(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025041095
(43)【公開日】2025-03-26
(54)【発明の名称】治具、劣化判定方法
(51)【国際特許分類】
B25B 33/00 20060101AFI20250318BHJP
B25B 27/20 20060101ALI20250318BHJP
【FI】
B25B33/00
B25B27/20 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023148189
(22)【出願日】2023-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古川 朋紀
【テーマコード(参考)】
3C031
【Fターム(参考)】
3C031AA00
3C031EE07
3C031EE08
(57)【要約】
【課題】工具の劣化を判定するための治具、及び工具の劣化を判定する劣化判定方法を提供することである。
【解決手段】治具は、工具の先端部で一部の周面が挟持されると共に一部の一方の面が先端部で支持された止め輪の他部が、一部の他方の面を上にして挿入される凹部が形成され、他部が該凹部に挿入された状態で、劣化していない工具を上昇させると止め輪と共に上昇する錘と、錘を位置決めする位置決め部、及び先端部が摺動されることで他部を凹部に案内する案内面部が形成された形成部とを有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具の先端部で一部の周面が挟持されると共に該一部の一方の面が該先端部で支持された止め輪の他部が、該一部の他方の面を上にして挿入される凹部が形成され、該他部が該凹部に挿入された状態で、劣化していない該工具を上昇させると該止め輪と共に上昇する錘と、
該錘を位置決めする位置決め部、及び該先端部が摺動されることで該他部を該凹部に案内する案内面部が形成された形成部と、
を有する治具。
【請求項2】
前記他部を前記凹部に挿入して前記他部を前記凹部の底に突き当てた状態で前記先端部と前記錘とが離隔している、
請求項1に記載の治具。
【請求項3】
前記錘は、前記凹部が形成されると共に上方へ突出した断面円状の突出部が形成された本体部と、前記突出部が挿入される貫通孔が形成された挿入部と、を備える、
請求項1に記載の治具。
【請求項4】
前記突出部の外周面には、雄ねじが形成されており、
前記挿入部の前記貫通孔の内周面には、前記突出部に形成された雄ねじと噛み合う雌ねじが形成されている、
請求項3に記載の治具。
【請求項5】
前記錘は、前記凹部が形成されると共に上方へ開口した断面円状の穴部が形成された本体部と、前記穴部に挿入される円柱部が形成された挿入部と、を備える、
請求項1に記載の治具。
【請求項6】
前記穴部の内周面には、雌ねじが形成されており、
前記挿入部の前記円柱部の外周面には、前記穴部に形成された雌ねじと噛み合う雄ねじが形成されている、
請求項5に記載の治具
【請求項7】
工具の先端部で止め輪の一部の周面を挟持すると共に、該一部の一方の面を該先端部で支持する第1工程と、
該一部の他方の面を上にして、該先端部から突出した該止め輪の他部を錘に形成された凹部に挿入する第2工程と、
該工具を上昇させ、該止め輪が該先端部から離脱した場合に該止め輪が劣化していると判定する第3工程と、
を有する劣化判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具の劣化を判定するために用いる治具、及び工具の劣化を判定する劣化判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、止め輪圧入装置の基板に摺動自在に設けられた圧入刃であって、基部から摺動方向に延びる一対のアームを備え、両アームはその先端にそれぞれ支持部及び係合部を有すると共に、両アーム間に跨がって基板側に固定されたパイロツトピンの径より巾小の係合溝を摺動方向に有し、圧入刃の後退位置では、パイロツトピンが係合溝に係合して両アームが拡開することにより、止め輪が圧入刃の支持部に載置可能とされる一方、圧入刃の前進位置では、パイロツトピンが係合溝から離脱することにより、止め輪が圧入刃の係合部によって挟持され被圧入部に圧入可能とされるようにしたことを特徴とする止め輪圧入装置の圧入刃が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
Eリング等の止め輪を挟持して挟持した止め輪を対象物に装着するために用いる工具がある。この工具は、止め輪の一部の一方の面を支持し、支持された止め輪の一部の周面を挟持する。このような工具では、止め輪を挟持する部分が止め輪と擦れることで劣化する。
【0005】
