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特開2025-4130面発光レーザ素子及び面発光レーザ素子の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025004130
(43)【公開日】2025-01-14
(54)【発明の名称】面発光レーザ素子及び面発光レーザ素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/11 20210101AFI20250106BHJP
   H01S 5/18 20210101ALI20250106BHJP
   H01S 5/343 20060101ALI20250106BHJP
【FI】
H01S5/11
H01S5/18
H01S5/343 610
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024174933
(22)【出願日】2024-10-04
(62)【分割の表示】P 2022508138の分割
【原出願日】2021-02-10
(31)【優先権主張番号】P 2020045573
(32)【優先日】2020-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(71)【出願人】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159628
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 雅比呂
(74)【代理人】
【識別番号】100147728
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 信司
(72)【発明者】
【氏名】野田 進
(72)【発明者】
【氏名】井上 卓也
(72)【発明者】
【氏名】小泉 朋朗
(72)【発明者】
【氏名】江本 渓
(57)【要約】      (修正有)
【課題】多重格子フォトニック結晶層上に形成された活性層の平坦性及び結晶性が高く、かつ光取り出し効率が高く、低閾値電流密度及び高量子効率で発振動作することができるフォトニック結晶面発光レーザ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】3族窒化物半導体のc面上に形成され、層に平行な面内において2次元的な周期性を有して配された空孔を有するフォトニック結晶層及び当該フォトニック結晶層上に形成されて上記空孔を閉塞する埋込層を有する第1のガイド層と、第1のガイド層上に形成された活性層と、活性層上に形成された第2のガイド層と、を有し、上記フォトニック結晶層に平行な面内における正方格子点の各々に、少なくとも主空孔及び主空孔よりもサイズの小なる副空孔を含む空孔セットが配置され、主空孔は長軸が<11-20>軸に平行な正六角柱形状、長六角柱形状又は長円柱形状を有している。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3族窒化物半導体からなる面発光レーザ素子であって、
3族窒化物半導体のc面上に形成され、層に平行な面内において2次元的な周期性を有して配された空孔を有するフォトニック結晶層と、前記フォトニック結晶層上に形成されて前記空孔を閉塞する埋込層と、を有する第1のガイド層と、
前記第1のガイド層上に形成された活性層と、
前記活性層上に形成された第2のガイド層と、を有し、
前記フォトニック結晶層に平行な面内における正方格子点の各々に、少なくとも主空孔及び前記主空孔よりも空孔径及び深さの小なる副空孔を含む空孔セットが配置され、
前記主空孔は短軸が<11-20>軸に平行な長六角柱形状又は長円柱形状を有する、面発光レーザ素子。
【請求項2】
前記主空孔の長径/短径の比は、前記副空孔の長径/短径の比の2倍以上である請求項1に記載の面発光レーザ素子。
【請求項3】
前記フォトニック結晶層中の前記主空孔及び前記副空孔の空孔充填率をそれぞれFF1及びFF2としたとき、空孔充填率比RF=FF1/FF2は、1.7≦RF≦7.5を満たす請求項1又は2に記載の面発光レーザ素子。
【請求項4】
前記副空孔の<11-20>軸方向の空孔長さは、<11-20>軸と直交する方向における空孔長さよりも長い請求項1ないし3のいずれか一項に記載の面発光レーザ素子。
【請求項5】
前記空孔セットは、互いに直交し、<11-20>軸及び<1-100>軸に対して45°の角度を有するx方向及びy方向に配置され、
前記副空孔の前記主空孔に対する相対位置Δx及びΔyがΔx=Δyを満たし、かつ、当該正方格子の周期をPCとし、Δx=Δy=d×PCとしたとき、0.06≦d≦0.28又は0.40≦d≦0.47を満たす、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の面発光レーザ素子。
【請求項6】
面発光レーザ素子の製造方法であって、
成長基板上にガイド層を形成する工程と、
前記ガイド層上に、正方格子点の各々に少なくとも主開口及び前記主開口よりもサイズの小なる副開口を含む開口セットを有するエッチングマスクを形成する工程と、
前記エッチングマスクを用いて、前記ガイド層をエッチングして主ホール及び副ホールを形成する工程と、
マストランスポートを含む結晶成長を行って、前記主ホール及び副ホールの開口部を塞ぐ埋込層を形成し、前記正方格子点の各々に主空孔及び前記主空孔よりも空孔径及び深さの小なる副空孔を含む空孔セットが配された多重格子フォトニック結晶層を形成する工程と、
前記多重格子フォトニック結晶層上に、活性層を含む半導体層を形成する工程と、を有し、
前記埋込層を構成する半導体は、前記マストランスポートの埋込による形状変化速度に結晶面による異方性を有し、
前記主ホールの前記エッチングは、前記形状変化速度が小さい方向を短軸方向とする、長六角柱形状又は長円柱形状にエッチングする、面発光レーザ素子の製造方法。
【請求項7】
面発光レーザ素子の製造方法であって、
成長基板上にガイド層を形成する工程と、
前記ガイド層上に、正方格子点の各々に少なくとも主開口及び前記主開口よりもサイズの小なる副開口を含む開口セットを有するエッチングマスクを形成する工程と、
前記エッチングマスクを用いて、前記ガイド層をエッチングして主ホール及び副ホールを形成する工程と、
マストランスポートを含む結晶成長を行って、前記主ホール及び副ホールの開口部を塞ぐ埋込層を形成し、前記正方格子点の各々に主空孔及び前記主空孔よりも空孔径及び深さの小なる副空孔を含む空孔セットが配された多重格子フォトニック結晶層を形成する工程と、
前記多重格子フォトニック結晶層上に、活性層を含む半導体層を形成する工程と、を有し、
前記主ホールから形成された前記主空孔の側面は{1-100}面を有する、面発光レーザ素子の製造方法。
【請求項8】
前記副空孔は、長軸が<11-20>軸に平行な正六角柱形状、長六角柱形状又は長円柱形状を有する、請求項6又は7に記載の面発光レーザ素子の製造方法。
【請求項9】
3族窒化物半導体からなる面発光レーザ素子であって、
3族窒化物半導体である基板のc面上に形成され、層に平行な面内において2次元的な周期性を有して空孔形成領域内に配された空孔を有するフォトニック結晶層と、前記フォトニック結晶層上に形成されて前記空孔を閉塞する埋込層と、を有する第1のガイド層と、
前記第1のガイド層上に形成された活性層と、
前記活性層上に形成された第2のガイド層と、を有し、
前記フォトニック結晶層に平行な面内における正方格子点の各々に、少なくとも主空孔及び前記主空孔よりも空孔径及び深さの小なる副空孔を含む空孔セットが配置され、
前記空孔形成領域は前記フォトニック結晶層の一部領域であり、
前記主空孔は長軸が<11-20>軸に平行な正六角柱形状、長六角柱形状又は長円柱形状を有する、面発光レーザ素子。
【請求項10】
前記基板の裏面に設けられ前記基板に電気的に接続された環状の第1の電極を有し、
前記空孔形成領域は、前記フォトニック結晶層に対して垂直方向から見たとき、前記第1の電極に内包される領域である、
請求項9に記載の面発光レーザ素子。
【請求項11】
前記空孔形成領域は矩形形状を有する請求項9又は10に記載の面発光レーザ素子。
【請求項12】
前記第2のガイド層上に設けられ、前記第2のガイド層に電気的に接続された第2の電極を有し、
前記第2の電極は、前記空孔形成領域に内包される領域に形成されている、
請求項9ないし11のいずれか一項に記載の面発光レーザ素子。
【請求項13】
前記第1のガイド層はn型半導体層を含み、前記第2のガイド層上に形成されたp型半導体層を含む請求項9ないし12のいずれか一項に記載の面発光レーザ素子。
【請求項14】
前記空孔セットは、前記主空孔、前記副空孔及び少なくとも1の空孔を含む請求項9ないし13のいずれか一項に記載の面発光レーザ素子。
【請求項15】
前記フォトニック結晶層はGaNからなり、前記埋込層は組成にIn(インジウム)を含む層を含む請求項9ないし14のいずれか一項に記載の面発光レーザ素子。
【請求項16】
前記副空孔は、長軸が<11-20>軸に平行な正六角柱形状、長六角柱形状又は長円柱形状を有する、請求項9ないし15のいずれか一項に記載の面発光レーザ素子。
【請求項17】
前記主空孔及び前記副空孔は、長軸が<11-20>軸に平行な正六角柱形状を有する、請求項9ないし16のいずれか一項に記載の面発光レーザ素子。
【請求項18】
前記空孔セットは、互いに直交し、<11-20>軸及び<1-100>軸に対して45°の角度を有するx方向及びy方向に配置され、
