(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025041093
(43)【公開日】2025-03-26
(54)【発明の名称】制御装置、制御装置により行なわれる方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 36/20 20090101AFI20250318BHJP
H04W 16/28 20090101ALI20250318BHJP
H04W 24/02 20090101ALI20250318BHJP
H04W 36/06 20090101ALI20250318BHJP
H04B 7/0452 20170101ALI20250318BHJP
【FI】
H04W36/20
H04W16/28 130
H04W24/02
H04W36/06
H04B7/0452 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023148185
(22)【出願日】2023-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】白瀬 大地
(72)【発明者】
【氏名】村岡 一志
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA03
5K067DD47
5K067EE02
5K067EE08
5K067EE10
5K067JJ38
5K067JJ39
(57)【要約】
【課題】部分的ウェイト生成法を利用する際にサブセット間干渉及びサブセット内干渉の両方の低減に寄与する。
【解決手段】制御装置は、第2の無線端末と1又はそれ以上の第1の無線端末のうち少なくとも1つとの間の干渉レベルが第1の程度より大きく第3の程度より小さい第2の程度であると推定される場合、空間多重送信のために時間及び周波数リソースを第2の無線端末に割り当てるために、第2の無線端末が当該少なくとも1つの第1の無線端末と同じ無線端末サブセットに所属する必要があると判断する。一方、制御装置は、第2の無線端末と1又はそれ以上の第1の無線端末のうち少なくとも1つとの間の干渉レベルが第2の程度より大きい第3の程度であると推定される場合、第2の無線端末はいずれの無線端末サブセットに属することも許可されず、時間及び周波数リソース上での空間多重送信から第2の無線端末が除外されると判断する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアンテナを備える基地局装置と同一の時間及び周波数リソースにおいて空間多重送信を行う複数の無線端末サブセットを決定する手段を備え、
各無線端末サブセットは、前記複数のアンテナから選択された対応する基地局アンテナサブセットとの間で前記時間及び周波数リソース上でサブセット単位のmultiple-input multiple-output (MIMO) 送信を行う1又はそれ以上の無線端末を含み、
前記決定する手段は、
第2の無線端末と、前記空間多重送信のために前記時間及び周波数リソースを共用すると既に決定されている1又はそれ以上の第1の無線端末の各々との間の干渉レベルが第1の程度であると推定される場合、前記第2の無線端末に前記時間及び周波数リソースを割り当て可能であり且つ前記第2の無線端末が任意の無線端末サブセットに所属可能であると判断し、
前記第2の無線端末と前記1又はそれ以上の第1の無線端末のうち少なくとも1つとの間の干渉レベルが前記第1の程度より大きく第3の程度より小さい第2の程度であると推定される場合、前記空間多重送信のために前記時間及び周波数リソースを前記第2の無線端末に割り当てるために、前記第2の無線端末が前記少なくとも1つの第1の無線端末と同じ無線端末サブセットに所属する必要があると判断し、
前記第2の無線端末と前記1又はそれ以上の第1の無線端末のうち少なくとも1つとの間の干渉レベルが前記第1の程度及び前記第2の程度より大きい前記第3の程度であると推定される場合、前記第2の無線端末はいずれの無線端末サブセットに属することも許可されず、前記時間及び周波数リソース上での前記空間多重送信から前記第2の無線端末が除外されると判断する、
よう適合される、
制御装置。
【請求項2】
前記空間多重送信のために前記複数の無線端末サブセットに所属可能と判定された無線端末の数に応じて、前記第1の程度と前記第2の程度との間の第1の境界及び前記第2の程度と前記第3の程度との間の第2の境界のうち一方又は両方を調整する手段をさらに備える、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記調整する手段は、前記無線端末の数が基準値を下回るなら、前記第1の境界の値、若しくは前記第2の境界の値、又はこれら両方を現在の値と比べて大きくするよう適合される、
請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記決定する手段は、前記1又はそれ以上の第1の無線端末の各々と前記第2の無線端末との間の干渉の度合いを表す指標に基づいて、前記干渉レベルが前記第1、第2、及び第3の程度のいずれであると推定されるかを判定するよう適合される、
請求項1~3のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記第1の程度と前記第2の程度との間の第1の境界、及び前記第2の程度と前記第3の程度との間の第2の境界を前記指標に基づいて設定する手段をさらに備える、
請求項4に記載の制御装置。
【請求項6】
前記決定する手段は、前記1又はそれ以上の第1の無線端末が所属する又は所属可能である1又はそれ以上の無線端末サブセットの各々と前記第2の無線端末との間の干渉の度合いを表す指標を計算し、前記干渉レベルが前記第1、第2、及び第3の程度のいずれであると推定されるかを前記指標に基づいて判定するよう適合される、
請求項1~3のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項7】
前記第1の程度と前記第2の程度との間の第1の境界、及び前記第2の程度と前記第3の程度との間の第2の境界を前記指標に基づいて、設定する手段をさらに備える、
請求項6に記載の制御装置。
【請求項8】
各第1の無線端末と前記複数のアンテナの一部又は全部との間のチャネル情報、及び前記第2の無線端末と前記複数のアンテナの一部又は全部との間のチャネル情報に基づいて、前記指標を算出する手段をさらに備える、
請求項4に記載の制御装置。
【請求項9】
複数のアンテナを備える基地局装置と同一の時間及び周波数リソースにおいて空間多重送信を行う複数の無線端末サブセットを決定することを備え、
各無線端末サブセットは、前記複数のアンテナから選択された対応する基地局アンテナサブセットとの間で前記時間及び周波数リソース上でサブセット単位のmultiple-input multiple-output (MIMO) 送信を行う1又はそれ以上の無線端末を含み、
前記決定することは、
第2の無線端末と、前記空間多重送信のために前記時間及び周波数リソースを共用すると既に決定されている1又はそれ以上の第1の無線端末の各々との間の干渉レベルが第1の程度であると推定される場合、前記第2の無線端末に前記時間及び周波数リソースを割り当て可能であり且つ前記第2の無線端末が任意の無線端末サブセットに所属可能であると判断し、
前記第2の無線端末と前記1又はそれ以上の第1の無線端末のうち少なくとも1つとの間の干渉レベルが前記第1の程度より大きく第3の程度より小さい第2の程度であると推定される場合、前記空間多重送信のために前記時間及び周波数リソースを前記第2の無線端末に割り当てるために、前記第2の無線端末が前記少なくとも1つの第1の無線端末と同じ無線端末サブセットに所属する必要があると判断し、
前記第2の無線端末と前記1又はそれ以上の第1の無線端末のうち少なくとも1つとの間の干渉レベルが前記第1の程度及び前記第2の程度より大きい前記第3の程度であると推定される場合、前記第2の無線端末はいずれの無線端末サブセットに属することも許可されず、前記時間及び周波数リソース上での前記空間多重送信から前記第2の無線端末が除外されると判断する、
ことを備える、
制御装置により行なわれる方法。
【請求項10】
方法をコンピュータに行わせるプログラムであって、
前記方法は、複数のアンテナを備える基地局装置と同一の時間及び周波数リソースにおいて空間多重送信を行う複数の無線端末サブセットを決定することを備え、
各無線端末サブセットは、前記複数のアンテナから選択された対応する基地局アンテナサブセットとの間で前記時間及び周波数リソース上でサブセット単位のmultiple-input multiple-output (MIMO) 送信を行う1又はそれ以上の無線端末を含み、
前記決定することは、
第2の無線端末と、前記空間多重送信のために前記時間及び周波数リソースを共用すると既に決定されている1又はそれ以上の第1の無線端末の各々との間の干渉レベルが第1の程度であると推定される場合、前記第2の無線端末に前記時間及び周波数リソースを割り当て可能であり且つ前記第2の無線端末が任意の無線端末サブセットに所属可能であると判断し、
前記第2の無線端末と前記1又はそれ以上の第1の無線端末のうち少なくとも1つとの間の干渉レベルが前記第1の程度より大きく第3の程度より小さい第2の程度であると推定される場合、前記空間多重送信のために前記時間及び周波数リソースを前記第2の無線端末に割り当てるために、前記第2の無線端末が前記少なくとも1つの第1の無線端末と同じ無線端末サブセットに所属する必要があると判断し、
前記第2の無線端末と前記1又はそれ以上の第1の無線端末のうち少なくとも1つとの間の干渉レベルが前記第1の程度及び前記第2の程度より大きい前記第3の程度であると推定される場合、前記第2の無線端末はいずれの無線端末サブセットに属することも許可されず、前記時間及び周波数リソース上での前記空間多重送信から前記第2の無線端末が除外されると判断する、
ことを備える、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無線通信システムに関し、特に、基地局と複数の無線端末との間の同一時間及び周波数リソースを用いた空間多重送信に関する。
【背景技術】
【0002】
Massive multiple-input multiple-output (MIMO)は、3rd Generation Partnership Project (3GPP(登録商標)) 第5世代(Fifth Generation (5G))システムで使用されている物理レイヤ技術である。Massive MIMO (mMIMO) 技術では、無線アクセスネットワーク(Radio Access Network (RAN))の基地局(i.e., 5GシステムのgNB)は、多数のアンテナを備えるアンテナアレイを使用する。アンテナアレイは、デジタルビームフォーミングに使用され、特に同じ時間及び周波数リソース上に多数の無線端末(i.e., User Equipments (UEs))を空間多重するマルチユーザMIMO (MU-MIMO) に使用される。空間的に分散したアンテナアレイは、基地局が提供する1つのセル内に配置されてもよい。
【0003】
Beyond 5G またはSixth Generation (6G) の重要な技術の1つに分散MIMO(Distributed MIMO)がある。分散MIMOの基本的なアイデアは、広域に分散した複数の無線端末にサービスを提供するために、各々が1つまたは複数のアンテナを備えた複数の無線装置を広域に分散して配置するというものである(例えば、非特許文献1及び2を参照)。分散された無線装置の各々は、ディジタル・ベースバンド信号処理を担う制御装置に伝送路を介して接続される。ディジタル・ベースバンド信号処理を担う制御装置は、例えば、ベースバンドユニット、ディジタルユニット、分散ユニット(Distributed Unit (DU))、central processing unit (CPU)、又はエッジ・クラウド・プロセッサと呼ばれる。分散MIMOは、セルフリーMassive MIMO又は分散アンテナシステム(Distributed Antenna System (DAS))と呼ばれることもある。分散された各無線装置は、transmission and reception point (TRP) 、radio unit (RU)、remote radio head、又はアクセスポイント(Access Point (AP))と呼ばれることもある。
