(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025004028
(43)【公開日】2025-01-14
(54)【発明の名称】ロボット手術用の滅菌コンソール及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
A61B 34/37 20160101AFI20250106BHJP
【FI】
A61B34/37
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024163661
(22)【出願日】2024-09-20
(62)【分割の表示】P 2020564356の分割
【原出願日】2019-05-17
(31)【優先権主張番号】102018000005471
(32)【優先日】2018-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(71)【出願人】
【識別番号】518132307
【氏名又は名称】メディカル・マイクロインストゥルメンツ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】MEDICAL MICROINSTRUMENTS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 和久
(72)【発明者】
【氏名】マッシミリアーノ・シミ
(72)【発明者】
【氏名】ジュゼッペ・マリア・プリスコ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】外科医が快適な姿勢で手術できるようにすると同時に、ロボット手術中に患者とロボット部品の安全性を向上させるのに適した、ロボット手術用の滅菌コンソールを提供する。
【解決手段】機械的に接地されておらず、手術中に外科医によって手持ちされるのに適したマスター入力ツール306を備える滅菌コンソール302と、手術中に外科医が着座するための着座面を有する手術用椅子309と、所定の追跡ボリューム308内のマスター入力ツール306の位置及び向きを検出するのに適した追跡システムと、マスター入力ツールが手持ちされていないときに、その上に置かれるように支持を提供するツール支持要素324と、患者の解剖学的構造で手術するように設計された手術器具を有するスレーブロボットアセンブリと、制御ユニットとを備える。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
手動指令を検出するのに適したロボット手術システム(301)用の滅菌コンソール(302)であって、
機械的に接地されておらず、手術中に外科医に手持ちされるのに適した少なくとも1つのマスター入力ツール(306)と、
手術中に外科医がその上に着座するための少なくとも1つの着座面(310)を有する少なくとも1つの手術用椅子(309)と、
所定の追跡ボリューム(308)内の前記少なくとも1つのマスター入力ツール(306)の位置及び向きを検出するのに適した少なくとも1つの追跡システムと、
外科医が前記少なくとも1つのマスター入力ツール(306)を手持ちしていないときに、前記少なくとも1つのマスター入力ツール(306)がその上に置かれるように支持を提供する少なくとも1つのツール支持要素(324)と、
を備え、
前記少なくとも1つのマスター入力ツール(306)が、それに取り付けられた少なくとも1つの第1の参照フレーム(X1,Y1,Z1;X2,Y2,Z2)を規定し、
前記追跡システムは、それに取り付けられた第2の参照フレーム(X0、Y0、Z0)を規定するフィールドジェネレータ(307)を含み、
前記追跡ボリューム(308)は、前記追跡システムの前記フィールドジェネレータ(307)と一体であり、
前記追跡システムによって検出された位置及び向きは、前記第2の参照フレーム(X0、Y0、Z0)に対する前記少なくとも1つの第1の参照フレーム(X1、Y1、Z1;X2、Y2、Z2)の位置及び向きであり、それによって、前記ロボット手術システム(301)の制御ユニット(305)は、前記追跡ボリューム(308)内の前記少なくとも1つのマスター入力ツール(306)の前記位置及び向きに関する情報を受信するのに適しており、また、前記少なくとも1つの手術器具(304)を作動させるように、指令信号をスレーブロボットアセンブリ(303)に送信するのに適しており、
前記追跡システムの前記フィールドジェネレータ(307)は、前記手術用椅子(309)の一部と一体であり、それによって、外科医が前記手術用椅子(309)の前記着座面(310)に着座し、前記少なくとも一つのマスター入力ツール(306)を手持ちしたとき、前記マスター入力ツール(306)は、前記追跡ボリューム(308)内に位置し、その位置及び向きは、前記追跡システムによって検出可能である、
滅菌コンソール(302)。
【請求項2】
前記手術用椅子(309)の前記着座面(310)は、実質的に垂直な回転軸(V-V)を中心に旋回可能であり、また、前記追跡システムの前記フィールドジェネレータ(307)は、前記着座面(310)と一体であり、それによって、前記着座面(310)が前記実質的に垂直な回転軸(V-V)を中心に旋回している間に、前記追跡ボリューム(308)は、前記滅菌コンソール(302)の前記手術用椅子(309)の前記着座面(310)と一体である、
請求項1に記載の滅菌コンソール(302)。
【請求項3】
前記手術用椅子(309)は、前記着座面(310)と一体の着座下部支持部分(315)と、着座下部支持部分(315)に構造的支持を提供する椅子基部構造(314)とを備え、
前記着座下部支持部分(315)は、前記椅子基部構造(314)に対して、実質的に垂直な回転軸(V-V)を中心に旋回可能であり、
前記フィールドジェネレータ(307)は、前記着座下部支持部分(315)と一体であり、それによって、追跡ボリューム(308)は、前記滅菌コンソール(302)の前記手術用椅子(309)の前記着座面(310)が前記実質的に垂直な回転軸(V-V)を中心に旋回している間に、前記着座面(310)と一体である、
請求項1又は2に記載の滅菌コンソール(302)。
【請求項4】
前記手術用椅子(309)の前記着座面(310)を覆う滅菌ドレープ(361)を備える、請求項1から3のいずれか1項に記載の滅菌コンソール(302)。
【請求項5】
前記手術用椅子(309)は、前記手術用椅子(309)に、好ましくは、前記手術用椅子(309)の前記着座下部支持部分(315)に、前記実質的に垂直な回転軸(V-V)を中心に回転する機能を提供する座席調整装置(322)を備える、請求項1から4のいずれか1項に記載の滅菌コンソール(302)。
【請求項6】
前記手術用椅子(309)の前記着座面(310)は、高さが調整可能である、請求項1から5のいずれか1項に記載の滅菌コンソール(302)。
【請求項7】
前記椅子基部構造(314)は、少なくとも1つの接地ホイール(323)を有する、 請求項1から6のいずれか1項に記載の滅菌コンソール(302)。
【請求項8】
ロック装置(329)を備え
前記ロック装置(329)は、前記手術用椅子(309)の少なくとも1つの前記接地ホイール(323)によって提供される少なくとも運動自由度を選択的にブロックするのに適している、
請求項6に記載の滅菌コンソール(302)。
【請求項9】
前記手術用椅子(309)は、前記手術アリーナ(333)内の前記着座面(310)と実質的に同一平面上における少なくとも一方向に、及び/又は水平面若しくはサブ水平面における方向に移動可能である、請求項1から8のいずれか1項に記載の滅菌コンソール(302)。
【請求項10】
前記少なくとも1つのマスター入力ツール(306)は、ツール有線接続(330)によって前記手術用椅子(309)に動作可能に接続されており、及び/又は、
前記マスター入力ツール(302)は、持針器又はピンセットなどの手動顕微手術器具の形状及びサイズを有する、
請求項1から9のいずれか1項に記載の滅菌コンソール(302)。
【請求項11】
前記ツール支持要素(324)は、前記手術用椅子(309)の一部と一体であり、それによって、外科医が前記手術用椅子(309)の前記着座面(310)に着座したとき、外科医自身は、手動で少なくとも1つのマスター入力ツール(306)を、前記ツール支持要素(324)上に置くことができ、及び/又は、
前記ツール支持要素(324)が前記マスター入力ツール(306)を支持しているとき、前記追跡システムによって検出された前記マスター入力ツール(306)の位置及び向きは、前記手術用椅子(309)が移動され、例えば、前記スレーブロボットアセンブリ(303)に関して回転された場合にも変化しないままで維持することができ、及び/又は、
前記手術用椅子(309)は、外科医が前記手術用椅子(309)に着座したことを検出する少なくとも1つの着座検出器(328)を備え、及び/又は、
前記着座検出器(328)は、外科医が前記手術用椅子(309)に着座したときに前記手術器具(304)を作動させるために、及び/又は、外科医が前記手術用椅子(309)に着座していないときに前記手術器具(304)を作動させないようにするために、所定の指令信号を前記スレーブロボットアセンブリ(303)に送信するように、前記制御ユニット(305)と協働し、及び/又は、
前記手術用椅子(309)は、前記手術用椅子(309)の少なくとも1つの運動自由度を選択的にブロックするのに適した少なくとも1つのロック装置を備え、前記少なくとも1つの着座検出器( 328)が前記手術用椅子(309)に着座している外科医を検出したときに、前記少なくとも1つのロック装置(329)は、前記手術用椅子(309)の前記少なくとも1つの運動自由度をブロックするように、前記前記少なくとも1つの着座検出器(328)と協働し、及び/又は、
前記手術用椅子(309)は、前記着座面(310)に関して互いに対向的に配置された一対の対向する肘掛けアセンブリ(317L、317R)を備え、
前記肘掛けアセンブリ(317L、317R)のうちの少なくとも1つは、ユーザインターフェース又はタッチスクリーンの一部を示すディスプレイ(321)を備え、及び/又は、
前記肘掛けアセンブリ(317L、317R)のうちの少なくとも1つは、丸みを帯びた形状を有し、及び/又は、
前記肘掛けアセンブリ(317L、317R)のうちの少なくとも1つは、マスター入力ツール(306)がその上に置かれるように支持を提供する前記少なくとも1つのツール支持要素(324)を備え、前記ツール支持要素は、前記肘掛け要素(320)に一体的に接続され、及び/又は、
前記ツール支持要素(324)は、ツール収容部(325)を規定するカップ形状の本体を有し、及び/又は、
前記ツール支持要素(324)は、前記マスター入力ツールがそれに吊るされるように規定するフック形状の本体を有し、及び/又は、
前記ロック装置(329)は、前記肘掛け調整装置(319)によって提供される少なくとも運動自由度を選択的にブロックし、及び/又は、
