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特開2025-4161眼の疾患又は障害を治療するための医薬組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025004161
(43)【公開日】2025-01-14
(54)【発明の名称】眼の疾患又は障害を治療するための医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/404 20060101AFI20250106BHJP
   A61K 9/00 20060101ALI20250106BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20250106BHJP
   A61K 31/44 20060101ALI20250106BHJP
   A61K 31/4439 20060101ALI20250106BHJP
   A61K 31/4725 20060101ALI20250106BHJP
   A61K 31/5377 20060101ALI20250106BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20250106BHJP
   A61L 27/18 20060101ALI20250106BHJP
   A61L 27/44 20060101ALI20250106BHJP
   A61L 27/58 20060101ALI20250106BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20250106BHJP
【FI】
A61K31/404
A61K9/00
A61K47/34
A61K31/44
A61K31/4439
A61K31/4725
A61K31/5377
A61K31/573
A61L27/18
A61L27/44
A61L27/58
A61P27/02
【審査請求】有
【請求項の数】31
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024176401
(22)【出願日】2024-10-08
(62)【分割の表示】P 2021552571の分割
【原出願日】2020-03-05
(31)【優先権主張番号】62/814,198
(32)【優先日】2019-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】518023485
【氏名又は名称】アエリエ ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】ダス、サンジブ クマール
(72)【発明者】
【氏名】リン、チェン-ウェン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】毎日の点眼及び複数のステロイド注射の必要性を排除するように設計された、眼の疾患又は障害を治療するための医薬組成物、医薬組成物から形成されるインプラント、インプラントを形成する方法、及び眼の疾患及び障害を治療する方法を提供する。
【解決手段】ポリマーマトリックスと、特定期間にわたり実質的に直線的に放出される少なくとも1つの治療剤とを含む、医薬組成物、硝子体インプラント、及び粒子懸濁液が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼の疾患又は障害を治療するための医薬組成物であって、
(a)第1ポリマー及び第2ポリマーの混合物を含む生分解性ポリマーマトリックスであって、
(1)前記第1ポリマーは生分解性ポリエステルアミドポリマーであり、前記第1ポリマーは下記の構造を含み、
【化1】
(I)
(ただし、m+pは0.9から0.1の範囲にあり、a+bは0.1から0.9の範囲にあり、
m+p+a+b=1であり、
nは5から300の範囲にあり、aは少なくとも0.01であり、bは少なくとも0.015であり、bに対するaの比(a:b)は0.1:9から0.85:0.15であり、m単位及び/又はp単位並びにa及びb単位はランダムに分布しており、
は独立して(C-C20)アルキルから選択され、
単一骨格単位であるm又はpでのR及びRは、それぞれ、独立して、(C-C)アルキルから選択され、
は、独立して、(C-C20)アルキルから選択され、
は以下の二環式断片であり、
【化2】
はベンジルであり、かつ、
は-(CH-である。)
(2)前記第2ポリマーは、生分解性ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)ポリマー、又は前記生分解性ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)ポリマーの組み合わせであり、前記生分解性ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)ポリマーは、エステル末端封鎖生分解性ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)ポリマー、酸末端封鎖生分解性ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)ポリマー、又はこれらの組み合わせを含む、
生分解性ポリマーマトリックスと、
(b)前記生分解性ポリマーマトリックス内に均一に分散されている、少なくとも1つの治療剤、又は、その医薬上許容可能な塩であって、
前記少なくとも1つの治療剤は、コルチコステロイド、キナーゼの活性を阻害する治療剤、又はこれらの組み合わせを含み、
前記コルチコステロイドは、デキサメタゾンであり、
前記キナーゼの活性を阻害する治療剤は、
ゲフィチニブ、
スニチニブ、
ソラフェニブ、
レゴラフェニブ、
バンデタニブ、
セマキサニブ、
セジラニブ、
アキシチニブ、
チボザニブ、
(1R,2R)-N-(4-メチルイソキノリン-6-イル)-2-(4-(N-(ピリジン-2-イル)スルファモイル)フェニル)シクロプロパン-1-カルボキサミド、又は、
これらの組み合わせ、
からなる群より選択される、
少なくとも1つの治療剤と、
を含み、
前記医薬組成物は対象の眼への硝子体内投与のために製剤化されており、
前記医薬組成物は前記少なくとも1つの治療剤を約1ヶ月から約6ヶ月にわたり実質的に直線的に前記医薬組成物から放出するように製剤化されており、
前記医薬組成物は、59±5重量%の前記生分解性ポリマーマトリックス及び41±5重量%の前記少なくとも1つの治療剤を含む、
医薬組成物。
【請求項2】
前記生分解性ポリマーマトリックスは前記第1ポリマー及び前記第2ポリマーの機械的ブレンドである、
請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記生分解性ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)ポリマーはエステル末端封鎖生分解性ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)コポリマー又は酸封鎖生分解性ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)コポリマーである、
請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記第2ポリマーは前記生分解性ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)ポリマーの組み合わせであり、前記生分解性ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)ポリマーの組み合わせはエステル末端封鎖生分解性ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)コポリマー及び酸封鎖生分解性ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)コポリマーである、
請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記医薬組成物は、約200μm×約200μm×約4500μmの寸法を備える粒子である、
請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記第2ポリマーは前記生分解性ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)ポリマーの組み合わせであり、前記生分解性ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)ポリマーの組み合わせは、前記生分解性ポリマーマトリックスの20±5重量%であるエステル末端封鎖生分解性ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)コポリマー及び前記生分解性ポリマーマトリックスの20±5重量%である酸末端封鎖生分解性ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)コポリマーを含む、
請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項7】
(1)前記生分解性ポリマーマトリックスの約60重量%が生分解性ポリエステルアミドホモポリマーであり、前記生分解性ポリマーマトリックスの約20重量%がエステル末端封鎖生分解性ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)コポリマーであり、前記生分解性ポリマーマトリックスの約20重量%が酸末端封鎖生分解性ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)コポリマーであり、
(2)前記生分解性ポリマーマトリックスの約60重量%が生分解性ポリエステルアミドホモポリマーであり、前記生分解性ポリマーマトリックスの約30重量%がエステル末端封鎖生分解性ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)コポリマーであり、前記生分解性ポリマーマトリックスの約10重量%が酸末端封鎖生分解性ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)コポリマーであり、
(3)前記生分解性ポリマーマトリックスの約60重量%が生分解性ポリエステルアミドホモポリマーであり、前記生分解性ポリマーマトリックスの約10重量%がエステル末端封鎖生分解性ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)コポリマーであり、前記生分解性ポリマーマトリックスの約30重量%が酸末端封鎖生分解性ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)コポリマーであり、又は、
(4)前記生分解性ポリマーマトリックスの約40重量%が生分解性ポリエステルアミドホモポリマーであり、前記生分解性ポリマーマトリックスの約30重量%がエステル末端封鎖生分解性ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)コポリマーであり、前記生分解性ポリマーマトリックスの約30重量%が酸末端封鎖生分解性ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)コポリマーである、
請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項8】
硝子体インプラントの形態である、請求項1から7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記少なくとも1つの治療剤はアキシチニブを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
ぶどう膜炎、角膜潰瘍、眼内炎、角膜若しくは眼表面の自己免疫疾患、HIV疾患の眼症状、又はこれらの組み合わせを含む眼の炎症性の疾患又は障害を治療するために用いられる請求項1から9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
糖尿病性眼疾患、湿性加齢黄斑変性症、乾性加齢黄斑変性症、炎症、ドライアイ、又はこれらの組み合わせを含む眼の炎症性の疾患又は障害を治療するために用いられる請求項1から9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
緑内障、神経変性疾患又は障害、高眼圧、眼炎症性疾患又は障害、又はこれらの組み合わせを含む眼の疾患又は障害を治療するために用いられる請求項1から9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記神経変性疾患又は障害は、糖尿病性眼疾患、湿性加齢黄斑変性症、乾性加齢黄斑変性症、炎症、ドライアイ、又はこれらの組み合わせを含む、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
治療を必要とする対象においてデポから治療剤を溶出させる方法のために用いられる請求項1から9のいずれか一項に記載の医薬組成物であって、前記方法は、前記医薬組成物を含むデポを前記対象に一回投与することを含み、デポ投与後の約1週から約3ヶ月にわたり1日あたり初期デポ内の前記治療剤の約1%の割合で前記デポからある量の前記治療剤が溶出する、医薬組成物。
【請求項15】
治療を必要とする対象においてデポから治療剤を溶出させる方法のために用いられる請求項1から9のいずれか一項に記載の医薬組成物であって、前記方法は、前記医薬組成物を含むデポを前記対象に一回投与することを含み、デポ投与後の約7日目から約90日目頃に、1日毎に、前記デポから、約10から約500ngの、約500から約1500ngの、又は約1000から約2000ngの量の前記治療剤が溶出する、医薬組成物。
【請求項16】
治療を必要とする対象に治療剤を投与する方法のために用いられる請求項1から9のいずれか一項に記載の医薬組成物であって、前記方法は、前記医薬組成物を含むデポを前記対象に一回投与することを含み、デポ投与後の約1週から約3ヶ月にわたり1日あたり初期デポ内の前記治療剤の約1%の割合で前記デポからある量の前記治療剤が溶出する、医薬組成物。
【請求項17】
治療を必要とする対象に治療剤を投与する方法のために用いられる請求項1から9のいずれか一項に記載の医薬組成物であって、前記方法は、前記医薬組成物を含むデポを前記対象に一回投与することを含み、デポ投与後の約7日目から約90日目頃に、1日毎に、前記デポから、約10から約500ngの、約500から約1500ngの、又は約1000から約2000ngの量の前記治療剤が溶出する、医薬組成物。
【請求項18】
デポ投与後の約7日目から約90日目頃に1日毎に前記デポから約750から約1250ngの量の前記治療剤が溶出する、
請求項15又は17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
デポ投与後の約1週から約2ヶ月にわたり1日あたり初期デポ内の前記治療剤の約1%の割合で前記デポから前記ある量の前記治療剤が溶出する、
請求項14又は16に記載の医薬組成物。
【請求項20】
デポ投与後の約7日目から約60日目頃に1日毎に前記デポから前記量の前記治療剤が溶出する、
請求項15、17、又は18に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記投与は前記対象の眼への注射による、
請求項14から20のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項22】
治療を必要とする対象においてデポから治療剤を溶出させる方法又は治療を必要とする対象に治療剤を投与する方法のために用いられる硝子体インプラントであって、請求項14から21のいずれか一項に記載の医薬組成物を含み、前記デポは前記硝子体インプラントを含む、硝子体インプラント。
【請求項23】
治療を必要とする対象においてデポから治療剤を溶出させる方法のための医薬の調製における請求項1から9のいずれか一項に記載の医薬組成物の使用であって、前記方法は、前記医薬組成物を含むデポを前記対象に一回投与することを含み、デポ投与後の約1週から約3ヶ月にわたり1日あたり初期デポ内の前記治療剤の約1%の割合で前記デポからある量の前記治療剤が溶出する、使用。
【請求項24】
治療を必要とする対象においてデポから治療剤を溶出させる方法のための医薬の調製における請求項1から9のいずれか一項に記載の医薬組成物の使用であって、前記方法は、前記医薬組成物を含むデポを前記対象に一回投与することを含み、デポ投与後の約7日目から約90日目頃に、1日毎に、前記デポから、約10から約500ngの、約500から約1500ngの、又は約1000から約2000ngの量の前記治療剤が溶出する、使用。
【請求項25】
治療を必要とする対象に治療剤を投与する方法のための医薬の調製における請求項1から9のいずれか一項に記載の医薬組成物の使用であって、前記方法は、前記医薬組成物を含むデポを前記対象に一回投与することを含み、デポ投与後の約1週から約3ヶ月にわたり1日あたり初期デポ内の前記治療剤の約1%の割合で前記デポからある量の前記治療剤が溶出する、使用。
【請求項26】
治療を必要とする対象に治療剤を投与する方法のための医薬の調製における請求項1から9のいずれか一項に記載の医薬組成物の使用であって、前記方法は、前記医薬組成物を含むデポを前記対象に一回投与することを含み、デポ投与後の約7日目から約90日目頃に、1日毎に、前記デポから、約10から約500ngの、約500から約1500ngの、又は約1000から約2000ngの量の前記治療剤が溶出する、使用。
【請求項27】
デポ投与後の約7日目から約90日目頃に1日毎に前記デポから約750から約1250ngの量の前記治療剤が溶出する、
請求項24又は26に記載の使用。
【請求項28】
デポ投与後の約7日目から約90日目頃に1日毎に前記デポから1000ngの量の前記治療剤が溶出する、
