動的に仕訳を行うために、既存の取引内容と勘定科目とを対応付けたテーブルを用いる場合、新規の勘定科目を使用するためには、その新規の勘定科目を含むテーブルに更新しなければならない。自動仕訳支援システム1においては、AIモジュール100の出力を活用することで、新規の勘定科目も使用することができるので、自動仕訳に勘定科目のテーブルを不要とすることができる。
【0062】
また、AIモジュール100は、人工知能モジュールの一例として、
図7に示す出力データOUT11のように、入力された取引データが示す取引の内容に含まれる語句の最小単位を示す単位語句(Token)のうち、既存の勘定科目との関連性が高い単位語句を関連性の高さの順番で出力する。単位語句とは、
図7等に示す'売掛金'、'[C/D]'、'売上高'、'先'、'端'、'医'、'療'及び'事業'等のTokenであり、例えば、「Token No.1」であれば、勘定科目との関連性の高さを示す確率が90%の'売掛金'、8.0%の''(ブランク)、1.0%の'現金'というように確率が高い方から順番にTokenが出力されている。
【0063】
そして、制御部11は、人工知能モジュール(AIモジュール100)が出力した単位語句を繋げた文字列を、前後の単位語句との関連性が低い箇所で分割し、前後が分割された文字列によって示される語句を勘定科目として表示させるための処理を行う表示ステップを実行する。
図8及び
図9の例であれば、'売上高'と、''(ブランク)と、'先'との間は、互いの関連性が低いため分割され、'先'、'端'、'医'、'療'及び'事業'の間は互いの関連性が高いため繋げられ、前後が分割された「売掛金」、「売上高」及び「先端医療事業」という語句が推奨勘定科目一覧F21に含まれる勘定科目として表示されている。
【0064】
AIモジュール100は、上記の'売掛金'及び'売上高'のように勘定科目を示す1つの語句として成立する語句を出力することもあれば、'先'、'端'、'医'及び'療'のように勘定科目を示す1つの語句としては成立しない語句を出力することがある。その場合に、制御部11が、上記のように前後の語句との関連性に基づいて分割したり繋げたりすることで、AIモジュール100の出力をそのまま用いる場合に比べて、勘定科目を示す1つの語句として成立する語句を表示させやすくすることができる。
【0065】
また、上述したように、AIモジュール100が有する学習モデルの教師データには、[DIV]、[C/D]及び[SEP]等の区切りTokenが含まれており、AIモジュール100による出力にも、
図7等に示す出力データOUT11のように区切りTokenが含まれる。このような態様により、AIモジュール100からの出力に区切りTokenが含まれない場合に比べて、前後の文字列との分割がより適切な箇所で行われるようにすることができる。
【0066】
<その他の実施形態>
会計処理サーバ装置10の制御部11は、新規の勘定科目を既存の勘定科目とは異なる態様で表示させるための処理を表示ステップとして実行してもよい。その場合、会計処理サーバ装置10は、例えば、既存の勘定科目のリストを記憶しておく。ここで言う既存の勘定科目とは、例えば、AIモジュール100が有する学習モデルが学習に用いた勘定科目である。なお、それに限らず、学習に用いられていない勘定科目が既存の勘定科目に含められていてもよい。いずれの場合も、このリストは、或る時点での既存の勘定科目を示していればよく、新規の勘定科目を含めるように更新する必要はない。
【0067】
次に、会計処理サーバ装置10の制御部11は、
図4に示すアクティビティA34において抽出した勘定科目の候補情報のうち既存の勘定科目のリストに含まれる語句と、含まれない語句とに分別する。そして、制御部11は、アクティビティA36において、既存の勘定科目のリストに含まれる語句と含まれない語句とを異なる態様で表した推奨仕訳データを生成する。ユーザ端末40の制御部41は、生成された推奨仕訳データを表示する。
【0068】
図12は、表示された推奨仕訳データの別の一例を示す図である。ユーザ端末40の制御部41は、
図10に示す自動仕訳支援システム1のシステム画面G21と一部が異なるシステム画面G31を表示している。システム画面G31とシステム画面G21との違いは、推奨勘定科目一覧F31が表示されている点である。推奨勘定科目一覧F31には、「売掛金」、「売上高」及び「先端医療事業」が示されているが、そのうちの「先端医療事業」については、「売掛金」及び「売上高」よりも文字が大きく且つ太字となっており、さらに、「NEW」と書かれた画像H31が対応付けて表示されている。