前記副空孔の前記主空孔に対する相対位置Δx及びΔyがΔx=Δyを満たし、かつ、前記正方格子点の周期をPCとし、Δx=Δy=d×PCとしたとき、0.06≦d≦0.28又は0.40≦d≦0.47を満たす、請求項9ないし17のいずれか一項に記載の面発光レーザ素子。
【請求項19】
前記主空孔及び前記副空孔は、側面がm面である六角柱形状を有する、請求項9ないし18のいずれか一項に記載の面発光レーザ素子。
【請求項20】
前記フォトニック結晶層中の前記主空孔及び前記副空孔の空孔充填率をそれぞれFF1及びFF2としたとき、空孔充填率比RF=FF1/FF2は、1.7≦RF≦7.5を満たす、請求項9ないし19のいずれか一項に記載の面発光レーザ素子。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面発光レーザ素子及びその製造方法、特にフォトニック結晶面発光レーザ素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フォトニック結晶(PC:Photonic-Crystal)を用いた、フォトニック結晶面発光レーザ(Photonic-Crystal Surface-Emitting Laser)の開発が進められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、板状の母材内に、該母材とは屈折率が異なる複数の領域から成り該領域のうち少なくとも2個の厚さが互いに異なる異屈折率領域集合体を多数、周期的に配置した2次元フォトニック結晶を有する2次元フォトニック結晶面発光レーザ光源が記載されている。かかる構成により、円柱状の異屈折率領域を周期的に配置した2次元フォトニック結晶よりも母材に平行な面内での対称性を低くし、干渉に起因した反対称モードの打ち消しによるレーザ光の取り出し効率の低下を抑えることができることが開示されている。
【0004】
このような空孔が結晶面内に多数、周期的に配置された2次元フォトニック結晶上に、当該フォトニック結晶を埋め込む埋込層を成長した場合、埋込層の表面が粗面になり、埋込層上に成長する活性層の品質が悪化するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4294023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したように、フォトニック結晶面発光レーザにおいて、2次元フォトニック結晶層を埋め込む埋込層の表面が荒れ、埋込層上に形成する活性層の品質が悪化するという問題があった。
【0007】
また、本願の発明者は、異なるサイズの空孔の組を周期的に配置した2次元フォトニック結晶を埋込層で埋め込んだ場合、単一サイズの空孔からなる2次元フォトニック結晶の場合よりも埋込層の表面が荒れるという知見を得た。
【0008】
特に、埋込層の形成工程において、マストランスポートによって空孔の形状が変化し、当該空孔の形状変化に起因して、隣接する空孔の形状変化が互いに干渉して埋込層表面に凹凸が発生するという知見を得た。
【0009】
本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、異なるサイズの複数の空孔を格子点に配置して構成され、当該複数の空孔の組が周期的に配置された2次元フォトニック結晶(以下、多重格子フォトニック結晶ともいう。)を有し、多重格子フォトニック結晶を埋め込む埋込層の表面の平坦性が大きく改善されたフォトニック結晶面発光レーザ及びその製造方法を提供することを目的としている。
【0010】
また、多重格子フォトニック結晶層上に形成された活性層の平坦性及び結晶性が高く、かつ光取り出し効率が高く、低閾値電流密度及び高量子効率で発振動作することができるフォトニック結晶面発光レーザ及びその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の1実施態様による面発光レーザ素子は、3族窒化物半導体からなる面発光レーザ素子であって、
3族窒化物半導体のc面上に形成され、層に平行な面内において2次元的な周期性を有して配された空孔を有するフォトニック結晶層と、前記フォトニック結晶層上に形成されて前記空孔を閉塞する埋込層と、を有する第1のガイド層と、
前記第1のガイド層上に形成された活性層と、
前記活性層上に形成された第2のガイド層と、を有し、
前記フォトニック結晶層に平行な面内における正方格子点の各々に、少なくとも主空孔及び前記主空孔よりもサイズの小なる副空孔を含む空孔セットが配置され、
前記主空孔は長軸が<11-20>軸に平行な正六角柱形状、長六角柱形状又は長円柱形状を有している。
【0012】
本発明の他の実施態様による面発光レーザ素子の製造方法は、3族窒化物半導体のc面上にガイド層を形成する工程と、
前記ガイド層上に、正方格子点の各々に少なくとも主開口及び前記主開口よりもサイズの小なる副開口を含む開口セットを有するエッチングマスクを形成するステップと、
前記エッチングマスクを用いて、前記ガイド層をエッチングして主ホール及び副ホールを形成する工程と、
マストランスポートを含む結晶成長を行って、前記主ホール及び副ホールの開口部を塞ぐ埋込層を形成し、前記正方格子点の各々に主空孔及び前記主空孔よりもサイズの小なる副空孔を含む空孔セットが配された多重格子フォトニック結晶層を形成する工程と、
前記多重格子フォトニック結晶層上に、活性層を含む半導体層を形成する工程と、を有し、
前記主空孔は長軸が<11-20>軸に平行な正六角柱形状、長六角柱形状又は長円柱形状を有する、ことを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1A】フォトニック結晶レーザ(PCSEL)10の構造の一例を模式的に示す断面図である。
図1B図1Aのフォトニック結晶層14P及びフォトニック結晶層14P中に配列された空孔(air hole)対14Kを模式的に示す拡大断面図である。
図2A】フォトニック結晶レーザ10の上面を模式的に示す平面図である。
図2B】フォトニック結晶層14Pのn-ガイド層14に平行な面(図1B、A-A断面)における断面を模式的に示す断面図である。
図2C】フォトニック結晶レーザ10の底面を模式的に示す平面図である。
図3】長円形状の主開口K1及び副開口K2からなる開口対を正方格子状に面内で2次元配列したレジストを模式的に示す上面図である。
図4】ホール14H1,14H2を形成したGaN表面のSEM像である。
図5】本実施例における主空孔14K1及び副空孔14K2の空孔形状を示すガイド層上面のSEM像である。
図6A図5の線A-Aにおける断面を示すSEM像である。
図6B図5の線B-Bにおける断面を示すSEM像である。
図7】比較例1における、GaN表面部に形成された円柱状のホールCHを示すSEM像である。
図8A】実施例1のPCSEL素子10と比較例1のPCSEL素子のI-L特性を示す図である。
図8B】実施例1のPCSEL素子10と比較例1のPCSEL素子の閾値電流付近における発光スペクトルを示す図である。
図9A】実施例1と同様に主ホール及び副ホールが形成された構造(構造A)の主ホール14H1及び副ホール14H2を示す上面SEM像である。
図9B】比較例2(構造B)の主ホールCH1及び副ホールCH2を示す上面SEM像である。
図10A】構造A(実施例2)の場合の、主空孔及び副空孔を埋め込み後の埋込層の表面モフォロジを示すAFM像である。
図10B】構造B(比較例2)の場合の、主空孔及び副空孔を埋め込み後の埋込層の表面モフォロジを示すAFM像である。
図11A】構造A(実施例2)の場合の、埋込層の形成過程において、ホールの形状変化を模式的に示す上面図である。
図11B】構造B(比較例2)の場合の、埋込層の形成過程において、ホールの形状変化を模式的に示す上面図である。
図12A】実施例1の構造において、主空孔14K1に対する副空孔14K2の相対位置Δx,Δy(Δx=Δy)を0.0PCから0.5PCまで変化させたときの垂直方向の共振器損失αを示すグラフである。
図12B】実施例1の構造において、主空孔14K1に対する副空孔14K2の相対位置Δx,Δy(Δx=Δy)を0.0PCから0.5PCまで変化させたときの水平方向の共振器損失αを示すグラフである。
図12C】全共振器損失(α+α)に対する垂直方向の共振器損失αの割合であるRを示すグラフである。
図13】正方格子フォトニック結晶のΓ点付近のフォトニックバンド構造を示す図である。
図14】実施例1において、Δx、Δyを変化させたときの結合波理論から求めた各モードの閾値利得(共振器損失)を示すグラフである。
図15】電流注入領域の屈折率、キャリア密度、光子密度を模式的に示す図である。
図16A】バンド端モードA及びBの場合の電流注入領域近傍におけるフォトニックバンド端の周波数を模式的に示す図である。
図16B】バンド端モードC及びDの場合の電流注入領域近傍におけるフォトニックバンド端の周波数を模式的に示す図である。
図17A】バンド端モードA及びBで発振動作させたときの、電流注入領域の屈折率、キャリア密度、光子密度を模式的に示す図である。フォトニックバンド効果を考慮した場合及び考慮しない場合をそれぞれ実線及び破線で示している。
図17B】バンド端モードC及びDで発振動作させたときの、電流注入領域の屈折率、キャリア密度、光子密度を模式的に示している。フォトニックバンド効果を考慮した場合及び考慮しない場合をそれぞれ実線及び破線で示している。
図18】ホール14H1,14H2を形成したGaN表面のSEM像である。
図19A】実施例3における主空孔14K1及び副空孔14K2の空孔形状を示すガイド層上面のSEM像である。
図19B図19Aの線A-Aに沿った断面を示すSEM像である。
図19C図19Aの線B-Bに沿った断面を示すSEM像である。
図20A】実施例3のPCSEL素子10と比較例1のPCSEL素子のI-L特性を示す図である。
