(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025040321
(43)【公開日】2025-03-24
(54)【発明の名称】高速度撮影装置及び高速度撮影装置用付属装置
(51)【国際特許分類】
H04N 23/56 20230101AFI20250314BHJP
H04N 23/50 20230101ALI20250314BHJP
H04N 23/67 20230101ALI20250314BHJP
G03B 17/56 20210101ALI20250314BHJP
G03B 15/00 20210101ALI20250314BHJP
G03B 17/18 20210101ALI20250314BHJP
G03B 13/36 20210101ALI20250314BHJP
【FI】
H04N23/56
H04N23/50
H04N23/67
G03B17/56 Z
G03B15/00 T
G03B17/18
G03B13/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023147167
(22)【出願日】2023-09-11
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】弁理士法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川合 潤
(72)【発明者】
【氏名】井原 薫
【テーマコード(参考)】
2H011
2H102
2H105
5C122
【Fターム(参考)】
2H011BA41
2H102AA33
2H102BA05
2H102BB01
2H102CA02
2H105EE11
2H105EE16
5C122DA03
5C122DA30
5C122EA42
5C122FD01
5C122GE11
5C122GG05
(57)【要約】
【課題】被写体に対する撮影(視野)範囲の調整作業を簡便に且つ的確に行う。
【解決手段】本発明に係る高速度撮影装置の一態様は、肉眼で捉えられない高速な現象に対する動画像を撮影するための高速度撮影装置であって、撮影対象である被写体からの光学像を繰り返し取得する撮像部(11、101)と、前記被写体に向けてレーザ光を照射して、前記撮像部による撮影範囲の中心位置に対応する点を通り且つ当該装置の本体の高さ方向に延伸するレーザ光による線状のマーカを前記被写体上に形成するマーカ形成部(106)と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肉眼で捉えられない高速な現象に対する動画像を撮影するための高速度撮影装置であって、
撮影対象である被写体からの光学像を繰り返し取得する撮像部と、
前記被写体に向けてレーザ光を照射して、前記撮像部による撮影範囲の中心位置に対応する点を通り且つ当該装置の本体の高さ方向に延伸するレーザ光による線状のマーカを前記被写体上に形成するマーカ形成部と、
を備える高速度撮影装置。
【請求項2】
前記撮像部は、前記被写体から到来する光を取り込む撮像光学系を含み、前記マーカ形成部は、前記撮像光学系を正面視した状態で当該装置の本体の高さ方向に該撮影光学系と一直線上に位置するレーザ光射出部を含む、請求項1に記載の高速度撮影装置。
【請求項3】
前記マーカ形成部は、前記撮影範囲の中心位置に対応する点を通り且つ当該装置の本体の高さ方向に延伸するレーザ光による線状のマーカに加え、該撮影範囲の中心位置に対応する点を通り且つ当該装置の本体の幅方向に延伸するレーザ光による線状のマーカを前記被写体上に形成する、請求項1に記載の高速度撮影装置。
【請求項4】
レーザ光を利用して当該装置と前記被写体との間の距離を計測する測距部をさらに備える、請求項1に記載の高速度撮影装置。
【請求項5】
前記撮像部による撮影画像の焦点を調整する焦点調整部と、合焦状態であるか否かを判定する合焦判定部と、をさらに備え、
前記マーカ形成部は、前記合焦判定部による判定結果に応じて、照射するレーザ光の色を変更する、請求項1に記載の高速度撮影装置。
【請求項6】
