(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025040489
(43)【公開日】2025-03-25
(54)【発明の名称】焼却残渣処分方法
(51)【国際特許分類】
B09B 1/00 20060101AFI20250317BHJP
B09B 3/25 20220101ALI20250317BHJP
B09B 3/38 20220101ALI20250317BHJP
B09B 101/30 20220101ALN20250317BHJP
【FI】
B09B1/00 F
B09B3/25 ZAB
B09B3/38
B09B101:30
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023147326
(22)【出願日】2023-09-12
(71)【出願人】
【識別番号】303057365
【氏名又は名称】株式会社安藤・間
(71)【出願人】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001335
【氏名又は名称】弁理士法人 武政国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】青木 貴均
(72)【発明者】
【氏名】秋田 宏行
(72)【発明者】
【氏名】島岡 隆行
【テーマコード(参考)】
4D004
【Fターム(参考)】
4D004AA36
4D004AC07
4D004BB02
4D004CA15
4D004CA45
4D004CC03
4D004CC13
(57)【要約】
【課題】本願発明の課題は、従来技術が抱える問題を解決することであり、すなわち、固化体による処分方式を利用したうえで、調整池の規模を低減することができる焼却残渣処分方法を提供することである。
【解決手段】本願発明の焼却残渣処分方法は、処分場で焼却残渣を処分する方法であって、固化体製造工程と調整池設定工程、固化体設置工程、排水工程を備えた方法である。全てブロックに単位固化体層が形成されると面状の全体固化体層が形成され、全体固化体層が上方に積層されるように全体固化体層を形成していく。第N+1層に係る調整池設定工程では第N層に係る調整池ブロックとは異なる施工ブロックを調整池ブロックとして設定し、第N層に係る排水工程では第N+1層に係る移動調整池が形成された後に排水を行う。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処分場で焼却残渣を処分する方法であって、
前記焼却残渣、セメント、及び水を混錬した材料に振動を与えた後に硬化させることによって「焼却残渣固化体」を製造する固化体製造工程と、
前記処分場の処分スペースを複数に区分した「施工ブロック」のうち、「移動調整池」が形成される「調整池ブロック」を設定する調整池設定工程と、
前記施工ブロックのうち前記調整池ブロックを除く「処分ブロック」ごとに、前記焼却残渣固化体を設置することによって「単位固化体層」を形成する固化体設置工程と、
前記移動調整池に溜められた水を、前記処分スペースの外側に設けられた「固定調整池」に排水する排水工程と、を備え、
前記固化体設置工程では、前記調整池ブロックの周囲にある前記処分ブロックで前記単位固化体層を形成することによって前記移動調整池を形成し、
また前記固化体設置工程では、前記単位固化体層を複数層に積み上げるように形成し、
第N+1層(Nは自然数)に係る前記調整池設定工程では、第N層に係る前記調整池ブロックとは異なる前記施工ブロックを前記調整池ブロックとして設定し、
第N層に係る前記排水工程では、第N+1層に係る前記移動調整池が形成された後に排水を行い、
第N層に係る前記固化体設置工程では、第N層に係る前記移動調整池の水が排水された後に、該移動調整池に係る前記調整池ブロックに前記焼却残渣固化体を設置する、
ことを特徴とする焼却残渣処分方法。
【請求項2】
前記排水工程では、圧送手段と排水管を用いて、前記移動調整池の水を前記固定調整池に圧送する、
ことを特徴とする請求項1記載の焼却残渣処分方法。
【請求項3】
前記処分場の底面に集排水管を敷設する集排水管敷設工程と、
それぞれの前記施工ブロックに、開閉弁を有する縦排水管を設置する縦排水管設置工程と、をさらに備え、
前記集排水管は、前記固定調整池に排水することができる主排水管と、該主排水管に接続される枝排水管と、を含み、
前記縦排水管は、下端側で前記枝排水管又は前記集排水管に接続され、
前記移動調整池とされた前記調整池ブロックに係る前記縦排水管は、取水口が該移動調整池の底面付近となるように設置され、
前記縦排水管設置工程では、前記単位固化体層の積み上がりに応じて、上方に延伸するように前記縦排水管を継ぎ足し、
前記排水工程では、前記調整池ブロックの前記開閉弁を開くことによって、前記移動調整池の水を前記固定調整池に送水する、
ことを特徴とする請求項1記載の焼却残渣処分方法。
【請求項4】
前記単位固化体層の上面に、防水壁を設置する防水壁設置工程を、さらに備え、
前記防水壁設置工程では、第N層に係る前記移動調整池を取り囲むように、第N+1層に係る前記単位固化体層に前記防水壁を設置する、
ことを特徴とする請求項1記載の焼却残渣処分方法。
【請求項5】
