IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

<>
  • -エッチング方法およびエッチング装置 図1
  • -エッチング方法およびエッチング装置 図2
  • -エッチング方法およびエッチング装置 図3
  • -エッチング方法およびエッチング装置 図4
  • -エッチング方法およびエッチング装置 図5
  • -エッチング方法およびエッチング装置 図6
  • -エッチング方法およびエッチング装置 図7
  • -エッチング方法およびエッチング装置 図8
  • -エッチング方法およびエッチング装置 図9
  • -エッチング方法およびエッチング装置 図10
  • -エッチング方法およびエッチング装置 図11
  • -エッチング方法およびエッチング装置 図12
  • -エッチング方法およびエッチング装置 図13
  • -エッチング方法およびエッチング装置 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025040250
(43)【公開日】2025-03-24
(54)【発明の名称】エッチング方法およびエッチング装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/302 20060101AFI20250314BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20250314BHJP
【FI】
H01L21/302 201A
H01L21/302 101B
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023147055
(22)【出願日】2023-09-11
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002756
【氏名又は名称】弁理士法人弥生特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 信博
(72)【発明者】
【氏名】今井 佑輔
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健斗
【テーマコード(参考)】
5F004
【Fターム(参考)】
5F004BA04
5F004BA19
5F004BB25
5F004BB26
5F004BD03
5F004CA02
5F004CA04
5F004DA00
5F004DA18
5F004DA23
5F004DA25
5F004DB19
5F004FA01
(57)【要約】
【課題】SiGeまたはGeを高い制御性でエッチングすることができるエッチング方法およびエッチング装置を提供する。
【解決手段】エッチング方法は、表面部分にSiGeまたはGeを有する基板をチャンバー内に設けることと、SiGeまたはGeをエッチングするためのエッチングガスを、エッチング反応が生じない第1の温度に保持された基板に供給して、基板の表面に吸着させることと、基板の温度をSiGeまたはGeとエッチングガスとの反応が生じる第2の温度にしてSiGeまたはGeをエッチングすることとを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面部分にSiGeまたはGeを有する基板をチャンバー内に設けることと、
SiGeまたはGeをエッチングするためのエッチングガスを、エッチング反応が生じない第1の温度に保持された前記基板に供給して、基板の表面に吸着させることと、
前記基板の温度を前記SiGeまたはGeと前記エッチングガスとの反応が生じる第2の温度にして前記SiGeまたはGeをエッチングすることと、
を有する、エッチング方法。
【請求項2】
前記エッチングガスを前記基板の表面に吸着させることと、前記エッチングすることと、を複数回繰り返す、請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項3】
前記エッチングガスを前記基板の表面に吸着させることの後に、前記エッチングガスを前記チャンバーから排出させることをさらに有する、請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項4】
前記エッチングガスを前記チャンバーから排出させることは、前記チャンバー内を不活性ガスでパージすることにより行われる、請求項3に記載のエッチング方法。
【請求項5】
前記エッチングすることの後に、前記エッチングすることにより生じた残留物を前記チャンバーから排出させることをさらに有する、請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項6】
前記残留物を前記チャンバーから排出させることは、前記チャンバー内を真空引きすることにより行う、請求項5に記載のエッチング方法。
【請求項7】
前記基板は、処理中にエッチングガスが接触する部分にSiが存在し、前記SiGeまたはGeを前記Siに対して選択的にエッチングする、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のエッチング方法。
【請求項8】
前記SiGeまたはGeが、SiGe膜またはGe膜であり、前記SiがSi膜である、請求項7に記載のエッチング方法。
【請求項9】
前記基板は、表面部分に前記SiGe膜と前記Si膜とが交互に積層されてなる積層構造部を有する、請求項8に記載のエッチング方法。
