(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025040990
(43)【公開日】2025-03-26
(54)【発明の名称】調整池および調整池構築方法
(51)【国際特許分類】
E03F 1/00 20060101AFI20250318BHJP
E04H 7/18 20060101ALI20250318BHJP
【FI】
E03F1/00 Z
E04H7/18 301Z
E04H7/18 303
E04H7/18 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023148012
(22)【出願日】2023-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100177644
【弁理士】
【氏名又は名称】児玉 和樹
(72)【発明者】
【氏名】吉井 孝彰
【テーマコード(参考)】
2D063
【Fターム(参考)】
2D063AA01
(57)【要約】
【課題】大型の起重機に頼ることなく適正に構築することができる調整池を提供する。
【解決手段】
雨水を一時的に貯めると共に雨水の流出量を調節する調整池1は、U字状の断面を有し、左右方向(第1方向)に延設される直線水槽部2と、直線水槽部2の左右方向の両端を閉塞する一対の側壁部3と、を備え、直線水槽部2は、前後方向(第2方向)に間隔をあけて設けられる一対の擁壁部10と、一対の擁壁部10の下部を連結する底版部20と、を有し、擁壁部10は、起立面部12の下部から底面部13を突出させてL字状を成す擁壁ブロック11を左右方向に複数並べて連結した構造であり、側壁部3は、平板状を成す側壁ブロック30を上下方向に複数並べて連結した構造であり、一対の擁壁部10の間に架設され、一対の擁壁部10の左右方向の端部に位置する一対の起立面部12と一対の底面部13とに連結される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
雨水を一時的に貯めると共に雨水の流出量を調節する調整池であって、
U字状の断面を有し、第1方向に延設される直線水槽部と、
前記直線水槽部の前記第1方向の両端を閉塞する一対の側壁部と、を備え、
前記直線水槽部は、
前記第1方向に直交する第2方向に間隔をあけて設けられる一対の擁壁部と、
一対の前記擁壁部の下部を連結する底版部と、を有し、
前記擁壁部は、起立面部の下部から底面部を突出させてL字状を成す擁壁ブロックを前記第1方向に複数並べて連結した構造であり、
前記側壁部は、平板状を成す側壁ブロックを上下方向に複数並べて連結した構造であり、一対の前記擁壁部の間に架設され、一対の前記擁壁部の前記第1方向の端部に位置する一対の前記起立面部と一対の前記底面部とに連結されることを特徴とする調整池。
【請求項2】
前記側壁ブロックは、前記第2方向の両側に配置される一対の第1側板と、一対の前記第1側板の間に配置される少なくとも1つの第2側板と、に分割されており、
前記側壁部は、
一対の前記第1側板を上下方向に複数並べて連結された構造で一対の前記擁壁部に連結される一対の第1壁部と、
前記第2側板を上下方向に複数並べて連結された構造で一対の前記第1壁部に連結される少なくとも1つの第2壁部と、を有していることを特徴とする請求項1に記載の調整池。
【請求項3】
雨水を一時的に貯めると共に雨水の流出量を調節する調整池を構築する調整池構築方法であって、
起立面部の下部から底面部を突出させてL字状を成す擁壁ブロックを第1方向に複数並べて連結した擁壁部を、前記第1方向に直交する第2方向に間隔をあけて一対設ける擁壁構築工程と、
平板状を成す側壁ブロックを上下方向に複数並べて連結した側壁部を一対の前記擁壁部の間に架設する側壁構築工程と、
一対の前記擁壁部の間にコンクリートを打設し、一対の前記擁壁部の下部を連結する底版部を構築する底版構築工程と、
前記側壁部を一対の前記擁壁部の前記第1方向の端部に位置する一対の前記起立面部と一対の前記底面部とに連結する側壁連結工程と、を備えていることを特徴とする調整池構築方法。
【請求項4】
前記側壁ブロックは、前記第2方向の両側に配置される一対の第1側板と、一対の前記第1側板の間に配置される少なくとも1つの第2側板と、に分割されており、
