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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025041082
(43)【公開日】2025-03-26
(54)【発明の名称】タイヤの耐久性能の評価方法
(51)【国際特許分類】
   B60C 19/00 20060101AFI20250318BHJP
   B60C 11/02 20060101ALI20250318BHJP
   B60C 11/00 20060101ALI20250318BHJP
   G01M 17/02 20060101ALI20250318BHJP
【FI】
B60C19/00 H
B60C11/02 A
B60C11/00 D
B60C19/00 J
G01M17/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023148157
(22)【出願日】2023-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久嶋 健人
(72)【発明者】
【氏名】坂東 真郁
(72)【発明者】
【氏名】横尾 勝昭
(72)【発明者】
【氏名】日比野 敦
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BA03
3D131BB03
3D131BB18
3D131BC09
3D131BC55
3D131CB20
3D131LA22
3D131LA24
3D131LA26
(57)【要約】
【課題】RFIDタグを内蔵した重荷重用タイヤの耐久性能を迅速かつ正確に評価できる、タイヤ耐久性能の評価方法の提供。
【解決手段】この評価方法は、トレッドを有し、使用を開始してから使用限界に到達するまでの期間を使用期間としたとき、走行により摩耗した前記トレッドを更生することで、更生前の第一使用期間に加え、更生後の第二使用期間が設定される、RFIDタグを内蔵した重荷重用タイヤの耐久性能を評価するための方法である。この評価方法は、処理工程S2と、走行工程S4とを含む。処理工程S2において、第一使用期間におけるタイヤの状態変化に相当する状態変化がテストタイヤTに生じるように、熱劣化処理がテストタイヤTに対して行われる。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッドを有し、
使用を開始してから使用限界に到達するまでの期間を使用期間としたとき、走行により摩耗した前記トレッドを更生することで、更生前の第一使用期間に加え、更生後の第二使用期間が設定される、RFIDタグを内蔵した重荷重用タイヤの耐久性能を評価するための方法であって、
前記RFIDタグを内蔵したテストタイヤに対して熱劣化処理を行う処理工程と、
前記処理工程を行った前記テストタイヤに対して走行試験を行う走行工程と
を含み、
前記テストタイヤが、走行履歴のない前記タイヤであり、
前記処理工程において、前記第一使用期間における前記タイヤの状態変化に相当する状態変化が前記テストタイヤに生じるように、前記熱劣化処理が前記テストタイヤに対して行われる、
タイヤの耐久性能の評価方法。
【請求項2】
トレッドを有し、
使用を開始してから使用限界に到達するまでの期間を使用期間としたとき、走行により摩耗した前記トレッドを更生することで、更生前の第一使用期間に加え、更生後の第二使用期間が設定される、RFIDタグを内蔵した重荷重用タイヤの耐久性能を評価するための方法であって、
前記RFIDタグを内蔵したテストタイヤに対して走行試験を行う走行工程
を含み、
前記テストタイヤが、前記第一使用期間を経過した前記タイヤ、又は、前記第一使用期間経過後、前記トレッドを更生した前記タイヤである、
タイヤの耐久性能の評価方法。
【請求項3】
前記走行工程を行った前記テストタイヤに対して、前記RFIDタグに書き込まれたデータの読み取りが可能かを確認する確認工程をさらに含む、
請求項1又は2に記載のタイヤの耐久性能の評価方法。
【請求項4】
前記処理工程における前記テストタイヤの状態変化が、下記式(1)で表される前記トレッドの耐熱老化性指数で表され、
前記トレッドの耐熱老化性指数が、14以上60以下である、
請求項1に記載のタイヤの耐久性能の評価方法。
耐熱老化性指数=|(熱劣化処理後のトレッドの複素弾性率E*-熱劣化処理前のトレッドの複素弾性率E*)|/熱劣化処理前のトレッドの複素弾性率E*×100 式(1)
【請求項5】
前記走行試験における前記テストタイヤの走行速度が10km/h以上40km/h以下であり、
前記テストタイヤにかける荷重が正規荷重の200%以上300%以下であり、
前記テストタイヤの内圧が正規内圧の100%以上130%以下である、
請求項1又は2に記載のタイヤの耐久性能の評価方法。
【請求項6】
前記走行試験において設定される前記テストタイヤの走行時間が250時間以上600時間以下である、請求項5に記載のタイヤの耐久性能の評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの耐久性能の評価方法に関する。詳細には、本発明は、RFIDタグを内蔵した重荷重用タイヤの耐久性能を評価するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの製造管理、顧客情報、走行履歴等のデータを管理するために、RFID(Radio Frequency Identification)タグをタイヤに内蔵することが提案されている。RFIDタグをタイヤに内蔵する技術について様々な検討が行われている(例えば、下記の特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-046057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、RFIDタグを内蔵した重荷重用タイヤの耐久性能を迅速かつ正確に評価できる、タイヤの耐久性能の評価方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るタイヤの耐久性能の評価方法は、トレッドを有し、使用を開始してから使用限界に到達するまでの期間を使用期間としたとき、走行により摩耗した前記トレッドを更生することで、更生前の第一使用期間に加え、更生後の第二使用期間が設定される、RFIDタグを内蔵した重荷重用タイヤの耐久性能を評価するための方法である。この評価方法は、前記RFIDタグを内蔵したテストタイヤに対して熱劣化処理を行う処理工程と、前記処理工程を行った前記テストタイヤに対して走行試験を行う走行工程とを含む。前記テストタイヤは、走行履歴のない前記タイヤである。前記処理工程において、前記第一使用期間における前記タイヤの状態変化に相当する状態変化が前記テストタイヤに生じるように、前記熱劣化処理が前記テストタイヤに対して行われる。
