(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025040856
(43)【公開日】2025-03-25
(54)【発明の名称】車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 20/50 20160101AFI20250317BHJP
B60K 6/485 20071001ALI20250317BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20250317BHJP
B60L 50/61 20190101ALI20250317BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20250317BHJP
【FI】
B60W20/50
B60K6/485 ZHV
B60L50/16
B60L50/61
B60L3/00 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023147923
(22)【出願日】2023-09-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三浦 貴久
(72)【発明者】
【氏名】亀山 千裕
【テーマコード(参考)】
3D202
5H125
【Fターム(参考)】
3D202AA09
3D202BB00
3D202CC53
3D202DD00
3D202DD24
5H125AA01
5H125AC08
5H125AC12
5H125BD17
5H125EE31
(57)【要約】
【課題】発電要求がある状態のモータジェネレータが不作動となる場合に早期に発電できる状態にすること。
【解決手段】エンジン2と、エンジン2の始動に用いるとともに、エンジン2の動力を補助するように駆動するモータジェネレータ5と、モータジェネレータ5で発電した電力を蓄える補機バッテリ8と、モータジェネレータ5を制御する制御部と、を備える車両1の制御装置であって、発電要求がある状態のモータジェネレータ5が不動作となる場合には、制御部のリスタート履歴がなく、かつモータジェネレータ5の故障を示す情報が検出されていない場合に、制御部をリスタートする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンの始動に用いるとともに、前記エンジンの動力を補助するように駆動するモータジェネレータと、
前記モータジェネレータで発電した電力を蓄える補機バッテリと、
前記モータジェネレータを制御する制御部と、
を備える車両の制御装置であって、
発電要求がある状態の前記モータジェネレータが不動作となる場合には、前記制御部のリスタート履歴がなく、かつ前記モータジェネレータの故障を示す情報が検出されていない場合に、前記制御部をリスタートする
ことを特徴とする車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、マイルドハイブリッドシステムを搭載した車両が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の構成では、エンジン始動に用いるモータジェネレータが発電機として機能し、そのモータジェネレータで発電した電力を補機バッテリに蓄える。しかしながら、モータジェネレータの発電で補機バッテリを充電するシーンにおいて、何らかの要因によりモータジェネレータが不作動となると補機バッテリの充電ができず、いわゆるバッテリ上がりとなりエンジストールにつながる虞がある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、発電要求がある状態のモータジェネレータが不作動となる場合に早期に発電できる状態にすることができる車両の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、エンジンと、前記エンジンの始動に用いるとともに、前記エンジンの動力を補助するように駆動するモータジェネレータと、前記モータジェネレータで発電した電力を蓄える補機バッテリと、前記モータジェネレータを制御する制御部と、を備える車両の制御装置であって、発電要求がある状態の前記モータジェネレータが不動作となる場合には、前記制御部のリスタート履歴がなく、かつ前記モータジェネレータの故障を示す情報が検出されていない場合に、前記制御部をリスタートすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、モータジェネレータを制御する制御部をリスタートすることにより、モータジェネレータを再起動できるため、発電要求がある状態のモータジェネレータが不作動となる場合に早期に発電できる状態にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態における車両を模式的に示す図である。
【
図2】
図2は、制御フローを示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態における車両の制御装置について具体的に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0010】
図1は、実施形態における車両を模式的に示す図である。車両1は、エンジン(ENG)2と、動力伝達装置(T/M)3と、スタータ4と、モータジェネレータ(MG)5と、DCDCコンバータ6と、補機7と、補機バッテリ8と、高圧電池9と、電子制御装置(ECU)10とを備える。車両1の制御装置は、電子制御装置10を含んで構成される。
