IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アビオール、インコーポレイテッドの特許一覧

特開2025-4054慢性腎疾患随伴掻痒を処置する方法及びデバイス
<>
  • 特開-慢性腎疾患随伴掻痒を処置する方法及びデバイス 図1a
  • 特開-慢性腎疾患随伴掻痒を処置する方法及びデバイス 図1b
  • 特開-慢性腎疾患随伴掻痒を処置する方法及びデバイス 図1c
  • 特開-慢性腎疾患随伴掻痒を処置する方法及びデバイス 図1d
  • 特開-慢性腎疾患随伴掻痒を処置する方法及びデバイス 図1e
  • 特開-慢性腎疾患随伴掻痒を処置する方法及びデバイス 図2a
  • 特開-慢性腎疾患随伴掻痒を処置する方法及びデバイス 図2b
  • 特開-慢性腎疾患随伴掻痒を処置する方法及びデバイス 図3
  • 特開-慢性腎疾患随伴掻痒を処置する方法及びデバイス 図4
  • 特開-慢性腎疾患随伴掻痒を処置する方法及びデバイス 図5
  • 特開-慢性腎疾患随伴掻痒を処置する方法及びデバイス 図6
  • 特開-慢性腎疾患随伴掻痒を処置する方法及びデバイス 図7
  • 特開-慢性腎疾患随伴掻痒を処置する方法及びデバイス 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025004054
(43)【公開日】2025-01-14
(54)【発明の名称】慢性腎疾患随伴掻痒を処置する方法及びデバイス
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/485 20060101AFI20250106BHJP
   A61P 17/04 20060101ALI20250106BHJP
【FI】
A61K31/485
A61P17/04
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024167408
(22)【出願日】2024-09-26
(62)【分割の表示】P 2021521286の分割
【原出願日】2019-10-17
(31)【優先権主張番号】62/747,506
(32)【優先日】2018-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】520319392
【氏名又は名称】アビオール、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴァシシュト、ニラージ
(57)【要約】
【課題】慢性腎疾患随伴掻痒を処置する方法及びデバイスの提供。
【解決手段】
本開示による主題は、慢性腎疾患随伴掻痒を処置する効果的な方法に関する。具体的には、本方法は、慢性腎疾患随伴掻痒、ならびに胆汁うっ滞性掻痒及び/又は結節性痒疹を処置するためにナルメフェンを経粘膜投与することを含む。ナルメフェンは、少なくとも2つの別個ドメインを含む単層フィルムに配置される。本フィルムは、約50~100重量パーセントのポリマーマトリックスを含む第1の別個ドメインを含むことができ、第2の別個ドメインはナルメフェン又は医薬的に許容され得るナルメフェン塩を含むことができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
掻痒を対象において処置する方法であって、そのような処置を必要としている対象に、治療効果的な量のナルメフェン又はその医薬的に許容され得る塩を経粘膜投与することを含む、上記方法。
【請求項2】
対象が、慢性腎疾患、低下した腎機能、肝疾患の症状としての掻痒、結節性痒疹、又はそれらの組み合わせを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
掻痒の処置が対象におけるサブスタンスPのレベルを低下させる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
対象が透析処置を受けている、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
治療効果的な量が約1mg~約32mgのナルメフェン又は医薬的に許容され得るナルメフェン塩を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ナルメフェン又は医薬的に許容され得るナルメフェン塩が1日あたり1回又は2回、対象に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
約1mg~約8mgのナルメフェン又は医薬的に許容され得るナルメフェン塩が対象に対して1日に1回投与され、その後、効果的な用量に調整される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
約1mg~約8mgのナルメフェン又は医薬的に許容され得るナルメフェン塩が初回用量として1日に2回、対象に投与され、その後、約5mg~約32mgの効果的な用量に調整される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ナルメフェン又は医薬的に許容され得るナルメフェン塩が24時間のうちに第1の用量及び第2の用量として投与され、第1の用量が第2の用量よりも大きい、又は第2の用量が第1の用量よりも大きい、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
経粘膜投与が頬側投与又は舌下投与から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
舌下投与又は頬側投与が、約1mg~約32mgのナルメフェン又は医薬的に許容され得るナルメフェン塩を、約5分、30分又は60分に達しないうちに対象の血流に送達する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
舌下投与又は頬側投与が、約1ng/mL~約5ng/mLのナルメフェン又は医薬的に許容され得るナルメフェン塩を、約5分以内に対象の血流に送達する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
投与後のナルメフェン又は医薬的に許容され得るナルメフェン塩の血中Cmaxが、約1ng/mL~約50ng/mLである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
ナルメフェン又は医薬的に許容され得るナルメフェン塩の投与後の時間0~無限大での血液AUCが、約5ng-hr/mL~約500ng-hr/mLである、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
ナルメフェン又は医薬的に許容され得るナルメフェン塩が即時放出型経粘膜用投薬形態で構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
ナルメフェン又は医薬的に許容され得るナルメフェン塩の少なくとも約50%が透析可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
ナルメフェン又は医薬的に許容され得るナルメフェン塩が単層の自己支持型粘膜付着性フィルムを介して投与され、該フィルムが、
第1の別個ドメインの総重量に基づいて約50~100重量パーセントのポリマーマトリックスと、第1の別個ドメインの総重量に基づいて約0~50重量パーセントの、浸透促進剤、pH調節緩衝剤、味覚マスキング剤及び矯味矯臭剤の1つ又は複数とを含む第1の別個ドメイン、並びに
ナルメフェン又は医薬的に許容され得るナルメフェン塩を含む第2の別個ドメイン
を含み、
第2の別個ドメインが非自己支持型である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
対象がヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
投与後の対象におけるナルメフェングルクロニドの血漿中濃度が約0.1ng/mL~約25ng/mLである、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
投与後の対象における血漿中濃度が約0.25ng/mL~約10ng/mLである、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
単層の自己支持型粘膜付着性フィルムデバイスであって、
第1の別個ドメインの総重量に基づいて約50重量パーセント~約100重量パーセントのポリマーマトリックスと、第1の別個ドメインの総重量に基づいて約0重量パーセント~約50重量パーセントの、浸透促進剤、pH調節緩衝剤、味覚マスキング剤及び矯味矯臭剤の1つ又は複数とを含む第1の別個ドメイン、及び
ナルメフェン又は医薬的に許容され得るナルメフェン塩を含む第2の別個ドメイン
を含み、
第2の別個ドメインが非自己支持型である、上記単層の自己支持型粘膜付着性フィルムデバイス。
【請求項22】
ナルメフェン又は医薬的に許容され得るナルメフェン塩が、第1の別個ドメインの表面に存在する固溶体として存在する、又は実質的に均一な、固溶体として分散された非晶質の微小粒子もしくは単形態性の結晶性微小粒子として存在する、請求項20に記載のフィルム。
【請求項23】
ナルメフェン又は医薬的に許容され得るナルメフェン塩が、約25μm、10μm又は1μmに満たない大きさを有する、請求項20に記載のフィルム。
【請求項24】
第1の別個ドメインの厚さが、第2のドメインの厚さの約100%、500%、750%、1000%、2000%、3000%、4000%、5000%、7500%又は10000%である、請求項20に記載のフィルム。
【請求項25】
第2の別個ドメインが第1の別個ドメインから物理的に分離不可能である、請求項20に記載のフィルム。
【請求項26】
第1の別個ドメインが第2の別個ドメインに直に隣り合って配置される、請求項20に記載のフィルム。
【請求項27】
第1の別個ドメインの局所pHが約3.5~約8.5であり、第2の別個ドメインの局所pHが4~9であり、これら2つのドメインのpHが異なっている、請求項20に記載のフィルム。
【請求項28】
ポリマーマトリックスが、水溶性ポリマー、水膨潤性ポリマー及び/又は水崩壊性(water erodible)ポリマーから選択される、請求項20に記載のフィルム。
【請求項29】
第2の別個ドメインがさらに、層の総重量に基づいて約0.1~50重量パーセントの自己凝集性部分(self-aggregating moiety)、自己集合性部分(self-assembling moiety)又は両方を含む、請求項20に記載のフィルム。