【0004】
分散MIMOは、既存の集中型MIMOと同様に、MU-MIMO伝送をサポートする。MU-MIMOの基地局は、ダウンリンク送信時およびアップリンク受信時に、それぞれプリコーディングウェイトおよびポストコーディングウェイトを用いて信号をディジタル合成することで、無線端末間の干渉を除去できる。ポストコーディングウェイトは、合成ウェイト、受信合成ウェイト、受信ウェイト、空間フィルタリング・ウェイト等と呼ばれることもある。以下、プリコーディングウェイト及びポストコーディングウェイトをまとめてウェイトと呼称する。
【0005】
非特許文献2は、分散MU-MIMOシステムにおけるウェイト計算の演算量を削減する方法を提案している。非特許文献2で提案された手法では、制御装置は、基地局の複数の無線装置により提供されるサービスエリア内の複数の無線端末から選択された無線端末のサブセット(又はクラスタ)を形成する。制御装置は、形成された無線端末のサブセットにサービスを提供する(serving)アンテナのサブセット(又はクラスタ)を複数の無線装置の複数のアンテナからさらに選ぶ。以下では、選択された無線端末のサブセット(以下、通信無線端末サブセットと呼ぶ)及びこれら選択された無線端末にサービスを提供するアンテナのサブセット(以下、アンテナサブセットと呼ぶ)の組み合わせをサブシステムと呼ぶ。通信無線端末サブセットは、対応するアンテナサブセットとの間で同一の時間及び周波数リソース上でサブセット単位のMIMO送信を行う1又はそれ以上の無線端末を含む。基地局又はその制御装置は、zero forcing (ZF) 又はminimum mean squared error (MMSE)ウェイトをサブシステム毎に生成する。これは、ウェイト生成における逆行列計算に要する演算量を削減する。なお、基地局又はその制御装置は、サブシステム毎のウェイト計算時に干渉源として考慮される無線端末(以下、干渉無線端末と呼ぶ)をさらに選択してもよい。この場合、1つのサブシステムは、通信無線端末サブセット、アンテナサブセット、及び干渉無線端末のサブセット(以下、干渉無線端末サブセットと呼ぶ)の組み合わせである。以下では、非特許文献2に記載されているように、基地局がサブシステム単位でウェイトを計算する方法を部分的又は局所的ウェイト生成法と呼ぶ。一方、基地局又はその制御装置が、制御装置に接続された複数のアンテナの全てと、これら複数のアンテナによりサービスを提供される全ての無線端末をまとめて考慮してウェイトを計算する方法を全体(global)ウェイト生成法と呼ぶ。
【0006】
部分的ウェイト生成法は、ウェイト生成における逆行列計算に要する演算量を削減する一方、全体ウェイト生成法と比較して無線端末間の干渉による通信品質の劣化をもたらす。この無線端末間の干渉は、サブセット内干渉とサブセット間干渉に分けられる。サブセット内干渉は、部分的ウェイト生成法による干渉除去の後に残存する同一の通信無線端末サブセットに属する無線端末間の干渉である。サブセット間干渉は、部分的ウェイト生成法によって考慮されていない他の無線端末サブセットから、通信無線端末サブセットに属する無線端末への干渉である。部分的ウェイト生成法の利用時には、サブセット間干渉による特性劣化が顕著である。
【0007】
非特許文献2は、サブセット間干渉を低減する無線リソース割当方法を提案している。非特許文献2に提案された方法は、干渉オフセット距離を定義し、複数の無線端末サブセット(又はクラスタ)を干渉オフセット距離に基づいて分類又は分割する。非特許文献2の用語法では、複数の無線端末サブセットは複数の「レイヤ」に分割される。非特許文献2に提案された方法は、時間スケジューリングロスを犠牲にしてサブセット間干渉を緩和するために、各レイヤに所定の順序で送信機会(又は時間リソース)を与える。
【0008】
具体的には、非特許文献2に提案された方法は、クラスタ重心間の距離が予め定義された干渉オフセット距離以上である複数の無線端末サブセットを第1のレイヤに配置する。さらに、当該方法は、第1のレイヤに属するいずれかの無線端末サブセットとの距離が干渉オフセット距離を下回り、且つ互いの距離が干渉オフセット距離以上である他の複数の無線端末サブセットを第2のレイヤに配置することができる。干渉オフセット距離は、例えば、2つの近傍の無線端末サブセット間の平均距離の倍数として定義される。そして、当該方法は、空間多重送信のための周波数リソースを時分割で第1及び第2のレイヤに順番に割り当てる。言い換えると、同一の時間及び周波数リソースを用いた空間多重送信はレイヤ単位で行われ、異なるレイヤは同一の周波数及び時間リソースを空間多重送信のために共用しない。
【0009】
一方、特許文献1は、MU-MIMO送信のために空間多重される無線端末(UEs)の組み合わせによってはプリコーディングウェイトを送信信号に乗算しても無線端末相互にヌルが十分に向けられず特性が大幅に劣化すること、したがって多重される無線端末の組み合わせを適切に決定するのが好ましいことを指摘している。特許文献1は、複数の無線端末の中から、同一の時間及び周波数リソース上でMU-MIMO送信を受信する無線端末群を決定する方法を開示している。具体的には、この方法は、既に無線端末群に属すると決定されている第1の無線端末の受信電力ベクトルと新たに無線端末群に追加される候補の第2無線端末の受信電力ベクトルとの内積に基づいて、無線端末ごとのSignal to Interference and Noise Ratio (SINR) を計算し、第2の無線端末を新たに無線端末群に追加した場合のスループットを示すメトリックを計算されたSINRを用いてさらに計算する。そして、当該方法は、第2の無線端末を追加する前に比べてメトリックが増加するかを判定し、メトリックが増大する場合には、第2の無線端末を無線端末群に追加すると決定する。
【0010】
以降、特に断らない限り、本明細書で使用される「無線端末のサブセット」又は「無線端末サブセット」との用語は、通信無線端末サブセット、又は通信無線端末サブセットと干渉無線端末サブセットの和集合として定義されるサブセットを意味する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】E. Bjornson and L. Sanguinetti, "Scalable Cell-Free Massive MIMO Systems," IEEE Transactions on Communications, vol. 68, no. 7, pp. 4247-4261, July 2020
【非特許文献2】R. Takahashi, H. Matsuo and F. Adachi, "Scalable and Reconfigurable Distributed MU-MIMO System," 2022 IEEE 95th Vehicular Technology Conference: (VTC2022-Spring), Helsinki, Finland, 2022, pp. 1-5
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
非特許文献2に記載の方法、つまり干渉オフセット距離に基づいて複数の無線端末サブセットを複数のレイヤに分割し、空間多重送信のための周波数リソースを時分割でレイヤ毎に順番に割り当てる方法は、互いの距離が干渉オフセット距離より近い無線端末サブセットを別々のレイヤに入れることでサブセット間干渉を低減できる。しかしながら、非特許文献2に記載の方法は、サブセット内干渉を十分に低減できない可能性がある。サブセット内干渉は部分的ウェイト生成法による干渉除去後の残留干渉であることから、これはサブセット間干渉と比較すると相対的に悪影響は少ない傾向にある。しかし、部分的ウェイト生成法では全体ウェイト生成法と比較するとサブセット毎の干渉除去に用いるアンテナの数は少数であり、したがってサブセット内干渉が十分に除去されないことも考えられる。残存するサブセット内干渉はサブセット間干渉と同様に通信品質の低下を招く可能性がある。
【0014】
特許文献1に記載の方法は、非特許文献2に記載の方法においてサブセット内干渉を低減するために利用可能であるかもしれない。しなしながら、特許文献1は、非特許文献2に記載されているような部分的ウェイト生成法を想定していない。したがって、部分的ウェイト生成法を用いる非特許文献2の方法に特許文献1の手法をどのように組み合わせるかが十分に明確でない。
【0015】
本明細書に開示される実施形態が達成しようとする目的の1つは、部分的ウェイト生成法を利用する際にサブセット間干渉及びサブセット内干渉の両方の低減に寄与する装置、方法、及びプログラムを提供することである。なお、この目的は、本明細書に開示される複数の実施形態が達成しようとする複数の目的の1つに過ぎないことに留意されるべきである。その他の目的又は課題と新規な特徴は、本明細書の記述又は添付図面から明らかにされる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
第1の態様では、制御装置は、複数のアンテナを備える基地局装置と同一の時間及び周波数リソースにおいて空間多重送信を行う複数の無線端末サブセットを決定するよう構成される。各無線端末サブセットは、前記複数のアンテナから選択された対応する基地局アンテナサブセットとの間で前記時間及び周波数リソース上でサブセット単位のMIMO送信を行う1又はそれ以上の無線端末を含む。より具体的には、制御装置は、第2の無線端末と、前記空間多重送信のために前記時間及び周波数リソースを共用すると既に決定されている1又はそれ以上の第1の無線端末の各々との間の干渉レベルが第1の程度であると推定される場合、前記第2の無線端末に前記時間及び周波数リソースを割り当て可能であり且つ前記第2の無線端末が任意の無線端末サブセットに所属可能であると判断する。一方、制御装置は、前記第2の無線端末と前記1又はそれ以上の第1の無線端末のうち少なくとも1つとの間の干渉レベルが前記第1の程度より大きく第3の程度より小さい第2の程度であると推定される場合、前記空間多重送信のために前記時間及び周波数リソースを前記第2の無線端末に割り当てるために、前記第2の無線端末が前記少なくとも1つの第1の無線端末と同じ無線端末サブセットに所属する必要があると判断する。また、制御装置は、前記第2の無線端末と前記1又はそれ以上の第1の無線端末のうち少なくとも1つとの間の干渉レベルが前記第1の程度及び前記第2の程度より大きい前記第3の程度であると推定される場合、前記第2の無線端末はいずれの無線端末サブセットに属することも許可されず、前記時間及び周波数リソース上での前記空間多重送信から前記第2の無線端末が除外されると判断する。
【0017】
第2の態様では、制御装置により行なわれる方法は、複数のアンテナを備える基地局装置と同一の時間及び周波数リソースにおいて空間多重送信を行う複数の無線端末サブセットを決定することを含む。各無線端末サブセットは、前記複数のアンテナから選択された対応する基地局アンテナサブセットとの間で前記時間及び周波数リソース上でサブセット単位のMIMO送信を行う1又はそれ以上の無線端末を含む。前記決定することは、以下のステップを含む:
(a)第2の無線端末と、前記空間多重送信のために前記時間及び周波数リソースを共用すると既に決定されている1又はそれ以上の第1の無線端末の各々との間の干渉レベルが第1の程度であると推定される場合、前記第2の無線端末に前記時間及び周波数リソースを割り当て可能であり且つ前記第2の無線端末が任意の無線端末サブセットに所属可能であると判断すること、