前記ツール支持要素(324)は、前記手術用椅子(309)の一部と一体であり、それによって、外科医が前記手術用椅子(309)の前記着座面(310)に着座したとき、外科医自身は、手動で前記少なくとも1つのマスター入力ツール(306)を、前記ツール支持要素(324)上に置くことが可能であり、及び/又は、
前記ツール支持要素(324)が前記マスター入力ツール(306)を支持しているとき、前記追跡システムによって検出された前記マスター入力ツール(306)の位置及び向きは、前記手術用椅子(309)が前記スレーブロボットアセンブリ(303)に関して移動された場合にも、変更されないままで維持することが可能であり、及び/又は、
前記手術用椅子(309)は、前記制御ユニット(305)を備え、及び/又は、
前記滅菌コンソール(302)は、少なくとも1対のマスター入力ツール(306)を備える、
請求項1から10のいずれか1項に記載の滅菌コンソール(302)。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載の滅菌コンソール(302)と、
患者の解剖学的構造(337)で手術するように設計された少なくとも1つの手術器具(304)を備える少なくとも1つのスレーブロボットアセンブリ(303)と、
前記追跡ボリューム(308)内の前記少なくとも1つのマスター入力ツール(306)の前記位置及び向きに関する情報を受信するのに適しており、且つ、前記少なくとも1つの手術器具(304)を作動させるために、指令信号を前記スレーブロボットアセンブリ(303)に送信するのに適している制御ユニット(305)と、
を備える、
ロボット手術システム(301)。
【請求項13】
前記手術用椅子(309)は、前記制御ユニット(305)を備え、及び/又は、
前記手術用椅子(309)は、椅子有線接続(312)によって前記スレーブロボットアセンブリ(303)に動作可能に接続され、及び/又は、
前記手術用椅子(309)は、椅子無線接続(313)によって前記スレーブロボットアセンブリ(303)に動作可能に接続され、及び/又は、
請求項12に記載のロボット手術システム(301)。
【請求項14】
請求項1から11のいずれか1項に記載の滅菌コンソール(302)と、
患者の解剖学的構造(337)で手術するように設計された少なくとも1つの手術器具(304)を備える少なくとも1つのスレーブロボットアセンブリ(303)と、
手術アリーナ(333)内に配置され、手術中に患者の解剖学的構造(337)がその上に静置されるように支持を形成する患者支持構造(336)と、
を備える、
手術アリーナ(333)。
【請求項15】
外科医(332)に手術を示す手術ビジョンアセンブリ(338)を更に備え、及び/又は、
前記手術ビジョンアセンブリ(338)は、進行中の手術のリアルタイム画像を取得するのに適した少なくとも1つの画像取得デバイス(340)、例えば、顕微鏡取得デバイスと、少なくとも1つの画像表示デバイス、例えば、ディスプレイ(321)及び/又は顕微鏡接眼レンズ(339)とを備える、
請求項14に記載の手術アリーナ(333)。
【請求項16】
手術を実施する方法であって、
滅菌コンソール(302)の手術用椅子(309)に着座するステップと、
マスター入力ツール(306)を手持ちするステップと、
前記マスター入力ツールを所定の追跡ボリューム(308)内に持ち込むステップと、
制御ユニットに指令を送信して、スレーブロボット(303)を作動するステップと、
前記マスター入力ツール(306)を操作することによって、前記スレーブロボット(303)の動きを制御するステップと、
を含む、
方法。
【請求項17】
実質的に垂直な回転軸(V-V)を中心に、前記所定の追跡ボリューム(308)を旋回することによって、前記手術用椅子(309)の前記着座面(310)に着座しながら、実質的に垂直な回転軸(V-V)を中心に旋回するステップ、及び/又は、
滅菌ドレープ(361)によって、少なくとも前記手術用椅子(309)の前記着座面(310)を覆うステップ、
を更に含む、
請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、滅菌コンソールに関する。
【0002】
特に、前記滅菌コンソールはロボット手術に適している。
【0003】
また、本発明は、ロボット手術システム、及び前記滅菌コンソールを備える手術アリーナに関する。
【0004】
更に、本発明の一つの目的は、手術を実施する方法である。
【背景技術】
【0005】
マスターインターフェースとスレーブ手術ツールを含むロボット手術アセンブリは、本技術分野において一般的に知られている。具体的には、知られているタイプのロボット手術アセンブリは、ディスプレイを含み、マスターインターフェースに接続された制御ステーションを備える。例えば、国際出願公開WO2016/201207に示された、後付けの制御ステーションの付属器は、患者の解剖学的構造(身体:anatomy)で手術するスレーブ手術器具を制御するためのマスター入力ツールとして機能する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、米国特許出願公開US2008177285は、シート要素に取り付けられた肘掛けを有するマスターコンソールステーションを開示している。当該マスターコンソールステーションにおいて、各肘掛けから、機械的に拘束されている付属器が突出して、外科医の指にフィットするように設計された金属製着用リングを含む自由端を形成し、当該リングを着用している外科医によって提供された手動指令を検出する。マスターコントロール付属器は、関節式レバーアセンブリに直接接続されて、ロボットのスレーブ部に指令を送信する。
【0007】
上記特許文献に開示された手術用マスターコントロールステーションは、その着用可能な機械的付属器により邪魔されるため、手術中に外科医の腕及び手が不快な姿勢となる。
【0008】
例えば、欧州特許出願公開EP2845556は、ディスプレイ及び制御椅子を備えた遠隔ロボット手術用のマスターコンソールステーションを開示している。当該制御椅子は、椅子の肘掛けと一体のフレーム構造から突出している機械的付属器を備えている。当該機械的付属器は、スレーブ手術ロボットアームを制御するためのマスター入力ツールとして機能する。このようなマスター入力付属器は、力/トルク検出器及び力補償器に接続され、外科医の意図した手動指令を検出し、データ処理ユニットを介して当該情報をスレーブ手術器具に送信する。
【0009】
当該リモートコンソールステーションは、外科医が専用の制御室に座って操作することが必要とされる。なぜなら、リモートコンソールステーションは、滅菌される、又は、無菌の手術アリーナ(arena)、例えば、手術台の周辺に配置されるには適していないためである。同時に、そのようなコンソールステーションは、動かないように設計されている。言い換えれば、異なる場所のリモートコントロールルームには容易に移動することができないように設計されている。
【0010】
更に、そのような遠隔コンソールステーションは、外科医が、彼/彼女の腕を金属フレーム内に挿入して操作してマスターコントロール付属器にアクセスすることを必要とされる。外科医により力/トルク検出器を備えたマスター機械的付属器に伝達される機械的振動に主に起因したノイズの低減においては満足的な効果が得られるが、この方法において、外科医が手術の間に、特に長時間の外科手術の間に、不快な位置と姿勢で操作しなければならないこととなる。このようなリモートコンソールステーションを使用してロボット手術を実行しているとき、外科医が、理想的には手術アリーナから遠く離れた場所に配置された移動不能なコンソールに座り、力/トルク検出器を備え、コントロールレバーの外観を有するマスターコントロール付属器を操作する。そのため、外科医は手術に対する感覚を得ることができない。
【0011】
したがって、ロボット手術の間に、外科医の快適さを改善するとともに、外科医が熟知のマスターコントローラを操作する状態にあるようにする必要がある。
【0012】
例えば、同じ出願人の国際出願公開WO2017/064303及びWO2017/064306は、一対の通常の外科用ピンセットの態様を再現する制御ツールを有するマスターインターフェースを開示している。これらのピンセットはセンサを備え、センサは、ピンセットに接続されたタブレットによって生成された追跡フィールドを適切に検出する。部分的に満足のいくものである、特に、そのような通常の外科用ピンセットの取り扱いに慣れているため、ロボット手術を実施するための外科医のトレーニング期間が短縮されるが、これらの解決策にも欠点がある。
【0013】
特に、そのような既知の解決策において、追跡タブレットによって検出されるボリューム(volume)は、追跡タブレットの上方の空間の一部に限られる。従って、外科医は、マスター入力ツールをマスター追跡タブレットの下に移動することができず、手術中に外科医の移動範囲が制限され、快適さも制限される。言い換えると、外科医がマスターコントローラをマスター追跡タブレットの下に移動すると、マスター追跡タブレットはマスターコントローラの動きを検出できず、そしてその動きをスレーブロボットエンドエフェクタに送信できない。
【0014】
したがって、ロボット手術の間に、外科医の動きの自由度を改善するとともに、外科医が熟知のマスターコントローラを操作する状態にあるようにする必要がある。
【0015】
米国特許出願公開US20140018960は、患者を手術する遠隔操作のスレーブロボットアームを作動させるための制御システムにリンクされたリモートコンソールを備えるマスターインターフェースを開示している。当該コンソールは、身体中心の基準フレームを規定し、機械的に接地されないマスターツールグリップデバイスを備えている。そのようにして、身体中心の基準フレームを検出する制御ユニットは、前記マスターツールグリップデバイスの位置及び向きに関する情報を取得し、指令信号をスレーブロボットアームに送信し、エンドエフェクタを作動させる。リモートコンソールの他の例は、米国特許出願公開US20180078319及びUS20180092706に開示されている。
【0016】
腹腔鏡手術の解決策は、国際出願公開WO2014/151621により知られている。当該国際出願は、腹腔鏡ビューを示すのに適したディスプレイと、光学的又は電磁的に追跡される有線又は無線のマスターコントローラと、支持バーとを備えるマスタープラットフォームを開示している。支持バーは、立っている外科医が前腕をその上で休ませるのに適している。この解決策の主な利点は、支持バーの上下両方に広がるボリュームでマスターコントローラの動きを追跡できることにある。これにより、腹腔鏡手術中に、外科医の移動範囲が拡大され、また、外科医は前記支持バーの上に前腕を休ませることができる。更に、そのような解決策は、外科医が、ロボットのエンドエフェクタを介して手術するためのマスターコントローラを、直接に生体解剖学的構造で手術するのに適した通常の手術用ツールと同時に使用することを可能にし、広範囲での手術治療の可能性を外科医に提供する。