【請求項30】
自己凝集性部分又は自己集合性部分が、1つ又は複数のリン脂質、胆汁酸、胆汁酸塩、ナノプレートレット構造体又は食用粘土から選択される、請求項28に記載のフィルム。
【請求項31】
医薬有効成分の、自己凝集性部分、又は自己集合性部分に対する比率が、重量比で約100:1~約1:10である、請求項28に記載のフィルム。
【請求項32】
第2のドメインがさらに、約0.1~5重量パーセントの酸素捕捉剤(oxygen scavenger)を含む、請求項28に記載のフィルム。
【請求項33】
第2のドメインがさらに、約0.1~5重量パーセントの薬物可溶化剤を含む、請求項20に記載のフィルム。
【請求項34】
対象の口腔粘膜と接触して置かれたときには医薬有効成分の指向性送達をもたらすように構成される、請求項20に記載のフィルム。
【請求項35】
1つ又は複数の追加の別個ドメインをさらに含み、追加の別個ドメインのそれぞれがフィルムデバイスから実質的に物理的に分離不可能である、請求項20に記載のフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は米国仮特許出願第62/747,506号(2018年10月18日出願)の利益を主張し、その全内容が本明細書により参照によって本明細書中に組み込まれる。
【0002】
本開示による主題は、慢性腎疾患随伴掻痒を処置する方法及びデバイスに関する。具体的には、本開示による主題には、処置を必要としている対象に頬側投与又は舌下投与することができる、ナルメフェンを含む経粘膜用フィルム組成物が含まれる。
【背景技術】
【0003】
掻痒が慢性腎疾患などの多くの疾患及び状態において生じている。特に、慢性腎疾患随伴掻痒は、慢性腎機能不全に苦しむ患者において一般的であり、約20%~50%の患者で生じている。このために、410万人を超える合衆国内の患者が慢性腎疾患に伴う掻痒に苦しんでいる1、2。掻痒の存在には、不良な生活の質、不充分な睡眠、うつ病、及び掻痒が軽度である、又は掻痒を有しない患者よりも最大で37%大きい調整死亡リスクが伴う。加えて、患者は多くの場合、結節性痒疹4、5、炎症性、鱗状及び剥離性の結節及び病変によって特徴づけられる皮膚疾患を発症する。軽症形態の掻痒及び結節性痒疹は一般にはコルチコステロイド薬及び抗ヒスタミン薬により処置されるが、そのような薬物は胆汁うっ滞性(肝臓)患者及び尿毒症性(腎臓)患者の両方における中等度形態及び/又は重症形態の慢性掻痒では比較的効果がない。結果として、臨床医は一般に、様々な適用外の薬物療法を処置のために使用する。慢性腎疾患に苦しむ患者のおよそ18%が、現在の処置方法によって管理することができない重度の掻痒を経験する。さらに、米国における承認された製造物は、慢性腎疾患随伴掻痒、胆汁うっ滞性掻痒、又は結節性痒疹を処置するためのものが1つもない。したがって、尿毒症性掻痒及び関連状態を、例えば、経粘膜用フィルムデバイスの使用などにより処置する改善された方法を提供することは有益であろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
いくつかの実施形態において、本開示による主題は、掻痒を対象において処置する方法に関する。具体的には、本方法は、そのような処置を必要としている対象に、治療効果的な量のナルメフェン又はその医薬的に許容され得る塩を経粘膜投与することを含む。
【0005】
いくつかの実施形態において、対象は、慢性腎疾患、低下した腎機能、肝疾患の症状としての掻痒、結節性痒疹、又はそれらの組み合わせを有する。
【0006】
いくつかの実施形態において、掻痒の処置は対象におけるサブスタンスPのレベルを低下させる。
【0007】
いくつかの実施形態において、対象は透析処置を受けている。
【0008】
いくつかの実施形態において、治療効果的な量は、約1mg~約32mgのナルメフェン又は医薬的に許容され得るナルメフェン塩を含む。
【0009】
いくつかの実施形態において、ナルメフェン又は医薬的に許容され得るナルメフェン塩は、1日あたり1回又は2回、対象に投与される。いくつかの実施形態において、約1mg~約8mgのナルメフェン又は医薬的に許容され得るナルメフェン塩は対象に対して1日に1回投与され、その後、効果的な用量に調整される。いくつかの実施形態において、約1mg~約8mgのナルメフェン又は医薬的に許容され得るナルメフェン塩は初回用量として1日に2回、対象に投与され、その後、約4mg~約32mgの効果的な用量に調整される。いくつかの実施形態において、ナルメフェン又は医薬的に許容され得るナルメフェン塩は24時間のうちに第1の用量及び第2の用量として投与され、この場合、第1の用量が第2の用量よりも大きい、又は第2の用量が第1の用量よりも大きい。
【0010】
いくつかの実施形態において、経粘膜投与は、頬側投与又は舌下投与から選択される。いくつかの実施形態において、舌下投与又は頬側投与は、約1mg~約32mgのナルメフェン又は医薬的に許容され得るナルメフェン塩を、約5分、30分又は60分に達しないうちに対象の血流に送達する。
【0011】
いくつかの実施形態において、舌下投与又は頬側投与は約1ng/mL~約5ng/mLのナルメフェン又は医薬的に許容され得るナルメフェン塩を約5分以内に対象の血流に送達する。
【0012】
いくつかの実施形態において、投与後のナルメフェン又は医薬的に許容され得るナルメフェン塩の対象の最大血中濃度Cmaxが約1ng/mL~約50ng/mLである。
【0013】
いくつかの実施形態において、ナルメフェン又は医薬的に許容され得るナルメフェン塩の投与後の時間0~無限大での対象の血液AUCが約5ng-hr/mL~約500ng-hr/mLである。
【0014】
いくつかの実施形態において、ナルメフェン又は医薬的に許容され得るナルメフェン塩は即時放出型経粘膜用投薬形態で構成される。
【0015】
いくつかの実施形態において、ナルメフェン又は医薬的に許容され得るナルメフェン塩は少なくとも約50%が透析可能である。
【0016】
いくつかの実施形態において、ナルメフェン又は医薬的に許容され得るナルメフェン塩は単層の自己支持型粘膜付着性フィルムを介して投与される。具体的には、本フィルムは、第1の別個ドメインの総重量に基づいて約50~100重量パーセントのポリマーマトリックスと、第1の別個ドメインの総重量に基づいて約0~50重量パーセントの、浸透促進剤、pH調節緩衝剤、味覚マスキング剤及び矯味矯臭剤の1つ又は複数とを含む第1の別個ドメインを含む。本フィルムは、ナルメフェン又は医薬的に許容され得るナルメフェン塩を含む第2の別個ドメインを含む。いくつかの実施形態において、第2の別個ドメインは非自己支持型である。
【0017】
いくつかの実施形態において、対象はヒトである。
【0018】
いくつかの実施形態において、本開示による主題は、単層の自己支持型粘膜付着性フィルムに関する。本フィルムは、第1の別個ドメインの総重量に基づいて約50~100重量パーセントのポリマーマトリックスと、第1の別個ドメインの総重量に基づいて約0~50重量パーセントの、浸透促進剤、pH調節緩衝剤、味覚マスキング剤及び矯味矯臭剤の1つ又は複数とを含む第1の別個ドメインを含む。本フィルムはさらに、ナルメフェン又は医薬的に許容され得るナルメフェン塩を含む第2の別個ドメインを含み、この場合、第2の別個ドメインは非自己支持型である。
【0019】
いくつかの実施形態において、ナルメフェン又は医薬的に許容され得るナルメフェン塩は、第1の別個ドメインの表面に存在する固溶体、又は実質的に均一な、固溶体として分散された非晶質の微小粒子もしくは単形態性の結晶性微小粒子として存在する。
【0020】
いくつかの実施形態において、ナルメフェン又は医薬的に許容され得るナルメフェン塩は、約25μm、10μm又は1μmに満たない大きさを有する。
【0021】
いくつかの実施形態において、第1の別個ドメインの厚さが、第2のドメインの厚さの約50%、100%、500%、750%、1000%、2000%、3000%、4000%、5000%、7500%又は10000%である。
【0022】
いくつかの実施形態において、第2の別個ドメインは第1の別個ドメインから物理的に分離不可能である。
【0023】
いくつかの実施形態において、第1の別個ドメインは第2の別個ドメインに直に隣り合って配置される。
【0024】
いくつかの実施形態において、第1の別個ドメインの局所pHが約3.5~約8.5であり、第2の別個ドメインの局所pHが4~9であり、これら2つのドメインのpHは異なっている。
【0025】
いくつかの実施形態において、ポリマーマトリックスは、水溶性ポリマー、水膨潤性ポリマー及び/又は水崩壊性(water erodible)ポリマーから選択される。
【0026】
いくつかの実施形態において、第2の別個ドメインはさらに、層の総重量に基づいて約0.1~50重量パーセントの自己凝集性部分(self-aggregating moiety)、自己集合性部分(self-assembling moiety)又は両方を含む。他の実施形態において、自己凝集性部分及び/又は自己集合性部分は、第2のドメインの総重量の約25~70重量パーセントの量で存在することができる。
【0027】
いくつかの実施形態において、自己凝集性部分又は自己集合性部分は、1つ又は複数のリン脂質、胆汁酸、胆汁酸塩、ナノプレートレット構造体又は食用粘土から選択される。
【0028】
いくつかの実施形態において、医薬有効成分の、自己凝集性部分又は自己集合性部分に対する比率が、重量比で約100:1~約1:10である。
【0029】
いくつかの実施形態において、第2のドメインはさらに、約0.1~5重量パーセントの酸素捕捉剤(oxygen scavenger)を含む。
【0030】
いくつかの実施形態において、第2のドメインはさらに、約0.1~5重量パーセントの薬物可溶化剤を含む。
【0031】
いくつかの実施形態において、フィルムは、対象の口腔粘膜と接触して置かれたときには医薬有効成分の指向性送達をもたらすように構成される。
【0032】
いくつかの実施形態において、フィルムはさらに、1つ又は複数の追加の別個ドメインを含み、この場合、追加の別個ドメインの前記それぞれがフィルムデバイスから実質的に物理的に分離不可能である。
【0033】
前述の概要及び下記の詳細な説明は、本開示による主題の(すべてではないが)いくつかの実施形態を例示する図面を考慮して読まなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1a】第1及び第2の別個ドメインを含む経粘膜用フィルムを表す図である。
図1b】第1及び第2の別個ドメインを含む経粘膜用フィルムを表す図である。
