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特開2025-4104造血幹細胞およびその派生体の生成のためのオルガノイド組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025004104
(43)【公開日】2025-01-14
(54)【発明の名称】造血幹細胞およびその派生体の生成のためのオルガノイド組成物
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/0789 20100101AFI20250106BHJP
   C12N 1/00 20060101ALI20250106BHJP
【FI】
C12N5/0789
C12N1/00 G
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024174157
(22)【出願日】2024-10-03
(62)【分割の表示】P 2021513392の分割
【原出願日】2019-09-12
(31)【優先権主張番号】62/730,061
(32)【優先日】2018-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500469235
【氏名又は名称】チルドレンズ ホスピタル メディカル センター
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【弁理士】
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】武部 貴則
(72)【発明者】
【氏名】ウェルズ、ジェームズ、エム
(72)【発明者】
【氏名】ルイス、カイル
(72)【発明者】
【氏名】ムネラ、ホルヘ オーランド
(57)【要約】      (修正有)
【課題】造血幹細胞(HSC)または派生免疫細胞を作製する方法を提供する。
【解決手段】方法は、a.前駆細胞から派生される胚体内胚葉を、wntシグナル伝達経路アクチベーターおよびFGFシグナル伝達経路アクチベーターと、前腸細胞が形成されるまで接触させることと、b.前記前腸細胞をレチノイン酸の非存在下で培養して、造血細胞を生成する肝臓オルガノイドを形成することと、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
造血幹細胞(HSC)またはその派生細胞を作製する方法であって、
a.前駆細胞から派生される胚体内胚葉を、wntシグナル伝達経路アクチベーターおよびFGFシグナル伝達経路アクチベーターと、前腸細胞が形成されるまで接触させることと、
b.前記前腸細胞をレチノイン酸の非存在下で培養して、造血細胞を生成する肝臓オルガノイドを形成することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記前駆細胞は、胚性幹細胞および人工多能性幹細胞(iPSC)の一方または両方から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記wntシグナル伝達経路アクチベーターは、Wnt1、Wnt2、Wnt2b、Wnt3、Wnt3a、Wnt4、Wnt5a、Wnt5b、Wnt6、Wnt7a、Wnt7b、Wnt8a、Wnt8b、Wnt9a、Wnt9b、Wnt10a、Wnt10b、Wnt11、Wnt16、前記wntシグナル伝達経路の小分子アクチベーター(例えば、塩化リチウム、2-アミノ-4,6-二置換ピリミジン(ヘテロ)アリールピリミジン、IQ1、QS11、NSC668036、DCAβ-カテニン、2-アミノ-4-[3,4-(メチレンジオキシ)-ベンジル-アミノ]-6-(3-メトキシフェニル)ピリミジン)、WAY-316606、SB-216763、またはBIO(6-ブロモインジルビン-3’-オキシム))、前記Wntシグナル伝達経路のsiRNAおよび/またはshRNAアクチベーター、GSK3阻害剤(例えば、カイロン/CHIR9902)、ならびにそれらの組み合わせから選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記FGFシグナル伝達経路アクチベーターは、小分子またはタンパク質FGFシグナル伝達経路アクチベーター、FGF1、FGF2、FGF3、FGF4、FGF10、FGF11、FGF12、FGF13、FGF14、FGF15、FGF16、FGF17、FGF18、FGF19、FGF20、FGF21、FGF22、FGF23、前記FGFシグナル伝達経路のsiRNAおよび/またはshRNAアクチベーター、ならびにそれらの組み合わせから選択される、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記前腸細胞は、前記肝臓オルガノイドを形成する前にスフェロイドを形成する、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記前腸細胞は、前記肝臓オルガノイドを形成する前にスフェロイドを形成し、前記方法は、前記スフェロイドを断片化して複数の細胞を形成することをさらに含む、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記断片化は、化学的破壊および機械的破壊の一方または両方を介して実行される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記断片化は酵素による処理を含み、好ましくは、前記酵素はタンパク質分解酵素活性およびコラーゲン分解酵素活性の一方または両方を有する酵素、好ましくは、Accutase、トリプシン、コラゲナーゼ、ヒアルロニダーゼ、DNアーゼ、パパイン、Trypzean(Sigma製)、またはそれらの組み合わせから選択される1つ以上の酵素である、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記前腸は、トランスフェリン、幹細胞因子(SCF)、インターロイキン3(IL-3)、インターロイキン6(IL-6)、エリスロポエチン(EPO)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、およびそれらの組み合わせから選択されるサイトカインの存在下で培養され、好ましくは、前記前腸は前記培養の前に単一細胞に解離され、サイトカインを伴う前記培養は、約1日、または約2日、または約3日、または約4日、または約5日、または約6日、または約7日、または約8日、または約9日、または約10日、または約11日、または約12日、または約13日、または約14日、または約15日、または約16日、または約17日、または約18日、または約19日、または約20日、または約21日、または約3週、または約4週、または約5週、または約6週、または約7週、または約8週、または約9週、または約10週、または約11週、または約12週、または12週超の間実行される、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記ヒト肝臓オルガノイドをトロンボポエチン(TPO)および幹細胞因子(SCF)の一方または両方と接触させることをさらに含み、トロンボポエチン(TPO)および幹細胞因子(SCF)の一方または両方と接触させることは、約1日、または約2日、または約3日、または約4日、または約5日、または約6日、または約7日、または約8日、または約9日、または約10日、または約11日、または約12日、または約13日、または約14日、または約15日、または約16日、または約17日、または約18日、または約19日、または約20日、または約21日、または約3週、または約4週、または約5週、または約6週、または約7週、または約8週、または約9週、または約10週、または約11週、または約12週、または12週超の間実行される、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記ヒト肝臓オルガノイドは胎児状態にある、請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記ヒト肝臓オルガノイドは、レチノイン酸によって処理されているヒト肝臓オルガノイドと比較して、減少したアルブミンを生成する、請求項1~11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記ヒト肝臓オルガノイドは、α-フェトプロテイン(AFP)を生成する、請求項1~12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記ヒト肝臓オルガノイドは、レチノイン酸で処理されているヒト肝臓オルガノイドと比較して、内皮マーカーCD34およびKDRを増加させている、請求項1~13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記ヒト肝臓オルガノイドは、レチノイン酸で処理されているヒト肝臓オルガノイドと比較して、エリスロポエチン(EPO)およびヘモグロビンガンマ(HBG)を増加させている、請求項1~14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記前腸細胞は、基底膜マトリックス(Matrigel)に懸濁されている、請求項1~15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記前腸細胞は、骨髄に由来する間質細胞株で培養される、請求項1~16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記派生細胞は、骨髄性細胞(単球、マクロファージ、好中球、好塩基球、好酸球、赤血球、および血小板までの巨核球など)、リンパ球細胞(T細胞、B細胞、およびナチュラルキラー細胞など)、およびそれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
結腸オルガノイドを培養してオルガノイド培養物を形成することと、
前記結腸オルガノイド培養物から1つ以上の免疫細胞を収集することと、を含む、方法。
【請求項20】
前記結腸オルガノイドは、約1日、または約2日、または約3日、または約4日、または約5日、または約6日、または約7日、または約8日日、または約9日、または約10日、または約11日、または約12日、または約13日、または約14日、または約15日、または約16日、または約17日、または約18日、または約19日、または約20日、または約21日、または約3週、または約4週、または約5週、または約6週、または約7週、または約8週、または約9週、または約10週、または約11週、または約12週、または12週超の間、あるいは前記結腸オルガノイドが、造血前駆細胞/幹細胞を生成する造血内皮および内皮管のうちの1つ以上を含むまで、培養される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記結腸オルガノイド培養物から間葉を分離することと、前記間葉を培養することと、をさらに含み、好ましくは、前記間葉培養ステップは、約4日から3ヶ月、または約5日から2ヶ月、または約6日から約1ヶ月、または約7日から約21日の期間の間実行され、より好ましくは、前記間葉培養物は懸濁培養物である、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
前記結腸オルガノイドは間葉を含み、前記培養ステップは、約4日から3ヶ月、または約5日から2ヶ月、約6日から約1ヶ月、または約7日から約14日の期間の間実行され、任意選択的に、前記培養ステップは、懸濁培養として約1週から4週、または約1週の期間の間実行されて、間葉の増殖を可能にする、請求項19~21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
前記免疫細胞は、赤血球、骨髄、および混合骨髄コロニーから選択される、請求項19~22に記載の方法。
【請求項24】
前記免疫細胞は、マクロファージ、好中球、好酸球、好塩基球、赤血球、白血球、および単球のうちの1つ以上から選択される、請求項19~23に記載の方法。
【請求項25】
前記結腸オルガノイドは、前駆細胞、好ましくは胚性幹細胞または人工多能性幹細胞から派生される胚体内胚葉から派生される、請求項19~24に記載の方法。
【請求項26】
T細胞誘導性成長因子とともに培養することをさらに含む、請求項19~25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
前記培養物を破壊して前記結腸オルガノイドを分散させて、前記培養物中の間葉を破壊することと、続いて基底膜マトリックス中で約1週から約4週、または約2週から約3週の期間の間培養することと、をさらに含む、請求項19~26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
壊死性腸結腸炎、超早期発症IBD30、細菌性病原体(クロストリジウム・ディフィシルなど)からの感染、ウイルス性病原体(胎児腸マクロファージに容易に感染するHIVなど)からの感染、から選択される病態をモデル化するための方法であって、請求項19~27のいずれかに記載の方法に従って作製される結腸オルガノイドにおいて前記病態を開始することを含む、方法。
【請求項29】
自然免疫メカニズムをモデル化するための方法であって、請求項19~27のいずれかの方法に従って作製される結腸オルガノイドを含む、方法。
【請求項30】
ヒト肝臓オルガノイド(HLO)であって、前記HLOは胎児肝臓組織を含むことによって特徴付けられ、前記HLOは、造血細胞を生成する、ヒト肝臓オルガノイド(HLO)。
【請求項31】
