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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025041387
(43)【公開日】2025-03-26
(54)【発明の名称】検体分析方法及び検体分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/49 20060101AFI20250318BHJP
【FI】
G01N33/49 A
G01N33/49 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023148647
(22)【出願日】2023-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】390014960
【氏名又は名称】シスメックス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】305060567
【氏名又は名称】国立大学法人富山大学
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(74)【代理人】
【識別番号】100210239
【弁理士】
【氏名又は名称】富永 真太郎
(72)【発明者】
【氏名】吉田 莉菜子
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 陽介
(72)【発明者】
【氏名】仁井見 英樹
(72)【発明者】
【氏名】山本 善裕
(72)【発明者】
【氏名】宮嶋 友希
(72)【発明者】
【氏名】兼田 磨熙杜
【テーマコード(参考)】
2G045
【Fターム(参考)】
2G045AA13
2G045AA25
2G045CA11
2G045CA12
2G045CA25
2G045CA26
2G045FA13
2G045FA16
2G045FB07
2G045FB12
(57)【要約】
【課題】感染症に起因する臓器障害の重症度の迅速な評価を支援する検体分析方法及び検体分析装置であって、感染症に起因する臓器障害の重症度を示すスコアと相関が高い情報を出力することができる検体分析方法及び検体分析装置を提供する。
【解決手段】血球分析装置1は、血液検体と、血液検体に含まれる白血球を染色する蛍光色素と、を含む測定試料に光を照射し、光が照射された測定試料に含まれる白血球の蛍光を検出し、検出された蛍光に基づいて蛍光信号を測定する測定部(測定ユニット2)と、測定された蛍光信号に基づいて、測定試料に含まれる好中球集団の蛍光強度の分布幅に関する情報を生成し、好中球集団の蛍光強度の分布幅に関する情報に基づいて、感染症に起因する臓器障害の重症度に関する情報を決定する情報処理部(本体40)と、感染症に起因する臓器障害の重症度に関する情報を出力する出力部42と、を含む。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液検体と、前記血液検体に含まれる白血球を染色する蛍光色素と、を含む測定試料に光を照射し、前記光が照射された前記測定試料に含まれる白血球の蛍光を検出し、検出された前記蛍光に基づいて蛍光信号を測定する測定工程と、
前記蛍光信号に基づいて、前記測定試料に含まれる好中球集団の蛍光強度の分布幅に関する情報を生成する生成工程と、
前記好中球集団の蛍光強度の分布幅に関する情報に基づいて、感染症に起因する臓器障害の重症度に関する情報を決定する決定工程と、
前記感染症に起因する臓器障害の重症度に関する情報を出力する出力工程と、
を含む、
検体分析方法。
【請求項2】
前記感染症に起因する臓器障害の重症度に関する情報は、前記血液検体の被検者が敗血症であるとの疑いがあること、又は、敗血症である可能性の大きさを示すフラグ情報を含む、
請求項1に記載の検体分析方法。
【請求項3】
前記感染症に起因する臓器障害の重症度に関する情報は、前記感染症に起因する臓器障害の重症度を示す推定スコアを含む、
請求項1に記載の検体分析方法。
【請求項4】
前記感染症に起因する臓器障害の重症度に関する情報は、前記感染症に起因する臓器障害の重症度を示す推定スコアの幅を含む、
請求項1に記載の検体分析方法。
【請求項5】
前記好中球集団の蛍光強度の分布幅に関する情報は、前記好中球集団の蛍光強度の分布幅を示し、前記分布幅が大きい程、前記感染症に起因する臓器障害の重症度を示す推定スコアが大きくなる、
請求項3又は4に記載の検体分析方法。
【請求項6】
前記感染症に起因する臓器障害の重症度を示す推定スコアは、SOFAスコアの推定値である、
請求項3又は4に記載の検体分析方法。
【請求項7】
前記感染症に起因する臓器障害の重症度に関する情報は、入院初期のSOFAスコアと、健常時のSOFAスコアとの差分の推定値が閾値以上であるか否かを示す情報を含む、
請求項6に記載の検体分析方法。
【請求項8】
前記測定工程は、前記測定試料を調製する調製工程を更に含む、
請求項1に記載の検体分析方法。
【請求項9】
前記測定工程は、前記測定試料をフローセルに流す液流工程を更に含み、
前記測定工程において、前記フローセルを流れる前記測定試料に前記光を照射する、
請求項1に記載の検体分析方法。
【請求項10】
血液検体と、前記血液検体に含まれる白血球を染色する蛍光色素と、を含む測定試料に光を照射し、前記光が照射された前記測定試料に含まれる白血球の蛍光を検出し、検出された前記蛍光に基づいて蛍光信号を測定する測定部と、
前記蛍光信号に基づいて、前記測定試料に含まれる好中球集団の蛍光強度の分布幅に関する情報を生成し、前記好中球集団の蛍光強度の分布幅に関する情報に基づいて、感染症に起因する臓器障害の重症度に関する情報を決定する情報処理部と、
前記感染症に起因する臓器障害の重症度に関する情報を出力する出力部と、
を含む、
検体分析装置。
【請求項11】
前記感染症に起因する臓器障害の重症度に関する情報は、前記血液検体の被検者が敗血症であるとの疑いがあること、又は、敗血症である可能性の大きさを示すフラグ情報を含む、
請求項10に記載の検体分析装置。
【請求項12】
前記感染症に起因する臓器障害の重症度に関する情報は、前記感染症に起因する臓器障害の重症度を示す推定スコアを含む、
請求項10に記載の検体分析装置。
【請求項13】
前記感染症に起因する臓器障害の重症度に関する情報は、前記感染症に起因する臓器障害の重症度を示す推定スコアの幅を含む、
請求項10に記載の検体分析装置。
【請求項14】
前記好中球集団の蛍光強度の分布幅に関する情報は、前記好中球集団の蛍光強度の分布幅を示し、前記分布幅が大きい程、前記感染症に起因する臓器障害の重症度を示す推定スコアが大きくなる、
請求項12又は13に記載の検体分析装置。
【請求項15】
前記感染症に起因する臓器障害の重症度を示す推定スコアは、SOFAスコアの推定値である、
請求項14に記載の検体分析装置。
【請求項16】
前記感染症に起因する臓器障害の重症度に関する情報は、入院初期のSOFAスコアと、健常時のSOFAスコアとの差分の推定値が閾値以上であるか否かを示す情報を含む、
請求項12又は13に記載の検体分析装置。
【請求項17】
前記測定部は、前記測定試料を調製する調製部を更に含む、
請求項10に記載の検体分析装置。
【請求項18】
前記測定部は、前記測定試料を流すフローセルを含み、前記フローセルを流れる前記測定試料に前記光を照射する、
請求項10に記載の検体分析装置。
【請求項19】
次の構成[11]~[18]の少なくとも1以上を含む、
請求項10に記載の検体分析装置。
[11] 前記感染症に起因する臓器障害の重症度に関する情報は、前記血液検体の被検者が敗血症であるとの疑いがあることを示すフラグ情報を含む。
[12] 前記感染症に起因する臓器障害の重症度に関する情報は、前記感染症に起因する臓器障害の重症度を示す推定スコアを含む。
[13] 前記感染症に起因する臓器障害の重症度に関する情報は、前記感染症に起因する臓器障害の重症度を示す推定スコアの幅を含む。
[14] 前記好中球集団の蛍光強度の分布幅に関する情報は、前記好中球集団の蛍光強度の分布幅を示し、前記分布幅が大きい程、前記感染症に起因する臓器障害の重症度を示す推定スコアが大きくなる。
[15] 前記感染症に起因する臓器障害の重症度を示す推定スコアは、SOFAスコアの推定値である。
[16] 前記フラグ情報は、入院初期のSOFAスコアと、健常時のSOFAスコアとの差分の推定値が閾値以上であるか否かを示す情報を含む。
[17] 前記測定部は、前記測定試料を調製する調製部を更に含む。
[18] 前記測定部は、前記測定試料を流すフローセルを含み、前記フローセルを流れる前記測定試料に前記光を照射する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体を分析する検体分析方法及び検体分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1には、多項目自動血球分析装置XN-9000(シスメックス株式会社製)から得られる各種白血球のデータのうち、平均的な核酸量を有する好中球から得られる蛍光強度(NE-SFL)および平均的な形態特徴を有する単球から得られる散乱光強度(MO-X)が、臓器障害の程度を示すsequential organ failure assessment(SOFA)スコアと相関することが開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Sabrina Buoro, et al. “Clinical significance of cell population data (CPD) on Sysmex XN-9000 in septic patients with our without liver impairment”, Annals of Translational Medicine, November 2016, Vol 4, No 21, p.1-9
