(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025040459
(43)【公開日】2025-03-25
(54)【発明の名称】ポリカーボネート樹脂からなる光学成形品
(51)【国際特許分類】
C08G 64/04 20060101AFI20250317BHJP
G02B 1/04 20060101ALI20250317BHJP
【FI】
C08G64/04
G02B1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023147280
(22)【出願日】2023-09-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】中▲崎▼ 智大
(72)【発明者】
【氏名】益子 竜司
(72)【発明者】
【氏名】武田 強
【テーマコード(参考)】
4J029
【Fターム(参考)】
4J029AA09
4J029AB07
4J029AC02
4J029AD01
4J029AD07
4J029AE04
4J029BB12A
4J029BB12B
4J029BB13A
4J029BC09
4J029HA01
4J029HC02
4J029KE09
4J029KH05
4J029KH06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】耐熱性、寸法安定性、低吸水性、光透過性に優れたポリカーボネート樹脂からなる光学成形品を提供する。
【解決手段】下記式(1)で表される繰り返し単位Aとビスフェノール構造を有する繰り返し単位Bを含むポリカーボネート樹脂であって、ポリカーボネート樹脂の全繰り返し単位に対して式1で表される繰り返し単位Aの割合が99~1モル%、繰り返し単位Bの含有割合が1~99モル%の範囲であるポリカーボネート樹脂からなる光学成形品。
(式中、環Zはナフタレン環、R
1及びR
2は夫々独立して、H、ハロゲン、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、アルケニル基、アリール基、アリールオキシ基、アラルキル基、アラルキルオキシ基、ニトロ基、アルデヒド基、シアノ基およびカルボキシル基からなる群より選ばれる少なくとも一つの基を表す。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される繰り返し単位(A)と下記式(2)で表される繰り返し単位(B)を含むポリカーボネート樹脂であって、式(1)で表される繰り返し単位(A)の割合がポリカーボネート樹脂の全繰り返し単位に対して99~1モル%であり、繰り返し単位(B)の含有割合が全繰り返し単位に対して1~99モル%の範囲であるポリカーボネート樹脂からなる光学成形品。
【化1】
(上記式(1)中、環Zはナフタレン環、R
1およびR
2は夫々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~18のアルキル基、炭素原子数1~18のアルコキシ基、炭素原子数6~20のシクロアルキル基、炭素原子数6~20のシクロアルコキシ基、炭素原子数2~10のアルケニル基、炭素原子数6~14のアリール基、炭素原子数6~14のアリールオキシ基、炭素原子数7~20のアラルキル基、炭素原子数7~20のアラルキルオキシ基、ニトロ基、アルデヒド基、シアノ基およびカルボキシル基からなる群より選ばれる少なくとも一つの基を表す。)
【化2】
(上記式(2)において、R
3およびR
4は夫々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~18のアルキル基、炭素原子数1~18のアルコキシ基、炭素原子数6~20のシクロアルキル基、炭素原子数6~20のシクロアルコキシ基、炭素原子数2~10のアルケニル基、炭素原子数6~14のアリール基、炭素原子数6~14のアリールオキシ基、炭素原子数7~20のアラルキル基、炭素原子数7~20のアラルキルオキシ基、ニトロ基、アルデヒド基、シアノ基およびカルボキシル基からなる群より選ばれる少なくとも一つの基を表し、それぞれ複数ある場合はそれらは同一でも異なっていても良く、eおよびfは夫々1~4の整数であり、Wは単結合もしくは下記式(3)で表される基からなる群より選ばれる少なくとも一つの基である。)
【化3】
(上記式(3)においてR
5,R
6,R
7,R
8,R
9,R
10,R
11及びR
12は夫々独立して水素原子、炭素原子数1~18のアルキル基、炭素原子数6~14のアリール基及び炭素原子数7~20のアラルキル基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基を表し、複数ある場合はそれらは同一でも異なっていても良く、R
13及びR
14は夫々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~18のアルキル基、炭素原子数1~18のアルコキシ基、炭素原子数6~20のシクロアルキル基、炭素原子数6~20のシクロアルコキシ基、炭素原子数2~10のアルケニル基、炭素原子数6~14のアリール基、炭素原子数6~14のアリールオキシ基、炭素原子数7~20のアラルキル基、炭素原子数7~20のアラルキルオキシ基、ニトロ基、アルデヒド基、シアノ基及びカルボキシル基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基を表し、R
15,R
16,R
17及びR
18は夫々独立して炭素原子数1~18のアルキル基、炭素原子数6~20のシクロアルキル基、炭素原子数2~10のアルケニル基、炭素原子数6~14のアリール基及び炭素原子数7~20のアラルキル基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基を表し、複数ある場合はそれらは同一でも異なっていても良く、cは1~10の整数、dは4~7の整数、h,iは1~3の整数、gは1~100の整数である。)
【請求項2】
前記式(2)で表される繰り返し単位(B)が2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2-フェニル-3,3-ビス(p-ヒドロキシフェニル)フタルイミジンからなる群より選ばれる少なくとも一つの化合物から誘導される繰り返し単位を含む請求項1記載のポリカーボネート樹脂。
【請求項3】
飽和吸水率が0.5%以下である請求項1記載のポリカーボネート樹脂からなる光学成形品。
【請求項4】
ガラス転移温度が220~310℃である請求項1記載のポリカーボネート樹脂からなる光学成形品。
【請求項5】
線膨張係数が30~60ppm/℃である請求項1記載のポリカーボネート樹脂からなる光学成形品。
【請求項6】
分光光線透過率が波長850nm、波長1310nm、波長1550nmにおいて85%以上、波長1610nmにおいて82%以上、波長1625nmにおいて78%以上である請求項1記載のポリカーボネート樹脂からなる光学成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性、寸法安定性、低吸水性、光透過性に優れたポリカーボネート樹脂からなる光学成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバー技術は、長距離・短距離での高速データ通信に広く使用されている。ここで使用される光コネクターあるいはトランシーバは光信号と電気信号の変換として機能し、これらの光学部品、特にレンズや導波路にはポリエーテルイミド等のガラス転移温度の高い樹脂が用いられている。はんだリフロープロセスにおいて高温にさらされるため、240℃以上でその形状を維持することが要求される。また、光通信における通信波長である600nm~1700nmの範囲における高い光透過性、低吸水性、寸法安定性も求められる。