造血内皮を含む、ヒト結腸オルガノイド(HCO)。
【請求項32】
前記造血内皮は、免疫細胞、好ましくは赤血球-骨髄前駆細胞、リンパ前駆細胞、およびマクロファージのうちの1つ以上を生成する、請求項30または31に記載のHCO。
【請求項33】
前記造血内皮は、炎症促進性サイトカインを分泌するマクロファージを生成する、請求項31または32に記載のHCO。
【請求項34】
前記免疫細胞は、潜在的である骨髄を有する、請求項32に記載のHCO。
【請求項35】
前記HCOは、潜在的であるT細胞を有する造血前駆細胞を含む、請求項30に記載のHCO。
【請求項36】
前記HCOは、造血前駆細胞を含み、前記前駆細胞はCD34+であり、前記CD34前駆細胞はオルガノイド間葉内にあり、前記造血前駆細胞はT細胞を形成する能力がある、請求項30に記載のHCO。
【請求項37】
前記HCOは内皮管を含み、前記ETはCD34+について陽性であり、前記ETはRUNX1+細胞を含む、請求項30~36のいずれかに記載の方法。
【請求項38】
造血幹細胞(HSC)を生成することができるHCO/HIOを作製する方法であって、前駆細胞から派生される胚体内胚葉を1つ以上の因子と、中腸/後腸スフェロイドを生成するのに十分な期間接触させることと、任意選択的に、基底膜マトリックス中の前記中/後腸スフェロイドを埋め込むことと、前記DEをFGF、CHIR、ノギン、およびSMAD阻害剤を含む因子の組み合わせと、前方前腸スフェロイドを生成するのに十分な量および期間で接触させることと、を含み、
前記中腸/後腸スフェロイドまたは前方前腸スフェロイドはHSCを生成する、方法。
【請求項39】
免疫細胞を必要とする個体を治療する方法であって、
a.造血幹細胞(HSC)または派生細胞を前述の請求項のいずれかに記載のHCOまたはHLOから収集することと、
b.前記HSCまたは派生細胞を、それを必要とする個体に投与することと、を含み、前記投与は、前記HSCを前記個体の骨髄に移植することを含む、方法。
【請求項40】
前記治療は、貧血(再生不良性貧血、ファンコニ貧血を含む)、免疫不全、癌(リンパ腫、白血病、癌腫、固形腫瘍など)、造血の遺伝的障害、遺伝性蓄積症、重症型サラセミア、鎌状赤血球症、骨粗鬆症、またはそれらの組み合わせの治療である、請求項39に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2018年9月12日に出願された米国特許仮出願第62/730,061号の優先権および利益を主張し、すべての目的のためにその全体が本明細書に参照によって組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
現在、造血系の再構成を必要とする個体では、骨髄移植が主要な治療の手段である。提供された骨髄における幹細胞および前駆細胞は、防御免疫、組織修復、凝固、およびその他の血液の機能に関与する血球を増殖させ、置き換えることができる。骨髄移植が成功すると、血液、骨髄、脾臓、胸腺、および免疫の他の器官は、ドナーから派生される細胞によって再配置され得る。骨髄は、様々な疾患に高い成功率で使用されており、再生不良性貧血、ファンコニ貧血、免疫不全、リンパ腫または白血病などの癌、癌腫、様々な固形腫瘍、および造血の遺伝性疾患などが含まれる。骨髄移植はまた、遺伝性蓄積症、重症型サラセミア、鎌状赤血球症、および骨粗鬆症の治療に適用されている。
【0003】
造血幹細胞(HSC)は、あらゆるタイプの血球に分化する能力があり、移植して血液疾患を治療することができるが、ドナー不足のため、HSCを大量に得ることは困難である。さらに、完全に一致する(遺伝的に同一の)ドナーはまれであり、免疫細胞を得るための骨髄移植を、それを必要とする個体に使用することは、厳しく制限される。
【0004】
したがって、当技術分野では、移植に適したHSC組成物、およびHSCを提供することができる方法が依然として必要とされている。さらに、そのような組成物の開発は、最新のHSCを十分な量で利用できない研究目的のために有用であろう。本開示は、当技術分野における前述のニーズの1つ以上に対処しようとする。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、造血幹細胞(HSC)または派生免疫細胞の製造のための、前駆細胞から派生される組成物、およびそのような組成物を使用する方法に関する。より具体的には、オルガノイド組織またはオルガノイドを含む培養物から造血幹細胞を得るための方法が開示され、オルガノイド組織または培養物は、分化誘導を介して、前駆細胞(胚性幹細胞または人工多能性幹細胞など)から派生される肝臓または結腸組織を含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
当業者は、以下に記載される図面が例示のみを目的としていることを理解するであろう。図面は、いかなる方法でも本教示の範囲を限定することを意図するものではない。
【0007】
図1】ヒト肝臓オルガノイド(HLO)遺伝子発現の培養21日目における特性。A.成熟肝臓オルガノイドを分化させる以前の方法と比較して、アルブミン発現は中程度減少し、α-フェトプロテイン(AFP)発現は増加する(Ouchiら、2019)。B.内皮マーカーCD34およびKDR(VEGFR2)は増加する。C.エリスロポエチン(EPO)およびヘモグロビンγ(HBG)の両方が増加する。
図2】HLO培養からの骨髄系統の分化。A.HLO培養を8~20日目に単一細胞懸濁液に分離し、サイトカインを添加したメチルセルロースに加えて骨髄分化を促進させ、7~14日後にコロニーを分析した。B.生成された複数の細胞タイプを示す代表的なギムザ染色。C.HLO培養からの細胞を臍帯血(UCB)CD34細胞および未分化iPSCと比較するCFCコロニーの定量化(N.D.=検出不能)。
図3】HLO培養からのB細胞の分化。A.HLO培養物は、8~20日目に単一細胞懸濁液に分離し、コンフルエントなMS-5細胞と共培養した。B.MS-5との共培養後のUCB CD34細胞およびHLOのフローサイトメトリー。細胞は最初にCD45でゲーティングし、次にCD19およびCD11bでゲーティングし、それぞれB細胞および骨髄細胞を分離した。
図4】造血内皮細胞は、ヒト結腸オルガノイド培養で共発生する。(A)背側大動脈におけるe10.5マウス胚核RUNX1染色の全組織標本のRUNX1(赤)、ENDOMUCIN(緑)、およびCDX2(白)染色(n=3)。(B、C)(A)の光学的スライス。(D)CD34+内皮管内の核RUNX1染色を示す22日目のHCOの全組織標本RUNX1(赤)、CD34(緑)およびCDH1(白)染色(n=3)。(E、F)(D)からの光学的スライス。DA=背側大動脈。(G)21日目のHIOおよびHCOから得られるRNAseqデータのTPM(百万個当たりの転写値)のグラフ(各グループでn=3)。(H)ゲーティングしたCD34+細胞のCD45およびCD73で染色したフローサイトメトリープロット。CD34+/CD45-/CD73-細胞は黒色枠で囲まれている。CD34+/CD45+/CD73-細胞は緑色枠で囲まれている。
図5】赤血球-骨髄およびリンパの前駆細胞は、HCO培養で生成される。(A)HCO培養物からサイトスピンした細胞の顕微鏡写真。(B)Methocult(商標)培地で形成されたコロニーの例。(C)H1ヒト胚性幹細胞および(D)IPSC 263-10から派生されるHCO細胞からの細胞のMethocult(商標)におけるコロニー形成の定量化。(E)CD3およびCD4で染色された、サイトカインを誘導するT細胞分化によって処理または未処理のCD45ゲーティング細胞のフローサイトメトリープロット。
図6】HCOは共発生したマクロファージを含む。(A)DAPIで対比染色したCD163(赤)およびCDH1(緑)におけるヒト結腸生検の免疫蛍光染色。(A’)(A)の枠領域の挿入図。DAPIで対比染色したCD163(赤)およびCDH1(緑)について染色した(B)HIOおよび(C)HCOの全組織標本。35日目のHIOおよびHCOから得られたRNAseqデータからの(D)SPI1(PU.1)および(E)CD163のTPM(百万個あたりの転写値)のグラフ(各群についてn=3)。DAPIで対比染色されhCD163(赤)およびF4/80(緑)について染色された(F)マウス結腸、(G)ヒト結腸生検および移植HCOの免疫蛍光染色。
図7】HCOは炎症促進性サイトカインを分泌する炎症性マクロファージを有する。(A)35dHIOおよびHCOのRNAseqデータから作成された炎症関連遺伝子のヒートマップ。(B)DAPIで対比染色したCD163(緑)、iNOS(赤)、およびCDH1(白)における35日目のHCOの免疫蛍光染色。(B’)Bの枠領域の挿入図で、DAPIを除く。(C~D)IL-6、IL-8、MIP1A(CCL3)、MIP1B(CCL4)におけるLuminexアレイデータ。各ポイントは、個々の分化からのLuminex値を表す。ペア化したHIO試料およびHCO試料(同じ分化から)は線で示される。
図8】HCOマクロファージは機能的である。(A)LPSで処理されたHCOのライブイメージングの時間経過の顕微鏡写真。(B~E)HCOまたはLPSで処理されたHCOのIL-6、IL-8、MIP1A(CCL3)、MIP1B(CCL4)に関するLuminexアレイデータ。(F)-/+pHRODOE.coli粒子(緑)およびCD14(赤)における35日目のHCOの免疫蛍光染色。(G)貪食された粒子の定量(緑)(群あたりオルガノイドのウェルn=3)。
図9】HCOmacは細菌に反応してオルガノイド内腔に移動する。(A)PBS、(B)共生E.coli、および(C)EHECの注入24時間後にDAPIで対比染色したCDH1(緑)およびMUC2(赤)についての35日目のHCOの免疫蛍光染色。(D)PBS、(E)共生E.coli、および(F)EHECの注入24時間後にDAPIで対比染色したCDH1(緑)、HAM56(赤)、およびE.coli(白)についての35日目のHCOの免疫蛍光染色。(G)MUC2蛍光強度の定量化(群あたりn=3)。(H)E.coli蛍光強度の定量化(群あたりn=3)。(I)HAM56マクロファージ分布の定量化(群あたりn=3オルガノイド)。
図10】実験ワークフロー。
図11】BMPシグナル伝達は、造血内皮細胞を特定する。
図12】HCO培養内で内皮細胞および造血細胞が共発生する。
図13】HCO培養から派生される赤血球におけるヘモグロビン発現。
図14】HCOに存在する免疫細胞のCytof分析。
図15】WELLS図S6。マクロファージは、マウス腎被膜への移植後にHCO内に存続する。
図16】WELLS図S7。遺伝子オントロジー分析は、HCOにおける並行した細胞分化、マクロファージ成熟、および炎症を明らかにする。
図17】HCO内のマクロファージは、E.coli粒子に反応して糸状仮足を伸長することができる。
図18】胎盤、肝臓、肺、および結腸の画像。
【発明を実施するための形態】
【0008】
定義
特に断りのない限り、用語は、関連技術の当業者による従来の使用法に従って理解されるべきである。矛盾する場合は、定義を含む本文書が優先される。好ましい方法および材料を以下に記載するが、本明細書に記載されるものと同様または同等の方法および材料は、本発明の実施または試験に使用することができる。本明細書で言及されるすべての刊行物、特許出願、特許および他の参考文献は、参照によりそれらの全体が組み込まれる。本明細書に開示される材料、方法、および実施例は、例示にすぎず、限定することを意図するものではない。
【0009】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「および」、および「the」は、文脈が明らかに他のことを指示しない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「方法」への言及は、複数のそのような方法を含み、「用量」への言及は、当業者などに知られている1つ以上の用量およびその均等物への言及を含む。
【0010】
「約」または「およそ」という用語は、当業者によって決定される特定の値の許容可能な誤差範囲内を意味し、これは、値がどのように測定または決定されるか、例えば、測定系の限界に部分的に依存する。例えば、「約」は、当技術分野の慣行に従って、1以内または1を超える標準偏差を意味することができる。あるいは、「約」は、所与の値の最大20%、または最大10%、または最大5%、または最大1%の範囲を意味することができる。あるいは、特に生物学的な系またはプロセスに関して、本用語は、値の1桁以内、好ましくは5倍以内、より好ましくは2倍以内を意味することができる。特定の値が本出願および特許請求の範囲に記載される場合、特記しない限り、特定の値の許容可能な誤差範囲内を意味する「約」という用語を想定すべきである。
【0011】
本明細書で使用される場合、「全能性(totipotent)幹細胞」(全能性(omnipotent)幹細胞としても知られる)という用語は、胚性および胚外細胞型に分化することができる幹細胞である。そのような細胞は、完全で生存可能な生物を構築することができる。これらの細胞は、卵子および精子細胞の融合から生産される。受精卵の最初の数分割によって生産される細胞も全能性である。
【0012】
本明細書で使用される場合、一般にPS細胞としても知られる「多能性幹細胞(PSC)」という用語は、ほぼすべての細胞、すなわち、内胚葉(胃内壁、消化管、肺)、中胚葉(筋肉、骨、血液、泌尿生殖器)、および外胚葉(表皮組織および神経系)を含む3つの胚葉(胚上皮)のいずれかから派生される細胞に分化することができる任意の細胞を包含する。PSCは、胚性幹細胞(胚性生殖細胞を含む)から派生されるか、または特定の遺伝子の発現を強制することによって、成体体細胞などの非多能性細胞の誘導を通じて得られる、全能性細胞の子孫であることができる。