図20B】実施例3のPCSEL素子10と比較例1のPCSEL素子の閾値電流付近における発光スペクトルを示す図である。
図21A】d(副空孔の主空孔に対する相対位置)に対する垂直方向の共振器損失αを示す図である。
図21B】相対位置dに対する水平方向の共振器損失αを示す図である。
図21C】相対位置dに対するRの依存性を示す図である。
図21D】実施例3において、Δx、Δy(相対位置d)を変化させたときの結合波理論から求めた各モードの閾値利得(共振器損失)を示すグラフである。
図22A】空孔充填率比FF1/FF2に対するRを示す図である。
図22B】空孔充填率比FF1/FF2に対する垂直及び水平方向の共振器損失の和(α+α)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下においては、本発明の好適な実施形態について説明するが、これらを適宜改変し、組合せてもよい。また、以下の説明及び添付図面において、実質的に同一又は等価な部分には同一の参照符を付して説明する。
[フォトニック結晶面発光レーザの構造]
フォトニック結晶面発光レーザ(以下、PCSELとも称する。)は、発光素子を構成する半導体発光構造層(n-ガイド層、発光層、p-ガイド層)と平行方向に共振器層を有し、当該共振器層に直交する方向にコヒーレントな光を放射する素子である。
【0015】
一方、半導体発光構造層を挟む一対の共振器ミラー(ブラッグ反射鏡)を有する分布ブラッグ反射型(Distributed Bragg Reflector:DBR )レーザが知られているが、フォトニック結晶面発光レーザ(PCSEL)は、以下の点でDBRレーザとは異なっている。すなわち、フォトニック結晶面発光レーザ(PCSEL)では、フォトニック結晶層に平行な面内を伝搬する光波はフォトニック結晶の回折効果により回折され2次元的な共振モードを形成するとともに、当該平行面に垂直な方向にも回折される。すなわち、共振方向(PC層に平行な面内)に対して、光取り出し方向が垂直方向である。
【0016】
図1Aは、フォトニック結晶レーザ素子(PCSEL素子)10の構造(第1のPCSEL構造)の一例を模式的に示す断面図である。図1Aに示すように、半導体構造層11が基板12上に形成されている。また、半導体構造層11は、六方晶系の窒化物半導体からなる。半導体構造層11は、例えば、GaN系半導体からなる。
【0017】
より詳細には、基板12上に半導体構造層11、すなわちn-クラッド層(第1導電型の第1のクラッド層)13、n-ガイド層(第1のガイド層)14、活性層15、p-ガイド層(第2のガイド層)16、電子障壁層(EBL:Electron Blocking Layer)17、p-クラッド層(第2導電型の第2のクラッド層)18、p-コンタクト層19がこの順で形成されている。なお、第1導電型がn型、第1導電型の反対導電型である第2導電型がp型の場合について説明するが、第1導電型及び第2導電型がそれぞれp型、n型であってもよい。
【0018】
n-ガイド層14は、下ガイド層14A、フォトニック結晶層(空孔層、またはPC層)14P及び埋込層14Bからなる。なお、埋込層14Bは、第1の埋込層14B1及び第2の埋込層14B2からなる。
【0019】
なお、本明細書において、「n-」、「p-」は「n側」、「p側」を意味するものであって、必ずしもn型、p型を有することを意味するものではない。例えば、n-ガイド層は活性層よりもn側に設けられたガイド層を意味し、アンドープ層(又はi層)であってもよい。
【0020】
また、n-クラッド層13は単一層ではなく複数の層から構成されていてもよく、その場合、全ての層がn層(nドープ層)である必要はなく、アンドープ層(i層)を含んでいてもよい。ガイド層16、p-クラッド層18についても同様である。
【0021】
また、上記においては、フォトニック結晶レーザ素子10の具体的で詳細な半導体層の構成について説明したが、素子構造の一例を示したに過ぎない。要は、フォトニック結晶層14Pを有する第1の半導体層(又はガイド層)、第2の半導体層(又はガイド層)、及びこれらの層に挟まれた活性層(発光層)を有し、活性層への電流注入によって発光するように構成されていればよい。
【0022】
例えば、フォトニック結晶レーザ素子は、上記した全ての半導体層を有する必要はない。あるいは、フォトニック結晶レーザ素子は、素子特性を向上するための種々の半導体層(例えば、正孔障壁層、光閉込め層、電流閉込め層、トンネル接合層など)を有していてもよい。
【0023】
また、基板12の裏面にはn電極(カソード)20Aが形成され、p-コンタクト層19上(上面)にはp電極(アノード)20Bが形成されている。半導体構造層11の側面及び基板12の上部の側面は、SiO2などの絶縁膜21で被覆されている。また、p電極20Bの上面の縁部を覆うように、p電極20Bの側面及びpコンタクト層19の表面には絶縁膜21が被覆されている。
【0024】
フォトニック結晶層(PC層)14Pから直接放出された光(直接放出光Ld)と、フォトニック結晶層14Pから放出されp電極20Bによって反射された光(反射放出光Lr)とが基板12の裏面の光放出領域20Lから外部に放出される。
【0025】
図1Bは、図1Aのフォトニック結晶層14P及びフォトニック結晶層14P中に配列された空孔(air hole)対14Kを模式的に示す拡大断面図である。空孔対14K(主空孔14K1及び副空孔14K2)は、結晶成長面(半導体層成長面)、すなわちn-ガイド層14に平行な面(図中、A-A断面)において、例えば正方格子(square lattice)状に周期PCを有して、空孔対14Kがそれぞれ正方格子点位置に2次元配列されてn-ガイド層14内に埋め込まれて形成されている。
【0026】
図2Aは、フォトニック結晶レーザ(PCSEL)10の上面を模式的に示す平面図、図2Bは、フォトニック結晶層(PC層)14Pのn-ガイド層14に平行な面(図1B、A-A断面)における断面を模式的に示す断面図、図2Cは、フォトニック結晶レーザ(PCSEL)10の底面を模式的に示す平面図である。
【0027】
図2Bに示すように、フォトニック結晶層14Pにおいて空孔(air hole)対14Kは、例えば矩形の空孔形成領域14R内に周期的に配列されて設けられている。図2Cに示すように、n電極(カソード)20Aは、フォトニック結晶層14Pに対して垂直方向から見たときに空孔形成領域14Rに重ならないように空孔形成領域14Rの外側に環状の電極として設けられている。n電極20Aの内側の領域が光放出領域20Lである。また、n電極20Aに電気的に接続され、外部からの給電用のワイヤを接続するボンディングパッド20Cを備えている。
【実施例0028】
1.フォトニック結晶レーザ(PCSEL)10の作製工程
以下に、PCSEL素子10の作製工程について詳細に説明する。結晶成長方法としてMOVPE(Metalorganic Vapor Phase Epitaxy)法を用い、常圧(大気圧)成長により成長基板12上に半導体構造層11を成長した。なお、以下に説明する工程でSnはステップnを意味する。
【0029】
また、下記に示す層厚、キャリア濃度、3族(III族)及び5族(V族)原料等、温度等は、特に指定しない限り、例示に過ぎない。
[S1:基板準備工程]
主面が、Ga原子が最表面に配列した(0001)面である「+c」面のGaN単結晶を用意した。主面はジャストでも、例えば、m軸方向に1°程度までオフセットした基板でも良い。例えば、m軸方向に1°程度までオフセットした基板は、広範な成長条件下にて鏡面成長を得ることができる。
【0030】
主面と対向する光放出領域20Lが設けられた基板面(裏面)は、N原子が最表面に配列した(000-1)面である「-c」面である。-c面は酸化等に対して耐性があるので光取り出し面として適している。
【0031】
本実施例では、GaN基板12として、n型GaN単結晶を用いた。n型GaN基板12nは、電極とのコンタクト層の機能を有している。
[S2:n-クラッド層形成工程]
+c面GaN基板12上に、n-クラッド層13としてAl組成が4%のn型Al0.04Ga0.96N層を2μmの層厚で成長した。AlGaN層は1100℃に加熱されたGaN基板へ、3族原子の供給源としてトリメチルガリウム(TMG)及びトリメチルアルミニウム(TMA)を供給することにより成長した。
【0032】
キャリアのドーピングはシラン(SiH)を上記原料と同時に供給することで行った(Siドープ)。このときの、室温でのキャリア濃度は凡そ4×1017cm-3であった。
[S3a:下ガイド層+空孔準備層の形成工程]
続いて、TMGを供給し、n-ガイド層14の準備層としてn型GaNを250nmの層厚で成長した。キャリアのドーピングは、AlGaN層と同様にシラン(SiH)を同時に供給した。この時のキャリア濃度は凡そ4×1017cm-3であった。
【0033】
この成長層は、下ガイド層14A及びフォトニック結晶層14Pからなる層を形成するための準備層である。
【0034】
なお、以下においては、説明の簡便さ及び理解の容易さのため、このような成長層が形成された基板12(成長層付き基板)を、単に基板と称する場合がある。
[S3b:ホール及び空孔形成工程]
上記準備層を形成後、基板をMOVPE装置のチャンバより取り出し、成長層表面に微細なホールを形成した。より具体的には、基板洗浄により清浄表面を得た後、シリコン窒化膜(Si)をプラズマCVDを用いて成膜した。この上に電子線描画用レジストをスピンコートで塗布し、電子線(EB)描画装置に入れて2次元周期構造のパターニングを行った。
【0035】
