(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025004163
(43)【公開日】2025-01-14
(54)【発明の名称】神経系構造を選択的かつ可逆的に調節して疼痛を抑制する装置及び方法
(51)【国際特許分類】
A61N 1/36 20060101AFI20250106BHJP
A61N 1/05 20060101ALI20250106BHJP
【FI】
A61N1/36
A61N1/05
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024176430
(22)【出願日】2024-10-08
(62)【分割の表示】P 2019201363の分割
【原出願日】2019-11-06
(31)【優先権主張番号】62/776,908
(32)【優先日】2018-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】523397609
【氏名又は名称】アヴェント インベストメント,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エリック・エー・スケピス
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド・エム・ペイジ
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・エー・スコール
(72)【発明者】
【氏名】シェイミー・アール・サストリー
(72)【発明者】
【氏名】リア・ロルダン
(72)【発明者】
【氏名】ナタリア・アレクシーヴァ
(72)【発明者】
【氏名】ライアン・カルドウェル
(72)【発明者】
【氏名】アモル・ソイン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】疼痛の治療のために神経系の標的神経組織及び非神経組織を選択的かつ可逆的に調節するためのシステム及び方法を提供する。
【解決手段】刺激装置100は、電源180に電気的に結合される制御装置130および信号発生器140によって発生した電気刺激が、電極120を経由して治療部位Nに送られ、神経構造の標的神経組織及び非神経組織を選択的及び可逆的に調節し、他の感覚及び運動機能、並びに固有受容を維持しながら疼痛を抑制する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経系構造の標的神経組織及び非神経組織を選択的かつ可逆的に調節するためのシステムであって、前記システムは、
1つ以上の電極を備えた電気刺激装置であって、前記電極は、細長い本体を有する少なくとも1つの第1電極を含み、前記細長い本体の表面には近位電気接点及び遠位電気設定が設けられており、前記近位電気接点は、皮下組織に配置されるサイズ及び構成であり、前記遠位電気接点は、前記神経系構造の前記標的神経組織及び非神経組織と接続するサイズ及び構成であり、前記1つ以上の電極を介して前記神経系構造の前記標的神経組織及び非神経組織に近い治療部位に電気刺激を送達するように構成された、該電気刺激装置と、
制御装置であって、(i)前記電気刺激装置の前記1つ以上の電極と、(ii)前記1つ以上の電極に電気エネルギーを供給する電源とに接続するように構成された、該制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記電気刺激装置の動作を指示し、前記1つ以上の電極を介して前記治療部位に前記電気刺激を適用するように構成され、
前記治療部位への前記電気刺激の前記適用は、前記標的神経組織及び非神経組織を選択的に調節し、それにより、疼痛を抑制し、触覚及び他の感覚機能及び運動機能並びに固有受容を維持し、
前記電気刺激の少なくとも1つのパラメータは、触覚、運動機能及び固有受容に関与する、Aβ線維、Aα線維及び運動線維の機能を抑制することなく、鈍い/うずく又は鋭い疼痛の感覚に関与する(i)無髄C線維及び(ii)薄い有髄Aδ線維の少なくとも1つの機能を差別的に抑制するように、治療中にリアルタイムフィードバックに基づいて自動的に調節可能である、システム。
【請求項2】
前記疼痛が、急性疼痛、術後疼痛、神経障害性疼痛、慢性疼痛、及び、頭及び顔の疼痛のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記治療部位への前記電気刺激の単一の適用が、前記標的神経組織及び非神経組織を選択的に調節し、その後の疼痛の抑制をもたらす、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記治療部位への前記電気刺激の単一の適用は、前記標的神経組織及び非神経組織を選択的に調節し、5日間~30日間、その後の疼痛の抑制をもたらす、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項5】
前記治療部位への前記電気刺激の前記適用は、前記標的神経組織及び非神経組織を調節し、疼痛の伝達に関与する神経線維を介した神経信号伝達を抑制し、
前記他の感覚及び運動機能並びに固有受容に関与する神経線維を介した神経信号伝達は保持され、
前記他の感覚機能は、触覚、視覚、聴覚、味覚、及び嗅覚からなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記1つ以上の電極は、末梢神経、脳神経、神経節及び自律神経、神経叢並びに脊髄のうちの少なくとも1つを含む前記神経系構造に隣接して配置されるように構成される、請求項1~5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記神経系構造が、2.5mmより大きい直径を有する神経又は神経節を含み、
前記1つ以上の電極の少なくとも1つは、前記神経又は神経節に前記電気刺激を送達するのに十分なサイズ及び形状及び接触表面構成を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記制御装置は、神経信号伝達の測定された抑制、測定された温度、患者からの入力、調節可能なパラメータの少なくとも1つに対応するフィードバック、回復の時間経過に関連する治療設定、電極接触インピーダンス、組織で生成される電場、前記患者の生理学的反応、及びそれらの組み合わせからなる群から選択された測定されたフィードバックに基づいて、前記電気刺激を変化させるように調整可能である、請求項1~7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記制御装置は、前記電気刺激のデューティサイクル又は刺激波形エンベロープ持続時間をリアルタイムで変更し、前記治療部位の標的組織温度を超えないで、前記標的神経組織及び非神経組織に送達される電圧を最大化するように構成される、請求項1~8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記制御装置は、前記電気刺激のデューティサイクル又は刺激波形エンベロープ持続時間をリアルタイムで変更し、前記治療部位の標的組織温度を超えないで、前記標的神経組織及び非神経組織に送達される電流を最大化するように構成される、請求項1~9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記制御装置は、前記電気刺激の少なくとも1つのパラメータを変更して、神経信号伝達を調節し、
前記少なくとも1つのパラメータは、波形形状、波形周波数、波形振幅、波形エンベロープ持続時間、前記1つ以上の電極で生成される電場強度、波形DCオフセット、波形デューティサイクル、組織温度、冷却機構パラメータ、並びに、治療期間からなる群から選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
前記制御装置は、前記電気刺激の少なくとも1つのパラメータを変化させて、前記神経系構造の完全な断面以下の断面を有する前記神経系構造の一部内の神経信号伝達を調節する、請求項1~11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
前記制御装置は、前記電気刺激の少なくとも1つのパラメータを変化させて、前記神経系構造の開始応答及び/又は前記神経系構造の抑制の開始時の前記神経系構造の活性化を低減するように調節可能である、請求項1~12のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
前記制御装置は、100kHz以上、1MHz以下の範囲の周波数を有する前記電気刺激を前記治療部位に送達するように調整可能である、請求項1~13のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項15】
前記治療部位に送達される前記電気刺激は、5mA以上、1.25A以下の振幅範囲を有する、請求項1~14のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項16】
前記治療部位に送達される前記電気刺激は、10V以上、500V以下の振幅範囲を有する、請求項1~15のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項17】
前記治療部位に送達される前記電気刺激は、0.1W以上、1,250W以下の電力範囲を有する、請求項1~16のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項18】
前記治療部位に送達される前記電気刺激は、標的部位及び/又は前記1つ以上の電極で20kV/m以上、2,000kV/m以下の電場強度を生成又は誘導する、請求項1~17のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項19】
前記治療部位に送達される前記電気刺激は、正弦波形、方形波形、三角波形、インパルス波形、形状調節波形、周波数変調波形、前記治療部位での電気刺激の連続送達を提供する振幅変調波形、及びそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む波形形状成分を有する、請求項1~18のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項20】
前記治療部位に送達される前記電気刺激は、0.1%以上、99%以下の範囲のデューティサイクルを有する、請求項1~19のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項21】
前記治療部位に送達される前記電気刺激は、1ミリ秒以上、999ミリ秒以下の範囲のパルス間幅を有する、請求項1~20のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項22】
前記電気刺激は、最大30分間の持続時間で前記治療部位に送達される、請求項1~21のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項23】
前記制御装置は、組織温度を5℃以上、60℃以下の範囲に維持しながら前記電気刺激を加えるように調整可能である、請求項1~22のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項24】
前記電気刺激装置は、前記治療部位に隣接する位置で患者の体内に植え込むように構成された装置本体を含む、請求項1~23のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項25】
前記制御装置は、刺激装置を備え、前記刺激装置は、前記1つ以上の電極及び前記制御装置のインタフェースの両方に結合され、前記刺激装置の動作は、前記1つ以上の電極に前記電気刺激を供給するように前記制御装置によって指示される、請求項1~24のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項26】
前記1つ以上の電極は、パドル、カフ、円筒形カテーテル又は針、ワイヤ形態、又は細いプローブの形態の電極アセンブリを含む、請求項1~25のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項27】
前記1つ以上の電極は、電場を最大化して前記神経系構造に向けるサイズ及び/又は形状である、請求項1~26のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項28】
前記近位電気接点及び前記遠位電気接点のそれぞれは単一のリード線上に配置され、刺激対を形成する、請求項1に記載のシステム。
【請求項29】
前記近位電気接点及び前記遠位電気接点のそれぞれは、長さが1以上、50mm以下である、請求項1~28のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項30】
前記近位電気接点及び前記遠位電気接点のそれぞれの長さが同じである、請求項1~29のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項31】
前記近位電気接点及び前記遠位電気接点のそれぞれの長さが異なる、請求項1~29のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項32】
前記遠位電気接点が、前記電極の遠位端に隣接し、前記近位電気接点が、前記遠位電気接点と前記電極の近位端との間の位置で前記電極に沿って配置され、
前記遠位電気接点の長さは、前記近位電気接点の長さよりも長い、請求項31に記載のシステム。
【請求項33】
前記1つ以上の電極は、前記細長い本体の形態の電極アセンブリを備え、前記細長い本体の遠位端は、前記細長い本体の遠位先端部分が前記細長い本体の長手軸に対してある角度で延びるように湾曲を含み、前記細長い本体の前記長手軸に対する前記遠位先端部分の角度は、0度~50度の間である、請求項1~32のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項34】
前記細長い本体の遠位先端部分が真っ直ぐである、請求項33に記載のシステム。
【請求項35】
前記細長い本体の遠位先端部分が湾曲している、請求項33に記載のシステム。
【請求項36】
