(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025040490
(43)【公開日】2025-03-25
(54)【発明の名称】廃棄物埋立て方法
(51)【国際特許分類】
B09B 1/00 20060101AFI20250317BHJP
B09B 3/25 20220101ALI20250317BHJP
B09B 101/25 20220101ALN20250317BHJP
【FI】
B09B1/00 A ZAB
B09B3/25
B09B101:25
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023147327
(22)【出願日】2023-09-12
(71)【出願人】
【識別番号】303057365
【氏名又は名称】株式会社安藤・間
(71)【出願人】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001335
【氏名又は名称】弁理士法人 武政国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】三反畑 勇
(72)【発明者】
【氏名】島岡 隆行
【テーマコード(参考)】
4D004
【Fターム(参考)】
4D004AA46
4D004BB03
4D004CA45
4D004CC03
4D004CC13
(57)【要約】
【課題】本願発明の課題は、従来技術が抱える問題を解決することであり、すなわち、準好気性処分場で種々の廃棄物を埋め立て処分する際であっても、「超流体工法」を適用することができる廃棄物埋立て方法を提供することである。
【解決手段】本願発明の廃棄物埋立て方法は、準好気性処分場に2以上の層で廃棄物を埋め立てる方法であって、廃棄物層形成工程と固化体層形成工程、固化体層破砕工程を備えた方法である。このうち廃棄物層形成工程では、廃棄物を層状に埋め立てて締固めることによって「廃棄物層」を形成する。固化体層形成工程では、廃棄物層の表面を覆うように「固化体層」を形成し、固化体層破砕工程では、固化体層を分割するように破砕する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
準好気性埋立構造の処分場に、2以上の層で廃棄物を埋め立てる方法であって、
前記廃棄物を層状に埋め立てて締固めることによって、廃棄物層を形成する廃棄物層形成工程と、
前記廃棄物層の表面を覆うように固化体層を形成する固化体層形成工程と、
前記固化体層を分割するように破砕する固化体層破砕工程と、を備え、
前記固化体層形成工程では、焼却残渣にセメントと水を添加して混練した非流動性の塑性混練物を層状に敷き均すとともに、層状の該塑性混練物の表面に対して面振動を与えることによって前記固化体層を形成し、
上層の前記廃棄物層形成工程では、前記固化体層形成工程によって形成された前記固化体層の上面に、前記廃棄物を層状に埋め立て、
前記固化体層破砕工程は、上層の前記廃棄物を締固めながら行う、
ことを特徴とする廃棄物埋立て方法。
【請求項2】
前記固化体層形成工程では、層状の前記塑性混練物に対して分割用の切り欠きを形成し、
前記固化体層破砕工程では、前記切り欠きを境界として前記固化体層を分割する、
ことを特徴とする請求項1記載の廃棄物埋立て方法。
【請求項3】
前記固化体層形成工程によって前記固化体層が形成されると、該前記固化体層があらかじめ設定された目標低強度を発現するまで待機し、
前記固化体層破砕工程では、前記目標低強度を発現した前記固化体層に対して破砕し、
前記目標低強度は、車輌系建設機械又は資機材運搬車両が上面を走行すると前記固化体層が破砕される強度として設定される、
ことを特徴とする請求項1記載の廃棄物埋立て方法。
【請求項4】
前記目標低強度は、締固機械が上面を走行すると前記固化体層が破砕される強度として設定される、
ことを特徴とする請求項3記載の廃棄物埋立て方法。
【請求項5】
前記固化体層破砕工程では、突起付きローラーを有する締固機械を利用し、該締固機械の突起によって前記固化体層を破砕する、
ことを特徴とする請求項1記載の廃棄物埋立て方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、廃棄物の処分に関するものであり、より具体的には、層状とされた廃棄物の覆土として焼却残渣にセメントと水を添加した固化体層を形成する廃棄物埋立て方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、国や自治体を中心とする様々な取り組みによって、我が国の廃棄物の排出量は減少傾向にある。それでも年間4億トンを超える大量の廃棄物が排出されており、処分場の確保はやはり大きな問題である。廃棄物の内訳をみると、約4,200万トンの一般廃棄物、約3.9億トンの産業廃棄物が排出されており、産業廃棄物が全体の9割近くを占めている。