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
SOFAスコアは、ESICM(European society of intensive care medicine)から提唱された、感染症に起因する臓器障害の重症度の評価法であり、ICUにおいて広く用いられている。SOFAスコアを算出するためには、呼吸器、凝固能、肝臓、循環器、中枢神経、腎機能を含む複数の検査を実施する必要があり、スコアの算出に長時間を要する。このため、より迅速な検査方法として、非特許文献1には、多項目自動血球分析装置XN-9000から得られるNE-SFLおよびMO-Xを用いる方法が提案されている。
【0005】
しかし、非特許文献1で示された、NE-SFLおよびMO-XとSOFAスコアとのスピアマンの順位相関係数は0.4以下であり、臨床の現場で、NE-SFLおよびMO-Xを感染症に起因する臓器障害の重症度評価法として用いるには至っていない。
【0006】
そのため、感染症に起因する臓器障害の重症度の迅速な評価を支援する検体分析方法及び検体分析装置であって、感染症に起因する臓器障害の重症度を示すスコアと相関が高い情報を出力することができる検体分析方法及び検体分析装置が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の検体分析方法は、血液検体と、前記血液検体に含まれる白血球を染色する蛍光色素と、を含む測定試料に光を照射し、前記光が照射された前記測定試料に含まれる白血球の蛍光を検出し、検出された前記蛍光に基づいて蛍光信号を測定する測定工程と、前記蛍光信号に基づいて、前記測定試料に含まれる好中球集団の蛍光強度の分布幅に関する情報を生成する生成工程と、前記好中球集団の蛍光強度の分布幅に関する情報に基づいて、感染症に起因する臓器障害の重症度に関する情報を決定する決定工程と、前記感染症に起因する臓器障害の重症度に関する情報を出力する出力工程と、を含む。
【0008】
本発明の検体分析装置(1)は、血液検体と、血液検体に含まれる白血球を染色する蛍光色素と、を含む測定試料に光を照射し、光が照射された測定試料に含まれる白血球の蛍光を検出し、検出された蛍光に基づいて蛍光信号を測定する測定部(2)と、測定された蛍光信号に基づいて、測定試料に含まれる好中球集団の蛍光強度の分布幅に関する情報を生成し、好中球集団の蛍光強度の分布幅に関する情報に基づいて、感染症に起因する臓器障害の重症度に関する情報を決定する情報処理部(40)と、感染症に起因する臓器障害の重症度に関する情報を出力する出力部(42)と、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、感染症に起因する臓器障害の重症度の迅速な評価を支援する検体分析方法及び検体分析装置であって、感染症に起因する臓器障害の重症度を示すスコアと相関が高い情報を出力することができる検体分析方法及び検体分析装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態に係る血球分析装置の外観を示す斜視図である。
図2】測定ユニットの構成を示す図である。
図3】光学検出器の構成を示す図である。
図4】情報処理ユニットの構成を示す図である。
図5A】スキャッタグラムの一例を示す図である。
図5B】分画処理がなされたスキャッタグラムの一例を示す図である。
図6】入院からの日数に対する敗血症の入院患者(敗血症患者)、非敗血症の入院患者(非敗血症患者)、健常者の好中球集団の蛍光強度の分布幅に関する情報(NE-WY)を示すグラフである。
図7】入院0日目における入院患者(敗血症患者及び非敗血症患者)の好中球集団の蛍光強度の分布幅に関する情報(NE-WY)とSOFAスコアとの相関を示す図である。
図8】各日の好中球集団の蛍光強度の分布幅に関する情報(NE-WY)とSOFAスコアとの相関を示す図である。
図9】好中球集団の蛍光強度の分布幅に関する情報(NE-WY)と推定SOFAスコアとが対応付けられた第1換算テーブルの一例を示す。
図10A】本発明の第1実施形態に係る血液検体の分析結果画面の一例を示す図である。
図10B】本発明の第1実施形態に係る血液検体の分析結果画面の他の一例を示す図である。
図11】情報処理ユニットの動作フローチャートの一例である。
図12】本発明の第2実施形態に係る血液検体の分析結果画面の一例を示す図である。
図13】好中球集団の蛍光強度の分布幅に関する情報(NE-WY)と敗血症の可能性とを複数段階で対応付けた第2換算テーブルの一例である。
図14】本発明の第3実施形態に係る血液検体の分析結果画面の一例を示す図である。
図15】本発明の第4実施形態に係る血液検体の分析結果画面の一例を示す図である。
図16】各日の入院患者の好中球集団の蛍光強度の分布幅に関する情報(NE-WY)と、各日のSOFAスコアと健常時のSOFAスコアとの差分との相関を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施形態に係る検体分析装置について、図面を参照して説明する。実施形態に係る検体分析装置は、血液検体の血球を分析する血球分析装置である。
【0012】
[1.第1実施形態]
[1-1.概略構成]
図1は、第1実施形態に係る血球分析装置の外観を示す斜視図である。血球分析装置1は、血液検体の血球を分析する装置である。具体的には、血球分析装置1は、血液検体に含まれる白血球の種類を分類し、各種白血球の数を計数するとともに、赤血球、血小板を計数し、ヘモグロビン濃度を測定する多項目血球分析装置である。なお、以下の説明においては、赤血球、血小板の計数、およびヘモグロビン濃度の測定に関する説明は省略する。赤血球、血小板の計数、およびヘモグロビン濃度の測定には、例えば、米国特許第8,968,653号公報に記載の測定部が使用でき、当該公報は参照により本明細書に組み込まれる。
【0013】
血球分析装置1は、測定ユニット2、搬送ユニット3、及び情報処理ユニット4を備える。
【0014】
搬送ユニット3は、測定ユニット2の前面に配置されており、血液検体を測定ユニット2に供給する。具体的には、搬送ユニット3は、血液検体を収容する複数の検体容器(採血管)Tを支持するサンプルラックLを測定ユニット2の手前の位置P1(図2参照)に搬送する。血液検体は、被検者から採取された末梢血である。被検者は、末梢血を採取される者であり、例えば、患者である。患者は、例えば、感染症に起因する臓器障害に発展する可能性がある者である。
【0015】
測定ユニット2は、血液検体に、白血球を染色する蛍光色素を含む試薬を混和し、測定に用いられる測定試料を調製する。測定ユニット2は、調製された測定試料に光を照射し、測定試料に含まれる白血球の散乱光信号、蛍光信号を測定する。測定ユニット2は、情報処理ユニット4と通信可能に接続されており、測定結果を情報処理ユニット4に送信する。
【0016】
情報処理ユニット4は、測定ユニット2、搬送ユニット3、及びホストコンピュータ5(図2参照)と通信可能に接続されている。情報処理ユニット4は、測定ユニット2及び搬送ユニット3の動作を制御し、測定ユニット2の測定結果に基づいて分析を行い、分析結果を、出力部42により出力するとともにホストコンピュータ5に送信する。情報処理ユニット4は、本体40(図4参照)と、入力部41と、出力部42とを備える。入力部41は、例えば、キーボード及びマウスである。出力部42は、例えば、ディスプレイである。ディスプレイは、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、ミニLEDディスプレイとすることができる。入力部41及び出力部42は、タッチパネルであっても良い。
【0017】
[1-2.詳細構成]
(測定ユニット)
図2は、測定ユニットの構成を示す図である。測定ユニット2は、ハンド部21、検体容器セット部22、バーコードユニット23、検体吸引部24、試料調製部25、及び検出部26を備える。各部21~26は、情報処理ユニット4により制御される。
【0018】
ハンド部21は、位置P1に位置付けられた検体容器Tを把持し、サンプルラックLから検体容器Tを抜き出して揺動する。検体容器セット部22は、ハンド部21により揺動された検体容器Tを位置P1の上方において受け取る。バーコードユニット23は、検体容器Tに貼付されたバーコードラベルから検体番号を読み取る。検体番号は、血液検体の分析結果と関連付けられる情報である。検体吸引部24は、吸引管24aを備えており、検体容器Tから血液検体を吸引する。試料調製部25は、混合チャンバMCとヒータHを備えており、検体容器Tの血液検体(以下、単に「検体」と称する場合がある。)に試薬を混和することにより測定に用いられる測定試料を調製する。検出部26は、光学検出器Dを備えており、測定試料から白血球の蛍光および散乱光を検出する。
【0019】
このような測定ユニット2の動作を説明し、試料調製部25及び検出部26について詳細に説明する。
【0020】
搬送ユニット3により位置P1に位置付けられた検体容器Tは、ハンド部21により把持され、サンプルラックLから上方向に抜き出される。そして、ハンド部21が揺動されることにより、検体容器T内の検体が撹拌される。攪拌が終了した検体容器Tは、ハンド部21により、位置P1の上方に位置付けられた検体容器セット部22にセットされる。しかる後、この検体容器Tは、検体容器セット部22により位置P2まで搬送される。
【0021】
