(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025040992
(43)【公開日】2025-03-26
(54)【発明の名称】2次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/658 20140101AFI20250318BHJP
H01M 50/489 20210101ALI20250318BHJP
H01M 50/474 20210101ALI20250318BHJP
H01M 50/486 20210101ALI20250318BHJP
H01M 50/483 20210101ALI20250318BHJP
H01M 50/202 20210101ALI20250318BHJP
H01M 50/477 20210101ALI20250318BHJP
H01M 50/209 20210101ALI20250318BHJP
H01M 50/204 20210101ALI20250318BHJP
H01M 10/6561 20140101ALI20250318BHJP
H01M 10/6567 20140101ALI20250318BHJP
H01M 10/647 20140101ALI20250318BHJP
H01M 50/103 20210101ALI20250318BHJP
H01M 50/121 20210101ALI20250318BHJP
H01M 50/122 20210101ALI20250318BHJP
D01F 1/10 20060101ALI20250318BHJP
D01F 6/94 20060101ALI20250318BHJP
D04H 3/16 20060101ALI20250318BHJP
D04H 1/728 20120101ALI20250318BHJP
【FI】
H01M10/658
H01M50/489
H01M50/474
H01M50/486
H01M50/483
H01M50/202 401H
H01M50/477
H01M50/209
H01M50/204 401H
H01M10/6561
H01M10/6567
H01M10/647
H01M50/103
H01M50/121
H01M50/122
D01F1/10
D01F6/94 A
D04H3/16
D04H1/728
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023148019
(22)【出願日】2023-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】000108498
【氏名又は名称】タイガースポリマー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】島 嗣典
(72)【発明者】
【氏名】江草 史典
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 由紀乃
【テーマコード(参考)】
4L035
4L047
5H011
5H021
5H031
5H040
【Fターム(参考)】
4L035AA04
4L035BB02
4L035BB79
4L035FF05
4L035JJ01
4L035MH00
4L047AA25
4L047AA29
4L047AB02
4L047AB03
4L047AB07
4L047AB08
4L047BA08
4L047BA09
4L047CB06
4L047CB08
4L047CC14
5H011AA13
5H011BB04
5H021AA02
5H021CC02
5H021CC18
5H021EE02
5H021EE21
5H021HH03
5H021HH10
5H031AA08
5H031AA09
5H031CC02
5H031EE03
5H031EE04
5H031HH09
5H031KK02
5H040AA28
5H040AA37
5H040AS04
5H040AS07
5H040AT02
5H040AT06
5H040AY06
5H040LL04
5H040LL06
5H040NN01
5H040NN03
(57)【要約】
【課題】 通常運転時における電池の冷却性と、耐類焼性能とを両立できる2次電池を提供する
【解決手段】 2次電池10では、電極体11が電解質とともに容器12内に封入されている。電極体11もしくは容器12の外周は、不織布1で覆われている。前記不織布1は気体もしくは液体が通過可能である。前記不織布1は、熱膨張性を有する機能性粒子4,4を担持していて、加熱により機能性粒子4,4が膨張して不織布1の断熱性が向上する。機能性粒子は、例えば亜リン酸水素アルミニウムの粒子である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極体が電解質とともに容器内に封入された2次電池であって、
電極体もしくは容器の外周は、不織布で覆われており、
前記不織布は気体もしくは液体が通過可能であるとともに、
前記不織布は熱膨張性を有する機能性粒子を担持していて、加熱により機能性粒子が膨張して不織布の断熱性が向上する、
2次電池。
【請求項2】
前記不織布は、
前記機能性粒子が一体化された合成樹脂製の長繊維を含み、