【0017】
上述した利点があるが、開示された解決策は、ロボット手術中に外科医に快適で信頼できる姿勢を提供することができない。このマスタープラットフォームの方法により外科医に不快な姿勢をさせるため、当該文献に開示されたマスターコントローラの光学的追跡は、外科医が手術中に手術アリーナで歩き回ることを可能とする。しかし、それによって、特に長引く手術の場合に、外科医及び/又は外科医チームが集中力を失うこと、及びロボットアセンブリとの望ましくない偶発的な衝突が容易に起こり得る。
【0018】
外科医が快適な姿勢で手術できるようにすると同時に、ロボット手術中に患者とロボット部品の安全性を向上させるのに適した、ロボット手術用の滅菌コンソールを提供する必要がある。
【0019】
また、外科医が快適な姿勢で安全に手術できるようにするとともに、そうすることによって許容される移動範囲が制限されることを回避することができる滅菌コンソールを提供する必要がある。
【0020】
正確性、集中力を高めることによってロボット手術の信頼性を向上させるのに適し、同時に長時間の手術に適するとともに、そうすることによって外科医が非常に不快又は不慣れとなることを回避することができる滅菌コンソールを提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
既知の技術を参照して言及された欠点を克服することは、本発明の目的である。
【0022】
本発明の目的は、ロボット手術中の外科医の快適さを改善するとともに、そうすることによってロボット手術の信頼性を損なうことを回避することができるように設計されたロボット手術システム用の滅菌コンソールを提供することである。
【0023】
これら及び他の目的は、請求項1に記載の滅菌コンソール、請求項12に記載のロボット手術システム、請求項14に記載の手術アリーナ、及び請求項16に記載の方法によって達成される。
【0024】
いくつかの好ましい実施形態は、従属請求項の対象である。
【0025】
本発明の一態様によれば、ロボット手術システム用の滅菌コンソールは、機械的に接地されておらず、手術中に外科医により手持ちされるのに適した少なくとも1つのマスター入力ツールと、手術中に外科医がその上に着座するための少なくとも1つの着座面を含む少なくとも1つの手術用椅子と、所定の追跡ボリューム内で前記少なくとも1つのマスター入力ツールの位置及び向きを検出するのに適した少なくとも1つの追跡システムと、外科医が前記少なくとも1つのマスター入力ツールを手持ちしていないときに、前記少なくとも1つのマスター入力ツールに対し支持を提供する少なくとも1つのツール支持要素と、を備える。
【0026】
前記少なくとも1つのマスター入力ツールは、それに取り付けられた少なくとも1つの第1の基準フレームを規定し、前記追跡システムは、フィールドジェネレータを有し、それに取り付けられた第2の基準フレームを規定する。前記追跡システムによって検出された位置及び向きは、前記第2の基準フレームに対する前記少なくとも1つの第1の基準フレームの位置及び向きであり、それによって、ロボット手術アセンブリの制御ユニットは、前記追跡ボリューム内における前記少なくとも1つのマスター入力ツールの前記位置及び向きに関する情報を受信し、前記少なくとも1つの手術器具を作動するためにスレーブロボットアセンブリに指令信号を送信する。
【0027】
追跡システムのフィールドジェネレータ、例えば、磁場発生器は、手術用椅子の一部と一体であり、それによって、外科医が手術用椅子の前記着座面に着座し、前記少なくとも1つのマスター入力ツールを手持ちしたとき、前記マスター入力ツールは、前記追跡ボリューム内に位置し、その位置及び向きは、追跡システムによって検出することができる。
【0028】
手術用椅子の着座面は、実質的に垂直な回転軸を中心に旋回することができ、追跡システムの前記フィールドジェネレータは、前記着座面と一体である。それによって、着座面が前記実質的に垂直な回転軸を中心に旋回する間に、追跡ボリュームが滅菌コンソールの手術用椅子の着座面と一体である。
【0029】
手術用椅子は、前記着座面と一体の着座下部支持部分と、構造的な支持を着座下部に提供する椅子基部構造とを備え、前記着座下部支持部分は、前記椅子基部構造に対して実質的に垂直な回転軸を中心に旋回することができる。また、フィールドジェネレータは、前記着座下部支持部分と一体であってもよく、それによって、着座下部支持部分が実質的に垂直な回転軸を中心に旋回する間に、追跡ボリュームが滅菌コンソールの手術用椅子の着座面と一体である。
【0030】
滅菌コンソールは、滅菌ドレープを含んでもよく、当該滅菌ドレープは、手術用椅子の少なくとも前記着座面を覆い、好ましくは、手術用椅子の肘掛けアセンブリの肘掛け面も覆い、好ましくは、手術用椅子の背部座席部分も覆う。滅菌ドレープは、プラスチック製の裏地等を有してもよい。
【0031】
本開示により、ロボット手術用の滅菌コンソールが提供される。当該滅菌コンソールは、手術中に患者の解剖学的構造を囲む手術アリーナ内に配置するのに適し、且つ、手術中に移動するにも適しているとともに、そうすることによって不要な指令信号が手術エンドエフェクタに送信されることはない。
【0032】
手術アリーナは、少なくとも1つの前記滅菌コンソールと、少なくとも1つのスレーブロボットアセンブリとを含んでもよい。スレーブロボットアセンブリは、患者の解剖学的構造で手術するように設計された少なくとも1つの手術器具と、患者支持構造とを備え、当該患者支持構造は、例えば、手術台等であって、手術中に患者の解剖学的構造がその上に置かれ、手術アリーナ内に配置されるサポートを形成する。
【0033】
前記滅菌コンソールは、手術台付近の手術アリーナ内に配置することができるとともに、そうすることによって1回のみの使用を必要としない。
【0034】
ロボット手術システムは、少なくとも1つの前記滅菌コンソールと、少なくとも1つのスレーブロボットアセンブリと、制御ユニットとを含んでもよい。スレーブロボットアセンブリは、患者の解剖学的構造で手術するように設計された少なくとも1つの手術器具を備える。制御ユニットは、前記追跡ボリューム内における前記少なくとも1つのマスター入力ツールの前記位置及び向きに関する情報を受信するのに適し、且つ、前記少なくとも1つの手術器具を作動させるために、指令信号をスレーブロボットアセンブリに送信するのに適しているとともに、そうすることによって1回のみの使用を必要としない。ロボット手術システムの全体は、手術アリーナ内に配置することができる。
【0035】
本発明の更なる特徴及び利点は、添付の図を参照して、以下に示す例示として記載され、限定することを意図するものではない好ましい実施形態の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】一実施形態に係る、手術アリーナ内の滅菌コンソールを概略的に示す上面図である。
【
図2】リモート非滅菌コンソールを概略的に示す上面図である。
【
図3】一実施形態に係る、手術アリーナ内の滅菌コンソールを備えるロボット手術システムを示す不等角投影図である。
【
図4】一実施形態に係る、滅菌コンソールを示す不等角投影図(axonometric view)である。
【
図5】一実施形態に係る、着座検出器が示した滅菌コンソールの不等角投影図である。
【
図6】一実施形態に係る、着座検出器及び滅菌ディスプレイが示した滅菌コンソールの不等角投影図である。
【
図7】一実施形態に係る、所定の追跡ボリュームが示した滅菌コンソールの不等角投影図である。
【
図8】一実施形態に係る、滅菌コンソールを示す不等角投影図である。
【
図9】いくつかの実施形態に係る、滅菌コンソールを備えるロボット手術システムを示す不等角投影図である。
【
図10】いくつかの実施形態に係る、滅菌コンソールを備えるロボット手術システムを示す不等角投影図である。
【
図11】一実施形態に係る、ツールの無線接続が示された滅菌コンソールツールの不等角投影図である。
【
図12】一実施形態に係る、滅菌コンソールを示す不等角投影図である。
【
図13】一実施形態に係る、椅子の無線接続が示され、手術アリーナ内の滅菌コンソールを備えるロボット手術システムを示す軸測図である。
【
図14】一実施形態に係る、フィールドジェネレータに関連付けられた各肘掛けアセンブリが示され、滅菌コンソールを示す斜視図である。
【
図15】一実施形態に係る、フィールドジェネレータに関連付けられた各肘掛けアセンブリが示され、滅菌コンソールを示す斜視図である。
【
図16】一実施形態に係る、ロボット手術システムのブロック図である。
【
図17】一実施形態に係る、ロボット手術システムのブロック図である。
【
図18】一実施形態に係る、手術用椅子を覆う滅菌ドレープが設けられた、手術アリーナ内の滅菌コンソールを概略的に示す側面図である。
【
図19】一実施形態に係る、滅菌コンソールを示す斜視図である。
【
図20】一実施形態に係る、滅菌ドレープで覆われた手術用椅子を示す不等角投影図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
一般的な実施形態によれば、ロボット手術システム301用の滅菌コンソール302が提供される。
【0038】
一般的な実施形態によれば、少なくとも1つの前記滅菌コンソール302を備えるロボット手術システム301が提供される。
【0039】
好ましい実施形態によれば、前記ロボット手術システム301は、少なくとも1つのマスター入力ツール306を備える。
【0040】
前記マスター入力ツール306は、機械的に接地されておらず、外科医332によって手持ちされるのに適している。好ましくは、「機械的に接地されていない」という用語は、マスター入力ツール306が、所定の作業ボリューム内において、可能な位置及び向きの動きに関して機械的に拘束されていないことを意図する。例えば、所定の作業ボリュームは、外科医332の腕の長さ範囲内の位置の動きの追跡及び全方向の追跡を可能とするボリュームである。
【0041】
一実施形態によれば、前記ロボット手術システム301は、手動指令348を検出するのに適した前記少なくとも1つの滅菌コンソール302と、少なくとも1つのスレーブロボットアセンブリ303とを備える。前記滅菌コンソール302は、前記マスター入力ツール306を含み、前記スレーブロボットアセンブリ303は、患者の解剖学的構造337で手術するように設計された少なくとも1つの手術器具304を備える。好ましくは、前記少なくとも1つの手術器具304は、前記マスター入力ツール306との間に「マスター対スレーブのペア」となるスレーブロボットアセンブリ303の遠隔操作エンドエフェクタを形成する。
【0042】
