(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025040336
(43)【公開日】2025-03-24
(54)【発明の名称】光アイソレータ
(51)【国際特許分類】
G02B 27/28 20060101AFI20250314BHJP
【FI】
G02B27/28 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023147203
(22)【出願日】2023-09-11
(71)【出願人】
【識別番号】392017004
【氏名又は名称】湖北工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 勝博
(72)【発明者】
【氏名】木藤 克哉
【テーマコード(参考)】
2H199
【Fターム(参考)】
2H199AA02
2H199AA07
2H199AA09
2H199AA16
2H199AA32
2H199AA67
2H199AA83
2H199AA92
(57)【要約】
【課題】 光アイソレータを小型化する。
【解決手段】 光アイソレータ10は、第1光ファイバ20と、第1レンズ30と、第1及び第2アイソレータユニット40、50と、第2レンズ60と、第2光ファイバ70を備え、これらの部材は順方向にこの順に所定の軸線に沿って配置されている。第1アイソレータユニットは、第1複屈折板42と、これより順方向後段の第2複屈折板46を含み、第2アイソレータユニットは、第3複屈折板52と、これより順方向後段の第4複屈折板56を含む。第1乃至第4複屈折板は、順方向に進行する光線の入射面又は出射面を構成する傾斜面42a,46a、52a,56aをそれぞれ有する。第1光ファイバの斜研磨方向と第1複屈折板の傾斜方向とは180°を成しており、第2光ファイバの斜研磨方向と第4複屈折板の傾斜方向とは180°を成しており、第2及び第3複屈折板の傾斜方向は互いに直交している。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1又は複数の第1コアを備え、その第1端面が斜研磨されている第1光ファイバと、第1光軸を有する第1レンズと、第1アイソレータユニットと、第2アイソレータユニットと、第2光軸を有する第2レンズと、1又は複数の第2コアを備え、その第2端面が斜研磨されている第2光ファイバと、を備え、これらが順方向においてこの順に所定の軸線に沿って配置されている光アイソレータであって、
前記第1レンズは、前記第1光ファイバの前記第1コアから出射される任意の偏光状態にある1又は複数の光線をコリメートし、
前記第1アイソレータユニットは、第1複屈折板と、その順方向後段に位置している第2複屈折板と、前記第1及び第2複屈折板の間に設けられた第1ファラデー回転子と、を含み、
前記第2アイソレータユニットは、第3複屈折板と、その順方向後段に位置している第4複屈折板と、前記第3及び第4複屈折板の間に設けられた第2ファラデー回転子と、を含み、
前記第2レンズは、前記第1及び第2アイソレータユニットを透過した前記光線が前記第2光ファイバの対応する前記第2コアに入射するように前記光線を収束させ、
前記第1乃至第4複屈折板のそれぞれは、四角柱形状を呈し、その中心軸は前記軸線と直交しており、且つ、前記軸線に対して傾斜している法線を有する傾斜面を有しており、
前記第1及び第3複屈折板の前記傾斜面は、前記順方向に進行する光線の入射面をそれぞれ構成しており、前記第2及び第4複屈折板の前記傾斜面は、前記順方向に進行する光線の出射面をそれぞれ構成しており、
前記第1乃至第4複屈折板のそれぞれは、前記傾斜面と接続されており且つ前記中心軸と平行である一対の対向面を有しており、前記一対の対向面のうち軸線方向における辺の長さが短いほうの面である幅狭面から前記長さが長い方の面である幅広面に向かう方向を前記傾斜面の傾斜方向と規定すると、前記第1及び第2複屈折板の傾斜方向は180°を成すとともに前記第3及び第4複屈折板の傾斜方向は180°を成しており、
前記第1及び第2光ファイバの前記第1及び第2端面をそれぞれ正面視した場合において、対応する前記第1及び第2レンズからそれぞれ最も離間している位置である遠位端から対応する前記第1及び第2レンズにそれぞれ最も近接している位置である近位端に向かう方向を斜研磨方向と規定すると、
前記第1光ファイバの斜研磨方向と前記第1複屈折板の傾斜方向は180°を成しており、
前記第2光ファイバの斜研磨方向と前記第4複屈折板の傾斜方向は180°を成しており、
前記第2複屈折板の傾斜方向と前記第3複屈折板の傾斜方向は互いに直交している、
光アイソレータ。
【請求項2】
請求項1に記載の光アイソレータにおいて、
前記第1光ファイバは、複数の前記第1コアを備えるマルチコア光ファイバ、又は、1つの前記第1コアを備える複数本のシングルコア光ファイバが束ねられたバンドル光ファイバであり、
前記第1光ファイバの前記第1端面の正面視において、前記複数の第1コアは、前記複数の第1コアの中心に関して点対称に配置されており、
前記第1端面上の前記中心は、前記第1レンズの焦点上に位置しており、
前記第1コアから出射される光線の光路を平均化した平均光路を進行する光線を平均光線と規定すると、