検体容器Tが位置P2に位置付けられると、位置P2の近傍に設置されたバーコードユニット23により、検体容器Tに貼付されたバーコードラベルから検体番号が読み取られる。しかる後、この検体容器Tは、検体容器セット部22により位置P3まで搬送される。検体容器Tが位置P3に位置付けられると、検体吸引部24により吸引管24aを介して検体容器Tから所定量の検体が吸引される。検体の吸引が終了すると、この検体容器Tは、検体容器セット部22により前方に搬送され、ハンド部21により元のサンプルラックLの支持位置に戻される。吸引管24aを介して吸引された検体は、吸引管24aが混合チャンバMCの位置へ移送された後、検体吸引部24により混合チャンバMCに所定量だけ吐出される。
【0022】
試料調製部25は、第1試薬を収容する試薬容器251と、第2試薬を収容する試薬容器252と、シース液(希釈液)を収容する試薬容器253に、チューブを介して接続されている。また、試料調製部25はコンプレッサ(図示せず)に接続されており、このコンプレッサにより発生される圧力により試薬容器251~253から、それぞれの試薬を分取することが可能となっている。試料調製部25は、混合チャンバMC内で、血液検体と、試薬とを混合し、この混合液を所定時間だけヒータHにより加温して、測定試料を調製する。試料調製部25で調製された測定試料は、検出部26の光学検出器Dに供給される。
【0023】
試薬は、白血球の核酸を染色する第1試薬と、赤血球を溶血させ、白血球の細胞膜に蛍光色素が透過できる程度の損傷を与える第2試薬を含む。
【0024】
第1試薬は、核酸を染色可能な蛍光色素を含有し、後述する第2試薬で処理された血液試料中の白血球等の有核細胞の核酸を蛍光染色するための試薬である。血液試料を第1試薬で処理することにより、白血球等の核酸を有する血球が染色される。
【0025】
蛍光色素は、核酸を染色できるのであれば特に限定されず、光源(後述の半導体レーザD31)から照射される光の波長に応じて適宜選択することができる。そのような蛍光色素としては、たとえば、プロピジウムアイオダイド、エチジウムブロマイド、エチジウム-アクリジンヘテロダイマー、エチジウムジアジド、エチジウムホモダイマー-1、エチジウムホモダイマー-2、エチジウムモノアジド、トリメチレンビス[[3‐[[4‐[[(3‐メチルベンゾチアゾール‐3‐イウム)‐2‐イル]メチレン]‐1,4‐ジヒドロキノリン]‐1‐イル]プロピル]ジメチルアミニウム]・テトラヨージド(TOTO-1)、4‐[(3‐メチルベンゾチアゾール‐2(3H)‐イリデン)メチル]‐1‐[3‐(トリメチルアミニオ)プロピル]キノリニウム・ジヨージド(TO-PRO-1)、N,N,N',N'‐テトラメチル‐N,N'‐ビス[3‐[4‐[3‐[(3‐メチルベンゾチアゾール‐3‐イウム)‐2‐イル]‐2‐プロペニリデン]‐1,4‐ジヒドロキノリン‐1‐イル]プロピル]‐1,3‐プロパンジアミニウム・テトラヨージド(TOTO-3)、または2‐[3‐[[1‐[3‐(トリメチルアミニオ)プロピル]‐1,4‐ジヒドロキノリン]‐4‐イリデン]‐1‐プロペニル]‐3‐メチルベンゾチアゾール‐3‐イウム・ジヨージド(TO-PRO-3)および以下の一般式(I)で表される蛍光色素が挙げられる。それらの中でも、一般式(I)で表される蛍光色素が好ましい。
【0026】
【化1】
上記の式(I)中、R1およびR4は、互いに同一または異なっており、水素原子、アルキル基、ヒドロキシ基を有するアルキル鎖、エーテル基を有するアルキル鎖、エステル基を有するアルキル鎖、または置換基を有していてもよいベンジル基である。また、R2およびR3は、互いに同一または異なっており、水素原子、ヒドロキシル基、ハロゲン、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルスルホニル基またはフェニル基である。また、Zは、硫黄原子、酸素原子、またはメチル基を有する炭素原子であり、nは、0、1、2または3であり、X-はアニオンである。
【0027】
本実施の形態では、アルキル基は直鎖状または分枝鎖状のいずれであってもよい。また、上記の式(I)中、R1およびR4のいずれか一方が炭素数6~18のアルキル基である場合、他方は水素原子または炭素数6未満のアルキル基であることが好ましい。炭素数6~18のアルキル基の中でも、炭素数が6、8または10のアルキル基が好ましい。
【0028】
また、上記の式(I)中、R1およびR4のベンジル基の置換基として、たとえば、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基または炭素数2~20のアルキニル基が挙げられる。それらの中でも、メチル基またはエチル基が特に好ましい。
【0029】
また、上記の式(I)中、R2およびR3のアルケニル基として、たとえば、炭素数2~20のアルケニル基が挙げられる。R2およびR3のアルコキシ基としては、炭素数1~20のアルコキシ基が挙げられる。それらの中でも、特にメトキシ基またはエトキシ基が好ましい。
【0030】
また、上記の式(I)中、アニオンX-として、F-、Cl-、Br-およびI-のようなハロゲンイオン、CF3SO3 -、BF4 -などが挙げられる。
【0031】
また、第1試薬中の蛍光色素は1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
【0032】
また、第1試薬中の蛍光色素の濃度は、蛍光色素の種類に応じて適宜設定できるが、通常0.01~100pg/μL、好ましくは、0.1~10pg/μLである。たとえば、第1試薬の蛍光色素として、上記の式(I)で表される蛍光色素を用いる場合、第1試薬中の該蛍光色素の濃度は、好ましくは0.2~0.6pg/μLであり、より好ましくは0.3~0.5pg/μLである。
【0033】
また、第1試薬は、上記の蛍光色素を上記の濃度になるように適切な溶媒に溶解させることにより得ることができる。溶媒としては、上記の蛍光色素を溶解させることができれば特に限定されないが、たとえば、水、有機溶媒およびこれらの混合物が挙げられる。有機溶媒としては、たとえば、アルコール、エチレングリコール、ジメチルスルホキシド(DMSO)などが挙げられる。なお、蛍光色素は、水溶液中での保存安定性が悪い場合があるので、有機溶媒に溶解させることが好ましい。
【0034】
また、第1試薬として、市販の白血球分類用の染色試薬を用いてもよい。そのような染色試薬としては、たとえば、シスメックス株式会社製のフルオロセルWDFが挙げられる。
【0035】
第2試薬は、赤血球を溶血させ、白血球の細胞膜に上記第1試薬中の蛍光色素が透過できる程度の損傷を与えるための界面活性剤、例えば、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、およびアニオン性界面活性剤の少なくとも1つ、またはそれらの組み合わせを含有する。さらに、第2試薬は、20mM以上50mM以下の濃度で芳香族の有機酸を含有することが好ましい。ここで、第2試薬は、芳香族の有機酸の濃度が20mM以上30mM未満の場合は、第2試薬のpHが5.5以上6.4以下であり、芳香族の有機酸の濃度が30mM以上50mM以下の場合は、第2試薬のpHが5.5以上7.0以下であることが好ましい。
【0036】
本実施の形態では、第2試薬中の芳香族の有機酸の濃度が20mM以上30mM未満の場合、第2試薬のpHは5.5以上6.4以下が好ましく、5.5以上6.2以下がより好ましい。また、第2試薬中の芳香族の有機酸の濃度が30mM以上50mM以下、好ましくは40mM以上50mM以下である場合、第2試薬のpHが5.5以上7.0以下であることが好ましい。さらに好ましくは、第2試薬中の芳香族の有機酸の濃度が40mM以上50mM以下である場合、第2試薬のpHが5.5以上6.2以下であることが好ましい。
【0037】
また、本実施の形態では、芳香族の有機酸とは、分子中に少なくとも1つの芳香環を有する酸およびその塩を意味する。芳香族の有機酸としては、たとえば、芳香族カルボン酸、芳香族スルホン酸などが挙げられる。本実施の形態では、フタル酸、安息香酸、サリチル酸、馬尿酸、p-アミノベンゼンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸およびそれらの塩が好適に用いられる。なお、第2試薬中の芳香族の有機酸は1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。第2試薬中に芳香族の有機酸を2種類以上含む場合、それらの濃度の合計が20mM以上50mM以下であってもよい。
【0038】
カチオン性界面活性剤として、例えば、第四級アンモニウム塩型界面活性剤、または、ピリジニウム塩型界面活性剤を用いることができる。
【0039】
第四級アンモニウム塩型界面活性剤としては、たとえば以下の式(II)で表される、全炭素数が9~30の界面活性剤が挙げられる。
【0040】
【化2】
上記の式(II)中、R1は、炭素数6~18のアルキル基またはアルケニル基である。また、R2およびR3は、互いに同一または異なっており、炭素数1~4のアルキル基またはアルケニル基である。R4は、炭素数1~4のアルキル基もしくはアルケニル基、またはベンジル基であり、X-はハロゲン原子である。
【0041】
上記の式(II)中、R1としては、炭素数が6、8、10、12および14のアルキル基またはアルケニル基が好ましく、特に直鎖のアルキル基が好ましい。より具体的なR1としては、オクチル基、デシル基およびドデシル基が挙げられる。R2およびR3としては、メチル基、エチル基およびプロピル基が好ましい。R4としては、メチル基、エチル基およびプロピル基が好ましい。
【0042】
ピリジニウム塩型界面活性剤としては、たとえば以下の式(III)で表される界面活性剤が挙げられる。
【0043】
【化3】
上記の式(III)中、R1は、炭素数6~18のアルキル基またはアルケニル基であり、X-はハロゲン原子である。
【0044】
上記の式(III)中、R1としては、炭素数が6、8、10、12および14のアルキル基またはアルケニル基が好ましく、特に直鎖のアルキル基が好ましい。より具体的なR1としてはオクチル基、デシル基およびドデシル基が挙げられる。