【0013】
本明細書で使用される場合、「人工多能性幹細胞(iPSC)」という用語は、一般にiPS細胞とも略され、特定の遺伝子の「強制」発現を誘導することによって、成体体細胞などの、通常は非多能性細胞から人工的に派生される一種の多能性幹細胞を言及する。
【0014】
本明細書で使用される場合、「胚性幹細胞(ESC)」という用語は、一般にES細胞とも略され、多能性であり、初期胚である胚盤胞の内部細胞塊から派生される細胞を指す。本発明の目的のために、「ESC」という用語はときどき広く使用され、胚性生殖細胞を同様に包含する。
【0015】
本明細書で使用される場合、「前駆細胞」という用語は、本明細書に記載の方法で使用することができる任意の細胞を包含し、それを通じて、1つ以上の前駆細胞は、それ自体を再生するか、1つ以上の専門化された細胞型に分化する能力を獲得する。いくつかの態様において、前駆細胞は、多能性であるか、または多能性になる能力を有する。いくつかの態様において、前駆細胞は、外部因子(例えば、成長因子)の処理の対象となり、多能性を獲得する。いくつかの態様において、前駆細胞は、全能性(totipotent)(または全能性(omnipotent))幹細胞、多能性(誘導性または非誘導性)幹細胞、多分化能幹細胞、寡能性幹細胞、および単能性幹細胞であることができる。いくつかの態様において、前駆細胞を、胚、乳児、子供、または成人から形成することができる。いくつかの態様において、前駆細胞は、遺伝子操作またはタンパク質/ペプチド処理を介して多能性が付与されるような処理の対象となる体細胞であることができる。
【0016】
本明細書で使用される場合、「細胞成分」という用語は、個々の遺伝子、タンパク質、mRNA発現遺伝子、および/または他の可変の細胞成分、あるいは、例えば、当業者による生物学的実験(例えば、マイクロアレイまたは免疫組織化学による)で一般的に測定されるタンパク質修飾(例えば、リン酸化)の程度などのタンパク質活性である。生物系、一般的なヒトの病気、ならびに遺伝子発見および構造決定の根底にある生化学的プロセスの複雑なネットワークに関連する重要な発見は、現在、研究プロセスの一部として細胞成分の多量なデータの適用に帰することができる。細胞成分の多量なデータは、バイオマーカーを特定し、疾患のサブタイプを区別し、毒性のメカニズムを特定するために役立てることできる。
【0017】
FGFシグナル伝達経路アクチベーター:線維芽細胞成長因子(FGF)は、血管新生、創傷治癒、および胚発生に含まれる成長因子のファミリーである。いくつかの態様において、FGFのいずれかをWntシグナル伝達経路からのタンパク質と組み合わせて使用することができることが当業者によって理解されるであろう。例示的なFGFシグナル伝達経路アクチベーターには、小分子またはタンパク質FGFシグナル伝達経路アクチベーター、FGF1、FGF2、FGF3、FGF4、FGF10、FGF11、FGF12、FGF13、FGF14、FGF15、FGF16、FGF17、FGF18、FGF19、FGF20、FGF21、FGF22、FGF23、およびそれらの組み合わせが含まれ得る。FGFシグナル伝達経路に関連する細胞成分を標的とするsiRNAおよび/またはshRNAを使用して、これらの経路を活性化し得る。当業者は、適切な量および期間を容易に理解するであろう。
【0018】
WNTシグナル伝達経路アクチベーター:Wntシグナル伝達経路のモジュレーター/アクチベーターには、Wnt1、Wnt2、Wnt2b、Wnt3、Wnt3a、Wnt4、Wnt5a、Wnt5b、Wnt6、Wnt7a、Wnt7b、Wnt8a、Wnt8b、Wnt9a、Wnt9b、Wnt10a、Wnt10b、Wnt11、およびWnt16が含まれ得る。いくつかの態様において、経路の調節は、前述の経路を活性化する小分子モジュレーターもしくはタンパク質モジュレーター、または前述の経路を活性化するタンパク質の使用を介し得る。たとえば、Wnt経路の小分子モジュレーターには、限定されないが、塩化リチウム、2-アミノ-4,6-二置換ピリミジン(ヘテロ)アリールピリミジン、IQ1、QS11、NSC668036、DCAβ-カテニン、2-アミノ-4-[3,4-(メチレンジオキシ)-ベンジル-アミノ]-6-(3-メトキシフェニル)ピリミジンが含まれる。いくつかの態様において、外因性分子には、WAY-316606、SB-216763、またはBIO(6-ブロモインジルビン-3’-オキシム)が含まれる。いくつかの態様において、Wntおよび/またはFGFシグナル伝達経路に関連する細胞成分を標的にするsiRNAおよび/またはshRNAを使用して、これらの経路を活性化し得る。標的細胞成分には、限定されないが、SFRPタンパク質であるGSK3、Dkk1、およびFrzBが含まれることが、当業者によって理解されるであろう。追加のモジュレーターには、Wntシグナル伝達経路を活性化するGSK3を阻害する分子またはタンパク質が含まれる。例示的なGSK3阻害剤には、カイロン/CHIR99021が含まれ得、例えば、GSK3βを阻害する。当業者は、開示された方法を実行するために適したGSK3阻害剤を認識するであろう。WNTシグナル伝達経路アクチベーターは、開示された方法を実行するのに十分な量で投与され得る。当業者は、適切な量および期間を容易に理解するであろう。
【0019】
BMPアクチベーター:例示的なBMPシグナル伝達経路アクチベーターには、BMP2、BMP4、BMP7、BMP9、BMP経路を活性化する小分子、BMP経路を活性化するタンパク質から選択され得、ノギン、ドルソモルフィン、LDN189、DMH-1、ベントロモフィン、およびそれらの組み合わせが含まれる。
【0020】
オルガノイド技術は発展している分野である。簡単に説明すると、オルガノイドは「器官様組織」、または対応するネイティブ器官と同様な構造組織を有する三次元組織である。オルガノイドは、胚性幹細胞または人工多能性幹細胞などの前駆細胞から派生され得る。オルガノイドは通常、目的の器官組織ための胚発生を模倣する時系列の成長因子操作-一般に、前駆細胞の分化誘導と呼ばれるプロセス-を使用してインビトロで培養される。一般に、オルガノイドは、多くの場合、機能的である分化した細胞タイプ、例えば、酸を分泌することができる胃壁細胞を含み得る。したがって、現在、文献で報告されているオルガノイドは、天然由来の器官組織のものと範囲において同じではない。例えば、オルガノイドは、オルガノイドが模倣することを意図され得る脈管系またはネイティブな器官の1つ以上の他の特徴を欠如し得る。現在まで、オルガノイドは、発生した造血系を有すること、またはかなりの量の免疫細胞を生成することが認識されていない。本開示は、当技術分野における1つ以上のそのような必要性に取り組むことを試みる。
【0021】
本明細書に記載されるように、方法およびシステムは、培養中の組織の胚発生を模倣するために時系列の成長因子操作を使用して確立され、免疫系細胞の発生を可能にする改変を伴い、その変形が本明細書に記載される。
【0022】
造血幹細胞および前駆細胞
血球生成は、単一タイプの細胞である造血幹細胞から派生し、増殖および分化を通して、全体的な造血系までに至る。造血幹細胞は、自己複製で、幹細胞のそれら自体の集団を拡張することができると考えられ、それらは多能性である(造血系における任意の細胞に分化することができる)。このまれな細胞集団から、リンパ球(免疫系のB細胞とT細胞)および骨髄細胞(赤血球、巨核球、顆粒球、およびマクロファージ)を含む成熟した造血系全体が形成される。B細胞およびT細胞を含むリンパ系統は、抗体の生成、細胞免疫系の調節、血液中の外来物質の検出、宿主にとって異質である細胞の検出などをもたらす。単球、顆粒球、巨核球、ならびに他の細胞を含む骨髄系統は、異物の存在を監視し、新生物細胞に対する防護をもたらし、異物を除去し、血小板を生成する、などを行う。赤血球系統は、酸素運搬体として機能する赤血球をもたらす。
【0023】
上記のように、HSCの交換のための現在の治療法は骨髄移植を含む。患者の「マッチング」は困難であり得るため、この必要性に対処する組成物および方法が当技術分野で必要とされている。この目的のために、造血細胞を生成するオルガノイド組成物および造血細胞を生成するオルガノイドを作製する方法が本明細書に開示される。
【0024】
開示される組成物および方法は、造血細胞を生成するために使用され得、造血細胞の投与が有利である任意の病態の治療のために使用され得る。そのため、本方法は、開示されるオルガノイド組成物から造血細胞を単離または収集することをさらに含み得る。開示されるオルガノイドから派生される造血細胞を使用して治療され得る病態には、例えば、ベータサラセミア、鎌状赤血球貧血、アデノシンデアミナーゼ欠損症、リコンビナーゼ欠損症、野生型遺伝子の例えば、CRISPR技術を使用した幹細胞への導入を介したリコンビナーゼ調節遺伝子欠損症などが含まれる。本明細書に開示されるオルガノイドおよび/または造血細胞は、特定の態様において、照射された宿主または化学療法を受ける宿主を再構成するために使用され得る。
【0025】
組成物
また、本明細書において、分化した、または特定目的の造血細胞を実質的に含まない造血幹細胞組成物、例えば、高度に濃縮された造血幹細胞組成物が開示される。実質的に含まないということは、細胞の10%未満、または5%未満、または1%未満が集団に存在することを意味し得る。オルガノイド組成物から派生される造血細胞は、実質的に均質な生存可能な哺乳動物またはヒトの造血細胞組成物であり得、様々な目的、例えば、細胞が新生物細胞または病原性である他の細胞、例えば、HIV感染細胞をほとんど含み得ない骨髄移植、移植片対宿主病の回避が望まれる移植、のために生成され得る。実質的に均質とは、組成物中の細胞の大部分が、例えば、所望の細胞の少なくとも70%、または少なくとも75%、または少なくとも80%、または少なくとも85%、または少なくとも90%、または特定の状況で95%超が同じ細胞型のものであることを意味し得、細胞タイプは造血幹細胞であり得る。特定の態様において、造血細胞は、相同または非相同のいずれかの適切な組換えによって改変して、個体に関してまたは幹細胞一般に関して、遺伝的欠陥を修正するか、または幹細胞に生来欠如している遺伝的能力をもたらし得る。そのような遺伝子改変された細胞(すなわち、当技術分野で周知のCRISPR法を使用する)は、それを必要とする個体にさらに投与され得る。
【0026】
免疫細胞を生成するHCO培養
第1の態様では、造血幹細胞(HSC)またはその派生細胞を作製する方法が開示される。本方法は、前駆細胞から派生される胚体内胚葉を、前腸細胞が形成されるまで、wntシグナル伝達経路アクチベーターおよびFGFシグナル伝達経路アクチベーターと接触させることと、レチノイン酸の非存在下で前腸細胞を培養して、造血細胞を生成する肝臓オルガノイドを形成することと、を含み得る。
【0027】
一態様では、いずれかの前段落の前駆細胞は、胚性幹細胞および人工多能性幹細胞(iPSC)の一方または両方から選択され得る。
【0028】
一態様では、いずれかの前段落のwntシグナル伝達経路アクチベーターは、Wnt1、Wnt2、Wnt2b、Wnt3、Wnt3a、Wnt4、Wnt5a、Wnt5b、Wnt6、Wnt7a、Wnt7b、Wnt8a、Wnt8b、Wnt9a、Wnt9b、Wnt10a、Wnt10b、Wnt11、Wnt16、wntシグナル伝達経路の小分子アクチベーター(例えば、塩化リチウム、2-アミノ-4,6-二置換ピリミジン(ヘテロ)アリールピリミジン、IQ1、QS11、NSC668036、DCAβ-カテニン、2-アミノ-4-[3,4-(メチレンジオキシ)-ベンジル-アミノ]-6-(3-メトキシフェニル)ピリミジン)、WAY-316606、SB-216763、またはBIO(6-ブロモインジルビン-3’-オキシム))、Wntシグナル伝達経路のsiRNAおよび/またはshRNAアクチベーター、GSK3阻害剤(例えば、カイロン/CHIR9902)、およびそれらの組み合わせから選択され得る。
【0029】
一態様では、いずれかの前段落のFGFシグナル伝達経路アクチベーターは、小分子またはタンパク質FGFシグナル伝達経路アクチベーター、FGF1、FGF2、FGF3、FGF4、FGF10、FGF11、FGF12、FGF13、FGF14、FGF15、FGF16、FGF17、FGF18、FGF19、FGF20、FGF21、FGF22、FGF23、FGFシグナル伝達経路のsiRNAおよび/またはshRNAアクチベーター、ならびにそれらの組み合わせから選択され得る。
【0030】
一態様では、前段落のいずれかは、肝臓オルガノイドを形成する前に前腸細胞からスフェロイドを形成することをさらに含み得る。他の態様では、前腸細胞は、肝臓オルガノイドを生成する前にスフェロイドを生成し得、本方法は、スフェロイドを断片化して、スフェロイドから派生される複数の細胞を生成することをさらに含み得る。断片化は、化学的破壊および/または機械的破壊の一方または両方を介して達成し得る。例えば、一態様では、断片化は、例えば、タンパク質分解酵素活性およびコラーゲン分解酵素活性の一方または両方を有する酵素、例えば、Accutase、トリプシン、コラゲナーゼ、ヒアルロニダーゼ、DNアーゼ、パパイン、Trypzean(Sigma製)、またはそれらの組み合わせから選択される1つ以上の酵素などの酵素による処理を含み得る。
【0031】