【0069】
「売掛金」及び「売上高」は既存の勘定科目であり、「先端医療事業」は新規の勘定科目である。このように、会計処理サーバ装置10の制御部11は、新規の勘定科目を既存の勘定科目とは異なる態様で表示させている。なお、制御部11は、上記の態様(文字の大きさ、太さ及び画像の付与)に限らず、例えば、文字の色、フォント及び表示する位置等の態様を異ならせてもよい。いずれの場合も、新規の勘定科目及び既存の勘定科目の態様を同じにする場合に比べて、新規の勘定科目を容易に見分けることができる。
【0070】
ユーザが推奨勘定科目一覧から勘定科目を選択するにあたり、既存の勘定科目なのか新規の勘定科目なのかが判断基準になる場合がある。そのような場合に、
図12に示す表示は、勘定科目を選択しやすくする表示となる。なお、勘定科目を選択しやすくする表示はこれに限らないので、その他の例について、以下に説明する。
【0071】
まず、会計処理サーバ装置10の制御部11は、新規の勘定科目と既存の勘定科目との類似度を算出する第1算出部ステップを実行する。制御部11は、例えば、ゲシュタルトパターンマッチング、Levenshtein距離及びJaro-winkler距離等の2つの文字列の類似度を算出するための周知技術を用いて、新規の勘定科目と既存の勘定科目との類似度を算出する。そして、制御部11は、新規の勘定科目を表示させる場合、新規の勘定科目との類似度が閾値以上である既存の勘定科目をその新規の勘定科目に対応付けて表示させるための処理を行う表示ステップを実行する。
【0072】
具体的には、制御部11は、上記の既存の勘定科目のリストに含まれない語句が抽出された場合、その語句と、既存の勘定科目のリストに含まれる各語句との類似度を算出する。制御部11は、算出した類似度が閾値以上である既存の勘定科目を、
図4に示すアクティビティA36において、新規の勘定科目に対応付けて表した推奨仕訳データを生成する。ユーザ端末40の制御部41は、生成された推奨仕訳データを表示する。
【0073】
図13は、表示された推奨仕訳データの別の一例を示す図である。ユーザ端末40の制御部41は、
図10に示す自動仕訳支援システム1のシステム画面G21と一部が異なるシステム画面G41を表示している。システム画面G41とシステム画面G21との違いは、推奨勘定科目一覧F41が表示されている点である。推奨勘定科目一覧F41には、推奨勘定科目として「売掛金」、「売上高」及び「先端医療事業」が示されている。
【0074】
制御部41は、そのうちの「先端医療事業」という新規の勘定科目J41については、「医療事業収入」、「医療事業収益」及び「医療費」という既存の勘定科目J42を対応付けて表示させている。なお、「医療事業収入」、「医療事業収益」及び「医療費」は、いずれも既存の勘定科目のリストに含まれているものとする。このような態様によれば、新規の勘定科目であっても、既存の勘定科目のうちのどのような勘定科目に近いのかということを把握することができ、類似する既存の勘定科目と照らし合わせることで、勘定科目の種類の見当をつけることができる。
【0075】
また、制御部11は、上記同様、新規の勘定科目と既存の勘定科目との類似度を算出する第1算出ステップを実行して、新規の勘定科目を表示させる場合、新規の勘定科目について算出された類似度をその新規の勘定科目に対応付けて表示させるための処理を表示ステップとして実行してもよい。具体的には、制御部11は、前述したように類似度を算出し、算出した類似度が閾値以上である既存の勘定科目を、
図4に示すアクティビティA36において、新規の勘定科目及び算出した類似度に対応付けて表した推奨仕訳データを生成する。ユーザ端末40の制御部41は、生成された推奨仕訳データを表示する。
【0076】
図14は、表示された推奨仕訳データの別の一例を示す図である。ユーザ端末40の制御部41は、
図10に示す自動仕訳支援システム1のシステム画面G21と一部が異なるシステム画面G51を表示している。システム画面G51とシステム画面G21との違いは、推奨勘定科目一覧F51が表示されている点である。推奨勘定科目一覧F51には、推奨勘定科目として「売掛金」、「売上高」及び「先端医療事業」が示されている。
【0077】