(b)前記第2の無線端末と前記1又はそれ以上の第1の無線端末のうち少なくとも1つとの間の干渉レベルが前記第1の程度より大きく第3の程度より小さい第2の程度であると推定される場合、前記空間多重送信のために前記時間及び周波数リソースを前記第2の無線端末に割り当てるために、前記第2の無線端末が前記少なくとも1つの第1の無線端末と同じ無線端末サブセットに所属する必要があると判断すること、及び
(c)前記第2の無線端末と前記1又はそれ以上の第1の無線端末のうち少なくとも1つとの間の干渉レベルが前記第1の程度及び前記第2の程度より大きい前記第3の程度であると推定される場合、前記第2の無線端末はいずれの無線端末サブセットに属することも許可されず、前記時間及び周波数リソース上での前記空間多重送信から前記第2の無線端末が除外されると判断すること。
【0018】
第3の態様では、プログラムは、コンピュータに読み込まれた場合に、上述の第2の態様に係る方法をコンピュータに行わせるための命令群(ソフトウェアコード)を含む。
【発明の効果】
【0019】
上述の態様によれば、部分的ウェイト生成法を利用する際にサブセット間干渉及びサブセット内干渉の両方の低減に寄与する装置、方法、及びプログラムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】1又はそれ以上の実施形態に関係する無線通信システムの構成例を示す図である。
【
図2】1又はそれ以上の実施形態に関係する無線端末の構成の一例を示す図である。
【
図3】1又はそれ以上の実施形態に関係する制御装置の構成の一例を示す図である。
【
図4】1又はそれ以上の実施形態に関係する無線装置の構成の一例を示す図である。
【
図5】1又はそれ以上の実施形態に関係する無線信号処理部の構成の一例を示す図である。
【
図6】1又はそれ以上の実施形態に関係する制御装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図7】1又はそれ以上の実施形態に関係するスケジューリング部の構成の一例を示す図である。
【
図8】1又はそれ以上の実施形態に関係する、干渉レベルを表す指標の例を概念的に示す図である。
【
図9A】1又はそれ以上の実施形態に関係する、指標算出部の動作例を概念的に示す図である。
【
図9B】1又はそれ以上の実施形態に関係する、指標算出部の動作例を概念的に示す図である。
【
図10】1又はそれ以上の実施形態に関係する、条件設定部の動作例を概念的に示す図である。
【
図11A】1又はそれ以上の実施形態に関係する、割当判定部の処理の一例を示すフローチャートである。
【
図11B】1又はそれ以上の実施形態に関係する、割当判定部の処理の一例を示すフローチャートである。
【
図11C】1又はそれ以上の実施形態に関係する、割当判定部の処理の一例を示すフローチャートである。
【
図12】1又はそれ以上の実施形態に関係する、干渉レベルを表す指標の例を概念的に示す図である。
【
図13】1又はそれ以上の実施形態に関係する、干渉レベルを表す指標の例を概念的に示す図である。
【
図14】1又はそれ以上の実施形態に関係する、干渉レベルを表す指標の例を概念的に示す図である。
【
図15】1又はそれ以上の実施形態に関係する、条件設定部の処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下では、具体的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図面において、同一又は対応する要素には同一の符号が付されており、説明の明確化のため、必要に応じて重複説明は省略される。
【0022】
以下に説明される複数の実施形態はそれぞれ単独で用いられることもできるし、2つ以上の実施形態が適宜組み合わせてられてもよい。これら複数の実施形態は、互いに異なる新規な特徴を有し得る。したがって、これら複数の実施形態は、互いに異なる目的の達成又は課題を解決することに寄与し、互いに異なる効果を奏することに寄与し得る。
【0023】
各図面は、1又はそれ以上の実施形態を説明するための単なる例示である。各図面は、1つの特定の実施形態のみに関連付けられるのではなく、1又はそれ以上の他の実施形態に関連付けられてもよい。当業者であれば理解できるように、いずれか1つの図面を参照して説明される様々な特徴又はステップは、例えば明示的に図示または説明されていない実施形態を作り出すために、1又はそれ以上の他の図に示された特徴又はステップと組み合わせることができる。例示的な実施形態を説明するためにいずれか1つの図に示された特徴またはステップのすべてが必ずしも必須ではなく、一部の特徴またはステップが省略されてもよい。いずれかの図に記載されたステップの順序は、適宜変更されてもよい。
【0024】
本明細書で使用される場合、文脈に応じて、「(もし)~なら(if)」は、「場合(when)」、「間に(while)」、「その時またはその前後(at or around the time)」、「後に(after)」、「に応じて(upon)」、「判定(決定)に応答して(in response to determining)」、「判定(決定)に従って(in accordance with a determination)」、又は「検出することに応答して(in response to detecting)」を意味するものとして解釈されてもよい。これらの表現は、文脈に応じて、同じ意味を持つと解釈されてもよい。
【0025】
[無線通信システムの構成]
初めに、複数の実施形態に共通である複数の要素の構成及び動作が説明される。
図1は、複数の実施形態に関係する無線通信システム1の構成例を示している。無線通信システム1は、限定ではなく例として、3GPPの技術仕様に準拠したシステムであってもよく、5Gの技術仕様に準拠した装置であってもよい。
図1に示された各要素(ネットワーク機能)は、例えば、専用ハードウェア(dedicated hardware)上のネットワークエレメントとして、専用ハードウェア上で動作する(running)ソフトウェア・インスタンスとして、又はアプリケーション・プラットフォーム上にインスタンス化(instantiated)された仮想化機能として実装されることができる。
【0026】
図1の例では、無線通信システム1は、複数の無線端末10と、基地局装置20とを含む。無線通信システム1は、3つ以上の無線端末10を含んでもよい。複数の無線端末10に共通の事項について記載する場合には、特に断らない限り、1つの無線端末10を参照する。
【0027】
基地局装置20は、制御装置21、及び1又はそれ以上の無線装置22を含む。基地局装置20は、例えば、RANの基地局または基地局要素であってもよい。基地局装置20は、基地局、無線局、RANノード、又はアクセスポイント等の他の用語で呼ばれてもよい。Beyond 5G又は6Gシステムを想定するなら、基地局装置20は、機能拡張されたgNBであってもよいし、機能拡張されたgNB内のDU及び1又はそれ以上のradio units (RUs)であってもよい。
【0028】
無線端末10は、例えば、スマートフォン、携帯電話、若しくはタブレット等の携帯端末、又はセンシング機器であってもよい。無線端末10は、他の無線端末の信号を中継する機能を有する中継装置であってもよい。無線端末10は、移動端末、移動局、UE、又はwireless transmit receive unit (WTRU) 等の他の用語で呼ばれてもよい。複数の無線端末10の一部または全部は、基地局装置20への送信又は基地局装置20からの受信のために同一の時間及び周波数リソース上で空間多重される。各無線端末10の送信又は受信レイヤは、1つであっても複数であってもよい。
【0029】
[基地局装置の構成]
前述の通り、制御装置21、及び1又はそれ以上の無線装置22を含む。基地局装置20は、1つの無線装置22のみ、又は3つ以上の無線装置を含んでもよい。複数の無線装置22に共通の事項について記載する場合には、特に断らない限り、1つの無線装置22を参照する。
【0030】
制御装置21は、ディジタル・ベースバンド信号処理及びスケジューリング処理を担ってもよい。制御装置21は、例えば、ベースバンドユニット、ディジタルユニット、分散ユニット(DU)、CPU、又はエッジ・クラウド・プロセッサと呼ばれてもよい。Beyond 5G又は6Gシステムを想定するなら、制御装置21は、機能拡張されたgNBのRadio Link Control (RLC) レイヤ及びMedium Access Control (MAC) レイヤをホストし、機能拡張されたgNBの物理(Physical (PHY))レイヤの一部又は全部をホストしてもよい。制御装置21がPHYレイヤの一部、つまり上位(High)PHYレイヤをホストするなら、残りのPHYレイヤの信号処理、つまり下位(Low)PHYレイヤは、無線装置22に配置される。制御装置21は、機能拡張されたgNBのCentral Unit (CU) の機能を含んでもよいし、RAN Intelligent Controller (RIC) の機能を含んでもよい。RICは、Open RAN (O-RAN) 技術仕様に従うNear-Real-Time (Near-RT) RIC若しくはNon-RT RIC又は両方であってもよい。制御装置21が有する機能の一部又は全部は、仮想化、コンテナ化、又はクラウド化されたネットワーク機能として仮想化又はクラウド・プラットフォームに実装されてもよい。
【0031】
無線装置22は、制御装置21から離れた位置に配置されてもよい。複数の無線装置22は、地理的に分散して配置されてもよい。即ち、基地局装置20は分散MIMOをサポートしてもよい。分散MIMOは、既存の集中型MIMOと同様に、同一の時間及び周波数リソース上に空間多重された複数の無線端末10と通信するMU-MIMO伝送をサポートする。
【0032】
制御装置21は、伝送路23を介して無線装置22に接続され、無線装置22を介して1つ複数の無線端末10と通信する。伝送路23は、光ファイバ、メタルケーブル、又は、無線伝搬路であってもよい。伝送路23は、例えば、Radio over Fiber (RoF) 技術、Common Public Radio Interface (CPRI)技術、又はEnhanced CPRI (eCPRI) 技術を適用されてもよい。
【0033】
[無線端末の構成]
図2は、無線端末10の構成の一例を示している。無線端末10は、無線通信部101と、記憶部102と、処理部103とを含む。無線通信部101は、無線装置22と無線通信を行う要素である。例えば、無線通信部101は、アンテナ及びRadio Frequency (RF) 回路を含む。記憶部102は、揮発性メモリ及び不揮発性メモリを含む。揮発性メモリは、例えば、Random Access Memory (RAM)を含んでよい。不揮発性メモリは、例えば、Read Only Memory (ROM)、Hard Disk Drive (HDD)、及びSolid State Drive (SSD) のうちの1つ以上を含んでよい。不揮発性メモリは、無線端末10の各種機能を実現するためのプログラムコード(インストラクション)を記憶する。処理部103は、1つ以上のプロセッサを含む。当該1つ以上のプロセッサは、例えば、Central Processing Unit (CPU)、Micro Processing Unit (MPU)、Field Programmable Gate Array (FPGA)、及びApplication Specific Integrated Circuit (ASIC) のうちの1つ以上を含んでよい。処理部103は、記憶部102に記憶されたプログラムコードを実行することにより、無線端末10の各種機能を実現する。
【0034】
[制御装置の構成]