前記長繊維は、複数の大径部と小径部とを交互に並べて数珠つなぎにしたように、繊維の長手方向に径が変化しており、
前記小径部は、前記合成樹脂により形成されたモノフィラメントであり、
前記大径部には、前記機能性粒子が含まれている、
請求項1に記載の2次電池。
【請求項3】
前記長繊維の前記小径部の繊維径は、前記大径部に含まれる前記機能性粒子の直径以下であり、
前記機能性粒子は、膜状もしくは網状もしくは繊維の束状になった前記合成樹脂によって包まれて、または、前記合成樹脂により接着されて、前記大径部に一体化されている、
請求項2に記載の2次電池。
【請求項4】
前記機能性粒子が亜リン酸水素アルミニウムの粒子である
請求項1に記載の2次電池。
【請求項5】
前記小径部の繊維径が、100ナノメートル以上10マイクロメートル以下であり、前記機能性粒子の直径が300ナノメートル以上200マイクロメートル以下である、
請求項2に記載の2次電池。
【請求項6】
前記不織布が袋状である、
請求項1に記載の2次電池。
【請求項7】
請求項1に記載の2次電池を、複数個、電気的に接続し一体化した組電池であって、
前記2次電池は平板状の2次電池であり、
複数の2次電池が積層されている、
組電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2次電池、および、複数の2次電池が組み合わされた組電池に関する。
【背景技術】
【0002】
充電および放電が可能な2次電池は、電気自動車や家電製品、携帯電話等、多彩な用途に使用されている。2次電池は、正極と負極がセパレータを介して積層され、捲回された電極体が、電解質とともに容器内に封入されたものが一般的である。また、自動車等の用途では、こうした2次電池を複数個、電気的に接続し一体化し、組電池として使用することが一般的である。
【0003】
2次電池の使用、特に、電気自動車のような大容量大出力の2次電池の使用においては、電池温度を適切に保つための熱マネジメントが必要である。
例えば、組電池においては、2次電池の1つが何らかの異常により発火して高温となった場合であっても、隣接する2次電池が類焼しないことが求められる(耐類焼性)。特許文献1には、電極体の周囲を、特定の伝熱特性を備える積層シート材料で包んだ2次電池が開示されており、当該2次電池によれば、良好な耐類焼性が得られることが開示されている。
また、電池の通常運転時において、2次電池は充放電に伴い発熱するため、特に大容量大出力の2次電池においては、空冷や液冷等の手段により、2次電池を冷却する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
2次電池の熱マネジメントを適切に行うことはたやすいことではない。組電池の類焼を防止するとの観点からは、2次電池どうしを適切に断熱することすなわち電池の断熱が必要となる一方で、2次電池を良く冷却するためには、むしろ電池を断熱せずに熱伝導性を高めたいという、断熱に関するトレードオフが存在するためである。
【0006】
本発明の目的は、通常運転時における電池の冷却性と、耐類焼性能とを両立できる2次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者は、鋭意検討の結果、2次電池の電極体や容器を、流体が通過可能な不織布で覆うとともに、当該不織布に熱膨張性を有する機能性粒子を担持させて、加熱により機能性粒子が膨張して不織布の断熱性が向上するようにすれば、2次電池の冷却性と耐類焼性を両立できることを知見し、本発明を完成させた。
【0008】
本発明は、電極体が電解質とともに容器内に封入された2次電池であって、電極体もしくは容器の外周は、不織布で覆われており、前記不織布は気体もしくは液体が通過可能であるとともに、前記不織布は熱膨張性を有する機能性粒子を担持していて、加熱により機能性粒子が膨張して不織布の断熱性が向上する、2次電池である(第1発明)。
【0009】
第1発明において、好ましくは、前記不織布は、前記機能性粒子が一体化された合成樹脂製の長繊維を含み、前記長繊維は、複数の大径部と小径部とを交互に並べて数珠つなぎにしたように、繊維の長手方向に径が変化しており、前記小径部は、前記合成樹脂により形成されたモノフィラメントであり、前記大径部には、前記機能性粒子が含まれている(第2発明)。さらに、第2発明において、好ましくは、前記長繊維の前記小径部の繊維径は、前記大径部に含まれる前記機能性粒子の直径以下であり、前記機能性粒子は、膜状もしくは網状もしくは繊維の束状になった前記合成樹脂によって包まれて、または、前記合成樹脂により接着されて、前記大径部に一体化されている。
(第3発明)。
【0010】
また、第1発明において、好ましくは、前記機能性粒子が亜リン酸水素アルミニウムの粒子である(第4発明)。また、第2発明において、好ましくは、前記小径部の繊維径が、100ナノメートル以上10マイクロメートル以下であり、前記機能性粒子の直径が300ナノメートル以上200マイクロメートル以下である(第5発明)。
また、第1発明において、好ましくは、前記不織布が袋状である(第6発明)。
【0011】
また、本発明は、第1発明の2次電池を、複数個、電気的に接続し一体化した組電池であって、前記2次電池は平板状の2次電池であり、複数の2次電池が積層されている(第7発明)。
