(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025041330
(43)【公開日】2025-03-26
(54)【発明の名称】能動騒音制御システム
(51)【国際特許分類】
G10K 11/178 20060101AFI20250318BHJP
【FI】
G10K11/178 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023148546
(22)【出願日】2023-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(72)【発明者】
【氏名】伊勢 友彦
【テーマコード(参考)】
5D061
【Fターム(参考)】
5D061FF02
(57)【要約】
【課題】上流で騒音を検出しないブラインド型の構成において高周波数領域についても騒音を良好にキャンセルできる「能動騒音制御システム」を提供する。
【解決手段】更新制御部16は、マイク11が出力する音のレベルが大きくなったときにICA処理部15に独立成分分析処理を行わせる。ICA処理部15は、独立成分分析処理において、独立成分分析により、マイク11が出力する観測音データから騒音成分を分離し、分離した騒音成分を表すデータを統計的騒音データ14として格納する。マイク11の出力をエラーとして適応動作を行う適応フィルタ13は、格納された統計的騒音データ14にフィルタ処理を施した騒音キャンセル音データが表す音を、スピーカ12から騒音キャンセル音NCとして出力する。また、適応フィルタ13は、マイク11が出力する観測音データをエラーとしてフィルタ処理のフィルタ係数を適応させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
能動騒音制御を行う能動騒音制御システムであって、
収音した音を観測信号として出力するマイクと、
騒音キャンセル音を出力するスピーカと、
適応フィルタと、
記憶手段と、
前記観測信号から騒音成分を分離し、分離した騒音成分を表す疑似騒音信号を前記記憶手段に格納する騒音分離処理を所定の契機で行う騒音分離手段と、
前記記憶手段に格納された疑似騒音信号を入力とする適応フィルタとを有し、
当該適応フィルタは、前記観測信号をエラーとして適応動作を行って、前記疑似騒音信号から前記スピーカから出力する騒音キャンセル音を生成することを特徴とする能動騒音制御システム。
【請求項2】
能動騒音制御を行う能動騒音制御システムであって、
マイクと、
前記マイクの出力を周波数領域の信号に変換し観測信号として出力する周波数解析手段と、
騒音キャンセル音を出力するスピーカと、
適応フィルタと、
記憶手段と、
時間領域変換手段と、
周波数領域において前記観測信号から騒音成分を分離し、分離した騒音成分を周波数領域において表す疑似騒音信号を前記記憶手段に格納する騒音分離処理を所定の契機で行う騒音分離手段と、
前記記憶手段に格納された疑似騒音信号を入力とする適応フィルタとを有し、
当該適応フィルタは、周波数領域において、前記観測信号をエラーとして適応動作を行い、
前記時間領域変換手段は、前記適応フィルタの出力を時間領域の信号に変換して、前記スピーカから出力する騒音キャンセル音を生成することを特徴とする能動騒音制御システム。
【請求項3】
請求項2記載の能動騒音制御システムであって、
前記周波数解析手段は、高速フーリエ変換によってマイクの出力を周波数領域の信号に変換し観測信号として出力し、
前記時間領域変換手段は、逆高速フーリエ変換によって前記適応フィルタの出力を時間領域の信号に変換することを特徴とする能動騒音制御システム。
【請求項4】
能動騒音制御を行う能動騒音制御システムであって、
マイクと、
前記マイクの出力を、直交基底を重みづけすることにより時間領域の信号を生成する所定の変換関数の重み係数に変換し観測信号として出力する解析手段と、
騒音キャンセル音を出力するスピーカと、
適応フィルタと、
記憶手段と、
時間領域変換手段と、
前記観測信号から騒音成分を分離し疑似騒音信号として前記記憶手段に格納する騒音分離処理を所定の契機で行う騒音分離手段と、
前記記憶手段に格納された疑似騒音信号を入力とする適応フィルタとを有し、
当該適応フィルタは、前記観測信号をエラーとして適応動作を行い、
前記時間領域変換手段は、前記適応フィルタの出力を前記変換関数により時間領域の信号に変換して、前記スピーカから出力する騒音キャンセル音を生成することを特徴とする能動騒音制御システム。
【請求項5】
請求項4記載の能動騒音制御システムであって、
前記解析手段は、高速フーリエ変換によってマイクの出力を前記重み係数に変換し観測信号として出力し、
前記時間領域変換手段は、逆高速フーリエ変換によって前記適応フィルタの出力を時間領域の信号に変換することを特徴とする能動騒音制御システム。
【請求項6】
請求項4記載の能動騒音制御システムであって、
前記解析手段は、ウェーブレット変換によってマイクの出力を前記重み係数に変換し観測信号として出力し、
前記時間領域変換手段は、逆ウェーブレット変換によって前記適応フィルタの出力を時間領域の信号に変換することを特徴とする能動騒音制御システム。
【請求項7】
請求項1、2、3、4、5または6記載の能動騒音制御システムであって、
前記騒音分離手段は、前記マイクの出力が所定レベルより大きくなったことを、前記所定の契機として、前記騒音分離処理を行うことを特徴とする能動騒音制御システム。
【請求項8】
請求項1、2、3、4、5または6記載の能動騒音制御システムであって、
前記騒音分離手段は、独立成分分析(ICA)によって、前記観測信号から騒音成分を分離することを特徴とする能動騒音制御システム。
【請求項9】
請求項1、2、3、4、5または6記載の能動騒音制御システムであって、