前記側壁構築工程では、一対の前記第1側板を上下方向に複数並べて連結した一対の第1壁部が構築され、前記第2側板を上下方向に複数並べて連結した少なくとも1つの第2壁部が構築され、前記第2壁部を一対の前記第1壁部に連結することで前記側壁部が構築され、
前記側壁連結工程では、前記側壁部の一対の前記第1壁部が一対の前記擁壁部に連結されることを特徴とする請求項3に記載の調整池構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雨水を一時的に貯めると共に雨水の流出量を調節する調整池および調整池構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
雨水を一時的に貯水し、適時に放水するための調整池が知られている(特許文献1)。調整池は、調整池予定区域を、角部外周縁ブロックと直線部外周縁ブロックとで囲むようにして構築されている。直線部外周縁ブロックは、底版の一辺に垂直な壁を立設させたL字状とされている。角部外周縁ブロックは、底版の連続する二辺に垂直な壁を立設させた形状とされている。仮に、直線部外周縁ブロックのみで調整池を構築しようとすると、調整池のコーナー部分に配置された2つの直線部外周縁ブロックの底版同士が干渉してしまうという問題がある。そこで、調整池の直線的部分に直線部外周縁ブロックを一列に並べ、調整池のコーナー部分に角部外周縁ブロックを配置することで、上記した底版同士の干渉を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した技術では、角部外周縁ブロックが、直線部外周縁ブロックに比べて、大型化したり重量が増加したりする。このため、例えば、河川に隣接した場所や急傾斜地等、大型の起重機を導入することができない場所では、角部外周縁ブロックを設置予定位置に搬入することができず、調整池を構築することが困難になることがあった。
【0005】
本発明は、上記事情を考慮し、大型の起重機に頼ることなく適正に構築することができる調整池および調整池構築方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、雨水を一時的に貯めると共に雨水の流出量を調節する調整池であって、U字状の断面を有し、第1方向に延設される直線水槽部と、前記直線水槽部の前記第1方向の両端を閉塞する一対の側壁部と、を備え、前記直線水槽部は、前記第1方向に直交する第2方向に間隔をあけて設けられる一対の擁壁部と、一対の前記擁壁部の下部を連結する底版部と、を有し、前記擁壁部は、起立面部の下部から底面部を突出させてL字状を成す擁壁ブロックを前記第1方向に複数並べて連結した構造であり、前記側壁部は、平板状を成す側壁ブロックを上下方向に複数並べて連結した構造であり、一対の前記擁壁部の間に架設され、一対の前記擁壁部の前記第1方向の端部に位置する一対の前記起立面部と一対の前記底面部とに連結される。
【0007】
この場合、前記側壁ブロックは、前記第2方向の両側に配置される一対の第1側板と、一対の前記第1側板の間に配置される少なくとも1つの第2側板と、に分割されており、前記側壁部は、一対の前記第1側板を上下方向に複数並べて連結された構造で一対の前記擁壁部に連結される一対の第1壁部と、前記第2側板を上下方向に複数並べて連結された構造で一対の前記第1壁部に連結される少なくとも1つの第2壁部と、を有しているとよい。
【0008】
本発明は、雨水を一時的に貯めると共に雨水の流出量を調節する調整池を構築する調整池構築方法であって、起立面部の下部から底面部を突出させてL字状を成す擁壁ブロックを第1方向に複数並べて連結した擁壁部を、前記第1方向に直交する第2方向に間隔をあけて一対設ける擁壁構築工程と、平板状を成す側壁ブロックを上下方向に複数並べて連結した側壁部を一対の前記擁壁部の間に架設する側壁構築工程と、一対の前記擁壁部の間にコンクリートを打設し、一対の前記擁壁部の下部を連結する底版部を構築する底版構築工程と、前記側壁部を一対の前記擁壁部の前記第1方向の端部に位置する一対の前記起立面部と一対の前記底面部とに連結する側壁連結工程と、を備えている。