【請求項10】
前記エッチングガスは、フッ素含有ガスである、請求項7に記載のエッチング方法。
【請求項11】
前記フッ素含有ガスは、ClFガス、Fガス、SFガス、IFガスの少なくとも一種である、請求項10に記載のエッチング方法。
【請求項12】
前記エッチングガスとしてフッ素含有ガスを用いる場合に、前記第1の温度は-20℃以下であり、前記第2の温度は前記第1の温度よりも高い請求項10に記載のエッチング方法。
【請求項13】
前記第2の温度は常温以下である請求項12に記載のエッチング方法。
【請求項14】
前記エッチングガスを前記基板の表面に吸着させる際に、前記基板に前記エッチングガスとともに不活性ガスを供給する、請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項15】
表面部分にSiGeまたはGeを有する基板を収容するチャンバーと、
前記チャンバー内で基板を載置する載置台と、
前記チャンバー内にエッチングガスを供給するガス供給部と、
前記チャンバー内を排気する排気部と、
前記載置台上の基板の温度を調節する温調機構と、
制御部と、
を具備し、
前記制御部は、前記請求項1から請求項14のいずれか一項のエッチング方法が行われるように、前記ガス供給部と、前記排気部と、前記温調部とを制御する、エッチング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エッチング方法およびエッチング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、シリコン(Si)以外の半導体材料としてシリコンゲルマニウム(SiGe)やゲルマニウム(Ge)が注目されている。特許文献1には、このようなSiGeやGeをフッ素含有ガスと水素含有ガスを含む処理ガスを用いてSiに対して選択的にエッチングする技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-53448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、SiGeまたはGeを高い制御性でエッチングすることができるエッチング方法およびエッチング装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係るエッチング方法は、表面部分にSiGeまたはGeを有する基板をチャンバー内に設けることと、SiGeまたはGeをエッチングするためのエッチングガスを、エッチング反応が生じない第1の温度に保持された前記基板に供給して、基板の表面に吸着させることと、前記基板の温度を前記SiGeまたはGeと前記エッチングガスとの反応が生じる第2の温度にして前記SiGeまたはGeをエッチングすることと、を有する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、SiGeまたはGeを高い制御性でエッチングすることができるエッチング方法およびエッチング装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態に係るエッチング方法の具体例を示すフローチャートである。
図2】一実施形態のエッチング方法のステップST2が行われた際における基板の状態の一例を模式的に示す断面図である。
図3】一実施形態のエッチング方法のステップST3が行われた際における基板の状態の一例を模式的に示す断面図である。
図4】一実施形態のエッチング方法のステップST4が行われた際における基板の状態の一例を模式的に示す断面図である。
図5】一実施形態に係るエッチング方法におけるステップST2~ST5のプロセスシーケンスの典型例を示すタイミングチャートである。
図6】一実施形態のエッチング方法が適用される基板であるウエハの構造例を示す断面図である。
図7図6の構造のウエハにおいて、SiGe膜を部分的にエッチングした状態を示す断面図である。
図8図6の構造のウエハにおいて、SiGe膜を全てエッチングした状態を示す断面図である。
図9】一実施形態に係るエッチング方法を実施するためのエッチング装置の一例を示す断面図である。
図10】評価試験の結果を示すグラフ図である。
図11】評価試験の結果を示すSEM画像である。
図12】評価試験の結果を示すSEM画像である。
図13】評価試験の結果を示すSEM画像である。
図14】評価試験の結果を示すSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照しながら、実施形態について説明する。
【0009】
<エッチング方法>
一実施形態に係るエッチング方法においては、最初に、表面部分にSiGeまたはGeを有する基板を、エッチング処理を行うためのチャンバー内に設ける。次いで、SiGeまたはGeをエッチングするためのエッチングガスを、エッチング反応が生じない第1の温度に保持された基板に供給して、基板の表面に吸着させる。次いで、基板の温度をSiGeまたはGeとエッチングガスとの反応が生じる第2の温度にしてSiGeまたはGeをエッチングする。エッチングガスを基板の表面に吸着させることと、エッチングすることとは複数回繰り返してもよい。
【0010】
一実施形態に係るエッチング方法の具体例について図1を参照して説明する。図1は一実施形態に係るエッチング方法の具体例を示すフローチャートである。
【0011】
最初に、表面部分にSiGeまたはGeを有する基板を、エッチング処理を行うためのチャンバー内に設ける(ステップST1)。