前記第1及び第2複屈折板の各傾斜面のテーパ角は、前記第1アイソレータユニット内における前記平均光線の正味の屈折量が、前記第1レンズから出射された前記平均光線の前記第1光軸からのシフト量と等しくなるような値に設定されている、
光アイソレータ。
【請求項3】
請求項2に記載の光アイソレータにおいて、
前記第1光軸は、前記軸線上に位置している、
光アイソレータ。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の光アイソレータにおいて、
前記第1光ファイバは、複数の前記第1コアを備えるマルチコア光ファイバ、又は、1つの前記第1コアを備える複数本のシングルコア光ファイバが束ねられたバンドル光ファイバであり、
前記第2光ファイバは、複数の前記第2コアを備えるマルチコア光ファイバ、又は、1つの前記第2コアを備える複数本のシングルコア光ファイバが束ねられたバンドル光ファイバであり、
前記第2光ファイバの前記第2端面の正面視において、前記複数の第2コアは、前記複数の第2コアの中心に関して点対称に配置されており、
前記第2端面上の前記中心は、前記第2レンズの焦点上に位置しており、
前記第1コアから出射される光線の光路を平均化した平均光路を進行する光線を平均光線と規定すると、
前記平均光線は、前記第2アイソレータユニット内を前記第3及び第4複屈折板の傾斜方向と平行な方向である屈折方向に屈折し、
前記第3及び第4複屈折板の各傾斜面のテーパ角は、前記第2アイソレータユニット内における前記平均光線の正味の屈折量が、前記第2レンズに入射する前記平均光線の前記第2光軸からの前記屈折方向におけるシフト量と等しくなるような値に設定されている、
光アイソレータ。
【請求項5】
請求項4に記載の光アイソレータにおいて、
前記第2光軸は、前記軸線上に位置している、
光アイソレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光アイソレータに関する。特に、偏光無依存型の光アイソレータに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ1本当たりの伝送容量を増大させ、1ビット当たりのコストを低減する目的で、マルチコア光ファイバを用いた空間分割多重(SDM:Space Division Multiplexing)技術が適用された光伝送システムに関する研究開発が進められている。この光伝送システムには光アイソレータが不可欠である。光アイソレータは、光線を順方向にのみ通過させる光学部品である。例えば、特許文献1には、一対の複屈折板と、その間に設けられたファラデー回転子と、を含むアイソレータユニットが2個直列に配置されたアイソレータユニット群を備える光アイソレータが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
一般に、光アイソレータの寸法は小さい方が望ましい。しかしながら、例えばマルチコア光ファイバ用の光アイソレータにおいては、戻り光によるクロストークの増大を抑制するためにその寸法を大型化せざるを得ないという問題があり、この問題は、コア数が増加するほど顕著であった。このため、マルチコア光ファイバ用の光アイソレータを小型化することは特に困難であった。これまでは光アイソレータの光学特性を向上させることに重点が置かれており、寸法の小型化については十分な検討がなされておらず、改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上述した問題に対処するためになされたものである。即ち、本発明の目的の一つは、光アイソレータを小型化することが可能な技術を提案することにある。
【0006】
本発明の光アイソレータ(10)は、
1又は複数の第1コア(C1乃至C4)を備え、その第1端面(20a)が斜研磨されている第1光ファイバ(20)と、第1レンズ(30)と、第1アイソレータユニット(40)と、第2アイソレータユニット(50)と、第2レンズ(60)と、1又は複数の第2コア(C1乃至C4)を備え、その第2端面(70a)が斜研磨されている第2光ファイバ(70)と、を備え、これらが順方向においてこの順に所定の軸線(A)に沿って配置されている。
前記第1レンズ(30)は、前記第1光ファイバ(20)の前記第1コア(C1乃至C4)から出射される任意の偏光状態にある1又は複数の光線をコリメートし、
前記第1アイソレータユニット(40)は、第1複屈折板(42)と、その順方向後段に位置している第2複屈折板(46)と、前記第1及び第2複屈折板の間に設けられた第1ファラデー回転子(44)と、を含み、
前記第2アイソレータユニット(50)は、第3複屈折板(52)と、その順方向後段に位置している第4複屈折板(56)と、前記第3及び第4複屈折板の間に設けられた第2ファラデー回転子(54)と、を含み、
前記第2レンズ(60)は、前記第1及び第2アイソレータユニット(40、50)を透過した前記光線が前記第2光ファイバ(70)の対応する前記第2コア(C1乃至C4)に入射するように前記光線を収束させ、
前記第1乃至第4複屈折板(42,46、52,56)のそれぞれは、四角柱形状を呈し、その中心軸は前記軸線(A)と直交しており、且つ、前記軸線(A)に対して傾斜している法線を有する傾斜面(42a,46a、52a,56a)を有しており、