【0009】
この場合、前記側壁ブロックは、前記第2方向の両側に配置される一対の第1側板と、一対の前記第1側板の間に配置される少なくとも1つの第2側板と、に分割されており、前記側壁構築工程では、一対の前記第1側板を上下方向に複数並べて連結した一対の第1壁部が構築され、前記第2側板を上下方向に複数並べて連結した少なくとも1つの第2壁部が構築され、前記第2壁部を一対の前記第1壁部に連結することで前記側壁部が構築され、前記側壁連結工程では、前記側壁部の一対の前記第1壁部が一対の前記擁壁部に連結されるとよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、大型の起重機に頼ることなく調整池を適正に構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る調整池を示す斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る調整池を示す平面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る調整池構築方法を示すフローチャートである。
【
図4】本発明の一実施形態に係る調整池構築方法の擁壁構築工程を説明する断面図(側面図)である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る調整池構築方法の側壁構築工程を説明する斜視図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る調整池の後方の擁壁部を示す正面図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る調整池構築方法の側壁構築工程を説明する断面図(側面図)である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る調整池構築方法の側壁構築工程および底版構築工程を説明する断面図(側面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付の図面を参照しつつ、本発明の一実施形態について説明する。なお、図面に示すFr、Rr、L、R、U、Loは、前、後、左、右、上、下を示している。左右方向(第1方向)、前後方向(第2方向)および上下方向は互いに直交している。本明細書では方向や位置を示す用語を用いるが、それらの用語は説明の便宜のために用いるものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0013】
図1および
図2を参照して、一実施形態に係る調整池1および調整池構築方法について説明する。
図1は調整池1を示す斜視図である。
図2は調整池1を示す平面図である。
【0014】
[調整池]
調整池1は、雨水を一時的に貯めると共に、河川への雨水の流出量を調節し、洪水被害の発生を防止する施設である。
図1に示すように、調整池1は、直線水槽部2と、一対の側壁部3と、を備えている。直線水槽部2は、略U字状の断面を有し、左右方向(第1方向)に延設されている。一対の側壁部3は、直線水槽部2の左右方向の両端を閉塞している。直線水槽部2と一対の側壁部3とで囲まれた範囲が、雨水を貯留するための貯留空間Sとされている。直線水槽部2の左後部の上側には、雨水を貯留空間Sに流入させる流入開口部2Aが設けられ、直線水槽部2の右前部には、雨水を貯留空間Sから流出させる流出枡部2Bが設けられている(
図2参照)。なお、一対の側壁部3は、貯留空間Sを挟んで左右対称となる構造であるため、本明細書では、主に1つの側壁部3について説明する。
【0015】
<直線水槽部>
図1および
図2に示すように、直線水槽部2は、一対の擁壁部10と、底版部20と、を有している。一対の擁壁部10は、前後方向(第2方向)に間隔をあけて設けられている。つまり、一対の擁壁部10は、貯留空間Sを挟んで前後方向に対向している。なお、一対の擁壁部10は、貯留空間Sを挟んで前後対称となる構造であるため、本明細書では、主に1つの擁壁部10について説明する。
【0016】
(擁壁部)
