(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025004107
(43)【公開日】2025-01-14
(54)【発明の名称】ガラクトース血症の処置のための遺伝子治療
(51)【国際特許分類】
C12N 15/54 20060101AFI20250106BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20250106BHJP
C12N 15/864 20060101ALI20250106BHJP
C12N 15/113 20100101ALI20250106BHJP
C12N 15/35 20060101ALI20250106BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20250106BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20250106BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20250106BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20250106BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20250106BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20250106BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20250106BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20250106BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20250106BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20250106BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20250106BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20250106BHJP
A61P 19/08 20060101ALI20250106BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20250106BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20250106BHJP
A61P 27/12 20060101ALI20250106BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20250106BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20250106BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20250106BHJP
C12N 9/12 20060101ALN20250106BHJP
C07K 14/015 20060101ALN20250106BHJP
【FI】
C12N15/54 ZNA
C12N15/63 Z
C12N15/864 100Z
C12N15/113 Z
C12N15/35
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C12N1/21
C12N5/10
C12N7/01
A61K35/76
A61K38/16
A61K48/00
A61P1/16
A61P3/00
A61P13/12
A61P15/00
A61P19/08
A61P21/00
A61P25/14
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A61K31/7088
A61K9/08
C12N15/54
C12N9/12
C07K14/015
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024174226
(22)【出願日】2024-10-03
(62)【分割の表示】P 2021510129の分割
【原出願日】2019-08-30
(31)【優先権主張番号】62/725,225
(32)【優先日】2018-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】515289842
【氏名又は名称】リサーチ インスティチュート アット ネイションワイド チルドレンズ ホスピタル
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】スコット アレン ロイラー
(57)【要約】
【課題】ガラクトース血症の処置のための遺伝子治療の提供。
【解決手段】本明細書で提供されるのは、GALTタンパク質をコードする組換えAAVベクターが本明細書において提供される。ガラクトース血症の処置のための組成物および方法も、本開示において提供される。本発明は、例えば、配列番号1~3のいずれか1つと少なくとも85%同一の配列またはこれらのそれぞれの同等物を含む単離されたポリヌクレオチドであって、必要に応じて、野生型配列から修飾されたヌクレオチドの少なくとも1つまたはそれより多くがその対応する野生型配列から修飾されていない、単離されたポリヌクレオチドを提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は、米国特許法第119条(e)項の下、米国仮出願第62/725,225号、2018年8月30に基づく優先権を主張し、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
背景
本開示は、一般的には、遺伝子治療の分野に関し、特にガラクトース血症の処置のための遺伝子治療の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
現在、ガラクトース含有食品の食事制限以外には、ガラクトース血症患者に対する処置の選択肢は存在しない。ガラクトースを含まない食事を厳守しているにもかかわらず、多くの患者は、食品に含まれる少量のガラクトースと内因的に産生されるガラクトースのために、長期的な精神的および肉体的欠陥に苦しんでいる。したがって、効果的な処置に対する要求が当技術分野に存在する。本開示はこの要求を満たし、関連する利点も提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
開示された遺伝子治療は、脳を含むガラクトース血症患者の細胞にGALT遺伝子を効率的に送達することにより、持続的で長期の処置の選択肢をガラクトース血症患者に提供して、機能的GALTタンパク質の持続的発現および疾患症候の緩和を提供する。
【0005】
この治療を達成するために、ガラクトース-1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼ(「GALT」)をコードするポリヌクレオチド配列を含む、または該ポリヌクレオチド配列から本質的になる、または該ポリヌクレオチドからなる、ポリヌクレオチドまたは組換えアデノ随伴ウイルス(「AAV」)ベクターが本明細書において提供される。一態様では、GALTをコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号1と少なくとも85%同一のヌクレオチド配列を含み、または該ヌクレオチド配列から本質的になり、または該ヌクレオチド配列からなる。一態様では、前記配列は、野生型配列から修飾されたヌクレオチドの少なくとも1つまたはそれより多くが配列番号1から修飾されていないという条件で、配列番号1と少なくとも85%同一である(
図4参照)。別の態様では、GALTをコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号1に示されるヌクレオチド配列を含み、または該ヌクレオチド配列から本質的になり、または該ヌクレオチド配列からなる。別の実施形態では、ポリヌクレオチド配列は、配列番号4のアミノ酸配列またはその同等物をコードする。
【0006】
一態様では、ベクターは、自己相補的ベクターまたは一本鎖DNA(ssDNA)ベクターである。
【0007】
一態様では、組換えアデノ随伴ウイルス(「AAV」)は、2つの末端逆位配列(ITR)に隣接するscAAVまたはssAAVなどのAAVを含み、または該AAVから本質的になり、または該AAVからなる。これらのITRは、感染の後続の工程が開始し得る前に、第2の鎖の合成を開始するためのプライマーとしての役割を果たすために、配列の末端にヘアピンを形成する。第2の鎖の合成は、効率的な感染に対するいくつかの障害の1つであると考えられている。scAAVのさらなる利点には、インビトロおよびインビボでの導入遺伝子発現の増加および延長が含まれる。したがって、一態様では、AAVは2つのITRをさらに含む。
【0008】
ベクターを作製するための組換えAAV骨格の非限定的な例には、AAV1、AAV2、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV13、AAV PHP.BまたはAAV rh74の群からのAAVベクター血清型が含まれる。さらなる態様において、ベクター骨格は、AAV9血清型、rh74血清型または修飾されたAAVrh74血清型である。アミノ酸位置502でのアスパラギンのイソロイシンへの置換、AAVrh74のVP1のアミノ酸505でのトリプトファンのアルギニンへの必要に応じた置換、およびAAVrh74のVP1のアミノ酸位置591でのペプチドYIGもしくはYIGSRの挿入の群から選択される1もしくはそれを超える修飾を含む修飾されたAAVrh74 VP1キャプシドタンパク質もしくはその同等物をコードするポリヌクレオチド、または1もしくはそれを超える、もしくは2もしくはそれを超える、もしくは3もしくはそれを超える、もしくは4もしくはそれを超える修飾が修飾された(modifice)AAVrh74 VP1キャプシドタンパク質中のアミノ酸と同一であるという条件で少なくとも85%同一であるポリヌクレオチド、ならびにこれらのポリヌクレオチドの相補物も提供される。アミノ酸位置502でのアスパラギンのイソロイシンへの置換、AAVrh74のVP1のアミノ酸505でのトリプトファンのアルギニンへの必要に応じた置換、およびAAVrh74のVP1のアミノ酸位置591でのペプチドYIGの挿入の群から選択される1もしくはそれを超える修飾を含む修飾されたAAVrh74 VP1キャプシドタンパク質もしくはその同等物または1もしくはそれを超える、もしくは2もしくはそれを超える、もしくは3もしくはそれを超える、もしくは4もしくは修飾が修飾された(modifice)AAVrh74 VP1キャプシドタンパク質中のアミノ酸と同一であるという条件で少なくとも85%同一であるポリヌクレオチドも提供される。
【0009】
GALTをコードするポリヌクレオチド配列は、必要に応じて、プロモーター、組織特異的調節エレメントまたは構成的プロモーターに機能的に連結されている。構成的プロモーターの非限定的な例には、例えば、ラウス肉腫ウイルス(RSV)LTRプロモーター(必要に応じて、RSVエンハンサーを伴う)、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、SV40プロモーター、ジヒドロ葉酸還元酵素プロモーター、β-アクチンプロモーター、ホスホグリセロールキナーゼ(PGK)プロモーターまたはEF1プロモーターが含まれる。特定の態様において、β-アクチンプロモーターは、ニワトリβ-アクチン(「CBA」)プロモーターである。別の実施形態において、プロモーターは、CMVプロモーター、EF1aプロモーター、SV40プロモーター、PGK1(ヒトまたはマウス)プロモーター、P5プロモーター、Ubcプロモーター、ヒトβアクチンプロモーター、CAGプロモーター、TREプロモーター、UASプロモーター、Ac5プロモーター、ポリヘドリンプロモーター、CaMKIIaプロモーター、Gal1プロモーター、TEF1、GDSプロモーター、ADH1プロモーター、CaMV35Sプロモーター、Ubiプロモーター、H1プロモーター、U6プロモーターまたはα-1-アンチトリプシンプロモーターから選択される。
【0010】
さらなる態様において、ポリヌクレオチドまたは組換えAAVは、エンハンサー要素をコードするポリヌクレオチドをさらに含む。非限定的な例には、CMVエンハンサー、WPREおよびRSVエンハンサーが含まれる。
【0011】
特定の態様において、組換えポリヌクレオチドまたはAAVベクターは、配列番号2または配列番号3と少なくとも85%同一のヌクレオチド配列を含み、または該ヌクレオチド配列から本質的になり、または該ヌクレオチド配列からなる。一態様において、この配列は、野生型GALT(
図4を参照)配列から修飾されたヌクレオチドの少なくとも1つまたはそれより多くが配列番号2または3から修飾されていないという条件で、配列番号2または3と少なくとも85%同一である。さらなる態様において、組換えAAVベクターは、配列番号2または配列番号3に示されるヌクレオチド配列を含み、または該ヌクレオチド配列から本質的になり、または該ヌクレオチド配列からなる。
【0012】
本明細書に記載の組換えポリヌクレオチドまたはAAVベクターは、検出可能マーカーまたは精製マーカーをさらに含むことができる。ポリヌクレオチドまたはベクターは、ポリヌクレオチドまたはベクターと、防腐剤または薬学的に許容され得る担体などの担体とを含む組成物として含有されることができる。
【0013】
本明細書に記載のポリヌクレオチドおよび/またはAAVベクターを含む細胞またはウイルス粒子も提供される。細胞は原核生物または真核生物であり得、パッケージング細胞株を含み得る。細胞およびウイルス粒子は、ベクターと防腐剤または薬学的に許容され得る担体などの担体とを含む組成物として含有されることができる。
【0014】
ポリヌクレオチドおよびベクターは、治療方法またはその他の方法において有用であり、野生型のまたは修飾されたキャプシドタンパク質内に含有される。したがって、本明細書に提供されるのは、本明細書に開示される組換えポリヌクレオチドおよび/またはAAVベクターを含むAAVウイルス粒子、ならびに本明細書に開示される方法において使用するためのポリヌクレオチドおよび/またはウイルス粒子を含有する組成物である。さらに、ベクター、ポリヌクレオチドおよびそれらを含有するウイルス粒子を調製するための方法が提供される。一態様において、機能的GALT酵素を細胞に導入するための方法であって、組換えポリヌクレオチドおよび/もしくはAAVベクターまたはこれらを含有するキャプシドもしくはウイルス粒子、または本明細書に記載の組成物と細胞を接触させることを含む、方法が提供される。接触はエクスビボまたはインビボであり得る。
【0015】
ガラクトース血症を処置することを必要とする対象においてガラクトース血症を処置するための方法であって、有効量の、組換えポリヌクレオチドおよび/もしくはAAVベクター、組換えポリヌクレオチドおよび/もしくはAAVベクターを含むウイルス粒子、または本明細書に記載の組成物を対象に投与することを含み、または投与することから本質的になり、または投与することからなる方法も提供される。
【0016】
一態様において、ガラクトース血症に罹患している可能性がある対象においてガラクトース代謝を増加させる方法であって、組換えポリヌクレオチドおよび/またはAAVベクター、ウイルス粒子、または本明細書に記載の組成物を対象に投与することを含み、または投与することから本質的になり、または投与することからなる方法も提供される。一態様において、送達される量は、処置を行っている専門家によって決定される有効量である。
【0017】
さらに提供されるのは、ガラクトース血症に罹患している対象においてガラクトース血症と関連する疾患症状または症候を軽減する方法であって、組換えポリヌクレオチドおよび/またはAAVベクター、ウイルス粒子または本明細書に記載の組成物を対象に投与することを含み、または投与することから本質的になり、または投与することからなり、疾患症状が、黄疸、肝脾腫、肝細胞機能不全、低血糖、腎尿細管機能障害、筋緊張低下、敗血症、白内障、運動失調、振戦、減少した骨密度、成人女性(adult females)の生殖能力、GalT欠損症における運動機能障害および発育不全または原発性卵巣機能不全の1つまたはそれより多くを含む、方法である。一態様において、この方法は、対象をガラクトース血症に罹患していると特定すること、および、次いで、この方法によって特定された対象を処置することをさらに含む。一態様において、送達される量は、処置を行っている専門家によって決定される有効量である。
【0018】
これらの方法のそれぞれにおいて、処置されるべきガラクトース血症は、1型ガラクトース血症、2型ガラクトース血症または3型ガラクトース血症である。特定の態様において、ガラクトース血症は1型ガラクトース血症である。
【0019】
組換えポリヌクレオチドおよび/またはAAVベクター、ウイルス粒子、または組成物は、筋肉内注射または静脈内注射によって投与される。あるいは、組換えポリヌクレオチドおよび/またはAAVベクター、ポリヌクレオチドおよび/またはウイルス粒子、または組成物は、全身投与される。さらに、組換えポリヌクレオチドおよび/またはAAVベクター、ウイルス粒子、または組成物は、注射、注入または移植による非経口投与である。さらなる態様において、ポリヌクレオチド、組換えAAVベクター、ウイルス粒子、または組成物は、筋肉内注射または静脈内注射によって、その後、全身的に投与される。
【0020】