本開示の課題は、工具の劣化を判定するための治具、及び工具の劣化を判定する劣化判定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1態様に係る治具は、工具の先端部で一部の周面が挟持されると共に該一部の一方の面が該先端部で支持された止め輪の他部が、該一部の他方の面を上にして挿入される凹部が形成され、該他部が該凹部に挿入された状態で、劣化していない該工具を上昇させると該止め輪と共に上昇する錘と、該錘を位置決めする位置決め部、及び該先端部が摺動されることで該他部を該凹部に案内する案内面部が形成された形成部と、を有することを特徴とする。
【0007】
本開示の第2態様に係る治具は、第1態様に記載の治具において、前記他部を前記凹部に挿入して前記他部を前記凹部の底に突き当てた状態で前記先端部と前記錘とが離隔していることを特徴とする。
【0008】
本開示の第3態様に係る治具は、第1態様に記載の治具において、前記錘は、前記凹部が形成されると共に上方へ突出した断面円状の突出部が形成された本体部と、前記突出部が挿入される貫通孔が形成された挿入部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本開示の第4態様に係る治具は、第3態様に記載の治具において、前記突出部の外周面には、雄ねじが形成されており、前記挿入部の前記貫通孔の内周面には、前記突出部に形成された雄ねじと噛み合う雌ねじが形成されていることを特徴とする。
【0010】
本開示の第5態様に係る治具は、第1態様に記載の治具において、前記錘は、前記凹部が形成されると共に上方へ開口した断面円状の穴部が形成された本体部と、前記穴部に挿入される円柱部が形成された挿入部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
本開示の第6態様に係る治具は、第5態様に記載の治具において、前記穴部の内周面には、雌ねじが形成されており、前記挿入部の前記円柱部の外周面には、前記穴部に形成された雌ねじと噛み合う雄ねじが形成されていることを特徴とする。
【0012】
本開示の第7態様に係る劣化判定方法は、工具の先端部で止め輪の一部の周面を挟持すると共に、該一部の一方の面を該先端部で支持する第1工程と、該一部の他方の面を上にして、該先端部から突出した該止め輪の他部を錘に形成された凹部に挿入する第2工程と、該工具を上昇させ、該止め輪が該先端部から離脱した場合に該止め輪が劣化していると判定する第3工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本開示の第1態様に係る治具によれば、工具の劣化を判定することができる。
【0014】
本開示の第2態様に係る治具によれば、止め輪の他部を凹部の底に突き当てた状態で工具の先端部と錘とが接触している場合と比して、工具の劣化を効果的に判定することができる。
【0015】
本開示の第3態様に係る治具によれば、挿入部を交換することで錘の重さを調整することができる。
【0016】
本開示の第4態様に係る治具によれば、突出部の外周面と挿入部の貫通孔の内周面との間に隙が設けられている場合と比して、挿入部の本体部に対する姿勢を安定させることができる。
【0017】
本開示の第5態様に係る治具によれば、挿入部を交換することで錘の重さを調整することができる。
【0018】
本開示の第6態様に係る治具によれば、穴部の内周面と円柱部の外周面との間に隙が設けられている場合と比して、挿入部の本体部に対する姿勢を安定させることができる。
【0019】
本開示の第7態様に係る劣化判定方法によれば、工具の劣化を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本開示の第1実施形態に係る治具によって劣化が判定される止め輪装着工具を示した斜視図である。
【
図2】(A)(B)本開示の第1実施形態に係る治具によって劣化が判定される止め輪装着工具の先端部を示した拡大斜視図である。
【
図3】本開示の第1実施形態に係る治具を示した斜視図である。
【
図4】本開示の第1実施形態に係る治具に備えられた錘を示した拡大斜視図である。
【
図5】本開示の第1実施形態に係る治具に備えられた形成部を示した拡大斜視図である。
【
図6】本開示の第1実施形態に係る劣化判定方法の工程を説明するのに用いた模式図である。
【
図7】本開示の第1実施形態に係る劣化判定方法の工程を説明するのに用いた模式図である。
【
図8】本開示の第1実施形態に係る劣化判定方法の工程を説明するのに用いた模式図である。
【
図9】(A)(B)本開示の第1実施形態に係る劣化判定方法の工程を説明するのに用いた模式図である。
【
図10】本開示の第2実施形態に係る治具に備えられた錘を示した拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<第1実施形態>