【0012】
次に、SiGeまたはGeをエッチングするためのエッチングガスを、エッチング反応が生じない第1の温度に保持された基板に供給して、基板の表面に吸着させる(ステップST2)。
【0013】
次に、エッチングガスをチャンバーから排出させる(ステップST3)。
【0014】
次に、基板の温度をSiGeまたはGeとエッチングガスとの反応が生じる第2の温度にしてSiGeまたはGeをエッチングする(ステップST4)。
【0015】
次に、エッチングにより生じた残留物をチャンバーから排出させる(ステップST5)。
【0016】
以上のステップST2~ST5を1回または複数回の予め定められた回数行うことにより、SiGeまたはGeに対して所望の量のエッチングが行われる。
【0017】
以下、詳細に説明する。
SiGeのSiおよびGeの割合は任意であるが、Siが90at%以下であることが好ましい。また、SiGe、Geの形態は特に限定されないが、膜として形成されたものが例示され、膜としては化学蒸着(CVD)法で形成されたものが例示される。基板は特に限定されないが、半導体ウエハ(以下単にウエハと記す)が例示される。
【0018】
基板は特に限定されないが、例えば、SiGeまたはGe以外に、処理中にエッチングガスが接触する部分にSiが存在するものを挙げることができる。この場合には、SiGeまたはGeをSiに対して選択的にエッチングすることが望ましい。Siについても存在形態は特に限定されず、バルクであっても膜であってもよい。SiにはB、P、C、As等がドープされていてもよい。
【0019】
ステップST2において、基板表面にエッチングガスを含む処理ガスを供給して吸着させる際に、エッチング対象のSiGeまたはGeの表面に飽和するまでエッチングガスを吸着させる。例えば、図2に示すように、基板Wにおいて半導体基体100上に形成されたSiGe膜101の表面に飽和するまでエッチングガス102を吸着させる。このとき、基板はエッチング反応が生じない第1の温度に保持されているため、SiGe膜101は吸着されたエッチングガス102とは反応しない。処理ガスとしては、エッチングガスの他に、NガスやArガスのような不活性ガスを希釈ガスまたはキャリアガスとして含んでいてもよい。不活性ガスはパージガスとして用いることもできる。
【0020】
エッチングガスは、SiGeまたはGeをエッチングすることができれば特に限定されない。例えば、フッ素含有ガスを挙げることができる。フッ素含有ガスは、SiGeまたはGeをSiに対して高選択比でエッチングする場合に好適である。フッ素含有ガスとしては、ClFガス、Fガス、SFガス、IFガスを挙げることができ、これらの少なくとも一種を用いることができる。
【0021】
エッチングガスとしてフッ素含有ガスを用いる場合には、第1の温度を、エッチング生成物の沸点より低くすることによりエッチング反応を生じさせずにエッチングガスを吸着させることができる。エッチング生成物は、当該エッチングガスとSiGeまたはGeとの反応生成物であって、Ge及びFを含む化合物である。第1の温度が低すぎると、第1の温度と第2の温度との間で温度変更を行うために使用されるエネルギーが大きくなってしまい、また当該温度変更に要する時間も長くなってしまう。以上のようにエッチングガスを吸着させ、且つ過度の基板の冷却を避けるようにする観点から、第1の温度は、好ましくは-40℃以上、-20℃以下である。
【0022】
基板温度の制御は基板を載置する載置台に設けられた、冷却機構や加熱機構等の温調機構を用いることができる。基板を静電力で吸着する静電チャックを用いて基板を吸着することにより高精度で基板の温度制御を行うことができる。
【0023】
ステップST2を実施する際の圧力は、用いるエッチングガスに応じて適宜設定される。エッチングガスがフッ素含有ガス、例えばFガスの場合には、0.01~1Torr(1.33~133Pa)の範囲が好適である。また、ステップST2の時間は、エッチングガスがエッチング対象のSiGeまたはGeの表面に飽和するまで吸着できる時間であればよく、例えば10~300sec(秒)である。エッチングガスがフッ素含有ガス、例えばFガスの場合には、後述の試験結果で示すように30secよりも長い時間が好ましい。
【0024】
ステップST3では、エッチングガスをチャンバーから排出させることにより、ステップST2で基板の表面に吸着されたエッチングガス102のうち余分なガスが除去される。これにより、SiGeまたはGeの表面のエッチングガスの吸着量を制御することができる。図2の例の場合には、図3に示すように、SiGe膜101の表面のエッチングガス102の吸着量を例えば1原子層または1分子層に制御する。ステップST3のエッチングガス排出の手法は特に限定されないが、チャンバー内を不活性ガスでパージすることにより行うことができる。また、チャンバーを真空引きすることによりエッチングガスを排出してもよい。
【0025】
ステップST4では、ステップST3によりSiGeまたはGeの表面のエッチングガスが吸着された状態で、基板の温度を第1の温度から第2の温度に変化させ、SiGeまたはGeをエッチングする。すなわち、基板の温度を第2の温度にすることにより、SiGeまたはGeと吸着されたエッチングガスとの反応が生じる。このとき、エッチングガスを吸着させてからエッチング反応を生じさせるので、SiGeまたはGeを高い制御性でエッチングすることができる。また、ステップST3によりエッチングガスの吸着量が制御されることにより、エッチング量をより高精度に制御することができる。図3に示す例では、SiGe膜101の表面に吸着されたエッチングガス102が1原子層または1分子層に制御されており、この状態からエッチング反応が生じると、図4に示すように、SiGe膜101は、エッチングガスの吸着量に対応した分だけ高精度でエッチングすることができる。図中103は、SiGe膜101のエッチング部分である。