肉眼で捉えられない高速な現象に対する動画像を撮影するための高速度撮影装置の、撮影対象である被写体からの光学像を繰り返し取得する撮像部を含む本体部に装着して使用される付属装置であって、
前記被写体に向けてレーザ光を照射して、前記撮像部による撮影範囲の中心位置に対応する点を通り且つ当該装置の本体の高さ方向に延伸するレーザ光による線状のマーカを前記被写体上に形成するマーカ形成部、
を備える高速度撮影装置用付属装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速の現象を撮影するための高速度撮影装置、及び該装置に装着して用いられる付属装置に関する。
【背景技術】
【0002】
破壊、爆発、衝突、放電、或いは物体の高速移動といった、通常の撮影装置(ビデオカメラ)では捉えることが困難であるような高速の現象を撮影するために、専用の高速度撮影装置が用いられている。例えば非特許文献1に記載の高速度撮影装置(高速度ビデオカメラ)は、最高で1000万コマ/秒(10Mfps)もの極めて高速度の撮影が可能であり、高速な現象の詳細な観察に非常に威力を発揮している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「高速度ビデオカメラ High-Speed Video Camera Hyper Vision HPV-X2」、株式会社島津製作所、[online]、[2023年9月8日検索]、インターネット<URL: https://www.an.shimadzu.co.jp/sites/an.shimadzu.co.jp/files/pim/pim_document_file/an_jp/brochures/20730/c220-4594.pdf>
【非特許文献2】矢野、西川、「高速度引張試験におけるひずみ分布のダイナミック観察」、株式会社島津製作所、[online]、[2023年9月8日検索]、インターネット<URL: https://www.an.shimadzu.co.jp/sites/an.shimadzu.co.jp/files/pim/pim_document_file/an_jp/applications/application_note/21335/an_01-00496-jp.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献2、特許文献1には、上述したような高速度撮影装置を用いて引張試験における対象物のひずみや破壊を観察する方法が記載されている。こうした観察においては、高速度撮影装置は試験機の至近に設置される一方、撮影条件の設定などの制御や該撮影装置で得られた画像の表示、解析処理等のためのパーソナルコンピュータ(PC)は試験機や撮影装置から離れた場所に設置され、両者の間はケーブルで接続される。高速度撮影装置は一般的な撮影装置とは異なり、その本体にモニタ用のディスプレイを備えていない。そのため、ユーザ(観察者)が撮影範囲(撮影装置の視野範囲或いは画角)を調整する際には、PC用モニタの画面にリアルタイムで表示される画像を遠目で見ながら、撮影装置の角度や位置を調整したり、PC用モニタと撮影装置の設置位置との間を何度も行き来しながら、撮影装置の角度や位置を調整したりする必要がある。
【0006】
こうしたことから、従来の高速度撮影における撮影装置の視野範囲の調整の作業は、かなり煩雑で時間が掛かる作業であった。また、高速度撮影装置を用いた撮影では、撮影対象の現象を生じさせるための準備に時間が掛かったりコストが掛かったりすることが多い。そのため、撮影のやり直しが難しい或いは実質的に不可能である場合もあり、視野範囲の調整作業の煩雑さや困難さはユーザにとって大きな心理的な負担でもあった。
【0007】
本発明はこうした課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、撮影の際の装置の視野範囲の調整作業を簡便に且つ的確に行うことができる高速度撮影装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る高速度撮影装置の一態様は、肉眼で捉えられない高速な現象に対する動画像を撮影するための高速度撮影装置であって、