請求項24又は26に記載の使用。
【請求項29】
デポ投与後の約1週から約2ヶ月にわたり1日あたり初期デポ内の前記治療剤の約1%の割合で前記デポから前記ある量の前記治療剤が溶出する、
請求項23又は25に記載の使用。
【請求項30】
デポ投与後の約7日目から約60日目頃に1日毎に前記デポから前記量の前記治療剤が溶出する、
請求項24又は26に記載の使用。
【請求項31】
前記投与は前記対象の眼への注射による、
請求項23から30のいずれか一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2019年3月5日に出願の米国特許仮出願第62/814,198号に基づく優先権の利益を主張するものであり、当該出願の全体を参照により本明細書で援用する。
【0002】
(技術分野)
本発明は、医薬組成物、医薬組成物から形成されるインプラント、インプラントを形成する方法、及び、眼の疾患及び障害を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
黄斑浮腫、網膜静脈閉塞症、及びぶどう膜炎などの眼炎症性疾患又は障害は、霧視、複視、飛蚊症、眼痛、視力喪失を引き起こしかねず、重症例では失明をもたらし得る。
【0004】
治療のためにデキサメタゾン(Ozurdex(登録商標))又はトリアムシノロンアセトニド(TRIESENCE(登録商標))などのコルチコステロイドを硝子体内注射(IVT)により注射できる。TRIESENCE(登録商標)などのコルチコステロイドの反復ボーラス注射は、白内障形成、眼内圧亢進、飛蚊症、眼内炎、視力低下、及び網膜損傷を伴う。患者は治療過程で夥しい数の注射を投与され得る。このレジメンは患者及び医療従事者の負担になる。
【0005】
ある期間にわたり持続濃度の治療剤を送達する硝子体インプラントが開発されている。こうしたインプラントは、後眼部への治療剤の放出のために、眼の硝子体に注射又は外科的埋込される。例えば、OZURDEX(登録商標)はデキサメタゾンを徐放して様々な眼の疾患又は障害を治療するために用いられる硝子体インプラントである。しかし、十分なレベルの治療剤は凡そ30から60日の間のみ放出され、その後は、新しいインプラントを患者の目に注射せねばならない。反復注射は、痛み、頭痛、結膜血斑、眼内感染症、眼球穿孔、外眼筋線維症、硝子体剥離、送達媒体への反応、眼内圧亢進、及び、白内障発症をもたらし得る。別の選択肢として、凡そ3年の期間にわたりフルオシノロンアセトニドを放出するフルオシノロンアセトニド含有硝子体インプラント(ILUVIEN(登録商標))も開発されている。コルチコステロイド暴露期間は、多くの患者にとって長すぎることが多く、白内障形成及び眼内圧亢進をはじめとするコルチコステロイド関連副作用の危険性の増大をまねき得る。
【0006】
こうした硝子体インプラントを製造するために様々な生分解性ポリマーが用いられている。こうしたポリマーの特定例として、乳酸-グリコール酸共重合体(PLGA)及びポリ乳酸(PLA)並びに様々なアナログ又は誘導体が挙げられる。例えば、特許文献1(参照により本明細書で援用する)は、とりわけ、生分解性ポリマーマトリックスと当該ポリマーマトリックス内に分散された少なくとも1つの治療剤とを含む眼の疾患又は障害を治療するための医薬組成物であって、当該ポリマーマトリックスは、生分解性ポリ(D,L-ラクチド)ホモポリマー、生分解性ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)、又はこれらの混合物を含み得る、医薬組成物を開示する。生分解性インプラントで使用するための生分解性ポリエステルアミド(PEA)ポリマーが前述されている。PEAはアミノ酸に基づいており幾つかのペプチド結合を含んでいる。PEAを調製するための合成法は例えば特許文献2に記載されており、その全体を参照により本明細書で援用する。ポリエステルアミド、特に、ポリエステルアミドコポリマーの一般構造式が、特許文献3に記載されており、その全体を参照により本明細書で援用するが、当該式は以下の化学構造式(I)のとおりである。
【化1】
(I)
(ただし、m+pは0.9から0.1の範囲にあり、a+bは0.1から0.9の範囲にあり、
m+p+a+b=1であり(ただし、m又はpの一方はゼロでもよく)、
nは5から300の範囲にあり、aは少なくとも0.01であり、bは少なくとも0.015であり、bに対するaの比(a:b)は0.1:9から0.85:0.15であり、m単位及び/又はp単位並びにa及びb単位はランダムに分布しており、
は独立して(C-C20)アルキルから選択され、
単一骨格単位であるm又はpでのR及びRは、それぞれ、独立して、水素、(C-C)アルキル、(C-C)アルケニル、(C-C)アルキニル、(C-C10)アリール、(C-C アルキル、-(CH)SH、-(CHS(CH)、(CH-CH-CH-、-CH(CH、-CH(CH)-CH-CH、-CH-C、-(CH-NH、及びこれらの混合物から選択され、
は、独立して、(C-C20)アルキル、(C-C20)アルケニレンから選択され、
は以下の構造式(II)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片であり、
【化2】
は、独立して、(C-C10)アリール、(C-C)アルキル、又は保護基からなる群より選択され、かつ、
は-(CH-である。)
【0007】
治療、例えば、送達系に製剤化される医薬組成物に関する医療分野では、少なくとも3ヶ月の期間にわたり実質的に直線的に後眼部に直に治療剤を放出する改善された安全性及び薬効プロファイルを有する硝子体インプラントへの需要が多いにある。こうした医薬組成物は現在の硝子体インプラントのコンプライアンス及び有害事象プロファイルの両方を改善する可能性がある。
【0008】
本明細書での文献の引用は当該文献が本発明への先行技術として利用可能であることを自白したものと解すべきではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2017/015604号
【特許文献2】米国特許出願公開第2008/0299174号明細書
【特許文献3】米国特許第9789189号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、広くは、眼の疾患又は障害を治療するための医薬組成物であって、第1ポリマー及び第2ポリマーの混合物を含む生分解性ポリマーマトリックスであって、(1)第1ポリマーは生分解性ポリエステルアミドポリマーであり、(2)第2ポリマーは、(i)生分解性ポリ(D,L-ラクチド)ポリマー、(ii)生分解性ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)ポリマー、又は(iii)(i)及び(ii)の組み合わせである、生分解性ポリマーマトリックスを含む、医薬組成物に及ぶ。少なくとも1つの治療剤、又は、そのアナログ若しくは誘導体、その、医薬上許容可能な塩、双性イオン、多形体、若しくは溶媒和物は、当該ポリマーマトリックス内に均一に分散されている。特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は対象の眼への硝子体内投与のために製剤化されている。
【0011】
例えば眼圧亢進又は炎症などの種々の眼の疾患又は障害についての現在の治療は、患者が毎日自身の眼に点眼する又は眼に複数のステロイド注射を受けることを要する。本発明の医薬組成物は、実質的に直線的に治療有効量の少なくとも1つの治療剤を放出して毎日の点眼及び複数のステロイド注射の必要性を排除するように設計されている。
【0012】
特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は、凡そ1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、又はより長期にわたり治療有効量の少なくとも1つの治療剤を実質的に直線的に放出するように製剤化されている。
【0013】
いくつかの実施形態では、眼の疾患又は障害を治療するための医薬組成物であって、
(a)第1ポリマー及び第2ポリマーの混合物を含む生分解性ポリマーマトリックスであって、
(1)第1ポリマーは生分解性ポリエステルアミドポリマー(PEA)であり、
(2)第2ポリマーは、生分解性ポリ(D,L-ラクチド)ポリマー(PLA)、生分解性ポリグリコリドポリマー(PGA)、生分解性ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)ポリマー(PLGA)、又はこれらの組み合わせである、
生分解性ポリマーマトリックスと、
(b)ポリマーマトリックス内に均一に分散されている、少なくとも1つの治療剤、又は、その、アナログ、誘導体、医薬上許容可能な塩、双性イオン、多形体、若しくは溶媒和物、アナログ、誘導体、医薬上許容可能な塩、双性イオン、多形体、若しくは溶媒和物と、
を含む、医薬組成物が、本明細書で提供される。
【0014】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される医薬組成物は対象の眼への硝子体内投与のために製剤化されており、医薬組成物は少なくとも1つの治療剤を約1ヶ月から約6ヶ月にわたり実質的に直線的に医薬組成物から放出するように製剤化されている。
【0015】
多数の治療剤が本発明の医薬組成物における用途を有しており、(a)Rhoキナーゼ、JAKキナーゼ、血管内皮増殖因子受容体(VEGF-R)、又はチロシンキナーゼなどのキナーゼの活性を調節し特に阻害するもの、(b)プロスタグランジン、(c)コルチコステロイド、又は(d)(a)-(c)の任意の組み合わせが挙げられる。
【0016】
いくつかの実施形態では、治療剤はIKKキナーゼなどのキナーゼの活性を調節し特に阻害するものを含む。
【0017】
特定の治療剤、並びに、そのアナログ又は誘導体、その溶媒和物、その医薬上許容可能な塩、その多形体、及び、その双性イオンは、限定されるわけではないものの、以下のものを含む。
コルチコステロイド、例えば、デキサメタゾン、フルオシノロンアセトニド、ブデソニド、ベクロメタゾン、ベクロメタゾン(例えば、モノ又はジプロピオン酸エステルとして)、フルニソリド、フルチカゾン(例えば、プロピオン酸又はフロ酸エステルとして)、シクレソニド、モメタゾン(例えば、フロ酸エステルとして)、モメタゾンデソニド、ロフレポニド、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、ナフロコルト、デフラザコート、酢酸ハロプレドン、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、クロコルトロン、チプレダン、プレドニカルベート、ジプロピオン酸アルクロメタゾン、ハロメタゾン、リメキソロン、プロピオン酸デプロドン、トリアムシノロン、ベタメタゾン、フルドロコルチゾン、デスオキシコルチコステロン、ロフレポニド、エチプレドノールジクロアセテート等、又は、これらの任意の組み合わせ、
プロスタグランジン、例えば、ラタノプロスト、ビマトプロスト、トラボプロスト、タフルプロスト、以下の構造式を有する3-ヒドロキシ-2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピル7-((1r,2r,3r,5s)-2-((r)-3-(ベンゾ[b]チオフェン-2-イル)-3-ヒドロキシプロピル)-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル)ヘプタノエート、
【化3】
、クロプロステノールイソプロピルエステル、13,14-ジヒドロクロプロステノールイソプロピルエステル、ラタノプロステンブノド、ウノプロストン、PGFイソプロピルエステル、PGFイソプロピルエステル、PGFイソプロピルエステル、フルプロステノール、又は、これらの任意の組み合わせ、
Rhoキナーゼ(ROCK)阻害剤、例えば、ネタルスジル若しくはリパスジル又はその医薬上許容可能な塩、
JAKキナーゼ阻害剤、例えば、JAK1/JAK2に対するルキソリチニブ(“JAKAFI”及び“JAKAVI”)、JAK3に対するトファシチニブ(“XELJANZ”及び“JAKVINUS”)、JAK1に対するオクラシチニブ(“APOQUEL”)、及びJAK1/JAK2に対するバリシチニブ(“OLUMIANT”)、及び、
受容体型チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、ゲフィチニブ、ラパチニブ、エルロチニブ、スニチニブ、ソラフェニブ、レゴラフェニブ、アファチニブ、バンデタニブ、セマキサニブ、セジラニブ、ネラチニブ、アキシチニブ、レスタウルチニブ、チボザニブ、又は、これらの任意の組み合わせ。
【0018】
いくつかの実施形態では、治療剤はデュークプロスト(dukeprost)又はチアプロスト(tiaprost)を含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、治療剤のROCK阻害剤は、3-アミノ-N-(1-オキソ-1,2-ジヒドロイソキノリン-6-イル)-2-(チオフェン-3-イル)プロパンアミド、(S)-3-アミノ-2-(4-(ヒドロキシメチル)フェニル)-N-(イソキノリン-6-イル)プロパンアミド、(1R,2R)-N-(4-メチルイソキノリン-6-イル)-2-(4-(N-(ピリジン-2-イル)スルファモイル)フェニル)シクロプロパン-1-カルボキサミド、又は、その医薬上許容可能な塩を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、治療剤は、シクロプロピルアミドJAK阻害剤を含み、CAS#2246332-69-2及びその(R,R)アイソマーである2246332-34-1、CAS#2246331-96-2、CAS#2246331-95-1、CAS#2246331-94-0、CAS#2246331-82-6が挙げられる。
【0021】
いくつかの実施形態では、治療剤は、記載の治療剤のプロドラッグを含む。
【0022】
本発明の医薬組成物では、ポリマー2に対するポリマー1の量、及び、ポリマー2が複数のポリマーの組み合わせである場合のポリマー2で用いられている成分の量の割合は、実質的に直線的に送達される少なくとも1つの治療剤の量及びこうした送達が実質的に直線的に行われる期間について所望の性質を有する医薬組成物を設計するために非常に重要である。本発明の医薬組成物の特定の実施形態では、ポリマーマトリックスは、
60重量%の生分解性ポリエステルアミドポリマー、
20重量%の生分解性ポリ(D,L-ラクチド)ポリマー、及び、
20重量%の生分解性ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)ポリマー、
を含む。
【0023】
さらに、本発明の医薬組成物の特定の実施形態は、
約59重量%のポリマーマトリックスであって、
ポリマーマトリックスの約60重量%が生分解性ポリエステルアミドポリマーであり、
ポリマーマトリックスの約20重量%が生分解性ポリ(D,L-ラクチド)ポリマーであり、かつ、
ポリマーマトリックスの約20重量%が生分解性ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)ポリマーである、
ポリマーマトリックスと、
約41重量%の少なくとも1つの治療剤と、
を含む。
【0024】
こうした本発明の医薬組成物における用途を有する特定の治療剤の一つがデキサメタゾンである。
【0025】
本発明の医薬組成物は、約3ヶ月にわたり1日あたり少なくとも1つの治療剤の合計の約1%が放出されるように少なくとも1つの治療剤の放出が実質的に直線的に行われる対象の眼への硝子体内投与のために製剤化され得る。
【0026】
本発明の医薬組成物のポリマーマトリックスを形成するために当業者であれば多数の方法を利用可能である。特定の方法では第1ポリマー及び第2ポリマーを機械的にブレンドする。別の方法については後述する。
【0027】
同様に、本発明の医薬組成物に充填される少なくとも1つの治療剤の量は、実質的に直線的に送達される治療剤の所望量及び実質的に直線的に送達が行われる期間に応じて、変わり得る。特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は、(a)約51重量%のポリマーマトリックス、及び、(b)約49重量%の少なくとも1つの治療剤を含む。
【0028】
本発明の医薬組成物で用いられる生分解性(D,L-ラクチド)ポリマーは、酸末端封鎖(acid end-capped)生分解性ポリ(D,L-ラクチド)ホモポリマーでもよいし、エステル末端封鎖(ester end-capped)ポリ(D,L-ラクチド)ホモポリマーでもよい。
【0029】
同様に、本発明の医薬組成物で用いられるポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)ポリマーは、エステル末端封鎖生分解性ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)コポリマーでもよいし、酸封鎖生分解性ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)でもよい。
【0030】
多種のポリエステルアミド(PEA)が本発明の医薬組成物における用途を有している。概して、こうしたPEAは、以下の化学構造式(I)を含む。
【化4】
(I)
(ただし、m+pは0.9から0.1の範囲にあり、a+bは0.1から0.9の範囲にあり、
m+p+a+b=1であり(ただし、m又はpの一方はゼロでもよく)、
nは5から300の範囲にあり、aは少なくとも0.01であり、bは少なくとも0.015であり、bに対するaの比(a:b)は0.1:9から0.85:0.15であり、m単位及び/又はp単位並びにa及びb単位はランダムに分布しており、
は独立して(C-C20)アルキルから選択され、
単一骨格単位であるm又はpでのR及びRは、それぞれ、独立して、水素、(C-C)アルキル、(C-C)アルケニル、(C-C)アルキニル、(C-C10)アリール、(C-C アルキル、-(CH)SH、-(CHS(CH)、(CH-CH-CH-、-CH(CH、-CH(CH)-CH-CH、-CH-C、-(CH-NH、及びこれらの混合物から選択され、
