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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025041207
(43)【公開日】2025-03-26
(54)【発明の名称】加速空洞
(51)【国際特許分類】
   H05H 13/04 20060101AFI20250318BHJP
【FI】
H05H13/04 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023148359
(22)【出願日】2023-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】309036221
【氏名又は名称】三菱重工機械システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 優志
(72)【発明者】
【氏名】原 博史
(72)【発明者】
【氏名】重岡 伸之
(72)【発明者】
【氏名】宮本 明啓
(72)【発明者】
【氏名】菅野 東明
【テーマコード(参考)】
2G085
【Fターム(参考)】
2G085BA06
2G085BA08
2G085BE03
2G085CA06
(57)【要約】
【課題】複雑な機構を用いることなく荷電粒子のエネルギーを切り替え可能な加速空洞を提供する。
【解決手段】加速空洞は、導電性を有する筒形状であり、中心軸に沿った平面で複数に分割された分割部材を平面に沿った分割面同士が隙間を空けて対向した状態で設けられる筐体と、筐体の内部に当該筐体の中心軸の軸線方向に並んだ状態で配置され、荷電粒子を通過可能な連通部により互いに連通された複数のセル部と、筐体の隙間に配置され、平面に沿って隙間を移動可能であり、移動により荷電粒子を加速させる電界の大きさを切り替えるスイッチ部材とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有する筒形状であり、中心軸に沿った平面で複数に分割された分割部材を前記平面に沿った分割面同士が隙間を空けて対向した状態で設けられる筐体と、
前記筐体の内部に当該筐体の中心軸の軸線方向に並んだ状態で配置され、荷電粒子を通過可能な連通部により互いに連通された複数のセル部と、
前記筐体の前記隙間に配置され、前記平面に沿って前記隙間を移動可能であり、移動により前記荷電粒子を加速させる電界の大きさを切り替えるスイッチ部材と
を備える加速空洞。
【請求項2】
前記筐体の内部に設けられ、隣り合う前記セル部同士を前記中心軸からオフセットした位置で連通する結合空洞を更に備え、
前記スイッチ部材は、前記結合空洞に出没するように配置される
請求項1に記載の加速空洞。
【請求項3】
全ての前記結合空洞は、前記セル部に対して前記中心軸に直交する方向について同じ側に配置される
請求項2に記載の加速空洞。
【請求項4】
前記結合空洞は、前記セル部に接続される第1空間部と、前記第1空間部に対して前記中心軸に対して径方向の外側に離れた位置に配置される第2空間部と、前記第1空間部と前記第2空間部とを前記径方向に接続する接続部とを有し、
前記スイッチ部材は、前記接続部に出没するように配置される
請求項2に記載の加速空洞。
【請求項5】
前記隙間を介して複数の前記セル部に接続された真空マニホールドを更に備え、
前記結合空洞は、前記第2空間部が前記真空マニホールドに接続される
請求項4に記載の加速空洞。
【請求項6】
前記筐体は、前記スイッチ部材の可動範囲の少なくとも一部に、前記分割面同士の距離が前記隙間よりも大きくなる移動用隙間を有する
請求項1に記載の加速空洞。
【請求項7】
前記筐体の外部で発生する駆動力を前記スイッチ部材に伝達する伝達機構を更に備える
請求項1に記載の加速空洞。
【請求項8】
前記伝達機構は、前記平面に対して垂直な方向に延在する
請求項7に記載の加速空洞。
【請求項9】
前記伝達機構は、前記スイッチ部材が前記中心軸に直交する方向に沿った回動軸を中心として回動するように前記駆動力を伝達する
請求項7に記載の加速空洞。
【請求項10】
前記伝達機構は、前記スイッチ部材が前記中心軸に沿った方向にスライドするように前記駆動力を伝達する
請求項7に記載の加速空洞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、加速空洞に関する。
【背景技術】
【0002】
