(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025041144
(43)【公開日】2025-03-26
(54)【発明の名称】集電体、及び二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/66 20060101AFI20250318BHJP
H01M 4/134 20100101ALI20250318BHJP
【FI】
H01M4/66 A
H01M4/134
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023148254
(22)【出願日】2023-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(72)【発明者】
【氏名】松山 拓矢
【テーマコード(参考)】
5H017
5H050
【Fターム(参考)】
5H017AA03
5H017AA04
5H017AS02
5H017AS10
5H017DD06
5H017EE01
5H017EE07
5H017EE08
5H017HH01
5H017HH03
5H017HH08
5H050AA15
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB12
5H050DA03
5H050DA04
5H050EA02
5H050EA23
5H050FA18
5H050HA01
5H050HA04
5H050HA14
(57)【要約】
【課題】本開示は、電池の内部短絡時における発熱を抑制することができる集電体を提供する。
【解決手段】本開示の集電体10は、金属箔11、及び金属箔11に積層された導電性樹脂層12を有する。本開示の集電体における導電性樹脂層12は、樹脂12a及び導電性材料12bを含み、樹脂12aの融点が120℃未満である。本開示の二次電池1は、正極集電体及び負極集電体を備え、少なくとも正極集電体及び負極集電体のいずれか一方が、本開示の集電体10である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属箔、及び
前記金属箔に積層された導電性樹脂層
を有する集電体であって、
前記導電性樹脂層が、樹脂及び導電性材料を含み、
前記樹脂の融点が120℃未満である、
集電体。
【請求項2】
前記導電性樹脂層における前記樹脂の含有率が、50質量%以上である、請求項1に記載の集電体。
【請求項3】
前記導電性樹脂層の厚さが、1μm以上10μm以下である、請求項1に記載の集電体。
【請求項4】
正極集電体及び負極集電体を備え、
少なくとも前記正極集電体及び前記負極集電体のいずれか一方が、請求項1~3のいずれか一項に記載の集電体である、
二次電池。
【請求項5】
負極活物質層を更に備え、かつ
前記負極活物質層が、シリコン系負極活物質を有する、
請求項4に記載の二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、集電体、及び二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、金属箔に代わって金属粉等の導電性フィラーが添加された樹脂から構成される、いわゆる樹脂集電体が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1は、樹脂と、導電材とを有する層を1層以上備えてなる構造であって、少なくとも1層の樹脂として、120℃以上の融点を有する結晶性の樹脂が用いられてなる双極型二次電池用の集電体を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような樹脂集電体の表面抵抗は大きいため、樹脂集電体を備える電池においては、内部短絡時に面方向に電流が流れるのを効果的に抑制でき、その結果、電池の局所的な発熱を防止することができると考えられる。しかし、電池の内部短絡時における発熱の抑制については、更なる改善の余地がある。
【0006】
本開示は、電池の内部短絡時における発熱を抑制することができる集電体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本件開示者等は、以下の手段により上記課題を解決することができることを見出した。