擁壁部10は、複数の擁壁ブロック11を左右方向(第1方向)に並設し且つ連結した構造とされている。擁壁ブロック11は、調整池1の施工現場とは異なる工場で製造された鉄筋コンクリート部材(プレキャストコンクリート)である。擁壁ブロック11は、左右方向の幅が短く、上下方向に細長いブロック状に形成されている(
図1参照)。また、擁壁ブロック11は、起立面部12の下部から底面部13を突出させて略L字状を成している(
図1参照)。図面からは明らかではないが、擁壁ブロック11は、起立面部12の略下側半分と底面部13とを一体成型したL字部分と、起立面部12の略上側半分を構成する平板部分と、に分離している。これら両部分を連結することで擁壁ブロック11が構成される。なお、上記した擁壁部10も、側面(第1方向)から見て略L字状に形成されることになる。一対の擁壁部10が互いに底面部13を向き合わせる姿勢で配置されることで、直線水槽部2が略U字溝状に形成される。
【0017】
(底版部)
底版部20は、一対の擁壁部10の下部を連結し、貯留空間Sの底面を構成している。詳細は後述するが、底版部20は、調整池1の施工現場で、配筋しコンクリートを打設することで構築される。
【0018】
<側壁部>
図1に示すように、側壁部3は、略平板状を成す側壁ブロック30を上下方向に複数並べて連結した構造とされている。側壁ブロック30は、前後方向に長い略長方形を成す平板状に形成されている。また、側壁部3は、複数の側壁ブロック30を一体化することで、略矩形平板状に形成されている。側壁部3は、一対の擁壁部10の間に架設され、一対の擁壁部10の左右方向の端部に位置する一対の起立面部12と一対の底面部13とに連結されている(
図2参照)。調整池1は、略U字溝状を成す直線水槽部2の開口面(左右方向の端面)を、略平板状を成す側壁部3で塞ぐという、簡単な構造とされている。
【0019】
詳細は後述するが、各々の側壁ブロック30は、前後方向の両側に配置される一対の第1側板31と、一対の第1側板31の間に配置される1つの第2側板32と、に分割されている。第1側板31および第2側板32(側壁ブロック30)は、調整池1の施工現場とは異なる工場で製造された鉄筋コンクリート部材(プレキャストコンクリート)である。第1側板31は、上下方向に複数並べて連結されることで、第1壁部33を構成する。第2側板32は、上下方向に複数並べて連結されることで、第2壁部34を構成する。側壁部3は、一対の第1壁部33と1つの第2壁部34とを前後方向(第2方向)に並べて連結した構造とされている。
【0020】
[調整池構築方法]
図1ないし
図8を参照して、調整池1を構築するための調整池構築方法について説明する。
図3は調整池構築方法を示すフローチャートである。
図4は調整池構築方法の擁壁構築工程S1を説明する断面図(側面図)である。
図5は調整池構築方法の側壁構築工程S2を説明する斜視図である。
図6は調整池1の後方の擁壁部10を示す正面図である。
図7は調整池構築方法の側壁構築工程S2を説明する断面図(側面図)である。
図8は調整池構築方法の側壁構築工程S2および底版構築工程S3を説明する断面図(側面図)である。
【0021】
図3に示すように、調整池構築方法は、擁壁構築工程S1と、側壁構築工程S2と、底版構築工程S3と、側壁連結工程S4と、を備えている。なお、調整池1は、例えば、河川に隣接した場所や急傾斜地等、大型のクレーン(起重機)を導入することができない場所に構築されるものとする。そのため、調整池構築方法には、小型のクレーン(図示せず)が使用されるものとする。
【0022】
<擁壁構築工程>
図4に示すように、擁壁構築工程S1では、一対の擁壁部10が前後方向(第2方向)に間隔をあけて設けられる。具体的には、複数の擁壁ブロック11が、クレーンを用いて、一対の擁壁部10の設置予定位置に搬入される。複数の擁壁ブロック11は、左右方向に並設され、複数の擁壁緊張材14を介して連結される(
図2参照)。擁壁緊張材14は、例えば、PC(Prestressed Concrete)鋼材である。複数の擁壁ブロック11の一部(複数)には、擁壁緊張材14に付加した緊張力(引張応力)を保持する複数の擁壁定着具15が設けられている(
