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特開2025-4151ウェアラブル装置を利用した甲状腺機能亢進症の予測システム及び予測コンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025004151
(43)【公開日】2025-01-14
(54)【発明の名称】ウェアラブル装置を利用した甲状腺機能亢進症の予測システム及び予測コンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/00 20060101AFI20250106BHJP
   A61B 10/00 20060101ALI20250106BHJP
   A61B 5/0245 20060101ALI20250106BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20250106BHJP
   G16H 50/00 20180101ALI20250106BHJP
【FI】
A61B5/00 102A
A61B5/00 G
A61B10/00 H
A61B5/0245 B
A61B5/0245 100T
A61B5/11 230
G16H50/00
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024176144
(22)【出願日】2024-10-07
(62)【分割の表示】P 2022162722の分割
【原出願日】2017-10-26
(31)【優先権主張番号】10-2017-0119326
(32)【優先日】2017-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 平成29年4月27日にグランドウォーカーヒルソウルホテルでの集会(SICEM 2017)にてムン、ジェフンが発明した「ウェアラブル装置を利用した甲状腺機能亢進症の予測システム及び予測コンピュータプログラム」を公開
(71)【出願人】
【識別番号】520476215
【氏名又は名称】タイロスコープ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ムン ジェフン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ウェアラブル装置を利用して甲状腺機能亢進症を管理し予測するシステム及びコンピュータプログラムが提供される。
【解決手段】この予測システムは、休止期心拍数を利用して甲状腺機能亢進症を予測するシステムであって、一定周期で患者の心拍数を測定するウェアラブル装置と、ウェアラブル装置から心拍数情報を受信する生体信号演算装置であって、患者に対して、正常状態の基準心拍数より休止期心拍数が大きければ警告アラームを出力する生体信号演算装置と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
潜在的な甲状腺異常のアラートを提供する方法であって、
人の心拍数及び動きを含むデータを提供するために、人が着用しているウェアラブル装置を使用して、前記人の心拍数及び動きを取得することと、
人の甲状腺機能が正常の第1セットの連続した日に前記ウェアラブル装置によって取得されたデータを使用して、前記人の第1休止期心拍数を計算することと、
第2セットの連続した日に前記ウェアラブル装置によって取得されたデータを使用して、前記人の第2休止期心拍数を計算することと、
前記第2休止期心拍数が前記第1休止期心拍数よりも所定値以上大きい場合、前記人にアラートを出力することと、 を含み、
前記第1休止期心拍数は、前記第1セットの連続した日に取得されたデータを使用して計算され、前記第1セットの連続した日において、前記人のフリー(free)T4を測定することで、前記人の甲状腺機能が正常であることが確認され、
前記第2休止期心拍数は、前記人が医療施設を訪れることなく前記第2セットの連続した日に取得されたデータを使用して計算される、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記アラートは、前記人に血液検査を受けるように提案する、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1セットの連続した日は、所定数の連続した日である、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第2セットの連続した日は、所定数の連続した日である、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1休止期心拍数を計算することは、前記第1セットの連続した日に前記人が動いていない時間区間を識別することと、識別された時間区間の各々の心拍数値を取得することとを含み、
