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<図1>
  • -液体処理装置 図1
  • -液体処理装置 図2
  • -液体処理装置 図3
  • -液体処理装置 図4
  • -液体処理装置 図5
  • -液体処理装置 図6
  • -液体処理装置 図7
  • -液体処理装置 図8
  • -液体処理装置 図9
  • -液体処理装置 図10
  • -液体処理装置 図11
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  • -液体処理装置 図13
  • -液体処理装置 図14
  • -液体処理装置 図15
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025040348
(43)【公開日】2025-03-24
(54)【発明の名称】液体処理装置
(51)【国際特許分類】
   B01F 25/53 20220101AFI20250314BHJP
   B01F 21/20 20220101ALI20250314BHJP
   B01F 23/232 20220101ALI20250314BHJP
   B01F 23/45 20220101ALI20250314BHJP
   B01F 25/422 20220101ALI20250314BHJP
   B01F 25/31 20220101ALI20250314BHJP
【FI】
B01F25/53
B01F21/20
B01F23/232
B01F23/45
B01F25/422
B01F25/31
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023147230
(22)【出願日】2023-09-11
(71)【出願人】
【識別番号】000226002
【氏名又は名称】株式会社ニクニ
(74)【代理人】
【識別番号】100170070
【弁理士】
【氏名又は名称】坂田 ゆかり
(72)【発明者】
【氏名】大崎 荘一郎
(72)【発明者】
【氏名】石原 康博
(72)【発明者】
【氏名】若松 拓矢
【テーマコード(参考)】
4G035
【Fターム(参考)】
4G035AA01
4G035AB20
4G035AB37
4G035AC02
4G035AC22
4G035AC30
4G035AE13
(57)【要約】
【課題】簡単な構成の液体処理装置を提供する。
【解決手段】被処理液を貯蔵するタンクと、タンクから流出した被処理液が流れるとともに、被処理液をタンクへ還流する流路と、流路に設けられており、被処理液をタンクから流路に流出させるポンプと、流路のポンプの上流側に設けられており、被処理液に被処理液とは異なる流体である混合流体を混合させる流体吸入部と、を備える。流体吸入部はノズル、ディフューザ及び吸入室を有し、ノズルに連通する供給口及びディフューザに連通する排出口は流路に設けられており、被処理液がノズル吸入室及びディフューザを通過することで、吸入室への入口である吸入口から混合流体が吸入室に吸入される。ノズルの内径は、被処理液の流速が5m/秒以上かつ6m/秒以下となるように設定される。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理液を貯蔵するタンクと、
前記タンクから流出した前記被処理液が流れるとともに、前記被処理液を前記タンクへ還流する流路と、
前記流路に設けられており、前記被処理液を前記タンクから前記流路に流出させるポンプと、
前記流路の前記ポンプの上流側に設けられており、前記被処理液に前記被処理液とは異なる流体である混合流体を混合させる流体吸入部と、を備え、
前記流体吸入部は、ノズル、ディフューザ及び吸入室を有し、
前記ノズルに連通する供給口及び前記ディフューザに連通する排出口は、前記流路に設けられており、
前記被処理液が前記ノズル、前記吸入室及び前記ディフューザを通過することで、前記吸入室への入口である吸入口から前記混合流体が前記吸入室に吸入され、
前記ノズルの内径は、前記被処理液の流速が5m/秒以上かつ6m/秒以下となるように設定される
ことを特徴とする液体処理装置。
【請求項2】
前記流路の前記ポンプの下流側に設けられており、前記被処理液と前記混合流体が混合した後の流体を加圧環境下で溶解する溶解タンクを備えたことを特徴とする請求項1に記載の液体処理装置。
【請求項3】
前記流路の前記ポンプの下流側かつ前記溶解タンクの上流側に設けられており、前記被処理液に前記混合流体を混合させる混合部を備え、
前記混合部は、前記流路に設けられた筒状の側面を有するケーシングと、前記ケーシングの内部に設けられた複数の板状部材と、を有し、
前記板状部材は、前記被処理液が通過する第1貫通孔が複数設けられており、
複数の前記板状部材は、複数の前記板状部材のうちの第1板状部材の前記第1貫通孔と、前記第1板状部材に隣接する第2板状部材の前記第1貫通孔が部分的に重なるように積層されている
ことを特徴とする請求項2に記載の液体処理装置。
【請求項4】
被処理液を貯蔵するタンクと、
前記タンクから流出した前記被処理液が流れるとともに、前記被処理液を前記タンクへ還流する流路と、
前記流路に設けられており、前記被処理液を前記タンクから前記流路に流出させるポンプと、
前記流路の前記ポンプの下流側に設けられた流体流入部であって、混合流体である高圧ガスが封入されたガスタンクと、前記ガスタンクと前記流路とを接続する接続部と、を有する流体流入部と、
前記流路の前記流体流入部の下流側に設けられており、前記被処理液に前記混合流体を混合させる混合部と、
を備え、
前記混合部は、前記流路に設けられた筒状の側面を有するケーシングと、前記ケーシングの内部に設けられた複数の板状部材と、を有し、
前記板状部材は、前記被処理液が通過する第1貫通孔が複数設けられており、
複数の前記板状部材は、複数の前記板状部材のうちの第1板状部材の前記第1貫通孔と、前記第1板状部材に隣接する第2板状部材の前記第1貫通孔が部分的に重なるように積層されている
ことを特徴とする液体処理装置。
【請求項5】