電極アセンブリは、前記細長い本体の遠位先端部分に設けられた前記遠位電気接点と、前記遠位先端部分と前記電極アセンブリの近位端との間の前記細長い本体に沿って設けられた前記近位電気接点とを備える少なくとも2つの電気接点を含む、請求項33~35のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項37】
前記近位電気接点及び前記遠位電気接点のそれぞれは、前記電極の細長い本体の同じ側に配置される、請求項1~36のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項38】
前記近位電気接点及び前記遠位電気接点のそれぞれの導電領域は、前記細長い本体の同じ側にあり、前記近位電気接点及び前記遠位電気接点なしでリード線の円周の一部に円周方向に電気エネルギーを送達しない、請求項37に記載のシステム。
【請求項39】
前記1つ以上の電極に含まれる前記近位電気接点又は前記遠位電気接点に電気的に直列に配置された抵抗器を更に含む、請求項1~38のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項40】
前記1つ以上の電極上に設けられた前記近位電気接点及び前記遠位電気接点が、ステンレス鋼又はプラチナのインピーダンス又は静電容量より高いインピーダンス又は高レベルの静電容量を有する材料から形成される、請求項1~39のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項41】
前記1つ以上の電極上に設けられた前記近位電気接点及び前記遠位電気接点が、滑らかな曲線状の周囲を有する、請求項1~40のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項42】
前記1つ以上の電極に設けられる前記近位電気接点及び前記遠位電気接点が、楕円形の周囲を有する、請求項1~41のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項43】
前記1つ以上の電極上に設けられた前記近位電気接点及び前記遠位電気接点が、直線形状の周囲を有する、請求項1~40のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項44】
組織温度測定を提供するために前記1つ以上の電極上に設けられた温度測定装置を更に含む、請求項1~43のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項45】
前記1つ以上の電極上に設けられた前記近位電気接点、前記遠位電気接点及び温度測定装置の少なくとも1つは、導電性及び熱伝導性材料から印刷される、請求項1~44のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項46】
前記1つ以上の電極に設けられた前記近位電気接点及び前記遠位電気接点が、対応する前記電極の周囲に部分的に延び、
前記電気接点のアーク長は180度未満であり、前記電気接点が延びるのは前記電極の前記周囲の半分未満である、請求項1~45のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項47】
前記電極に設けられた円周形状接触面と、前記制御装置に電気的に結合されたリード線に設けられた対応する円周形状接触面を介して、前記電極が前記制御装置に電気的に結合される、請求項1~46のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項48】
前記円周形状接触面が、前記電極の長手軸の周りに同心円状に配置された2つ以上の円周形状接触面を含み、
前記電極と発生器との間に電気的に結合されたリード線は、前記リード線の長手軸の周りに同心円状に配置された対応する2つ以上の円周形状接触面を含む、請求項47に記載のシステム。
【請求項49】
前記電極の前記円周形状接触面は、誘電体層によって分離され、
前記リード線の前記円周形状接触面は、誘電体層によって分離される、請求項48に記載のシステム。
【請求項50】
前記電極の電気回路が、前記円周形状接触面内の前記電極内に延在する、請求項47~49のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項51】
前記1つ以上の電極の少なくとも1つは、前記電気刺激装置の接触面に配置されるように構成された単極電極であり、戻り電極は患者の皮膚の外面に配置される、請求項1~50のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項52】
前記電気刺激装置は再利用可能である、請求項1~51のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項53】
前記電気刺激装置は使い捨てである、請求項1~51のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項54】
ユーザインタフェースを備え、
前記ユーザインタフェースは、前記治療部位への前記電気刺激の前記適用を指示するユーザからの入力を受信するように構成される、請求項1~53のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項55】
前記制御装置及び前記電気刺激装置のうちの少なくとも1つに結合されたディスプレイを更に備え、前記ディスプレイは前記電気刺激装置の状態の表示を提供する、請求項1~54のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項56】
(i)前記刺激装置の接触面及び(ii)前記接触面又は前記電極に隣接する患者の組織のうちの少なくとも1つの温度を測定するために前記刺激装置に結合される温度センサを更に備え、前記制御装置に結合された前記温度センサは、測定温度に関する熱フィードバック情報を提供し、
前記制御装置は、前記温度センサから受信した前記熱フィードバック情報に応答して前記電気刺激の少なくとも1つのパラメータを変化させるように調整可能である、請求項1~55のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項57】
前記治療部位に冷却効果を提供するように構成された冷却機構を更に備え、
前記冷却効果は、前記治療部位の損傷を防止する、請求項1~56のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、2018年12月7日に出願された米国仮特許出願第62/776,908号に対する優先権及び利益を主張する。
【0002】
本発明は、一般に、神経及び非神経組織の活動を調節して疼痛を治療する装置及び方法に関する。特に、神経構造の神経組織及び非神経組織を選択的かつ可逆的に調節し、他の感覚及び運動機能、並びに固有受容を維持しながら、疼痛を抑制する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
疼痛は、破壊的方法及び非破壊的方法の両方で、身体から発生する疼痛信号の脳への到達を分断することで治療できる。破壊的方法は、慢性疼痛の兆候を治療するために日常的に使用され、熱アブレーション、冷凍アブレーション、化学的アブレーション(例えば、フェノール、リドカイン、Botox(登録商標)、超音波診断アブレーション及び機械的切断による)が含まれる。しかし、神経構造の破壊は、神経の機能の即時喪失を引き起こし、長期的な萎縮、神経障害、そして最終的にはより多くの疼痛につながる可能性がある。更に、運動機能及び非疼痛性の感覚機能を維持したいという願望のために、混合神経及び神経節は通常、慢性疼痛の破壊的介入を使用して標的にされない。更に、神経構造の破壊は、運動及び非疼痛性の感覚機能を維持することが望まれる術後及び周術期の疼痛管理に貢献しない。その結果、疼痛信号を分断する破壊的方法は一般に、術後疼痛などの急性疼痛の用途には使用されない。
【0004】
疼痛を治療するための非破壊的な方法は、処方薬の鎮痛剤(例えば、オピオイド)の使用、局所麻酔薬注射、ステロイド及び他の抗炎症剤からなる局所又は注射カクテル、局所麻酔薬の連続注入、電気的遮断、電気刺激、及びパルス高周波エネルギーの適用を含む。これらの各方法には、治療の有効性及び使用性を損なう独自の課題がある。例えば、処方薬の鎮痛剤には望ましくない副作用があり、中毒につながる可能性がある。一方、局所麻酔薬及び注射カクテルは数時間しか続かない有効期間の短さがあるが、麻酔薬の継続的な注入には、長期治療(数日)のために外部装置を患者につなぐ必要がある。更に、局所麻酔薬の使用は、神経毒性、血管毒性及びアレルギー反応のリスクを示す。最後に、これらの薬剤は、遮断する神経活動の種類に対して選択的ではない(例えば、疼痛に関連する神経線維活動と運動機能に関連する神経線維活動の両方を遮断する)。
【0005】
電気的神経調節技術は、化学的介入よりも副作用のリスクが低く、疼痛の調整可能な局所管理を提供する。しかし、既存の電気的遮断技術は、切断後の慢性疼痛の治療にのみ使用されており、長期間の遮断のために患者に内部パルス発生器及び神経カフを植え込む必要がある。そのため、外科的植え込みの必要性は、大小両方の神経の急性疼痛用途のための電気的遮断、並びに急性の頭及び顔の疼痛の電気的遮断の使用に相当負担である。更に、疼痛を緩和するために電気刺激装置が一般的に使用されていても、その効果はこれまで、重度又は慢性片頭痛、周術期痛及び/又は手術後数日から数週間での術後疼痛の経験に苦しむ患者が経験する疼痛レベルなど、中程度から重度の疼痛レベルを管理するのに十分ではなかった。電気的神経刺激装置はまた、慢性疼痛を治療するために、末梢神経、後根神経節、及び脊髄でも使用されているが、これらの装置は全て、外科的植え込みの必要性によって負担になり、混合神経又は神経節に適用されると、運動線維又は非疼痛性感覚線維を活性化して望ましくない場合がある。更に、高周波エネルギー治療は処置に基づいており、患者は持ち帰り用装置の負担を受けないが、大きな神経の治療には使用できず、小さな神経の治療結果は一貫していない。更に、急性疼痛に対する高周波エネルギー治療の選択性及び可逆性の時間経過は不明である。
【0006】
そのため、小径及び大径の両方の末梢神経、脳神経、神経節、自律神経、神経叢及び脊髄で、神経及び非神経活動を調節することにより、数日から数週間続く効果を伴う一時的かつ選択的に疼痛を抑制することができる電気装置及び方法が必要であり、一時的かつ選択的な遮断が神経毒性、血管毒性又はアレルギーのリスクをもたらさない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、疼痛の治療のために神経系の標的神経組織及び非神経組織を選択的かつ可逆的に調節するためのシステム及び方法を対象とする。電気刺激が治療部位に送られ、神経構造の標的神経組織及び非神経組織を選択的及び/又は可逆的に調節し、他の感覚及び運動機能、並びに固有受容を維持しながら疼痛を抑制する。一態様では、神経系構造の標的神経組織及び非神経組織を選択的及び/又は可逆的に調節するためのシステムが開示される(例えば、患者の病状を治療するため)。システムは、電気刺激装置であって、神経系構造の標的神経組織及び非神経組織に近い治療部位に電気刺激を送達する1つ以上の電極(例えば、神経系構造に電気刺激を送達するのに適したサイズ、形状及び接触面構成を有する)(例えば、単極又は双極)(単一電極又は電極アレイ)を備えた、電気刺激装置と、制御装置であって、電気刺激装置の1つ以上の電極と、1つ以上の電極に電気エネルギーを供給する電源とに接続するように構成された、制御装置とを備え、制御装置は、電気刺激装置の動作を指示し(例えば、電流制御、電圧制御、電力制御、及び/又は温度制御を介して)、電極を介して治療部位に電気刺激を適用するように構成され、治療部位への電気刺激の適用は、標的神経及び非神経組織を選択的に調節し、疼痛を抑制し、他の感覚及び運動機能並びに固有受容を維持する。
【0008】
いくつかの実施形態では、疼痛は、急性疼痛、術後疼痛、神経障害性疼痛、慢性疼痛、並びに、頭及び顔の疼痛のうちの少なくとも1つを含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、治療部位への電気刺激の単一の適用は、標的神経組織及び非神経組織を選択的に調節し、その後の疼痛の抑制をもたらす(例えば、約1日~約30日の期間、約30日~約60日の期間、約60日~約90日の期間、約90日~約120日の期間、約120日~約150日の期間、約150日~約180日の期間、約180日~約270日の期間、約270日~約365日の期間)(例えば、疼痛が慢性疼痛である場合、電気刺激の治療部位への単一の電気刺激の適用は、標的神経及び非神経組織を選択的に調節し、約90日~約365日の期間、その後の疼痛の抑制をもたらす)。
【0010】
いくつかの実施形態において、治療部位への電気刺激の単一の適用は、標的神経組織及び非神経組織を選択的に調節し、約5日間~約30日間、その後の疼痛の抑制をもたらす。
【0011】
いくつかの実施形態では、治療部位への電気刺激の適用は、標的神経組織及び非神経組織を調節し(例えば、選択的に調節する及び/又は可逆的に調節する)、疼痛の伝達に関与する神経線維を介した神経信号伝達を抑制する(例えば、更に熱受容、自律神経活動及び内臓機能の伝達に関与し、神経線維を介した神経信号伝達が他の感覚及び運動機能に関与し、固有受容が保持され、他の感覚機能は、触覚、視覚、聴覚、味覚、嗅覚及びバランスからなる群から選択される)。
【0012】
いくつかの実施形態では、1つ以上の電極は、末梢神経、脳神経、神経節及び自律神経、神経叢並びに脊髄のうちの少なくとも1つを含む神経系構造に隣接して配置されるように構成される(例えば、適切なサイズ及び形状)(例えば、神経節は、後根神経節、交感神経節、副交感神経節、翼口蓋神経節、ガッセル神経節のうちの少なくとも1つを含む)。
【0013】
いくつかの実施形態では、神経系構造は、約2.5mmより大きい直径を有する神経又は神経節(例えば、脳神経、自律神経、神経叢、及び脊髄)を含み、1つ以上の電極の少なくとも1つは、神経又は神経節に電気刺激を送達するのに十分なサイズ及び形状及び接触表面構成を有する(例えば、1mm2~約100mm2の範囲の表面積)(例えば、制御装置は、電気刺激を形成する適切な波形を生成して、神経系構造の標的神経組織及び非神経組織を調節する(例えば、選択的に調節する、又は可逆的に調節する)ように構成される)。