前記騒音分離手段は、予め前記観測信号から騒音成分を推論するように学習させたニューラルネットワークによって前記観測信号から騒音成分を推論して分離することを特徴とする能動騒音制御システム。
【請求項10】
請求項1、2、3、4、5または6記載の能動騒音制御システムであって、
前記騒音分離手段は、主成分分析によって、前記観測信号の所定の次数の主成分を算定し、算定した主成分を、前記騒音成分として分離することを特徴とする能動騒音制御システム。
【請求項11】
能動騒音制御を行う能動騒音制御システムであって、
マイクと、
前記マイクの出力を、直交基底を重みづけすることにより時間領域の信号を生成する所定の変換関数の重み係数に変換し観測信号として出力する解析手段と、
騒音キャンセル音を出力するスピーカと、
適応フィルタと、
前記変換関数によって擬似的な騒音が生成される前記重み係数を、疑似騒音信号として予め記憶した記憶手段と、
時間領域変換手段と、
前記記憶手段に格納された疑似騒音信号を入力とする適応フィルタとを有し、
当該適応フィルタは、前記観測信号をエラーとして適応動作を行い、
前記時間領域変換手段は、前記適応フィルタの出力を前記変換関数により時間領域の信号に変換して、前記スピーカから出力する騒音キャンセル音を生成することを特徴とする能動騒音制御システム。
【請求項12】
請求項11記載の能動騒音制御システムであって、
前記解析手段は、高速フーリエ変換によってマイクの出力を前記重み係数に変換し観測信号として出力し、
前記時間領域変換手段は、逆高速フーリエ変換によって前記適応フィルタの出力を時間領域の信号に変換することを特徴とする能動騒音制御システム。
【請求項13】
請求項11記載の能動騒音制御システムであって、
前記解析手段は、ウェーブレット変換によってマイクの出力を前記重み係数に変換し観測信号として出力し、
前記時間領域変換手段は、逆ウェーブレット変換によって前記適応フィルタの出力を時間領域の信号に変換することを特徴とする能動騒音制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、騒音を打ち消す騒音キャンセル音により騒音を低減する能動騒音制御(ANC;Active Noise Control)の技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
能動騒音制御する技術としては、フィードフォワード型の能動騒音制御とフィードバック型の能動騒音制御が知られている(たとえば、特許文献1)。
能動騒音制御では、騒音キャンセル対象位置よりも騒音の上流となる位置で騒音源となる機構の振動や回転数や騒音源近くの音などの騒音と相関のある事象をセンサで検出して参照信号を生成する。そして、騒音キャンセル対象位置近くに配置したマイクで収音した音をエラー信号として適応させた適応フィルタで、参照信号から騒音を打ち消す騒音キャンセル音を生成しスピーカから出力する。
【0003】
一方、フィードバック型の能動騒音制御においても、適応フィルタで騒音キャンセル音を生成しスピーカから出力する。ただし、フィードバック型の能動騒音制御では、騒音キャンセル対象位置近くに配置したマイクで収音した音をエラー信号とし、エラー信号に推定したスピーカからマイクに伝搬する騒音キャンセル音を加算した信号を騒音を表す騒音信号として、エラー信号で適応させた適応フィルタで騒音信号から騒音を打ち消す騒音キャンセル音を生成する。
【0004】
また、本出願に関連する技術としては、音声とノイズが混在する音を、独立成分分析(ICA)により音声とノイズに分離する技術(たとえば、特許文献2)や、ニューラルネットワークを用いて、複数のオーディオソースが混在するオーディオ信号から、個々のオーディオソースを分離する技術(たとえば、特許文献3)が知られている。
【0005】
また、本出願に関連する技術としては、音の周波数帯域毎の強さをデータ(変数)とする主成分分析により、音の第1主成分と第2主成分を求める技術が知られている(たとえば、特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-090736号公報
【特許文献2】特表2006-510069号公報
【特許文献3】特表2009-511954号公報
【特許文献4】特開平11-117875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したフィードフォワード型の能動騒音制御は、騒音キャンセル対象位置近くに配置した適応フィルタを適応するためのエラーを収音するマイクの他に、参照信号の生成のために、騒音キャンセル対象位置よりも騒音の上流となる位置で騒音と相関のある事象を検出する特段のセンサが必要であり、諸事情により、このようなセンサを備えられない場合には、能動騒音制御を行うことができない。
【0008】
一方で、フィードバック型の能動騒音制御によれば、騒音キャンセル対象位置近くに配置したマイクの他に、騒音と相関のある事象を検出するセンサは必要ないが、フィードバックループの伝搬の遅延のために、高周波数領域の騒音をキャンセルすることが困難であるという問題がある。
また、フィードフォワード側の能動騒音制御においても、騒音と相関のある事象を検出するセンサが騒音キャンセル対象位置に近い場合には、必要となる騒音キャンセル音の高周波数領域の成分を生成するための演算処理時間が不足し、高周波数領域について騒音を良好にキャンセルすることが困難となる。
【0009】