一態様では、いずれかの前段落は、前腸をサイトカインの存在下で培養することをさらに含み得る。サイトカインは、当技術分野で許容される任意のサイトカインであり得、例えば、トランスフェリン、幹細胞因子(SCF)、インターロイキン3(IL-3)、インターロイキン6(IL-6)、エリスロポエチン(EPO)、顆粒球コロニー-刺激因子(G-CSF)、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、およびそれらの組み合わせから選択されるサイトカインが挙げられる。特定の態様において、前腸は、培養前に単一の細胞に解離され得る。サイトカインによる培養は、一定期間、例えば、約1日、または約2日、または約3日、または約4日、または5日、または約6日、または約7日、または約8日、または約9日、または約10日、または約11日、または約12日、または約13日、または約14日、または約15日、または約16日、または約17日、または約18日、または約19日、または約20日、または約21日、または約3週、または約4週、または約5週、または約6週、または約7週、または約8週、または約9週、または約10週、または約11週、または約12週、または12週超の間実行し得る。
【0032】
一態様では、いずれかの前段落の方法は、肝臓オルガノイド、例えば、ヒト肝臓オルガノイドを、トロンボポエチン(TPO)および幹細胞因子(SCF)の一方または両方と接触させることを含み、トロンボポエチン(TPO)および幹細胞因子(SCF)の一方または両方と接触させることは、一定の期間、例えば、約1日、約2日、または約3日、または約4日、または約5日、または約6日、または約7日、または約8日、または約9日、または約10日、または約11日、または約12日、または約13日、または約14日、または約15日、または約16日、または約17日、または約18日、または約19日、または約20日、または約21日、または約3週、または約4週、または約5週、または約6週、または約7週、または約8週、または約9週、または約10週、または約11週、または約12週、または12週超から選択される期間の間実行される。
【0033】
一態様では、任意の前段落の肝臓オルガノイドは、胎児状態にあると理解されるもの、例えば、胎児肝臓組織を含むオルガノイドのようなヒト前駆細胞から派生されるヒト肝臓オルガノイドであり得る。例えば、一態様では、肝臓オルガノイドは、レチノイン酸で処理されているヒト肝臓オルガノイドと比較して、減少したアルブミンを生成し得る。一態様では、肝臓オルガノイドは、α-フェトプロテイン(AFP)を生成する。一態様では、肝臓オルガノイドは、レチノイン酸で処理されている肝臓オルガノイドと比較して、内皮マーカーCD34およびKDRを増加させている。一態様では、肝臓オルガノイドは、レチノイン酸で処理されている肝臓オルガノイドと比較して、エリスロポエチン(EPO)およびヘモグロビンγ(HBG)を増加させている。
【0034】
一態様では、本方法は、いずれかの前段落のステップと、前腸細胞を基底膜マトリックス、例えば、Matrigel(商標)に懸濁することと、をさらに含み得る。前腸細胞は、間質細胞株、例えば、骨髄から派生される間質細胞株でさらに培養され得る。
【0035】
請求項1の方法において、当該派生細胞は、骨髄性細胞(単球、マクロファージ、好中球、好塩基球、好酸球、赤血球、および血小板までの巨核球など)、リンパ球細胞(T細胞、B細胞、およびナチュラルキラー細胞など)、およびそれらの組み合わせから選択される。
【0036】
免疫細胞を生成するHCOおよびHCO培養
一態様では、造血内皮を含むヒト結腸オルガノイド(HCO)、およびそれを作製する方法が開示される。一態様では、本明細書に記載のHCOの造血内皮は、免疫細胞、例えば、赤血球-骨髄前駆細胞、リンパ前駆細胞、およびマクロファージのうちの1つ以上を生成する。一態様では、開示されるHCOの造血内皮は、炎症促進性サイトカインを分泌するマクロファージを生成する。開示されるHCOは、造血前駆細胞をさらに含み得、当該前駆細胞はCD34+であり、CD34前駆細胞はオルガノイド間葉内にあり、当該造血前駆細胞はT細胞を生成する能力がある。他の態様において、開示されるHCOは内皮管を含み得、内皮管(ET)はCD34+について陽性であり、ETはRUNX1+細胞を含む。
【0037】
ヒト前駆細胞などの前駆細胞から派生され得る結腸オルガノイドは、免疫細胞を得るために使用され得る。この態様では、結腸オルガノイドを培養してオルガノイド培養物を形成することと、当該結腸オルガノイド培養物から1つ以上の免疫細胞を収集することと、を含む方法が開示される。
【0038】
この態様では、結腸オルガノイドは、約1日、または約2日、または約3日、または約4日、または約5日、または約6日、または約7日、または約8日、または約9日、または約10日、または約11日、または約12日、または約13日、または約14日、または約15日、または約16日、または約17日、または約18日、または約19日、または約20日、または約21日、または約3週、または約4週、または約5週、または約6週、または約7週、または約8週、または約9日間数週、または約10週、または約11週、または約12週、または12週超の間、あるいは結腸オルガノイドが造血前駆細胞/幹細胞を生成する造血内皮および内皮管のうち1つ以上を含むまで、培養され得る。
【0039】
一態様では、本方法は、当該結腸オルガノイド培養物から間葉を分離することと、当該間葉を培養することと、を含み得る。一態様では、間葉培養ステップは、約4日から3ヶ月、または約5日から2ヶ月、または約6日から約1ヶ月、または約7日から約21日の期間の間、実行され得る。さらなる態様において、間葉培養は、懸濁培養であり得る。
【0040】
一態様では、当該結腸オルガノイドは間葉を含み得え、培養ステップは、特定の期間、例えば、約4日から3ヶ月、または約5日から2ヶ月、または約6日から約1か月、または約7日から約14日の間、実行され得る。培養ステップは、間葉の拡張を可能にするために、約1週から4週、または約1週の期間の間、懸濁培養として実行され得る。
【0041】
一態様では、開示される方法の免疫細胞は、赤血球、骨髄、および混合骨髄コロニーから選択され得る。他の態様において、免疫細胞は、マクロファージ、好中球、好酸球、好塩基球、赤血球、白血球、および単球のうちの1つ以上であり得る。
【0042】
一態様では、結腸オルガノイドは、本明細書に記載の前駆細胞から派生される胚体内胚葉から派生され得る。一態様では、前駆細胞は、胚性幹細胞または人工多能性幹細胞である。
【0043】
一態様では、本方法は、オルガノイド培養をT細胞誘導性成長因子とともに培養することをさらに含み得る。さらなる態様において、本方法は、培養物を破壊して結腸オルガノイドを単一の結腸オルガノイドに分散させ、培養物の間葉を破壊することを含み得る。このステップは、得られる破壊したオルガノイドおよび間葉を、基底膜マトリックス(例えば、Matrigel)中で約1週から約4週、または約2週から約3週の期間の間培養することによるものであり得る。
【0044】
さらなる態様において、結腸オルガノイド、特にヒト結腸オルガノイドを使用して、病態をモデル化し得る。例えば、壊死性腸炎、超早期発症IBD30、細菌性病原体(クロストリジウム・ディフィシルなど)からの感染、ウイルス性病原体(胎児腸マクロファージに容易に感染するHIVなど)からの感染、から選択される病態をモデル化するための方法が開示される。この態様では、この方法は、本明細書に開示される方法に従って作製される結腸オルガノイド、例えばヒト結腸オルガノイドにおいて病態を開始することを含み得る。
【0045】
一態様では、造血幹細胞(HSC)を生成することができるHCOまたはHIOを作製する方法が開示され、本方法は、前駆細胞から派生される胚体内胚葉を1つ上の因子と、中腸/後腸スフェロイドを生成するのに十分な期間わたって接触させることと、任意選択的に当該中腸/後腸スフェロイドを基底膜マトリックスに埋め込むことと、当該DEを、FGF、CHIR、ノギン、およびSMAD阻害剤を含む因子の組み合わせと、前方前腸スフェロイドを生成するのに十分な量および期間の間で接触させることと、を含み、中腸/後腸スフェロイドまたは前方前腸スフェロイドはHSCを生成する。
【0046】
なおさらなる態様では、免疫細胞を必要とする個体を治療する方法が開示される。本方法は、いずれかの上記段落に従って、HCOまたはHLOから造血幹細胞(HSC)または派生細胞を収集することと、当該HSCまたは派生細胞をそれを必要とする個体に投与することと、を含み、投与は当該HSCを個体の骨髄に移植することを含む。一態様では、治療は、貧血(再生不良性貧血、ファンコニ貧血を含む)、免疫不全、癌(リンパ腫、白血病、癌腫、固形腫瘍など)、造血の遺伝的障害、遺伝性蓄積症、重症型サラセミア、鎌状赤血球症、骨粗鬆症、またはそれらの組み合わせの治療であり得る。
【0047】
前駆細胞
いくつかの態様において、多能性であるか、または多能性になるように誘導され得る幹細胞が使用され得る。いくつかの態様において、多能性幹細胞は、胚性幹細胞から派生され、これは次に、初期哺乳動物胚の全能性細胞から派生され、インビトロで無制限の未分化増殖が可能である。胚性幹細胞は、初期胚である胚盤胞の内部細胞塊から派生される多能性幹細胞である。胚盤胞から胚性幹細胞を派生させるための方法は、当技術分野でよく知られている。たとえば、3つの細胞株(H1、H13、およびH14)は正常なXY核型を有し、2つの細胞株(H7およびH9)は正常なXX核型を有した。ヒト胚性幹細胞H9(H9-hESC)は、本出願に記載の例示的な態様で使用されるが、本明細書に記載の方法およびシステムは、任意の幹細胞に適用可能であることが当業者によって理解されるであろう。本発明による態様で使用することができる追加の幹細胞には、限定されないが、National Stem Cell Bank(NSCB)、University of California,San Francisco(UCSF)のHuman Embryonic Stem Cell Research Center、Wi Cell Research InstituteのWISC cell Bank、University of Wisconsin Stem Cell and Regenerative Medicine Center(UW-SCRMC)、Novocell,Inc.(サンディエゴ、カリフォルニア州)、Cellartis AB(ヨーテボリ、スウェーデン)、ES Cell International Pte Ltd(シンガポール)、Israel Institute of Technology(ハイファ、イスラエル)のTechnion、およびPrinceton UniversityおよびUniversity of Pennsylvaniaによって主宰されるStem Cell Databaseによって主宰されるデータベースによって得られる、データベースに記載されるものが含まれるが、これらに限定されない。本発明による態様で使用することができる例示的な胚性幹細胞には、限定されないが、SA01(SA001)、SA02(SA002)、ES01(HES-1)、ES02(HES-2)、ES03(HES-3)、ES04(HES-4)、ES05(HES-5)、ES06(HES-6)、BG01(BGN-01)、BG02(BGN-02)、BG03(BGN-03)、TE03(I3)、TE04(I4)、TE06(I6)、UC01(HSF1)、UC06(HSF6)、WA01(H1)、WA07(H7)、WA09(H9)、WA13(H13)、WA14(H14)が含まれる。いくつかの態様において、幹細胞は、追加の特性を組み込むためにさらに改変される。例示的な改変細胞株には、限定されないが、H1 OCT4-EGFP、H9 Cre-LoxP、H9 hNanog-pGZ、H9 hOct4-pGZ、H9 inGFPhES、およびH9 Syn-GFPが含まれる。胚性幹細胞の詳細は、例えば、Thomson et al.,1998,"Embryonic Stem Cell Lines Derived from Human Blastocysts,"Science 282(5391):1145-1147、Andrews et al.,2005,"Embryonic stem(ES)cells and embryonal carcinoma(EC)cells:opposite sides of the same coin,"Biochem Soc Trans 33:1526-1530、Martin 1980,"Teratocarcinomas and mammalian embryogenesis,".Science 209(4458):768-776、Evans and Kaufman,1981,"Establishment in culture of pluripotent cells from mouse embryos,"Nature 292(5819):154-156、Klimanskaya et al.,2005,"Human embryonic stem cells derived without feeder cells,"Lancet 365(9471):1636-1641に見出され、これらの各々は、その全体が本明細書に組み込まれる。あるいは、多能性幹細胞は、有性生殖する生物の配偶子を生じさせる細胞である胚性生殖細胞(EGC)から派生することができる。EGCは、後期胚の性腺隆起に認められる始原生殖細胞から派生し、胚性幹細胞の特定の多くを有する。胚における原生殖細胞は幹細胞に発達し、成体では生殖配偶子(精子または卵子)を生成する。マウスおよびヒトでは、胚性生殖細胞を適切な条件下で組織培養において増殖させることが可能である。EGCおよびESCはともに多能性である。本発明の目的のために、「ESC」という用語は、EGCを包含するためにときどき使用される。
【0048】
人工多能性幹細胞(iPSC)
