(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025041306
(43)【公開日】2025-03-26
(54)【発明の名称】複合管、配管構造及び配管構造の製造方法
(51)【国際特許分類】
F16L 11/08 20060101AFI20250318BHJP
F16L 47/06 20060101ALI20250318BHJP
【FI】
F16L11/08 B
F16L47/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023148506
(22)【出願日】2023-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】中村 有佑
【テーマコード(参考)】
3H019
3H111
【Fターム(参考)】
3H019JA02
3H111BA15
3H111BA26
3H111CB04
3H111CB27
3H111CC03
3H111CC06
3H111DA26
3H111DB17
3H111DB23
(57)【要約】
【課題】従来、複合管を継手に挿入する際には、複合管の端部の外周面を切削する必要があった。複合管の端部を削ると、削った分だけ薄肉化して、強度が低下する。加えて、削った領域は粗面となるため、受口に挿入する際の抵抗が大きくなり、施工性に劣るという問題があった。本発明は上記の背景を鑑みてなされたものであり、より強度を高め、かつ施工性に優れる複合管を目的とする。
【解決手段】繊維強化樹脂層を有する複合管において、少なくとも軸線方向の一方又は双方の端部の外周面の算術表面粗さRaは、0.4μm以下であることよりなる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維強化樹脂層を有する複合管において、
少なくとも軸線方向の一方又は双方の端部の外周面の算術表面粗さRaは、0.4μm以下である、複合管。
【請求項2】
前記端部の外周面は、樹脂の硬化物で形成されている、請求項1に記載の複合管。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の複合管と、受口を有する継手とを有し、
前記複合管の端部は、前記受口の内部に位置する、配管構造。
【請求項4】
請求項3に記載の配管構造の製造方法であって、
前記複合管の端部の外周面を切削せずに、前記受口に前記複合管の端部を挿入する工程を有する、配管構造の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合管、配管構造及び配管構造の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地中に敷設する水道管、電力ケーブル等を地中に敷設するための管路として、強化プラスチック複合管(Fiberglass Reinfoced Plastic Mortar Pipes(FRPM管))等の複合管が知られている。複合管は、1層以上の繊維強化樹脂層(FRP層)を有する。
複合管は、地中に敷設されるため、高い強度が求められる。
例えば、特許文献1には、芯材と、芯材の外側に位置する第1外側FRP層と、第1外側FRP層の外方に位置する第2外側FRP層と、芯材の内側に位置する第1内側FRP層と、第1内側FRP層の内側に位置する第2内側FRP層と、第2内側FRP層の内側に位置する第3内側FRP層と、を有する複合管が提案されている。特許文献1に記載された発明によれば、外周面からの荷重に対する曲げ強度の向上が図られている。
【0003】
複合管を地中に敷設する際には、継手を介して、複合管同士を接続する。複合管同士を接続する際は、複合管の端部を継手の受口に挿入する。複合管は、その製造方法の特殊性から、均一な外径ではないため、複合管の端部の表面を削って外径を細くし、先端にテーパを成形した後に、複合管の端部を継手の受口に挿入する(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-074211号公報