前記固定調整池に溜められた水の水質を測定する水質監視工程を、さらに備え、
前記水質監視工程で得られた測定値が、あらかじめ定めた水質基準を下回るとき、前記固定調整池に溜められた水を場外に排出する、
ことを特徴とする請求項1記載の焼却残渣処分方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、廃棄物焼却残渣の処分に関するものであり、より具体的には、場内に設置される調整池の位置を変更しながら雨水を処理し、廃棄物焼却残渣を含む固化体を積み上げていくことで廃棄物焼却残渣を処分する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、国や自治体を中心とする様々な取り組みによって、我が国の廃棄物の排出量は減少傾向にある。それでも年間4億トンを超える大量の廃棄物が排出されており、処分場の確保はやはり大きな問題である。廃棄物の内訳をみると、約4,095万トンの一般廃棄物、約37,056万トンの産業廃棄物が排出されており、産業廃棄物が全体の9割近くを占めている。
【0003】
産業廃棄物や一般廃棄物は、資源化されるものと処分されるものに大別され、処分されるものはさらに焼却されるものとそうでないものに分けられる。例えば一般廃棄物の場合、処分される廃棄物は焼却施設に直接送られるものと、中間処理施設に送られるものに分かれ、中間処理施設で生じた処理残渣のうち焼却されるものは改めて焼却施設に送られる。そして、中間処理施設で生じた処理残渣のうち焼却されないものと、焼却施設で生じた焼却残渣は、最終処分場に送られる。
【0004】
最終処分場に送られる一般廃棄物、産業廃棄物ともにその大部分を焼却残渣が占めており、現状の最終処分場はいわば「灰捨て場」の様相を呈している。他方、令和3年に環境省は我が国における最終処分場の残余年数を21.4年と報告している。したがって、廃棄物のうち特に焼却残渣を、如何に効率的に埋立て処分するかが喫緊の課題といえる。
【0005】
焼却残渣は、焼却灰と飛灰に区別される。焼却施設の炉の底などで集めたものが焼却灰(ボトムアッシュ)であり、集塵装置で集めたものやボイラーなどに付着したものが飛灰(フライアッシュ)である。飛灰は、焼却灰に対して約1/3程度しか排出されないが、焼却灰に比べてダイオキシン類や、鉛、亜鉛、カドミウムといった重金属などを多く含む。そのため、焼却残渣を最終処分場で埋立て処分する前に、飛灰に液体キレート剤を添加する処理を行っている。液体キレート剤との化学結合によって、飛灰中の重金属イオンが環境中に溶出しにくくなるわけである。
【0006】
一般廃棄物の焼却残渣は一般廃棄物最終処分場で埋立て処分され、産業廃棄物の焼却残渣は管理型の最終処分場で埋立て処分されることが多い。一般廃棄物最終処分場も「管理型」の最終処分場に分類されるもので、この管理型最終処分場は、処分場からの浸出水や周辺地下水などが省令で定める基準を満たすように維持管理しなければならない。さらに、管理型最終処分場を廃止するためには、場内で集められた保有水の水質が、2年以上にわたって所定の排水基準等に適合していると認められることが必要とされている。そのため、管理型最終処分場では、直接地山の上に焼却残渣等を埋め立てることはなく、地山の上に遮水シートを敷設し、さらに保護層(砂や土砂)を設置したうえで、焼却残渣等を埋め立てている。また準好気性と呼ばれる埋立て方式を採用することによって、埋立地内の水分を排水管で除去し、埋立地内で発生したガスをガス抜き管で排除する。
【0007】
ところが、上記のような対策を施したとしても必ずしも省令基準を満たすとはいえず、処分場からの浸出水を貯留し、これを処理したうえで排出しているのが現状である。つまり、多くの管理型最終処分場は維持管理さえ難しい状況にあり、廃止に至るまでには20~30年かかるといわれ、極めて長い期間最終処分場として運営しなければならない。したがって、浸出水の排出処理など維持管理にかかる費用がかさむうえ、跡地として上空利用するまでに相当な期間を要することとなる。
【0008】
そこで特許文献1では、「超流体工法」を応用して焼却残渣を処分する発明を開示している。超流体工法とは、本願の出願人が開発した技術であり、特許文献2に開示されるように石炭灰とセメント、水を練り混ぜた混練物に振動を加えて流動状態とし、その状態で硬化すると密実な固化体が形成されるというものである。そして、石炭灰に代えて焼却残渣を利用することによって固化体を形成し、その固化体を処分場に積み上げながら焼却残渣を処分していくわけである。焼却残渣を含む固化体は、その透水係数が10-7~10-9(cm/s)オーダーであって、雨水など外部からの浸透水を排除できるうえに、焼却残渣中にある重金属等に由来する有害物質の溶出を抑えることができる。その結果、従来の処分方式に比べ有害物質の含有量が極めて少ない状態で埋め立て地内の水分を場外に排出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2015-73981号公報