いくつかの態様において、iPSCを、特定の幹細胞関連遺伝子の、成体線維芽細胞などの非多能性細胞内へのトランスフェクションによって派生させる。トランスフェクションを、レトロウイルスなどのウイルスベクターを介して達成し得る。トランスフェクトされる遺伝子には、マスター転写調節因子Oct-3/4(Pouf51)およびSox2が含まれるが、他の遺伝子が誘導の効率を高めることは示唆される。3~4週間後、少数のトランスフェクトされた細胞は、形態学的および生化学的に多能性幹細胞と同様になり始め、通常、形態学的選択、倍加時間、またはレポーター遺伝子および抗生物質性選択によって単離される。本明細書で使用される場合、iPSCには、第1世代のiPSC、マウスにおける第2世代のiPSC、およびヒト人工多能性幹細胞が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの態様において、非ウイルスに基づく技術を使用して、iPSCを生成し得る。いくつかの態様において、アデノウイルスを使用して、必要な4つの遺伝子をマウスの皮膚および肝細胞のDNA内に輸送し、胚性幹細胞と同一の細胞をもたらすことができる。アデノウイルスは、それ自身の遺伝子を標的の宿主と組み合わせないため、腫瘍を創出する危険性が排除される。いくつかの態様において、再プログラミングを、非常に低い効率ではあるが、ウイルストランスフェクション系を全く使用せずにプラスミドを介して達成することができる。他の態様において、タンパク質の直接送達を使用して、iPSCを生成し、したがってウイルスまたは遺伝子修飾の必要性を排除する。いくつかの実施形態において、マウスiPSCの生成は、同様の方法論を使用して可能である。ポリアルギニンアンカーを介して細胞に運ばれる特定のタンパク質による細胞の反復処理は、多能性を誘導するのに十分であった。いくつかの態様において、多能性誘導遺伝子の発現をまた、体細胞を低酸素条件下にFGF2で処理することによって増加させることができる。胚性幹細胞の詳細については、例えば、Kaji et al.,2009,"Virus free induction of pluripotency and subsequent excision of reprogramming factors,"Nature 458:771-775、Woltjen et al.,2009,"piggyBac transposition reprograms fibroblasts to induced pluripotent stem cells,"Nature 458:766-770、Okita et al.,2008,"Generation of Mouse Induced Pluripotent Stem Cells Without Viral Vectors,"Science 322(5903):949-953、Stadtfeld et al.,2008,"Induced Pluripotent Stem Cells Generated without Viral Integration,"Science 322(5903):945-949、およびZhou et al.,2009,"Generation of Induced Pluripotent Stem Cells Using Recombinant Proteins,"Cell Stem Cell 4(5):381-384に見出すことができ、これらの各々は、その全体が本明細書に組み込まれる。いくつかの態様において、例示的なiPS細胞株には、iPS-DF19-9、iPS-DF19-9、iPS-DF4-3、iPS-DF6-9、iPS(Foreskin)、iPS(IMR90)、およびiPS(IMR90)が含まれるがこれに限定されない。
【0049】
胚体内胚葉。本明細書に記載のスフェロイド、オルガノイド、および/または組織は、胚体内胚葉(DE)と呼ばれる単純な細胞シートから派生し得る。D’Armourら.2005およびSpenceらによって教示されるように、前駆細胞から胚体内胚葉を派生させる方法は当技術分野でよく知られている。胚体内胚葉を多能性細胞(例えば、iPSCまたはESC)から生成するための任意の方法は、本明細書に記載の方法に適用可能である。いくつかの態様において、多能性細胞は桑実胚から派生する。いくつかの態様において、多能性幹細胞は幹細胞である。これらの方法で使用される幹細胞には、胚性幹細胞が含まれ得るが、これに限定されない。胚性幹細胞は、胚の内部細胞塊または胚の性腺隆起から派生することができる。胚性幹細胞または生殖細胞は、ヒトを含む種々の哺乳動物種を含むがこれらに限定されない種々の動物種から派生することができる。いくつかの態様において、ヒト胚性幹細胞を使用して、胚体内胚葉を生産する。いくつかの態様において、ヒト胚性生殖細胞を使用して、胚体内胚葉を生産する。いくつかの態様において、iPSC細胞を使用して、胚体内胚葉を生産する。いくつかの態様において、1つ以上の成長因子が、多能性幹細胞からDE細胞への分化プロセスにおいて使用される。分化プロセスで使用される1つ以上の成長因子は、TGF-ベータスーパーファミリーからの成長因子を含むことができる。そのような態様において、1つ以上の成長因子は、成長因子のTGF-ベータスーパーファミリーのNodal/アクチビンおよび/またはBMPサブグループを含み得る。いくつかの態様において、1つ以上の成長因子は、Nodal、アクチビンA、アクチビンB、BMP4、Wnt3a、またはこれらの成長因子のいずれかの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの態様において、胚性幹細胞または生殖細胞およびiPSCは、1つ以上の成長因子によって、6時間以上、12時間以上、18時間以上、24時間以上、36時間以上、48時間以上、60時間以上、72時間以上、84時間以上、96時間以上、120時間以上、150時間以上、180時間以上、または240時間以上処理される。いくつかの態様において、胚性幹細胞または生殖細胞およびiPSCは、1つ以上の成長因子によって、10ng/ml以上、20ng/ml以上、50ng/ml以上、75ng/ml以上、100ng/ml以上、120ng/ml以上、150ng/ml以上、200ng/ml以上、500ng/ml以上、1,000ng/ml以上、1,200ng/ml以上、1,500ng/ml以上、2,000ng/ml以上、5,000ng/ml以上、7,000ng/ml以上、10,000ng/ml以上、または15,000ng/ml以上の濃度で処理される。いくつかの態様において、成長因子の濃度は、処理全体を通して一定レベルで維持される。他の態様において、成長因子の濃度は、処理過程の際に変化される。いくつかの態様において、成長因子は、様々なHyClone濃度を有するウシ胎児セリン(FBS)含む培地に懸濁させる。当業者は、本明細書に記載のレジメンが、任意の既知の成長因子に、単独でまたは組み合わせて、適用可能であることを理解するであろう。2つ以上の成長因子を使用する場合、各成長因子の濃度は独立して変化され得る。いくつかの態様において、胚体内胚葉細胞が豊富である細胞の集団が使用される。いくつかの態様において、胚体内胚葉細胞は、単離されるか、または実質的に精製される。いくつかの態様において、単離または実質的に精製された胚体内胚葉細胞は、SOX17、FOXA2、および/またはCXRC4マーカーをOCT4、AFP、TM、SPARC、および/またはSOX7マーカーよりも高い範囲まで発現する。細胞集団を胚体内胚葉によって豊富化するための方法も熟慮される。いくつかの態様において、胚体内胚葉細胞は、胚体内胚葉細胞の表面に存在するが他の細胞の表面には存在しない分子に結合する試薬と細胞を接触させ、次いで試薬に結合した細胞を分離することによって、混合細胞集団から単離または実質的に精製することができる。特定の態様において、胚体内胚葉細胞の表面に存在する細胞成分は、CXCR4である。本発明で使用することができるDE細胞を獲得または形成するための追加の方法には、限定されないが、D’Amourらの米国特許第7,510,876号、Fiskらの米国特許第7,326,572号、Kubo1ら.,2004,"Development of definitive endoderm from embryonic stem cells in culture," Development 131:1651-1662、D’Amourら.,2005,"Efficient differentiation of human embryonic stem cells to definitive endoderm," Nature Biotechnology 23:1534-1541、およびAngら.,1993,"The formation and maintenance of the definitive endoderm lineage in the mouse:involvement of HNF3/forkhead proteins," Development 119:1301-1315に記載にされるものが含まれ、これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。いくつかの態様において、可溶性FGFおよびWntリガンドは、培養における初期後腸の仕様を模倣するために使用され、分化誘導を通じて、iPSCまたはESCから発生されたDEを、すべての主要な腸細胞タイプを効率的生じさせる後腸上皮に変換する。ヒトでは、DEの分化誘導は、腸の発達に重要である特定のシグナル伝達経路を選択的に活性化することによって達成される。任意のWntシグナル伝達タンパク質の発現を任意のFGFリガンドと組み合わせて変更することは、本明細書に記載されるように分化誘導を生じさせることができることが当業者によって理解されるであろう。いくつかの態様において、DE培養は、本明細書に記載のシグナル伝達経路の1つ以上のモジュレーターによって、6時間以上、12時間以上、18時間以上、24時間以上、36時間以上、48時間以上、60時間以上、72時間以上、84時間以上、96時間以上、120時間以上、150時間以上、180時間以上、200時間以上、240時間以上、270時間以上、300時間以上、350時間以上、400時間以上、500時間以上、600時間以上、700時間以上、800時間以上、900時間以上、1,000時間以上、1,200時間以上、または1,500時間以上処理される。
【0050】
いくつかの態様において、DE培養は、本明細書に記載されるシグナル伝達経路の1つ以上のモジュレーターによって、10ng/ml以上、20ng/ml以上、50ng/ml以上、75ng/ml以上、100ng/ml以上、120ng/ml以上、150ng/ml以上、200ng/ml以上、500ng/ml以上、1,000ng/ml以上、1,200ng/ml以上、1,500ng/ml以上、2,000ng/ml以上、5,000ng/ml以上、7,000ng/ml以上、10,000ng/ml以上、または15,000ng/ml以上の濃度で処理され得る。いくつかの態様において、シグナル伝達分子の濃度は、処理全体を通して一定に維持される。他の態様において、シグナル伝達経路のモジュレーターの濃度は、処理過程の際に変化される。いくつかの態様において、本発明によるシグナル伝達分子は、DMEMおよびウシ胎児セリン(FBS)を含む培地に懸濁される。FBSは、2%以上、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、30%以上、または50%以上の濃度であることができる。当業者は、本明細書に記載のレジメンが、本明細書に記載のシグナル伝達経路の任意の既知のモジュレーターに、単独でまたは組み合わせて適用可能であり、限定されないが、WntおよびFGFシグナル伝達経路の分子を含むことを理解するであろう。
【0051】
2つ以上のシグナル伝達分子がDE培養を処理するために使用される態様では、シグナル伝達分子は同時にまたは別々に加えることができる。2つ以上の分子を使用する場合、各々の濃度は独立して変化され得る。
【実施例0052】
以下の非限定的な例は、本明細書に開示される本発明の実施形態をさらに説明するために提供される。以下の実施例に開示される技術は、本発明の実施において十分に機能することが認められている方法を表し、したがって、その実施のための方式の例を構成すると考えることができることを当業者は理解すべきである。しかし、当業者は、本開示に照らして、多くの変更が開示される特定の実施形態においてなされ得、さらに同様または類似の結果を本発明の精神および範囲から逸脱することなく取得することができることを理解すべきである。
【0053】
ヒト多能性幹細胞から派生される結腸オルガノイド培養における機能的免疫細胞の確立
成体型造血前駆細胞は、胚性結腸に近接して発生する造血内皮から生じる。ここで、出願人は、造血内皮ならびに骨髄およびリンパ系派生体を形成する能力のある造血前駆細胞を共発生させるヒト多能性幹細胞から派生される結腸オルガノイド培養物を操作している。BMPシグナル伝達は、造血内皮を形成する能力があり、RUNX1発現性造血前駆細胞を生じさせる後腸間葉を生成するために使用され得る。培養の3週間まで、骨髄細胞タイプおよびリンパ系細胞の多様な配列が存在する。マクロファージは、延長されたインビトロ培養後、HCOの発達中の間葉内に維持され得る。HCOの移植およびインビボでの3ヶ月の成長に続いて、PSCから派生されるヒトマクロファージは結腸上皮との密接な関連を確立し、宿主から派生されるマクロファージによって置き換えられなかった。HCO関連マクロファージは、機能的であり、炎症性サイトカインの生成によってLPSおよび病原性細菌の両方に応答し、経上皮移動を受けており、細菌を貪食し、組織常在マクロファージのすべての特性であった。胚の場合と同様に、出願人によって操作されたヒト後腸/結腸オルガノイド培養物は、骨髄系統およびリンパ系統を生じさせる造血内皮の形成を支持し、発達中のヒト結腸に長期常在を確立するマクロファージを含む。
【0054】