〈態様1〉
金属箔、及び
前記金属箔に積層された導電性樹脂層
を有する集電体であって、
前記導電性樹脂層が、樹脂及び導電性材料を含み、
前記樹脂の融点が120℃未満である、
集電体。
〈態様2〉
前記導電性樹脂層における前記樹脂の含有率が、50質量%以上である、態様1に記載の集電体。
〈態様3〉
前記導電性樹脂層の厚さが、1μm以上10μm以下である、態様1又は2に記載の集電体。
〈態様4〉
正極集電体及び負極集電体を備え、
少なくとも前記正極集電体及び前記負極集電体のいずれか一方が、態様1~3のいずれか一項に記載の集電体である、
二次電池。
〈態様5〉
負極活物質層を更に備え、かつ
前記負極活物質層が、シリコン系負極活物質を有する、
態様4に記載の二次電池。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、電池の内部短絡時における発熱を抑制することができる集電体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、(a)本開示の集電体の一例を示す概略断面図、(b)導電性異物が、内部短絡に伴う発熱により溶融した導電性樹脂層に捕捉される様子を示す、本開示の集電体の概略断面図である。
【
図2】
図2は、本開示の二次電池の一例を示す概略断面図である。
【
図3】
図3は、各例における内部短絡時の発熱量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態について詳述する。なお、本開示は、以下の実施の形態に限定されるのではなく、開示の本旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0011】
《集電体》
本開示の集電体は、金属箔、及び金属箔に積層された導電性樹脂層を有する。本開示の集電体における導電性樹脂層は、樹脂及び導電性材料を含み、樹脂の融点が120℃未満である。
【0012】
本件開示者等は、融点の低い樹脂を含む導電性樹脂層を金属箔上に配置した集電体を備える電池において、内部短絡時の発熱が抑制されることを見出だした。この理由としては、何らの理論に束縛されることを意図しないが、導電性異物の混入による電池の内部短絡が発生した場合において、樹脂が内部短絡に伴う発熱により早期に溶融することで、混入した導電性異物を覆うように捕捉し、その結果、電流の流れが遮断され、更なる温度の上昇が抑制されるためであると考えられる。
【0013】
以下、
図1を参照して本開示の集電体について説明する。
図1は、(a)本開示の集電体の一例を示す概略断面図、(b)導電性異物が、内部短絡に伴う発熱により溶融した導電性樹脂層に捕捉される様子を示す、本開示の集電体の概略断面図である。なお、
図1及びその他の図面における寸法関係は、実際の寸法関係を反映するものではない。
【0014】
図1(a)に示されるように、本開示の集電体10は、金属箔11、及び金属箔11に積層された導電性樹脂層12を有する。
【0015】
〈金属箔〉
金属箔11として用いられる材料は、特に限定されず、電池の集電体として使用できるものを適宜採用することができる。ここで、「集電体」は、正極集電体であってもよく、負極集電体であってもよい。正極集電体に用いることができる金属箔の材料は、例えば、SUS、ニッケル、クロム、金、白金、アルミニウム、鉄、チタン、及び亜鉛等、並びにこれらの金属にニッケル、クロム、炭素等をめっき又は蒸着したものであってよいが、これらに限定されない。負極集電体に用いることができる金属箔の材料は、例えば、銅、及び銅合金、並びに銅にニッケル、クロム、及び炭素等をめっき又は蒸着したものであってよいが、これらに限定されない。
【0016】
〈導電性樹脂層〉
導電性樹脂層12は、樹脂12a及び導電性材料12bを含む。
【0017】
(樹脂)
樹脂12aの融点は、120℃未満である。この融点は、40℃以上、45℃以上、50℃以上、55℃以上、又は60℃以上であってよく、110℃以下、100℃以下、95℃以下、90℃以下、又は85℃以下であってよい。
【0018】
樹脂12aの融点が低いと、導電性異物13の混入による電池の内部短絡が発生した場合に、
図1(b)に示されるように、内部短絡に伴う発熱により樹脂12aが早期に溶融して、混入した導電性異物13を覆うように捕捉することができ、その結果、電流の流れが遮断され、更なる温度の上昇を抑制することができると考えられる。