前記第2休止期心拍数を計算することは、前記第2セットの連続した日に前記人が動いていない時間区間を識別することと、識別された時間区間の各々の心拍数値を取得することとを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1休止期心拍数を計算することは、前記第1セットの連続した日に前記人が動いていない時間区間を識別することと、識別された時間区間の各々の心拍数値を取得することとを含み、
前記心拍数値は、前記識別された時間区間の各々の心拍数の中央値であり、
前記第1休止期心拍数は、前記識別された時間区間の心拍数値の中央値又は平均値である、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第2休止期心拍数を計算することは、前記第2セットの連続した日に前記人が動いていない時間区間を識別することと、識別された時間区間の各々の心拍数値を取得することとを含み、
前記心拍数値は、前記識別された時間区間の各々の心拍数の中央値であり、
前記第2休止期心拍数は、前記識別された時間区間の心拍数値の中央値又は平均値である、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第1休止期心拍数は、前記第1セットの連続した日に取得されたデータを使用して計算され、前記第1セットの連続した日において、前記人が時間の経過とともにフリー(free)T4を減少する抗甲状腺薬治療を受けている間に、前記人のフリー(free)T4を測定することで、前記人の甲状腺機能が正常であることが確認される、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、甲状腺機能亢進症の予測システム及び予測コンピュータプログラムに関し、より詳しくは、ウェアラブル装置を利用して甲状腺機能亢進症を管理し予測するシステム及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
甲状腺機能亢進症は、甲状腺から分泌されるホルモンがいかなる原因によって過多に分泌されて甲状腺中毒症を起こす状態をいう。そのため体重が減るか疲労感を感じ、ひどい場合は呼吸困難や失神などに至ることもある。甲状腺機能亢進症の有病率は約2%でよくある疾病であり、韓国内の場合は殆どバセドウ病と診断されて抗甲状腺剤を投与して治療している。抗甲状腺剤の場合、薬剤服用の順応度、つまり、処方に合わせて薬剤を服用することが治療に非常に重要である。従来は甲状腺機能亢進症の管理が外来診療のみで行われていたため、患者が薬剤を処方されて服用しても一定時間が過ぎて症状が好転したら患者任意で追加の診療を受けずに薬剤服用を中断することが多く発生していた。また、持続的な治療を行っても、通常薬剤服用の1乃至2年後、医療チームの判断の下、薬剤の中断を試みるようになる。いかなる場合であっても、薬剤服用を中断したら再発率が50%に至るため問題になっている。再発の場合も、最初は症状が軽微に発現するため大きな不便を感じずに普通に過ごしていて、症状がひどくなって重症の甲状腺中毒状態になってから病院に来院することが多い。このような場合、入院せざるを得ない場合も多く、ひどい場合は死亡に至ることもある。
【0003】
これまでは甲状腺機能亢進症の場合、外来診療のみに依存して疾病を管理し再発を予測している状況である。甲状腺機能亢進症と診断されたら一生にわたって周期的に来院することが原則であるが、現実的にうまく守られておらず、特に薬剤服用を中断した後はもっと守られていない。そのため、外来診療を受けなくても能動的に甲状腺機能亢進症を管理し再発を予測可能なシステムの開発が切実に求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、ウェアラブル装置から測定された患者の生体信号、特に休止期心拍数を利用して甲状腺機能亢進症を管理し再発を予測可能なシステムを提供することである。
【0005】
本発明が解決しようとする他の課題は、このようなシステムを利用した予測コンピュータプログラムを提供することである。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は上述した課題に限らず、上述されていない他の課題は以下の記載から当業者に明確に理解されるはずである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を達成するための本発明の一実施例によるウェアラブル装置を利用した甲状腺機能亢進症の予測システムは、休止期心拍数を利用して甲状腺機能亢進症を予測するシステムであって、一定周期で患者の心拍数を測定するウェアラブル装置と、前記ウェアラブル装置から心拍数情報を受信する生体信号演算装置であって、前記患者に対して、正常状態の基準心拍数より休止期心拍数が大きければ警告アラームを出力する生体信号演算装置と、を含む。