撮影対象である被写体からの光学像を繰り返し取得する撮像部と、
前記被写体に向けてレーザ光を照射して、前記撮像部による撮影範囲の中心位置に対応する点を通り且つ当該装置の本体の高さ方向に延伸するレーザ光による線状のマーカを前記被写体上に形成するマーカ形成部と、
を備える。
【0009】
また本発明に係る高速度撮影装置用付属装置の一態様は、肉眼で捉えられない高速な現象に対する動画像を撮影するための高速度撮影装置の、撮影対象である被写体からの光学像を繰り返し取得する撮像部を含む本体に装着して使用される付属装置であって、
前記被写体に向けてレーザ光を照射して、前記撮像部による撮影範囲の中心位置に対応する点を通り且つ前記高速度撮影装置の本体の高さ方向に延伸するレーザ光による線状のマーカを前記被写体上に形成するマーカ形成部、
を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る高速度撮影装置及び高速度撮影装置用付属装置の上記態様では、マーカは撮像部による撮像範囲に対して固定されており、撮影装置を移動させたり傾けたりすると、それに伴ってマーカも移動したり傾く。従って、本発明に係る高速度撮影装置及び高速度撮影装置用付属装置の上記態様によれば、ユーザは、例えば高速度撮影装置本体とは離れた位置に置かれたディスプレイモニタで得られるリアルタイムでの画像を見ることなく、被写体に投影されたレーザ光によるマーカを目視で確認しながら当該撮影装置の位置や角度を的確に調整することができる。これにより、撮影対象が高速度撮影装置の視野範囲の中心付近に来るように、簡便に且つ的確に調整作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態における高速度撮影装置及び被写体上に形成されるマーカを示す斜視図。
【
図2】
図1に示した高速度撮影装置を含む撮影システムの全体図。
【
図3】本実施形態の高速度撮影装置の電気系を中心とするブロック構成図。
【
図4】被写体(試験片)上にマーカが照射された状態及びその状態のときの撮影範囲と被写体との関係の一例を示す概略図。
【
図5】高速度撮像装置の姿勢を変えた場合の撮影範囲と被写体との関係の一例を示す概略図。
【
図6】本発明の一実施形態である高速度撮影装置用付属装置を撮影装置本体に装着した状態を示す外観斜視図。
【
図7】本実施形態の高速度撮影装置用付属装置の外観斜視図。
【
図8】一変形例の高速度撮影装置の電気系を中心とするブロック構成図。
【
図9】他の変形例の高速度撮影装置及び被写体上に形成されるマーカを示す斜視図。
【
図10】さらに他の変形例の高速度撮影装置の電気系を中心とするブロック構成図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において「高速度撮影」とは、凡そ10万コマ/秒程度以上のフレームレートでの動画像の撮影のことをいう。
【0013】
以下、本発明に係る高速度撮影装置の一実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
図2は、本実施形態の高速度撮影装置を含む撮影システムの全体図である。
図1は、本実施形態の高速度撮影装置及び被写体上に形成されるマーカを示す斜視図である。
図3は、本実施形態の高速度撮影装置の電気系を中心とするブロック構成図である。
【0014】
撮影システムは、被写体4を高速度撮影するものであり、
図2に示すように、高速度撮影装置1と、パーソナルコンピュータ(PC)2と、その両者を接続するケーブル3と、を含む。PC2は、CPU等が内蔵されたPC本体のほか、キーボード、ポインティングデバイスなどの入力部、ディスプレイモニタ等の表示部を含む。
高速度撮影装置1は、装置本体10と、少なくとも一部が該装置本体10から前方に突出した撮像光学系11と、当該装置1を持ち運ぶための把手12と、を含む。
【0015】
図1(A)に示すように、装置本体10の前面下方には、レーザ光射出窓13が設けられている。装置本体10を正面前方から見たときに、レーザ光射出窓13は撮像光学系11の中心点を通る鉛直線上に位置している。従って、装置本体10を通常の姿勢で床上に置いたとき、レーザ光射出窓13は撮像光学系11の真下に位置する。