成体腸管に存在する多様な配列の免疫細胞がある。これらには、骨髄細胞およびリンパ細胞の両タイプが含まれ、上皮およびENSと協調してバリア機能を維持し、マイクロバイオームと伝達し、有用な抗原と有害な抗原を区別する。腸のほとんどの疾患、特に炎症性腸疾患(IBD)は、免疫系を含む。教義は、腸のすべての免疫細胞は骨髄から派生される造血幹細胞(HSC)から派生するとする。しかし、動物実験からの証拠の増加は、いくつかの器官は、胚発生の際に共発生する組織常在マクロファージの集団を含むという結論を裏付ける1-3。最近、結腸には、胚性前駆細胞および成体HSCの両方から派生される安定した自己維持型のマクロファージ集団が含まれていることが示された
【0055】
造血細胞は3つの部位から発生する。原始造血細胞は原腸陥入時に発生し、卵黄嚢に移動し、短命である。成体型造血前駆細胞(HPC)は、卵黄嚢または発生中の結腸に隣接する胚の大動脈-性腺-中腎(AGM)領域のいずれかで、造血内皮から派生する。原始造血細胞の1つの際立った特徴は、潜在的である限定された分化能を有し、潜在的であるリンパ系を有さないことである。AGM領域から派生される胚内HPCは、Runx1およびTekなどのマーカーを発現し、大動脈の内皮および後腸に隣接する周囲の血管から出現する。胚のこの後部領域の発達は、BMPシグナル伝達を必要とする7-10。さらに、BMPシグナル伝達は、造血内皮形成に必要とされる転写因子であるGATA2の発現を調節する11
【0056】
ヒト多能性幹細胞の分化誘導によるヒト結腸オルガノイド(HCO)の操作は、既に出願人によって達成されている10。このようなHCOは、結腸上皮、ならびに線維芽細胞、筋線維芽細胞、および平滑筋細胞を含む周囲の間葉系派生細胞の両方を含む。HCO分化の段階の際に発生した転写変化のバイオインフォマティクス分析によって、造血発生に関連する遺伝子における驚くべき豊富化が明らかにされた。本明細書に開示されるのは、図10に示されるように、HCO内に存在する細胞型の範囲を特定するために培養を処理する方法である。
【0057】
造血前駆細胞は、尾側中胚葉から発生する。尾側中胚葉が特定されているかどうかを決定するために、出願人は、前方および後方に発現されるHOX遺伝子の発現を試験した。以前の結果と一致して、後方hox遺伝子は、BMP処理によって有意に上方調節された(図11、パネルD)。さらに、EHT12を阻害するHOXA3を含む前方hox因子は、HIOと比較してHCOで下方調節された。後腸および結腸の運命の形成がBMPシグナル伝達の一時的な活性化によって誘導される場合(BMP2処理はプロトコルの7~10日目に生じる)、GATA2、KDR/FLK1、ならびに全内皮マーカーCD34およびVEGFR1を含む造血血管マーカーの発現が認められ、マウス胚の後腸を発生する際に認められるものと同様である(図11)。
【0058】
HCO培養における免疫細胞の存在は、これらの細胞が原始的であるか、または造血内皮から派生されるかという問題を提起する。原始造血前駆細胞のマーカーであるGYPA(CD235)(図11、F)の発現は観察されず13、造血細胞の供給源が造血内皮だったことを示唆する。RUNX1発現性造血前駆細胞は、e10.5マウス胚におけるAGM領域の内皮から出現することが示されている(図4(A~C))。HCO培養物も同様に、関連するRUNX1+細胞のクラスターを有するCD34+内皮管を有していた(図4(D~G))。造血内皮は、CD73発現の欠如によって非造血内皮からさらに区別することができる14。フローサイトメトリーによる21日目のHCO培養物の分析は、CD34/CD73内皮細胞の存在を明らかにし、造血内皮の存在を示唆した(図4(H))。培養21日まで、HCOの転写プロファイルは、HIOと比較して、免疫細胞およびそれらの機能に関連する経路関係を明らかにした。これらには、好中球の脱顆粒化、自然免疫系、血小板活性化、および白血球の経内皮移動が含まれた。免疫蛍光染色(IF)による21日目のHCO培養の分析によって、結腸オルガノイドの間葉内に埋め込まれたが、腸オルガノイドには埋め込まれないPU.1細胞およびCD34内皮管の存在が確証された。(図12)。22日目のHCO培養の明視野ライブイメージングによって、内皮管内を移動する難治性細胞が明らかになり、培地における間葉および浮遊物の両方で出現し、認められる。これらのデータを総合すると、HCO培養物は造血性細胞を生成することができる造血内皮を含むことが示唆される。
【0059】
HCO培養における細胞タイプを決定するために、培地をサンプリングし、サイトスピンおよびギムザ染色を実施して、マクロファージ、好中球、好酸球、好塩基球に似た細胞を特定した(図5、A)。外因性因子またはマウス骨髄間質細胞は培養に加えられず、HCOにおける間葉系細胞タイプは、骨髄細胞タイプの分化を支持することができたことを示唆した。HCOによって生成された赤血球骨髄性前駆細胞が存在するかどうかを決定するために、Methocult(商標)アッセイを実施した。HCOは、赤血球、骨髄、および混合骨髄コロニーを生成することができる前駆細胞を含んでいたが、HIO培養は含まなかった(図5、B)。ヒト胚性および人工多能性幹細胞株からのHCOは、赤血球骨髄派生体を生成する能力があり、この方法はPSC株にわたって頑強であることを示す。HCOから生成された赤血球は、胎児(HBG1および2)および胎児/成人(HBA1、HBA2)ヘモグロビンを発現したが、胚性ヘモグロビン(HBE1、HBZ)のレベルは認識可能なレベルではなく、HCO培養が成体型赤血球骨髄前駆細胞を含むことを示唆する。
【0060】
【表1】
【0061】
胚内の成体型造血細胞の特徴の1つは、T細胞のようなリンパ細胞タイプを形成する能力である13、15。潜在的であるリンパ系を有する造血前駆細胞が胚発生の後期に出現することから、出願人は、これらの前駆細胞がHCO間葉の長期培養後に出現すると仮定した。したがって、出願人は、インタクト造血内皮管の長期維持を可能にする培養方法を開発した(図10、C)。HCO培養をさらに1週間増殖させて間葉を拡張させ、これをプレートからこすり取り、浮遊培養でさらに3週間まで増殖させた。リンパ系の潜在的なT細胞誘導成長因子について試験するために、IL7およびFLT3を添加した。T細胞誘導がない場合、HCO培養には0.2%CD3+/CD4+細胞が含まれた。T細胞誘導成長因子の添加は、T細胞の数を4倍増加させた(図5、E)。潜在的であるT細胞の存在は、HCO培養から形成された造血細胞が成体型であるという結論をさらに裏付ける。
【0062】
最終的な造血は、発生の際に胎児の肝臓、次に骨髄を含む他の器官に移動するが、組織常在マクロファージは、発生の初期に器官をコロニー化することができ、出現まで持続することができる。肺および肝臓などのいくつかの器官では、胚性マクロファージは寿命にわたって存続する。他の器官では、出生後骨髄におけるHSCは、胚性マクロファージに代わるマクロファージを生じる。結腸では、いくつかのデータは、胚性マクロファージがHSCから派生されるマクロファージによって代えられることを示唆する16、17。ただし、胚性マクロファージの最近の系統追跡は、それらがHSCから派生されるマクロファージと一緒に出生後に存続することを示唆している。結腸オルガノイドは21日目に、間葉の破壊および個々のHCOの分散をもたらす粉砕によって継代された。次に、HCOをMatrigelに再プレーティングし、さらに14日間培養した。転写プロファイルを遺伝子オントロジー分析で検査し、白血球、好中球などの骨髄細胞タイプ、ならびに防御および炎症反応に関連するGO用語の濃縮を観察した。
【表2】
【0063】
35日目のHCOの免疫染色によって、マーカーCD68およびHAM56(データは示さず)を発現するマクロファージ、ならびに組織常在マクロファージマーカーCD163が明らかにされた(図1218、19。CD163は、肺胞マクロファージ、肝臓のクッパー細胞、および胎盤のホーフバウアー細胞など、いくつかの組織常在マクロファージ集団で発現される20-22。炎症性マクロファージの存在は、CD163および炎症性マクロファージの既知マーカーであるiNOSを共染色することによって調査した(図7)。興味深いことに、CD163+マクロファージの大部分はiNOSでも陽性であり、これらの細胞は炎症性であることを示唆する。これらのデータをまとめると、HCOは、組織常在および炎症性マクロファージマーカーを共発現する共発生マクロファージを含むことを示唆する。
【0064】
ヒト腸には、マクロファージの複数のサブタイプが存在する。HCO内のマクロファージが異種であるかどうかを決定するために、CYTOFを使用して細胞表面マーカーの発現を調査した。CYTOF分析によって、CD11bhi集団、CD14-/CD16+集団、CD14+/CD16+集団、およびCD14+/CD16-を含む少なくとも4つの異なる単球集団の存在が明らかにされた。これらのデータは、HCO培養がネイティブなヒト腸と同様の単球/マクロファージの多様なセットを生成できることを示唆する。
【0065】
結腸における組織常在マクロファージは、骨髄から派生される単球(BMDM)によって継続的に補充されると仮定されている16、17。しかし、最近の研究はそのパラダイムに異議を唱え、マクロファージのいくつかのサブタイプはBMDMによって継続的に補充されるが、他のサブタイプは長寿命で自己維持的である胚供給源を有することを示唆した4、23、24。HCOマクロファージ(「HCOMac」)が長期間維持され得るか決定するために、HCOのマウス腎臓被膜への移植後にヒトCD163+マクロファージの存在を検査した(図8)。出願人は、短命のマクロファージは、マウス特異的マーカーF/480を発現する宿主から派生するネズミマクロファージによって置き換えられるであろうと仮定した。コントトールでは少数のhCD163+細胞のみが検出されたが、NOG HIO移植では検出されず、F/480+マクロファージは絨毛の上部まですべての間葉層に浸潤した(図5)。対照的に、hCD163マクロファージは移植12週間後でさえHCOにおいて容易に検出可能だった。これらのマクロファージは主に、F/480+マクロファージの浸潤を欠如している固有層に位置していた。筋層では、hCD163+細胞にF/480+が散在しており、宿主マクロファージがこれらの組織層にコロニー形成していることを示唆する。HCO移植マウスからの血液および骨髄の検査によって、ヒトから派生される細胞の欠如が明らかにされ、hCD163マクロファージがHCO内で自己維持され、骨髄にコロニー形成していたヒト細胞によって補充されなかったことが示唆された(図14)。これらのデータは、HCOが自己維持型マクロファージをBMDMとは独立して生成することを示唆する。
【0066】
35日間のHCOからのRNAseqデータの調査は、HIOと比較して炎症兆候を明らかにした。HCOが実際に機能的炎症を示したことを確認するために、HCOの培地への炎症促進性サイトカインの分泌をLuminexマルチプレックスELISAを使用して検査した(図13)。IL1B、IL6、およびIL8はすべて、インビトロで上皮細胞によって発現されることが報告されており、上皮細胞がHCOで示される炎症兆候に寄与し得ることを示唆する。マクロファージが炎症性であることを確認するために、マクロファージ炎症性タンパク質1A(MIP1A)および1B(MIP1B)の分泌を検査した。HCOは有意に高いレベルのMIP1AおよびMIP1Bを分泌し、HCO内のマクロファージが炎症の基礎レベルを示すことを示唆した。
【0067】
成体結腸マクロファージは、通常、グラム陰性菌の細胞壁成分であるリポ多糖(LPS)による刺激に耐性である25。対照的に、胎児マクロファージはLPS刺激に反応し、寛容が出生後に達成されることを示唆する26。HCO内のマクロファージがLPS刺激に感受性であるか決定するために、HCOをLPSで処理し、細胞の運動性および炎症性サイトカインの分泌を検査した。ライブイメージングによって、マクロファージはLPSに応答してそれらの運動性を高め、オルガノイド内の増殖巣に走化性を受けることができたことが明らかにされた(図8(A))。サイトカイン分泌の検査は、IL6、IL8、MIP1A、MIP1B、およびTNFAにおける有意な増加を明らかにし、サイトカイン生成がマクロファージ運動性の駆動因子である可能性を示唆する(図8(B~E))。
【0068】
LPSによるHCOの直接的な刺激は、オルガノイド内のマクロファージがサイトカインおよび細菌因子に応答することができることを示唆した。マクロファージは、細菌を貪食することによって、自然免疫において直接的な役割を果たす。HCOマクロファージ(「HCOmacs」)が細菌を貪食することができるか決定するために、HCOをpH感受性フルオロフォアで標識されたE.coli粒子によって処理した。ライブイメージングによって、HCOMacが継続的に糸状仮足を伸ばし、微小環境を調査していることが明らかにされた。HCOMacは、pH感受性蛍光の増加によって明らかなように、酸性ファゴリソソーム内の細菌粒子を貪食する(図8(F~G))。加えて、生きた共生E.coliおよびEHECのマイクロインジェクションは、HCOの内腔へのマクロファージ移動(図9(A~F))を、サルモネラに感染したマウスにおいて観察されているものと同様に誘導した27。さらに、HCOの内腔への細菌の導入は、おそらく細菌による粘液の分解に起因してMUC2染色の減少をもたらした(図9(G))。まとめると、出願人のデータは、HCOMacが細菌粒子および生きた細菌に反応することができる機能的な常在様マクロファージであることを示唆している。
【0069】
哺乳類の後腸および大動脈-性腺-中腎領域の発生は、互いに近接して生じる。BMPシグナル伝達は、後腸内胚葉および間葉の後方HOXパターンの両方を活性化するだけでなく、造血内皮転写因子GATA2の発現も活性化することが示されている。HCOを生成するために前述の方法を使用して、BMPシグナル伝達は、成体型造血の可能性を有する造血内皮も特定する。これは、成体型造血前駆細胞が腹側後方中胚葉から形成される正常なヒト発生と一致している。したがって、本明細書に記載のHCO培養は、当初考えられていたよりも後胚の大部分を厳密に模倣していると考えられる。