【0003】
特許文献1には2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレンを繰り返し単位とするポリカーボネートやコポリカーボネートとする方法が記載されており、高い鉛筆硬度、高耐熱化に効果的であることが提案されている。しかしながら、耐熱性、寸法安定性、低吸水性、高い光透過性のすべてを満足することはできないという課題を有する。
【0004】
したがって、耐熱性、波長600nm~1700nmの範囲における高い光透過性、低吸水性、寸法安定性に優れるポリマーを含む光学成形品が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、耐熱性、寸法安定性、低吸水性、光透過性に優れたポリカーボネート樹脂からなる光学成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らはこの目的を達成せんとして鋭意研究を重ねた結果、特定の構造を有するポリカ―ボネート樹脂からなる光学成形品が前記課題を解決できることを見出し本発明に到達した。すなわち、本発明は以下1~6項の通りである。
【0008】
1.下記式(1)で表される繰り返し単位(A)と下記式(2)で表される繰り返し単位(B)を含むポリカーボネート樹脂であって、式(1)で表される繰り返し単位(A)の割合がポリカーボネート樹脂の全繰り返し単位に対して99~1モル%であり、繰り返し単位(B)の含有割合が全繰り返し単位に対して1~99モル%の範囲であるポリカーボネート樹脂からなる光学成形品。
【0009】
【0010】
(上記式(1)中、環Zはナフタレン環、R1およびR2は夫々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~18のアルキル基、炭素原子数1~18のアルコキシ基、炭素原子数6~20のシクロアルキル基、炭素原子数6~20のシクロアルコキシ基、炭素原子数2~10のアルケニル基、炭素原子数6~14のアリール基、炭素原子数6~14のアリールオキシ基、炭素原子数7~20のアラルキル基、炭素原子数7~20のアラルキルオキシ基、ニトロ基、アルデヒド基、シアノ基およびカルボキシル基からなる群より選ばれる少なくとも一つの基を表す。)
【0011】
【0012】
(上記式(2)において、R3およびR4は夫々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~18のアルキル基、炭素原子数1~18のアルコキシ基、炭素原子数6~20のシクロアルキル基、炭素原子数6~20のシクロアルコキシ基、炭素原子数2~10のアルケニル基、炭素原子数6~14のアリール基、炭素原子数6~14のアリールオキシ基、炭素原子数7~20のアラルキル基、炭素原子数7~20のアラルキルオキシ基、ニトロ基、アルデヒド基、シアノ基およびカルボキシル基からなる群より選ばれる少なくとも一つの基を表し、それぞれ複数ある場合はそれらは同一でも異なっていても良く、eおよびfは夫々1~4の整数であり、Wは単結合もしくは下記式(3)で表される基からなる群より選ばれる少なくとも一つの基である。)
【0013】
【0014】
(上記式(3)においてR5,R6,R7,R8,R9,R10,R11及びR12は夫々独立して水素原子、炭素原子数1~18のアルキル基、炭素原子数6~14のアリール基及び炭素原子数7~20のアラルキル基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基を表し、複数ある場合はそれらは同一でも異なっていても良く、R13及びR14は夫々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~18のアルキル基、炭素原子数1~18のアルコキシ基、炭素原子数6~20のシクロアルキル基、炭素原子数6~20のシクロアルコキシ基、炭素原子数2~10のアルケニル基、炭素原子数6~14のアリール基、炭素原子数6~14のアリールオキシ基、炭素原子数7~20のアラルキル基、炭素原子数7~20のアラルキルオキシ基、ニトロ基、アルデヒド基、シアノ基及びカルボキシル基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基を表し、R15,R16,R17及びR18は夫々独立して炭素原子数1~18のアルキル基、炭素原子数6~20のシクロアルキル基、炭素原子数2~10のアルケニル基、炭素原子数6~14のアリール基及び炭素原子数7~20のアラルキル基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基を表し、複数ある場合はそれらは同一でも異なっていても良く、cは1~10の整数、dは4~7の整数、h,iは1~3の整数、gは1~100の整数である。)
【0015】
2. 前記式(2)で表される繰り返し単位(B)が2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2-フェニル-3,3-ビス(p-ヒドロキシフェニル)フタルイミジンからなる群より選ばれる少なくとも一つの化合物から誘導される繰り返し単位を含む前項1に記載のポリカーボネート樹脂からなる光学成形品。
3.飽和吸水率が0.5%以下である前項1または2に記載のポリカーボネート樹脂からなる光学成形品。
4.ガラス転移温度が220~310℃である前項1~3のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂からなる光学成形品。
5.線膨張係数が30~60ppm/℃である前項1~4のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂からなる光学成形品。
6.分光光線透過率が波長850nm、波長1310nm、波長1550nmにおいて85%以上、波長1610nmにおいて82%以上、波長1625nmにおいて78%以上である前項1~5のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂からなる光学成形品。
【発明の効果】
【0016】
本発明のポリカーボネート樹脂からなる光学成形品は、耐熱性、寸法安定性、低吸水性、光透過性に優れているため、光コネクタあるいはトランシーバ等の耐はんだリフロー性が求められる光学部品用の光学成形品として好適に用いられる。したがって、その奏する産業上の効果は格別である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<ポリカーボネート樹脂>
本発明におけるポリカーボネート樹脂は、下記式(1)で表される繰り返し単位(A)と下記式(2)で表される繰り返し単位(B)を含むポリカーボネート樹脂である。
【0018】
【0019】
(上記式(1)中、環Zはナフタレン環、R1およびR2は夫々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~18のアルキル基、炭素原子数1~18のアルコキシ基、炭素原子数6~20のシクロアルキル基、炭素原子数6~20のシクロアルコキシ基、炭素原子数2~10のアルケニル基、炭素原子数6~14のアリール基、炭素原子数6~14のアリールオキシ基、炭素原子数7~20のアラルキル基、炭素原子数7~20のアラルキルオキシ基、ニトロ基、アルデヒド基、シアノ基およびカルボキシル基からなる群より選ばれる少なくとも一つの基を表す。)
【0020】
【0021】