【0016】
図3に示すように、高速度撮影装置1は、撮像光学系11、バーストイメージセンサ101、画像処理部102、転送処理部103、制御部105、及びレーザマーカ形成部106、などの機能ブロックを備える。画像処理部102は、信号増幅器やアナログ/デジタル変換器(ADC)などを含む。転送処理部103はバッファメモリなどを含む。レーザマーカ形成部106以外の構成要素は、従来の、例えば非特許文献1に記載の高速度撮影装置が備える構成要素と同一又は相当するものとし得る。なお、非特許文献1に記載の装置でもそうであるが、一般にこうした高速度撮影装置では、撮影に最低限必要である機能のみが搭載されていることが多く、撮影した画像をモニタするためのディスプレイモニタなどは非搭載である。
【0017】
バーストイメージセンサ101は高速度撮影のための特殊な構造のイメージセンサであり、2次元状に配置された多数の光電変換部以外に、N(Nは1よりも大きな整数で例えば100)フレーム数の画像信号を蓄積可能な記憶部を内蔵する。一般的なイメージセンサでは、光電変換部において得られた1フレーム分の画像信号を、その画像信号の取得直後にセンサ外部へと送出する必要がある。これに対し、バーストイメージセンサ101では、光電変換部において得られた1フレーム分の画像信号をパラレル信号線を通してごく短時間に内部の記憶部に転送することができる。そのため、バーストイメージセンサ101では、Nフレーム分の画像信号を該センサ101から外部へ読み出すことなく、連続的な撮影を行うことができる。
【0018】
上記撮影システムにおける典型的な撮影動作は次の通りである。
撮影モード(トリガー条件)、フレームレート、露光時間などの所定の撮影条件は、PC2において予め設定され、制御部105に送られる。撮影開始のトリガ―が外部から与えられると、制御部105の制御の下で、バーストイメージセンサ101は高速度連続撮影を実行する。撮影が開始されると、撮像光学系11を通して入射した被写体4の光学像は、バーストイメージセンサ101の受光面に投影される。バーストイメージセンサ101は、設定されたフレームレートで画像信号を内部の記憶部に蓄積する。撮影終了後、バーストイメージセンサ101の内部の記憶部に保持された画像信号は、順次読み出されて画像処理部102に入力される。画像処理部102は入力された各画像信号を増幅したうえでデジタルデータに変換する。転送処理部103は、所定のタイミングで画像データをケーブル3を通してPC2に転送する。
【0019】
上述したような高速度撮影装置1を用いた高速度撮影では、通常、該高速度撮影装置1は専用のホルダ等により位置や角度(姿勢)が固定される。いま一例として、被写体4が試験片であり、
図4(A)に示すように、引張試験機にセットされた試験片が上下方向にそれぞれ高速で引っ張られて変形・破断する際の様子を高速度撮影する場合を考える(以下の説明及び図面では、被写体が試験片であるため、それらにいずれも符号「4」を付す)。
【0020】
この場合、観察したいのは、試験片4上の引張方向につまり上下方向に細長い範囲であり、その範囲が確実に撮影範囲内に収まる、好ましくは撮影範囲の中央付近に位置することが重要である。しかしながら、一般にこうした高速度撮像装置自体はディスプレイモニタを備えていないため、従来は、ユーザが引張試験機とPCとの間を行き来しながら、PC用モニタの画面上で撮影範囲と試験片との位置関係を確認し、撮影範囲内の適宜の位置に試験片が来るように高速度撮影装置の位置や姿勢を調整していた。このため、撮影範囲の調整作業はかなり面倒であった。また、一旦適切に調整したあとに、振動等によって試験片が撮影範囲から外れてしまっても、それに気付かずに撮影を実施してしまうような場合もあった。これに対し、本実施形態の高速度撮影装置1では、以下のようにして、簡便に撮影範囲の調整が可能である。
【0021】
ユーザがPC2の入力部で所定の操作を行うか又は装置本体10に設けられたスイッチ(図示せず)を操作すると、制御部105はレーザマーカ形成部106を駆動する。すると、レーザマーカ形成部106においてレーザ光源が点灯し、レーザ光射出窓13から、
図1、