【0003】
産業廃棄物や一般廃棄物は、資源化されるものと処分されるものに大別され、処分されるものはさらに焼却されるものとそうでないものに分けられる。例えば一般廃棄物の場合、処分される廃棄物は焼却施設に直接送られるものと、中間処理施設に送られるものに分かれ、中間処理施設で生じた処理残渣のうち焼却されるものは改めて焼却施設に送られる。そして、中間処理施設で生じた処理残渣のうち焼却されないものと、焼却施設で生じた焼却残渣は、最終処分場に送られる。
【0004】
最終処分場に送られる一般廃棄物、産業廃棄物ともにその大部分を焼却残渣が占めており、現状の最終処分場はいわば「灰捨て場」の様相を呈している。他方、令和3年に環境省は我が国における最終処分場の残余年数を21.4年と報告している。したがって、廃棄物のうち特に焼却残渣を、如何に効率的に埋立て処分するかが喫緊の課題といえる。
【0005】
ごみ焼却残渣や不燃ごみ、汚泥、建設廃棄物、その破砕残渣といった廃棄物は、通常、準好気性埋立構造の処分場(以下、「準好気性処分場」という。)で埋立て処分される。この準好気性埋立構造は、場内に配置された「排水管」によって埋立て地内の水(液体)を排除するとともに、同じく場内に配置された「排気管」によって埋立て地内で発生したガスを大気中に排気するものである。埋立て地内に水が貯留されると環境汚染につながるおそれがあることから、できる限り速やかに排水処理を行うこととし、同様に、埋立て地内で生ずるガスには可燃成分や有害成分、悪臭成分などが含まれることもあり、その濃度によっては火災や健康被害につながることもあることから、できる限り速やかに排気処理を行うこととしているわけである。さらに、埋立て地内の通気性を高めることによって、細菌の分解効果も期待できる。
【0006】
準好気性処分場で廃棄物を埋め立て処分していく段階では、廃棄物が飛散したり、ハエや蚊といった虫が集まったり、悪臭が発生したりすることを防ぐ目的で、日々の埋立て作業後に即日覆土(デイリーカバー)を敷設している。ところが、この即日覆土を敷設するということは、その分だけ廃棄物が埋立てできないことを意味している。特に、従来の覆土材には「土」が利用されており、上記した目的を達成するためには相当な層厚で即日覆土を敷設しなければならない。同時に、覆土材として土を得るためには、適所の地山を掘削するとともに、準好気性処分場までその掘削土を運搬する必要があり、コストがかかるうえに環境負荷も増大することとなる。
【0007】
そこで特許文献1では、「超流体工法」を応用して焼却残渣を処分する発明について開示している。この超流体工法は、本願の出願人が開発した技術であり、本来廃棄物である焼却灰を有効活用して固化体を形成する技術である。そして特許文献1では、焼却残渣を処分する際、その焼却残渣にセメントと水を混錬したうえで埋め立て、すなわち超流体工法によって固化体を形成しながら焼却残渣を処分することとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に開示される発明は、固化体を形成しながら焼却残渣を処分するため、即日覆土や中間覆土を敷設する必要がなく、その分多くの焼却残渣を処分することができる。しかしながら、埋め立て処分する廃棄物はあくまで焼却残渣に限られることから、不燃ごみ、汚泥、建設廃棄物といった廃棄物を埋め立て処分するケースには適用することができない。
【0010】
本願発明の課題は、従来技術が抱える問題を解決することであり、すなわち、準好気性処分場で種々の廃棄物を埋め立て処分する際であっても、「超流体工法」を適用することができる廃棄物埋立て方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明は、出願人が開発した超流体工法を応用して即日覆土や中間覆土を形成する、というこれまでにない発想に基づいて行われたものである。
【0012】
本願発明の廃棄物埋立て方法は、準好気性処分場に2以上の層で廃棄物を埋め立てる方法であって、廃棄物層形成工程と固化体層形成工程、固化体層破砕工程を備えた方法である。このうち廃棄物層形成工程では、廃棄物を層状に埋め立てて締固めることによって「廃棄物層」を形成する。固化体層形成工程では、廃棄物層の表面を覆うように「固化体層」を形成し、固化体層破砕工程では、固化体層を分割するように破砕する。なお、固化体層形成工程では、焼却残渣にセメントと水を添加して混練した非流動性の「塑性混練物」を層状に敷き均すとともに、層状の塑性混練物の表面に対して面振動を与えることによって固化体層を形成する。また、上層の廃棄物層形成工程では、固化体層形成工程によって形成された固化体層の上面に廃棄物を層状に埋め立て、固化体層破砕工程は、上層の廃棄物を締固めながら行う。