前記流路の前記混合部の下流側に設けられており、前記被処理液と前記混合流体が混合した後の流体を加圧環境下で溶解する溶解タンクを備えたことを特徴とする請求項4に記載の液体処理装置。
【請求項6】
前記ケーシングは、前記被処理液の入口である第3流入部が設けられた第1端部と、前記被処理液の出口である第2流出部が設けられた第2端部と、が前記側面の両端に設けられており、
前記板状部材は、前記第1端部に当接し、かつ、前記第2端部及び前記側面に当接せず、
積層された複数の前記板状部材のうちの前記第1端部に当接していない側の端は、第3板状部材により覆われている
ことを特徴とする請求項3から5のいずれか一項に記載の液体処理装置。
【請求項7】
前記被処理液は水であり、
前記混合流体は、空気、二酸化炭素、窒素のすくなくとも1つである
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の液体処理装置。
【請求項8】
前記ポンプは容積式ポンプであり、
前記被処理液は非ニュートン流体である
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の液体処理装置。
【請求項9】
前記ポンプは遠心ポンプであり、
前記被処理液はニュートン流体である
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の液体処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、液体が流通する管路であって、原料液体を気体溶解液体受器まで流通させる液体流通管路、該液体流通管路の途中に設けられた加圧手段であって、原料液体を加圧して流通管路を流通させるための加圧手段、該液体流通管路の途中に設けられた少なくとも1つの気液混合部であって、気体供給配管を介して気体容器と連結し、気体容器からの水素ガスを液体に混合するための気液混合部、液体流通管路の途中の気液混合部の下流に設けられた少なくとも1つのスタティックミキサーであって、気液混合部で混合した気体混合液体の圧力を維持し、気体の液体への溶解を促進させるスタティックミキサーを含む開放系連続加圧流通式水素ガス溶解液体製造装置が開示されている。この開放系連続加圧流通式水素ガス溶解液体製造装置では、液体を10~40L/分の流量で液体流通管路中を流通させ、加圧しながら連続的に水素ガス溶解液体を製造する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3139460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の発明は、流体がスタティックミキサーを1回だけ通過して混合されるため、混合性能が低くなるおそれがある。また、特許文献1に記載の発明は、スタティックミキサーを1回だけ通過して混合させるため、混合性能を高めるために大きな形状のスタティックミキサーが必要となり、かなりの大きさの機器設置スペースを要してしまう。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、2種類の流体(液体と気体、液体と液体)を省スペースで効率よく混合することができる液体処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る液体処理装置は、例えば、被処理液を貯蔵するタンクと、前記タンクから流出した前記被処理液が流れるとともに、前記被処理液を前記タンクへ還流する流路と、前記流路に設けられており、前記被処理液を前記タンクから前記流路に流出させるポンプと、前記流路の前記ポンプの上流側に設けられており、前記被処理液に前記被処理液とは異なる流体である混合流体を混合させる流体吸入部と、を備え、前記流体吸入部は、ノズル、ディフューザ及び吸入室を有し、前記ノズルに連通する供給口及び前記ディフューザに連通する排出口は、前記流路に設けられており、前記被処理液が前記ノズル、前記吸入室及び前記ディフューザを通過することで、前記吸入室への入口である吸入口から前記混合流体が前記吸入室に吸入され、前記ノズルの内径は、前記被処理液の流速が5m/秒以上かつ6m/秒以下となるように設定されることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る液体処理装置によれば、流体吸入部及びポンプが流路に設けられており、被処理液を流体吸入部に流すことで混合流体を流体吸入部(吸入室)に吸入させる。したがって、流体吸入部のみで2種類の流体(ここでは、被処理液である水と混合流体である空気)を効率よく混合することができる。また、流路が流体循環回路の場合、同じ被処理液を複数回流体吸入部で処理することができ、被処理液に混合流体を効率よく混合することができる。このように、省スペースかつ簡単な構成で2種類の流体を効率よく混合することができる。
【0008】
前記流路の前記ポンプの下流側に設けられており、前記被処理液と前記混合流体が混合した後の流体を加圧環境下で溶解する溶解タンクを備えてもよい。これにより、溶解タンク内で混合流体を被処理液に効率的に溶解できる。また、流体循環回路でない場合にも、混合液が溶解タンクを通過することで混合効率がよくなる。
【0009】
前記流路の前記ポンプの下流側かつ前記溶解タンクの上流側に設けられており、前記被処理液に前記混合流体を混合させる混合部を備え、前記混合部は、前記流路に設けられた筒状の側面を有するケーシングと、前記ケーシングの内部に設けられた複数の板状部材と、を有し、前記板状部材は、前記被処理液が通過する第1貫通孔が複数設けられており、複数の前記板状部材は、複数の前記板状部材のうちの第1板状部材の前記第1貫通孔と、前記第1板状部材に隣接する第2板状部材の前記第1貫通孔が部分的に重なるように積層されていてもよい。これにより、2種類の流体を効率よく混合することができる。