【0008】
前記ウェアラブル装置は、前記患者の歩数を測定して前記生体信号演算装置に伝送し、前記生体信号演算装置は一日のうち一定時間の間の歩数が0である区間を抽出し、各区間で測定された心拍数を利用して前記休止期心拍数を算出する。
【0009】
前記生体信号演算装置は、各区間で測定された心拍数の中央値を算出し、算出された中
央値の中央値を休止期心拍数と定義する。
【0010】
前記生体信号演算装置は、各区間で測定された心拍数の中央値を算出し、算出された中央値のうち起床区間で測定された中央値より睡眠区間で測定された中央値に加重値を与えて休止期心拍数を算出する。
【0011】
前記基準心拍数は、甲状腺機能が正常の所定日数の間に測定された休止期心拍数の平均値と定義される。
【0012】
前記生体信号演算装置は、連続した所定日数の間の前記休止期心拍数の平均値が前記基準心拍数より大きければ前記警告アラームを出力する。
【0013】
前記生体信号演算装置は、一日のうち少なくとも15分間の歩数が0の区間に対して各区間で測定された心拍数の中央値を算出し、算出された中央値の中央値を該当日付の休止期心拍数と定義し、連続した5日間の休止期心拍数の平均値が前記基準心拍数より10回以上大きければ、警告アラームを出力する。
【0014】
前記他の課題を達成するための本発明の一実施例による媒体に貯蔵されたコンピュータプログラムは、休止期心拍数を利用して甲状腺機能亢進症を予測する生体信号演算装置と結合されて、一定周期で患者の心拍数及び歩数を測定するウェアラブル装置から心拍数及び歩数情報を受信するステップと、一日のうち一定時間の間の歩数が一定値以下の区間を抽出し、各区間で測定された心拍数を利用して前記休止期心拍数を定義するステップと、甲状腺機能が正常の所定日数の間に測定された休止期心拍数の平均値を基準心拍数と定義するステップと、前記休止期心拍数が前記基準心拍数より大きければ警告アラームを出力するステップと、を実行するために媒体に貯蔵される。
【0015】
その他の実施例の具体的な事項は、具体的な内容及び図面に含まれている。
【発明の効果】
【0016】
上述したように、本発明によると、患者がウェアラブル装置を着用するだけで甲状腺機能亢進症の治療反応、認証経過の予測、再発の予測などを持続的にモニタリングして、薬剤中断後の再発の早期診断・治療などに活用することができる。また、ウェアラブル装置を利用して患者の心拍数の変化を運動量と共に持続的にモニタリングすることで、患者に服薬順応度を上げ、薬剤を中断した患者であれば再発を効果的に予測することができる。
【0017】
これまで甲状腺機能亢進症の管理は外来診療にのみ依存しており、疾患を積極的に管理し再発を予測可能な電子装置やコンピュータソフトウェアは皆無な状態である。本発明の発明者らは1年間の臨床研究の結果を分析して本発明の予測システム及びコンピュータプログラムを開発したが、このような開発が甲状腺機能亢進症の管理においてデジタルヘルスケアを活用する初の事例になると期待している。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施例による甲状腺機能亢進症の予測システムを概略的に示す図である。
図2図1の生体信号演算装置に対する大まかな構成図である。
図3】本発明の一実施例による甲状腺機能亢進症の予測方法を順次に示す順序図である。
図4】本発明の予測システムを利用した臨床方法を概略的に示す図である。
図5図4の臨床研究過程において、患者の来院時に測定された甲状腺ホルモンの濃度を示す図である。
図6図4の臨床研究で測定された休止期心拍数を示す図である。
図7図4の臨床研究で測定した甲状腺ホルモンの濃度と休止期心拍数との連関性を示すグラフである。
図8図4の臨床研究において、ウェアラブル装置で測定した休止期心拍数の変化と甲状腺機能亢進症との連関性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の利点及び特徴、そしてそれらを達成する方法は、添付した図面と共に詳細に後述する実施例を参照すると明確になるはずである。しかし、本発明は以下に開示される実施例に限らず、互いに異なる様々な形態に具現されるはずであるが、但し、本実施例は本発明の開示が完全になるようにし、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであって、本発明は特許請求の範囲によって定義されるのみである。明細書全体にわたって、同じ参照符号は同じ構成要素を指す。
【0020】
以下、添付した図面を参照して、本発明の一実施例による甲状腺機能亢進症の予測システムについて詳しく説明する。