一実施形態によれば、前記機械的に接地されていないマスター入力ツール306は、外科医の到達可能なワークスペース内において、位置及び向きの動きの両方、及び/又は送信機のワークスペースの手動追跡(例えば、デカルト座標系での左右振り、上下振動、サージ、ピッチ、偏走、ロールなど)について、スレーブロボットアセンブリ303により拘束されない。好ましくは、前記マスター入力ツール306は、接地されていないマスター入力ツールである。
【0043】
好ましい実施形態によれば、前記少なくとも1つのマスター入力ツール306は、手術中に外科医332によって手持ちされ、手術アリーナ333内の様々な位置から操縦されるのに適している。好ましい実施形態によれば、「手術アリーナ」という用語は、患者の解剖学的構造337を少なくとも部分的に囲む空間の一部を指す。好ましくは、手術アリーナ333は、患者の解剖学的構造付近における様々な場所を含む。好ましくは、「手術アリーナ333」という用語は、遠隔の場所、例えば、視覚化スクリーンを含み、患者の解剖学的構造付近に配置された手術用ロボットと遠隔通信している遠隔コンソール358を除外する。好ましくは、「手術アリーナ」という用語は、外科医が患者の解剖学的構造337を直接に見ることができる、手術中の患者と同じ部屋内の場所を指す。
【0044】
例えば、
図1に示す好ましい実施形態によれば、滅菌コンソール302は、手術アリーナ333内に配置されている。
【0045】
好ましい実施形態によれば、前記滅菌コンソール302は、手術用椅子309の前記着座面310を覆う滅菌ドレープ361を含む。前記滅菌ドレープ361により、滅菌コンソール302の手術用椅子309の着座面310から、患者の解剖学的構造337の生物学的分離が提供され、汚染のリスクを低減することができる。更に、このようにして、手術用椅子309は、毎回手術の前に滅菌を行う必要がなく、手術アリーナ333内に配置することができる。
【0046】
一変形例によれば、例えば
図2に示すように、外科医332は、遠隔位置358から手術することができ、患者の解剖学的構造337を直接に見ることができない。したがって、遠隔スクリーン359及び/又は遠隔眼鏡360のような遠隔視覚化手段359、360を使用しなければならない。好ましくは、遠隔位置358は、壁362又は障壁362によって手術アリーナ333から分離されている。
【0047】
好ましい実施形態によれば、前記マスター入力ツール306について言及された「操縦される」という用語は、マスター入力ツールが、手で、又は手であるように扱い又は操作することができることを指す。好ましい実施形態によれば、前記マスター入力ツール306に言及された「手持ち」という用語は、マスター入力ツールが、手、例えば外科医の手356に保持されながら操作されるように設計されていることを指す。一実施形態によれば、前記マスター入力ツール306は、携帯型マスター入力ツール306である。好ましい実施形態によれば、前記マスター入力ツール306に言及された「携帯型」という用語は、マスター入力ツールが持ち運び又は移動することができることを指す。
【0048】
一実施形態によれば、前記スレーブロボットアセンブリ303は、前記手術器具304を操縦する少なくとも1つの手術アーム334を備える。一実施形態によれば、前記スレーブロボットアセンブリ303は、前記手術器具304を操縦する少なくとも1つのマイクロマニピュレータ335を備える。好ましくは、前記少なくとも1つのマイクロマニピュレータ335は、前記手術アーム334に直列に直接接続され、前記手術アーム334と運動学連鎖を形成し、前記手術器具304を操縦する。一実施形態によれば、少なくとも2つのマイクロマニピュレータ335は、前記手術アーム334に直列に直接接続され、前記手術アーム334と少なくとも2分岐運動学連鎖を形成する。
【0049】
一実施形態によれば、前記ロボット手術システム301は、制御ユニット305を備え、当該制御ユニット305は、前記マスター入力ツール306に関連する少なくとも位置及び向きを受信するのに適し、且つ前記手術器具304を作動させるために、指令信号をスレーブロボットアセンブリ303に送信するのに適している。
【0050】
好ましい実施形態によれば、前記制御ユニット305は、前記手動指令348に関する情報を含む第1の指令信号349を受信し、前記手動指令348に関する情報を含む第2の指令信号350をスレーブロボットアセンブリ303に送信して前記手術器具304を作動させるのに適している。
【0051】
一実施形態によれば、前記スレーブロボットアセンブリ303は、前記手術器具304を操縦する少なくとも1つの手術アーム334を含む。一実施形態によれば、前記スレーブロボットアセンブリ303は、前記手術器具304を操縦する少なくとも1つのマイクロマニピュレータ335を備える。好ましくは、前記少なくとも1つのマイクロマニピュレータ335は、前記手術アーム334に直列に直接接続されて、前記手術アーム334と運動学連鎖を形成し、前記手術器具304を操縦する。一実施形態によれば、少なくとも2つのマイクロマニピュレータ335は、前記手術アーム334に直列に直接接続され、前記手術アーム334と少なくとも2分岐運動学連鎖を形成する。
【0052】
好ましい実施形態によれば、前記ロボット手術システム301、及び好ましくは前記ロボット手術システム301の前記滅菌コンソール302は、少なくとも1つの追跡システムを更に含む。当該追跡システムは、所定の追跡ボリューム308において、前記マスター入力ツール306の位置及び向きを検出するのに適したフィールドジェネレータ307又はベースコンポーネント307を含む。
【0053】
好ましい実施形態によれば、前記少なくとも1つの追跡システムは、例えば、フィールドジェネレータ、例えば、磁場発生器によって、前記所定の追跡ボリューム308を生成する。一実施形態によれば、追跡システムの前記フィールドジェネレータ307は、磁場発生器及び/又は光場発生器(optical field generator)を含む。好ましい実施形態によれば、前記ベースコンポーネント307は、前記所定の追跡ボリューム308を規定するフィールドを生成する。
【0054】
前記マスター入力ツール306は、それに取り付けられた第1の参照フレームX1,Y1,Z1;X2,Y2,Z2を規定する。言い換えれば、前記ロボット手術システム301は、前記マスター入力ツール306に取り付けられた第1の参照フレームX1,Y1,Z1;X2,Y2,Z2を有する。
【0055】
前記滅菌コンソール302は、手術中に外科医がその上に着座するための少なくとも1つの着座面310を有する少なくとも1つの手術用椅子309を備える。一実施形態によれば、前記手術用椅子309はスツールである。 好ましくは、前記滅菌コンソール302は、前記手術用椅子309及び前記少なくとも1つのマスター入力ツール306を備える。
【0056】
追跡システムの前記フィールドジェネレータ307は、それに取り付けられた第2の参照フレームX0,Y0,Z0を規定する。言い換えれば、前記ロボット手術システム301は、追跡システムの前記フィールドジェネレータ307に取り付けられた第2の参照フレームX0、Y0、Z0を有する。
【0057】
追跡システムの前記フィールドジェネレータ307は、前記所定の追跡ボリューム308において、前記マスター入力ツール306の位置及び向きを検出するように設計される。
【0058】
好ましくは、前記所定の追跡ボリューム308は、前記フィールドジェネレータ307に関して空間に固定されている。言い換えれば、前記追跡ボリューム308は、追跡システムの前記フィールドジェネレータ307と一体である。
【0059】
有利的には、追跡システムの前記フィールドジェネレータ307によって検出されるマスター入力ツール306の前記位置及び向きは、前記追跡ボリューム308内における、前記第2の参照フレームX0、Y0、Z0に対する前記第1の参照フレームX1,Y1,Z1;X2,Y2,Z2の位置及び向きである。
【0060】
一実施形態によれば、前記ロボット手術システム301は、制御ユニット305を備える。当該制御ユニット305は、前記マスター入力ツール306に関連する少なくとも位置及び向きを受信するのに適しており、且つ、前記手術器具304を作動させるために、スレーブロボットアセンブリ303に指令信号を送信するのに適している。
【0061】
好ましい実施形態によれば、前記制御ユニット305は、前記手動指令348に関する情報を含む第1の指令信号349を受信し、前記手動指令348に関する情報を含む第2の指令信号350をスレーブロボットアセンブリ303に送信して前記手術器具304を作動させるのに適している。
【0062】
一実施形態によれば、前記スレーブロボットアセンブリ303は、前記手術器具304を操縦する少なくとも1つの手術アーム334を備える。一実施形態によれば、前記スレーブロボットアセンブリ303は、前記手術器具304を操縦する少なくとも1つのマイクロマニピュレータ335を備える。好ましくは、前記少なくとも1つのマイクロマニピュレータ335は、前記手術アーム334に直列に直接接続され、前記手術アーム334と運動学連鎖を形成し、前記手術器具304を操縦する。一実施形態によれば、少なくとも2つのマイクロマニピュレータ335は、前記手術アーム334に直列に直接接続され、前記手術アーム334と少なくとも2分岐運動学連鎖を形成する。
【0063】
有利なこととして、追跡システムの前記フィールドジェネレータ307は、手術用椅子309の一部と一体であり、それによって、外科医が、手術用椅子309の前記着座面310に着座して、前記少なくとも1つのマスター入力ツール306を手持ちしたとき、前記マスター入力ツール306は、前記追跡ボリューム308内に位置し、その位置及び向きは、追跡システムによって検出することができる。更に、このようにして、追跡ボリューム308は、それと一体の手術用椅子309の前記一部と共に移動すること、及び/又は再配置することができる。
【0064】
好ましい実施形態によれば、追跡システムの前記フィールドジェネレータ307は、手術用椅子309の前記着座面310と一体である。
【0065】
好ましい実施形態によれば、前記手術用椅子309は、外科医332が前記手術用椅子309に着座したことを検出する少なくとも1つの着座検出器328を備える。例えば、前記着座検出器328は、前記着座面310の上、内部、又は下に配置された少なくとも1つのロードセルを含む。好ましくは、前記着座検出器328は、前記制御ユニット305に動作可能に接続される。
【0066】
好ましい実施形態によれば、前記マスター入力ツール306は、前記外科医332が前記手術用椅子309の前記着座面に着座したとき、外科医332によって前記追跡ボリューム308内で手持ちされるように設計される。好ましくは、前記マスター入力ツール306は、前記外科医332が前記手術用椅子309の前記着座面に着座する場合にのみ、外科医332によって前記追跡ボリューム308内で手持ちされるように設計される。
【0067】