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る液体処理装置は、例えば、被処理液を貯蔵するタンクと、前記タンクから流出した前記被処理液が流れるとともに、前記被処理液を前記タンクへ還流する流路と、前記流路に設けられており、前記被処理液を前記タンクから前記流路に流出させるポンプと、前記流路の前記ポンプの下流側に設けられた流体流入部であって、混合流体である高圧ガスが封入されたガスタンクと、前記ガスタンクと前記流路とを接続する接続部と、を有する流体流入部と、前記流路の前記流体流入部の下流側に設けられており、前記被処理液に前記混合流体を混合させる混合部と、を備え、前記混合部は、前記流路に設けられた筒状の側面を有するケーシングと、前記ケーシングの内部に設けられた複数の板状部材と、を有し、前記板状部材は、前記被処理液が通過する第1貫通孔が複数設けられており、複数の前記板状部材は、複数の前記板状部材のうちの第1板状部材の前記第1貫通孔と、前記第1板状部材に隣接する第2板状部材の前記第1貫通孔が部分的に重なるように積層されていることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る液体処理装置によれば、ポンプ、流体吸入部及び混合部が流路に設けられており、被処理液及び混合流体を混合部に流すことで、2種類の流体(ここでは、被処理液である水と混合流体である空気)を効率よく混合することができる。また、流路が流体循環回路の場合、同じ被処理液を複数回流体吸入部で処理することができ、被処理液に混合流体を効率よく混合することができる。このように、省スペースな液体処理装置とすることができる。
【0012】
前記流路の前記混合部の下流側に設けられており、前記被処理液と前記混合流体が混合した後の流体を加圧環境下で溶解する溶解タンクと、を備えてもよい。これにより、溶解タンク内で混合流体を被処理液に効率的に溶解できる。また、流体循環回路でない場合にも、混合液が溶解タンクを通過することで混合効率がよくなる。
【0013】
前記ケーシングは、前記被処理液の入口である第3流入部が設けられた第1端部と、前記被処理液の出口である第2流出部が設けられた第2端部と、が前記側面の両端に設けられており、前記板状部材は、前記第1端部に当接し、かつ、前記第2端部及び前記側面に当接せず、積層された複数の前記板状部材のうちの前記第1端部に当接していない側の端は、第3板状部材により覆われていてもよい。これにより、被処理液に混合流体をより効果的に混合させることができる。
【0014】
前記被処理液は水であり、前記混合流体は、空気、二酸化炭素、窒素のすくなくとも1つであってもよい。また、前記ポンプは容積式ポンプであり、前記被処理液は非ニュートン流体であってもよい。容積式ポンプを用いることで、粘度の高い流体を被処理液とすることができる。また、前記ポンプは遠心ポンプであり、前記被処理液はニュートン流体であってもよい。ニュートン流体の場合には、小型・軽量で、広い範囲(水量、揚程等)に使用可能な遠心ポンプを使用することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、簡単な構成で2種類の流体(液体と気体、液体と液体)を効率よく混合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】液体処理装置1の一例を示す模式図である。
図2】流体吸入部12の概略を示す断面図である。
図3】流体吸入部12の有無による混合流体(空気)の被処理液(水)への混合量を比較するグラフである。
図4】液体処理装置2の一例を示す模式図である。
図5】(A)は混合部15の概略を示す図であり、(B)は板状部材15bの概略を示す図である。
図6】(A)は板状部材15bの部分拡大図であり、(B)は板状部材15cの部分拡大図であり、(C)は板状部材15bと板状部材15cとを交互に積層した様子を示す図である。
図7】流体吸入部12及び混合部15の有無による混合流体(空気)の被処理液(水)への混合量を比較するグラフである。
図8】流体吸入部12及び混合部15の有無による混合流体(空気)の被処理液(水)への混合量を比較するグラフである。
図9】変形例にかかる混合部15Aを有する液体処理装置2Aの一例を示す模式図である。
図10】混合部15Aの概略を示す図である。
図11】混合部15と混合部15Aとの違いによる混合流体(空気)の被処理液(水)への混合量を比較するグラフである。
図12】液体処理装置3の一例を示す模式図である。
図13】混合部15の有無による混合流体(二酸化炭素)の被処理液(水)への混合量を比較するグラフである。
図14】混合部15の有無による混合流体(窒素)の被処理液(水)への混合量を比較するグラフであり、(B)は(A)の一部を抽出して拡大したものである。
図15】溶解空気量の測定装置100を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。本発明の液体処理装置は、被処理液に流体を混合したり被処理液に含まれる気体を除去したりする装置である。
【0018】
<第1の実施の形態>
図1は、本発明の第1の実施の形態にかかる液体処理装置1の一例を示す模式図である。液体処理装置1は、主として、タンク11と、流体吸入部12と、ポンプ13と、溶解タンク16と、流量調整弁14と、流路20とを備える。
【0019】
タンク11は、被処理液を貯蔵する容器である。本実施の形態では、被処理液として水を用いるが、水以外の様々な液体を被処理液とすることができる。
【0020】
タンク11には、流出口111が設けられている。流出口111には流路20が接続されている。
【0021】
流路20は、流体(液体、気体)が内部を流れる配管、ホース、継手等を含む。流路20は、タンク11から流出した被処理液が流れるとともに、被処理液をタンク11へ還流する流体循環回路を構成する。流路20には、流体吸入部12、ポンプ13、溶解タンク16及び流量調整弁14が設けられている。
【0022】
流体吸入部12は、被処理液に流体を混合させる部品であり、ポンプ13の上流側に設けられている。図2は、流体吸入部12の概略を示す断面図である。流体吸入部12は、筒状であり、主として、第1筐体121と、第2筐体122と、第3筐体123とを有する。
【0023】