【特許文献2】特開平10-311142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に開示される発明は、密実な固化体を形成しながら焼却残渣を埋立て処分していくため、雨水などが固化体内に浸透することがなく、すなわち雨水等による焼却残渣への接触が大幅に抑えられる。その結果、塩類や重金属といった汚染物質の濃度が極めて低い浸出水として場外に排出することができ、また中間覆土や即日覆土を必要としないといった効果もある。しかしながら、固化体には焼却残渣が含まれているため、この固化体に接触した雨水等に微量の有害物質が含まれる可能性もあり、浸出水が全く無害の状態とまでは言えない。また現行の法体系では、たとえ汚染物質の濃度が低くても、処分場を通過する雨水等は調整池に貯留したうえで適切な処理を行った後に排出しなければならない。
【0011】
ところで、従来の廃棄物処分の場合、一定程度の雨水等は場内の廃棄物層や覆土層に浸透するため、全ての雨水等が直ちに調整池に貯留されることはない。一方、焼却残渣を含む固化体を埋立て処分する場合、雨水等が固化体に浸透することはなく、例えば固化体の表面を通じて排出されるため、概ね全ての雨水等が直ちに調整池に貯留されることになる。すなわち固化体による処分方式は、従来技術に比べて浸出水の有害性が低いものの「無害とまでは言えない」ことから調整池に貯留する必要があり、しかも概ね全ての雨水等を貯留する必要があることから従来技術に比べて大容量の調整池を用意しなければならない。
【0012】
本願発明の課題は、従来技術が抱える問題を解決することであり、すなわち、固化体による処分方式を利用したうえで、調整池の規模を低減することができる焼却残渣処分方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願発明は、場内に調整池を設置するとともに、廃棄物(焼却残渣を含む固化体)層ごとに調整池の位置を変更しながら、この廃棄物層を積み重ねていく、というこれまでにない発想に基づいて行われたものである。
【0014】
本願発明の焼却残渣処分方法は、処分場で焼却残渣を処分する方法であって、固化体製造工程と調整池設定工程、固化体設置工程、排水工程を備えた方法である。このうち固化体製造工程では、焼却残渣とセメント、水を混錬した材料に振動を与えて硬化させることによって「焼却残渣固化体」を製造し、調整池設定工程では、処分場の処分スペースを複数に区分した「施工ブロック」のうち「移動調整池」が形成される「調整池ブロック」を設定する。固化体設置工程では、「処分ブロック(調整池ブロックを除いた施工ブロック)」ごとに焼却残渣固化体を設置することによって「単位固化体層」を形成し、排水工程では、移動調整池に溜められた水を処分スペースの外側に設けられた「固定調整池」に排水する。また固化体設置工程では、調整池ブロックの周囲にある処分ブロックで単位固化体層を形成することによって移動調整池を形成するとともに、単位固化体層を複数層に積み上げるように形成していく。なお、第N+1層(Nは自然数)に係る調整池設定工程では、第N層に係る調整池ブロックとは異なる施工ブロックを調整池ブロックとして設定し、第N層に係る排水工程では、第N+1層に係る移動調整池が形成された後に排水を行う。また第N層に係る固化体設置工程では、第N層に係る移動調整池の水が排水された後に、移動調整池に係る調整池ブロックに焼却残渣固化体を設置する。
【0015】
本願発明の焼却残渣処分方法は、圧送手段と排水管を用いて移動調整池の水を固定調整池に圧送する方法とすることもできる。
【0016】
本願発明の焼却残渣処分方法は、集排水管敷設工程と縦排水管設置工程をさらに備えた方法とすることもできる。この集排水管敷設工程では、処分場の底面に集排水管を敷設し、縦排水管設置工程では、それぞれの施工ブロックに開閉弁を有する縦排水管を設置する。集排水管は、固定調整池に排水することができる主排水管と、主排水管に接続される枝排水管を含んで構成され、縦排水管は、下端側で枝排水管(あるいは、集排水管)に接続される。なお、移動調整池とされた調整池ブロックに係る縦排水管は、取水口が移動調整池の底面付近となるように設置される。また縦排水管設置工程では、単位固化体層の積み上がりに応じて、上方に延伸するように縦排水管を継ぎ足していく。この場合、排水工程では、調整池ブロックの開閉弁を開くことによって、移動調整池の水を固定調整池に送水する。
【0017】
本願発明の焼却残渣処分方法は、防水壁設置工程をさらに備えた方法とすることもできる。この防水壁設置工程では、単位固化体層の上面に防水壁を設置する。なお、防水壁設置工程では、第N層に係る移動調整池を取り囲むように、第N+1層に係る単位固化体層に防水壁を設置する。
【0018】
本願発明の焼却残渣処分方法は、水質監視工程をさらに備えた方法とすることもできる。この水質監視工程では、固定調整池に溜められた水の水質を測定する。そして水質監視工程で得られた測定値があらかじめ定めた水質基準を下回るとき、固定調整池に溜められた水を場外に排出する。
【発明の効果】
【0019】
本願発明の焼却残渣処分方法には、次のような効果がある。
(1)処分スペース内の「移動調整池」と処分スペース外の「固定調整池」を設置することから、それぞれ調整池の規模を低減することができる。その結果、調整池の材料や施工に掛かるコストを低減することができる。
(2)処分スペース内に「移動調整池」を設置するため、別途の用地を確保する必要がない。その結果、用地交渉に掛かる手間や時間、あるいは用地に掛かる費用を削減することができるうえ、調整池の設置に伴う生態系への影響を回避することができる。