図3に示すように、長円形状の主開口K1及び主開口K1よりも小なる副開口K2からなる開口対を周期PC=164nmで正方格子状にレジストの面内で2次元配列したパターニングを行った。なお、図面の明確さのため、開口部にハッチングを施して示している。
【0036】
より詳細には、主開口K1は、その重心CD1が互いに直交する2方向(x方向及びy方向)に周期PC=164nmで正方格子状に配列されている。副開口K2も同様に、その重心CD2がx方向及びy方向に周期PC=164nmで正方格子状に配列されている。
【0037】
主開口K1及び副開口K2の長軸は結晶方位の<11-20>方向に平行であり、主開口K1及び副開口K2の短軸は<1-100>方向に平行である。
【0038】
また、副開口K2の重心CD2は、主開口K1の重心CD1に対してΔx及びΔyだけ離間している。ここでは、Δx=Δyとした。すなわち、副開口K2の重心CD2は、主開口K1の重心CD1から<1-100>方向に離間している。具体的には、x方向の重心間距離Δx及びy方向の重心間距離Δyは65.6nm(=PC×0.4)であった。
【0039】
また、主開口K1は長径が125nm及び短径が50nm、短径に対する長径の比(長径/短径)=2.50で、副開口K2は長径が57.5nm及び短径が50nm、長径/短径=1.15であった。
【0040】
パターニングしたレジストを現像後、ICP-RIE(Inductive Coupled Plasma - Reactive Ion Etching)装置によってSi膜を選択的にドライエッチングした。これにより周期164nmで正方格子状に配列された主開口K1及び副開口K2がSi膜を貫通するように形成された。
【0041】
なお、周期(空孔間隔)PCは、発振波長(λ)を410nm、GaNの屈折率(n)を2.5とし、PC=λ/n=164nmとして算出した。
【0042】
続いて、レジストを除去し、パターニングしたSi膜をハードマスクとしてGaN表面部に孔部(ホール)を形成した。ICP-RIE装置にて塩素系ガス及びアルゴンガスを用いてGaNを深さ方向にドライエッチングすることにより、GaN表面に垂直に掘られた長円柱状の空孔である孔部(ホール)14H1,14H2を形成した。なお、本工程において、当該エッチングによりGaN表面部に掘られた孔をフォトニック結晶層14Pにおける空孔(air hole)と区別するため、以下において、単にホールと称する。
[S3c:洗浄工程]
ホール14H1,14H2を形成した基板は、脱脂洗浄を行った後、バッファードフッ酸(HF)にてSi膜を除去した。このときのGaN表面のSEM(Scanning Electron Microscope)像を図4に示す。
【0043】
図4の表面SEM像に示すように、正方格子状に、すなわち正方格子点上に2次元的に、周期PCが164nmで配列された複数のホール対14H(主ホール14H1及び副ホール14H2)が形成された。ホール14H1,14H2は上面(GaN表面)で開口する略長円柱形状の孔部又は穴である。
【0044】
より詳細には、GaN表面における主ホール14H1の開口の長径LH1は124nm、短径WH1は50nm(RH1=長径/短径=2.49)であり、副ホール14H2の開口の長径LH2は57.1nm、短径WH1は50.0nm(RH2=長径/短径=1.14)であった。
【0045】
このとき主ホール14H1の重心CD1と副ホール14H2の重心CD2のx方向及びy方向の間隔はそれぞれ65.3nm(=0.4×PC)であった。主ホール14H1及び副ホール14H2の長軸は<11-20>軸(すなわち、a軸)に平行になるように配置された。
【0046】
なお、図4に示すように、x方向及びy方向はそれぞれ、主ホール14H1の開口及び副ホール14H2の開口の長軸方向(<11-20>方向)及び短軸方向(<1-100>方向)に対して45°傾斜した方向である。本明細書では、x-y座標を空孔座標とも称する。
[S3d:埋込層形成工程]
この基板を、再度MOVPE装置のリアクタ内に導入し、アンモニア(NH3)を供給して950℃(第1の埋込温度)まで昇温後、トリメチルガリウム(TMG)及びNH3を供給して主ホール14H1の開口及び副ホール14H2を閉塞し、第1の埋込層14B1を形成した。
【0047】
まず、第1の温度領域(800℃以上1100℃以下)に達する過程(昇温過程)において、供給されているNH雰囲気下で、成長基板表面のGa原子がマストランスポートを起こし、n-クラッド層に形成したホールの開口部を閉塞するように{1-101}面、{1-100}面で構成された庇部を形成する。
【0048】
次いで、第1の温度領域に達した後に供給されるTMGによって、前述の庇がホール中心方向に成長し、合体することで主ホール14H1及び副ホール14H2は閉塞され埋め込まれる。これにより第1の埋込層14B1が形成される。
【0049】
続いて、主ホール14H1及び副ホール14H2を閉塞した後、厚さが50nmの第2の埋込層14B2を成長した。第2の埋込層14B2の成長は、基板温度を820℃(第2の埋込温度)まで降温後、 3族原子の供給源としてトリエチルガリウム(TEG)及びトリメチルインジウム(TMI)を供給し、窒素源としてNH3を供給することで行った。なお、第2の埋込温度は、第1の埋込温度よりも低温であり、700℃以上900℃未満である。
【0050】
また、本実施例における第2の埋込層14B2のIn組成は2%(すなわち、Ga0.98In0.02N層)であった。第2の埋込層14B2は、光とフォトニック結晶層14Pとの結合効率(光フィールド)を調整するための光分布調整層として機能する。
【0051】
以上の埋込工程により、主空孔14K1及び副空孔14K2からなる空孔対14Kが正方格子点の各々に配置された二重格子構造のフォトニック結晶層14Pが形成された。
[S4:発光層形成工程]
続いて発光層である活性層15として、多重井戸(MQW)層を成長した。MQWのバリア層及び井戸層はそれぞれGaN及びInGaNであった。バリア層の成長は、基板を820℃まで降温後、3族原子の供給源としてトリエチルガリウム(TEG)を、窒素源としてNH3を供給して行った。また、井戸層の成長はバリア層と同じ温度にて、3族原子の供給源としてTEG及びトリメチルインジウム(TMI)を、窒素源としてNH3を供給して行った。本実施例における活性層からのPL(Photoluminescence)発光の中心波長は412nmであった。
[S5:p-ガイド層形成工程]
活性層の成長後、基板を1050℃に昇温し、p-ガイド層16としてGaNを120nmの層厚で成長した。p-ガイド層16はドーパントをドープせずに、TMG、NH3を供給して成長した。
[S6:電子障壁層形成工程]
p-ガイド層16の成長後、基板温度を1050℃で維持したまま、電子障壁層(EBL)17を成長した。EBL17の成長は、3族原子源としてTMG及びTMAを、窒素源としてNH3を供給して行った。またp-ドーパントとしてCp2Mgを供給した。以上により、Al組成が18%、層厚が15nmのEBL17を形成した。
[S7:p-クラッド層形成工程]
電子障壁層(EBL)17の成長後、基板温度を1050℃で維持したまま、p-クラッド層18を成長した。p-クラッド層18は、3族原子源としてTMG及びTMAを、窒素源としてNH3を供給して成長を行った。またp-ドーパントとしてCp2Mgを供給した。以上により、Al組成が6%、層厚が600nmのp-クラッド層18を形成した。なお、成長後のN2雰囲気中で850℃、10分間のアクチベーションをしたときの、p-クラッド層(p-AlGaN)18のキャリア濃度は2×1017cm-3であった。
[S8:p-コンタクト層形成工程]
p-クラッド層18を成長後、基板温度を1050℃で維持したままp-コンタクト層19を成長した。p-コンタクト層19の成長は、3族原子源としてTMGを、窒素源としてNH3を供給して行った。またドーパントとしてCp2Mgを供給した。
[S9:電極形成工程]
エピタキシャル成長層の形成が完了した成長層付き基板のp-コンタクト層19の面を支持基板に貼り付け、基板12を研磨装置で所定の厚さまで薄くする。
【0052】
その後、p-コンタクト層19側に素子分離溝以外が覆われたマスクを形成し、n-クラッド層13又は基板12が露出するまでエッチングした。その後、マスクを除去し、支持基板を取り外して素子分離溝を形成した。
[S10:電極形成工程]
(アノード電極形成)
エピタキシャル成長基板12の表面にp電極20Bとしてパラジウム(Pd)膜及び金(Au)膜を電子ビーム蒸着法によりこの順に成膜した。成膜した電極金属膜をフォトリソグラフィを用いて200×200μm2にパターニングし、p電極20Bを形成した。
(カソード電極形成)
続いて、基板12の裏面にTi、Auを順に電子ビーム蒸着法により成膜してn電極20Aを形成した。
[S11:保護膜形成工程]
電極形成を終了した基板下面を支持基板に貼り付け、アノード電極を覆うマスクを形成する。その後、スパッタリングにて素子の上面と側面に保護膜であるSiO膜を形成した。
[S12:個片化工程]
最後に、基板分離溝の中央線に沿ってレーザースクライブして、個片化したPCSEL素子(以下、PCSEL素子又は単にPCSELと称する)10を得た。
2.主空孔及び副空孔
本実施例における埋め込まれた空孔の形状を確認するため、空孔層の空孔が露出するまで積層構造を表面から収束イオンビーム(FIB)により加工し、その後SEM観察を行った。このときの主空孔14K1及び主空孔14K1より小なるサイズの副空孔14K2の空孔形状を図5の上面SEM像に示す。なお、副空孔14K2は、主空孔14K1よりも、少なくとも空孔径及び深さのいずれかが小さければよい。
【0053】
また、図6Aは、図5の線A-Aにおける断面を示すSEM像であり、図6Bは、図5の線B-Bにおける断面を示すSEM像である。
【0054】