【0026】
エッチングガスとしてフッ素含有ガスを用いる場合には、第2の温度を、上記したエッチング生成物の沸点以上とすることによりエッチング反応を生じさせることができる。なお、ここでいう沸点は、昇華点を含む。第2の温度は、上記した第1の温度よりも高い温度であり、好ましくは-20℃以上である。
【0027】
基板温度を第1の温度から第2の温度に変更する際には、温調機構の制御温度を変更することにより対応することができる。また、載置台の温調機構の制御温度を変更せずに、載置台に対向して設けられたガス吐出部であるシャワーヘッドに設けられた温調機構を用い、載置台に設けられたリフトピンにより基板を持ち上げて基板の温度を変更するようにしてもよい。さらに、基板にガスを供給することにより基板の温度を変更することや、プラズマ生成部により生成したプラズマを用いて基板の温度を変更することも可能である。
【0028】
ステップST4を実施する際の圧力は、用いるエッチングガスに応じて適宜設定される。エッチングガスがフッ素含有ガス、例えばFガスの場合には、0.01~3Torr(1.33~400Pa)の範囲が好適である。また、ステップST4の時間は、吸着されたエッチングガスがSiGeまたはGeと適切に反応可能な時間に設定される。例えば、エッチングガスがフッ素含有ガス、例えばFガスの場合には、30secよりも長い時間が好ましい。基板がSiGeまたはGeとSiとが共存する構造を有し、SiGeまたはGeをSiに対して選択的にエッチングする場合には、ステップST4の時間はSiのエッチングが極力抑制されるように設定される。
【0029】
ステップST5は、エッチングにより生じた残留物をチャンバーから排出することができればその手法は限定されない。例えば、チャンバー内を真空引きすることにより行うことができる。チャンバー内を不活性ガスでパージした後に真空引きを行ってもよい。
【0030】
このようなステップST2~ST5のプロセスシーケンスの典型例は図5のタイミングチャートに示す通りである。図5のプロセスシーケンスでは、ステップST2で基板を第1の温度に保持した状態でエッチングガスをONにしてエッチングガスの吸着を行う。ステップST3ではエッチングガスをOFFとしパージガスをONにしてチャンバー内のパージを行う。ステップST4では基板の温度を第2の温度に上昇させてエッチング反応を進行させる。ステップST5ではチャンバー内を真空引きしてチャンバー内の残留物を除去する。
【0031】
次に、一実施形態のエッチング方法の適用例について説明する。
図6は、一実施形態のエッチング方法が適用される基板であるウエハの構造例を示す断面図である。図6のウエハWは、例えばSiからなる半導体基体100の表面に、SiGe膜111と、Si膜112とが交互に積層された積層構造部113を有している。積層構造部113にはプラズマエッチングにより凹部114が形成されており、凹部114には交互に積層されたSiGe膜111とSi膜112の側面が露出している。
【0032】
図6のウエハWに対し、Fガスのようなフッ素含有ガスを用いて上述のようなステップST2~ST5を繰り返し実施することにより、図7に示すように、SiGe膜111がサイドエッチングされ、SiGe膜111がSi膜112に対して選択的にエッチングされる。図7ではSiGe膜111が部分的にエッチングされている状態を示しているが、図8のように全てエッチングされてもよい。全てエッチングされても、残存するSi膜112はSiN等からなる支持柱115により支持される。
【0033】
本実施形態では、基板の表面にエッチングガスを吸着させた後に吸着量を制御し、基板の温度を第1の温度から第2の温度にしてエッチング反応を生じさせる処理を行うことにより、基板の表面に存在するSiGeまたはGeを高い制御性でエッチングすることができる。
【0034】
すなわち、本実施形態では、SiGeまたはGeの表面のエッチングガスの吸着量を制御した後に温度を変化させエッチング反応を進行させるので、一回のエッチング量は吸着したエッチングガスに対応した微量となり、高い制御性でエッチングすることができる。そして、ステップST2~ST5を1回または複数回行うことにより、所望のエッチング量でエッチングを行うことができる。具体的には、エッチングの際のラフネス制御が可能であり、微量のエッチング量制御も可能である。また、粗密パターンにおけるローディングや、トップ/ボトムのローディングを抑制することも可能である。
【0035】
<エッチング装置>
次に、実施形態に係るエッチング方法を実施するためのエッチング装置の一例について説明する。図9は、エッチング装置の一例を示す断面図である。
図9に示すように、エッチング装置1は、密閉構造のチャンバー10を備えている。チャンバー10の内部には、基板Wを水平状態で載置する載置台12が設けられている。基板Wは表面にSiGeまたはGeを有するものであり、例えば、図6の構造を有している。また、エッチング装置1は、チャンバー10にエッチングガスを供給するガス供給機構13、チャンバー10内を排気する排気機構14、および制御部15を備えている。
【0036】