好ましい実施形態によれば、前記ロボット手術システム301は、少なくとも1つのマスター入力ツール支持要素324又はツール支持要素324を備え、それによって、好ましくは、外科医が少なくとも1つのマスター入力ツール306を手持ちしていないとき、マスター入力ツール306がその上に置かれるように支持を提供する。
【0068】
好ましい実施形態によれば、前記ツール支持要素324は、前記手術用椅子309の一部と一体である。それによって、外科医332は、手術用椅子309の前記着座面310に着座するとき、外科医332は、手動で自ら前記少なくとも1つのマスター入力ツール306を前記ツール支持要素324の上に置くことができる。
【0069】
前記手術用椅子309の一部と一体であるそのようなツール支持要素324を提供することによって、前記ツール支持要素324が前記マスター入力ツール306を支持するとき、たとえ手術用椅子309が前記スレーブロボットアセンブリ303に対して動かされた場合にも、追跡システムによって検出された前記マスター入力ツール306の位置及び向きは、変更されないように維持することができる。
【0070】
好ましくは、前記マスター入力ツール306は、前記外科医332が前記手術用椅子309に着座したとき、前記外科医332によって前記ツール支持要素324上に置かれるのに適している。言い換えれば、手術中に、前記マスター入力ツール306は、外科医332によって、手動で前記ツール支持要素324の上に置くことができる。
【0071】
好ましい実施形態によれば、所定の追跡サブボリューム329は、前記追跡ボリューム308内に規定される。言い換えれば、前記追跡ボリューム308は、少なくとも1つの追跡サブボリューム329を含む。好ましくは、前記追跡サブボリュームは、その全体が前記追跡ボリューム308内に含まれる。好ましくは、追跡システムの前記フィールドジェネレータ307は、前記追跡サブボリューム329を生成する。好ましくは、前記制御ユニット305は、前記追跡サブボリューム329の範囲を規定する。
【0072】
一実施形態によれば、マスター入力ツール306が前記追跡サブボリューム329内に位置することが検出された場合、制御ユニット305は、指令信号を送信して、前記スレーブ手術器具304を作動させる。マスター入力ツール306が、前記追跡ボリューム308内であるが、前記追跡サブボリューム329の外側(例えば、前記安全追跡ボリューム部分354内)に位置することが検出された場合、制御ユニット305は、一対の前記手術器具304を作動することができない。
【0073】
前記追跡サブボリューム329によって、操作ワークスペースを規定することができる。マスター入力ツール306が前記サブ追跡ボリューム329内に位置することが検出されたとき、前記制御ユニット305によって、前記スレーブロボット303に指令信号に送信し、一対のスレーブ手術器具304を作動させる。同時に、前記追跡サブボリュームの提供は、反対に、前記追跡ボリューム308内において、少なくとも1つの安全追跡ボリューム部分354を規定する。マスター入力ツール306が前記安全追跡ボリューム内に位置していることが検出された場合、制御ユニット305が、前記手術器具304を作動させるための指令信号を送信することは阻止される。このような安全追跡ボリューム部分354の提供は、不作為で危険に前記手術器具304を作動させる可能性があるような望ましくない指令送信のリスクを最小限に抑え、手術中の患者の安全を向上させる。
【0074】
一実施形態によれば、前記少なくとも1つのマスター入力ツール306は、少なくとも1つのセンシング装置311を備える。センシング装置311は、前記所定の追跡ボリューム308内における前記マスター入力ツール306の少なくとも位置、好ましくは少なくとも位置及び向きを検出する。好ましくは、前記センシング装置311は、前記マスター入力ツール306と一体である。
【0075】
一実施形態によれば、前記センシング装置311は、前記フィールドジェネレータ307に動作可能に接続される。好ましくは、前記センシング装置311は、電磁通信によって前記フィールドジェネレータ307に動作可能に接続される。一実施形態によれば、前記センシング装置311は、マスター入力ツール306の少なくとも一部と一体の少なくとも1つのセンサと、前記フィールドジェネレータ307への少なくとも有線接続とを含む。一実施形態によれば、前記センシング装置311は、マスター入力ツール302の少なくとも一部と一体の少なくとも1つのセンサと、前記フィールドジェネレータ307への少なくとも無線接続とを含む。
【0076】
好ましい実施形態によれば、機械的接触による手術用椅子309からスレーブロボットアセンブリ303への振動運動の伝播を防ぐために、前記手術用椅子309は、スレーブロボットアセンブリ303により機械的に拘束されない。このようにして、不要な指令がスレーブ手術ロボット303に、特に前記スレーブ手術器具304に送信されるリスクが低減される。
【0077】
一実施形態によれば、前記手術用椅子309を含む前記滅菌コンソール302は、好ましくは電磁通信によって、前記スレーブ手術アセンブリ303に動作可能に接続される。一実施形態によれば、前記手術用椅子309を含む前記滅菌コンソール302は、椅子有線接続312によって前記スレーブ手術アセンブリ303に動作可能に接続される。一実施形態によれば、前記手術用椅子309を含む前記滅菌コンソール302は、椅子の無線接続313によって前記スレーブ手術アセンブリ303に動作可能に接続される。一実施形態によれば、前記椅子有線接続312及び/又は前記椅子無線接続313は、前記滅菌コンソール302に電力供給を提供する。
【0078】
一実施形態によれば、前記フィールドジェネレータ307は、前記フィールドジェネレータ307と一体の前記第2の参照フレームX0、Y0、Z0を規定し、前記少なくとも1つのセンシング装置311は、前記追跡ボリューム308内における前記センシング装置311の少なくとも位置を決定する第1の参照フレームX1,Y1,Z1;X2,Y2,Z2を検出する。このようにして、センシング装置311は、前記所定の追跡ボリューム308内における、前記センシング装置311と一体の前記マスターツールアセンブリ306の少なくとも位置を決定する。
【0079】
好ましい実施形態によれば、滅菌コンソール302が規定され、前記滅菌コンソール302は、少なくとも前記少なくとも1つのマスター入力ツール306と、前記少なくとも1つの手術用椅子309と、前記少なくとも1つのツール支持要素324とを備える。滅菌コンソール302は、前記スレーブロボットアセンブリ303と協働して、前記手術器具304を制御する。
【0080】
一実施形態によれば、滅菌コンソール302は、少なくとも1対のマスター入力ツール306を備える。
【0081】
好ましくは、各マスター入力ツール306は、好ましくはそれに一体の少なくとも1つのセンシング装置311を含み、前記複数のセンシング装置311は、前記一対のマスター入力ツール306の少なくとも相互位置を検出するために協働する。
【0082】
一実施形態によれば、前記センシング装置311は、前記フィールドジェネレータ308によって生成された局所磁場を検出する少なくとも1つのセンサを備える。
【0083】
一実施形態によれば、前記手術用椅子309を含む前記滅菌コンソール302は、前記手術アリーナ333内に配置される。このようにして、手術チームメンバー間のコミュニケーションが強化される。一実施形態によれば、前記手術アリーナ333は全て、単一の手術室に含まれる。
【0084】
従って、前記ロボット手術システム302において、前記手術用椅子309は、手術アリーナ333の外部、例えば、遠隔地358などに配置されない。
【0085】
好ましい実施形態によれば、前記ロボット手術システム302は、患者支持構造336、例えば、手術台336等を更に含む。患者支持構造336は、手術アリーナ333内に配置され、手術中に患者の解剖学的構造337がその上に置かれるように支持を形成する。
【0086】
好ましい実施形態によれば、前記ロボット手術システム302は、外科医332に手術を示す手術ビジョンアセンブリ338を更に備える。一実施形態によれば、前記手術ビジョンアセンブリ338は、進行中の手術のリアルタイム画像を取得するのに適した少なくとも1つの画像取得デバイス340と、少なくとも1つの画像表示デバイス、例えば、ディスプレイ321及び/又は顕微鏡接眼デバイス339とを備える。
【0087】
一実施形態によれば、前記手術ビジョンアセンブリ338は、手術アリーナ333内の前記滅菌コンソール302にいる外科医332に手術を示すために、ディスプレイ321、好ましくは3Dディスプレイと協働する少なくとも3D眼鏡を備える。
【0088】
そのような手術ビジョンアセンブリ338及び手術アリーナ333内に配置された前記滅菌コンソール302を提供することによって、外科医は、同様な介入で手による手術の代わりにロボット手術を行うことができる。
【0089】
一実施形態によれば、前記ロボット手術システム302は、少なくとも1つのロボットカート342を備える。ロボットカート342は、少なくとも1つのカート接地接触ユニット351と、カートハンドル343とを含み、前記カートハンドル343は、ロボット手術システム301の少なくとも一部、好ましくは、少なくとも手術アリーナ333内の前記スレーブロボットアセンブリ303を動かすのに適している。好ましくは、前記ロボットカート342は、スレーブロボットアセンブリ303に対する機械的及び構造的支持、好ましくは可動の機械的及び構造的支持を形成する。
【0090】
一実施形態によれば、前記ロボットカート342は、電源ケーブル344に接続される。
【0091】
一実施形態によれば、前記ロボットカート342は、前記制御ユニット305を含む。
【0092】
一実施形態によれば、前記手術用椅子309は、前記制御ユニット305を含む。好ましくは、前記制御ユニット305は、前記フィールドジェネレータ307と一体である。
【0093】
一実施形態によれば、前記手術用椅子309は、着座下部315に対する構造的支持を提供する椅子基部構造314を備える。このように、椅子基部構造314は、前記着座下部315を介して、前記着座面310に対する構造的支持を提供する。好ましくは、前記椅子基部構造314は、ホイールなどの接地接触ユニット323を含む。
【0094】
一実施形態によれば、前記椅子基部構造314は、前記フィールドジェネレータ307を含み、それによって、前記追跡ボリューム308は、前記椅子基部構造314と一体である。
【0095】
一実施形態によれば、前記手術用椅子309は、前記着座面310と一体の着座下部支持部分315を備える。好ましくは、前記着座下部支持部分315は、前記着座面310の下に配置される。
【0096】
一実施形態によれば、前記手術用椅子309は、着座要素本体346を含む。一実施形態によれば、前記着座要素本体346は、前記着座面310を含む。一実施形態によれば、前記着座要素本体346は、地面355に面する下部着座本体部分347を備える。好ましくは、前記着座要素本体346は、前記着座下部支持部分315と一体である。