は、独立して、(C-C20)アルキル、(C-C20)アルケニレンから選択され、
は以下の構造式(II)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片であり、
【化5】
は、独立して、(C-C10)アリール、(C-C)アルキル、又は保護基からなる群より選択され、かつ、
は-(CH-である。)
【0031】
本発明の医薬組成物における用途を有する特定のPEAは以下の化学構造式(III)を有する。
【化6】
(III)
【0032】
本発明における用途を有するPEAの他の例が、米国特許第9,873,765号及び米国特許第9,789,189号に開示されており、これらの全体を参照により本明細書で援用する。
【0033】
また、本発明の医薬組成物を含む眼の疾患又は障害を治療するための硝子体インプラントも提供される。本発明の硝子体インプラントを製造するために多数の方法が利用可能である。本発明における用途を有する特定の方法の一つはPRINT(登録商標)テクノロジー粒子製造である。PRINT(登録商標)テクノロジーの使用により、例えば押出成形などの他のテクノロジーでは不可能であったインプラント毎の高い再現性を備え一貫性及び予測可能性が高い特注の治療剤放出プロファイルを有する硝子体インプラントを大量に作ることができる。PRINT(登録商標)テクノロジーは、本発明の硝子体インプラントの製造及び本発明の粒子懸濁液で用いられる粒子の製造に用いられるが、国際公開第2007/021762号、国際公開第2007/024323号、及び国際公開第2007/030698号に開示されており、これらの全体を参照により本明細書で援用する。本発明の硝子体インプラントの製造に用いられる型穴は、様々な態様において、記載寸法から、±50μm、又は、±40μm、又は、±30μm、又は、±20μm、又は、±10μm、又は、±5μmまで異なり得る。
【0034】
PRINT(登録商標)テクノロジーにより、統計学的に有意なばらつきのない治療剤の放出プロファイルを有する硝子体インプラントを作ることができる。結果として、インプラントの実施形態で例示される少なくとも1つの治療剤の放出プロファイルは、信頼区間内にあり且つ治療剤が放出される実質的に直線的なやり方に影響を与えない変動係数を示す。治療剤充填及び放出の高度な一貫性を示す本発明の硝子体インプラントを製造できることは最先端を上回る利点である。
【0035】
本発明の特定の実施形態では、
医薬組成物であって、
(a)約59重量%のポリマーマトリックスであって、
(i)以下の構造を有する約60重量%の生分解性ポリエステルアミドポリマー、
【化7】
(I)
(ただし、m+pは0.9から0.1の範囲にあり、a+bは0.1から0.9の範囲にあり、
m+p+a+b=1であり(ただし、m又はpの一方はゼロでもよく)、
nは5から300の範囲にあり、aは少なくとも0.01であり、bは少なくとも0.015であり、bに対するaの比(a:b)は0.1:9から0.85:0.15であり、m単位及び/又はp単位並びにa及びb単位はランダムに分布しており、
は独立して(C-C20)アルキルから選択され、
単一骨格単位であるm又はpでのR及びRは、それぞれ、独立して、水素、(C-C)アルキル、(C-C)アルケニル、(C-C)アルキニル、(C-C10)アリール、(C-C アルキル、-(CH)SH、-(CHS(CH)、(CH-CH-CH-、-CH(CH、-CH(CH)-CH-CH、-CH-C、-(CH-NH、及びこれらの混合物から選択され、
は、独立して、(C-C20)アルキル、(C-C20)アルケニレンから選択され、
は以下の構造式(II)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片であり、
【化8】
は、独立して、(C-C10)アリール、(C-C)アルキル、又は保護基からなる群より選択され、かつ、
は-(CH-である。)
(ii)約20重量%の生分解性ポリ(D,L-ラクチド)ホモポリマー、及び、
(iii)約20重量%の生分解性ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)コポリマー、
を含み、
前記ポリマーマトリックスを形成するために(i)、(ii)、及び(iii)が一緒にブレンドされている、
ポリマーマトリックスと、
(b)前記ポリマーマトリックス内に均一に分散されている約41重量%のデキサメタゾンと、
を含み、
前記医薬組成物は対象の眼への硝子体内投与のために製剤化されており、かつ、
約3ヶ月にわたり1日あたり含有されている前記少なくとも1つの治療剤の合計の約1%が放出されるように実質的に直線的にデキサメタゾンは放出される、
医薬組成物を含む、
硝子体インプラントが提供される。
【0036】
また、治療を必要とするヒトにおいて眼の疾患又は障害を治療するための方法であって、少なくとも1つの本発明の硝子体インプラントをヒトの眼の硝子体液に投与することを含む、方法も提供される。
【0037】
本発明の硝子体インプラントにより治療できる眼の疾患又は障害としては、これらに限定されるわけではないものの、高眼圧、眼炎症性疾患又は障害、緑内障、神経変性疾患又は障害、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0038】
本発明の医薬組成物及び本発明の硝子体インプラントにより治療できる眼炎症性疾患又は障害の例としては、これらに限定されるわけではないものの、ぶどう膜炎、角膜潰瘍、眼内炎、角膜又は眼表面の自己免疫疾患、HIV疾患の眼症状、又はこれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、眼炎症性疾患又は障害は眼ヘルペスである。本発明により治療できる特定の神経変性疾患又は障害の非限定的な例としては、糖尿病性眼疾患、黄斑変性(湿性又は乾性)、炎症、又は、ドライアイが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
本発明の上述の態様及び他の態様の理解を深めるために以下の図面と詳細な説明を参考にされたい。
【0040】
図1】様々な本発明の医薬組成物(サンプル8~15)からのデキサメタゾンの平均1日放出をプロットしたグラフ。
図2】硝子体インプラント7から放出されたデキサメタゾンの累積百分率のグラフ。
図3】硝子体インプラント7からのデキサメタゾンの平均1日放出速度のグラフ。
図4】サンプル16から経時的に放出された治療剤の累積百分率のグラフ。
図5】サンプル17から経時的に放出された治療剤の累積百分率のグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明は、新規の医薬組成物、及び、治療剤送達系、具体的には、硝子体インプラント、並びに、眼内への実質的に直線的な少なくとも1つの治療剤の徐放のための当該系の製造及び使用法を提供する。生分解性ポリ(D,L-ラクチド)ポリマー、生分解性ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)ポリマー、及びポリエステルアミドを混合することにより、新規系統の分解性ポリマーマトリックスが調製された。本発明の医薬組成物は、ポリマーマトリックスと当該ポリマーマトリックス内に含まれる治療剤とを含む生分解性治療剤送達系に及ぶ。PRINT(登録商標)テクノロジーを用いて、本発明の医薬組成物から、インビトロで5ヶ月までの期間にわたり実質的に直線的に高持続濃度の少なくとも1つの治療剤を送達する硝子体インプラントが開発された。本発明は、均一性が高く、調節可能及び再現可能な大きさ、形状、充填量、組成、及び充填分布、及び所望の治療剤徐放プロファイルを有する生分解性硝子体インプラントに及び、それらを種々の眼の疾患又は障害の治療に役立てる。
【0042】
本発明は、予想外に驚くべきことだが、ポリマーマトリックスであって、PEAポリマーと、PLGAポリマー及び/又はPLAポリマー又はこれらの組み合わせと、当該ポリマーマトリックス内に含まれる少なくとも1つの治療剤とを含むポリマーマトリックスを作ることで、少なくとも3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、又はより長期にわたり実質的に直線的に少なくとも1つの治療剤が放出されるという発見に基づく。義務ではないが、放出される治療剤の量、又は、治療剤がここに記載の期間にわたり本発明の医薬組成物から放出される実質的に直線的なやり方を説明すれば、当然ながらいかなる説明にも拘束されることを望むわけではないものの、2つ以上の異なる種類のポリマーを混ぜることで独自で新規なポリマーマトリックスが製造され、ポリマーマトリックスを形成するために選ばれたポリマーの熱力学的性質及び混和性に依存して、異なる程度の相分離ブレンドを得ることができると推定される。ポリマーマトリックスで用いられるポリマーの比率、すなわち、第1ポリマー及び第2ポリマーの間の割合を変えること(及び第2ポリマーの成分の量を調節すること)により、ポリマーマトリックスの疎水性を調節できる。さらに、特許請求のポリマーマトリックスを有する医薬組成物は少なくとも1つの治療剤を実質的に直線的に放出した。この疎水性の調節及びポリマーマトリックス内に含まれる治療剤の量の調節は、実質的に直線的に放出される治療剤の量及びこうした実質的に直線的な放出が生じる期間の調節を可能とする。こうして、本発明は、特定期間にわたり実質的に直線的に治療剤を放出するように医薬組成物を設計することを可能とする。
【0043】
広くは、本発明は眼の疾患又は障害を治療するための医薬組成物に及ぶ。こうした本発明の医薬組成物は、第1ポリマー及び第2ポリマーの混合物を含む生分解性ポリマーマトリックスを含み、第1ポリマーは生分解性ポリエステルアミドであり、第2ポリマーは、(a)生分解性ポリ(D,L-ラクチド)ポリマー、(b)生分解性ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)コポリマー、並びに(c)(a)及び(b)の組み合わせから選択される。本発明の医薬組成物は、さらに、ポリマーマトリックス内に均一に分散された少なくとも1つの治療剤を含み、当該医薬組成物は、少なくとも約1ヶ月、約2ヶ月、約3ヶ月、約4ヶ月、約5ヶ月、約6ヶ月、又は、より長期間にわたり実質的に直線的に医薬組成物から少なくとも1つの治療剤を放出するように製剤化されている。任意で、医薬組成物は、対象の眼への硝子体内投与のための硝子体インプラントとして製剤化されてもよい。こうした本発明の硝子体インプラントを製造するために以下に記載及び説明するPRINT(登録商標)テクノロジーを用いることができる。
【0044】
多数の用語及び表現が本明細書及び請求項を通じて用いられるが、これらを以下に定義する。
【0045】
特記のない限り、本明細書で用いられる全ての技術的及び科学的用語は本発明の属する技術分野の当業者が通常理解するのと同じ意味を持つ。本明細書に記載の方法及び材料と類似又は同等の任意の方法及び材料を本発明の実施又は試験に用いることができる。
【0046】
また、本明細書に記載の試薬は例示に過ぎず、それらの等価物も本技術分野で知られていることにも触れておく。
【0047】
本明細書では、『アルキル』という用語は、特記のない限り、それ単体で又は他の置換基の一部として、表記の炭素原子数(例えば、C1-6は1から6個の炭素原子を意味する)を有する直鎖又は分岐鎖炭化水素を意味し、直鎖、分岐鎖、又は環状の置換基を含む。例として、これらに限定されるわけではないものの、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、及びシクロプロピルメチルが挙げられる。最も好ましいのは、(C1-6)アルキル、特に、エチル、メチル、イソプロピル、イソブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、及びシクロプロピルメチルである。
【0048】
本明細書では、『アルケニル』は、直鎖基及び分岐鎖基を含む不飽和脂肪族炭化水素モエティを指す。アルケニルモエティは少なくとも1つのアルケンを必ず含む。『アルケニル』は、エテニル、n-ポロペニル、イソプロペニル、n-ブテニルなどの基により例示され得る。アルケニル基は、置換されていてもよいし、未置換でもよい。2つ以上の置換基が存在してもよい。置換されている場合、置換基は、好ましくは、アルキル、ハロゲン、又はアルコキシである。また、置換基自体が置換されていてもよい。置換基は、アルケン自体上、及び、隣接構成原子又はアルキニルモエティ上に、配置できる。
【0049】
本明細書では、『アルキニル』は、直鎖基及び分岐鎖基を含む不飽和脂肪族炭化水素モエティを指す。アルキニルモエティは少なくとも1つのアルキンを必ず含む。『アルキニル』は、エチニル、プロピニル、n-ブチニルなどの基により例示され得る。アルキニル基は、置換されていてもよいし、未置換でもよい。2つ以上の置換基が存在してもよい。置換されている場合、置換基は、好ましくは、アルキル、アミノ、シアノ、ハロゲン、アルコキシル、又はヒドロキシルである。また、置換基自体が置換されていてもよい。置換基は、アルキン自体上、及び、隣接構成原子又はアルキニルモエティ上に、配置できる。
【0050】
本明細書では、『アリール』は、特記のない限り、単独で又は他の用語と組み合わせて、1つ以上の環(典型的には、1つ、2つ、又は3つの環)を含み、こうした環がビフェニルなどのようにペンダント式に一つにつながっていてもよいし又はナフタレンのように縮合していてもよい、炭素環式芳香族系を意味する。アリール基の例としては、フェニル、アントラシル、及びナフチルが挙げられる。好ましい例はフェニル及びナフチルであり、最も好ましいものはフェニルである。
【0051】
本明細書では、置換基内の炭素原子の数は、『Cx-y』又は『C-C』という接頭辞により示すことができ、ここで、xは置換基内の炭素原子の数の最小値、yは最大値である。
【0052】
本明細書では、『保護基』は、例えば、「Protective Groups in Organic Synthesis」(T. Green及びP. Wuts、3版、John Wiley and Sons、1999)に記載されている、保護基モエティを指す。例えば、カルボン酸基は、エステルとして、例えば、アルキルエステル(例えば、メチルエステル、t-ブチルエステル)、ハロアルキルエステル(例えば、ハロアルキルエステル)、トリスアルキルシリルアルキルエステル、又はアリールアルキルエステル(例えば、ベンジルエステル、ニトロベンジルエステル)として、又は、アミドとして、例えば、メチルアミドとして、保護され得る。
【0053】
『治療』という用語は、疾患の改善のために用いられる1つ以上の特定の処置の適用を指す。いくつかの実施形態では、特定の処置は1つ以上の治療剤の投与である。個体(例えば、ヒトなどの哺乳類)又は細胞の『治療』は、個体又は細胞の自然経過を変えることを試みて用いられる任意の種類の介入である。治療は、これに限定されるわけではないものの、医薬組成物の投与を含み、予防的に行われてもよいし、病理学的事象の開始若しくは病原体との接触の後に行われてもよい。治療は、疾患又は状態の症状及び病理学への任意の望ましい影響を含み、例えば、治療中の疾患又は状態の1つ以上の測定可能なマーカーにおける最小の変化又は改善を含んでもよい。また、『予防的』治療も含まれ、これは、治療中の疾患又は状態の進行速度の減少、当該疾患又は状態の発症の遅延、その発症時の重症度の減少を対象にし得る。『有効量』又は『治療有効量』は、1回の投与としてまたは一連の投与の一部として、哺乳類である対象に投与される、所望の治療効果をなすのに有効な治療剤の量を指す。
【0054】
本明細書では、『医薬上許容可能な塩』は、親化合物が既存の酸又は塩基モエティをその塩形態に変換することにより修飾されている本願開示の化合物の誘導体を指す。適した塩の一覧が、「Remington’s Pharmaceutical Sciences, 17th ed.」(Mack Publishing Company, イーストン、ペンシルベニア、1985、p.1418)及びJournal of Pharmaceutical Science、66巻、2号(1977)に記載されており、これらの全体を参照により本明細書で援用する。
【0055】
本明細書では、文脈上明白にそうでないと記載されていない限り、単数の記載は複数参照も包含する。
【0056】
本明細書では、『含む』という用語は、組成物及び方法が記載された要素を備え且つ他の要素を排除しないことを意味する。
【0057】
『約』及び『凡そ』は、互換であり、それにより限定された、数、パラメータ、又は性質の±ある百分率(例えば、±5%)を意味し、これは当該用語が用いられる科学的文脈に適切であると当業者により理解されるであろう。さらに、本明細書で用いられる量を参照する全ての数字、値、及び表現は、技術分野で遭遇する様々な測定不確定性の影響を受ける。したがって、特記のない限り、示した値の全てを『約』という用語で修飾されているものとして理解してよい。
【0058】
数値範囲が本明細書で開示されている箇所について、こうした範囲は連続しており、当該範囲の最小値及び最大値の両方、並びに、こうした最小値と最大値との間の全ての数値を含む。また、さらに、範囲が整数を参照する箇所について、こうした範囲の最小値と最大値との間の全ての整数が含まれる。また、ある特徴又は性質を記述するために複数の範囲が設けられている箇所について、これらの範囲は組み合わせてもよい。すなわち、特記のない限り、本明細書に開示の全ての範囲はそれに包摂されるあらゆる部分範囲を包含すると理解されたい。例えば、『1から10』と記載された範囲は、最小値の1から最大値の10までの間のあらゆる部分範囲を含むものと解すべきである。
【0059】
本明細書では、『治療剤』は、生物学的に活性であり医薬組成物の効果を生じさせる、医薬組成物内の化合物又は物質を指す。
【0060】
本明細書では、『医薬組成物』という用語は、治療剤、添加剤、担体などを含む組成物を指す。一般的に、治療剤単独ではなく医薬組成物が患者に投与される。