【0014】
いくつかの実施形態では、治療部位への電気刺激の適用は、末梢神経に与えられる有髄Aδ線維及び無髄C線維のうちの少なくとも1つを介する神経信号伝達を選択的に抑制する一方で、Aβ及びAα線維、及び/又は運動線維のうちの少なくとも1つを介する神経信号伝達を維持する。
【0015】
いくつかの実施形態では、治療部位への刺激の適用は、末梢神経に与えられる有髄Aδ線維及び無髄C線維のうちの少なくとも1つを介する神経信号伝達を選択的に抑制する一方で、Aβ及びAα線維、及び/又は隣接する神経又は隣接する神経束の運動線維のうちの少なくとも1つを介する神経信号伝達を維持する。
【0016】
いくつかの実施形態において、制御装置は、神経信号伝達の測定された抑制、測定された温度(例えば、治療部位、1つ以上の電極又はその一部、電気刺激装置、患者の皮膚における)、患者からの入力(例えば、痛覚に関する)、電気刺激の調節可能なパラメータの少なくとも1つに対応するフィードバック、回復の時間経過に関連する治療設定、電極接触インピーダンス、組織で生成される電場、患者の生理学的反応(例えば、血流、皮膚コンダクタンス、心拍数、筋活動(例えば、筋電位など))、及びそれらの組み合わせからなる群から選択された測定されたフィードバックに基づいて、電気刺激(例えば、電気刺激のパラメータ)を変えるように調節可能である。
【0017】
いくつかの実施形態では、制御装置は、電気刺激のデューティサイクル及び/又は刺激波形エンベロープ持続時間をリアルタイムで変更し、治療部位の標的組織温度を超えないで、組織に送達される電圧を最大化するように構成される(例えば、刺激デューティサイクル及び/又は刺激エンベロープを調節して、治療部位の破壊的組織温度を超えることなく電圧を最大化する)。
【0018】
いくつかの実施形態では、制御装置は、電気刺激のデューティサイクル及び/又は刺激波形エンベロープ持続時間をリアルタイムで変更し、治療部位の標的組織温度を超えないで、組織に送達される電流を最大化するように構成される(例えば、刺激デューティサイクル又は刺激エンベロープを調節して、破壊的組織温度を超えることなく電流を最大化する)。
【0019】
いくつかの実施形態では、制御装置は、電気刺激の少なくとも1つのパラメータを変更して、(i)有髄Aδ線維及び/又は無髄C線維のうちの少なくとも1つ、又は(ii)大神経又は大神経節又は大神経構造のいずれかを介した神経信号伝達を調節し(例えば、選択的に抑制する及び/又は可逆的に抑制する)(例えば、脳神経、神経節、自律神経、神経叢、脊髄、後根神経節、交感神経節、副交感神経節、翼口蓋神経節、ガッセル神経節)、少なくとも1つのパラメータは、波形形状、波形周波数、波形振幅、波形エンベロープ持続時間、電極で生成される電場強度(例えば、電極又は治療部位で測定)、波形DCオフセット、波形デューティサイクル、組織温度、冷却機構パラメータ(例えば、冷却速度、冷却媒体の流量、冷却媒体圧力、治療部位又は冷却機構の一部で測定された温度)、及び治療期間からなる群から選択される。
【0020】
いくつかの実施形態では、神経系構造は末梢神経を含み、制御装置は、電気刺激を適用して、鋭い/刺すような疼痛の感覚に関与する有髄Aδ線維又は神経線維の機能を差別的に抑制するように調節可能である(例えば、鋭い/刺すような疼痛の感覚に関与する有髄Aδ線維及び/又は神経線維は、鈍い/うずく疼痛の感覚に関与する無髄C線維又は神経線維よりも多くの割合の線維が抑制される)。
【0021】
いくつかの実施形態では、神経系構造は末梢神経を含み、制御装置は、電気刺激を適用して、鈍い/うずく疼痛の感覚に関与する無髄C線維又は神経線維の機能を差別的に抑制するように調節可能である(例えば、鈍い/うずく疼痛の感覚に関与する無髄C線維又は神経線維は、有髄Aδ線維よりも多くの割合の線維が抑制される)。
【0022】
いくつかの実施形態では、制御装置は、電気刺激の少なくとも1つのパラメータを変化させて、神経系構造の完全な断面以下の断面を有する神経系構造の一部内の神経信号伝達を調節する(例えば、選択的に調節する及び/又は可逆的に調節する)。
【0023】
いくつかの実施形態では、制御装置は、電気刺激の少なくとも1つのパラメータを変化させて、神経系構造の開始応答及び/又は神経系構造の抑制の開始時の神経系構造の活性化を低減するように調節可能である。
【0024】
いくつかの実施形態では、制御装置は、約100kHz、約200kHz、約300kHz、約400kHz、約500kHz、約600kHz、700kHz、約800kHz、約900kHz及び約1MHzからなる群から選択される周波数を有する電気刺激を治療部位に送達するように調整可能である。
【0025】
いくつかの実施形態では、治療部位に送達される電気刺激は、約5mA(例えば、10mAのピークツーピークに対応するピークツーセンター(peak-to-center))と約1.25A(2.5Aのピークツーピークに対応するピークツーセンター(peak-to-center))の間の振幅範囲を有する。
【0026】
いくつかの実施形態では、治療部位に送達される電気刺激は、約10V~約500Vの振幅範囲を有する(20~1000Vピークツーピークに対応するピークツーセンター(peak-to-center))。
【0027】
いくつかの実施形態では、治療部位に送達される電気刺激は、約0.1W~約1,250Wの電力範囲を有する。
【0028】
いくつかの実施形態では、治療部位に送達される電気刺激は、標的部位及び/又は電極で約20kV/m~約2,000kV/mの間の電場強度を生成又は誘導する。
【0029】
いくつかの実施形態では、治療部位に送達される電気刺激は、正弦波形、方形波形、三角波形、インパルス波形、形状調節波形(shape modulated waveform)、周波数変調波形、治療部位での電気刺激(例えばチャープ)の連続送達を提供する振幅変調波形、及びそれらの組み合わせ(例えば追加的組み合わせ)のうちの少なくとも1つを含む波形形状成分を有する(例えば、連続的に出力される波形又は断続的に出力される波形(例えば、所定の持続時間のパルス))(例えば、電荷平衡波形として、又は非電荷平衡波形として)。
【0030】
いくつかの実施形態では、治療部位に送達される電気刺激は、約0.1%~約99%の間のデューティサイクルを有する。
【0031】
いくつかの実施形態では、治療部位に送達される電気刺激は、約1ms(ミリ秒)~約999ms(ミリ秒)の間のパルス間幅を有する。
【0032】
いくつかの実施形態では、電気刺激は、最大30分間の持続時間で治療部位に送達される。
【0033】
いくつかの実施形態では、制御装置は、組織温度を約5℃~約60℃に維持しながら電気刺激を加えるように調整可能である。
【0034】
いくつかの実施形態では、電気刺激装置は、治療部位に隣接する位置で患者の体内に植え込むように構成された装置本体を含む(例えば、経皮的に配置又は植え込む)。
【0035】
いくつかの実施形態において、制御装置は、刺激装置(例えば、関数又は波形発生器)(例えば、外部関数又は波形発生器)を備え、刺激装置は、電極及び制御装置のインタフェースの両方に結合され、刺激装置の動作は、電極に電気刺激を供給するように制御装置によって指示される。
【0036】
いくつかの実施形態では、電極は、パドル、カフ、円筒形カテーテル又は針、ワイヤ形態、又は細いプローブの形態の電極アセンブリを含む。
【0037】
いくつかの実施形態では、1つ以上の電極は、電場を最大化して神経系構造に向けるサイズ及び/又は形状(例えば、電極の電気接点の表面積は約1mm2~約100mm2である)である。
【0038】
いくつかの実施形態では、1つ以上の電極は、少なくとも2つの電気接点を含む(例えば、少なくとも2つの電気接点は、治療中に神経系構造の近くに配置されるように構成される)(例えば、制御装置は少なくとも2つの電気接点のそれぞれを独立して動作するように構成される(例えば、結果として生じる電場の電流を誘導するために多極方式で))。
【0039】
いくつかの実施形態では、各電気接点は単一のリード線上に配置され、刺激対(例えば、陰極及び陽極)を形成する。
【0040】
いくつかの実施形態では、電気接点のそれぞれは、長さが約1~50mm(例えば、好適には約1mm~約30mm、長さが約2mm~約20mm、長さが約2mm~約15mm、又は長さが約5mm~10mm)である。
【0041】
いくつかの実施形態では、各電気接点の長さは同じである。
【0042】
いくつかの実施形態では、各電気接点の長さは異なる。
【0043】
いくつかの実施形態では、少なくとも2つの電気接点が、電極の遠位端に隣接する遠位電気接点と、遠位電気接点と電極の近位端との間の位置で電極に沿って配置された近位電気接点とを含み、遠位電気接点の長さは、近位電気接点の長さよりも長い(例えば、遠位電気接点の長さは約10mmであってもよく、近位電気接点の長さは約4mmであってもよい)。
【0044】
いくつかの実施形態において、1つ以上の電極は、細長い本体の形態の電極アセンブリを備え、細長い本体の遠位端は、細長い本体の遠位先端部分が細長い本体の長手軸に対してある角度で延びるように湾曲を含み、細長い本体の長手軸に対する遠位先端部分の角度は、約0度~約50度の間である(例えば、好適には約5度~約15度の間)。
【0045】
いくつかの実施形態では、細長い本体の遠位先端部分は真っ直ぐである。
【0046】
いくつかの実施形態では、細長い本体の遠位先端部分は湾曲している。
【0047】
いくつかの実施形態では、電極アセンブリは、細長い本体の遠位先端部分に設けられた遠位電気接点と、遠位先端部分と電極アセンブリの近位端との間の細長い本体に沿って設けられた近位電気接点とを備える少なくとも2つの電気接点を含む。
【0048】
いくつかの実施形態では、遠位電気接点は、神経系構造の標的神経組織及び非神経組織と接続するサイズ及び構成であり、近位電気接点は、皮下組織(例えば、脂肪、筋膜、筋肉)に配置されるサイズ及び構成である。
【0049】
いくつかの実施形態では、1つ以上の電極のそれぞれは、少なくとも2つの電気接点を備え、各電気接点は、電極の細長い本体の同じ側に配置される。
【0050】
いくつかの実施形態では、各電気接点の導電領域は、細長い本体の同じ側にあり、電気接点なしで細長い本体の円周の一部に円周方向に電気エネルギーを送達しない(例えば、電気接点はリード線の短軸に円周方向に電気エネルギーを送達せず、それによって電圧-磁界整形と電流誘導を提供する)。
【0051】
いくつかの実施形態では、システムは、1つ以上の電極に含まれる電気接点に電気的に直列に配置された抵抗器を更に含む。
【0052】
いくつかの実施形態において、1つ以上の電極上に設けられた電気接点は、より高いインピーダンス又は高レベルの静電容量を有する材料から形成される。
【0053】
いくつかの実施形態では、1つ以上の電極上に設けられた電気接点は、滑らかな曲線状の周囲を有する。
【0054】
いくつかの実施形態では、1つ以上の電極上に設けられた電気接点は、楕円形の周囲を有する。
【0055】
いくつかの実施形態では、1つ以上の電極上に設けられた電気接点は、直線形状の周囲を有する。
【0056】
いくつかの実施形態では、システムは、組織温度測定を提供するために1つ以上の電極上に設けられた温度測定装置(例えば、熱電対、サーミスタ)を更に含む。
【0057】
いくつかの実施形態では、1つ以上の電極上に設けられた電気接点及び温度測定装置の少なくとも1つは、導電性及び熱伝導性材料から印刷される。
【0058】
いくつかの実施形態では、1つ以上の電極に設けられた電気接点は、対応する電極の周囲に部分的に延び、電気接点のアーク長は180度未満であり、電気接点が延びるのは電極の周囲の半分未満である。
【0059】
いくつかの実施形態では、電極に設けられた円周形状接触面と、制御装置に電気的に結合されたリード線に設けられた対応する円周形状接触面を介して、電極が制御装置に電気的に結合される。
【0060】
いくつかの実施形態では、円周形状接触面は、電極の長手軸の周りに同心円状に配置された2つ以上の円周形状接触面(例えば、様々な直径の4つの円周形状接触面)を含み、電極と発生器との間に電気的に結合されたリード線は、リード線の長手軸の周りに同心円状に配置された対応する2つ以上の円周形状接触面(例えば、様々な直径の4つの円周形状接触面)を含む。
【0061】
いくつかの実施形態において、電極の円周形状接触面は、誘電体層(例えば、隣接する導電面間に提供される電気絶縁材料及び/又は空気)によって分離され、リード線の円周形状接触面は、誘電体層(例えば、隣接する導電性表面間に提供される電気絶縁材料及び/又は空気)によって分離される。
【0062】
いくつかの実施形態では、電極の電気回路は、円周形状接触面内の電極内に延在している。
【0063】
いくつかの実施形態では、1つ以上の電極の少なくとも1つは、刺激装置の接触面に配置されるように構成された単極電極であり、戻り電極は患者の皮膚の外面に配置される。
【0064】
いくつかの実施形態では、刺激装置は再利用可能である。
【0065】
いくつかの実施形態では、刺激装置は使い捨てである。
【0066】
いくつかの実施形態では、システムは、((例えば、制御装置、刺激装置、患者の状態の表示を提供するための)ディスプレイを含む)ユーザインタフェースを更に備え、ユーザインタフェースは、治療部位への電気刺激の適用を指示するユーザからの入力を受信するように構成される(例えば、疼痛の抑制を変化させる(他の感覚機能及び運動機能、並びに固有受容を維持しながら))。
【0067】
いくつかの実施形態では、システムは、制御装置及び刺激装置のうちの少なくとも1つに結合されたディスプレイを更に備え、ディスプレイは刺激装置の状態の表示を提供する。
【0068】
いくつかの実施形態において、システムは、(i)刺激装置の接触面及び(ii)接触面又は電極に隣接する患者の組織のうちの少なくとも1つの温度を測定するために刺激装置に結合される温度センサ(例えば、サーミスタ、熱電対)を更に備え、温度センサは制御装置に結合され、測定温度に関する熱フィードバック情報を提供し、制御装置は、温度センサから受信した熱フィードバック情報に応答して電気刺激の少なくとも1つのパラメータを変化させるように調整可能である(例えば、制御装置又はユーザによって)(例えば、接触面の温度を調整し、患者の組織の温度を破壊的組織温度より低く維持し、及び/又は刺激装置の接触面の温度を破壊的組織温度より低く維持する)。