【特許文献2】特開2013-068238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、複合管の端部を削ると、削った分だけ薄肉化して、強度が低下する。加えて、削った領域は粗面となるため、受口に挿入する際の抵抗が大きくなり、施工性に劣る。
本発明は、より強度を高め、かつ施工性に優れる複合管を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の態様を有する。
<1>
繊維強化樹脂層を有する複合管において、
少なくとも軸線方向の一方又は双方の端部の外周面の算術表面粗さRaは、0.4μm以下である、複合管。
<2>
前記端部の外周面は、樹脂の硬化物で形成されている、<1>に記載の複合管。
【0007】
<3>
<1>又は<2>に記載の複合管と、受口を有する継手とを有し、
前記複合管の端部は、前記受口の内部に位置する、配管構造。
【0008】
<4>
<3>に記載の配管構造の製造方法であって、
前記複合管の端部の外周面を切削せずに、前記受口に前記複合管の端部を挿入する工程を有する、配管構造の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の複合管によれば、より強度を高め、かつ施工性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の複合管の一実施形態を示す斜視図である。
【
図3】本発明の配管構造の一実施形態に係る断面図である。
【
図4】本発明の配管構造の製造方法の一例を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書及び特許請求の範囲において、数値範囲を示す「~」は、その前後に記載した数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
【0012】
(複合管)
本発明の複合管は、繊維強化樹脂層を有する。
図1の複合管10は、円筒状の繊維強化樹脂複合管(FRPM管)である。複合管10は、軸線方O方向の両端で開口している。
図2は、複合管10の管壁11の層構造を示す図である。
図2において、Xは軸線O方向を示し、Yは複合管10の周方向を示す。
【0013】
複合管10は、円筒状の芯材4を有する。複合管10の管壁11は、芯材4と、芯材4の外周面(径方向外方の面)に位置する第一の繊維強化樹脂層(FRP層)3と、第一のFRP層の外周面に位置する第二のFRP層2と、第二のFRP層2の外周面に位置する外層1と、芯材4の内周面(径方向内方の面)に位置する第三のFRP層5と、第三のFRP層5の内周面に位置する第四のFRP層6と、第四のFRP層6の内周面に位置する第五のFRP層7と、第五のFRP層7の内周面に位置する内層8と、を有する。即ち、複合管10の管壁11は、軸線Oから径方向外方に、内層8と、第五のFRP層7と、第四のFRP層6と、第三のFRP層5と、芯材4と、第一のFRP層3と、第二のFRP層2と、外層1とをこの順で有する。
なお、本発明の複合管は、円筒状に限られず、四角筒状等の角筒状でもよい。
【0014】
複合管10の呼び径(内径)は、例えば、200~3000mmである。
複合管10の外径Rは、例えば、216~3137mmである。加えて、複合管10の外経Rは、複合管10で最も太い部分から任意の端部かけて、実質的に同一である。「実質的に同一」とは、外径が段差を伴って変化していないことを意味する。即ち、複合管10の端部には、切削加工を施していない。切削加工を施さないことで、廃棄物の発生をより減量できる。外径が「実質的に同一」とは、複合管10で最も太い部分から任意の端部かけて、例えば、外径が10%以内である。
任意の地点の外径は、Y方向の任意の10点の測定値の平均である。
なお、複合管10の端部には、テーパ加工が施されていてもよい。テーパ加工を施すことで、後述する配管構造の製造方法において、複合管10をより円滑に挿入できる。但し、廃棄物の減量を図る観点から、テーパ加工は複合管10の端面から短い領域(例えば、50mm以下)に施されることが好ましい。
【0015】
管壁11の厚さTは、例えば、呼び径に応じて適宜選択され、例えば、7~67mmである。