本開示の第1実施形態に係る治具、及び劣化判定方法の一例を
図1~
図9に従って説明する。具体的には、Eリング等の止め輪を挟持して挟持した止め輪を対象物に装着するために用いる止め輪装着工具の劣化を判定するための治具の一例、及び止め輪装着工具の劣化を判定する劣化判定方法の一例について説明する。
【0022】
なお、図中に示す矢印Hは治具の上下方向(鉛直方向)を示し、矢印Wは治具の幅方向(水平方向)を示し、矢印Lは治具の奥行き方向(水平方向)を示す。また、上下方向、幅方向、及び奥行き方向は、互いに直交する。
【0023】
先ず、劣化が判定される止め輪装着工具について説明する。なお、止め輪装着工具については、治具を用いて劣化が判定されるときの姿勢で説明する。
【0024】
(止め輪装着工具100)
止め輪装着工具100(以下「工具100」)は、止め輪200を軸部材の溝部に装着するための工具であって、
図1に示されるように、作業者が把持する把持部110と、把持部110から延出して先端部122で止め輪200を挟持する延出部120とを有している。止め輪装着工具100は、工具の一例である。
【0025】
止め輪200は、所謂Eリング(JIS B 2805)であって、
図1に示されるように、外周面200a及び内周面200bが円弧状とされ、内周面200bからは、止め輪200の内側方向に突出する三個の突起202が形成されている。さらに、止め輪200には、下方を向いた下面200cと、上方を向いた上面200dとが形成されている。外周面200aは、周面の一例であって、下面200cは、一方の面の一例であって、上面200dは、他方の面の一例である。
【0026】
〔把持部110〕
把持部110は、
図1に示されるように、奥行き方向に延びると共に断面が幅方向に延びる矩形状とされており、樹脂材料を用いて形成されている。
【0027】
〔延出部120〕
延出部120は、
図1に示されるように、把持部110の奥行き方向の一端部(図中左端部)から奥行き方向の一方側(図中左側)に延びており、板金を用いて形成されている。延出部120の板面は、上下方向を向いており、延出部120には、延出部120を幅方向に分割するスリット130が奥行き方向に延びて形成されている。また、延出部120の奥行き方向の一端部分には、他の部分と比して幅広とされた先端部122が形成されている。
【0028】
具体的には、スリット130は、延出部120において奥行き方向の他端部分を除いて形成されており、先端部122は、スリット130によって幅方向に分割されている。先端部122において幅方向に分割された分割部122aと分割部122bとは、延出部120が幅方向に弾性変形することで、幅方向に近接離隔するようになっている。
【0029】
そして、先端部122の分割部122a、122bには、
図2(A)に示されるように、止め輪200の奥行き方向の他端部分の外周面200aを幅方向から挟持する挟持面124a、124bと、止め輪200の奥行き方向の他端部分の下面200cを下方から支持する支持面126a、126bとが夫々形成されている。止め輪200の奥行方向の他端部分は、止め輪200の一部の一例である。
【0030】
具体的には、先端部122には、
図2(A)に示されるように、上方から見て、半円状の切欠き部120aが形成されている。さらに、先端部122においてスリット130によって幅方向に分割された分割部122aと分割部122bとは、奥行き方向を中央線CL01に対して対称形状とされている。
【0031】
そして、分割部122a、122bには、上方から見て半円状の切欠き部120aの中心を向く挟持面124a、124bと、挟持面124a、124bの下端から半円状の切欠き部120aの中心側へ突出すると共に上方を向く支持面126a、126bとが形成されている。
【0032】
この構成において、延出部120の先端部122が止め輪200を挟持した状態で、止め輪200の奥行き方向の一端部分は、
図2(B)に示されるように、延出部120の先端部122から奥行き向の一端側(図中左端側)に突出する。そして、止め輪200における延出部120の先端部122からの突出量は、d1とされている。また、止め輪200において延出部120の先端部122から突出した部分の幅は、b1とされている。さらに、止め輪200の厚さは、t1とされている。止め輪200の奥行き方向の一端部分は、止め輪200の他部の一例である。
【0033】
(治具10)
治具10は、
図3に示されるように、錘20と、形成部40とを備えている。
〔錘20〕
錘20は、
図3、
図4に示されるように、本体部22と、ナット30とを備えている。ナット30は、挿入部の一例である。
【0034】