そこで、本発明は、騒音キャンセル対象位置よりも騒音の上流となる位置において騒音と相関のある事象を検出するセンサを設けないブラインド型の構成において、高周波数領域についても騒音を良好にキャンセルできる能動騒音制御を実現することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題達成のために、本発明は、能動騒音制御を行う能動騒音制御システムに、収音した音を観測信号として出力するマイクと、騒音キャンセル音を出力するスピーカと、適応フィルタと、記憶手段と、前記観測信号から騒音成分を分離し、分離した騒音成分を表す疑似騒音信号を前記記憶手段に格納する騒音分離処理を所定の契機で行う騒音分離手段と、前記記憶手段に格納された疑似騒音信号を入力とする適応フィルタとを備えたものである。ここで、当該適応フィルタは、前記観測信号をエラーとして適応動作を行って、前記疑似騒音信号から前記スピーカから出力する騒音キャンセル音を生成する。
【0011】
また、前記課題達成のために、本発明は、能動騒音制御を行う能動騒音制御システムに、マイクと、前記マイクの出力を周波数領域の信号に変換し観測信号として出力する周波数解析手段と、騒音キャンセル音を出力するスピーカと、適応フィルタと、記憶手段と、時間領域変換手段と、周波数領域において前記観測信号から騒音成分を分離し、分離した騒音成分を周波数領域において表す疑似騒音信号を前記記憶手段に格納する騒音分離処理を所定の契機で行う騒音分離手段と、前記記憶手段に格納された疑似騒音信号を入力とする適応フィルタとを備えたものである。ここで、当該適応フィルタは、周波数領域において、前記観測信号をエラーとして適応動作を行い、前記時間領域変換手段は、前記適応フィルタの出力を時間領域の信号に変換して、前記スピーカから出力する騒音キャンセル音を生成する。
【0012】
ここで、この能動騒音制御システムは、前記周波数解析手段において、高速フーリエ変換によってマイクの出力を周波数領域の信号に変換し観測信号として出力し、前記時間領域変換手段において、逆高速フーリエ変換によって前記適応フィルタの出力を時間領域の信号に変換するように構成してもよい。
【0013】
また、前記課題達成のために、本発明は、能動騒音制御を行う能動騒音制御システムに、マイクと、前記マイクの出力を、直交基底を重みづけすることにより時間領域の信号を生成する所定の変換関数の重み係数に変換し観測信号として出力する解析手段と、騒音キャンセル音を出力するスピーカと、適応フィルタと、記憶手段と、時間領域変換手段と、前記観測信号から騒音成分を分離し疑似騒音信号として前記記憶手段に格納する騒音分離処理を所定の契機で行う騒音分離手段と、前記記憶手段に格納された疑似騒音信号を入力とする適応フィルタとを備えたものである。ここで、当該適応フィルタは、前記観測信号をエラーとして適応動作を行い、前記時間領域変換手段は、前記適応フィルタの出力を前記変換関数により時間領域の信号に変換して、前記スピーカから出力する騒音キャンセル音を生成する。
【0014】
ここで、この能動騒音制御システムにおいて、前記解析手段を、高速フーリエ変換によってマイクの出力を前記重み係数に変換し観測信号として出力するものとし、前記時間領域変換手段を、逆高速フーリエ変換によって前記適応フィルタの出力を時間領域の信号に変換するものとしてよい。
【0015】
または、前記解析手段を、ウェーブレット変換によってマイクの出力を前記重み係数に変換し観測信号として出力するものとし、前記時間領域変換手段を、逆ウェーブレット変換によって前記適応フィルタの出力を時間領域の信号に変換するものとしてもよい。
また、以上の能動騒音制御システムは、前記騒音分離手段において、前記マイクの出力が所定レベルより大きくなったことを、前記所定の契機として、前記騒音分離処理を行うように構成してもよい。
また、以上の能動騒音制御システムは、前記騒音分離手段において、独立成分分析(ICA)によって、前記観測信号から騒音成分を分離するように構成してもよい。
または、以上の能動騒音制御システムは、前記騒音分離手段において、予め前記観測信号から騒音成分を推論するように学習させたニューラルネットワークによって前記観測信号から騒音成分を推論して分離するように構成してもよい。
または、以上の能動騒音制御システムは、前記騒音分離手段において、主成分分析によって、前記観測信号の所定の次数の主成分を算定し、算定した主成分を、前記騒音成分として分離するように構成してもよい。
以上のような能動騒音制御システムによれば、適応フィルタを適応するためのエラーを収音するマイクの出力中の騒音成分を分離して疑似騒音信号として記憶し、記憶した疑似騒音信号を適応フィルタの入力として能動騒音制御によって騒音キャンセル音を生成することができる。また、フィードバック型の能動騒音制御のように高周波数領域について騒音を良好にキャンセルできない原因となるフィードバックループの伝搬の遅延の問題は発生しない。また、予め記憶した疑似騒音データを適応フィルタの入力として用いるので、フィードフォワード側の能動騒音制御において、騒音キャンセル対象位置よりも騒音の上流となる位置において騒音と相関のある事象を検出するセンサが騒音キャンセル対象位置に近い場合に演算処理時間が不足し高周波数領域について騒音を良好にキャンセルできなくなる問題も発生しない。
よって、本発明によれば、騒音キャンセル対象位置よりも騒音の上流となる位置において騒音と相関のある事象を検出するセンサを設けないブラインド型の構成において、高周波数領域についても騒音を良好にキャンセルできる能動騒音制御を行うことができる。
【0016】
また、本発明は、前記課題達成のために、能動騒音制御を行う能動騒音制御システムに、マイクと、前記マイクの出力を、直交基底を重みづけすることにより時間領域の信号を生成する所定の変換関数の重み係数に変換し観測信号として出力する解析手段と、騒音キャンセル音を出力するスピーカと、適応フィルタと、前記変換関数によって擬似的な騒音が生成される前記重み係数を、疑似騒音信号として予め記憶した記憶手段と、時間領域変換手段と、前記記憶手段に格納された疑似騒音信号を入力とする適応フィルタとを備えたものである。当該適応フィルタは、前記観測信号をエラーとして適応動作を行い、前記時間領域変換手段は、前記適応フィルタの出力を前記変換関数により時間領域の信号に変換して、前記スピーカから出力する騒音キャンセル音を生成する。