加えて、管壁11の厚さTは、複合管10の一端から他端にかけて、実質的に同一である。「実質的に同一」とは、厚さTが段差を伴って変化していないことを意味する。実質的に同一とは、例えば、差異が10%の範囲内であることをいう。
任意の地点の厚さは、Y方向の任意の10点の測定値の平均である。
【0016】
<芯材>
芯材4は、レジンモルタルを含むレジンモルタル組成物の硬化物である。レジンモルタルとしては、特には限定されないが、例えば、熱硬化性樹脂、硅砂、炭酸カルシウム及びガラス繊維のチョップドストランドの混合物を例示できる。
熱硬化性樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂を例示できる。
レジンモルタル組成物は、レジンモルタルと骨材とを含む組成物(レジンコンクリート)でもよい。
骨材としては、砂利、砕石、玉石、高炉スラグ骨材又は人工軽量骨材等、従来、レジンコンクリートに配合されている骨材を例示できる。骨材の平均粒子径は、例えば、0.1~10mmである。
レジンコンクリート中、レジンモルタル100質量部に対する骨材の量は、例えば、60~90質量部である。
レジンモルタル組成物は、重合禁止剤、硬化剤、硬化促進剤等の添加剤を含有してもよい。
芯材4の厚さは、特には限定されないが、例えば、2~55mmである。芯材4の厚さは、例えば、複合管の厚さの30~90%である。
【0017】
<第一のFRP層>
第一のFRP層3は、樹脂を有するFRP樹脂組成物の樹脂硬化物であり、繊維を含む。第一のFRP層3内では、X方向に延びる複数の繊維がY方向に並んでいる。
強化繊維としては、特には限定されず、無機繊維及び有機繊維のいずれでもよい。無機繊維としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維等を例示できる。有機繊維としては、例えば、アラミド繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維等を例示できる。
繊維は、単繊維でもよいし、単繊維を撚り合わせたロービングでもよい。
繊維の太さは、例えば、40~5000texである。
【0018】
第一のFRP層の繊維は、Y方向10cm当たりで10~400本が好ましい。繊維の数が上記下限値以上であると、強度をより高められる。繊維の数が上記上限値以下であると、生産性をより高められる。
第一のFRP層3中で、繊維は、X方向に連続していなくもてよく、所定長さの複数の繊維がX方向に沿って並んでいてもよい。このとき、軸方向に隣接する繊維同士の一部が軸線O方向で重なっていてもよい。また、繊維は、管壁11の厚み方向で、複数層に重なっていてもよい。
第一のFRP層3中の繊維の長さ方向は、X方向に沿っていてもよいし、Y方向に沿っていてもよいし、軸線Oを軸に螺旋を描いていてもよい。また、例えば、第一のFRP層3中の繊維は、織物、編物、不織布でもよい。
【0019】
FRP樹脂組成物の樹脂としては、熱硬化性樹脂が好ましい。熱硬化性樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等を例示できる。
FRP樹脂組成物は、添加剤を含んでもよい。添加時剤としては、例えば、硬化剤、硬化促進剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤を例示できる。
【0020】
FRP樹脂組成物中(即ち、第一のFRP層3中)、繊維の含有割合は、樹脂100質量部に対して、例えば、100~200質量部が好ましい。
【0021】
第一のFRP層3の厚さは、外径R、複合管10に求める強度等を勘案して決定でき、例えば、0.5~6.0mmである。
【0022】
<第二のFRP層>
第二のFRP層2は、第一のFRP層3と同様である。
第二のFRP層2の繊維の素材、長さ、長さ方向の向きは、第一のFRP層3の繊維の素材、長さ、長さ方向の向きと、同じでもよいし、異なってもよい。
第二のFRP層2の樹脂の種類は、第一のFRP層3の樹脂の種類と、同じでもよいし、異なってもよい。
第二のFRP層2の厚さは、第一のFRP層3の厚さと、同じでもよいし、異なってもよい。