【0070】
HCO培養からの造血前駆細胞は、造血成長因子およびマウスから派生する骨髄間質細胞(OP9-DLL4細胞)が存在しない場合でも、潜在的である赤血球-骨髄およびリンパ系を有する。これは、HCO培養で共発生する中胚葉がこれらのシグナルおよび細胞タイプの欠如を補うことを示唆する。興味深いことに、造血成長因子はHIO培養で発現されており、これらの因子を発現する細胞の発生はBMPシグナル伝達に依存しないことを示唆している。これらの細胞タイプは、ネズミのものであり、そのため免疫原性特性をヒト造血前駆細胞に付与する可能性が高いOP9-DLL4細胞を使用する代替えであり得る28、29。さらに、最近の研究ではマクロファージのサブセットが腸内で自己維持されることが示されているため、これらの細胞タイプも正常な腸組織に存在し得る
【0071】
HCO内の共発生マクロファージの存在は、自然免疫細胞と結腸上皮の間の相互作用を検査するための新しいツールをもたらす。さらに、HCOは、組織常在マクロファージの維持を可能にするニッチ因子を決定するために使用することができる。HCOは、壊死性腸炎、超早期発症IBD30などの炎症性疾患、クロストリジウム・ディフィシルなどの細菌病原体、および胎児の腸マクロファージに容易に感染するHIVなどのウイルス病原体のモデル化を可能にするであろう31。さらに、他の免疫細胞タイプの組み込みを使用して、好中球誘導性炎症性低酸素症などの他の自然免疫メカニズムを研究することができる32
【0072】
方法
DE誘導。ヒトESおよびiPS細胞を、単一細胞として、Matrigel(BD Biosciences)コーティング24ウェルプレートにおいてROCK阻害剤Y27632(10μM、Stemgent)を添加したmTesR1培地に、ウェルあたり細胞150,000個で加えた。翌日から開始し、細胞は0%、0.2%、および2.0%の増加させた濃度の非精製ウシ胎児血清(dFBS、Invitrogen)を含有するRPMI1640(Invitrogen)中でアクチビンA(100ng/ml、Cell Guidance Systems)によって3日間で処理した。内胚葉パターン形成および腸管形態形成。DE誘導後、細胞を2.0%dFBS添加したRPMI1640中で成長因子/アンタゴニストによって3日間処理した。後方前腸スフェロイドを生成するために、DEをFGF4(500ng/ml、R&D Systems)、CHIR99021(3μM、Stemgent)によって4日間処理した。三次元の成長。中-後腸スフェロイドは、既に報告されているように、Matrigel(BD Biosciences)に埋め込み10、12、続いて、N2(Invitrogen)、B27(Invitrogen)、L-グルタミン、10μM HEPES、ペニシリン/ストレプトマイシン、およびEGF(100ng/ml、R&D Systems)を添加したAdvanced DMEM/F12(Invitrogen)中で増殖させた。近位腸仕様のために、Noggin(100ng/m、R&D Systems)を三次元成長の最初の3日間追加した。結腸仕様のために、BMP2(100ng/ml、R&D Systems)を三次元成長の最初の3日間追加した。
【0073】
増加した免疫細胞生成を有するヒト腸オルガノイド(HIO)の生成方法
ヒト胚性幹細胞および人工多能性幹細胞は、フィーダー無添加のmTesR1培地中でMatrigel(BD Biosciences)上に維持される。胚体内胚葉への分化は、既に報告されているように実行した(D’Amour KA、et al.Efficient differentiation of human embryonic stem cells to definitive endoderm.Nat Biotechnol.2005;23:1534-1541)。簡単に説明すると、3日間のアクチビンA(R&Dシステム)分化プロトコルを使用した。細胞を、0%、0.2%、2%HyClone未精製ウシ胎児血清(dFBS)(Thermo Scientific)の増加させた濃度を添加したRPMI1640培地(Invitrogen)中で、アクチビンA(100ng/mL)によって3日間連続して処理する。後腸分化のために、DE細胞を500ng/ml FGF4および500ng/ml Wnt3a(R&D Systems)を添加した2%dFBS-DMEM/F12中で最大4日間インキュベートする。成長因子による処理の2~4日で三次元の浮遊スフェロイドが形成され、次いで腸の成長および分化を促進することが既に示されている三次元培養に移す(Gracz AD,Ramalingam S,Magness ST.Sox9-Expression Marks a Subset of CD24-expressing Small Intestine Epithelial Stem Cells that Form Organoids in vitro.Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol.2010;298:G590-600、16.Sato T,et al.Single Lgr5 stem cells build crypt-villus structures in vitro without a mesenchymal niche.Nature.2009;459:262-265)。簡単に説明すると、スフェロイドは500ng/mL R-Spondin1(R&D Systems)、100ng/mL Noggin(R&D Systems)、および50ng/mL EGF(R&D Systems)を含むMatrigel(BD Bioscience)に埋め込む。Matrigelが固化した後、成長因子を含む培地(L-グルタミン、10μM Hepes、N2サプリメント(R&D Systems)、B27サプリメント(Invitrogen)、およびPen/Strepを添加したAdvanced DMEM/F12(Invitrogen))を覆い、4日ごとに交換した。
【0074】
増加した免疫細胞生成を有するヒト結腸オルガノイド(HCO)の生成方法
ヒト胚性幹細胞および人工多能性幹細胞は、Matrigel(BD Biosciences)によってコーティングされた6ウェルNunclon表面プレート(Nunc)においてフィーダーフリー条件下で増殖させ、mTESR1培地(Stem Cell Technologies)中で維持する。胚体内胚葉(DE)の誘導のため、ヒトESまたはiPS細胞をAccutase(Invitrogen)を用いて継代し、MatrigelコーティングしたNunclon表面24ウェルプレートにウェルあたり細胞100,000個の密度で加える。Accutaseスプリット細胞について、10μM Y27632化合物(Sigma)を培地に最初の日に添加した。最初の日の後、培地をmTESR1に交換し、細胞をさらに24時間増殖させた。次に、既に報告されているように(Spenceら、2011)、細胞を100ng/mLのアクチビンAによって3日間処理する。DE誘導後、DEを後腸誘導培地(RPMI1640、2mM L-グルタミン、2%非動化FBS、ペニシリン-ストレプトマイシン)とともに4日間、500ng/mL FGF4(R&D)および3μMカイロン99021(Tocris、WNT経路アクチベーター、GSK3を阻害する)によって処理して、中-後腸スフェロイドの形成を誘導した。中腸/後腸スフェロイドを24ウェルプレートから収集し、前述のようにMatrigel(BD)に加え、続いてN2(Invitrogen)、B27(Invitrogen)、L-グルタミン、10μM HEPES、ペニシリン/ストレプトマイシン、およびEGF(100ng/ml、R&D Systems)を添加したAdvanced DMEM/F12(Invitrogen)で増殖させる。ヒト結腸オルガノイド(HCO)を生成するため、スフェロイドは100ng/mL EGFプラス100ng/mL BMP(BMP2もしくは4、R&D、またはその他のBMP経路アクチベーターも使用し得る)で少なくとも3日間覆う。培地は3日後に交換し、すべてのパターン化条件用の培地にEGFのみを維持した。その後、メディアは週に2回交換した。
【0075】
HCO培養からのヒト造血細胞の単離
BMP経路の活性化の少なくとも3日後(たとえば、9日目)、HCOは、KDR、FLT1、およびGATA2などのマーカーを発現する血管中胚葉細胞を含み始める。Matrigelにおける継続的な成長は、CD31、CD34を発現する造血内皮の形成をもたらす。15日目から20日目までの間に、培養は、RUNX1を発現する造血前駆細胞/幹細胞を生成する内皮管を有する。HCO培養の培地を収集することによって、骨髄細胞(好塩基球、好中球、好酸球)、単球、およびマクロファージを含む広範囲の分化した造血細胞が同定された。フローサイトメトリーを使用し、未成熟B細胞およびT細胞のマーカーを発現する細胞も認めることができる。
【表3】
【0076】
培地から収集した細胞のMethoCult(商標)H4434Classicにおける増殖は、赤血球、顆粒球、およびマクロファージからなるコロニーの形成をもたらす。Methocult(商標)H4434Classicは、イスコフMDMにメチルセルロース、ウシ胎児血清、ウシ血清アルブミン、2-メルカプトエタノール、組換えヒト幹細胞因子(SCF)、組換えヒトインターロイキン3(IL-3)、組換えヒトエリスロポエチン(EPO)、組換えヒト顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)を含む。
【0077】
HCOにおける機能的マクロファージの生成
HCOを新鮮なMatrigelに継代して継続される培養は、機能的なマクロファージの生成をもたらす(約20日目から約34日目以降)。マクロファージは、リポ多糖(LPS)または細菌などの感染性刺激に機能的に反応し、細菌を貪食して、IL6、IL8、CCL3、CCL4、およびTNF-αを含む炎症性サイトカインを自発的およびLPSに反応して生成することができる。マクロファージはIL10にも反応し、炎症性サイトカイン生成の減少をもたらす。マクロファージはまた、M-CSF阻害または添加に反応し、それぞれ減少および増加したマクロファージ数を伴う。
【0078】
増加した免疫細胞生成を有するヒト肝臓オルガノイドを生成する方法
hiPSCの胚体内胚葉への分化は、既に報告されている方法をいくつかの変更を加えて使用して誘導される(Spenceら、2011)。簡単に説明すると、hiPSCのコロニーをAccutase(Thermo Fisher Scientific Inc.,ウォルサム、マサチューセッツ州、アメリカ)で分離し、150,000~300,000個の細胞をMatrigelまたはラミニンでコーティングした組織培養24ウェルプレート(Corning、ダーラム、ノースカロライナ州)に加える。細胞が高密度(ウェルの90%超が細胞で覆われる)になるとき、培地は1日目に100ng/mLアクチビンA(R&D Systems,ミネアポリス、ミネソタ州)および50ng/mL骨形態形成タンパク質4(BMP4、R&D Systems)を含み、2日目に100ng/mLアクチビンAおよび0.2%ウシ胎児血清(FCS、Thermo Fisher Scientific Inc.)を含み、3日目に100ng/mLアクチビンAおよび2%FCSを含む、RPMI 1640培地(Life Technologies,カールスバッド、カリフォルニア州)に変更した。4~6日では、細胞は、2%B27(Life Technologies)、1%N2(Gibco、Rockville、MD)、2mM L-グルタミン(Gibco)、および1mM HEPES(Gibco)、1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco)を添加し、500ng/ml線維芽細胞成長因子(FGF4、R&D Systems)および3μM CHIR99021(Stemgent、ケンブリッジ、マサチューセッツ州、アメリカ)を含む、Advanced DMEM/F12(Thermo Fisher Scientific Inc.)で培養することによって後方中腸に分化される。細胞分化のための培養を、5%CO/95%空気の雰囲気中で37℃に維持し、培地は毎日交換する。分化した胚体内胚葉は、7日目にプレーで出芽を示した。スフェロイドがMatrigelに埋め込むのには十分でない場合は、4~6日目の培地を再度添加し、37℃で一昼夜インキュベートする。
【0079】
肝臓オルガノイドへの分化。4つの方法がDEを肝臓オルガノイドに分化するために使用され得、「Matrigelドロップ法」、「Matrigelサンドイッチ法」、「Matrigelフリー法」、「スフェロイド生成トランスウェル法」であり、各々について後述される。
【0080】