第1筐体121は、被処理液の供給口121aを有する。第1筐体121の供給口121aの反対側には、ノズル121bが設けられている。供給口121aはノズル121bに連通しており、供給口121aには流出経路21の上流部21aが設けられている。ノズル121bは、被処理液の流れ方向に向かって先細りとなるように形成されている。
【0024】
本発明のノズル121bは、内径を急激に絞らず、流速が5m/秒以上6m/秒以下となるようにノズル121bの内径dを設定する点に特徴がある。例えば、被処理液の流量が100L/分のときのノズル121bの内径dは18.8mm以上20.6mm以下である。このように、ノズル121bの内径を広げることで、負圧を低くし、適正な吸引圧力(負圧-0.02MPa~-0.03MPa)とすることができる。
【0025】
第3筐体123は、被処理液の排出口123aと、中空部の断面が徐々に小さくなる縮小部123bと、徐々に大きくなるディフューザ123cとを有する。なお、縮小部123bは必須ではない。排出口123aは縮小部123b及びディフューザ123cに連通しており、排出口123aには流出経路21の下流部21bが設けられている。
【0026】
第2筐体122は、第1筐体121と第3筐体123との間に設けられており、吸入口122aを有する。第2筐体122の内部は、吸入室122bである。吸入室122bには、被処理液に混合される流体(混合流体)が吸入口122aから吸入される。本実施の形態では、吸入口122aは大気中に開放されており、吸入室122bには吸入口122aから混合流体として空気が流入する。
【0027】
供給口121aから被処理液が駆動流体として供給され、排出口123aから排出される。被処理液はノズル121bにおいて流速が速くなった状態で第3筐体123に流入し、これにより吸入室122bの圧力が低下し、混合流体(ここでは、空気)が吸入室122bに吸い込まれる。
【0028】
図1の説明に戻る。ポンプ13は、流体吸入部12の下流側に設けられている。ポンプ13を流体吸入部12の下流側に設けるため、揚水時(流体吸込時)の圧力を気にする必要がない。ポンプ13の下流側は加圧されており、加圧下において安定的に空気量をコントロールするのは困難だが、ポンプ13の上流側は基本的に圧力の影響が少ないため、流体吸入部12のノズル径のみで吸引力を調整することができる。流路20のポンプ13の上流側を流出経路21とし、下流側を還流経路22とする。ポンプ13は、被処理液をタンク11から流出経路21に流出させ、また、被処理液を還流経路22からタンク11に戻す。ポンプ13には、遠心ポンプ(カスケードポンプ、渦巻ポンプ等)、容積式ポンプを採用することができる。本実施の形態では、ポンプ13に渦巻ポンプを用いる。
【0029】
溶解タンク16は、ポンプ13の下流側に設けられている。溶解タンク16は、大気圧以上の圧力(例えば、0.3MPa以上)に加圧されており、被処理液と混合流体が混合した後の流体を加圧環境下で溶解する。これにより、溶解タンク16内で混合流体が被処理液に溶解される。溶解タンク16は、2種類の流体が混合する十分な容積を有することが望ましい。そして、溶解タンク16の内部で略5秒以上かつ略24秒以下の時間だけ液体を滞留させることで、溶解タンク16における溶解比率が高くなる(表1、2参照)。したがって、例えば、溶解タンク16への流体の流入速度を略2m/秒以上とし、溶解タンク16の高さ寸法を内径寸法の2倍以上かつ5倍以下とすることが望ましい(表1~3参照)。
【0030】
なお、表1は溶解タンク16の形態と溶解比率との関係を示し、表2は溶解タンク16の形態と流体の溶解タンクの滞留時間との関係を示し、表3は溶解タンク16の形態と流入速度との関係を示す。表1~3において、内部容量が3.7lの溶解タンク16は内径寸法が100mm、高さ寸法が450mmであり、内部容量が7.8lの溶解タンク16は内径寸法が110mm、高さ寸法が450mmである。また、表1~3において、溶解タンク16の流入口の噴出ノズル径は、それぞれ、10Aが内径12.7mm、15Aが内径16.1mm、20Aが内径21.6 mm、25Aが内径27.6mmである。そして、表1~3には、流入口から溶解タンク16に流入する液体の流量を、20l/min、30l/min、40l/min、50l/min、60l/min、及び70l/minとした場合の結果がそれぞれ測定されている。
【表1】
【表2】
【表3】
【0031】
また、溶解タンク16内に液体と気体の境界層が存在することが望ましい。例えば、溶解タンク16内に椀状の板状部材を設けて、溶解タンク16内に乱流泡渦を発生させることが可能である。また、例えば、溶解タンク16に流入する液体の流速を高くすることで、溶解タンク16内に乱流泡渦を発生させることも可能である。境界層を有することで、気体が溶解タンク16内で十分に溶解され、未溶解の気体は溶解タンク16から排出されない。よって、気体の消費量を最小限に抑えることができる。気体が未溶解のまま排出してしまうと、溶解比率を高くするためには気体の注入量を増やすしかなく、気体の消費量が増えてしまうが、溶解タンク16における溶解比率が高い場合には気体の注入量を減らす、すなわち気体の消費量を減らすことができる。
【0032】
流量調整弁14は、溶解タンク16の下流側に設けられている。ここで、流路20の溶解タンク16の上流側を上流部22aとし、流量調整弁14の下流側を下流部22bとする。なお、上流部22aに圧力計を設け、下流部22bに流量計を設けてもよい。
【0033】
なお、溶解タンク16は必須ではない。混合流体が気体である場合には、溶解タンク16がなくても混合流体が被処理液に溶解するが、効率的に溶解させるためには溶解タンク16を設けることが望ましい。また、被処理液及び混合流体の両方が共に液体である場合には、溶解タンク16は不要である。溶解タンク16を設けた場合には、流量調整弁14は溶解タンク16の下流側に設置する。
【0034】