【0021】
図1は、本発明の一実施例による甲状腺機能亢進症の予測システムを概略的に示す図である。図2は、図1の生体信号演算装置に対する大まかな構成図である。本発明の予測システムは、患者の休止期心拍数を利用して甲状腺機能亢進症を予測するシステムであって、患者の生体信号を測定するウェアラブル装置20と、ウェアラブル装置20と通信して生体信号を受信し演算する生体信号演算装置30と、を含む。
【0022】
ウェアラブル装置20は生体信号演算装置30とネットワークを介して通信し、患者10の生体信号、例えば、心拍数及び歩数を測定して生体信号演算装置30に伝送する。ウェアラブル装置20は生体信号演算装置30と有無線で連動されるが、好ましくは、Wi-Fi、ブルートゥース(登録商標(bluetooth))などの無線通信機能を行う電子装置である。例えば、ウェアラブル装置20としてはスマートウォッチ、スマートバンドなどの多様なディバイスが使用されてもよい。ウェアラブル装置20は、有無線通信のための通信モジュールと、心拍数及び歩数を測定するセンサを含む。ウェアラブル装置20に内蔵されたセンサは、患者10の体の具体及び動きを把握するための一つ以上のセンシング手段を含むが、例えば、心拍センサ、重力センサ、加速度センサ、ジャイロスコープ(gyroscope)、GPSセンサ、またはこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0023】
患者10はウェアラブル装置20を常に身につけて生活することが好ましく、ウェアラブル装置20は一定周期に、例えば、分当たり5乃至10回にわたって患者10の心拍数を測定する。また、ウェアラブル装置20は患者10の動きが発生すればそれに基づいて歩数を測定する。
【0024】
生体信号演算装置30は、ウェアラブル装置20から生体信号を受信し、それを演算して甲状腺機能亢進症を管理し予測する電子装置である。生体信号演算装置30は、ユーザが移動しながら無線通信を介して通信機能を行う電子装置であり、例えば、スマートフォンを含む携帯電話、タブレットPC、PDA、ウェアラブル装置、スマートウォッチ、スマートバンドなどであってもよい。
【0025】
生体信号演算装置30は、通信部31、プロセッサ32、演算部33、入力部34、出力部35、及びメモリ36を含む。
【0026】
生体信号演算装置30の通信部31は、外部電子装置と有無線通信機能を行う。通信部31はウェアラブル装置20とのデータの送受信を担当し、その他に通信事業者とのデータ通信、音声通信などを担当する。
【0027】
生体信号演算装置30の演算部33は、ウェアラブル装置20から受信された生体信号を利用して患者10の甲状腺機能亢進症を管理し予測する。詳しくは、演算部33は測定された心拍数から基準心拍数と休止期心拍数を定義する。ここで、<心拍数>はウェアラブル装置20で測定した値であり、<基準心拍数>と<休止期心拍数>は心拍数から演算されて算出された値である。基準心拍数と休止期心拍数を算出する過程は以下のようである。
【0028】
まず、演算部33は、患者の歩数を測定したデータから、一日のうち一定時間(例えば、15分以上)の間の歩数が0の区間を抽出する。抽出された区間には患者の動きまたは運動がないとみなし、各区間で測定された心拍数を利用して休止期心拍数(resting heart rate)を算出する。詳しくは、演算部33は各区間内で測定された多数の心拍数に対してこれらの中央値(これを「区間別中央値」という)を算出し、一日中(例えば、0時から24時まで)算出された区間別中央値の中央値を「休止期心拍数」と定義する。区間の境界では心拍数の変化が大きい可能性があるため、平均値より中央値をと選択することでこのような誤差を最大限減らすことができる。
【0029】
変形例として、演算部33は一日中算出された区間別中央値に加重値を異なるように与えて休止期心拍数を算出してもよい。詳しくは、歩数が0の区間を<起床区間>と<睡眠区間>と区分することができるが、<起床区間>は患者が目を覚めている状態で一定時間の間の歩数が0の区間と定義され、<睡眠区間>は患者が就寝している状態で一定時間の間の歩数が0の区間と定義される。例えば、加重値を与えて休止期心拍数を算出する方法としては、下記数式(1)のように表わされる。数式(1)によると、起床区間の心拍数より睡眠区間の心拍数に加重値を更に与えて休止期心拍数を算出することで、甲状腺機能亢進症との連関性をより上げることができる。
【0030】
数式(1)
休止期心拍数=[A×(起床区間に対する区間別中央値の中央値)+B×(睡眠区間に対する区間別中央値の中央値)]/(A+B)
(ただし、0<A<B)
一方、基準心拍数は、患者が正常状態の際(つまり、甲状腺機能が正常の際)に所定日数の間に測定された休止期心拍数の平均値と定義される。