【0069】
いくつかの実施形態において、システムは、治療部位(例えば、刺激装置の接触面)に冷却効果を提供するように構成された冷却機構を更に備え、冷却効果は、治療部位の損傷を防止する(例えば、電気刺激が送達されるとき、予冷又は温度維持することによって)(例えば、患者の組織の温度を破壊的組織温度より低く保つことにより)。
【0070】
別の態様では、患者の病状を治療するために、電気刺激の適用で(例えば、電気刺激の単一適用)、神経系構造の標的神経組織及び非神経組織を選択的かつ可逆的に調節する方法が開示される。この方法は、標的神経系構造を識別することと、神経系構造の標的神経組織及び非神経組織に近接する治療部位に電気刺激装置を配置することであって、電気刺激装置は治療部位に電気刺激を提供する電極を含む、配置することと、電極を介して治療部位に電気刺激を送達することとを含み、治療部位への電気刺激の適用は、神経構造の標的神経組織及び非神経組織を選択的に調節して疼痛を抑制し、他の感覚及び運動機能、並びに固有受容を維持し、そして、治療部位への電気刺激の適用は、標的の神経及び非神経組織並びにその後の疼痛の抑制を選択的に調節する(例えば、約1日~約30日の期間、約30日~約60日の期間、約60日~約90日の期間、約90日~約120日の期間、約120日~約150日の期間、約150日~約180日の期間、約180日~約270日の期間、約270日~約365日の期間)。
【0071】
いくつかの実施形態では、神経系構造は、末梢神経、脳神経、神経節(例えば、神経節は、後根神経節、交感神経節、副交感神経節、翼口蓋神経節、ガッセル神経節、神経叢並びに脊髄のうちの少なくとも1つを含む)、自律神経、自律神経節のうちの少なくとも1つを含む。
【0072】
いくつかの実施形態では、治療部位への電気刺激の適用は、標的神経組織及び非神経組織を選択的に調節し、疼痛の伝達に関与する神経線維を介した神経信号伝達を抑制し、神経線維を介した神経信号伝達が他の感覚及び運動機能に関与し、固有受容が保持され、他の感覚機能は、触覚、視覚、聴覚、味覚、嗅覚及びバランスのうちの少なくとも1つを含む。
【0073】
いくつかの実施形態では、疼痛は、急性疼痛、外科的疼痛、術後疼痛、外傷性疼痛、神経障害性疼痛、慢性疼痛、並びに頭及び顔の疼痛の少なくとも1つを含む。
【0074】
いくつかの実施形態では、疼痛は急性疼痛であり、電気刺激は、外科的処置の直前、手術中、及び外科的処置又は外傷の直後のうちの少なくとも1つに適用される。
【0075】
いくつかの実施形態では、電気刺激は、外科的処置の24時間より前に治療部位に送達される。
【0076】
いくつかの実施形態では、疼痛が膝関節形成術後の術後疼痛であり、電気刺激が大腿神経、坐骨神経、閉鎖神経、並びに外側皮神経及び神経枝、又はそれらの組み合わせに適用される。
【0077】
疼痛が肩部痛であるいくつかの実施形態では、腕神経叢、腋窩神経、肩甲上神経及び外側胸筋神経、又はそれらの組み合わせに電気刺激が適用される。
【0078】
疼痛が腕及び/又は手への医療処置及び/又は外傷に関連するいくつかの実施形態では、電気刺激は、それぞれ内側、尺骨及び橈骨神経又は腕神経叢、あるいはそれらの組み合わせに適用される。
【0079】
いくつかの実施形態では、疼痛が足首及び/又は足への医療処置及び/又は外傷に関連する場合、電気刺激は脛骨、腓骨/腓腹及び伏在神経、又はそれらの組み合わせに適用される。
【0080】
疼痛が股関節形成術に関連するいくつかの実施形態では、電気刺激は、大腿骨、坐骨、又は閉塞筋(例えば、前部及び後部に分岐する前の一般的な閉塞筋)神経及び/又は神経叢、あるいはそれらの組み合わせに適用される。
【0081】
いくつかの実施形態では、疼痛が前十字靭帯(ACL)の治療に関連する場合、電気刺激は大腿骨又は坐骨神経、あるいはそれらの組み合わせに適用される。
【0082】
いくつかの実施形態では、疼痛は神経障害性疼痛又は慢性疼痛であり、電気刺激は、治療処置のオンデマンドボーラスを提供するために使用される。
【0083】
いくつかの実施形態では、電気刺激装置を治療部位に近接して配置するステップは、患者の皮膚の開口部を通して経皮的に神経系構造に隣接して電極を配置するステップ、又は、患者の治療部位に隣接した場所に電極を植え込むステップを含む。
【0084】
いくつかの実施形態では、治療部位に近接して電気刺激装置を配置するステップは、電極を介して治療部位に初期電気刺激を送達するステップと、電極での電圧及び電流の少なくとも一方を測定するステップと、測定された電圧及び電流がそれぞれ閾値電圧及び閾値電流に対応するまで、治療部位の電極の位置を調整するステップとを更に含む。
【0085】
いくつかの実施形態では、方法は、電気刺激の少なくとも1つのパラメータを調整して、標的神経組織及び非神経組織を介する神経信号伝達を選択的に抑制するステップを更に含み、少なくとも1つのパラメータは、波形形状、波形周波数、波形振幅、波形エンベロープ持続時間、電極で生成される電場強度(例えば、電極又は治療部位で測定)、波形DCオフセット、波形デューティサイクル、組織温度、冷却機構パラメータ(例えば、冷却速度、冷却媒体の流量、冷却媒体圧力、治療部位又は冷却機構の一部で測定された温度)、並びに、治療期間からなる群から選択される。
【0086】
いくつかの実施形態では、方法は、電気刺激のデューティサイクル及び/又は波形エンベロープ持続時間をリアルタイムで調節し、治療部位の標的組織温度を超えないで、治療部位に送達される電圧を最大化するステップを更に含む(例えば、刺激デューティサイクル又は刺激エンベロープを調節して、治療部位の破壊的組織温度を超えることなく電圧を最大化する)。
【0087】
いくつかの実施形態では、方法は、電気刺激のデューティサイクル及び/又は波形エンベロープ持続時間をリアルタイムで調節し、治療部位の標的組織温度を超えないで、治療部位に送達される電流を最大化するステップを更に含む(例えば、刺激デューティサイクル又は刺激エンベロープを調節して、不可逆的な破壊的組織温度を超えることなく電流を最大化する)。
【0088】
いくつかの実施形態では、この方法は、電気刺激の刺激振幅を振幅安定状態までゆっくりと漸増させるステップを更に含む。
【0089】
いくつかの実施形態において、方法は、神経信号伝達の測定された抑制、測定された温度(例えば、治療部位、1つ以上の電極又はその一部、電気刺激装置、患者の皮膚における)、患者からの入力(例えば、疼痛に関する入力)、調節可能なパラメータの少なくとも1つに対応するフィードバック、回復の時間経過に関連する治療設定、電極接触インピーダンス、組織で生成される電場、患者の生理学的反応(例えば、血流、皮膚コンダクタンス、心拍数、筋活動(例えば、筋電位など))、及びそれらの組み合わせからなる群から選択された測定されたフィードバックに基づいて、電気刺激を変えるように制御装置を調節するステップを更に含む。
【0090】
いくつかの実施形態では、電極は、独立して動作する第1及び第2電極を備え、電極を介して治療部位に電気刺激を送達するステップは、第1電極を介して第1電気刺激を送達し、第2電極を介して第2電気刺激を送達するステップを更に含み、第1及び第2電気刺激は断続的に出力され、第1電気刺激は、第2電気刺激に対してインターリーブされ、第1電気刺激のオンサイクルは第2電気刺激のオフサイクル中に発生し、第2電気刺激のオンサイクルは第1電気刺激のオフサイクル中に発生する。
【0091】
いくつかの実施形態において、方法は、温度センサ(例えば、サーミスタ、熱電対)で、電気刺激の送達中に刺激装置の接触面及び接触面に隣接する患者の組織の少なくとも一方の温度を測定し、温度センサは、測定された温度に関する熱フィードバック情報を刺激装置に提供するステップと、温度センサから受け取った熱フィードバック情報に応じて電気刺激を調整し(例えば、電気刺激のパラメータを調整)、刺激装置の接触面及び接触面に隣接する患者の組織の少なくとも一方に冷却効果を作り出すステップとを更に含む。
【0092】
いくつかの実施形態において、方法は、温度センサ(例えば、サーミスタ、熱電対)で、電気刺激の送達中に、刺激装置の接触面及び接触面に隣接する患者の組織の少なくとも一方の温度を測定するステップであって、温度センサは、測定された温度に関する熱フィードバック情報を刺激装置に提供する、該測定するステップと、温度センサから受信した熱フィードバック情報に応じて刺激装置の接触面を冷却する冷却機構を起動するステップであって、接触面を冷却すると、患者の組織の温度を破壊的組織温度よりも低い温度に維持することにより、電気刺激が送達されたときに患者の組織への損傷を防ぐ、該起動するステップと、冷却機構を作動させて、温度センサから受信した測定された温度に関する熱フィードバック情報に応じて、刺激装置の接触面の温度を破壊組織温度よりも低く維持するステップとを更に含む。
【0093】
別の態様では、非一時的コンピュータ可読媒体が開示される。命令が記憶されたコンピュータ可読媒体であって、プロセッサによる命令の実行により、プロセッサは上記の方法のいずれかを実行するコンピュータ可読媒体。
【0094】
本発明の1つ又は複数の実施形態の詳細は、添付の図面及び以下の説明に記載されている。本発明の他の特徴、目的、及び利点は、説明及び図面、並びに特許請求の範囲から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0095】
特許又は出願ファイルには、カラーで作成された少なくとも1つの図面が含まれている。カラー図面を含むこの特許又は特許出願公開のコピーは、要求及び必要な料金の支払いに応じて、Officeによって提供される。
【0096】
【
図4A】標的神経に隣接して配置された例示的な経皮電極の概略図である。
【
図5】双極電気接点及び電極構成の様々な例である。
【
図7A】神経系活動を選択的及び/又は可逆的に抑制するために神経及び/又は近くの組織に適用できる電気刺激及び対応する制御パラメータの例である。
【
図8】電極を経皮的に配置し、標的神経構造に電気刺激を送達する概略図である。
【
図9A】電極の配置及び翼口蓋神経節への電気刺激の送達の概略図である。
【
図9B】電極の配置及び翼口蓋神経節への電気刺激の送達の概略図である。
【0097】
様々な図面の同様の参照記号は、同様の要素を示している。
【発明を実施するための形態】
【0098】
定義
【0099】
本発明の概念の特定の例の以下の説明は、特許請求の範囲を限定するために使用されるべきではない。他の例、特徴、態様、実施形態、及び利点は、以下の説明から当業者に明らかになるであろう。理解されるように、装置及び/又は方法は、全て本発明の概念の精神から逸脱することなく、他の異なる明白な態様が可能である。従って、図面及び説明は、本質的に例示的であり、限定的ではないとみなされるべきである。
【0100】
この説明のために、本開示の実施形態の特定の態様、利点、及び新規の特徴を本明細書で説明する。説明された方法、システム、及び装置は、決して限定するものとして解釈されるべきではない。代わりに、本開示は、単独で、及び互いに様々な組み合わせ及び副組み合わせで、様々な開示された実施形態の全ての新規かつ非自明の特徴及び態様を対象とする。開示された方法、システム、及び装置は、特定の態様、特徴、又はそれらの組み合わせに限定されず、開示された方法、システム、及び装置は、1つ以上の任意の特定の利点が存在するか又は問題が解決されることを必要としない。
【0101】
本発明の特定の態様、実施形態又は例に関連して記載される特徴、整数、特性、化合物、化学部分、又は基は、それと矛盾しない限り、本明細書に記載の他の態様、実施形態又は例に適用可能であると理解されるべきである。本明細書に開示されている全ての特徴(添付の特許請求の範囲、要約、及び図面を含む)、及び/又はそのように開示されている方法又はプロセスの全てのステップは、そのような特徴及び/又はステップの少なくともいくつかが相互に排他的である組み合わせを除き、任意の組み合わせで組み合わせることができる。本発明は、任意の前述の実施形態の詳細に限定されない。本発明は、本明細書に開示された特徴の任意の新規なもの、又は任意の新規な組み合わせ(添付の特許請求の範囲、要約、及び図面を含む)、又はそのように開示された任意の方法又はプロセスのステップの任意の新規なもの、又は任意の新しい組み合わせに及ぶ。
【0102】
参照により本明細書に組み込まれると述べられる特許、出版物、又はその他の開示資料の全部又は一部は、組み込まれた資料が既存の定義、記述又は本開示に記載されているその他の開示資料と矛盾しない範囲でのみ本明細書に組み込まれることを理解されたい。従って、必要な範囲で、本明細書に明示的に記載されている開示は、参照により本明細書に組み込まれている矛盾する資料に優先する。参照により本明細書に組み込まれると述べられるが、本明細書に記載の既存の定義、記述、又はその他の開示資料と矛盾する資料又はその一部は、その組み込まれた資料と既存の開示資料との間に矛盾が生じない範囲でのみ組み込まれる。
【0103】
説明及び添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明らかにそうでないことを指示しない限り、複数の指示対象を含む。本明細書において、範囲は、「約」を用いたある特定の値から及び/又は「約」を用いた別の特定の値までとして表現することができる。そのような範囲が表現される場合、別の態様は、ある特定の値から及び/又は他の特定の値までを含む。同様に、先行する「約」を使用することにより値が近似値として表される場合、その特定の値は別の態様を成すことが理解されよう。更に、各範囲の端点は、他の端点との関係においても、他の端点とは無関係なものとしても、その両方において重要であることが理解されよう。
【0104】
「任意選択の」又は「任意選択的に」とは、後に説明するイベント又は状況が発生する場合と発生しない場合があり、説明にはそのイベント又は状況が発生する場合と発生しない場合が含まれることを意味する。
【0105】
「近位」及び「遠位」という用語は、神経の領域、神経の位置、又は刺激装置の領域を指す相対的な用語として本明細書で使用される。「近位」とは、脊髄、脳、又は中枢神経系に近い位置を意味し、「遠位」とは、脊髄、脳、又は中枢神経系からより遠い位置を意味する。末梢神経系又は付属器に沿った神経構造上の位置を指す場合、近位及び遠位は、その神経構造又は付属器が続く経路に沿った中枢神経系に近いか、又は中枢神経系から遠い位置を指す。脊髄の神経構造上の位置を指す場合、近位及び遠位は、神経構造が続く経路に沿って脳に近い位置又は脳から遠い位置を指す。