但し、複合管10の外周面の平滑性を確実に高める観点から、第二のFRP層2の繊維の長手方向がY方向に沿い、第二のFRP層2の厚さは第一のFRP層3の厚さよりも厚いことが好ましい。これにより、第二のFRP層2の繊維の巻き付けテンションをより均一にして、外周面をより平滑にできる。
【0023】
第一のFRP層3の厚さと第二のFRP層2の厚さとの合計(外側FRP層の厚さ)は、呼び径等を勘案して適宜決定でき、例えば、1.0~12.0mmが好ましい。外側FRP層の厚さが上記下限値以上であると、複合管10の強度をより高められる。外側FRP層の厚さが上記上限値以下であると、生産性をより高め、FRP層の厚さの変動幅をより小さくできる。
【0024】
<第三のFRP層>
第三のFRP層5は、第一のFRP層3と同様である。
第三のFRP層5の繊維の素材、長さ、長さ方向の向きは、第一のFRP層3の繊維の素材、長さ、長さ方向の向きと、同じでもよいし、異なってもよい。
第三のFRP層5の樹脂の種類は、第一のFRP層3の樹脂の種類と、同じでもよいし、異なってもよい。
第三のFRP層5の厚さは、第一のFRP層3の厚さと、同じでもよいし、異なってもよい。
【0025】
<第四のFRP層>
第四のFRP層6は、第一のFRP層3と同様である。
第四のFRP層6の繊維の素材、長さ、長さ方向の向きは、第一のFRP層3の繊維の素材、長さ、長さ方向の向きと、同じでもよいし、異なってもよい。
第四のFRP層6の樹脂の種類は、第一のFRP層3の樹脂の種類と、同じでもよいし、異なってもよい。
第四のFRP層6の厚さは、第一のFRP層3の厚さと、同じでもよいし、異なってもよい。
【0026】
<第五のFRP層>
第五のFRP層7は、第一のFRP層3と同様である。
第五のFRP層7の繊維の素材、長さ、長さ方向の向きは、第一のFRP層3の繊維の素材、長さ、長さ方向の向きと、同じでもよいし、異なってもよい。
第五のFRP層7の樹脂の種類は、第一のFRP層3の樹脂の種類と、同じでもよいし、異なってもよい。
第五のFRP層7の厚さは、第一のFRP層3の厚さと、同じでもよいし、異なってもよい。
【0027】
第三のFRP層5の厚さと第四のFRP層6の厚さと第五のFRP層7の厚さとの合計(内側FRP層の厚さ)は、呼び径等を勘案して適宜決定でき、外側FRP層の厚さと同様である。
内側FRP層の厚さと、外側FRP層の厚さとは、同じでもよいし、異なってもよい。ただし、強度向上の観点からは、外側FRP層の厚さは、内側FRP層の厚さと同等が好ましい。同等とは、両者の差異が±10%の範囲内であることをいう。
【0028】
<外層>
外層1は、複合管10の外周面を形成する。
外層1は、例えば、不織布の表面を樹脂で被覆した被覆シート、又は、不織布に樹脂を含浸させた含浸シートの硬化物等を例示できる。あるいは、樹脂組成物が硬化した樹脂層(不織布を含まず)でもよい。また、外層1の樹脂は、非発泡樹脂でもよいし、発泡樹脂でもよいが、複合管10の外周面をより平滑にする観点からは、非発泡樹脂が好ましい。
かかる外層1を有することで、複合管10の外周面を樹脂の硬化物で形成して、複合管10の外周面を平滑にできる。加えて、外層1を有することで、複合管10のFRP層を保護できる。
【0029】
不織布としては、無機不織布、有機不織布等を例示できる。
無機不織布としては、ガラスペーパー、ガラス繊維(ガラススダレ)、ガラスクロス、ガラス繊維等の不織布を例示できる。有機不織布としては、ポリエステル繊維の不織布等を例示できる。
外層1を構成する樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂が挙げられ、中でも熱硬化性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂等を例示できる。熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等を例示できる。
【0030】