制御部41は、そのうちの「先端医療事業」という新規の勘定科目J51については、「医療事業収入」、「医療事業収益」及び「医療費」という既存の勘定科目J52と、それらについて算出された類似度J53とを対応付けて表示させている。このような態様によれば、新規の勘定科目が既存の勘定科目とどの程度類似する語句であるのかということを把握することができる。新規の勘定科目であっても、ある程度既存の勘定科目と類似しているほうが仕訳に使いやすいので、表示される類似度を、新規の勘定科目を使うか否かの判断材料にすることができる。
【0078】
なお、
図13及び
図14の例では、制御部11は、新規の勘定科目に対応付けた既存の勘定科目を表示させたが、これらの既存の勘定科目は、あくまで新規の勘定科目を選択するか否かを判断するための参考情報として表示されていた。これに限らず、制御部11は、新規の勘定科目に対応付けた既存の勘定科目を、その新規の勘定科目の代わりに選択可能な勘定科目として表示させてもよい。その場合、ユーザは、新規の勘定科目だけでなく、それに対応付けて表示されている既存の勘定科目も選択することができる(
図13の例であれば、新規の勘定科目J41を選択することもできるし、既存の勘定科目J42のいずれかを選択することもできる)。
【0079】
また、制御部11は、出力された語句の勘定科目としての確度を算出する第2算出ステップを実行してもよい。勘定科目としての確度とは、勘定科目としての確からしさを示す尺度である。制御部11は、例えば、新規の勘定科目との類似度が大きい既存の勘定科目の数が多いほど、勘定科目として確からしいものとして、勘定科目としての確度を算出する。具体的には、制御部11は、例えば、新規の勘定科目との類似度が高い方からN個(Nは自然数)の既存の勘定科目の類似度の平均値を上記の確度として算出する。なお、この算出方法は一例であり、他の方法で勘定科目としての確度が算出されてもよい。
【0080】
そして、制御部11は、新規の勘定科目を、その新規の勘定科目について算出された確度に応じた数の既存の勘定科目に対応付けて表示させる処理を行う表示ステップを実行する。具体的には、制御部11は、前述したように勘定科目としての確度を算出し、例えば、算出した確度が小さいほど、多くの既存の勘定科目を新規の勘定科目に対応付けて表した推奨仕訳データを生成する。ユーザ端末40の制御部41は、生成された推奨仕訳データを表示する。
【0081】
図15は、表示された推奨仕訳データの別の一例を示す図である。ユーザ端末40の制御部41は、
図10に示す自動仕訳支援システム1のシステム画面G21と一部が異なるシステム画面G61及びG71を表示している。システム画面G51とシステム画面G61及びG71との違いは、推奨勘定科目一覧F61及びF71が表示されている点である。推奨勘定科目一覧F61には、新規の勘定科目J61と、新規の勘定科目J61に対応付けて4つの既存の勘定科目J62とが含まれている。
【0082】
一方、推奨勘定科目一覧F71には、新規の勘定科目J71と、新規の勘定科目J71に対応付けて2つの既存の勘定科目J72とが含まれている。ここで、新規の勘定科目J61は、新規の勘定科目J71に比べて、勘定科目としての確度が小さいものとする。つまり、会計処理サーバ装置10の制御部11は、システム画面G61及びG71においては、新規の勘定科目の勘定科目としての確度が小さいほど、多くの既存の勘定科目をその新規の勘定科目に対応付けて表示させている。
【0083】
新規の勘定科目の勘定科目としての確度が小さい場合、その新規の勘定科目と類似する既存の勘定科目を多く表示することで、代わりに使用可能な勘定科目が見つけやすくなる。一方、新規の勘定科目の勘定科目としての確度が大きい場合、その新規の勘定科目と類似する既存の勘定科目を少し表示するだけで、使用可能な勘定科目が見つかる可能性が高いし、類似する既存の勘定科目を多く表示すると、かえって勘定科目の選択の判断を迷わせる余計な情報になる場合がある。
【0084】
よって、
図15に示すように既存の勘定科目の表示数を変化させることで、表示数が固定されている場合に比べて、適切な勘定科目を見つけやすいようにすることができる。なお、制御部11は、新規の勘定科目の勘定科目としての確度が大きいほど、多くの既存の勘定科目をその新規の勘定科目に対応付けて表示させてもよい。その場合、勘定科目として妥当性の高い既存の勘定科目に絞り込まれた表示がされることになりやすい。
【0085】
また、
図13から
図15まで説明した表示方法を、新規の勘定科目だけでなく、既存の勘定科目に対して適用してもよい。つまり、制御部11は、既存の勘定科目が抽出勘定科目として抽出された場合、抽出勘定科目と既存の勘定科目との類似度を算出し、抽出勘定科目との類似度が閾値以上である既存の勘定科目をその抽出勘定科目に対応付けて表示させるための処理を行ってもよい。また、制御部11は、抽出勘定科目を表示させる場合、抽出勘定科目について算出された類似度をその抽出勘定科目に対応付けて表示させるための処理を行ってもよい。