(3)従来技術に比べて浸出水の有害性が低いことから、固定調整池での処理に掛かるコストを低減することができる。
(4)「移動調整池」または「固定調整池」の水分を固化体製造工程で使用することでコストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本願発明を実施する際に利用する処分場を模式的に示す平面図。
【
図2】(a)は単位固化体層や調整池ブロック、施工ブロックを模式的に示す平面図、(b)は全体固化体層を模式的に示す平面図。
【
図3】層ごとに繰り返し焼却残渣を処分するフロー図。
【
図4】本願発明の焼却残渣処分方法の主な工程の流れを示すフロー図。
【
図5】9箇所の施工ブロックに区分された処分スペースを示す平面図と、この平面図に示された各矢視の断面図。
【
図6】第1層目に係る工程のうち、調整池ブロックの設定から移動調整池の形成までの工程を示すステップ図。
【
図7】第1層目に係る工程のうち、一般の施工ブロックに単位固化体層を形成する工程を示すステップ図。
【
図8】第2層目に係る工程のうち、調整池ブロックの設定から移動調整池の形成までの工程を示すステップ図。
【
図9】第2層目に係る工程のうち、防水壁の設置から第1層の調整池ブロックに単位固化体層を形成するまでの工程を示すステップ図。
【
図10】第3層目に係る工程のうち、調整池ブロックの設定から移動調整池の形成までの工程を示すステップ図。
【
図11】第3層目に係る工程のうち、防水壁の設置から第2層の調整池ブロックに単位固化体層を形成するまでの工程を示すステップ図。
【
図12】第4層目に係る工程のうち、調整池ブロックの設定から移動調整池の形成までの工程を示すステップ図。
【
図13】第4層目に係る工程のうち、防水壁の設置から第3層の調整池ブロックに単位固化体層を形成するまでの工程を示すステップ図。
【
図14】第4層目に係る工程のうち、移動調整池の排水から最終覆土としてのアスファルトを敷設するまでの工程を示すステップ図。
【
図15】主排水管と枝排水管からなる集排水管が処分スペースに敷設された状態を模式的に示す平面図。
【
図16】固定調整池に溜められた水を測定する状況を模式的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本願発明の焼却残渣処分方法は、一般廃棄物や産業廃棄物の焼却残渣を処分する方法である。以下、本願発明の焼却残渣処分方法の実施形態の一例を、図に基づいて説明する。
【0022】
1.全体概要
図1は、本願発明を実施する際に利用する処分場を模式的に示す平面図である。なお本願発明を実施するにあたっては、一般廃棄物最終処分場や管理型最終処分場をはじめ、種々の処分場を利用することができる。
図1に示す処分場は、実際に焼却残渣を埋め立てるスペース(以下、「処分スペースDS」という。)と、この処分スペースDSの外側に設置される調整池(以下、特に「固定調整池120」という。)などを備えている。この処分スペースDSは、あらかじめ複数のブロック(以下、「施工ブロック110」という。)に区切られており、例えば
図1では9箇所の施工ブロック110(No.1ブロック~No.9ブロック)が設定されている。
【0023】
処分場は、傾斜地形を選定して構築されることが多く、この場合は処分スペースDSの下流側に固定調整池120を配置するとよい。また処分場の下流側には土堰堤などの構造物を構築し、また処分スペースDSの周囲にも土堰堤あるいは切土斜面などを構築するとよい。
【0024】
後述するように本願発明は、焼却残渣を利用した「焼却残渣固化体」を処分スペースDSに設置していくことによって焼却残渣を処分する方法である。また本願発明は、
図2(a)に示すように、施工ブロック110ごとに焼却残渣固化体からなる層状体(以下、「単位固化体層111」という。)を形成していく。例えば
図2(a)では、No.5ブロックとNo.6ブロック、No.8ブロックで単位固化体層111が形成されている。全ての施工ブロック110で単位固化体層111が形成されると、
図2(b)に示すように処分スペースDSを覆うような面状の層状体(以下、「全体固化体層112」という。)が形成される。そして
図3に示すように、複数段の全体固化体層112が形成されるように、繰り返し焼却残渣を処分していく。
【0025】
本願発明では、全体固化体層112ごとに、一時的に焼却残渣固化体を設置しない施工ブロック110を設定し、その周囲に設置された単位固化体層111を壁体とすることによって調整池(以下、特に「移動調整池113」という。)を形成することとしている。便宜上ここでは、一時的に焼却残渣固化体を設置しない施工ブロック110のことを「調整池ブロック110P」と、この調整池ブロック110Pを除いた施工ブロック110のことを「処分ブロック110L」ということとする。また、調整池ブロック110Pを取り囲む処分ブロック110Lのことを特に「周辺の処分ブロック110L」と、他の処分ブロック110Lのことを「一般の処分ブロック110L」ということとする。例えば
図2(a)の場合、No.9ブロックが「調整池ブロック110P」であり、No.1ブロック~No.8ブロックが「処分ブロック110L」、No.5ブロックとNo.6ブロック、No.8ブロックが「周辺の処分ブロック110L」、No.1ブロック~No.4ブロックとNo.7ブロックが「一般の処分ブロック110L」である。そして