【0017】
ここで、この能動騒音制御システムにおいて、前記解析手段を、高速フーリエ変換によってマイクの出力を前記重み係数に変換し観測信号として出力するものとし、前記時間領域変換手段を、逆高速フーリエ変換によって前記適応フィルタの出力を時間領域の信号に変換するものとしてよい。
【0018】
または、前記解析手段を、ウェーブレット変換によってマイクの出力を前記重み係数に変換し観測信号として出力するものとし、前記時間領域変換手段を、逆ウェーブレット変換によって前記適応フィルタの出力を時間領域の信号に変換するものとしてもよい。
このような能動騒音制御システムによっても、騒音キャンセル対象位置よりも騒音の上流となる位置において騒音と相関のある事象を検出するセンサを設けないブラインド型の構成において、高周波数領域についても騒音を良好にキャンセルできる能動騒音制御を行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明によれば、騒音キャンセル対象位置よりも騒音の上流となる位置において騒音と相関のある事象を検出するセンサを設けないブラインド型の構成において、高周波数領域についても騒音を良好にキャンセルできる能動騒音制御を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る騒音制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の第2実施形態に係る騒音制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の第3実施形態に係る騒音制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】本発明の第4実施形態に係る騒音制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図5】本発明の第5実施形態に係る騒音制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図6】本発明の第6実施形態に係る騒音制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図7】本発明の第7実施形態に係る騒音制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図8】本発明の第8実施形態に係る騒音制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図9】本発明の実施形態に係る騒音制御装置の他の構成例を例示するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を説明する。
まず、第1の実施形態について説明する。
図1に、本第1実施形態に係る騒音制御装置の構成を示す。
図示するように、騒音制御装置は、騒音キャンセル対象位置近くに配置したマイク11、騒音キャンセル対象位置で騒音Nをキャンセルする騒音キャンセル音NCを出力するスピーカ12、適応フィルタ13、統計的騒音データ14、独立成分分析(ICA)を行うICA処理部15、更新制御部16を備えている。
【0022】
マイク11は、収音した騒音Nと騒音キャンセル音NCの混合音を観測音データとして出力する。ここで、この混合音データは、騒音キャンセル音NCをスピーカ12から出力しているときには、騒音Nの、騒音キャンセル音NCでキャンセルしきれなかった残成分を表す。
更新制御部16は、騒音制御装置をセットアップするときや、マイク11が出力する観測音データが表す音のレベルが所定レベル以上大きくなったときに、適応フィルタ13の動作を停止し、ICA処理部15に独立成分分析処理を行わせる。
ここで、適応フィルタ13の動作が停止している期間中、適応フィルタ13の適応動作や、騒音キャンセル音NCの出力は停止する。したがって、適応フィルタ13の動作が停止している期間中、マイク11が出力する観測音データは、騒音Nを表すものとなる。
さて、ICA処理部15は、独立成分分析処理において、独立成分分析により、統計的独立性に基づいて、マイク11が出力する観測音データから騒音成分を分離し、分離した騒音成分を表すデータを統計的騒音データ14として格納する。
そして、更新制御部16は、統計的騒音データ14が格納されたならば、適応フィルタ13の動作を再開する。
格納された統計的騒音データ14は疑似騒音データとして適応フィルタ13に出力される。
適応フィルタ13は、入力した疑似騒音データにフィルタ処理を施した騒音キャンセル音データが表す音を、スピーカ12から騒音キャンセル音NCとして出力する。また、適応フィルタ13は、マイク11が出力する観測音データをエラーとして、エラーのパワーが最小となるようにLMSやNLMS等の適応アルゴリズムによって疑似騒音データに施すフィルタ処理のフィルタ係数を適応させる。
【0023】
以下、本発明の第2実施形態について説明する。
本第2実施形態は、第1実施形態の騒音制御装置の動作と同等の信号処理を周波数領域で行うようにしたものである。
図2に、本第2実施形態に係る騒音制御装置の構成を示す。
図示するように、騒音制御装置は、騒音キャンセル対象位置近くに配置したマイク21、騒音キャンセル対象位置で騒音Nをキャンセルする騒音キャンセル音NCを出力するスピーカ22、適応フィルタ23、周波数領域統計的騒音データ24、独立成分分析(ICA)を行うICA処理部25、更新制御部26、周波数解析部27、時間領域変換部28を備えている。
【0024】
周波数解析部27は、マイク21が出力する観測音データに対して周波数解析を行い、観測音データを、周波数帯域毎の音の強さを表す周波数領域観測音データに変換する。