図2に示すように、鉛直方向(装置本体10の高さ方向)に扇状に広がるレーザ光が射出される。こうした概ね扇状に広がるレーザ光の射出は、レーザ光源から発せられる細径の光を適切な形状のレンズで拡散することによって実現可能である。レーザ光射出窓13を通して射出されたレーザ光が試験片4に当たると、
図4(A)に示すように、該試験片4上には直線状のマーカ5が投影される。使用するレーザ光の色は、例えば赤、緑など適宜に決めることができるが、ユーザが選択又は変更できるようにしておくことで、試験片4の色等に応じてマーカ5の視認性を向上させることができる。
【0022】
試験片4上に投影されるマーカ5は、撮像光学系11の中心点の延長線上の点、つまり当該装置1で撮影され得る略矩形状の撮影範囲6の中心点6Cを通る。従って、
図4(A)に示すように、上下方向に細長い形状の試験片4に投影されているマーカ5が、該試験片4の幅方向の略中央に来るように当該装置1の位置や姿勢を調整すると、
図4(B)に示すように、撮影範囲6の中心点6Cが概ね該試験片4の幅方向の中央に位置する。なお、
図4(B)において中心点6Cはあくまで説明の都合上記載したものであって、実際に見えるわけではない。
【0023】
このように本実施形態の高速度撮影装置1では、試験片などの被写体4上に投影されるマーカ5を利用して、観察したい対象物が撮影範囲6の略中央に来るように、高速度撮影装置1の位置や姿勢を簡便に調整することができる。それによって、高速度撮影装置1や試験機から離れた位置にあるPC用モニタで撮影範囲と被写体との位置関係を確認する必要がなくなり、撮影作業の効率化を図ることができる。また、撮影範囲と被写体との位置関係が不適切な状態で撮影を実施してしまうことを避けることができる。
【0024】
本実施形態の高速度撮影装置1では、マーカ5の延伸方向は装置本体10の高さ方向と一致しているから、装置本体10を傾けると、
図5(A)、(B)に示すように、撮影範囲6と共にマーカ5も傾く。従って、観察したい範囲が縦方向に長い、横方向に長い、或いは斜め方向に長いのかによって、当該装置1の姿勢を適切に調整すればよい。
【0025】
[変形例]
上記実施形態の高速度撮影装置1では、マーカ5は直線状であり、ユーザは、そのマーカ5から撮影範囲6の横方向の中央位置を把握することはできるものの、撮影範囲6の中心点6Cの位置が把握できるわけではない。上述したような形状の試験片に対する引張試験における撮影の場合には、そうした把握で十分であるものの、目的によっては撮影範囲6の中心点6Cを正確に把握したい場合もあり得る。そうした目的に対しては、直線状ではなく例えば十字形状のマーカ50を被写体4上に投影できるようにするとよい。
【0026】
図9は、一変形例による高速度撮影装置1A及び被写体4上に形成されるマーカ50を示す斜視図である。この高速度撮影装置1Aは、装置本体10の前面において撮像光学系11の真下に第1レーザ光射出窓13が設けられるとともに、撮像光学系11の真横に第2レーザ光射出窓15が設けられている。第1レーザ光射出窓13から射出されるレーザ光は、縦方向(装置本体10の高さ方向)に扇状に広がる。他方、第2レーザ光射出窓15から射出されるレーザ光は、横方向(装置本体10の幅方向)に扇状に広がる。前者は被写体4上に鉛直方向に延伸するマーカ5Aを投影し、後者は被写体4上に水平方向に延伸するマーカ5Bを形成し、それら二つのマーカ5A、5Bが合成されて略十字形状のマーカ50が形成される。この十字形状のマーカ50の交点部分は、撮像光学系11の中心点の延長線上になり、撮影範囲6の中心点6Cである。
【0027】
上記変形例による高速度撮影装置1Aでは、被写体4上に投影されるマーカ50の交点部分が該被写体4上で最も詳細に観察したい部位に来るように、装置1Aの位置や姿勢を調整すればよい。
【0028】
また、上記実施形態の高速度撮影装置は、単にマーカ5、50を被写体4上に投影するものであるが、レーザ光を利用した測距機能を組み込むようにしてもよい。具体的には、
図8に示すように、被写体4に対してパルス状のレーザ光を照射し、被写体4に当たって反射して戻って来たレーザ光を検出して、その戻り光の到達時間から距離を算出する測距部107を組み込むようにすることができる。算出された距離の値は、装置本体10に付設した表示器上に表示するようにしてもよいし、或いはPC2で確認できるようにしてもよい。