【0006】
他の観点において、本発明の一態様に係る、タイヤの耐久性能の評価方法は、トレッドを有し、使用を開始してから使用限界に到達するまでの期間を使用期間としたとき、走行により摩耗した前記トレッドを更生することで、更生前の第一使用期間に加え、更生後の第二使用期間が設定される、RFIDタグを内蔵した重荷重用タイヤの耐久性能を評価するための方法である。この評価方法は、前記RFIDタグを内蔵したテストタイヤに対して走行試験を行う走行工程を含む。前記テストタイヤは、前記第一使用期間を経過した前記タイヤ、又は、前記第一使用期間経過後、前記トレッドを更生した前記タイヤである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、RFIDタグを内蔵した重荷重用タイヤの耐久性能を迅速かつ正確に評価できる、タイヤの耐久性能の評価方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】重荷重用タイヤの一例を示す断面図である。
図2】タグ部材の平面図である。
図3図2のIII-III線に沿った断面図である。
図4】トレッドの一部を示す拡大断面図である。
図5図1のタイヤを更生することで得た更生タイヤの一部を示す断面図である。
図6】更生タイヤの製造方法を説明する図である。
図7】走行試験装置の概要を示す概略側面図である。
図8図7の走行試験装置の概略正面図である。
図9】本発明の一実施形態に係るタイヤ耐久性能の評価方法のフロー図である。
図10】処理工程を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明においては、タイヤを正規リムに組み、タイヤの内圧を正規内圧に調整し、タイヤに荷重をかけていない状態は、正規状態と称される。
【0010】
正規リムとは、タイヤが依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。
【0011】
正規内圧とは、タイヤが依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。
【0012】
正規荷重とは、タイヤが依拠する規格において定められた荷重を意味する。JATMA規格における「最大負荷能力」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「LOAD CAPACITY」は、正規荷重である。
【0013】
本発明において、タイヤを構成する要素のうち、架橋ゴムからなる要素の複素弾性率E*は、JIS K6394の規定に準拠して粘弾性スペクトロメータを用いて測定される。測定条件は以下の通りである。
初期歪み=10%
動歪み=±1%
周波数=10Hz
モード=伸長モード
温度=70℃
この測定では、試験片(長さ40mm×幅4mm×厚さ1mm)はタイヤからサンプリングされる。試験片の長さ方向は、タイヤの周方向と一致させる。タイヤから試験片をサンプリングできない場合には、測定対象の要素の形成に用いられるゴム組成物を170℃の温度で12分間加圧及び加熱して得られる、シート状の架橋ゴム(以下、ゴムシートとも称される。)から試験片がサンプリングされる。
本発明において複素弾性率E*は、70℃での複素弾性率E*で表される。
【0014】
本発明において、タイヤのトレッド部とは、路面と接地する、タイヤの部位である。ビード部とは、リムに嵌め合わされる、タイヤの部位である。サイドウォール部とは、トレッド部とビード部との間を架け渡す、タイヤの部位である。タイヤは、部位として、トレッド部、一対のビード部及び一対のサイドウォール部を備える。
【0015】
[本発明の基礎となった知見]
タイヤのトレッドは走行により摩耗する。トラックやバスに装着される重荷重用タイヤには、摩耗したトレッドを更生して再利用するケースがある。トレッド以外は、更生されないので、更生後もそのまま利用される。更生タイヤとしてタイヤを再利用する場合は、更生後の耐久性能を把握しておく必要がある。
【0016】
循環型ビジネス社会の構築に向けて、タイヤのリサイクルやリユースをすることで、資源の有効活用を図ることが検討されている。この検討の一環として、個々のタイヤの識別や履歴情報の把握ができるよう、前述のRFIDタグの採用が進められている。
【0017】
タイヤにとってRFIDタグは異物であり、RFIDタグを起点とする損傷が発生したり、RFIDタグ自体が壊れたりする恐れがある。そのため、更生タイヤにRFIDタグを適用する場合、更生前の第一使用期間における耐久性能だけでなく、更生後の第二使用期間における耐久性能へのRFIDタグの影響を把握しておく必要がある。
【0018】
実際に車両に装着してテストタイヤの評価を行う、実車走行試験では、結果を得るまで相当の時間がかかる。タイヤの劣化状態が気候の影響を受けるため、再現性のある結果を得るのが難しい。テストタイヤをドラム上で走行させる、ドラム走行試験では、更生が必要な状態までテストタイヤを走行させることはできても、実車走行でタイヤに生じる熱劣化をテストタイヤに反映させることはできない。
【0019】
そこで、本発明者らは、RFIDタグを内蔵した、重荷重用タイヤの耐久性能、特に、更生後の第二使用期間における耐久性能を、迅速かつ正確に評価できる技術について鋭意検討し、以下に説明する本発明を完成するに至っている。
【0020】
[本発明の実施形態の概要]
[構成1]
本発明の一態様に係る、タイヤの耐久性能の評価方法は、トレッドを有し、使用を開始してから使用限界に到達するまでの期間を使用期間としたとき、走行により摩耗した前記トレッドを更生することで、更生前の第一使用期間に加え、更生後の第二使用期間が設定される、RFIDタグを内蔵した重荷重用タイヤの耐久性能を評価するための方法であって、前記RFIDタグを内蔵したテストタイヤに対して熱劣化処理を行う処理工程と、前記処理工程を行った前記テストタイヤに対して走行試験を行う走行工程とを含み、前記テストタイヤが、走行履歴のない前記タイヤであり、前記処理工程において、前記第一使用期間における前記タイヤの状態変化に相当する状態変化が前記テストタイヤに生じるように、前記熱劣化処理が前記テストタイヤに対して行われる。