加速空洞は、高周波が入力されることで内部に加速電界を発生させ、電子等の荷電粒子を加速させる。このような加速空洞として、例えば中心軸の軸方向に並ぶ複数のセル部が設けられ、セル部同士が連通部により連通された構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平1-107499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような加速空洞においては、加速電界の大きさを切り替えることで、荷電粒子のエネルギーを切り替え可能とする構成が提案されている。このような加速空洞においては、複雑な機構を用いることなく荷電粒子のエネルギーを切り替え可能な構成が求められている。
【0005】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであり、複雑な機構を用いることなく荷電粒子のエネルギーを切り替え可能な加速空洞を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る加速空洞は、導電性を有する筒形状であり、中心軸に沿った平面で複数に分割された分割部材を前記平面に沿った分割面同士が隙間を空けて対向した状態で設けられる筐体と、前記筐体の内部に当該筐体の中心軸の軸線方向に並んだ状態で配置され、荷電粒子を通過可能な連通部により互いに連通された複数のセル部と、前記筐体の前記隙間に配置され、前記平面に沿って前記隙間を移動可能であり、移動により前記荷電粒子を加速させる電界の大きさを切り替えるスイッチ部材とを備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、複雑な機構を用いることなく荷電粒子のエネルギーを切り替え可能な加速空洞を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る加速空洞の一例を示す平面図である。
図2図2は、図1におけるA-A断面に沿った構成を示す図である。
図3図3は、図2におけるB-B断面に沿った構成を示す図である。
図4図4は、スイッチ部材を移動させる構成の例を示す図である。
図5図5は、スイッチ部材を移動させる構成の例を示す図である。
図6図6は、スイッチ部材を移動させる構成の例を示す図である。
図7図7は、スイッチ部材を移動させる構成の例を示す図である。
図8図8は、スイッチ部材を移動させる構成の例を示す図である。
図9図9は、スイッチ部材を移動させる構成の例を示す図である。
図10図10は、加速空洞の他の例を示す図である。
図11図11は、加速空洞の使用態様の一例を示す図である。
図12図12は、加速空洞の使用態様の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示に係る加速空洞の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0010】
図1は、本実施形態に係る加速空洞100の一例を示す平面図である。図2は、図1におけるA-A断面に沿った構成を示す図である。なお、図2では、断面ではないが分割面12にハッチングを付した状態で示している。図3は、図2におけるB-B断面に沿った構成を示す図である。
【0011】
図1から図3に示す加速空洞100は、高周波入力部WIから高周波が入力されることで内部に加速電界を発生させ、線源BSから出射される電子等の荷電粒子Mを加速させる。加速空洞100及び線源BSを用いて、加速器ACが構成される。加速器ACは、例えば高エネルギー物理学実験や放射光施設などの学術分野、放射線治療又は検査などの医療分野、非破壊検査などの工業分野等の各種分野において用いられる。なお、以下の説明において、加速空洞100における方向のうち中心軸AXの軸線方向を説明する場合、線源BS側(荷電粒子Mが入射する側)を入射側又は後方と表記し、入射側の反対側(荷電粒子が出射する側)を出射側又は前方と表記する。また、加速空洞100を施設等に配置した状態において、鉛直方向を上下方向と表記し、中心軸AXの後方から前方を見た場合に上下方向に直交する方向を左右方向と表記する。
【0012】
図1から図3に示すように、本実施形態に係る加速空洞100は、筐体10と、セル部20と、結合空洞30と、真空マニホールド40と、スイッチ部材50とを備える。
【0013】
筐体10は、導電性を有する筒形状である。筐体10は、複数の分割部材11を接合した状態で形成される。分割部材11は、中心軸AXに沿った平面状の分割面12を有する。各分割部材11は、分割面12同士が対向した状態で接合される。各分割部材11は、対向する分割面12同士の間に隙間13を空けた状態で設けられる。本実施形態では、筐体10が水平面に直交しかつ中心軸AXを通る平面に沿って当該中心軸AXの左右方向に分割された構成を例に挙げて説明する。筐体10の分割数は、2つに限定されず、3つ以上であってもよい。分割部材11は、全体的に互いに対向する部分が丸みを帯びた形状を有している。このため、電圧が局所的に印加されることが抑制される。