【0045】
第2試薬中のカチオン性界面活性剤の濃度は、界面活性剤の種類により適宜調節できるが、通常10~10000ppm、好ましくは100~1000ppmである。
【0046】
ノニオン性界面活性剤として、以下の式(VI)で表されるポリオキシエチレン系ノニオン界面活性剤が好ましい。
【0047】
1-R2-(CH2CH2O)n-H (VI)
上記の式(VI)中、R1は炭素数8~25のアルキル基、アルケニル基またはアルキニル基であり、R2は酸素原子、-COO-または
【0048】
【化4】
であり、nは10~50の整数である。
【0049】
上記のノニオン性界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンステロール、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルなどが挙げられる。
【0050】
第2試薬中のノニオン性界面活性剤の濃度は、通常10~100000ppm、好ましくは100~10000ppm、より好ましくは1000~5000ppmである。
【0051】
第2試薬は、pHを一定に保つために緩衝剤を含んでいてもよい。そのような緩衝剤としては、たとえば、クエン酸塩、HEPESおよびリン酸塩などが挙げられる。なお、上記の芳香族の有機酸が緩衝作用を示す場合がある。そのような芳香族の有機酸を用いる場合は、第2試薬への緩衝剤の添加は任意である。
【0052】
また、第2試薬の浸透圧は特に限定されないが、赤血球を効率よく溶血させる観点から20~150mOsm/kgであることが好ましい。
【0053】
また、第2試薬は、上記の界面活性剤および芳香族の有機酸またはその塩と、所望により上記の緩衝剤とを、上記の芳香族の有機酸濃度になるように適切な溶媒に溶解し、pHをNaOH、HClなどを用いて調製することにより得ることができる。溶媒としては、上記の成分を溶解させることができれば特に限定されないが、たとえば、水、有機溶媒およびそれらの混合物が挙げられる。有機溶媒としては、たとえば、アルコール、メタノール、エチレングリコール、DMSOなどが挙げられる。
【0054】
また、第2試薬として、市販の白血球分類用の溶血試薬を用いてもよい。そのような溶血試薬としては、たとえば、シスメックス株式会社製のライザセルWDF、ライザセルWDF IIが挙げられる。
【0055】
上記のように構成された第2試薬により、赤血球が溶血され、白血球の細胞膜に第1試薬中の蛍光色素が通過できる程度の損傷が与えられる。また、上記のように構成された第1試薬により、第2試薬によって細胞膜に損傷を受けた白血球の核酸が染色される。これにより、光学検出器Dによって、白血球の4つのサブクラスの検出を行うことが可能となる。
【0056】
検出部26は、シース液(希釈液)を収容する試薬容器253に、チューブを介して接続されている。また、検出部26はコンプレッサ(図示せず)に接続されており、このコンプレッサにより発生される圧力により試薬容器253からシース液(希釈液)を分取することが可能となっている。分取したシース液は、光学検出器Dで用いられる。
【0057】
図3は、光学検出器の構成を示す図である。光学検出器Dは、半導体レーザによるフローサイトメトリー法を採用したものであり、フローセルD1、シースフロー系D2、ビームスポット形成系D3、前方散乱光受光系D4、側方散乱光受光系D5、蛍光受光系D6、及び信号処理回路D7を備えている。
【0058】
フローセルD1は、透光性を有する材料によって管状に構成された部材である。シースフロー系D2は、フローセルD1内に測定試料をシース液に包まれた状態で送り込み、フローセルD1中に液流を発生させるように構成されている。ビームスポット形成系D3は、光源である半導体レーザD31から照射された光が、コリメータレンズD32とコンデンサレンズD33とを通って、フローセルD1に照射されるよう構成されている。これにより、フローセルD1内を通過する液流に含まれる血球にレーザ光が照射される。また、ビームスポット形成系D3は、ビームストッパD34も備えている。
【0059】
前方散乱光受光系D4は、レーザ光が照射された血球によって前方へ散乱した光(前方散乱光)を前方集光レンズD41によって集光し、ピンホールD42を通った光をフォトダイオードD43で受光するように構成されている。フォトダイオードD43は、受光した光の強度に応じた大きさを有する電気信号を出力する。フォトダイオードD43から出力された電気信号は、信号処理回路D7により、各血球がフローセルD1内のレーザ光照射領域を通過する間に複数回サンプリングされ、デジタル信号に変換され、情報処理ユニット4に送信される。このデジタル信号(波形信号)が、受光した前方散乱光の測定結果であり、前方散乱光信号を示す。
【0060】
側方散乱光受光系D5は、レーザ光が照射された血球によって側方へ散乱した光(側方散乱光)を側方集光レンズD51にて集光し、ダイクロイックミラーD52で反射させ、フォトダイオードD53で受光するよう構成されている。フォトダイオードD53は、受光した光の強度に応じた大きさを有する電気信号を出力する。フォトダイオードD53から出力された電気信号は、信号処理回路D7により、各血球がフローセルD1内のレーザ光照射領域を通過する間に複数回サンプリングされ、デジタル信号に変換され、情報処理ユニット4に送信される。このデジタル信号(波形信号)が、受光した側方散乱光の測定結果であり、側方散乱光信号を示す。
【0061】
光散乱は、光の進行方向に血球のような粒子が障害物として存在すると、粒子により光がその進行方向を変えることによって生じる現象である。この散乱光を検出することによって、粒子の大きさと材質に関する情報を得ることができる。特に、前方散乱光からは、粒子(血球)の大きさに関する情報を得ることができる。具体的には、前方散乱光強度が高い程、細胞(例えば白血球)の大きさが大きいことを示す。また、側方散乱光からは、粒子内部の情報を得ることができる。血球粒子にレーザ光が照射された場合、側方散乱光強度は細胞内部の複雑さ(核の形状、大きさ、密度および顆粒の量)に依存する。例えば、側方散乱光強度が高い程、細胞(血球)の密度が高く、細胞(血球)に含まれる顆粒の量が多いことを示す。また、側方散乱光強度が高い程、核の形状が複雑であり、核の分葉が多いことを示す。
【0062】
蛍光受光系D6は、核酸が染色された血球にレーザ光が照射されることにより発せられた蛍光を、ダイクロイックミラーD52および分光フィルタD61を介して、アバランシェフォトダイオードであるフォトダイオードD62で受光するよう構成されている。フォトダイオードD62は、受光した光の強度に応じた大きさを有する電気信号を出力する。フォトダイオードD62から出力された電気信号は、信号処理回路D7により、各血球がフローセルD1内のレーザ光照射領域を通過する間に複数回サンプリングされ、デジタル信号に変換され、情報処理ユニット4に送信される。このデジタル信号(波形信号)が、受光した蛍光の測定結果であり、蛍光信号を示す。なお、フォトダイオードD62は、アバランシェフォトダイオードである必要はなく、例えば、フォトマルであってもよい。
【0063】
蛍光物質により核酸が染色された血球に光を照射すると、蛍光物質は蛍光を発する。蛍光の強度は染色された核酸量が多いほど強くなるため、蛍光信号を測定することによって、血球に含まれる核酸量の違いに基づき血球を分類することができる。
【0064】
図2に戻り、光学検出器Dにより測定された前方散乱光信号と、側方散乱光信号と、蛍光信号とを含む測定結果は、情報処理ユニット4に送信される。
【0065】
以上のように、測定ユニット2は、血液検体と、血液検体に含まれる白血球を染色する蛍光色素と、を含む測定試料を調製する調製部と、測定試料に光を照射し、光が照射された測定試料に含まれる白血球の蛍光を検出し、検出された蛍光に基づいて蛍光信号を測定する測定部として機能する。
【0066】
(情報処理ユニット)
図4は、情報処理ユニットの構成を示す図である。情報処理ユニット4は、コンピュータを含み構成され、本体40、入力部41、及び出力部42を備える。入力部41、出力部42の説明は前述の通りであるので省略する。
【0067】
本体40は、CPU401、ROM402、RAM403、記憶装置404、読出装置405、画像出力インターフェース406、入出力インターフェース407、及び通信インターフェース408を備える。
【0068】
CPU401は、ROM402に記憶されているコンピュータプログラムおよびRAM403にロードされたコンピュータプログラムを実行する。RAM403は、ROM402および記憶装置404に記録されているコンピュータプログラムの読み出しに用いられる。また、RAM403は、これらのコンピュータプログラムを実行するときに、CPU401の作業領域としても利用される。
【0069】
記憶装置404は、ソリッドステートドライブ(SSD)、ハードディスクドライブ(HDD)、又はこれらの組み合わせである。記憶装置404には、オペレーティングシステム(OS)、CPU401に実行させるためのコンピュータプログラム、およびコンピュータプログラムの実行に用いるデータが記憶されている。また、記憶装置404には、図11に示す情報処理ユニット4の処理を実行させるためのプログラム404aが記憶されている。読出装置405は、CDドライブまたはDVDドライブ等によって構成されており、記録媒体405aに記録されたコンピュータプログラムおよびデータを読み出すことができる。なお、上記プログラム404aが記録媒体405aに記録されている場合には、読出装置405により記録媒体405aから読み出されたプログラム404aが、記憶装置404に記憶される。
【0070】