チャンバー10は、チャンバー本体21と蓋部22とによって構成されている。チャンバー本体21は、略円筒形状の側壁部21aと底部21bとを有し、上部は開口となっており、この開口が蓋部22で閉止される。側壁部21aと蓋部22とは、シール部材(図示せず)により密閉されて、チャンバー10内の気密性が確保される。
【0037】
蓋部22は、外側を構成する蓋部材25と、蓋部材25の内側に嵌め込まれ、載置台12に臨むように設けられたシャワーヘッド26とを有している。シャワーヘッド26は円筒状をなす側壁27aと上部壁27bとを有する本体27と、本体27の底部に設けられたシャワープレート28とを有している。本体27とシャワープレート28との間には空間29が形成されている。
【0038】
蓋部材25および本体27の上部壁27bには空間29まで貫通してガス導入路31が形成されており、このガス導入路31には後述するガス供給機構13の配管49が接続されている。
【0039】
シャワープレート28には複数のガス吐出孔32が形成されており、配管49およびガス導入路31を経て空間29に導入されたガスがガス吐出孔32からチャンバー10内の空間に吐出される。
【0040】
側壁部21aには、基板Wを搬入出する搬入出口23が設けられており、この搬入出口23はゲートバルブ24により開閉可能となっている。
【0041】
載置台12は、平面視略円形をなしており、チャンバー10の底部21bに固定されている。載置台12の内部には、載置台12の温度を調節し、その上に載置された基板Wの温度を制御する温調機構35が設けられている。温調機構35は、例えば、低温の冷却媒体が循環する管路およびヒータを有しており、基板Wを温調可能となっている。載置台12は基板Wを静電力で吸着する静電チャックが設けられていてもよい。基板Wを吸着することにより温調機構35により高精度で基板Wの温度制御を行うことができる。載置台12は、基板Wを搬送する際に用いるリフトピン(図示せず)が内蔵されている。
【0042】
基板温度の第1の温度から第2の温度への変更は、温調機構35の制御温度を変更することにより行うことができる。また、載置台12の温調機構35の制御温度を変更せずに、載置台12に対向して設けられたシャワーヘッド26に温調機構を設け、載置台12に設けられたリフトピン(図示せず)により基板Wを持ち上げて基板の温度を変更するようにしてもよい。さらに、基板Wにガスを供給することにより基板Wの温度を変更することや、適宜のプラズマ生成部を設けて基板にプラズマを作用させることより基板Wの温度を変更することも可能である。
【0043】
ガス供給機構13は、エッチングガスを含む処理ガスを供給するものであり、本例ではエッチングガスとしてフッ素含有ガスであるFガスを供給する。また、処理ガスとしてはエッチングガスの他、不活性ガスを供給する。本例では不活性ガスとしてNガスを供給する。不活性ガスは、キャリアガス、希釈ガス、パージガスとして用いられる。具体的には、ガス供給機構13は、エッチングガスであるFガスを供給するFガス供給源45、不活性ガスであるNガスを供給するNガス供給源46を有しており、これらにはそれぞれ、Fガス供給配管41、Nガス供給配管42の一端が接続されている。Fガス供給配管41およびNガス供給配管42の他端は、共通の配管49に接続され、配管49が上述したガス導入路31に接続されている。Fガス供給配管41、Nガス供給配管42には、それぞれ、流路の開閉動作および流量制御を行う流量制御部41a、42aが設けられている。流量制御部41a、42aは例えば開閉弁およびマスフローコントローラのような流量制御器により構成されている。
【0044】
したがって、エッチングガスであるFガス、不活性ガスであるNガスは、各ガス供給源45、46から配管41、42、49を経てシャワーヘッド26内に供給され、シャワープレート28のガス吐出孔32からチャンバー10内へ吐出される。
【0045】
排気機構14は、チャンバー10の底部21bに形成された排気口51に繋がる排気配管52を有しており、さらに、排気配管52に設けられた、チャンバー10内の圧力を制御するための自動圧力制御弁(APC)53およびチャンバー10内を排気するための真空ポンプ54を有している。
【0046】
チャンバー10の側壁には、チャンバー10内の圧力を計測するための圧力計として高圧用および低圧用の2つのキャパシタンスマノメータ56a,56bが、チャンバー10内に挿入されるように設けられている。キャパシタンスマノメータ56a,56bの検出値に基づいて、自動圧力制御弁(APC)53の開度が調整され、チャンバー10内の圧力が制御される。
【0047】
制御部15は、典型的にはコンピュータからなり、エッチング装置1の各構成部を制御するCPUを有する主制御部を有している。また、制御部15は、主制御部に接続された、入力装置(キーボード、マウス等)、出力装置(プリンタ等)、表示装置(ディスプレイ等)、記憶装置(記憶媒体)をさらに有している。制御部15の主制御部は、例えば、記憶装置に内蔵された記憶媒体、または記憶装置にセットされた記憶媒体に記憶された処理レシピに基づいて、エッチング装置1の動作を制御する。
【0048】
このようなエッチング装置1においては、基板Wをチャンバー10内に搬入し、載置台12に載置する。載置台12は温調機構35により温調され、基板Wの温度はエッチング反応が生じない第1の温度とされる。第1の温度は、載置台12の温調機構35により、エッチング生成物の沸点より低い温度、好ましくは-40℃~-20℃とされる。チャンバー10内の圧力は、例えば0.01~1Torr(1.33~133Pa)の範囲の圧力に制御される。