【0086】
また、制御部11は、出力された語句の勘定科目としての確度を算出し、抽出勘定科目を、その抽出勘定科目について算出された確度に応じた数の既存の勘定科目に対応付けて表示させる処理を行ってもよい。以上のとおり、
図13から
図15まで説明した表示方法を既存の勘定科目に対して適用することで、抽出された既存の勘定科目についても、勘定科目としての妥当性を判断するための参考にしたり、適切な勘定科目を見つけやすいようにしたりすることができる。
【0087】
また、AIモジュール100は、人工知能モジュールの一例として、特定の団体の既存の取引の内容とその団体が使用する勘定科目との対応を少なくとも示すデータ群を学習したモデルを有していてもよい。特定の団体とは、例えば、ユーザが所属する企業等である。このように特定の団体における取引の内容と勘定科目とを含むデータ群で学習することで、この学習がされない場合に比べて、この特定団体に所属するユーザの取引内容を入力した場合にAIモジュール100が出力する勘定科目の精度を高くすることができ、その結果、この特定団体が使用すると高い精度になる勘定科目を表示させることができる。
【0088】
<構成のバリエーション>
また、1台の装置の機能が2台以上の装置に分散して実現されてもよいし、2台以上の装置の機能が1台の装置により集中して実現されてもよい。また、1つの機能が行う動作を2以上の機能が分散して行ってもよいし、2以上の機能が1つの機能に統合されてもよい。要するに、自動仕訳支援システム1の全体で必要な各機能が実現されていれば、それらの機能を実現する装置はどのような構成であってもよい。
【0089】
図1等に示す構成(全体構成、ハードウェア構成及び機能構成等)は一例であり、実施に不都合が無い限り、他の構成を取り得る。例えば、1台の情報処理装置は、2台以上の装置に分散されてもよく、また、SaaS(Software as a Service)又はクラウドコンピューティングシステム等の形態で提供されてもよい。
【0090】
また、人工知能モジュール(AIモジュール100)は、会計処理サーバ装置10の内部構成でも外部構成でもよいし、自動仕訳支援システム1の内部構成でも外部構成でもよい。いずれの場合も、会計処理サーバ装置10の制御部11は、外部構成の人工知能モジュールに対して取引データを入力し、その人工知能モジュールの出力を取得して、仕訳支援処理を実行すればよい。
【0091】
また、1台の装置の機能が2台以上の装置に分散して実現されてもよいし、2台以上の装置の機能が1台の装置により集中して実現されてもよい。また、1つの機能が行う動作を2以上の機能が分散して行ってもよいし、2以上の機能が1つの機能に統合されてもよい。要するに、自動仕訳支援システム1の全体で必要な各機能が実現されていれば、それらの機能を実現する構成はどのような構成であってもよい。
【0092】
情報又はデータ(以下「情報等」と言う)の出力先は、他の装置、ディスプレイ、記憶部(内蔵の記憶部および外部の記憶部を含む)等であってもよい。情報等の取得には、他の装置から送信されてきた情報等を取得する態様に加え、自装置で生成された情報等を取得する態様を含む。パラメータを対応付けたテーブル等(テーブル又はデータベース等)は、図示したテーブル等に限らず、パラメータの数を少なくしたり多くしたりしてもよい。また、テーブル等を用いずに、数式または条件式等によりパラメータに応じた情報等を求めてもよい。
【0093】
上述した実施形態の態様は、会計処理サーバ装置10のような情報処理装置や、会計処理サーバ装置10を備える自動仕訳支援システム1のような情報処理システムであったが、情報処理方法であってもよい。その情報処理方法は、情報処理システムが実行する各ステップを備える。また、上述した実施形態の態様は、プログラムであってもよい。そのプログラムは、コンピュータに、情報処理システムが実行する各ステップを実行させる。
【0094】
<付記>
さらに、次に記載の各態様で提供されてもよい。
【0095】