【0029】
図10は、さらに他の変形例による高速度撮影装置の電気系を中心とするブロック構成図である。この撮影装置は、上記実施形態の撮影装置に加えて、焦点(ピント)を調整する焦点調整部108、及び合焦状態か否かを判定する合焦判定部109、を備える。焦点調整部108は、例えば撮像光学系11に含まれる1以上のレンズの位置を、ユーザによるマニュアル操作を受けて移動させる機構を含むものとすることができる。合焦判定部109は、バーストイメージセンサ101から出力される画像信号を受けて合焦状態か否かを判定するもので、位相差方式、コントラスト方式などの周知の方法を利用することができる。但し、バーストイメージセンサ101を用いず、合焦判定用の廉価なイメージセンサを別途設けるようにしてもよい。
【0030】
この高速度撮影装置において、制御部105は合焦判定部109から、その時点で撮影される画像が焦点が合っている合焦状態であるか焦点が合っていない非合焦状態であるかを示す判定結果を受け取る。そして、その判定結果に応じて、レーザマーカ形成部106を駆動する際にレーザ光源で発生するレーザ光の色を変更する。例えば、レーザ光の色を、合焦状態では緑色、非合焦状態では赤色に設定する。これにより、ユーザがマニュアル操作で焦点合わせを行う際に、被写体4上に投影されているマーカ5、50の色を確認し、その色が緑色(合焦状態)になるように調整を行うことができる。
【0031】
[付属装置の一実施形態]
上記実施形態及び変形例では、被写体上にマーカ5、50を形成する機能が装置本体10に組み込まれていたが、マーカを形成する機能を有さない高速度撮影装置を既に保有しているユーザにとっては、該装置を買い替えるよりも後付けで同機能を追加できる方が都合が良い。
【0032】
図6は、既存の高速度撮影装置1Bに追加的に用いることができる付属装置20を装置本体10に取り付けた状態を示す外観斜視図である。
図7はこの付属装置20単体の外観斜視図である。
この付属装置20は、例えば非特許文献1に開示されている高速度撮影装置の装置本体10の前面下部に装着して用いることができる付属装置である。
【0033】
付属装置20は、上面視で略コ字形状の本体21と、その本体21の両側の張り出し部を高速度撮影装置1Bの装置本体10に固定するための固定部23と、レーザ光照射窓22と、スイッチ24と、を備える。本体21には、上述したレーザマーカ形成部106に相当する構成要素とバッテリーとが内蔵されており、スイッチ24でレーザ光源のオン・オフが可能である。
【0034】
図6に示すように、この付属装置20を適切に装置本体10に装着すると、正面視でレーザ光照射窓22は撮像光学系11の真下に位置する。従って、スイッチ24の操作によりレーザ光源をオンすると、レーザ光照射窓22から
図1に示したのとほぼ同等の扇状のレーザ光が前方に向けて射出され、その前方に位置する被写体4上に直線状のマーカ5が投影される。これにより、付属装置20を用いて、高速度撮影装置1の位置や姿勢の調整を簡便に行うことができる。
【0035】
勿論、この付属装置20にも、上述した各変形例に記載の構成を追加することができることは当然である。
【0036】
また、上記実施形態及び各変形例はいずれも本発明の単に一例であって、本発明の趣旨の範囲で適宜修正、変更、追加を行っても本願特許請求の範囲に包含されることは当然である。
【0037】
[種々の態様]
上述した例示的な実施形態が以下の態様の具体例であることは、当業者には明らかである。
【0038】
(第1項)本発明に係る高速度撮影装置の一態様は、肉眼で捉えられない高速な現象に対する動画像を撮影するための高速度撮影装置であって、
撮影対象である被写体からの光学像を繰り返し取得する撮像部と、
前記被写体に向けてレーザ光を照射して、前記撮像部による撮影範囲の中心位置に対応する点を通り且つ当該装置の本体の高さ方向に延伸するレーザ光による線状のマーカを前記被写体上に形成するマーカ形成部と、
を備える。
【0039】