組換えポリヌクレオチドおよび/またはAAVベクター、ウイルス粒子、および/または本明細書に記載の組成物を含むキットも、本開示によって提供される。キットは、ポリヌクレオチド、ベクター、ウイルス粒子または組成物を作製および使用するための説明書を必要に応じて含有することができる。
特定の実施形態では、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
配列番号1~3のいずれか1つと少なくとも85%同一の配列またはこれらのそれぞれの同等物を含む単離されたポリヌクレオチドであって、必要に応じて、野生型配列から修飾されたヌクレオチドの少なくとも1つまたはそれより多くがその対応する野生型配列から修飾されていない、単離されたポリヌクレオチド。
(項目2)
配列番号4のアミノ酸もしくは配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも85%同一のアミノ酸またはこれらの同等物をコードする単離されたポリヌクレオチド。
(項目3)
項目1または2に記載のポリヌクレオチドの相補物を含むポリヌクレオチド。
(項目4)
配列番号1のポリヌクレオチドまたはその同等物を含むポリヌクレオチドであって、必要に応じて、野生型配列から修飾されたヌクレオチドの少なくとも1つまたはそれより多くが配列番号1から修飾されていないポリヌクレオチド。
(項目5)
項目2~4のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
(項目6)
プロモーターおよび/またはエンハンサー要素をさらに含む、項目5に記載のベクター。
(項目7)
標識をさらに含む、項目1~4のいずれか一項に記載の単離されたポリヌクレオチドまたは項目5もしくは6に記載のベクター。
(項目8)
ベクターがAAVベクターである、項目5に記載のベクター。
(項目9)
キャプシドタンパク質をコードするポリヌクレオチドをさらに含む、項目8に記載のベクター。
(項目10)
前記キャプシドタンパク質が野生型キャプシドタンパク質または変異したキャプシドタンパク質である、項目9に記載のベクター。
(項目11)
項目1~4のいずれか一項に記載の単離されたポリヌクレオチドまたは項目5~10のいずれか一項に記載のベクターを含む単離された細胞。
(項目12)
ガラクトース-1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼ(「GALT」)をコードするポリヌクレオチド配列を含む組換えAAVベクター。
(項目13)
GALTをコードするポリヌクレオチド配列が、配列番号1と少なくとも85%同一のヌクレオチド配列を含み、必要に応じて、野生型配列から修飾されたヌクレオチドの少なくとも1つまたはそれより多くが配列番号1から修飾されていない、項目12に記載の組換えAAVベクター。
(項目14)
GALTをコードするポリヌクレオチド配列が、配列番号1に記載のヌクレオチド配列を含む、項目12に記載の組換えAAVベクター。
(項目15)
ベクターが、血清型AAV1、AAV2、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV13、AAV PHP.BまたはAAV rh74のものである、項目12~14のいずれか一項に記載の組換えAAVベクター。
(項目16)
ベクターが、AAV9、rh74、変異したrh74またはAAV PHP.Bのものである、項目12~14のいずれか一項に記載の組換えAAVベクター。
(項目17)
ベクターが、プロモーター、組織特異的調節エレメントまたは構成的プロモーターに機能的に連結されている、項目12~16のいずれか一項に記載の組換えAAVベクター。
(項目18)
構成的プロモーターが、ラウス肉腫ウイルス(RSV)LTRプロモーター(必要に応じて、RSVエンハンサーを伴う)、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、SV40プロモーター、ジヒドロ葉酸還元酵素プロモーター、β-アクチンプロモーター、ホスホグリセロールキナーゼ(PGK)プロモーター、U6プロモーターまたはEF1プロモーターを含む、項目17に記載の組換えAAVベクター。
(項目19)
β-アクチンプロモーターがニワトリβ-アクチン(「CBA」)プロモーターである、項目18に記載の組換えAAVベクター。
(項目20)
配列番号2と少なくとも95%同一のヌクレオチド配列を含み、必要に応じて、野生型配列から修飾されたヌクレオチドの少なくとも1つまたはそれより多くが配列番号2から修飾されていない、項目12に記載の組換えAAVベクター。
(項目21)
配列番号2に記載のヌクレオチド配列を含む、項目12に記載の組換えAAVベクター。
(項目22)
配列番号3と少なくとも85%同一のヌクレオチド配列を含み、必要に応じて、野生型配列から修飾されたヌクレオチドの少なくとも1つまたはそれより多くが配列番号3から修飾されていない、項目12に記載の組換えAAVベクター。
(項目23)
配列番号3に記載のヌクレオチド配列を含む、項目12に記載の組換えAAVベクター。
(項目24)
GALT酵素をコードするポリヌクレオチド配列が、配列番号4のアミノ酸配列をコードする、項目12~17のいずれか一項に記載の組換えAAVベクター。
(項目25)
検出可能なまたは精製マーカーをさらに含む、項目12~24のいずれか一項に記載の組換えAAVベクター。
(項目26)
項目12~24のいずれか一項に記載のAAVベクターと1またはそれを超えるキャプシドタンパク質とを含むウイルス粒子。
(項目27)
キャプシドタンパク質が少なくとも1つの野生型キャプシドタンパク質を含む、項目26に記載のウイルス粒子。
(項目28)
キャプシドタンパク質が、少なくとも1つの天然に存在しないまたは変異したタンパク質を含む、項目26に記載のウイルス粒子。
(項目29)
キャプシドタンパク質が、少なくとも1つの野生型キャプシドタンパク質と少なくとも1つの変異したキャプシドタンパク質とを含む、項目26に記載のウイルス粒子。
(項目30)
キャプシドタンパク質が、アミノ酸位置502でのアスパラギンのイソロイシンへの置換、およびAAVrh74のVP1のアミノ酸505でのトリプトファンのアルギニンへの必要に応じた置換、およびAAVrh74のVP1のアミノ酸位置591でのペプチドYIGの挿入の群から選択される1またはそれを超える修飾を含む修飾されたAAVrh74 VP1キャプシドタンパク質を含む、項目26に記載のウイルス粒子。
(項目31)
アミノ酸位置502でのアスパラギンのイソロイシンへの置換、AAVrh74のVP1のアミノ酸505でのトリプトファンのアルギニンへの置換およびAAVrh74のVP1のアミノ酸位置591でのペプチドYIGの挿入の群から選択される1もしくはそれを超える修飾を含む修飾されたAAVrh74 VP1キャプシドタンパク質もしくはその同等物をコードするポリヌクレオチドまたは1もしくはそれを超える修飾が前記修飾されたAAVrh74 VP1キャプシドタンパク質中のアミノ酸と同一であるという条件で少なくとも85%同一であるポリヌクレオチド。
(項目32)
アミノ酸位置502でのアスパラギンのイソロイシンへの置換、AAVrh74のVP1のアミノ酸505でのトリプトファンのアルギニンへの置換およびAAVrh74のVP1のアミノ酸位置591でのペプチドYIGの挿入の群から選択される1もしくはそれを超える修飾を含む修飾されたAAVrh74 VP1キャプシドタンパク質もしくはその同等物または1もしくはそれを超える修飾が前記修飾された(modifice)AAVrh74 VP1キャプシドタンパク質中のアミノ酸と同一であるという条件で少なくとも85%同一であるポリヌクレオチド。
(項目33)
項目31に記載のポリヌクレオチドの相補物。
(項目34)
項目1~14、31もしくは33のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドと、項目32に記載のキャプシドタンパク質と、および/または項目15~19のいずれか一項に記載のウイルス粒子と、および担体、必要に応じて薬学的に許容され得る担体を含む組成物。
(項目35)
機能的なGALT酵素を細胞中に導入するための方法であって、項目1~13、31または33のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド、項目32に記載のキャプシドタンパク質、項目14に記載の組成物または項目15~19のいずれか一項に記載のウイルス粒子と前記細胞を接触させることを含む、方法。
(項目36)
接触がエクスビボまたはインビボである、項目35に記載の方法。
(項目37)
ガラクトース血症を処置することを必要とする対象においてガラクトース血症を処置するための方法であって、治療有効量の、項目1~13のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド、または項目14に記載の組成物、または項目15~19のいずれか一項に記載のウイルス粒子を前記対象に投与することを含む、方法。
(項目38)
ガラクトース血症に罹患している対象においてガラクトース代謝を増加させる方法であって、項目1~13のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド、または項目14に記載の組成物、または項目15~19のいずれか一項に記載のウイルス粒子を前記対象に投与することを含む、方法。
(項目39)
ガラクトース血症に罹患している対象における疾患症状を軽減する方法であって、項目1~13のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド、項目14に記載の組成物、または項目15~19のいずれか一項に記載のウイルス粒子を前記対象に投与することを含み、前記疾患症状が、黄疸、肝脾腫、肝細胞機能不全、低血糖、腎尿細管機能障害、筋緊張低下、敗血症、白内障、運動失調、振戦、減少した骨密度または原発性卵巣機能不全から選択される、方法。
(項目40)
ガラクトース血症が1型ガラクトース血症である、項目37~39のいずれか一項に記載の方法。
(項目41)
対象が哺乳動物である、項目37~40のいずれか一項に記載の方法。
(項目42)
対象がヒトである、項目41に記載の方法。
(項目43)
対象がヒト新生児である、項目42に記載の方法。
(項目44)
ヒト新生児が、機能的GALT遺伝子の発現の欠如についての遺伝子検査によって、投与のために選択されている、項目43に記載の方法。
(項目45)
投与されるのが、筋肉内注射、肝臓への局所送達または静脈内注射による、項目37~44のいずれか一項に記載の方法。
(項目46)
投与が全身投与を含む、項目37~44のいずれか一項に記載の方法。
(項目47)
投与が肝臓への局所送達を含む、項目37~44のいずれか一項に記載の方法。
(項目48)
項目1~13、31または33のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド、項目32に記載のキャプシド、項目14に記載の組成物または項目15~19のいずれか一項に記載のウイルス粒子の1つまたはそれより多くと、および使用説明書とを備えるキット。
(項目49)
項目1~13のいずれか一項に記載の組換えAAVベクターを含む宿主細胞。
(項目50)
細胞が原核細胞または真核細胞である、項目49に記載の宿主細胞。
(項目51)
細胞がパッケージング細胞である、項目50に記載の宿主細胞。
(項目52)
項目1~13、31または33のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドとヘルパー細胞株とを含む、AAVパッケージング系。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1A】
図1A~1Cは、3つの例示的なベクター:pAAV-CB-GALT-WPRE-kan(
図1A)、pAAV-CB-hGALT(
図1B)およびpAAV-CB-hGALT-WPREv2(
図1C)のマップを示す。
【
図1B】
図1A~1Cは、3つの例示的なベクター:pAAV-CB-GALT-WPRE-kan(
図1A)、pAAV-CB-hGALT(
図1B)およびpAAV-CB-hGALT-WPREv2(
図1C)のマップを示す。
【
図1C】
図1A~1Cは、3つの例示的なベクター:pAAV-CB-GALT-WPRE-kan(
図1A)、pAAV-CB-hGALT(
図1B)およびpAAV-CB-hGALT-WPREv2(
図1C)のマップを示す。
【0022】
【
図2】
図2は、pAAV-CB-GALT-WPRE-kanベクターの生体内分布を示す(
図1A)。
【0023】
【
図3】
図3は、pAAV-CB-GALT-WPRE-Kanベクターのベクターを使用して発現されたヒトGALTタンパク質の発現を示す(
図1A)。
【0024】
【
図4】
図4は、対応する野生型配列と比較した、本明細書に記載のGALTをコードするコドン最適化された組換えポリヌクレオチドの配列アラインメントである。
【0025】
【
図5】
図5は、AAV9ベクターの生体内分布を示している。C57Bl/6J(WT)またはGalT
-/-(CG)雌マウスに、1E+12ウイルスゲノム(Vg)のAAV9/lucEYFPレポーターウイルスを静脈内注射し、1週間後に組織を採取し、qPCRによってベクターゲノムコピーのアッセイを行った。
【0026】
【
図6】
図6はタンパク質発現を示している。プラスミドpAAV-CB-GALT-WPREまたはpAAV-CB-lucEYFPレポータープラスミドをHEK293細胞中に形質移入し、2日後に、ウエスタンブロット分析によってGALT発現のアッセイを行った。GALT形質移入された細胞可溶化液(30または3μg)、LucEYFP細胞可溶化液(138μg)、HepG2内因性GALTタンパク質対照(135μg)、精製タグのためにわずかにより高い分子量を有する精製された、細菌によって発現されたGALTタンパク質標準。
【発明を実施するための形態】
【0027】
詳細な説明
本開示による実施形態は、以下でより完全に説明される。しかしながら、本開示の態様は、異なる形態で具体化することができ、本明細書に記載の実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が綿密かつ完全であり、本発明の範囲を当業者に完全に伝えるように提供されている。本明細書中の記述において使用される用語は、特定の実施形態を記述することを目的とするものに過ぎず、限定することは意図されていない。
【0028】
別段の定義がなければ、本明細書において使用される全ての用語(技術用語および科学用語を含む)は、当業者によって一般的に理解されているものと同じ意味を有する。一般的に使用される辞書で定義されているような用語は、本出願および関連技術の文脈におけるそれらの意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、本明細書において明示的にそのように定義されていなければ、理想化されたまたは過度に形式張った意味で解釈されるべきではないことがさらに理解される。以下で明示的に定義されてはいないが、このような用語はそれらの一般的な意味に従って解釈されるべきである。
【0029】
本明細書の記載において使用される用語は、特定の実施形態を記述することを目的とするものに過ぎず、本発明を限定することは意図されていない。本明細書において言及されるすべての刊行物、特許出願、特許およびその他の参考文献は、それらの全体が参照により組み込まれる。
【0030】
別段の記述がなければ、本技術の実施は、本分野の技術に属する、組織培養、免疫学、分子生物学、微生物学、細胞生物学および組換えDNAの慣用技術を使用する。
【0031】
文脈が別段の指示をしない限り、本明細書に記載されている本発明の様々な特徴は任意の組み合わせで使用できることが特に意図されている。さらに、本開示は、いくつかの実施形態において、本明細書に記載の任意の特徴または特徴の組み合わせを除外または省略できることも企図している。例示するために、複合体が成分A、BおよびCを含むと明細書が述べている場合、A、BもしくはCのいずれかまたはこれらの組み合わせを省略することができ、単独でまたは任意の組み合わせで権利範囲から除外され得ることが特に意図されている。
【0032】
特に明記しない限り、すべての特定された実施形態、特徴および用語は、列挙された実施形態、特徴または用語とそれらの生物学的同等物の両方を含むことを意図している。
【0033】
範囲を含む全ての数的表記、例えば、pH、温度、時間、濃度および分子量は、適宜、1.0または0.1の増分によって、または+/-15%、または+/-10%、または+/-5%、または+/-2%の変動によって、(+)または(-)に変動される近似値である。常に明示的に述べられているわけではないが、全ての数的表記には、「約」という用語が前置されていることが理解されるべきである。常に明示的に述べられているわけではないが、本明細書に記載されている試薬は単に例示であること、およびこのようなものと同等な試薬が本分野において知られていることも理解されるべきである。
【0034】
本開示を通じて、様々な刊行物、特許および公開された特許明細書が、識別引用によってまたはアラビア数字によって参照されている。アラビア数字によって識別される刊行物の完全な引用は、特許請求の範囲の直前に記載されている。これらの刊行物、特許および公開された特許明細書の開示は、本発明が関係する分野の技術水準をより完全に説明するために、参照によりその全体が本開示に組み込まれる。
定義
【0035】
別段の記述がなければ、本技術の実施は、本分野の技術範囲に属する、有機化学、薬理学、免疫学、分子生物学、微生物学、細胞生物学および組換えDNAの従来の技術を使用する。たとえば、Sambrook,Fritsch and Maniatis,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd edition(1989);Current Protocols In Molecular Biology(F.M.Ausubelら、eds.,(1987));the series Methods in Enzymology(Academic