【0106】
本明細書の説明及び特許請求の範囲を通して、「備える、含む(comprise)」と、「備えている、含んでいる(comprising)」及び「備える、含む(comprises)」などのこの用語の変形は、限定するものではないが、例えば、他の追加物、構成要素、整数又はステップなどの排除を意図するものではない。「例示的」及び「例えば」は「~の例」を意味し、好ましい又は理想的な側面の表示を伝えることを意図していない。「など」は、限定的な意味ではなく、説明の目的で使用される。
【0107】
本明細書で使用される「神経構造(nervous structure)」又は「神経構造(neural structure)」という用語は、神経組織及び非神経組織を含む構造を指す。神経組織(ニューロン及びニューロンの軸索、細胞体、樹状突起、シナプスを含むニューロンの構成要素など)に加えて、神経構造にはグリア細胞、シュワン細胞、ミエリン、免疫細胞、結合組織、上皮細胞、神経膠細胞、星状細胞、小膠細胞、上衣細胞、希突起膠細胞、衛星細胞、心血管細胞、血液細胞などの非神経組織も含まれる場合がある。
【0108】
本明細書で使用する「刺激電極」という用語は、単極刺激の場合「陰極」とも呼ばれ、治療エネルギーを神経に送達する役割を果たす電極を指す。双極又は多極刺激の場合、全ての電気接点は刺激電極とみなされる。
【0109】
本明細書で使用される「戻り電極」は、単極刺激の場合「陽極」とも呼ばれ、身体を流れる電流の戻り経路を提供する役割を果たす電極を指す。例えば、戻り電極は、刺激電極を介して標的神経構造に送達される電流の戻り経路を提供する。
【0110】
本明細書で使用される「電気信号(electrical signal)」、「電気信号(electric signal)」、「電気刺激(electrical stimulation)」、「刺激電気信号(stimulation electric signal)」、「刺激電気信号(stimulation electrical signal)」、及び「刺激波形(stimulation waveform)」は、刺激電極によって、又は、単極刺激の場合は刺激電極及び戻り電極によって、制御装置によって組織に送達される電気信号を指す。例えば、電気信号は、時間的に変化する電圧、電流、電力、又は他の電気的尺度として説明される場合がある。標的組織への電気信号の送達は、電気治療、電気療法、又は単に治療又は療法と呼ばれる。電気信号は組織内に電場を生成し、電気信号の制御は組織内の電場の制御に強く影響する。
【0111】
本明細書で使用する場合、「治療部位」とは、電極によって電気信号が送達される神経及び非神経構造上の部位を指す。
【0112】
本明細書で使用される「調節する」とは、情報の送信を修正(modify)又は変更(change)することを指す。例えば、これには、神経内のニューロンの軸索に沿った刺激の通過の興奮、ペーシング、及び抑制/中断の両方が含まれる。神経線維活動の調節には、部分的及び完全な遮断効果を含む遮断効果を生み出すポイントまでの神経信号伝達の抑制が含まれる。神経活動の調整には、神経線維に沿った巨大分子などの分子の輸送の修正も含まれる。神経活動の調節には、ニューロンの下流機能の変更(例えば細胞体やシナプスで)、他のニューロン(例えば、脊髄や脳などの中枢神経系のニューロン)のシグナル伝達を修正する方法でのシグナル伝達の変更、神経構造内の非神経組織の機能の修正、あるいは標的神経又は非神経組織のプロセス、機能又は活動の修正もまた含まれる。
【0113】
本明細書で使用する「抑制する」及び「減衰する」という用語は、神経構造を介した神経信号活動の部分的減少又は完全な減少、例えば、神経内のニューロンの軸索に沿ったインパルスの通過の減少を含む任意のレベルの減少を指す。
【0114】
本明細書で使用する「経皮的」とは、皮膚の表面を貫通する1つ以上の電極を利用して適用される電気刺激を指し、皮膚の下の標的神経に電気刺激を送達する電極も皮膚の下に位置する。経皮的電気刺激の場合、戻り電極又は陽極は、皮膚の下又は皮膚の表面に配置されることが考えられる。「経皮電極」という用語は、皮膚を通して挿入され、神経構造の生理学に電気的に影響を与えるために最小限の侵襲的な方法で神経の近く(mmからcmの距離)に向けられる電極アセンブリを指す。
【0115】
本明細書で使用される場合、用語「痛覚」又は「疼痛を伴う感覚」は、例えば感覚侵害受容器の活性化によって生成される不快な感覚を指す。侵害受容は、急性疼痛の知覚を表し、一般に感覚侵害受容器の活性化又は侵害受容器経路の分断(例えば、切断されたニューロン又は侵害受容器の破壊)によって引き起こされる。慢性疼痛感覚は、神経線維の活性化によってもまた生成される可能性があり、侵害受容器の活性化によって生成されるものと似た不快な知覚をもたらす(例えば、神経障害性疼痛)。慢性疼痛の治療を目的とした手術後など、場合によっては、急性疼痛と慢性疼痛の両方が、全体的な痛覚に混合した形で寄与する可能性がある。
【0116】
本明細書で使用される「標的神経」という用語は、「神経構造(neural structure)」又は「神経構造(nervous structure)」と同義であり、例えば、運動神経線維及び感覚神経線維を含む混合神経を指す。更に、感覚神経線維のみを含む感覚神経及び/又は運動神経線維のみを含む運動神経を指す場合がある。
【0117】
本明細書で使用される場合、「経粘膜」という用語は、1つ以上の電極を使用して標的神経構造を覆う粘膜組織に適用される電気刺激を指す。電気刺激は、粘膜組織を通過して標的の神経構造に到達する。
【0118】
本明細書で使用する「保存する(preserve)」又は「保存する(preserving)」という用語は、神経機能が部分的には維持されるが完全には維持されない場合、及び機能が完全に維持される場合を指す。比較的な場合、別の機能は保持されながらある機能は抑制されてもよく、これは、比較的感覚で、保持された機能が受ける減少の大きさよりも、抑制された機能が受ける減少の大きさの方が大きいことを示唆している。具体的には、比較的な場合、1つの機能の抑制と別の機能の保持は、いずれかの機能又は両方の機能の完全な保持又は完全な抑制を必要としない。
【0119】
解剖学及び生理学
【0120】
上記で提供され、以下により詳細に説明されるように、本発明は、他の感覚及び運動機能、並びに固有受容を維持しながら疼痛を抑制する電気信号の適用により、神経構造の標的神経組織及び非神経組織を選択的かつ可逆的に調節する装置及び方法に関する。この装置と方法を使用して、神経シグナル伝達を調節又は抑制するために、神経構造の標的神経及び非神経組織に電気信号を適用することにより、急性疼痛(外科的疼痛、術後疼痛、外傷性疼痛など)、神経障害性疼痛、慢性疼痛、並びに頭及び顔の疼痛(片頭痛、群発性頭痛、後頭神経痛、緊張性頭痛、副鼻腔炎性頭痛、外傷後頭痛、帯状疱疹後神経痛、心的外傷後痛、慢性連日性頭痛(変形性片頭痛))を治療できる。
【0121】
疼痛は、意識の中に生じる有害な知覚である。健常人では、感覚侵害受容器の活性化と、それに続く1つ以上の神経経路に沿った脳への侵害受容シグナル伝達によって、疼痛の知覚が生成される。疼痛は、神経経路の活性化により生じ、その神経経路に沿った任意のポイントで、疼痛の知覚をもたらす。健常人では、疼痛を引き起こす神経経路は一般に感覚侵害受容器を介して活性化され、感覚侵害受容器は、有害事象(組織への有害な機械的又は熱的損傷など)を検出及び通知するように調整された感覚神経終末である。この種類の疼痛は一般に真に有害な状態を表し、この種類の疼痛は有害な状態が解消されると治る。有害事象が慢性組織機能障害ではない場合、この種類の疼痛は急性疼痛と呼ばれる。対照的に、慢性疼痛は、慢性組織機能障害又は神経機能障害により、疼痛を引き起こす神経経路が持続的に調節される状態を表す。これは、慢性的な機能不全組織の部位での感覚侵害受容器の真の活性化、又は神経組織又は神経組織を支える組織の機能不全により、疼痛を引き起こす神経経路に沿った任意のポイントで調節が起こる可能性がある。
【0122】
疼痛を治療するための介入は、これらの経路に沿った任意のレベルで疼痛を引き起こす神経経路を介して神経信号伝達を直接又は間接的に調節するように設計できる。例えば、感覚侵害受容器に付着した神経線維の軸索伝導の直接的遮断は、疼痛の知覚を遮断する可能性がある。さらなる例として、脊髄又は神経節におけるシナプス伝達の間接的な調節は、脊髄又は神経節への他の入力を活性化又は遮断することによって達成でき、疼痛を引き起こす神経経路に沿った調節をもたらす。別の例として、翼口蓋神経節における副交感神経の流出の抑制は、脳への感覚入力を調節することにより(例えば、上唾液核を介して)、片頭痛などの頭及び顔の疼痛に間接的に影響を及ぼす。従って、急性及び慢性の疼痛を調節及び治療する場合、様々な神経構造を標的とすることが望ましい。
【0123】
対象となる神経構造には、末梢神経(小径及び大径)、脳神経、神経節、自律神経、神経叢及び脊髄が含まれる。神経節は、一般に、後根神経節、交感神経節、副交感神経節、翼口蓋神経節、ガッセル神経節、及び自律神経節のうちの少なくとも1つを含む。一般に、大きな末梢神経は、直径が約2.5mmを超える末梢神経である。大きな末梢神経の例には、例えば、大腿神経、坐骨神経、迷走神経、脛骨神経、腓骨神経、正中神経、橈骨神経、尺骨神経が含まれる。小さい末梢神経の例には、例えば、伏在神経、腓腹神経、膝神経、脳神経(三叉神経及び後頭神経など)、閉鎖神経、及びより大きな神経の遠位部分(迷走神経、脛骨神経、腓骨神経、正中神経、橈骨神経及び尺骨神経など)が含まれる。標的神経節には、後根神経節、交感神経節、副交感神経節、翼口蓋神経節(SPG)、ガッセル神経節、神経叢、及び脊髄が含まれる。これらの神経構造のそれぞれには、神経組織と、神経組織を支え、疼痛を引き起こす神経経路に沿った情報の伝達に影響を与える非神経組織が含まれる。非神経組織の例には、例えば、グリア細胞、シュワン細胞、ミエリン、免疫細胞、結合組織、上皮細胞、神経膠細胞、星状細胞、小膠細胞、上衣細胞、希突起膠細胞、衛星細胞、心血管細胞、血液細胞が含まれ得る。神経組織とは一般に、軸索、細胞体、樹状突起、受容体末端、受容体、シナプスなどの構成要素を含むニューロンを指す。
【0124】
重要なことには、本発明の文脈において、神経組織(軸索、細胞体、樹状突起、受容体末端、受容体、シナプスなどの構成要素を含むニューロン)及び/又は非神経組織(グリア細胞、シュワン細胞、ミエリン、免疫細胞、結合組織、神経膠細胞、星状細胞、小膠細胞、上衣細胞、希突起膠細胞、衛星細胞、心血管細胞、血液細胞など)の調節は、疼痛の知覚の治療的抑制の一部又は全体を担っている可能性がある。
【0125】
末梢神経は主に軸索で構成されているが、神経節や脊髄などの他の神経構造には、軸索、細胞体、樹状突起、シナプスなどの多くの構成要素が含まれている。神経構造内では、これらの構成要素の性質にばらつきがあり、例えば、サイズ、形状、及び非神経組織を支える界面のばらつきが含まれる。例えば、末梢神経には大径と小径の両方の軸索が含まれていることがよくある。シュワン細胞は、いくつかの軸索を囲む非神経支持細胞であり、ミエリン鞘と呼ばれる脂質二重層の層が豊富な絶縁カバーを備えている。一部の軸索はミエリン鞘に囲まれ、一部の軸索はミエリン鞘に囲まれていない。一般的に、様々な神経構成要素の構造は、それらの機能に関連している。例えば、直径の関数としての膜コンダクタンスのわずかな増加に対して軸コンダクタンスが比較的大きく増加するため、通常、大径軸索は小径軸索よりも速く神経信号を送信する。同様に、大径軸索上のミエリン鞘の存在は、ランビエ絞輪と呼ばれる軸索の無髄領域間の膜貫通電流に対する抵抗を増加させることにより、活動電位の伝導速度を更に増加させる。ランビエ絞輪は、線維の短い無髄部分であり、活動電位は、ランビエの各後続ノードでの膜貫通電流のバーストによって軸索に沿って中継される。一般に末梢から中枢神経系に情報を送信する末梢神経軸索(例えば、疼痛を含む感覚情報)は、求心性線維と呼ばれることが多く、一方、一般に中枢神経系から末梢に情報を送信する軸索(例えば運動情報)は、遠心性線維と呼ばれることが多い。
【0126】
本明細書で使用される「線維」という用語は、体性神経系の有髄求心性又は遠心性末梢軸索を指す。一般的に、A線維は固有受容、体性運動機能、触覚及び圧力の感覚、更に疼痛及び温度の感覚に関連している。線維は一般に、直径が約1~22マイクロメートル(μm)で、伝導速度が約2メートル/秒(m/s)から100m/sを超える。各A線維には、線維の周囲にミエリン鞘を形成する専用のシュワン細胞がある。上記のように、ミエリン鞘には脂質が多く含まれており、膜貫通電流に対する電気抵抗が増加し、神経線維に沿った活動電位の高い伝導速度に貢献している。線維には、アルファ、ベータ、デルタ、及びガンマ線維が含まれる。アルファ、ベータ、及びガンマA線維の直径は5~20マイクロメートル(μm)で、運動機能、低閾値感覚機能、及び固有受容に関連しているが、疼痛には関連していない。デルタA線維は疼痛に関連しており、1~5ミクロン(μm)の範囲の小さな直径を有している。
【0127】
本明細書で使用される場合、「C線維」という用語は、約2m/s未満の伝導速度を有する体性神経系の無髄末梢軸索を指す。C線維の直径は約0.2~1.5マイクロメートル(μm)で、後根及び交感神経線維が含まれ、主に疼痛や温度などの感覚、一部の限られた機械受容、反射反応、自律神経エフェクター活性、及び内臓機能に関連している。
【0128】
末梢神経では、鈍く持続的な痛覚は「緩徐痛」と呼ばれることが多く、神経信号を比較的ゆっくり伝えるC線維によって末梢神経に伝達される。鋭く急速に知覚される痛覚は、しばしば「速い疼痛」と呼ばれ、C線維よりも伝導速度が高いAδ線維によって末梢神経に伝達される。Aδ線維は一般に、無髄C線維と比較して、軽く有髄である小径の感覚軸索を含む。急性及び慢性の疼痛には、Aδ線維とC線維の両方が含まれる。
【0129】