【発明の効果】
【0012】
本発明の2次電池(第1発明)や本発明の組電池(第7発明)によれば、電池の通常運転時は冷却性に優れる一方で、発火等の異常発熱が生じた場合には、加熱により機能性粒子が膨張して不織布の断熱性が向上し、類焼を抑制できるという効果が得られる。すなわち、冷却性と耐類焼性を両立できる。
【0013】
さらに、第2発明のようにした場合には、多量の機能性粒子を不織布に担持させることができ、耐類焼性がより高められる。また、機能性粒子が不織布から脱落しにくくなって、周囲を汚染しにくくなる。
さらに、第3発明のようにした場合には、機能性粒子の熱膨張が速やかに起こるようになって、耐類焼性がより高められる。
さらに、第4発明のようにした場合には、不織布が、膨張した機能性粒子によって耐火性かつ絶縁性の層に変化し、耐類焼性がより高められる。
さらに、第5発明のようにした場合には、機能性粒子の熱膨張が速やかに起こるようになって、耐類焼性がより高められる。
さらに、第6発明のようにした場合には、2次電池や電極体を不織布で効果的に覆うことができ、組立がしやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態の2次電池の外観を示す斜視図である。
【
図2】第1実施形態の2次電池の構造を示すX-X断面図である。
【
図3】第1実施形態の2次電池が積層された組電池の構造を示す模式図である。
【
図4】第2実施形態の2次電池の構造を示す断面図である。
【
図5】第1実施形態の2次電池に使用される不織布の構造を示す模式図である。
【
図6】長繊維の大径部及び小径部の構造を示す模式図である。
【
図7】不織布の実施例の構造を示す顕微鏡写真である。
【
図8】不織布の実施例2の構造を示す顕微鏡写真である。
【
図9】不織布の実施例3の構造を示す顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下図面を参照しながら、電気自動車において組電池の形態で使用される2次電池を例として、発明の実施形態について説明する。発明は以下に示す個別の実施形態に限定されるものではなく、その形態を変更して実施することもできる。
【0016】
図1,
図2には、第1実施形態の2次電池10の外観および構造を示す。
図2は、
図1のX-X断面における断面図である。
図3には、2次電池10,10を積層した構造の組電池20の構造を模式的に示す。
図3は
図2と同じ方向から見て描かれている。
【0017】
図1、
図2に示すように、2次電池10は、電極体11が電解質(図示せず)とともに容器12内に封入されて構成されている。電極体11が一つの発電単位となっている。本実施形態のように、容器12内に1つの電極体11が収容されていてもよいが、容器12内に複数の電極体11,11が収容されていてもよい。2次電池10は、後述する組電池との対比で、単電池や電池素子と呼ばれることもある。2次電池10の形状は特に限定されず、円柱状であってもよいが、好ましくは、本実施形態のように平板状である。平板状の2次電池は角電池と呼ばれることもある。
【0018】
図3に示すように、本実施形態の組電池20は、複数の上記2次電池10,10を電気的に接続し、互いに一体化して構成されている。組電池20は、複数の平板状2次電池10,10が積層されて構成されている。必須ではないが、典型的には、バスバー23により、個々の2次電池の正極部材13や負極部材14が接続されて電気的接続がなされる。また、必須ではないが、典型的には、個々の2次電池10,10の間に波板状のスペーサ21,21が挟まれて、2次電池の間の所定の間隔の空間が生まれ、この空間に冷却風を流して2次電池を運転する際の冷却が行われる。また、必須ではないが、典型的には、これら2次電池10,10やスペーサ21,21の積層構造を挟み込むようにエンドプレート22,22が設けられて、エンドプレート22,22をボルトやバンド等の締結部材で締め付けることにより、組電池20の積層構造が維持される。バスバー23やエンドプレート22、スペーサ21には、適宜、公知の部材が利用できる。
【0019】
組電池20は、バッテリーケース(図示せず)などに納められて、ハイブリッド自動車等の車両等に搭載されて使用されうる。この際、典型的には、バッテリーケース等を利用して、組電池20を冷却するための冷却風がスペーサ21,21の部分の空間に送られて、個々の2次電池10,10が冷却される。なお、電池を冷却する手段は冷却風を用いる空冷式に限定されるものではなく、冷却液を用いた液冷式であってもよい。
【0020】
本実施形態の2次電池10について、より詳細に説明する。
本実施形態の2次電池10における、電極体11、電解質、容器12,正極部材13,負極部材14としては、公知の物が適宜使用できる。これら部材は、公知の方法によって2次電池10へと組み立てられうる。
【0021】
電極体11は、正極とセパレータと負極を備える。正極とセパレータと負極は、シート状である。正極と負極の間にセパレータが挟まれるように積層配置されて、積層された状態で捲回されて、電極体11となっている。本実施形態では、扁平状(平板状)の電極体となっている。
【0022】
正極、負極、およびセパレータには、適宜、公知の物が使用できる。