前記第1及び第3複屈折板(42、52)の前記傾斜面(42a、52a)は、前記順方向に進行する光線の入射面をそれぞれ構成しており、前記第2及び第4複屈折板(46、56)の前記傾斜面(46a、56a)は、前記順方向に進行する光線の出射面をそれぞれ構成しており、
前記第1乃至第4複屈折板(42,46、52,56)のそれぞれは、前記傾斜面と接続されており且つ前記中心軸と平行である一対の対向面(42c,42d、46c,46d、52c,52d、56c,56d)を有しており、前記一対の対向面のうち軸線方向における辺の長さが短いほうの面である幅狭面(42c、46c、52c、56c)から前記長さが長い方の面である幅広面(42d、46d、52d、56d)に向かう方向を前記傾斜面の傾斜方向と規定すると、前記第1及び第2複屈折板(42,46)の傾斜方向は180°を成すとともに前記第3及び第4複屈折板(52,56)の傾斜方向は180°を成しており、
前記第1及び第2光ファイバ(20、70)の前記第1及び第2端面(20a、70a)をそれぞれ正面視した場合において、対応する前記第1及び第2レンズ(30、60)からそれぞれ最も離間している位置である遠位端から対応する前記第1及び第2レンズ(30、60)にそれぞれ最も近接している位置である近位端に向かう方向を斜研磨方向と規定すると、
前記第1光ファイバ(20)の斜研磨方向と前記第1複屈折板(42)の傾斜方向は180°を成しており、
前記第2光ファイバ(70)の斜研磨方向と前記第4複屈折板(56)の傾斜方向は180°を成しており、前記第2複屈折板(46)の傾斜方向と前記第3複屈折板(52)の傾斜方向は互いに直交している。
【0007】
本発明によれば、光アイソレータを小型化できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】本発明の実施形態に係る光アイソレータの側面図である。
【
図2】入力側のマルチコア光ファイバの端面の正面図である。
【
図3】出力側のマルチコア光ファイバの端面の正面図である。
【
図4A】1つ目の比較例としての光アイソレータの側面図であり、出力側のマルチコア光ファイバの斜研磨方向及び出力側コリメータの軸線からのシフト量を示す図である。
【
図5A】2つ目の比較例としての光アイソレータの側面図であり、出力側のマルチコア光ファイバの斜研磨方向及び出力側コリメータの軸線からのシフト量を示す図である。
【
図6A】3つ目の比較例としての光アイソレータの側面図であり、出力側のマルチコア光ファイバの斜研磨方向及び出力側コリメータの軸線からのシフト量を示す図である。
【
図7】順方向後段のアイソレータユニットの前段の複屈折板の傾斜方向に対する出力側のマルチコア光ファイバの斜研磨方向の角度θと出力側のマルチコア光ファイバの軸線からの変位量Δdとの関係を規定したグラフである。
【
図8A】光アイソレータの前段部分の側面図であり、平均光路を示す図である。
【
図8B】光アイソレータの後段部分の平面図であり、平均光路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態に係る光アイソレータ10について説明する。光アイソレータ10は、偏光無依存型、即ち、入射光線の偏光状態に関わらず挿入損失が変化しないタイプの光アイソレータである。
図1Aは光アイソレータ10の側面図であり、
図1Bは光アイソレータ10の平面図である。
図1A及び
図1Bに示すように、光アイソレータ10は、マルチコア光ファイバ20と、レンズ30と、アイソレータユニット群Gと、レンズ60と、マルチコア光ファイバ70と、を備える(以下、マルチコア光ファイバを「MCF」とも称する。)。これらの部材は、軸線Aに沿って上記の順に配置されている。光アイソレータ10には、直交座標系が設定されている。z軸は、MCF20からMCF70に向かう方向が正方向となるように軸線Aと平行に延びている。y軸は、z軸と直交しており、
図1Aにおいて紙面上方向が正方向となるように延びている。x軸は、y軸及びz軸と直交しており、
図1Bにおいて紙面上方向が正方向となるように延びている。
【0010】
本明細書では、+z軸方向を光アイソレータ10の順方向と規定し、-z軸方向を光アイソレータ10の逆方向と規定している。このため、MCF20は入力側のマルチコア光ファイバとして機能し、MCF70は出力側のマルチコア光ファイバとして機能する。
図1A及び
図1Bでは、入力側のMCF20から出射された光線(厳密には、後述するコアC1からの出射光線)の順方向における光路を示す。
【0011】
本明細書では、図を見易くするために、特定の部材(例えば、MCF20及び70)の寸法及び光線の角度等を変更して図示している。MCF20及びMCF70は、それぞれ「第1光ファイバ」及び「第2光ファイバ」の一例に相当する。レンズ30及びレンズ60は、それぞれ「第1レンズ」及び「第2レンズ」の一例に相当する。
【0012】
MCF20は円柱状であり、少なくともその+z軸方向の端部における中心軸線は、軸線Aと一致している。MCF20の当該端部は、図示しないフェルールに挿通されて保持されている。MCF20の端面20a及びフェルールの端面は一括して斜研磨されており、その研磨角度は例えば8°である。本明細書では、任意のMCFの端面を正面視した場合において、「対応するレンズから最も離間している位置である遠位端」から「対応するレンズに最も近接している位置である近位端」に向かう方向を「斜研磨方向」と規定する。この場合、MCF20の斜研磨方向は+y軸方向である(