上記の末梢神経軸索に与えられた例に加えて、軸索、細胞体、樹状突起、受容体終末、受容体、シナプスなどの神経構造の構成要素の構造及び機能の類似の原理は、末梢神経、脳神経、神経節及び自律神経、神経叢、脊髄を含む異なる神経構造に適用される。細胞膜、脂質二重層、イオンチャネル、ミトコンドリア、微小管、核、液胞、及び細胞質の他の成分など、非神経及び神経組織の構成要素内の細胞下構造はまた、神経構造のそのような構成要素の機能に関連している。更に、下流の構造(例えば、治療部位の下流にある細胞及び細胞下構造)はまた、神経治療(例えば、遺伝子転写、シナプス伝達、エピジェネティクスの下流調節、又はニューロン内の多くの分子シグナル伝達カスケードのいずれかに沿った調節)によって、一次又は二次的に、機能的及び構造的に影響を受ける可能性がある。下流の分子及び細胞の機構、更には細胞間の接続性及び通信でさえ、疼痛経路と運動経路、非疼痛性感覚経路、及び固有受容経路とで大きく異なる場合がある。
【0130】
別の例として、翼口蓋神経節は、副交感神経ニューロン、交感神経ニューロン、感覚ニューロンで構成されている。交感神経節内では、副交感神経ニューロンには細胞体及びシナプスが存在するが、交感神経ニューロン又は感覚ニューロンには存在しない。むしろ、交感神経及び感覚ニューロンの軸索のみが翼口蓋神経節を通過する。本装置及び方法を使用して、神経構造種類の1つ(例えば、細胞体、シナプス、軸索)における神経信号伝達を選択的及び/又は可逆的に調節できるが、神経節に存在する他の神経構造を調節することはできない。例えば、副交感神経経路を介した伝達の調節又は抑制は、例えば、翼口蓋神経節の細胞体又はシナプスを介した信号の伝達を抑制することにより、交感神経経路及び少なくともいくつかの感覚経路を介したシグナル伝達を維持しながら達成することができる。追加の例として、交感神経、副交感神経、及び他の感覚線維経路を介したシグナル伝達を維持しながら、小径感覚ニューロンを介した伝達の調節又は抑制を達成することができる。別の例として、神経節内の他の全ての経路を介したシグナル伝達を維持しながら、副交感神経経路及び小径感覚経路の調節を達成することができる。特に、神経構造内の各種類の神経構成要素は、特定の経路を介して選択的な標的調節の能力に寄与する独自の支持非神経組織を有することができる。
【0131】
以下により詳細に説明するように、本装置及び方法を使用して、例えば神経信号伝達を抑制又は遮断することにより、神経信号伝達を選択的かつ可逆的に調節して疼痛を抑制することができる。この疼痛の選択的かつ可逆的な抑制は、神経毒性、血管毒性、又は注射液化学物質アレルギーのリスクを与えない。本装置は、標的の神経構造を破壊せず、萎縮、神経障害及び疼痛のリスクなしに慢性疼痛の兆候を治療するのに適しており、神経が治療前、治療中、又は治療直後の急性疼痛の兆候にうまく適合し、その結果患者は装置なしで家に帰ることができ、関節置換術又は他の整形外科処置の後など、術後1日から数週間の間、依然として疼痛の緩和を体験する。言い換えれば、治療対象の標的領域又は神経との長期の直接接触が必要な装置(例えば、植え込み型発生器及び神経カフを介して)は必要ない。しかし、必要に応じて、特に慢性疼痛の兆候については依然として、装置を埋め込む又は部分的に埋め込む、及び/又は患者と共に持ち帰ることができる。
【0132】
サンプル装置
【0133】
図1は、例示的な刺激装置100(電気刺激装置)の概略図を提供する。刺激装置100を使用して、患者の病状を治療するための電気信号の適用により、神経構造の標的神経組織及び非神経組織を選択的かつ可逆的に調節することができる。刺激装置100は、治療部位に電気刺激を送達する、例えば、神経構造の標的神経組織及び非神経組織に電気刺激を送達する電極120を含む。電気刺激は、経皮的に配置されたリード線(L)及び電極120によって、植え込みリード線(L)及び電極120によって、又は身体の開口部を通って前進し、標的神経構造の上にある粘膜組織(例、翼口蓋神経節、ガッセル神経節)隣接して(例えば、近く又は接触して)配置された電極120によって送達することができる。粘膜組織が口腔粘膜、鼻口腔粘膜、胃腸(GI)管粘膜、腸粘膜、膀胱粘膜を含む例。電極120は、治療部位に電場を生成し、その結果、神経線維活動の選択的かつ可逆的な調節が生じ、疼痛が抑制される。上記のように、神経線維活動の「調節」には、神経内のニューロンの軸索に沿ったインパルスの通過の励起及び抑制/中断の両方が含まれ、遮断効果を作り出すポイントへの神経信号伝達の抑制が含まれる。
【0134】
電気信号刺激の送達には、近くの他の組織との相互作用が含まれる。例えば、電極の経皮的適用及び位置特定の場合、電気信号刺激は、標的神経構造に近接した電極120の配置を提供するために、皮膚、脂肪、骨及び筋肉を含む患者の外部組織を貫通してナビゲートした電極120を介して送達される。この例では、電気刺激は、標的神経構造だけでなく、結合組織、神経構造の支持組織、脂肪、骨、筋肉並びに血管内及びその周囲に存在するなどの心臓血管組織及び細胞などの周囲組織にも影響する。経粘膜適用の場合、電気信号刺激は、上を覆う粘膜組織に隣接して(例えば、近く又は接触して)配置される電極120を介して送達される。電気刺激は、標的神経構造、並びに電極120の下及び周囲の組織、電極120と標的神経構造との間に介在する組織、並びに他の周辺組織(皮膚、脂肪、筋肉、骨、軟骨、結合組織、神経構造の支持組織、血管内及びその周囲に存在するなどの心臓血管組織及び細胞、並びに表皮、真皮、並びに神経受容体、毛包、汗腺、皮脂腺、アポクリン腺、リンパ管に存在する他の組織)に影響する可能性がある。経皮的及び経鼻的適用の両方で、治療部位への電気刺激の適用は、疼痛の知覚を抑制するために、神経系構造の標的神経組織及び非神経組織を調節しながら(例えば、選択的及び/又は可逆的に)、電気刺激及び刺激装置100は、神経系構造及び/又は周囲組織(例えば、上にある粘膜組織)に損傷が生じないように設計されている。
【0135】
図1に概略的に示されるように、刺激装置100及び電極120/リード線Lは、再利用可能又は使い捨て可能であってもよい。望ましくは、神経構造は、使い捨てリード線L及び電極120を介して調節され、再利用可能な外部刺激装置/信号発生器140及び制御装置130によって駆動され得る。刺激装置100は、その全体が、
図2Aに概略的に示されている標的神経構造(N)に隣接する位置での患者内(患者の皮膚(S)の下)への植え込み用にサイズ合わせ及び構成が可能であると考えられる。制御装置130/信号発生器140に電気エネルギーを供給する電源180は、患者の内部又は外部に配置することができる。リード線/電極120のみが患者内に植え込まれ、信号発生器140及び制御装置130を含む残りの構成要素は、
図2Bに概略的に示されるように、治療を提供するために容易に操作できる手持ち式装置で具現化されることも考えられる信号発生器140、制御装置130及びリード線/電極120を含む刺激装置100は、診療所の部屋間で移動できる静止面上又は移動可能なカート上に留まるように設計されたより大きな非手持ち式装置で実施でき、電極120/リード線(L)のみが、患者の皮膚の開口部又は患者の身体の他の開口部を通して(例えば、鼻腔を介して)経皮的に前進されることが更に考えられる。
【0136】
刺激装置100を使用して、他の感覚機能を維持しながら、疼痛を可逆的及び/又は選択的に抑制することができる。具体的には、刺激装置100によって提供される電気刺激は、他の感覚及び運動機能、並びに固有受容に関与する神経線維を介した神経信号伝達を維持しながら、疼痛の伝達に関与する神経線維を介した神経信号伝達を可逆的及び/又は選択的に調整することができる。
【0137】
調節された神経機能の可逆性に関して、刺激装置100は、例えば約1日から約30日間の神経信号伝達を抑制又は遮断することにより、疼痛を可逆的に抑制することができる。好適には、疼痛の知覚は、約5日間から約30日間抑制される。慢性疼痛の場合、疼痛の知覚は約90日から約356日間抑制される。神経信号伝達の可逆性と、治療後の適切な期間後の機能の回復は、特に術後の急性疼痛にとって重要である。刺激波形のパラメータを調整して、予想される疼痛抑制の持続時間を調整し、疼痛抑制が必要以上に長く続かないようにすることができる。例えば、膝関節置換手術を受ける患者では、急性疼痛感覚は回復中の患者の身体活動を調節するのに役立つ重要な保護信号となるため、疼痛知覚が手術後15~30日後に戻ることが重要である。
【0138】
調節された神経機能の選択に関して、刺激装置100は、疼痛の知覚を抑制し、神経組織及び非神経組織を選択的に調節して、他の感覚及び運動機能及び固有受容を維持することができる。これにより、神経構造の他の機能を維持しながら、電気神経調節治療が神経構造の機能のサブセットに対して選択的であるシナリオが作成される。疼痛の知覚は抑制されるが、他の感覚及び運動機能、及び固有受容は維持される。例えば、電気信号は、疼痛の伝達に関与する神経線維を介した神経信号伝達を抑制することにより、末梢から発生して脳に到達する疼痛信号の伝達を分断する。これは、標的神経構造のニューロンにおける疼痛信号の伝達の直接的な抑制を含むか、又は、中枢神経系(例えば、脊髄及び脳)のニューロンなどの脳への疼痛信号の伝達に関与する他の下流ニューロンの間接的な抑制によって達成できる。
【0139】
保存された感覚機能には、例えば、非疼痛性触覚(低閾値感覚機能)、視覚、聴覚、味覚、嗅覚、及びバランスが含まれる。また、開示された電気信号は、熱受容、自律神経活動及び内臓機能の伝達に関与する神経線維を介した神経信号伝達を調節できると考えられる。
【0140】
疼痛の知覚の選択的調節は、運動及び感覚軸索を含む末梢神経などの混合神経構造に調節を適用することが望ましい場合に特に有用である。例えば、多くの外科的介入では、神経の運動及び感覚及び固有受容機能を維持しながら、混合神経を介して伝達される疼痛を調節して急性外科的疼痛を治療することが望ましい。疼痛を治療しながら運動及び感覚機能並びに固有受容機能を維持することは、手術からの回復中に理学療法又は付属器の他の動きを行う必要がある場合に特に重要である。例えば、多くの術後ケアプログラムには、患者が外科的処置後に筋肉の萎縮やその他の機能の停滞を回避できるようにするための手順が含まれている。疼痛を治療しながら運動制御と感覚及び固有受容機能を維持することは、そのようなプログラムを可能にし、強化することができる。
【0141】
以下により詳細に説明するように、電気刺激の1つ以上のパラメータを調整して、選択した種類の神経線維及び/又は神経構造の選択領域を介した神経信号伝達を選択的に遮断することができる。電気刺激の調整可能なパラメータは、例えば、波形形状、波形周波数、波形振幅、電極120で生成される電場強度(例えば、電極又は治療部位で測定)、波形DCオフセット、波形デューティサイクル(例えば、電極を介した連続送達及び/又は断続的送達)、組織温度、冷却機構パラメータ(例えば、冷却速度、冷却媒体の流量、冷却媒体圧力、治療部位又は冷却機構の一部で測定された温度)、並びに、治療期間を含む。以下により詳細に説明するように、これらのパラメータは、制御装置130、ユーザインタフェース170、及び刺激装置100に組み込まれ得る冷却機構によって調整可能及び制御可能である。
【0142】
例えば、標的神経構造が末梢神経、例えば、約2.5mmより大きい直径を有するものなどの大きな末梢神経である場合、電気刺激は、末梢神経における有髄Aδ線維及び/又は無髄C線維を介した神経信号伝達を抑制することができ、電気刺激は、Aβ及びAα線維、及び/又は運動線維の少なくとも1つを介した神経信号伝達を維持する。電気刺激の少なくとも1つのパラメータを調整して、有髄Aδ線維及び/又は無髄C線維を選択的に抑制する一方で、Aβ及びAα線維及び/又は運動線維の少なくとも1つを介した神経信号伝達を維持できると考えられる。
【0143】
別の例では、電気刺激は、標的末梢神経における有髄Aδ線維及び/又は無髄C線維を介した神経信号伝達を抑制することができ、電気刺激は、隣接神経又は隣接神経束におけるAβ及びAα線維、及び/又は運動線維の少なくとも1つを介した神経信号伝達を維持する。痛覚を選択的に遮断することにより、隣接する神経及び/又は隣接する神経束の選択された神経線維を介した神経信号伝達を可能にしながら、痛覚の鋭さを低減して、他の大きな運動線維への影響を防ぐことができる。
【0144】
別の例では、粘膜組織の層で覆われた標的神経構造、例えば、ガッセル神経節、翼口蓋神経節(SPG)。電気刺激は、粘膜組織を介して送達され、下にある神経構造の特定の種類の神経線維及び隣接する非神経組織を介した神経の単一伝達を調節する。例えば、副交感神経線維、交感神経線維、感覚神経線維を含む神経線維の種類。例えば、標的神経構造が翼口蓋神経節(SPG)を含む場合、電気刺激は、SPGを含む副交感神経線維、SPGを含む交感神経線維、及び/又はSPGを含む感覚神経線維を介する神経信号伝達を選択的に抑制する。この神経信号伝達は、選択されていない種類の神経線維(例えば、SPGを含む副交感神経、交感神経、及び感覚神経線維)の少なくとも1つの機能を選択的に維持しながら、抑制できると考えられる。
【0145】
更に、電気刺激の少なくとも1つのパラメータを調整して、有髄Aδ線維の機能を差別的に抑制し、有髄Aδ線維は、無髄C線維よりも多くの割合の線維が抑制される。有髄Aδを介した神経信号伝達は、一般に、速く鋭い/刺すような疼痛の感覚に関連し、無髄C線維を介した神経信号伝達は、通常、鈍い/うずく疼痛の感覚に関連している。従って、電気刺激は、鋭い疼痛の感覚に関与する神経線維の機能を差別的に抑制するように調整することができ、それらの線維は、鈍い/うずく疼痛の感覚に関与する神経線維よりも多くの割合の線維が抑制される。
【0146】
同様に、電気刺激の少なくとも1つのパラメータを調整して、無髄C線維の機能を差別的に抑制し、無髄C線維は、有髄Aδ線維よりも多くの割合の線維が抑制される。つまり、従って、電気刺激は、鈍い/うずく疼痛の感覚に関与する神経線維の機能を差別的に抑制するように調整することができ、それらの線維は、速く鋭い/刺すような疼痛の感覚に関与する神経線維よりも多くの割合の線維が抑制される。
【0147】
別の例では、ガッセル神経節又は翼口蓋神経節(SPG)などの粘膜組織の層で覆われた標的神経構造では、電気刺激は、神経節の副交感神経、交感神経、及び/又は感覚神経線維の機能を差別的に抑制するように調整できる。例えば、標的部位に送達される電気刺激は、SPGの副交感神経線維の機能を差別的に抑制することができ、副交感神経線維は、非副交感神経線維及び非神経組織よりも多くの割合の線維が抑制される。同様に、例えば、標的部位に送達される電気刺激は、SPGの交感神経線維の機能を差別的に抑制することができ、交感神経線維は、非交感神経線維及び非神経組織よりも多くの割合の線維が抑制される。同様に、治療部位に伝達される電気刺激は、SPGの感覚神経線維の機能を差別的に抑制することができ、感覚神経線維は、副交感神経、交感神経、及び非神経組織よりも多くの割合の線維が抑制される。