図1c】第1及び第2の別個ドメインを含む経粘膜用フィルムを表す図である。
図1d】第1及び第2の別個ドメインを含む経粘膜用フィルムを表す図である。
図1e】第1及び第2の別個ドメインを含む経粘膜用フィルムを表す図である。
図2a】SPが注射されたマウス(群1)及び生理的食塩水が注射されたマウス(群2)における総ひっかき傷数を例示する棒グラフである。
図2b】低濃度及び高濃度のSPが注射されたマウス(群1及び群3)における総ひっかき傷数を例示する棒グラフである。
図3】0~30分及び0~60分の時点における、PBS(群5)、PBS及びSP(群6)、又はナルメフェン及びSP(群4)が投与された後のマウスあたりの平均ひっかき傷数を例示する棒グラフである。
図4】PBS(群10)、0.5mMのSP(群11)、又は0.75mgのナルメフェン(群12)が10分間隔で注射された後のマウスあたりのひっかき傷数を例示する棒グラフである。
図5】0~30分及び30~60分における、群10、群11及び群12のマウスについての平均ひっかき傷数を例示する棒グラフである。
図6】低用量のSP(群13)及び高用量のSP(群14)が投与された後における10分間隔あたりのひっかき傷数を例示する棒グラフである。
図7】20時間の期間にわたる血漿中濃度を例示する折れ線グラフである。
図8】1時間の期間にわたる血漿中濃度を例示する折れ線グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本開示による主題は、より広範な発明的主題の1つ又は複数の特定の実施形態を理解することをもたらすように十分な詳細とともに示される。その様々な記載により、それらの実施形態の様々な特徴が、発明的主題を明示的に記載された実施形態及び特徴に限定することなく詳しく説明され、例示される。これらの記載を考慮して検討するとおそらくは、さらなる実施形態及び特徴ならびに類似する実施形態及び特徴が、本開示による主題の範囲から逸脱することなくもたらされることになるであろう。
【0036】
別途定義される場合を除き、本明細書中で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本開示による主題が関係する技術分野の当業者に一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書中に記載されるのと類似する、又は同等である方法、デバイス及び材料はどれも、本開示による主題の実施又は試験において使用することができるが、代表的な方法、デバイス及び材料が次に記載される。
【0037】
長年の特許法の慣例に従って、用語「a」、用語「an」及び用語「the」は、請求項を含めて本明細書において使用されるときには「one or more」(1つ又は複数)を示す。したがって、例えば、「a film」(フィルム)に対する言及には、複数のそのようなフィルムなどが含まれ得る。
【0038】
別途示される場合を除き、本明細書及び請求項において使用される、構成成分の量及び条件などを表すすべての数字は、すべての場合において用語「about」(約)によって修飾されるとして理解されなければならない。したがって、そうでないことが示されている場合を除き、本明細書及び添付された請求項において示される数値パラメーターは、本開示による主題によって得られることが求められる所望の特性に依存して変わり得る近似値である。
【0039】
本明細書中で使用される場合、用語「約」は、質量、重量、時間、体積、濃度及び/又は百分率の値又は量を示すときには、指定された量からのいくつかの実施形態では+/-20%の変動、いくつかの実施形態では+/-10%の変動、いくつかの実施形態では+/-5%の変動、いくつかの実施形態では+/-1%の変動、いくつかの実施形態では+/-0.5%の変動、また、いくつかの実施形態では+/-0.1%の変動を、開示された包装物及び方法においてそのような変動が適切であるように包含し得る。
【0040】
本開示による主題は、慢性腎疾患随伴掻痒を処置する効果的な方法に関する。用語「慢性腎疾患」は、患者が、(i)GFR(糸球体濾過量)が1.73mの体表面あたり60mi/min未満である持続した低下が約3ヶ月以上にわたること、又は(ii)低下したGFRがない場合でさえ、腎機能の構造的もしくは機能的な異常が約3ヶ月以上にわたることのどちらかを有する医学的状態を示す。用語「掻痒」は、一般には慢性腎疾患に伴う強いかゆみ感覚を示す。いくつかの実施形態において、開示された方法は、ナルメフェンをその必要性のある対象に(例えば、頬側組織及び/又は舌下組織などの粘膜組織を横断して)経粘膜投与することを含む。
【0041】
いくつかの実施形態において、ナルメフェンの経粘膜投与により、慢性腎疾患随伴掻痒、ならびに胆汁うっ滞性掻痒及び/又は結節性痒疹を処置することが可能である。胆汁うっ滞性掻痒は、肝疾患に起因するかゆみの感覚である。胆汁うっ滞は、胆汁の流れが遅くなること又は止まることを示し、これは、(胆汁を産生する)肝臓、(胆汁を貯蔵する)胆嚢、又は胆道(胆汁が肝臓及び胆嚢を離れ、小腸に入ることを可能にする導管)のいくつかの疾患が原因となり得る。胆汁うっ滞が起こると、抱合型ビリルビン及び関連老廃物が血流内に逆流し、沈着する。皮膚内に沈着する胆汁酸塩が掻痒の原因であると考えられている。
【0042】
結節性痒疹は、対象の腕又は脚に典型的に現れる掻痒性の(かゆい)結節によって特徴づけられる皮膚疾患である。患者は、ひっかくことによって引き起こされる多数の剥離性病変部を呈することが多い。
【0043】
サブスタンスP(SP)は、掻痒の誘発及び維持において役割を果たすニューロペプチドである。SPがシナプス前求心性神経でのNK-1受容体及びシナプス後求心性神経でのKOR受容体によって発現され、これらの受容体の両方が皮膚及びCNSにおいて大量に発現されるので、SPはそれ故、新規なかゆみ止め治療のための理にかなった標的である。理論によってとらわれることはないが、ナルメフェンは、多くの経路で、例えば、1)NK-1受容体におけるサブスタンスPの発現を阻止すること(アンタゴニスト)、及び/又は2)高親和性のカッパオピオイド(KOR)受容体としてCNSへの疼痛シグナルを阻止することによって働くと考えられている。どちらかに区別されることはないが、掻痒がどちらか又は両方の作用機構によって軽減される。
【0044】
開示された処置方法は、慢性腎疾患関連掻痒、胆汁うっ滞性掻痒及び/又は結節性痒疹を有する対象にナルメフェンを経粘膜投与することを含む。ナルメフェン(C2125NO、6-メチレン-6-デオキシ-N-シクロプロピルメチル-14ヒドロキシジヒドロノルモルフィン)の構造が構造(I)として下記に示される:
【化1】
【0045】
ナルメフェンは、オピオイド過剰服用のための解毒剤として合衆国において使用のために承認された混合型のミューオピオイド受容体(MOR)アンタゴニスト及びカッパオピオイド受容体(KOR)アゴニストである。オピオイド剤の鎮静、呼吸抑制及び他の作用を打ち消すことにおけるその有用性とは別に、ナルメフェンはまた、とりわけ、小児における運動亢進、老人性認知症、及び乳児突然死症候群などの多種多様な状態を処置する際に有用であることが見出されている。ナルメフェンの経口投与はまた、アルコール依存症を処置する際の使用について安全かつ効果的であることが示されている。
【0046】
上記で示されるように、ナルメフェンは、慢性腎疾患随伴掻痒、ならびに胆汁うっ滞性掻痒及び/又は結節性痒疹を処置するために対象に経粘膜投与することができる。経粘膜送達は、口腔、咽頭腔又は食道における粘膜を横切る医薬用薬剤の送達を示す。したがって、医薬用薬剤が、頬側粘膜、舌下粘膜、歯肉粘膜、咽頭粘膜及び/又は食道粘膜から吸収される。いくつかの実施形態において、ナルメフェンの経粘膜投与は頬側送達又は舌下送達される。本明細書中で使用される場合、「頬側」は、口の中から、頬を裏打ちする粘膜を通り抜ける(すなわち、頬側粘膜を通り抜ける)頬に向けられる投与を示す。用語「舌下」は、舌の下側にある口腔底を裏打ちする粘膜を通り抜ける(すなわち、舌下粘膜を通り抜ける)舌の下側への投与を示す。
【0047】
いくつかの実施形態において、ナルメフェンは、錠剤(例えば、口内溶解錠剤)、液剤、ゲル、ガム、ディスク及び/又は経口用可溶性フィルムとして配合することができる。しかしながら、ナルメフェンの経口投与では、腎臓はその望ましくない代謝産物を除くことができないために、重大な安全性リスクが、腎障害又は肝障害を有する患者に引き起こされる可能性がある。末期の腎疾患又は肝不全を有する患者における使用のために、ナルメフェンは、初回通過代謝を回避する投与経路を介して送達することができる。特に、初回通過代謝を回避することにより、損なわれた肝機能及び腎機能においては減少させなければならない酸化的グルクロニド代謝産物が有意に減少する。
【0048】
例えば、いくつかの実施形態において、ナルメフェンは、経口用フィルムの使用を介して経粘膜送達することができる。用語「フィルム」は、本明細書中で使用される場合、薄い柔軟なシート状の物質を示し、被覆フィルム及びフィルム製造物を包含することが意図される。具体的には、非晶質又は結晶性のナルメフェンのナノ粒子及び微小粒子を含む経口用の薄いフィルムを配合することができる。用語「ナノ粒子」は、サイズがサブミクロンであるナルメフェン粒子を示す。いくつかの実施形態において、好適なナノ粒子の平均最長寸法が、約1,000ナノメートル、500ナノメートル、200ナノメートル、100ナノメートル、75ナノメートル、50ナノメートル、40ナノメートル、25ナノメートル又は20ナノメートルを決して超えないほどである。用語「結晶性(の)」は、比較的明確に定義された結晶構造を有する化合物を示す。用語「非晶質(の)」は、結晶性の領域を有しない非結晶性状態にある化合物を示す。
【0049】
いくつかの実施形態において、ナルメフェンのナノ粒子及び微小粒子が経口用フィルムの表面における別個ドメインに存在する。いくつかの実施形態において、フィルムは、2つ以上の別個ドメインを含む単層フィルムであって、少なくとも1つのドメインがナルメフェンのナノ粒子及び微小粒子を含む単層フィルムであることが可能である。本明細書中で使用される場合、用語「ドメイン」は、フィルム内の領域であって、フィルムの別の領域と比較して、実質的に異なる物理的組成、化学的組成及び/又は測定可能な物理的特性(例えば、ナルメフェンの溶解、粘膜付着、及び/又は水分含有量)を含む領域を示す。
【0050】