Press,Inc.):PCR 2:A Practical Approach(M.J.MacPherson,B.D.Hames and G.R.Taylor eds.(1995)),Harlow and Lane,eds.(1988)Antibodies,a Laboratory Manual,and Animal Cell Culture(R.I.Freshney,ed.(1987))を参照されたい。
【0036】
本発明の説明および添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明確に別段の指示をしない限り、複数形も含むことを意図している。
【0037】
本明細書において使用される場合、「含む」という用語は、組成物および方法が表記された要素を含むが、他の要素を除外しないことを意味することが意図される。本明細書で使用される場合、から本質的になるという移行句(および文法的変形)は、列挙された材料または工程、ならびに列挙された実施形態の基本的なおよび新規の特性に実質的に影響を及ぼさない材料または工程を包含すると解釈されるべきである。したがって、本明細書で使用される「から本質的になる」という用語は、「含む」と同等であると解釈されるべきではない。「からなる」とは、微量を超えるその他の成分および本明細書に開示されている組成物を投与するための実質的な方法工程を除外することを意味するものとする。これらの移行語の各々によって定義される態様は、本開示の範囲に属する。
【0038】
量または濃度などの測定可能な値を指すときに本明細書で使用される「約」という用語は、指定された量の20%、10%、5%、1%、0.5%、またはさらには0.1%の変動を包含することが意図される。
【0039】
本明細書に開示される任意の成分、範囲、剤形などの選択を説明するために使用される場合の「許容され得る」、「有効な」、または「十分な」という用語は、前記成分、範囲、剤形などが開示された目的に対して適切であることを意図する。
【0040】
また、本明細書において使用される場合、「および/または」は、関連する列記された項目の1つまたはそれより多くのあらゆるすべての可能な組み合わせのみならず、選択的に(「or」)解釈される場合には、組み合わせの欠如も表し、これらを包含する。
【0041】
本明細書で使用される「アデノ随伴ウイルス」または「AAV」という用語は、この名前に関連し、パルボウイルス科のディペンドパルボウイルス属に属するウイルスのクラスのメンバーを指す。このウイルスの複数の血清型が遺伝子送達に適していることが知られており、公知の血清型はすべて、さまざまな組織タイプからの細胞に感染することができる。少なくとも11個の連続番号が付けられたAAV血清型が当技術分野において公知である。本明細書に開示される方法において有用な非限定的な例示的血清型には、11の血清型、例えば、AAV2、AAV8、AAV9、または変異形血清型、例えば、AAV-DJおよびAAV PHP.Bのいずれもが含まれる。AAV粒子は、VP1、VP2およびVP3という3つの主要なウイルスタンパク質を含む。一実施形態において、AAVは、血清型AAV1、AAV2、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV13、AAV PHP.BまたはAAV rh74を指す。
【0042】
「ガラクトース血症」という用語は、ガラクトースを代謝する対象の能力に影響を与える遺伝性障害を指す。食品(乳製品など)中の乳糖は、酵素ラクターゼによってグルコースとガラクトースに分解される。ガラクトース血症を有する個体では、ガラクトースのさらなる代謝のために必要とされる酵素(ガラクトキナーゼおよびガラクトース-1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼ)が大幅に減少しまたは完全に失われ、様々な組織内に毒性レベルのガラクトースまたはガラクトース1-リン酸(どの酵素が欠落しているかに応じて)を引き起こして、古典的なガラクトース血症の場合のように、黄疸、肝腫大(肝臓の肥大)、腎尿細管機能障害、筋緊張低下、敗血症、肝細胞機能不全、肝硬変、腎不全、白内障、嘔吐、発作、低血糖、嗜眠、脳損傷および卵巣機能不全を含むがこれらに限定されない疾患症状をもたらす。したがって、これらの症状は、対象におけるガラクトース血症に関連する場合、本開示の方法によって適切に処置することもできる。
【0043】
対象中で欠損している酵素に基づいて、ガラクトース血症は、1型ガラクトース血症(ガラクトース-1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼ)、2型ガラクトース血症(ガラクトキナーゼ)および3型ガラクトース血症(UDPガラクトースエピメラーゼ)に分類できる。一実施形態において、1型、2型または3型ガラクトース血症を処置するために、本明細書に開示されている組換えベクターまたは方法を使用することができる。別の実施形態において、組換え体または方法は、1型ガラクトース血症を処置するために使用され得る。ガラクトース血症は多くの疾患症状と関連しているので、別の実施形態では、本開示は、ガラクトース血症に罹患している対象における疾患症状を軽減する方法であって、疾患症状が、黄疸、肝腫大(肝臓の肥大)、腎尿細管機能障害、筋緊張低下、敗血症、肝細胞機能不全、肝硬変、腎不全、白内障、嘔吐、発作、低血糖、嗜眠、脳損傷または卵巣機能不全から選択される、方法を提供する。
【0044】
ガラクトース血症と関連する他の疾患症状には、発話障害(speech deficit)、運動失調症、フリードライヒ運動失調症、測定異常、骨密度の低下または早期卵巣機能不全が含まれるが、これらに限定されない。これらの症状も、本開示の方法によって処置することができる。
【0045】
本明細書で使用される「細胞」という用語は、原核細胞または真核細胞のいずれかを指し得、必要に応じて、対象または市販の入手源から取得される。
【0046】
「真核細胞」は、モネラ界を除く全ての生物界を含む。真核細胞は、膜に結合された核を通じて容易に識別することができる。動物、植物、真菌および原生生物は、真核生物、すなわち、内部の膜および細胞骨格によって、その細胞が複雑な構造へと組織されている生物である。最も特徴的な膜に結合された構造は核である。具体的に記載されていなければ、「宿主」という用語には、例えば、酵母、高等植物、昆虫および哺乳動物の細胞を含む、真核生物宿主が含まれる。真核細胞または真核生物宿主の非限定的な例には、サル、ウシ、ブタ、マウス、ラット、トリ、爬虫類およびヒト、例えば、HEK293細胞および293T細胞が含まれる。
【0047】
通常、核またはいずれかの他の膜結合型細胞小器官を欠く「原核細胞」は、細菌と古細菌という2つのドメインに分けられる。これらの細胞は、染色体DNAに加えて、エピソームと呼ばれる環状ループ中に遺伝情報を含有することもできる。細菌細胞は非常に小さく、およそ動物のミトコンドリアのサイズである(直径約1~2μm、長さ10μm)。原核細胞は、棹形状、球形およびらせん状という3つの主要な形状を特徴としている。真核生物のような精巧な複製過程を経る代わりに、細菌細胞は二分裂によって分裂する。例としては、Bacillus細菌、大腸菌およびSalmonella細菌などがあるが、これらに限定されない。
【0048】
核酸配列に対して適用される場合の「コードする」という用語は、その原型の状態でまたは当業者に周知の方法によって操作された場合に、転写および/または翻訳されてポリペプチドおよび/またはその断片に対するmRNAを産生することができれば、ポリペプチドを「コードする」と称されるポリヌクレオチドを表す。アンチセンス鎖は、このような核酸の相補物であり、コード配列はアンチセンス鎖から推定することができる。
【0049】
「同等物」または「生物学的同等物」という用語は、特定の分子、生物学的または細胞材料を指すときに互換的に使用され、所望の構造または機能をなお維持しながら最小限の相同性を有するものを意図する。同等のポリペプチドの非限定的な例には、少なくとも60%、もしくは少なくとも65%、もしくは少なくとも70%、もしくは少なくとも75%、もしくは80%、もしくは少なくとも85%、もしくは少なくとも90%、もしくは少なくとも95%の同一性を有するポリペプチドもしくはポリペプチド配列、または高ストリンジェンシーの条件下でこのようなポリペプチド配列をコードするポリヌクレオチドとハイブリッド形成するポリヌクレオチドもしくはその相補物によってコードされるポリペプチドが含まれる。高ストリンジェンシーの条件は、本明細書に記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。あるいは、その同等物とは、参照ポリヌクレオチド、例えば野生型ポリヌクレオチドに対して、少なくとも70%、または少なくとも75%、または80%、または少なくとも85%、または少なくとも90%、または少なくとも95%の同一性、または少なくとも97%の配列同一性を有するポリヌクレオチドまたはその相補物によってコードされるポリペプチドである。
【0050】
同等のポリペプチドの非限定的な例には、参照ポリヌクレオチドに対して、少なくとも60%、または少なくとも65%、または少なくとも70%、または少なくとも75%、または80%、または少なくとも85%、または少なくとも90%、または少なくとも95%、または少なくとも97%の同一性を有するポリヌクレオチドが含まれる。同等物は、高ストリンジェンシーの条件下で参照ポリヌクレオチドとハイブリッド形成するポリヌクレオチドまたはその相補物も意図する。
【0051】
別の配列に対してあるパーセンテージ(例えば、80%、85%、90%または95%)の「配列同一性」を有するポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド領域(またはポリペプチドもしくはポリペプチド領域)は、整列されたときに、2つの配列を比較すると、そのパーセンテージの塩基(またはアミノ酸)が同一であることを意味する。アラインメントおよびパーセント相同性または配列同一性は、本分野において公知のソフトウェアプログラム、例えば、Current Protocols in Molecular Biology(Ausubelら、eds.1987)Supplement 30,section 7.7.18,Table 7.7.1に記載されているものを用いて決定することができる。特定の実施形態では、初期設定パラメータがアラインメントのために使用される。非限定的な例示的なアラインメントプログラムは、初期設定パラメータを使用するBLASTである。特に、例示的なプログラムには、以下の初期設定パラメータを使用するBLASTNおよびBLASTPが含まれる。遺伝暗号=標準;フィルター=なし;鎖=両方;カットオフ=60;期待値=10;行列=BLOSUM62;ディスクリプション=50配列;ソート=高スコア;データベース=非冗長、GenBank+EMBL+DDBJ+PDB+GenBank CDS翻訳+SwissProtein+SPupdate+PIR。これらのプログラムの詳細は、以下のインターネットアドレス:ncbi.nlm.nih.gov/cgi-bin/BLASTに見出すことができる。配列同一性およびパーセント同一性は、それらをclustalW(Webアドレス:genome.jp/tools/clustalw/で入手可能、最終アクセス日は2017年1月13日)中に組み込むことで決定することができる。
【0052】
「相同性」または「同一性」または「類似性」は、2つのペプチド間または2つの核酸分子間の配列類似性を指す。相同性は、比較のために整列され得る各配列中の位置を比較することによって決定することができる。比較された配列中の位置が同一の塩基またはアミノ酸によって占められるときに、その分子はその位置において相同である。配列間の相同性の程度は、これらの配列によって共有される合致または相同な位置の数の関数である。「無関係の」または「非相同な」配列は、本開示の配列の1つと40%未満の同一性、または25%未満の同一性を共有する。
【0053】
「相同性」または「同一性」または「類似性」はまた、ストリンジェントな条件下でハイブリッド形成する2つの核酸分子を指すこともある。
【0054】
「ハイブリダイゼーション」は、1またはそれを超えるポリヌクレオチドが反応してヌクレオチド残基の塩基間の水素結合を介して安定化された複合体を形成する反応を表す。水素結合は、ワトソン・クリック塩基対形成、フーグスティーン結合によって、または任意の他の配列特異的様式で起こり得る。複合体は、二本鎖構造を形成する2つの鎖、多重鎖複合体を形成する3またはそれを超える鎖、単一の自己ハイブリッド形成鎖またはこれらの任意の組み合わせを含み得る。ハイブリダイゼーション反応は、PCR反応の開始またはリボザイムによるポリヌクレオチドの酵素的切断などの、より大規模な過程中の工程を構成し得る。
【0055】
ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の例としては、約25℃~約37℃のインキュベーション温度;約6×SSC~約10×SSCのハイブリダイゼーション緩衝液濃度;約0%~約25%のホルムアミド濃度;および約4×SSC~約8×SSCの洗浄溶液が挙げられる。穏やかなハイブリダイゼーション条件の例としては、約40℃~約50℃のインキュベーション温度;約9×SSC~約2×SSCの緩衝液濃度;約30%~約50%のホルムアミド濃度;および約5×SSC~約2×SSCの洗浄溶液が挙げられる。高いストリンジェンシーの条件の例としては、約55℃~約68℃のインキュベーション温度;約1×SSC~約0.1×SSCの緩衝液濃度;約55%~約75%のホルムアミド濃度;および約1×SSC、0.1×SSCの洗浄溶液または脱イオン水が挙げられる。一般に、ハイブリダイゼーションのインキュベーション時間は、5分~24時間であり、1、2またはそれを超える洗浄工程を有し、洗浄のインキュベーション時間は、約1、2または15分である。SSCは、0.15M NaClおよび15mMシトラート緩衝液である。他の緩衝液系を使用するSSCの同等物を使用できることが理解される。
【0056】
本明細書において使用される場合、「発現」は、ポリヌクレオチドがmRNAに転写される過程および/または転写されたmRNAが、続いて、ペプチド、ポリペプチドもしくはタンパク質に翻訳される過程を表す。ポリヌクレオチドがゲノムDNAに由来する場合、発現は真核細胞中でのmRNAのスプライシングを含み得る。
【0057】
「遺伝子」は、転写および翻訳された後に特定のポリペプチドまたはタンパク質をコードすることができる少なくとも1つのオープンリーディングフレーム(ORF)を含有するポリヌクレオチドを指す。「遺伝子産物」または「遺伝子発現産物」は、遺伝子が転写および翻訳されるときに生成されるアミノ酸(例えば、ペプチドまたはポリペプチド)を指す。
【0058】
「転写制御下」は、当技術分野で十分に理解されている用語であり、ポリヌクレオチド配列、通常はDNA配列の転写が、転写の開始に寄与する、または転写を促進する要素に機能的に連結されていることに依存することを示す。「機能的に連結された」は、ポリヌクレオチドが細胞内で機能できるように、ポリヌクレオチドが配置されていることを意図する。一態様において、本発明は、下流配列、例えば、自殺遺伝子、VEGF、165A
VEGF、tet活性化因子などに機能的に連結されたプロモーターを提供する。
【0059】
ポリヌクレオチドに対して適用される場合の「コードする」という用語は、その原型の状態でまたは当業者に周知の方法によって操作された場合に、転写および/または翻訳されてポリペプチドおよび/またはその断片に対するmRNAを産生することができれば、ポリペプチドを「コードする」と称されるポリヌクレオチドを表す。アンチセンス鎖は、このような核酸の相補物であり、コード配列はアンチセンス鎖から推定することができる。
【0060】
本明細書において使用される場合、「単離された」という用語は、実質的に他の材料が存在しない分子または生物製剤または細胞性材料を表す。
【0061】
本明細書で使用される場合、「機能的」という用語は、特定の指定された効果を達成することを意図するために、任意の分子、生物製剤または細胞材料を修飾するために使用され得る。
【0062】
本明細書において使用される場合、「核酸配列」および「ポリヌクレオチド」という用語は、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドのいずれかである、任意の長さのヌクレオチドのポリマー性形態を表すために互換的に使用される。このため、本用語には、一本鎖、二本鎖もしくは多重鎖DNAもしくはRNA、ゲノムDNA、cDNA、DNA-RNAハイブリッドまたはプリンおよびピリミジン塩基もしくは他の天然の、化学的にもしくは生化学的に修飾された、非天然のもしくは誘導体化されたヌクレオチド塩基を含むポリマーが含まれるが、これらに限定されない。
【0063】
本明細書において使用される場合、「プロモーター」という用語は、遺伝子などのコード配列の発現を制御する任意の配列を表す。プロモーターは、例えば、恒常的、誘導性、抑制可能または組織特異的であり得る。「プロモーター」は、そこにおいて転写の開始および速度が調節されるポリヌクレオチド配列の領域である調節配列である。プロモーターは、RNAポリメラーゼおよび他の転写因子などの調節タンパク質および分子がそこに結合し得る遺伝要素を含有し得る。非限定的な例示的なプロモーターには、ラウス肉腫ウイルス(RSV)LTRプロモーター(必要に応じて、RSVエンハンサーを伴う)、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、SV40プロモーター、ジヒドロ葉酸還元酵素プロモーター、β-アクチンプロモーター、ホスホグリセロールキナーゼ(PGK)プロモーター、U6プロモーターまたはEF1プロモーターが含まれる。いくつかの実施形態において、プロモーターは、ニワトリβ-アクチン(「CBA」)プロモーター(例えば、配列番号2の439~708の番号が付けられた塩基対もしくは配列番号3の644~921の番号が付けられた塩基対またはこれらの各々の同等物)である。