【0013】
本願発明の廃棄物埋立て方法は、層状の塑性混練物に対して分割用の切り欠きを形成する方法とすることもできる。この場合、固化体層破砕工程では、切り欠きを境界として固化体層を分割する。
【0014】
本願発明の廃棄物埋立て方法は、固化体層があらかじめ設定された目標低強度を発現するまで待機する方法とすることもできる。この場合、固化体層破砕工程では、目標低強度を発現した固化体層に対して破砕する。なお目標低強度は、「車輌系建設機械」や「資機材運搬車両」が上面を走行すると固化体層が破砕される強度として設定され、例えば「締固機械」が上面を走行すると固化体層が破砕される強度として設定することができる。
【0015】
本願発明の廃棄物埋立て方法は、突起付きローラーを有する締固機械を利用する方法とすることもできる。この場合、固化体層破砕工程では、締固機械の突起によって固化体層を破砕する。
【発明の効果】
【0016】
本願発明の廃棄物埋立て方法には、次のような効果がある。
(1)「超流体工法」によって形成される固化体層を覆土(即日覆土や中間覆土)として使用することから、「土」を使用した従来技術に比して覆土の層厚を小さくすることができる。その結果、従来技術よりも多くの廃棄物を埋立て処分することができる。
(2)また、覆土として「土」を使用しないことから、適所での地山掘削や、準好気性処分場までの土運搬を行う必要がなく、従来技術に比してコストを抑えることができるうえ、環境負荷も軽減することができる。
(3)固化体層を分割するように破砕することから、準好気性処分場内の通気性も向上し、例えば細菌の分解効果も期待できる。
(4)覆土として使用する焼却残渣も併せて処分することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本願発明の廃棄物埋立て方法の主な工程の流れを示すフロー図。
【
図2】本願発明の廃棄物埋立て方法の主な工程の流れを示すステップ図。
【
図3】固化体層を形成するまで主な工程の流れを示すステップ図。
【
図4】(a)は切り欠きが形成された固化体層を模式的に示す断面図、(b)は切り欠きが形成された「板チョコ」状の固化体層を模式的に示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本願発明の廃棄物埋立て方法の実施形態の一例を、図に基づいて説明する。
【0019】
図1は、本願発明の廃棄物埋立て方法の主な工程の流れを示すフロー図であり、
図2は、本願発明の廃棄物埋立て方法の主な工程の流れを示すステップ図である。この図に示すように、まずは準好気性処分場に遮水シートWSを敷設する(
図1のStep101)。そして遮水シートWSの敷設後、その上から砂や土砂を使用した保護層を設置したうえで、不燃ごみ、汚泥、建設廃棄物、その破砕残渣といった「廃棄物」の受け入れを開始する(
図1のStep102)。
【0020】
廃棄物が準好気性処分場に搬入されると、バックホウBhなどを使用して廃棄物を層状に敷き均し(
図1のStep103)、
図2(a)に示すように振動ローラーRVなどを使用して締め固めることによって(
図1のStep104)、計画された層厚の「廃棄物層LW」を形成していく。このとき、あらかじめ廃棄物層LWを上下に分割した複数の層(以下、「分割廃棄物層」という。)を設定し、それぞれ分割廃棄物層ごとに廃棄物を敷き均し、また分割廃棄物層ごとに締め固めるとよい。第1層目の廃棄物層LW1が形成されると、その上層に「固化体層LS」を形成していく。以下、
図3を参照しながら固化体層LSを形成する手順について詳しく説明する。
図3は、固化体層LSを形成するまで主な工程の流れを示すステップ図である。
【0021】
まずは
図3のAに示すように、例えば密閉型のダンプトラックDtなどの輸送車によって、焼却施設等で発生した一般廃棄物や産業廃棄物の「焼却残渣」を準好気性処分場に搬入する。次いで