図1には、複数の別個ドメインを含み、該ドメインの少なくとも1つがナルメフェン又はその塩を含む単層経口用フィルム5の1つの実施形態が例示される。具体的には、フィルム5は、1つ又は複数のポリマーマトリックスを含む第1のドメイン10と、医薬有効成分20(例えば、ナルメフェン又はその塩)を含む第2のドメイン15とを含む。いくつかの実施形態において、第2のドメイン15は自己支持型ドメインではなく、機械的完全性を維持するように第1のドメインから物理的に分離することができない。用語「非自己支持型(non-self-supporting)」は、機械的完全性を維持するには物理的に分離することができない構造を表す。そのようなドメインは、極めて薄い、脆い、別個な、かつ/又は非隣接な領域を含むことができる(しかし、そのようなドメインはこれらに限定されない)。いくつかの実施形態において、第1のドメイン10は自己支持型である。いくつかの実施形態において、第1の別個ドメインは、第2の別個ドメインに隣り合って、又は直に隣り合って配置される。本明細書中で使用される場合、用語「隣り合って」は、2つの層が互いに直接接触して配置されること、又はそれらの間の別の層と接触して配置されることを示す。用語「直に隣り合って」は、何ら他の層を間に伴うことなく互いに接触している層を示す。
【0051】
第1のドメイン10は、1つ又は複数のポリマーマトリックスと、必要な場合には1つ又は複数の浸透促進剤、pH調節緩衝剤、味覚マスキング剤及び/又は香料とを含むことができる。所望のポリマーマトリックスをどのようなものであれ使用することができ、これには、水溶性ポリマー、水膨潤性ポリマー及び/又は水崩壊性ポリマー(これらに限定されない)が含まれる。例えば、いくつかの実施形態において、ポリマーマトリックスは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ポリエチレンオキシド(PEO)、プルラン、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、ペクチン、キサンタンガム、トラガントガム、グアーガム、アカシアゴム、アラビアゴム、ローカストビーンガム、ジェランガム及びそれらの組み合わせ、ポリアクリル酸、Polycarbophil(登録商標)、メチルメタクリラートコポリマー、カルボキシビニルコポリマー、天然デンプン及び加水分解デンプン、A型ゼラチン及びB型ゼラチン、カラギーナンならびにそれらの組み合わせから選択することができる。
【0052】
本明細書中で使用される場合、表現「水溶性ポリマー」及びその変化形は、少なくとも一部が水に可溶性である、完全に水に可溶性である、又は大部分が水に可溶性である、あるいは水を吸収するポリマーを示す。水を吸収するポリマーは多くの場合、水膨潤性ポリマーであるとして示される。いくつかの実施形態において、第1のドメイン10のポリマーマトリックスにおいて使用される材料は室温及び/又は他の温度(例えば、室温を超える温度など)において水溶性又は水膨潤性であることが可能である。
【0053】
いくつかの実施形態において、ポリマーマトリックスは第1のドメインの総重量の約5~100重量パーセントの量で存在することができる(例えば、第1のドメインの総重量に基づいて、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95又は100重量パーセントの量で存在することができる)。ポリマーマトリックスにより、自己支持型構造と、改善された生物学的利用能のための所望の滞留時間とがもたらされる。
【0054】
第1のドメインは必要な場合には、フィルムの風味を改善するために味覚マスキング剤及び/又は矯味矯臭剤を含むことができる。用語「味覚マスキング剤」は、1つ又は複数の不快な味覚成分の味覚を遮蔽するために組成物に加えられる薬剤を示す。用語「矯味矯臭剤」は、開示されたフィルムに所望の味覚又は匂いを与える添加剤をどのようなものであれ示す。好適な味覚マスキング剤には、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、エチルセルロース、メチルセルロース及びそれらの組み合わせが含まれ得る(しかし、好適な味覚マスキング剤はこれらに限定されない)。好適な矯味矯臭剤には、天然香料及び人工香料、例えば、ハッカ油、メントール、スペアミント油、バニラ、桂皮油、冬緑油、レモン油、オレンジ油、グレープ油、ライム油、グレープフルーツ油、リンゴ香味油、ラズベリー油、イチゴ油、ナシ油、ブルーベリー油、ブラックベリー油、スイカ香料、サクランボ油、カンゾウ油、アンズ精油、チョウジ油、アニス油、カルダモン油、コリアンダー油、ユーカリ油、ウイキョウ油、レモングラス油、ニクズク油及びそれらの組み合わせなどが含まれ得る(しかし、好適な矯味矯臭剤はこれらに限定されない)。いくつかの実施形態において、味覚マスキング剤及び/又は矯味矯臭剤は第1のドメインの総重量の約0~5重量パーセントの量で存在することができる(例えば、0、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5又は5重量パーセントの量で存在することができる)。
【0055】
いくつかの実施形態において、第1の別個ドメインの局所pHが約3.5~約8.5であり、例えば、約3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8又は8.5などである。いくつかの実施形態において、第2の別個ドメインの局所pHが4~9の間であり、例えば、5~8の間又は6~7の間などである。いくつかの実施形態において、フィルム5のpHが3~9の間であり、例えば、4.5~7.5の間又は5~7の間などである。
【0056】
いくつかの実施形態において、フィルム5の第2のドメインは治療効果的な量のナルメフェンを含む。用語「治療効果的な量」は、慢性腎疾患随伴掻痒、胆汁うっ滞性掻痒及び/又は結節性痒疹の症状を軽減すること、排除すること、処置すること、及び/又は抑制することにおいて効果的である医薬有効成分の量を示す。いくつかの実施形態において、フィルム5の第2のドメインは約1mg~約32mgのナルメフェンを含む。したがって、フィルム5は、少なくとも約1mg、2mg、3mg、4mg、5mg、6mg、7mg、8mg、9mg、10mg、11mg、12mg、13mg、14mg、15mg、16mg、17mg、18mg、19mg、20mg、21mg、22mg、23mg、24mg、25mg、26mg、27mg、28mg、29mg、30mg、31mg又は32mg(あるいはこれ以下)のナルメフェンを含むことが可能である。
【0057】
図1bに示されるように、いくつかの実施形態において、第2のドメイン15は複数の医薬有効成分20を含むことができる。したがって、図1bのフィルムは、ナルメフェンと、1つ又は複数のさらなる化合物(例えば、NK-1アンタゴニスト化合物)とを含むことができる。例えば、いくつかの実施形態において、開示されたフィルムは、効果的な用量の1つ又は複数の医薬剤、例えば、(限定されないが)セルロピタント(C2928NO)などを含むことができる。セルロピタントはNK-1受容体アンタゴニストとして作用し、下記の構造(II)として示される構造を有する:
【化2】
【0058】
いくつかの実施形態において、フィルム5は約1mg~約32mgのさらなる医薬剤(例えば、セルロピタント)を含むことができる。したがって、第2の活性剤(又は後続の活性剤)は、約1~20mg、1~15mg、1~10mg、又は1~5mgの量で存在することができる。
【0059】
いくつかの実施形態において、フィルム5の第2のドメインは一定の薬物比のナルメフェン及びセルロピタントを含むことができる。例えば、組み合わされるとき、一定の薬物比は、約1:10、1:5、1:4、1:3、1:2、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、又は10:1(ナルメフェン:セルロピタント)であることが可能である。しかしながら、フィルム5は限定されず、上記で示される範囲から外れる一定の薬物比による薬物組み合わせを含むことができる。
【0060】
図1c、図1d及び図1eには、医薬有効成分20が、第1のドメインの表面におけるバリアマトリックスとして構成される第2のドメイン15に存在する、フィルム5の代替実施形態が例示される。図1dに示されるように、第2のドメイン15は、例えば、フィルムの全体的厚さよりも少なくとも1桁薄いなど、第1のドメイン10と比較して実質的に薄くすることができる。例えば、第1のドメイン10の厚さは、第2のドメイン15の厚さの約500%、750%、1000%、2000%、3000%、4000%、5000%、7500%又は10000%であることが可能である。いくつかの実施形態において、フィルム5の第2のドメインは第1のドメインから物理的に分離不可能であることが可能である。同様に、例えば、第1のドメイン10の表面積は、第2のドメイン15の表面積の約100%、150%、200%、250%、300%、350%、400%、450%又は500%であることが可能である。
【0061】
図1cに示されるように、第2のドメイン15は、第1のドメイン10と比較してほぼ同じ厚さであることが可能であり、例えば、第2のドメインはフィルムの全体的厚さの約0~50%であり、第1のドメインはフィルムの全体的厚さの約50~100%(又は約1:1)である。例えば、第2のドメイン15の厚さは、第1のドメイン10の厚さの約10%、25%、50%、75%又は90%であることが可能である。いくつかの実施形態において、フィルム5の第2のドメイン15は第1のドメインから物理的に分離不可能であることが可能である。さらに、第1のドメイン10の表面積は図1eに示されるように、第2のドメイン15の表面積の約100%、150%、200%、250%、300%、350%、400%、450%又は500%であることが可能である。
【0062】
いくつかの実施形態において、第2の別個ドメイン15は、浸透増強特性をもたらす1つ又は複数の自己凝集性部分及び/又は自己集合性部分を含むことができる。用語「自己集合性(の)」は、本明細書中で使用される場合、誘発された物理的変化及び/又は誘起された相転移のときに整列して、デバイスの全体的な自由エネルギーを最小にし、それにより、熱力学的に安定なデバイスを生じさせる分子構造を示す。用語「自己凝集性(の)」は、分子が高濃度ドメイン又は「高含有ドメイン」に凝集することができることから生じる構造を示す。いくつかの実施形態において、自己凝集性部分及び/又は自己集合性部分は第2のドメインの総重量の約0~5重量パーセントの量で存在することができる(例えば、0、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5又は5重量パーセントの量で存在することができる)。他の実施形態において、自己凝集性部分及び/又は自己集合性部分は第2のドメインの総重量の約25~75重量パーセントの量で存在することができる(例えば、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70又は75重量パーセントの量で存在することができる)。自己凝集性部分及び/又は自己集合性部分は指向性浸透をもたらす。