次に、液体処理装置1の動作について説明する。ポンプ13が駆動することで、被処理液(ここでは、水)がタンク11から流路20に流入する。上流部21aに流入した被処理液は、流体吸入部12を通って下流部21bに流入する。流体吸入部12では、被処理液が第1筐体121の中空部、第2筐体122の中空部(吸入室122b)、第3筐体123の中空部の順に流れ、この被処理液の流れにより混合流体(ここでは、空気)が吸入口122aを介して吸入室122bに流入する。吸入室122bにおいて、被処理液と混合流体とが混合され、被処理液と混合流体とが混合された混合液がディフューザ123cに流入する。ディフューザ123cでは、流体が圧力の低いほうから高い方へ流れることで境界層が剥離しやすくなるため、ディフューザ123cにおいて被処理液と混合流体との混合液の流れが不安定になる。その結果、混合流体が微細な泡となり、かつ、被処理液に微細な泡が混合される。
【0035】
液体処理装置1では、流路20が流体循環回路を構成し、流体吸入部12で処理された混合液は、溶解タンク16内で加圧溶解され、大気圧に戻された後でタンク11に戻り、再び流路20を流れて流体吸入部12で処理される。流体循環回路の場合、同じ被処理液を複数回流体吸入部12で処理することができ、被処理液に混合流体を効率よく混合することができる。流体循環回路でない場合でも、混合液が溶解タンク16を介することで混合効率がよくなる。
【0036】
図3は、流体吸入部12の有無による混合流体(空気)の被処理液(水)への混合量を比較するグラフである。図3において、点線はポンプ13のみの場合(流体吸入部12を設けない場合)の空気の溶解比率(後に詳述)を示し、実線は流体吸入部12及びポンプ13を設けた場合の空気の溶解比率を示す。溶解比率は、大気解放時の微細気泡の量である溶解空気量と、飽和空気量との比率で表される指標であり、溶解比率が高ければ高いほど被処理液に多くの気体が溶解していることがわかる。
【0037】
なお、図3の縦軸は溶解比率(%)であり、横軸は空気注入量(NL/分)である。なお、NLはノルマルリットルである。空気注入量は、被処理液に空気を注入した量であり、ポンプ13を通過する被処理液の量(ポンプ13の吐出量)に対する空気注入量の比率(%)でも表すことができる。例えば、図3では、空気注入量5NL/分のときの比率は0.9%であり、空気注入量10NL/分のときの比率は1.9%であり、空気注入量15NL/分のときの比率は2.8%であり、空気注入量20NL/分のときの比率は3.8%であり、空気注入量25NL/分のときの比率は4.8%であり、空気注入量35NL/分のときの比率は6.6%である。
【0038】
図3に示すように、ポンプ13のみの場合に比べて、流体吸入部12及びポンプ13を設けた本実施の形態の液体処理装置1では、多くの気体(ここでは、空気)が被処理液(ここでは、水)に溶解していることが分かる。なお、図3のポンプ13の吐出圧力は、溶解タンク16内の圧力0.5MPaと同一である。なお、ポンプ13の流量は空気注入量によって変化するため省略する。
【0039】
ここで、溶解比率について説明する。図15は、溶解空気量の測定方法を模式的に示す図である。溶解空気量の測定装置100は、主として、溶解タンク16と、流路20、106と、空気貯筒103と、貯水槽104と、圧力開放バルブ105とを有する。
【0040】
液体処理装置1の流路20に設けた溶解タンク16の下流側の流路20に流路102を接続する。まず、流路20を流れている被処理液を溶解タンク16内で加圧溶解させ、未溶解の大きな気泡を分離除去し、未溶解の気泡が分離除去された被処理液を流路102に流す。次に、流路102を流れる被処理液を圧力開放バルブ105で大気圧に減圧し、空気貯筒103に放出する。空気貯筒103において被処理液から気泡が分離され、気泡は浮遊して空気貯筒103の上部に溜まり、被処理液は流路106で連結されている貯水槽104に溜まる。圧力開放バルブ105では、気泡が貯水槽104に流入しないように被処理液の放出量(速度)が調整される。
【0041】
貯水槽104内に1Lの被処理液が溜まったときに、空気貯筒103内の空気量を測定する。空気貯筒103内の空気量が1Lの被処理液から析出した空気量、すなわち溶解空気量となる。なお、これらの測定は、透明な空気貯筒103及び貯水槽104に設けられた目盛りにより行われる。
【0042】
溶解空気量は水温等による影響を受けるため、被処理液から析出した空気量を測定時の水温に基づいて溶解空気量を溶解比率に換算する。溶解比率は、数式(1)に示すように、溶解空気量と、溶解空気量を測定した時の温度における飽和空気量との比率で表される。
【数1】
【0043】
本実施の形態によれば、流体吸入部12のみで、2種類の流体(ここでは、被処理液である水と混合流体である空気)を効率よく混合できる。特に、溶解タンク16で加圧溶解を行うため、被処理液に混合流体を効率よく溶解できる。したがって、液体処理装置1を簡単な構成とすることができる。
【0044】
また、本実施の形態によれば、流路20が流体循環回路の場合、同じ被処理液を複数回流体吸入部12で処理することができ、被処理液に混合流体を効率よく混合することができる。
【0045】
また、本実施の形態によれば、被処理液の流速が5m/秒以上6m/秒以下となるようにノズル121bの内径を設定することで、負圧を低くし、適正な吸引圧力(負圧-0.02MPa~-0.03MPa)で混合流体を吸引することができる。混合流体の吸引力が低すぎると、混合流体の吸込量が減り溶解比率が悪くなる。また、混合流体の吸引力が高すぎると、ポンプ13の種類によっては(例えば、渦巻ポンプの場合には)混合流体の吸引量に対してポンプ13自体がエアロック(ポンプ13として揚水不可)を発生させてしまう。そのため、被処理液を適正な流速にすることで、混合流体の吸引力を調整し、被処理液に混合流体を効率よく混合することができる。
【0046】
なお、本実施の形態では、混合流体として空気を流体吸入部12に供給し、被処理液である水に空気を溶解させたが、気体は空気に限られない。例えば、流体吸入部12に二酸化炭素、窒素等の気体を供給し、被処理液にこれらの気体を溶解させたり、被処理液の空気を二酸化炭素、窒素等に置換させたりしてもよい。
【0047】
また、本実施の形態では、混合流体は気体に限られない。例えば、混合流体が液体であってもよい。例えば、被処理液を水とし、混合流体を油とし、水に油を溶解させてもよい。水と油は混ざりにくいが、液体処理装置1を用いることで水に微細化した油粒を混ぜることができる。