【0064】
特定の標的特異性を有するさらなる非限定的な例示的プロモーターが本明細書の以下に記載されており、CMV、EF1a、SV40、PGK1(ヒトまたはマウス)、P5、Ubc、ヒトβアクチン、CAG、TRE、UAS、Ac5、ポリヘドリン、CaMKIIa、Gal1、TEF1、GDS、ADH1、CaMV35S、Ubi、H1、U6およびα-1-アンチトリプシンプロモーターが含まれるが、これらに限定されない。合成由来のプロモーターは、遍在的または組織特異的な発現のために使用され得る。さらに、そのいくつかが上に記されているウイルス由来のプロモーター、例えば、CMV、HIV、アデノウイルスおよびAAVプロモーターは、本明細書に開示される方法において有用であり得る。いくつかの実施形態において、プロモーターは、転写効率を増大させるためにエンハンサーに結合される。エンハンサーの非限定的な例には、RSVエンハンサーまたはCMVエンハンサー(例えば、配列番号2の153~432の番号が付けられた塩基対)が含まれる。
【0065】
エンハンサーは、標的配列の発現を増加させる調節エレメントである。「プロモーター/エンハンサー」は、プロモーターおよびエンハンサー機能の両方を提供することができる配列を含有するポリヌクレオチドである。たとえば、レトロウイルスの末端反復配列は、プロモーター機能とエンハンサー機能の両方を含む。エンハンサー/プロモーターは、「内因性」または「外因性」または「異種性」であり得る。「内因性」エンハンサー/プロモーターは、自然の状態で、ゲノム中の特定の遺伝子と連結されているものである。「外因性」または「異種性」エンハンサー/プロモーターは、その遺伝子の転写が連結されたエンハンサー/プロモーターによって誘導されるように、遺伝子操作(すなわち、分子生物学的技術)を用いて遺伝子に並置されているエンハンサー/プロモーターである。
【0066】
「タンパク質」、「ペプチド」および「ポリペプチド」という用語は互換的に使用され、これらの最も広い意味において、アミノ酸、アミノ酸類縁体またはペプチド模倣物の2またはそれを超えるサブユニットの化合物を表す。サブユニットは、ペプチド結合によって連結され得る。別の態様において、サブユニットは、他の結合、例えば、エステル、エーテルなどによって連結され得る。タンパク質またはペプチドは、少なくとも2つのアミノ酸を含有しなければならず、タンパク質の配列またはペプチドの配列を構成し得るアミノ酸の最大数に制限はない。本明細書において使用される場合、「アミノ酸」という用語は、グリシンならびにDおよびL型光学異性体の両方、アミノ酸類縁体およびペプチド模倣物を含む、天然および/または非天然もしくは合成アミノ酸のいずれかを表す。
【0067】
本明細書で使用される場合、「ベクター」という用語は、例えば形質転換の過程によって細胞内に配置されたときにベクターが複製され得るような無傷のレプリコンを含む非染色体核酸を指す。ベクターは、ウイルス性または非ウイルス性であり得る。ウイルスベクターには、レトロウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、バキュロウイルス、改変されたバキュロウイルス、パポウイルスまたはその他に改変された天然に存在するウイルスが含まれる。核酸を送達するための例示的な非ウイルス性ベクターには、裸のDNA;単独でまたは陽イオン性ポリマーと組み合わせて、陽イオン性脂質と複合体を形成したDNA;陰イオン性および陽イオン性リポソーム;DNA-タンパク質複合体および異種ポリリジン、規定された長さのオリゴペプチドおよびポリエチレンイミンなどの、場合によってリポソーム中に含有された陽イオン性ポリマーと縮合したDNAを含む粒子;ならびにウイルスとポリリジン-DNAを含む三元複合体の使用が含まれる。
【0068】
「ウイルスベクター」は、インビボ、エクスビボまたはインビトロのいずれかで、宿主細胞中に送達されるべきポリヌクレオチドを含む組換え的に産生されたウイルスまたはウイルス粒子として定義される。ウイルスベクターの例には、レトロウイルスベクター、AAVベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アルファウイルスベクターなどが含まれる。セムリキ森林ウイルスベースのベクターおよびシンドビスウイルスベースのベクターなどのアルファウイルスベクターも、遺伝子治療および免疫治療において使用するために開発されてきた。Schlesinger and Dubensky(1999)Curr.Opin.Biotechnol.5:434-439およびYing et al.(1999)Nat.Med.5(7):823-827を参照のこと。
【0069】
別の実施形態では、プロモーターは誘導性プロモーターである。特定の関連する実施形態において、プロモーターは、誘導性テトラサイクリンプロモーターである。Tet-OffおよびTet-On遺伝子発現系により、研究者は、Gossen&Bujard(1992;Tet-Off)およびGossenら(1995;Tet-On)によって記述された制御された高レベルの遺伝子発現系を直ちに利用できる。Tet-Off系では、テトラサイクリン(Tc)またはドキシサイクリン(Dox;Tc誘導体)が培地から除去されると、遺伝子発現がオンになる。対照的に、Tet-On系では、Doxを追加することによって、発現がオンになる。いずれの系でも、TcまたはDoxの濃度の変化に応じて遺伝子発現を厳密に制御できる。Tet系での最大発現レベルは非常に高く、CMVなどの強力な恒常的哺乳動物プロモーターから得られる最大レベルと比べて遜色がない(Yinら、1996)。他の誘導性哺乳動物発現系とは異なり、Tet系における遺伝子調節は高度に特異的であるため、多面発現効果または非特異的誘導によって、結果の解釈が複雑化することがない。大腸菌では、Tetリプレッサータンパク質(TetR)がTn10トランスポゾン上のテトラサイクリン耐性オペロンの遺伝子を負に調節する。TetRは、Tcの不存在下でtetオペレーター配列(tetO)に結合することにより、これらの遺伝子の転写を遮断する。TetRおよびtetOは、哺乳類の実験系において使用するための調節および誘導の基礎を提供する。Tet-On系では、調節タンパク質は、TetR中の4つのアミノ酸変化によって作出された「リバース」Tetリプレッサー(rTetR)に基づいている(Hillen&Berens,1994;Gossenら、1995)。得られたタンパク質rtTA(リバースtTAはテトラサイクリン活性化タンパク質とも呼ばれる)は、pTet-On調節プラスミドによってコードされている。この遺伝子は、GALT遺伝子とは別個のベクター中に存在してもよく、または同一の遺伝子上にコードされてもよい。
【0070】
関連する実施形態において、ベクターは、さらに、テトラサイクリン活性化タンパク質をコードする核酸およびテトラサイクリン活性化タンパク質の発現を調節するプロモーターを含み、またはこれらから本質的になり、またはこれらからなる。
【0071】
本明細書に記載されたベクター、単離された細胞、ウイルスパッケージング系および方法において有用なその他の誘導性の系には、エクジソン、エストロゲン、プロゲステロン、二量体化の化学的誘導物質およびイソプロピル-β-D1-チオガラクトピラノシド(EPTG)による調節が含まれる。
【0072】
本明細書で使用される場合、「組換え発現系」または「組換えベクター」という用語は、組換えによって形成された特定の遺伝物質の発現のための1つまたは複数の遺伝的構築物を指す。
【0073】
「遺伝子送達ビヒクル」は、挿入されたポリヌクレオチドを宿主細胞中に運ぶことができる任意の分子として定義される。遺伝子送達ビヒクルの例は、リポソーム、ミセル、天然ポリマーおよび合成ポリマーを含む生体適合性ポリマー;リポタンパク質;ポリペプチド;多糖類;リポ多糖;人工ウイルスエンベロープ;金属粒子;および細菌、またはバキュロウイルス、アデノウイルスおよびレトロウイルスなどのウイルス、バクテリオファージ、コスミド、プラスミド、真菌ベクターならびに様々な真核生物および原核生物宿主中での発現について記載されており、単純なタンパク質発現のための他、遺伝子治療のために使用され得る当技術分野で典型的に使用されるその他の組換えビヒクルである。
【0074】
本明細書に開示されるポリヌクレオチドは、遺伝子送達ビヒクルを使用して細胞または組織に送達することができる。本明細書で使用される「遺伝子送達」、「遺伝子導入」、「形質導入」などは、導入のために使用される方法とは関係なく、宿主細胞中への外因性ポリヌクレオチド(「導入遺伝子」と呼ばれることもある)の導入を指す用語である。このような方法には、ベクター媒介性遺伝子導入(例えば、ウイルス感染/形質移入、または他の様々なタンパク質ベースまたは脂質ベースの遺伝子送達複合体による)などの様々な周知の技術、ならびに「裸の」ポリヌクレオチドの送達を促進する技術(電気穿孔、「遺伝子銃」送達およびポリヌクレオチドの導入のために使用される他のさまざまな技術など)が含まれる。導入されたポリヌクレオチドは、宿主細胞において安定的にまたは一過性に維持され得る。安定した維持には、導入されたポリヌクレオチドが、宿主細胞と適合性を有する複製起点を含有すること、または染色体外レプリコン(例えば、プラスミド)などの宿主細胞のレプリコン中にもしくは核もしくはミトコンドリアの染色体中に組み込まれることが通例必要とされる。当技術分野において公知であり、本明細書に記載されているように、多くのベクターが、哺乳動物細胞への遺伝子の導入を媒介することができることが知られている。
【0075】
「プラスミド」は、染色体DNAとは独立して複製することができる、染色体DNAとは別個の染色体外DNA分子である。多くの場合、プラスミドは環状であり、二本鎖である。プラスミドは、微生物の集団内での水平的な遺伝子導入のための機序を提供し、通例、所定の環境状態下での選択における利点を提供する。プラスミドは、競争的な生態的地位において、天然に存在する抗生物質に対する耐性を付与する遺伝子を運搬し得、または産生されるタンパク質が同様の状況下で毒素として作用し得る。
【0076】
遺伝子工学において使用される「プラスミド」は、「プラスミドベクター」と呼ばれる。多くのプラスミドがこのような用途のために市販されている。複製されるべき遺伝子は、特定の抗生物質に対して細胞を耐性にする遺伝子とDNA断片をこの位置に挿入することを容易にする一般的に使用される数個の制限部位を含有する短い領域である多重クローニング部位(MCS、またはポリリンカー)とを含有するプラスミドのコピー中に挿入される。プラスミドのもう1つの主な用途は、大量のタンパク質を作ることである。この場合、研究者は関心対象の遺伝子を有するプラスミドを含有する細菌を増殖させる。細菌が抗生物質耐性を与えるタンパク質を産生するのと同じように、挿入された遺伝子から大量のタンパク質を産生するように細菌を誘導することもできる。
【0077】
遺伝子導入がアデノウイルス(Ad)またはアデノ随伴ウイルス(AAV)などのDNAウイルスベクターによって媒介される態様において、ベクター構築物は、ウイルスゲノムまたはその一部を含むポリヌクレオチドおよび導入遺伝子を指す。アデノウイルス(Ad)は、50を超える血清型を含む、比較的十分に性質決定された均質なウイルスの群である。アデノウイルスは、宿主細胞ゲノム中への組み込みを必要としない。組換えAd由来のベクター、特に組換えおよび野生型ウイルスの生成の可能性を低減するものも構築されている。このようなベクターは、Takara Bio USA(Mountain View,CA)、Vector Biolabs(Philadelphia、PA)およびCreative Biogene(Shirley,NY)などの入手先から商業的に入手可能である。野生型AAVは、宿主細胞のゲノム中に組み込まれる高い感染性および特異性を有する。Wold and Toth(2013)Curr.Gene.Ther.13(6):421-433,Hermonat&Muzyczka(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6466-6470およびLebkowskiら、(1988)Mol.Cell.Biol.8:3988-3996を参照。
【0078】
プロモーターと、ポリヌクレオチドをその中に機能的に連結することができるクローニング部位とを両方を含有するベクターは、本分野において周知である。このようなベクターは、RNAをインビトロまたはインビボで転写することが可能であり、Agilent
Technologies(Santa Clara,Calif.)およびPromega Biotech(Madison,Wis.)などの入手先から商業的に入手可能である。発現および/またはインビトロでの転写を最適化するために、クローンの5’および/または3’非翻訳部分を除去、追加または変更して、転写または翻訳のいずれかのレベルで発現を妨害しまたは低下させ得る余分の潜在的な不適切な別の翻訳開始コドンまたはその他の配列を除去することが必要であり得る。あるいは、発現を増強するために、コンセンサスリボソーム結合部位を開始コドンのすぐ5’に挿入することができる。
【0079】
遺伝子送達ビヒクルには、DNA/リポソーム複合体、ミセ、および標的化されたウイルスタンパク質-DNA複合体も含まれる。標的化抗体またはその断片も含むリポソームは、本明細書に開示される方法において使用することができる。細胞または細胞集団へのポリヌクレオチドの送達に加えて、タンパク質形質移入の非限定的な技術によって、細胞または細胞集団への本明細書に記載されたタンパク質の直接的な導入を行うことが可能であり、あるいは本明細書に開示されたタンパク質の発現を増強しおよび/またはその活性を増大させることができる培養条件は他の非限定的な技術である。
【0080】
本明細書において使用される場合、「シグナルペプチド」または「シグナルポリペプチド」という用語は、新たに合成された分泌性または膜ポリペプチドまたはタンパク質のN末端終端に通常存在するアミノ酸配列を意図する。「シグナルペプチド」または「シグナルポリペプチド」は、ポリペプチドを特定の細胞位置に、例えば、細胞膜を横切って、細胞膜中にまたは核内に誘導するように作用する。いくつかの実施形態において、シグナルペプチドは、局在化の後に除去される。シグナルペプチドの例は、当技術分野において周知である。非限定的な例は、米国特許第8,853,381号、同第5,958,736号および同第8,795,965号に記載されているものである。
【0081】
本明細書で使用される場合、「ウイルスキャプシド」または「キャプシド」という用語は、ウイルス粒子のタンパク質性シェルまたはコートを指す。キャプシドは、ウイルスゲノムをキャプシドで封入し、保護し、輸送し、宿主細胞中に放出するように機能する。キャプシドは一般に、タンパク質のオリゴマー構造サブユニット(「キャプシドタンパク質」)で構成されている。本明細書で使用される場合、「キャプシドで封入された」という用語は、ウイルスキャプシド内に封入されていることを意味する。
【0082】
本明細書で使用される場合、ウイルスまたはプラスミドに関する「ヘルパー」という用語は、本明細書に開示される改変されたAAVなどのウイルス粒子または組換えウイルス粒子の複製およびパッケージングに必要な追加の成分を提供するために使用されるウイルスまたはプラスミドを指す。ヘルパーウイルスによってコードされる成分には、ビリオンの構築、キャプシド形成、ゲノム複製および/またはパッケージングに必要とされる任意の遺伝子が含まれ得る。例えば、ヘルパーウイルスは、ウイルスゲノムの複製に必要な酵素をコードし得る。AAV構築物との使用に適したヘルパーウイルスおよびプラスミドの非限定的な例には、pHELP(プラスミド)、アデノウイルス(ウイルス)またはヘルペスウイルス(ウイルス)が含まれる。
【0083】
本明細書で使用される場合、「AAV」という用語は、アデノ随伴ウイルスの標準的な略語である。アデノ随伴ウイルスは、同時感染するヘルパーウイルスによって特定の機能が与えられた細胞中でのみ増殖する一本鎖DNAパルボウイルスである。AAVの一般的な情報および総説は、例えば、Carter,1989,Handbook of Parvoviruses,Vol.1,pp.169-228およびBerns,1990,Virology,pp.1743-1764,Raven Press,(New York)に見出すことができる。さまざまな血清型は、構造的にも機能的にも、遺伝子レベルにおいてさえ非常に密接に関連していることが周知であるので、これらの総説中で記載されている同じ原則が、これらの総説の刊行日より後に特性が明らかとなったさらなるAAV血清型に適用可能であることが十分に予測される。(例えば、Blacklowe,1988,pp.165-174 of Parvoviruses and Human Disease,J.R.Pattison,ed.;およびRose,Comprehensive Virology 3:1-61(1974)を参照)。たとえば、すべてのAAV血清型は、相同なrep遺伝子によって媒介される非常に類似した複製特性を明らかに示し、すべてがAAV2中で発現されるもののような3つの関連するキャプシドタンパク質を有している。関連性の程度は、ゲノムの長さに沿って血清型間での広範な交差ハイブリッド形成を明らかにするヘテロ二本鎖分析および「末端逆位配列」(ITR)に対応する類似した自己アニーリングセグメントの末端での存在によってさらに示唆される。類似の感染性パターンも、各血清型における複製機能が類似の制御調節下にあることを示唆する。
【0084】
本明細書で使用される「AAVベクター」は、AAV末端反復配列(ITR)が隣接する1またはそれを超える関心対象のポリヌクレオチド(または導入遺伝子)を含むベクターを指す。このようなAAVベクターは、repおよびcap遺伝子産物をコードし、発現するベクターで形質移入された宿主細胞中に存在する場合に、複製され、感染性ウイルス粒子中にパッケージングされ得る。