外層1の厚さは、例えば、0.1~1.0mmが好ましく、0.3~0.7mmがより好ましい。上記下限値以上であると、第二のFRP層2の外周面の凹凸の影響を十分に低減して、複合管10の外周面をより平滑にできる。加えて、外層1の厚さが上記下限値以上であると、外力からの損傷をより軽減できる。外層1の厚さが上記上限値以下であると、生産性をより高められる。
【0031】
<内層>
内層8は、外層1と同様である。内層8の構成は、外層1の構成と同じでもよいし、異なってもよい。
内層8の厚さは、外層1と同様である。内層8の厚さは、外層1の厚さと同じでもよいし、異なってもよい。
内層8の厚さと、外層1の厚さとは、同じでもよいし、異なってもよい。ただし、外力、液体浸透に対する保護の観点からは、外層1の厚さは、内層8の厚さの同等以上が好ましく、同等がより好ましい。外層1の厚さが内層8の厚さと同等以上であると、複合管10への外力を緩和して、複合管10の強度をより高められる。加えて、外層1の厚さが内層8の厚さと同等であると、外力が発生した際の応力分布を均等にして、局所的な応力集中を避け、複合管10の強度をより高められる。同等とは、両者の差異が±10%以内であることをいう。
【0032】
<複合管の表面粗さ>
複合管10の外周面は、平滑であることが好ましい。複合管10の一方の端部12並びに他方の端部13の一方もしくは双方の外周面の算術表面粗さRaは、0.4μm以下が好ましい。以下、外周面の算術表面粗さRaが0.4μm以下である端部を、「特定粗さ端部」ということがある。特定粗さ端部を有することで、端部の外周面を削ることなく、継手の受け口に、容易に挿入できるため、施工を容易にし、複合管10及びこれを有する配管構造の強度を高められる。
算術平均粗さRaは、JIS B 0601(2013)に準拠し、外周面の任意の2カ所の測定値の平均値である。測定個所としては、ボイド、空隙、凹凸等の外観不良箇所を避ける。
本実施形態において、「特定粗さ端部」は、後述する配管構造において、継手の受口に挿入される端部(即ち、挿し口)である。
挿し口の外周面の算術表面粗さは、外層1の組成、製造条件等の組み合わせで、調節できる。
【0033】
<複合管の製造方法>
複合管10の製造方法は、特に限定されず、フィラメントワインディング法、遠心成形法、引抜成形法又はハンドレイアップ法等、従来公知の製造方法を採用できる。
フィラメントワインディング法は、芯筒を回転させながら一定速度で送り、内層8の材料(樹脂、不織布等)、第五のFRP層7の材料(FRP樹脂組成物、繊維等)、第四のFRP層6(FRP樹脂組成物、繊維等)、第三のFRP層5(FRP樹脂組成物、繊維等)、芯材4(レジンモルタル組成物、骨材等)、第一のFRP層3(FRP樹脂組成物、繊維等)、第二のFRP層2(FRP樹脂組成物、繊維等)、外層1の材料(樹脂、不織布等)を順次巻き付け、順次硬化させた後、所望の長さに切断して、複合管10とする。これらの方法によれば、芯筒のサイズを変更することにより、様々なサイズの複合管10を製造できる。
本実施形態において、外層1の材料を巻き付けた後には、外層1の樹脂が未硬化の状態で、外面を平滑にすること(平滑化工程)が好ましい。平滑化工程では、例えば、ローラ、スキージ等を用いる。平滑化工程を有することで、複合管10の外周面をより平滑にして、特定粗さ端部をより確実に形成できる。
また、所望の複合管10を得たのち、端部12並び端部13の一方もしくは双方を研磨してもよい(研磨工程)。研磨工程を有することで、端部12並び端部13の一方もしくは双方をより確実に、所望の算術表面粗さにできる。研磨工程の研磨方法としては、例えば、グラインダー等を用いた手研削、回転式砥石等を用いた機械研削、サンドブラスト等を例示できる。
【0034】
複合管10の外周面において、特定粗さ端部と他の領域との境界には、段差を有しない(即ち、特定粗さ端部が他の領域よりも段差を介して細くなっていない)ことが好ましい。段差を有しないことで、複合管10の強度をより高められる。
【0035】
また複合管10の製造方法としては、特開2001-205711号公報の[0016]~[0019]に記載された複合管の製造方法、特開2001-205712号公報の[0020]~[0028]に記載された複合管の製造方法又は特開平10-193467号公報の[0009]~[0019]に記載された複合管の製造方法を例示できる。