図3は、制御装置21の構成の一例を示している。制御装置21は、伝送路インターフェース(interface (IF))211と、記憶部212と、処理部213を備える。伝送路IF211は、伝送路23を介して無線装置22と通信を行うインターフェースを含む。記憶部212は、揮発性メモリ及び不揮発性メモリを含む。揮発性メモリは、例えば、RAMを含んでよい。不揮発性メモリは、例えば、ROM、HDD、及びSSDのうちの1つ以上を含んでよい。不揮発性メモリは、制御装置21の各種機能を実現するためのプログラムコード(インストラクション)を記憶する。処理部213は、1つ以上のプロセッサを含む。当該一つ以上のプロセッサは、例えば、CPU、MPU、FPGA、及びASICのうち1つ以上を含んでもよい。処理部213は、記憶部212に記憶されたプログラムコードを実行することにより、制御装置21の各種機能を実現する。
【0035】
処理部213は、無線信号処理部214を機能ブロックとして有する。無線信号処理部214は、無線信号の送信処理及び受信処理を行う。処理部213は、上記の機能ブロック以外の構成要素を更に含んでよい。即ち、処理部213は、以上の機能ブロックによる動作以外の動作を実行できる。なお、無線装置22が無線信号処理部214の機能の一部を備えてもよい。他の例において、制御装置21から物理的に離れた他の装置が無線信号処理部214の機能の一部を備えてもよい。無線信号処理部214の詳細な構成は後述される。
【0036】
[無線装置の構成]
図4は、無線装置22の構成の一例を示している。無線装置22は、伝送路IF221と、記憶部222と、処理部223と、無線通信部224とを備える。伝送路IF221は、伝送路23を介して制御装置21と通信を行うためのインターフェースである。記憶部222は、揮発性メモリ及び不揮発性メモリを含む。揮発性メモリは、例えば、RAMを含んでよい。不揮発性メモリは、例えば、ROM、HDD、及びSSDのうちの1つ以上を含んでよい。不揮発性メモリは、無線装置22の各種機能を実現するためのプログラムコード(インストラクション)を記憶する。処理部223は、1つ以上のプロセッサを含む。当該一つ以上のプロセッサは、例えば、CPU、MPU、FPGA、及びASICのうち1つ以上を含んでもよい。処理部223は、記憶部222に記憶されたプログラムコードを実行することにより、無線装置22の各種機能を実現する。処理部223は、ベースバンド信号又は中間周波数信号を無線周波数信号に変換する処理、及び無線周波数信号をベースバンド信号又は中間周波数信号に変換する処理を行う。他の例において、制御装置21がこれらの処理を行ってもよい。
【0037】
無線通信部224は、無線端末10と無線通信を行う要素である。例えば、無線通信部224は、アンテナ及びRF回路を含む。無線通信部224は、無線端末10に対して、下りリンク通信時には無線周波数信号を送信し、上りリンク通信時には無線端末10から無線周波数信号を受信する。無線通信部224は、1又はそれ以上のアンテナ素子を備える。無線通信部224が複数のアンテナ素子を備える場合、無線通信部224は、各アンテナ素子がそれぞれのRF回路に接続されるフルディジタル構成を有してもよいし、または複数のアンテナ素子で構成されるサブアレーが1つのRF回路を共有するサブアレー構成を有してもよい。無線通信部224がサブアレー構成を持つ場合、各サブアレーはアナログビームフォーミングを行ってもよい。RF回路のベースバンド側のポートは、ベースバンド領域における等価アンテナとみなされ、以降ではアンテナと呼ばれる。
【0038】
[無線信号処理部の構成]
図5は、制御装置21内の無線信号処理部214の構成の一例を示している。無線信号処理部214は、送信信号処理部310と、受信信号処理部320と、スケジューリング部330とを含む。送信信号処理部310は、無線端末10へ送信される信号を生成する。送信信号処理部310は、生成された信号を、伝送路IF211を介して無線装置22に送信する。送信信号処理部310は、無線端末10へ送信される信号を生成する際に、プリコーディングウェイトを用いて信号をディジタル合成してもよい。また、送信信号処理部310は、部分的ウェイト生成法をウェイト計算のために使用してもよい。
【0039】
受信信号処理部320は、伝送路IF221を介して、無線装置22によって受信された信号を受信する。受信信号処理部320は、無線装置22によって受信された信号を処理する際に、ポストコーディングウェイトを用いて信号をディジタル合成してもよい。また、受信信号処理部320は、部分的ウェイト生成法をウェイト計算のために使用してもよい。受信信号処理部320は、伝送路IF221を介して受信された参照信号を用いて、無線装置22と無線端末10との間のチャネル情報を測定し、スケジューリング部330へ送信する。参照信号は、例えば、Sounding Reference Signal (SRS)及びDemodulation Reference Signal (DMRS) の一方又は両方であってもよい。
【0040】
スケジューリング部330は、無線端末10との通信に使用される無線リソースの割り当てを行う。言い換えると、スケジューリング部330は、複数の無線端末10へ無線リソースを割り当てる。例えば、無線リソースは、アンテナ、ビーム、周波数及び時間等を含んでよい。また、部分的ウェイト生成法が適用される場合は、スケジューリング部330はサブシステムの決定を行ってもよい。
【0041】
具体的には、スケジューリング部330は、受信信号処理部320から受信したチャネル情報に基づいて、複数の無線端末10の間の干渉レベル又は度合いを推定する。スケジューリング部330は、受信信号処理部320から受信したチャネル情報に基づいて、複数の無線端末10の間の干渉レベルを表す指標を算出してもよい。以下では、これらの指標を干渉レベル指標と呼ぶ。干渉レベル指標の各々は、2つの無線端末10の間、つまり無線端末ペアの干渉のレベル又は度合いを表す指標であってもよい。あるいは、干渉レベル指標の各々は、1つの無線端末10と無線端末のグループとの間の干渉のレベル又は度合いを表す指標であってもよい。次に、スケジューリング部330は、推定された干渉レベルを用いて又は計算された干渉レベル指標を用いて、各無線端末10が所属可能な無線端末サブセットを決定し、各無線端末10への無線リソースの割当可否を判定する。そして、スケジューリング部330は、各無線端末10が所属可能な無線端末サブセットの情報と無線リソース割当の結果を、送信信号処理部310及び受信信号処理部320に送信する。
【0042】
<第1の実施形態>
本実施形態に係る無線通信システムの構成例は、
図1~
図5を参照して説明された例と同様である。本実施形態は、ダウンリンク又はアップリンクでの空間多重送信のために同一の時間及び周波数リソースが割り当てられる無線端末10の選択の詳細を提供する。空間多重送信は、ダウンリンク送信若しくはアップリンク送信又はこれら両方であってもよい。空間多重送信は、空間多重通信と呼ぶこともできる。本実施形態では、スケジューリング部330は、空間多重通信のために同一の時間及び周波数リソースを共用する又は割り当てられる複数の無線端末サブセットを選び、且つ当該時間及び周波数リソースにおける空間多重通信から除外される1又はそれ以上の無線端末10を決定する。
【0043】
図6は、スケジューリング部330により行なわれる処理の一例を示している。
図6の例では、「1又はそれ以上の第1の無線端末」は、空間多重送信のために同一の時間及び周波数リソースを共用するとスケジューリング部330により既に決定された1又はそれ以上の無線端末10である。1又はそれ以上の第1の無線端末は、1つの無線端末サブセットに所属できると決定されているか、又は2以上の無線端末サブセットに分割できると決定されている。各無線端末サブセットは、基地局装置20の対応するアンテナサブセットとの間で同一の時間及び周波数リソース上でサブセット単位の空間多重送信又はMIMO送信(若しくはMIMO通信)を、ダウンリンク又はアップリンクで行う1又はそれ以上の無線端末10を含む。各無線端末サブセットは、部分的ウェイト生成法を用いてサブシステム単位でのプリコーディング又はポストコーディングウェイトの計算が実行される単位である。各無線端末サブセットのプリコーディング又はポストコーディングウェイトは、共通の干渉除去行列を用いて計算されることができる。言い換えると、1つのサブシステム内の無線端末サブセットは、共通の干渉除去行列が適用される。干渉除去行列は、ZFウェイト又はMMSEウェイトの計算式内の逆行列部分を指す。
【0044】
一方、
図6の例では、「第2の無線端末」は、新たに「1又はそれ以上の第1の無線端末」に追加される候補の無線端末10である。すなわち、
図6の処理は、既に決定されている1又はそれ以上の第1の無線端末と空間多重通信のための同一の時間及び周波数リソースを共用することが新たな第2の無線端末に許可されるか否かを判定する。第2の無線端末が1又はそれ以上の第1の無線端末とリソースを共用できると判定したなら、さらに
図6の処理は、第2の無線端末が所属することができる無線端末サブセットを決定する。
【0045】
ステップ601では、スケジューリング部330は、空間多重送信のために同一の時間及び周波数リソースを共用すると既に決定されている1又はそれ以上の第1の無線端末の各々と第2の無線端末との間の干渉レベル又は度合いを推定する。既に説明したとおり、スケジューリング部330は、受信信号処理部320から受信したチャネル情報に基づいて、第2の無線端末と1又はそれ以上の第1の無線端末との間の干渉の度合いを表す1又はそれ以上の干渉レベル指標を取得又は計算してもよい。これらの干渉レベル指標の各々は、1又はそれ以上の第1の無線端末の各々と第2の無線端末との間、つまり無線端末ペアの干渉の度合いを表してもよい。これに代えて、これらの干渉レベル指標の各々は、1又はそれ以上の無線端末が属する複数の無線端末グループの各々と第2の無線端末との間の干渉の度合いを表す指標であってもよい。より具体的には、これらの干渉レベル指標の各々は、1又はそれ以上の第1の無線端末が所属する又は所属可能である1又はそれ以上の無線端末サブセットの各々と第2の無線端末との間の干渉の度合いを表してもよい。
【0046】
ステップ602では、第2の無線端末と1又はそれ以上の第1の無線端末の各々との間の干渉レベルが第1の程度であると推定される。この場合、スケジューリング部330は、第2の無線端末に当該時間及び周波数リソースを割り当て可能であり且つ第2の無線端末が任意の無線端末サブセットに所属可能であると判断する。第2の無線端末は、1又はそれ以上の第1の無線端末が所属する又は所属可能である1又はそれ以上の無線端末サブセットのいずれかにグループ化されてもよい。あるいは、第2の無線端末は、1又はそれ以上の第1の無線端末が所属する又は所属可能である無線端末サブセットとは別の新たな無線端末サブセットに割り当てられてもよい。これにより、第2の無線端末は、干渉が相対的に小さいと推定された1又はそれ以上の無線端末と同一の時間及び周波数リソースを共用できる。
【0047】
ステップ603では、第2の無線端末と1又はそれ以上の第1の無線端末のうち少なくとも1つとの間の干渉レベルが第1の程度より大きく第3の程度より小さい第2の程度であると推定される。この場合、スケジューリング部330は、空間多重送信通信のために当該時間及び周波数リソースを第2の無線端末に割り当てるために、第2の無線端末との間に第2の程度の干渉があると推定された当該少なくとも1つの第1の無線端末と同じ無線端末サブセットに第2の無線端末が所属する必要があると判断する。これにより、第2の無線端末は、ある程度の干渉が生じると推定された少なくとも1つの第1の無線端末と同じ無線端末サブセットにグループ化され、このサブセット内干渉は部分的ウェイト生成法を用いて低減され得る。
【0048】
ステップ604では、第2の無線端末と1又はそれ以上の第1の無線端末のうち少なくとも1つとの間の干渉レベルが第2の程度より大きい第3の程度であると推定される。この場合、スケジューリング部330は、第2の無線端末はいずれの無線端末サブセットに属することも許可されず、当該時間及び周波数リソース上での空間多重送信から第2の無線端末が除外されると判断する。これにより、干渉が相対的に強いと推定された1又はそれ以上の無線端末と同一の時間及び周波数リソースを第2の無線端末が共用しないことが保証される。より具体的には、ステップ604によれば、1又はそれ以上の第1の無線端末との干渉が大きいために部分的ウェイト生成法によるサブセット内干渉の除去が十分でないと推定される第2の無線端末を、1又はそれ以上の第1の無線端末と同じ時間及び周波数リソースを使用する空間多重送信から除外することができる。