【0014】
セル部20は、筐体10の内部に形成される。セル部20は、筐体10の中心軸AXの軸線方向に並んだ状態で配置される。セル部20は、荷電粒子を通過させる連通部22により互いに連通される。連通部22は、中心軸AXに沿って形成される。セル部20は、高周波により荷電粒子を加速させる。
【0015】
結合空洞30は、隣り合うセル部20同士の間を接続する。結合空洞30は、隣り合うセル部20の間で高周波を伝搬させる。結合空洞30は、荷電粒子の加速に寄与しない箇所に配置される。結合空洞30は、セル部20に対して中心軸AXに直交する方向のうち同一方向の外側に配置される。本実施形態において、全ての結合空洞30は、中心軸AXを基準としてセル部20に対して上方に配置される。結合空洞30は、セル部20に接続される第1空間部31と、第1空間部31に対して中心軸AXに対して径方向の外側に離れた位置に配置される第2空間部32と、第1空間部31と第2空間部32とを径方向に接続する接続部33とを有する。第1空間部31、第2空間部32及び接続部33は、例えば上下方向に沿って延びる軸を中心とした円柱状である。第1空間部31、第2空間部32及び接続部33は、四角柱状等であってもよい。接続部33は、第1空間部31及び第2空間部32に比べて、上下方向を中心とした径が小さくなっている。
【0016】
真空マニホールド40は、複数のセル部20を真空排気する際の負圧を形成する部分である。真空マニホールド40は、配管43を介して真空ポンプ等の真空形成部42に接続される。本実施形態において、真空マニホールド40は、例えば筐体10の内部に設けられる。真空マニホールド40は、1つの空間として形成され、各結合空洞30の上方に配置される。真空マニホールド40は、分割部材11同士の隙間13を介して複数のセル部20に接続される。各セル部20は、1つの真空マニホールド40に接続される。また、本実施形態において、真空マニホールド40は、連通部45を介して結合空洞30に連通される。したがって、真空マニホールド40は、各結合空洞30の第2空間部32に接続され、当該第2空間部32から結合空洞30を介して複数のセル部20に接続される。この構成により、真空マニホールド40と複数のセル部20との間が確実に接続される。
【0017】
図2に示すように、筐体10において、各分割部材11の分割面12には、セル部20及び連通部22の一部を構成する単位セル部21及び単位連通部23と、結合空洞30の一部を構成する単位結合空洞35と、真空マニホールド40の一部を構成する単位マニホールド41とが形成される。
【0018】
セル部20は、分割部材11のそれぞれに設けられる単位セル部21同士を組み合わせることで構成される。連通部22は、分割部材11のそれぞれに設けられる単位連通部24同士を組み合わせることで構成される。結合空洞30は、分割部材11のそれぞれに設けられる単位結合空洞35同士を組み合わせることで構成される。真空マニホールド40は、各分割部材11に形成される単位マニホールド41同士が組み合わされることで構成される。
【0019】
スイッチ部材50は、筐体10の隙間13に配置される。スイッチ部材50は、中心軸AXを通る平面に沿って隙間13を移動可能である。本実施形態において、スイッチ部材50は、中心軸AXを通り左右方向に直交する平面に沿って隙間13を移動可能である。スイッチ部材50は、移動により荷電粒子を加速させる電界の大きさを切り替える。スイッチ部材50により電界の大きさを切り替えることで、荷電粒子のエネルギーの大きさを切り替えることができる。
【0020】
スイッチ部材50は、例えば金属等の導体を用いて形成される。スイッチ部材50は、例えば隙間13の寸法よりも厚さが薄い板状である。スイッチ部材50は、結合空洞30に出没するように配置される。スイッチ部材50は、結合空洞30の内部に入り込んだ状態で配置される場合に、当該結合空洞30の電磁場を遮断することが可能となる。スイッチ部材50は、結合空洞30から退避した退避位置P1と、結合空洞30の内部に入り込んだ遮断位置P2との間を移動可能である。本実施形態において、遮断位置P2は、結合空洞30の接続部33に入り込んだ位置に設定することができる。
【0021】
スイッチ部材50は、伝達機構51に連結される。伝達機構51は、筐体10の外部に接続される。伝達機構51は、筐体10の外部で発生する駆動力をスイッチ部材50に伝達する。スイッチ部材50に伝達させるための駆動力は、例えば作業者が手動で発生させてもよいし、モータ等の駆動源により発生させてもよい。
【0022】