正極は導電性であって、正極活物質(例えばリチウム遷移金属複合酸化物)を含む。負極は導電性であって、負極活物質(例えば黒鉛)を含む。セパレータは、多孔質樹脂フィルムであってもよい。
【0023】
電解質も公知の電解質の中から適宜選択できる。電解質は、非水溶媒(例えばエチレンカーボネート)と電解質塩(例えば無機リチウム塩)を含む非水電解液であってもよい。
【0024】
容器12は、電極体11と電解質を封入できるものであれば特に限定されない。容器12は樹脂製であってもよく、金属製であってもよい。
【0025】
電極体11の正極は、正極部材13に接続され、正極部材13は容器12の外に露出している。電極体11の負極は、負極部材14に接続され、負極部材14は容器12の外に露出している。正極部材13と負極部材14とが、2次電池10の外部端子となり、バスバー23などに電気的に接続される。
【0026】
本実施形態の2次電池10では、電極体11の外周が、不織布1で覆われている。好ましくは、本実施形態のように、不織布1が袋状にされて、袋の中に電極体11が収容される。本実施形態では、電極体11の外周面が不織布1に覆われた状態で、電極体11と不織布1が容器12に収容されている。
【0027】
2次電池10の熱マネジメントを好ましく行うために、電極体11と不織布1が密着し、不織布1と容器12が密着することが好ましい。また、必須ではないが、電極体11が扁平な平板状である場合には、電極体11の広い面の両面が、すなわち電極体11を板と見立てた時の板の表の面と裏の面が、ともに、不織布1で覆われることが好ましい。
【0028】
なお、2次電池は、
図4に示される第2実施形態の2次電池30のように、容器12の外周が不織布1で覆われたものであってもよい。第2実施形態の2次電池30のように、不織布1は、平板状の容器12の広い面の両面に、すなわち電極体11を板と見立てた時の板の表の面と裏の面の両面に、貼り付けられていてもよい。
【0029】
また、平板状の2次電池10,10が積層されて組電池20にされる場合には、不織布1は、互いに隣接する2次電池の電極体11,11の間を間仕切りするように配置され、類焼抑制に貢献する。好ましくは、隣接する電極体11,11の対向する面の全体を覆うように、不織布1が配置される。また、好ましくは、隣接する2次電池の両方に、不織布1が配置される。一方の2次電池には不織布1が配置され、他方の2次電池には不織布1が配置されていなくてもよい。
【0030】
なお、不織布1が電極体11や容器12の外周を覆う程度については、不織布1が電極体11や容器12の外周を完全に覆う必要はない。耐類焼性が向上するように、組電池で2次電池同士が隣接する部分の少なくとも一部が、不織布1によっておおわれればよい。
2次電池や電極体が平板状である場合には、2次電池や電極体を板に見立てた際の表や裏の少なくとも一方の面の全体が、不織布1でおおわれていることが好ましく、両面が不織布1で覆われていることが特に好ましい。
2次電池や電極体が円柱状である場合には、円柱の側面部分に不織布1が巻き付けられて、側面部分の全体が不織布1でおおわれていることが好ましい。
【0031】
不織布1について、以下、詳細に説明する。
不織布1は、気体もしくは液体が通過可能である。例えば、本実施形態のように、容器内に不織布1が配置される場合には、不織布1は電解質液が通過可能なように構成される。容器の外に不織布1が配置される場合には、不織布1は冷却空気もしくは冷却液が通過可能なように構成される。
【0032】
また、不織布1は、熱膨張性を有する機能性粒子4、4を担持している。熱膨張性を有する機能性粒子4,4は、加熱されると膨張し、不織布1の断熱性が向上する。機能性粒子4,4が膨張を開始する膨張開始温度は、2次電池10の通常運転時の温度よりも高くされ、2次電池が通常の運転を行っている際には、機能性粒子4,4は膨張せず、2次電池が異常加熱したり火災が発生するなどして、不織布1が高温にさらされた際に膨張するように設定される。例えば、熱膨張性を有する機能性粒子4、4の膨張開始温度の好ましい範囲は、250℃~400℃に設定されうる。
【0033】
熱膨張性を有する機能性粒子4,4として、熱膨張性黒鉛や亜リン酸アルミニウムなどが例示される。機能性粒子4,4は、高温にさらされても溶融したりせずに、所定の時間にわたって耐火断熱層として機能を維持するような無機粒子であることが好ましい。
【0034】
2次電池10に使用される不織布1が熱膨張性の機能性粒子4、4を担持する形態は特に限定されず、機能性粒子をバインダ等により不織布を構成する繊維に担持させてもよい。
好ましくは、
図5に示した実施形態の不織布1のように、熱膨張性の機能性粒子4、4が、合成樹脂製の長繊維に一体化されるように、担持される。このような形態で一体化されると、機能性粒子が脱落しにくくなるとともに、機能性粒子を大量に担持させても、空気や液体が不織布を通過しやすい。
以下、
図5に示した実施形態の不織布1の構造を詳細に説明する。
【0035】