【0049】
スケジューリング部330は、複数の第2の無線端末、つまり対象の時間及び周波数リソースを他の無線端末(つまり、1又はそれ以上の第1の無線端末)と共用できるかをまだ判定されていない無線端末について、
図6の処理を繰り返す。
【0050】
図6を参照して説明された動作又は処理によれば、基地局装置20、制御装置21、又はスケジューリング部330は、ステップ602及び603の判定結果に基づいて、部分的ウェイト生成法に用いる複数の無線端末サブセットを生成することができる。一方、基地局装置20、制御装置21、又はスケジューリング部330は、ステップ604の判定結果に基づいて、部分的ウェイト生成法によるサブセット内干渉の除去が十分でないと推定される無線端末を、対象の時間及び周波数リソースにおける空間多重送信から除外できる。これは、部分的ウェイト生成法を利用する際にサブセット間干渉及びサブセット内干渉の両方を低減することに寄与する。
【0051】
<第2の実施形態>
本実施形態に係る無線通信システムの構成例は、
図1~
図5を参照して説明された例と同様である。本実施形態は、第1の実施形態で説明された、空間多重送信のために同一の時間及び周波数リソースを共用する無線端末10の選択の詳細を提供する。
【0052】
[スケジューリング部の構成]
図7は、スケジューリング部330の構成の一例を示している。スケジューリング部330は、指標算出部331と、割当判定部332とを含む。指標算出部331は、無線装置22と無線端末10との間のチャネル情報を受信信号処理部320から受信し、受信したチャネル情報に基づき、複数の無線端末10の間の干渉レベル指標を算出する。指標算出部331は、算出した干渉レベル指標を割当判定部332又は記憶部212へ送信する。
【0053】
割当判定部332は、指標算出部331又は記憶部212から、1又はそれ以上の干渉レベル指標を受信する。割当判定部332は、条件設定部333を含む。条件設定部333は、干渉レベル指標に関する第1の条件、第2の条件、及び第3の条件を設定する。第1の条件は、干渉レベル指標より推定される2つの無線端末の間の干渉が相対的に小さい場合を表す、又はそれに対応する。第1の条件は、干渉レベル指標より推定される2つの無線端末の間の干渉が相対的に小さい(例えば、第1の程度である)場合を表す、又はそれに対応する。第2の条件は、干渉レベル指標より推定される2つの無線端末の間の干渉が中程度(例えば、第1の程度より大きい第2の程度)である場合を表す、又はそれに対応する。第3の条件は、干渉レベル指標より推定される2つの無線端末の間の干渉が相対的に大きい(例えば、第2の程度よい大きい第3の程度である)場合を表す、又はそれに対応する。
【0054】
割当判定部332は、受信した1又はそれ以上の干渉レベル指標と、設定された第1、第2、及び第3の条件とに基づいて、各無線端末10が同一の時間及び周波数リソースを空間多重送信のために他の無線端末10と共用できるかを判定する。さらに、割当判定部332は、無線リソースを共用することが許可された各無線端末10が所属する又は所属できる無線端末サブセットを決定する。
【0055】
具体的には、2つの無線端末の間の干渉レベル指標が第1の条件に該当するなら、割当判定部332は、これら2つの無線端末の間の干渉の除去のために部分的ウェイト生成法が不要であると判断する。言い換えると、割当判定部332は、これら2つの無線端末が互いに異なる無線端末サブセットに所属することを許可する。この動作は、
図6のステップ602に対応する。
【0056】
2つの無線端末の間の干渉レベル指標が第2の条件に該当するなら、割当判定部332は、これら2つの無線端末の間の干渉の除去のために部分的ウェイト生成法が必要であると判断する。言い換えると、割当判定部332は、これら2つの無線端末が同一の無線端末サブセットに所属する必要があると判断する。この動作は、
図6のステップ603に対応する。
【0057】
一方、2つの無線端末の間の干渉レベル指標が第3の条件に該当するなら、割当判定部332は、これら2つの無線端末の間の干渉は部分的ウェイト生成法では十分に除去されないと判断する。言い換えると、割当判定部332は、これら2つの無線端末が同じ時間及び周波数リソースを共用することが許可されないと判断する。この動作は、
図6のステップ604に対応する。
【0058】
[干渉レベル指標の例]
図8は、指標算出部331において計算される干渉レベル指標の例を概念的に示している。第1の例として、干渉レベル指標は、各無線端末10のチャネル空間相関であってもよく、これは各無線端末10と1又はそれ以上の無線装置22の複数のアンテナとの間のチャネル係数又はチャネル電力から計算されることができる。指標算出部331は、2つの無線端末#i及び#jの間の空間相関に基づく干渉レベル指標r
i,jを次式により算出してもよい、これは各無線端末10と1又はそれ以上の無線装置22の複数のアンテナとの間のチャネル係数を用いる場合に対応する:
【数1】
ここで、h
iは無線端末#iのチャネルベクトルであり、h
jは無線端末#jのチャネルベクトルである。分子は、チャネルベクトルh
iとチャネルベクトルh
jの内積である。チャネルベクトルh
iの各要素は、無線端末#iと、制御装置21に接続された1又はそれ以上の無線装置22の一部又は全部が持つ複数のアンテナの各々との間のチャネル係数である。同様に、チャネルベクトルh
jの各要素は、無線端末#jと、制御装置21に接続された1又はそれ以上の無線装置22の一部又は全部が持つ複数のアンテナの各々との間のチャネル係数である。
【0059】
干渉レベル指標を求めるためにチャネル係数に代えてチャネル電力が用いられる場合、上記の式のチャネルベクトルhiおよびhjの各要素をチャネル電力に置き換えればよい。チャネル電力は、SRS又はDMRS等から推定されたチャネル係数の二乗値であってもよい。これに代えて、チャネル電力は、無線端末から報告される、ダウンリンク参照信号の受信電力(e.g., Reference Signal Received Power (RSRP))を用いて計算されてもよい。
【0060】
無線端末10が複数のアンテナを備える場合、指標算出部331は以下の方法で干渉レベル指標を算出してもよい。一例では、指標算出部331は、無線端末10の複数のアンテナから任意に選択した1つのアンテナと、制御装置21に接続された1又はそれ以上の無線装置22の一部又は全部が持つ複数のアンテナの各々との間のチャネルベクトルまたはチャネル電力ベクトルを用いて干渉レベル指標を算出してもよい。
【0061】
他の例では、指標算出部331は、1又はそれ以上の無線装置22の一部又は全部が持つ複数のアンテナの各々と無線端末10の複数のアンテナの一部又は全部の各々との間のチャネルベクトルまたはチャネル電力ベクトルを連結した、チャネルベクトルまたはチャネル電力ベクトルを用いてもよい。
【0062】
他の例では、指標算出部331は、1又はそれ以上の無線装置22の一部又は全部が持つ複数のアンテナの各々と無線端末10の複数のアンテナの一部又は全部の各々との間のチャネル電力ベクトルを計算し、これらチャネル電力ベクトルの和又は平均を用いて干渉レベル指標を計算してもよい。
【0063】
他の例では、指標算出部331は、無線端末10の複数のアンテナの一部または全部が送信又は受信する信号を特定のウェイトで合成した際の、無線端末10と1又はそれ以上の無線装置22の一部又は全部が持つ複数のアンテナとの間の等価チャネルベクトル又は等価チャネル電力ベクトル用いてもよい。
【0064】
[指標算出部の動作例]
指標算出部331の動作例を、干渉レベル指標が上記の第1の例である場合に関して説明する。指標算出部331は、干渉レベル指標を、複数の無線端末10の一部又は全部からの可能な全てのペアについて計算する。複数の無線端末10の全部は、基地局装置20のサービスエリア内に位置するすべての無線端末10であってもよい。複数の無線端末10の一部は、基地局装置20のサービスエリア内に位置し、且つ無線リソースの割り当て待ち状態である1又はそれ以上の無線端末10であってもよい。
図9A及び9Bは、指標算出部331の動作例を表す概念図である。
図9Aは、4つの無線端末#1~#4について12通りの干渉レベル指標を計算する例を示している。
図9Bの例では、指標算出部331は、無線端末#1と無線端末#2~#4それぞれとの間の干渉レベル指標r
1,2、r
1,3、及びr
1,4を計算する。
【0065】
割当判定部332が各無線端末10に対する無線リソースの割り当て可否と各無線端末10が所属可能な無線端末サブセットとを決定するたびに、指標算出部331は干渉レベル指標を計算してもよい。これに代えて、指標算出部331により計算された干渉レベル指標は、割当判定部332における複数回の判定において再利用されてもよい。
【0066】
[条件設定部の動作例]
条件設定部333の動作例を、干渉レベル指標が上記の第1の例である場合に関して説明する。
図10は、条件設定部333の動作例を表す概念図である。条件設定部333は、上述の通り、第1、第2、及び第3の条件を定める。
図10の例では、第1の条件と第2の条件との境界を定めるために干渉レベル指標r
i,jに対する第1の閾値が使用される。同様に、第2の条件と第3の条件との境界を定めるために干渉レベル指標r
i,jに対する第2の閾値が使用される。干渉レベル指標r
i,jの性質又は定義に応じて、第1および第2の閾値の大小関係は反対であり得る。具体的には、干渉レベル指標r
i,jが干渉の増加に応じて増加する(e.g., 干渉レベルに比例する)指標として定義されるなら、第1および第2の閾値の大小関係は
図10の例の通りである。これに対して、干渉レベル指標r
i,jが干渉の増加に応じて減少する(e.g., 干渉レベルに反比例する)指標として定義されるなら、第1及び第2の閾値の大小関係は
図10のそれと反対になる。
【0067】
無線端末#iと無線端末#jとの間の干渉レベル指標ri,jの値が第1の閾値を下回る場合、条件設定部333(又は割当判定部332)は、無線端末#iと無線端末#jとの間の干渉レベルが第1の条件に該当すると判定する。言い換えると、条件設定部333(又は割当判定部332)は、無線端末#iと無線端末#jとの間の干渉レベルが第1の程度であると推定する。
【0068】
無線端末#iと無線端末#jとの間の干渉レベル指標ri,jの値が第1の閾値を上回り且つ第2の閾値を下回る場合、条件設定部333(又は割当判定部332)は、無線端末#iと無線端末#jとの間の干渉レベルが第2の条件に該当すると判定する。言い換えると、条件設定部333(又は割当判定部332)は、無線端末#iと無線端末#jとの間の干渉レベルが第2の程度であると推定する。
【0069】
無線端末#iと無線端末#jとの間の干渉レベル指標ri,jの値が第2の閾値を上回る場合、条件設定部333(又は割当判定部332)は、無線端末#iと無線端末#jとの間の干渉レベルが第3の条件に該当すると判定する。言い換えると、条件設定部333(又は割当判定部332)は、無線端末#iと無線端末#jとの間の干渉レベルが第3の程度であると推定する。
【0070】
図10参照して説明された第1、第2、及び第3の条件の定義は一例であり、これに限定されない。例えば、第1、第2、及び第3の条件は、1つの閾値(例えばゼロ)と、1つのスケーリング又はオフセットパラメータを用いて定義されることができる。この場合、条件設定部333(又は割当判定部332)は、干渉レベル指標r
i,jが閾値(例えばゼロ)を超えるかで第1の条件の成立を判断できる。また、条件設定部333(又は割当判定部332)は、干渉レベル指標r