【0021】
このように整えられた、タイヤの耐久性能の評価方法によれば、RFIDタグを内蔵した重荷重用タイヤの耐久性能を迅速かつ正確に評価できる。
【0022】
[構成2]
好ましくは、前述の[構成1]に記載の、タイヤの耐久性能の評価方法においては、前記走行工程を行った前記テストタイヤに対して、前記RFIDタグに書き込まれたデータの読み取りが可能かを確認する確認工程をさらに含む。
【0023】
[構成3]
好ましくは、前述の[構成1]又は「構成2」に記載の、タイヤの耐久性能の評価方法においては、前記処理工程における前記テストタイヤの状態変化が、下記式(1)で表される前記トレッドの耐熱老化性指数で表され、前記トレッドの耐熱老化性指数が、14以上60以下である。
耐熱老化性指数=|(熱劣化処理後のトレッドの複素弾性率E*-熱劣化処理前のトレッドの複素弾性率E*)|/熱劣化処理前のトレッドの複素弾性率E*×100 式(1)
【0024】
[構成4]
好ましくは、前述の[構成1]から「構成3」のいずれかに記載の、タイヤの耐久性能の評価方法においては、前記走行試験における前記テストタイヤの走行速度が10km/h以上40km/h以下であり、前記テストタイヤにかける荷重が正規荷重の200%以上300%以下であり、前記テストタイヤの内圧が正規内圧の100%以上130%以下である。
【0025】
[構成5]
好ましくは、前述の[構成1]から[構成4]のいずれかに記載の、タイヤの耐久性能の評価方法においては、前記走行試験において設定される前記テストタイヤの走行時間が250時間以上600時間以下である。
【0026】
[構成6]
他の観点において、本発明の一態様に係る、タイヤの耐久性能の評価方法は、トレッドを有し、使用を開始してから使用限界に到達するまでの期間を使用期間としたとき、走行により摩耗した前記トレッドを更生することで、更生前の第一使用期間に加え、更生後の第二使用期間が設定される、RFIDタグを内蔵した重荷重用タイヤの耐久性能を評価するための方法であって、前記RFIDタグを内蔵したテストタイヤに対して走行試験を行う走行工程を含み、前記テストタイヤが、前記第一使用期間を経過した前記タイヤ、又は、前記第一使用期間経過後、前記トレッドを更生した前記タイヤである。
【0027】
このように整えられた、タイヤの耐久性能の評価方法によれば、RFIDタグを内蔵した重荷重用タイヤの耐久性能を迅速かつ正確に評価できる。
【0028】
[構成7]
好ましくは、前述の[構成6]に記載の、タイヤの耐久性能の評価方法においては、前記走行工程を行った前記テストタイヤに対して、前記RFIDタグに書き込まれたデータの読み取りが可能かを確認する確認工程をさらに含む。
【0029】
[構成8]
好ましくは、前述の[構成6]又は「構成7」に記載の、タイヤの耐久性能の評価方法においては、前記走行試験における前記テストタイヤの走行速度が10km/h以上40km/h以下であり、前記テストタイヤにかける荷重が正規荷重の200%以上300%以下であり、前記テストタイヤの内圧が正規内圧の100%以上130%以下である。
【0030】
[構成9]
好ましくは、前述の[構成6]から[構成8]のいずれかに記載の、タイヤの耐久性能の評価方法においては、前記走行試験において設定される前記テストタイヤの走行時間が250時間以上600時間以下である。
【0031】
[本発明の実施形態の詳細]
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて、本発明が詳細に説明される。
【0032】
本発明の一実施形態に係る「タイヤの耐久性能の評価方法」(以下、評価方法)は、走行により摩耗したトレッドを更生することで、更生前の第一使用期間に加えて、更生後の第二使用期間が設定される、RFIDタグを内蔵した重荷重用タイヤの耐久性能を評価するための方法である。
【0033】
第一使用期間とは、使用を開始してからトレッドが摩耗しタイヤが使用限界に到達するまでの期間である。タイヤの使用限界とは、ウェアインジゲータが路面と接地するようになるまでトレッドが摩耗した状態や、偏摩耗が進み、これ以上の使用が困難になった状態を意味する。第一使用期間は、タイヤのファーストライフとも呼ばれる。第一使用期間におけるタイヤは、ファーストライフタイヤとも呼ばれる。
【0034】
第二使用期間とは、トレッドを更生し使用を再開してから再びトレッドが摩耗しタイヤが使用限界に到達するまでの期間である。第二使用期間は、タイヤのセカンドトライフとも呼ばれる。第二使用期間におけるタイヤは、セカンドライフタイヤとも呼ばれる。第二使用期間におけるタイヤは、トレッドを更生したタイヤであるので、更生タイヤとも呼ばれる。
【0035】
[RFID内蔵重荷重用タイヤ]
図1は、本発明の一実施形態にかかる評価方法が対象とするタイヤ2の一例である。このタイヤ2はファーストライフタイヤの一例である。このタイヤ2はトラック、バス等の車両に装着される。このタイヤ2はRFIDタグ30を内蔵する。このタイヤ2は、RFIDタグ内蔵重荷重用タイヤである。
【0036】
図1は、タイヤ2の回転軸を含む平面に沿った、このタイヤ2の断面(以下、子午線断面)の一部を示す。図1において両矢印ADで示される方向は、タイヤ2の軸方向である。タイヤ2の軸方向とはタイヤ2の回転軸に平行な方向を意味する。両矢印RDで示される方向は、タイヤ2の径方向である。図1の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の周方向である。図1において径方向に延びる一点鎖線CLは、タイヤ2の赤道面を表す。
【0037】
タイヤ2はリムRに組まれる。タイヤ2の内部に例えば空気が充填され、内圧が調整される。詳述しないが、リムRは正規リムである。
【0038】
このタイヤ2は、トレッド4、一対のサイドウォール6、一対のチェーファー8、一対のビード10、カーカス12、ベルト14、一対のクッション層16、インナーライナー18及びタグ部材20を備える。
【0039】