図1A参照)。
【0013】
図2は、端面20aの正面図(即ち、端面20aを中心軸線に沿って見た図)である。
図2に示すように、MCF20は、4つのコアC1乃至C4と、これらのコアC1乃至C4を取り囲む共通のクラッドCLと、を備える。コアC1乃至C4は、端面20aの中心を中心とした正方形の頂点に位置しており、当該中心に関して点対称である。別言すれば、端面20aの正面視において、コアC1乃至C4は、これらのコアC1乃至C4の中心に関して点対称である。コアピッチは44μmである。コアC1乃至C4は、MCF20の中心軸線と平行な方向に延在している。
【0014】
図1A及び
図1Bに戻って説明を続ける。レンズ30は、焦点距離が2.5mmのコリメートレンズであり、より詳細には、回転対称な曲面を有する非球面レンズである。レンズ30の光軸は、軸線A上に位置している。また、端面20a上のコアC1乃至コアC4の中心は、レンズ30の焦点(-z軸方向側の焦点)上に位置している。ここで、「光ファイバの複数のコアの中心」とは、当該光ファイバの端面における当該複数のコアを頂点とする多角形の中心を意味する。なお、レンズ30の曲面は、各コアC1乃至C4からの光線をコリメート可能であれば、非回転対称であってもよい。また、レンズ30は、球面レンズ又はGRINレンズであってもよいし、片面が平坦なレンズであってもよい。レンズ30の光軸は、「第1光軸」の一例に相当する。
【0015】
MCF20が収容されたフェルールと、レンズ30と、によりコリメータCinが構成されている。コリメータCinは入力側のコリメータとして機能する。
【0016】
アイソレータユニット群Gは、2個のアイソレータユニット40及び50が直列に接続されて成る。アイソレータユニット40は、軸線Aに沿って配置された一対の複屈折板42及び46と、これら一対の複屈折板42及び46の間に設けられたファラデー回転子44と、を含む。アイソレータユニット50は、アイソレータユニット40に対して順方向後段に位置しており、軸線Aに沿って配置された一対の複屈折板52及び56と、これら一対の複屈折板52及び56の間に設けられたファラデー回転子54と、を含む。アイソレータユニット40及び50は、それぞれ「第1アイソレータユニット」及び「第2アイソレータユニット」の一例に相当する。複屈折板42、46、52及び56は、それぞれ「第1複屈折板」、「第2複屈折板」、「第3複屈折板」及び「第4複屈折板」の一例に相当する。ファラデー回転子44及び54は、それぞれ「第1ファラデー回転子」及び「第2ファラデー回転子」の一例に相当する。
【0017】
複屈折板42、46、52及び56は、何れもルチル(TiO2)を材料とするくさび形形状の複屈折性を有する単結晶であり、互いに同一の光学特性を有する。複屈折板42、46、52及び56は、断面が直角台形の四角柱であり、これらの大きさ及び形状は互いに同一である。複屈折板42、46、52及び56の中心軸は、軸線Aと直交する方向に延びている。なお、複屈折板42、46、52及び56の断面形状は直角台形に限られず、任意の矩形状であってもよい。また、複屈折性を有する単結晶には、ルチル以外を材料とする単結晶が用いられてもよい。更に、複屈折板42、46、52及び56には、複屈折性を有する単結晶に限られず、複屈折性を有する他の光学要素が用いられてもよい。
【0018】
複屈折板42は、複屈折板46に対して順方向前段に位置している。複屈折板42は、側周面(複屈折板42の中心軸と平行な面)を構成する4つの面として、面42a、42b、42c及び42dを有する。面42a及び42bは互いに対向しており、面42c及び42dは互いに対向している。別言すれば、面42c及び42dは、面42a及び42bにそれぞれ接続されている。面42bはxy平面と平行であり、面42aは面42bに対し所定のテーパ角(例えば、5°)だけ傾斜している。即ち、面42aの法線は軸線Aに対して上記テーパ角だけ傾斜している。複屈折板42は、面42a及び42bがそれぞれ順方向に進行する光線の入射面及び出射面となるように配置されている。面42cの幅(z軸方向の長さ)は、面42dの幅よりも狭い。即ち、面42cは幅狭面であり、面42dは幅広面である。
【0019】
複屈折板46は、側周面(複屈折板46の中心軸と平行な面)を構成する4つの面として、面46a、46b、46c及び46dを有する。面46a及び46bは互いに対向しており、面46c及び46dは互いに対向している。別言すれば、面46c及び46dは、面46a及び46bにそれぞれ接続されている。面46bはxy平面と平行であり、面46aは面46bに対し上記テーパ角だけ傾斜している。即ち、面46aの法線は軸線Aに対して上記テーパ角だけ傾斜している。複屈折板46は、面46b及び46aがそれぞれ順方向に進行する光線の入射面及び出射面となるように配置されている。面46cの幅は、面46dの幅よりも狭い。即ち、面46cは幅狭面であり、面46dは幅広面である。
【0020】