図4から図9は、スイッチ部材50を移動させる構成の例を示す図である。図4図6及び図8は平面図である。図5図7及び図9図1のA-A断面に沿った構成を示す図である。
【0023】
図4及び図5に示す例では、中心軸AXに直交する回動軸BXを中心として、スイッチ部材50を回動させる構成である。回動軸BXは、左右方向に沿った方向に設定される。この例において、伝達機構51Aは、棒状に形成され、スイッチ部材50から回動軸BXに沿って筐体10を貫通して当該筐体10の外部に延びている。このように、伝達機構51Aは、中心軸AXに沿った平面に対して垂直な方向に延在する。なお、伝達機構51Aが筐体10を貫通する部分において、筐体10の内部の真空状態を維持するように、シール機構を有するベアリング等が設けられてもよい。また、スイッチ部材50を磁気カップリング等により非接触で筐体10の外部から回転させる構成であってもよい。筐体10の外部には、伝達機構51Aを回動させる回動部52Aが設けられる。回動部52Aは、例えばモータ装置である。なお、回動部52Aとして、作業者が手動で伝達機構51Aを回動させる構成であってもよい。
【0024】
回動部52Aにより伝達機構51Aを回動させることにより、スイッチ部材50が回動軸BXを中心として回動する。スイッチ部材50は、結合空洞30から退避した退避位置P1Aと、結合空洞30に入り込んだ遮断位置P2Bとの間を、中心軸AXを含む平面に沿って回動する。スイッチ部材50の回動範囲については、エンコーダ等を設けて回動部52Aによる回動量を調節してもよいし、ストッパ等の物理的な機構により調整してもよい。
【0025】
図6及び図7に示す例では、スイッチ部材50を中心軸AXに沿ってスライドさせる構成である。この例において、伝達機構51Bは、回動部材53Bと、棒状部材54Bと、支持部材55Bとを有する。回動部材53Bは、基端部から2方向(ここでは、例えば左右方向、前後方向)に延び出したL字状に形成される。回動部材53Bは、基端部を通り上下方向に沿った回動軸CXを中心として回動する。回動部材53Bは、例えば左右方向に延び出した部分の先端がスイッチ部材50に連結される。回動部材53Bは、例えば前後方向に延び出した部分の先端が棒状部材54Bに連結される。棒状部材54Bは、左右方向に沿って筐体10の外部に延びている。このように、伝達機構51Bは、中心軸AXに沿った平面に対して垂直な方向に延在する。
【0026】
筐体10の外部には、棒状部材54Bを左右方向に移動させる駆動部52Bが設けられる。駆動部52Bは、例えばベローズ機構である。ベローズを伸縮させることにより、棒状部材54Bを左右方向に移動させることができる。なお、駆動部52Bとしては、ベローズ機構に代えて、ボールねじ機構、エアシリンダ機構等の他の駆動機構が用いられてもよい。
【0027】
駆動部52Bにおいてベローズを伸ばすことで、棒状部材54Bが右方に移動する。棒状部材54Bが右方に移動すると、回動部材53Bが上方から見て回動軸CXを中心として時計回りに回動する。この場合、基端部から左右方向に延び出した部分の先端が前方に移動する。このため、スイッチ部材50が前方に移動する。
【0028】
駆動部52Bにおいてベローズを縮ませることで、棒状部材54Bが左方に移動する。棒状部材54Bが左方に移動すると、回動部材53Bが上方から見て回動軸CXを中心として反時計回りに回動する。この場合、基端部から左右方向に延び出した部分の先端が後方に移動する。このため、スイッチ部材50が後方に移動する。
【0029】
このように、伝達機構51B及び駆動部52Bにより、スイッチ部材50を前後方向にスライド移動させることができる。図6及び図7に示す例では、スイッチ部材50が前方に移動した位置を退避位置P1Bとし、スイッチ部材50が後方に移動した位置を遮断位置P2Bとしている。なお、スイッチ部材50が前方に移動した位置を遮断位置P2Bとし、スイッチ部材50が後方に移動した位置を退避位置P1Bとしてもよい。
【0030】
図8及び図9に示す例では、スイッチ部材50を中心軸AXに沿ってスライドさせる構成である。この例において、伝達機構51Cは、線状部材53Cと、案内部材54Cとを有する。線状部材53Cは、一端(スイッチ側端部)がスイッチ部材50に連結される。線状部材53Cは、例えばワイヤ等のように長手方向に剛性を有し、かつ長手方向に直交する方向には変形可能な部材を用いることができる。線状部材53Cは、例えばスイッチ部材50から前方に引き出され、案内部材54Cにより左方に湾曲され、先端が筐体10の外部に延びた状態で配置される。案内部材54Cは、例えばチューブ等の管状部材を用いることができる。線状部材53Cは、案内部材54Cの内部に通された状態で設けられる。このように、伝達機構51Cは、中心軸AXに沿った平面に対して垂直な方向に延在する。