i,jの値スケーリング又はオフセットパラメータで調整し、調整された値が同じ閾値(例えばゼロ)を超えるか否かで第2の条件又は第3の条件の成立を判断してもよい。
【0071】
[割当判定部の動作例]
図11A、11B、及び11Cは、空間多重送信のための同一の無線リソース、つまり時間及び周波数リソースを割り当てる複数の無線端末10を決定するために割当判定部332により行なわれる処理の一例を示している。ステップ1101では、無線端末間の干渉の度合いを表す1又はそれ以上の干渉レベル指標を取得する。ステップ1102では、割当判定部332は、条件設定部333において第1、第2、及び第3の条件を設定する。
【0072】
ステップ1103では、割当判定部332は、当該無線リソースの割当候補無線端末の中から1つの割当対象無線端末(つまり、第2の無線端末)を選択する。割当判定部332は、複数の割当候補無線端末の中からランダムに複数の1つを選択してもよい。これに代えて、割当判定部332は、各割当候補無線端末のチャネル情報やリソース割当状況から算出した特定のメトリックに基づいて、割当対象無線端末を選択してもよい。割当判定部332は、既知のスケジューリング・メトリックに基づいて割当対象無線端末を選択してもよい。
【0073】
ステップ1104では、割当判定部332は、以前の処理(
図11A~11C)において既に無線リソースを割当可能と判定された1又はそれ以上の無線端末(つまり、1又はそれ以上の第1の無線端末)の中から、任意に1つの無線端末を比較対象無線端末として選択する。
【0074】
ステップ1105では、割当判定部332は、割当対象無線端末と比較対象無線端末との間の干渉レベル指標が第1、第2,及び第3の条件のいずれに該当するかを確認する。干渉レベル指標が第1の条件に該当する場合(ステップ1105で左分岐)、割当判定部332は、割当対象無線端末が所属する又は所属できる無線端末サブセットに制限を設けない(ステップ1106)。干渉レベル指標が第2の条件に該当する場合(ステップ1105で中央分岐)、割当判定部332は、割当対象無線端末が比較対象無線端末と同じ無線端末サブセットにのみ所属可能であると判定する(ステップ1107)。干渉レベル指標が第3の条件に該当する場合(1105で右分岐)、割当判定部332は、割当対象無線端末がいずれの無線端末サブセットにも所属可能でないと判定し、割当対象無線端末に当該無線リソースを割り当てない。
【0075】
干渉レベル指標が第1又は第2の条件に該当した場合、割当判定部332は、ステップ1108に進む。ステップ1108では、割当判定部332は、選択中の比較対象無線端末が最後の比較対象端末であるかを確認する。これが最後の比較対象無線端末ではない場合(ステップ1108でNo)、割当判定部332は、次の比較対象端末を選択するためステップ1104に戻る。これに対して、これが最後の比較対象無線端末であった場合(ステップ1108でYes)、ステップ1109において、割当判定部332は、割当対象無線端末が属することができると判定された無線端末サブセットが存在するかどうかを確認する。割当判定部332は、ステップ1109における確認又は判定を以下のように行ってもよい。
【0076】
一例では、割当対象無線端末とすべての比較対象無線端末との間の干渉レベル指標が第1の条件を満たす。この場合、割当判定部332は、割当対象無線端末が任意の無線端末サブセットに所属することができ、したがって割当対象無線端末が所属可能な無線端末サブセットが存在すると判定する。
【0077】
別の例では、割当対象無線端末と少なくとも1つの比較対象無線端末との間の干渉レベル指標が第2の条件を満たし、割当対象無線端末と残りの比較対象無線端末との間の干渉レベル指標が第1の条件を満たす。この場合、割当判定部332は、第2の条件に該当した比較対象無線端末と同一の無線端末サブセットに割当対象無線端末が属することができ、したがって割当対象無線端末が所属可能な無線端末サブセットが存在すると判定する。
【0078】
さらに別の例では、割当対象無線端末と複数の比較対象無線端末のそれぞれとの間の複数の干渉レベル指標が第2の条件を満たし、残りの比較対象無線端末との干渉レベル指標が第1の条件を満たす。この場合、第2の条件に該当する複数の比較対象無線端末のすべてが同一の無線端末サブセットへ所属できるなら、割当判定部332は、割当対象無線端末が第2の条件に該当するすべての無線端末と同一の無線端末サブセットに所属でき、したがって割当対象無線端末が所属可能な無線端末サブセットが存在すると判定する。そうでなければ、つまり、割当対象無線端末並びに第2の条件に該当するすべての無線端末が同一の無線端末サブセットに所属できないなら、割当判定部332は、割当対象無線端末が所属できる無線端末は存在せず、当該無線リソースでの空間多重送信から割当対象無線端末を除外する。
【0079】
割当対象無線端末が所属可能な無線端末サブセットが存在した場合(ステップ1109でYes)、割当判定部332は、ステップ1110に進む。ステップ1110では、割当判定部332は、割当対象無線端末が所属可能な1又はそれ以上の無線端末サブセットを決定し、割当対象無線端末への当該無線リソースの割り当てを決定する。
【0080】
ステップ1111では、割当判定部332は、終了条件を満たすか否かを判定する。例えば、終了条件は、判定が終了した割当対象無線端末の数が所定数に到達したこと、又は全ての割当候補無線端末についての判定が終了したこと、であってもよい。終了を満たす場合(ステップ1111でYes)、割当判定部332は処理を終了する。終了条件を満たしていない場合(ステップ1111でNo)、割当判定部332は、次の割当対象無線端末について判定するためにステップ1103に戻る。
【0081】
図11A、11B、及び11Cを参照して説明された処理では、割当判定部332は、割当対象無線端末が所属できる無線端末サブセットを特定するものの、割当対象無線端末が実際に所属する無線端末サブセットを決定していない。
図11A、11B、及び11Cの処理の後に、割当判定部332又はスケジューリング部330は、割当対象無線端末の所属する無線端末サブセットを確定してもよい。
【0082】
別の例として、
図11A、11B、及び11Cの処理より前に、割当対象無線端末の所属サブセットが既に決定されており、これを変更できない実装が考えられる。この場合、ステップ1110において割当対象無線端末が属することができると判定された1又はそれ以上の無線端末サブセットが既に決定済みの無線端末サブセットを含むなら、割当判定部332又はスケジューリング部330は、割当対象無線端末への当該無線リソースの割り当てを決定してもよい。そうでなければ、割当判定部332又はスケジューリング部330は、当該無線リソースでの空間多重送信から割当対象無線端末を除外してもよい。
【0083】
本実施形態で説明された動作又は処理によれば、基地局装置20、制御装置21、又はスケジューリング部330は、第1又は第2の条件を満たす複数の無線端末から、部分的ウェイト生成法に用いる複数の無線端末サブセットを生成することができる。一方、基地局装置20、制御装置21、又はスケジューリング部330は、第3の条件を満たす無線端末、つまり部分的ウェイト生成法によるサブセット内干渉の除去が十分でないと推定される無線端末を、対象の時間及び周波数リソースにおける空間多重送信から除外できる。これは、部分的ウェイト生成法を利用する際にサブセット間干渉及びサブセット内干渉の両方を低減することに寄与する。
【0084】
また、条件設定部333において第1、第2、及び第3の条件(例えば第1及び第2の閾値)を適切に設定することで、基地局装置20、制御装置21、又はスケジューリング部330は、サブセット内干渉とサブセット間干渉をそれぞれ異なる度合いで抑圧することが可能である。これは、干渉抑圧と空間多重率の最適なトレードオフを達成することに寄与する。
【0085】
<第3の実施形態>
本実施形態に係る無線通信システムの構成例は、
図1~
図5及び
図7を参照して説明された例と同様である。本実施形態は、第1及び第2の実施形態で説明された、干渉レベル指標の具体例又は変形例を提供する。
【0086】
指標算出部331において計算される干渉レベル指標は、以下に示す第2の例であってもよい。指標算出部331は、干渉レベル指標を、無線端末の主接続リンクにおけるチャネル電力と当該無線端末へ干渉を与える他の無線端末の干渉リンクにおけるチャネル電力との比(デシベルスケールの場合は差)として計算してもよい。
【0087】
主接続リンクは、無線端末が通信する際に主に使用される基地局装置20のアンテナ又はビームと当該無線端末との間のリンクである。主に使用されるアンテナ又はビームは、当該無線端末と実際に通信する際に用いられるアンテナ又はビームの一部又は全部であってもよい。例えば、主接続リンクは、着目する無線端末に関して複数の無線装置22の中で最大チャネル電力を与える1つの無線装置22のアンテナ又はビームと当該無線端末との間のリンクであってもよい。別の例では、主接続リンクは、無線端末と任意の基準で選択された複数の無線装置22のアンテナ又はビームとの間のリンクであってもよい。
【0088】
干渉リンクは、着目している無線端末の通信に干渉を引き起こす他の無線端末のリンクである。例えばアップリンクの場合、干渉リンクのチャネル電力は、着目している無線端末の主接続リンクのアンテナ又はビームによって受信される他の無線端末のアップリンク信号のチャネル電力であってもよい。ダウンリンクの場合、干渉リンクのチャネル電力は、着目している無線端末によって受信される、他の無線端末の主接続アンテナ又はビームから送信される他の無線端末のダウンリンク信号のチャネル電力であってもよい。
【0089】
チャネル電力は、SRS又はDMRS等から推定されたチャネル係数の二乗値であってもよい。これに代えて、チャネル電力は、無線端末から報告される、ダウンリンク参照信号の受信電力(e.g., RSRP)を用いて計算されてもよい。
【0090】
指標算出部331は、無線端末#iと無線端末#jとの間の干渉レベル指標r
i,jを次式に従って算出する:
【数2】
ここで、p
i
mainは無線端末#iの主接続リンクのチャネル電力であり、p
j,i
intは無線端末#jの無線端末#iに対する干渉リンクのチャネル電力であり、いずれもデシベルスケールで表記されている。
図12は、アップリンクにおいて、チャネル電力を利用した本変形例の概念図である。
【0091】
本変形例は、無線端末と無線装置との間のチャネルベクトル又はチャネル電力ベクトルの内積に基づき干渉レベル指標を計算する場合と比較し、干渉レベル指標の計算に要する演算量を削減できる。加えて、本変形例は、無線端末の主接続リンクのチャネル電力と当該無線端末に対する他の無線端末からの干渉リンクのチャネル電力のみを干渉レベル指標を計算するために必要とする。したがって、これは、無線端末と無線装置との間のチャネルベクトル又はチャネル電力ベクトルの内積に基づき干渉レベル指標を算出する場合と比較し、チャネル情報の取得が容易である。
【0092】
<第4の実施形態>
本実施形態に係る無線通信システムの構成例は、
図1~
図5及び
図7を参照して説明された例と同様である。本実施形態は、第1及び第2の実施形態で説明された、干渉レベル指標の具体例又は変形例を提供する。
【0093】
指標算出部331において計算される干渉レベル指標は、以下に示す第3の例であってもよい。指標算出部331は、既に無線リソースが割り当てられると判定された1又はそれ以上の無線端末に対して割当対象無線端末が引き起こす最大の与干渉対雑音電力比(Interference to Noise power Ratio (INR))と、無線リソースが割り当てられると判定された1又はそれ以上の無線端末が割当対象無線端末に対して引き起こす最大の被干渉対雑音電力比との積(デシベルスケールの場合は和)を求める。そして、指標算出部331は、最大の与INRと最大の被INRとの積(デシベルスケールの場合は和)を、割当対象無線端末の主接続リンクにおけるチャネルの信号対雑音電力比(Signal to Noise power Ratio (SNR))から引くことで、干渉レベル指標を算出する。