この周波数解析部27が行う周波数解析としては、たとえば、FFT(高速フーリエ変換)を用いることができ、FFTを用いた場合、周波数領域観測音データは周波数スペクトルとなる。
更新制御部26は、騒音制御装置をセットアップするときや、周波数領域観測音データからマイク21が出力する観測音データが表す音のレベルが所定レベル以上大きくなったことが検出されたときに、適応フィルタ23の動作を停止し、ICA処理部25に独立成分分析処理を行わせる。
【0025】
ICA処理部25は、独立成分分析処理において、周波数領域の独立成分分析を行い、統計的独立性に基づいて、周波数領域観測音データから、周波数領域で騒音成分を表すデータを分離し、分離したデータを周波数領域統計的騒音データ24として格納する。
ここで、周波数解析部27が行う周波数解析としてFFTを用いた場合、周波数領域統計的騒音データ24も周波数スペクトルとなる。
更新制御部26は、統計的騒音データ14が格納されたならば、適応フィルタ23の動作を再開する。
格納された周波数領域統計的騒音データ24は周波数領域疑似騒音データとして適応フィルタ23に出力される。
適応フィルタ23は、周波数領域において、入力した周波数領域疑似騒音データにフィルタ処理を施して、周波数領域騒音キャンセル音データとして、時間領域変換部28に出力する。また、適応フィルタ23は、周波数解析部27が出力する周波数領域観測音データをエラーとして、エラーのパワーが最小となるようにLMSやNLMS等の適応アルゴリズムによって周波数領域疑似騒音データに施すフィルタ処理のフィルタ係数を適応させる。
【0026】
時間領域変換部28は、適応フィルタ23が出力する周波数領域騒音キャンセル音データを時間領域の音に変換してスピーカ22から騒音キャンセル音NCとして出力する。
ここで、周波数解析部27が行う周波数解析としてFFTを用いた場合、時間領域変換部28が行う変換はIFFT(逆高速フーリエ変換)となる。
以下、本発明の第3実施形態について説明する。
本第3実施形態は、第1実施形態の騒音制御装置の観測音データからの騒音の分離を、独立成分分析(ICA)に代えて、ニューラルネットワークを用いて行うようにしたものである。
図3に、本第3実施形態に係る騒音制御装置の構成を示す。
図示するように、騒音制御装置は、騒音キャンセル対象位置近くに配置したマイク31、騒音キャンセル対象位置で騒音Nをキャンセルする騒音キャンセル音NCを出力するスピーカ32、適応フィルタ33、推論騒音データ34、学習済ニューラルネットワーク35、更新制御部36を備えている。
【0027】
マイク31は、収音した騒音Nと騒音キャンセル音NCの混合音を観測音データとして出力する。
更新制御部36は、騒音制御装置をセットアップするときや、マイク31が出力する観測音データが表す音のレベルが所定レベル以上大きくなったときに、適応フィルタ33の動作を停止し、学習済ニューラルネットワーク35に騒音の推論処理を行わせる。
【0028】
学習済ニューラルネットワーク35は、予め、適当な教師データを用いて観測音データから騒音成分を分離する推論を行うよう学習させたニューラルネットワークであり、騒音の推論処理において、マイク31が出力する観測音データから騒音を推論し、推論した騒音を表すデータを推論騒音データ34として格納する。
【0029】
更新制御部36は、推論騒音データ34が格納されたならば、適応フィルタ33の動作を再開する。
格納された推論騒音データ34は疑似騒音データとして適応フィルタ33に出力される。
適応フィルタ33は、入力した疑似騒音データにフィルタ処理を施した騒音キャンセル音データが表す音を、スピーカから騒音キャンセル音NCとして出力する。また、適応フィルタ33は、マイク31が出力する観測音データをエラーとして、エラーのパワーが最小となるようにLMSやNLMS等の適応アルゴリズムによって疑似騒音データに施すフィルタ処理のフィルタ係数を適応させる。
【0030】
以下、本発明の第4実施形態について説明する。
本第4実施形態は、第4実施形態の騒音制御装置の動作と同等の信号処理を周波数領域で行うようにしたものである。
図4に、本第4実施形態に係る騒音制御装置の構成を示す。
図示するように、騒音制御装置は、騒音キャンセル対象位置近くに配置したマイク41、騒音キャンセル対象位置で騒音Nをキャンセルする騒音キャンセル音NCを出力するスピーカ42、適応フィルタ43、周波数領域推論騒音データ44、学習済ニューラルネットワーク45、更新制御部46、周波数解析部47、時間領域変換部48を備えている。
【0031】
周波数解析部47は、マイク41が出力する観測音データに対して周波数解析を行い、観測音データを、周波数帯域毎の音の強さを表す周波数領域観測音データに変換する。
この周波数解析部47が行う周波数解析としては、たとえば、FFT(高速フーリエ変換)を用いることができ、FFTを用いた場合、周波数領域観測音データは周波数スペクトルとなる。
更新制御部46は、騒音制御装置をセットアップするときや、周波数領域観測音データからマイク41が出力する観測音データが表す音のレベルが所定レベル以上大きくなったことが検出されたときに、適応フィルタ43の動作を停止し、学習済ニューラルネットワーク45にに騒音の推論処理を行わせる。
【0032】
学習済ニューラルネットワーク45は、予め、適当な教師データを用いて、周波数領域において周波数領域観測音データから騒音成分を分離する推論を行うよう学習させたニューラルネットワークであり、騒音の推論処理において、周波数領域において周波数領域観測音データから騒音成分を推論し、推論した周波数領域で騒音成分を表すデータを周波数領域推論騒音データ44として格納する。
【0033】
ここで、周波数解析部47が行う周波数解析としてFFTを用いた場合、周波数領域推論騒音データ44も周波数スペクトルとなる。