即ち、管軸を中心に回転する円筒状の金型の周面に、無端のスチールベルトを螺旋状に巻き付けつつ、巻き付けたスチールベルトの表面に、内層8の材料、第五のFRP層7の材料、第四のFRP層)、第三のFRP層5、芯材4、第一のFRP層3、第二のFRP層2、外層1の材料料をこの順で供給し、かつ各樹脂組成物を硬化して、複合管10を連続的に形成する。スチールベルトは、円筒状の金型の回転により前進し、円筒状の金型の終端から金型の内部を通って金型の始端に戻る。
このため、複合管10は、円筒状の金型の軸線方向に伸長する。伸長した複合管10を任意の長さで切断することで、複合管10の製品を得る。
この製造方法によれば、金型の外径を変更することで、複合管10の内径を調節できる。
【0036】
(配管構造)
本発明の配管構造は、複合管と受口を有する継手とを有し、複合管の端部が受口の内部に位置している。即ち、配管構造は、複合管の指し口が継手の受口に挿入されてなる。
以下、図面を参照して、本実施形態の配管構造を説明する。
【0037】
図3の配管構造100は、第一の複合管10aと、第二の複合管10bと、継手20とを有する。
継手20は、円筒状で、軸線O方向の一方に開口する開口部29aと他方に開口する開口する開口部29bとを有する。即ち、継手20は、軸線O方向の一方に開口する受口と、他方に開口する受口とを有する。
【0038】
継手20内には、一方の端面の近傍に位置する第一のシールゴム22と、他方の端面の近傍に位置する第二のシールゴム26と、第一のシールゴム22と第二のシールゴム26との間で第一のシールゴム22寄りに位置するストッパーゴム24とが存在する。
【0039】
本実施形態では、第一のシールゴム22と第二のシールゴム26とは同じである。シールゴムについて、
図3~4を用いて説明する。
図4の第二のシールゴム26は、軸線Oを中心軸とする円環状の部材である。第二のシールゴム26は、その外周面が継手20の内面に接している。第二のシールゴム26は、その内部に第二の複合管10bの端部12を受け入れている(
図3)。この状態で第二のシールゴム26の内面と第二の複合管10bの端部12の外周面とは接している。
【0040】
本実施形態の第二のシールゴム26は、リップ部26aを有する。リップ部26aは、軸線Oに向けて突出し(継手20の径方向内方に突出し)、かつ、開口部29bから開口部29aに向かうに従い、軸線O方向に近づいている。かかる形状のリップ部26aを有することで、第二のシールゴム26で受け入れた第二の複合管10bを抜けにくくしている。
本実施形態の第二のシールゴム26は、1個のリップ部26aを有している。しかしながら、リップ部26aの数は、2個以上でもよく、1~3個が好ましい。
シールゴムが2個以上のリップ部を有する場合、リップ部の大きさは相互に同じでもよいし、異なってもよい。
【0041】
上述の通り、第一のシールゴム22は第二のシールゴム26と同様である。
図3~4に示すように、第一のシールゴム22は、その外周面が継手20の内面に接している。第一のシールゴム22は、その内部に第一の複合管10aの端部13を受け入れている。この状態で、第一のシールゴム22の内面と第一の複合管10aの端部13の外周面とは接している。
【0042】
ストッパーゴム24は、軸線Oを中心軸とする円環状の部材である。ストッパーゴム24は、その外周面が継手20の内面に接している。本実施形態のストッパーゴム24は、継手20内に装着された状態で、他方の端面寄りの位置に、軸線Oに向けて張り出す(継手20の径方向内方に張り出す)張出部24aを有する。
ストッパーゴム24は、内部に第一の複合管10aの端部13を受け入れている。ストッパーゴム24の内面と第一の複合管10aの端部13の外周面とは接している。また、第一の複合管10aの端部13の端面は、張出部24aに接している。また、第二の複合管10bの端部12の端面は、張出部24aに接している。
第一の複合管10aの端面と第二の複合管10bの端面とがストッパーゴム24の張出部24aに当接した状態で、第一の複合管10aの内面と第二の複合管10bの内面と張出部24aの内面とは面一である。
【0043】