【0085】
「AAVビリオン」または「AAVウイルス粒子」または「AAVベクター粒子」は、少なくとも1つのAAVキャプシドタンパク質およびキャプシドで封入されたポリヌクレオチドAAVベクターから構成されるウイルス粒子を指す。粒子が異種のポリヌクレオチド(すなわち、哺乳動物細胞に送達されるべき導入遺伝子などの、野生型AAVゲノム以外のポリヌクレオチド)を含む場合、通例、「AAVベクター粒子」または単に「AAVベクター」と表記される。したがって、このようなベクターはAAVベクター粒子内に含有されるので、AAVベクター粒子の産生は、必然的にAAVベクターの産生を含む。
【0086】
いくつかの実施形態において、AAVは、複製欠損パルボウイルスであり、その一本鎖DNAゲノムは、2つの145ヌクレオチドの末端逆位配列(ITR)を含む約4.7kbの長さである。AAVの複数の血清型が存在する。AAV血清型のゲノムのヌクレオチド配列は公知である。たとえば、AAV-1の完全なゲノムはGenBankアクセッション番号NC_002077で提供されている。AAV-2の完全なゲノムは、GenBankアクセッション番号NC_001401およびSrivastavaら、J.Virol.,45:555-564(1983)に提供されている。AAV-3の完全なゲノムはGenBankアクセッション番号NC_1829で提供されている。AAV-4の完全なゲノムはGenBankアクセッション番号NC_001829で提供されている。AAV-5ゲノムはGenBankアクセッション番号AF085716で提供されている。AAV-6の完全なゲノムは、GenBankアクセッション番号NC_00 1862で提供されている。AAV-7およびAAV-8ゲノムの少なくとも一部は、それぞれGenBankアクセッション番号AX753246およびAX753249で提供されている。AAV-9ゲノムは、Gaoら、J.Virol.,78:6381-6388(2004)に提供されている。AAV-10ゲノムはMol.Ther.,13(1):67-76(2006)に提供されている。AAV-11ゲノムは、Virology,330(2):375-383(2004)に提供されている。AAV rh.74ゲノムの配列は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第9,434,928号に提供されている。米国特許第9,434,928号は、キャプシドタンパク質および自己相補的ゲノムの配列も提供する。一態様において、ゲノムは自己相補的ゲノムである。ウイルスDNA複製(rep)、キャプシドでの封入/パッケージングおよび宿主細胞染色体組み込みを指示するシス作用性配列は、AAV ITR内に含有されている。3つのAAVプロモーター(相対的なマップ位置に対して、p5、pl9およびp40と名付けられている)は、repおよびcap遺伝子をコードする2つのAAV内部オープンリーディングフレームの発現を駆動する。2つのrepプロモーター(p5およびpi9)は、単一のAAVイントロンの(ヌクレオチド2107および2227における)選択的スプライシングと相まって、rep遺伝子から4つのrepタンパク質(rep78、rep68、rep52およびrep40)の産生をもたらすRepタンパク質は、ウイルスゲノムの複製に最終的に関与する複数の酵素特性を持つ。cap遺伝子はp40プロモーターから発現され、3つのキャプシドタンパク質VP1、VP2およびVP3をコードする。選択的スプライシングおよび非コンセンサス翻訳開始部位が、3つの関連するキャプシドタンパク質の産生に関与している。単一のコンセンサスポリアデニル化部位は、AAVゲノムのマップ位置95に位置する。AAVの生活環および遺伝学は、Muzyczka,Current Topics in Microbiology and Immunology,158:97-129(1992)に概説されている。
【0087】
AAVは、例えば遺伝子治療において外来DNAを細胞に送達するためのベクターとしてAAVを魅力的なものとする特有の特徴を備えている。培養中の細胞のAAV感染は非細胞傷害性であり、ヒトおよびその他の動物の自然感染は、無症状、無症候性である。さらに、AAVは多くの哺乳動物細胞に感染し、インビボで多くの異なる組織を標的とする可能性がある。さらに、AAVは、ゆっくり分裂している細胞および分裂していない細胞を形質導入し、実質的にこれらの細胞の生涯にわたって、転写的に活性な核エピソーム(染色体外要素)として存続することができる。AAVプロウイルスゲノムは、プラスミド中でクローニングされたDNAとして挿入されるため、組換えゲノムの構築が実行可能となる。さらに、AAV複製およびゲノムキャプシド形成を指示するシグナルがAAVゲノムのITR内に含有されているので、(複製および構造キャプシドタンパク質、rep-capをコードする)ゲノムの内部およそ4.3kbの一部または全部は外来DNAに置き換えられ得る。AAVベクターを生成するために、repおよびcapタンパク質はトランスで提供され得る。AAVのもう1つの重要な特徴は、非常に安定で頑強なウイルスであるということである。AAVは、アデノウイルスを不活化するために使用される条件(56°~65℃で数時間)に容易に耐え、AAVの低温保存の重要性をより低くする。AAVは凍結乾燥されることさえあり得る。最後に、AAVに感染した細胞は重複感染に対して耐性がない。
【0088】
複数の研究により、筋肉中での長期(>1.5年)の組換えAAV媒介性タンパク質発現が実証されている。Clarkら、Hum Gene Ther,8:659-669(1997);Kesslerら、Proc Nat.Acad Sc.USA,93:14082-14087(1996);およびXiaoら、J Virol,70:8098-8108(1996)を参照。Chaoら、Mol Ther,2:619-623(2000)およびChaoら、Mol Ther,4:217-222(2001)も参照。さらに、筋肉は高度に血管形成されているので、組換えAAV形質導入は、Herzogら、Proc Natl Acad Sci USA,94:5804-5809(1997)およびMurphyら、Proc Natl Acad Sci USA,94:13921-13926(1997)に記載されているように、筋肉内注射後に体循環中に導入遺伝子産物の出現をもたらした。さらに、Lewisら、J Virol,76:8769-8775(2002)は、骨格筋線維が正しい抗体のグリコシル化、折り畳みおよび分泌のために必要な細胞因子を有することを実証し、筋肉が分泌型タンパク質治療薬の安定した発現をすることが可能であることを示している。本発明の組換えAAV(rAAV)ゲノムは、GALTをコードする核酸分子(例えば、配列番号1)および該核酸分子に隣接する1またはそれを超えるAAV ITRを含む。rAAVゲノム中のAAV DNAは、AAV血清型AAV-1、AAV-2、AAV-3、AAV-4、AAV-5、AAV-6、AAV-7、AAV-8、AAV-9、AAV-10、AAV-11、AAV-12、AAV-13、AAV PHP.BおよびAAV rh74を含むがこれらに限定されない、組換えウイルスが誘導され得る任意のAAV血清型に由来し得る。偽型化されたrAAVの作製は、例えば、国際公開第01/83692号に開示されている。他のタイプのrAAV変異形、例えばキャプシド変異を有するrAAVも企図されている。例えば、Marsicら、Molecular Therapy,22(11):1900-1909(2014)を参照されたい。様々なAAV血清型のゲノムのヌクレオチド配列が当技術分野でにおいて公知である。
【0089】
本明細書で使用される場合、ウイルスキャプシドタンパク質に関する「外部」という用語は、組み立てられたウイルスキャプシドにおいて外側に面しているキャプシドタンパク質の表面、ドメイン、領域または末端を指す。ウイルスキャプシドタンパク質に関する「内部」という用語は、組み立てられたウイルスキャプシドにおいて内側に面しているキャプシドタンパク質の表面、ドメイン、領域または末端(アミノ末端またはカルボキシ末端)を指す。組み立てられたウイルスキャプシドに関して使用される場合、「内部」という用語は、ウイルスキャプシドの内側にあるキャプシドで取り囲まれた空間およびこの取り囲まれた空間に曝露されているキャプシドの内側に面した表面を指す。内部空間は、ウイルスキャプシドタンパク質によって、キャプシドで取り囲まれており、ウイルスゲノムなどの核酸、ウイルスタンパク質、宿主またはパッケージング細胞のタンパク質、ならびに複製、ビリオンの組み立て、キャプシド形成および/またはパッケージングの間にパッケージングされるまたはキャプシドで封入される任意のその他の成分または因子を含み得る。
【0090】
本明細書で使用される場合、「接合された」という用語は、ウイルスキャプシドタンパク質をGALTタンパク質またはその同等物に付着、結合、融合および/または連結する任意の方法を指す。接合の非限定的な例には、GALTタンパク質またはその同等物およびウイルスキャプシドタンパク質が、GALTタンパク質またはその同等物およびウイルスキャプシドタンパク質の両方に対する遺伝子を含む単一のポリヌクレオチドによってコードされている組換え融合タンパク質、GALT-インテインタンパク質およびウイルスキャプシド-インテインタンパク質のモジュラーインテインをベースとした組み立て、GALTタンパク質またはその同等物とウイルスキャプシドタンパク質との間に化学結合を形成させる翻訳後修飾ならびにGALTまたはその同等物とウイルスキャプシドタンパク質との1またはそれを超えるリンカーを介した連結が含まれる。いくつかの実施形態において、接合は、ウイルスキャプシドタンパク質とその同等物の間での一時的または一過性の会合状態であり得る。例えば、GALTまたはその同等物は、オキシム結合など、感染の後の段階でまたは特定の細胞微小環境内でpHまたはイオン勾配の変化に対して感受性を有するポリマーを介してウイルスキャプシドタンパク質に一過性に連結され得る(例えば、Jinら、Biomacromolecules,2011,12(10),pp 3460-3468およびYoshidaら、Expert Opin Drug Deliv.2013 Nov;10(11):1497-1513を参照)。
【0091】
本明細書で使用される場合、「標識」という用語は、「標識された」組成物を生成するために、検出されるべき組成物、例えば、ポリヌクレオチドまたは抗体などのタンパク質に直接的または間接的に接合される直接的または間接的に検出可能な化合物または組成物を意味する。本用語は、緑色蛍光タンパク質(GFP)などの、挿入された配列の発現時にシグナルを提供する、ポリヌクレオチドに接合された配列も含む。標識は、単独で検出可能であり得(例えば、放射性同位体標識または蛍光標識)、または酵素標識の場合には、検出可能である基質化合物または組成物の化学的変化を触媒し得る。標識は、小規模の検出に適することができ、または高処理スクリーニングにより適することができる。したがって、適切な標識には、放射性同位体、蛍光色素、化学発光化合物、色素、および酵素を含むタンパク質が含まれるが、これらに限定されない。標識は単に検出してもよく、または定量化してもよい。単に検出される応答は、一般に、その存在が単に確認されるだけの応答を含むのに対して、定量化される応答は、一般に、強度、極性化および/またはその他の特性などの定量化可能な(例えば、数値で報告可能な)値を有する応答を含む。発光または蛍光アッセイでは、検出可能な応答は、結合に実際に関与するアッセイ成分と会合した発光団もしくは蛍光団を使用して直接的に、または別の(例えば、レポーターまたは指示薬)成分と会合した発光団または蛍光団を使用して間接的に生成され得る。
【0092】
シグナルを生成する発光標識の例には、生物発光および化学発光が含まれるが、これらに限定されない。検出可能な発光応答は、一般に、発光信号の変化または発生を含む。アッセイ成分を発光標識するための適切な方法および発光団は当技術分野において公知であり、例えば、Haugland,Richard P.(1996)Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals(6th ed.)に記載されている。発光プローブの例には、エクオリンおよびルシフェラーゼが含まれるが、これらに限定されない。
【0093】
適切な蛍光標識の例には、フルオレセイン、ローダミン、テトラメチルローダミン、エオシン、エリスロシン、クマリン、メチルクマリン、ピレン、マラカイト(Malacite)グリーン、スチルベン、Lucifer Yellow、Cascade Blue(商標)およびTexas Redが含まれるが、これらに限定されない。他の適切な光学色素は、Haugland,Richard P.(1996)Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals(6th ed.)に記載されている。
【0094】
別の態様では、蛍光標識は、細胞表面マーカーなどの、細胞または組織の表面中または表面上に存在する細胞成分への共有結合を促進するように官能基が付与されている。適切な官能基には、イソチオシアナート基、アミノ基、ハロアセチル基、マレイミド、スクシンイミジルエステルおよびハロゲン化スルホニルが含まれるが、これらに限定されず、これらのすべては、蛍光標識を第2の分子に付着させるために使用され得る。蛍光標識の官能基の選択は、リンカー、薬剤、マーカーまたは第2の標識剤のいずれかへの付着部位に依存する。
【0095】
蛍光標識の付着は、細胞成分もしくは化合物に直接的に、またはリンカーを介して行うことができる。蛍光標識を中間体に間接的に連結する際に使用するのに適した結合対には、抗原/抗体、例えば、ローダミン/抗ローダミン、ビオチン/アビジンおよびビオチン/ストレプタビジンが含まれるが、これらに限定されない。
【0096】
「固体支持体」という語は、「培養プレート」、「遺伝子チップ」または「マイクロアレイ」などの非水性表面を指す。このような遺伝子チップまたはマイクロアレイは、当業者に公知の多くの技術によって診断および治療の目的のために使用することができる。1つの技術において、オリゴヌクレオチドは、米国特許第6,025,136号および同第6,018,041号に概説されているものなど、ハイブリダイゼーションアプローチによってDNA配列を決定するために遺伝子チップ上に付着および配列される。本発明のポリヌクレオチドは、プローブに改変することができ、プローブは、次いで、遺伝子配列の検出に使用することができる。このような技術は、例えば、米国特許第5,968,740号および同第5,858,659号に記載されている。Kayemら、米国特許第5,952,172号およびKelleyら、(1999)Nucleic Acids Res.27:4830-4837によって記載されているように、プローブは、核酸配列の電気化学的検出のために、電極表面に付着させまたは貼り付けることもできる。
【0097】
「組成物」は、活性ポリペプチド、ポリヌクレオチドまたは抗体と、不活性(例えば、検出可能な標識)または活性(例えば、遺伝子送達ビヒクル)な別の化合物または組成物との組み合わせを意味することを意図している。
【0098】
「薬学的組成物」は、活性ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたは抗体と、固体支持体などの不活性または活性な担体との組み合わせを含み、組成物をインビトロ、インビボまたはエクスビボでの診断または治療用途に適したものにすることが意図される。
【0099】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容され得る担体」という用語は、リン酸緩衝生理食塩水溶液、水、および油/水または水/油エマルジョンなどのエマルジョン、ならびに様々なタイプの湿潤剤などの標準的な薬学的担体のいずれをも包含する。組成物は、安定剤および防腐剤を含むこともできる。担体、安定剤および佐剤の例については、Martin(1975)Remington’s Pharm.Sci.,15th Ed.(Mack Publ.Co.,Easton)を参照されたい。
【0100】
診断または処置の「対象」は、細胞または哺乳動物などの動物またはヒトである。対象は特定の種に限定されず、診断または処置の対象となる非ヒト動物を含み、感染の対象となるものまたは動物モデル、例えば、サル、ラット、マウス、チンチラなどのネズミ科の動物、イヌなどのイヌ科の動物、ウサギなどのウサギ科の動物、家畜、スポーツ用動物およびペットである。ヒトの患者もこの用語に含まれる。
【0101】
「組織」という用語は、本明細書では、生きているもしくは死んだ生物の組織、または生きているもしくは死んだ生物に由来し、もしくはこれを模倣するように設計された任意の組織を指すために使用される。組織は、健康であり得、病気であり得、および/または遺伝的変異を有し得る。生物学的組織は、任意の単一の組織(例えば、相互に接続され得る細胞の集合)、または生物の身体の器官または部分または領域を構成する組織の群を含み得る。組織は均質な細胞材料を含み得、または組織は、例えば、肺組織、骨格組織および/もしくは筋肉組織を含み得る胸部を含む身体の領域中に見られるような複合構造であり得る。例示的な組織には、肝臓、肺、甲状腺、皮膚、膵臓、血管、膀胱、腎臓、脳、胆管、十二指腸、腹部大動脈、腸骨静脈、心臓および腸(これらの任意の組み合わせを含む)に由来する組織が含まれるが、これらに限定されない。
【0102】
本明細書において使用される場合、対象中の疾患を「処置する」または対象中の疾患の「処置」は、(1)疾患の症候に対する素因があるもしくは疾患の症候をいまだ示していない対象において症候または疾患が起こることを予防すること、(2)疾患を阻止しもしくはその発達を停止すること、または(3)疾患もしくは疾患の症候を軽減しもしくは疾患もしくは疾患の症候の後退を引き起こすことを表す。本分野において理解されるとおり、「処置」は、臨床的結果を含む有益なまたは所望の結果を得るためのアプローチである。本技術において、有益なまたは所望の結果としては、1またはそれを超える症候の緩和または軽減、症状(疾患を含む)の程度の縮小、症状(疾患を含む)の安定化された(すなわち、悪化しない)状態、症状(疾患を含む)の遅延または減速、症状(疾患を含む)の進行、軽減または寛解、状態および緩解(部分的であるか、完全であるかを問わない)の1つまたはそれより多くを含むことができるが、これらに限定されず、検出可能かまたは検出不能かを問わない。