更新制御部46は、周波数領域推論騒音データ44が格納されたならば、適応フィルタ43の動作を再開する。
格納された周波数領域推論騒音データ44は周波数領域疑似騒音データとして適応フィルタ43に出力される。
適応フィルタ43は、周波数領域において、入力した周波数領域疑似騒音データにフィルタ処理を施して、周波数領域騒音キャンセル音データとして、時間領域変換部48に出力する。また、適応フィルタ43は、周波数解析部47が出力する周波数領域観測音データをエラーとして、エラーのパワーが最小となるようにLMSやNLMS等の適応アルゴリズムによって周波数領域疑似騒音データに施すフィルタ処理のフィルタ係数を適応させる。
【0034】
時間領域変換部48は、適応フィルタ43が出力する周波数領域騒音キャンセル音データを時間領域の音に変換してスピーカ42から騒音キャンセル音NCとして出力する。
ここで、周波数解析部47が行う周波数解析としてFFTを用いた場合、時間領域変換部48が行う変換はIFFT(逆高速フーリエ変換)となる。
以下、本発明の第5実施形態について説明する。
本第5実施形態は、第1実施形態の騒音制御装置の観測音データからの騒音の分離を、独立成分分析(ICA)に代えて、主成分分析を用いて行うようにしたものである。
図5に、本第5実施形態に係る騒音制御装置の構成を示す。
図示するように、騒音制御装置は、騒音キャンセル対象位置近くに配置したマイク51、騒音キャンセル対象位置で騒音Nをキャンセルする騒音キャンセル音NCを出力するスピーカ52、適応フィルタ53、主成分データ54、主成分分析部55、更新制御部56を備えている。
【0035】
マイク51は、収音した騒音Nと騒音キャンセル音NCの混合音を観測音データとして出力する。
更新制御部56は、騒音制御装置をセットアップするときや、マイク51が出力する観測音データが表す音のレベルが所定レベル以上大きくなったときに、適応フィルタ53の動作を停止し、主成分分析部55に主成分分析を行わせる。
主成分分析部55は、主成分分析により観測音データの所定の次数の主成分(たとえば、第1主成分のみ、または、第2主成分のみ、または、第1主成分及び第2主成分)を分析し、分析した各主成分の累積寄与率が最大となる音を表すデータを主成分データ54として格納する。
【0036】
更新制御部56は、主成分データ54が格納されたならば、適応フィルタ53の動作を再開する。
格納された主成分データ54は疑似騒音データとして適応フィルタ53に出力される。
適応フィルタ53は、入力した疑似騒音データにフィルタ処理を施した騒音キャンセル音データが表す音を、スピーカ52から騒音キャンセル音NCとして出力する。また、適応フィルタ53は、マイク51が出力する観測音データをエラーとして、エラーのパワーが最小となるようにLMSやNLMS等の適応アルゴリズムによって疑似騒音データに施すフィルタ処理のフィルタ係数を適応させる。
【0037】
次に、本発明の第6実施形態について説明する。
本第6実施形態は、第5実施形態の騒音制御装置の動作と同等の信号処理を周波数領域で行うようにしたものである。
図6に、本第6実施形態に係る騒音制御装置の構成を示す。
図示するように、騒音制御装置は、騒音キャンセル対象位置近くに配置したマイク61、騒音キャンセル対象位置で騒音Nをキャンセルする騒音キャンセル音NCを出力するスピーカ62、適応フィルタ63、周波数領域主成分データ64、主成分析部65、更新制御部66、周波数解析部67、時間領域変換部68を備えている。
【0038】
周波数解析部67は、マイク61が出力する観測音データに対して周波数解析を行い、観測音を、周波数帯域毎の音の強さを表す周波数領域観測音データに変換する。
この周波数解析部67が行う周波数解析としては、たとえば、FFT(高速フーリエ変換)を用いることができ、FFTを用いた場合、周波数領域観測音データは周波数スペクトルとなる。
更新制御部66は、騒音制御装置をセットアップするときや、周波数領域観測音データからマイク61が出力する観測音データが表す音のレベルが所定レベル以上大きくなったことが検出されたときに、適応フィルタ63の動作を停止し、主成分分析部65に主成分分析を行わせる。
【0039】
主成分分析部65は、周波数領域の主成分分析により周波数領域観測音データの所定の次数の主成分(たとえば、第1主成分のみ、または、第2主成分のみ、または、第1主成分及び第2主成分)を分析し、分析した各主成分の累積寄与率が最大となる音を周波数領域において表すデータを周波数領域主成分データ64として格納する。
ここで、周波数解析部67が行う周波数解析としてFFTを用いた場合、周波数領域主成分データ64も周波数スペクトルとなる。
【0040】
更新制御部66は、周波数領域主成分データ64が格納されたならば、適応フィルタ63の動作を再開する。
格納された周波数領域主成分データ64は周波数領域疑似騒音データとして適応フィルタ63に出力される。
適応フィルタ63は、周波数領域において、入力した周波数領域疑似騒音データにフィルタ処理を施して、周波数領域騒音キャンセル音データとして、時間領域変換部68に出力する。また、適応フィルタ63は、周波数解析部67が出力する周波数領域観測音データをエラーとして、エラーのパワーが最小となるようにLMSやNLMS等の適応アルゴリズムによって周波数領域疑似騒音データに施すフィルタ処理のフィルタ係数を適応させる。
【0041】
時間領域変換部68は、適応フィルタ63が出力する周波数領域騒音キャンセル音データを時間領域の音に変換してスピーカ62から騒音キャンセル音NCとして出力する。
ここで、周波数解析部67が行う周波数解析としてFFTを用いた場合、時間領域変換部68が行う変換はIFFT(逆高速フーリエ変換)となる。
以下、本発明の第7実施形態について説明する。
図7に、本第7実施形態に係る騒音制御装置の構成を示す。