【0094】
指標算出部331は、割当対象無線端末#iと比較対象無線端末#jとの間の干渉レベル指標r
i,jを次式に従って算出する:
【数3】
ここで、SNR
iは、割当対象無線端末#iの主接続リンクにおけるSNRであり、INR
i,jは、割当対象無線端末#iが比較対象無線端末#jの主接続リンクに対して引き起こす与干渉対雑音電力比であり、INR
j,iは、比較対象無線端末#jが割当対象無線端末#iの主接続リンクに対して引き起こす被干渉対雑音電力比である。これらは、いずれも真値で表記されている。
図13は、アップリンクにおいて、チャネル電力を利用した本変形例の概念図である。
【0095】
本変形例は、無線端末と無線装置との間のチャネルベクトル又はチャネル電力ベクトルの内積に基づき干渉レベル指標を計算する場合と比較し、干渉レベル指標の計算に要する演算量を削減できる。加えて、本変形例は、割当対象無線端末が比較対象無線端末へ与える与干渉対雑音電力比と、比較対象無線端末が割当対象無線端末に対して引き起こす被干渉対雑音電力比を同時に考慮できる。
【0096】
<第5の実施形態>
本実施形態に係る無線通信システムの構成例は、
図1~
図5及び
図7を参照して説明された例と同様である。本実施形態は、第1及び第2の実施形態で説明された、干渉レベル指標の具体例又は変形例を提供する。
【0097】
既に説明したとおり、指標算出部331は、無線端末と無線端末のグループとの間の干渉度合いを表す干渉レベル指標を計算してもよい。
図14は、本変形例での干渉レベル指標の計算の概念図である。
図14の例では、指標算出部331は、無線端末#6と無線端末サブセット#1、#2、及び#3のそれぞれとの干渉レベル指標r
6,1、r
6,2、及びr
6,3を計算する。例えば、指標算出部331は、無線端末#6と無線端末サブセット#1との間の干渉レベル指標r
6,1を次式に従って算出する:
【数4】
ここで、P
6は無線端末#6のチャネル電力ベクトルであり、P
subset1は、無線端末サブセット#1に属する2つの無線端末の平均チャネル電力ベクトルである。分子は、チャネル電力ベクトルP
6とチャネル電力ベクトルP
subset1の内積である。なお、P
subset1は、無線端末サブセット#1に属する2つの無線端末のうち無線端末#6との類似度rが最大(又は相違度が最小)の1つの無線端末のチャネル電力ベクトルであってもよい。
【0098】
指標算出部331は、無線端末と無線端末サブセットとの間の干渉レベル指標を、 Treating Interference as Noise (TIN) 条件に基づく干渉レベル指標として計算してもよい。指標算出部331は、無線端末#6と無線端末サブセット#1との間の干渉レベル指標r
6,1を次式に従って算出してもよい:
【数5】
ここで、C
1は無線端末サブセット#1に属する無線端末のインデックス集合である。
【0099】
<第6の実施形態>
本実施形態に係る無線通信システムの構成例は、
図1~
図5及び
図7を参照して説明された例と同様である。本実施形態は、第1の実施形態で説明された、干渉レベルの第1の程度と第2の程度の境界及び干渉レベルの第2の程度と第3の程度との境界を決定又は調整する方法の具体例を提供する。あるいは、本実施形態は、第2の実施形態で説明された、干渉レベル指標に関する第1、第2、及び第3の条件の設定又は調整する方法の具体例を提供する。
【0100】
スケジューリング部330は、干渉レベルの第1の程度と第2の程度との間の第1の境界、及び干渉レベルの第2の程度と第3の程度との間の第2の境界を、無線端末間の干渉の度合いを表す干渉レベル指標に基づいて設定してもよい。同様に、条件設定部333は、第1、第2、及び第3の条件を干渉レベル指標に基づいて動的に設定してもよい。例えば、
図10に示されたように第1、第2、第3の条件が干渉レベル指標に対する第1及び第2の閾値により決定又は定義される場合を考える。この場合、条件設定部333は、第1および第2の閾値を、複数の無線端末間の干渉レベル指標の平均値と第1及び第2のスケーリングパラメータを用いて決定してもよい。本変形例において、条件設定部333は、第1の閾値Th
1及び第2の閾値Th
2を以下の式で計算してもよい:
【数6】
【数7】
ここで、a
1及びa
2はそれぞれ第1及び第2のスケーリングパラメータを示し、r
avgは、複数の無線端末間の干渉レベル指標の平均値を示す。
【0101】
複数の無線端末間の干渉レベル指標の平均値は、例えば、基地局装置20のサービスエリア内に位置するすべての無線端末の可能性のある無線端末ペアの干渉レベル指標の平均であってもよい。別の例として、複数の無線端末間の干渉レベル指標の平均値は、基地局装置20のサービスエリア内に位置し、且つ無線リソースの割り当て待ち状態である1又はそれ以上の無線端末と他の無線端末の各々との間の干渉レベル指標の平均であってもよい。
【0102】
本変形例は、干渉レベルの第1、第2、及び第3の程度、又は干渉レベル指標に関する第1、第2、及び第3の条件を、無線装置22と無線端末10との間の通信路状態に合わせて決定又は調整することができる。これは、基地局装置20と通信する無線端末の位置や数の変動による通信路の変動に追随して、同一の時間及び周波数リソースを割り当てる複数の無線端末10の決定及び無線端末サブセットの決定のための条件を適切に設定することを可能にする。
【0103】
<第7の実施形態>
本実施形態に係る無線通信システムの構成例は、
図1~
図5及び
図7を参照して説明された例と同様である。本実施形態は、第1の実施形態で説明された、干渉レベルの第1の程度と第2の程度の境界及び干渉レベルの第2の程度と第3の程度との境界を決定又は調整する方法の具体例を提供する。あるいは、本実施形態は、第2の実施形態で説明された、干渉レベル指標に関する第1、第2、及び第3の条件の設定又は調整する方法の具体例を提供する。
【0104】
スケジューリング部330は、干渉レベルの第1の程度と第2の程度との間の第1の境界及び干渉レベルの第2の程度と第3の程度との間の第2の境界の一方又は両方を、空間多重送信のためにいずれかの無線端末サブセットに所属可能と判定された無線端末の総数に応じて変更又は調整してもよい。例えば、空間多重送信のためにいずれかの無線端末サブセットに所属可能と判定された無線端末の総数が基準値を下回るなら、スケジューリング部330は、第1の境界の値及び第2の境界の値の一方又は両方を現在の値と比べて大きくするよう更新してもよい。言い換えると、スケジューリング部330は、より多くの無線端末が同一の時間及び周波数リソースを共用できるように、第1の境界の値及び第2の境界の値の一方又は両方を調整してもよい。
【0105】
この更新の後に、スケジューリング部330は、各無線端末10に対する無線リソースの割り当て可否と各無線端末10が所属可能な無線端末サブセットの決定処理(例えば、
図6の処理)をやり直してもよい。空間多重送信のためにいずれかの無線端末サブセットに所属可能と判定された無線端末の総数が基準値を超えるまで、スケジューリング部330は、第1及び第2の境界の一方又は両方を段階的に変更又は調整してもよい。
【0106】
同様に、条件設定部333は、第1、第2、第3の条件うち少なくとも1つを、空間多重送信のために複数の無線端末サブセットに所属可能と判定された無線端末の数に応じて変更又は調整してもよい。例えば、
図10に示されたように第1、第2、第3の条件が干渉レベル指標に対する第1及び第2の閾値により決定又は定義される場合を考える。この場合、空間多重送信のためにいずれかの無線端末サブセットに所属可能と判定された無線端末の総数が基準値を下回るなら、条件設定部333は、第1の閾値及び第2の閾値の一方又は両方を現在の値と比べて大きくするように更新してもよい。なお、干渉レベル指標が干渉の増加に応じて減少する(e.g., 干渉レベルに反比例する)指標として定義されるなら、条件設定部333は、第1の閾値及び第2の閾値の一方又は両方を現在の値と比べて小さくするように更新してもよい。空間多重送信のためにいずれかの無線端末サブセットに所属可能と判定された無線端末の総数が基準値を超えるまで、条件設定部333は、第1及び第2の閾値の一方又は両方を段階的に変更又は調整してもよい。
【0107】
図15は、スケジューリング部330における処理の一例を示している。ステップ1501では、条件設定部333は、第1、第2、及び第3の条件の少なくとも1つを設定又は再設定する。ステップ1502では、割当判定部332は、各無線端末10に対する無線リソースの割り当て可否と各無線端末10が所属可能な無線端末サブセットの決定処理を行う。この処理は、例えば、
図6を参照して説明された例又は
図11A~11Cを参照して説明された例と同様であってもよい。
【0108】
ステップ1503では、割当判定部332は、無線リソース効率が基準値を超えるかを判定する。言い換えると、割当判定部332は、空間多重送信のためにいずれかの無線端末サブセットに所属可能と判定された無線端末の総数が基準値を上回るかどうかを判定する。無線リソース効率が基準値を超えるなら(ステップ1503でYes)、割当判定部332は処理を終了する。無線リソース効率が基準値を下回るなら(ステップ1503でNo)、割当判定部332はステップ1401に戻る。より多くの無線端末が同一の時間及び周波数リソースを共用して空間多重送信を行えるように、条件設定部333は、第1、第2、及び第3の条件の少なくとも1つを緩和するように再設定する。
【0109】
本実施形態で説明された具体例では、スケジューリング部330は、無線リソース効率が基準値を超えるように、干渉レベルの第1、第2、及び第3の程度、又は干渉レベル指標に関する第1、第2、及び第3の条件を調整できる。これは、無線リソース効率が過度に低下することを防ぐことに寄与する。言い換えると、これは、サブセット内およびサブセット間干渉を低減しつつ、目標の無線リソース効率を上回る無線リソース割り当てを達成することに寄与できる。
【0110】
<第8の実施形態>
本実施形態に係る無線通信システムの構成例は、
図1~
図5及び
図7を参照して説明された例と同様である。
【0111】
上述の実施形態におけるスケジューリング部330又は割当判定部332により行なわれる処理、具体的には各無線端末10に対する無線リソースの割り当て可否と各無線端末10が所属可能な無線端末サブセットを決定する処理の一部又は全部は、訓練済み(trained)機械学習(Machine Learning (ML))モデルでの推論により行われてもよい。MLモデルの訓練は、制御装置21により行われてもよいし、他のネットワーク要素、例えばNear-RT RIC又はNon-RT RICにより行われてもよい。制御装置21、スケジューリング部330、又は割当判定部332はMLモデル推論ホストとして動作し、Near-RT RIC又はNon-RT RIC等の他のネットワーク要素がMLモデル訓練ホストとして動作してもよい。
【0112】
ある実装では、制御装置21、スケジューリング部330、又は割当判定部332は、複数の無線端末10の識別子と、複数の無線端末10の間の干渉レベル指標とを、訓練済みMLモデルへの入力データとして使用してもよい。訓練済みMLモデルは、推論結果として、同一の時間及び周波数リソースに割り当てられる無線端末10の識別子と、これら識別子の1又はそれ以上の無線端末サブセットへのグループ化を出力してもよい。訓練済みMLモデルによる推論結果は、
図6のステップ602、603、及び604の結果と同様であってもよい。言い換えると、MLモデルは、
図6のステップ602、603、及び604の結果と同様の推論結果を出力できるように訓練されてもよい。
【0113】
<第9の実施形態>
本実施形態に係る無線通信システムの構成例は、
図1~
図5及び