図5に示すように、主空孔14K1の長径LK1は75.2nm、短径WK1は45nm、短径に対する長径の比(長径/短径)RK1=1.67)であり、副空孔14K2の長径LK2は45.8nm、短径WK2は39.2nm、短径に対する長径の比(長径/短径)RK2=1.17であった。
【0055】
図6A図6Bに示すように、主空孔14K1の深さDK1は102nm、副空孔14K2の深さDK2は78.5nmであった。
【0056】
このように、正方格子点の各々に主空孔14K1及び副空孔14K2からなる空孔対が周期PC=164nmで配されたフォトニック結晶層14Pが形成されていることが確認された。すなわち、主空孔14K1が周期PCで正方格子点に配され、副空孔14K2が同じ周期PCで正方格子点に配されている。そして、主空孔14K1の重心D1と副空孔14K2の重心D2との距離(重心間距離)がx方向にΔx及びy方向にΔy(一定)であるように空孔対が配されている。
【0057】
なお、本明細書において、主空孔及び副空孔の「重心間距離」は、主空孔の重心軸と副空孔の重心軸との間の距離をいい、副空孔が主空孔に対しx方向及びy方向に離間した距離で表記する。
【0058】
また、主空孔14K1及び副空孔14K2は、長軸が<11-20>軸に平行な長六角柱形状を有していた。なお、主空孔14K1及び副空孔14K2の底部(基板12側)には{1-102}ファセットが現れているが、当該底部以外の部分は長六角柱形状であった。
【0059】
具体的には、主空孔14K1の重心D1と副空孔14K2の重心D2との距離Δx及びΔyは、ともに65.4nm(Δx=Δy=0.4×PC)であり、埋め込み前から変化していなかった。また、主空孔14K1及び副空孔14K2の長軸は<11-20>軸(すなわち、a軸)に平行になるように配置されていた。
【0060】
なお、本明細書において、空孔(又はホール)の「長軸又は短軸」は、フォトニック結晶層に平行な面内における当該空孔断面(開口面)の長軸又は短軸をいう。
【0061】
また、フォトニック結晶層14Pの平面と直交した方向から見た空孔面積を空孔の周期PCの2乗で割った値の百分率を空孔充填率FF(フィリングファクタ)という。主空孔14K1及び副空孔14K2の空孔充填率FF1、FF2を算出したところ、FF1=10.5%、FF2=5.1%であった。
3.素子特性、評価
3.1 二重格子構造と単一格子構造
(1)比較例1
本実施形態によるPCSEL素子10との比較例1として、格子点に単一の空孔(単一格子フォトニック結晶)が形成されたPCSEL素子を製作した。上記した製造工程とは、S3b(空孔形成工程)のみ異なるので、この点について説明する。
【0062】
図7は、比較例1における、GaN表面部に形成された円柱状のホールCHを示すSEM像である。具体的には、直径80nmの真円状の開口を有し、x方向及びy方向に周期PC=164 nmで正方格子点にホールCHが配されている。
【0063】
より詳細には、空孔配列方向であるx軸が<1-100>軸(すなわち、m軸)、y軸が<11-20>軸(すなわち、a軸)に平行になるようにパターニングしたレジストを形成した。そして、ICP-RIE装置を用いたドライエッチングを行って、x方向及びy方向に正方格子状に配列された円柱状の空孔14Cを形成した。円柱状の空孔14Cの直径は79nmで、周期PC=164 nmであった。
(2)閾値利得(結合波理論)
実施例1及び比較例1の構造における基本モードの電界強度分布から、活性層の光閉じ込め係数(Γact)、Mgのドーピングされた層(pコンタクト層、pクラッド層、電子障壁層)の光閉じ込め係数(Γmg)を見積もった。また、二次元結合波理論を用いて、フォトニック結晶層14Pの面内方向の共振器損失(α)、フォトニック結晶層14Pに垂直方向の共振器損失(α)を見積もった。これらを表1に示す。
【0064】
実施例1及び比較例1ともにMgがドーピングされた層の吸収係数αmgは160cm-1と見積もられた。Γmgとαmgから、下記の(式1)を満たす各構造における吸収損失αiは表1に示す値となった。
【0065】
αi = Γmg × αmg (式1)
レーザの閾値利得Gthは(式2)より求められ、表1に示すように実施例1では1119cm-1、比較例1では724cm-1と見積もられた。
【0066】
Γact・Gth = α+α+ αi (式2)
【0067】
【表1】
【0068】
表1において、実施例1のαが比較例1のαよりも大きくなっている。これは二重格子構造により、格子点構造の回転対称性が崩れたことによる。比較例1においては、格子点構造が2回回転対称性を有するため、空孔層を伝搬する光のうち垂直方向に回折される光は消失性干渉により打ち消される。実施例1においては回転対称性が低くなったため、この消失性干渉が弱くなり、垂直方向に回折する光が多くなる。すなわちαが増大している。換言すれば、αの増大には格子点構造を1回回転対称性とすることが望ましく、主空孔14K1と副空孔14K2の空孔セットが360°回転で一致する形状または配置とすればよい。
(3)光出力特性、発光スペクトル
実施例1のPCSEL素子10と比較例1のPCSEL素子のI-L特性(電流-光出力特性)を図8Aに、閾値電流付近における発光スペクトルを図8Bに示す。なお、パルス幅100ns、パルス周期1kHzのパルス電流駆動により測定した。
【0069】
実施例1のPCSEL素子10は、閾値電流1.24A(閾値電流密度:3.9kA/cm)で単峰性の強いレーザ発振を行った。一方、比較例1のPCSEL素子は閾値電流0.71A(閾値電流密度:2.2kA/cm2)で単峰性の強いレーザ発振を行った。実施例1が比較例1に比べ閾値電流が大きいのは、表1の閾値利得Gthが増大することによる。実施例1と比較例1において、閾値利得Gthの増大の割合と閾値電流の増大の割合とは同程度であり、閾値電流の増加は共振器損失と吸収損失の増大によるものであると考えられ、実施例1のように二重格子構造を導入した場合においても活性層の品質への影響はないと考えられる。
【0070】
一方、実施例1のPCSEL素子10のスロープ効率は0.23W/Aで、比較例1の0.10W/Aよりも大きく増大していることがわかる。これは、実施例1においては前述の通りα(すなわち、垂直方向への光の漏れ=出力として寄与する光成分)が大きいので、出力として取り出せる光が大きいためである。すなわち、空孔層における格子点を二重格子構造とすることで、より小さい電流で大きな出力を得ることができる。
3.2 二重格子構造における主空孔及び副空孔の配置関係
【実施例0071】
(1)実施例2及び比較例2
二重格子構造導入による埋め込み後の表面形状の評価をするため、2つの構造のフォトニック結晶層を作製し、上記実施例と同様にS3dまでの工程を実施し空孔の埋め込みを行った。
【0072】
より詳細には、主空孔及び副空孔がそれぞれ同一サイズ及び同一形状を有しているが、主空孔及び副空孔の長軸方向が90°異なる2つの構造について検討を行った。
【0073】
図9Aは、上記実施例1と同様に主ホール及び副ホールが形成された構造(構造A)において、GaN表面部に形成された主ホール14H1及び副ホール14H2を示す上面SEM像である。具体的には、構造A(実施例2)においては、長径/短径の比が2.75(=79.8nm/29nm)の長円柱状の主ホール14H1と、長径/短径の比が1.14(=42.8nm/37.6nm)の長円柱状の副ホール14H2とからなるホール対が周期PC=164nmで正方格子状に形成されている。
【0074】
図9Bは、比較例2における、GaN表面部に形成された主ホールCH1及び副ホールCH2を示す上面SEM像である。比較例2(構造B)においては、長径/短径の比が2.76(=79.4nm/28.8nm)の長円柱状の主ホールCH1と、長径/短径の比が1.10(=41.8nm/37.9nm)の長円柱状の副ホールCH2とからなるホール対が周期PC=164nmで正方格子状に形成されている。
【0075】
構造A(図9A)においては、主ホール14H1及び副ホール14H2の長軸が<11-20>軸(すなわち、a軸)に平行になるように配置されている。一方、構造B(図9B)においては、主ホールCH1及び副ホールCH2の長軸が<11-20>軸(すなわち、a軸)に直交するように配置されている。
【0076】
すなわち、構造A(実施例2)と構造B(比較例2)は、ほぼ同一サイズ及び同一形状の主ホール及び副ホールを有するが、構造B(比較例2)のホールの長軸方向は、構造A(実施例2)のホールの長軸方向とは90°異なっている。
【0077】
従って、構造Aの主ホール14H1及び副ホール14H2の埋め込みによって主空孔14K1及び副空孔14K2の長軸が<11-20>軸に平行に配されたフォトニック結晶層14Pが得られる(図11A参照)。また、構造Bの主ホールCH1及び副ホールCH2の埋め込みによって主空孔CK1及び副空孔CK2の長軸が<11-20>軸に直交するように配されたフォトニック結晶層が得られる(図11B参照)。
(2)埋込層の表面粗さ
図10A図10Bは、それぞれ構造A(実施例2)及び構造B(比較例2)の場合の、主空孔及び副空孔を埋め込み後の埋込層の表面モフォロジを示す原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)の像である。尚、AFMイメージの横軸方向がm軸で、縦軸方向がa軸である。
【0078】
図10Aに示すように、各空孔の長軸がa軸(<11-20>軸)と平行である場合(構造A:実施例2)においては、表面粗さ(RMS)が0.594nmの平坦な表面が得られた。
【0079】
一方、図10Bに示すように、各空孔の長軸がa軸と直交する場合(構造B:比較例2)においては、表面に高さ7nm程度のうねりが現れ、構造A(実施例)の場合と比較して大きな表面粗さ(RMS0.836nm)であった。