【0011】
車両1は、動力源としてエンジン2およびモータジェネレータ5を備え、マイルドハイブリッドシステムを搭載した車両である。
【0012】
エンジン2は、車両1の動力源である。エンジン2から出力された動力が動力伝達装置3を介して車輪に伝達される。動力伝達装置3は、変速機などのギヤ機構を含んで構成され、エンジン2と車輪との間で動力伝達経路を形成する。
【0013】
スタータ4は、エンジン2を始動するためのセルモータである。スタータ4のシャフトはエンジン2のクランクシャフトと動力伝達可能に接続されている。スタータ4は補機バッテリ20から供給される電力によって駆動する。スタータ4が駆動すると、スタータ4のシャフトが回転することによりエンジン2のクランクシャフトが回転され、エンジン2が始動する。
【0014】
モータジェネレータ5は、電動機および発電機として機能するものである。モータジェネレータ5は伝動装置11を介してエンジン2と動力伝達可能に接続されている。伝動装置11は、ベルト式伝動装置であり、エンジン2のクランクシャフトと一体回転するプーリと、モータジェネレータ5のシャフトと一体回転するプーリと、これらのプーリに巻きかけられたベルトとを備える。モータジェネレータ5は伝動装置11を介してエンジン2を始動する。エンジン2の始動方法としては、スタータ4を単独で使用してエンジン2を始動する方法と、モータジェネレータ5を単独で使用してエンジン2を始動する方法と、スタータ4とモータジェネレータ5とを併用してエンジン2を始動する方法とがある。また、エンジン2の動力が足りない場合にはモータジェネレータ5を電動機として駆動させてエンジン2の動力を補助する。モータジェネレータ5は高圧電池9から供給される電力により駆動する。エンジン2の動力に余裕がある場合には、モータジェネレータ5を発電機として駆動させて補機バッテリ8に電力を蓄える。モータジェネレータ5は、電力線PLを介してDCDCコンバータ6と電気的に接続されている。
【0015】
DCDCコンバータ6は、モータジェネレータ5と補機7との間に設けられた電力変換装置である。DCDCコンバータ6は電力線PLと低電圧線ELとの間に電気的に接続されている。DCDCコンバータ6は電力線PLの電圧を降圧して低電圧線ELに供給する。DCDCコンバータ6は低圧電線ELを介して補機7および補機バッテリ8と電気的に接続されている。
【0016】
補機バッテリ8は、スタータ4に電力を供給する。補機バッテリ8の定格電圧は12Vである。補機バッテリ8は低電圧線ELを介してスタータ4とDCDCコンバータ6と補機7とに電気的に接続されている。補機バッテリ8はDCDCコンバータ6を介してモータジェネレータ5と電気的に接続されている。
【0017】
高圧電池9は、モータジェネレータ5に電力を供給する。高圧電池9の定格電圧は48Vである。高圧電池9はインバータ(不図示)を介してモータジェネレータ5と電気的に接続される。モータジェネレータ5により発電した電力を高圧電池9に蓄えることができる。また、高圧電池9は第1リレー21を介してモータジェネレータ5と電気的に接続される。第1リレー21は、高圧電池リレーであり、高圧電池9とモータジェネレータ5との間に設けられている。第1リレー21がON状態になると高圧電池9とモータジェネレータ5との間が通電可能に接続される。第1リレー21がOFF状態になると高圧電池9とモータジェネレータ5との間が通電不能に遮断される。第1リレー21は電子制御装置10からの指令信号に応じてON状態とOFF状態とが切り替わる。なお、第1リレー21はモータジェネレータ5に接続されたインバータと高圧電池9との間に設けられている。
【0018】
電子制御装置10は、モータジェネレータ5を制御する制御部(MG-ECU)を備えた制御装置である。電子制御装置10は、車両1に搭載された各種センサからの信号に基づいて各種のモータ制御を実行する。電子制御装置10の制御部は、モータジェネレータ5に接続されたインバータに指令信号を出力してモータジェネレータ5の駆動を制御する。また、電子制御装置10は第2リレー22を介してモータジェネレータ5と電気的に接続される。第2リレー22は、MGリレーであり、モータジェネレータ5と電子制御装置10との間に設けられている。第2リレー22がON状態になると電子制御装置10とモータジェネレータ5との間が通電可能に接続される。第2リレー22がOFF状態になると電子制御装置10とモータジェネレータ5との間が通電不能に遮断される。なお、第2リレー22はモータジェネレータ5に接続されたインバータと電子制御装置10との間に設けられている。
【0019】
また、電子制御装置10はDCDCコンバータ6と高圧電池9とを制御する。電子制御装置10はDCDCコンバータ6に指令信号を出力し、DCDCコンバータ6の駆動を制御する。さらに、電子制御装置10は第1リレー21と第2リレー22とを制御する。電子制御装置10は第1リレー21に指令信号を出力し、第1リレー21のON状態とOFF状態とを切り替える。電子制御装置10は第2リレー22に指令信号を出力し、第2リレー22のON状態とOFF状態とを切り替える。
【0020】
このように構成された車両1では、モータジェネレータ5で発電した電力を補機バッテリ8に蓄えるので、何らかの要因によりモータジェネレータ5の発電機能が停止すると、補機バッテリ8がバッテリ上がりとなり、エンジストールを招く可能性がある。仮にマイコンや監視ICのスタートアップエラーや外部要因などによってMGシステムが起動せず発電できない場合には、モータジェネレータ5をリセットすることでエラー状態を解消することがある。そこで、車両1の制御装置はMGソフトのリセットをかけて再度発電できる状態にするように構成されている。