【0049】
この状態で、エッチングガスとしてのフッ素含有ガスであるFガスを含む処理ガスをチャンバー10内に供給する。これにより、第1の温度に保持された基板Wの表面にフッ素含有ガスであるFガスが吸着される。このとき、処理ガスとしてFガス以外に不活性ガスであるNガスを供給してもよい。Fガスの吸着処理は、基板Wの表面に存在するエッチング対象であるSiGeまたはGeの表面に飽和するまで行われる。この際の時間は、30secよりも長い時間が好ましい。
【0050】
次に、Fガスを停止し、例えば、Nガスをチャンバー10内に供給して、チャンバー10内をパージすることにより、基板Wに吸着されたFガスをチャンバー10から排出させ、Fガスの吸着量を制御する。
【0051】
次に、基板Wの温度を第1の温度から第2の温度に上昇させて、基板WのSiGeまたはGeと吸着されたエッチングガスとの反応を生じさせ、SiGeまたはGeのエッチングを進行させる。第2の温度は、エッチング生成物の沸点以上とされ、好ましくは-20℃以上とされる。チャンバー10内の圧力は、例えば0.01~3Torr(1.33~400Pa)の範囲の圧力に制御される。
【0052】
このとき、基板温度の第1の温度から第2の温度への変更は、上述したように、温調機構35の制御温度を変更することにより行うことができる。また、上述のように、温調機構35の制御温度を変更せずに、基板Wをリフトピンで持ち上げたり、基板Wにガスを供給したり、プラズマを用いたりして基板Wの温度を変更するようにしてもよい。この際のエッチング時間は、30secよりも長い時間が好ましい。図6に示すように、基板WがSiGeまたはGeとSiとが共存する構造を有する場合には、Siのエッチングが極力抑制されるように設定される。
【0053】
次に、チャンバー10内を排気機構14により真空排気して、エッチングにより生じた残留物をチャンバーから排出する。
【0054】
以上の処理を1回または複数回の予め定められた回数行うことにより、SiGeまたはGeに対して所望の量のエッチングを実施する。エッチングが終了後、基板Wをチャンバー10から搬出する。
【0055】
ところでエッチング装置1では、1つのチャンバー10内で基板Wの温度を変更することによって処理を行う。従って、温調機構35により基板Wの温度を変更して処理を行うにあたり、第2の温度が高すぎる場合は、1つの基板WをステップST2~ST5の繰り返しによって処理したり、複数の基板Wを順次チャンバー10に搬入して処理したりする上で、第1の温度で基板Wを処理可能となるまでの時間が長くなってしまう。つまり、第2の温度で基板Wを処理後、第1の温度で基板Wを処理するためのチャンバー10内の各部の冷却に長い時間を要してしまう。その冷却時間の長さに起因するスループットの低下を防ぎつつエッチング生成物を気化させる観点から、これまでに述べた第2の温度は例えば常温以下とすることが好ましく、より具体的には例えば5℃以下とすることが好ましい。従って、第2の温度は例えば-20℃~5℃とする。上記の常温はエッチング装置1が配置されるクリーンルームの温度であり、例えば24℃である。
【0056】
なお、第1の温度、第2の温度について、エッチング生成物の沸点に対する差が僅かにあればよく、例えば第1の温度を当該沸点の-1℃以下、第2の温度を当該沸点の+1℃以下とする(従って、第1の温度と第2の温度との差を2℃以下にする)。このように、第1の温度および第2の温度をエッチング生成物の沸点近傍にそれぞれ設定することで、第1、第2の温度間で速やかに温度調整できるようにしてもよい。
【0057】
このように第1の温度及び第2の温度はエッチング生成物の沸点を基準にして設定することができる。この沸点について、反応によって生じるエッチング生成物の物質が明らかな場合は、第2の温度になるように基板Wを昇温させる際におけるチャンバー10内の圧力での当該物質の沸点とすればよい。エッチング生成物の物質が不明であってもエッチング装置1で基板Wの処理前に予備試験を行うことで、当該沸点を決めることができる。予備試験としてはチャンバー10内の圧力を実際の基板Wの処理時に第2の温度に昇温させる際の圧力とし、充分に冷却されると共にエッチングガスが供給された基板Wを昇温させてエッチング反応させる。このエッチング反応したと認められる時の温度を沸点とすればよい。
【0058】
<エッチング装置の他の例>
ところでエッチング装置の他の例であるエッチング装置1Aについて以下に述べる。エッチング装置1Aは、ステップST2、ST3を実施する第1モジュールと、ステップST4、ST5を実施する第2モジュールと、を備える。第1モジュールはエッチング装置1と同様の構成であり、第2モジュールは、エッチングガスの供給が行われないことを除いてエッチング装置1と同様の構成である。従ってエッチング装置1Aは、基板Wを第1の温度で処理するチャンバー10と、基板Wを第2の温度で処理するチャンバー10と、を個別に備える。
【0059】