(第6項)また本発明に係る高速度撮影装置用付属装置の一態様は、肉眼で捉えられない高速な現象に対する動画像を撮影するための高速度撮影装置の、撮影対象である被写体からの光学像を繰り返し取得する撮像部を含む本体に装着して使用される付属装置であって、
前記被写体に向けてレーザ光を照射して、前記撮像部による撮影範囲の中心位置に対応する点を通り且つ前記高速度撮影装置の本体の高さ方向に延伸するレーザ光による線状のマーカを前記被写体上に形成するマーカ形成部、
を備える。
【0040】
第1項に記載の高速度撮影装置及び第6項に記載の付属装置では、撮影対象である被写体上に撮影範囲(視野範囲)の中心位置に対応する点を通る直線状のマーカが投影される。従って、ユーザは、例えば高速度撮影装置本体とは離れた位置に置かれたディスプレイモニタで得られるリアルタイムでの画像を見ることなく、被写体に投影されたマーカを目視で確認しながら当該撮影装置の位置や角度を的確に調整することができる。これにより、撮影対象が高速度撮影装置の視野範囲の中心付近に来るように、簡便に且つ的確に調整作業を行うことができる。
【0041】
また特に第6項に記載の付属装置によれば、ユーザが既に保有している高速度撮影装置に後付けで、レーザ光によるマーカを被写体上に投影する機能を付加することができる。これにより、ユーザにとっては、コストを抑えながら撮影範囲の調整作業を簡便に且つ的確に行うことができるという利点がある。
【0042】
(第2項)第1項に記載の高速度撮影装置において、前記撮像部は、前記被写体から到来する光を取り込む撮像光学系を含み、前記マーカ形成部は、前記撮像光学系を正面視した状態で当該装置の本体の高さ方向に該撮影光学系と一直線上に位置するレーザ光射出部を含むものとすることができる。
【0043】
「前記撮像部による撮影範囲の中心位置に対応する点を通り且つ前記高速度撮影装置の本体の高さ方向に延伸するレーザ光による線状のマーカを前記被写体上に形成する」方法としては、被写体からの光学像を取り込む撮像光学系を通して、例えばその光学系と同軸でレーザ光を射出する方法も考え得る。これに対し、第2項に記載の高速度撮影装置によれば、撮影のための光学系の構成を変更することなく、容易にマーカ形成部を追加することができ、装置の設計や製造のコストを抑えることができる。
【0044】
(第3項)第1項に記載の高速度撮影装置において、前記マーカ形成部は、前記撮影範囲の中心位置に対応する点を通り且つ当該装置の本体の高さ方向に延伸するレーザ光による線状のマーカに加え、該撮影範囲の中心位置に対応する点を通り且つ当該装置の本体の幅方向に延伸するレーザ光による線状のマーカを前記被写体上に形成するものとすることができる。
【0045】
第3項に記載の高速度撮影装置によれば、被写体上の狭い一部の領域が撮影範囲の中心付近に来るように、撮影装置の位置や姿勢を簡便に調整することができる。
【0046】
(第4項)第1項に記載の高速度撮影装置において、レーザ光を利用して当該装置と前記被写体との間の距離を計測する測距部をさらに備えるものとすることができる。
【0047】
第4項に記載の高速度撮影装置によれば、別途レーザ測距計等を用意することなく、被写体までの距離を簡便に知ることができる。
【0048】
(第5項)第1項に記載の高速度撮影装置において、
前記撮像部による撮影画像の焦点を調整する焦点調整部と、合焦状態であるか否かを判定する合焦判定部と、をさらに備え、
前記マーカ形成部は、前記合焦判定部による判定結果に応じて、照射するレーザ光の色を変更するものとすることができる。
【0049】
第5項に記載の高速度撮影装置によれば、被写体上に投影したマーカを利用して焦点(ピント)合わせの作業を簡便に且つ的確に行うことができる。
【符号の説明】
【0050】
1、1A…高速度撮影装置
10…装置本体
101…バーストイメージセンサ
102…画像処理部
103…転送処理部
105…制御部
106…レーザマーカ形成部
107…測距部
108…焦点調整部
109…合焦判定部
11…撮像光学系
12…把手
13、15…レーザ光射出窓
2…PC
3…ケーブル
4…被写体(試験片)
5、5A、5B、50…マーカ
6…撮影範囲
6C…中心点
20…付属装置
21…本体
23…固定部
22…レーザ光照射窓
24…スイッチ