【0097】
一実施形態によれば、前記着座下部支持部分315は、前記フィールドジェネレータ307を含み、それによって、前記追跡ボリューム308は、前記着座面310と一体である。
【0098】
一実施形態によれば、前記着座下部支持部分315は、前記椅子基部構造314に伸縮自在に接続されている。それによって、前記着座下部支持部分315の着座面310の地面からの高さは、伸縮自在に調整可能である。
【0099】
一実施形態によれば、前記手術用椅子309は、シートバック部分316を有する。このようにして、外科医は、手術中に前記シートバック部分に背もたれすることができる。
【0100】
一実施形態によれば、前記手術用椅子309は、着座調整装置322を含む。当該着座調整装置322は、手術用椅子309、好ましくは手術用椅子309の前記着座下部支持部分315が、実質的に垂直な回転軸V-Vを中心に回転することを可能にする。
【0101】
好ましい実施形態によれば、前記着座下部支持部分315は、前記椅子基部構造314に関して垂直軸V-Vを中心に旋回することができる。好ましくは、フィールドジェネレータ307は、前記着座下部支持部分315と一体である。それにより、追跡ボリューム308は、実質的に垂直な回転軸V-Vの周りを回転する間に、滅菌コンソール302の手術用椅子309の着座面と一体である。このようにして、手術用椅子309に座っている外科医は、手術器具306に対する制御を失うことなく、すなわち、そうすることによって不要な指令がスレーブ手術器具306に送信されることなく、手術中に旋回することができる。
【0102】
一実施形態によれば、前記着座調整装置322は、着座面310の地面からの高さを調整することを可能にする。
【0103】
好ましい実施形態によれば、前記手術用椅子309は、可動式であり、好ましくは、少なくとも前記手術アリーナ333内において、着座面310と同一平面上の少なくとも一の方向に移動可能である。好ましい実施形態によれば、手術用椅子309の前記着座面310は、垂直軸V-Vを中心に旋回することができる。好ましい実施形態によれば、手術用椅子309の前記着座面310は、高さ調整可能である。
【0104】
好ましい実施形態によれば、手術用椅子309の前記着座面310は、垂直軸V-Vを中心に回転することができる。
【0105】
好ましい実施形態によれば、手術用椅子309の前記着座面310は、床、例えば、手術アリーナ333の床に対して高さを調整することができる。
【0106】
前記手術用椅子309と一体の追跡システムの前記フィールドジェネレータ307の提供によって、マスター入力ツール306の位置及び向きの検出は、手術アリーナ333内における着座面310の位置に関係なく達成することができる。言い換えれば、追跡ボリューム308及び追跡サブボリューム329は、前記手術用椅子309に関連する前記フィールドジェネレータ307と一体であるため、第1の参照フレームX1,Y1,Z1;X2,Y2,Z2の検出は、手術アリーナ333内における手術用椅子309の位置とは無関係である。これにより、外科医332は、手術中に着座する手術用椅子309を配置する最良の場所の選択、リアルタイムの選択又は計画的な選択のいずれかも可能である。
【0107】
一実施形態によれば、前記手術用椅子309は、少なくとも1つの接地ホイール323を備える。前記少なくとも1つの接地ホイール323の提供は、手術用椅子309、そしてフィールドジェネレータ307及びそれに一体の所定のフィールドボリューム308を少なくとも手術アリーナ333内で動かすことを可能にする。好ましくは、前記接地ホイールは、前記椅子基部構造314に接続される。
【0108】
好ましい実施形態によれば、前記手術用椅子309は、少なくとも1つの肘掛けアセンブリ317L又は317Rを備える。肘掛けアセンブリ317L及び317Rは、外科医の前腕の少なくとも一部のための静置面を形成するように設計された肘掛け面318を有する。
【0109】
好ましい実施形態によれば、前記肘掛けアセンブリ317L及び317Rのうちの少なくとも1つは、丸みを帯びた形状である。それによって、外科医は肘だけを休ませることができ、外科医の前腕の移動範囲が広がる。言い換えれば、前記肘掛け面318は、実質的に円形である。好ましくは、肘掛けは実質的に円筒形のボリュームを含む。好ましくは、前記肘掛け面318は出っ張り部分を形成する。
【0110】
好ましくは、前記手術用椅子309は、前記着座面310に関して互いに反対側に配置された一対の対向する肘掛けアセンブリ317L、317Rを備える。このようにして、手術用椅子309は、第1の肘掛けアセンブリ317L、又は左肘掛けアセンブリ317Lと、第2の肘掛けアセンブリ317R、又は右肘掛けアセンブリ317Rとを備える。
【0111】
一実施形態によれば、前記肘掛けアセンブリ317L及び317Rのうちの少なくとも1つは、追跡システムのフィールドジェネレータ307を含み、これによって、第2の参照フレームX0、Y0、Z0は、前記肘掛けアセンブリ317L及び317Rのうちの少なくとも1つの少なくとも一部と一体である。
【0112】
一実施形態によれば、前記肘掛けアセンブリ317L及び317Rのうちの少なくとも1つは、ユーザインターフェース又はタッチスクリーンの一部を示すディスプレイ321を備える。一実施形態によれば、前記少なくとも1つのディスプレイ321は、手術中のスレーブ手術器具304の一部を示す。
【0113】
一実施形態によれば、前記肘掛けアセンブリ317L及び317Rのうちの少なくとも1つは、前記少なくとも1つのツール支持要素324を備える。当該少なくとも1つのツール支持要素324は、マスター入力ツール306に対する支持、好ましくはマスター入力ツール306がその上に置かれるように支持を提供する。前記ツール支持要素324は、前記肘掛け要素320に一体的に接続される。
【0114】
一実施形態によれば、前記肘掛けアセンブリ317L及び317Rは、少なくとも1つの接続要素352、例えば、管状接続要素によって、前記着座下部支持部分315に接続されている。このようにして、肘掛けアセンブリ317L及び317Rの少なくとも一部は、着座面310と一体となることができる。
【0115】
一実施形態によれば、前記肘掛けアセンブリ317L及び317Rは、前記少なくとも1つの肘掛け面318を含む肘掛け本体を有する少なくとも1つの肘掛け要素320を備える。
【0116】
一実施形態によれば、前記肘掛けアセンブリ317L及び317Rのうちの少なくとも1つは、肘掛け調整装置319を含む。当該肘掛け調整装置319は、少なくとも肘掛け面318の高さを前記着座面310の高さに関して調整するのに適している。
【0117】
一実施形態によれば、前記肘掛け調整装置319は、前記着座下部支持部分315に関して伸縮自在に移動可能な伸縮延長部分353を有する。好ましくは、前記伸縮延長部分353は、前記接続要素352に関して伸縮自在に延長可能である。
【0118】
一実施形態によれば、前記肘掛け調整装置319は、前記肘掛け要素320の空間的向きを調整するのに適するように、前記肘掛け要素320に接続された少なくとも球形接合部を有する。
【0119】
前記肘掛け調整装置319により、前記肘掛け面318の着座面310に対する適切な高さを選択することができるとともに、前記肘掛け要素320のピッチ及び/又はヨー(yaw)及び/又は回転の自由度を適切に動かせることができる。
【0120】
一実施形態によれば、前記一対の肘掛けアセンブリ317Lと317Rとのそれぞれは、1つのフィールドジェネレータ307を備える。このようにして、2つの所定の追跡ボリューム308Lと308Rとが規定され、第1の所定の追跡ボリューム308Lは、前記左肘掛けアセンブリ317Lの少なくとも一部と一体であり、第2の追跡ボリューム308Rは、前記右肘掛けアセンブリ317Rの少なくとも一部と一体である。一実施形態によれば、前記2つの所定の追跡ボリューム308Lと308Rとは接続されている。好ましくは、左マスター入力ツール306Lの位置及び向きは、前記第1の追跡ボリューム3008L内で検出され、右マスター入力ツール306Rの位置及び向きは、前記第2の追跡ボリューム308R内で検出される。
【0121】
一実施形態によれば、前記一対の肘掛けアセンブリ317Lと317Rとのそれぞれは、前記肘掛け調整装置319を有し、それによって、前記肘掛けアセンブリ317Lと317Rとのそれぞれは、互いに独立して調整可能である。このようにして、外科医332は、右肘掛けアセンブリ317Rに独立して、前記左肘掛けアセンブリ317Lの前記肘掛け面318の着座面310に対する高さを調整することができ、その逆も可能である。
【0122】
一実施形態によれば、前記肘掛けアセンブリ317Lと317Rとは、マスター入力工具306がその上に置かれるように支持を提供する前記ツール支持要素324を含む。前記ツール支持要素324により、滅菌コンソール302はマスター入力ツール306を安全に備えることができ、当該マスター入力ツール306は、前記手術用椅子309及び前記スレーブロボットアセンブリ303の両方から、並びに前記ロボットカート342及び前記ロボット手術システム301の他の部分から機械的に拘束されない。また、このようにして、外科医332は、使用していないときにマスター入力ツール306を置くことができ、使用していないときにもマスター入力ツールを手持ちすることを回避できるため、外科医の快適さが大幅に向上することができる。
【0123】
一実施形態によれば、前記ツール支持要素324は、ツール収容部325を規定するカップ形状の本体を備える。一実施形態によれば、前記ツール支持要素324は、カップ底壁326及び少なくとも1つのカップ側壁327を有する。一実施形態において、前記ツール支持要素324は、前記肘掛け要素320に一体的に接続される。
【0124】
一実施形態によれば、前記ツール支持要素324は、マスター入力ツールをそこに吊るすためのフック形状の本体を備える。
【0125】
好ましい実施形態によれば、前記手術用椅子309は、外科医が前記手術用椅子309に着座したことを検出する少なくとも1つの着座検出器328を備える。
【0126】
好ましくは、前記着座検出器328は、外科医が前記手術用椅子309に着座したときに前記手術器具304を作動させるように、及び/又は、外科医332が前記手術用椅子309に着座していないときに、前記手術器具304を作動させないように、前記制御ユニット305と協働して、所定の指令信号を前記スレーブロボットアセンブリ303に送信する。
【0127】