【0061】
本明細書では、『目の疾患又は障害』又は『眼(の)疾患又は障害』は、互換的に用いることができ、これらに限定されるわけではないものの、緑内障、アレルギー、炎症性の目の疾患又は障害、高眼圧、目のがん、目の神経変性疾患又は障害(糖尿病性黄斑浮腫(DME)及び湿性又は乾性加齢黄斑変性症(AMD)など)、ぶどう膜炎、糖尿病網膜症、及びドライアイを含む。
【0062】
本明細書では、『キナーゼ』は、リン酸基をATPなどの高エネルギードナーから特定の標的分子(基質)に転移させる酵素の一種である。この過程をリン酸化と呼ぶ。
【0063】
本明細書では、『受容体型チロシンキナーゼ(Receptor Tyrosine Kinase、RTK)』は、Schlessinger(Cell、103巻、211-225頁、2000年)の論文に記載のタンパク質のRTKファミリーから選択される細胞内キナーゼ活性を有する受容体タンパク質を指す。『受容体型チロシンキナーゼ二量体』は、2つの受容体型チロシンキナーゼタンパク質を含む細胞表面膜内の複合体を意味する。ある態様では、受容体型チロシンキナーゼ二量体は、共有結合している2つの受容体型チロシンキナーゼタンパク質を含んでもよい。特に注目すべきRTK二量体は、Her受容体二量体及びVEGFR二量体である。受容体型チロシンキナーゼは、細胞の増殖、生存、代謝、及び遊走をはじめとする多くの基本的細胞過程に関与する受容体の重要なクラスである(例えば、Schlessinger、Cell、103巻、211-225頁、2000年)。このクラスの有名なファミリーは、上皮成長因子受容体(EGFR又はHer1)、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)、線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)、及び血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)を含む。受容体型チロシンキナーゼのクラスは、二量体化により活性化された場合に、RTKの細胞内ドメインがチロシンキナーゼ活性を獲得し、これが今度は種々のシグナル伝達経路を活性化し得ることから、その名を付けられている。結果として、RTKはシグナル伝達経路の中継点として細胞間コミュニケーション及びそれらの機能を仲介するシグナル伝達経路の重要な構成要素となっている。これらは、細胞の増殖及び分化を制御し、細胞成長及び細胞代謝を制御し、また、細胞生存及びアポトーシスを促進するという多数の過程において重要な役割を有している。この性質のため、多くの受容体型チロシンキナーゼが薬剤開発の標的として、また、RTK活性を阻害するように設計されているIRESSA(登録商標)(ゲフィチニブ)及びTARCEVA(登録商標)(エルロチニブ)などのいくつかの有望な臨床フェーズの治療剤として、用いられている(例えば、Taxler、Expert Opin. Ther. Targets、7巻、215-234頁、2003年)。経路活性化を測定するための便法を利用できることは、治療剤の機構の理解を深めることや治療剤選択及び疾患管理を改善することにつながる(Mirshafiey等、Innov. Clin. Neursci. 11巻、7-8号、23-26頁、2014年)。
【0064】
本明細書では、ヤヌスキナーゼ(Janus Kinase、JAK)は、膜受容体からSTAT転写因子へのサイトカインシグナルを伝達する細胞質チロシンキナーゼを指す。4つのJAKファミリーメンバー、JAK1、JAK2、JAK3、及びTYK2、が知られている。サイトカインがその受容体に結合する際に、JAKファミリーメンバーは互いをトランスリン酸化及び/又は自己リン酸化し、その後、STATがリン酸化され、そして、核に移行して転写を調節する。JAK-STAT細胞内シグナル伝達は、インターフェロン、大半のインターロイキン、並びに、EPO、TPO、GH、OSM、LIF、CNTF、GM-CSF、及びPRLなどの種々のサイトカイン及び内分泌因子に適している(Vainchenker W.等、2008年)。
【0065】
JAKファミリーは70を超える異なるサイトカインからの細胞内シグナル伝達に関与している。サイトカインはそれらの細胞表面受容体に結合し、受容体の二量体化と、続くJAKチロシンキナーゼの活性化/リン酸化とを引き起こす。JAKは受容体と恒常的に会合するかサイトカイン結合時にリクルートされるかする。その後、前記受容体上の特定のチロシン残基が、活性化されたJAKによりリン酸化され、STATタンパク質のドッキングサイトとして働く。STATは、JAKによりリン酸化され、二量体化し、そして、核に移動して、そこで、特定のDNA因子と結合し遺伝子の転写を活性化する。JAK1は、サイトカイン依存的に、全てのJAKアイソフォームとともにシグナルを伝達する。
【0066】
JAKは複数の生理機能に不可欠であり、こうした不可欠なJAKの機能は特定のJAKを欠損している遺伝子改変マウスモデルを用いて示されている。Jak1-/-マウスは周産期に死亡し、一方、Jak2-/-マウスは赤血球形成不全でありE12近辺で死亡する。Jak3-/-マウスは、生存可能だが、T細胞、B細胞、及びNK細胞の不全を伴うSCID表現型を有する。TYK2-/-マウスは高IgE症候群の特徴を呈する。こうした表現型はインビボでのJAK活性の不可欠で非重畳的な役割を示す(K. Ghoreschi、A. Laurence、J. J. O’Shea、Immunol. Rev.、228巻、273頁、2009年)。
【0067】
さらに、JAK酵素での変異はヒトの疾患と関連付けられてきている。JAK3(又は同族共通γ鎖サイトカイン受容体)の不活性化変異は重症なSCID表現型を引き起こす(J. J. O’Shea、M. Pesu、D. C. Borie、P. S. Changelian、Nat. Rev. Drug Discov.、3巻、555頁、2004年)。TYK2の欠失は高IgG症候群と感染リスクの増大とをまねく(Y. Minegishi等、Immunity、25巻、745頁、2006)。JAK1及びJAK2の欠損マウスが生存不能であることを示すマウスのデータと一致するように、JAK1及びJAK2について不活性化変異は報告されていない。しかし、恒常的活性型JAK2をもたらすいくつかの変異が同定されており、これらが骨髄増殖性疾患をもたらすことから、造血におけるJAK2の中心的役割が確認されている(O. bdel-Wahab、Curr. Opin. Hematol.、18巻、117頁、2011)。JAK2は、極めて重要な造血サイトカインであるIL-3、GMCSF、EPO、及びTPOのシグナル伝達に関与する唯一のJAKファミリーメンバーである。
【0068】
さらに、JAKは免疫細胞及び非免疫細胞の両方でサイトカインシグナルの顆粒で複数の役割を担う。自己免疫は自己抗原への異常な適応免疫反応により引き起こされ、JAK-STAT(signal transducer and activator of transcription)シグナル伝達がこの過程で重要な役割を果たすことが知られている。そのため、JAK阻害剤は自己免疫を治療するための治療剤の開発への相当な可能性を秘めているかもしれない。JAK3は、その発現が他のJAKとは異なり免疫系に限られているので、特に魅力的な標的である。
【0069】
過剰増殖性障害、がん(白血病及びリンパ腫など)、免疫障害及び炎症性障害(移植拒絶など)、喘息、慢性閉塞性肺疾患、アレルギー、関節リウマチ、1型糖尿病、筋萎縮性側索硬化症、眼疾患又は障害、及び多発性硬化症をはじめとする様々な疾患及び障害とJAK/STAT経路を結びつける多量の文献が蓄積されており、これらはこれらの活性を調節する特に阻害するための多数の治療剤の開発の標的となっている。
【0070】
本明細書では、『Rho関連タンパク質キナーゼ』又は『Rhoキナーゼ』(ROCK)は、細胞骨格動態及び細胞運動性の主要細胞内制御因子である。Rhoキナーゼは、例えば、ミオシン軽鎖、ミオシン軽鎖フォスファターゼの結合サブユニット、及びLIMキナーゼ2を含むRho Aの多数の下流標的をリン酸化を介して制御する。これらの基質はアクチンファイバーの組織化及び収縮性を制御する。平滑筋細胞では、Rhoキナーゼはカルシウム感作及び平滑筋収縮を調節する。Rhoキナーゼの阻害は5-HT及びフェニレフリンアゴニスト誘導性筋収縮をブロックする。非平滑筋細胞に導入された場合、Rhoキナーゼは、ストレスファイバー形成を誘導し、Rho Aにより調節される細胞形質転換に必要とされる。Rhoキナーゼは、これらに限定されるわけではないものの、細胞接着、細胞の運動性及び遊走、成長制御、細胞収縮、及びサイトカインをはじめとする種々の細胞過程に関与する。また、Rhoキナーゼは、Na/H交換輸送系活性化、ストレスファイバー形成、アデュシン活性化、及び生理的過程(血管収縮、気管支平滑筋収縮、血管の平滑筋及び内皮細胞の増殖、血小板凝集など)に関与している。
【0071】
動物モデルでのRhoキナーゼ活性の阻害によりヒト疾患の治療にRhoキナーゼ阻害が多数の利益をもたらすことが示されている。これらは、心血管疾患(高血圧、アテローム性動脈硬化、再狭窄、心肥大、高眼圧、脳虚血、脳血管痙攣、陰茎勃起不全など)のモデル、中枢神経系障害(神経変性及び脊髄損傷など)のモデル、及び、新生物でのモデルを含む。Rhoキナーゼ活性の阻害が、腫瘍細胞の成長及び転移、血管新生、動脈血栓障害(血小板凝集及び白血球凝集など)、喘息、眼内圧制御、並びに、骨吸収を阻害することが示されている。患者でのRhoキナーゼ活性の阻害は、クモ膜下出血後の脳血管痙攣及び虚血の制御、眼内圧の減少、線維柱帯網組織の弛緩による房水流出の増加、視神経への血流の改善、緑内障の治療、眼内圧(IOP)の減少、及び健全な神経節細胞の保護への利点を有する。
【0072】
哺乳類では、Rhoキナーゼは、2種類のアイソフォーム、ROCK1(ROCKβ、p160-ROCK)及びROCK2(ROCKα)からなる。ROCK1及びROCK2は特異的組織で差次的に発現し且つ制御される。例えば、ROCK1は比較的に高レベルで広範に発現し、一方、ROCK2は心臓、血管、骨格筋に優先的に発現する。また、これらのアイソフォームはいくつかの組織において発生段階特異的に発現する。ROCK1はアポトーシスの最中のカスパーゼ-3による切断の基質であり、一方、ROCK2はそうではない。平滑筋特異的塩基性カルポニンはROCK2によってのみリン酸化される。
【0073】
関連する細胞過程及び疾患の範囲に鑑み、一方のRhoキナーゼを選択的に阻害する又はROCK1及びROCK2を阻害する化合物が望ましい。Rhoキナーゼ阻害治療剤の例として、IOPを低下させ緑内障の治療に用いられるネタルスジル又はその医薬上許容可能な塩(例えば、『RHOPRESSA(登録商標)』)、並びに、緑内障及び高眼圧の治療に用いられるリパスジル又はその医薬上許容可能な塩(例えば、『GLANATEC(登録商標)』)が挙げられる。ある実施形態では、こうしたRhoキナーゼ阻害剤の生物学的に活性な代謝物質が望ましい。
【0074】
本明細書では、『プロスタグランジン』は以下のプロスタン酸骨格を有する任意の化合物を指す。
【化9】
(プロスタン酸骨格)
【0075】
こうした化合物及びそのアナログ又は誘導体は、眼圧降下活性を有し、ひいては、眼の疾患又は障害の治療又は改善における用途を有する。
【0076】
本発明の医薬組成物(例えば、硝子体インプラント)における用途を有する別種の治療剤が、コルチコステロイド、及び、そのアナログまたは誘導体、又は、その塩またはプロドラッグである。本明細書では、『コルチコステロイド』は、脊椎動物の副腎皮質で産生されるステロイドホルモンのクラスであり、これらのホルモンの合成アナログ及び誘導体も包含する。2種類のコルチコステロイド、例えば、糖質コルチコイド及び鉱質コルチコイドが、広範な生理過程に関与している。コルチコステロイドが、眼の疾患又は障害、特に、眼炎症性疾患又は障害の治療における用途を有することが報告されている。
【0077】
本明細書では、『治療有効量』は、疾患又は障害を治療するために必要な治療剤のレベル又は量、すなわち、治療剤が投与された対象において治療反応又は所望効果を生じる治療剤のレベル又は量を意味する。本発明の特定の実施形態では、治療有効量は眼の疾患又は障害を治療するために必要な治療剤のレベル又は量を意味する。
【0078】
本発明は、さらに、ヒトの目の後部に又は当該後部内に配置するために本発明の医薬組成物から製造された硝子体インプラントにも及ぶ。これらの実施形態では、当該インプラントからの治療剤の実質的に直線的な放出は、当該インプラントが治療剤を実質的に直線的に放出するために設計されている期間にわたり眼の疾患又は障害を治療する患者の目の硝子体内の治療剤のある濃度を実現する。
【0079】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のインプラントは、ヒトの目の虹彩角膜角への当該インプラントの最大近似をもたらすような大きさ、形状、及び組成で設計されている。いくつかの実施形態では、インプラントは本発明の医薬組成物で製造されており、それは本明細書に記載のようなポリマーマトリックスを含む。
【0080】
本明細書では、『ポリマー』という用語は、ホモポリマー(一種類の繰り返し単位のみを有するポリマー)及びコポリマー(二種類以上の繰り返し単位を有するポリマー)を包含することを意図する。
【0081】
『生分解性ポリマー』又は『生体分解可能ポリマー』は、互換的に用いることができ、生理条件下においてインビボで分解するポリマーを意味する。少なくとも1つの治療剤の放出は、経時的な生分解性ポリマーの分解と同時に又はその後に生じる。生分解性ポリマーはホモポリマーでもコポリマーでもよい。
【0082】
本明細書では、『ポリマーマトリックス』という用語は、ポリマーの均一混合物を指す。換言すれば、当該マトリックスは、材料、密度などの点で一部が他部とは異なる混合物を含まない。したがって、ポリマーマトリックスは、コアと1つ以上の外層とを含む組成物を含まないし、治療剤リザーバと当該治療剤リザーバを囲む1つ以上の部分とを含む組成物も含まない。本発明の医薬組成物では、ポリマーマトリックスは第1ポリマー及び第2ポリマーを含み、第1ポリマーはポリエステルアミドポリマー(PEA)を含み、第2ポリマーは、PLAポリマー、PLGAポリマー、又は、PLAポリマー及びPLGAポリマーの組み合わせ、例えば、
(i)生分解性ポリ(D,L-ラクチド)ポリマー、
(ii)生分解性ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)ポリマー、又は、
(iii)(i)及び(ii)の組み合わせ、
を含む。
【0083】
本発明の医薬組成物のポリマーマトリックスで用いられるポリマーは、組み合わされたときに所望期間中に実質的に直線的に治療有効量の治療剤の放出をもたらすのに必要な性質をもたらす当該ポリマーと関連する独立した性質を有する。
【0084】
こうしたポリマーは酵素不安定性又は加水分解不安定性の影響を受けることが多い。有用な非水溶性ポリマーを得るために、水溶性ポリマーが加水分解性又は生分解性の不安定な架橋で架橋されてもよい。安定性の度合いは、モノマーの選択、ホモポリマー又はコポリマーのいずれが採用されたか、ポリマーの混合物の採用、及びポリマーが末端酸基を含むか否かに依存して、広く変わり得る。
【0085】
ポリマーの生分解性、ひいては、本発明の医薬組成物の徐放プロファイルを制御すること同様に重要なのが、本発明の硝子体インプラントで採用されたポリマーマトリックスの相対平均分子量である。少なくとも1つの治療剤の放出プロファイルを調節するために、同じ又は異なるポリマー組成物の異なる分子量が包含され得る。
【0086】
多数のポリマーマトリックス形成法が、当業者にとって既知であり、これらに限定されるわけではないものの、溶融混合、溶液混合、部分的ブロック又はグラフト共重合、及び、相互侵入高分子網目(Interpenetrating Polymer Networks、IPN)調製が挙げられる。『溶融混合』は、第1ポリマー及び第2ポリマーが溶融状態である間にそれらを一緒に混合することを含む。それは、剪断力、拡張力(extensional force)、圧縮力、超音波エネルギー、電磁エネルギー、熱エネルギー、又は、前記の力又はエネルギー形態の少なくとも1つを含む組み合わせの使用を伴い、また、それは、前記の力又はエネルギー形態が、短軸スクリュー、多軸スクリュー、噛合型同方向回転又は異方向回転スクリュー、非噛合型同方向回転又は異方向回転スクリュー、往復スクリュー、ピン付きスクリュー、スクリーン付きスクリュー、ピン付きバレル、ロール、ラム、螺旋ローター、又は、前記の少なくとも1つを含む組み合わせにより発揮される処理装置で実行される。
【0087】
前記の力を伴う溶融混合は、単軸又は多軸スクリュー押出機、ブッスニーダー、ヘンシェル、ヘリコーン、ロスミキサー、バンベリー、ロールミルなどの機械、射出成形機、真空成形機、ブロー成形機などの成形機、又は、前記の機械の少なくとも1つを含む組み合わせで実行されてもよい。
【0088】
また、ポリマーマトリックスを製造するために溶液混合が用いられてもよく、この場合、ポリマーが溶液内に入れられ混合される。また、ヒドロゲルによる量子ドットの均一化を促進するために、溶液混合に、剪断、圧縮、超音波振動などの追加のエネルギーを用いてもよい。一実施形態では、ヒドロゲルは流体(例えば、水、アルコールなど)内に懸濁され、超音波処理装置に量子ドットとともに投入される。混合物は、量子ドットをヒドロゲル内に分散させるのに有効な時間にわたり超音波処理により混合された溶液であり得る。その後、必要に応じて、量子ドットを伴うヒドロゲルは乾燥され、押し出され、成形されてもよい。押出中にヒドロゲルの温度は高められてもよく、架橋の発生を促進する。ヒドロゲルを膨潤させるのに用いられる流体は押出処理中に押出機上で真空を用いることにより除去されてもよい。
【0089】
特定の実施形態では、本発明のポリマーマトリックスはポリマーの機械的混合により製造される。
【0090】