【0048】
また、本実施の形態では、被処理液が水であったが、被処理液は水に限られない。例えば、被処理液が油でもよい。また、被処理液は非ニュートン流体であってもよい。例えば、被処理液が非ニュートン流体であるマヨネーズの場合に、混合流体を窒素とし、液体処理装置1でマヨネーズ内の酸素を窒素に置換させることで、マヨネーズの保存性を向上させることができる。また、被処理液が牛乳等の乳製品である場合に、乳製品に含まれる酸素を窒素に置換することで酸化を防止することができる。
【0049】
<第2の実施の形態>
本発明の第1の実施の形態は、流体吸入部12を用いて被処理液に流体を混ぜたが、被処理液に流体を混合する方法はこれに限られない。以下、本発明の液体処理装置2について説明する。なお、第1の実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0050】
図4は、本発明の第2の実施の形態にかかる液体処理装置2の一例を示す模式図である。液体処理装置2は、主として、タンク11と、流体吸入部12と、ポンプ13と、混合部15と、溶解タンク16と、流量調整弁14と、流路20とを備える。流路20には、流体吸入部12、ポンプ13、流量調整弁14、混合部15及び溶解タンク16が設けられている。
【0051】
混合部15は、被処理液に流体を混合させる部品であり、ポンプ13の下流側に設けられている。混合部15では圧力損失が発生し、混合部15をポンプ13の上流側に設けると混合部15が抵抗になり吸引力の調整が困難となるため、混合部15はポンプ13の下流側に設ける。
【0052】
溶解タンク16は混合部15の下流側に設けられており、流量調整弁14は溶解タンク16の下流側に設けられている。流路20の混合部15の上流側を上流部22cとし、混合部15の下流側かつ溶解タンク16の上流側を中流部22dとし、流量調整弁14の下流側を下流部22bとする。なお、上流部22cに圧力計を設け、下流部22bに流量計を設けてもよい。
【0053】
図5(A)は、混合部15の概略を示す図である。混合部15は、主として、ケーシング15aと、複数の板状部材15b、15cとを有する。
【0054】
ケーシング15aは、筒状であり、流路20(ここでは、還流経路22)に設けられている。ケーシング15aは、筒状の側面15jと、側面15jの両端を覆う端15h(本発明の第1端部に相当)及び端15i(本発明の第2端部に相当)を有する。一方の端15hには被処理液及び流体吸入部12に吸引された流体が流入する流入口15eが設けられており、他方の端15iには被処理液及び流体吸入部12に吸引された流体が流出する流出口15fが設けられている。
【0055】
ケーシング15aの内部には、板状部材15b、15cが設けられている。本実施の形態では、板状部材15b、15cがそれぞれ2枚ずつ設けられているが、板状部材15b、15cの枚数はこれに限られない。板状部材15b、15cは、円板形状であり、周縁の大きさは同じである。板状部材15b、15cは、交互に積層されている。なお、板状部材15b、15cは円板形状に限られず、平面視における形状(板厚方向に沿って見たときの形状)が矩形形状でもよい。
【0056】
板状部材15b、15cは、端15hに当接し、端15iに当接しないように設けられている。また、板状部材15b、15cは、端15hと端15iとを連結する側面15jに当接しないように設けられている。また、板状部材15b、15cの一方の端(端15hに当接していない側の端)は、板状部材15dにより覆われている。
【0057】
図5(B)は、板状部材15bの概略を示す図である。板状部材15bは、それぞれ、被処理液が通過する貫通孔15g(本発明の第1貫通孔に相当)が複数設けられている。貫通孔15gは、例えば六角形状である。本実施の形態では、貫通孔15gが板状部材15bの全面に設けられている。なお、図示しないが、板状部材15cも、板状部材15bと同様に、貫通孔15gが複数(全面に)設けられている。
【0058】
図6(A)は板状部材15b(本発明の第1板状部材に相当)の部分拡大図であり、図6(B)は板状部材15c(本発明の第2板状部材に相当)の部分拡大図であり、図6(C)は板状部材15bと板状部材15cとを交互に積層した様子を示す図である。図6では、説明のため、板状部材15cを点線で示す。
【0059】
板状部材15bと板状部材15cとの差異は、板状部材15b、15cの周縁と、貫通孔15gとの位置関係(貫通孔15gの位置)である。例えば、板状部材15bにおける貫通孔15gの位置と、板状部材15cにおける貫通孔15gの位置とは、図6の横方向に貫通孔15gの半ピッチ分、図6の縦方向に貫通孔15gの1/4ピッチ分ずれている。その結果、周縁が一致するように板状部材15bと板状部材15cとを積層すると、板状部材15bの貫通孔15gと板状部材15cの貫通孔15gが部分的に重なる。
【0060】
図5(A)の説明に戻る。流入口15eから流入した被処理液及び混合流体は、貫通孔15gを通ってかき混ぜられながら、板状部材15b、15cの周縁からケーシング15aの中空部に流入する。その結果、貫通孔15gを通過するときに流体(被処理液と混合流体との混合液)の流れが不安定になり、被処理液と混合流体とが混合される。その後、混合液は流出口15fから流出する。
【0061】
次に、液体処理装置2の動作について図4を用いて説明する。ポンプ13が駆動することで、被処理液(ここでは、水)がタンク11から流路20(上流部21a)に流入し、その後で流体吸入部12を通って下流部21bに流入する。流体吸入部12を被処理液が流れることで(ここでは、空気)が吸入口122aを介して吸入室122bに流入し、吸入室122bで被処理液と混合流体とが混合され、ディフューザ123cで混合流体が微細な泡となって被処理液に混合される。
【0062】
その後、被処理液は、流体吸入部12で微細な気泡が混合された状態で混合部15に流入する。混合部15に流入した流体(被処理液と混合流体との混合液)は、貫通孔15gを通過するときに流れが不安定になり、微細な泡となった混合流体がさらに被処理液に混合される。
【0063】