図2(a)に示すように、周辺の処分ブロック110Lに単位固化体層111が形成されると、調整池ブロック110Pには移動調整池113が形成される。
【0026】
3.焼却残渣処分方法
続いて、本願発明の焼却残渣処分方法ついて説明する。
図4は、本願発明の焼却残渣処分方法の主な工程を示すフロー図であり、
図6~14は本願発明の焼却残渣処分方法の主な工程を示すステップ図である。便宜上このステップ図では、4層の全体固化体層112を形成して焼却残渣を処分する例を示しており、また
図5に示すように最上部には処分スペースDSの平面図を示し、その下方にはそれぞれの矢視の断面図(鉛直断面図)をそれぞれ示している。なおステップ図のうち、
図6~7は第1層に係る工程を示しており、同様に
図8~9は第2層に係る工程を、
図10~11は第3層に係る工程を、
図12~14は第4層に係る工程をそれぞれ示している。
【0027】
図4に示すように、まずは処分場に遮水シートを敷設するとともに、その上から砂や土砂を使用した保護層を設置する(
図4のStep11)。次いで、保護層の上面に集排水管を敷設する(
図4のStep12)。この集排水管140は、処分スペースDSの浸出水を固定調整池120に排出するものであり、
図15に示すように主排水管141と枝排水管142を含んで構成される。このうち枝排水管142は、それぞれの施工ブロック110からの浸出水を集水することができるように配置され、その下流口は主排水管141に接続されている。また枝排水管142は、枝排水管142が集水した浸出水を固定調整池120に送り出すように配置される。既述したように処分場が傾斜地形に構築されている場合、主排水管141は
図15に示すように上流から下流に向かって配置するとよい。
【0028】
集排水管140を敷設する場合、それぞれの施工ブロック110に「縦排水管」を設置するとよい。略鉛直(鉛直を含む)の姿勢で配置される縦排水管は、後述するように移動調整池113に溜められた水を排水するもので、その下端口は枝排水管142、あるいは主排水管141に接続されている。そして縦排水管には、バルブなどの開閉弁が設けられており、この開閉弁を閉鎖(閉栓)しているときは移動調整池113の水が排水されず、一方、開閉弁を開放(開栓)されたときは移動調整池113の水が枝排水管142や主排水管141に送り出される。
【0029】
ところで、移動調整池113は全体固化体層112ごとに形成されるため、移動調整池113の配置高さは全体固化体層112によって異なる。そのため縦排水管は、単位固化体層111が積み上がるたびに短尺管を継ぎ足すように上方に延伸するとよい。ただし移動調整池113内にある縦排水管は、移動調整池113の水を排水するため、その取水口(上端口)が移動調整池113の底面付近となるように設置するとよい。なお縦排水管の最終層の全体固化体層112まで延伸すると、例えば最終覆土の浸出水を排水することもできる。
【0030】
遮水シートと保護層が設置され、集排水管140が敷設されると、処分場に搬入された焼却残渣を用い、「超流体工法」によって「焼却残渣固化体」を製造していく(
図4のStep13)。以下、超流体工法によって焼却残渣固化体を製造する手順について、詳しく説明する。なお焼却残渣固化体は、処分場内のプラントによって製造することができる。
【0031】
はじめに、例えば密閉型のダンプトラックなどの輸送車によって、焼却残渣を処分場内のプラントに搬入する。次いで、焼却残渣に水とセメントを添加したうえでプラントのミキシング装置によって混練(撹拌~混ぜ合わせ)し、非流動性の「塑性混練物」を生成する。このとき、移動調整池113や固定調整池120に溜められた水を利用することもできる。この「塑性混練物」は、湿った土のような状態で、いわゆる0スランプの状態であり、後に説明する「塑性流体層(超流体状態)」に比べるとその流動性は極めて低い。焼却残渣には飛灰が含まれ、超流体状態とするためには全体の1/4(つまり、飛灰:焼却灰=25:75)など焼却工場からの排出割合を踏まえて混合することが望ましい。添加するセメント量は焼却残渣に対して少量であり、例えば焼却残渣とセメントの重量比は95:5~80:20とすることができる。また、水セメント比(W/C)はできるだけ小さくなるよう配合され、セメント量に対して適量の水が添加される。なおここで添加するセメントは、ポルトランドセメントをはじめ、高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカセメント、アルミナセメント、他のセメント系固化材など、種々のものを採用することができる。また、水とセメントの他に焼却残渣に含まれる重金属類等の溶出抑制剤等の添加材を加えることもできる。
【0032】