【0031】
このように、演算部33は測定された心拍数から基準心拍数と休止期心拍数を定義した後、もし休止期心拍数が基準心拍数より大きければ、出力部35またはウェアラブル装置20を介して警告アラームを出力する。好ましくは、演算部33は連続した所定日数の間(例えば、連続した5日以上)の休止期心拍数の平均値が基準心拍数より所定値(例えば、10回)以上大きければ、警告アラームを出力する。本発明では、休止期心拍数と基準心拍数との差を利用して甲状腺機能亢進症を管理し予測しているが、休止期心拍数、休止期心拍数、及び甲状腺機能亢進症との相関関係については詳細に後述する。
【0032】
生体信号演算装置30の入力部34はソフトウェアまたはハードウェア入力機を含み、出力部35はスピーカとディスプレイを含む。ディスプレイは運営体制ソフトウェアのUI/UX、応用ソフトウェアのUI/UXにおいて、ユーザのタッチ入力を感知する手段としてユーザインタフェースを含む。ディスプレイは画面を出力する手段であると共に、ユーザのタッチイベントを感知する入力手段の機能を共に実行するタッチスクリーンからなる。
【0033】
生体信号演算装置30のメモリ36は、一般的にディバイスに使用されるコンピュータコード及びデータを貯蔵する場所を提供する。メモリ36には多様なアプリケーション及びこれらの駆動・管理に必要なリソースだけでなく、基本的な入出力システム、運営体制、多様なプログラム、アプリケーション、またはディバイスで実行されるユーザインタフェース機能、プロセッサ機能などを含む任意のディバイス用のファームウェア(firm ware)が貯蔵される。
【0034】
生体信号演算装置30のプロセッサ32は、運営体制と共にコンピュータコードを実行し、データを生成して使用する動作を実行する。また、プロセッサ32は一連の命令語を使用し、生体信号演算装置30のコンポーネント間の入力及び出力データを受信及び処理する。また、プロセッサ32は、生体信号演算装置30に設置された運営体制ソフトウェアと各種アプリケーションソフトウェアの機能を実行する制御部の役割をする。
【0035】
生体信号演算装置30の電源部、通信モデム、GPS、I/Oディバイス、カメラモジュールのようなハードウェア・ソフトウェアモジュールなどの付加的或いは慣用的構成要素は図示していないが、本発明の生体信号演算装置30は装置の機能に寄与する多様な内部及び外部コンポーネントを含む。また、生体信号演算装置30は、ハードウェア要素(回路を含む)、ソフトウェア要素(コンピュータで判読可能な媒体に貯蔵されたコンピュータコードを含む)、またはこれら2つの要素の結合を含む。
【0036】
本実施例ではウェアラブル装置20と生体信号演算装置30が物理的に区分されている例を挙げて説明しているが、本発明はこれに限らない。つまり、生体信号演算装置30はウェアラブル装置20内に物理的に含まれてもよく、この場合、ウェアラブル装置20と生体信号演算装置30は一体になっている一つの物理的電子装置とみなすべきである。
【0037】
以下、図3を参照して、本発明の一実施例による甲状腺機能亢進症の予測方法を詳しく説明する。図3は、本発明の一実施例による甲状腺機能亢進症の予測方法を順次に示す順序図である。
【0038】
まず、ウェアラブル装置20は一定周期で患者10の心拍数を測定し、歩数を測定して、これらを生体信号演算装置30に伝送するS10。
【0039】
生体信号演算装置30は、ウェアラブル装置20から心拍数と歩数を受信して休止期心拍数を演算するS20。詳しくは、生体信号演算装置30は、患者の歩数データから、一日のうち一定時間(例えば、15分以上)の間の歩数が0の区間を抽出する。生体信号演算装置30は各区間の心拍数に対する区間別中央値を算出し、一日を基準に前記区間別中央値の中央値を「休止期心拍数」と定義する。変形例として、生体信号演算装置30は、数式(1)のように起床区間の心拍数より就寝区間の心拍数に更に加重値を与えて休止期心拍数を算出してもよい。
【0040】
また、生体信号演算装置30は、患者の甲状腺機能が正常の際、所定日数の間に測定された休止期心拍数の平均値を「基準心拍数」と定義するS30。
【0041】
次に、生体信号演算装置30は休止期心拍数と基準心拍数の値を比較しS40、休止期心拍数が基準心拍数より大きければ、自体出力部またはウェアラブル装置20を介して警告アラームを出力するS50。例えば、生体信号演算装置30は、連続した所定日数の間(例えば、連続した5日以上)の休止期心拍数の平均値が基準心拍数より所定値(例えば、10回)以上大きければ、警告アラームを出力してもよい。
【0042】
以下、図4乃至図8を参照し、本発明の予測システムが根拠とする心拍数と甲状腺機能亢進症との間の相関関係に関する臨床研究の内容を詳しく説明する。
【0043】