本体部22は、直方体状とされており、本体部22には、幅方向を向いた一対の側面22aと、奥行き方向の一方側(図中左側)を向いた背面22bと、奥行き方向の他方側(図中右側)を向いた正面22cとが形成されている。また、本体部22には、下方を向いた底面22dと、上方を向いた天面22eとが形成されている。
【0035】
さらに、本体部22の正面22cには、奥行き方向に凹んだ凹部24が形成されている。具体的には、凹部24は、本体部22において上下方向の中央部分に形成されており、上方から見て(透視して見て)、半円状とされている。また、凹部24の開口は、奥行き方向の他方側から見て、幅方向に延びる矩形状とされている。
【0036】
さらに、凹部24の深さは、d2とされており、深さd2は、止め輪200における延出部120の先端部122から突出量d1(
図2(B)参照)と比して、短くされている。また、凹部24の開口幅は、b2とされており、開口幅b2は、止め輪200において延出部120の先端部122から突出した部分の幅b1(
図2(B)参照)と比して、広くされている。さらに、凹部24の開口高さは、t2とされており、開口高さt2は、止め輪200の厚さt1と比して、高くされている。
【0037】
また、本体部22の天面22eには、上方へ突出した断面円状の突出部26が設けられており、突出部26の外周面には、雄ねじが形成されている。一方、ナット30には、貫通孔30aが形成されており、貫通孔30aの内周面には雌ねじが形成されている。そして、ナット30は、外周面に雄ねじが形成された突出部26に捻じ込まれて噛み合っている。
【0038】
この構成において、工具100の劣化を判定するときには、錘20の凹部24に、延出部120の先端部122から突出した部分の止め輪200を挿入する。そして、止め輪200を凹部24の底に突き当てる。この状態で、工具100の先端部122と錘20とが離隔する(
図8参照)。
【0039】
〔形成部40〕
形成部40は、
図3、
図5に示されるように、直方体状とされており、形成部40には、幅方向を向いた一対の側面42aと、奥行き方向の一方側(図中左側)を向いた背面42bと、奥行き方向の他方側(図中右側)を向いた正面42cとが形成されている。さらに、形成部40には、下方を向いた底面42dと、上方を向いた天面42eとが形成されている。
【0040】
また、形成部40の天面42eには、錘20の下端部分が挿入されると共に形成部40に対する錘20の位置を決める凹状の位置決め凹部44形成されている。位置決め凹部44は、位置決め部の一例である。
【0041】
具体的には、位置決め凹部44は、
図5に示されるように、直方体状とされている。そして、位置決め凹部44は、幅方向を向いた一対の側面46aと、奥行き方向の他方側(図中右側)を向いた背面46bと、奥行き方向の一方側(図中左側)を向いた正面46cと、上方を向いた底面46dとに囲まれている。
【0042】
さらに、形成部40の天面42eにおいて位置決め凹部44に対して幅方向の他方側の部分は、工具100の先端部122を摺動させることで先端部122から突出した部分の止め輪200を凹部24に案内する案内面部48とされている。
【0043】
この構成において、
図3に示されるように、錘20の下端部分が位置決め凹部44に挿入された状態で、錘20が幅方向において一対の側面46aに挟まれることで錘20の幅方向の位置が決められる。ここで、錘20の一対の側面22a間の寸法は、位置決め凹部44の幅方向を向いた一対の側面46a間の寸法よりも小さい。このため、「錘20が幅方向において一対の側面46aに挟まれる」とは、錘20が幅方向において少なくとも一方の側面46aと離隔して(隙間を有して)挟まれるという意である。さらに、錘20の背面22bを凹部44の背面46bに接触させることで錘20の奥行き方向の位置が決められる。また、錘20の底面22dを凹部44の底面46dに接触させることで錘20の上下方向の位置が決められる。このように、錘20が位置決めされた状態で、錘20の正面22cと凹部44の正面46cとは離隔する。
【0044】
さらに、
図7、
図8に示されるように、工具100の先端部122を案内面部48に摺動させることで、止め輪200において先端部122から突出した部分が凹部24に案内される。つまり、位置決め凹部44の深さは、案内面部48に接触した状態の工具100の先端部122に挟持された止め輪200と、錘20の凹部24とが奥行き方向で対向するように決められている。このように、工具100の先端部122(延出部120の奥行き方向の一端部分における下側を向く板面)を案内面部48に摺動させることで、工具100の先端部122から突出した部分の止め輪200を錘20の凹部24に挿入する際に、止め輪200に不要な外力が作用することが抑制される。具体的には、工具100の先端部122が奥行き方向に対して上下方向に傾斜していることにより、凹部24の開口の上側のエッジまたは下側のエッジに止め輪200を衝突させる等である。