上記の説明から明らかなように、アイソレータユニット40内では、傾斜面である面42a及び46aが外側を向いており、垂直面である面42b及び46bが内側を向いている。ここで、幅狭面(面42c又は46c)から幅広面(面42d又は46d)に向かう方向を「傾斜方向」と規定する(
図1Aにおいては、複屈折板42の傾斜方向は-y軸方向であり、複屈折板46の傾斜方向は+y軸方向である。)。この場合、複屈折板42及び46は、両者の傾斜方向が180°を成すように配置されている。特に、本実施形態では、面42aのテーパ角は面46aのテーパ角と等しい。このため、複屈折板42及び46は、面42aと面46aとが互いに平行となるように配置されているということもできる。また、複屈折板42の光学軸及び複屈折板46の光学軸はそれぞれ異なる方向に延びており、両者の成す角度は45°である。
【0021】
加えて、アイソレータユニット40は、複屈折板42の傾斜方向とMCF20の斜研磨方向とが180°を成すように配置されている。即ち、複屈折板42の傾斜方向は-y軸方向を向いており、複屈折板46の傾斜方向は+y軸方向を向いている。
【0022】
ファラデー回転子44は、入射光線の偏光面を特定方向(例えば、順方向においては時計回りであり、逆方向においては反時計回り)に45°だけ回転させる。
【0023】
複屈折板52は、複屈折板56に対して順方向前段に位置している。アイソレータユニット50内における複屈折板52の構成は、アイソレータユニット40内における複屈折板42の構成と同一である。また、アイソレータユニット50内における複屈折板56の構成は、アイソレータユニット40内における複屈折板46の構成と同一である。このため、アイソレータユニット50内では、傾斜面である面52a及び56aが外側を向いており、垂直面である面52b及び56bが内側を向いている。また、複屈折板52及び56は、両者の傾斜方向が180°を成すように配置されている。特に、本実施形態では、面52aのテーパ角は面56aのテーパ角と等しい。このため、複屈折板52及び56は、面52aと面56aとが互いに平行となるように配置されているということもできる。更に、複屈折板52の光学軸及び複屈折板56の光学軸はそれぞれ異なる方向に延びており、両者の成す角度は45°である。
【0024】
ファラデー回転子54は、入射光線の偏光面を上記特定方向とは反対の反特定方向(例えば、順方向においては反時計回りであり、逆方向においては時計回り)に45°だけ回転させる。
【0025】
アイソレータユニット40及び50は、複屈折板46の光学軸と複屈折板52の光学軸(隣接する複屈折板の光学軸同士)が直交する位置関係となるように配置されている。これにより、アイソレータユニット40(即ち、順方向前段のアイソレータユニット)において分離されて出射される分離光線のそれぞれがアイソレータユニット50(即ち、順方向後段のアイソレータユニット)において更に分離されることを抑制できるという効果が得られる(後述)。なお、当該効果が得られる限り、ファラデー回転子54が入射光線の偏光面を回転させる方向はファラデー回転子44の方向と同一であってもよい。なお、本実施形態では、複屈折板46の傾斜方向(+y軸方向)と複屈折板52の傾斜方向(-x軸方向)は直交している。
【0026】
レンズ60は、焦点距離が2.5mmのコリメートレンズであり、より詳細には、回転対称な曲面を有する非球面レンズである。レンズ60の光軸は、軸線A上に位置している。なお、レンズ60の曲面は、コリメート光を収束可能であれば、非回転対称であってもよい。また、レンズ60は、球面レンズ又はGRINレンズであってもよいし、片面が平坦なレンズであってもよい。レンズ60の光軸は、「第2光軸」の一例に相当する。
【0027】
MCF70は円柱状であり、少なくともその-z軸方向の端部における中心軸線は、軸線Aと一致している。MCF70の当該端部は、図示しないフェルールに挿通されて保持されている。MCF70の端面70a及びフェルールの端面は一括して斜研磨されており、その研磨角度は例えば8°である。MCF70は、その斜研磨方向と複屈折板56の傾斜方向とが180°を成すように配置されている。即ち、MCF70の斜研磨方向は-x軸方向を向いている(
図1B参照)。
【0028】
図3は、端面70aの正面図(即ち、端面70aを中心軸線に沿って見た図)である。
図3に示すように、MCF70は、4つのコアC1乃至C4と、これらのコアC1乃至C4を取り囲む共通のクラッドCLと、を備える。コアC1乃至C4は、端面70aの中心を中心とした正方形の頂点に位置しており、当該中心に関して点対称である。別言すれば、端面70aの正面視において、コアC1乃至C4は、コアC1乃至C4の中心に関して点対称である。コアピッチは44μmである。また、端面70a上のコアC1乃至C4の中心は、レンズ60の焦点(+z軸方向側の焦点)上に位置している。コアC1乃至C4は、MCF70の中心軸線と平行な方向に延在している。
【0029】
図1A及び
図1Bに戻って説明を続ける。レンズ60と、MCF70が収容されたフェルールと、によりコリメータCoutが構成されている。コリメータCoutは出力側のコリメータとして機能する。
【0030】
コリメータCin、アイソレータユニット群G、及び、コリメータoutは、図示しないスリーブに収容され、その両端がゴム封止される。ゴム封止された両端からはMCF20及び70がその外部に延びている。本明細書において「光アイソレータ10を小型化する」とは、このスリーブのサイズを小さくする(特に、径方向に小さくする)ことを意味する。