【0103】
本明細書で使用される場合、「有効量」という用語は、所望の効果を達成するのに十分な量を意味することを意図している。治療的または予防的適用の文脈において、有効量は、問題となっている症状の種類および重症度、ならびに一般的な健康、年齢、性別、体重および薬学的組成物に対する耐性などの個々の対象の特徴に依存するであろう。遺伝子治療の文脈において、いくつかの実施形態では、有効量は、対象において欠損している遺伝子の部分的なまたは完全な機能の回復をもたらすのに十分な量である。他の実施形態において、AAVウイルス粒子の有効量は、対象において遺伝子の発現をもたらすのに十分な量である。いくつかの実施形態において、有効量は、ガラクトース代謝の増加を必要とする対象においてガラクトース代謝を増加させるのに必要とされる量である。当業者は、これらのおよびその他の要因に応じて適切な量を決定することができるであろう。
【0104】
いくつかの実施形態において、有効量は、問題の適用の大きさおよび性質に依存するであろう。有効量は、目的の対象の性質および感受性ならびに使用されている方法にも依存する。当業者は、これらのおよびその他の考慮事項に基づいて有効量を決定することができるであろう。有効量は、実施形態に応じて、組成物の1またはそれを超える投与を含み得る。
【0105】
本明細書で使用される場合、「投与する」または「投与」という用語は、動物またはヒトなどの対象への物質の送達を意味することを意図している。投与は、処置の過程を通じて継続的にまたは断続的に、1つの用量で実施することができる。投与の最も有効な手段および投薬量を決定する方法は、当業者に公知であり、治療のために使用される組成物、治療の目的および処置されている対象の年齢、健康または性別によって変動する。単回または複数回の投与を実施することができ、用量レベルおよびパターンは、処置を行う医師によってまたはペットおよび動物の場合には処置を行う獣医師によって選択される。適切な投薬用製剤および薬剤を投与する方法は本分野において公知である。投与経路も決定することができ、最も効果的な投与経路を決定する方法は当業者に公知であり、処置のために使用される組成物、処置の目的、処置されている対象の健康状態または疾患段階および標的細胞または組織によって異なる。投与経路の非限定的な例には、静脈内、動脈内、筋肉内、心臓内、髄腔内、脳室下、硬膜外、脳内、脳室内、網膜下、硝子体内、関節内、眼内、腹腔内、子宮内、皮内、皮下、経皮、経粘膜および吸入が含まれる。
本開示を実施するための様式
AAVベクター、キャプシドおよび調製方法
【0106】
本明細書において、ガラクトース-1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼ(「GALT」)をコードするポリヌクレオチド配列を含み、または該ポリヌクレオチド配列から本質的になり、または該ポリヌクレオチド配列からなる組換えポリヌクレオチドまたはアデノ随伴ウイルス(「AAV」)ベクターが提供される。一態様では、GALTをコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号1と少なくとも85%、もしくは90%、もしくは95%、もしくは97%、もしくは99%同一のヌクレオチド配列を含み、または該ヌクレオチド配列から本質的になり、または該ヌクレオチド配列からなる。一態様では、野生型配列から修飾されたヌクレオチドの少なくとも1つ、または2つ、または3つ、または4つ、または5つ、または6つ、または7つ、または8つ、または9つ、または10、またはそれより多く、またはすべてが、配列番号1から修飾されていないという条件で、配列は、配列番号1と少なくとも85%、または90%、または95%、または97%、または99%同一である。別の態様では、GALTをコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号1に示されるヌクレオチド配列を含み、または該ヌクレオチド配列から本質的になり、または該ヌクレオチド配列からなる。別の実施形態では、ポリヌクレオチド配列は、配列番号4のアミノ酸配列またはその同等物をコードする。
【0107】
一態様では、ベクターは、自己相補的ベクターまたは一本鎖DNA(ssDNA)ベクターである。
【0108】
一態様では、AAVは、2つの末端逆位配列(ITR)に隣接するscAAVまたはssAAVなどのAAVを含み、または該AAVから本質的になり、または該AAVからなる。これらのITRは、感染の後続の工程が開始し得る前に、第2の鎖の合成を開始するためのプライマーとしての役割を果たすために、配列の末端にヘアピンを形成する。第2の鎖の合成は、効率的な感染に対するいくつかの障害の1つであると考えられている。scAAVのさらなる利点には、インビトロおよびインビボでの導入遺伝子発現の増加および延長が含まれる。したがって、一態様では、AAVは2つのITRをさらに含む。
【0109】
ベクターを作製するための組換えAAV骨格の非限定的な例には、AAV1、AAV2、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV13、AAV PHP.BまたはAAV rh74の群からのAAVベクター血清型が含まれる。さらなる態様において、ベクター骨格は、AAV9血清型、rh74血清型または修飾されたAAVrh74血清型である。
【0110】
GALTをコードするポリヌクレオチド配列は、必要に応じて、プロモーター、組織特異的調節エレメントまたは構成的プロモーターに機能的に連結されている。構成的プロモーターの非限定的な例には、例えば、ラウス肉腫ウイルス(RSV)LTRプロモーター(必要に応じて、RSVエンハンサーを伴う)、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、SV40プロモーター、ジヒドロ葉酸還元酵素プロモーター、β-アクチンプロモーター、ホスホグリセロールキナーゼ(PGK)プロモーターまたはEF1プロモーターが含まれる。特定の態様において、β-アクチンプロモーターは、ニワトリβ-アクチン(「CBA」)プロモーターである。別の実施形態において、プロモーターは、CMVプロモーター、EF1aプロモーター、SV40プロモーター、PGK1(ヒトまたはマウス)プロモーター、P5プロモーター、Ubcプロモーター、ヒトβアクチンプロモーター、CAGプロモーター、TREプロモーター、UASプロモーター、Ac5プロモーター、ポリヘドリンプロモーター、CaMKIIaプロモーター、Gal1プロモーター、TEF1、GDSプロモーター、ADH1プロモーター、CaMV35Sプロモーター、Ubiプロモーター、H1プロモーター、U6プロモーターまたはα-1-アンチトリプシンプロモーターから選択される。
【0111】
さらなる態様において、組換えポリヌクレオチドまたはAAVは、エンハンサー要素をコードするポリヌクレオチドをさらに含む。非限定的な例には、CMVエンハンサー、WPREおよびRSVエンハンサーが含まれる。
【0112】
特定の態様では、組換えポリヌクレオチドまたはAAVベクターは、配列番号2または配列番号3と少なくとも85%、または90%、または95%、または97%、または99%同一のヌクレオチド配列を含み、または該ヌクレオチド配列から本質的になり、または該ヌクレオチド配列からなる。。一態様では、野生型配列から修飾されたヌクレオチドの少なくとも1つ、または2つ、または3つ、または4つ、または5つ、または6つ、または7つ、または8つ、または9つ、または10、またはそれより多く、またはすべてが、配列番号2または3から修飾されていないという条件で、配列は、配列番号2または3と少なくとも85%、または90%、または95%、または97%、または99%同一である。さらなる態様において、組換えAAVベクターは、配列番号2または配列番号3に示されるヌクレオチド配列を含み、または該ヌクレオチド配列から本質的になり、または該ヌクレオチド配列からなる。
【0113】
本明細書に記載の組換えポリヌクレオチドまたはAAVベクターは、検出可能マーカーまたは精製マーカーをさらに含むことができる。ポリヌクレオチドおよび/またはベクターは、ベクターおよび担体、例えば保存剤または薬学的に許容され得る担体を含む組成物として含有されることができる。
【0114】
AAVベクター送達は、現在、ウイルスの自然の指向性に基づく、または標的組織中への直接注射による組織標的化のための血清型選択の使用に依存している。最大の治療効果を達成するために全身送達が必要とされる場合、血清型の選択は、組織特異的プロモーターと組み合わされた組織標的化のために利用できる唯一の選択肢である。したがって、AAVベクターは組織指向性を備えたキャプシド中にパッケージングすることができる。
【0115】
いくつかの態様において、ベクターは、野生型または改変されたキャプシド粒子であるウイルスキャプシド中に封入される。一態様において、本開示は、キャプシドタンパク質、単離されたポリヌクレオチド、キャプシドタンパク質の調製方法、組換えウイルス粒子、およびウイルス粒子を生成するための組換え発現系を提供する。一実施形態において、野生型キャプシドタンパク質を含む、もしくは野生型キャプシドタンパク質から本質的になる、もしくは野生型キャプシドタンパク質からなるウイルスキャプシドタンパク質、または1~7つのアミノ酸のアミノ酸置換もしくは挿入によって修飾されたウイルスキャプシドタンパク質。いくつかの実施形態において、ウイルスキャプシドタンパク質は、必要に応じてAAV9、AAV PHP.B、または修飾されたAAVrh74のVP1である。たとえば、AAV PHP.Bは、肝臓指向性を低下させるために、AAV9 VP1のアミノ酸498がアスパラギンからリジンに修飾されている。さらなる実施形態において、修飾は、AAVrh74のVP1のアミノ酸位置502でのアスパラギンのイソロイシンへの置換または同等の修飾を含む。いくつかの実施形態において、修飾は、AAVrh74のVP1のアミノ酸505でのトリプトファンのアルギニンへの置換(substation)を含む。いくつかの実施形態において、修飾は、AAVrh74のVP1のアミノ酸位置591でのペプチドYIGまたはYIGSRの挿入である。いくつかの実施形態において、このペプチドは、α7β1インテグリンに対して高い親和性を有し、および/または正常なrh74受容体結合を変化させる可能性が高い領域中に配置される。これらのポリペプチドの同等物およびこれらのペプチドの同等物をコードするポリヌクレオチドも提供され、ここで、同等物は、アミノ酸およびポリヌクレオチドの1もしくはそれより多く、2もしくはそれより多く、3もしくはそれより多く、4もしくはそれより多く、5もしくはそれより多く、6もしくはそれより多く、7もしくはそれより多く、または全部が変異した配列から改変されていないという条件で、少なくとも85%、または90%、または95%、または97%、または99%の配列同一性を有する。
【0116】
ウイルス、例えば、AAVは、レトロウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルスまたはバキュロウイルスパッケージング系などのウイルスパッケージング系を使用してパッケージングすることができる。いくつかの実施形態において、パッケージングは、ヘルパーウイルスまたはヘルパープラスミドおよび細胞株を使用することによって達成される。ヘルパーウイルスまたはヘルパープラスミドは、細胞中への遺伝物質の送達を容易にする要素および配列を含有する。別の態様において、ヘルパープラスミドまたはヘルパープラスミドを含むポリヌクレオチドは、パッケージング細胞株がヘルパープラスミドによる追加の形質移入を必要としないように、パッケージング細胞株のゲノム中に安定して組み込まれる。
【0117】
ヘルパープラスミドは、例えば、複製不全AAVをパッケージするために必要とされる全てのビリオンタンパク質をトランスにコードする複製不全ウイルスゲノムに由来する少なくとも1つのウイルスヘルパーDNA配列であって、複製能を有するAAVの産生なしに高い力価で複製不全AAVをパッケージングすることが可能なビリオンタンパク質を産生するための少なくとも1つのウイルスヘルパーDNA配列を含み得る。ウイルスDNA配列は、ウイルスのウイルス5’LTRの原型エンハンサーおよび/またはプロモーターをコードする領域を欠き、ヘルパーゲノムをパッケージングすることに関与するpsi機能配列と3’LTRの両方を欠くが、外来のポリアデニル化部位、例えばSV40ポリアデニル化部位ならびにそこでのウイルス産生が所望される細胞種内での効率的な転写を指示する外来のエンハンサーおよび/プロモーターをコードする。ウイルスは、モロニーマウス白血病ウイルス(MMLV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはテナガザル白血病ウイルス(GALV)などの白血病ウイルスである。
【0118】
外来のエンハンサーおよびプロモーターは、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)最初期(IE)エンハンサーおよびプロモーター、モロニーマウス肉腫ウイルス(MMSV)のエンハンサーおよびプロモーター(U3領域)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)のU3領域、脾フォーカス形成ウイルス(SFFV)のU3領域または固有のモロニーマウス白血病ウイルス(MMLV)プロモーターに連結されたHCMV IEエンハンサーであり得る。ヘルパープラスミドは、プラスミドベースの発現ベクターによってコードされる2つのレトロウイルスヘルパーDNA配列からなり得、例えば、第一のヘルパー配列が同種指向性MMLVまたはGALVのgagおよびpolタンパク質をコードするcDNAを含有し、第二のヘルパー配列がenvタンパク質をコードするcDNAを含有する。宿主域を決定するEnv遺伝子は、異種指向性、両指向性、同種指向性、多指向性(ミンクフォーカス形成)もしくは10A1マウス白血病ウイルスenvタンパク質、またはテナガザル白血病ウイルス(GALV envタンパク質、ヒト免疫不全ウイルスenv(gp160)タンパク質、水疱性口内炎(Stomatitus)ウイルス(VSV)Gタンパク質、ヒトT細胞白血病(HTLV)I型およびII型env遺伝子産物をコードする遺伝子、上記env遺伝子の1つまたはそれより多くの組み合わせに由来するキメラエンベロープ遺伝子または上記env遺伝子産物の細胞質および膜貫通ならびに所望の標的細胞上の特異的な表面分子に対して作られたモノクローナル抗体をコードするキメラエンベロープ遺伝子に由来し得る。
【0119】
パッケージング過程において、高力価組換えレトロウイルス含有上清を産生するために、ヒト胎児由来腎臓細胞、例えば、293細胞(ATCC番号CRL1573、ATCC、Rockville、Md.)などの、ウイルスを産生することが可能な哺乳動物細胞の第一集団中に、ヘルパープラスミドおよびAAVウイルスタンパク質をコードするプラスミドが一過性に同時形質移入される。本発明の別の方法では、この一過性に形質移入された細胞の第一の集団は、次いで、標的細胞に外来遺伝子を高い効率で形質導入するために、哺乳動物の標的細胞とともに共培養される。
パッケージング系
【0120】
本発明は、骨格がプラミド、ウイルスに由来する上記のとおりのベクターと、パッケージングプラスミドと、エンベローププラスミドとを含むウイルスパッケージング系も提供する。パッケージングプラスミドは、ヌクレオシド、キャプシドおよびマトリックスタンパク質を含有する。パッケージングプラスミドの例は、特許文献、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7,262,049号;同第6,995,258号;同第7,252,991号および同第5,710,037号にも記載されている。この系は、エンベローププラスミドによって提供される偽型化されたエンベロープタンパク質をコードするプラスミドも含有する。偽型化されたウイルスベクターは、他のエンベロープに包まれたウイルスに由来する糖タンパク質を保有する、または機能的部分を含むベクター粒子からなる。例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,262,049号を参照されたい。好ましい態様において、エンベローププラスミドは、ウイルス粒子を細胞または細胞集団に非特異的に結合させないエンベロープタンパク質をコードする。ウイルス粒子の特異性は、粒子中に挿入された抗体結合ドメインによって付与される。適切なエンベロープタンパク質の例には、黄色ブドウ球菌(Staph.aureus)ZZドメインを含有するものが含まれるが、これらに限定されない。エンベロープ中で使用する糖タンパク質の選択は、粒子が接合され得る抗体によって部分的に決定される。
【0121】
本開示は、適切なパッケージング細胞株も提供する。一態様において、パッケージング細胞株は、HEK-293細胞株である。他の適切な細胞株が当技術分野において公知であり、例えば、米国特許第7,070,994号;同第6,995,919号;同第6,475,786号;同第6,372,502号;同第6,365,150号および同第5,591,624号内の特許文献に記載されており、それぞれ参照により本明細書に組み込まれる。
【0122】
本発明は、さらに、ウイルスベクターをパッケージングするのに適した条件下で、上記のようにパッケージング細胞株をウイルス系で形質導入することを含む、または形質導入することから本質的になる、または形質導入することからなる、偽型化されたAAV粒子を作製する方法を提供する。このような条件は当技術分野において公知であり、本明細中に簡潔に記載されている。偽型化されたウイルス粒子は、当業者に公知の方法、例えば、遠心分離を使用して、細胞上清から単離することができる。このような単離された粒子が、本発明によってさらに提供される。