Matrigelドロップ法:7~8日目に、播種された細胞を有する胚体内胚葉オルガノイドを穏やかにピペッティングして、皿から剥離する。分離したスフェロイドを800rpmで3分間遠心分離し、上清を除去した後、皿上で100%Matrigelドロップに埋め込む。250μLのMatrigel(Corning)を、内胚葉培養の24ウェルプレートのウェルあたりで使用する。80μLのMatrigelドロップが、24ウェルプレート(VWR Scientific Products、ウェストチェスター、ペンシルベニア州)の各ウェルについて1つずつ作製される。プレートを5%CO/95%空気の雰囲気下で37℃に5~15分間放置する。Matrigelが固化した後、Advanced DMEM/F12をB27、N2、L-グルタミン、HEPES、ペニシリン/ストレプトマイシン、およびレチノイン酸(RA、Sigma、セントルイス、ミズーリ州)2μMとともに1~5日間加える。培地は1日おきに交換する。RA処理後、Matrigelドロップに埋め込まれたオルガノイドは、10ng/mL肝細胞成長因子(HGF、PeproTech、ロッキーヒル、ニュージャージー州)、0.1μMデキサメタゾン(Dex、Sigma)、および20ng/mLオンコスタチンM(OSM、R&D Systems)を添加した肝細胞培養培地(HCM Lonza、ウォーカーズビル、メリーランド州)で培養する。細胞分化のための培養は、5%CO/95%空気の雰囲気中で37℃に維持し、培地は3日ごとに交換する。20~30日目頃、Matrigelドロップに埋め込まれたオルガノイドは、任意の分析のためにかき取って軽くピペッティングすることによって分離し得る。
【0081】
Matrigelサンドイッチ法:7~8日目に、播種された細胞を有する胚体内胚葉オルガノイドを穏やかにピペッティングして、皿から剥離する。分離したスフェロイドを800rpmで3分間遠心分離し、上清を除去した後、100%Matrigelと混合する。同時に、すべての補充剤を添加した肝細胞培地を同容量の100%Matrigelと混合する。HCMとMatrigelの混合物を皿の底に配置してプレート上に厚いコーティングを作製し(0.3~0.5cm)、5%CO/95%空気の雰囲気下で37°Cに15~30分間放置する。Matrigelが固化した後、Matrigelと混合したスフェロイドをMatrigelの厚くコーティングされたプレートに播種する。プレートを5%CO/95%空気の雰囲気下で37℃に5分間放置する。Advanced DMEM/F12を、B27、N2、L-グルタミン、HEPES、ペニシリン/ストレプトマイシン、およびレチノイン酸(RA、Sigma、セントルイス、ミズーリ州)2μMとともに1~5日間添加する。培地は1日おきに交換する。RA処理後、Matrigelドロップに埋め込まれたオルガノイドは、10ng/mL肝細胞成長因子(HGF、PeproTech、ロッキーヒル、ニュージャージー州)、0.1μMデキサメタゾン(Dex、Sigma)、および20ng/mLオンコスタチンM(OSM、R&D Systems)を添加した肝細胞培養培地(HCM Lonza、ウォーカーズビル、メリーランド州)で培養する。細胞分化のための培養は、5%CO/95%空気の雰囲気中で37℃に維持し、培地は3日ごとに交換する。20~30日目頃、Matrigelドロップに埋め込まれたオルガノイドは、任意の分析のためにかき取って軽くピペッティングすることによって分離する。
【0082】
Matrigelフリー法:7~8日目に、播種された細胞を有する胚体内胚葉オルガノイドを、B27(Life Technologies)、N2(Gibco、ウォーカーズビル、メリーランド州)、L-グルタミン、HEPES、ペニシリン/ストレプトマイシン、およびレチノイン酸(RA;Sigma、セントルイス、メリーランド州),2μMを添加したAdvanced DMEM/F12(Thermo Fisher Scientific Inc.)中で平面培養を4日間継続する。培地は1日おきに交換する。4日間の平面培養後、オルガノイドは発芽し始めるが、2D細胞は肝細胞に分化する。オルガノイドと肝細胞の両方は、10日間、10ng/mL肝細胞成長因子(HGF、PeproTech、ロッキーヒル、ニュージャージー州)、0.1μMデキサメタゾン(Dex、Sigma)、および20ng/mLオンコスタチンM(OSM、R&D Systems)を添加した肝細胞培養培地(HCM Lonza、ウォーカーズビル、メリーランド州)下で60日にわたって維持することができる。オルガノイドアッセイでは、浮遊オルガノイドを超低付着6ウェルプレートに収集し、必要に応じて、その後のアッセイに使用することができる。細胞分化のための培養は、5%CO/95%空気の雰囲気中で37℃に維持し、培地は3日ごとに交換する。
【0083】
スフェロイド生成トランスウェル法:後方中腸スフェロイドは上記のように形成される。前方前腸スフェロイドは、4~6日目分化のわずかな変更によって形成される。前方前腸スフェロイドでは、B27(Life Technologies)、N2(Gibco、ウォーカーズビル、メリーランド州)、L-グルタミン、HEPES、ペニシリン/ストレプトマイシン、500ng/ml FGF4、2μM CHIR99021、および200ng/mlノギンが添加されたAdvanced DMEM/F12(Thermo Fisher Scientific Inc.)を加え、4~7日間毎日交換する。8日目に、前方および後方からの細胞をピペッティングおよびトリプシン消化によって単一細胞懸濁液に解離させ、96ウェル超低付着プレートに播種して一昼夜インキュベートする。9日目に、細胞凝集体を収集し、前方および後方を混合して一昼夜インキュベートする。10日目に、前方および後方のMatrigelドロップが互いに付着するようになる。12ウェルプレート(Denville)を50μl Matrigelでコーティングし、37℃で2分間インキュベートする。付着した前方および後方凝集体のスフェロイドを、最小限のMatrigelとともに広口10μLピペットで注意深く拾い上げ、Matrigelコーティングされた12ウェルプレートに加える。追加の5μLのMatrigelを各スフェロイドに加える。B27、N2、L-グルタミン、HEPES、およびペニシリン/ストレプトマイシンを添加したAdvanced DMEM/F12を加えた。13日目に、スフェロイドを広口ピペットによって収集し、トランスウェルプレートに移し、追加の5μL Matrigelによって覆う。B27、N2、L-グルタミン、HEPES、およびペニシリン/ストレプトマイシンを添加しAdvanced DMEM/F12を下部ウェルに加え、5日ごとに交換する。
【0084】
造血細胞を含む埋め込まれた肝臓オルガノイド培養:7~8日目に、加えた細胞を有する胚体内胚葉オルガノイドを穏やかにピペッティングし、皿から剥離する。細胞は、上記の「Matrigelドロップ法」「Matrigelサンドイッチ法」、または「スフェロイド生成トランスウェル法」のいずれかを使用して調製される。B27、N2、L-グルタミン、HEPES、およびペニシリン/ストレプトマイシンを添加し、レチノイン酸が無添加であるAdvanced DMEM/F12を加えた。細胞分化のための培養は、5%CO/95%空気の雰囲気中で37℃に維持し、この培地は4日ごとに交換する。13~15日目に、赤血球がiPS細胞の培養で目視可能になる。7日目でのトロンボポエチン(TPO)(10ng/ml)および幹細胞因子(SCF)(100ng/ml)の培地への添加は、造血細胞の生成を増加させる(収集時まで培地に維持することができる)。
【0085】
肝臓オルガノイド培養における複数の造血系統へのインビトロ分化アッセイ:培養8~18日目に、オルガノイドはピペッティングによって機械的な力で解離させ、PBSによって洗浄する。次に、細胞を0.05%トリプシン-EDTA(Life Technologies)によって処理してMatrigelを除去し、単一細胞懸濁液を形成する。細胞は、トランスフェリン、幹細胞因子(SCF)、インターロイキン3(IL-3)、インターロイキン6(IL-6)、エリスロポエチン(EPO)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)(Stem Cell Technologies)を含むサイトカインとともにメチルセルロースを含むプレートに播種し、インキュベーター内の加湿チャンバー内に放置し、5%CO/95%空気の雰囲気下で37°Cに10日間維持し、その時点でコロニーが認められ、赤芽球細胞、マクロファージ、および好塩基球が含まれた。細胞はライトギムザ染色によって同定される。
【0086】
参考文献
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【0087】
特記しない限り、すべてのパーセンテージおよび比率は重量で計算される。
【0088】
すべてのパーセンテージおよび比率は、特記しない限り、全組成に基づいて計算される。
【0089】
本明細書全体で与えられるすべての最大数値制限は、あたかもそのようなより低い数値制限が本明細書に明示的に書かれているかのように、すべてのより低い数値制限を含むことが理解されるべきである。本明細書全体で与えられるすべての最小数値制限は、あたかもそのようなより高い数値制限が本明細書に明示的に書かれているかのように、すべてのより高い数値制限を含む。本明細書全体で与えられるすべての数値範囲は、あたかもそのようなより狭い数値範囲がすべて本明細書に明示的に書かれているかのように、そのようなより広い数値範囲内にあるすべてのより狭い数値範囲を含む。
【0090】
本明細書に開示される寸法および値は、記載された正確な数値に厳密に限定されるものとして理解されるべきではない。代わりに、特記しない限り、そのような各寸法は、記載された値およびその値を含む機能的に均等の範囲の両方を意味することが意図される。例えば、「20mm」として開示される寸法は、「約20mm」を意味することが意図される。
【0091】
相互参照または関連する特許または出願を含む、本明細書で引用されるすべての文書は、明示的に除外または他の方法で制限されない限り、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。任意の文書の引用は、それが本明細書に開示または請求される任意の発明に関する先行技術であること、またはそれが単独で、または他の参考文献との任意の組み合わせで、そのような発明を教示、示唆、または開示することを認めるものではない。さらに、本文書の用語の意味または定義が、参照により組み込まれる文書の同じ用語の意味または定義と矛盾する限りにおいて、本文書のその用語に割り当てられた意味または定義が優先するものとする。
【0092】
本発明の特定の実施形態が例示および説明されているが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、種々の他の変更および修正を行い得ることは、当業者には自明であろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の範囲内にあるそのようなすべての変更および修正を包含することが意図される。
図1
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図16
図17
図18
【手続補正書】
【提出日】2024-10-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
造血幹細胞(HSC)またはその派生細胞を作製する方法であって、
a.前駆細胞から派生される胚体内胚葉を、wntシグナル伝達経路アクチベーターおよびFGFシグナル伝達経路アクチベーターと、前腸細胞が形成されるまで接触させることと、
b.前記前腸細胞をレチノイン酸の非存在下で培養して、造血細胞を生成する肝臓オルガノイドを形成することと、を含む、方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0004
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0004】
したがって、当技術分野では、移植に適したHSC組成物、およびHSCを提供することができる方法が依然として必要とされている。さらに、そのような組成物の開発は、最新のHSCを十分な量で利用できない研究目的のために有用であろう。本開示は、当技術分野における前述のニーズの1つ以上に対処しようとする。
この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、以下のものがある(国際出願日以降国際段階で引用された文献及び他国に国内移行した際に引用された文献を含む)。
(先行技術文献)
(特許文献)
(特許文献1) 国際公開第2018/106628号
(特許文献2) 米国特許出願公開第2016/0002602号明細書
(特許文献3) 米国特許出願公開第2017/0191030号明細書
(特許文献4) 国際公開第2018/085615号
(非特許文献)
(非特許文献1) BAR-EPHRAIM et at."Modelling Cancer immunomodulation using epithelial organoid cultures," bioRxiv, 07 August 2018 (07.08.2018), Pgs.1-13. Retrieved from the Internet: <www.biorxiv.org/content/10.1101/377655v1.full> on 30 October 2019 (30.10.2019).entire document
(非特許文献2) SUGIMOTO et at."Reconstruction of the Human Colon Epithelium In Vivo",Cell Stem Cell,28 December 2017(28.12.2017),Vol.22,lss. 2,Pgs.171-176.entire document
(非特許文献3) OUCHI et el."Modeling Steatohepatitis in Humans with Pluripotent Stem Cell-Derived, Organoids," Cell Metabolism,30 May 2019(30.05.2019),Vol.30,Iss.2,Pgs.1-11.entire document
【外国語明細書】