第二のシールゴム26の素材としては、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブダジエンゴム(NBR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)等の合成ゴム又は天然ゴム(NR)などを例示できる。
第二のシールゴム26の引張強さは、10MPa以上が好ましく、14MPa以上がより好ましい。第二のシールゴム26の引張強さの上限は特に限定されないが、例えば、30MPa以下が好ましい。引張強度は、JIS K 6251(2017)に準拠して求められる(但し、試験片はダンベル状3号試験片を用いる)。
【0044】
第二のシールゴム26の引張伸びは、200~600%が好ましく、400~600%がより好ましい。引張伸びは、JIS K 6251(2017)に準拠して求められる(但し、試験片はダンベル状3号試験片を用いる)。
【0045】
第二のシールゴム26の圧縮永久ひずみは、30%以下が好ましく、20%以下がより好ましい。圧縮永久ひずみは、JIS K 6262(2013)の「5.圧縮永久歪試験」に準拠して求められる(但し、試験条件は70℃×22hr、25%圧縮とする)。
【0046】
第二のシールゴム26の大きさは、第二の複合管10bの外径、継手20の内径等を勘案して適宜決定できる。
【0047】
第一のシールゴム22の素材は、第二のシールゴム26の素材と同様である。第一のシールゴム22の素材と第二のシールゴム26の素材とは、同じでもよいし、異なってもよい。
第一のシールゴム22の物性(引張強さ、引張伸び、圧縮永久ひずみ)は、第二のシールゴム26の物性と同様である。第一のシールゴム22の物性と第二のシールゴム26の物性とは、同じでもよいし、異なってもよい。
第一のシールゴム22の大きさは、第二のシールゴム26の大きさを同様である。第一のシールゴム22の大きさと第二のシールゴム26の大きさとは、同じでもよいし、異なってもよい。
【0048】
ストッパーゴム24の素材は、第二のシールゴム26の素材と同様である。ストッパーゴム24の素材と第二のシールゴム26の素材とは、同じでもよいし、異なってもよい。
ストッパーゴム24の物性(引張強さ、引張伸び、圧縮永久ひずみ)は、第二のシールゴム26の物性と同様である。ストッパーゴム24の物性と第二のシールゴム26の物性とは、同じでもよいし、異なってもよい。
ストッパーゴム24の大きさは、第二のシールゴム26の大きさと同様である。
【0049】
<配管構造の製造方法>
本発明の配管構造の製造方法は、複合管の端部を継手の受口に挿入し、受口内で複合管を固定する工程を有する。
以下、配管構造の製造方法の一例について、
図4を用いて説明する。
【0050】
継手20内に、第一のシールゴム22、ストッパーゴム24及び第二のシールゴム26を装着する。この際、第一のシールゴム22、ストッパーゴム24、第二のシールゴム26を継手20の内面の溝に嵌め合わせる。あるいは、第一のシールゴム22、ストッパーゴム24、第二のシールゴム26を継手20の内面に接着する。
【0051】
次いで、端部13の外周面を切削せずに、開口部29aから第一の複合管10aの端部13を継手20内に挿入する。この際、第一の複合管10aの端部13が特定粗さ端部であると、第一のシールゴム22内及びストッパーゴム24内に容易に挿入できる。
端部13を第一のシールゴム22内に挿入すると、端部13は、軸線Oから離れる方向(外方)にリップ部を押し付ける。これにより、リップ部は端部13を押し返す方向に付勢されて、第一の複合管10aに接する。リップ部が第一の複合管10aと接した状態では、端部13の外周面が特定の算術表面粗さRaであるため、第一のシールゴム22(特にリップ部)及びストッパーゴム24の内周面と、端部13の外周面との接触面積が大きくなり、第一の複合管10aをより抜けにくくできる。
【0052】
次に、端部12の外周面を切削せずに、開口部29bから第二の複合管10bの端部12を継手20内に挿入する(矢印F方向)。この際、第二の複合管10bの端部12が特定粗さ端部であると、第二のシールゴム26内に容易に挿入できる。