それぞれのサイドウォール6はトレッド4の端に連なる。サイドウォール6はカーカス12の軸方向外側に位置する。サイドウォール6は架橋ゴムからなる。
【0040】
符号PWで示される位置は、正規状態のタイヤ2が最大幅を示す位置である。最大幅位置PWはタイヤ2の軸方向外端でもある。模様や文字等の装飾が外面にある場合、最大幅位置PWは、装飾がないと仮定して得られる仮想外面に基づいて特定される。
【0041】
それぞれのチェーファー8はサイドウォール6の径方向内側に位置する。チェーファー8はリムRと接触する。チェーファー8は架橋ゴムからなる。
【0042】
それぞれのビード10はチェーファー8の軸方向内側に位置する。ビード10はサイドウォール6の径方向内側に位置する。ビード10はコア22とエイペックス24とを備える。図示されないが、コア22は周方向に巻き回されたスチール製のワイヤを含む。エイペックス24はコア22の径方向外側に位置する。エイペックス24は先細りである。エイペックス24は硬質な架橋ゴムからなる。
【0043】
カーカス12は、トレッド4、一対のサイドウォール6、及び一対のチェーファー8の内側に位置する。カーカス12は、一対のビード10である第一のビード10と第二のビード10との間を架け渡す。
カーカス12は少なくとも1枚のカーカスプライ26を備える。このタイヤ2のカーカス12は1枚のカーカスプライ26からなる。カーカスプライ26は、それぞれのビード10で軸方向内側から外側に向かって折り返される。折り返されたカーカスプライ26の端はチェーファー8の外端の径方向内側に位置する。
図示されないが、カーカスプライ26は、並列した多数のカーカスコードを含む。これらカーカスコードは赤道面と交差する。このカーカス12はラジアル構造を有する。
このタイヤ2のカーカスコードはスチールコードである。
【0044】
ベルト14はトレッド4の径方向内側に位置する。ベルト14はカーカス12に積層される。
ベルト14は、径方向に積層された複数のベルトプライ28を備える。このタイヤ2のベルト14は4枚のベルトプライ28を備える。4枚のベルトプライ28は、第一ベルトプライ28A、第二ベルトプライ28B、第三ベルトプライ28C及び第四ベルトプライ28Dであり、径方向にこの順で並ぶ。第一ベルトプライ28Aが径方向において最も内側に位置する。第二ベルトプライ28Bが最も広い幅を有し、第四ベルトプライ28Dが最も狭い幅を有する。
【0045】
図示されないが、各ベルトプライ28は並列した多数のベルトコードを含む。それぞれのベルトコードは赤道面に対して傾斜する。ベルトコードはスチールコードである。
【0046】
それぞれのクッション層16はベルト14の端において、ベルト14とカーカス12との間に位置する。クッション層16は軟質な架橋ゴムからなる。
【0047】
インナーライナー18はカーカス12の内側に位置する。インナーライナー18はタイヤ2の内面を構成する。インナーライナー18は空気遮蔽性に優れた架橋ゴムからなる。インナーライナー18はタイヤ2の内圧を保持する。
【0048】
タグ部材20は、タイヤ2の最大幅位置PWの径方向内側に位置する。タグ部材20は、折り返されたカーカスプライ26の端の径方向外側に位置する。このタグ部材20は、ビード10とチェーファー8との間に位置する。
【0049】
図2はタグ部材20の平面図である。図3図2のIII-III線に沿った断面図である。
タグ部材20はプレート状である。タグ部材20の長さ方向がタイヤ2の周方向に沿うように、タグ部材20は配置される。
【0050】
タグ部材20はRFIDタグ30を含む。RFIDタグ30はタグ部材20の中心に位置する。図3においてRFIDタグ30は、説明の便宜のために実線で示されるが、その全体は保護体32で覆われる。タグ部材20は、保護体32と、保護体32で包み込まれたRFIDタグ30とで構成される。保護体32はゴム組成物の架橋物である。
【0051】
詳述しないが、RFIDタグ30は、送受信回路、制御回路、メモリ等をチップ化した半導体チップ34と、アンテナ36とから構成される小型軽量の電子部品である。RFIDタグ30は、質問電波を受信すると、これを電気エネルギーとして使用し、メモリ内の諸データを応答電波として発信する。このRFIDタグ30は、受動式無線周波数識別トランスポンダの一種である。
【0052】
タグ部材20は、RFIDタグ30が架橋ゴムで被覆されたプレート状の部材である。RFIDタグ30の損傷リスクの低減と、良好な通信環境の形成の観点から、タイヤ2におけるタグ部材20の厚さは好ましくは1.0mm以上2.5mm以下である。なお、タイヤ2に埋め込む前のタグ部材20の長さTLは60mm以上80mm以下である。幅TWは10mm以上20mm以下である。
【0053】
RFIDタグ30は、タイヤ2の最大幅位置PWの径方向内側に位置する。RFIDタグ30は、折り返されたカーカスプライ26の端の径方向外側に位置する。このRFIDタグ30は、ビード10とチェーファー8との間に位置する。
このタイヤ2では、RFIDタグ30の位置は、図1に示された位置に限られない。タイヤ2の耐久性能への影響や、通信環境が考慮され、RFIDタグ30の位置は決められる。サイドウォール6とビード10との間に、RFIDタグ30が配置されてもよい。RFIDタグ30が、タイヤ2の最大幅位置PWの径方向外側に配置されてもよい。サイドウォール6とカーカス12との間に、RFIDタグ30が配置されてもよい。
後述する評価方法によって、RFIDタグ30の位置が最適であるかどうかが確認される。
【0054】
トレッド4はカーカス12の径方向外側に位置する。トレッド4は、タイヤ2の径方向外側に位置し、周方向にのびる。トレッド4の外周面がトレッド面38である。タイヤ2は、トレッド面38において路面と接地する。トレッド4は、路面と接地するトレッド面38を備える。
【0055】
図1において、符号TEはトレッド面38の端である。トレッド面38の一方の端TEから他方の端TEまでの軸方向距離がトレッド面38の幅である。
【0056】
トレッド4はキャップ部40とベース部42とを備える。キャップ部40が路面と接地する。キャップ部40はトレッド面38を備える。キャップ部40は、耐摩耗性及びグリップ性能が考慮された架橋ゴムからなる。
ベース部42はキャップ部40の径方向内側に位置する。ベース部42はその全体がキャップ部40に覆われる。ベース部42は、低発熱性を考慮した架橋ゴムからなる。ベース部42には、露出し、路面と接地することは想定されていない。