図5に示した実施形態の不織布1は、熱膨張性を有する機能性粒子4,4が一体化された合成樹脂製の長繊維を含む不織布である。ここで長繊維とは、不織布を構成する繊維における短繊維と対比される長い繊維のことである。長繊維はフィラメント・ヤーンとも呼ばれる。短繊維がステープル・ファイバーなどと呼ばれ、その長さがおおむね数mmから数十cmであるのに対し、長繊維は、短くカットされていない繊維である。長繊維は、典型的にはメルトブロー法やエレクトロスピニング法やスパンボンド法により紡糸されて、そのまま積み重ねられて不織布化される、なお、不織布1は、長繊維のみで構成される必要はなく、短繊維を含んでいてもよく、長繊維と短繊維とが絡み合うように混紡されていてもよい。
【0036】
必須ではないが、好ましくは、不織布1に対する機能性粒子4,4の配合量は、10~500g/平方メートル程度である。
【0037】
また、不織布は、単層であってもよいが、複数の不織布層やフィルム、シート、織布等が積層された積層不織布であってもよい。また、不織布は、織布やメッシュ素材の上に長繊維が不織布化された層が積層された複合不織布であってもよい。機能性粒子4,4が一体化された合成樹脂製の長繊維は、いずれかの不織布層のみに含まれていてもよい。
【0038】
また、不織布1に含まれる長繊維のすべてが、機能性粒子が一体化された合成樹脂製の長繊維であってもよいが、不織布1は、他の長繊維、例えば、機能性粒子が一体化されていない長繊維を含んでいてもよい。
必須ではないが、本実施形態の不織布1は、機能性粒子が一体化された合成樹脂製の長繊維をエレクトロスピニング法により不織布化した、単層の不織布である。
【0039】
図5に、第1実施形態の電池に使用されうる不織布1の構造を模式的に示す。また、
図7は
図5の実施形態の不織布の実施例の顕微鏡写真である。なお、
図5では、小径部3,3を一本の実線で表現している。
不織布1に含まれる長繊維は、複数の大径部2,2と小径部3,3とが交互に並ぶよう、繊維の長手方向に径が変化している。いわば、長繊維は大径部2,2と小径部3,3とが数珠つなぎになったような構成をした繊維である。すなわち、長繊維は、繊維の長手方向に径が変化している。
【0040】
長繊維の小径部3,3は、前記合成樹脂により形成されたモノフィラメントである。合成樹脂は繊維化できるものであれば特に限定されないが、メルトブロー法やエレクトロスピニング法による長繊維の製造に適した合成樹脂であることが好ましい。また、合成樹脂は、後述する機能性粒子に接着するような樹脂であることが好ましい。好ましくは、長繊維の原料となる合成樹脂としては、例えば、ポリウレタン樹脂や塩化ビニル樹脂などが使用できる。
【0041】
小径部3,3となるモノフィラメントは、前記した合成樹脂のみで構成されていてもよいが、他の配合材料、例えば、強化材や増量材などの小径部の直径よりも径が小さい粒子や、合成樹脂の特性を改善する薬剤等を含んでいてもよい。
【0042】
必須ではないが、小径部3,3の繊維径は、好ましくは、100ナノメートル以上10マイクロメートル以下である。小径部3,3の繊維径は、特に好ましくは、500ナノメートル以上3マイクロメートル以下である。ここで、繊維径とは、繊維の延在方向に直交する方向に測った繊維の直径のことであり、不織布1の顕微鏡写真を撮影し、写真上で小径部の繊維径を測定して求める。好ましくは、10か所ないし20か所の小径部で繊維径を測定し、それらを平均したものを小径部の繊維径として扱う。
【0043】
大径部2,2には、熱膨張性の機能性粒子4,4が含まれている。必須ではないが、大径部2,2の少なくとも一部は、機能性粒子4,4の複数が、前記合成樹脂により、ひも状もしくは団子状に固められて形成されている。ここで、ひも状とは、大径部の形状に関し、繊維の延在方向の長さが繊維の延在方向に直交する方向の長さよりも大きい、好ましくは3倍以上であることを意味する。また、団子状とは、大径部の形状に関し、繊維の延在方向の長さが繊維の延在方向に直交する方向の長さと同程度、好ましくは1/2以上2倍以下であることを意味する。なお、長繊維には、機能性粒子を含まない大径部や機能性粒子1つのみを含む大径部が存在していてもよい。
【0044】
大径部2,2の径は、小径部3,3の繊維径よりも大きい。大径部の径とは、繊維の延在方向に直交する方向で測った直径のことである。好ましくは、10か所ないし20か所の大径部で直径を測定し、それらを平均したものを大径部の径として扱う。必須ではないが、好ましくは、大径部2,2の径は150ナノメートル以上300マイクロメートル以下である。特に好ましくは、大径部2,2の径は1マイクロメートル以上50マイクロメートル以下である。また、好ましくは、大径部2,2の径は、小径部3,3の繊維径の3倍~20倍であり、特に好ましくは、4倍から10倍である。
【0045】
図6に長繊維における大径部2,2及び小径部3,3の構造を模式的に示す。大径部2には、複数の熱膨張性の機能性粒子4,4が含まれている。図示した形態において、これら機能性粒子4,4は、小径部を構成する合成樹脂と同じ合成樹脂により包まれて、あるいは接着されて、ひも状もしくは団子状に固められている。大径部2,2では、合成樹脂によって機能性粒子4,4が互いに接着されていてもよいし、あるいは、フィルム状もしくは網状となった合成樹脂によって機能性粒子4,4が包まれていてもよい。大径部2,2では、繊維の径方向に機能性粒子が1つだけ存在していてもよいが、繊維の径方向に機能性粒子が複数存在していてもよい。大径部2,2の端部では、大径部に含まれる合成樹脂がそのまま小径部3,3のモノフィラメントになっていくよう、大径部2と小径部3とが連続している。