【0080】
埋込層表面にこのような大きな凹凸が存在する埋込層上に活性層を成長すると、凹凸のある個所でInの組成不均一が発生し活性層品質が悪化する。このため、閾値電流が増大するため、フォトニック結晶層の空孔の長軸はa軸に平行であることが好ましい。
【0081】
図11A図11Bは、埋込層の形成過程において、ホールの形状変化を模式的に示す上面図である。これらの図を参照し、ホールの長軸が結晶方位のa軸に平行な場合と直交する場合とで、埋込層の表面粗さが異なることについて以下に考察する。
【0082】
3族窒化物においてホールを埋め込む際には、マストランスポートが発生することでホール形状が熱的に安定な面で構成される形状へと変形し空孔が形成される。すなわち、+c面基板においては、空孔の側面は{1-100}面(すなわち、m面)へと形状変化する。すなわち、長円柱状の形状から側面がm面で構成される長六角柱状へと形状変化する。
【0083】
図11Aは、長円柱状のホールの長軸がa軸(<11-20>軸)に平行な場合(構造A)の空孔の形状変化を模式的に示している。ホール14H1,14H2は変形後に空孔サイズは縮小することになるが、変化分の3族窒化物原子は周囲の結晶部分からマストランスポートにより供給される(図中、矢印)。そして、元のホール14H1,14H2の形状に内接するような長六角柱の空孔14K1,14K2へと形状変化する。
【0084】
一方、図11Bは、長円柱状のホールの長軸がa軸に垂直な場合(構造B)の空孔の形状変化を模式的に示している。ホールCH1,CH2はマストランスポートにより空孔サイズは縮小する(図中、矢印)。この形状変化は、長軸がa軸に平行な空孔の場合(図11A)よりも大きい。
【0085】
多重格子フォトニック結晶においては、空孔間距離が単一格子フォトニック結晶の場合と比べて近いので、隣り合う空孔(すなわち、主空孔及び副空孔)は空孔サイズ程度の距離で配置されることになる。このため、マストランスポートによる空孔の形状変化が発生すると、隣り合う空孔の形状変化が互いに干渉し合う。形状変化が干渉しあった部分とそうでない部分とで埋め込み表面には大きな凹凸(高低差)が形成される。したがって、図11Bに示すように、ホールの長軸とa軸が直交する場合、大きな形状変化を伴うため表面荒れが発生してしまう。一方、ホールの長軸とa軸が平行な場合には、形状変化を最小限に抑えることができ、埋め込み後に平坦な表面が得られると考えられる。
(3)主空孔及び副空孔の位置関係と共振器損失
空孔層(フォトニック結晶層)において、空孔が正方格子状に配置されている場合には、2次元フォトニック結晶内で方向に依存した光の偏在を防ぎ単一波長でのレーザ発振を安定して得るために、x軸方向及びy軸方向に対して同じ帰還効果(回折効率)を有することが好ましい。
【0086】
すなわち、空孔層を形成する2次元フォトニック結晶が正方格子のx軸及びy軸から45°傾斜した軸に関して対称であることが好ましい。主空孔14K1及び副空孔14K2がx軸及びy軸から45°傾斜した軸に関して対称構造である場合には、主空孔14K1及び副空孔14K2間のx軸方向及びy軸方向の重心間距離ΔxとΔyは等しい(Δx=Δy)ことが好ましい。
【0087】
実施例1の構造において、フォトニック結晶層14Pを形成する主空孔14K1及び副空孔14K2の重心間距離(間隔)Δx,Δyを、Δx=Δyとしてそれぞれ0.0PCから0.5PC(PCは正方格子の周期)まで変化させたときの、フォトニック結晶層14Pに対して垂直及び水平方向の共振器損失α,α図12A図12Bに示す。なお、横軸は周期PCに対する割合d(すなわち、d=Δx/PC=Δy/PC)として示している。
【0088】
また、図12Cには、下記の(式3)から求めたRを示す。すなわち、Rは、全共振器損失(α+α)に対する垂直方向の共振器損失αの割合である。
【0089】
= α/(α+α) (式3)
フォトニック結晶面発光レーザにおいてスロープ効率ηSEは(式4)に示すように、吸収損失αiを含む全損失のうちα(垂直方向の共振器損失)の割合に比例する。
【0090】
【数1】
【0091】
従って、仮に構成材料による吸収損失αiをゼロにできたとすると、ηSEはRに比例することになる。すなわち、フォトニック結晶面発光レーザの出射効率(すなわち、ηSE)を高め、高出力化が可能なフォトニック結晶面発光レーザを得るためにはRを高めることが望ましい。
【0092】
従来の単一格子フォトニック結晶面発光レーザ(比較例1)におけるRは表1から0.18程度となる。二重格子フォトニック結晶面発光レーザ(実施例1)において、Rを従来レーザ(R=0.18)よりも高めるためには、図12Cを参照すると、副空孔の主空孔に対する相対位置d(=Δx/PC=Δy/PC)は0.06以上または0.47以下であることが好ましい。
(4)発振モード
図12Cを参照すると、主空孔14K1及び副空孔14K2の重心間距離(間隔)Δx、Δy(Δx=Δy)が0.28×PC及び0.40×PCにおいてRは不連続に変化する。これは、この重心間距離を境にして、発振モードが変化するためである。
【0093】
図13は、正方格子フォトニック結晶のΓ点付近のフォトニックバンド構造を示している。フォトニック結晶面発光レーザにおいては、空孔層のフォトニックバンド構造のΓ点のバンド端における光の定在波状態を共振効果として用いる。Γ点のバンド端には、低周波数側のものからA,B,C,Dの4つのバンド端モード(黒丸で示す)が存在する。当該4つのバンド端モードのうち最も閾値利得の低い(共振器損失の小さい)モードでレーザ発振が得られる。
【0094】
実施例1において、重心間距離Δx、Δyを変化させたときの結合波理論から求めた各モードの閾値利得(共振器損失)を図14に示す。0.28×PC以下(d≦0.28)ではモードA、0.28PC~0.40PC(0.28<d<0.40)ではモードD、0.40PC以上(0.40≦d)ではモードBが最も閾値利得の小さなモードとなることがわかる。
【0095】
図15は、面発光レーザのレーザ発振時の電流注入領域の屈折率、キャリア密度、光子密度を模式的に示している。3族窒化物半導体において、一般的にキャリアプラズマ効果により電流注入領域の屈折率は低くなる。一方、半導体レーザにおいては光子密度の高い共振器中央において誘導放出レートが高くなりキャリア密度が低くなるため、また発熱により中央部の温度が上昇するため、電流注入領域の中央部分の屈折率はその周囲よりも高くなる。
【0096】
図16Aはバンド端モードA及びBの場合の、図16Bはバンド端モードC及びDの場合の電流注入時における電流注入領域近傍におけるΓ点のフォトニックバンド端の周波数を模式的に示している。
【0097】
周波数ωは屈折率n、光速c、波数kを用いて(式5)のように表される。
【0098】
ω = c / n × k (式5)
(式5)から、電流注入(レーザ発振)によって屈折率分布が図15のように変化すると、各バンド端モードであるA、B、C、Dモードの周波数プロファイルも屈折率変化とともに変化し(台形状から、中央が凹んだ台形状へと)、図16A及び図16Bに示すようになる。
【0099】
図16Aに示すように、バンド端モードA及びB(以下、単にモードA及びBのように呼称する。)の場合、電流注入領域の中央部において発振モード周波数がフォトニックバンドギャップ内に存在している。したがって、注入領域中央部の光子の存在が抑制され、注入領域中央部よりも外側の領域で光子が発生することになる。
【0100】
図17Aは、バンド端モードA及びBで発振動作させたときの、電流注入領域の屈折率、キャリア密度、光子密度を模式的に示している。フォトニックバンド効果を考慮した場合を実線で示し、フォトニックバンド効果を考慮しない場合を破線で示している。
【0101】
フォトニックバンド効果を考慮すると、前述の通り、モードA及びBにおいては光子がより広い領域に分布することとなり、注入電流の増加に伴い光子密度は電流領域全体に渡って平坦化される。
【0102】
これに対応して、キャリア密度及び屈折率も電流注入領域の全体に渡って均一化される。このため、モードA及びBで発振動作させた場合には、大電流を注入して高出力動作させた場合においても、電流増加に伴い光子密度分布が注入領域の全体に渡って平坦化されるため、出射されるビームは安定したビームパターンを有する。
【0103】
一方、図16Bに示すように、バンド端モードC及びDの場合、電流注入領域の中央部の外側の領域において発振モード周波数がバンドギャップ内に存在している。したがって、注入領域の中央部に光子が局在する。
【0104】
図17Bは、バンド端モードC及びDで発振動作させたときの、電流注入領域の屈折率、キャリア密度、光子密度を模式的に示している。フォトニックバンド効果を考慮した場合を実線で示し、フォトニックバンド効果を考慮しない場合を破線で示している。
【0105】
フォトニックバンド効果を考慮すると、電流注入領域の中央部に光子が集中し局在化する。このため、キャリア密度及び屈折率も電流注入領域の中央部において局所的に大きく変化し、電流注入領域において不均一な分布を有するようになる。
【0106】
このため、バンド端モードC及びDで発振動作させた場合には、大電流を注入して高出力動作させると、電流増加に伴い光子密度分布が局所化・集中化されるため、出射されるビームは不安定なビームパターンを有する。また、大電流を注入すると、キャリア密度及び屈折率の分布が大きな不均一性を有することになるため、発振動作も多モード化しやすくなり、安定な発振動作を得ることができない。
【0107】