【0057】
トレッド4には軸方向に並ぶ複数の周方向溝44が刻まれる。各周方向溝44は周方向に連続してのびる。このタイヤ2のトレッド4には4本の周方向溝44が刻まれる。
【0058】
図4は、周方向溝44の断面を示す。この周方向溝44の断面は後述するミドル周方向溝の断面である。
周方向溝44は、溝口44Mを含む一対の壁面44Wと、溝底44Tを含む底面44Bとを有する。周方向溝44の溝幅は、一対の壁面44Wである第一壁面44Wと第二壁面44Wとの間の距離、すなわち壁面間距離で表される。
【0059】
図4において両矢印WGで示される長さは、溝口44Mにおける周方向溝44の溝幅である。周方向溝44の溝幅WGは、溝口44Mを構成する一対のエッジ44E間の最短距離で表される。
両矢印DGで示される長さは、周方向溝44の溝深さである。周方向溝44の溝深さDGは、左右のエッジ44Eを結ぶ線分から溝底44Tまでの最短距離で表される。
ウェインジゲータのような凸部が溝底に設けられている場合、溝深さは、凸部が設けられていない位置での溝深さ、又は、凸部が設けられていないと仮定して得られる溝深さで表される。
周方向溝44の位置、溝幅及び溝深さは、タイヤ2の仕様に応じて適宜決められる。
重荷重用タイヤの場合、排水性及びトラクション性能への貢献の観点から、周方向溝44の溝幅WGはトレッド面38幅WTの1~10%の範囲で設定される。周方向溝44の溝深さDGは、13~25mmの範囲で設定される。
【0060】
このタイヤ2のトレッド4は4本の周方向溝44を備える。4本の周方向溝44のうち、軸方向において最外側に位置する2本の周方向溝44がショルダー周方向溝44sである。各ショルダー周方向溝44sの軸方向内側に位置する周方向溝44がミドル周方向溝44mである。
【0061】
図1に示されるように、このタイヤ2のミドル周方向溝44mの溝底44mTには凸部46が設けられる。
前述したように、トレッド4は摩耗する。周方向溝44は浅くなり、やがてトレッド4はその機能を喪失する。そのため、トレッド4がその機能を喪失する前に、トレッド4の更生や、新しいタイヤ2への交換が行われる。
凸部46は、トレッド4の更生や、新しいタイヤ2への交換を行うタイミングを知らせる部材である。凸部46が露出し路面に接地する状態は、タイヤ2は使用限界に達していることを表す。凸部46はウェアインジゲータとも呼ばれる。
【0062】
図4において両矢印HWで示される長さは凸部46の高さである。凸部46の高さは1.6~2.0mmの範囲で設定される。
【0063】
前述したように、トレッドは摩耗する。重荷重用タイヤの場合、タイヤがファーストライフタイヤであれば、トレッドが更生される。タイヤがセカンドライフタイヤ、すなわち更生タイヤであれば、タイヤは新しいタイヤに交換される。
図1に示されたタイヤ2はファーストライフタイヤである。トレッド4が摩耗し、タイヤ2の状態が使用限界に達した場合、トレッド4が更生される。
【0064】
[更生タイヤ及びその製造方法]
図5は、本発明の評価方法が対象とする更生タイヤ52の一例である。このタイヤ52は、図1に示されたタイヤ2のトレッド4を更生して得られる。このタイヤ52はセカンドライフタイヤとも呼ばれる。
図5は、更生タイヤ52の子午線断面の一部を示す。このタイヤ52は、台タイヤ54とトレッド56とを備える。このタイヤ52のトレッド56以外、つまり、台タイヤ54は、図1に示されたタイヤ2における、台タイヤ54に対応する部分の構成と同じ構成を有する。
台タイヤ54にはRFIDタグ30が既に内蔵されているので、このタイヤ52も、前述のタイヤ2と同じく、RFIDタグ30を内蔵した重荷重用タイヤである。
【0065】
図6は、更生タイヤ52の製造方法を説明する図である。トレッド4を更生する場合、例えばバフ研磨を行うことでトレッド4が削られる。これにより、図6に示されるように、成形面58を有する台タイヤ54が形成される。この成形面58に、新しいトレッド56が貼り付けられる。この製造方法は、リ・モールド方式の製造方法であるので、シート状に成形された未加硫状態のトレッド56が台タイヤ54に貼り付けられる。図示されないモールドによってトレッド56が加圧及び加熱され、トレッド56と台タイヤ54とが一体となったタイヤ52が得られる。
プレキュア方式の製造方法でトレッド4が更生されてもよい。この場合は、予め準備しておいた、加硫成形物としてのトレッド56が、接着剤を介して成形面58に貼り付けられる。図示されない加硫缶の中で加硫接着を行うことで、トレッド56と台タイヤ54とが一体となったタイヤ52が得られる。
【0066】
トレッド56の外周面がトレッド面60である。トレッド56には、軸方向に並ぶ4本の周方向溝62が刻まれる。4本の周方向溝62は、図1に示されたタイヤ2の周方向溝44の構成と同様の構成を有する。4本の周方向溝62のうち、軸方向において最外側に位置する2本の周方向溝62がショルダー周方向溝62sである。各ショルダー周方向溝62sの軸方向内側に位置する周方向溝62がミドル周方向溝62mである。ミドル周方向溝62mの溝底62mTには、ウェアインジゲータとしての凸部64が設けられる。
【0067】
[走行試験装置]
後述する評価方法で使用する走行試験装置102(以下、装置102)が説明される。
図7及び8は装置102を示す。図7は装置102の側面図である。図8は装置102の正面図である。図7及び8は装置102の概要を示す。
装置102はテストタイヤTの走行試験を行うための装置である。装置102は、ドラム104、駆動ユニット106及び接地ユニット108を備える。
【0068】
ドラム104は路面110と中心軸112とを有する。路面110は、テストタイヤTが転動する部分である。この装置102では、ドラム104の外周面が路面110である。中心軸112はドラム104を支持する。中心軸112が回転することでドラム104は回転する。ドラム104が回転することで、テストタイヤTが路面110を転動する。
図8において矢印Drdで示される方向がドラム104の回転方向である。矢印Trdで示される方向は、テストタイヤTの回転方向である。
【0069】