【0148】
疼痛の知覚の抑制の追加の機構は、抑制効果が治療部位の下流又は二次的な場合である。例えば、標的神経構造が大きな末梢神経、例えば直径が約2.5mmを超える神経である場合、電気刺激は神経組織又は非神経組織の活動又は機能を調節でき、その結果、生化学シグナル伝達カスケードが起こり、これは、疼痛を表す脊髄又は皮質ニューロンの活性化を低下させ(例えば、シナプスシグナル伝達の調節を介する)、一方非疼痛性触覚の検出、伝達、処理及び生成、運動制御、並びに固有受容に関与する中枢神経系及び末梢神経系ニューロンを介した神経信号伝達は維持される。この場合、電気刺激の少なくとも1つのパラメータを調整して、Aδ線維及び/又は無髄C線維に由来する疼痛の下流又は二次的影響を選択的に抑制することができ、一方で非疼痛性触覚の検出、伝達、処理及び生成、運動制御、並びに固有受容に関与する中枢神経系及び末梢神経系ニューロンの機能は維持される。
【0149】
この場合、電気刺激の少なくとも1つのパラメータを調整して、有髄Aδ線維に由来する疼痛の下流又は二次的影響を差別的に抑制し、有髄Aδ線維の下流又は二次的影響は、無髄C線維の下流又は二次的影響よりもより大きく抑制することができると更に考えられる。同様に、この場合、電気刺激の少なくとも1つのパラメータを調整して、無髄C線維に由来する疼痛の下流又は二次的影響を差別的に抑制し、無髄C線維の下流又は二次的影響は、有髄Aδ線維の下流又は二次的影響よりもより大きく抑制することができると更に考えられる。
【0150】
電気刺激の例
【0151】
上述のように、電極120は、神経組織及び非神経組織を選択的に調整するために、治療部位に電気信号を提供して疼痛の知覚を抑制し、他の感覚及び運動機能並びに固有受容を維持する。電気信号は、神経組織と非神経組織の両方を調節することにより、疼痛信号の伝達を分断する。以下に概説するように、電気信号の様々なパラメータは神経構造を介して機能を調節するように調節でき、例えば、刺激パルス波形形状(本明細書では単に「波形形状」とも呼ばれる)、刺激パルス波形周波数(本明細書では単に「周波数」とも呼ばれる)、刺激パルス振幅(本明細書では単に「振幅」とも呼ばれる)、電極120で生成される電場強度、刺激パルス波形DCオフセット、波形デューティサイクル(例えば、電極を介した連続送達、及び/又は間欠送達)、組織温度、冷却機構パラメータ、及び治療期間を含む。いくつかのパラメータは個別に調整して所望の効果を生み出すことができ、他のパラメータは効果の各パラメータ調節に対する相互依存性と組み合わせて調節して、所望の効果を生み出すことができると考えられる。上記及び以下でより詳細に説明するように、電気信号の様々なパラメータ及び/又はパラメータの組み合わせを調節して、選択した種類の神経線維及び/又は神経構造の選択領域を介した神経信号伝達を選択的かつ可逆的に調整する。
【0152】
神経系活動の選択的及び/又は可逆的抑制を促進するために(例えば、急性疼痛を遮断するために)、刺激装置及びシステムは、いくつかの実施形態では、神経及び/又は近くの組織に高周波刺激を直接適用するように構成され、神経系による十分な疼痛抑制反応を引き起こす。高周波刺激は、単一の治療/適用の過程で、近くの組織及び神経組織の損傷を避けるような方法でパルスで適用されてもよい。最大100Vで数分間の一連の20ミリ秒パルスで500kHz(及び最大42℃の温度)で適用される高周波刺激を適用でき、急性疼痛の感覚を選択的に分断することができる十分な疼痛抑制反応を引き起こすが、運動制御などの他の神経機能には影響しないことが観察されている。また、同じ高周波刺激を適用して、1日から30日間続くことができる臨床的に適切な期間で疼痛が遮断されるという点で、可逆的な疼痛抑制反応を引き起こすことができることが観察されている。特定の理論に縛られることを望まないが、選択的かつ可逆的な効果は、治療部位、特に神経に熱損傷を引き起こさずに組織に適用される特に高い電圧場に起因する可能性があると仮定できる。
【0153】
図7Aは、例示的な実施形態による、神経系活動を選択的及び/又は可逆的に抑制するために神経及び/又は近くの組織に適用できる例示的な電気刺激及び対応する制御パラメータを示す。
図7Aに示すように、電気刺激は、振幅、パルスデューティサイクル(例えば、パルスエンベロープ持続時間及びエンベロープ間間隔を含む)、刺激波形形状、及び波形周波数などの制御パラメータによって定義できる。500kHzの刺激周波数に加えて、他の刺激周波数範囲を適用できる。いくつかの実施形態では、刺激装置及びシステムは、約100kHz、約150kHz、約200kHz、約250kHz、約300kHz、約350kHz、約400kHz、約450kHz、約500kHz、約550kHz、約600kHz、約650kHz、約700kHz、約800kHz、約850kHz、約900kHz、約950kHz、及び約1MHzからなる群から選択される刺激周波数を有する電気刺激を適用するように構成される。パルスデューティサイクルを有する電気刺激の適用により、組織で熱損傷を引き起こさずに、より高い電圧又は電流振幅を出力する及び/又はより高い周波数(治療部位でより高い電圧場を生成できるようにする)が可能になる 。非正弦波形を有する電気刺激の適用は、所与の電気刺激で適用されるエネルギー密度を調整するために、及び/又はより高い電場の適用を可能にするために使用することができる。
【0154】
図7B、7C、7D、7E、7F、7G、7H、7I、7J、7K、7L、7M、7N、7O、及び7Pはそれぞれ、例示的な実施形態による電気刺激の波形形状を示す。
図7B~7Fに示すように、いくつかの実施形態では、刺激波形は、正弦波形(
図7B、7G)、三角形波形(
図7C)、方形又は矩形波形(
図7D)、三角形のこぎり歯波形(
図7E)、又は複雑な波形(
図7F)である。
【0155】
いくつかの実施形態において、所定のパルスの周波数は変化する(例えば、
図7K、7L、及び7Mに示されるようにチャープとして)。いくつかの実施形態では、電気刺激の振幅エンベロープは、所定のパルスに対して変化する(
図7K及び7L)。
【0156】
いくつかの実施形態では、電気刺激は電圧制御出力である。いくつかの実施形態では、電気刺激は電流制御出力である。いくつかの実施形態では、電気刺激は電力制御出力である。
【0157】
いくつかの実施形態では、刺激波形形状は、連続的な電荷平衡正弦波(例えば、
図7B~7F、7K、7L、7M、7N、及び7Pを参照)、又は正弦波の追加の組み合わせ(例えば、正弦関数として(
図7N、7O、及び7Pを参照))を含む。
【0158】
図示された波形は単なる例示である。インパルス又は他の形状など、他の種類の波形形状を生成できると考えられる。いくつかの実施形態では、刺激波形は、持続時間が1μs~10μsの単一パルスを含む。
【0159】
他の刺激パルス制御パラメータは、例えば、電極での電場強度、DCオフセット、組織温度、冷却機構パラメータ、治療期間などのフィードバック機構において制御できる。いくつかの実施形態では、刺激装置及びシステムは、電圧、電流、電力、及び温度の観察又は測定された時間的及び/又は空間的導関数に基づいて電気刺激を制御するように構成される(例えば、経時的な温度の変化率)。一部の実施形態では、電流制御刺激、電圧制御刺激、電力制御刺激、及び温度制御刺激の2つ以上を組み合わせて実行して、神経構造の標的神経組織及び非神経組織に送達することができる。振幅、波形形状、周波数、DCオフセット、デューティサイクル及び持続時間のパラメータは、このような電流制御刺激、電圧制御刺激、電力制御刺激、及び/又は温度制御刺激、又はそれらの組み合わせに合わせて調整できる。
【0160】
実際、刺激パラメータは、運動活動、低閾値感覚機能、及び固有受容に関与する神経活動を維持しながら、疼痛の知覚を選択的に抑制するように最適化できる。例えば、刺激パラメータは、運動活動、低閾値感覚機能、又は固有受容に関与する神経線維の神経活動を維持しながら(例えば、弱めることなく)、有髄Aδ及び無髄C線維の活動を弱める又は廃止するように最適化できる。
【0161】
刺激波形の振幅及びその他のパラメータは、以下に詳細を示すように、神経の所望の領域内の活動を好適又は最適に調節するように調整することができる(例えば、神経の特定の領域に影響を与えるか、完全な神経断面に影響を与える)。刺激波形は、連続的な波形の開始時、又は断続的な刺激中の刺激の各バーストの開始時のいずれかで、刺激の開始時での開始応答(例えば、神経構造での脈動感覚、筋肉の痙攣又は単収縮などの標的神経に隣接する筋肉の運動反応)及び神経組織の活性化に影響しかつ低減するパラメータの変化も含み得る。刺激波形のパラメータを調整して、治療後に達成される疼痛抑制の持続時間及び時間経過を制御し、単一の治療で適切な疼痛抑制が確実に達成されるようにすることもできる。
【0162】
刺激波形のパラメータを調整して、例えば、振幅を増加させるか、刺激波形の他のパラメータを調整することにより、電場の空間サイズ及び形状を増加させ、より大きな神経(例えば、直径が約2.5mmを超える)及びより大きな神経構造、又は形状、サイズ及び神経組織及び非神経組織の組成が異なる神経構造の治療を可能にする。脊髄や一部の神経節や神経叢などの一部の神経構造は元々大きく、これらの大きな構造の治療は波形パラメータの調整により可能になる。
【0163】
刺激波形のパラメータを調整して、損傷を与えない治療及び疼痛の抑制を可能にすることもできる。波形と同時に供給されるDC電流の量を制御するために、ハードウェア及びソフトウェアを含めることもできる。制御装置130は、例えば、電気信号と同時に送達されるDC電流又は電圧の量を調整するための電流制御装置又は電圧制御装置を含み得る。
【0164】
本装置及び方法を使用して、例えば神経信号伝達を抑制又は遮断することにより、神経信号伝達を選択的かつ可逆的に調節し、約1日から約30日間疼痛の知覚を抑制することができる。好適には、疼痛の知覚は、約5日間から約30日間抑制される。神経信号伝達の可逆性と、治療後の適切な期間後の機能の回復は、特に術後の急性疼痛にとって重要である。刺激波形のパラメータを調整して、予想される疼痛抑制の持続時間を調整し、疼痛抑制が必要以上に長く続かないようにすることができる。一例では、デューティサイクル、パルス振幅、及び治療持続時間(例えば、
図10及び11を参照)を調整して、神経信号抑制の所望の可逆性を生成することができる(例えば、
図10及び11を参照)。別の例では、治療部位の温度の制御を使用して、神経信号伝達の調節の所望の選択性を生成することができる(例えば、
図10及び11を参照)。
【0165】
上述したように、波形のパラメータ及びその調整を含む本発明の装置及び方法は、処置後数日から数週間の期間にわたって急性疼痛(術後疼痛など)を選択的に抑制することができる。しかし、波形のパラメータ及びその調整を含む本発明の装置及び方法は、慢性疼痛状態の治療処置を提供するためにも使用できることも理解されるべきである。慢性疼痛の治療処置は、継続的な信号の予防的送達、又は慢性疼痛の症状が発生した場合の進行を止めるオンデマンド送達が含まれる場合がある。これは、経皮的、部分的に植え込まれた、及び植え込まれたアプローチを介して実行され得る。
【0166】
電気信号を使用して神経構造の活動を調節する他の方法と比較して、本開示のシステム及び方法は、電気信号の単一の治療/適用で数日から数週間の期間にわたって選択的かつ可逆的な疼痛緩和を提供することができる。他の治療法では、特に大きな神経の治療に関して、意味のある持続的な疼痛の緩和を提供するために、数日間にわたる反復治療が必要である。例えば、小神経の疼痛を治療するために頻繁に使用されるパルス高周波は、45Vの高周波信号の断続的なパルスを利用して標的神経を刺激する。この場合、パルスを使用して、神経組織を損傷又は破壊する治療部位の温度を回避する。対照的に、本開示の刺激パラメータは、パルスRF信号に関連する温度制限のない高電圧、高周波波形の適用を可能にする。刺激波形のパラメータを調整することにより、電気信号の適用を制御して、組織への損傷を回避しながら、1回の適用で適切な疼痛抑制を確実に達成できる。
【0167】
例えば、システムは、約100kHzから約1MHzの間、約200kHzから約800kHzの間、約400kHzから約600kHzの間、及び約450kHzから約550kHzの間の周波数範囲で電気信号(本明細書では「電気刺激」とも呼ばれる)を治療部位に送達するように構成できる。例示的なシステムでは、治療部位に供給される電気刺激は少なくとも500kHzである。治療部位に送られる電気信号の振幅範囲は、5mA以上(例えば、10mAのピークツーピークに対応するピークツーセンター(peak-to-center))1.25A以下(2.5Aのピークツーピークに対応するピークツーセンター(peak-to-center))の間である。システム例では、電気信号の振幅は50mA~500mA、500mA~1A、1A~1.5A、1.5A~2A、又は2A~2.5Aである。電気刺激が経粘膜的に送達されるシステム例では、電気信号の振幅は約10mA~約5,000mA(ピークツーピーク)である。治療部位に送られる電気信号の振幅範囲は、10V以上500V以下である(20~1000Vピークツーピークに対応するピークツーセンター)。例示的なシステムでは、電気信号の振幅は10V~1,000V、20V~100V、100V~200V、200V~300V、300V~400V、又は400V~500Vである。電気刺激が経粘膜的に送達されるシステム例では、治療部位に送達される電気信号の振幅範囲は10V以上1,000V以下(ピークツーピーク)である。例示的なシステムでは、治療部位に送達される電気刺激は、約0.1Wから約1,250Wの範囲の電力を有する。
【0168】