【0063】
いくつかの実施形態において、好適な自己凝集性部分及び/又は自己集合性部分には、リン脂質、胆汁酸塩、ナノプレートレット、粘土、極性脂質又はそれらの組み合わせが含まれ得る(しかし、好適な自己凝集性部分及び/又は自己集合性部分はこれらに限定されない)。自己凝集性部分及び/又は自己集合性部分の好適な例には、ホスファチジルコリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルイノシトールホスファート、ホスファチジルイノシトール二リン酸、ホスファチジルイノシトール三リン酸及び/又はスフィンゴミエリンが含まれ得る。より具体的には、自己凝集性部分及び/又は自己集合性部分は、1,2-ジデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジエルコイル-sn-グリセロ-3-ホスファート(ナトリウム塩)、1,2-ジエルコイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジエルコイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジエルコイル-sn-グリセロ-3[ホスホ-rac-(1-グリセロール...)(ナトリウム塩)、1,2-ジリノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジラウロイル-sn-グリセロ-3-ホスファート(ナトリウム塩)、1,2-ジラウロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジラウロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジラウロイル-sn-グリセロ-3[ホスホ-rac-(1-グリセロール)(ナトリウム塩)、1,2-ジラウロイル-sn-グリセロ-3[ホスホ-rac-(1-グリセロール)(アンモニウム塩)、1,2-ジラウロイル-sn-グリセロ-3-ホスホセリン(ナトリウム塩)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスファート(ナトリウム塩)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3[ホスホ-rac-(1グリセロール...)(ナトリウム塩)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3[ホスホ-rac-(1-グリセロール...)(アンモニウム塩)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3[ホスホ-rac-(1-グリセロール...)(ナトリウム/アンモニウム塩)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホセリン(ナトリウム塩)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファート(ナトリウム塩)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3[ホスホ-rac-(1-グリセロール...)(ナトリウム塩)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホセリン(ナトリウム塩)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスファート(ナトリウム塩)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-[ホスホ-rac-(1-グリセロール)(ナトリウム塩)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3[ホスホ-rac-(1-グリセロール)(アンモニウム塩)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホセリン(ナトリウム塩)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスファート(ナトリウム塩)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3[ホスホ-rac-(1-グリセロール...)(ナトリウム塩)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3[ホスホ-rac-(1-グリセロール)アンモニウム塩)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホセリン(ナトリウム塩)、水素化卵PC、水素化ダイズPC、1-ミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1-パルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1-ステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1-ミリストイル-2-パルミトイル-sn-グリセロ3-ホスホコリン、1-ミリストイル-2-ステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1-パルミトイル-2-ミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3[ホスホ-rac-(1-グリセロール)](ナトリウム塩)、1-パルミトイル-2-ステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1-ステアロイル-2-ミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1-ステアロイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1-ステアロイル-2-パルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1-ステアロイル-2-パルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;食用粘土成分、例えば、ナトリウムベントナイト、ポリリン酸塩、モンモリロナイト、カオリン、クロイサイト(cloisite)など;胆汁酸及び胆汁酸塩、例えば、コール酸、コール酸のナトリウム塩及びカルシウム塩、ケノデオキシコール酸、ケノデオキシコール酸のナトリウム塩及びカルシウム塩、ケノデオキシコール酸、ケノデオキシコール酸のナトリウム塩及びカルシウム塩、グリココール酸、グリココール酸のナトリウム塩及びカルシウム塩、グリチルレチン酸、グリチルレチン酸ナトリウム(glycyrrhentinate sodium)、タウロコール酸、タウロコール酸のナトリウム塩及びカルシウム塩、リトコール酸、リトコール酸のナトリウム塩及びカルシウム塩;ナノプレートレット、ベントナイト、クロイサイト及び/又はそれらの組み合わせを含むことができる。
【0064】
いくつかの実施形態において、第2のドメイン15は必要な場合には、1つ又は複数の酸素捕捉剤を含むことができる。用語「酸素捕捉剤」は、本明細書中で使用される場合、望まれない酸化生成物の生成を軽減する、又は排除する組成物を示す。いくつかの実施形態において、酸素捕捉剤は、酸素を吸収するために効果的である。第2のドメイン15に組み込まれ得る好適な酸素捕捉剤には、アスコルバート、イソアスコルバート、タンニン、亜硫酸塩、易酸化性ポリマー、ポリ酸、ポリ核酸、タンパク質、多糖、ポリペプチド、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)及びその塩、有機グルタミン酸及びその塩、クエン酸及びその塩、ホスホナート、ヒスチジン、フィトケラチン、ヘモグロビン、クロロフィル、フミン酸、トランスフェリン、デスフェリオキサミン、ビタミンEアセタート、トコフェロール、及びそれらの組み合わせが含まれ得る(しかし、好適な酸素捕捉剤はこれらに限定されない)。いくつかの実施形態において、酸素捕捉剤は第2のドメインの総重量の約0~5重量パーセントの量で存在することができる(例えば、0、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5又は5重量パーセントの量で存在することができる)。
【0065】
いくつかの実施形態において、フィルム5の第1のドメイン及び/又は第2のドメインは、対象の口腔粘膜からの吸収を最大にするために、1つ又は複数のバイオエンハンサー(bioenhancer)、pH制御成分、溶解性増強剤及び/又は溶媒を含むことができる。用語「バイオエンハンサー」は、ナルメフェンの生物活性、生物学的利用能及び/又は効力を増大させる物質を示す。好適なバイオエンハンサーには、1つ又は複数の脂肪酸、アルカロイド、ピペリン、アリシン、クルクミン及びケルセチンなどが含まれ得る(しかし、好適なバイオエンハンサーはこれらに限定されない)。いくつかの実施形態において、バイオエンハンサーは第1のドメインの総重量の約0~5重量パーセントの量で存在することができる(例えば、0、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5又は5重量パーセントの量で存在することができる)。
【0066】
用語「pH制御成分」は、pHにおける変化を阻止することができる成分(例えば、緩衝剤など)をどのようなものであれ示す。例えば、いくつかの実施形態において、pH制御成分は、リン酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、アルギニン緩衝剤、TRIS緩衝剤又はヒスチジン緩衝剤の1つ又は複数から選択することができる。いくつかの実施形態において、pH制御成分は第1のドメインの総重量の約0~5重量パーセントの量で存在することができる(例えば、0、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5又は5重量パーセントの量で存在することができる)。
【0067】