【0019】
導電性樹脂層12における樹脂12aの含有率は、50質量%以上であってよい。この含有率は、60質量%以上、70質量%以上、又は80質量%以上であってよく、100質量%未満、95質量%以下、又は90質量%以下であってよい。この含有率が上記範囲内であると、発熱により樹脂12aが溶融した際の流動性が高くなり、混入した導電性異物13を捕捉しやすい。
【0020】
導電性樹脂層12の厚さは、1μm以上10μm以下であってよい。この厚さは、2μm以上、3μm以上、4μm以上、5μm以上であってよく、9μm以下、8μm以下、7μm以下、又は6μm以下であってよい。導電性樹脂層12の厚さが、上記範囲内であると、混入した導電性異物13を捕捉しやすい。
【0021】
樹脂12aは、結晶性の樹脂であってよく、具体的には、樹脂12aは、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、メタクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、又はAS樹脂であってよい。なお、結晶性の樹脂とは、融点以下の温度では、高分子鎖が規則正しく配列する性質のある樹脂のことを意味する。
【0022】
(導電性材料)
導電性材料12bは、特に限定されず、電池の導電助剤として常用されているものを適宜採用することができる。例えば、導電性材料12bは、VGCF(気相成長法炭素繊維、Vapor Grown Carbon Fiber)及び、アセチレンブラック(AB)、ケッチェンブラック(KB)、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノファイバー(CNF)等であってよいが、これらに限定されない。
【0023】
導電性樹脂層12における導電性材料12bの含有率は、0質量%超、5質量%以上、又は10質量%以上であってよく、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、又は20質量%以下であってよい。
【0024】
(その他の成分)
導電性樹脂層は随意に、樹脂、及び導電性材料以外の成分を含んでいてもよい。例えば、酸化アルミニウム等の金属酸化物フィラーを含んでいてもよいが、内部短絡時の発熱に伴う樹脂の流動性の観点から、導電性樹脂層における金属酸化物フィラーの含有率は、10質量%未満、5質量%未満、1質量%未満、又は0.1質量%未満であることが好ましく、金属酸化物フィラーを含まないことがより好ましい。
【0025】
《集電体の製造方法》
本開示の集電体の製造方法としては、特に限定されず、既存の樹脂薄膜の成膜技術を適宜採用することができる。
【0026】
例えば、集電体10は、樹脂12a及び導電性材料12bを混錬し、金属箔11上で圧延することによって製造することができる。また、集電体10は、樹脂12a及び導電性材料12bを含有するスラリーを金属箔11上に塗布したのちに、乾燥させることにより製造することができる。
【0027】
《二次電池》
本開示の二次電池は、正極集電体及び負極集電体を備え、少なくとも正極集電体及び負極集電体のいずれか一方が、本開示の集電体である。
図2は、正極集電体として本開示の集電体10を用いた本開示の二次電池1を示す概略断面図である。この場合、正極集電体10としての金属箔11及び導電性樹脂層12、並びに正極活物質層14、電解質層15、負極活物質層16、及び負極集電体17をこの順に備えていてよい。
【0028】
本開示の二次電池は、液系電池又は固体電池であってもよい。なお、本開示に関して、「固体電池」は、電解質として少なくとも固体電解質を用いる電池を意味しており、したがって固体電池は、電解質として、固体電解質と液体電解質との組み合わせを用いていてもよい。また、本開示の固体電池は、全固体電池、すなわち電解質として固体電解質のみを用いる電池であってもよい。
【0029】
〈正極集電体及び負極集電体〉
集電体については、本開示の集電体に関する上記の記載を参照できる。
【0030】
〈正極活物質層及び負極活物質層〉
正極活物質層は、正極活物質、並びに随意に固体電解質、導電助剤、及びバインダーを含有している。負極活物質層は、負極活物質、並びに随意に固体電解質、導電助剤、及びバインダーを含有している。
【0031】