そしてエッチング装置1Aは、第1モジュールのチャンバー10と第2モジュールのチャンバー10とを接続して真空雰囲気が形成される基板Wの搬送路、及びこの搬送路を移動可能な搬送機構を備える。搬送機構によって基板Wがチャンバー10間を繰り返し往復移動することで、ステップST2~ST5からなるサイクルが繰り返し行われる。このように1つのチャンバー10内において基板Wを第1の温度と第2の温度との間で変更する必要が無い装置構成としてもよい。なお、以上に説明した装置構成であるために、エッチング装置1Aでもエッチング装置1と同じく、上記のサイクルが繰り返される間、基板Wの周囲を真空雰囲気に保つことができる。ところで上記のステップST5の真空引きについて補足しておくと、そのようにステップST2~ST5において例えば基板Wの周囲は真空雰囲気とされることで処理が行われる。ステップST5の真空引きは、ステップST2~ST4に比べて基板Wの周囲に高い真空度の雰囲気が形成されるようにチャンバー10内が排気されることで行われる。
【0060】
〈その他〉
例えばエッチングガスを第1の温度の基板Wに吸着させるステップST2を行った後、パージや排気によって基板Wの表面から当該表面に吸着されていない余分なエッチングガスを除去するステップST3が行われずに、ステップST4の基板Wを第2の温度にすることでのエッチングが行われてもよい。チャンバー10に供給するエッチングガスの供給量については、例えばエッチング対象のSiGe膜表面への吸着が飽和し、且つ表面の各部での吸着量のばらつきが抑えられるように、事前に実験等を行うなどして、適量となるように決めておく。ただし吸着量のばらつきがより確実に抑えられるようにしてSiGe膜表面の各部でエッチング量がばらつくことを抑えるために、ステップST3を行うことが有効である。
【0061】
<他の適用>
以上、実施形態について説明したが、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲およびその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0062】
例えば、図6に示す基板の構造例はあくまで例示であり、表面部分にSiGeまたはGeを有する基板であれば適用可能である。また、上記エッチング装置の構造についても例示に過ぎず、種々の構成の装置を用いることができる。また、基板として半導体ウエハを用いた場合について示したが、半導体ウエハに限らず、LCD(液晶ディスプレイ)用基板に代表されるFPD(フラットパネルディスプレイ)基板や、セラミックス基板等の他の基板であってもよい。
【0063】
[評価試験]
以下、本開示におけるエッチング方法に関して行われた評価試験について説明する。
【0064】
<評価試験1>
評価試験1として、平坦な表面にSiGe膜が形成された複数のウエハに対して、エッチング装置1Aを用いて本開示のエッチング処理を行い、当該SiGe膜のエッチング量を測定した。エッチング処理については、ウエハ毎にステップST2~ST5のサイクルを実施する回数(以下、サイクル数と記載する)及びステップST2の実施時間(即ち、エッチングガスの供給時間)の組み合わせを変更して行った。
【0065】
評価試験1-1として、エッチングガスの供給時間を30sec、サイクル数を1回、2回または5回とした。そして、ステップST2、ST3におけるウエハの第1温度を上記した実施形態で説明した好ましい範囲内の温度とした。ステップST3として、ウエハが載置台12に載置される状態でチャンバー10内を120sec排気し、そのうちの60secチャンバー10内へ、Nガス及びArガスの混合ガスであるパージガスの供給を行った。ステップST4、ST5の合計時間は300secとし、このST4、ST5におけるウエハの温度は、190℃となるようにした。なお、そのように実施形態で例示した温度よりも高い温度でウエハを加熱するのは、評価試験1-1~1-4(1-2~1-4については後述)の間でのエッチングガスの供給時間の違いによる影響を正確に検証する目的で、エッチング生成物がウエハから確実に除去されるようにするためである。
【0066】
評価試験1-2、1-3では、共にエッチングガスの供給時間を90secとした。サイクル数について、評価試験1-2では1回、2回、4回または8回であり、評価試験1-3では1回、2回または5回である。評価試験1-4ではエッチングガスの供給時間を120secとし、サイクル数を1回、2回または5回とした。評価試験1-2~1-4の上記以外の試験条件は、評価試験1-1と同一に設定した。
【0067】
図10は、評価試験1の結果を示すグラフであり、サイクル数に対するエッチング量の変化を示している。グラフの縦軸にはエッチング量の測定値を所定の値で除すことによって規格化した値を示しており、グラフの横軸はサイクル数を示している。グラフ中には評価試験1-1~1-4の測定結果をプロットして示すと共に、評価試験1-1~1-4の各々について測定結果から算出した近似直線を、互いに異なる線種で表示している。グラフから明らかなように評価試験1-1~1-4のエッチング量は、概ねサイクル数に比例して増加する。また、評価試験1-1~1-4において、サイクル数が1回である場合の規格化されていないエッチング量については、1Å程度であった。このような結果から本開示のエッチング方法によれば、SiGe膜をごく微量にエッチングすることができ、且つエッチング量をサイクル数で調整できることが分かった。
【0068】
また、評価試験1-2~1-4間では近似直線に差異がほとんど無い。即ち、サイクル数に対するエッチング量の関係について、概ね一致している。しかし、評価試験1-1の近似直線は、評価試験1-2~1-4の近似直線よりも傾きが小さい。以上のことから、エッチングガスの供給時間が30secである評価試験1-1では、エッチングガスのSiGe膜の表面への吸着が飽和しなかった、即ちSiGe膜の表面の一部がエッチングガスに覆われずに、露出した状態となっていたと推定される。一方、エッチングガスの供給時間が90sec以上である評価試験1-2~1-4では当該吸着が飽和した、即ちエッチングガスがSiGe膜の表面全体に吸着して被覆したと推測される。吸着が飽和しないと、エッチング対象となる膜の各部でエッチング量がばらつくおそれが有るため、この評価試験1からはエッチングガスの供給時間としては30secよりも長いことが好ましく、90sec以上であることがより好ましいことが分かる。