用語「溶解性増強剤」は、医薬有効成分(例えば、ナルメフェン)の可溶化相を形成する作用因を示す。好適な薬物可溶化剤には、溶媒、油、界面活性剤及び/又はリン脂質が含まれ得る(しかし、好適な薬物可溶化剤はこれらに限定されない)。いくつかの実施形態において、薬物可溶化剤は第2のドメインの総重量の約0~5重量パーセントの量で存在することができる(例えば、0、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5又は5重量パーセントの量で存在することができる)。
【0068】
用語「溶媒」は、溶質を溶解する物質を示す。好適な溶媒には、水、アルコール、ポリオール又はそれらの組み合わせが含まれ得る(しかし、好適な溶媒はこれらに限定されない)。いくつかの実施形態において、溶媒は第1のドメインの総重量の約0~5重量パーセントの量で存在することができる(例えば、0、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5又は5重量パーセントの量で存在することができる)。
【0069】
いくつかの実施形態において、フィルム5は3つ以上の別個ドメインを含むことができる。例えば、開示されたフィルムは、フィルム形成ポリマーマトリックスと、必要な場合には1つ又は複数のpH調節緩衝剤、味覚マスキング剤及び/又は香料とを含んで、効果的な味覚遮蔽及び/又は指向性浸透をもたらすための第1の別個ドメインを含むことができる。フィルムは、自己集合性リン脂質及び/又は胆汁酸塩を含んで、浸透増強をもたらすための第2の別個ドメインを含むことができる。フィルムはさらに、少なくとも1つの医薬有効成分又はその塩と、必要な場合には粘膜付着性ポリマー、pH調節緩衝剤及び/又は酸素捕捉剤とを含んで、フィルムが口腔粘膜と接触して置かれたときには粘膜付着及び/又は高濃度の微小環境から生じる大きい駆動力をもたらすための第3の別個ドメインを含むことができる。
【0070】
いくつかの実施形態において、フィルム5は粘膜付着性フィルムであることが可能である。用語「粘膜付着性(の)」は、本明細書中で使用される場合、Robinson,J R、「Rationale of Bioadhesion/mucoadhesion」(Gurny R.及びJunginger H.E.編、Bioadhesion:Possibilities and Future Trends、Stuttgart:Wissenschaftliche Verlagsesellschaft、Stuttgart、頁、第13巻、15頁(1990年)、その全内容が参照によって本明細書中に組み込まれる)によって定義されるように、合成ポリマー又は天然ポリマーが生物学的被着体に付着することを示す。複数の別個ドメインを含み、該ドメインの少なくとも1つが医薬有効成分に富み、かつ、少なくとも1つの別個ドメインにより、医薬有効成分を含む別個ドメインが口腔粘膜と接触して置かれたときの効果的な味覚遮蔽及び増強された経粘膜吸収がもたらされる単層フィルム構造体は現在1つも知られていない。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの別個ドメインにより、増強された経粘膜吸収がもたらされる。いくつかの実施形態において、第1の別個ドメインが対象の粘膜組織と接触して置かれたときには、粘膜付着性ポリマーにより、増強された吸収がもたらされる。
【0071】
上記で示されるように、フィルム5は単層フィルムである。用語「単層」は、例えば、領域をばらばらに剥がすこと、又はくさびで裂いて互いに離すことなどによって互いに容易に分離することができる層を含まない構造を示す。したがって、開示されたフィルムは、2つ以上のドメインを有する単層を含み、しかし、多層積層構造体ではない。ドメイン10、ドメイン15は、隣接していなければならない層とは異なり、構造において別個であること又は隣接していることが可能であることが理解されるはずである。いくつかの実施形態において、開示された単層フィルムは、500μmにすぎない厚さを非水和状態で有する少なくとも1つのドメインを含む。いくつかの実施形態において、フィルム5におけるそれぞれのドメインが500μm以下の厚さを有する。
【0072】
本開示による主題はさらに、第1の別個ドメインと、第2の別個ドメインとを含み、前記第1及び第2の別個ドメインが実質的に分離不可能であり、かつ、異なる濃度の医薬有効成分を有する連続した均一な単層フィルム製造物を形成する方法を含む。例えば、いくつかの実施形態において、開示されたフィルムは、湿潤ポリマーマトリックスと、必要な場合には浸透促進剤、pH調節緩衝剤、味覚マスキング剤及び/又は香味剤の1つ又は複数とを含む第1のドメインを、第1の溶媒を使用して調製することによって構築することができる。第1の湿潤フィルムは、第1の湿潤ポリマーマトリックスを流延成形することによって形成される。乾燥装置を、湿潤ポリマーマトリックスを乾燥させ、湿潤フィルムを、第1の溶媒を取り除くために十分な温度にさらし、それにより、フィルムを連続した単層フィルム積層体として乾燥させるために使用することができる。その後、医薬有効成分(例えば、ナルメフェン)を含む第2の湿潤溶液又は懸濁液を、第2の溶媒を使用して調製することができる。所定量の第2の湿潤溶液が、湿潤マルチドメインフィルムを形成するために第1の乾燥フィルムの表面における選択された区域に、吹付(spraying)プロセス、静電噴霧(electro-spraying)プロセス、噴霧コーティング(atomized coating)プロセス及び/又は超薄ウェブコーティングプロセスにより堆積させられる。その後、フィルムは乾燥装置において乾燥され、第1及び第2の別個ドメインを含む乾燥した連続する単層フィルム積層体を形成するように第2の溶媒を取り除くために十分な温度にさらされる。いくつかの実施形態において、温度は約室温~約250℃の範囲が可能である。
【0073】
フィルム5が経粘膜用単層フィルムデバイスである実施形態において、フィルムは、乾燥した薬物非含有のウェブコーティングされたポリマーマトリックス積層体ロールを好適な販売者(例えば、Lohmann Therapie Systeme(LTS)、Tapemark Inc、Aquestive Therapeutics、又はARx LLCなど)から調達することによって調製することができる。その後、医薬有効成分を含む第2の湿潤溶液又は懸濁液を、第2の溶媒を使用して調製することができる。所定量の第2の湿潤溶液又は懸濁液を、吹付プロセス、静電噴霧プロセス、噴霧コーティングプロセス及び/又は超薄ウェブコーティングプロセスによって第1の乾燥フィルムの表面の選択された区域に堆積させることができる。その後、湿潤マルチドメインフィルムは乾燥装置において堆積させられ、第1及び第2の別個ドメインを含む乾燥した連続する単層フィルム積層体を形成するように第2の溶媒を取り除くために十分な温度(例えば、約室温~250℃)にさらされることが可能である。いくつかの実施形態において、医薬有効成分を含む第2の別個ドメインは、ポリマーを含む第1の別個ドメインよりも実質的に薄い。
【0074】
いくつかの実施形態において、経粘膜用単層フィルムデバイス5を、第1の湿潤ポリマーマトリックスと、浸透促進剤、pH調節緩衝剤、味覚マスキング剤及び/又は香料の1つ又は複数とを、第1の溶媒を使用して調製することによって構築することができる。第1の湿潤フィルムを、湿潤ポリマーマトリックスを流延成形することによって形成することができる。医薬有効成分20(又はその塩)及び酸素捕捉剤及び/又は薬物可溶化剤を含む第2の湿潤溶液又は懸濁液を第2の溶媒において調製することができる。その後、所定量の第2の湿潤溶液又は懸濁液を、吹付プロセス、静電噴霧プロセス、噴霧コーティングプロセス及び/又は超薄ウェブコーティングプロセスを使用して、湿潤マルチドメインフィルムを形成するために第1の湿潤フィルムの表面に堆積させることができる。湿潤マルチドメインフィルムは乾燥装置において堆積させられ、第1及び第2の別個ドメインを含む単層の経粘膜用フィルムデバイスを形成するように第1及び第2の溶媒を取り除くために十分な温度(例えば、約室温~250℃)にさらされることが可能である。いくつかの実施形態において、第2の別個ドメインは第1の別個ドメインよりも実質的に薄い。
【0075】
いくつかの実施形態において、経粘膜用単層フィルムデバイス5を、第1の湿潤ポリマーマトリックスと、浸透促進剤、pH調節緩衝剤、味覚マスキング剤、自己凝集性部分(例えば、ベントナイトなど)及び/又は香料の1つ又は複数とを、第1の溶媒を使用して調製することによって構築することができる。第1の湿潤フィルムを、湿潤ポリマーマトリックスを流延成形することによって形成することができる。第1の湿潤ポリマーマトリックスは乾燥装置において堆積させられ、連続した単層フィルム積層体として流延成形される第1の乾燥フィルムを形成するように第1の溶媒を取り除くために十分な温度にさらされることが可能である。その後、医薬有効成分20(又はその塩)と、必要な場合には酸素捕捉剤及び/又は薬物可溶化剤(例えば、自己集合性リン脂質及び/又は胆汁酸塩など)を含む第2の湿潤溶液又は懸濁液を第2の溶媒において調製することができる。所定量の第2の湿潤溶液又は懸濁液を、吹付プロセス、静電噴霧プロセス、噴霧コーティングプロセス及び/又は超薄ウェブコーティングプロセスを使用して第1の乾燥フィルムの表面(又は表面の選択された領域)に堆積させることができる。その後、湿潤マルチドメインフィルムは乾燥装置において堆積させられ、第1及び第2の別個ドメインを含む乾燥した連続する単層フィルム積層体を形成するように第1及び/又は第2の溶媒を取り除くために十分な温度(例えば、約室温~250℃)にさらされることが可能である。いくつかの実施形態において、第2の別個ドメインは第1の別個ドメインよりも実質的に薄い。
【0076】
フィルム5は、どのような形態であれ所望の形態で、例えば、フィルムストリップ、シート、ディスク及びウェハなど(これらに限定されない)で構成されることが可能である。開示されたフィルムは、どのような厚さであれ所望の厚さを有することができ、例えば、約50μm~約500μmなどの厚さを有することができ、だが、より大きい厚さ又はより小さい厚さのフィルムは本開示による主題の範囲内に含まれる。フィルム5は、どのような形状であれ所望の形状で、例えば、長方形、正方形、丸みを帯びたもの、三角形、及び抽象的なものなどの形状で構成されることが可能である。フィルム5は、どのような厚さ及び/又はサイズであれ意図された使用のために好適である所望の厚さ及び/又はサイズを有し得ることが理解されなければならない。例えば、フィルムは、使用者の口腔内に置かれることになる単回投薬サイズの単位物であることが可能である。
【0077】