複数の実施形態で、ポリマーマトリックスは、ポリ乳酸、グリコール酸、並びに、これらのコポリマーの任意の組み合わせとポリエステルアミドとから形成されてもよく、これは経時的な目への実質的に直線的な少なくとも1つの治療剤の放出をもたらす。より重要なことに、当業者は、少なくとも約1ヶ月、少なくとも約2ヶ月、少なくとも約3ヶ月、少なくとも約4ヶ月、少なくとも約5ヶ月、少なくとも約6ヶ月、又はそれ以上にわたり実質的に直線的に少なくとも1つの治療剤を送達するために、本発明の医薬組成物で用いられるポリマーマトリックスを設計できる。
【0091】
本明細書では、『実質的に直線的』は、本発明の医薬組成物から放出される治療剤の最初の90%が0.9以上のR値を有するはずであることを意味する。ある実施形態では、本発明の医薬組成物から放出される治療剤の最初の80%が0.9以上のR値を有するはずである。
【0092】
インプラントでの使用に適したポリマー材料又は組成物として、混和性であり、且つ、目の機能及び生理に実質的に干渉しないような目と生体適合性である当該材料が挙げられる。こうしたポリマー材料は生分解性又は生体分解可能でもよい。有用なポリマー材料の例としては、限定されるわけではないものの、分解時に生理的に許容可能な分解産物を生じる、有機エステル及び有機エーテルに由来する及び/又はこれらを含む当該材料が挙げられる。また、無水物、アミド、オルトエステルなどに由来する及び/又はこれらを含むポリマー材料が、それらだけで又は他のモノマーと組み合わせて、本発明で利用されてもよい。ポリマー材料は付加重合体でも縮合重合体でもよい。ポリマー材料は架橋されていても無架橋でもよい。ある実施形態については、炭素及び水素に加えて、ポリマーは酸素及び窒素の少なくとも1つを含んでもよい。酸素は、オキシ(例えば、ヒドロキシ又はエーテル)、カルボニル(例えば、カルボン酸エステルなどの非オキソカルボニル)などとして、存在してもよい。窒素は、アミド、シアノ、又はこれらの任意の組み合わせとして存在してもよい。
【0093】
一実施形態では、ヒドロキシ脂肪族カルボン酸のポリマー(ホモポリマー又はコポリマーのいずれか)及び多糖が、インプラントに役立つ。ポリエステルは、D-乳酸、L-乳酸、ラセミ乳酸、グリコール酸、ポリカプロラクトン、これらのコポリマー、及び、これらの組み合わせを含み得る。
【0094】
本発明の実施形態で使用するためのポリマー又はポリマー材料のいくつかの性質として、生体適合性、選択された少なくとも1つの治療剤との混和性、本明細書に記載の治療剤送達系を作成する際のポリマーの使いやすさ、生理環境での所望の半減期、及び、親水性を挙げることも可能である。
【0095】
本発明の医薬組成物(例えば、硝子体インプラント)の製造で用いられるポリマーマトリックスにおける用途を有するポリマーの特定例は、合成脂肪族ポリエステル、例えば、乳酸及び/又はグリコール酸のポリマーであり、ポリ-(D,L-ラクチド)(PLA)、ポリ-(D-ラクチド)、ポリ-(L-ラクチド)、ポリグリコール酸(PGA)、及び/又は、ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)コポリマー(PLGA)が挙げられる。
【0096】
PLGAはグリコール酸及び乳酸の環状二量体のランダム開環共重合により合成される。グリコール酸又は乳酸の連続するモノマー単位はエステル結合により結合されている。
【0097】
PLGA及びPLAポリマーは骨格加水分解(バルク浸食)を介して分解されることが知られており、最終分解産物は乳酸及びグリコール酸であり、これらは無毒且つ熟慮済みの天然代謝化合物である。乳酸及びグリコール酸はクレブス回路を介して二酸化炭素及び水に変換されることにより安全に除去される。さらに、PLA、PGA、及びPLGAポリマーの生体適合性は、動物及びヒトの非眼組織及び眼組織の両方で調べられてきた。知見は当該ポリマーが認容性良好であることを示している。さらに、PLA、PGA、及びPLGAは末端のエステル又は酸を含み得る。
【0098】
本発明の実施形態で利用され得るPLAポリマーの例として、Evonik Industriesから入手可能なRESOMER(登録商標)のプロダクトラインが挙げられ、これらに限定されるわけではないものの、R207S、R202S、R202H、R203S、R203H、R205S、R208、R206、及びR104と表記されるものが挙げられる。適したPLAポリマーの例としては、ウベローデ(サイズ0c)ガラス毛細管粘度計によりCHCl中0.1%(w/v)且つ25℃で測定した場合に凡そ0.15から凡そ2.2dL/gの範囲のインヘレント粘土を有する酸末端及びエステル末端ポリマーの両方が挙げられる。
【0099】
様々な分子量及び様々なインヘレント粘度のPLAの合成が可能である。例えば、これに限定される訳ではないものの、一実施形態では、凡そ1.8から凡そ2.2dL/gのインヘレント粘度を有する、RESOMER(登録商標)R208Sなどの、PLAを用いることができる。別の実施形態では、凡そ0.25から凡そ0.35dL/gのインヘレント粘度を有する、RESOMER(登録商標)R203Sなどの、PLAを用いることができる。また別の実施形態では、凡そ0.55から凡そ0.75dL/gのインヘレント粘度を有する、RESOMER(登録商標)R205Sなどの、PLAを用いることができる。
【0100】
本発明の実施形態で利用され得るPGAポリマーの例として、Evonik Industriesから入手可能なRESOMER(登録商標)のプロダクトラインが挙げられ、これに限定されるわけではないものの、G205Sと表記されるものが挙げられる。適したPGAポリマーの他の例としては、酸末端及びエステル末端ポリマーの両方が挙げられる。ある実施形態では、PGAポリマーのインヘレント粘度はウベローデ(サイズ0c)ガラス毛細管粘度計によりCHCl3中0.1%(w/v)且つ25℃で測定した場合に凡そ1.05から凡そ1.25dL/gの範囲である。
【0101】
本発明の実施形態で利用され得るPLGAポリマーの例として、Evonik Industriesから入手可能なRESOMER(登録商標)のプロダクトラインが挙げられ、これらに限定されるわけではないものの、RG502、RG502S、RG502H、RG503、RG503H、RG504、RG504H、RG505、RG506、RG653H、RG752H、RG752S、RG753H、RG753S、RG755、RG755S、RG756、RG756S、RG757S、RG750S、RG858、及びRG858Sと表記されるものが挙げられる。こうしたPLGAポリマーとしては、ウベローデ(サイズ0c)ガラス毛細管粘度計によりCHCl中0.1%(w/v)且つ25℃で測定した場合に凡そ0.14から凡そ1.7dL/gの範囲のインヘレント粘土を有する酸末端及びエステル末端ポリマーの両方が挙げられる。本発明の様々な実施形態で用いられる例示的ポリマーは、凡そ50:50から凡そ85:15までのグリコリドに対するD,L-ラクチドのモル比のばらつきを含んでもよく、これらに限定されるわけではないものの、50:50、65:35、75:25、及び85:15が挙げられる。
【0102】
本発明の実施形態で利用され得るPLGAポリマーの他の例として、Lakeshore Biomaterialsにより製造されるものが挙げられ、これらに限定されるわけではないものの、DLG 1A、DLG 3A、又はDLG 4Aが挙げられる。こうしたDLGポリマーとしては、ウベローデ(サイズ0c)ガラス毛細管粘度計によりCHCI中0.1%(w/v)且つ25℃で測定した場合に凡そ0.0.5から凡そ1.0dL/gの範囲のインヘレント粘土を有する酸(A)末端及びエステル(E)末端ポリマーの両方が挙げられる。本発明の様々な実施形態で用いられる例示的ポリマーは、凡そ1:99から凡そ99:1までのグリコリドに対するD,L-ラクチドのモル比のばらつきを含んでもよく、これらに限定されるわけではないものの、50:50、65:35、75:25、及び85:15が挙げられる。
【0103】
製品名内に『RG』又は『DLG』と表記されるRESOMERS(登録商標)(RG752Sなど)は、以下の一般構造式(V)を有するポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)又はPLGAである。
【化10】
(V)
【0104】
様々なD,L-ラクチド-グリコリド比を有する様々な分子量のDLGの合成が可能である。一実施形態では、凡そ0.05から凡そ0.15dL/gのインヘレント粘度を有する、1Aなどの、DLGを用いることができる。別の実施形態では、凡そ0.15から凡そ0.25dL/gのインヘレント粘度を有する、2Aなどの、DLGを用いることができる。
【0105】
ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)又はPLGAコポリマーはグリコリドに対するラクチドの異なる比(75:25のラクチド:グリコリドの比など)で合成できる。これらのコポリマーは、製品名中の末端に『S』が表記される、エステル末端PLGAコポリマーであってもよいし、製品名中の末端に『H』が表記される、酸末端PLGAコポリマーであってもよい。
【0106】
本発明の硝子体インプラントにおける用途を有する他の生分解性ポリマーはポリエステルアミド(PEA)である。PEAは米国特許第9,896,544号及び米国特許第9,789,189号に開示されており、これらの全体を参照により本明細書で援用する。PEAの一般構造式の一例は以下の化学構造式(I)である。
【化11】
(I)
(ただし、m+pは0.9から0.1の範囲にあり、a+bは0.1から0.9の範囲にあり、
m+p+a+b=1であり(ただし、m又はpの一方はゼロでもよく)、
nは5から300の範囲にあり、aは少なくとも0.01であり、bは少なくとも0.015であり、bに対するaの比(a:b)は0.1:9から0.85:0.15であり、m単位及び/又はp単位並びにa及びb単位はランダムに分布しており、
は独立して(C-C20)アルキルから選択され、
単一骨格単位であるm又はpでのR及びRは、それぞれ、独立して、水素、(C-C)アルキル、(C-C)アルケニル、(C-C)アルキニル、(C-C10)アリール、(C-C アルキル、-(CH)SH、-(CHS(CH)、(CH-CH-CH-、-CH(CH、-CH(CH)-CH-CH、-CH-C、-(CH-NH、及びこれらの混合物から選択され、
は、独立して、(C-C20)アルキル、(C-C20)アルケニレンから選択され、
は以下の構造式(II)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片であり、
【化12】
は、独立して、(C-C10)アリール、(C-C)アルキル、又は保護基からなる群より選択され、かつ、
は-(CH-である。)
【0107】
本発明における用途を有するPEAの特定例は以下の化学構造式を有する。
【化13】
(III)
【0108】
本発明の医薬組成物(例えば、硝子体インプラント)における用途を有するPEAポリマーは、バルク浸食を介して酵素的ではなく加水分解的に分解し、完全に生体適合性である。そのため、その分解は目の機能又は生理と実質的にどんな干渉も起こさないはずである。
【0109】
本発明のインプラントに存在するラクチド及びグリコリドの量の間の比率に加えてラクチド及びグリコリドに対するPEAの比は変えることができ、これにより、製品の生分解特性を変え、当業者がポリマー分解時間並びに徐放される治療剤の期間及び量を調製することが可能となる。こうして、生分解性ポリマーマトリックスの変更及びカスタマイズは上で議論した推定上の理論に従い治療剤送達プロファイルを変えるが、当該議論は、発明者等が提供する義務を負うものではなく、これにいかなる点でも拘束されるものではない。
【0110】
さらに、本発明は液体の製剤及び送達系を含む組成物にも及ぶ。そのため、本願組成物は、溶液、懸濁液、又は、眼科療法で用いられる他の液体含有組成物などを含むものと解釈されてもよい。
【0111】
粒子懸濁液
上で説明したように、本発明の医薬組成物は粒子懸濁液に製剤化できる。本明細書では、粒子懸濁液は、送達媒体などの必要な添加剤を含有する液相に懸濁された懸濁液として製剤化された微粒子化医薬組成物である。
【0112】
さらに、液体製剤は粒子懸濁液にもできる。粒子は、本明細書に開示の硝子体インプラントよりも普通は小さく、形状は変動し得る。例えば、本発明のいくつかの実施形態は実質的に円柱形の粒子を用いる。本発明の治療剤送達系は所定の粒径分布を有する前述の粒子の集団を含んでもよい。複数の実施形態では、懸濁液は所望の直径測定値を有する粒子の集団を含んでもよい。
【0113】
上で議論したように、本明細書に記載のポリマーブレンドは粒子懸濁液とともに用いることができる。そのため、複数の実施形態では、上で議論したPLA、PGA、PLGA、及びPEAポリマーは本明細書に記載のポリマーマトリックスに製剤化でき、これは少なくとも1つの治療剤と組み合わせて眼投与のための粒子懸濁液として製剤化できる。これらに限定されるわけではないものの、トコフェロール(例えば、α-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、及びδ-トコフェロール)をはじめとする追加の剤を本明細書に記載の粒子懸濁液で用いることができる。
【0114】
複数の実施形態では、粒子はいずれの寸法も約100μm未満のサイズを有する。複数の実施形態では、最大寸法は、約10μmから約100μmまで、又は、約12.5μmから約25μmまで約50μmまでであってもよい。別の実施形態では、最小寸法は、約10μmから約100μm、又は、約12.5μmから約25μmまでであってもよい。本明細書の粒子懸濁液で用いられる粒子を製造するためにPRINT(登録商標)テクノロジーが容易に利用できる。本発明の医薬組成物(例えば、硝子体インプラント及び粒子懸濁液)は、約1%から約90%まで、又は約1%から約80%まで、又は約1%から約70%まで、又は約1%から約60%まで、又は約1%から約50%まで、又は約1%から約40%まで、又は約1%から約30%まで、又は約1%から約20%まで、又は約1%から約10%まで、又は約10%から約50%まで、又は約10%から約40%まで、又は約10%から約30%まで、又は約10%から約25%まで、又は約10%から約23%まで、又は約10%から約20%まで、又は約15%から約35%まで、又は約15%から約30%まで、又は約15%から約25%までの、治療剤含量を含む。
【0115】
本明細書に記載の粒子懸濁液の、硝子体内注射を介した、投与に、送達媒体を用いることができる。例えば、粒子懸濁液を送達する注射可能媒体を製剤化するために、米国特許第7,582,311号及び米国特許第7,651,703号に記載のものなどの、ヒアルロン酸(Hyaluronic Acid、HA)送達媒体を用いることができ、これら文献の全体を参照により本明細書で援用する。ヒアルロン酸(HA)は、N-アセチル-D-グルコサミン及びβ-グルクロン酸からなるポリアニオン性多糖である。HAの独特の粘弾性は、その生体適合性及び非免疫原性ともに、多数の臨床応用でのその使用につながってきており、関節炎での関節液の補充、目の外科手術における外科手術助剤としての使用、並びに、外科手術創の治癒及び再生の促進のための使用が挙げられる。最近は、眼、鼻、肺、非経口、及び局所をはじめとする様々な投与経路についての治療剤送達剤としてHAは調べられてきている。
【0116】
複数の実施形態では、粒子懸濁液は水溶液により送達される。特定の実施形態では、本発明の粒子懸濁液はソルビトール及びヒアルロン酸(HA/ソルビトール)媒体を含有する水溶液により送達される。水溶液は、約0.1~99%のHA及び約1~99%のソルビトール、又は、約0.1~50%のHA及び約20~90%のソルビトール、又は、約0.1~10%のHA及び約40~60%のソルビトールを含む。いくつかの実施形態では、水溶液は約1%のHA及び約50のソルビトールを含む。
【0117】
治療剤放出プロファイルの操作
硝子体インプラント又は粒子懸濁液(例えば、本発明の医薬組成物)からの治療剤放出の速度はいくつかの要素に依存し、これらに限定されるわけではないものの、インプラントの表面積、治療剤含量、治療剤の水溶性、及びポリマー分解の速度が挙げられる。上で説明したように、治療剤放出の速度を決定する非常に重要な点は、その期間に加えて、用いられる第2ポリマー、例えば、(a)PLA、(b)PLGA、又は(a)及び(b)の組み合わせ、の量に対する、用いられる第1ポリマー、例えば、PEA、の量の比であり、また、第2ポリマーがPLA及びPLGAの組み合わせである場合にはPGLA:PLA比もそうである。他の関連因子としては、ラクチド立体異性体組成(すなわち、DL-ラクチドに対するL-ラクチドの量)及び分子量が挙げられる。
【0118】
PGA、PLA、PLGA、及びPEAの多用途性により送達系の構築において種々の眼の疾患又は障害を治療するために治療剤放出を調整することが可能となる。
【0119】
PGA、PLA、PLGA、及びPEAポリマーの多用途性を、本発明の製造技術、すなわち、PRINT(登録商標)テクノロジー粒子製造と組み合わせた場合、カスタム調整され一貫性及び予測可能性の高い多数の治療剤放出プロファイルを作ることができ、これは例えば押出成形などの先行技術では不可能であった。PRINT(登録商標)テクノロジーは、本発明の硝子体インプラントの製造及び本発明の粒子懸濁液で用いられる粒子の製造に用いられるが、国際公開第2007/021762号、国際公開第2007/024323号、及び国際公開第2007/030698号に記載されており、これらの全体を参照により本明細書で援用する。
【0120】
本発明の硝子体インプラントの製造に用いられる型穴は、様々な態様において、記載寸法から、±約50μm、又は、±約40μm、又は、±約30μm、又は、±約20μm、又は、±約10μm、又は、±約5μmまで異なり得る。
【0121】
PRINT(登録商標)テクノロジーにより、インプラント毎の高い再現性を有する治療剤放出プロファイルを示す本発明の硝子体インプラントを製造することができる。本発明の様々なインプラントが示す治療剤放出プロファイルは、インプラント毎に一貫しており、統計学的に有意でないばらつきを示す。結果として、本発明の硝子体インプラントの実施形態により示される治療剤放出プロファイルは、信頼区間内にあり且つ治療送達に影響を与えない変動係数を示す。治療剤充填及び放出の高度な一貫性を示すインプラントを製造できることは最先端を上回る利点である。