【0123】
本発明は、さらに、この方法によって作製された単離されたポリヌクレオチドおよび/またはAAVウイルス粒子を提供する。偽型化されたウイルス粒子は、本明細書に記載されており、GALTタンパク質またはその同等物(例えば、配列番号4または上記されているとおりの配列番号4の同等物)をコードするポリヌクレオチドを含み、または該ポリヌクレオチドから本質的になり、または該ポリヌクレオチドからなる。
【0124】
単離された偽型化された粒子は、事前に選択された細胞受容体を結合する能力を保持する抗体または抗体断片(例えば、少なくともFcドメインを含有する断片)のうちの1またはそれより多くに接合することができる。
【0125】
抗体は種特異的ではない。換言すれば、抗体はポリクローナルまたはモノクローナルであり得、マウス、ヒツジ、ヒトまたは他の種であり得る。さらに、抗体は、キメラ抗体またはヒト化抗体であり得る。
宿主細胞
【0126】
上記に記載され、参照により本明細書に組み込まれる、単離されたポリヌクレオチド、ウイルス粒子、ベクターおよびパッケージング系を含み、またはこれらから本質的になり、またはこれらからなる、単離された細胞または細胞の集団がさらに提供される。一態様では、単離された細胞は、パッケージング細胞株である。
【0127】
本明細書に記載のGALTタンパク質またはその同等物をコードするポリヌクレオチド配列と、GALTをコードする核酸の発現を制御する恒常的または誘導性プロモーターとを含む、またはこれらから本質的になる、またはこれらからなる単離された細胞または細胞の集団も提供される。一実施形態において、プロモーターは、本明細書に記載されているような誘導性プロモーターである。別の態様において、プロモーターは、本明細書に記載されているような構成的プロモーターである。さらなる態様において、GALTをコードする核酸は、配列番号1もしくはその同等物を含み、または配列番号1もしくはその同等物から本質的になり、または配列番号1もしくはその同等物からなる。一態様では、野生型配列から修飾されたヌクレオチドの少なくとも1つ、または2つ、または3つ、または4つ、または5つ、または6つ、または7つ、または8つ、または9つ、または10、またはそれより多く、またはすべてが、配列番号1から修飾されていないという条件で、配列は、配列番号1と少なくとも85%、または90%、または95%、または97%、または99%同一である。さらなる実施形態において、単離された細胞は、さらに、テトラサイクリン活性化タンパク質をコードする核酸およびテトラサイクリン活性化タンパク質の発現を調節するプロモーターを含み、またはこれらから本質的になり、またはこれらからなる。一実施形態では、テトラサイクリン活性化タンパク質の発現を調節するプロモーターは、構成的プロモーターである。関連する実施形態では、プロモーターは、ホスホグリセリン酸キナーゼプロモーター(PGK)またはCMVプロモーターである。
【0128】
特定の実施形態において、単離された細胞は、GALTタンパク質をコードする配列番号1のポリヌクレオチドを含む核酸もしくはその生物学的同等物を含み、または該核酸もしくはその生物学的同等物から本質的になり、または該核酸もしくはその生物学的同等物からなる。関連する実施形態において、GALTの生物学的同等物は、高ストリンジェンシーの条件下で配列番号1の相補物とハイブリッドを形成し、GALTタンパク質(例えば、配列番号4)をコードする核酸を含む。別の実施形態において、その生物学的同等物は、配列番号1と少なくとも80%の配列同一性、または少なくとも85%の配列同一性、または少なくとも90%の配列同一性、または少なくとも92%の配列同一性、または少なくとも95%の配列同一性、または少なくとも97%の配列同一性、または少なくとも98%の配列同一性を有する核酸を含み、一態様では、野生型配列から修飾されたヌクレオチドの少なくとも1つまたは2つ、または3つ、または4つ、または5つ、または6つ、または7つ、または8つ、または9つ、または10またはそれより多く、または全ては、配列番号1から修飾されていない(
図4を参照)。さらなる態様において、GALTタンパク質は野生型ヒトGALTタンパク質である。
【0129】
本明細書に記載の単離された細胞は、マウス、ラット、ウサギ、サル、ウシ、ヒツジ、ブタ、イヌ、ネコ、家畜(farm animals)、スポーツ動物、ペット、ウマおよび霊長類の群の種の細胞のいずれでもあり得、特に、ヒト細胞であり得る。
【0130】
特定の実施形態において、本明細書に記載の単離された細胞は、特定のレベルのGALTタンパク質を含む。GALTタンパク質のレベルは、望ましいレベルのタンパク質を産生する適切な構成的プロモーターを選択することによって、または産生されるタンパク質の量を調節する誘導性の系を使用することによって達成することができる。これらのプロモーターおよび誘導性の系は以前に記載されている。一実施形態において、単離された細胞は、少なくとも、約1×10-7ng、約3×10-7ng、約5×10-7ng、約7×10-7ng、約9×10-7ng、約1×10-6ng、約2×10-6ng、約3×10-6ng、約4×10-6ng、約6×10-6ng、約7×10-6ng、約8×10-6ng、約9×10-6ng、約10×10-6ng、約12×10-6ng、約14×10-6ng、約16×10-6ng、約18×10-6ng、約20×10-6ng、約25×10-6ng、約30×10-6ng、約35×10-6ng、約40×10-6ng、約45×10-6ng、約50×10-6ng、約55×10-6ng、約60×10-6ng、約65×10-6ng、約70×10-6ng、約75×10-6ng、約80×10-6ng、約85×10-6ng、約90×10-6ng、約95×10-6ng、約10×10-5ng、約20×10-5ng、約30×10-5ng、約40×10-5ng、約50×10-5ng、約60×10-5ng、約70×10-5ng、約80×10-5ngまたは約90×10-5ngのGALTタンパク質を含み、またはGALTタンパク質から本質的になり、またはGALTタンパク質からなる。
治療組成物および方法
【0131】
本開示は、ガラクトース血症を処置するための治療用遺伝子ベクター組成物および治療法を提供する。ガラクトース血症は、GALT遺伝子(ガラクトース-1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼ)中の劣性単一遺伝子欠損によって引き起こされる希少疾患である。ghr.nlm.nih.gov/gene/GALTを参照されたい。ガラクトース血症は、米国の45,000人におよそ1人の新生児に発症する。幸いなことに、ガラクトース血症は全国的な新生児スクリーニングプログラムで早期に検出される。唯一の処置は、乳糖およびガラクトースのすべての供給源を子供の食事から取り除くことである。ガラクトース制限による早期処置は、重症型の本疾患において有益であり、命を救うが、他の食品中に含有される低レベルのガラクトースおよび内因的に産生されたガラクトースに由来する、
言語および認知障害ならびに神経筋から神経筋へのおよび卵巣の毒性に起因する身体障害などの長期的な合併症が通常存在する。
【0132】
ベクターの様々な実施形態が本明細書に記載されている。一実施形態において、本明細書で提供されるベクターおよび該ベクターを使用する方法は、本開示によって提供されるガラクトース-1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼ(「GALT」)をコードするポリヌクレオチド配列を含む、または該ポリヌクレオチド配列から本質的になる、または該ポリヌクレオチド配列からなる組換えアデノ随伴ウイルス(「AAV」)ベクターの有効量の投与を含み、または該投与から本質的になり、または該投与からなる。一態様において、GALTをコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号1と少なくとも85%、または90%、または95%、または97%、または99%同一のヌクレオチド配列を含む。一態様において、野生型配列から修飾されたヌクレオチドの少なくとも1つ、または2つ、または3つ、または4つ、または5つ、または6つ、または7つ、または8つ、または9つ、または10、またはそれより多く、またはすべてが、配列番号1から修飾されていないという条件で、配列は、配列番号1と少なくとも85%、または90%、または95%、または97%、または99%同一である(
図4参照)。別の態様において、GALTをコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号1に示されるヌクレオチド配列を含む。別の実施形態において、ポリヌクレオチド配列は、配列番号4のアミノ酸配列をコードする。一態様において、ポリヌクレオチドおよび/またはAAVベクターは、ベクターの生体内分布を決定するためのルシフェラーゼまたはGFPのいずれかのレポーター遺伝子を含有する。別の実施形態において、ポリヌクレオチドおよび/またはAAVベクターは、ヒト(例えば、NCBI参照配列:NM_000155.3またはNM_001258332.1)、マウス(例えば、NCBI参照配列:NM_001302511.1またはNM_016658.3)、ラット(例えば、NCBI参照配列:NM_001013089.2)、チンパンジー(例えば、NCBI参照配列:XM_003951414.4またはXM_001163419.6)または他の種由来のGALT遺伝子配列を含むポリヌクレオチド配列を含み、または該ポリヌクレオチド配列から本質的になり、または該ポリヌクレオチド配列からなる。別の実施形態において、ポリヌクレオチドおよび/またはAAVベクターは、ヒトGALT遺伝子のコドン最適化されたバージョン(配列番号1および
図4)を含むポリヌクレオチド配列を含み、または該ポリヌクレオチド配列から本質的になり、または該ポリヌクレオチド配列からなる。AAVベクターの1つは、pscAAV-CB-hGALT(配列番号2)として特定される。別の実施形態において、AAVベクターは、pAAV-CB-hGALT-WPREv2(配列番号3)として特定される。pscAAV-CB-hGALTベクターは、ヒトGALT遺伝子(ガラクトース-1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼ)のコドン最適化されたバージョン(配列番号1および
図4)を駆動する小さなSV40イントロンを有する恒常的CBAプロモーターを含む。
【0133】
一態様において、AAVベクターは、ヒトGALTタンパク質(例えば、配列番号4)、マウスGALTタンパク質(例えば、NCBI参照配列NP_001289440.1)、ラットGALTタンパク質(例えば、NCBI参照配列:NP_001013107.1)、チンパンジーGALTタンパク質(例、NCBI参照配列:XP_003951463.1)または他の種からのGALTタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含む。別の実施形態において、AAVベクターは、ヒトGALTタンパク質(例えば、配列番号4)をコードするポリヌクレオチド配列を含む。
【0134】
一態様において、AAVはAAV9血清型である。別の血清型または改変されたキャプシドウイルスを使用して、神経細胞指向性を最適化することができる。別のベクターには、標準的なAAV9よりも高い神経細胞指向性のための改変されたAAV9血清型ベクター、例えば、神経細胞を標的とするベクターを同定するためにCre-lox組換え系を使用するPHP.Bが含まれる。あるいは、AAV9 PHP.Bは、肝臓指向性を低下させるために、アスパラギンからリジンへ修飾されたVP1のアミノ酸498を有する。変異したいくつかのアミノ酸を有するAAVrh74のさらなる変異形は、脳を含む非常に広範な組織指向性のために使用することができる。
【0135】
一態様において、AAVベクターは、1~7個のアミノ酸のアミノ酸置換または挿入によって修飾されたウイルスキャプシドタンパク質を含む、または該ウイルスキャプシドタンパク質から本質的になる、または該ウイルスキャプシドタンパク質からなる修飾されたウイルスキャプシドタンパク質内に含有される。出願人は、3つの変異体を生成した。変異体の1つ(AAVmut4、VP1キャプシドのアミノ酸502においてアスパラギンからイソロイシンへ)は、最大56倍(組織に応じて3~56倍の増加)高い形質導入効率で、試験したすべての組織への遺伝子送達を全般的に増加させる。別の変異体(AAVmut5、VP1キャプシドのアミノ酸505においてトリプトファンからアルギニンへ)は、心臓への遺伝子送達をAAVrh74のほぼ50倍に増加させる。第3の変異体(AAVYIG591)は、衛星細胞指向性にかかわらず、筋肉幹細胞と考えられる衛星細胞上に主として見出される受容体を標的とする。特に、AAVYIG591を設計するためのAAV結晶構造およびアルファ7ベータ1インテグリンに関する出願人の知識に基づくと、骨格筋に対する親和性がより高く、肝臓に対する親和性がより低いと考えられている。
【0136】
理論に拘束されることなく、出願人は、患者への全体的な用量を増加させることなく、筋肉に到達する有効用量を増加させることによって、患者への治療効果が達成されることを予想する。治療効果を達成するために必要とされる総投与量を減らすことにより、患者に送達されるウイルス抗原がより少なくなり、理想的にはベクターに対する免疫応答が低下し、安全性が向上する。後期臨床試験を実施するのに十分な遺伝子治療医薬品を製造することは、さらなる開発における主要なハードルである。治療効果を達成するために必要な用量を減らすことは、製造の必要性の低減、製造コストの削減、臨床試験開発の迅速化、およびより多くの患者を処置する能力の向上をもたらすであろう。
【0137】
したがって、本開示は、修飾されたキャプシドタンパク質内に含有されるAAVベクター、単離されたポリヌクレオチド、修飾されたキャプシドタンパク質の調製方法、組換えウイルス粒子および修飾されたウイルス粒子の生成のための組換え発現系に関する。本開示の一態様は、1~7個のアミノ酸のアミノ酸置換または挿入によって修飾されたウイルスキャプシドタンパク質を含む、または該ウイルスキャプシドタンパク質から本質的になる、または該ウイルスキャプシドタンパク質からなる修飾されたウイルスキャプシドタンパク質に関する。いくつかの実施形態において、ウイルスキャプシドタンパク質は、必要に応じてAAV9、AAV PHP.BまたはAAVrh74のVP1である。さらなる実施形態において、修飾は、AAVrh74のVP1のアミノ酸位置502でのアスパラギンのイソロイシンへの置換または同等の修飾を含む。いくつかの実施形態において、修飾は、AAVrh74のVP1のアミノ酸505でのトリプトファンのアルギニンへの置換(substation)を含む。いくつかの実施形態において、修飾は、衛星細胞、必要に応じて筋肉幹細胞上に主として見出される受容体を標的とする。いくつかの実施形態において、修飾は、AAVrh74のVP1のアミノ酸位置591でのペプチドYIGの挿入である。いくつかの実施形態において、このペプチドは、α7β1インテグリンに対して高い親和性を有し、および/または正常なrh74受容体結合を変化させる可能性が高い領域中に配置される。
【0138】
2つの例示的なベクターのプラスミド骨格が本明細書に開示されている。第1のベクターは、ルシフェラーゼおよび増強された黄色蛍光タンパク質から構成されるレポーター融合タンパク質のCBAプロモーター/エンハンサー駆動発現を含有する。一態様では、ルシフェラーゼおよび増強された黄色蛍光タンパク質配列が除去されている。このベクターは、標準的なAAV9血清型キャプシドまたは変異体キャプシドの内側に一本鎖ウイルスとしてパッケージングすることができる。別の態様では、AAVは、コドン最適化されたヒトGALT遺伝子(配列番号1)またはその同等物の発現を駆動するCBAプロモーター/エンハンサーを有する自己相補的ベクターを含有する。このベクターは、標準的なAAV9血清型キャプシド中にパッケージングすることができる。このベクターは、高レベルのヒトGALTタンパク質を提供することができる。luc-EYFPレポーターウイルスは、Xenogen IVIS(または同様のもの)を使用するさまざまな時点でのインビボルシフェラーゼ染色によって、またはさまざまな時点で組織を採取し、EYFPもしくはルシフェラーゼ活性のいずれかの遺伝子発現をアッセイすることによって、生体内分布および遺伝子発現に関して評価することができる。試料をさらに取得し、qPCRによるベクターゲノムの定量化を評価し得る。投与は、疾患を発症した新生仔動物(生後1日目または2日目)を開始することができる。動物モデルでは、マウスの子に顔面静脈から注射し(jove.com/video/52037/intravenous-injections-in-neonatal-miceを参照)、4週間後にGFP発現によってベクターの生体内分布を探すことができる。通常の固形飼料を与えられた母親から生まれたホモ接合性のGALT欠損マウスは、ノックアウト(KO)マウスモデルにおけるベクターの指向性および生体内分布の優れた指標となり得る。
【0139】
本開示は、担体と修飾されたタンパク質、ポリヌクレオチド、ベクター、プラスミド、宿主細胞または発現系の1つまたはそれより多くとを含む組成物も提供する。さらに、修飾されたタンパク質、ポリヌクレオチド、ベクター、プラスミド、宿主細胞または発現系の1つまたはそれより多くと使用説明書とを備えるキットが提供される。組成物は、特定の投与様式のために処方することができる。
投与
【0140】