図2参照)。複数の擁壁ブロック11が一体化されることで、擁壁部10が構築される。一対の擁壁部10は、底版部20の設置予定位置を挟んで、各擁壁ブロック11の底面部13を互いに向き合わせる姿勢で設けられる(
図1および
図2参照)。なお、隣接する擁壁ブロック11の間には僅かな(例えば5mm程度)隙間が形成されており、その隙間には、止水材(図示せず)が貼付されている。
【0023】
なお、擁壁ブロック11を小型のクレーンで運搬することを考慮し、底版部20との接続用の鉄筋は、擁壁ブロック11の底面部13の先端面から突き出していない。擁壁ブロック11の底面部13には、底版接続用鉄筋16を螺合させるネジ部(図示せず)が埋設されている。
図4に示すように、底面部13のネジ部に螺合した底版接続用鉄筋16は、例えば、トルク固定方式の継手22を介して底版部20を構築するため配設された底版鉄筋21に接続される。
【0024】
<側壁構築工程>
次に、側壁構築工程S2では、各々の側壁部3が、一対の擁壁部10の左右方向の端部において、一対の擁壁部10の間に架設される。
図5に示すように、各々の側壁部3は、一対の第1壁部33と第2壁部34とを含んでいる。一対の第1壁部33は、一対の第1側板31を上下方向に複数並べて連結することで構築され、第2壁部34は、第2側板32を上下方向に複数並べて連結することで構築される。第1壁部33および第2壁部34は、クレーンで運搬する前に、調整池1の施工現場とは異なる作業場で組み立てられる。第1壁部33を構成する複数の第1側板31は、上下方向に並設(積層)され、複数の第1側板31に略鉛直姿勢で埋設された鉄筋35は、例えば、モルタル充填方式の継手36を介して接続される(
図7参照)。これと同様に、第2壁部34を構成する複数の第2側板32は、上下方向に並設(積層)され、それらの鉄筋35は、例えば、モルタル充填方式の継手36を介して接続される(
図7参照)。
【0025】
次に、一対の第1壁部33および第2壁部34が、クレーンを用いて、側壁部3の設置予定位置に搬入される。
図5に示すように、一対の第1壁部33は、一対の擁壁部10の左右方向の端面に対向する位置に配置され、第2壁部34は、一対の第1壁部33の間に隙間を開けて配置される。
【0026】
次に、第2壁部34が、一対の第1壁部33に連結される。
図7に示すように、一対の第1壁部33には、第2壁部34に対向する内端面から第2壁部34に向けて複数の側壁鉄筋40が突き出している。第2壁部34には、前後両端面から一対の第1壁部33に向けて複数の側壁鉄筋40が突き出している。隣り合う第1壁部33と第2壁部34との側壁鉄筋40同士は、例えば、モルタル充填方式の継手41を介して接続される。その後、一対の第1壁部33と第2壁部34との間に、複数の鉄筋42を鉛直方向に配設し、コンクリートを打設することで一対の接続壁部43が構築される(
図8参照)。なお、一対の第1側板31と第2側板32とは、接続壁部43で接続されて、1つの側壁ブロック30を構成すると捉えてもよい。そして、側壁ブロック30を上下方向に複数並べて連結することで側壁部3が構築されると捉えてもよい。
【0027】
以上のように、側壁構築工程S2では、一対の第1壁部33と第2壁部34とを一対の接続壁部43を挟んで前後方向(第2方向)に並べて連結(一体化)することで、1枚の平板状の側壁部3が構築される(
図1および
図8参照)。
【0028】
<底版構築工程>
次に、
図1および
図8に示すように、底版構築工程S3では、一対の擁壁部10の間にコンクリートを打設することで、一対の擁壁部10の下部を連結する底版部20が構築される。正確には、コンクリートは、一対の擁壁部10と一対の側壁部3とで囲まれる範囲に打設される。底版部20は、各擁壁ブロック11の底面部13と略同一高さとなるように構築される。
【0029】
<側壁連結工程>
次に、側壁連結工程S4では、各々の側壁部3(一対の第1壁部33(第1側板31))が、一対の擁壁部10の左右方向(第1方向)の端部に位置する一対の起立面部12と一対の底面部13とに連結される。具体的には、