(上記式(2)において、R3およびR4は夫々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~18のアルキル基、炭素原子数1~18のアルコキシ基、炭素原子数6~20のシクロアルキル基、炭素原子数6~20のシクロアルコキシ基、炭素原子数2~10のアルケニル基、炭素原子数6~14のアリール基、炭素原子数6~14のアリールオキシ基、炭素原子数7~20のアラルキル基、炭素原子数7~20のアラルキルオキシ基、ニトロ基、アルデヒド基、シアノ基およびカルボキシル基からなる群より選ばれる少なくとも一つの基を表し、それぞれ複数ある場合はそれらは同一でも異なっていても良く、eおよびfは夫々1~4の整数であり、Wは単結合もしくは下記式(3)で表される基からなる群より選ばれる少なくとも一つの基である。)
【0022】
【0023】
(上記式(3)においてR5,R6,R7,R8,R9,R10,R11及びR12は夫々独立して水素原子、炭素原子数1~18のアルキル基、炭素原子数6~14のアリール基及び炭素原子数7~20のアラルキル基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基を表し、複数ある場合はそれらは同一でも異なっていても良く、R13及びR14は夫々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~18のアルキル基、炭素原子数1~18のアルコキシ基、炭素原子数6~20のシクロアルキル基、炭素原子数6~20のシクロアルコキシ基、炭素原子数2~10のアルケニル基、炭素原子数6~14のアリール基、炭素原子数6~14のアリールオキシ基、炭素原子数7~20のアラルキル基、炭素原子数7~20のアラルキルオキシ基、ニトロ基、アルデヒド基、シアノ基及びカルボキシル基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基を表し、R15,R16,R17及びR18は夫々独立して炭素原子数1~18のアルキル基、炭素原子数6~20のシクロアルキル基、炭素原子数2~10のアルケニル基、炭素原子数6~14のアリール基及び炭素原子数7~20のアラルキル基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基を表し、複数ある場合はそれらは同一でも異なっていても良く、cは1~10の整数、dは4~7の整数、h,iは1~3の整数、gは1~100の整数である。)
【0024】
前記式(1)において、環Zはナフタレン環である。フルオレン環の9位の炭素原子に接続する2つの環Zは、互いに種類が異なっていてもよいが、通常、同一である場合が多い。
【0025】
また、フルオレン環の9位に対する環Zの置換位置は特に制限されない。例えば、フルオレン環の9位に対して、ナフタレン環の1位又は2位のいずれの位置で置換してもよく、2位で置換するのが好ましい。
【0026】
9,9-ビス縮合多環式アリールフルオレン骨格を連結するためのカーボネート結合を形成する酸素原子(-O-)及びエステル結合[-O-C(=O)-]の置換位置は、環Zとフルオレン環との結合位置以外の位置であれば、特に限定されず、通常、フルオレン環の9位に1位又は2位で結合するナフチル基の5~8位のいずれかの位置に置換している場合が多く、フルオレン環の9位に対してナフタレン環の1位又は2位が置換し(1-ナフチル又は2-ナフチルの関係で置換し)、この置換位置に対して、1,5位、2,6位の関係で置換しているのが好ましく、2,6位の関係で置換しているのがより好ましい。
【0027】
前記式(1)において、R1およびR2は夫々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~18のアルキル基、炭素原子数1~18のアルコキシ基、炭素原子数6~20のシクロアルキル基、炭素原子数6~20のシクロアルコキシ基、炭素原子数2~10のアルケニル基、炭素原子数6~14のアリール基、炭素原子数6~14のアリールオキシ基、炭素原子数7~20のアラルキル基、炭素原子数7~20のアラルキルオキシ基、ニトロ基、アルデヒド基、シアノ基およびカルボキシル基からなる群より選ばれる少なくとも一つの基を表す。
【0028】
ハロゲン原子として、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
【0029】
炭素原子数1~18のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基等が挙げられる。好ましくは炭素原子数1~6のアルキル基である。
【0030】
炭素原子数1~18のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基、ヘキトキシ基、オクトキシ基等が挙げられる。炭素原子数1~6のアルコキシ基が好ましい。
【0031】
炭素原子数6~20のシクロアルキル基としては、シクロヘキシル基、シクロオクチル基等が挙げられる。炭素原子数6~12のシクロアルキル基が好ましい。
【0032】
炭素原子数6~20のシクロアルコキシ基としては、好ましくはシクロヘキシルオキシ基、シクロオクチルオキシ基等が挙げられる。炭素原子数6~12のシクロアルコキシ基が好ましい。
【0033】
炭素原子数2~10のアルケニル基としては、メテニル基、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基等が挙げられる。炭素原子数2~6のアルケニル基が好ましい。
【0034】
炭素原子数6~14のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0035】
炭素原子数6~14のアリールオキシ基としては、フェニルオキシ基、ナフチルオキシ基等が挙げられる。
【0036】
炭素原子数7~20のアラルキル基としては、ベンジル基、フェニルエチル基等が挙げられる。
【0037】
炭素原子数7~20のアラルキルオキシ基としては、ベンジルオキシ基、フェニルエチルオキシ基等が挙げられる。
なかでも、R1およびR2は水素原子、炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数6~14のアリール基が好ましく、特に水素原子が好ましい。
【0038】
繰り返し単位(A)の含有割合は、ポリカーボネート樹脂の全繰り返し単位に対して1~99モル%であり、好ましくは5~95モル%であり、より好ましくは10~90モル%である。上記範囲内であると耐熱性、寸法安定性に優れ好ましい。
【0039】
前記式(2)において、R3およびR4は夫々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~18のアルキル基、炭素原子数1~18のアルコキシ基、炭素原子数6~20のシクロアルキル基、炭素原子数6~20のシクロアルコキシ基、炭素原子数2~10のアルケニル基、炭素原子数6~14のアリール基、炭素原子数6~14のアリールオキシ基、炭素原子数7~20のアラルキル基、炭素原子数7~20のアラルキルオキシ基、ニトロ基、アルデヒド基、シアノ基およびカルボキシル基からなる群より選ばれる少なくとも一つの基を表し、それぞれ複数ある場合はそれらは同一でも異なっていても良い。
【0040】
ここで、炭素原子数1~18のアルキル基、炭素原子数1~18のアルコキシ基、炭素原子数6~20のシクロアルキル基、炭素原子数6~20のシクロアルコキシ基、炭素原子数2~10のアルケニル基、炭素原子数6~14のアリール基、炭素原子数6~14のアリールオキシ基、炭素原子数7~20のアラルキル基、炭素原子数7~20のアラルキルオキシ基としては、前述したものと同様のものが挙げられる。
【0041】
前記式(2)において、Wは単結合もしくは前記式(3)で表される基からなる群より選ばれる少なくとも一つの基である。
【0042】
前記式(3)において、R5,R6,R7,R8,R9,R10,R11及びR12は夫々独立して水素原子、炭素原子数1~18のアルキル基、炭素原子数6~14のアリール基及び炭素原子数7~20のアラルキル基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基を表し、複数ある場合はそれらは同一でも異なっていても良い。