【0031】
光アイソレータ10の構成部材を上記のように配置することにより、MCF20及び70の斜研磨方向は必然的に直交することになる。より具体的には、MCF70の斜研磨方向は、複屈折板52(即ち、後段のアイソレータユニットにおける前段の複屈折板)の傾斜方向と必然的に一致する(0°を成す)。この構成によれば、光アイソレータ10を小型化できる(後述)。
【0032】
次に、光アイソレータ10内を進行する光線の光路について説明する。なお、図を見易くするため、
図1A及び
図1Bでは、MCF20の各コアC1乃至C4(
図2参照)からそれぞれ出射される光線b1乃至b4のうちコアC1からの光線b1のみ図示している。これは、後述する
図4A乃至
図6Bについても同様である。
【0033】
まず、順方向においては、
図1A及び
図1Bに示すように、MCF20の各コアC1乃至C4を伝搬してきた任意の偏光状態にある光線b1乃至b4は、端面20aからレンズ30に向けて出射される。これらの光線b1乃至b4は、進行するにつれて発散する発散光であり、端面20aが斜研磨されていることにより軸線Aに対して所定の角度だけ傾斜してレンズ30に入射する。レンズ30は、これらの入射光線b1乃至b4をそれぞれコリメート(平行化)する。コリメートされた光線b1乃至b4は、レンズ30への入射位置及び入射角度に応じた出射角度でそれぞれ出射され、アイソレータユニット40に入射する。複屈折板42は、これらの入射光線b1乃至b4のそれぞれを、偏光面が互いに直交する常光線と、異常光線と、に分離する(
図1A及び
図1Bでは、光線b1の常光線及び異常光線のみ図示)。複屈折板42から出射された常光線及び異常光線は、ファラデー回転子44により偏光面が特定方向に45°回転され、複屈折板46を透過してアイソレータユニット50に入射する。
【0034】
上述したように、複屈折板46の光学軸と複屈折板52の光学軸とは直交している。このため、常光線及び異常光線は、これ以上分離されることなくアイソレータユニット50内を進行する。これにより、アイソレータユニット50からの出射光線の数が増加することを抑制できる。加えて、複屈折板46から出射された常光線及び異常光線は、アイソレータユニット50に入射すると、それぞれ異常光線及び常光線へと変化する。これにより、アイソレータユニット40を透過した直後に常光線と異常光線との間に生じていた伝搬遅延が解消される。このため、以下では、これらの光線の種類(常光線、異常光線)を区別することなく、単に「分離光線」とも称する。分離光線は、ファラデー回転子54により偏光面がそれぞれ反特定方向に回転される。
【0035】
複屈折板56を透過した分離光線は、レンズ60に入射する。レンズ60は、分離光線を収束させる。レンズ60及びMCF70は、レンズ60から出射される分離光線が、斜研磨されたMCF70の端面70aに適切な入射角度で入射するとともに、端面70a上で収束するような位置関係となるようにそれぞれ配置されている。このため、MCF20のコアC1乃至C4からの分離光線は、MCF70の対応するコアC1乃至C4にそれぞれ収束する。この構成によれば、光アイソレータ10の順方向における結合損失を極めて低くすることができる。
【0036】
次に、逆方向(図示省略)においては、MCF70の各コアC1乃至C4を伝搬してきた戻り光は、端面70aからレンズ60に向けて出射され、軸線Aに対して所定の角度だけ傾斜してレンズ60に入射する。レンズ60によりコリメートされた戻り光は、レンズ60への入射位置及び入射角度に応じた出射角度でそれぞれ出射され、アイソレータユニット50に入射する。複屈折板56は、これらの戻り光のそれぞれを、常光線と異常光線とに分離する。複屈折板56から出射された分離光線は、ファラデー回転子54によりこれらの偏光面がそれぞれ反特定方向に45°回転され、複屈折板52を透過してアイソレータユニット40に入射する。アイソレータユニット40では、分離光線はこれ以上分離されることなく進行し、ファラデー回転子44によりこれらの偏光面が特定方向にそれぞれ45°回転される。複屈折板42を透過した分離光線は、レンズ30によりそれぞれ屈折されてMCF20の近傍に到達する。なお、複屈折板56から出射された分離光線の種類は、各複屈折板52、46及び42において切り替わる。即ち、複屈折板56から出射された常光線は、複屈折板52に入射すると異常光線へと変化し、複屈折板46に入射すると常光線へと変化し、複屈折板42に入射すると異常光線へと変化する。同様に、複屈折板56から出射された異常光線は、複屈折板52に入射すると常光線へと変化し、複屈折板46に入射すると異常光線へと変化し、複屈折板42に入射すると常光線へと変化する。
【0037】
上述したように、本実施形態では、MCF70は、その斜研磨方向が複屈折板56の傾斜方向と180°を成すような向きで配置されている。本願発明者らは、MCF20及びアイソレータユニット群Gを
図1A及び