図示するように、騒音制御装置は、騒音キャンセル対象位置近くに配置したマイク701、騒音キャンセル対象位置で騒音Nをキャンセルする騒音キャンセル音NCを出力するスピーカ702、適応フィルタ703、重み係数704、独立成分分析(ICA)を行うICA処理部705、更新制御部706、周波数解析部707、時間領域変換部708、基底スペクトル算出部709、直交基底データ710を備えている。
【0042】
直交基底データ710は、所定の直交基底を重みで重みづけすることにより時間領域の信号を生成する変換関数において用いられる直交基底のデータである。このような変換関数としては、逆高速フーリエ変換等を用いることができ、逆高速フーリエ変換を用いる場合、直交基底データ710はフーリエ基底のデータとなる。
【0043】
さて、周波数解析部707は、マイク701が出力する観測音データに対して周波数解析を行い、観測音データを、上述した変換関数の直交基底の重み係数を表す周波数領域観測音データに変換する。
ここで、直交基底データ710をフーリエ基底のデータとした場合、周波数解析部707が行う周波数解析としては、FFT(高速フーリエ変換)を用い、周波数領域観測音データは周波数スペクトルとなる。
更新制御部706は、騒音制御装置をセットアップするときや、周波数領域観測音データからマイク701が出力する観測音データが表す音のレベルが所定レベル以上大きくなったことが検出されたときに、適応フィルタ703の動作を停止し、ICA処理部705に独立成分分析処理を行わせる。
【0044】
ICA処理部705は、独立成分分析処理において、周波数領域の独立成分分析を行い、統計的独立性に基づいて、周波数領域観測音データから、周波数領域の騒音成分を表すデータを分離し、分離したデータを周波数領域統計的騒音データとして基底スペクトル算出部709に送る。
【0045】
基底スペクトル算出部709は、ICA処理部705から送られた周波数領域統計的騒音データが周波数領域で示す騒音の、直交基底データ710に格納された直交基底の要素毎の複素スペクトルを算定し、算定した複素スペクトルから求まる直交基底の重み係数を重み係数704として設定する。
【0046】
基底スペクトル算出部709が算定する複素スペクトルはゲインと位相を表し、重み係数704に格納される重み係数は、複素形式で直交基底の各要素に適用されるゲインと位相を表すものとなる。
また、周波数解析部707が行う周波数解析としてFFTを用いた場合、重み係数704に格納される重み係数は周波数スペクトルとなる。
更新制御部706は、重み係数704が格納されたならば、適応フィルタ703の動作を再開する。
格納された重み係数704は、直交基底データ710に格納された直交基底の重み係数を表す周波数領域疑似騒音データとして適応フィルタ703に出力される。
適応フィルタ703は、周波数領域において、入力した周波数領域疑似騒音データにフィルタ処理を施して、周波数領域騒音キャンセル音データとして、時間領域変換部708に出力する。また、適応フィルタ703は、周波数解析部707が出力する周波数領域観測音データをエラーとして、エラーのパワーが最小となるようにLMSやNLMS等の適応アルゴリズムによって周波数領域疑似騒音データに施すフィルタ処理のフィルタ係数を適応させる。
【0047】
時間領域変換部708は、適応フィルタ703が出力する周波数領域騒音キャンセル音データを時間領域の音に変換してスピーカ702から騒音キャンセル音NCとして出力する。
ここで、周波数解析部707が行う周波数解析としてFFTを用いた場合、時間領域変換部708が行う変換はIFFT(逆高速フーリエ変換)となる。
なお、以上の第7実施形態において、ICA処理部15に代えて、学習済みニューラルネットワークや主成分分析により、周波数領域観測音データから、周波数領域で騒音を表すデータを分離し、分離したデータを周波数領域統計的騒音データとする処理部を設けてもよい。
【0048】
以下、本発明の第8実施形態について説明する。
図8に、本第8実施形態に係る騒音制御装置の構成を示す。
図示するように、騒音制御装置は、騒音キャンセル対象位置近くに配置したマイク801、騒音キャンセル対象位置で騒音Nをキャンセルする騒音キャンセル音NCを出力するスピーカ802、適応フィルタ803、重み係数804、独立成分分析(ICA)を行うICA処理部805、更新制御部806、時間-周波数解析部807、時間領域変換部808、基底スペクトル算出部809、直交基底データ810を備えている。
【0049】
直交基底データ810は、所定の直交基底を重みで重みづけすることにより周波数スペクトルが時間的に変化する時間領域の信号を生成する変換関数において用いられる直交基底のデータである。このような変換関数としては、逆ウェーブレット変換等を用いることができ、逆ウェーブレット変換を用いる場合、直交基底データ810はウェーブレット基底のデータとなる。ここで、ウェーブレット基底は、一般的には、マザーウェーブレットのスケールや時間シフトを様々に変化させたものである。
【0050】
さて、時間-周波数解析部807は、マイク801が出力する観測音データに対して時間-周波数解析を行い、観測音データを、上述した変換関数の直交基底の重み係数を表す時間-周波数領域観測音データに変換する。
ここで、直交基底データ810をウェーブレット基底のデータとした場合、周波数解析部が行う時間-周波数解析としては、ウェーブレット変換を用い、時間-周波数領域観測音データはウェーブレット係数となる。
更新制御部806は、騒音制御装置をセットアップするときや、時間-周波数領域観測音データからマイク801が出力する観測音データが表す音のレベルが所定レベル以上大きくなったことが検出されたときに、適応フィルタ803の動作を停止し、ICA処理部805に独立成分分析処理を行わせる。
【0051】