(1)情報処理システムであって、プロセッサを備え、前記プロセッサが、取得ステップでは、取引の内容を示す取引データを取得し、入力ステップでは、取得された前記取引データを人工知能モジュールに入力し、前記人工知能モジュールは、既存の取引の内容と既存の勘定科目との対応を少なくとも示すデータ群を学習したモデルを有し、表示ステップでは、取得された前記取引データを入力された前記人工知能モジュールが前記モデルに基づき出力する語句を、勘定科目を示す語句として表示させるための処理を行い、前記勘定科目を示す語句には、前記既存の勘定科目とは異なる新規の勘定科目を示す語句が含まれ得る、情報処理システム。
【0096】
このような態様によれば、自動仕訳に勘定科目のテーブルを不要とすることができる。
【0097】
(2)上記(1)に記載の情報処理システムにおいて、前記プロセッサが、前記表示ステップでは、前記新規の勘定科目を前記既存の勘定科目とは異なる態様で表示させる、情報処理システム。
【0098】
このような態様によれば、新規の勘定科目を容易に見分けることができる。
【0099】
(3)上記(1)又は(2)に記載の情報処理システムにおいて、前記プロセッサが、第1算出ステップでは、前記新規の勘定科目と前記既存の勘定科目との類似度を算出し、前記表示ステップでは、前記新規の勘定科目を表示させる場合、当該新規の勘定科目との類似度が閾値以上である前記既存の勘定科目を当該新規の勘定科目に対応付けて表示させる、情報処理システム。
【0100】
このような態様によれば、勘定科目の種類の見当をつけることができる。
【0101】
(4)上記(1)~(3)の何れか1つに記載の情報処理システムにおいて、前記プロセッサが、第1算出ステップでは、前記新規の勘定科目と前記既存の勘定科目との類似度を算出し、前記表示ステップでは、前記新規の勘定科目を表示させる場合、当該新規の勘定科目について算出された類似度を当該新規の勘定科目に対応付けて表示させる、情報処理システム。
【0102】
このような態様によれば、新規の勘定科目を使うか否かの判断材料にすることができる。
【0103】
(5)上記(1)~(4)の何れか1つに記載の情報処理システムにおいて、前記プロセッサが、第2算出ステップでは、出力された前記語句の勘定科目としての確度を算出し、前記表示ステップでは、前記新規の勘定科目を、当該新規の勘定科目について算出された確度に応じた数の既存の勘定科目に対応付けて表示させる、情報処理システム。
【0104】
このような態様によれば、適切な勘定科目を見つけやすいようにすることができる。
【0105】
(6)上記(1)~(5)の何れか1つに記載の情報処理システムにおいて、前記人工知能モジュールは、入力された前記取引データが示す取引の内容に含まれる語句の最小単位を示す単位語句のうち、前記既存の勘定科目との関連性が高い単位語句を前記関連性の高さの順番で出力し、前記プロセッサが、前記表示ステップでは、前記人工知能モジュールが出力した単位語句を繋げた文字列を、前後の単位語句との関連性が低い箇所で分割し、前後が分割された文字列によって示される語句を勘定科目として表示させる、情報処理システム。
【0106】
このような態様によれば、勘定科目を示す1つの語句として成立する語句を表示させやすくすることができる。
【0107】
(7)上記(1)~(6)の何れか1つに記載の情報処理システムにおいて、前記人工知能モジュールは、特定の団体の既存の取引の内容と前記団体が使用する勘定科目との対応を少なくとも示すデータ群を学習したモデルを有する、情報処理システム。
【0108】
このような態様によれば、特定団体が使用すると高い精度になる勘定科目を表示させることができる。
【0109】
(8)情報処理方法であって、上記(1)~(7)の何れか1つに記載の情報処理システムの各ステップを備える、情報処理方法。
【0110】
このような態様によれば、自動仕訳に勘定科目のテーブルを不要とすることができる。
【0111】
(9)プログラムであって、コンピュータに、上記(1)~(7)の何れか1つに記載の情報処理システムの各ステップを実行させるプログラム。
【0112】
このような態様によれば、自動仕訳に勘定科目のテーブルを不要とすることができる。
もちろん、この限りではない。
また、上述した実施形態及び変形例を任意に組み合わせて実施するようにしてもよい。
【0113】
最後に、本発明に係る種々の実施形態を説明したが、これらは、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0114】
1 :自動仕訳支援システム
10 :会計処理サーバ装置
11 :制御部
20 :アグリゲーションサーバ装置
21 :制御部
30 :取引先サーバ装置
31 :制御部
40 :ユーザ端末
41 :制御部