【0031】
筐体10の外部には、線状部材53Cを左右方向に移動させる駆動部52Cが設けられる。駆動部52Cは、線状部材53Cの他端(駆動側端部)に連結される。駆動部52Cは、上記した駆動部52Bと同様に、例えばベローズ機構である。ベローズを伸縮させることにより、線状部材53Cを左右方向に移動させることができる。なお、駆動部52Cとしては、ベローズ機構に代えて、ボールねじ機構、エアシリンダ機構等の他の駆動機構が用いられてもよい。
【0032】
駆動部52Cにおいてベローズを伸ばすことで、線状部材53Cの駆動側端部が右方に引っ張られる。線状部材53Cは、案内部材54Cにより湾曲されてスイッチ側端部が前後方向に沿って配置された状態である。したがって、線状部材53Cは、駆動側端部が右方に引っ張られることにより、スイッチ側端部が前方に移動する。これにより、スイッチ部材50が前方に移動する。
【0033】
駆動部52Cにおいてベローズを縮ませることで、線状部材53Cの駆動側端部が左方に押される。線状部材53Cは、案内部材54Cにより湾曲されてスイッチ側端部が前後方向に沿って配置された状態である。したがって、線状部材53Cは、駆動側端部が左方に押されることにより、スイッチ側端部が後方に移動する。これにより、スイッチ部材50が後方に移動する。
【0034】
このように、伝達機構51C及び駆動部52Cにより、スイッチ部材50を前後方向にスライド移動させることができる。図8及び図9に示す例では、図6及び図7に示す例と同様、スイッチ部材50が前方に移動した位置を退避位置P1Cとし、スイッチ部材50が後方に移動した位置を遮断位置P2Cとしている。なお、スイッチ部材50が前方に移動した位置を遮断位置P2Cとし、スイッチ部材50が後方に移動した位置を退避位置P1Cとしてもよい。
【0035】
図10は、加速空洞100の他の例を示す図である。図10に示すように、隙間13においてスイッチ部材50が配置される部分には、当該スイッチ部材50の可動範囲の少なくとも一部に移動用隙間14が設けられてもよい。移動用隙間14は、分割面12同士の距離が隙間13よりも大きくなっている部分である。移動用隙間14が設けられることにより、スイッチ部材50が筐体10の分割面12に干渉することを抑制できる。
【0036】
図11及び図12は、加速空洞100の使用態様の一例を示す図である。図11に示すように、スイッチ部材50を退避位置P1に配置させた場合、高周波入力部WIから入力される高周波は、全てのセル部20に伝搬される。このため、線源BSから出射されて加速空洞100の内部に入射した荷電粒子Mは、通過する全てのセル部20で加速されて出射される。
【0037】
これに対して、図12に示すように、スイッチ部材50を遮断位置P2に配置させた場合、高周波入力部WIから入力される高周波は、遮断位置P2において遮断される。加速空洞100において、遮断位置P2から先のセル部20については、高周波が伝搬されない。したがって、線源BSから出射されて加速空洞100の内部に入射した荷電粒子Mは、通過するセル部20のうち高周波が伝搬されたセル部20において加速され、高周波が伝搬されないセル部20においては加速されずに出射される。この場合、荷電粒子Mのエネルギーは、スイッチ部材50が退避位置P1に配置された場合に比べて小さくなる。このように、荷電粒子Mのエネルギーを切り替えることで、加速空洞100を検査装置、治療装置等に幅広く用いることができる。
【0038】
以上のように、本開示の第1態様に従えば、導電性を有する筒形状であり、中心軸AXに沿った平面で複数に分割された分割部材11を平面に沿った分割面12同士が隙間13を空けて対向した状態で設けられる筐体10と、筐体10の内部に当該筐体10の中心軸AXの軸線方向に並んだ状態で配置され、荷電粒子を通過可能な連通部22により互いに連通された複数のセル部20と、筐体10の隙間13に配置され、中心軸AXを通る平面に沿って隙間13を移動可能であり、移動により荷電粒子を加速させる電界の大きさを切り替えるスイッチ部材50とを備える加速空洞が提供される。
【0039】
この構成によれば、複数に分割された分割部材11の分割面12同士が隙間13を空けて対向した状態で筐体10が設けられる構成において、隙間13を利用してスイッチ部材50を移動させることで、複雑な機構を用いることなく荷電粒子Mのエネルギーを容易に切り替えることが可能となる。
【0040】
本開示の第2態様に係る加速空洞では、第1態様において、筐体10の内部に設けられ、隣り合うセル部20同士の間を接続する結合空洞30を更に備え、スイッチ部材50は、結合空洞30に出没するように配置される。
【0041】