ICA処理部805は、独立成分分析処理において、時間-周波数領域の独立成分分析を行い、統計的独立性に基づいて、時間-周波数領域観測音データから、時間-周波数領域で騒音成分を表すデータを分離し、分離したデータを時間-周波数領域統計的騒音データとして基底スペクトル算出部809に送る。
【0052】
基底スペクトル算出部809は、ICA処理部805から送られた時間-周波数領域統計的騒音データが時間-周波数領域で示す騒音の、直交基底データ810に格納された直交基底の要素毎のスペクトルを算定し、算定したスペクトルから求まる直交基底の重み係数を重み係数804として設定する。
【0053】
また、周波数解析部が行う周波数解析としてウェーブレット変換を用いた場合、重み係数804に格納される重み係数はウェーブレット係数となる。
更新制御部806は、重み係数804が格納されたならば、適応フィルタ803の動作を再開する。
格納された重み係数804は、直交基底データ810に格納された直交基底の重み係数を表す時間-周波数領域疑似騒音データとして適応フィルタ803に出力される。
適応フィルタ803は、周波数領域において、入力した時間-周波数領域疑似騒音データにフィルタ処理を施して、時間-周波数領域騒音キャンセル音データとして、時間領域変換部808に出力する。また、適応フィルタ803は、時間-周波数解析部807が出力する時間-周波数領域観測音データをエラーとして、エラーのパワーが最小となるようにLMSやNLMS等の適応アルゴリズムによって時間-周波数領域疑似騒音データに施すフィルタ処理のフィルタ係数を適応させる。
【0054】
時間領域変換部808は、適応フィルタ803が出力する時間-周波数領域騒音キャンセル音データを時間領域の音に変換してスピーカ802から騒音キャンセル音NCとして出力する。
ここで、時間-周波数解析部807が行う周波数解析としてウェーブレット変換を用いた場合、時間領域変換部808が行う変換は逆ウェーブレット変換となる。
なお、以上の第8実施形態において、ICA処理部15に代えて、学習済みニューラルネットワークや主成分分析により、時間-周波数領域観測音データから、時間-周波数領域で騒音を表すデータを分離し、分離したデータを時間-周波数領域統計的騒音データとする処理部を設けてもよい。
【0055】
以上、本発明の第8実施形態について説明した。
以上のような各実施形態によれば、適応フィルタを適応するためのエラーを収音するマイクで収音した音から、騒音成分を分析して記憶し、記憶した騒音成分を表す疑似騒音データを適応フィルタの入力として能動騒音制御によって騒音キャンセル音を生成することができる。また、また、フィードバック型の能動騒音制御のように高周波数領域について騒音を良好にキャンセルできない原因となるフィードバックループの伝搬の遅延の問題は発生しない。また、予め記憶した疑似騒音データを適応フィルタの入力として用いるので、フィードフォワード側の能動騒音制御において、騒音キャンセル対象位置よりも騒音の上流となる位置で騒音と相関のある事象を検出するセンサが騒音キャンセル対象位置に近い場合に、高周波数領域について騒音を良好にキャンセルできない原因となる演算処理時間の不足の問題も発生しない。
よって、各実施形態によれば、騒音キャンセル対象位置よりも騒音の上流となる位置において騒音と相関のある事象を検出するセンサを設けないブラインド型の構成において、高周波数領域についても騒音を良好にキャンセルできる能動騒音制御を行うことができる。
【0056】
ここで、以上の示した第7実施形態における重み係数704としては、予め固定的に設定した重み係数を用いるようにしてよい。
すなわち、この場合には、
図9aに示すように、ICA処理部705、更新制御部706、基底スペクトル算出部709を廃し、事前に行った解析などにより定めた直交基底の重み係数を、重み係数704として予め設定する。
同様に、第8実施形態における重み係数804として、予め固定的に設定した重み係数を用いるようにしてよい。
すなわち、この場合には、
図9bに示すように、ICA処理部805、更新制御部806、基底スペクトル算出部809を廃し、事前に行った解析などにより定めた直交基底の重み係数を、重み係数804として予め設定する。
これらの構成によっても、騒音キャンセル対象位置よりも騒音の上流となる位置において騒音と相関のある事象を検出するセンサを設けないブラインド型の構成において、高周波数領域についても騒音を良好にキャンセルできる。
【符号の説明】
【0057】
11…マイク、12…スピーカ、13…適応フィルタ、14…統計的騒音データ、15…ICA処理部、16…更新制御部、21…マイク、22…スピーカ、23…適応フィルタ、24…周波数領域統計的騒音データ、25…ICA処理部、26…更新制御部、27…周波数解析部、28…時間領域変換部、31…マイク、33…適応フィルタ、34…推論騒音データ、35…学習済ニューラルネットワーク、36…更新制御部、41…マイク、42…スピーカ、43…適応フィルタ、44…周波数領域推論騒音データ、45…学習済ニューラルネットワーク、46…更新制御部、47…周波数解析部、48…時間領域変換部、51…マイク、52…スピーカ、53…適応フィルタ、54…主成分データ、55…主成分分析部、56…更新制御部、61…マイク、62…スピーカ、63…適応フィルタ、64…周波数領域主成分データ、65…主成分析部、66…更新制御部、67…周波数解析部、68…時間領域変換部、701…マイク、702…スピーカ、703…適応フィルタ、704…重み係数、705…ICA処理部、706…更新制御部、707…周波数解析部、708…時間領域変換部、709…基底スペクトル算出部、710…直交基底データ、801…マイク、802…スピーカ、803…適応フィルタ、804…重み係数、805…ICA処理部、806…更新制御部、807…時間-周波数解析部、808…時間領域変換部、809…基底スペクトル算出部、810…直交基底データ。