【0122】
本発明の様々な実施形態において使用するための本明細書に記載のポリマーマトリックス内に均一に分散された、適切な治療剤、及び、その、アナログ、誘導体、医薬上許容可能な塩、双性イオン、多形体、若しくは溶媒和物は、アメリカ食品医薬品局刊行のオレンジブックにみられるものでもよく、とりわけオレンジブックには眼の疾患又は障害の治療のために承認された治療剤を列記されている。
【0123】
本発明の医薬組成物又は本発明の医薬組成物から作られた硝子体インプラント若しくは粒子懸濁液における用途を有する治療剤の例として、上で議論した受容体型チロシンキナーゼ(RTK)の阻害剤が挙げられる。本明細書での用途を有するRTK阻害剤の特定例としては、これらに限定されるわけではないものの、ゲフィチニブ(『IRESSA(登録商標)』)、ラパチニブ(『TYKERB(登録商標)』及び『TYVERB(登録商標)』)、エルロチニブ(『TARCEVA(登録商標)』)、スニチニブリンゴ酸塩(『SUTENT(登録商標)』)、ソラフェニブ(『NEXAVAR』)、レゴラフェニブ(『STIVARGA(登録商標)』)、バンデタニブ、アファチニブ(『GILOTRIF(登録商標)』)、アキシチニブ(『INLYTA(登録商標)』)、セマキサニブ、セジラニブ(『RECENTIN』)、ネラチニブ(『NERLYNX(登録商標)』)、レスタウルチニブ、及びチボザニブ(『FOTIVDA(登録商標)』)が挙げられる。
【0124】
また、Rhoキナーゼ阻害剤も本明細書での用途を有する。本発明の医薬組成物(例えば、本発明の硝子体インプラント)における用途を有するこうしたRhoキナーゼ阻害剤の特定例として、これらに限定されるわけでは決してないものの、IOPを低下させ緑内障の治療に用いられるネタルスジル又はその医薬上許容可能な塩(例えば、『RHOPRESSA(登録商標)』)、並びに、緑内障及び高眼圧の治療に用いられるリパスジル又はその医薬上許容可能な塩(例えば、『GLANATEC(登録商標)』)が挙げられる。
【0125】
眼の疾患又は障害の治療に用いるための本発明の医薬組成物(例えば、本発明の硝子体インプラント)における用途を有する特定のJAK阻害剤として、これらに限定されるわけではないものの、JAK1/JAK2に対するルキソリチニブ(『JAKAFI(登録商標)』及び『JAKAVI(登録商標)』)、JAK3に対するトファシチニブ(『XELJANZ(登録商標)』及び『JAKVINUS』)、JKA1に対するオクラシチニブ(『APOQUEL(登録商標)』)、及び、JAK1/JAK2に対するバリシチニブ(『OLUMIANT(登録商標)』)が挙げられる。
【0126】
本明細書での用途を有する治療剤のまた別の例として、コルチコステロイド並びにそのアナログ及び誘導体が挙げられる。例として、これらに限定されるわけではないものの、デキサメタゾン、ブデソニド、ベクロメタゾン、ベクロメタゾン(例えば、モノ又はジプロピオン酸エステルとして)、フルニソリド、フルチカゾン(例えば、プロピオン酸又はフロ酸エステルとして)、シクレソニド、モメタゾン(例えば、フロ酸エステルとして)、モメタゾンデソニド、ロフレポニド、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、ナフロコルト、デフラザコート、酢酸ハロプレドン、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、クロコルトロン、チプレダン、プレドニカルベート、ジプロピオン酸アルクロメタゾン、ハロメタゾン、リメキソロン、プロピオン酸デプロドン、トリアムシノロン、ベタメタゾン、フルドロコルチゾン、デスオキシコルチコステロン、ロフレポニド、エチプレドノールジクロアセテートなどが挙げられる。
【0127】
本明細書での用途を有するコルチコステロイド又はそのアナログ若しくは誘導体の特定例として以下のものが挙げられる。
(a)デキサメタゾン(直ぐ下の化学構造式(V)を有する)
【化14】
(V)
IUPAC名称:(8S,9R,10S,llS,13S,14S,16R,17R)-9-フルオロ-n,17-ジヒドロキシ-17-(2-ヒドロキシアセチル)-10,13,16-トリメチル-6,7,8,9,10,ll,12,13,14,15,16,17-ドデカヒドロ-3H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-オン。
(b)フルオシノロンアセトニド(直ぐ下の化学構造式(VI)を有する)
【化15】
(VI)
IUPAC名称:(1S,2S,4R,8S,9S,1lS,12R,13S,19S)-12,19-ジフルオロ-ll-ヒドロキシ-8-(2-ヒドロキシアセチル)-6,6,9,13-テトラメチル-5,7-ジオキサペンタシクロ[10.8.0.02,9.04,8.013,18]イコサ-14,17-ジエン-16-オン。
【0128】
本発明の医薬組成物(例えば、硝子体インプラント及び粒子懸濁液)における治療剤としての用途を有するプロスタグランジン及びそのアナログ又は誘導体として、ラタノプロスト、ビマトプロスト、トラボプロスト、タフルプロスト、3-ヒドロキシ-2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピル7-((1r,2r,3r,5s)-2-((r)-3-(ベンゾ[b]チオフェン-2-イル)-3-ヒドロキシプロピル)-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル)ヘプタノエート(化学構造式(II))、クロプロステノールイソプロピルエステル、13,14-ジヒドロクロプロステノールイソプロピルエステル、ラタノプロステンブノド、ウノプロストン、PGF1αイソプロピルエステル、PGF2αイソプロピルエステル、PGF3αイソプロピルエステル、フルプロステノール、又はこれらの任意の組み合わせが挙げられる。ある実施形態では、治療剤としての用途を有するプロスタグランジン及びそのアナログ又は誘導体は、デュークプロスト、チアプロスト、又は両方を含む。ある実施形態では、治療剤としての用途を有するプロスタグランジン及びそのアナログ又は誘導体は、プロスタグランジン及びそのアナログ又は誘導体の、遊離酸及びその医薬上許容可能な塩を含む。
【0129】
例えば緑内障などの眼の疾患又は障害を治療するための本発明の医薬組成物における用途を有する他の治療剤としては、これらに限定されるわけではないものの、βブロッカー、縮瞳薬、αアドレナリン受容体アゴニスト、又は炭酸脱水酵素阻害剤、及び、5-フルオロウラシル又はマイトマイシンCなどの抗代謝剤が挙げられる。
【0130】
当然ながら、本発明の医薬組成物は1つの治療剤又は2つ以上の治療剤の組み合わせを含むことができ、これらの例は上で議論した。さらに、本明細書で議論したような、治療剤の、アナログ又は誘導体、医薬上許容可能な塩、双性イオン、溶媒和物、エステル、及び多形体は、本発明の医薬組成物における用途を有する。本明細書では、『アナログ』は別の化合物(その『親』化合物)の構造と類似する構造を有するものの特定の成分について当該別の化合物と異なる化合物である。アナログは、その親化合物と、別の原子、基、又は置換基により置換されている、1つ以上の、原子、官能基、又は置換基という点で、異なり得る。また、同様に、親化合物のアナログは親化合物の特定原子を当該特定原子の放射性同位体で置換することでも形成できる。『誘導体』は、1つの原子を別の原子又は原子団により置換することにより親化合物から生じると考えられる又は実際に合成される化合物である。
【0131】
本明細書では、『医薬上許容可能な塩』は、対イオンと組み合わさって中性錯体を形成しているイオン化治療剤を指す。
【0132】
『双性イオン』という用語は、その中に別個に正・負荷電基を有する分子又はイオンを指す。
【0133】
本明細書では、『多形』又は『多形性』は、ある固体材料が2つ以上の形態又は結晶として存在することができることである。結晶形は本明細書ではグラフィックデータにより特徴付けられるものとして参照されてもよい。こうしたデータとして、例えば、粉末X線回折及び固体NMRスペクトルが挙げられる。本分野で周知のように、グラフィックスデータは各固形をさらに規定する追加の技術的情報(いわゆる『フィンガープリント』)を潜在的に提供するが、これは数値又はピーク位置単独への参照によっては必ずしも記載できない。
【0134】
本発明の医薬組成物(例えば、硝子体インプラント及び粒子懸濁液)において、治療剤は生分解性ポリマーマトリックスと混合されて医薬組成物を形成する。医薬組成物で用いられる治療剤の量は、数種を挙げれば、生分解性ポリマーマトリックスの選択、治療剤の選択、実質的に直線的な放出の所望の速度、放出の所望の速度の期間、医薬組成物の構成、及び眼のPKなどの、いくつかの要素に依存する。
【0135】
例えば、本発明の医薬組成物(例えば、硝子体インプラント)の総治療剤含量は、全医薬組成物の凡そ約0.1から凡そ60.0重量%を占めてもよい。ある実施形態では、治療剤は、約1%から約90%まで、又は約1%から約80%まで、又は約1%から約70%まで、又は約1%から約60%まで、又は約1%から約50%まで、又は約1%から約40%まで、又は約1%から約30%まで、又は約1%から約20%まで、又は約1%から約10%まで、又は約10%から約50%まで、又は約10%から約40%まで、又は約10%から約30%まで、又は約10%から約25%まで、又は約10%から約23%まで、又は約10%から約20%まで、又は約15%から約35%まで、又は約15%から約30%まで、又は約15%から約25%までを占める。これらの百分率は重量百分率である。特定の実施形態では、デキサメタゾンが医薬組成物の凡そ20.0重量%を占める。
【0136】
本発明の医薬組成物はポリマーマトリックス及び治療剤を適切な溶媒中に溶かして均一溶液を作ることにより調製される。例えば、溶媒として、アセトン、アルコール(例えば、メチルアルコール又はエチルアルコール)、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、クロロホルム、及び酢酸エチルを用いてもよい。また、本技術分野で既知の別の溶媒も考えられる。その後、溶媒は蒸発するに任せられ、均一フィルムが残される。溶媒の蒸発前に溶液を無菌濾過できる。
【0137】
硝子体インプラントの製造
上で説明したように、本発明は硝子体インプラント又は粒子懸濁液として製剤化される本発明の医薬組成物に及ぶ。本発明のインプラント又は粒子懸濁液を製造するために様々な方法を用いてもよい。こうした方法としては、これらに限定されるわけでは決してないものの、溶液流延、相分離、界面法、型込、圧縮成形、射出成形、押出、共押出、熱押出、型抜き、加熱圧縮、及びこれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、インプラントは、好ましくはポリマーの型に、型込めされる。
【0138】
特定の実施形態では、本発明のインプラントはPRINT(登録商標)テクノロジー(Liquidia Technologies, Inc.)粒子製造により製造される。特に、インプラントは当該インプラントを作り上げることを意図する材料を型穴に型込めすることにより製造される。
【0139】
型はポリマー系の型にでき、また、型穴は任意の所望の形状及び寸法に形成できる。特徴的なことに、インプラント及び粒子が型の型穴内で形成される際に、インプラントは、形状、大きさ、及び組成に関して、高度に均一である。本医薬組成物の各インプラントの物理的及び組成的構成の間での一貫性により、本発明の医薬組成物は高度に均一な放出速度及び投与範囲をもたらす。さらに、本発明のインプラントを製造するための方法及び材料が、米国特許第9,545,737号、米国特許第9,214,590号、米国特許第9,205,594号、米国特許第8,992,992号、米国特許第8,662878号、米国特許第8,518,316号、米国特許第8,444,907号、米国特許第8,439,666号、米国特許第8,420,124号、米国特許第8,268,446号、米国特許第8,263,129号、米国特許第8,158,728号、米国特許第8,128,393号、及び米国特許第7,976,759号、米国特許出願公開第2013-0228950号、米国特許出願公開第2013-0011618号、米国特許出願公開第2013-0256354号、米国特許出願公開第2010-0003291号、米国特許出願公開第2009-0165320号、及び米国特許出願公開第2008-0299174号に記載及び開示される(これらの全体を参照により本明細書で援用する)。
【0140】
型穴は様々な形状及び大きさに形成できる。例えば、型穴は、角柱、四角柱、三角柱、角錐、四角錐、三角錐、円錐、円柱、トーラス、又はロッドの形状でもよい。型内の型穴は同じ形状でもよいし異なる形状でもよい。本発明のいくつかの態様では、インプラントの形状は、円柱、四角柱、又はロッドである。特定の実施形態では、インプラントはロッドである。ロッドは90°角のみを有するものでもよいし、長軸に沿って膨らんでいてもよいし、一端が他端よりも小さくなるように先細りになっていてもよい。
【0141】
型穴はナノメートルからマイクロメートルまでミリメートルまでの寸法及びより大きな寸法にできる。本発明のいくつかの実施形態については、型穴はマイクロメートル及びミリメートル範囲の寸法である。例えば、型穴は凡そ50ナノメートル及び凡そ750μmの間の最小寸法を有してもよい。ある態様では、最小型穴寸法は凡そ100μm及び凡そ300μmの間でもよい。別の態様では、最小型穴寸法は凡そ125μm及び凡そ250μmの間でもよい。また別の態様では、最小型穴寸法は凡そ10μm及び凡そ100μmの間でもよい。ある態様では、最小型穴寸法は、凡そ12.5μm及び凡そ50μmの間、例えば、25μm及び30μmの間でもよい。また、型穴は、凡そ750μm及び凡そ10000μmの間の最大寸法を有してもよい。別の態様では、最大型穴寸法は凡そ1000μm及び凡そ5000μmの間でもよい。別の態様では、最大型穴寸法は凡そ1000μm及び凡そ3500μmの間でもよい。また別の態様では、最大型穴寸法は凡そ25μm及び凡そ100μmの間でもよい。ある態様では、最小型穴寸法は、凡そ25μm及び凡そ50μmの間、例えば、25μm及び30μmの間でもよい。
【0142】
一実施形態では、本発明の粒子懸濁液の粒子を製造するために約12.5μm×約12.5μm×約25μm(W×H×L)の寸法の型穴が利用される。
【0143】
一実施形態では、本発明の粒子懸濁液の粒子を製造するために約25μm×約25μm×約25μm(W×H×L)の寸法の型穴が利用される。
【0144】
一実施形態では、本発明の粒子懸濁液の粒子を製造するために約25μm×約25μm×約50μm(W×H×L)の寸法の型穴が利用される。
【0145】
一実施形態では、本発明の粒子懸濁液の粒子を製造するために約50μm×約50μm×約30μm(W×H×L)の寸法の型穴が利用される。
【0146】
一実施形態では、本発明の粒子懸濁液の粒子を製造するために約50μm×約50μm×約50μm(W×H×L)の寸法の型穴が利用される。
【0147】
一実施形態では、本発明の硝子体インプラントを製造するために約140μm×約140μm×約1325μm(W×H×L)の寸法のロッド形状を概して有する型穴が利用される。
【0148】
さらなる実施形態では、本発明の硝子体インプラントを製造するために約225μm×約225μm×約2965μm(W×H×L)の寸法のロッド形状を有する型穴が利用される。
【0149】
別の実施形態では、本発明の硝子体インプラントを製造するために約395μm×約311μm×約6045μm(W×H×L)の寸法のロッド形状を概して有する型穴が利用される。
【0150】
一実施形態では、本発明の硝子体インプラントを製造するために約100μm×約100μm×約1500μm(W×H×L)の寸法のロッド形状を概して有する型穴が利用される。
【0151】
さらなる実施形態では、本発明の硝子体インプラントを製造するために約150μm×約150μm×約3150μm(W×H×L)の寸法のロッド形状を有する型穴が利用される。
【0152】
別の実施形態では、本発明の硝子体インプラントを製造するために約180μm×約180μm×約3000μm(W×H×L)の寸法のロッド形状を概して有する型穴が利用される。
【0153】
一実施形態では、本発明の硝子体インプラントを製造するために約200μm×約200μm×約2000μm(W×H×L)の寸法のロッド形状を概して有する型穴が利用される。
【0154】
さらなる実施形態では、本発明の硝子体インプラントを製造するために約200μm×約200μm×約1000μm(W×H×L)の寸法のロッド形状を有する型穴が利用される。
【0155】
別の実施形態では、本発明の硝子体インプラントを製造するために約225μm×約225μm×約2700μm(W×H×L)の寸法のロッド形状を概して有する型穴が利用される。
【0156】
別の実施形態では、本発明の硝子体インプラントを製造するために約250μm×約250μm×約1500μm(W×H×L)の寸法のロッド形状を概して有する型穴が利用される。
【0157】
別の実施形態では、本発明の硝子体インプラントを製造するために約200μm×約200μm×約4500μm(W×H×L)の寸法のロッド形状を概して有する型穴が利用される。
【0158】
別の実施形態では、本発明の硝子体インプラントを製造するために約265μm×約265μm×約4500μm(W×H×L)の寸法のロッド形状を概して有する型穴が利用される。
【0159】
別の実施形態では、本発明の硝子体インプラントを製造するために約255μm×約255μm×約4500μm(W×H×L)の寸法のロッド形状を概して有する型穴が利用される。
【0160】
製造された時点で、インプラント及び粒子は、保管用アレイ上に残されてもよいし、保管及び/又は利用のために即座に採取されてもよい。本明細書に記載のインプラント及び粒子は、無菌工程を用いて製造されてもよいし、製造後に殺菌されてもよい。そして、本発明では製造されたインプラント及び粒子がそこに付いている保管アレイを含むキットも考えられる。こうした保管アレイ/インプラントキットは製造されたインプラントの大量輸送及び大量流通の便法を提供する。