以上説明したとおり、高電流を注入したときに安定な発振を得るためには、モードA及びBで発振することが好ましく、副空孔14K2の主空孔14K1に対する相対位置d(=Δx/PC=Δy/PC)は、0.06PC~0.28PC(0.06≦d≦0.28)、または0.40PC~0.47PC(0.40≦d≦0.47)であることが好ましい。
【実施例0108】
実施例3においては2つの正六角柱形状の主空孔14K1及び副空孔14K2からなる二重格子(dual lattice)構造の空孔層(フォトニック結晶層)を有するPCSEL素子11について検討を行った。
1.作製工程
以下に、実施例3のPCSEL素子10の作製工程について詳細に説明する。なお、上記した実施例の作製工程と異なる点及び主要な点について説明する。なお、PCSEL素子10の構造及び半導体構造層11の層構成は、図1Aに示したものと同一であった。
[S3b:ホール及び空孔(air hole)形成工程]
n-ガイド層14の準備層としてn型GaN層を成長した成長層付き基板を洗浄して清浄表面を得た。なお、このn型GaN成長層は、下ガイド層14A及びフォトニック結晶層14Pからなる層を形成するための準備層である。
【0109】
この成長層付き基板を洗浄して清浄表面を得た後、シリコン窒化膜(Si)をプラズマCVDを用いて成膜した。この上に電子線描画用レジストをスピンコートで塗布し、電子線(EB)描画装置に入れて2次元周期構造のパターニングを行った。
【0110】
これにより、略円形状の主開口K1及び主開口K1よりも小なる副開口K2からなる開口対を周期PC=164nmで正方格子点にレジストの面内で2次元配列したパターニングを行った(図3参照)。
【0111】
より詳細には、主開口K1は、その重心CD1が互いに直交する2方向(x方向及びy方向)に周期PC=164nmで正方格子点に配列されている。副開口K2も同様に、その重心CD2がx方向及びy方向に周期PC=164nmで正方格子点に配列されている。
【0112】
また、主開口K1は長径が76nm及び短径が66nm(長径/短径=1.15)で、副開口K2は長径が59nm及び短径が51nm(長径/短径=1.12)であった。各開口の長軸は<11-20>軸(すなわちa軸)に平行になるようにパターニングした。
【0113】
主開口K1及び副開口K2のx方向及びy方向の重心間距離Δx=Δyが65.6nm(=0.4×164nm)となるようにパターニングした。
【0114】
パターニングしたレジストを現像後、ICP-RIE装置によってSi膜を選択的にドライエッチングした。これにより周期164nmで正方格子点に配列された主開口K1及び副開口K2がSi膜を貫通するように形成された。
【0115】
なお、主開口K1及び副開口K2は真円形状から僅かに外れた長円形状を有しているが、真円形状を有するように形成されてもよい。
【0116】
続いて、レジストを除去し、パターニングしたSi膜をハードマスクとしてGaN表面にホールを形成した。ICP-RIE装置によって塩素系ガスを用いてGaNをドライエッチングすることにより、GaN表面に垂直な複数のホール対14H(主ホール14H1及び副ホール14H2)を形成した。
[S3c:洗浄工程]
ホール14H1,14H2を形成した基板は、脱脂洗浄を行った後、バッファードフッ酸(HF)にてSi膜を除去した。このときのGaN表面のSEM像を図18に示す。
【0117】
図18に示すように、正方格子状に、すなわち正方格子点上に2次元的に、周期PCが164nmで配列された複数のホール対14H(主ホール14H1及び副ホール14H2)が形成された。ホール14H1,14H2は上面(GaN表面)で開口する略円柱形状のホールである。
【0118】
より詳細には、GaN表面における主ホール14H1の開口の長径LH1は76nm、短径WH1は68nm、すなわちRH1(=長径/短径)=1.12であり、副ホール14H2の開口の長径LH2は59nm、短径WH2は53nmであり、RH2(=長径/短径)=1.11であった。
【0119】
このとき主ホール14H1の重心CD1と副ホール14H2の重心CD2のx方向及びy方向の間隔はそれぞれ65.3nm(=0.4×PC)であった。また、主ホール14H1及び副ホール14H2の長軸は<11-20>軸(すなわち、a軸)に平行になるように配置された。
【0120】
なお、主ホール14H1及び副ホール14H2は真円柱形状から僅かに外れた長円柱形状を有しているが、真円柱形状を有するように形成されてもよい。
[S3d:埋込層形成工程]
この基板を、再度MOVPE装置のリアクタ内に導入し、アンモニア(NH3)を供給して950℃(第1の埋込温度)まで昇温後、トリメチルガリウム(TMG)及びNH3を供給して主ホール14H1の開口及び副ホール14H2を閉塞し、第1の埋込層14B1を形成した。
【0121】
この温度領域では、成長基板の最表面にはN原子が付着しているため、N極性面が選択的に成長される。したがって、表面には{1-101}ファセットが選択的に成長される。対向する{1-101}ファセットが互いにぶつかることで、ホールは閉塞されGaN層中に埋め込まれる。
【0122】
続いて、主ホール14H1及び副ホール14H2を閉塞した後、厚さが50nmの第2の埋込層14B2を成長した。第2の埋込層14B2の成長は、基板温度を820℃(第2の埋込温度)まで降温後、3族原子の供給源としてトリエチルガリウム(TEG)及びトリメチルインジウム(TMI)を供給し、窒素源としてNH3を供給することで行った。
【0123】
また、第2の埋込層14B2のIn組成は2%(すなわち、Ga0.98In0.02N層)であった。第2の埋込層14B2は、光とフォトニック結晶層14Pとの結合効率(光フィールド)を調整するための光分布調整層として機能する。
[S4:発光層形成工程]
続いて発光層である活性層15として、多重井戸(MQW)層を成長した。より詳細には、上記した実施例と同様に、MQWのバリア層及び井戸層はそれぞれGaN及びInGaNであった。バリア層の成長は、基板を820℃まで降温後、3族原子の供給源としてトリエチルガリウム(TEG)を、窒素源としてNH3を供給して行った。また、井戸層の成長はバリア層と同じ温度にて、3族原子の供給源としてTEG及びトリメチルインジウム(TMI)を、窒素源としてNH3を供給して行った。本実施例における活性層からのPL発光の中心波長は412nmであった。
【0124】
S5(p側ガイド層形成工程)以降は、上記した作製工程と同一の工程であり、実施例3のPCSEL素子10が形成された。
2.主空孔及び副空孔
実施例における埋め込まれて形成された空孔(air hole)の形状を確認するため、空孔層の空孔が露出するまで積層構造を表面からFIBにより加工し、その後SEM観察を行った。このときの主空孔14K1及び主空孔14K1より小なるサイズの副空孔14K2の空孔形状を図19Aの上面SEM像に示す。なお、副空孔14K2は、主空孔14K1よりも少なくとも空孔径及び深さのいずれかが小さればよい。
【0125】
また図19Bは、図19Aの線A-Aにおける断面を示すSEM像であり、図19Cは、図19Aの線B-Bにおける断面を示すSEM像である。
【0126】
図19Aより、主空孔14K1及び副空孔14K2は六角形形状を有していることが確認された。また、SEM観察により、主空孔14K1の長径LK1は57.2nm、短径WK1は49.5nmであり、短径に対する長径の比(長径/短径)RK1=1.15であった。また、主空孔14K1の深さDK1は91.3nmであった。
【0127】
また、副空孔14K2の長径LK2は43.5nm、短径WK2は37.7nmであり、短径に対する長径の比(長径/短径)RK2=1.15であった。また、副空孔14K2の深さDK2は79.4nmであった。
【0128】
正六角形の短径に対する長径の比は、RR=2/31/2=1.15であるから、主空孔14K1の当該比RK1及び副空孔14K2の当該比RK2から、主空孔14K1及び副空孔14K2は正六角柱形状を有することが確認された。
【0129】
また、主空孔14K1の重心D1と副空孔14K2の重心D2との距離(重心間距離)Δx及びΔyは、それぞれ65.4nm(=0.4×PC)であり埋め込み前と変化していなかった。
【0130】
また、主空孔14K1及び副空孔14K2の長軸は、<11-20>軸(すなわちa軸)に平行になるように配置されていた。
3.素子特性、評価
(1)比較例1及び比較例2
実施例3によるPCSEL素子10の評価において、格子点に単一の空孔が形成された単一格子構造の上記した比較例1のPCSEL素子との比較を行った。また、実施例3とは、主空孔及び副空孔の長軸方向が90°異なる上記した比較例2のPCSEL素子との比較を行った。
(2)閾値利得(結合波理論)
実施例3及び比較例1の構造における基本モードの電界強度分布から、活性層の光閉じ込め係数(Γact)、Mgのドーピングされた層(pコンタクト層、pクラッド層、電子障壁層)の光閉じ込め係数(Γmg)を見積もった。また、二次元結合波理論を用いて、フォトニック結晶層14Pの面内方向の共振器損失(α)、フォトニック結晶層14Pに垂直方向の共振器損失(α)を見積もった。
【0131】
実施例3及び比較例1ともに、Mgがドーピングされた層の吸収係数αmgは160cm-1と見積もられた。光閉じ込め係数(Γmg)と吸収係数αmgから、上記(式1)により吸収損失αは表2に示す値となった。レーザの閾値利得Gthは上記(式2)により求められ、表2に示すように実施例3では1068cm-1、比較例1では724cm-1と見積もられた。これらを表2に纏めて示す。
【0132】
【表2】
【0133】
表2において、実施例3のαが比較例1のαよりも大きくなっている。これは二重格子構造により、格子点構造の90°回転対称性が崩れたことによる。比較例1においては、格子点構造が90°回転対称性を有するため、空孔層を伝搬する光のうち垂直方向に回折される光は消失性干渉により打ち消される。