液体処理装置2では、流路20が流体循環回路を構成し、流体吸入部12及び混合部15で処理され、溶解タンク16内で加圧溶解され、大気圧に戻された後の被処理液がタンク11に戻り、再び流路20を流れて流体吸入部12及び混合部15で処理される。流体循環回路の場合、同じ被処理液を複数回流体吸入部12及び混合部15で処理することができ、被処理液に混合流体を効率よく混合することができる。
【0064】
図7は、流体吸入部12及び混合部15の有無による混合流体(空気)の被処理液(水)への混合量を比較するグラフである。図7において、点線はポンプ13、溶解タンク16及び流量調整弁14の場合(流体吸入部12及び混合部15を設けない場合)の空気の溶解比率を示し、実線は流体吸入部12、ポンプ13、混合部15、溶解タンク16及び流量調整弁14を設けた場合の空気の溶解比率を示す。図7に示すように、流体吸入部12、ポンプ13及び混合部15、溶解タンク16、流量調整弁14を設けた場合には、ポンプ13、溶解タンク16及び流量調整弁14を設けた場合に比べて、水により多くの空気が混合されていることが分かった。なお、図7のポンプ13の吐出圧力は、溶解タンク16内の圧力0.5MPaと同一である。
【0065】
図8は、混合部15の有無による混合流体(空気)の被処理液(水)への混合量を比較するグラフである。図8において、点線は流体吸入部12、ポンプ13、溶解タンク16及び流量調整弁14の場合(混合部15を設けない場合)の空気の溶解比率を示し、実線は流体吸入部12、ポンプ13、混合部15、溶解タンク16及び流量調整弁14を設けた場合の空気の溶解比率を示す。図8に示すように、流体吸入部12、ポンプ13、混合部15、溶解タンク16及び流量調整弁14を設けた場合には、ポンプ13及び流体吸入部12、溶解タンク16及び流量調整弁14を設けた場合に比べて、水により多くの空気が混合されていることが分かった。なお、図8のポンプ13の吐出圧力は、溶解タンク16内の圧力0.3MPaと同一である。
【0066】
本実施の形態によれば、流体吸入部12及び混合部15を設けることで、2種類の流体を効率よく混合できる。特に、溶解タンク16で加圧溶解を行うため、被処理液に混合流体を効率よく溶解できる。
【0067】
また、本実施の形態によれば、流路20が流体循環回路の場合、同じ被処理液を複数回流体吸入部12及び混合部15で処理することができ、被処理液に混合流体を効率よく混合することができる。
【0068】
なお、本実施の形態では、貫通孔15gが六角形状であったが、貫通孔15gは六角形状に限られない。例えば、貫通孔15gは、菱形状、矩形状、三角形状、五角形状等の多角形状であってもよいし、円形状、楕円形状等であってもよい。ただし、2種類の流体を効率よく混合するためには、貫通孔15gが多角形状であることが好ましい。
【0069】
また、本実施の形態では、混合部15が2種類の板状部材15b、15cを有したが、混合部15が3種類以上の板状部材を有してもよい。また、混合部15では、異なる種類の板状部材が隣接するように積層されていればよい。
【0070】
また、本実施の形態では、板状部材15b、15cが端15hに当接し、かつ、端15i及び側面15jに当接しないように設けられていたが、板状部材15b、15cを設ける形態はこれに限られない。例えば、板状部材15b、15cを側面15jに当接させ、端15h、15iに当接させないようにしてもよい。板状部材15b、15cを側面15jに当接させ、端15h、15iに当接させない場合でも、板状部材15bの貫通孔15gと板状部材15cの貫通孔15gが部分的に重なり、被処理液と混合流体との混合液が貫通孔15gへの流入と流出を繰り返すことで、被処理液と混合流体とが効率よく混合される。
【0071】
また、本実施の形態では、被処理液が水であり、混合流体が空気である場合を例に説明したが、第1の実施の形態と同様、被処理液は水に限られないし、混合流体は空気に限られない。
【0072】
<第2の実施の形態の変形例>
液体処理装置2は板状部材15bと板状部材15cとが交互に積層された混合部15を有したが、混合部の形態はこれに限られない。図9は、変形例にかかる混合部15Aを有する液体処理装置2Aの一例を示す模式図である。液体処理装置2Aは、混合部15Aのみが液体処理装置2と異なる。
【0073】
図10は、混合部15Aの概略を示す図である。混合部15Aは、主として、2枚の板状部材15b、15cがそれぞれ積層されており、2枚の板状部材15bに2枚の板状部材15cが積層されている。
【0074】
混合部15Aであっても、板状部材15bの貫通孔15gと板状部材15cの貫通孔15gが部分的に重なるため、貫通孔15gを通過する流体(被処理液と混合流体との混合液)の流れが不安定になり、被処理液と混合流体とが混合される。
【0075】
図11は、混合部15と混合部15Aとの違いによる混合流体(空気)の被処理液(水)への混合量を比較するグラフである。このように、混合部15と混合部15Aとは同様の機能を有していることが分かる。なお、図11のポンプ13の吐出圧力は、溶解タンク16内の圧力0.5MPaと同一である。
【0076】
なお、混合部15Aも、混合部15と同様に、板状部材15b、15cの数は2枚に限られない。さらに、混合部15Aが3種類以上の板状部材を有してもよい。また、混合部15Aでは、同じ種類の板状部材を積層し、かつ、これらを積層すればよい。
【0077】
<第3の実施の形態>
本発明の第1の実施の形態は、流体吸入部12を用いて被処理液に流体を混ぜたが、被処理液に流体を混合する方法はこれに限られない。以下、本発明の液体処理装置3について説明する。なお、第1、2の実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0078】
図12は、本発明の第3の実施の形態にかかる液体処理装置3の一例を示す模式図である。液体処理装置3は、主として、タンク11と、ポンプ13と、混合部15と、溶解タンク16と、流量調整弁14と、流路20と、流体流入部30とを備える。
【0079】
流体流入部30は、流路20のポンプ13の下流側(還流経路22)に設けられている。流体流入部30は、主として、ガスタンク31と、接続部32とを有する。