図1Bに示す位置で固定した状態で、MCF70の斜研磨方向を1回転させたときのMCF70の変位量Δd(MCF70の中心軸線の軸線Aからのシフト量)を計算した。回転の基準軸としては複屈折板56の傾斜方向(即ち、+x軸方向)を採用した。即ち、順方向から見たときにMCF70の斜研磨方向が+x軸から反時計回りに回転角θ(0°≦θ≦360°)だけ回転されたときの変位量Δdを計算した。計算は小数第2位まで行った(少数第3位は切り捨て)。なお、MCF70は、レンズ60をシフトさせることによりシフトするため、MCF70がシフトするということは、コリメータCoutがシフトすることを意味する。
【0038】
図4Aは、θ=90°のときの変位量Δd1を示し、
図4Bは、θ=90°のときの変位量Δd2を示す。
図4A及び
図4Bでは、符号42a乃至42d及び符号52a乃至52dの図示を省略している。これは、後述する
図5A乃至
図6Bについても同様である。
図4A及び
図4Bに示すように、θ=90°のとき(即ち、MCF70の斜研磨方向が-y軸方向を向いているとき)は、MCF70(及びレンズ60)を+y軸方向にΔd1だけシフトするとともに-x軸方向にΔd2だけシフトすることにより、MCF70への入射光線の入射角が調整されている。なお、変位量ΔdはΔd=((Δd1)
2+(Δd2)
2)
1/2として演算され得る。
【0039】
図5Aは、θ=270°のときのy軸方向における変位量Δd1を示し、
図5Bは、θ=270°のときのx軸方向における変位量Δd2を示す。
図5A及び
図5Bに示すように、θ=270°のとき(即ち、MCF70の斜研磨方向が+y軸方向を向いているとき)は、MCF70(及びレンズ60)を-y軸方向にΔd1だけシフトするとともに-x軸方向にΔd2だけシフトすることにより、MCF70への入射光線の入射角が調整されている。
【0040】
図6Aは、θ=0°のときの変位量Δd1を示し、
図6Bは、θ=0°のときの変位量Δd2を示す。
図6A及び
図6Bに示すように、θ=0°のとき(即ち、MCF70の斜研磨方向が+x軸方向を向いているとき)は、MCF70(及びレンズ60)を-x軸方向にのみΔd2だけシフトすることにより、MCF70への入射光線の入射角が調整されている。従って、Δd=Δd2である。
【0041】
なお、θ=180°(
図1A及び
図1B参照)のときの変位量Δd1及びΔd2は、何れも0.00であった。
【0042】
図7は、これらの計算結果に基づいて回転角θと変位量Δdとの関係を規定したグラフである。
図7に示すように、変位量Δdは回転角θが180°のときに最小となり、回転角θが0°のときに最大となることが確認された。即ち、MCF70を、その斜研磨方向が複屈折板56の傾斜方向と180°を成すような向きに配置することにより、コリメータCoutの軸線Aからの変位量をゼロに抑えることができ、光アイソレータ10の小型化(特に、径方向における小型化)を実現できる。
【0043】
加えて、本願発明者らは、別の手段による光アイソレータ10の小型化も検討した。以下、
図8A及び
図8Bを参照して具体的に説明する。
図8Aは、
図1Aの光アイソレータ10の前段部分の側面図であり、
図8Bは、
図1Bの光アイソレータ10の後段部分の平面図である。
図8A及び
図8Bでは、MCF20のコアC1及びC3(
図2参照)から出射された光線b1及びb3の光路をそれぞれ破線で示している。なお、
図8Aでは、光線b1の光路と、光線b4(MCF20のコアC4から出射された光線)の光路と、は一致している。また、光線b3の光路と、光線b2(MCF20のコアC2から出射された光線)の光路と、は一致している。
図8Bでは、光線b1の光路と、光線b2の光路と、は一致しており、光線b3の光路と、光線b4の光路と、は一致している。このため、
図8A及び
図8Bでは、実質的には、全てのコアC1乃至C4からの光線b1乃至b4の光路を示している。
【0044】
ここで、MCF20のコアC1乃至C4から出射される光線b1乃至b4の光路を平均化した平均光路を進行する光線を平均光線bと規定する。
図8A及び
図8Bでは、平均光線bの光路を実線で示している。
図8Aに示すように、平均光線bは、MCF20のコアC1乃至C4の中心(即ち、レンズ30の焦点)からレンズ30に向けて出射される。平均光線Bは、軸線Aに対して所定の角度だけ傾斜してレンズ30に入射する。レンズ30によりコリメートされて出射された平均光線bは、軸線Aと平行に進行してアイソレータユニット40に入射する。アイソレータユニット40内でy軸方向(別言すれば、複屈折板42の傾斜方向及び複屈折板46の傾斜方向に平行な方向)に屈折されて出射された平均光線bは、軸線Aと平行に(
図8Aの例では、軸線A上を)進行する。なお、
図8Aでは図示を省略しているが、アイソレータユニット50内では平均光線bはy軸方向には変位しない。このため、アイソレータユニット50から出射された平均光線bは、そのまま軸線Aと平行に直進してレンズ60に入射する。レンズ60は、平均光線bがレンズ60のy軸方向における中心を通過するような位置に配置される。
【0045】
一方、
図8Bに示すように、アイソレータユニット40から出射された平均光線bは、アイソレータユニット50内でx軸方向(別言すれば、複屈折板52の傾斜方向及び複屈折板56の傾斜方向に平行な方向)に屈折されて出射され、軸線Aと平行に進行してレンズ60に入射する。レンズ60から出射された平均光線bは、MCF70のコアC1乃至C4の中心にて収束する。x軸方向は「屈折方向」の一例に相当する。