駆動ユニット106はドラム104を回転駆動する。駆動ユニット106はドラム104の中心軸112を回転自在に支持する。図示されないが、駆動ユニット106はモーターを備える。モーターがドラム104の中心軸112を回転駆動する。モーターの回転速度を制御することで、ドラム104の回転速度が調整される。これにより、路面110を転動するテストタイヤTの走行速度が調整される。
【0070】
接地ユニット108はテストタイヤTを支持する。接地ユニット108は、ドラム104の路面110に向けてテストタイヤTを動かし、このテストタイヤTを路面110に接地させることができる。これにより、テストタイヤTに荷重がかけられる。テストタイヤTに荷重がかけられている状態はロード状態とも呼ばれる。この接地ユニット108は路面110に接地していたテストタイヤTを路面110から引き離すこともできる。これにより、テストタイヤTにかけられていた荷重が除かれる。テストタイヤTに荷重がかけられていない状態はアンロード状態とも呼ばれる。
接地ユニット108はタイヤ軸114と支持部116とを備える。
【0071】
タイヤ軸114の一方の端は支持部116に支持される。タイヤ軸114は、その軸芯がドラム104の中心軸112の軸芯と平行になるように支持される。タイヤ軸114の他方の端には、リムRに組まれたテストタイヤTが回転自在に取り付けられる。ドラム104の軸芯を含む仮想平面内にテストタイヤTの軸芯が位置するように、テストタイヤTは装置102にセットされる。
【0072】
支持部116はタイヤ軸114を支持する。支持部116は、タイヤ軸114をドラム104の径方向に移動させることができる移動機構(図示されず)を有する。
支持部116がタイヤ軸114をドラム104に近づけることで、テストタイヤTが路面110に押し当てられる。これによりテストタイヤTがロード状態になる。タイヤ軸114の移動量を制御することでテストタイヤTにかかる荷重の大きさが調整される。
支持部116がタイヤ軸114をドラム104から遠ざけることで、テストタイヤTは路面110から離される。これによりテストタイヤTはアンロード状態になる。
【0073】
支持部116は角度調整機構(図示されず)を有する。角度調整機構は、ドラム104の中心軸112に対してタイヤ軸114がなす角度を調整できる。詳述しないが、この装置102は、ドラム104の中心軸112に対してタイヤ軸114を傾けることで、テストタイヤTのスリップ角及びキャンバー角を調整できる。
【0074】
図示されないが、この装置102は制御部を備える。制御部は、駆動ユニット106及び接地ユニット108のそれぞれと通信ケーブルで接続される。制御部は、例えば、プログラマブルシーケンサ、マイコン、パーソナルコンピュータ、その他の制御デバイスで構成される。制御部は、駆動ユニット106及び接地ユニット108の動作を制御する。
【0075】
[タイヤの耐久性能の評価方法]
本発明の一実施形態にかかる、タイヤの耐久性能の評価方法が説明される。前述したように、この評価方法は、RFIDタグを内蔵した重荷重用タイヤの耐久性能を評価するための方法である。
図9は評価方法のフロー図である。図9には、評価方法のフローの一例が示される。
この評価方法は、準備工程S1、処理工程S2、更生工程S3、走行工程S4、及び確認工程S5を含む。
【0076】
準備工程S1はテストタイヤTの準備を行う工程である。この準備工程S1では、RFIDタグを内蔵したテストタイヤTが準備される。テストタイヤTが内蔵するRFIDタグは、例えば、図2及び3を用いて説明したRFIDタグ30である。RFIDタグ30と同じ目的で使用されるRFIDタグであれば、テストタイヤTが内蔵するRFIDタグに特に制限はない。
【0077】
この評価方法は、未走行タイヤと走行タイヤとを評価の対象とする。この準備工程S1では、未走行タイヤや走行タイヤがテストタイヤTとして準備される。
未走行タイヤは、走行履歴のないタイヤである。未走行タイヤは、走行による摩耗の痕跡がないタイヤである。未走行タイヤとしては、新品タイヤ、例えば、図1に示されたタイヤ2の新品が挙げられる。走行履歴がなければ、製造後保管していたタイヤも未走行タイヤである。走行履歴がなければ、トレッドをバフ研磨することで、摩耗したトレッドを再現したタイヤも、未走行タイヤである。
走行タイヤは、走行履歴のあるタイヤである。この評価方法が対象とする走行タイヤは、特に、第一使用期間を経過したタイヤ、及び、第一使用期間を経過後、トレッドを更生したタイヤである。図1に示されたタイヤ2においてトレッド4が摩耗し、使用限界に到達したタイヤ2は、走行タイヤである。図5に示された更生タイヤ52は、更生したトレッド56に摩耗の痕跡がなくても、台タイヤ54が第一使用期間を経過しているので、走行タイヤである。
【0078】
図9に示されるように、準備工程S1において走行履歴のないタイヤ、つまり未走行タイヤがテストタイヤTとして準備された場合、処理工程S2が行われる。
この評価方法において処理工程S2は、テストタイヤTに対して熱劣化処理を行う工程である。
【0079】
熱劣化処理は、例えば図10に示された処理室152において行われる。この処理室152は、その内部の温度を調整できる、空気循環式のオーブンである。処理室152の内部にはテーブル154が設けられている。熱劣化処理を行うテストタイヤTは、このテーブル154に載置される。
【0080】
処理工程S2では、テストタイヤTがリムRに組まれる。テストタイヤTの内部に気体が充填される。テストタイヤTは、温度が調整された処理室152に投入される。テストタイヤTは加熱される。これにより、テストタイヤTに対して熱劣化処理が行われる。この処理工程S2では、第一使用期間におけるタイヤ2の状態変化に相当する状態変化がテストタイヤTに生じるように、熱劣化処理がテストタイヤTに対して行われる。未走行タイヤがテストタイヤTとして準備された場合、処理工程S2の後、テストタイヤTに対して走行工程S4が行われる。
テストタイヤTの状態変化は、テストタイヤTの内部に充填する気体、加熱温度、及び加熱時間を調整してコントロールされる。
【0081】
処理工程S2を行ったテストタイヤTのトレッドに対しては、ウェアインジゲータ(図1に示されたタイヤ2の凸部46)が露出するまでバフ研磨が行われてもよい。この場合、第一使用期間経過後のタイヤを再現したテストタイヤTが得られる。処理工程S2を行ったテストタイヤTのトレッドをウェアインジゲータが露出するまでバフ研磨した後、トレッドが更生されてもよい。この場合、第一使用期間経過後、トレッドを更生したタイヤを再現したテストタイヤTが得られる。