「適量」の水のみを加えて水セメント比を小さくする理由は、固化したときに小さな透水係数を得るためである。ここで「適量の水」について説明する。例えば10-7~10-9(cm/s)オーダーの透水係数を得るためには、焼却残渣の粒子配置を一様かつ密実の状態にする必要があり、そのためには水を加えて塑性混練物を液状化させる必要がある。しかしながら過大の水を添加すると、塑性状態が維持できなくなり塑性混練物の取り扱いが困難になるし、ブリージングの問題もあって適切な強度が発現されず所望の透水係数が得られない。また、少量の水では十分な液状化が期待できないうえ、温度ひび割れが発生するおそれもある。したがって適量の水が必要となるわけであるが、この適量を定める手法としては最適含水比を基準とする手法が例示できる。締固めの程度を表す値として、一般に乾燥単位体積重量(乾燥密度)が用いられており、この値が大きいほど強度が増大し、締固めの程度が向上し、透水係数は小さくなる。同じ締固め条件でも、含有する水量によって得られる乾燥単位体積重量は異なり、最も大きな乾燥単位体積重量を与える含水比が「最適含水比」である。なお、大量の塑性混練物を一度に締固めることもあることから、塑性混練物の最適含水比より若干量だけ増やした水量を「適量の水」として定めることが望ましい。例えば、「最適含水比」を基準としたときの「適量の水」は、「最適含水比+1~5%」とするとよい。
【0033】
非流動性の塑性混練物を生成すると、バックホウといった重機によって塑性混練物を層状に敷き均し、塑性混練物からなる層状体(以下、「塑性層」という。)を形成する。このとき、計画された「焼却残渣固化体」の形状や寸法となるように塑性層を形成するとよい。例えば焼却残渣固化体は、幅1m×奥行1m×高さ1mのサイコロ状として計画することができる。また、1層目のうち傾斜地盤に設置するものは、底面をその傾斜に合わせた形状としてもよい。そして、バックホウなどに装着した振動板などによって、塑性層の表面から面振動を与える。非流動性の塑性層(つまり、塑性混練物)に概ね30~60秒間の振動を与えると、焼却残渣の粒子の周囲(粒子間)にセメントと水が浸透していくことで塑性層は流体化し、その結果、流体状(超流体状態)の「塑性流体層」が形成される。焼却残渣のように球形の粒子を比較的多く含むものは、振動が与えられるとその中に含まれる球形粒子のベアリング効果によって粒子間が分離しやすく、その結果粒子の周囲には水分とセメント分が万遍なく行き渡っていく。そして塑性層は有効応力を失い、間隙水圧のみとなって液状化現象を起こす。つまり塑性層が液状化したものが、いわばプリン状とされた塑性流体層(超流体状態)であり、液状化により粒子配置が一様かつ密実とされ、しかも焼却残渣中には少量の有機物とケイ素やアルミナ分が多量に含まれているため水とセメントの水和反応により安定した結晶体(焼却残渣固化体)が生成される。
【0034】
塑性流体層が形成された後、所定の期間(概ね1日)が経過すると、塑性流体層が硬化した「焼却残渣固化体」が形成される。超流体工法によって製造された焼却残渣固化体は、ひび割れが少なく高強度なものであり、その透水係数は10-7~10-9(cm/s)オーダーである。したがって、飛散防止対策のために焼却残渣固化体の上に中間覆土を設置する必要がなく、すなわち中間覆土の体積分だけ多くの焼却残渣を処分することができる。
【0035】
一定程度の焼却残渣固化体が製造されると、第1層の全体固化体層112を形成していく。具体的には、まず第1層における調整池ブロック110Pを設定する(
図4のStep21)。例えば
図6(a)では、No.9ブロックを調整池ブロック110Pとして設定している。次いで、周辺の処分ブロック110Lに焼却残渣固化体を設置して単位固化体層111を形成し(
図4のStep22)、これにより調整池ブロック110Pは移動調整池113として機能するようになる。
図6(b)では、No.5ブロックとNo.6ブロック、No.8ブロック(ブロック周辺の処分ブロック110L)に単位固化体層111が形成されるとともに、No.9ブロックに移動調整池113が形成されている。
【0036】
第1層に係る移動調整池113が形成されると、一般の処分ブロック110Lに焼却残渣固化体を設置して単位固化体層111を形成していく(
図4のStep23)。
図7(c)では、No.1ブロック~No.4ブロックとNo.7ブロック(一般の処分ブロック110L)に、単位固化体層111が形成されている。なお縦排水管を設置するケースでは、周辺の処分ブロック110Lや一般の処分ブロック110Lに単位固化体層111が形成されると、短尺管を継ぎ足すように縦排水管を上方に延伸する(
図4のStep24)。
【0037】
全ての一般の処分ブロック110Lで単位固化体層111が形成されていないときは(
図4のStep25のNo)、引き続き一般の処分ブロック110Lに単位固化体層111を形成する。一方、全ての一般の処分ブロック110Lで単位固化体層111が形成されると(
図4のStep25のYes)、第2層の全体固化体層112を形成していく。ただしこの時点では、第1層の調整池ブロック110Pが移動調整池113として機能しているため、この調整池ブロック110Pには第1層の全体固化体層112が形成されていない。
【0038】
第2層の全体固化体層112を形成していくには、まず第2層における調整池ブロック110Pを設定する(
図4のStep31)。このとき、下層(この場合、第1層)とはその平面位置が異なる施工ブロック110を、当該層(この場合、第2層)の調整池ブロック110Pとして設定する。例えば
図8(d)では、No.7ブロックを調整池ブロック110Pとして設定している。次いで、第2層における周辺の処分ブロック110Lに焼却残渣固化体を設置して単位固化体層111を形成し(