画像出力インターフェース406は、データに応じた映像信号を出力部42に出力し、出力部42は、画像出力インターフェース406から出力されたデータに基づいて画像を表示する。ユーザは入力部41を介して指示を入力し、入出力インターフェース407は、入力部41を介して入力された信号を受け付ける。通信インターフェース408は、測定ユニット2と、搬送ユニット3と、ホストコンピュータ5に接続されており、CPU401は、通信インターフェース408を介して、これら装置との間で制御信号およびデータの送受信を行う。
【0071】
本体40は、各構成401~408により、入力部41を介したユーザの指示及び/又はコンピュータプログラムがCPU401により実行されることで、測定ユニット2及び搬送ユニット3を制御する制御部として機能するとともに、コンピュータプログラムがCPU401により実行されることで、情報処理部として機能する。
【0072】
換言すれば、情報処理ユニット4は、本体40により、測定ユニット2及び搬送ユニット3の動作を制御するとともに、測定ユニット2から受信した測定結果(例えば、前方散乱光信号、側方散乱光信号、蛍光信号)に基づいて分析を実行する。この分析では、血液検体中に存在する白血球が、4つのサブクラス、すなわち、(1)リンパ球(LYMPH)、(2)単球(MONO)、(3)好中球(NEUT)と好塩基球(BASO)とによってなる血球群、および(4)好酸球(EO)に分類される。その分類手順について説明する。
【0073】
情報処理ユニット4は、測定ユニット2から受信した、各血球の前方散乱光信号(各血球がフローセルD1内のレーザ光照射領域を通過する間に複数回サンプリングされたデジタル信号)のそれぞれから、各血球のピーク値を示すデジタル信号を抽出し、抽出したデジタル信号を各血球の前方散乱光強度として取得する。情報処理ユニット4は、同様に、各血球の側方散乱光信号のそれぞれから、各血球のピーク値を示すデジタル信号を抽出し、抽出したデジタル信号を各血球の側方散乱光強度として取得し、各血球の蛍光信号のそれぞれから、各血球のピーク値を示すデジタル信号を抽出し、抽出したデジタル信号を各血球の蛍光強度として取得する。その後、情報処理ユニット4は、スキャッタグラムを生成する。スキャッタグラムは、前方散乱光強度、側方散乱光強度、及び蛍光強度に基づき、各血球をプロットした分布図である。情報処理ユニット4は、前方散乱光強度、側方散乱光強度、及び蛍光強度を各軸とした3次元のスキャッタグラム、及び、側方散乱光強度、蛍光強度を軸とした2次元のスキャッタグラム等を生成することができる。本実施形態のスキャッタグラムは2次元のスキャッタグラムである。
【0074】
図5Aは、スキャッタグラムの一例を示す図である。図5Aに示すように、本実施形態のスキャッタグラムは、横軸を側方散乱光強度(SSC)とし、縦軸を蛍光強度(SFL)とする2次元図上に、測定ユニット2で測定された個々の血球の側方散乱強度及び蛍光強度に対応する位置にそれぞれプロットすることにより生成される。
【0075】
次に、情報処理ユニット4は、本体40により、スキャッタグラムにおいて分画処理を行う。分画処理は、スキャッタグラムにおける白血球をいずれかのクラスタに分類し、スキャッタグラム上において区分する処理である。分画処理の手順、手法について説明する。
【0076】
図5Bは、分画処理がなされたスキャッタグラムの一例を示す図である。まず、情報処理ユニット4は、スキャッタグラム上にプロットされた点から、溶血した赤血球等からなるデブリスに相当する点を除去する。具体的には、予め設定された所定の領域DBに含まれる点が除去される。続いて、情報処理ユニット4は、領域DBの血球が除外されたスキャッタグラム上の点を、白血球の4つのサブクラスに対応する4つのクラスタ(集団)の何れかに分類する。図5Bに示すように、4つのクラスタは、(1)リンパ球(LYMPH)のクラスタA11、(2)単球(MONO)のクラスタA12、(3)好中球(NEUT)と好塩基球(BASO)とによってなる血球群のクラスタA13、および(4)好酸球(EO)のクラスタA14である。
【0077】
具体的には、情報処理ユニット4は、スキャッタグラム上にプロットされた各血球に対応する点と、予め設定された各クラスタの重心位置との距離から、各血球のクラスタへの帰属度を算出し、当該帰属度に応じて各血球が各クラスタに割り当てられる。このような各血球の分類方法は、米国特許第5555196号公報に詳細に記載されており、米国特許第5555196号公報は、本明細書に組み込まれる。
【0078】
各血球が白血球の4つのサブクラスに対応する4つのクラスタの何れかに分類されると、スキャッタグラム上にプロットされた各点は、図5Bに示すクラスタA11~A14のように区分されることになる。
【0079】
情報処理ユニット4は、各クラスタの血球数を計数する。具体的には、情報処理ユニット4は、本体40により、クラスタA11~A14の各クラスタに含まれる点の個数(各クラスタに属する血球数)を計数する。これにより、リンパ球、単球、好中球と好塩基球とによってなる血球群、及び好酸球の数がそれぞれ得られる。また、情報処理ユニット4は、本体40により、白血球の数(すなわち、クラスタA11~A14の各クラスタに含まれる点の個数の合計)を計数し、白血球に対するリンパ球、単球、好中球と好塩基球とによってなる血球群、及び好酸球の比率をそれぞれ算出する。
【0080】
情報処理ユニット4は、本体40により、クラスタA13に属する血球の蛍光強度に基づいて、好中球集団の蛍光強度の分布幅に関する情報を生成する。好中球集団は、好中球と好塩基球とによってなる血球群であり、クラスタA13に含まれる血球群である。一般に、末梢血中には、好中球が好塩基球よりも圧倒的に多く含まれるため、クラスタA13の血球群は好中球の集団であると捉えることができる。なお、クラスタA13の血球群から好塩基球に対応する血球を除外し、残った血球群を好中球集団としてもよい。
【0081】
好中球集団の蛍光強度の分布幅に関する情報は、好中球集団の蛍光強度の分布幅を示す指標である。好中球集団の蛍光強度の分布幅を示す指標としては、(1)好中球集団の重心G(図5B参照)を通るX軸上の好中球集団のY軸の上限からY軸の下限までの距離DW(図5B参照)、(2)重心Gから重心Gを通るX軸上の好中球集団のY軸の上限までの距離DW1図5B参照)、(3)重心Gから重心Gを通るX軸上の好中球集団のY軸の下限までの距離DW2図5B参照)、(4)重心Gから重心Gを通るX軸上の好中球集団のY軸の上限までの距離DW1と、重心Gから重心Gを通るX軸上の好中球集団のY軸の下限までの距離DW2との平均の何れかとしても良い。重心Gは、情報処理ユニット4が、本体40により算出する。また、好中球集団の蛍光強度の分布幅を示す指標としては、重心Gとは無関係に、(5)好中球集団の蛍光強度が最大値の血球と最小値の血球とのY軸方向における距離の何れかとしても良い。好中球集団の蛍光強度の分布幅に関する情報として、例えば、シスメックス株式会社製の多項目自動血球分析装置XNシリーズ(XN-1000、XN-2000等)と同じ方法で出力されるNE-WYが用いられても良い。
【0082】
好中球集団の蛍光強度の分布幅は、感染症に起因する臓器障害の重症度の評価に用いられるSOFAスコア(Sequential Organ Failure Assessment Score)と高い相関があることが、本発明者により見出された。また、入院初期段階での患者のSOFAスコアを調べることによって、好中球集団の蛍光強度の分布幅は、感染症に起因する臓器障害の重症化した患者で大きくなる傾向があることが、本発明者により見出された。これらの知見が得られた実験、分析について説明する。
【0083】
本発明者は、敗血症疑いのある入院患者の入院初期段階の各日の血液検体と健常者の血液検体を、上記で説明した血球分析装置1を用いた手法で分析した。この分析には、敗血症疑いのある入院患者44例と健常者39例の血液検体を用いた。敗血症疑いのある入院患者の内訳は、入院後に敗血症と診断された敗血症患者23例、敗血症が疑われたが敗血症ではなかった非敗血症患者21例であった。
【0084】
敗血症疑いのある入院患者の選択基準は、発熱(38℃以上)があり、qSOFA(quick SOFA)が2点以上の者とした。但し、ステロイド投与患者は明記して登録した。qSOFAは、呼吸回数、精神状態、収縮期血圧の3項目から構成された、SOFAよりも簡便な敗血症スクリーニング法である。敗血症疑いのある入院患者の除外基準は、慢性疾患の最終ステージの患者、好中球減少症の患者、透析患者、アクテムラ(登録商標)(ヒト化抗ヒトIL6レセプターモノクローナル抗体)、及びTNFα阻害薬投与患者とした。
【0085】
健常者の選択基準は、検体採取時に発熱がなく、感染症が疑われない者、慢性炎症性疾患に罹患していない者、凝固能に異常がない者、及び抗凝固剤を内服していないものとした。健常者の除外基準はなしとした。
【0086】
具体的には、本発明者は、敗血症疑いのある入院患者については、入院初期段階である入院初日(0日目)、1日目、3日目にそれぞれ血液検体を採取し、健常者については、1回のみ血液検体を採取した。さらに、各入院患者に対してSOFAスコアを取得するための検査を実施し、各日(0日目、1日目、3日目)のSOFAスコアを取得した。また、本発明者は、採取した血液検体を用いて、測定ユニット2による手法で入院患者の各日の測定試料および健常者の測定試料を調製し、側方散乱光信号及び蛍光信号を測定し、情報処理ユニット4の手法により、好中球集団の蛍光強度の分布幅に関する情報(NE-WY)を含む白血球関連パラメータをそれぞれ算出した。これらの調製、側方散乱光信号及び蛍光信号の測定、並びに、NE-WYを含む白血球関連パラメータの算出には、シスメックス株式会社製の多項目自動血球分析装置XN-2000を用いた。
【0087】
図6は、入院からの日数に対する敗血症の入院患者(敗血症患者)、非敗血症の入院患者(非敗血症患者)、健常者の好中球集団の蛍光強度の分布幅に関する情報(NE-WY)を示すグラフである。図6のグラフは、箱ひげ図である。図6のグラフ上側に示す横線は、各データ群の差をSteel-Dwassの方法で検定した際のP値が0.05未満となった2群を示す。例えば、上から1行目の横線は、本法で検定した際の健常者のNE-WYのデータ群と敗血症患者の入院3日目のNE-WYのデータ群のP値が0.05未満であることを示す。上から2行目の横線は、健常者のNE-WYのデータ群と敗血症患者の入院1日目のNE-WYのデータ群のP値が0.05未満であることを示し、上から3行目の横線は、健常者のNE-WYのデータ群と敗血症患者の入院0日目のNE-WYのデータ群のP値が0.05未満であることを示す。上から6行目の横線は、非敗血症患者の入院0日目のNE-WYのデータ群と敗血症患者の入院0日目のNE-WYのデータ群のP値が0.05未満であることを示し、上から7行目の横線は、非敗血症患者の入院1日目のNE-WYのデータ群と敗血症患者の入院1日目のNE-WYのデータ群のP値が0.05未満であることを示す。図6に示すように、入院0日目における、敗血症患者群のNE-WYは、健常者群及び入院0日目の非敗血症患者群のNE-WYより有意に大きいことが分かった。同様に、入院1日目における、敗血症患者群のNE-WYは、健常者群及び入院1日目の非敗血症患者群のNE-WYより有意に大きいことが分かった。このように、入院0日目及び1日目である入院初期における敗血症患者群のNE-WYが、健常者群及び入院初期の非敗血症患者群のNE-WYよりそれぞれ有意に大きいことが分かった。蛍光強度は、蛍光強度が高い程、核酸量が多いことを示すことから、好中球集団の蛍光強度の分布幅が大きいということは、核酸量が多い好中球と、核酸量が少ない好中球とが存在し、好中球に多様性があることを示すと推察される。敗血症になると好中球の多様性が生じる理由としては、これに限定されるものではないが、次のように考えられる。すなわち、敗血症では、幼若好中球が末梢血に動員される。末梢血中には、動員された幼若好中球と、アポトーシスやネクローシス等の細胞死を起こした好中球とが含まれる。幼若好中球に含まれる核酸量は多い一方、細胞死を起こした好中球に含まれる核酸量は少ないため、敗血症で好中球集団の蛍光強度の分布幅が大きくなると考えられる。
【0088】
図7は、入院0日目における入院患者(敗血症患者及び非敗血症患者)の好中球集団の蛍光強度の分布幅に関する情報(NE-WY)とSOFAスコアとの相関を示す図である。図7において、白塗りの点は、敗血症患者のデータであり、黒塗りの点は、非敗血症患者のデータである。回帰の有意性をF検定した際のP値は、0.05未満である。NE-WYとSOFAスコアとの相関を示すスピアマンの順位相関係数rは、0.70であり、両者に高い相関が認められた。このため、好中球集団の蛍光強度の分布幅に関する情報から、対応するSOFAスコアを推定することができるとの知見が得られた。また、本発明者は、図7に示す敗血症患者及び非敗血症患者のデータから回帰式を算出した。その回帰式は、y=0.013x-7.1であった。但し、x軸をNE-WYとし、y軸をSOFAスコアとした。
【0089】
図8は、各日のNE-WYとSOFAスコアとの相関を示す図である。図8において、最も左のグラフは、図7に示したグラフと同一である。図8における中央のグラフ、最も右のグラフは、それぞれ、入院1日目、入院3日目の入院患者(敗血症患者及び非敗血症患者)のNE-WYとSOFAスコアとの相関を示すグラフである。各グラフの白塗りの点は、敗血症患者のデータであり、黒塗りの点は、非敗血症患者のデータである。NE-WYとSOFAスコアとの相関を示すスピアマンの順位相関係数rは、入院初日(0日目)が0.70であり、入院1日目が0.54であり、入院3日目が0.27であった。入院初日(0日目)に最も高い相関が確認され、次いで、入院1日目に高い相関が確認された。また、入院から日が経つ毎に相関が下がっていることが確認された。経日で相関が下がる理由は、入院初日から投薬治療を行って感染を鎮めるように治療するので、治療に応じて感染が収まるためと考えられる。また、本発明者は、図8に示す各日の敗血症患者及び非敗血症患者のデータから回帰式をそれぞれ算出した。入院初日(0日目)、入院1日目、入院3日目の回帰式は、それぞれ、y=0.013x-7.1、y=0.015x-8.3、y=0.023x-12.1であった。但し、x軸をNE-WYとし、y軸を各日のSOFAスコアとした。
【0090】
情報処理ユニット4の説明に戻る。情報処理ユニット4は、本体40により、好中球集団の蛍光強度の分布幅に関する情報に基づいて、感染症に起因する臓器障害の重症度に関する情報を決定する。感染症に起因する臓器障害の重症度に関する情報は、例えば、感染症に罹患した被検体の臓器障害の重症度に関する情報である。具体的には、感染症に起因する臓器障害の重症度に関する情報は、血液検体の被検者が敗血症であるとの疑いがあることを示すフラグ情報、及び/又は、感染症に起因する臓器障害の重症度を示す推定スコアの幅を含む。感染症に起因する臓器障害の重症度を示す推定スコアは、SOFAスコアの推定値(以下、単に「推定SOFAスコア」ともいう。)である。
【0091】
具体的には、記憶装置404には、好中球集団の蛍光強度の分布幅に関する情報と、推定SOFAスコアとが対応付けられた第1換算テーブルが記憶されている。図9は、この第1換算テーブルの一例を示す。図9の例では、好中球集団の蛍光強度の分布幅に関する情報(NE-WY)が500以上700未満、700以上1000未満、1000以上1300未満、1300以上である場合、0以上2未満、2以上6未満、6以上10未満、10以上の推定SOFAスコアがそれぞれ対応付けられている。このように第1換算テーブルでは、好中球集団の蛍光強度の分布幅が大きい程、感染症に起因する臓器障害の重症度を示す推定スコアが大きくなっている。第1換算テーブルは、上記の実験方法で説明した方法で取得した敗血症患者、非敗血症患者のデータの回帰式を求めることで作成することができる。例えば、図9の第1換算テーブルは、図7に示す回帰式から導き出されたものである。
【0092】
情報処理ユニット4は、本体40により、生成された好中球集団の蛍光強度の分布幅に関する情報と、第1換算テーブルとに基づいて、生成された好中球集団の蛍光強度の分布幅に関する情報に対応する、感染症に起因する臓器障害の重症度を示す推定スコアの幅を決定する。例えば、NE-WYが600である場合、情報処理ユニット4は、0以上2未満の推定スコアの幅を決定する。
【0093】
情報処理ユニット4は、決定した推定スコアの幅に基づいて、フラグ情報を決定する。フラグ情報は、血液検体の被検者が敗血症であるとの疑いがあることを示すテキストであり、記憶装置404に記憶されている。テキストは、例えば「Sepsis?」である。具体的には、情報処理ユニット4は、例えば、決定した推定スコアの幅が、2以上6未満、6以上10未満、及び10以上のいずれかである場合、フラグ情報を取得する。
【0094】
情報処理ユニット4は、血液検体の分析結果を出力部42に表示する。図10Aは、血液検体の分析結果画面の一例を示す図である。図10Bは、血液検体の分析結果画面の他の一例を示す図である。図10A及び図10Bに示す分析結果画面6は、本体40により、出力部42に表示される。分析結果画面6には、血液検体の検体番号及び測定日時のほか、領域61~64が含まれる。領域61は、白血球(WBC)の数と共に、好中球(NEUT)、リンパ球(LYMPH)、単球(MONO)、好酸球(EO)、好塩基球(BASO)の個数と、白血球数に対する各比率とを表示する領域である。領域62は、好中球集団の蛍光強度の分布幅を示す指標のデータを示す領域である。ここでは、領域62には、NE-WYのデータが示される。領域63は、感染症に起因する臓器障害の重症度に関する情報を表示する領域である。領域63には、血液検体の被検者が敗血症であるとの疑いがあることを示すフラグ情報、及び/又は、感染症に起因する臓器障害の重症度を示す推定スコアの幅が表示される。図10Aに示す例では、被検者が敗血症であるとの疑いがあることを示すフラグ情報として、「Sepsis?」のテキストが表示されている。推定スコアの幅が、0以上2未満の場合には、感染症に起因する臓器障害の重症度に関するフラグ情報は表示されない。図10Bに示す例では、感染症に起因する臓器障害の重症度を示す推定SOFAスコアの幅(図10Bの例では、2以上6未満)が表示される。図10A及び図10Bに示す例では、領域63に、フラグ情報と推定スコアの幅がそれぞれ単独で表示されているが、両方が表示されるようにしても良い。領域64は、情報処理ユニット4により生成されたスキャッタグラムが表示される。このスキャッタグラムは、横軸を側方散乱強度、縦軸を蛍光強度とした2次元スキャッタグラムである。
【0095】
以上のように、情報処理ユニット4は、測定された蛍光信号に基づいて、測定試料に含まれる好中球集団の蛍光強度の分布幅に関する情報を生成し、好中球集団の蛍光強度の分布幅に関する情報に基づいて、感染症に起因する臓器障害の重症度に関する情報を決定する情報処理部と、感染症に起因する臓器障害の重症度に関する情報を出力する出力部として機能する。
【0096】
次に、情報処理ユニット4の動作を説明する。図11は、情報処理ユニットの動作フローチャートの一例である。情報処理ユニット4の制御によって搬送ユニット3が測定ユニット2に血液検体を供給していることを前提とする。
【0097】
図11に示すように、情報処理ユニット4は、CPU401により、測定処理制御を実行する(S1)。測定処理制御は、測定ユニット2に測定処理を実行させる制御であり、調製処理制御と検出処理制御とを含む。まず、情報処理ユニット4は、調製処理制御を実行する(S1a)。具体的には、情報処理ユニット4は、第1の制御信号を測定ユニット2に送信し、測定ユニット2に調製処理を実行させる。調製処理は、上記のように、血液検体に含まれる赤血球を溶血させ、白血球の核酸を蛍光染色するために、血液検体、第1試薬、第2試薬を混合し、この混合液をヒータHにより加温することにより、測定試料を作製する処理である。