本開示の組換えポリヌクレオチド、ベクター(例えば、AAV)、ウイルス粒子または組成物の投与は、処置の期間を通じて、連続的または断続的に、1つの用量で実施することができる。投与は、限局性、静脈内、動脈内、筋肉内、心臓内、髄腔内、脳室下、硬膜外、脳内、脳室内、網膜下、硝子体内、関節内、眼内、腹腔内、子宮内、皮内、皮下、経皮、経粘膜および吸入を含むがこれらに限定されない、任意の適切な投与様式を通じて為され得る。一実施形態において、組換えベクターまたは組成物は、筋肉内注射または静脈内注射によって投与される。別の実施形態において、組換えAAVベクターまたは組成物は全身投与される。別の実施形態において、組換えAAVベクターまたは組成物は、注射、注入または移植による非経口(parentally)投与である。一態様において、AAVベクターまたはGALTポリヌクレオチドは、肝臓へ局所的に送達される。
【0141】
投与の最も有効な手段および投薬量を決定する方法は、当業者に公知であり、治療のために使用される組成物、治療の目的および処置されている対象によって変動する。処置を行う医師によって選択される用量レベルおよびパターンで、単回または複数回の投与が実施され得る。投与量は投与経路によって影響を受け得ることに注意されたい。適切な投薬用製剤および薬剤を投与する方法は本分野において公知である。このような適切な投与量の非限定的な例は、投与あたり最小1E+9ベクターゲノムから最大1E+17ベクターゲノムであり得る。
【0142】
本明細書に記載されている方法のいくつかの実施形態において、対象に投与されるウイルス粒子(例えば、AAV)の数は、約109~約1017の範囲である。特定の実施形態において、約1010~約1012、約1011~約1013、約1011~約1012、約1011~約1014、約5×1011~約5×1012または約1012~約1013のウイルス粒子が対象に投与される。
【0143】
さらなる態様において、本開示のポリヌクレオチド、ウイルス粒子および組成物は、他の処置、例えば、ガラクトース血症およびその関連する障害または症状に適した承認された処置と組み合わせて投与することができる。非限定的な例には、対象の食事からラクトースおよび/またはガラクトースを低減または除去しながら、本開示のウイルスベクターまたは組成物によるガラクトース血症の処置が含まれる。
【0144】
処置および/または修復の成功は、以下の1つまたはそれより多くが検出されたときに判定される:処置された対象の疾患、障害または症状の症候の1つまたはそれより多くの緩和または改善、対象の疾患、障害または症状の程度の減少、疾患、障害または症状の安定した(すなわち、悪化していない)状態、疾患、障害または症状の進行の遅延または緩徐化および疾患、障害または症状の改善または緩和。いくつかの実施形態において、処置の成功は、対象から単離された1またはそれを超える細胞、組織または器官中に修復された標的ポリヌクレオチドの存在を検出することによって判定される。いくつかの実施形態において、処置の成功は、対象から単離された1またはそれを超える細胞、組織または器官中に修復された標的ポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドの存在を検出することによって判定される。
【0145】
一実施形態において、組換えポリヌクレオチドおよび/またはウイルスベクターは、対象中のGALT遺伝子を修復することができる。いくつかの実施形態において、処置に成功した細胞、組織、器官または対象における修復された標的ポリヌクレオチドまたはポリペプチドと未修復の標的ポリヌクレオチドまたはポリペプチドとの比は、約1.5:1、約2:1、約3:1、約4:1、約5:1、約6:1、約7:1、約8:1、約9:1、約10:1、約20:1、約50:1、約100:1、約1000:1、約10,000:1、約100,000:1または約1,000,000:1である。修復された標的ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの量または比は、ウエスタンブロット、ノーザンブロット、サザンブロット、PCR、配列決定、質量分析、フローサイトメトリー、免疫組織化学、免疫蛍光、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション、次世代シーケンシング、イムノブロットおよびELISAを含むがこれらに限定されない、当技術分野において公知の任意の方法によって決定することができる。
キット
【0146】
本明細書に記載されているポリヌクレオチド、薬剤、ベクターまたは組成物は、いくつかの実施形態において、治療、診断または研究用途でのそれらの使用を容易にするために、薬学的または診断用または研究用キットに組み立てられ得る。いくつかの実施形態において、本開示のキットは、本明細書に記載されている、修飾されたウイルスキャプシドタンパク質、単離されたポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞、組換えウイルス粒子、組換え発現系、修飾されたAAV、修飾された細胞、単離された組織、組成物または薬学的組成物の1つまたはそれより多くを含む。
【0147】
いくつかの実施形態において、キットは、使用説明書をさらに含む。具体的には、このようなキットは、意図された用途およびこれらの薬剤の適切な使用を説明する説明書とともに、本明細書に記載されている1またはそれを超える薬剤を含み得る。一例として、一実施形態において、キットは、キットの1またはそれを超える成分を混合するための、ならびに/または試料を単離および混合し、対象に適用するための説明書を含み得る。特定の実施形態において、キット中の薬剤は、特定の用途および薬剤の投与方法に適した薬学的製剤および投薬量である。研究目的のキットは、さまざまな実験を実行するための適切な濃度または量で成分を含有し得る。
【0148】
キットは、本明細書に記載された方法の使用を容易にするように設計され得、多くの形態をとることができる。キットの各組成物は、該当する場合、液体形態(例えば、溶液で)または固体形態(例えば、乾燥粉末)で提供され得る。特定の場合において、組成物のいくつかは、例えば、キットとともに提供されてもよくまたは提供されなくてもよい適切な溶媒またはその他の種(例えば、水または細胞培養培地)の添加によって、(例えば、活性形態へと)構成可能またはその他処理可能であり得る。いくつかの実施形態において、組成物は、保存溶液(例えば、凍結保存溶液)で提供され得る。保存溶液の非限定的な例には、DMSO、パラホルムアルデヒドおよびCryoStor(登録商標)(Stem Cell Technologies,Vancouver,Canada)が含まれる。いくつかの実施形態において、保存溶液は、ある量のメタロプロテアーゼ阻害剤を含有する。
【0149】
本明細書で使用される場合、「説明書」は、指示および/または奨励の要素を規定することができ、典型的には、特許請求された方法、組換えベクターまたは組成物のパッケージ上のまたはパッケージングに付随する書面での指示を含む。説明書には、当該説明書がキットと関連付けられるべきことを使用者が明確に認識できるような任意の様式で提供される任意の口頭でのまたは電子的な指示、たとえば、視聴覚的(例えば、ビデオテープ、DVDなど)、インターネットおよび/またはウェブベースの通信手段なども含まれ得る。いくつかの実施形態において、書面での指示は、医薬品または生物学的製品の製造、使用または販売を規制する政府機関によって規定された形式であり、その指示は、動物投与のための製造、使用または販売の機関による承認も反映することができる。
【0150】
いくつかの実施形態において、キットは、本明細書に記載されている構成要素の任意の1つまたはそれより多くを1またはそれを超える容器中に含有する。したがって、いくつかの実施形態において、キットは、本明細書に記載されている薬剤を収容する容器を含み得る。薬剤は、液体、ゲルまたは固体(粉末)の形態であり得る。薬剤は無菌的に調製され、注射器中に梱包され、冷蔵されて出荷され得る。あるいは、それはバイアルまたは貯蔵用のその他の容器中に収容され得る。第2の容器は、無菌的に調製された他の薬剤を有し得る。あるいは、キットは、注射器、バイアル、チューブまたはその他の容器中にあらかじめ混合されて出荷された活性剤を含み得る。キットは、注射器、局所塗布装置またはIV針チューブおよび袋など、対象に薬剤を投与するために必要とされる構成要素の1もしくはそれより多くまたはすべてを有し得る。
【0151】
本明細書に記載の治療法は、その治療法のための患者を特定および選択するために、適切な診断技術と組み合わせることができる。例えば、GALT遺伝子中の変異を特定するための遺伝子検査を提供することができる。したがって、変異を有する患者は、治療に適していると特定され得る。
【実施例0152】
インビトロ投与
ベクターゲノムに対するプラスミド、AAV repおよびcap遺伝子に対するプラスミドならびにAAVを生成するために必要なアデノウイルスヘルパー機能を提供するAdヘルパープラスミドを使用する標準的な三重形質移入法によって、ウイルス粒子を作製する。PEIを使用して無血清懸濁液で増殖させたHEK293細胞中に、これらの3つのプラスミドを形質移入する。形質移入の4日後に、ウイルスを回収し、標準的な方法によって精製する。同様の疾患モデルおよび血清型に基づいて静脈内投与した場合、有効な用量は1012~1014Vg/kgの範囲である。AAVmut4は、肝臓特異的な結合に関与する領域への修飾を含み、中枢神経系および筋肉を含む他の多くの標的組織へのより幅広い指向性をウイルスに付与する。
【0153】
プラスミドpAAV-CB-GALT-WPRE-Kan(
図1)を一過性形質移入によりHEK293細胞に形質移入し、2日後に細胞を溶解し、採取したタンパク質をアクリルアミドゲル上で泳動し、ナイロンメンブレンに転写し、抗ヒトGALT抗体とそれに続く検出用のIR色素標識二次抗体で探索した。
図3に示されるように、レーン1は、Y軸上に示されるサイズを有する分子量マーカーである。レーン2は1μlのGALT形質移入細胞可溶化液であり、レーン3は0.1μlのGALT形質移入細胞可溶化液、レーン4は形質移入および細胞対照として使用されるlucEYFPレポータープラスミドで形質移入されたHEK293細胞の5μlの可溶化液であって、内因的に発現された少量の天然ヒトGALTタンパク質も示しており、レーン5は空であり、レーン6は天然ヒトGALTタンパク質を示すHepG2細胞可溶化液であり、レーン7は空であり、レーン8~10は、精製のために使用されたタグのためにわずかにより高い移動度を有する、細菌によって発現された増加する濃度のGALTタンパク質標準を示す。
インビボ投与
【0154】
第一に、古典的ガラクトース血症に関連する長期合併症を処置するために承認されたAAVによって媒介される遺伝子ベースの治療または一切の遺伝子ベースの治療が存在しないので、本明細書に開示されるGALT遺伝子治療アプローチは、非常に革新的である。第二に、この技術に加えて、開示されている治療法は、離れた器官における異常なガラクトース代謝を正常化するために、肝臓への局所的な遺伝子送達を使用することができる。
【0155】
Tang,M.ら、Eur.J.Hum.Genet,(2014):1172-1179に記載されているように、新たなGALT遺伝子トラップされた(GalT欠損)マウスモデルを使用した。LC-MS/MS手順(Li,Y.ら、Mol.Genet.Metab.(2011)102(1):33-40を使用して、ホモ接合型のGalT遺伝子トラップされたマウス中でGALT活性の完全な不存在が確認された。ホモ接合型のGalT遺伝子トラップされたマウスのさらなる特性評価により、新生GalT欠損仔におけるガラクトース感受性、成体の雌における生殖能力の低下、運動機能障害および両性のGalT欠損マウスにおける発育不全が明らかになった(Tangら、(2014)、上記;Balakrishnan,B.ら、(2016)470(1):205-212;Chenら、(2017)J.Inherit.Metab.Dis.40(1):131-137)。
【0156】
図6に示されるように、AAV9-GALTベクター(
図1および2を参照)のHEK293細胞株への形質導入は、豊富なGALTタンパク質の産生をもたらした。GALTタンパク質の発現は、強力なCBAプロモーター/エンハンサーを、生理学的レベルに近いGALTタンパク質を生成するプロモーターで必要に応じて置き換えることによって変更することができる。
【0157】
生体内分布:AAV9ベクターは中枢神経系(CNS)を含む幅広い生体内分布を有するのに対し、AAV8は主にマウスの肝臓を標的とすることが確立されている。したがって、GALTおよびコドン最適化されたGALTの投与は、AAV8ベクターを使用して行うことができる。4週齢の野生型およびGalT欠損マウスの血管系を介したベクターの送達により、2つの群間での生体内分布の差を評価することができる。最初の事として、雄および雌のマウス中への尾静脈を介した、lucEYFPレポーター構築物を発現する1E+12Vgの各AAVベクター(群当たり性別当たりN=5、Nは、「Guidance for Industry:Gene Therapy Clinical Trials-Observing Subjects for Delayed Adverse Events」という表題の文書中に説明されているように、毒性/生体内分布研究のためのFDAのガイドラインに基づく)を行う。屠殺前に4週間、マウスを毎週画像化する。対照は、GALT遺伝子挿入物なしのベクターを注射された年齢および性別を一致させた動物である。4週間後、動物を屠殺し、固定液で灌流し、脳、心臓、腎臓、肝臓、目および性腺を単離する。EYFPに対して顕微鏡的に染色するために組織を切片化し、各組織の一部はゲノムDNA1μgあたりのベクターゲノムのqPCR測定のために使用する。別の制御された投与では、食事中の10%および20%ガラクトースをマウスに負荷する。
【0158】
投薬量研究:これとは別に、群当たり12匹のマウス(性別あたり群あたりN=6)に加えて選択された血清型の空ベクターを注射された対照群で、雄および雌の4週齢GalT欠損マウスに、それぞれマウス当たり、1E+10、1E+11または1E+12vgでのAAV9-GALT(またはAAV8-GALT)ベクターの3つの異なる用量の1つを静脈内注射する。動物は最長6か月間監視し、運動協調性および生殖適応度の潜在的な改善について検査する。体重減少または不活動などの処置の明白な生理学的悪影響についても、動物を監視およびアッセイする。
【0159】
行動分析:神経障害に対する処置の機能的影響を定量化するために、6月齢での行動能力についてマウス(群あたりn=12)を試験する。行動試験には、モリス水迷路での認知および水泳能力、ならびにロータロッドでの運動機能が含まれる。マウスの運動失調に関連する運動障害を決定するために、支持のために動物がその体を受動的に使用することに代えて、四肢を交互にしてロッドに沿って動物を歩かせる改変されたロータロッドを使用する。訓練のために、2分間で6RPMまで速度を徐々に増加させる。2分間休憩した後、6RPMで最長2分間(動物が試験に失敗した場合には、より短い時間)、マウスを試験する。野生型(WT)の正常なマウスと比較して負荷を増大するために、各マウスに対して12RPMで試験を繰り返すことができる。各マウスは、5分間の休息期間の後、各速度で3回試験する。6か月の終わりに、すべてのマウスを安楽死させ、資格を有する病理学者による病理学のためのH&E組織学とともに、脳およびその他の組織のさまざまな領域中での、ウエスタンによるGALT遺伝子発現およびqPCRによるベクターゲノム含有量について評価する。
【0160】
雌マウスの生殖能力評価:雌マウスの生殖適応度は、定期的に発情周期を監視し、6か月の終わりに卵胞数を数えることによって評価する。発情周期および卵胞数の正常化の兆候のみでも、これらの動物における生殖能力の改善についての十分に優れた指標である。
均等物
【0161】
本発明は上記実施形態に関連して説明されてきたが、前述の説明および実施例は、本発明の範囲を例示することを意図しており、限定することを意図するものではないことを理解すべきである。本発明の範囲内に属するその他の態様、利点および修正が、当業者には明らかであろう。
【0162】
さらに、本発明の特徴または態様がマーカッシュ群の観点で記載されている場合、当業者は、これにより、本発明がマーカッシュ群の任意の各構成要素または構成要素の亜群の観点でも記載されていることを認識するであろう。
【0163】
本明細書中で参照されるすべての技術刊行物および特許刊行物が、参照により組み込まれる。
【化1-1】
【化1-2】
配列番号1
コドン最適化されたGALT配列
【化2】
配列番号2-pAAV-CB-hGALT
変異したITR:ヌクレオチド(NT):1-106
CMVエンハンサー:NT:153-432
ニワトリβアクチンプロモーター:NT 439-708
変更されたSV40イントロン:774-833
ヒトGALT:1004-2143
ウシ成長ホルモンのポリアデニル化シグナル:NT 2186-2332
ITR:NT:2412-2552
アンピシリン耐性遺伝子:NT 3455-4315
プラスミド複製起点(ori):NT:4470-5089
【化3-1】
【化3-2】
【化3-3】
配列番号3:pAAV-CB-hGALT-WPREv2-KAN
変異したITR:ヌクレオチド(NT):1-145
CMVエンハンサー:NT:190-551
ニワトリβアクチンプロモーター:NT 552-834
キメライントロン:929-1103
ヒトGALT:1160-2299
ウッドチャック肝炎ウイルス位置応答要素(WPRE):NT 2334-2927
ポリAシグナル(BGHpA):NT 2942-3176
ITR:NT:3449-3592
KAN遺伝子:NT 5145-5960
【化4-1】
【化4-2】
【化4-3】
【化4-4】
配列番号4:
【化5】
配列番号5:
Rh74 VP1アミノ酸配列
【化6】
配列番号6
Rh74 VP1 DNA
【化7-1】
【化7-2】
配列番号7-KAN遺伝子翻訳産物
【化8】
AAV rh74コンセンサス配列アラインメント
AAVrh74
AAVrh74-N502I-キャプシド
Rh74 YIG591キャップタンパク質
【化9-1】
【化9-2】