【0043】
炭素原子数1~18のアルキル基、炭素原子数6~14のアリール基及び炭素原子数7~20のアラルキル基としては、前述したものと同様のものが挙げられる。
【0044】
前記式(3)において、R13及びR14は夫々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~18のアルキル基、炭素原子数1~18のアルコキシ基、炭素原子数6~20のシクロアルキル基、炭素原子数6~20のシクロアルコキシ基、炭素原子数2~10のアルケニル基、炭素原子数6~14のアリール基、炭素原子数6~14のアリールオキシ基、炭素原子数7~20のアラルキル基、炭素原子数7~20のアラルキルオキシ基、ニトロ基、アルデヒド基、シアノ基及びカルボキシル基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基を表す。
【0045】
炭素原子数1~18のアルキル基、炭素原子数1~18のアルコキシ基、炭素原子数6~20のシクロアルキル基、炭素原子数6~20のシクロアルコキシ基、炭素原子数2~10のアルケニル基、炭素原子数6~14のアリール基、炭素原子数6~14のアリールオキシ基、炭素原子数7~20のアラルキル基、炭素原子数7~20のアラルキルオキシ基としては、前述したものと同様のものが挙げられる。
【0046】
前記式(3)において、R15,R16,R17及びR18は夫々独立して炭素原子数1~18のアルキル基、炭素原子数6~20のシクロアルキル基、炭素原子数2~10のアルケニル基、炭素原子数6~14のアリール基及び炭素原子数7~20のアラルキル基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基を表し、複数ある場合はそれらは同一でも異なっていても良い。
【0047】
炭素原子数1~18のアルキル基、炭素原子数6~20のシクロアルキル基、炭素原子数2~10のアルケニル基、炭素原子数6~14のアリール基及び炭素原子数7~20のアラルキル基としては、前述したものと同様のものが挙げられる。
【0048】
前記式(3)において、cは1~10の整数であり、1~4の整数が好ましく、1がより好ましい。dは4~7の整数であり、5が好ましい。h,iは1~3の整数であり、1が好ましい。gは1~100の整数であり、10~90の整数が好ましく、20~80の整数がより好ましい。
【0049】
前記式(2)で表される繰り返し単位(B)が2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、BPAと略すことがある)、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(以下、BisP-HTGと略すことがある)、2-フェニル-3,3-ビス(p-ヒドロキシフェニル)フタルイミジン(以下、PPPBPと略すことがある)からなる群より選ばれる少なくとも一つの化合物から誘導される繰り返し単位を含むことが特に好ましい。
【0050】
繰り返し単位(B)の含有割合は、ポリカーボネート樹脂の全繰り返し単位に対して1~99モル%が好ましく、より好ましくは5~95モル%であり、さらに好ましくは10~90モル%である。上記範囲内であると耐熱性、寸法安定性に優れ好ましい。
【0051】
本発明におけるポリカーボネート樹脂は、ポリカーボネート樹脂の特性を損なわない程度に、繰り返し単位(A)および繰り返し単位(B)以外に、後述する他のジヒドロキシ化合物や他のジオール化合物から誘導される繰り返し単位を含むこともできる。繰り返し単位(A)および繰り返し単位(B)以外の繰り返し単位(C)は、全繰り返し単位に対して30モル%以下が好ましく、20モル%以下がより好ましく、10モル%以下がさらに好ましく、5モル%以下が特に好ましい。
【0052】
<ポリカーボネート樹脂の原料>
前記式(1)で表される繰り返し単位(A)は、ジオール化合物から誘導されるものであり、具体的には9,9-ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)フルオレンまたは9,9-ビス(6-ヒドロキシ-1-ナフチル)フルオレンが好ましく、より好ましくは9,9-ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)フルオレンである。これらのジオール化合物は、1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
【0053】
前記式(2)で表される繰り返し単位(B)は、ジオール化合物から誘導されるものであり、例えば2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン;2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン;2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-エチルフェニル)プロパン;2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-プロピルフェニル)プロパン;2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-ブチルフェニル)プロパン;ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン;1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン;2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン;2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン;2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン;2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フェニルメタン;2,2-ビス(4-ヒドロキシ-1-メチルフェニル)プロパン;ビス(4-ヒドロキシフェニル)ナフチルメタン;1,1-ビス(4-ヒドロキシ-t-ブチルフェニル)プロパン;2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-ブロモフェニル)プロパン;2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-テトラメチルフェニル)プロパン;2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-クロロフェニル)プロパン;2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-テトラクロロフェニル)プロパン;2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-テトラブロモフェニル)プロパンなどのビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、4,4’-ジヒドロキシフェニルエーテル;4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルフェニルエーテルなどのジヒドロキシアリールエーテル類、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド;4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルフィドなどのジヒドロキシジアリールスルフィド類、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホキシド;4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルホキシドなどのジヒドロキシジアリールスルホキシド類、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン;4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルホンなどのジヒドロキシジアリールスルホン類、4,4’-ジヒロキシジフェニルなどのジヒドロキシジフェニル類、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン;9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレンなどのジヒドロキシジアリールフルオレン類、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルベンゾフェノン、4,4’-ビフェノール、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ビフェニルジオール、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニルジオール、α、α’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,3-ジイソプロピルベンゼン、α、α’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,4-ジイソプロピルベンゼン、2-フェニル-3,3-ビス(p-ヒドロキシフェニル)フタルイミジンなどが挙げられる。
【0054】
これらのなかでも、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、(1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2-フェニル-3,3-ビス(p-ヒドロキシフェニル)フタルイミジンが好適である。これらのジオールは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
本発明におけるポリカーボネート樹脂は、ポリカーボネート樹脂の特性を損なわない程度に、繰り返し単位(A)および繰り返し単位(B)以外に他のジヒドロキシ化合物やジオール化合物を共重合してもよい。
【0056】
他のジヒドロキシ化合物として、ヒドロキノン、レゾルシノール、オルシノール、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ノルボルネン、1,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)アダマンタン;2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)アダマンタン;1,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-5,7-ジメチルアダマンタン、10,10-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-9-アントロン、1,5-ビス(4-ヒドロキシフェニルチオ)-2,3-ジオキサペンタエンビスフェノキシエタノールフルオレン等が挙げられる。
【0057】
他のジオール化合物として、イソソルビド:1,4:3,6-ジアンヒドロ-D-ソルビトール、トリシクロデカンジメタノール(TCDDM)、4,8-ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロデカン、テトラメチルシクロブタンジオール(TMCBD)、2,2,4,4-テトラメチルシクロブタン-1,3-ジオール、混合異性体、シス/トランス-1,4-シクロヘキサンジメタノール(CHDM)、シス/トランス-1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、シクロヘクス-1,4-イルエンジメタノール、トランス-1,4-シクロヘキサンジメタノール(tCHDM)、トランス-1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、シス-1,4-シクロヘキサンジメタノール(cCHDM)、シス-1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、シス-1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,1’-ビ(シクロヘキシル)-4,4’-ジオール、スピログリコール、ジシクロヘキシル-4,4’-ジオール、4,4’-ジヒドロキシビシクロヘキシルおよびポリ(エチレングリコール)等が挙げられる。
【0058】
<ポリカーボネート樹脂の製造方法>
本発明におけるポリカーボネート樹脂は、前記ジオール化合物とカーボネート前駆体とを反応させて得られるものである。反応の方法としては界面重縮合法、溶融エステル交換法、カーボネートプレポリマーの固相エステル交換法、および環状カーボネート化合物の開環重合法などを挙げることができる。界面重縮合の場合は通常一価フェノール類の末端停止剤が使用される。
【0059】
ポリカーボネート樹脂は、芳香族または脂肪族(脂環式を含む)の二官能性カルボン酸を共重合したポリエステルカーボネートを含む。脂肪族の二官能性のカルボン酸は、α,ω-ジカルボン酸が好ましい。脂肪族の二官能性のカルボン酸としては例えば、セバシン酸(デカン二酸)、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、オクタデカン二酸、およびイコサン二酸などの直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸、並びにシクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸が好ましく挙げられる。これらのカルボン酸は、目的を阻害しない範囲で共重合してもよい。また、ポリカーボネート樹脂は、必要に応じてポリオルガノシロキサン単位を含有する構成単位を共重合することもできる。
【0060】
ポリカーボネート樹脂は、必要に応じて三官能以上の多官能性芳香族化合物を含有する構成単位を、共重合し、分岐ポリカーボネートとすることもできる。
【0061】
分岐ポリカーボネートに使用される三官能以上の多官能性芳香族化合物としては、4,6-ジメチル-2,4,6-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプテン-2、2,4,6-トリメチル-2,4,6-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1-トリス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,6-ビス(2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェノール、および4-{4-[1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン}-α,α-ジメチルベンジルフェノール等のトリスフェノールが好適に例示される。中でも1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンが好ましい。かかる多官能性芳香族化合物から誘導される構成単位は、他のジオール成分からの構成単位との合計100モル%中、好ましくは0.03~1.5モル%、より好ましくは0.1~1.2モル%、特に好ましくは0.2~1.0モル%である。