(正極活物質)
正極活物質としては、公知の活物質を用いればよい。例えば、リチウムイオン電池を構成する場合は、正極活物質としてコバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2、マンガン酸リチウム、スピネル系リチウム化合物等の各種のリチウム含有複合酸化物を用いることができる。また、オリビン型の正極活物質としてリン酸鉄リチウム(LFP)を用いることができる。正極活物質は、例えば、粒子状であってもよく、その大きさは特に限定されるものではない。
【0032】
正極活物質は、被覆層を有していてよい。例えば、リチウムイオン電池を構成する場合は、被覆層は、リチウムイオン伝導性能を有し、正極活物質や固体電解質との反応性が低く、かつ活物質や固体電解質と接触しても流動しない被覆層の形態を維持し得る物質を含有している層である。被覆層を構成する材料の具体例としては、LiNbO3の他、Li4Ti5O12、Li3PO4等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0033】
(負極活物質)
負極活物質としては公知の活物質を用いればよい。例えば、リチウムイオン電池を構成する場合は、負極活物質としてシリコン(Si)やSi合金や酸化ケイ素等のSi系負極活物質;黒鉛やハードカーボン等の炭素系負極活物質;チタン酸リチウム等の各種酸化物系負極活物質;金属リチウムやリチウム合金等を用いることができる。負極活物質は、例えば、粒子状であってもよく、その大きさは特に限定されるものではない。
【0034】
特に、負極活物質は、Si系負極活物質であってよい。Siは、炭素系負極活物質と比べて低温(160~220℃程度)で発熱し易い。そのため、負極活物質としてSiを用いた二次電池においては、内部短絡等によって電池の温度が上昇した際、Siの発熱が生じるおそれがあり、電池の発熱量の増大を抑制し難い。これに対して、二次電池の集電体を本開示の集電体とすることで、負極活物質がSi系負極活物質であったとしても、内部短絡時の発熱を効果的に抑制できる。
【0035】
(固体電解質、導電助剤、及びバインダー)
固体電解質の材料は、特に限定されず、二次電池に用いられる固体電解質として利用可能な材料を用いることができる。例えば、固体電解質は、硫化物固体電解質であってよい。
【0036】
硫化物固体電解質の例として、硫化物非晶質固体電解質、硫化物結晶質固体電解質、又はアルジロダイト型固体電解質等が挙げられるが、これらに限定されない。具体的な硫化物固体電解質の例として、Li2S-P2S5系(Li7P3S11、Li3PS4、Li8P2S9等)、Li2S-SiS2、LiI-Li2S-SiS2、LiI-Li2S-P2S5、LiI-LiBr-Li2S-P2S5、Li2S-P2S5-GeS2(Li13GeP3S16、Li10GeP2S12等)、LiI-Li2S-P2O5、LiI-Li3PO4-P2S5、Li7-xPS6-xClx等;又はこれらの組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されない。硫化物固体電解質は、ガラスであっても、結晶化ガラス(ガラスセラミック)であってもよい。
【0037】
導電助剤は、特に限定されない。例えば、導電助剤は、VGCF(気相成長法炭素繊維、Vapor Grown Carbon Fiber)及び、アセチレンブラック(AB)、ケッチェンブラック(KB)、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノファイバー(CNF)等であってよいが、これらに限定されない。
【0038】
バインダーとしては、特に限定されない。例えば、バインダーは、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ブタジエンゴム(BR)、若しくはスチレンブタジエンゴム(SBR)等の材料、又はこれらの組合せであってよいが、これらに限定されない。
【0039】
〈電解質層〉
電解質層は、少なくとも固体電解質を含む固体電解質層であってよい。固体電解質層は、随意にバインダー等を含んでもよい。固体電解質及びバインダーについては、本開示の正極活物質層及び負極活物質層に関する上記の記載を参照できる。
【0040】
本開示の二次電池の製造方法としては、特に限定されず、従来公知の方法を適用して製造することができる。