図4は、本発明の予測システムを利用した臨床方法を概略的に示す図である。本臨床研究において、甲状腺機能と心拍数との連関性を確認するために、30人の甲状腺機能亢進症患者(新規患者及び再発患者を含む)を募集し、ウェアラブル装置を着用させて心拍数を持続的にモニタリングした。本臨床研究で使用されたウェアラブル装置はFitbit Charge HRTM及びFitbit Charge 2TMを使用した。ウェアラブル装置を着用した患者は3回にわたって来院しており、抗甲状腺剤の治療を行いながら、治療中に変化する甲状腺ホルモンの濃度をウェアラブル装置で測定した心拍数の変化と比較した。また、ウェアラブル装置で測定した心拍数の変化と甲状腺機能の変化との連関程度を従来の方法と比較するために、病院に来院の際に自動血圧計で測定した心拍数及び甲状腺亢進症症状指標(HSS:Hyperthyroid Symtom Scale)を来院時ごとに同時に測定し分析した。
【0044】
図5は、図4の臨床研究過程において、患者の来院時に測定された甲状腺ホルモンの濃度を示す図である。図5において、BMIはボディマス指数(Body Mass Index)、SBPは収縮期血圧(Systolic Blood Pressure)、DBPは弛緩期血圧(Diastolic Blood Pressure)、HRは心拍数(heart rate)、HSSは甲状腺亢進症症状指標(Hyperthyroid Symtom Scale)、free T4は甲状腺ホルモン、TSHは甲状腺刺激ホルモン、TBは総ビリルビン、ALPはAlkaline Phosphates、ASTはAspartate Transaminase、ALTはAlamine Transaminase、WBCは白血球を意味する。甲状腺機能亢進症患者で抗甲状腺剤の治療が行われるほど、つまり、1次来院に比べ、2次、3次来院の際に測定した甲状腺ホルモン(free T4)数値は次第に減っていき、正常範囲(0.8-1.8ng/dL)に入ることが分かった。
【0045】
図6は、図4の臨床研究で測定された休止期心拍数を示す図である。詳しくは、図6は、時間の流れによるウェアラブル装置で測定した休止期心拍数の変化を示している。甲状腺機能亢進症患者で抗甲状腺剤の治療が行われるほど、ウェアラブル装置で測定した休止期心拍数は次第に減少傾向にあることが分かった。
【0046】
このように測定された心拍数と甲状腺ホルモンの濃度との相関関係を調べた。図7は、図4の臨床研究で測定した甲状腺ホルモンの濃度と休止期心拍数との連関性を示すグラフである。図7において、WD-rHRはウェアラブル装置を介して得た休止期心拍数であり、HSSは設問調査を介して10個の甲状腺亢進症の代表症状を0-5点まで点数化してその項目を足した値を示し、on-site HR(またはHR)は病院に来院の際、つまり、血液検査をした日に病院で血圧計で測定した心拍数である。心拍数データ(WD-rHR及びon-site HR)とHSSデータを比較するために、各指標の平均に対する標準偏差を使用して比較した。この場合、ウェアラブル装置で測定した休止期心拍数(WD-rHR)が最も連関性が大きく現れた。
【0047】
図8は、図4の臨床研究において、ウェアラブル装置で測定した休止期心拍数の変化と甲状腺機能亢進症との連関性を示すグラフである。詳しくは、図8図7のデータを甲状腺ホルモン(free T4)が1.8ng/dLより大きい場合(つまり、正常状態の上限より大きくて甲状腺機能亢進症の範囲に入る場合)とそうではない場合に二分化し、各指標が1SD(standard deviation)だけ増加すると甲状腺機能亢進症と分類される確率を示す。ウェアラブル装置で測定された休止期心拍数(WD-HR)の場合、休止期心拍数が1SD(約10回)増加すると甲状腺機能亢進症に分類される可能性が3倍増加すると現れた。このような結果は、ウェアラブル装置で測定した休止期心拍数(WD-HR)という単一指標が甲状腺機能亢進症の多様な症状を点数化した指標(HSS)より強い予測力を示したことであり、従来の方法で病院に来院して測定する心拍数(HR)は、統計的に有意な甲状腺機能亢進症の予測力を示せなかった。
【0048】
このように、ウェアラブル装置で測定された休止期心拍数の変化は甲状腺機能亢進症の有病率または再発率と密接な関係を有することが分かり、本発明の予測システムを利用すれば、患者が直接来院しなくてもウェアラブル装置を着用するだけで休止期心拍数の変化から甲状腺機能亢進症の調節程度を評価し、再発を容易に予測することができる。もし、休止期心拍数が基準心拍数より異常に増加する様相を示せば、予測システムは患者に甲状腺機能の異常を警告して、血液検査を受けるように知らせることができる。
【0049】