【0082】
準備工程S1において走行タイヤがテストタイヤTとして準備された場合は、テストタイヤTに対して処理工程S2は行われない。これは、走行タイヤが第一使用期間を経過したタイヤであるからである。
【0083】
準備工程S1において走行タイヤがテストタイヤTとして準備された場合は、図9に示されるように、更生工程S3を経ることなく、テストタイヤTに対して走行工程S4が行われる、又は、テストタイヤTに対して更生工程S3を行った後、走行工程S4が行われる。
【0084】
更生工程S3は、使用限界に到達したタイヤのトレッドを更生する。この更生工程S3では、前述の「更生タイヤの製造方法」で示した要領でトレッドが更生される。
【0085】
走行工程S4は、テストタイヤTに対して走行試験を行う工程である。この評価方法では、処理工程S2を行った未走行タイヤをベースとするテストタイヤT、更生工程S3を行わなかった走行タイヤをベースとするテストタイヤT、そして更生工程S3を行った走行タイヤをベースとするテストタイヤTに対して走行工程S4が行われる。
走行工程S4では、例えば、前述の走行試験装置102が用いられる。
【0086】
走行工程S4では、テストタイヤTはリムRに組まれる。前述したように、リムRは正規リムである。このリムRが、JATMA規格における許容リムであってもよく、JATMA規格における適用リムに対応する試験用リムであってもよい。
テストタイヤTをリムRに組むとテストタイヤTの内部に空気が充填される。これにより、テストタイヤTの内圧が調整される。内圧調整後、テストタイヤTを装着したリムRが接地ユニット108のタイヤ軸114に取り付けられる。テストタイヤTを路面110に押し当て、テストタイヤTに荷重がかけられる。タイヤ軸114と路面110との間の距離を調整して、テストタイヤTにかかる荷重が調整される。この評価方法では、通常、スリップ角及びキャンバー角は0度に設定される。このスリップ角及びキャンバー角が0度以外の角度に調整されてもよい。
【0087】
装置102へのテストタイヤTのセットが完了すると、駆動ユニット106を駆動し、ドラム104を回転させる。これにより、テストタイヤTの走行が開始される。予め設定された速度プロファイルに基づいて、テストタイヤの走行速度がコントロールされる。
走行速度を一定に保持して、走行試験が行われてもよいし、走行速度を段階的に引き上げながら、走行試験が行われてもよい。テストタイヤTにかける荷重を段階的に上げながら、走行試験が行われてもよい。
この評価方法では、走行時間が予め設定された走行時間に到達する、又は、テストタイヤTが壊れるまで、走行試験が行われる。
【0088】
予め設定された走行時間とは、更生タイヤが使用(走行)を再開してから使用限界に到達するまでに更生タイヤが走行できる距離(以下、第二使用期間の走行距離)を、走行試験において実行されるテストタイヤの速度プロファイルに基づいて時間に換算することで得られる走行時間を意味する。
走行工程S4では、第二使用期間での走行にタイヤが耐え得ることを保証できる時間(以下、第二使用期間の走行を保証できる時間)が、走行試験における走行時間として設定される。
【0089】
この評価方法は確認工程S5をさらに含むことができる。確認工程S5は、走行工程S4を行ったテストタイヤTに対して、RFIDタグに書き込まれたデータの読み取りが可能かを確認する工程である。この確認工程S5では、走行試験においてRFIDタグが破損したかどうかが確認される。
【0090】
この評価方法では、テストタイヤTの走行時間、RFIDタグの破損の有無、そしてRFIDタグを起点とする損傷の有無に基づいて、タイヤの耐久性能が評価される。具体的には、RFIDタグの破損そしてRFIDタグを起点とする損傷の発生がないことを確認した上で、走行時間が、第二使用期間の走行を保証できる時間として設定された時間を超えているかどうかを確認し、タイヤの耐久性能が評価される。RFIDタグの破損そしてRFIDタグを起点とする損傷の発生がなく、走行時間が、第二使用期間の走行を保証できる時間として設定された時間を超えていることが、RFID内蔵重荷重用タイヤには求められる。
【0091】
この評価方法では、走行タイヤをテストタイヤTとする場合は、第一使用期間を経過したタイヤ、又は、第一使用期間経過後トレッドを更生したタイヤが用いられる。未走行タイヤをテストタイヤTとする場合は、処理工程S2において、第一使用期間におけるタイヤの状態変化に相当する状態変化がテストタイヤTに生じるように、熱劣化処理がテストタイヤTに対して行われる。
この評価方法で得られる結果には、第一使用期間が反映される。この評価方法は、第一使用期間を反映させた結果を効率よくしかも高い再現性をもって得ることができる。この評価方法は、RFIDタグを内蔵した重荷重用タイヤの耐久性能を迅速かつ正確に評価できる。
【0092】
前述したように、処理工程S2では、第一使用期間におけるタイヤの状態変化に相当する状態変化がテストタイヤTに生じるように、熱劣化処理がテストタイヤTに対して行われる。これにより、ファーストライフ相当の熱劣化処理がテストタイヤTに対して実施される。
【0093】
ファーストライフ相当の熱劣化処理がテストタイヤTに対して実施されているかどうかは、トレッドの耐熱老化性指数を用いて確認できる。耐熱老化性指数は、次の式(1)で表される
耐熱老化性指数=|(熱劣化処理後のトレッドの複素弾性率E*-熱劣化処理前のトレッドの複素弾性率E*)|/熱劣化処理前のトレッドの複素弾性率E*×100 式(1)
【0094】
この評価方法では、トレッドの耐熱老化性指数は14以上60以下であるのが好ましい。耐熱老化性指数が14以上60以下の範囲にあるように、テストタイヤTに対して熱劣化処理を行うことで、第一使用期間におけるタイヤの熱劣化に相当する熱劣化がテストタイヤTに再現される。
【0095】
前述の耐熱老化性指数の範囲は、評価対象であるタイヤの新品トレッドの複素弾性率E*と、第一使用期間経過後のトレッドの複素弾性率E*とに基づいて、設定される。
【0096】
前述したように、テストタイヤTの状態変化は、テストタイヤTの内部に充填する気体、加熱温度、及び加熱時間を調整してコントロールされる。言い換えれば、テストタイヤTにおけるトレッドの耐熱老化性指数は、テストタイヤTの内部に充填する気体、加熱温度及び加熱時間を調整してコントロールされる。