【0046】
大径部2,2に含まれる機能性粒子4,4は、熱膨張性を有する。すなわち、本実施形態の不織布1では、熱膨張性を有する粒子が機能性粒子として使用されている。熱膨張性を有する粒子としては、例えば、熱膨張性マイクロカプセルや熱膨張性黒鉛や亜リン酸アルミニウムなどが例示される。熱膨張性を有する亜リン酸アルミニウムの粒子として、例えば、太平化学産業株式会社の「APA-100」等が例示される。亜リン酸アルミニウム粒子の中でも、特に、亜リン酸水素アルミニウム粒子(太平化学産業株式会社の「NSF」等)が好ましく使用できる。これら粒子は、所定の温度に熱せられると膨張する性質を有している。大径部2,2に熱膨張性を有する粒子を含ませると、不織布が熱せられた際に、大径部2,2が膨張して不織布の空隙部を小さく、狭くするよう変化し、不織布の通気性が小さくなる変化が生じる。また、機能性粒子4,4が膨張することにより、粒子自体が発泡した中空構造となって熱を通しにくくなり、不織布1の断熱性が向上する。
【0047】
好ましくは、小径部3,3の繊維径Dsは、大径部2,2に含まれる前記機能性粒子4,4の直径Dp以下である。小径部3,3の繊維径Dsと前記機能性粒子4,4の直径Dpが、実質的に同じであってもよい。なお、本発明における前記機能性粒子4,4の直径Dpとは、体積平均径のことである。大径部に含まれる前記機能性粒子4,4の直径Dpは、典型的には、300ナノメートル以上200マイクロメートル以下である。また、必須ではないが、好ましくは、小径部3,3の繊維径Dsが、前記機能性粒子4,4の直径Dpの1/100以上である。
【0048】
上記実施形態の不織布1の製造方法の例を説明する。上記不織布1は、メルトブロー法もしくはエレクトロスピニング法を応用して製造することができる。
【0049】
まず、第1の工程として、液状化させた合成樹脂と熱膨張性の機能性粒子が混合される。合成樹脂は、加熱して溶融させることにより、もしくは溶剤により溶解することにより、液状化される。液状化した合成樹脂中に機能性粒子4,4が混合され、分散させられる。機能性粒子をあらかじめ合成樹脂に練りこんでおいて、それを加熱し溶融させて、機能性粒子が分散した液状の合成樹脂を得てもよいし、合成樹脂を溶剤等によって溶解させて液状化してから機能性粒子を混合し分散させてもよい。
【0050】
本実施形態においては、ポリウレタン樹脂を溶剤によって溶解して液状化し、そこに機能性粒子4,4として亜リン酸水素アルミニウムの粉末(太平化学産業株式会社製、NSF、体積平均径5マイクロメートル)を混合し、攪拌して分散させた。
【0051】
次に、第2の工程として、第1の工程に引き続き、前記機能性粒子4,4が分散した液状の合成樹脂を、メルトブロー法もしくはエレクトロスピニング法により紡糸して長繊維としながら、堆積させて不織布とする。
【0052】
紡糸ノズルから送り出された液状の合成樹脂は、遠心力や重力、静電気力等によって引き延ばされて細い繊維状になる。この細い繊維が、上記長繊維の小径部3,3となる。この時、機能性粒子4,4が液状の合成樹脂とともにノズルから送り出されると、機能性粒子4,4が集まった部分は、ひも状もしくは団子状に固まって大径部2,2となりつつ、余剰の合成樹脂が引き延ばされて小径部3,3ができていき、大径部2,2と小径部3,3が交互に数珠つなぎとなった長繊維が連続してできる。できた長繊維は、溶剤が揮発したり温度が下がったりして固化しながら、紡糸装置の基台上に堆積して、不織布1が製造される。
【0053】
(実施例)
実施例では、亜リン酸水素アルミニウムである「NSF」(平均粒子径5マイクロメートル)を機能性粒子として用いて、大径部2,2の直径がおよそ2~10マイクロメートル(平均径6マイクロメートル)で、小径部3,3の直径がおよそ0.5~1.5マイクロメートル(平均径0.9マイクロメートル)であるような不織布1が得られた。得られた不織布1に対する機能性粒子4,4の配合量は、おおむね100g/平方メートルであった。長繊維をたくさん積層するようにすれば、不織布1における単位面積当たりの機能性粒子4,4の配合量をもっと多くすることもできる。また、
図7に実施例の不織布の顕微鏡写真を示す。
図7では、繊維の形態がよくわかるように、不織布の厚み方向のごく一部の層のみを撮影している。
図8,
図9も同様である。
【0054】
機能性粒子の配合量や、液状の合成樹脂の粘度や送り出し速度、ノズル径、静電気の印加電圧、ノズルから基台までの距離、雰囲気温度等を調整することにより、大径部2,2と小径部3,3の大きさや長さ、直径、両者の比率等を調整することができる。
【0055】
メルトブロー法もしくはエレクトロスピニング法を利用して上記不織布1を製造すると、紡糸される際に、大径部となる部分から小径部となる部分へと合成樹脂が吸い出されるので、大径部に残る合成樹脂が少なくなる。これにより、大径部において機能性樹脂を覆う合成樹脂の被膜が薄くなったり網状になったりする。合成樹脂の被膜が薄くなったり網状になったりすることにより、機能性粒子の熱膨張性がより素早く、効果的に発揮されるようになり、好ましい。
【0056】
上記不織布1が設けられた2次電池10の作用および効果について説明する。