【0062】
また分岐構造単位は、多官能性芳香族化合物から誘導されるだけでなく、溶融エステル交換法による重合反応時に生じる副反応の如き、多官能性芳香族化合物を用いることなく誘導されるものであってもよい。尚、かかる分岐構造の割合については1H-NMR測定により算出することが可能である。
【0063】
カーボネート前駆物質として例えばホスゲンを使用する反応では、通常酸結合剤および溶媒の存在下に反応を行う。酸結合剤としては例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物またはピリジン等のアミン化合物が用いられる。溶媒としては例えば塩化メチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が用いられる。また反応促進のために例えば第三級アミンまたは第四級アンモニウム塩等の触媒を用いることもできる。その際、反応温度は通常0~40℃であり、反応時間は数分~5時間である。
【0064】
カーボネート前駆物質として例えば炭酸ジエステルを用いるエステル交換反応は、不活性ガス雰囲気下所定割合の芳香族ジオール成分を炭酸ジエステルと加熱しながら撹拌して、生成するアルコールまたはフェノール類を留出させる方法により行われる。反応温度は生成するアルコールまたはフェノール類の沸点等により異なるが、通常120~300℃の範囲である。反応はその初期から減圧にして生成するアルコールまたはフェノール類を留出させながら反応を完結させる。また反応を促進するために通常エステル交換反応に使用される触媒を使用することもできる。前記エステル交換反応に使用される炭酸ジエステルとしては、例えばジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート等が挙げられる。これらのうち特にジフェニルカーボネートが好ましい。
【0065】
末端停止剤として通常使用される単官能フェノール類を使用することができる。殊にカーボネート前駆物質としてホスゲンを使用する反応の場合、単官能フェノール類は末端停止剤として分子量調節のために一般的に使用され、また得られたポリカーボネート樹脂は、末端が単官能フェノール類に基づく基によって封鎖されているので、そうでないものと比べて熱安定性に優れている。前記単官能フェノール類の具体例としては、例えばフェノール、m-メチルフェノール、p-メチルフェノール、m-プロピルフェノール、p-プロピルフェノール、1-フェニルフェノール、2-フェニルフェノール、p-tert-ブチルフェノール、p-クミルフェノール、イソオクチルフェノール、p-長鎖アルキルフェノール等が挙げられる。
【0066】
(その他の成分)
本発明におけるポリカーボネート樹脂には、本発明の目的を損なわない範囲で各種特性を付与するために、各種添加剤を含有させて樹脂組成物としてもよい。添加剤として、離型剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、ブルーイング剤、帯電防止剤、難燃剤、熱線遮蔽剤、蛍光染料(蛍光増白剤含む)、顔料、光拡散剤、強化充填剤、他の樹脂やエラストマー等を配することができる。
【0067】
離型剤としては、その90重量%以上がアルコールと脂肪酸のエステルからなるものが好ましい。アルコールと脂肪酸のエステルとしては、具体的には一価アルコールと脂肪酸のエステルや、多価アルコールと脂肪酸との部分エステルあるいは全エステルが挙げられる。具体的に一価アルコールと飽和脂肪酸とエステルとしては、ステアリルステアレート、パルミチルパルミテート、ブチルステアレート、メチルラウレート、イソプロピルパルミテート等が挙げられる。ステアリルステアレートが好ましい。多価アルコールと飽和脂肪酸との部分エステルまたは全エステルとしては、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸ジグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ステアリン酸モノソルビテート、ベヘニン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラペラルゴネート、プロピレングリコールモノステアレート、ビフェニルビフェネ-ト、ソルビタンモノステアレート、2-エチルヘキシルステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサステアレート等のジペンタエリスルトールの全エステルまたは部分エステル等が挙げられる。これらのエステルのなかでも、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ステアリン酸トリグリセリドとステアリルステアレートの混合物が好ましく、ステアリン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトールテトラステアレートがより好ましい。
【0068】
離型剤の配合量としては、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、0.05~0.5重量部の範囲が好ましく、0.1~0.4重量部の範囲がより好ましく、0.12~0.3重量部の範囲がさらに好ましい。
【0069】
熱安定剤としては、リン系熱安定剤、硫黄系熱安定剤およびヒンダードフェノール系熱安定剤が挙げられる。リン系熱安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびこれらのエステル等が挙げられる。具体的には、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ステアリル、[1,1ービフェニル]-4,4-ジイルビス[ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェノキシ)ホスフィン]、3,9-ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサー3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカンが好ましく、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ステアリル、3,9-ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカンがより好ましい。
【0070】
熱安定剤の配合量としては、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、0.001~0.5重量部の範囲が好ましく、0.005~0.4重量部の範囲がより好ましく、0.01~0.3重量部の範囲がさらに好ましい。
【0071】
(粘度平均分子量)
本発明におけるポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、好ましくは6,000~35,000の範囲であり、より好ましくは8,000~30,000の範囲であり、さらに好ましくは10,000~28,000の範囲であり、特に好ましくは12,000~25,000の範囲であり、もっとも好ましくは13,000~22,000の範囲である。上述の範囲内であると、耐傷付き性、耐熱性、成形性に優れ好ましい。
【0072】
本発明におけるポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、まず、次式にて算出される比粘度(ηSP)を20℃で塩化メチレン100mlに樹脂0.7gを溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求め、