端部12を第二のシールゴム26内に挿入すると、端部13は、軸線0から離れる方向(外方)にリップ部26aを押し付ける。これにより、リップ部26aは端部12を押し返す方向に付勢されて、第二の複合管10bに接する。リップ部26aが第二の複合管10bと接した状態では、端部12の外周面が特定の算術表面粗さであるため、第二のシールゴム26の内周面と、端部12の外周面との接触面積が大きくなり、第二の複合管10bをより抜けにくくできる。
【0053】
上述の製造方法で得られた配管構造100は、第一の複合管10aの端部13及び第二の複合管10bの端部12は、外周面が切削されていないため、得られた配管構造の複合管10の端部の強度に優れる。
【0054】
加えて、上記の製造方法によれば、複合管を切削しないため、廃棄物の発生を減量でき、環境負荷の低減を図れる。
【0055】
(その他実施形態)
上述の実施形態では、複合管が芯材を有するが、本発明はFRP層を有すればよく、複合管が芯材を有しなくてもよい。
【0056】
上述の実施形態では、外側FRP層が2層とされているが、本発明はこれに限定されず、1層でもよいよいし、3層以上でもよい。
また、上述の実施形態では、内側FRP層が3層とされているが、本発明はこれに限定されず、2層以下でもよいし、4層以上でもよい。
FRP層の数は、1層以上であればよく、複合管に求める強度や用途に応じて適宜決定できる。
【0057】
上述の実施形態では、複合管が外層及び内層を有するが、本発明はこれに限定されず、外層並びに内層の一方若しくは双方を有しなくてもよい。但し、複合管に特定粗さ端部をより確実に形成する観点からは、外層を有することが好ましい。また、複合管の強度をより高める観点からは、外層及び内層を有することが好ましい。
【0058】
上述の実施形態では、円筒状の継手を有するが、本発明はこれに限定されず、継手が屈曲していてもよい、3個以上の受け口を有していてもよい。
【実施例0059】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
【0060】
(評価方法)
<施工性>
図3の配管構造と同様の配管構造を製造し、その際の施工性を下記評価基準に従って評価した。
【0061】
≪評価基準≫
〇:複合管を継手に挿入する際に、1.0トン-レバーホイストチェーンブロックで挿入できた。
×:複合管を継手に挿入する際に、1.6トン-レバーホイストチェーンブロックを要した。
【0062】
<扁平試験>
JIS A 5350(1991)の内圧管5種、C形φ500にて、「8.2 外圧試験」に規定された外圧試験を行い、基準たわみ外圧値を測定した。
【0063】
(実施例1)
図2の管壁11と同様の構成を有する複合管(呼び径=500mm、厚さT=11mm)を作製した。
本例の複合管の外層及び内層の仕様を
図1~2の複合管10と同様の仕様とした。即ち、軸線から径方向外方に、内層と、第五のFRP層と、第四のFRP層と、第三のFRP層と、芯材と、第一のFRP層と、第二のFRP層と、外層とをこの順で管壁とした。
外層及び内層の厚さは、表中に記載の通りとした。
得られた複合管の外周面の算術表面粗さ、施工性、扁平試験を行い、その結果を表中に示す。
【0064】
(実施例2~4)
外層の厚さと、内層の厚さとを表中の厚さとした以外は、実施例1と同様にして、各例の複合管を得た。得られた複合管の外周面の算術表面粗さ、施工性、扁平試験を行い、その結果を表中に示す。
【0065】
(比較例1)
厚さTを12mmとした以外は、実施例2の複合管と同様の複合管を作製した。作製した複合管の端部の外周面を切削し、表中の厚さの外層とし、本例の複合管とした。得られた複合管の外周面の算術表面粗さ、施工性、扁平試験を行い、その結果を表中に示す。
【0066】
【0067】
表1に示すように、本発明を適用した実施例1-4は、いずれも施工性が「〇」、扁平試験の値が22.4~22.7kN/mであった。
端部の算術表面粗さRaが0.946μmである比較例1は、施工性が「×」で、扁平試験の値が19.3kN/mであった。
これらの結果から、本発明を適用することで、より強度を高め、かつ施工性に優れることを確認できた。