フィルム5はフィルムの連続ロールから形成されることが可能であり、又はサイズにおいて所望の長さ及び幅にすることができる。
【0078】
使用時において、医薬有効成分(例えば、ナルメフェン)を含む開示されたフィルムは、対象の舌の下側に(例えば、舌下空間又は頬側空間に)置かれる。フィルムは素早く貼り付き、崩壊し、かつ溶解し、これにより、医薬有効成分が溶解し、続いて血流内に直に吸収されることを可能にする。上記で示されるように、ナルメフェンはKORアゴニストであり、かつ、NK-1受容体アンタゴニストである。このようにして、SPの発現が、かゆみシグナルをKORアゴニストとして阻止しながら、シナプス前求心性神経において低下すると考えられる。したがって、NK-1受容体と結合させるためにナルメフェンを投与することにより、SPの発現が改変され(例えば、低下し、又は阻害され)、掻痒に関連づけられてきたCNSへのかゆみシグナル伝達が阻止される。
【0079】
医薬有効成分は、投与されたとき、対象の粘膜のすぐ近傍の微小環境において分子状態で高濃度で存在する。このようにして、医薬有効成分の迅速な経粘膜吸収がもたらされる。いくつかの実施形態において、医薬有効成分の溶解速度はマトリックスの溶解速度よりも著しく速い。
【0080】
いくつかの実施形態において、フィルム5は1日あたり約1回~2回、その必要性のある対象に投与することができる。しかしながら、投薬量は多くの要因に依存し得ること、例えば、状態の重篤度、ナルメフェンの濃度及び対象の体重などに依存し得ることが理解されなければならない。用語「対象」は、本明細書中で使用される場合、霊長類(サル、類人猿、ヒトなど)又は非霊長類(ウシ、ウマ、ブタ、ネコ、イヌ、ラット、マウス、鳥、魚など)を含めて動物を示す。
【0081】
経粘膜用フィルムは、約1~32mgのナルメフェンを対象に送達するために頬側投与又は舌下投与することができる。例えば、いくつかの実施形態において、ナルメフェンは約1~5mgの初期用量で1日に1回又は2回、経粘膜投与し、その後、効果的な用量(例えば、約5~32mgなど)に設定することができる。いくつかの実施形態において、ナルメフェンは、第1の時点での(例えば、午前での)第1の投薬、及び第2の時点での(例えば、午後での)第2の投薬により経粘膜投与することができ、この場合、第1及び第2の用量は等しい、又は等しくない。
【0082】
いくつかの実施形態において、ナルメフェンは即時放出型経粘膜用投薬形態であり、約1~50ng/mLの平均Cmaxを患者においてもたらす頬側経路又は舌下経路を介して投与される。「Cmax」は、投与後の薬物(例えば、ナルメフェン又はその医薬的に許容され得る塩)の最大血漿中濃度、最大血清中濃度又は最大血中濃度を示す。例えば、舌下投与又は頬側投与は約1~5ng/mLのナルメフェン又は医薬的に許容され得るナルメフェン塩を約5分以内に対象の血流に送達することができる。
【0083】
いくつかの実施形態において、ナルメフェンは即時放出型経粘膜用投薬形態であり、頬側投与又は舌下投与され、約5~500ng-hr/mLの平均AUC0~無限大を対象においてもたらす。「AUC」は、医薬組成物の投与後の時間/血漿中濃度曲線の下側の面積を示す。「AUC0~無限大」は、時間0から無限大までの血漿中濃度曲線の下側の面積を意味する。
【0084】
いくつかの実施形態において、対象は、慢性腎臓病関連掻痒、胆汁うっ滞性掻痒及び/又は結節性痒疹を有する。いくつかの実施形態において、対象は透析処置中である。この技術分野では広く知られているように、透析は、急性又は慢性の腎不全を有する対象の血液浄化のためのプロセスである。いくつかの実施形態において、対象は慢性腎疾患又は腎機能低下を有する。ナルメフェン及び/又はナルメフェングルクロニドは、患者が透析の処置を受けているときには少なくとも約50%が透析可能であり得る(例えば、少なくとも50パーセント、60パーセント、70パーセント、80パーセント、90パーセント又は100パーセントが透析可能であり得る)。「透析可能(な)」は、透析膜(すなわち、半透膜)を通過することができる分子を示す。
【0085】
したがって、開示されたフィルムは、慢性腎疾患随伴掻痒、胆汁うっ滞性掻痒及び/又は結節性痒疹を対象において処置するために使用することができる。今日に至るまで、これらの状態を処置するための、ナルメフェンの経口経粘膜用配合物は存在しない。結果として、本開示による主題は、人生を変えるような救済を、苦しんでいる患者に与える。
【0086】
少なくとも一部はナルメフェンの安全な薬理学及び/又は好適な経口経粘膜投与経路のために、ナルメフェンは、慢性掻痒、慢性腎疾患随伴掻痒及び胆汁うっ滞性掻痒を処置するための標準的治療となる可能性を有する。
【実施例0087】
下記の例は、本開示による主題の代表的な実施形態を実施するための当業者への指針を与えるために含まれている。本開示及びこの技術分野における全般的な技能レベルに照らして、当業者は、下記の例が、例示であるためだけに意図されること、また、数多くの変化、改変及び代替が、本開示による主題の範囲から逸脱することなく用いられ得ることを理解することができる。
【0088】
例1
マウスにおけるSPの注射
掻痒の処置方法は、疾患状態を誘発するためにサブスタンスP(SP)誘発の掻痒が引き起こされるC57BLマウスを使用して確立された。C57BLマウスモデル及びICRマウスモデルは、十分に確立され、かつ検証された起痒性モデルであり、SPにより皮内誘発されたときの起痒性薬力学を明らかにすることにおいて首尾よく使用されている。
【0089】
研究開始時において約6~8週齢であり、体重が21.2~26.8グラムの範囲にある健康なオスC57BL/6マウスを例では使用した。マウスを研究開始に先立って少なくとも5日間にわたって順応させた。マウスを尾標識及びケージラベルによって特定した。研究は盲検法でなかった。マウスには種特異的食物を与え、食物及び水を動物には自由に摂らせた。
【0090】
オスC57BLマウスに、0.0168μgのSP(N=4、群1)又はPBS(N=2、群2)の皮内(ID)注射を右側のみ又は両側のどちらかで施した。注射部位におけるひっかき行動を2名の別々の観察者によって注射時から30分間にわたってモニターした。図2aに示されるように、局所部位でのひっかき行動がSP注射マウスではPBS注射マウスの場合よりも頻繁であり、このことから、SP注射は掻痒を効果的に誘発することが明らかにされた。
【0091】
0.0168μgのSPの当初用量(群1)を33.7μgのSPのより大きい用量(N=4、群3)と比較した。図2bに示されるように、より大きい用量のSPは、より少ない投薬量と比較してマウスにおける増大したひっかきと相関した。したがって、ひっかき行動がSPの存在及び量に対する直接的な応答であると結論づけられた。
【0092】
例2
マウスにおけるSP及びナルメフェンの注射I
SP誘発のひっかき行動に対するナルメフェンの効果を調べるために、一定用量のナルメフェンをオスC57BLマウス(N=5、群4)において33.7μgでのSPのID注射の1時間前に、100%の生物学的利用能を模倣する皮下(SC)注射により与えた。ひっかき行動をSP注射後の30分間及び60分間モニターした。対照には、PBSをSPの代わりに受けるマウス(N=6、群5)と、プラセボ用量のPBS及びID用量のSPを受けるマウス(N=4、群6)とが含まれた。
【0093】
図3に示されるように、ナルメフェンはSPに対する起痒性応答を完全に軽減した。
【0094】
例3
マウスにおけるSP及びナルメフェンの注射II
オスC57BLマウスにSP又はナルメフェンを下記のように服用させた:第7群(N=4)はSPを酢酸ナトリウムにおいて、250nM/50μLの用量で受けた。群8(N=4)はSPをリン酸塩緩衝化生理的食塩水(PBS)において、250nM/50μLの用量で受けた。群9(N=4)はSPをPBSにおいて、0.5mM/50μLの用量で受けた。様々なひっかき行動をビデオ録画し、評価した。
【0095】
15匹のオスC57BL/6マウスがサブスタンスP(SP)又はPBSの単回での皮内(ID)ボーラス注射を受けた。群10(N=6)がPBSの単回での50μLの注射を受けた。群11(N=4)がSPをPBSにおいて、0.5mM/50μlの用量で受けた。群12(N=5)が、0.5mM/50μLの用量でSPをPBSにおいて受ける30分前に、皮下(SC)での0.075mg/75μLのナルメフェンを受けた。ひっかき行動をビデオ録画し、評価した。
【0096】
その後、それぞれの群についての生存中の服用を下記の手順に従って行った:
群7:すべてのマウスを、順応させるために試験の30分前に透明な円筒状囲いに置いた。酢酸ナトリウムにおけるSPのIDボーラス注射を投与した。
群8及び群9:すべてのマウスを、順応させるために試験の30分前に透明な円筒状囲いに置いた。PBSにおけるSPのIDボーラス注射を投与した。録画をSP注射直後に開始し、30分間にわたって録画した。
群10及び群11:すべてのマウスを、順応させるために試験の60分前に透明な円筒状囲いに置いた。PBSにおけるSPのIDボーラス注射を投与した。録画をSP注射直後に開始し、60分間にわたって録画した。
群12:すべてのマウスを、順応させるために試験の60分前に透明な円筒状囲いに置いた。ナルメフェンのSCボーラス注射を投与した。ナルメフェン注射の30分後に、PBSにおけるSPのIDボーラス注射を投与した。録画をSP注射直後に開始し、60分間にわたって録画した。
【0097】
試験設計の概要が下記において表1に示される。
【0098】
【表1】
【0099】
群7~群9における動物を録画に先立って1時間にわたって順応させた。行動録画が30分間続いた(T0~T30)。
【0100】
群10~群12における動物を録画に先立って1時間にわたって順応させた。行動録画が60分間続いた(T0~T60)。群12については6匹の動物に投薬されたが、SP注射に対する応答が認められなかったために1匹の動物が外れ値として除外されたため、5匹の動物のみを試験した。
【0101】
群7~群9についての0~30分あたりのひっかき傷数が下記において表2に示される。群7及び群8についてのひっかき傷数は一緒に平均化された。
【0102】
群10~群12についての10分の時間間隔あたりのひっかき傷数が下記において表3に示される。データはまた、図4にグラフで示される。
【0103】
【表2】

【表3】
【0104】
0~30分及び30~60分の時間間隔あたりのひっかき傷数が、群10(PBS)、群11(0.5mM SP)及び群12(0.75mgナルメフェン)について下記において表4に示される。データはまた、図5にグラフで示される。
【0105】
データは、ナルメフェンはひっかき行動を、ひいては掻痒を抑制できることが1時間にわたって維持されることを明らかにしている。