好ましい実施形態によれば、前記手術用椅子309は、少なくとも1つのロック装置を更に含む。当該ロック装置は、前記手術用椅子309の少なくとも1つの運動自由度を選択的にブロックするのに適している。外科医が前記手術用椅子309、好ましくは前記着座面310に着座したことを検出したときに、前記少なくとも1つのロック装置は、前記少なくとも1つの着座検出器328と協働して、前記手術用椅子309の少なくとも1つの運動自由度をブロックする。好ましくは、前記ロック装置は、手術アリーナ333内での前記手術用椅子309の前記少なくとも1つの運動自由度をロックする機械的作用を提供する。
【0128】
一実施形態によれば、前記ロック装置は、前記少なくとも1つの接地ホイール323によって提供される少なくとも運動自由度を選択的にブロックする。このようにして、例えば、手術中に、外科医332が、前記手術用椅子309に着座するとき、後者は手術アリーナ333内に再配置することはできない、手術中の手術チーム全体の安全性が改善される。
【0129】
一実施形態によれば、前記ロック装置は、前記シート調整装置322によって提供される少なくとも運動自由度を選択的にブロックする。言い換えれば、前記ロック装置は、垂直軸V-Vを中心に回転する自由度、及び/又は前記着座面310の地面からの高さをブロックする。このように、手術用椅子309は、例えば、手術中に、外科医が前記手術用椅子に着座するときには調整することができない。
【0130】
一実施形態によれば、前記ロック装置は、前記アームレスト調整装置319によって提供される少なくとも運動自由度を選択的にブロックする。この特徴は、前記一対の肘掛けアセンブリ317Lと317Rとのそれぞれが1つのフィールドジェネレータ307を備える実施形態と組み合わせて提供される場合には特に有利である。
【0131】
一実施形態によれば、前記着座検出器328は、少なくとも1つのロードセルを含む。このようにして、ロードセルは、前記手術用椅子309の少なくとも一部に対する外科医の負荷を感知する。
【0132】
一実施形態によれば、前記着座検出器328は、前記着座面310に加えられる外科医の負荷を検出するために、前記着座面310に関連付けられる。言い換えれば、前記着座面310は、前記着座検出器328を含む。
【0133】
一実施形態によれば、前記着座検出器328は、前記着座要素本体346に加えられる外科医の負荷を検出するために、前記着座要素本体346に関連付けられる。言い換えれば、前記着座要素本体346は、前記着座検出器328を含む。
【0134】
一実施形態によれば、前記着座検出器328は、前記着座下部支持部分315に加えられる外科医の負荷を検出するために、前記着座下部支持部分315に関連付けられる。言い換えると、前記着座下部支持部分315は、前記着座検出器328を含む。
【0135】
一実施形態によれば、前記着座検出器328は、外科医の前記シートバック部分316への接触を検出するために、前記シートバック部分316に関連付けられている。このようにして、前記着座検出器328は、外科医の背部357が前記シートバック部分316に持たれたことを検出する。
【0136】
一実施形態によれば、前記着座検出器328は、前記シートバック部分316への外科医の接触を検出するために、前記肘掛け面318に関連付けられている。言い換えれば、前記肘掛け面318は、前記着座検出器328を含む。
【0137】
一実施形態によれば、前記着座検出器328は、前記一対の肘掛けアセンブリ317Lと317Rとの両方の前記肘掛け面318に関連付けられている。言い換えれば、各肘掛けアセンブリ317Lと317Rとの前記肘掛け面318は、前記着座検出器328を含む。
【0138】
一実施形態によれば、前記着座検出器328は、例えば、ロードセルなどの複数の着座検出器センシング要素を含む。
【0139】
一実施形態によれば、前記フィールドジェネレータ307は、取り外し可能に手術用椅子309に接続されている。それによって、前記フィールドジェネレータ307を外した手術用椅子を滅菌することができる。これは、滅菌環境で、例えば、手術室で前記手術用椅子の使用を可能にする。
【0140】
一実施形態によれば、前記滅菌コンソール302は、クラッチデバイス345を備える。当該クラッチデバイス345は、作動状態にあるとき、スレーブロボットアセンブリ303が、前記滅菌コンソール302によって検出された手動指令を含むいかなる指令信号を受信するのを防止する。このようにして、クラッチデバイス345は、スレーブ手術器具304への意図しない動きの伝達を防止する。
【0141】
一実施形態によれば、前記クラッチ装置345は、有線又は無線接続によって、前記手術用椅子309に、好ましくは前記フィールドジェネレータ307に動作可能に接続される。
【0142】
一実施形態によれば、前記マスター入力ツール306は、前記手術用椅子309及び前記スレーブロボットアセンブリ303の両方から機械的に拘束されない。これによって、前記マスター入力ツール306は、好ましくは複数回で、前記所定の追跡ボリューム308内において、外科医によって自然に移動可能であり、回転可能であり、旋回可能である。
【0143】
一実施形態によれば、前記マスター入力ツール306は、ツール有線接続330によって前記フィールドジェネレータ307に動作可能に接続される。
【0144】
一実施形態によれば、前記マスター入力ツール306は、ツール無線接続331によって前記フィールドジェネレータ307に動作可能に接続される。
【0145】
一実施形態によれば、前記手術用椅子309は、椅子有線接続312によって前記スレーブ外科用アセンブリ303に動作可能に接続される。
【0146】
一実施形態によれば、前記手術用椅子309は、椅子無線接続313によって前記スレーブ外科用アセンブリ303に動作可能に接続される。
【0147】
一実施形態によれば、前記制御ユニット305は、その全体が前記シート本体314内に配置される。
【0148】
一実施形態によれば、前記制御ユニットは、その全体が前記着座下部支持部分315内に配置される。
【0149】
前記滅菌コンソール302に関連する前記ロボット手術システム301は、患者の解剖学的構造で手術するように設計された少なくとも1つの手術器具304と、制御ユニット305とを含む少なくとも1つのスレーブロボットアセンブリ303を備える。
【0150】
ロボット手術システム301用の前記滅菌コンソール303は、
機械的に接地されておらず、手術中に外科医に手持ちされるのに適した少なくとも1つのマスター入力ツール306と、
外科医332が手術中にその上に着座するための少なくとも1つの着座面310を有する少なくとも1つの手術用椅子309と、
所定の追跡ボリューム308内の前記少なくとも1つのマスター入力ツール306の位置及び向きを検出するのに適した少なくとも1つの追跡システムと、
外科医が前記少なくとも1つのマスター入力ツール306を手持ちしていないときに、前記少なくとも1つのマスター入力ツール306がその上に置かれるように支持を提供する少なくとも1つのツール支持要素324と、
を含む。
【0151】
好ましい実施形態によれば、前記少なくとも1つのマスター入力ツール306は、それに取り付けられた少なくとも1つの第1の参照フレームX1,Y1,Z1;X2,Y2,Z2を規定する。
【0152】
好ましい実施形態によれば、前記追跡システムは、それに取り付けられた第2の参照フレームX0、Y0、Z0を規定するフィールドジェネレータ307を備える。
【0153】
好ましい実施形態によれば、前記追跡ボリューム308は、追跡システムの前記フィールドジェネレータ307と一体である。
【0154】
有利的には、前記追跡システムによって検出される位置及び向きは、第2の参照フレームX0、Y0、Z0に関する前記少なくとも1つの第1の参照フレームX1,Y1,Z1;X2,Y2,Z2の位置及び向きである。したがって、ロボット手術アセンブリ301の前記制御ユニット305は、前記追跡ボリューム308内における前記少なくとも1つのマスター入力ツール306の前記位置及び向きに関する情報を受信するのに適するとともに、前記少なくとも1つの手術器具304を作動させるために、指令信号をスレーブロボットアセンブリ303に送信するのに適している。
【0155】
有利的には、追跡システムの前記フィールドジェネレータ307は、手術用椅子309の一部と一体であり、それによって、外科医が手術用椅子309の前記着座面310に着座して、前記少なくとも1つのマスター入力ツール306を手持ちしたとき、前記マスター入力ツール306は、前記追跡ボリューム308内に位置し、その位置及び向きは、追跡システムによって検出することができる。
【0156】
好ましい実施形態によれば、前記ツール支持要素324は、前記手術用椅子309の一部と一体であり、それによって、外科医が手術用椅子309の前記着座面310に着座したとき、外科医は、手動で前記少なくとも1つのマスター入力ツール306を、自ら前記ツール支持要素324の上に置くことができる。
【0157】
好ましい実施形態によれば、追跡システムによって検出された前記マスター入力ツール306の位置及び向きは、前記ツール支持要素324が前記マスター入力ツール306を支持しているとき、手術用椅子309が前記スレーブロボットアセンブリ303に対して動かされた場合においても、変化しないままで維持することができる。
【0158】
一実施形態によれば、前記手術用椅子309は、前記制御ユニット305を含む。
【0159】
好ましい実施形態によれば、前記滅菌コンソール302は、上述した実施形態のいずれか1つによって規定される。
【0160】
一般的な実施形態によれば、上記の実施形態のいずれかに係る滅菌コンソール302を含む手術アリーナ333が提供される。
【0161】
前記手術アリーナ333は、患者の解剖学的構造337で手術するように設計された少なくとも1つの外科用器具304と、好ましくは、手術中に、手術アリーナ333に配置され、患者の解剖学的構造337がその上に置かれるための支持体を形成する患者支持構造336とを含む少なくとも1つのスレーブロボットアセンブリ303を更に備える。好ましくは、前記患者支持構造336は、手術台等を含む。
【0162】
一実施形態によれば、前記手術アリーナ333は、上述した実施形態のいずれか1つに係るロボット手術アセンブリ301を備える。
【0163】
一実施形態によれば、前記手術アリーナ333は、外科医332に手術を示す手術ビジョンアセンブリ338を備える。好ましくは、前記手術ビジョンアセンブリ338は、実施中の手術のリアルタイム画像を取得するのに適した少なくとも1つの画像取得デバイス340と、少なくとも1つの画像表示デバイス、例えば、ディスプレイ321及び/又は顕微鏡接眼デバイス339とを含む。
【0164】
好ましい実施形態によれば、前記手術アリーナ333は、滅菌ボリュームを含み、前記滅菌コンソール302は、手術アリーナ333の滅菌ボリューム内に配置され、滅菌ドレープ361によるカバーで保護される。
【0165】
以下に、手術を実施する方法について説明する。
【0166】
一般的な実施形態によれば、手術を実施する方法は、
上記手術用椅子309に着席するステップと、