図3のBに示すように、焼却残渣に水とセメントを添加したうえで、所定の機械(もしくは人力)で混練(撹拌~混ぜ合わせ)し、非流動性の「塑性混練物」を生成する。焼却残渣には飛灰が含まれ、「超流体状態」とするためには全体の1/4(つまり、飛灰:主灰=25:75)以上の飛灰を含むことが望ましい。添加するセメント量は焼却残渣に対して少量であり、例えば焼却残渣とセメントの重量比は95:5~80:20とすることができる。また、水セメント比(W/C)はできるだけ小さくなるよう配合され、セメント量に対して適量の水が添加される。なお、ここで添加するセメントは、ポルトランドセメントをはじめ、高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカセメント、アルミナセメント、他のセメント系固化材など、種々のものを採用することができる。また、水とセメントの他に焼却残渣に含まれる重金属類等の溶出抑制剤等の添加材を加えることもできる。
【0022】
「適量」の水のみを加えて水セメント比を小さくする理由は、後の工程で与える面振動によって混練物を固化させるためである。この「適量」を定める手法としては、最適含水比を基準とする手法が例示できる。締固めの程度を表す値として、一般に乾燥単位体積重量(乾燥密度)が用いられており、この値が大きいほど強度が増大し、締固めの程度が向上し、透水係数は小さくなる。同じ締固め条件でも、含有する水量によって得られる乾燥単位体積重量は異なり、最も大きな乾燥単位体積重量を与える含水比が「最適含水比」である。なお、現場で大量に締固めることもあることから、混練物最適含水比より若干量だけ増やした水量を「適量」として定めることが望ましい。なお、ここで得られる非流動性の「塑性混練物」は湿った土のような状態であって、いわゆる0スランプの状態であり、後に説明する流動性の「塑性流体層」に比べるとその流動性は極めて小さい。
【0023】
塑性混練物が生成されると、
図3のCに示すようにバックホウBhなどの重機を使用して、例えば5cm~30cmの厚さで塑性混練物を層状に敷き均し、「塑性層」を形成する(
図1のStep105)。そして塑性層が形成されると、
図2(b)に示すように振動版Vbによって塑性層の表面に対して面振動を与え、その後養生したうえで「固化体層LS」を形成する(
図1のStep106)。面振動を与る手段としては、例えば
図3のDに示すようにバックホウBhなどに取り付けた振動版Vbなど、従来からある種々の手段を採用することができる。また振動条件としては、振動数3,000~5,000rpm、振幅0.5~2.0mmで加振する例を示すことができる。
【0024】
塑性層(つまり、非流動性の塑性混練物)に振動を与えると、焼却残渣の粒子の周囲(粒子間)にセメントと水が浸透していき、塑性層は約30~60秒間の振動で流体化して既述した「超流体状態」とされ、流動性の「塑性流体層」が形成される。そして、その状態で待機(養生)すると、およそ数日後には塑性流体層が固化した「固化体層LS」が形成される。
【0025】
第1層目の固化体層LSが形成されると、
図2(c)に示すようにその上層に第2層目の「廃棄物層LW2」を形成していく。具体的には、第1層目と同様、例えば密閉型のダンプトラックDtなどによって廃棄物を準好気性処分場に搬入し(
図1のStep107)、バックホウBhなどを使用して搬入され廃棄物を層状に敷き均し(
図1のStep108)、
図2(c)に示すように振動ローラーRVなどの「車輌系建設機械」で締め固めることによって(
図1のStep109)、廃棄物層LW2を形成していく。そして、振動ローラーRVなどによって上層の廃棄物層LW(この場合、第2層目の廃棄物層LW2)を締め固めるとき、下層の固化体層LSが分割されるように(例えば、粉砕されるように)締め固めていく(
図1のStep109)。つまり、振動ローラーRVが上層の廃棄物層LWを締め固める力を利用して、換言すれば廃棄物層LWを介して伝達される締め固め力によって、下層の固化体層LSを分割していくわけである。なお廃棄物層LWを形成するにあたっては、分割廃棄物層ごとに廃棄物を敷き均し、分割廃棄物層ごとに締め固めることから、多数の分割廃棄物層が重なる前に下層の固化体層LSを分割しておくとよい。
【0026】
上記した「超流体工法」によって形成された固化体層LSは、透水係数が10
-7~10
-9(cm/s)オーダーの固化体であり、雨水や外気などの浸入は概ね遮断される。他方、準好気性処分場では、廃棄物層LW内に貯留される水を排水することが求められ、また廃棄物層LW内で生ずるガスも排気することが求められている。そのため、
図2(c)に示すように振動ローラーRVなどを使用して上層の廃棄物層LW締め固めることによって、下層の固化体層LSを分割していくわけである。
【0027】