【0045】
(工具100の劣化判定方法)
次に、工具100の劣化判定方法について説明する。なお、工具100の劣化とは、工具100の先端部122の挟持面124a、124bが止め輪200と擦れることで摩耗し、先端部122による止め輪200の挟持力が弱くなることである。先端部122による止め輪200の保持力が弱くなると、工具100の先端部122から止め輪200が外れ易くなる。そして、工具100の先端部122から止め輪200が外れる際、延出部120の幅方向の弾性変形が解放されるため、止め輪200は飛翔し易い。一般に作業者は工具100の把持部110を手で把持して使用するため、飛翔した止め輪200は、作業者の目に入る等の安全上の問題になり得る。
【0046】
先ず、
図1、
図2(A)(B)に示されるように、工具100の先端部122の挟持面124a、124bで止め輪200の外周面200aを挟持し、かつ、止め輪200の下面200cを先端部122の支持面126a、126bで支持する(第1工程)。
【0047】
次に、
図6、
図7に示されるように、工具100によって挟持した止め輪200の上面200dを上にし、先端部122を形成部40の案内面部48に接触させる。さらに、
図7、
図8に示されるように、先端部122を案内面部48に摺動させて、先端部122から突出した部分の止め輪200を凹部24に挿入する。そして、止め輪200を凹部24の底に突き当てる(第2工程)。この状態で、工具100の先端部122と錘20とが離隔している。
【0048】
次に、
図9(A)(B)に示されるように、工具100を上昇させる(第3工程)。
図9(A)に示されるように、工具100と共に錘20が上昇する場合は、工具100が劣化していないと判定され、
図9(B)に示されるように、錘20が上昇しない場合は、工具100が劣化していると判定される。換言すれば、止め輪200が先端部122から離脱した場合に、工具100が劣化していると判定される。
【0049】
(まとめ)
以上説明したように、治具10、及び工具100の劣化判定方法においては、止め輪200を凹部24に挿入した状態で劣化していない工具100を上昇させると、工具100と共に錘20上昇する。一方、劣化している工具100を上昇させると、止め輪200が工具100から離脱する。このように、工具100の劣化が判定される。
【0050】
また、治具10においては、先端部122から突出した部分の止め輪200を凹部24に挿入し、止め輪200を凹部24の底に突き当てると、工具100の先端部122と錘20とが離隔する。このため、止め輪を凹部の底に突き当てた状態で工具の先端部と錘とが接触している場合と比して、工具の先端部で錘を支持することがなくなるため、工具100の劣化が効果的に判定される(劣化の誤判定の発生が抑制される)。
【0051】
また、治具10においては、本体部22の突出部26の外周面に雄ねじが形成されており、ナット30が突出部26に捻じ込まれている。これにより、ナット30を交換、又は追加することで、錘20の重さが調整される。
【0052】
また、治具10においては、本体部22の突出部26の外周面に雄ねじが形成されており、ナット30が突出部26に捻じ込まれている。これにより、ナットの内周面と突出部の外周面との間に隙が設けられている場合と比して、ナット30の本体部22に対する姿勢が安定する。
【0053】
<第2実施形態>
本開示の第2実施形態に係る治具、及び劣化判定方法の一例を
図10に従って説明する。なお、第2実施形態については、第1実施形態と異なる部分を主に説明する。
【0054】
第2実施形態に係る治具310の錘320は、
図10に示されるように、本体部322と、ボルト330とを備えている。そして、本体部322の天面22eには、上方が開口した断面円状の穴部324が形成されており、穴部324の内周面には、雌ねじが形成されている。
【0055】
また、ボルト330の円柱部330aに雄ねじが形成されており、ボルト330が穴部324に捻じ込まれている。ボルト330は、挿入部の一例である。
【0056】
以上の説明した治具310においては、本体部322の穴部324の内周面に雌ねじが形成されており、ボルト330が穴部324に捻じ込まれている。これにより、ボルト330を交換することで、錘320の重さが調整される。
【0057】
また、治具310においては、本体部322の穴部324の内周面に雌ねじが形成されており、ボルト330が穴部324に捻じ込まれている。これにより、穴部の内周面とボルトの外周面との間に隙が設けられている場合と比して、ボルト330の本体部322に対する姿勢が安定する。
【0058】