図6に示すように、一対の第1壁部33は、複数の側壁緊張材37を介して一対の擁壁部10の左右方向の端部に位置する一対の起立面部12と一対の底面部13とに連結される。側壁緊張材37は、例えばPC鋼材であり、側壁緊張材37の端部には、緊張力(引張応力)を保持する側壁定着具38が設けられている。一対の側壁部3は、一対の擁壁部10の左右方向の両端において、前後方向の両側(一対の起立面部12)と下部(一対の底面部13)との三辺で固定された状態になる。なお、擁壁ブロック11(底面部13)と同様に、最下部の側壁ブロック30(第1側板31、第2側板32)に、底版接続用鉄筋16が接続され、トルク固定方式の継手22を介して底版部20の底版鉄筋21に接続されてもよい(図示せず)。
【0030】
以上によって、調整池構築方法の全工程が終了し、調整池1が完成する(
図1参照)。なお、以上説明した調整池構築方法は一例に過ぎず、例えば、側壁構築工程S2に先立って底版構築工程S3を実施したり、底版構築工程S3に先立って側壁連結工程S4を実施したりする等、その順序(手順)は技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更されてもよい。
【0031】
以上説明した本実施形態に係る調整池1(調整池構築方法)では、側壁部3が、複数に分割された側壁ブロック30を積み重ねるようにして構成され、全体的にU字状に形成された直線水槽部2の左右方向(第1方向)の端面を閉塞する構成とした。この構成によれば、側壁ブロック30を小型かつ軽量に構成することが可能になるため、例えば、小型のクレーン(起重機)であっても、側壁ブロック30を容易に設置予定位置に搬入することができる。これにより、大型のクレーン(起重機)に頼る必要が無くなるため、例えば、河川に隣接した場所や急傾斜地等、大型の起重機を導入することができない場所であっても、適正に調整池1を構築することができる。また、複数の側壁ブロック30が一体となって1枚の平板状の側壁部3を構成するため、調整池1のコーナー部分において、側壁部3と擁壁ブロック11の底面部13との干渉を防止することができる。
【0032】
また、本実施形態に係る調整池1(調整池構築方法)によれば、各々の側壁ブロック30が一対の第1側板31と第2側板32とに分割されているため、更に側壁ブロック30(各側板31,32)を設置予定位置に搬入することが容易になる。
【0033】
なお、本実施形態に係る調整池1では、側壁ブロック30が1つの第2側板32を含んでいたが、本発明はこれに限定されない。例えば、側壁ブロック30には、2つ以上の第2側板32が含まれてもよい(図示せず)。つまり、側壁部3には、2つ以上の第2壁部34が含まれてもよい(図示せず)。また、側壁ブロック30が第1側板31と第2側板32とに分割されていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、小型のクレーンで運搬可能なのであれば、側壁ブロック30は、前後方向に分割されず、1枚の平板状に形成されてもよい(図示せず)
【0034】
また、本実施形態に係る調整池構築方法では、擁壁部10が、設置予定位置(調整池1の施工現場)で組み立てられていたが、これに限らず、調整池1の施工現場とは異なる作業場で事前に組み立てられた後、クレーンで運搬されてもよい。また、第1壁部33および第2壁部34が、事前に組み立てられた後にクレーンで運搬されていたが、これに限らず、調整池1の施工現場で組み立てられてもよい。
【0035】
なお、上記実施形態の説明は、本発明に係る調整池および調整池構築方法における一態様を示すものであって、本発明の技術範囲は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明は技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよく、特許請求の範囲は技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様を含んでいる。
【符号の説明】
【0036】
1 調整池
2 直線水槽部
3 側壁部
10 擁壁部
11 擁壁ブロック
12 起立面部
13 底面部
20 底版部
30 側壁ブロック
31 第1側板
32 第2側板
33 第1壁部
34 第2壁部
S1 擁壁構築工程
S2 側壁構築工程
S3 底版構築工程
S4 側壁連結工程