上記実施形態の2次電池10に使用される不織布1は、熱膨張性を有する機能性粒子を担持していて、加熱により機能性粒子が膨張して不織布の断熱性が向上する不織布である。すなわち、電池の通常運転時に比べ、電池に異常発熱や発火が生じた際に、不織布1の断熱性が向上する。したがって、上記実施形態の2次電池10は、電池の通常運転時は不織布の断熱性が比較的低く冷却性に優れる一方で、発火等の異常発熱が生じた場合には、加熱により機能性粒子が膨張して不織布の断熱性が向上して高くなり、類焼を防止もしくは抑制できるという効果が得られる。すなわち2次電池の冷却性と耐類焼性を両立できる。
【0057】
そして、2次電池10の不織布が気体もしくは液体が通過可能であることにより、火災発生時に高温の空気が到達した際には、高温の空気が不織布内部まで侵入しやすく、不織布内部の機能性粒子も素早く膨張し、不織布1全体が耐火断熱層となって耐類焼性を高めることができる。
また、2次電池10の不織布が気体もしくは液体が通過可能であることにより、以下のような効果が得られることもある。
【0058】
2次電池の容器12の内側に不織布1が用いられる場合には、不織布を気体もしくは液体が通過可能であれば、電解質液の充填を妨げることが抑制され、電池の品質が向上する。不織布が気体もしくは液体が通過可能なものであれば、電極体11と不織布1の間や、不織布1の空隙部、不織布1と容器12の間に、空気が残りにくい。空気が残ってしまうと、電解質液がいきわたらずに2次電池10の効率が低下したり、放熱性が損なわれたりするなど、電池の品質が低下する。
電解質液の充填性を高め、電池の品質向上を図る観点からは、不織布1が、電解質液に対する親和性が高い不織布であることが好ましく、不織布1に電解質液に対する親和性を高める処理を施すことが好ましい。
【0059】
また、2次電池の容器12の外側に不織布1が用いられる場合には、不織布を気体もしくは液体が通過可能であれば、電池の効率的な冷却が可能である。不織布が気体や液体を通過可能であれば、冷却風や冷却液が、電池容器12の表面まで達することが妨げられず、熱移動が効率的に行われるからである。また、2次電池の容器12の外側に不織布1が用いられる場合に、不織布を液体が通過可能であれば、不織布1に液体を供給して染み込ませたのちに、冷却風を送って浸透させた液体を気化させ、気化熱を利用した高い効率の冷却を行うこともできる。
【0060】
さらに、2次電池10に使用される不織布1が、機能性粒子4,4が一体化された合成樹脂製の長繊維を含み、長繊維は、複数の大径部2,2と小径部3,3とを交互に並べて数珠つなぎにしたように、繊維の長手方向に径が変化しており、小径部3,3は、前記合成樹脂により形成されたモノフィラメントであり、大径部2,2には、機能性粒子4,4が含まれているように構成されている場合には、通気性を維持しつつ多量の機能性粒子を不織布に担持させることができ、耐類焼性がより高められる。また、機能性粒子が不織布から脱落しにくくなって、機能性粒子が周囲を汚染しにくくなる。
【0061】
また、さらに、前記長繊維の小径部3,3の繊維径は、大径部2,2に含まれる機能性粒子4,4の径以下であり、かつ、機能性粒子4,4は、膜状もしくは網状もしくは繊維の束状になった合成樹脂によって包まれて、または、合成樹脂により接着されて、大径部2,2に一体化されているように構成した場合には、機能性粒子を覆う合成樹脂がごく薄いものとなるため、機能性粒子の熱膨張および断熱性の向上が速やかに起こるようになって、耐類焼性がより高められる。
【0062】
また、さらに、機能性粒子が亜リン酸水素アルミニウムの粒子であるようにした場合には、加熱された際に、不織布1が、膨張した機能性粒子によって耐火性かつ絶縁性の断熱層に変化し、耐類焼性がより高められる。機能性粒子が絶縁性であれば、電池の正極と負極の間を膨張した機能性粒子で短絡させてしまうおそれがなく、好ましい。また、機能性粒子が亜リン酸水素アルミニウムの粒子であれば、電池火災発生時の高温にさらされても、粒子が確実に膨張した形態を維持でき、耐類焼性がより確実に向上する。
【0063】
また、さらに、小径部3,3の繊維径が、100ナノメートル以上10マイクロメートル以下であり、機能性粒子4,4の直径が300ナノメートル以上200マイクロメートル以下であるようにした場合には、機能性粒子4,4の熱膨張が速やかに起こるようになって、耐類焼性がより高められる。また、このような不織布1は、通気性や通液性を高めることができ、電池の通常運転時の冷却性の向上に貢献する。
【0064】
また、さらに、不織布が袋状である場合には、2次電池や電極体を、不織布で効果的に覆うことができ、組立がしやすくなる。特に、板状の2次電池が複数枚積層されて組電池にされる場合に、隣接する電池の互いに対向する面の全体を、不織布で効果的に覆いつつ、効率的な2次電池10や組電池20の生産ができる。
【0065】
発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の改変をして実施することができる。以下に発明の他の実施形態について説明するが、以下の説明においては、上記実施形態と異なる部分を中心に説明し、同様である部分についてはその詳細な説明を省略する。また、これら実施形態は、その一部を互いに組み合わせて、あるいは、その一部を置き換えて実施できる。