前記マスター入力ツール306を手持ちするステップと、
前記マスター入力ツールを所定の追跡ボリューム308内に持ち込むステップと、
制御ユニットに前記指令を送信して、スレーブロボット303を作動するステップと、
を含む。
【0167】
好ましい動作モードによれば、前記方法は、前記マスター入力ツール306を扱うことによって、前記スレーブロボット303の動きを制御する以下の更なるステップを含む。
【0168】
好ましい実施形態によれば、前記方法は、前述した実施形態のいずれか1つに係るロボット手術システム301を提供する以下の更なるステップを含む。
【0169】
好ましい動作モードによれば、前記方法は、前記着座検出器328を作動させる以下の更なるステップを含む。好ましくは、この作動させるステップは、前記指令を制御ユニット305に送信してスレーブロボット303を作動させるステップの前に実行される。
【0170】
好ましい動作モードによれば、着座するステップは、好ましくは、手術用椅子309の前記着座面310に着座することによって実行される。
【0171】
好ましい動作モードによれば、手持ちするステップは、前記ツール支持要素324から前記マスター入力ツール306を手に取って持つサブステップを含む。
【0172】
好ましい動作モードによれば、持ち込むステップは、前記マスター入力ツール306を、好ましくは前記安全追跡ボリューム部分354内に配置された前記ツール支持要素324から、前記サブ追跡ボリューム329内に移動することによって実行される。
【0173】
好ましい動作モードによれば、指令を送信するステップは、好ましくは、ユーザ指令を制御ユニット305に送信して、前記スレーブロボット303を作動させることによって実行される。動作モードによれば、前記ユーザ指令はフットペダル指令である。動作モードによれば、前記ユーザ指令は、前記マスター入力ツール306に提供される手動指令である。
【0174】
好ましい動作モードによれば、制御するステップは、前記マスター入力ツール306の動きに応答して、前記スレーブロボット303を動かすことによって実行される。好ましくは、このステップは、前記マスター入力ツール306の動きに応答して、スレーブロボット303の前記手術器具304を動かす更なるステップを含む。言い換えれば、前記マスター入力ツール306を扱うことによって、スレーブロボット303の前記少なくとも1つの手術器具304の動きを制御する。好ましい動作モードによれば、各マスター入力ツール306は、スレーブロボット303の単一の手術器具304を制御する。言い換えれば、好ましい動作モードによれば、マスタースレーブペアの関係に従い、1つの手術器具304は、1つのマスター入力ツール306とヘアになる。
【0175】
動作モードによれば、前記方法は、前記スレーブロボット303を停止させる更なるステップを含む。言い換えれば、動作モードによれば、前記方法は、前記スレーブロボット303を前記マスター入力ツール306から切り離す更なるステップを含む。好ましくは、前記ステップは、少なくとも前記手術器具304の動きをロックする目的でスレーブロボット303に指令信号を送信することによって、又は前記手術器具304への通信を中断させることによって、制御ユニット305によって実行される。
【0176】
好ましい動作モードによれば、前記スレーブロボット303を前記マスター入力ツール306から切り離す前記ステップは、フットペダル指令を送信することによって実行される。例えば、前記フットペダル指令は、足で操作するデッドマン型クラッチ装置345等によって伝達される。
【0177】
好ましい動作モードによれば、着座検出器328が、外科医が立ち上がる目的で手術用椅子309の着座面310から離れることを検出すると、前記スレーブロボット303を前記マスター入力ツール306から切り離す前記ステップが自動的に実行される。好ましくは、前記着座検出器328は、前記スレーブロボット303を前記マスター入力ツール306から切り離すために、指令信号を前記制御ユニット305に送信する。
【0178】
好ましい動作モードによれば、前記スレーブロボット303を前記マスター入力ツール306から切り離す前記ステップは、マスター入力ツール306が前記安全追跡ボリューム部分354内に位置することが検出されると、ロボット手術システム301によって自動的に実行される。言い換えれば、前記スレーブロボット303を前記マスター入力ツール306から切り離す前記ステップは、マスター入力ツール306が前記追跡サブボリューム329の外側に位置することが検出されると、ロボット手術システム301によって自動的に実行される。
【0179】
好ましい動作モードによれば、この方法は、実質的に垂直な回転軸(V-V)を中心に所定の追跡ボリューム308を旋回することによって、手術用椅子(309)の着座面(310)に着座しながら、それを実質的に垂直な回転軸(V-V)を中心に旋回する更なるステップを含む。このようにして、旋回中に不要な指令がスレーブロボットに送信されることはない。
【0180】
動作モードによれば、外科医332は、前記方法を実行する。
【0181】
別個に又は組み合わせて提供される前述した特徴によって、適用可能な場合、特定の実施形態においては、時々上記に開示されたニーズとは対照的なニーズを満たすことも可能であり、前述した有利な効果を得ることが可能である。特に、
ロボット手術システム、滅菌コンソール、及び手術アリーナが提供され、これによってロボット手術中に外科医の快適性が向上されるとともに、それすることによって入力指令の検出精度の低下を回避することができる。
ロボット手術及びロボット顕微手術を行うときに、外科医は、患者の解剖学的構造の近傍に座ることができ、同時に動き回ることができる。
手術中の外科医の快適性が向上され、それによって、患者の解剖学的構造に対して長く続く外科手術において、集中力を失うリスクが最小限に抑えることができる。
外科医は、マスター入力ツールを安全且つ無菌の場所に置くことができ、椅子が垂直な軸を中心に回転している間でも、不要な指令をスレーブ手術器具に送信するリスクを低減することができる。
外科医は、必要あれば、手術中に肉眼で患者の解剖学的構造を見ることができる。
【0182】
当業者は、前述した実施形態に多くの変更及び改変を行うことができ、又は、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく個別のニーズを応じて機能的に同等である他の要素に置き換えることができる。
【符号の説明】
【0183】
301 ロボット手術システム
302 滅菌コンソール
303 スレーブロボットアセンブリ、又はスレーブロボット
304 スレーブ手術器具、又は手術器具
305 制御ユニット
306 マスター入力ツール
306L 左マスター入力ツール
306R 右マスター入力ツール
307 フィールドジェネレータ
308 追跡ボリューム
308L 第1追跡ボリューム
308R 第2追跡ボリューム
309 手術用椅子
310 手術用椅子の着座面
311 マスター入力ツールのセンシング装置
312 椅子有線接続
313 椅子無線接続
314 椅子基部構造
315 着座下部支持部分
316 シートバック部分
317L;R 肘掛け(左、右)
318 肘掛け面
319 肘掛け調整装置
320 肘掛け要素
321 ディスプレイ
322 着座調整装置
323 接地ホイール
324 ツール支持要素又はツール保持要素
325 ツール収容部
326 カップ底壁
327 カップ側壁
328 着座検出器
329 追跡サブボリューム
330 マスター有線接続
331 マスター無線接続
332 外科医
333 手術アリーナ
334 手術アーム
335 マイクロマニピュレータ
336 手術台
337 患者の解剖学的構造
338 ビジョンアセンブリ
339 顕微鏡接眼デバイス
340 画像取得デバイス
342 ロボットカート
343 カートハンドル
344 電源ケーブル
345 クラッチデバイス
346 着座要素本体
347 下部着座本体部分
348 手動指令又はユーザ指令
349 第1の指令信号
350 第2の指令信号
351 カート接地接触ユニット
352 接続要素
353 伸縮延長部分
354 安全追跡ボリューム
355 地面又は土
356 外科医の手
357 外科医の背部
358 遠隔位置
359 遠隔スクリーン
360 遠隔眼鏡
361 滅菌コンソールの滅菌ドレープ
362 壁又は障壁
V-V 垂直な軸
【手続補正書】
【提出日】2024-10-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
手動指令を検出するのに適したロボット手術システム(301)用の滅菌コンソール(302)であって、
機械的に接地されておらず、手術中に外科医に手持ちされるのに適した少なくとも1つのマスター入力ツール(306)と、
手術中に外科医がその上に着座するための少なくとも1つの着座面(310)を有する少なくとも1つの手術用椅子(309)と、
所定の追跡ボリューム(308)内の前記少なくとも1つのマスター入力ツール(306)の位置及び向きを検出するのに適した少なくとも1つの追跡システムと、
外科医が前記少なくとも1つのマスター入力ツール(306)を手持ちしていないときに、前記少なくとも1つのマスター入力ツール(306)がその上に置かれるように支持を提供する少なくとも1つのツール支持要素(324)と、
を備え、
前記少なくとも1つのマスター入力ツール(306)が、それに取り付けられた少なくとも1つの第1の参照フレーム(X1,Y1,Z1;X2,Y2,Z2)を規定し、
前記追跡システムは、それに取り付けられた第2の参照フレーム(X0、Y0、Z0)を規定するフィールドジェネレータ(307)を含み、
前記追跡ボリューム(308)は、前記追跡システムの前記フィールドジェネレータ(307)と一体であり、
前記追跡システムによって検出された位置及び向きは、前記第2の参照フレーム(X0、Y0、Z0)に対する前記少なくとも1つの第1の参照フレーム(X1、Y1、Z1;X2、Y2、Z2)の位置及び向きであり、それによって、前記ロボット手術システム(301)の制御ユニット(305)は、前記追跡ボリューム(308)内の前記少なくとも1つのマスター入力ツール(306)の前記位置及び向きに関する情報を受信するのに適しており、また、前記少なくとも1つの手術器具(304)を作動させるように、指令信号をスレーブロボットアセンブリ(303)に送信するのに適しており、
前記追跡システムの前記フィールドジェネレータ(307)は、前記手術用椅子(309)の一部と一体であり、それによって、外科医が前記手術用椅子(309)の前記着座面(310)に着座し、前記少なくとも一つのマスター入力ツール(306)を手持ちしたとき、前記マスター入力ツール(306)は、前記追跡ボリューム(308)内に位置し、その位置及び向きは、前記追跡システムによって検出可能である、
滅菌コンソール(302)。
【外国語明細書】