これまで添付した図面を参照して本発明の実施例を説明したが、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明がその技術的思想や必須的特徴を変更せずとも他の具体的な形態に実施され得ることを理解できるはずである。よって、上述した実施例は全ての面で例示的なものであり、限定的なものではないと理解すべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2024-11-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上のプロセッサによって行われる、人の甲状腺機能に関する予測結果を決定する方法であって、
前記一つ以上のプロセッサにより、人が着用するウェアラブル装置から心拍数を受信することと、
前記一つ以上のプロセッサにより、前記人の甲状腺機能が正常とみなされると判定される日を含む第1の連続した日を選択することと、
前記一つ以上のプロセッサにより、前記第1の連続した日に前記人が動いていない第1時間区間を識別することと、
前記一つ以上のプロセッサにより、前記第1時間区間で測定された第1セットの心拍数を用いて、前記第1の連続した日の第1休止期心拍数を計算することと、
前記一つ以上のプロセッサにより、基準心拍数を生成する前記第1休止期心拍数の平均値を計算することと、
前記一つ以上のプロセッサにより、現在のモニタリング日を含む日を含む第2の連続した日を選択することと、
前記一つ以上のプロセッサにより、前記第2の連続した日に前記人が動いていない第2時間区間を識別することと、
前記一つ以上のプロセッサにより、前記第2時間区間で測定された第2セットの心拍数を用いて、前記第2の連続した日の第2休止期心拍数を計算することと、
前記一つ以上のプロセッサにより、現在の心拍数を生成する前記第2休止期心拍数の平均値を計算することと、
前記一つ以上のプロセッサにより、前記現在の心拍数及び前記基準心拍数に基づいて、前記人の甲状腺機能に関する予測結果を決定する、ことを特徴する方法。
【請求項2】
前記予測結果は、前記人の甲状腺機能が正常であるか異常であるかの結果である、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記予測結果は、前記現在の心拍数と前記基準心拍数との差に基づいて決定される、ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記現在の心拍数と前記基準休止期心拍数との差が所定値以上よりも大きい場合には、前記人の甲状腺機能が異常であると判定し、
前記現在の心拍数と前記基準休止期心拍数との差が前記所定値以上よりも小さい場合には、前記人の甲状腺機能が正常であると判定する、ことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記一つ以上のプロセッサにより、前記予測結果が前記人の甲状腺機能が異常であることを示す場合にアラートを生成する、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記アラートは、前記人の甲状腺機能の異常を通知するために生成される、ことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記アラートは、前記人の甲状腺機能の異常に関するメッセージを含み、
前記人の甲状腺機能の異常を通知するために生成される、ことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記アラートは、前記人がクリニックを受診する必要があることを通知するために生成される、ことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記アラートは、前記人に血液検査を受けるように提案することに関するメッセージを含む、ことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記人の甲状腺機能が正常とみなされると判定される日は、前記人が血液検査を受ける日である、ことを特徴とする請求項1に記載の方法
【請求項11】
前記血液検査の結果により当日の前記人の甲状腺機能が正常とみなされる、ことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記血液検査の結果はフリー(free)T4値を含む、ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の連続した日の長さが所定の日数である、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記第2の連続した日の長さが所定の日数である、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。