【0161】
別の実施形態では、インプラント及び粒子は付加製造技術を適用して製造できる。PRINT(登録商標)処理で用いられるマスターテンプレートを作る若しくはPRINT(登録商標)処理で用いられる型を作るために、又は、インプラントを直接的に製造するために、米国特許第9,120,270号に記載などの付加製造法を利用できる。
【0162】
特定の実施形態では、インプラント及び粒子は、(i)ポリマー及び治療剤を溶媒(例えば、アセトン)に溶かし、(ii)この溶液を流延して薄いフィルムにし、(iii)このフィルムを乾燥させ、(iv)この薄いフィルムをそれ自身の上に折り畳み、(v)基材を形成するために基材上の折り畳んだ薄いフィルムを加熱し、(vi)この基材上の薄いフィルムを型穴を有する型上に置き、(vii)薄いフィルムが型穴に入るように、型-薄いフィルム-基材の組み合わせに、圧力を掛け、ある実施形態では、熱も掛け、(viii)冷却し、(ix)型穴の大きさと形状を実質的に模倣したインプラントを提供するために型から基材を取り除く、という工程を介して、製造される。
【0163】
送達装置
複数の実施形態では、眼の疾患又は障害の治療のために本発明の硝子体インプラント又は粒子懸濁液を片目又は両目に挿入するために送達装置を用いてもよい。適した装置としては、国際公開第2018/045386号に開示のものなどの、針又は針状アプリケーターを挙げることができ、この文献の全体を参照により本明細書で援用する。ある実施形態では、インプラントの最小寸法は凡そ50μmから凡そ750μmまでの範囲であってもよく、そのため、凡そ15ゲージから凡そ30ゲージの範囲の針又は針状アプリケーターを利用してもよい。いくつかの実施形態では、ニードゲージは、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29、又は約30である。一実施形態では、本装置は265μmの最小寸法のインプラントのために25ゲージの針を用いる。別の実施形態では、本装置は395μmの最小寸法のインプラントのために21又は22ゲージの針を用いる。また別の実施形態では、本装置は200μmの最小寸法のインプラントのために又は粒子懸濁液のために27ゲージの針を用いる。送達インプラントは、適切な大きさの針を持つシリンジであってもよいし、針状アプリケーターを持つシリンジ状インプラントでもよい。一実施形態では、本装置は300±10マイクロメートルの内径を有する27ゲージのウルトラシンウォール針を用いる。
【0164】
送達経路としては、とりわけ、穿刺、硝子体内、結膜下、水晶体、強膜内、円蓋、前部テノン嚢下、脈絡膜上、後部テノン嚢下、網膜下、前眼房、及び後眼房が挙げられる。
【0165】
複数の実施形態では、緑内障及び/又は眼内圧亢進を治療するために1つ又は複数のインプラントが患者の目の前眼房に送達される。
【0166】
ある実施形態では、ぶどう膜炎を治療するために1つ又は複数のインプラントが患者の目の前眼房に送達される。
【0167】
キット
使用のためのキットとして硝子体インプラント及び送達装置が組み合わされて提供されてもよい。インプラントは、送達装置とは別個に包装され、使用直前に送達装置内に充填されてもよい。この代わりに、インプラントは、包装前に送達インプラント内に充填されてもよい。この場合、キットが開かれた時点で、送達インプラントは使用できる状態である。構成要素は、個別に殺菌されてキットとして組み合わされてもよいし、キットとして組み合わされた後に殺菌されてもよい。さらに、上述のように、キットはインプラントがその上に結合されているアレイを含んでもよい。
【0168】
眼の疾患又は障害の治療のための本発明の硝子体インプラントの使用
本発明の一態様では、眼の疾患又は障害に罹患する患者の目に本発明の硝子体インプラントを置くこと、当該インプラントを分解させること、少なくとも約3ヶ月の期間にわたり実質的に直線的に治療剤を放出させることを含む、眼の疾患又は障害の治療法が提供される。患者は、ヒト、又は、動物、例えば、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ(又は任意の農産家畜)であり得る。
【0169】
治療過程
治療過程にわたり、本発明の医薬組成物の生分解性ポリマーマトリックスは分解して少なくとも約3ヶ月にわたり実質的に直線的に治療剤を放出する。治療剤が完全に放出された時点で、ポリマーマトリックスは崩壊している。ポリマーマトリックスの完全な分解は当該ポリマーマトリックスからの治療剤の完全な放出よりも時間が掛かってもよい。ポリマーマトリックス分解は治療剤の放出と同じ速度で生じてもよい。
【0170】
任意で、医薬組成物は反復的に投与される。この投与レジメンは、本発明の医薬組成物の2回目の投与が1回目の投与のその治療剤の放出の後に行われることをもたらす。この投与レジメンは、3、4、5、6、7、8、9、10、又はより多くの回数、反復できる。一実施形態では、本発明の硝子体インプラントは再投与が行われる前に完全に分解されるべきである。
【0171】
本発明は、本発明の例示として示した以下の非限定的な例を参照することでより良く理解され得る。以下の例は本発明の特定の実施形態をより十全に例示するために示されたものである。そして、それらは本発明の広い権利範囲を制限するものと決して考えられるべきではない。
【0172】
(実施例)
(実施例1:インプラント製造)
一連のポリマーマトリックス/治療剤ブレンドをインプラントの製造の前に調製した。溶液混合を用いてインプラント体全体に均一に分散された治療剤を製造した。調製されたブレンドのそれぞれが、異なる比率で、PEA(ポリマー1)と、ポリマー2(PLAポリマー、PLGAポリマー、又はPLA及びPLGAポリマーの組み合わせを含む)とを含有していた。医薬組成物を製造するために用いられたPLAポリマーは、RESOMER(登録商標) R203S PLAポリマー(Evonik Industriesから入手可能)であった。この実施例について本発明の医薬組成物を製造するために用いられたPLGAポリマーは、RESOMER(登録商標) RG653H PLGAポリマー(やはり、Evonik Industriesから入手可能)であった。医薬組成物で用いられたPEAは化学構造式IIIを有していた。
【0173】
医薬組成物を製造する際に、ポリマーを特定の比率で一緒に混ぜ合わせ、その後、クロロホルムを直に加え、ポリマーが溶解するに任せた。その後、ポリマー/クロロホルム溶液を微粒子化デキサメタゾンに直に加えた。その後、60℃のホットプレート上に置いたポリエチレンテレフタラート(PET)上でクロロホルムを蒸発させた。クロロホルムの除去後、均一材料の薄いフィルムが残った。
【0174】
(実施例2:型の製造)
265×265×4500μmの寸法のロッド形状の所望寸法のテンプレート化された型をPRINT(登録商標)処理を用いて製造した。製造された異なる本発明の医薬組成物を表1の第2欄に示す。本発明の特定の硝子体インプラントについて第2欄にポリマーが記載されていない場合、当該特定の硝子体インプラントで用いられる医薬組成物の製造で当該ポリマーが用いられなかったことを意味する。
【0175】
(実施例3:デキサメタゾンインプラントの製造)
実施例1のポリマーマトリックス/治療剤ブレンド及び実施例2の型を用いて一連のインプラントを製造した。ポリマーマトリックス/治療剤ブレンドをPETシート上に広げ加熱した。一旦加熱すると、溶媒は完全に乾燥した。所望寸法を持つ型で当該ブレンドを覆った。ローラーを用いて軽い圧力を掛けて型の成形面全体にブレンドを広げた。その後、下記の表のパラメーターを用いて型/ブレンドのラミネートを市販の熱ラミネーターに通過させた。ブレンドは、型穴に流れ込み、型穴の形状を取った。ブレンドを室温で冷めるに任せ、型穴内に個々のインプラントとした。その後、型を取り除くと、フィルム上に配置されたインプラントの二次元アレイが残った。鉗子を用いて個々のインプラントをPETフィルムから取り除いた。
【0176】
表1:ブレンド及び型設計
【表1】
【0177】
(実施例4:デキサメタゾン含量の分析)
上述のように製造されたインプラントを、アセトニトリル、メタノール、及び水に溶かした。各インプラントのデキサメタゾン含量を、Phenomenex Luna(登録商標)の、Phenyl-Hexyl HPLC、粒子径3μm、4.6×100mmの分析カラムを用いて、RP-HPLCにより測定した。移動相は、1.0mL/分で4分にわたる0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)精製水溶液とアセトニトリルとの勾配からなるものであった。デキサメタゾンのUV吸光度を245nmで測定した。表2は各インプラントで測定したデキサメタゾン含量を示す。
【0178】
表2:デキサメタゾン含量
【表2】
【0179】
(実施例5:選択インプラントのインビトロ放出分析)
上記の単一インプラントを、4mLのガラス製ネジ蓋バイアルに入れ、3mLの1×PBS中37°でインキュベートした。注目する各時点で、分析のためにメディアを取り除いた。その後、当該メディアを3mLの新鮮なメディアで置き換えた。HPLC法により放出されたデキサメタゾンについて取り除いたメディアを分析した。図1は、評価したインプラント毎に測定したデキサメタゾンのインビトロ放出を示す。図2は、インプラントサンプル7から放出されたデキサメタゾンの累積%を示す。そのグラフは0日目から凡そ90日目までにグラフの傾きが実質的に一定であることを示す。そのため、これらのデータは、本発明の医薬組成物(例えば、硝子体インプラント)が少なくとも3ヶ月にわたり実質的に直線的に治療剤を放出することを示す。
【0180】
サンプル7は、(a)約59重量%のポリマーマトリックスであって、(i)約60重量%の化学構造式(III)を有する生分解性ポリエステルアミドホモポリマー、(ii)約20重量%の生分解性ポリ(D,L-ラクチド)ホモポリマー、及び(iii)約20重量%の生分解性ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)コポリマーを含み、(i)、(ii)、及び(iii)が一緒に混合されて当該ポリマーマトリックスを形成する、ポリマーマトリックスと、(b)ポリマーマトリックス内に均一に分散されている約41重量%のデキサメタゾンとを含む、本発明の医薬組成物から作られる本発明の硝子体インプラントである。
【0181】
図3は、本発明の硝子体インプラントのサンプル7からのデキサメタゾンの平均1日放出速度のグラフである。図3では、0日目から凡そ90日目までのデキサメタゾンの1日放出量は実質的に一定であり、このことも本発明の医薬組成物(例えば、硝子体インプラント)が少なくとも3ヶ月にわたり実質的に直線的に治療剤を放出することを示す。
【0182】
PEAのみのポリマーマトリックスは極めて遅く非直線的な放出プロファイルを示す。PLGA/PLAのみのポリマーマトリックスは最初の立ち上がりの後に非直線的な放出プロファイルを示す。
【0183】
驚くべきことに、組み合わせPEA/PLGAマトリックスから溶出するデキサメタゾンが(例えば、初期投与から90日までにわたり)高い1日放出量及び実質的に直線的な放出プロファイルを示すことが観察された。
【0184】
本発明は、本明細書に記載の特定の実施形態により、権利範囲を制限されるものではない。上述の記載及び関連する図面から本明細書に記載のものに加えて本発明の様々な修正例が当業者に明らかである。こうした修正例は特許請求の範囲に含まれることを意図される。
【0185】
(実施例6:化合物及び組成物の保管と安定性)
本明細書でもたらされる化合物又は組成物は、周囲温度又は高温での保管のための容器内で調製及び配置される。化合物又は組成物がポリオレフィンプラスチック容器内に保管される場合、液体組成物(例えば、水溶液又は有機液体)に溶解又は懸濁されようとも、又は、固体としてでも、ポリ塩化ビニルプラスチック容器と比べて化合物又は組成物の退色が減じる。理論に拘束されることを望むわけではないが、当該容器は、可視光(例えば、約380~780nmの波長を有するもの)であろうと紫外(UV)光(例えば、約190~320nm(UV-B光)又は約320~380nm(UV-A光))であろうと、電磁放射線への容器の内容物の曝露を減らす。また、ある容器は、赤外光への容器の内容物の暴露を減らす能力を有する、又は、こうした能力を備えた第2成分を含む。用いられる容器としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメチルペンテン、ポリブテン、又はこれらの組み合わせ、特に、ポリエチレン、ポリプロピレン、又はこれらの組み合わせなどの、ポリオレフィンから作られたものが挙げられる。さらに、UV光、可視光、又は赤外光への容器の内容物の暴露をさらに減じるために、容器は、第2の容器内に、例えば、紙、カードボード(cardboard)、ペーパーボード(paperboard)、金属フィルム、若しくは箔、又はこれらの組み合わせの、容器内に配置されてもよい。保管中の退色、腐敗、又はその両方の減少から利益を受ける化合物及び組成物は、本明細書でもたらされるその化合物又は組成物を含む点眼液又はインプラントを含む。点眼液又はインプラントは、3ヶ月までの又はそれを超える期間、ある場合は、1年までの又はそれを超える期間の、貯蔵を必要としてもよい。本明細書に記載の容器は点眼又はインプラントの容器であってもよい。容器は、内容物を収容するのに適した任意の形態でよく、例えば、袋、ボトル、又は箱でもよい。
【0186】
他の適した容器及び包装が、例えば、国際公開第2018/159700号、国際公開第2018/159701号、及び国際公開第2018/159702号、並びに日本国特許6236167号に記載されており、その内容を参照により本明細書で援用する。
【0187】
記載の容器内に配置された組成物は、ホウ酸、D-マンニトール、塩化ベンザルコニウム、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリエチレングリコール400、エチレンジアミン四酢酸、又はこれらの組み合わせと、水又は他の適切な溶媒媒体又は添加剤とを含んでもよい。ある場合、媒体は水性媒体である。別の場合、媒体は非水性媒体である。
【0188】
(実施例7:ポリマーマトリックス/治療剤混合)
一連のポリマーマトリックス/治療剤ブレンドをインプラントの製造の前に調製した。高温溶融混合を用いてインプラント体全体に均一に分散された治療剤を製造した。ポリマー及び小分子JKA阻害剤を凍結粉砕し微粉末を作った。この粉末を130℃のホットプレートを用いて高温溶融混合して均一ペーストを得た。
【0189】
(実施例8:型の製造)
200×200×4500μmの寸法のロッド形状の寸法を有するテンプレート化された型をPRINT(登録商標)処理を用いて製造した。JAK阻害剤である(1R,2R)-N-(4-メチルイソキノリン-6-イル)-2-(4-(N-(ピリジン-2-イル)スルファモイル)フェニル)シクロプロパン-1-カルボキサミドでインプラントを製造した。
【0190】
(実施例9:インプラントの製造)
実施例7のポリマーマトリックス及びJAK阻害剤ブレンドと実施例8の型とを用いて一連のインプラントを製造した(表3参照)。ポリマーマトリックス/治療剤ブレンドをPETシート上に広げ加熱した。一旦加熱すると、所望寸法を持つ型で当該ブレンドを覆った。ローラーを用いて軽い圧力を掛けて型の成形面全体にブレンドを広げた。その後、下記の表4のパラメーターを用いて型/ブレンドのラミネートを市販の熱ラミネーターに通過させた。ブレンドは、型穴に流れ込み、型穴の形状を取った。ブレンドを室温で冷めるに任せ、型穴内に個々のインプラントとした。その後、型を取り除くと、フィルム上に配置されたインプラントの二次元アレイが残った。鉗子を用いて個々のインプラントをPETフィルムから取り除いた。
【0191】
表3:ブレンド組成及び型設計
【表3】
【0192】
表4:処理パラメーター
【表4】
【0193】
インプラント内容物を分析するために、まず、インプラントを1mLのDMSOに溶かした。溶かした時点で、3mLのメタノールを各サンプルに加えて混ぜた。小分子JAK阻害剤含量を、Waters Atlantis T3、粒子径3μm、4.6×75mmの分析カラムを用いて、RP-HPLCにより測定した。移動相は、1.0mL/分で5分にわたる0.1%TFA精製水溶液とアセトニトリルとの勾配からなるものであった。治療剤のUV吸光度を262nmで測定した。
【0194】
インプラント製剤のインビトロ放出を分析した。単一インプラントを、4mLのガラス製ネジ蓋バイアルに入れ、0.5%のTween20を含む3mLの1×PBS中37°でインキュベートした。注目する各時点で、分析のためにメディアを取り除いた。その後、当該メディアを3mLの新鮮なメディアで置き換えた。HPLC法により、放出された治療剤(すなわち、(1R,2R)-N-(4-メチルイソキノリン-6-イル)-2-(4-(N-(ピリジン-2-イル)スルファモイル)フェニル)シクロプロパン-1-カルボキサミド)について取り除いたメディアを分析した。図4及び図5から見て取ることができるように、インプラントから放出された治療剤の少なくとも最初の80%は0.9以上のR値を有していた。
【0195】
[付記]
[付記1]
眼の疾患又は障害を治療するための医薬組成物であって、
(a)第1ポリマー及び第2ポリマーの混合物を含む生分解性ポリマーマトリックスであって、
(1)前記第1ポリマーは生分解性ポリエステルアミドポリマーであり、
(2)前記第2ポリマーは、生分解性ポリ(D,L-ラクチド)ポリマー、生分解性ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)ポリマー、又はこれらの組み合わせである、
生分解性ポリマーマトリックスと、
(b)前記ポリマーマトリックス内に均一に分散されている、少なくとも1つの治療剤、又は、その、アナログ、誘導体、医薬上許容可能な塩、双性イオン、多形体、若しくは溶媒和物と、