【0097】
処理工程S2において、第一使用期間経過後のタイヤの劣化状態を効果的に再現できる観点から、テストタイヤTの内部に充填する気体は酸素を含むのが好ましい。この場合、酸素濃度は70%以上であるのが好ましく、90%以上であるのがより好ましい。特に好ましくは、酸素濃度は100%である。
【0098】
熱劣化処理における加熱温度は60℃以上80℃以下であるのが好ましい。
加熱温度が60℃未満であると、RFIDタグを包むゴム(図1のタイヤ2におけるタグ部材20においてRFIDタグ30を包む保護体32)まで十分に熱劣化をさせることができず、RFIDタグに対するゴムの接着力を狙い通りに低下させることができない。そのため、加熱温度は60℃以上であるのが好ましい。
加熱温度が80℃を超えると、ゴムに含まれる油分が揮発し、熱劣化が想定以上に進んでしまう。RFIDタグが高熱にさらされるため、RFIDタグに想定外の損傷が生じることも懸念される。そのため、加熱温度は80℃以下であるのが好ましい。
【0099】
熱劣化処理における加熱時間は14日以上35日以下であるのが好ましい。
加熱時間が14日未満であると、RFIDタグを包むゴム(図1のタイヤ2におけるタグ部材20においてRFIDタグ30を包む保護体32)まで十分に熱劣化をさせることができず、RFIDタグに対するゴムの接着力を狙い通りに低下させることができない。そのため、加熱時間は14日以上であるのが好ましい。
加熱時間が35日を超えると、ゴムに含まれる油分が揮発し、熱劣化が想定以上に進んでしまう。評価に要する時間が長く、耐久性能の迅速な評価が困難になる。そのため、加熱時間は35日以下であるのが好ましい。
【0100】
RFIDタグを内蔵した重荷重用タイヤの耐久性能を迅速かつ正確に評価できる観点から、処理工程S2において、リムに組み、酸素を含み気体を内部に充填した状態でタイヤが加熱され、タイヤの内部における酸素濃度が70%以上であり、タイヤの加熱温度が60℃以上80℃以下であり、タイヤの加熱時間が14日以上35日以下であるのがより好ましい。
【0101】
前述したように、走行工程S4では、テストタイヤTに対して走行試験が行われる。この走行工程S4では、走行試験における走行速度、テストタイヤTにかける荷重、そしてテストタイヤTの内圧が調整される。
【0102】
走行試験におけるテストタイヤTの走行速度は10km/h以上40km/h以下であるのが好ましい。
走行速度が10km/h未満であると、走行試験に要する時間が長く、耐久性能の迅速な評価が困難になる。そのため、走行速度は10km/h以上であるのが好ましい。
走行速度が40km/hを超えると、テストタイヤTのトレッド部において発熱が促される。重荷重用タイヤにおいて、RFIDタグが配置される傾向にあるビード部や、サイドウォール部において損傷が生じる前に、トレッド部で損傷が生じる恐れがある。そのため、走行速度は40km/h以下であるのが好ましい。
【0103】
走行試験においてテストタイヤTにかける荷重は、正規荷重の200%以上300%以下であるのが好ましい。
テストタイヤTにかける荷重が正規荷重の200%未満であると、テストタイヤTが繰り返し撓みことで生じる歪の度合いが弱く、走行試験に時間がかかり、耐久性能の迅速な評価が困難になる。そのため、テストタイヤTにかける荷重は、正規荷重の200%以上であるのが好ましい。
テストタイヤTにかける荷重が正規荷重の300%を超えると、テストタイヤTに機械疲労を加える前に、テストタイヤTに損傷が生じる恐れがある。この場合、テストタイヤTの使用状態が、第一使用期間におけるタイヤの使用状態から乖離する。そのため、テストタイヤTにかける荷重は正規荷重の300%以下であるのが好ましい。
【0104】
走行試験においてテストタイヤTの内圧は、正規内圧の100%以上130%以下であるのが好ましい。
テストタイヤTの内圧が正規内圧の100%未満であると、テストタイヤTを繰り返し撓ませてテストタイヤTに歪を与えても、テストタイヤTが機械疲労する前に損傷が生じる恐れがある。この場合、第一使用期間におけるタイヤの使用状態をテストタイヤTに再現することができない。そのため、テストタイヤTの内圧は正規内圧の100%以上であるのが好ましい。
テストタイヤTの内圧が正規内圧の130%を超えると、テストタイヤTの剛性が高まり、テストタイヤTに歪を生じさせにくくなる。この場合も、第一使用期間におけるタイヤの使用状態をテストタイヤTに再現することができない。そのため、テストタイヤTの内圧は正規内圧の130%以下であるのが好ましい。
【0105】
RFIDタグを内蔵した重荷重用タイヤの耐久性能を迅速かつ正確に評価できる観点から、走行工程S4においては、走行試験におけるテストタイヤTの走行速度は10km/h以上40km/h以下であり、テストタイヤTにかける荷重は、正規荷重の200%以上300%以下であり、そして、テストタイヤTの内圧は、正規内圧の100%以上130%以下であるのがより好ましい。この場合、テストタイヤTにかける荷重及びテストタイヤの内圧を段階的に増加させるのがさらに好ましい。
【0106】
この評価方法では、耐久性能を正確に評価できる観点から、走行試験において設定されるテストタイヤTの走行時間は250時間以上であるのが好ましい。耐久性能を迅速に評価できる観点から、走行時間は600時間以下であるのが好ましい。
【0107】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、本発明によれば、RFIDタグを内蔵した重荷重用タイヤの耐久性能を迅速かつ正確に評価できる、タイヤの耐久性能の評価方法が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0108】
以上説明された、タイヤの耐久性能の評価方法は、種々のタイヤにも適用できる。
【符号の説明】
【0109】
2・・・タイヤ
4、56・・・トレッド
6・・・サイドウォール
8・・・チェーファー
10・・・ビード
12・・・カーカス
14・・・ベルト
20・・・タグ部材
26・・・カーカスプライ
30・・・RFIDタグ
32・・・保護体
38、60・・・トレッド面
44、62・・・周方向溝
46、64・・・凸部
52・・・更生タイヤ
54・・・台タイヤ
58・・・成形面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10