【0080】
ガスタンク31は、高圧ガスが封入されている。高圧ガスは、圧縮ガス及び液化ガスを含む。圧縮ガスは、常用の温度において圧力が1MPa以上となる圧縮ガスであって、現にその圧力が1MPa以上であるもの又は35℃において圧力が1MPa以上となる圧縮ガスであると定義されている。圧縮ガスは、例えば、水素、酸素、窒素等である。液化ガスは、常用の温度において圧力が0.2MPa以上となる液化ガスであって現にその圧力が0.2MPa以上であるもの又は圧力が0.2MPaとなる場合の温度が35℃以下である液化ガスと定義されている。液化ガスは、例えば、二酸化炭素、アンモニア、窒素等である。本実施の形態では、被処理液に混合される流体(混合流体)として、二酸化炭素及び窒素を採用する。
【0081】
接続部32は、ガスタンク31と流路20(還流経路22)とを接続する部材であり、配管、ホース、継手等を含む。還流経路22の接続部32の上流側が上流部22eであり、下流側が中流部22fである。
【0082】
次に、液体処理装置3の動作について説明する。ポンプ13が駆動することで、被処理液(ここでは、水)がタンク11から流路20に流入する。上流部22aに流入した被処理液は、接続部32を介してガスタンク31に封入された混合流体が混合された混合液となって中流部22fに流入する。その後、混合液が混合部15に流入し、貫通孔15gを通過することで流れが不安定になる。その結果、高圧ガスが微細な気泡となり、かつ、水に微細な気泡が混合される。
【0083】
液体処理装置3では、流路20が流体循環回路を構成し、混合部15で処理され、溶解タンク16内で加圧溶解された後で被処理液がタンク11に戻り、再び流路20を流れて混合部15で処理される。流体循環回路の場合、同じ被処理液を複数回混合部15で処理することができ、被処理液に混合流体を効率よく混合することができる。
【0084】
図13は、混合部15の有無による混合流体(ここでは、二酸化炭素)の被処理液(水)への溶解量を比較するグラフである。図13において、四角のプロットはポンプ13、溶解タンク16及び流量調整弁14を設けた場合(混合部15を設けない場合)の二酸化炭素(炭酸ガス)の濃度を示し、丸のプロットはポンプ13及び混合部15、溶解タンク16及び流量調整弁14を設けた場合の二酸化炭素の濃度を示す。図13より、混合部15を有する場合には、混合部15を有しない場合に比べて炭酸ガス濃度が高い、すなわち水により多くの二酸化炭素が溶解していることが分かった。なお、図13のポンプ13の吐出圧力は溶解タンク16内の圧力0.4MPaと同一であり、ガスタンク31における二酸化酸素の圧力は0.5MPaであり、二酸化酸素の注入量は3NL/分である。
【0085】
図14は、混合部15の有無による混合流体(ここでは、窒素)の被処理液(水)への混合量を比較するグラフである。なお、図14(B)は、図14(A)の一部を抽出して拡大したものである。窒素を被処理液へ混合すると、酸素が窒素に置換(窒素置換)され、被処理液中の溶存酸素量が低下する。したがって、溶存酸素量を測定することで、窒素の混合量を間接的に測定することができる。図14より、混合部15を有する場合には、混合部15を有しない場合に比べて溶存酸素量の低下が早い、すなわち水により多くの窒素が混合していることが分かった。なお、図14のポンプ13の吐出圧力は溶解タンク16内の圧力0.4MPaと同一であり、ガスタンク31における窒素の圧力は0.5MPaであり、窒素の注入量は3NL/分である。
【0086】
本実施の形態によれば、混合部15を設けることで、2種類の流体を効率よく混合することができる。特に、溶解タンク16で加圧溶解または窒素置換を行うため、被処理液に混合流体を効率よく溶解または置換できる。
【0087】
また、本実施の形態によれば、流路20がタンク11から流出した被処理液が流れるとともに、被処理液をタンク11へ還流する流体循環回路であり、同じ被処理液を複数回混合部15で処理することができ、被処理液に混合流体を効率よく混合することができる。
【0088】
なお、本実施の形態では、被処理液が水であり、混合流体が空気である場合を例に説明したが、第1、2の実施の形態と同様、被処理液は水に限られないし、混合流体は空気に限られない。
【0089】
以上、この発明の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0090】
また、「略」とは、厳密に同一である場合のみでなく、同一性を失わない程度の誤差や変形を含む概念である。例えば、「略直交」とは、厳密に直交する場合には限られず、例えば直交と同一視できる場合を含む概念である。また、例えば、単に直交、平行、一致等と表現する場合において、厳密に直交、平行、一致等の場合のみでなく、略平行、略直交、略一致等の場合を含むものとする。
【0091】
また、「近傍」とは、基準となる位置の近くのある範囲(任意に定めることができる)の領域を含むことを意味する。例えば、端近傍という場合に、端の近くのある範囲の領域であって、端を含んでもいても含んでいなくてもよいことを示す概念である。
【符号の説明】
【0092】
1、2、2A、3:液体処理装置
11 :タンク
12 :流体吸入部
13 :ポンプ
14 :流量調整弁
15、15A:混合部
15a :ケーシング
15b、15c、15d:板状部材
15e :流入口
15f :流出口
15g :貫通孔
16 :溶解タンク
20 :流路
21 :流出経路
22 :還流経路
21a、22a、22c、22e:上流部
21b、22b:下流部
22d、22f:中流部
30 :流体流入部
31 :ガスタンク
32 :接続部
100 :測定装置
102、106:流路
103 :空気貯筒
104 :貯水槽
105 :圧力開放バルブ
111 :流出口
121 :第1筐体
121a :供給口
121b :ノズル
122 :第2筐体
122a :吸入口
122b :吸入室
123 :第3筐体
123a :排出口
123b :縮小部
123c :ディフューザ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15