を含み、
前記医薬組成物は対象の眼への硝子体内投与のために製剤化されており、
前記医薬組成物は前記少なくとも1つの治療剤を約1ヶ月から約6ヶ月にわたり実質的に直線的に前記医薬組成物から放出するように製剤化されている、
医薬組成物。
【0196】
[付記2]
前記少なくとも1つの治療剤はキナーゼの活性を阻害する、付記1に記載の医薬組成物。
【0197】
[付記3]
前記キナーゼは、Rhoキナーゼ、ヤヌスキナーゼ(JAK)、血管内皮増殖因子受容体(VEGF-R)キナーゼ、又は受容体型チロシンキナーゼを含む、付記2に記載の医薬組成物。
【0198】
[付記4]
前記キナーゼはRhoキナーゼであり、且つ、
前記少なくとも1つの治療剤は、
ネタルスジル若しくはその医薬上許容可能な塩、
リパスジル若しくはその医薬上許容可能な塩、又は、
これらの組み合わせ、
を含む、
付記3に記載の医薬組成物。
【0199】
[付記5]
前記キナーゼはJAK阻害剤であり、且つ、
前記少なくとも1つの治療剤は、
ルキソリチニブ、
トファシチニブ、
オクラシチニブ、
バリシチニブ、又は、
これらの組み合わせ、
を含む、
付記3に記載の医薬組成物。
【0200】
[付記6]
前記キナーゼは受容体型チロシンキナーゼであり、且つ、
前記少なくとも1つの治療剤は、
ゲフィチニブ、
ラパチニブ、
エルロチニブ、
スニチニブ、
ソラフェニブ、
レゴラフェニブ、
アファチニブ、
バンデタニブ、
セマキサニブ、
セジラニブ、
ネラチニブ、
アキシチニブ、
レスタウルチニブ、
チボザニブ、又は、
これらの組み合わせ、
を含む、
付記3に記載の医薬組成物。
【0201】
[付記7]
前記少なくとも1つの治療剤は、
プロスタグランジン、
コルチコステロイド、又は、
これらの組み合わせ、
である、
付記1に記載の医薬組成物。
【0202】
[付記8]
前記コルチコステロイドは、デキサメタゾン、ブデソニド、ベクロメタゾン、ベクロメタゾン(例えば、モノ又はジプロピオン酸エステルとして)、フルニソリド、フルチカゾン(例えば、プロピオン酸又はフロ酸エステルとして)、シクレソニド、モメタゾン(例えば、フロ酸エステルとして)、モメタゾンデソニド、ロフレポニド、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、ナフロコルト、デフラザコート、酢酸ハロプレドン、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、クロコルトロン、チプレダン、プレドニカルベート、ジプロピオン酸アルクロメタゾン、ハロメタゾン、リメキソロン、プロピオン酸デプロドン、トリアムシノロン、ベタメタゾン、フルドロコルチゾン、デスオキシコルチコステロン、ロフレポニド、エチプレドノールジクロアセテート、又は、これらの組み合わせである、付記7に記載の医薬組成物。
【0203】
[付記9]
前記少なくとも1つの治療剤は、
ラタノプロスト、ビマトプロスト、トラボプロスト、タフルプロスト、3-ヒドロキシ-2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピル7-((1r,2r,3r,5s)-2-((r)-3-(ベンゾ[b]チオフェン-2-イル)-3-ヒドロキシプロピル)-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル)ヘプタノエート(化学構造(II))、クロプロステノールイソプロピルエステル、13,14-ジヒドロクロプロステノールイソプロピルエステル、ラタノプロステンブノド、ウノプロストン、PGF1αイソプロピルエステル、PGF2αイソプロピルエステル、PGF3αイソプロピルエステル、フルプロステノール、若しくは、これらの組み合わせ、
コルチコステロイド、又は、
これらの組み合わせ、
である、
付記1に記載の医薬組成物。
【0204】
[付記10]
前記少なくとも1つの治療剤は、
ラタノプロスト、
コルチコステロイド、
又は、これらの組み合わせ、
である、
付記1に記載の医薬組成物。
【0205】
[付記11]
コルチコステロイドはデキサメタゾンである、
付記8に記載の医薬組成物。
【0206】
[付記12]
前記少なくとも1つの治療剤はネタルスジル又はその医薬上許容可能な塩である、
付記4に記載の医薬組成物。
【0207】
[付記13]
前記ポリマーマトリックスは、
60重量%の生分解性ポリエステルアミドポリマー、
20重量%の生分解性ポリ(D,L-ラクチド)ポリマー、及び、
20重量%の生分解性ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)ポリマー、
を含む、
付記1から12のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【0208】
[付記14]
前記ポリマーマトリックスは前記第1ポリマー及び前記第2ポリマーの機械的ブレンドである、
付記1から13のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【0209】
[付記15]
約51重量%のポリマーマトリックス、及び、
約49重量%の少なくとも1つの治療剤、
を含む、
付記1から14のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【0210】
[付記16]
前記生分解性(D,L-ラクチド)ポリマーは酸末端封鎖生分解性ポリ(D,L-ラクチド)ホモポリマー又はエステル末端封鎖ポリ(D,L-ラクチド)ホモポリマーである、
付記1から15のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【0211】
[付記17]
前記ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)ポリマーはエステル末端封鎖生分解性ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)コポリマー又は酸封鎖生分解性ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)コポリマーである、
付記1から16のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【0212】
[付記18]
前記生分解性ポリエステルアミドホモポリマーは以下の構造(I)を有する、
付記1から17のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【化16】
(I)
(ただし、m+pは0.9から0.1の範囲にあり、a+bは0.1から0.9の範囲にあり、
m+p+a+b=1であり(ただし、m又はpの一方はゼロでもよく)、
nは5から300の範囲にあり、aは少なくとも0.01であり、bは少なくとも0.015であり、bに対するaの比(a:b)は0.1:9から0.85:0.15であり、m単位及び/又はp単位並びにa及びb単位はランダムに分布しており、
は独立して(C-C20)アルキルから選択され、
単一骨格単位であるm又はpでのR及びRは、それぞれ、独立して、水素、(C-C)アルキル、(C-C)アルケニル、(C-C)アルキニル、(C-C10)アリール、(C-C アルキル、-(CH)SH、-(CHS(CH)、(CH-CH-CH-、-CH(CH、-CH(CH)-CH-CH、-CH-C、-(CH-NH、及びこれらの混合物から選択され、
は、独立して、(C-C20)アルキル、(C-C20)アルケニレンから選択され、
は以下の構造式(II)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片であり、
【化17】
は、独立して、(C-C10)アリール、(C-C)アルキル、又は保護基からなる群より選択され、かつ、
は-(CH-である。)
【0213】
[付記19]
前記生分解性ポリエステルアミドホモポリマーは以下の構造(II)を有する、
付記1から18のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【化18】
(II)
【0214】
[付記20]
前記医薬組成物は、約59重量%のポリマーマトリックス及び約41重量%の少なくとも1つの治療剤を含む、
付記1から19のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【0215】
[付記21]
前記医薬組成物は、
(a)約59重量%のポリマーマトリックスであって、
(i)前記ポリマーマトリックスの約60重量%が生分解性ポリエステルアミドホモポリマーであり、
(ii)前記ポリマーマトリックスの約20重量%が生分解性ポリ(D,L-ラクチド)ホモポリマーであり、かつ、
(iii)前記ポリマーマトリックスの約20重量%が生分解性ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)コポリマーである、
ポリマーマトリックスと、
(b)約41重量%の少なくとも1つの治療剤であって、
前記少なくとも1つの治療剤がデキサメタゾンである、
少なくとも1つの治療剤と、
を含み、
前記医薬組成物は対象の眼への硝子体内投与のために製剤化されており、かつ、
約3ヶ月にわたり1日あたり含有されている前記少なくとも1つの治療剤の合計の約1%が放出されるように前記医薬組成物は前記少なくとも1つの治療剤を実質的に直線的に放出するように製剤化されている、
付記20に記載の医薬組成物。
【0216】
[付記22]
医薬組成物であって、
(a)約59重量%のポリマーマトリックスであって、
(i)以下の構造(I)を有する約60重量%の生分解性ポリエステルアミドホモポリマー、
【化19】
(I)
(ただし、m+pは0.9から0.1の範囲にあり、a+bは0.1から0.9の範囲にあり、
m+p+a+b=1であり(ただし、m又はpの一方はゼロでもよく)、
nは5から300の範囲にあり、aは少なくとも0.01であり、bは少なくとも0.015であり、bに対するaの比(a:b)は0.1:9から0.85:0.15であり、m単位及び/又はp単位並びにa及びb単位はランダムに分布しており、
は独立して(C-C20)アルキルから選択され、
単一骨格単位であるm又はpでのR及びRは、それぞれ、独立して、水素、(C-C)アルキル、(C-C)アルケニル、(C-C)アルキニル、(C-C10)アリール、(C-C アルキル、-(CH)SH、-(CHS(CH)、(CH-CH-CH-、-CH(CH、-CH(CH)-CH-CH、-CH-C、-(CH-NH、及びこれらの混合物から選択され、
は、独立して、(C-C20)アルキル、(C-C20)アルケニレンから選択され、
は以下の構造式(II)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片であり、
【化20】
は、独立して、(C-C10)アリール、(C-C)アルキル、又は保護基からなる群より選択され、かつ、
は-(CH-である。)
(ii)約20重量%の生分解性ポリ(D,L-ラクチド)ホモポリマー、及び、
(iii)約20重量%の生分解性ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)コポリマー、
を含み、
前記ポリマーマトリックスを形成するために(i)、(ii)、及び(iii)が一緒にブレンドされている、
ポリマーマトリックスと、
(b)前記ポリマーマトリックス内に均一に分散されている約41重量%のデキサメタゾンと、
を含み、
前記医薬組成物は対象の眼への硝子体内投与のために製剤化されており、かつ、
約3ヶ月にわたり1日あたり前記医薬組成物に含有されている前記デキサメタゾンの合計の約1%が前記医薬組成物から放出されるように前記医薬組成物は前記デキサメタゾンを実質的に直線的に放出するように製剤化されている、
医薬組成物。
【0217】
[付記23]
前記生分解性ポリエステルアミドホモポリマーは以下の構造(III)を有する、
付記22に記載の医薬組成物。
【化21】
(III)
【0218】
[付記24]
付記1から23のいずれか一つに記載の医薬組成物を含む、硝子体インプラント。
【0219】
[付記25]
付記1から24のいずれか一つに記載の医薬組成物を含む、眼の疾患又は障害を治療するための硝子体インプラント。
【0220】
[付記26]
眼の炎症性の前記疾患又は障害は、ぶどう膜炎、角膜潰瘍、眼内炎、角膜又は眼表面の自己免疫疾患、HIV疾患の眼症状、又はこれらの組み合わせを含む、
付記1から23のいずれか一つに記載の医薬組成物、又は、付記24又は25に記載の硝子体インプラント。
【0221】
[付記27]
眼の炎症性の前記疾患又は障害は、糖尿病性眼疾患、湿性加齢黄斑変性症、乾性加齢黄斑変性症、炎症、ドライアイ、又はこれらの組み合わせを含む、
付記1から23のいずれか一つに記載の医薬組成物、又は、付記24又は25に記載の硝子体インプラント。
【0222】
[付記28]
眼の前記疾患又は障害は、緑内障、神経変性疾患又は障害、高眼圧、眼炎症性疾患又は障害、又はこれらの組み合わせを含む、
付記1から23のいずれか一つに記載の医薬組成物、又は、付記24又は25に記載の硝子体インプラント。
【0223】
[付記29]
前記神経変性疾患又は障害は、糖尿病性眼疾患、湿性加齢黄斑変性症、乾性加齢黄斑変性症、炎症、ドライアイ、又はこれらの組み合わせを含む、
付記28に記載の医薬組成物。
【0224】
[付記30]
治療を必要とする対象において眼の疾患又は障害を治療するための方法であって、治療有効量の付記1から23のいずれか一つに記載の医薬組成物又は付記24又は25に記載の硝子体インプラントを、前記対象に投与することを含む、方法。
【0225】
[付記31]
前記対象はヒトである、
付記30に記載の方法。
【0226】
[付記32]
前記対象への前記投与は前記対象の眼の硝子体液への投与を含む、
付記30又は31に記載の方法。
【0227】
[付記33]
眼の炎症性の前記疾患又は障害は、ぶどう膜炎、角膜潰瘍、眼内炎、角膜又は眼表面の自己免疫疾患、HIV疾患の眼症状、又はこれらの組み合わせを含む、
付記30から32のいずれか一つに記載の方法。
【0228】
[付記34]
眼の炎症性の前記疾患又は障害は、糖尿病性眼疾患、湿性加齢黄斑変性症、乾性加齢黄斑変性症、炎症、ドライアイ、又はこれらの組み合わせを含む、
付記30から32のいずれか一つに記載の方法。
【0229】
[付記35]
眼の前記疾患又は障害は、緑内障、神経変性疾患又は障害、高眼圧、眼炎症性疾患又は障害、又はこれらの組み合わせを含む、
付記30から32のいずれか一つに記載の方法。
【0230】
[付記36]
前記神経変性疾患又は障害は、糖尿病性眼疾患、湿性加齢黄斑変性症、乾性加齢黄斑変性症、炎症、ドライアイ、又はこれらの組み合わせを含む、
付記35に記載の方法。
【0231】
[付記37]
治療を必要とする対象においてデポから治療剤を溶出させる方法であって、付記1から23のいずれか一つに記載の医薬組成物又は付記24又は25に記載の硝子体インプラントを含むデポを前記対象に一回投与することを含み、デポ投与後の約1週から約3ヶ月にわたり1日あたり初期デポ内の前記治療剤の約1%の割合で前記デポからある量の前記治療剤が溶出する、方法。
【0232】
[付記38]
治療を必要とする対象においてデポから治療剤を溶出させる方法であって、付記1から23のいずれか一つに記載の医薬組成物又は付記24又は25に記載の硝子体インプラントを含むデポを前記対象に一回投与することを含み、デポ投与後の7日目から90日目頃に、1日毎に、前記デポから、約10から約500ngの、約500から約1500ngの、又は約1000から約2000ngの量の前記治療剤が溶出する、方法。
【0233】
[付記39]
治療を必要とする対象に治療剤を投与する方法であって、付記1から23のいずれか一つに記載の医薬組成物を含むデポを前記対象に一回投与することを含み、デポ投与後の約1週から約3ヶ月にわたり1日あたり初期デポ内の前記治療剤の約1%の割合で前記デポからある量の前記治療剤が溶出する、方法。
【0234】
[付記40]
治療を必要とする対象に治療剤を投与する方法であって、付記24又は25に記載の硝子体インプラントを含むデポを前記対象に一回投与することを含み、デポ投与後の約1週から約3ヶ月にわたり1日あたり初期デポ内の前記治療剤の約1%の割合で前記デポからある量の前記治療剤が溶出する、方法。
【0235】
[付記41]
治療を必要とする対象に治療剤を投与する方法であって、付記1から23のいずれか一つに記載の医薬組成物を含むデポを前記対象に一回投与することを含み、デポ投与後の7日目から90日目頃に、1日毎に、前記デポから、約10から約500ngの、約500から約1500ngの、又は約1000から約2000ngの量の前記治療剤が溶出する、方法。
【0236】
[付記42]
治療を必要とする対象に治療剤を投与する方法であって、付記24又は25に記載の硝子体インプラントを含むデポを前記対象に一回投与することを含み、デポ投与後の7日目から90日目頃に、1日毎に、前記デポから、約10から約500ngの、約500から約1500ngの、又は約1000から約2000ngの量の前記治療剤が溶出する、方法。
【0237】
[付記43]
デポ投与後の7日目から90日目頃に1日毎に前記デポから約750から約1250ngの量の前記治療剤が溶出する、
付記38、41、又は42に記載の方法。
【0238】
[付記44]
デポ投与後の7日目から90日目頃に1日毎に前記デポから約1000ngの前記治療剤が溶出する、
付記38、41、又は42に記載の方法。
【0239】
[付記45]
デポ投与後の約1週から約2ヶ月にわたり1日あたり初期デポ内の前記治療剤の約1%の割合で前記デポから前記ある量の前記治療剤が溶出する、
付記37、39、又は40に記載の方法。
【0240】
[付記46]
デポ投与後の7日目から60日目頃に1日毎に前記デポから前記量の前記治療剤が溶出する、
付記38、41、42、43、又は44に記載の方法。
【0241】
[付記47]
前記投与は前記対象の眼への注射による、
付記37から44のいずれか一つに記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5