図4のStep32)、これにより調整池ブロック110Pを移動調整池113として機能させる。
図8(e)では、No.4ブロックとNo.5ブロック、No.8ブロック(周辺の処分ブロック110L)に単位固化体層111が形成されるとともに、No.7ブロックに移動調整池113が形成されている。
【0039】
第2層に係る移動調整池113(この場合、No.7ブロック)が機能するようになると、第1層に係る移動調整池113(この場合、No.9ブロック)は必要なくなる。そこで
図8(e)に示すように、第1層に係る移動調整池113に溜められた水を、固定調整池120に排水する(
図4のStep26)。縦排水管が設置されている場合は、移動調整池113にある縦排水管の開閉弁を開放(開栓)し、移動調整池113の水を枝排水管142や主排水管141に送り出すとよい。他方、縦排水管が設置されていない場合は、ポンプなどの圧送手段を利用し、第2層の単位固化体層111の表面に敷設された排水管を通じて、移動調整池113の水を固定調整池120に送り出すことができる。もちろん縦排水管が設置されている場合であっても、固定調整池120まで自然流下しないときは圧送手段を利用することができる。なお第1層に係る移動調整池113に溜められた水は、受け側である固定調整池120の状況によって適宜排水するとよい。例えば、固定調整池120の貯水容量に余裕があるときは連続して排水し、固定調整池120の貯水容量に余裕がないときは排水することなく待機しておく。
【0040】
第1層に係る移動調整池113の排水と並行して、第2層における一般の処分ブロック110Lに焼却残渣固化体を設置して単位固化体層111を形成していく(
図4のStep33)。
図9(f)では、No.1ブロック~No.3ブロックとNo.6ブロック(一般の処分ブロック110L)に、単位固化体層111が形成されている。なお縦排水管を設置するケースでは、周辺の処分ブロック110Lや一般の処分ブロック110Lに単位固化体層111が形成されると、短尺管を継ぎ足すように縦排水管を上方に延伸する(
図4のStep34)。
【0041】
特に第1層に係る移動調整池113の水を排水した後は、雨水等は第2層に係る移動調整池113に流入し、しかも第1層に係る移動調整池113には雨水等が流入しないことが望ましい。そこで
図9(f)に示すように、第2層の単位固化体層111の上面に防水壁130を設置するとよい(
図4のStep38)。この防水壁130は、第1層に係る移動調整池113(この場合、No.9ブロック)に雨水等が流入することを防ぐものであり、したがって防水壁130は、この図に示すように第1層に係る移動調整池113を取り囲むように設置される。
【0042】
第2層に係る固定調整池120の上面に防水壁130を設置すると、
図9(g)に示すように第1層の調整池ブロック110P(この場合、No.9ブロック)とその上層に単位固化体層111を形成する(
図4のStep27)。そして、全ての一般の処分ブロック110Lで単位固化体層111が形成されると(
図4のStep35のYes)、第3層の全体固化体層112を形成していく。ただしこの時点では、第2層の調整池ブロック110Pが移動調整池113として機能しているため、この調整池ブロック110Pには第2層の全体固化体層112が形成されていない。
【0043】
第3層の全体固化体層112を形成していくには、まず第3層における調整池ブロック110Pを設定する(
図4のStep31)。このとき、下層(この場合、第2層)とはその平面位置が異なる施工ブロック110を、当該層(この場合、第3層)の調整池ブロック110Pとして設定する。例えば
図10(h)では、No.1ブロックを調整池ブロック110Pとして設定している。次いで、第3層における周辺の処分ブロック110Lに焼却残渣固化体を設置して単位固化体層111を形成し(
図4のStep32)、これにより調整池ブロック110Pを移動調整池113として機能させる。
図10(i)では、No.2ブロックとNo.4ブロック、No.5ブロック(周辺の処分ブロック110L)に単位固化体層111が形成されるとともに、No.1ブロックに移動調整池113が形成されている。
【0044】
No.1ブロックに移動調整池113が形成されると、
図10(i)に示すように、第2層に係る移動調整池113に溜められた水を、固定調整池120に排水する(
図4のStep36)。また第2層に係る移動調整池113の排水と並行して、第3層における一般の処分ブロック110Lに焼却残渣固化体を設置して単位固化体層111を形成していく(
図4のStep33)。
図11(j)では、No.3ブロックとNo.6、No.8、No.9ブロック(一般の処分ブロック110L)に、単位固化体層111が形成されている。なお縦排水管を設置するケースでは、周辺の処分ブロック110Lや一般の処分ブロック110Lに単位固化体層111が形成されると、短尺管を継ぎ足すように縦排水管を上方に延伸する(
図4のStep34)。
【0045】
第3層における一般の処分ブロック110Lに単位固化体層111が形成されると、
図11(j)に示すように、第3層の単位固化体層111の上面に防水壁130を設置する(
図4のStep38)。防水壁130は、この図に示すように第2層に係る移動調整池113を取り囲むように設置される。第3層に係る単位固化体層111の上面に防水壁130を設置すると、