【0046】
本願発明者らは、アイソレータユニット40の複屈折板42及び46の面42a及び46aのテーパ角を変化させたときの逸脱量Δdyを計算した。逸脱量Δdyは、レンズ60の光軸(及びMCF70の中心軸線)の軸線Aからのy軸方向における逸脱量である。また、アイソレータユニット50の複屈折板52及び56の面52a及び56aのテーパ角を変化させたときの逸脱量Δdxを計算した。逸脱量Δdxは、レンズ60の光軸(及びMCF70の中心軸線)の軸線Aからのx軸方向における逸脱量である。
【0047】
その結果、アイソレータユニット40から出射される平均光線bの出射位置(複屈折板46の面46a上の位置)Pは、テーパ角が2°のときは軸線Aから+y軸方向に0.097mmだけ逸脱し、テーパ角が5°のときは軸線Aから-y軸方向に0.005mmだけ逸脱し(
図1A及び
図1B参照)、テーパ角が10°のときは軸線Aから-y軸方向に0.177mmだけ逸脱した。これにより、テーパ角が2°のときはΔdy=0.097mm且つΔdx=0.097mmとなり、テーパ角が5°のときはΔdy=0.005mm且つΔdx=0.005mmとなり、テーパ角が10°のときはΔdy=0.177mm且つΔdx=0.177mmとなった。即ち、出射位置Pはテーパ角が大きくなるほど-y軸方向に移動するため、これに伴いΔdy及びΔdxが変化することが分かった。
【0048】
そこで、本願発明者らは、Δdyを低減することにより光アイソレータ10のy軸方向における大型化の抑制を検討した。これは、平均光線bの出射位置Pが軸線A上に位置するように複屈折板42及び46のテーパ角を調整することにより実現できる。別言すれば、「アイソレータユニット40内における平均光線bの正味の屈折量Δr1」が、「レンズ30から出射された平均光線bのy軸方向におけるシフト量(別言すれば、軸線Aからのシフト量)Δs1」と等しくなるように複屈折板42及び46のテーパ角を調整することにより実現できる。また、本願発明者らは、Δdxを低減することにより光アイソレータ10のx軸方向における大型化の抑制を検討した。これは、「アイソレータユニット50内における平均光線bの正味の屈折量Δr2」が、「レンズ60に入射する平均光線bのx軸方向におけるシフト量(別言すれば、軸線Aからのシフト量)Δs2」と等しくなるように複屈折板52及び56のテーパ角を調整することにより実現できる。本実施形態では、Δs1=Δr1且つΔs2=Δr2を満たす複屈折板42、46、52及び56のテーパ角は何れも5°であった。
【0049】
以上説明したように、本実施形態によれば、光アイソレータ10を適切に小型化することができる。
【0050】
以上、実施形態に係る光アイソレータについて説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限り、種々の変更が可能である。
【0051】
例えば、MCF20及びMCF70の代わりに、1つのコアを備え、その端面が斜研磨されているシングルコア光ファイバ(以下、「SCF」とも称する。)が用いられてもよい。この場合、入力側SCFは、その端面上のコア(の中心)がレンズ30の焦点上に位置するように配置され、出力側のSCFは、その端面上のコア(の中心)がレンズ60の焦点上に位置するように配置され得る。入力側SCF及びそのコアは、それぞれ「第1光ファイバ」及び「第1コア」の一例に相当する。出力側SCF及びそのコアは、それぞれ「第2光ファイバ」及び「第2コア」の一例に相当する。
【0052】
或いは、MCF20及びMCF70の代わりに、複数本のSCFが束ねられたバンドル光ファイバが用いられてもよい。バンドル光ファイバでは、これら複数本のSCFの端面が一括して斜研磨されている。入力側のバンドル光ファイバは、その端面の正面視において、複数のコアが、これら複数のコアの中心に関して点対称となるように設計されている。出力側のバンドル光ファイバについても同様である。入力側のバンドル光ファイバは、その端面上の複数のコアの中心がレンズ30の焦点上に位置するように配置され、出力側のバンドル光ファイバは、その端面上の複数のコアの中心がレンズ60の焦点上に位置するように配置され得る。入力側のバンドル光ファイバ及びその複数のコアは、それぞれ「第1光ファイバ」及び「第1コア」の一例に相当する。出力側のバンドル光ファイバ及びその複数のコアは、それぞれ「第2光ファイバ」及び「第2コア」の一例に相当する
【0053】
また、MCF20の斜研磨方向と複屈折板42の傾斜方向とが180°を成しており、且つ、MCF70の斜研磨方向と複屈折板56の傾斜方向とが180°を成していれば、複屈折板42、46、52及び56のテーパ角は、Δs1=Δr1及びΔs2=Δr2を満たす値でなくてもよい。
【0054】
更に、MCF20の中心軸線、レンズ30の光軸、レンズ60の光軸、及び/又は、レンズ60の光軸は、必ずしも軸線A上に位置していなくてもよい。
【0055】
更に、複屈折板42、46、52及び56のテーパ角は、Δs1=Δr1とΔs2=Δr2の何れか一方のみを満たす値であってもよい。
【符号の説明】
【0056】
10:光アイソレータ、20:マルチコア光ファイバ、30:レンズ、40:アイソレータユニット、50:アイソレータユニット、60:レンズ、70:マルチコア光ファイバ