比粘度(ηSP)=(t-t0)/t0
[t0は塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
求められた比粘度(ηSP)から次の数式により粘度平均分子量Mvを算出したものである。
ηSP/c=[η]+0.45×[η]2c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10-4Mv0.83
c=0.7
【0073】
(ガラス転移温度:Tg)
本発明におけるポリカーボネート樹脂のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは220~310℃の範囲であり、より好ましくは230~307℃の範囲であり、さらに好ましくは240~305℃、最も好ましくは250℃~300℃の範囲である。Tgが上記範囲内であると、耐熱性、寸法安定性、成形性が良好であり好ましい。ガラス転移温度(Tg)はティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製2910型DSCを使用し、昇温速度20℃/minにて測定する。
【0074】
(線膨張係数)
本発明におけるポリカーボネート樹脂の線膨張係数は、好ましくは30~60ppm/℃、より好ましくは32~58ppm/℃、さらに好ましくは34~56ppm/℃、最も好ましくは35~55ppm/℃の範囲である。線膨張係数が上記範囲内であると熱による寸法変化が小さく、好ましい。線膨張係数は熱機械分析装置(SIIナノテクノロジー社製SS6100)を使用し、試料長さ4mm幅×20mmのサンプルを昇温速度10℃/min、降温速度50℃/minにて3回測定し、測定温度範囲50~90℃における線膨張係数を算出し、その平均値を求める。
【0075】
(飽和吸水率)
本発明におけるポリカーボネート樹脂の飽和吸水率は、JIS K7209:2000に準拠して測定され、0.50%以下であることが好ましく、0.49%以下であることがより好ましく、0.48%以下であることがさらに好ましい。飽和吸水率が上記範囲内であると吸水による寸法変化が小さく、好ましい。飽和吸水率の下限は特に限定されないが、0.1%以上であれば十分である。
【0076】
(分光光線透過率)
本発明におけるポリカーボネート樹脂を用いた光学成形品の厚み1mm部における分光光線透過率は、測定波長850nm、測定波長1310nm、測定波長1550nmにおいて85%以上、測定波長1610nmにおいて82%以上、測定波長1625nmにおいて78%以上であることが好ましい。分光光線透過率が上記範囲内であると、光通信における信号の減衰が小さく好ましい。
【0077】
(耐はんだリフロー性)
IPC/JEDEC J-STD-020Cの「非密封固体状態表面実装デバイスの湿気/リフロー感度分類」にしたがって、光学成形品にはんだリフロー試験の温度プロファイルを実行した。成形品を60℃/60%RH(相対湿度)の湿度チャンバに入れて120時間さらして調湿し、続いてオーブンに入れてIPC/JEDEC J-STD-020Cの温度プロファイル(ピーク温度240℃あるいは260℃)にしたがって加温した。ピーク温度240℃で成形品の透明性および形状に変化が見られないことが好ましく、ピーク温度260℃で成形品の透明性および形状に変化が見られないことがより好ましい。
【0078】
(成形方法および光学成形品)
本発明におけるポリカーボネート樹脂の成形方法としては、射出成形、押出成形、圧縮成形、溶液キャスト法等、一般のポリカーボネート樹脂の成形法を採用することができる。特に射出成形により成形品を成形する方法や押出成形によりシートまたはフィルムを成形する方法が好ましく採用される。
【0079】
本発明のポリカーボネート樹脂は、耐熱性、光透過性、寸法安定性、低吸水性に優れているので種々の光学成形品として利用することができる。殊に耐熱性に優れるため、光コネクタあるいはトランシーバ等の耐はんだリフロー性が求められる光学部品用の光学成形品として好適に利用できる。
【0080】
光学成形品としては例えばセンサーレンズ、集光レンズ、コリメータレンズ、レンズアレイ等の各種レンズ、ミラー、光導波路、広角拡散素子が挙げられる。
【実施例0081】
以下に本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、これらは本発明を限定するものではない。なお、評価は下記の方法に従った。
【0082】
(1)組成比
日本電子社製 JNM-AL400のプロトンNMRにて各繰り返し単位を測定し、ポリカーボネート樹脂の組成比(モル%)を算出した。
【0083】
(2)粘度平均分子量
次式にて算出される比粘度(ηSP)を20℃で塩化メチレン100mlに試料0.7gを溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求め、
比粘度(ηSP)=(t-t0)/t0
[t0は塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
求められた比粘度(ηSP)から次の数式により粘度平均分子量Mvを算出した。
ηSP/c=[η]+0.45×[η]2c (但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10-4Mv0.83
c=0.7
【0084】
(3)ガラス転移温度(Tg)
ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製2910型DSCを使用し、試料約10mgを20℃/minの昇温速度で加熱して測定した。
【0085】
(4)飽和吸水率
JIS K7209:2000に準拠して、試料3gを塩化メチレンに溶解後、塩化メチレンを蒸発させて得られたキャストフィルムを用いて、50℃で24時間乾燥後、25℃で水中に浸漬した後の重量を測定し、次式によって吸水率を求めた。
吸水率(%)={(吸水後の樹脂重量-吸水前の樹脂重量)/吸水前の樹脂重量}×100
吸水率は経時で測定を行い、平衡値に達したときの吸水率を飽和吸水率として求めた。
【0086】
(5)線膨張係数
試料3gを塩化メチレンに溶解後、塩化メチレンを蒸発させて得られたキャストフィルムを用いて、熱機械分析装置(SIIナノテクノロジー社製SS6100)を使用し、試料長さ4mm幅×20mmのサンプルを昇温速度10℃/min、降温速度50℃/minにて3回測定し、測定温度範囲50~90℃における線膨張係数を算出し、その平均値を求めた。
【0087】
(6)分光光線透過率
ポリカーボネート樹脂のパウダーを、二軸押出機(STEER社製OMEGA30H)を用いて350~450℃の温度で溶融混錬しペレット得た。このペレットを140℃で5~10時間乾燥した後、射出成形機(日精樹脂工業社製FNX140)を用いて350~450℃で成形し、成形品(厚み1mm)を得た。紫外可視赤外分光光度計(日本分光社製V-770DS)を用いて、成形品の厚み1mm部において、測定波長250~2500nm範囲の分光光線透過率を測定した。
【0088】
(7)耐はんだリフロー性
上記で得た成形品(厚み1mm)を60℃/60%RH(相対湿度)の湿度チャンバに入れて120時間さらして調湿し、続いてオーブンに入れてIPC/JEDEC J-STD-020Cの温度プロファイル(ピーク温度240℃あるいは260℃)にしたがって加温した後、外観を観察して以下の基準で耐はんだリフロー性を判定した。
成形品の透明性および形状に変化が見られない:「〇」
成形品の透明性または形状に変化が見られる:「×」
【0089】
[実施例1]