この構成によれば、スイッチ部材50が結合空洞に出没するように配置されるため、高周波の伝搬及び遮断を効率的に切り替えることができる。
【0042】
本開示の第3態様に係る加速空洞では、第2態様において、全ての結合空洞30は、セル部20に対して中心軸AXに直交する方向について同じ側に配置される。
【0043】
この構成によれば、結合空洞30をセル部20に対して中心軸AXに直交する方向の同じ側に寄せることにより、中心軸AXに直交する方向の電場分布の中心を中心軸AXに合わせることができる。このため、荷電粒子のビームの偏りを抑制することができる。
【0044】
本開示の第4態様に係る加速空洞では、第2態様において、結合空洞30は、セル部20に接続される第1空間部31と、第1空間部31に対して中心軸AXに対して径方向の外側に離れた位置に配置される第2空間部32と、第1空間部31と第2空間部32とを径方向に接続する接続部33とを有し、スイッチ部材50は、接続部33に出没するように配置される。
【0045】
この構成によれば、スイッチ部材50が結合空洞30の接続部33に出没するように配置されるため、高周波の伝搬及び遮断を効率的に切り替えることができる。
【0046】
本開示の第5態様に係る加速空洞では、第1態様において、結合空洞30は、第2空間部32が真空マニホールド40に接続される。
【0047】
この構成によれば、真空マニホールド40が結合空洞30を介してセル部20に接続されるため、真空マニホールド40によりセル部20をより確実に真空排気することができる。
【0048】
本開示の第6態様に係る加速空洞では、第1態様から第5態様のいずれかにおいて、筐体10は、スイッチ部材50の可動範囲の少なくとも一部に、分割面12同士の距離が隙間13よりも大きくなる移動用隙間14を有する。
【0049】
この構成によれば、移動用隙間14が設けられることにより、スイッチ部材50が筐体10の分割面12に干渉することを抑制できる。
【0050】
本開示の第7態様に係る加速空洞では、第1態様から第6態様のいずれかにおいて、筐体10の外部で発生する駆動力をスイッチ部材50に伝達する伝達機構51を更に備える。
【0051】
この構成によれば、伝達機構51が設けられることにより、筐体10の外部からスイッチ部材50を移動させることができる。
【0052】
本開示の第8態様に係る加速空洞では、第7態様において、伝達機構51は、平面に対して垂直な方向に延在する。
【0053】
この構成によれば、伝達機構51が平面に対して垂直な方向に延在するため、例えばスイッチ部材50を回動させる場合、スライドさせる場合のいずれの場合においても駆動力を適切に伝達することができる。
【0054】
本開示の第9態様に係る加速空洞では、第1態様から第7態様のいずれかにおいて、伝達機構51は、スイッチ部材50が中心軸AXに直交する方向に沿った回動軸BXを中心として回動するように駆動力を伝達する。
【0055】
この構成によれば、伝達機構51により、中心軸AXに直交する方向に沿った回動軸BXを中心として回動するようにスイッチ部材50を移動させることができる。
【0056】
本開示の第10態様に係る加速空洞では、第1態様から第7態様のいずれかにおいて、伝達機構51は、スイッチ部材50が中心軸AXに沿った方向にスライドするように駆動力を伝達する。
【0057】
この構成によれば、伝達機構51により、中心軸AXに直交する方向に沿った方向にスライドするようにスイッチ部材50を移動させることができる。
【0058】
上記した実施形態では、スイッチ部材50が1つ設けられた構成を例に挙げて説明したが、この構成に限定されない。スイッチ部材50は、複数設けられてもよい。この場合、複数のスイッチ部材50が個別に移動可能であり、異なる結合空洞30に出没するように設けることができる。
【符号の説明】
【0059】
10 筐体
11 分割部材
12 分割面
13 隙間
14 移動用隙間
20 セル部
21 単位セル部
22,45 連通部
23,24 単位連通部
30 結合空洞
31 第1空間部
32 第2空間部
33 接続部
35 単位結合空洞
40 真空マニホールド
41 単位マニホールド
42 真空形成部
43 配管
50 スイッチ部材
51,51A,51B,51C 伝達機構
52A 回動部
52B,52C 駆動部
53B 回動部材
53C 線状部材
54B 棒状部材
54C 案内部材
55B 支持部材
100 加速空洞
AC 加速器
AX 中心軸
BS 線源
BX,CX 回動軸
M 荷電粒子
P1,P1A,P1B,P1C 退避位置
P2,P2A,P2B,P2C 遮断位置
WI 高周波入力部
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