【0021】
具体的には、車両1の制御装置は、ハード的なリレーと、ソフト的なIG信号とによってMGシステムを起動する。通常の起動シーケンスにおいては、第2リレー22をON状態にしてモータジェネレータ5の電源を入れた後、IG信号を送信してMGシステムの起動を行う。これらの指示は電子制御装置10により行われる。この電子制御装置10は、モータジェネレータ5の駆動と、DCDCコンバータ6の駆動と、高圧電池9の駆動とを制御する。
【0022】
MGユニットが故障した場合には、フェールセーフとしてハード的な遮断を実施する。
【0023】
MGユニットが故障していないにも関わらず発電を停止する場合には、外部からの信号によってモータジェネレータ5を再起動させる。この場合、MGユニットが故障していないのでMGユニットが再起動することにより、再度発電できる状態に戻すことが可能である。このとき、発電停止期間を短くするために、できる限り早い時間で再起動をかけたい。加えて、他ユニット等への影響を最小限に抑えるためにも、他ユニットに余分な動作をさせないようにすることが求められる。これらを実現するために、該当シーンが発生した際には、ハード的な電源遮断ではなく、ソフト的なIG信号をOFFからONにすることによってMGユニットを再起動する。
【0024】
図2は、制御フローを示すフローチャート図である。
図2に示す制御は、車両1の制御装置によって実施される。
【0025】
車両1の制御装置は、モータジェネレータ5が不作動であるか否かを判定する(ステップS1)。ステップS1では、発電要求がある状態のモータジェネレータ5が不作動であるか否かが判定される。言い換えれば、モータジェネレータ5の発電機能が停止しているか否かが判定される。
【0026】
発電要求がある状態のモータジェネレータ5が作動していると判定された場合(ステップS1:No)、この制御ルーチンは終了する。
【0027】
発電要求がある状態のモータジェネレータ5が不作動であると判定された場合(ステップS1:Yes)、車両1の制御装置は、MGソフトのリセット履歴がないか否かを判定する(ステップS2)。ステップS2では、MG-ECUである電子制御装置10のリセット履歴があるか否かが判定される。MGソフトのリセットは、MGソフトのリスタートと同義である。ステップS2では、電子制御装置10のリスタート履歴があるか否かが判定される。
【0028】
MGソフトのリセット履歴があると判定された場合(ステップS2:No)、この制御ルーチンは終了する。
【0029】
MGソフトのリセット履歴がないと判定された場合(ステップS2:Yes)、車両1の制御装置は、車両1のダイアグが検出されていないか否かを判定する(ステップS3)。ステップS3では、モータジェネレータ5の故障を示す情報が検出されていないか否かが判定される。
【0030】
車両1のダイアグが検出されていないと判定された場合(ステップS3:Yes)、車両1の制御装置は、MGソフトをリセットする(ステップS4)。ステップS4では、MG-ECUである電子制御装置10がリセットされる。言い換えれば、ステップS4では、電子制御装置10がリスタートされる。車両1の制御装置は、IG信号を再びOFFからONにすることによって電子制御装置10をリスタートさせる。電子制御装置10がリセット(リスタート)されることにより、電子制御装置10は再度モータジェネレータ5を起動させる。ステップS4の処理を実施すると、ステップS1にリターンする。
【0031】
車両1のダイアグが検出されていると判定された場合(ステップS3:No)、車両1の制御装置は、MGハードをリセットする(ステップS5)。ステップS5では、ハード的な遮断が実施される。例えば第1リレー21がOFF状態に制御され、かつ第2リレー22がOFF状態に制御される。ステップS5の処理を実施すると、ステップS1にリターンする。
【0032】
以上説明した通り、実施形態によれば、不意なスタートアップエラーや外部要因によりMGシステムが起動せずに発電できない場合には、電子制御装置10をリセットすることにより、モータジェネレータ5を早期に再起動させることができる。
【0033】
なお、車両1は、電子制御装置10とは別の電子制御装置を備えている。例えば、車両1は、エンジン2を制御する電子制御装置(ENG-ECU)や、車両1のシステム全体を統括制御する電子制御装置(HV―ECU)などを備える。
図2に示す制御は、車両1に搭載されたHV-ECUにより実施することが可能である。つまり、MG-ECUである電子制御装置10には、HV-ECUからの指令信号が入力される。HV-ECUはIG信号がONとなる場合に、電子制御装置10に指令信号を出力して電子制御装置10を起動させる。また、HV-ECUは、
図2に示す制御を実施することにより、電子制御装置10をリスタート(リセット)させる。この場合、HV-ECUが第1リレー21および第2リレー22に指令信号を出力して、第1リレー21のON状態とOFF状態との切り替え、および第2リレー22のON状態とOFF状態との切り替えを実施することができる。
【符号の説明】
【0034】
1 車両
2 エンジン(ENG)
3 動力伝達装置(T/M)
4 スタータ
5 モータジェネレータ
6 DCDCコンバータ
7 補機
8 補機バッテリ
9 高圧電池
10 電子制御装置(ECU)
21 第1リレー
22 第2リレー