なお、振動ローラーRVなどによって廃棄物層LWを締め固めるときに固化体層LSを分割すると説明したが、固化体層LSの強度(いわば割れやすさ)によっては、廃棄物層LWを締め固めるときに限らず、ダンプトラックDtや不整地運搬車(図示せず)などの「資機材運搬車両」が固化体層LSの上面を走行しながら廃棄物を搬入するとき(
図1のStep107)、あるいはバックホウBhやブルドーザ(図示せず)などの「車輌系建設機械」によって廃棄物を敷き均すときに(
図1のStep108)、固化体層LSを分割していくこともできる。
【0028】
下層の固化体層LSを分割するにあたっては、特段の工夫を加えることなくそのまま振動ローラーRVなどで締め固めてもよいし、分割しやすいように固化体層LSに工夫を加えたうえで締め固めてもよい。例えば
図4に示す固化体層LSには、「切り欠きNT」が形成されており、いわるゆ「板チョコ」のような形状とされている。このように固化体層LSに切り欠きNTを形成することによって、固化体層LSはこの切り欠きNTを境界として分割され、すなわち固化体層LSを容易に分割することができるわけである。この切り欠きNTを形成するにあたっては、塑性層(つまり、層状とされた塑性混練物)が固化する前にピック等を使用して筋状の薄肉部分を形成し、これを切り欠きNTとすることができる。あるいは、あらかじめ振動版Vbの振動面に「突起」を設け、振動版Vbが塑性層に面振動を加える際にその突起によって切り欠きNTを形成することもできる。なお切り欠きNTは、
図4に示すように格子状に設けることもできるし、もちろん任意の間隔や形状で設けることもできる。切り欠きNTを有する固化体層LSは容易に分割することができるため、上記したように、ダンプトラックDtなどによって廃棄物を搬入するとき(
図1のStep107)、あるいはバックホウBhなどによって廃棄物を敷き均すときに(
図1のStep108)、固化体層LSを分割していくこともできる。
【0029】
また、固化体層LSがあらかじめ設定された「目標低強度」を発現するまで待機したうえで、固化体層LSを分割していくこともできる。固化体層LSはセメントを使用していることから、材令とともに強度が上がっていく。つまり、短い材令ではそれほど高い強度が発現しないため、あえて割れやすい材令(低強度)で固化体層LSを分割していくわけである。
【0030】
「目標低強度」を設定するにあたっては、試験施工を行うとよい。例えば、複数の固化体層LSを形成し、種々の強度に係る固化体層LS、つまり異なる期間で養生された固化体層LSの上に廃棄物層LWを敷設したうえで、その上面を車輌系建設機械(振動ローラーRVやバックホウBhなど)、あるいは資機材運搬車両(ダンプトラックDtなど)で走行する。そして、固化体層LSが割れたときの強度を「目標低強度」として設定するとともに、その目標低強度に係る養生期間を「目標養生期間」として設定する。このように目標低強度と目標養生期間が設定されると、目標低強度を発現するまで、すなわち目標養生期間が経過するまで待機したうえで、固化体層LSを分割していくわけである。
【0031】
さらに、突起付きの振動ローラーRV(例えば、タンピングローラー)などを利用して上層の廃棄物層LWを締め固めることによって、下層の固化体層LSを分割していくこともできる。廃棄物による分割廃棄物層の層厚によっては、振動ローラーRVの「突起」が下層の固化体層LSまで到達するため、この突起によっていわば直接的に固化体層LSを分割していくわけである。
【0032】
第2層目の廃棄物層LW2が形成されると、その上層に固化体層LSを形成する。具体的には、バックホウBhなどを使用して塑性混練物を層状に敷き均して「塑性層」を形成し(
図1のStep110)、振動版Vbによって塑性層の表面に対して面振動を与ることで「固化体層LS」を形成する(
図1のStep111)。
【0033】
第2層目の廃棄物層LW2が形成され、その上層に固化体層LSが形成されると、準好気性処分場が計画された層厚となるまで一連の工程(Step107~Step111)を繰り返し行う。そして、準好気性処分場が計画層厚に到達すると、その最上面に最終覆土を敷設する(
図1のStep112)。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本願発明の廃棄物埋立て方法は、一般廃棄物や産業廃棄物の準好気性処分場で特に有効に実施することができる。本願発明は、今まさに喫緊の課題となっている「最終処分場の残容量の逼迫」に対して好適な解決策を提供することを考えれば、産業上利用できるばかりでなく社会的にも大きな貢献を期待し得る発明である。
【符号の説明】
【0035】
Bh バックホウ
Dt ダンプトラック
LS 固化体層
LW 廃棄物層
RV 振動ローラー
Vb 振動版
WS 遮水シート