【0066】
不織布1が2次電池に取り付けられる際の形態として、袋状にすることを例示したが、形態は袋状に限定されない。平板状の2次電池の場合には、平板の両面に対応する2面を覆うように、不織布1をUの字状に折り曲げた形態で2次電池に取り付けてもよい。あるいは不織布1を容器や電極体に巻き付けるように取り付けてもよい。あるいは、不織布1を折りたたんで、電極体11や容器12を不織布1で包むようにして、2次電池に取り付けてもよい。
【0067】
2次電池10が使用される技術分野は特に限定されない。上記実施形態で例示した以外の他の技術分野にも応用できる。
例えば、2次電池10は、電気自動車やハイブリッド自動車に使用できるが、電池や組電池の用途は自動車用に限定されない。例えば、2次電池は電動自転車にも使用できる。2次電池や組電池を、電車や船舶や航空機の電源に使用してもよい。また、2次電池や組電池を、コンピュータのバックアップ電源や、風力発電装置や太陽光発電装置の補助蓄電池、産業装置の補助電源やバックアップ電源などに利用してもよい。
【0068】
また、例えば、上記実施形態の説明では、不織布1に含まれる長繊維が交絡する部分で、長繊維同士が単に接触しているものとして説明したが、交絡する部分で長繊維同士が結合していてもよい。例えば、長繊維が交絡する部位で、大径部2,2同士がくっついた状態であってもよいし、見かけ上、一つの大径部に3つ以上(好ましくは4つ以上)の小径部3,3がつながっていてもよい。このような構造となると、大径部2,2の間を小径部3,3がネットワーク状に接続するようになって、不織布1の立体的な構造が維持されやすくなり、通気性もよい。
【0069】
以下に製造条件等を変えて製造した不織布1の他の実施例を示す。
(実施例2)
図8は、製造条件等を変えて製造した、実施例2の不織布の構造を示す顕微鏡写真である。上記した実施例と比べ、長繊維が全体に太くなるように、製造条件を調整した。合成樹脂が熱可塑性ポリウレタン樹脂(TPU)である点や、機能性粒子が「NSF」(平均粒子径5マイクロメートル)である点、およびエレクトロスピニング法により製造する点は、上記した実施例と同じである。
【0070】
実施例2の不織布では、大径部2,2の直径がおよそ2~15マイクロメートル(平均径8マイクロメートル)で、小径部3,3の直径がおよそ0.5~1.8マイクロメートル(平均径1.0マイクロメートル)であった。また、実施例2の不織布では、大径部から3つ以上の小径部が分岐するように伸びている部分も見られる。
【0071】
(実施例3)
図9は、製造条件等を変えて製造した、実施例3の不織布の構造を示す顕微鏡写真である。上記した実施例と比べ、機能性粒子の配合量を少なくしたうえで、製造条件を調整した。合成樹脂が熱可塑性ポリウレタン樹脂(TPU)である点や、機能性粒子が「NSF」(平均粒子径5マイクロメートル)である点、およびエレクトロスピニング法により製造する点は、上記した実施例と同じである。
【0072】
実施例3の不織布では、大径部2,2の直径がおよそ3~8マイクロメートル(平均径5マイクロメートル)で、小径部3,3の直径がおよそ0.3~1.0マイクロメートル(平均径0.6マイクロメートル)であった。また、実施例3の不織布でも、大径部から3つ以上の小径部が分岐するように伸びている部分が見られる。
【0073】
実施例、実施例2,実施例3の不織布は、いずれも適度な通気性を有するとともに、熱風(約800℃)にさらされた際に、機能性粒子が膨張して、ほぼ通気性のない耐火性断熱層を形成し、断熱性が向上した。
【0074】
また、上記実施形態の説明では、熱膨張性の機能性粒子を含む単層の不織布を例示したが、不織布は、機能性粒子を含まない層を有する複層の不織布であってもよい。例えば、アラミド繊維製のメッシュ素材を、サポート層として、上記した不織布に積層した、2層構造の不織布としてもよい。
【0075】
サポート層は、熱膨張性粒子が含まれる不織布層の機械的性質を高めるのに有効である。特に、サポート層を、アラミド繊維や金属繊維など、不織布の長繊維の材料である合成樹脂よりも耐熱性の高い材料で構成された繊維によって構成しておくと、高温にさらされて機能性粒子が膨張する際に、長繊維による機能性粒子の拘束が解かれやすくなることを抑制できる。サポート層を設ける場合には、想定される気流の下流側にサポート層を設けることが特に好ましい。
【0076】
上記実施形態の説明においては、機能性粒子が熱膨張性を有することを説明したが、機能性粒子が有する機能は熱膨張性に限定されない。例えば、機能性粒子は、熱膨張性のほかに、保水性、吸水性を有する粒子であってもよい。この場合は、不織布の吸水性を高めたり、吸収した水分を気化させることにより冷却効果を生じさせたりすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
上記実施形態の2次電池は電気自動車の電源などに使用でき、電池の類焼が抑制できて、産業上の利用価値が高い。
【符号の説明】
【0078】
1 不織布
2 大径部
3 小径部
4 機能性粒子
10 2次電池
11 電極体
12 容器
13 正極部材
14 負極部材
20 組電池
21 スペーサ
22 エンドプレート
23 バスバー
30 2次電池