【0098】
次に、情報処理ユニット4は、CPU401により、検出処理制御を実行する(S1b)。具体的には、情報処理ユニット4は、第2の制御信号を測定ユニット2に送信し、測定ユニット2に検出処理を実行させる。検出処理は、上記のように、測定試料に基づく血球の検出処理である。具体的には、測定ユニット2は、第2の制御信号に基づき、フローセルD1に測定試料を流して液流を発生させ、光学検出器Dにより、各血球に関する前方散乱光信号、側方散乱光信号、及び蛍光信号を測定する。測定ユニット2は、測定した各信号と、対応する検体番号を情報処理ユニット4に送信する。
【0099】
情報処理ユニット4は、CPU401により、測定ユニット2から受信した各血球に関する前方散乱光信号、側方散乱光信号、及び蛍光信号を、測定ユニット2から受信した検体番号と関連付けて記憶装置404に記憶させる。情報処理ユニット4は、CPU401により、受信した側方散乱光信号及び蛍光信号に基づいて、スキャッタグラムを生成し(S2)、生成したスキャッタグラムにおいて分画処理を行う(S3)。スキャッタグラムの生成処理及び分割処理は、図5A及び図5Bを用いて説明した手法によって行われる。
【0100】
情報処理ユニット4は、CPU401により、測定試料に含まれる白血球(WBC)の数、及び、クラスタA11~A14に含まれる血球数を計数し、各クラスタにおける血球の白血球に対する比率を算出する(S4)。情報処理ユニット4は、CPU401により、計数した白血球数及び各クラスタの血球数並びに算出した各比率を、検体番号に関連付けて記憶装置404に記憶させる(S4)。
【0101】
情報処理ユニット4は、CPU401により、好中球集団の蛍光強度に基づいて、好中球集団の蛍光強度の分布幅に関する情報を生成する(S5)。具体的には、好中球集団の蛍光強度の分布幅に関する情報は、NE-WYである。
【0102】
次いで、情報処理ユニット4は、CPU401により、好中球集団の蛍光強度の分布幅に関する情報に基づいて、感染症に起因する臓器障害の重症度に関する情報を決定する(S6)。具体的には、情報処理ユニット4は、CPU401により、記憶装置404に記憶された第1換算テーブルを参照し、S5で生成したNE-WYに対応する、感染症に起因する臓器障害の重症度を示す推定SOFAスコアの幅を決定する。情報処理ユニット4は、例えば、ステップS5で生成したNE-WYの値が、500以上700未満である場合、推定SOFAスコアの幅は、0以上2未満であると決定し、NE-WYの値が、700以上1000未満である場合、推定SOFAスコアの幅は、2以上6未満であると決定する。このとき、情報処理ユニット4は、CPU401により、決定した推定SOFAスコアの幅が、2以上6未満、6以上10未満、及び10以上のいずれかである場合には、記憶装置404からフラグ情報を読み出す。そして、情報処理ユニット4は、CPU401により、感染症に起因する臓器障害の重症度に関する情報(本実施形態では、推定SOFAスコアの幅)を含む血液検体の分析結果画面6を生成し、出力部42によって出力(表示)する(S7)。なお、上記した実施形態では、測定ユニット2が波形信号である蛍光信号を情報処理ユニット4に送信し、情報処理ユニット4が蛍光信号に基づき蛍光強度を取得しているが、測定ユニット2が蛍光信号としての蛍光強度を取得し、情報処理ユニット4に送信してもよい。また蛍光強度は、各血球の蛍光信号のピーク値であるが、蛍光信号の平均値等の統計値であってもよい。また、感染症に起因する臓器障害の重症度に関する情報は、テキストデータとして出力されてもよいし、画像データとして出力されてもよい。
【0103】
[1-3.第1実施形態に係る作用・効果]
(1)本実施形態の血球分析装置1は、血液検体と、血液検体に含まれる白血球を染色する蛍光色素と、を含む測定試料に光を照射し、光が照射された測定試料に含まれる白血球の蛍光を検出し、検出された蛍光に基づいて蛍光信号を測定する測定部(測定ユニット2)と、測定された蛍光信号に基づいて、測定試料に含まれる好中球集団の蛍光強度の分布幅に関する情報を生成し、好中球集団の蛍光強度の分布幅に関する情報に基づいて、感染症に起因する臓器障害の重症度に関する情報を決定する情報処理部(本体40)と、感染症に起因する臓器障害の重症度に関する情報を出力する出力部42と、を含む。
【0104】
これにより、感染症に起因する臓器障害の重症度の迅速な評価を支援する検体分析方法及び検体分析装置であって、感染症に起因する臓器障害の重症度を示すスコアと相関が高い情報を出力することができる検体分析方法及び検体分析装置を提供することができる。
【0105】
(2)感染症に起因する臓器障害の重症度に関する情報は、血液検体の被検者が敗血症であるとの疑いがあることを示すフラグ情報を含むようにした。これにより、被検者が敗血症であるとの医師の診断を支援することができる。
【0106】
(3)感染症に起因する臓器障害の重症度に関する情報は、感染症に起因する臓器障害の重症度を示す推定スコアの幅を含むようにした。これにより、被検者に対する医師の治療方針の決定を支援することができる。例えば、推定スコアの幅に含まれる値が大きい程、医師がより手厚い治療を施すことの意思決定を支援することができる。
【0107】
(4)好中球集団の蛍光強度の分布幅に関する情報は、好中球集団の蛍光強度の分布幅を示す指標であり、この指標が大きい程、感染症に起因する臓器障害の重症度を示す推定スコアが大きくなるようにした。これにより、推定スコアの値が大きい程、医師がより手厚い治療を施すことの意思決定を支援することができる。
【0108】
(5)本実施形態の血球分析装置1は、測定試料を調製する調製部(試料調製部25)を更に含むようにした。これにより、血液検体に含まれる白血球について分析しやすくすることができる。
【0109】
(6)測定部(測定ユニット2)は、測定試料を流すフローセルD1を含み、フローセルD1を流れる測定試料に光を照射するようにした。これにより、各血球についての散乱光信号及び蛍光信号を得ることができる。
【0110】
[2.第2実施形態]
第2実施形態に係る血球分析装置について説明する。第2実施形態については、第1実施形態と異なる部分のみを説明し、第1実施形態と同じ部分については説明を省略する。
【0111】
第2実施形態は、感染症に起因する臓器障害の重症度に関する情報の取得方法が、第1実施形態と異なる。また、第2実施形態に係る感染症に起因する臓器障害の重症度に関する情報は、感染症に起因する臓器障害の重症度を示す推定スコアを含む。この推定スコアは、推定SOFAスコアである。
【0112】
具体的には、情報処理ユニット4は、本体40により、好中球集団の蛍光強度の分布幅に関する情報(NE-WY)と推定SOFAスコアとを対応付ける回帰式から、推定SOFAスコアを生成する。すなわち、第2実施形態では、第1実施形態の第1換算テーブルに代えて、回帰式を含むコンピュータプログラムが記憶装置404に記憶されており、情報処理ユニット4は、本体40により、回帰式を含むコンピュータプログラムを実行し、NE-WYに対応する推定SOFAスコアを生成する。この回帰式は、例えば、図7で説明したy=0.013x-7.1である。したがって、回帰式は傾きが正の1次式であるので、NE-WYが大きい程、感染症に起因する臓器障害の重症度を示す推定スコアは大きくなる。回帰式は、信頼性に足る程度に十分な数の敗血症患者、非敗血症患者のデータから算出したものとしても良い。
【0113】
図12は、第2実施形態に係る血液検体の分析結果画面の一例を示す図である。図12に示すように、情報処理ユニット4は、分析結果画面6の領域63において、生成した推定SOFAスコアを表示する。図12に示す例では、推定SOFAスコアが2であることが表示されている。
【0114】
このように、感染症に起因する臓器障害の重症度に関する情報は、感染症に起因する臓器障害の重症度を示す推定スコアを含むようにしても、感染症に起因する臓器障害の重症度の迅速な評価を支援する検体分析方法及び検体分析装置であって、感染症に起因する臓器障害の重症度を示すスコアと相関が高い情報を出力することができる検体分析方法及び検体分析装置を提供することができる。例えば、推定スコアの値が大きい程、医師がより手厚い治療を施すことの意思決定を支援することができる。
【0115】
また、好中球集団の蛍光強度の分布幅に関する情報は、好中球集団の蛍光強度の分布幅を示す指標であり、この指標が大きい程、感染症に起因する臓器障害の重症度を示す推定スコアが大きくなるようにした。これにより、推定スコアの値が大きい程、医師がより手厚い治療を施すことの意思決定を支援することができる。
【0116】
[3.第3実施形態]
第3実施形態に係る血球分析装置について説明する。第3実施形態については、第1実施形態と異なる部分のみを説明し、第1実施形態と同じ部分については説明を省略する。
【0117】
第3実施形態に係る感染症に起因する臓器障害の重症度に関する情報が、第1実施形態と異なる。すなわち、第3実施形態に係る感染症に起因する臓器障害の重症度に関する情報は、血液検体の被検者が敗血症であるとの疑いがあることを複数段階で示すフラグ情報である。
【0118】
図13は、NE-WYと敗血症の可能性とを複数段階で対応付けた第2換算テーブルの一例である。図13に示すように、第2換算テーブルでは、NE-WYが500以上700未満、700以上1300未満、1300以上である場合、敗血症である可能性が、Low、Middle、Highにそれぞれ対応付けられている。第3実施形態では、第1実施形態の第1換算テーブルに代えて、第2換算テーブルが記憶装置404に記憶されており、情報処理ユニット4は、本体40により、生成されたNE-WYと第2換算テーブルとに基づいて、被検体の敗血症の可能性の大きさを決定する。
【0119】