【0106】
【表4】
【0107】
例4
SPの用量漸増
オスC57BL/6マウスに投与されるSP用量を漸増し、かゆみを分析のために録画した。群13(N=8)は135μgのSPのID注射を吻側背部の右側に受けた。群14(N=8)は233μgのSPのID注射を吻側背部の右側に受けた。T0~60において、用量投与直後に、かゆみ行動をモニターするために、カメラによる録画を開始した。T60において、最後のかゆみ評価を完了し、カメラ録画が終了し、研究を終えた。
【0108】
録画を再検討して、かゆみ行動を計算した。2名の研究助手が録画を検討し、60分の収集時間におけるそれぞれのマウスのひっかき傷数を計数した。2つの観察結果の平均が60分あたりのひっかき傷数として記録された。
【0109】
試験設計が下記において表5に示され、平均ひっかき傷数が表6に示される。
【0110】
【表5】
【0111】
経時的なひっかきを、試験されたそれぞれの動物について10分の期間あたり観察した。データが下記において表6に示され、図6にグラフで示される。
【0112】
【表6】
【0113】
例5
イヌにおける血漿中濃度の測定
例示的なフィルムデバイスを使用して送達されたときの経時的なナルメフェンの血漿中濃度を評価するために、イヌを使用して試験を行った。2つの例示的なフィルムデバイスを試験した。対照の錠剤もまた、比較のために試験した。1錠の18mg錠剤をイヌに投与し、その後、飲料水による10mLでの洗浄を行った。ナルメフェンのフィルムデバイスを頬側投与した。2つの8mgフィルムを16mgの総投薬量のために同時に投与した。イヌを麻酔し、その後でフィルムデバイスを所定位置に置いた。採血を下記のように行った:服用前、服用後の5分、10分、15分、30分、1時間、2時間、4時間、8時間、12時間、24時間及び48時間。図7は、ng/mL単位での血漿中濃度を20時間の期間にわたって2つのフィルムデバイスサンプル及び対照錠剤について示す折れ線グラフである。図7において認められ得るように、フィルムデバイスを使用して投与されたナルメフェンの血漿中濃度が1時間以内に50ng/mLにまで達した。錠剤を使用して投与されたナルメフェンの血漿中濃度は、1ng/mLを超えることが決してなかった。したがって、より高濃度のナルメフェンが、フィルムデバイスを使用してはるかにより迅速に達成可能であった。図8は、例示的なフィルムデバイスを使用してナルメフェンがそれぞれに投与された3匹のイヌについてng/mL単位での血漿中濃度を示す折れ線グラフである。図8は1時間の期間にわたる血漿中濃度を示しており、これは、例示的なフィルムデバイスを使用してナルメフェンがいかに迅速に送達され得るかを理解することにおいて役立つ。それぞれのイヌについての個々の血漿中濃度データポイントが示される。プロットされた線は3匹のイヌの平均血漿中濃度である。図8において認められ得るように、ナルメフェンの平均血漿中濃度が5分以内に5ng/mLに近づいた。10分以内に、ナルメフェンの平均血漿中濃度が5ng/mLを超えた。
【0114】
参考文献
【数1】

図1a
図1b
図1c
図1d
図1e
図2a
図2b
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2024-10-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
掻痒を対象において処置する方法であって、そのような処置を必要としている対象に、治療効果的な量のナルメフェン又はその医薬的に許容され得る塩を経粘膜投与することを含む、上記方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0114
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0114】
参考文献
【数1】


本開示による主題には以下の好ましい態様が含まれる。
(1)掻痒を対象において処置する方法であって、そのような処置を必要としている対象に、治療効果的な量のナルメフェン又はその医薬的に許容され得る塩を経粘膜投与することを含む、上記方法。
(2)対象が、慢性腎疾患、低下した腎機能、肝疾患の症状としての掻痒、結節性痒疹、又はそれらの組み合わせを有する、(1)に記載の方法。
(3)掻痒の処置が対象におけるサブスタンスPのレベルを低下させる、(1に記載の方法。
(4)対象が透析処置を受けている、(1)に記載の方法。
(5)治療効果的な量が約1mg~約32mgのナルメフェン又は医薬的に許容され得るナルメフェン塩を含む、(1)に記載の方法。
(6)ナルメフェン又は医薬的に許容され得るナルメフェン塩が1日あたり1回又は2回、対象に投与される、(1)に記載の方法。
(7)約1mg~約8mgのナルメフェン又は医薬的に許容され得るナルメフェン塩が対象に対して1日に1回投与され、その後、効果的な用量に調整される、(1)に記載の方法。
(8)約1mg~約8mgのナルメフェン又は医薬的に許容され得るナルメフェン塩が初回用量として1日に2回、対象に投与され、その後、約5mg~約32mgの効果的な用量に調整される、(1)に記載の方法。
(9)ナルメフェン又は医薬的に許容され得るナルメフェン塩が24時間のうちに第1の用量及び第2の用量として投与され、第1の用量が第2の用量よりも大きい、又は第2の用量が第1の用量よりも大きい、(1)に記載の方法。
(10)経粘膜投与が頬側投与又は舌下投与から選択される、(1)に記載の方法。
(11)舌下投与又は頬側投与が、約1mg~約32mgのナルメフェン又は医薬的に許容され得るナルメフェン塩を、約5分、30分又は60分に達しないうちに対象の血流に送達する、(10)に記載の方法。
(12)舌下投与又は頬側投与が、約1ng/mL~約5ng/mLのナルメフェン又は医薬的に許容され得るナルメフェン塩を、約5分以内に対象の血流に送達する、(1)に記載の方法。
(13)投与後のナルメフェン又は医薬的に許容され得るナルメフェン塩の血中C max が、約1ng/mL~約50ng/mLである、(1)に記載の方法。
(14)ナルメフェン又は医薬的に許容され得るナルメフェン塩の投与後の時間0~無限大での血液AUCが、約5ng-hr/mL~約500ng-hr/mLである、(1)に記載の方法。
(15)ナルメフェン又は医薬的に許容され得るナルメフェン塩が即時放出型経粘膜用投薬形態で構成される、(1)に記載の方法。
(16)ナルメフェン又は医薬的に許容され得るナルメフェン塩の少なくとも約50%が透析可能である、(1)に記載の方法。
(17)ナルメフェン又は医薬的に許容され得るナルメフェン塩が単層の自己支持型粘膜付着性フィルムを介して投与され、該フィルムが、
第1の別個ドメインの総重量に基づいて約50~100重量パーセントのポリマーマトリックスと、第1の別個ドメインの総重量に基づいて約0~50重量パーセントの、浸透促進剤、pH調節緩衝剤、味覚マスキング剤及び矯味矯臭剤の1つ又は複数とを含む第1の別個ドメイン、並びに
ナルメフェン又は医薬的に許容され得るナルメフェン塩を含む第2の別個ドメイン
を含み、
第2の別個ドメインが非自己支持型である、(1)に記載の方法。
(18)対象がヒトである、(1)に記載の方法。
(19)投与後の対象におけるナルメフェングルクロニドの血漿中濃度が約0.1ng/mL~約25ng/mLである、(1)に記載の方法。
(20)投与後の対象における血漿中濃度が約0.25ng/mL~約10ng/mLである、(18)に記載の方法。
(21)単層の自己支持型粘膜付着性フィルムデバイスであって、
第1の別個ドメインの総重量に基づいて約50重量パーセント~約100重量パーセントのポリマーマトリックスと、第1の別個ドメインの総重量に基づいて約0重量パーセント~約50重量パーセントの、浸透促進剤、pH調節緩衝剤、味覚マスキング剤及び矯味矯臭剤の1つ又は複数とを含む第1の別個ドメイン、及び
ナルメフェン又は医薬的に許容され得るナルメフェン塩を含む第2の別個ドメイン
を含み、
第2の別個ドメインが非自己支持型である、上記単層の自己支持型粘膜付着性フィルムデバイス。
(22)ナルメフェン又は医薬的に許容され得るナルメフェン塩が、第1の別個ドメインの表面に存在する固溶体として存在する、又は実質的に均一な、固溶体として分散された非晶質の微小粒子もしくは単形態性の結晶性微小粒子として存在する、(20)に記載のフィルム。
(23)ナルメフェン又は医薬的に許容され得るナルメフェン塩が、約25μm、10μm又は1μmに満たない大きさを有する、(20)に記載のフィルム。
(24)第1の別個ドメインの厚さが、第2のドメインの厚さの約100%、500%、750%、1000%、2000%、3000%、4000%、5000%、7500%又は10000%である、(20)に記載のフィルム。
(25)第2の別個ドメインが第1の別個ドメインから物理的に分離不可能である、(20)に記載のフィルム。
(26)第1の別個ドメインが第2の別個ドメインに直に隣り合って配置される、(20)に記載のフィルム。
(27)第1の別個ドメインの局所pHが約3.5~約8.5であり、第2の別個ドメインの局所pHが4~9であり、これら2つのドメインのpHが異なっている、(20)に記載のフィルム。
(28)ポリマーマトリックスが、水溶性ポリマー、水膨潤性ポリマー及び/又は水崩壊性(water erodible)ポリマーから選択される、(20)に記載のフィルム。
(29)第2の別個ドメインがさらに、層の総重量に基づいて約0.1~50重量パーセントの自己凝集性部分(self-aggregating moiety)、自己集合性部分(self-assembling moiety)又は両方を含む、(20)に記載のフィルム。
(30)自己凝集性部分又は自己集合性部分が、1つ又は複数のリン脂質、胆汁酸、胆汁酸塩、ナノプレートレット構造体又は食用粘土から選択される、(28)に記載のフィルム。
(31)医薬有効成分の、自己凝集性部分、又は自己集合性部分に対する比率が、重量比で約100:1~約1:10である、(28)に記載のフィルム。
(32)第2のドメインがさらに、約0.1~5重量パーセントの酸素捕捉剤(oxygen scavenger)を含む、(28に記載のフィルム。
(33)第2のドメインがさらに、約0.1~5重量パーセントの薬物可溶化剤を含む、(20)に記載のフィルム。
(34)対象の口腔粘膜と接触して置かれたときには医薬有効成分の指向性送達をもたらすように構成される、(20)に記載のフィルム。
(35)1つ又は複数の追加の別個ドメインをさらに含み、追加の別個ドメインのそれぞれがフィルムデバイスから実質的に物理的に分離不可能である、(20)に記載のフィルム。
【外国語明細書】