【実施例0041】
《比較製造例》
〈集電体の作製〉
ポリフッ化ビニリデン(PVdF)(融点:150℃)60質量%、酸化アルミニウム(Al2O3)30質量%、導電性材料としてのアセチレンブラック(AB)10質量%、及び溶媒を含有するスラリーを、Gap50の塗工ブレードでアルミニウム(Al)箔上に塗布した。これを乾燥させることにより、比較製造例の集電体を作製した。
《製造例1》
塩化ビニル系樹脂(融点:85℃)80質量%、導電性材料としての気相成長炭素繊維(VGCF)20質量%、及び溶媒を含有するスラリーを、Gap50の塗工ブレードでAl箔上に塗布した。これを乾燥させることにより、製造例1の集電体を作製した。なお、形成された導電性樹脂層の厚さは、5μmであった。
【0042】
《製造例2》
樹脂をアクリル樹脂(融点:60℃)としたこと以外は製造例1と同様にして、製造例2の集電体を作製した。なお、形成された導電性樹脂層の厚さは、5μmであった。
【0043】
《比較例》
〈固体電池の作製〉
(正極集電体の準備)
正極集電体として、比較製造例の集電体を用いた。
【0044】
(正極活物質層の成形)
正極活物質と硫化物固体電解質と導電助剤とバインダーとを、質量比で、正極活物質:硫化物固体電解質:導電助剤:バインダー=85:13:1.3:0.7となるように秤量して成形することで、正極活物質層(厚さ70μm)を得た。なお、正極活物質としては、LiNi0.8Co0.15Al0.05O2(住友金属鉱山社製)にLiNbO3をコートしたものを用いた。硫化物固体電解質としては10LiI-90(0.75Li2S-0.25P2S5)を合成し、これを結晶化及び微粒化したものを用いた。導電助剤としては、気相法炭素繊維(VGCF、昭和電工社製)を用いた。バインダーとしては、PVdFを用いた。
【0045】
(固体電解質層の成形)
上記と同様の硫化物固体電解質とバインダーとを、質量比で、99.6:0.4となるように混合して固体電解質合材とし、得られた固体電解質合材を成形して固体電解質層(厚さ15μm)を得た。
【0046】
(負極活物質層の成形)
負極活物質と硫化物固体電解質と導電助剤とバインダーとを、質量比で、負極活物質:硫化物固体電解質:導電助剤:バインダー=53:41:4.5:1.5となるように秤量して成形することで、負極活物質層(厚さ50μm)を得た。なお、負極活物質としては、Si(三井金属社製、平均粒子径D50=2.5μm)を用いた。硫化物固体電解質、導電助剤、及びバインダーは正極活物質層において用いたものと同様である。
【0047】
(負極集電体の準備)
負極集電体として、ニッケル(Ni)箔(厚さ30μm)を用いた。
【0048】
(固体電池の作製)
上記の各層を用いて、「正極集電体(金属箔/導電性樹脂層)/正極活物質層/固体電解質層/負極活物質層/負極集電体」の層構成を有する固体電池を得た。なお、集電体の導電性樹脂層が、正極活物質層と接するように積層した。得られた固体電池に対して、初期容量の確認(2.5-4.05V(CCCV)、充電1/3C、放電1/3C、休止条件1/100C、5サイクル)を行い、その後、電圧調整(4.05V、CCCV、充電1/3C、休止条件1/100C)を行うことで、比較例の固体電池を得た。
【0049】
《実施例1及び2》
正極集電体の準備工程において、比較製造例の集電体の代わりに製造例1又は2の集電体を使用したこと以外は比較例と同様にして、実施例1及び2の固体電池を得た。なお、製造例の番号と実施例の番号が対応している。
【0050】
《評価》
〈電池の発熱量の評価〉
固体電池の中央部を直径3mm、先端角45°の釘で速度1μm/sにて刺し込む釘刺し試験を行った。実施例及び比較例に係る固体電池の各々について、釘刺し試験時の電流及び電圧の挙動を観察し、内部短絡が起きた時点における電流及び電圧の初期値からの変化量から電池の抵抗を算出した。更に、下記式に基づいて、電池の発熱量を算出した:
発熱量[W]=電流[A]2×抵抗[Ω]。
【0051】
《結果》
結果を
図3に示す。なお、実施例の結果は、比較例の結果を100とした相対値として示している。
図3に示されるように、比較例に係る固体電池に比べて、実施例に係る固体電池は、内部短絡時の発熱量が小さかった。特に、より融点の低いアクリル樹脂を使用した実施例2では、内部短絡時の発熱量が最も小さかった。