図11(k)に示すように第2層の調整池ブロック110P(この場合、No.7ブロック)とその上層に単位固化体層111を形成する(
図4のStep37)。そして、全ての一般の処分ブロック110Lで単位固化体層111が形成されると(
図4のStep35のYes)、第4層の全体固化体層112を形成していく。ただしこの時点では、第3層に係る調整池ブロック110Pには第3層の全体固化体層112が形成されていない。
【0046】
第4層の全体固化体層112を形成していくには、まず第4層における調整池ブロック110Pを設定する(
図4のStep31)。このとき、下層(この場合、第3層)とはその平面位置が異なる施工ブロック110を、当該層(この場合、第4層)の調整池ブロック110Pとして設定する。例えば
図12(l)では、No.3ブロックを調整池ブロック110Pとして設定している。次いで、第4層における周辺の処分ブロック110Lに焼却残渣固化体を設置して単位固化体層111を形成し(
図4のStep32)、これにより調整池ブロック110Pを移動調整池113として機能させる。
図12(l)では、No.2ブロックとNo.5ブロック、No.6ブロック(周辺の処分ブロック110L)に単位固化体層111が形成されるとともに、No.3ブロックに移動調整池113が形成されている。
【0047】
No.3ブロックに移動調整池113が形成されると、
図12(m)に示すように、第3層に係る移動調整池113に溜められた水を、固定調整池120に排水する(
図4のStep36)。また第3層に係る移動調整池113の排水と並行して、第4層における一般の処分ブロック110Lに焼却残渣固化体を設置して単位固化体層111を形成していく(
図4のStep33)。
図13(n)では、No.4ブロックとNo7~No.9ブロック(一般の処分ブロック110L)に、単位固化体層111が形成されている。なお縦排水管を設置するケースでは、周辺の処分ブロック110Lや一般の処分ブロック110Lに単位固化体層111が形成されると、短尺管を継ぎ足すように縦排水管を上方に延伸する(
図4のStep34)。
【0048】
第4層における一般の処分ブロック110Lに単位固化体層111が形成されると、
図13(n)に示すように、第4層の単位固化体層111の上面に防水壁130を設置する(
図4のStep38)。防水壁130は、この図に示すように第3層に係る移動調整池113を取り囲むように設置される。第4層に係る単位固化体層111の上面に防水壁130を設置すると、
図13(o)に示すように第3層の調整池ブロック110P(この場合、No.1ブロック)とその上層に単位固化体層111を形成する(
図4のStep37)。
【0049】
全ての一般の処分ブロック110Lで単位固化体層111が形成されると、
図14(p)に示すように、第4層の防水壁130を撤去したうえで、第4層に係る移動調整池113に溜められた水を固定調整池120に排水する。そして、
図14(q)に示すように第4層の調整池ブロック110P(この場合、No.3ブロック)に単位固化体層111を形成する。
【0050】
本願発明の焼却残渣処分方法では、固定調整池120に溜められた水の水質を測定することもできる。
図16は、固定調整池120に溜められた水を測定する状況を模式的に示す断面図である。固定調整池120の貯留水の水質を測定する場合、この図に示すように水質測定器121や水位計122、プロペラポンプ123などを固定調整池120に設置するとよい。このうち水質測定器121は、汚濁物質濃度など水質を示す値を測定するものであり、水位計122は貯留水の水位を測定するもの、プロペラポンプ123は貯留水の「流れ場」を形成するものである。
【0051】
固定調整池120貯留水は、最終的には場外に排出される。そこで、あらかじめ基準となる値(以下、「水質基準」という。)を設定し、水質測定器121によって得られた値が水質基準を下回るときに貯留水を場外に排出するとよい。もちろん水質測定器121による測定値が水質基準を上回る(以上となる)ときには貯留水の排出を控える。一方、ゲリラ豪雨など著しい降水量があったときは、避難的に貯留水を場外に排出する必要がある。そこで、あらかじめ基準となる水位(以下、「基準水位」という。)を設定し、水位計122による測定値が基準水位を上回るときには貯留水を場外に排出するとよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本願発明の焼却残渣処分方法は、一般廃棄物最終処分場や産業廃棄物の管理型最終処分場で特に有効に実施することができる。本願発明は、いままさに喫緊の課題となっている「最終処分場の残容量の逼迫」に対して好適な解決策を提供することを考えれば、産業上利用できるばかりでなく社会的にも大きな貢献を期待し得る発明である。
【符号の説明】
【0053】
110 施工ブロック
110L 処分ブロック
110P 調整池ブロック
111 単位固化体層
112 全体固化体層
113 移動調整池
120 固定調整池
121 水質測定器
122 水位計
123 プロペラポンプ
130 防水壁
140 集排水管
141 (集排水管の)主排水管
142 (集排水管の)枝排水管
DS 処分スペース