図14は、第3実施形態に係る血液検体の分析結果画面の一例を示す図である。図14に示すように、情報処理ユニット4は、分析結果画面6の領域63において、フラグ情報として、取得した敗血症の可能性の大きさを表示する。図14に示す例では、敗血症の可能性がHighであることが表示されている。
【0120】
感染症に起因する臓器障害の重症度に関する情報が敗血症の可能性の大きさを示すフラグ情報であっても、感染症に起因する臓器障害の重症度の迅速な評価を支援する検体分析方法及び検体分析装置であって、感染症に起因する臓器障害の重症度を示すスコアと相関が高い情報を出力することができる検体分析方法及び検体分析装置を提供することができる。例えば、重症度を示す段階が高い程、医師がより手厚い治療を施すことの意思決定を支援することができる。
【0121】
本実施形態では、フラグ情報として、敗血症の可能性を3段階としたが、2段階、4段階、又は5段階以上としても良い。また、敗血症の可能性は、確率表示であっても良い。
【0122】
[4.第4実施形態]
第4実施形態に係る血球分析装置について説明する。第4実施形態については、第1実施形態と異なる部分のみを説明し、第1実施形態と同じ部分については説明を省略する。
【0123】
第4実施形態に係る感染症に起因する臓器障害の重症度に関する情報が、第1実施形態と異なる。すなわち、第4実施形態に係る感染症に起因する臓器障害の重症度に関する情報は、血液検体の被検者が敗血症であるとの疑いがあることを示すフラグ情報が、入院初期のSOFAスコアと、健常時のSOFAスコアとの差分の推定値が閾値以上であるか否かを示す情報を含む。
【0124】
具体的には、記憶装置404には、第1換算テーブルに代えて、閾値が記憶されている。Sepsis-3では、感染症とSOFAスコアの2点以上の急上昇が見られた場合に敗血症と定義することから、閾値は、例えば、入院初期のSOFAスコアと、健常時のSOFAスコアとの差分の推定値が2に対応する、好中球集団の蛍光強度の分布幅に関する情報(NE-WY)の値とすることができる。但し、閾値は、適宜設定可能としても良い。
【0125】
情報処理ユニット4は、本体40により、生成された好中球集団の蛍光強度の分布幅に関する情報(NE-WY)と、記憶装置404から読み出した閾値とを比較し、NE-WYが閾値以上であると判定した場合、入院初期のSOFAスコアと、健常時のSOFAスコアとの差分の推定値が閾値以上である旨のフラグ情報を、出力部42に表示される分析結果画面6の領域63に表示する。また、情報処理ユニット4は、本体40により、NE-WYが閾値未満であると判定した場合、入院初期のSOFAスコアと、健常時のSOFAスコアとの差分の推定値が閾値未満である旨のフラグ情報を、出力部42に表示される分析結果画面6の領域63に表示する。なお、NE-WYが閾値未満である場合、フラグ情報は非表示であってもよい。
【0126】
図15は、第4実施形態に係る血液検体の分析結果画面の一例を示す図である。図15は、NE-WYが閾値以上である場合の分析結果画面6である。図15に示すように、領域63には、「Estimated delta SOFA score≧2」と表示され、入院初期のSOFAスコアと、健常時のSOFAスコアとの差分の推定値が2以上であることが示されている。
【0127】
閾値の設定方法について、図16を用いて説明する。
【0128】
図16は、各日の入院患者の好中球集団の蛍光強度の分布幅に関する情報(NE-WY)と、各日のSOFAスコアと健常時のSOFAスコアとの差分との相関を示す図である。図16において、最も左のグラフ、中央のグラフ、最も右のグラフは、それぞれ、入院0日目、入院1日目、入院3日目のNE-WYと、各日のSOFAスコアと健常時のSOFAスコアとの差分との相関を示すグラフである。各グラフの白塗りの点は、敗血症患者のデータであり、黒塗りの点は、非敗血症患者のデータである。敗血症患者及び非敗血症患者は、図8の各患者と同一患者である。各日の入院患者の好中球集団の蛍光強度の分布幅に関する情報(NE-WY)の算出方法、及び、その算出に用いた血球分析装置は、上記で説明したものと同じである。健常時のSOFAスコアは、各患者の退院時のSOFAスコアである。各日のSOFAスコアと健常時のSOFAスコアとの差分は、各患者の各日のSOFAスコアから、健常時のSOFAスコアを差し引いて算出されたものである。
【0129】
NE-WYとSOFAスコアと健常時のSOFAスコアとの差分との相関を示すスピアマンの順位相関係数rは、入院初日(0日目)が0.67であり、入院1日目が0.53であり、入院3日目が0.23であった。入院初日(0日目)に最も高い相関が確認され、次いで、入院1日目に高い相関が確認された。また、入院から日が経つ毎に相関が下がっていることが確認された。経日で相関が下がる理由は、入院初日から投薬治療を行って感染を鎮めるように治療するので、治療に応じて感染が収まるためと考えられる。また、本発明者は、図16に示す各日の敗血症患者及び非敗血症患者のデータから回帰式をそれぞれ算出した。入院初日(0日目)、入院1日目、入院3日目の回帰式は、それぞれ、y=0.013x-7.3、y=0.015x-8.5、y=0.022x-12.1であった。但し、x軸をNE-WYとし、y軸を各日のSOFAスコアと健常時のSOFAスコアとの差分とした。
【0130】
閾値は、図16に示すような、好中球集団の蛍光強度の分布幅を示す指標とSOFAスコアと健常時のSOFAスコアとの差分とを対応付ける回帰式から求めることができる。例えば、差分が2に対応するNE-WYを閾値とすることができる。Sepsis-3では、感染症とSOFAスコアの2点以上の急上昇が見られた場合に敗血症と定義されるためである。
【0131】
閾値は、入院初日(0日目)、入院1日目、入院3日目のそれぞれについて求め、記憶装置404に記憶させることができる。情報処理ユニット4は、被検体が入院何日目かに応じて閾値を選択し、フラグ情報を取得するようにしても良い。例えば、被検者が入院初日である場合、情報処理ユニット4は、「被検者が入院初日である」旨の情報の入力を、ユーザによる入力部41又はホストコンピュータ5から受け付け、記憶装置404から入院初日の閾値を読み出し、当該閾値と、NE-WYとを比較し、「Estimated delta SOFA score≧2」又は「Estimated delta SOFA score<2」のフラグ情報を、出力部42に表示される分析結果画面6の領域63に表示する。なお、閾値は、入院初日からの日数によらず、共通の閾値が用いられていても良い。
【0132】
本実施形態の変形例1として、入院からの日数毎に回帰式を作成し、記憶装置404に当該回帰式を含むコンピュータプログラムを記憶させておいても良い。この場合、情報処理ユニット4は、本体40により、被検者の入院からの日数に応じた回帰式を含むコンピュータプログラムを実行し、入院初期のSOFAスコアと、健常時のSOFAスコアとの差分の推定値が閾値以上であるか否かのフラグ情報を決定する。被検体の入院からの日数の入力は、入力部41又はホストコンピュータ5から受け付ける。
【0133】
本実施形態の変形例2として、入院からの日数に依らない共通の回帰式を含むコンピュータプログラムを記憶装置404に記憶させておいても良い。この場合、情報処理ユニット4は、本体40により、当該コンピュータプログラムを実行し、入院初期のSOFAスコアと、健常時のSOFAスコアとの差分の推定値が閾値以上であるか否かのフラグ情報を決定する。
【0134】
以上のように、本実施形態では、フラグ情報は、入院初期のSOFAスコアと、健常時のSOFAスコアとの差分の推定値が閾値以上であるか否かを示す情報を含むようにした。これにより、感染症に起因する臓器障害の重症度の迅速な評価を支援する検体分析方法及び検体分析装置であって、感染症に起因する臓器障害の重症度を示すスコアと相関が高い情報を出力することができる検体分析方法及び検体分析装置を提供することができる。具体的には、被検者が敗血症であるとの医師の診断を支援することができるとともに、被検者に対する医師の治療方針の決定を支援することができる。
【0135】
[5.他の実施形態]
以上に説明してきた各実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない限り、種々の形態で実施することができる。例えば、第1~第4の実施形態及び変形例の何れか2以上の組み合わせも本発明に含まれる。また、以上に説明した処理又は動作で、あるステップに関し、そのステップではまだ利用できないはずのデータを利用しているなどの処理又は動作上の矛盾が生じない限りにおいて、処理又は動作の順序及び実行主体等を自由に変更することができる。
【符号の説明】
【0136】
1 血球分析装置
2 測定ユニット
21 ハンド部
22 検体容器セット部
23 バーコードユニット
24 検体吸引部
25 試料調製部
26 検出部
D 光学検出器
D1 フローセル
D2 シースフロー系
D3 ビームスポット形成系
D31 半導体レーザ
D32 コリメータレンズ
D33 コンデンサレン
D34 ビームストッパ
D4 前方散乱光受光系
D41 前方集光レンズ
D42 ピンホール
D43 フォトダイオード
D5 側方散乱光受光系
D51 側方集光レンズ
D52 ダイクロイックミラー
D53 フォトダイオード
D6 蛍光受光系
D61 分光フィルタ
D62 フォトダイオード
D7 信号処理回路
3 搬送ユニット
4 情報処理ユニット
40 本体
401 CPU
402 ROM
403 RAM
404 記憶装置
404a プログラム
405 読出装置
405a 記録媒体
406 画像出力インターフェース
407 入出力インターフェース
408 通信インターフェース
41 入力部
42 出力部
5 ホストコンピュータ
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14
図15
図16