温度計、撹拌機、還流冷却器付き反応器にイオン交換水19176重量部、25%水酸化ナトリウム水溶液7575重量部を入れ、ジオール化合物として9,9-ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)フルオレン(BNF;大阪ガスケミカル(株)製)4533重量部、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(BisP-HTG;本州化学(株)製)2017重量部およびハイドロサルファイト10.16重量部を溶解した後、塩化メチレン30184重量部を加え、撹拌下16~24℃でホスゲン1500重量部を80分かけて吹き込んだ。その後、25%水酸化ナトリウム水溶液947重量部、p-tert-ブチルフェノール53.27重量部を塩化メチレン530重量部に溶解した溶液を加え攪拌して乳化状態とした。かかる攪拌下、反応液が28℃の状態2.99重量部のトリエチルアミンを加えて温度26~31℃において1時間撹拌を続けて反応を終了した。反応終了後有機相を分離し、塩化メチレンで希釈し、イオン交換水で水洗を繰り返し、洗浄液が中性になったところで塩酸を加えた。その後、イオン交換水で繰り返し洗浄し水相の導電率がイオン交換水とほぼ同じになるまで水洗を繰り返し、ポリカーボネートの塩化メチレン溶液を得た。次いで、得られた塩化メチレン溶液を80℃に保った温水中に滴下し、溶媒を蒸発除去し、パウダー状の固形物を得た。得られた固形物を、120℃で24時間乾燥し、白色パウダー状のポリカーボネート樹脂を得た。得られたパウダーを用いて、組成比、粘度平均分子量、ガラス転移温度、飽和吸水率、線膨張係数を評価した。評価結果を表1に示した。
【0090】
ポリカーボネート樹脂のパウダーを、二軸押出機(STEER社製OMEGA30H)を用いてシリンダおよびダイス共に350~420℃の温度で溶融混錬しペレット得た。このペレットを140℃で10時間乾燥した後、射出成形機(日精樹脂工業社製FNX140)を用いてシリンダ温度350~450℃で成形し、成形品(厚み1mm)を得た。この成形品を用いて、分光光線透過率、耐はんだリフロー性を評価した。評価結果を表1に示した。
【0091】
[実施例2]
ジオール化合物としてBNF3466重量部、BisP-HTG1286重量部とした以外は、実施例1と全く同様の操作を行った。評価結果を表1に示した。
【0092】
[実施例3]
ジオール化合物としてBNF2666重量部、BisP-HTG1837重量部、p-tert-ブチルフェノール79.90重量部とした以外は、実施例1と全く同様の操作を行った。評価結果を表1に示した。
【0093】
[実施例4]
ジオール化合物としてBNF4533重量部、2-フェニル-3,3-ビス(p-ヒドロキシフェニル)フタルイミジン(PPPBP;酒井興業(株)社製)697重量部とした以外は、実施例1と全く同様の操作を行った。評価結果を表1に示した。
【0094】
[実施例5]
ジオール化合物としてBNF2666重量部、PPPBP697重量部、BisP-HTG1284重量部とした以外は、実施例1と全く同様の操作を行った。評価結果を表1に示した。
【0095】
[実施例6]
ジオール化合物としてBNF4266重量部、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(BPA;日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)535重量部とした以外は、実施例1と全く同様の操作を行った。評価結果を表1に示した。
【0096】
[実施例7]
ジオール化合物としてBNF3733重量部、BPA802重量部とした以外は、実施例1と全く同様の操作を行った。評価結果を表1に示した。
【0097】
[実施例8]
ジオール化合物としてBNF266重量部、BisP-HTG3490重量部とした以外は、実施例1と全く同様の操作を行った。評価結果を表1に示した。
【0098】
[比較例1]
ジオール化合物としてBisP-HTG3674重量部とした以外は、実施例1と全く同様の操作を行った。評価結果を表1に示した。
【0099】
[比較例2]
温度計、撹拌機、還流冷却器付き反応器にイオン交換水12784重量部、25%水酸化ナトリウム水溶液6628重量部を入れ、ジオール化合物としてBPA1738重量部、BisP-HTG1286重量部およびハイドロサルファイト6.05重量部を溶解した後、塩化メチレン15092重量部を加え、撹拌下16~24℃でホスゲン1500重量部を80分かけて吹き込んだ。その後、25%水酸化ナトリウム水溶液947重量部、p-tert-ブチルフェノール53.27重量部を塩化メチレン530重量部に溶解した溶液を加え攪拌して乳化状態とした。かかる攪拌下、反応液が28℃の状態2.99重量部のトリエチルアミンを加えて温度26~31℃において1時間撹拌を続けて反応を終了した。反応終了後有機相を分離し、塩化メチレンで希釈し、イオン交換水で水洗を繰り返し、洗浄液が中性になったところで塩酸を加えた。その後、イオン交換水で繰り返し洗浄し水相の導電率がイオン交換水とほぼ同じになるまで水洗を繰り返し、ポリカーボネートの塩化メチレン溶液を得た。次いで、得られた塩化メチレン溶液を80℃に保った温水中に滴下し、溶媒を蒸発除去し、パウダー状の固形物を得た。得られた固形物を、120℃で24時間乾燥し、白色パウダー状のポリカーボネート樹脂を得た。得られたパウダーを用いて、組成比、粘度平均分子量、ガラス転移温度、飽和吸水率、線膨張係数を評価した。評価結果を表1に示した。
【0100】
ポリカーボネート樹脂のパウダーを、ベント式二軸押出機[(株)テクノベル製KZW15-25MG]により、シリンダおよびダイス共に320℃にて溶融混練しペレットを得た。得られたペレットの一部を、120℃で12時間以上乾燥した後、射出成形機(日本製鋼所製J-75E3)により、シリンダ温度320℃、金型温度100℃の条件で成形品(厚み1mm)を得た。この成形品を用いて、分光光線透過率、耐はんだリフロー性を評価した。評価結果を表1に示した。
【0101】
[比較例3]
ジオール化合物としてBPA2140重量部、PPPBP939重量部とした以外は、比較例2と全く同様の操作を行いポリカーボネート樹脂のパウダーを得た。得られたパウダーを用いて、組成比、粘度平均分子量、ガラス転移温度、飽和吸水率、線膨張係数を評価した。評価結果を表1に示した。
【0102】
ポリカーボネート樹脂のパウダーを、ベント式二軸押出機[(株)テクノベル製KZW15-25MG]により、シリンダおよびダイス共に320℃にて溶融混練しペレットを得た。得られたペレットの一部を、120℃で12時間以上乾燥した後、射出成形機(日本製鋼所製J-75E3)により、シリンダ温度320℃、金型温度100℃の条件で成形品(厚み1mm)を得た。この成形品を用いて、分光光線透過率、耐はんだリフロー性を評価した。評価結果を表1に示した。
【0103】
[比較例4]
ジオール化合物としてBPA2675重量部、p-tert-ブチルフェノール23.08重量部とした以外は、比較例2と全く同様の操作を行いポリカーボネート樹脂のパウダーを得た。得られたパウダーを用いて、組成比、粘度平均分子量、ガラス転移温度、飽和吸水率、線膨張係数を評価した。評価結果を表1に示した。
【0104】
ポリカーボネート樹脂のパウダーを、ベント式二軸押出機[(株)テクノベル製KZW15-25MG]により、シリンダおよびダイス共に330℃にて溶融混練しペレットを得た。得られたペレットの一部を、120℃で12時間以上乾燥した後、射出成形機(日本製鋼所製J-75E3)により、シリンダ温度340℃、金型温度120℃の条件で成形品(厚み1mm)を得た。この成形品を用いて、分光光線透過率、耐はんだリフロー性を評価した。評価結果を表1に示した。
【0105】
本発明のポリカーボネート樹脂からなる光学成形品は、熱や吸水による寸法変化が小さく、光透過性、耐熱性に優れるため、高温環境下で使用されるコネクター、レンズ等の光学部品、スイッチ、ソケット、センサーケース、フレキシブルフィルム等の電気・電子部品に利用できる。