図7を参照して説明された例と同様である。上述の実施形態で説明されたスケジューリング部330の処理は、制御装置21の処理部213が1又はそれ以上のプログラムを実行することで実現されてもよい。プログラムは、コンピュータに読み込まれた場合に、無線端末10の1又はそれ以上の機能をコンピュータに行わせるための命令群(又はソフトウェアコード)を含む。プログラムは、非一時的なコンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体に格納されてもよい。限定ではなく例として、コンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体は、random-access memory(RAM)、read-only memory(ROM)、フラッシュメモリ、solid-state drive(SSD)又はその他のメモリ技術、CD-ROM、digital versatile disk(DVD)、Blu-ray(登録商標)ディスク又はその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又はその他の磁気ストレージデバイスを含む。プログラムは、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体上で送信されてもよい。限定ではなく例として、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体は、電気的、光学的、音響的、またはその他の形式の伝搬信号を含む。
【0114】
上述した実施形態は本件発明者により得られた技術思想の適用に関する例に過ぎない。すなわち、当該技術思想は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、種々の変更が可能であることは勿論である。
【0115】
例えば、上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載され得るが、以下には限られない。装置(e.g., 制御装置)に向けられた付記に記載された要素(例えば構成及び機能)の一部または全ては、方法及びプログラムに向けられた付記としても当然に記載され得る。一例をあげると、付記1に従属する付記2-13に記載した要素の一部または全ては、付記2-13と同様の従属関係により、付記14及び付記15に従属する付記としても記載し得る。任意の付記に記載された要素の一部または全ては、様々なハードウェア、ソフトウェエア、ソフトウェアを記録するための記録手段、システム、及び方法に適用され得る。
【0116】
(付記1)
複数のアンテナを備える基地局装置と同一の時間及び周波数リソースにおいて空間多重送信を行う複数の無線端末サブセットを決定する手段を備え、
各無線端末サブセットは、前記複数のアンテナから選択された対応する基地局アンテナサブセットとの間で前記時間及び周波数リソース上でサブセット単位のmultiple-input multiple-output (MIMO) 送信を行う1又はそれ以上の無線端末を含み、
前記決定する手段は、
第2の無線端末と、前記空間多重送信のために前記時間及び周波数リソースを共用すると既に決定されている1又はそれ以上の第1の無線端末の各々との間の干渉レベルが第1の程度であると推定される場合、前記第2の無線端末に前記時間及び周波数リソースを割り当て可能であり且つ前記第2の無線端末が任意の無線端末サブセットに所属可能であると判断し、
前記第2の無線端末と前記1又はそれ以上の第1の無線端末のうち少なくとも1つとの間の干渉レベルが前記第1の程度より大きく第3の程度より小さい第2の程度であると推定される場合、前記空間多重送信のために前記時間及び周波数リソースを前記第2の無線端末に割り当てるために、前記第2の無線端末が前記少なくとも1つの第1の無線端末と同じ無線端末サブセットに所属する必要があると判断し、
前記第2の無線端末と前記1又はそれ以上の第1の無線端末のうち少なくとも1つとの間の干渉レベルが前記第1の程度及び前記第2の程度より大きい前記第3の程度であると推定される場合、前記第2の無線端末はいずれの無線端末サブセットに属することも許可されず、前記時間及び周波数リソース上での前記空間多重送信から前記第2の無線端末が除外されると判断する、
よう適合される、
制御装置。
(付記2)
前記空間多重送信のために前記複数の無線端末サブセットに所属可能と判定された無線端末の数に応じて、前記第1の程度と前記第2の程度との間の第1の境界及び前記第2の程度と前記第3の程度との間の第2の境界のうち一方又は両方を調整する手段をさらに備える、
付記1に記載の制御装置。
(付記3)
前記調整する手段は、前記無線端末の数が基準値を下回るなら、前記第1の境界の値、若しくは前記第2の境界の値、又はこれら両方を現在の値と比べて大きくするよう適合される、
付記2に記載の制御装置。
(付記4)
前記決定する手段は、前記1又はそれ以上の第1の無線端末の各々と前記第2の無線端末との間の干渉の度合いを表す指標に基づいて、前記干渉レベルが前記第1、第2、及び第3の程度のいずれであると推定されるかを判定するよう適合される、
付記1~3のいずれか1項に記載の制御装置。
(付記5)
前記第1の程度と前記第2の程度との間の第1の境界、及び前記第2の程度と前記第3の程度との間の第2の境界を前記指標に基づいて設定する手段をさらに備える、
付記4に記載の制御装置。
(付記6)
前記決定する手段は、前記1又はそれ以上の第1の無線端末が所属する又は所属可能である1又はそれ以上の無線端末サブセットの各々と前記第2の無線端末との間の干渉の度合いを表す指標を計算し、前記干渉レベルが前記第1、第2、及び第3の程度のいずれであると推定されるかを前記指標に基づいて判定するよう適合される、
付記1~3のいずれか1項に記載の制御装置。
(付記7)
前記第1の程度と前記第2の程度との間の第1の境界、及び前記第2の程度と前記第3の程度との間の第2の境界を前記指標に基づいて、設定する手段をさらに備える、
付記6に記載の制御装置。
(付記8)
各第1の無線端末と前記複数のアンテナの一部又は全部との間のチャネル情報、及び前記第2の無線端末と前記複数のアンテナの一部又は全部との間のチャネル情報に基づいて、前記指標を算出する手段をさらに備える、
付記4又は5に記載の制御装置。
(付記9)
各第1の無線端末と前記複数のアンテナの一部又は全部との間のチャネルベクトル又はチャネル電力ベクトルと、前記第2の無線端末と前記複数のアンテナの一部又は全部との間のチャネルベクトル又はチャネル電力ベクトルとの内積に基づいて、前記指標を算出する手段をさらに備える、
付記4又は5に記載の制御装置。
(付記10)
前記第2の無線端末の受信電力と各第1の無線端末の受信電力との差又は比に基づいて、前記指標を算出する手段をさらに備える、
付記4又は5に記載の制御装置。
(付記11)
前記第2の無線端末が各第1の無線端末に対して引き起こす最大の与干渉対雑音電力比と各第1の無線端末が前記第2の無線端末に対して引き起こす被干渉対雑音電力比との積を前記第2の無線端末の信号対雑音電力比から引いた値に基づいて、前記指標を算出する手段をさらに備える、
付記4又は5に記載の制御装置。
(付記12)
前記複数の無線端末サブセットの各々のためのプリコーディング又はポストコーディングウェイトを、部分的ウェイト生成法を用いて計算する手段をさらに備える、
付記1~11のいずれか1項に記載の制御装置。
(付記13)
前記複数の無線端末サブセットの各々のためのプリコーディング又はポストコーディングウェイトを、無線端末サブセット毎の干渉除去行列を用いて計算する手段をさらに備える、
付記1~11のいずれか1項に記載の制御装置。
(付記14)
前記調整する手段は、前記1又はそれ以上の第1の無線端末の各々と前記第2の無線端末との間の干渉の増加に応じて増加するよう定義された指標に対する閾値を大きくすることで、前記第1の境界の値を大きくするよう適合される、
付記3に記載の制御装置。
(付記15)
前記調整する手段は、前記1又はそれ以上の第1の無線端末の各々と前記第2の無線端末との間の干渉の増加に応じて減少するよう定義された指標に対する閾値を小さくすることで、前記第1の境界の値を大きくするよう適合される、
付記3に記載の制御装置。
(付記16)
複数のアンテナを備える基地局装置と同一の時間及び周波数リソースにおいて空間多重送信を行う複数の無線端末サブセットを決定することを備え、
各無線端末サブセットは、前記複数のアンテナから選択された対応する基地局アンテナサブセットとの間で前記時間及び周波数リソース上でサブセット単位のmultiple-input multiple-output (MIMO) 送信を行う1又はそれ以上の無線端末を含み、
前記決定することは、
第2の無線端末と、前記空間多重送信のために前記時間及び周波数リソースを共用すると既に決定されている1又はそれ以上の第1の無線端末の各々との間の干渉レベルが第1の程度であると推定される場合、前記第2の無線端末に前記時間及び周波数リソースを割り当て可能であり且つ前記第2の無線端末が任意の無線端末サブセットに所属可能であると判断し、
前記第2の無線端末と前記1又はそれ以上の第1の無線端末のうち少なくとも1つとの間の干渉レベルが前記第1の程度より大きく第3の程度より小さい第2の程度であると推定される場合、前記空間多重送信のために前記時間及び周波数リソースを前記第2の無線端末に割り当てるために、前記第2の無線端末が前記少なくとも1つの第1の無線端末と同じ無線端末サブセットに所属する必要があると判断し、
前記第2の無線端末と前記1又はそれ以上の第1の無線端末のうち少なくとも1つとの間の干渉レベルが前記第1の程度及び前記第2の程度より大きい前記第3の程度であると推定される場合、前記第2の無線端末はいずれの無線端末サブセットに属することも許可されず、前記時間及び周波数リソース上での前記空間多重送信から前記第2の無線端末が除外されると判断する、
ことを備える、
制御装置により行なわれる方法。
(付記17)
方法をコンピュータに行わせるプログラムであって、
前記方法は、複数のアンテナを備える基地局装置と同一の時間及び周波数リソースにおいて空間多重送信を行う複数の無線端末サブセットを決定することを備え、
各無線端末サブセットは、前記複数のアンテナから選択された対応する基地局アンテナサブセットとの間で前記時間及び周波数リソース上でサブセット単位のmultiple-input multiple-output (MIMO) 送信を行う1又はそれ以上の無線端末を含み、
前記決定することは、
第2の無線端末と、前記空間多重送信のために前記時間及び周波数リソースを共用すると既に決定されている1又はそれ以上の第1の無線端末の各々との間の干渉レベルが第1の程度であると推定される場合、前記第2の無線端末に前記時間及び周波数リソースを割り当て可能であり且つ前記第2の無線端末が任意の無線端末サブセットに所属可能であると判断し、
前記第2の無線端末と前記1又はそれ以上の第1の無線端末のうち少なくとも1つとの間の干渉レベルが前記第1の程度より大きく第3の程度より小さい第2の程度であると推定される場合、前記空間多重送信のために前記時間及び周波数リソースを前記第2の無線端末に割り当てるために、前記第2の無線端末が前記少なくとも1つの第1の無線端末と同じ無線端末サブセットに所属する必要があると判断し、
前記第2の無線端末と前記1又はそれ以上の第1の無線端末のうち少なくとも1つとの間の干渉レベルが前記第1の程度及び前記第2の程度より大きい前記第3の程度であると推定される場合、前記第2の無線端末はいずれの無線端末サブセットに属することも許可されず、前記時間及び周波数リソース上での前記空間多重送信から前記第2の無線端末が除外されると判断する、
ことを備える、
プログラム。
【符号の説明】
【0117】
10 無線端末
20 基地局装置
21 制御装置
22 無線装置
23 伝送路
101 無線通信部
102 記憶部
103 処理部
211 伝送路IF
212 記憶部
213 処理部
214 無線信号処理部
221 伝送路IF
222 記憶部
223 処理部
224 無線通信部
310 送信信号処理部
320 受信信号処理部
330 スケジューリング部
331 指標算出部
332 割当判定部
333 条件設定部