なお、本開示を特定の実施形態について詳細に説明したが、本開示は係る実施形態に限定されるものではなく、本開示の範囲内にて他の種々の実施形態をとることが可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、上記第1、第2実施形態では、止め輪200を凹部24の底に突き当てると、工具100の先端部122と錘20とが離隔したが、接触してもよい。しかし、この場合には、離隔することで奏する作用は奏しない。
【0059】
また、上記実施形態では、止め輪の一例としてEリングを用いて説明したが、Cリング等であってもよい。
【0060】
また、上記第1実施形態では、雄ねじが形成された突出部26にナット30が捻じ込まれたが、断面円状の貫通孔が形成された部材を円柱状の突出部に差し込んでもよい。しかし、この場合には、雄ねじが形成された突出部26にナット30が捻じ込まれることで奏する作用は奏しない。
【0061】
また、上記第2実施形態では、本体部322の穴部324の内周面に雌ねじが形成されており、ボルト330が穴部324に捻じ込まれたが、断面円状の円柱部を断面円状の穴部に差し込んでもよい。しかし、この場合には、ボルト330が穴部324に捻じ込まれることで奏する作用は奏しない。
【0062】
(((1)))
工具の先端部で一部の周面が挟持されると共に該一部の一方の面が該先端部で支持された止め輪の他部が、該一部の他方の面を上にして挿入される凹部が形成され、該他部が該凹部に挿入された状態で、劣化していない該工具を上昇させると該止め輪と共に上昇する錘と、
該錘を位置決めする位置決め部、及び該先端部が摺動されることで該他部を該凹部に案内する案内面部が形成された形成部と、
を有する治具。
【0063】
(((2)))
前記他部を前記凹部に挿入して前記他部を前記凹部の底に突き当てた状態で前記先端部と前記錘とが離隔している、
(((1)))に記載の治具。
【0064】
(((3)))
前記錘は、前記凹部が形成されると共に上方へ突出した断面円状の突出部が形成された本体部と、前記突出部が挿入される貫通孔が形成された挿入部と、を備える、
(((1)))又は(((2)))に記載の治具。
【0065】
(((4)))
前記突出部の外周面には、雄ねじが形成されており、
前記挿入部の前記貫通孔の内周面には、前記突出部に形成された雄ねじと噛み合う雌ねじが形成されている、
(((3)))に記載の治具。
【0066】
(((5)))
前記錘は、前記凹部が形成されると共に上方へ開口した断面円状の穴部が形成された本体部と、前記穴部に挿入される円柱部が形成された挿入部と、を備える、
(((1)))又は(((2)))に記載の治具。
【0067】
(((6)))
前記穴部の内周面には、雌ねじが形成されており、
前記挿入部の前記円柱部の外周面には、前記穴部に形成された雌ねじと噛み合う雄ねじが形成されている、
(((5)))に記載の治具
【0068】
(((7)))
工具の先端部で止め輪の一部の周面を挟持すると共に、該一部の一方の面を該先端部で支持する第1工程と、
該一部の他方の面を上にして、該先端部から突出した該止め輪の他部を錘に形成された凹部に挿入する第2工程と、
該工具を上昇させ、該止め輪が該先端部から離脱した場合に該止め輪が劣化していると判定する第3工程と、
を有する劣化判定方法。
【0069】
(((1)))に係る治具によれば、工具の劣化を判定することができる。
【0070】
(((2)))に係る治具によれば、止め輪の他部を凹部の底に突き当てた状態で工具の先端部と錘とが接触している場合と比して、工具の劣化を効果的に判定することができる。
【0071】
(((3)))に係る治具によれば、挿入部を交換することで錘の重さを調整することができる。
【0072】
(((4)))に係る治具によれば、突出部の外周面と挿入部の貫通孔の内周面との間に隙が設けられている場合と比して、挿入部の本体部に対する姿勢を安定させることができる。
【0073】
(((5)))に係る治具によれば、挿入部を交換することで錘の重さを調整することができる。
【0074】
(((6)))に係る治具によれば、穴部の内周面と円柱部の外周面との間に隙が設けられている場合と比して、挿入部の本体部に対する姿勢を安定させることができる。
【0075】
(((7)))に係る劣化判定方法によれば、工具の劣化を判定することができる。
【符号の説明】
【0076】
10 治具
20 錘
22 本体部
24 凹部
26 突出部
30 ナット(挿入部の一例)
30a 貫通孔
40 形成部
44 位置決め凹部(位置決め部の一例)
48 案内面部
100 止め輪装着工具(工具の一例)
122 先端部
200 止め輪
200a 外周面(周面の一例)
200c 下面(一方の面の一例)
200d 上面(他方の面の一例)
310 治具
320 錘
322 本体部
324 穴部
330 ボルト(挿入部の一例)
330a 円柱部