【0134】
実施例3においては90°回転対称性が低くなったため、この消失性干渉が弱くなり、垂直方向に回折する光が多くなる。すなわちαが増大している。
【0135】
このように、主空孔14K1及び副空孔14K2が正六角柱形状を有する実施例3においても、単一格子構造のフォトニック結晶層に比べ、垂直方向に伝搬する光成分を大きく増大させることが確認された。
(3)光出力特性、発光スペクトル
実施例3のPCSEL素子10と比較例1のPCSEL素子のI-L特性(電流-光出力特性)を図20Aに、閾値電流付近における発光スペクトルを図20Bに示す。なお、パルス幅100ns、パルス周期1kHzのパルス電流駆動により測定した。
【0136】
実施例3のPCSEL素子10は、閾値電流1.21A(閾値電流密度:3.8kA/cm)で単峰性の強いレーザ発振を行った。一方、比較例1のPCSEL素子は閾値電流0.71A(閾値電流密度:2.2kA/cm2)で単峰性の強いレーザ発振を行った。実施例3が比較例1に比べ閾値電流が大きいのは、表2に示す閾値利得Gthが増大することによる。
【0137】
実施例3と比較例1において、閾値利得Gthの増大の割合と閾値電流の増大の割合とは同程度であり、閾値電流の増加は共振器損失と吸収損失の増大によるものであると考えられ、実施例3のように二重格子構造を導入した場合においても活性層の品質への影響はないと考えられる。
【0138】
一方、実施例3のPCSEL素子10のスロープ効率は0.35W/Aで、比較例1の0.10W/Aよりも大きく増大していることがわかる。これは、実施例3においては前述の通りα(すなわち、垂直方向への伝播光の増大)が大きいので、出力として取り出される光が大きいためである。すなわち、空孔層における格子構造を二重格子構造とすることで、より小さい電流で大きな出力を得ることができる。
(4)主空孔及び副空孔の位置関係と共振器損失
実施例3においては、格子点が2つの正六角柱形状の主空孔14K1及び副空孔14K2からなる二重格子構造の空孔層を有するPCSEL素子を作製した。
【0139】
実施例3の構造おいて、主空孔14K1及び副空孔14K2の重心間距離Δx,Δy(Δx=Δy)をそれぞれ0.0PCから0.5PC(PCは正方格子の周期)の範囲で変化させたときの、フォトニック結晶層14Pに対して垂直及び水平方向の共振器損失α,α図21A図21Bに示す。なお、横軸は重心間距離(主空孔及び副空孔間の間隔)Δx,Δyの正方格子周期PCに対する比率d(すなわち、d=Δx/PC=Δy/PC)を示している。
【0140】
また、図21Cには、上記した(式3)から求めたRの重心間距離依存性を示す。すなわち、Rは、全共振器損失(α+α)に対する垂直方向の共振器損失αの割合である。
【0141】
また、フォトニック結晶面発光レーザにおいてスロープ効率ηSEは上記した(式4)に示すように、吸収損失αiを含む全損失のうちα(垂直方向の共振器損失)の割合に比例する。
【0142】
従って、仮に構成材料による吸収損失αiをゼロにできたとすると、ηSEはRに比例する。すなわち、PCSEL素子の出射効率(すなわち、ηSE)を高め、高出力化が可能なPCSEL素子を得るためにはRを高めることが望ましい。
【0143】
従来の単一格子構造のPCSEL素子(比較例1)におけるRは表2から0.18程度である。実施例3の正六角柱形状の主空孔及び副空孔からなる二重格子構造のPCSEL素子において、Rを単一格子構造のPCSEL素子(R=0.18)よりも高めるためには、図21Cを参照すると、主空孔14K1及び副空孔14K2の重心間距離(相対位置d)(=Δx/PC=Δy/PC)は0.06以上または0.47以下であることが好ましい。
【0144】
なお、空孔形状をより長径/短径比の大きな長六角柱形状とすることで、格子点内の空間的な屈折率分布の4回(90°)回転対称性を崩すことが可能であると考えられるが、長径/短径比が1.15と小さな正六角柱形状の空孔においても高いRを得ることができることが分かった。
【0145】
ただし、GaN系材料を用いたPCSEL素子においては、安定して空孔を埋め込むためには、成長中に空孔の側面を熱的に安定なm面へと形状変化させることが好ましい。すなわち、空孔層を形成する空孔の長径/短径比は少なくとも1.15以上であることが好ましい。
(5)発振モード
図21Dは、実施例3において、主空孔14K1に対する副空孔14K2の相対位置d(=Δx/PC=Δy/PC)を変化させたときの結合波理論から求めた各モードの閾値利得(共振器損失)を示す。
【0146】
相対位置dが0.24×PC以下(d≦0.24)ではモードA、0.24PC~0.28PC(0.24<d≦0.28)ではモードB、0.28PC~0.34PC(0.28<d<0.34)ではモードC、0.34PC~0.40PC(0.34≦d<0.40)ではモードD、0.40PC以上(0.40≦d)ではモードBが最も閾値利得の小さなモードとなることがわかる。
【0147】
なお、図16A、16Bを参照して説明したように、高電流を注入したときに安定な発振を得るためには、モードA及びBで発振することが好ましい。
(6)空孔充填率(FF:フィリングファクタ)
実施例3の構造において、副空孔14K2の空孔充填率FF2を4.5%で一定として、主空孔14K1の空孔充填率FF1を4.5%から40%の範囲で変化させたときの共振器損失を2次元結合波理論により求めた。空孔充填率比FF1/FF2に対するR、垂直及び水平方向の共振器損失の和(α+α)をそれぞれ図22A及び図22Bに示す。
【0148】
なお、上記したように、本明細書において、空孔充填率とは2次元的な周期的配列の単位面積あたりの各空孔が占める面積の割合である。具体的には、空孔層における主空孔14K1及び副空孔14K2の面積をそれぞれS1及びS2とすると、正方格子(周期PC)の場合、主空孔14K1の空孔充填率FF1=S1/PC、副空孔14K2の空孔充填率FF2=S2/PCである。
【0149】
一般に、正方格子フォトニック結晶のΓ点付近のフォトニックバンド構造は、上記した図13に示すようになり、4バンド端モードが存在する。図22A及び図22Bに示すように、空孔充填率比FF1/FF2が変化するとともに最も損失の小さなバンド端モードが変化する。
【0150】
実施例1及び実施例2において詳細に説明したように、高電流を注入したときに安定な発振を得るためには、モードA及びBで発振することが好ましい。すなわち、モードA及びBで発振させるためには、図22A及び図22Bに示すように、空孔充填率比RF=FF1/FF2は1.7乃至7.5の範囲内である、すなわち1.7≦(FF1/FF2)≦7.5であることが好ましい。
【0151】
なお、上記した実施例においては、主空孔14K1及び副空孔14K2が長六角柱形状を有する場合及び正六角柱形状を有する場合について説明したが、副空孔14K2は断面が真円の円柱形状、正六角柱形状等を有していてもよい。
【0152】
また、埋込後の主空孔14K1が長六角柱形状を有する場合及び正六角柱形状を有する場合について説明したが、これに限定されない。主空孔14K1が長円柱形状であってもよく、又は埋込成長によってホールが円柱形状又は長円柱形状から正六角柱形状又は長六角柱形状に変化する過程における中間的な形状を有していてもよい。従って、本明細書において、「正六角柱形状、長六角柱形状又は長円柱形状」は、円柱形状又は長円柱形状から正六角柱形状又は長六角柱形状に変化する過程における中間形状を含む。
【0153】
また、主空孔14K1が、長軸が<11-20>軸に平行な正六角柱形状、長六角柱形状又は長円柱形状を有する場合、副空孔14K2は、長軸が<11-20>軸に平行な正六角柱形状、長六角柱形状又は長円柱形状を有していてもよい。
【0154】
また、上記した実施例においては、正方格子点の各々に主空孔14K1及び副空孔14K2からなる空孔対が配されたフォトニック結晶層14Pについて説明したが、正方格子点の各々に、主空孔14K1、副空孔14K2及び少なくとも1の空孔からなる空孔セットが配され、多重格子フォトニック結晶層が構成されていてもよい。
【0155】
なお、上記した実施例における数値は例示に過ぎず適宜改変して適用することができる。
【0156】
以上、詳細に説明したように、上記した本実施形態によれば、多重格子フォトニック結晶を埋め込む埋込層の表面の平坦性が大きく改善されたフォトニック結晶面発光レーザ(PCSEL)素子及びその製造方法を提供することができる。
【0157】
また、多重格子フォトニック結晶層上に成長された活性層の品質及び結晶性が高く、かつ光取り出し効率が高く、低閾値電流密度及び高量子効率で発振動作することができるフォトニック結晶面発光レーザ及びその製造方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0158】
10:PCSEL素子、11:半導体構造層、12:基板、13:第1のクラッド層、14:第1のガイド層、14A:下ガイド層、14P:フォトニック結晶層(PC層)、14B:埋込層、15:活性層、16:第2のガイド層、17;電子障壁層、18:第2のクラッド層、19:コンタクト層、20A:第1の電極、20B:第2の電極、20L:光放出領域、25:第2の埋込層、CD1,CD2:重心、K1/K2:主/副開口、14H1/14H2:主/副ホール、14K1/14K2:主/副空孔



図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図12C
図13
図14
図15
図16A
図16B
図17A
図17B
図18
図19A
図19B
図19C
図20A
図20B
図21A
図21B
図21C
図21D
図22A
図22B