【0069】
<評価試験2>
評価試験2では、図6に示すような表面部分にSiGe膜とSi膜とが交互に設けられた積層部が形成された基板を用意して試験を行った。この積層部においてSiGe膜は互いに離れて3段に形成されており、各段のSiGe膜の上側及び下側はSi膜に接している。そして、各SiGe膜の側面は概ね平坦であると共に、基板の面方向に対して概ね垂直に形成されている。このような基板に対し、本開示のエッチング処理と、後述する比較例のエッチング処理とを行い、エッチング処理の前後で取得したSEM画像を比較した。詳しく述べるとSEM画像より、SiGe膜間におけるエッチングの違い、各段のSiGe膜のエッチングによって形成される凹部の矩形性について検証した。さらに、各SiGe膜における異なる高さ位置の横方向のエッチング量を測定し、ばらつきを算出した。
【0070】
なお上記の凹部の矩形性が高いことについて補足して述べると、この凹部について、仮にSiGe膜の側面に対して、当該SiGe膜の上側のSi膜の下面、当該SiGe膜の下側のSi膜の上面が各々直交していることで形成されているとする。そのような凹部を基準の凹部とすると、矩形性が高いとは実際に形成される凹部の形状が、基準の凹部の形状に近似することであるので、SiGe膜の側面の高さ方向におけるエッチングの均一性が高いことでもある。それ故に、この矩形性に関して高いことが望まれる。
【0071】
評価試験2-1では比較例のエッチングを行った。この比較例のエッチングについては本開示のエッチングとは異なり、ステップST2のエッチングガスの供給中に当該エッチングガスとSiGe膜とが反応してエッチング生成物が生成するように、基板の温度を比較的高い温度に設定した。つまり、基板を第1の温度として例示した範囲よりも高い温度にして、エッチングガスの供給を行った。評価試験2-2では、図1で説明したエッチングを行った。評価試験2-1、2-2間で、上記した基板の温度以外の各処理条件は同じである。
【0072】
図11図12は、評価試験2-1のエッチング処理後の基板のSEM画像であり、図12図11の画像の一部を拡大したものである。これらの画像に示されるように各SiGe膜の側面は、各膜の積層方向(基板の厚さ方向)における中央部分が他の部分よりも大きくエッチングされており、既述した矩形性については高くなかった。そして、2段目のSiGe膜のエッチング量が1、3段目のSiGe膜のエッチング量より少なかった。
【0073】
エッチング量の平均値を規格化した値は、1.0であった。また、算出されたエッチング量のばらつきについて述べると、3σ(単位:nm)を規格化した値は1.76であり、3σ%は75.6%であった。なお、3σ(単位:nm)=3×σ(σはエッチング量の標準偏差)である。また、3σ%=3σ(単位:nm)/エッチング量の平均値×100である。従って、3σ(単位:nm)を規格化した値、及び3σ%の値が小さいほど、エッチング量のばらつきは小さい。
【0074】
図13図14は、評価試験2-2のエッチング処理後の基板のSEM画像であり、図14図13の画像の一部を拡大したものである。これらの画像に示されるように各SiGe膜の側面は比較的平坦であるため、既述した矩形性が良好であった。そして、1段目~3段目のSiGe膜で概ねエッチング量が揃っていた。エッチング量の平均値を規格化した値は、1.04であった。また、算出されたエッチング量のばらつきについて述べると、3σ(単位:nm)を規格化した値は0.3であり、3σ%は27.5%であった。
【0075】
以上のように評価試験2-1、2-2間で、エッチング量の平均値が略同じとなるようにエッチングが行われるにあたって、評価試験2-2の方が、同じSiGe膜の面内、高さが異なるSiGe膜間の各々に関して、エッチング量のばらつきが抑えられたことが確認された。そして、エッチングによって形成される空間の矩形性について評価試験2-2の方が高く、また、評価試験2-2の方が基板の上方側に形成された膜(トップ)と下方側に形成された膜(ボトム)との間のローディング(エッチングレートの差)について抑制されることが示された。このような結果となったのは、評価試験2-2では、図2図4で説明したようにエッチングガスがSiGe膜の表面に均一性高く残った状態で反応が進行したことによって、1サイクルにおけるエッチング量が各部で揃ったことによると考えられる。また、そのように図2図4のように反応が進行すると予想されることから、本開示のエッチング方法によれば、エッチング対象の膜がパターンを形成し、このパターンの粗密性が基板の各部で異なったとしても、ローディングを抑えて各部を均一性高くエッチングできることが推定される。
【符号の説明】
【0076】
1;エッチング装置
10;チャンバー
12;載置台
13;ガス供給機構
14;排気機構
26;シャワーヘッド
35;温調機構
100;半導体基体
101,111;SiGe膜
102;エッチングガス
112;Si膜
114;凹部
W;半導体ウエハ(基板)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14