治療部位に送達される電気信号は、正弦波形、方形波形、三角波形、周波数変調波形、インパルス(振幅変調波形、インパルス状波形など)及び/又はそれらの追加的組み合わせを有することができる。周波数変調波形の例はチャープである。振幅変調波形の例は、ウェーブレットである。別の例示的なシステムでは、治療部位に送達される電気信号は任意波形を有する。別のシステム例では、電気信号は前述の波形の組み合わせを有することができる。波形の繰り返し送達は、指定された繰り返し周波数で波形形状が繰り返し送達されることを意味する。電気信号の波形は、連続的又は断続的に送達できる。連続送達とは、指定された波形周波数で途切れることなく連続的に波形が送達されることを意味する。断続的な送達とは、刺激が送達されない間の中断によって分離される時間のエンベロープ中に、指定された波形周波数で波形が送達されることを意味する。連続送達の場合、デューティサイクルは100%である(例えば、チャープ関数により)。断続的送達の場合、デューティサイクルは約0.1%~約99%、好適には0.5%~25%の範囲である。デューティサイクルという用語は、パルスが所定の周波数で複数回発振する期間を指す。断続的な送達の場合、電気信号のエンベロープ間の幅は約1ms~約999ms、好適には70~999msであり、エンベロープ間の幅は、エンベロープの終了から次のエンベロープの開始までの持続時間として定義される。一例では、10kHzで送達される電気信号のパルス幅は30msである。
【0169】
例示的治療中、電気信号は30分以下、優先的には15分以下の治療持続時間で送達される。システムの例では、電気信号は1分以下、1分~5分、5分~10分、10分~15分、15分~20分、20分~25分、又は25分~30分の治療持続時間で送達される。
【0170】
以下に説明するように、制御装置130は、組織温度を約5℃~約60℃の間に維持しながら電気刺激を加えるように調整可能である。すなわち、電気信号は、約5℃~約60℃の振幅を有する組織温度を有し得る。
【0171】
治療部位に送達される電気信号は、電流制御、電圧制御、電力制御、及び/又は温度制御されてもよい。電気信号は、連続的な電荷平衡波形又はインパルス、あるいはそれらの追加的な組み合わせを含む。代替的に、電気信号は、非電荷平衡化波形又はインパルス、あるいはそれらの追加的な組み合わせを含む。
【0172】
標的部位で生成される電場の強度は10kV/mより大きい。治療部位に送達される電気刺激は、標的部位及び/又は電極で約20kV/m~約2,000kV/mの間の電場強度を生成又は誘導する。標的部位で発生する電場は、その時間ピークで20kV/m~2,000kV/m、25kV/m~500kV/m、又は50kV/m~400kV/mの範囲である。経粘膜用途では、電気刺激は、標的部位及び/又は電極で、好適には約20V/m~約1,000,000V/mの電場強度を生成又は誘導する。電場の強さは、電極からの距離、電極の形状、及び電極近くの異なる組織の伝導率などの他の要因の関数として変化する。刺激波形の波形パラメータの調整により、組織内及び電極と組織との界面での時空間電場の制御が可能になる。刺激波形の波形パラメータの調整により、組織内及び電極と組織との界面での時空間温度場(thermal field)の制御も可能になる。電場及び温度場の時空間的変動及びレベルは、標的神経構造での疼痛の望ましい選択的で可逆的な抑制を生成する重要な要因である。更に、波形と、電極などの刺激の他の態様と連携して実装される冷却機構は、以下で詳細に説明するように、電場から独立又は半独立して、時空間温度場の制御及び低減を可能にする。これらの2つの重要な変数を分離することにより、最終的に、神経組織に損傷を与えない、選択的で可逆的で調整可能な治療の提供が可能になる。
【0173】
異なる種類の線維を選択的に処理することに加えて、電気刺激及び誘導電場のパラメータと電気波形のパラメータとを調整して、神経構造の所望の領域内の神経信号伝達を優先的に調節することも可能であり、神経構造の一部は、完全な断面よりも小さい神経構造の一部である。
【0174】
電気刺激を調整して、神経構造への電気刺激の送達中に、開始応答(例えば、神経構造での脈動感覚、筋肉の痙攣又は単収縮などの標的神経に隣接する筋肉の運動反応)を減らすこともできる。
【0175】
冷却機構の例
【0176】
また、刺激装置100は、電気刺激の送達中に患者の組織への損傷を防ぐための冷却機構を含むことができると考えられる。冷却機構は、電極120及び/又は電極に一体化され得るか、又は電極120とは別個の構成要素であり得、電極に結合できるか、又は電極120とは別に、治療部位に配置され得る。冷却機構は、制御装置130によって制御されるか、その動作を指示するための別個の制御装置を含むことができる。冷却機構は、刺激装置100の接触面及び/又は電極120の接触面及び/又は治療部位近くの組織内に冷却効果をもたらすために使用される。
【0177】
組織への電気刺激波形の送達は、送達電極120に隣接する組織の加熱をもたらし得ることを当業者は理解する。組織の加熱が過剰な場合、組織に熱損傷が生じる可能性がある。本発明の1つの目的は、他の感覚及び運動機能並びに固有受容を維持しながら、疼痛知覚の選択的かつ可逆的な抑制をもたらすことである。組織の熱傷害は、神経活動電位の伝達を除去又は抑制するために意図的に使用されているが、これらのアプローチは感覚及び運動機能並びに固有受容を維持しない。更に、組織の冷却は、冷却された高周波アブレーションなどの熱アブレーションと共に使用され、組織内の電力散逸の増加を可能にし、RF波形の電力の増加及びより大きな熱病変の作成を可能にする。ただし、これらの冷却されたRFアプローチは、組織に熱病変を作成するために、組織温度を少なくとも60~90°Cに上げることを目的としている。対照的に、本開示は、神経構造の感覚、運動及び固有受容機能を維持しながら、疼痛の抑制をもたらし得る電気信号の送達を可能にしつつ、組織を熱損傷レベルより低く維持する冷却機構の使用を企図する。
【0178】
冷却機構は、患者の組織の温度を破壊的組織温度よりも低い温度、例えば組織に熱損傷を引き起こす可能性のある温度より低く保つことにより、電気刺激が与えられたときに患者の組織の損傷を防ぐ冷却効果を生み出す(例えば、数秒間で42~45℃を超えて上昇する温度を回避する)。冷却機構は、電極120から受信したフィードバック情報及び/又は患者及び/又は操作者からの入力に応答して、刺激装置100及び/又は電極120の接触面の温度を破壊的組織温度未満に維持する。フィードバック情報は、刺激装置100に結合された温度センサ210から受信した測定温度データを含む。温度センサ210は、電極120の接触面の温度及び/又は電極120の接触面に隣接する患者の組織の温度を測定することができる。温度センサ210は、制御装置130に電気的に結合され、測定温度に関するフィードバック情報を提供する。以下に説明するように、温度フィードバック情報に応じて、冷却機構の動作及び/又は電気刺激のパラメータを調整して、電極120の接触面の温度を制御し、それにより隣接する患者組織の温度を下げることができる。
【0179】
一例では、冷却機構は、ガス又は加圧流体(例えば、二酸化炭素、窒素、水、プロピレングリコール、エチレングリコール、塩水、又はそれらの混合物)などの冷却媒体を、リード線(L)に設けられた導管160を介して電極120を通して循環させるポンプを含み得る(
図3A~3Eを参照)。循環ガス/流体は、電極120、治療部位の組織、及び隣接組織から熱を除去するのに役立つ。このガス/流体は、室温で供給されるか、組み込まれたガス/流体冷却ユニットを使用するか、氷又は他の冷却機構を使用することにより、室温未満に冷却されてもよい。ガス/流体の冷却は、治療前及び治療中に実行されてもよい。リード線(L)の周囲に断熱コーティング又はシースを組み込んで、周囲環境への熱伝達による冷却媒体の加熱を防ぐこともできる。
【0180】
別の例では、冷却機構は、治療部位の組織及び/又は電極120と接触して提供される熱伝達材料を含む。熱伝達材料は、電極120/リード線(L)内、電極120の外面上、及び/又はイントロデューサ上に配置することができる。熱伝達材料は、電極120、治療部位の組織及び隣接組織から熱を除去するヒートシンクとして機能する。熱伝達材料は、熱伝導率の高い材料(例えば、アルミニウムなどの金属、セラミック材料、導電性ポリマー)、熱を蓄える能力の高い材料(例えば、高比熱容量、単位質量あたりの高熱容量、高体積熱容量、及び/又は単位体積あたりの高熱容量の材料などの良好な熱質量)、及び/又は1つ以上のペルチェ回路、又はこれらの組み合わせを含むことができる。熱伝達材料は、約40℃~100℃の間の温度で相を変化させることができる相変化材料もまた含むことができる。例示的な相変化材料は、電極120/治療部位から周囲空気まで延びる経路に提供されるパラフィンワックスを含む。パラフィンワックスと周囲空気の間の熱交換は、電極120/治療部位及び隣接する組織から熱を除去するのに役立つ。追加の例示的な冷却機構は、参照により本明細書に組み込まれる、「Cooled RF Probes」という名称の2016年10月4日に出願された米国特許出願第62/403,876号に記載されている。
【0181】
組織への損傷を防ぐことに加えて、冷却機構は疼痛の選択的抑制を可能にする。例えば、運動機能又は非疼痛性の感覚機能又は固有受容機能も抑制される疼痛の非選択的抑制は、温度が望ましい閾値(数秒間の期間の42~45℃など)未満で保持されない場合観察できる。冷却機構を使用することにより、このような温度閾値未満で標的組織を保持することにより、神経構造の他の機能を調節又は抑制することなく、疼痛を選択的に抑制することができる。従って、電極及び組織の温度は、疼痛の抑制の選択性を可能にするために、冷却機構によって調整できる重要なパラメータである。
【0182】
冷却機構を使用すると、様々な形状、サイズ、及び組成の神経構造の治療も可能になる。例えば、大きな末梢神経、脳神経、神経節、自律神経、脊髄の一部及び神経叢などのより大きな神経構造を包含するために、組織内の電気波形によって生成される空間電場のサイズを大きくする必要があってもよい。空間電場のサイズを大きくする1つの方法は、電気波形の振幅を大きくすることである。冷却機構を使用すると、熱損傷を回避する熱レベルに組織を維持しながら、電気波形をより高い振幅で送達できる。例えば、直径が2.5mmを超える末梢神経が刺激装置100によって治療される場合、冷却機構の使用により、神経構造に熱損傷を与えることなく、振幅を含む電気波形パラメータを、より大きな神経標的を治療するのに十分高いレベルに調整することが可能になる。別の例では、脊髄又は神経節(例えば、ガッセル神経節、翼口蓋神経節(SPG))などの神経構造は、異なる熱伝導率及び電気伝導率を持つ様々な組織で構成され、囲まれていてもよい。この場合、冷却機構により、加熱しやすい部位(神経構造及びその周辺組織を含む)での熱損傷を防止しながら、神経構造の所望の領域内の疼痛の所望の選択的かつ可逆的な抑制をもたらす治療波形の送達が可能になる。
【0183】
更に、冷却機構の使用により、電気信号によって治療される組織の空間場を調整して、神経構造の所望の領域内の神経信号伝達の調整を可能にし、神経構造の所望の領域は、その完全な断面よりも小さい神経構造の一部である。電極120の近くの組織又は標的治療部位に隣接する組織に冷却を適用して、組織温度が所望の閾値レベルを超えないようにすることができる。例えば、冷却せずに電極を介して送達される刺激は、組織内のいくつかの位置で熱的に損傷する組織内に温度場(thermal field)を生成する場合がある。組織に熱損傷を与えることが予想される場所での冷却機構の使用及び配置により、電気信号によって治療される組織の空間場の非損傷治療及び調整が可能になる。別の例では、組織内の熱インパルスは、短い(例えば、1秒未満)期間中に生成される場合がある。冷却機構により、組織内の特定の場所でこれらの熱インパルスを閾値レベル以下に低減し、電気信号によって治療される組織の空間場の調整が可能になる。別の例では、冷却及び電気波形パラメータを同時に調整して、熱損傷を生成することなく、神経構造の治療(神経構造の完全な断面よりも小さい部分の治療又は神経構造の断面全体の治療)を可能にする。
【0184】
電極の例
【0185】
図3A~3Gは、標的神経構造に電気刺激を送達するための様々な例示的な電極120の概略図を提供する。
図3A~3E及び
図3Gの電極120は、標的神経の近く(例えば、神経系構造に接触することなく、電極は、神経系構造の約1cm以内、約5mm以内、又は2mm未満である)、周囲、及び/又は接触して配置するように構成された経皮電極の形態である。例示的な電極は、
図3A~3E及び3Gに側面斜視図で示されている。例示的な経皮電極は、参照により本明細書に組み込まれる、「Selective Nerve Fiber Block Method and System」という名称の、2017年2月3日に出願された米国特許出願第15/501,450号にもまた記載されている。
【0186】
双極又は多極で使用される各電極は、少なくとも1つの陽極領域と、標的神経「N」の近くに配置/接触する少なくとも1つの陰極領域を有している。
図3Aに示される単極電極120は、神経の近くに位置する陰極と、ある程度離れて位置する(例えば、皮膚の表面上のパッチ電極の形態の)戻り電極(例えば、陽極)とを含むことができる。
図3Bに示すように、双極及び多極の電極構成は、神経の近くに少なくとも1つの陰極及び1つの陽極を有している。電極の形状及びサイズ、並びに電極間の間隔は、神経を取り囲み貫通する電場及び温度場の輪郭に固有であり、標的神経構造の選択的かつ可逆的な調節を可能にする。
図3Cは、フック又はJ形状を有する別の例示的な経皮電極120を提供する。
図3Cに示すように、電極120は、フック形状の凸部内で横方向に標的神経構造に適合するようにサイズ設定及び構成され、一度配置されると、神経構造は電極120の近くに保持され、神経構造と電極接点150との間の接触が確保される。
図3Cに示すように、電極120は2つの電気接点、電極120の湾曲したフック/J形遠位先端に設けられた第1接点150と、電極120の細長い本体部分に設けられた第2接点150とを含む。このような電極は、イントロデューサを介して挿入されるように設計され、電極の端部のフック/J形部分がイントロデューサ内で湾曲されて、外形が小さくなるように設計されてもよい。イントロデューサから出ると、電極120の湾曲部分は膨張し、神経構造の表面の周りで湾曲する。
図3Dは、電極先端が概ね半球形状を画定し、概ね均一な神経接触表面を提供する例示的な電極120を示している。電極は、小径のイントロデューサを通して挿入されたときに閉じ込められる/膨張しない、そして縮小されたプロファイルを提供する膨張可能な導電性表面を含んでもよい。イントロデューサから出ると、拡張可能な導電性表面は、標的神経構造の表面(又は表面の一部)の周りに適合するように拡張する。
図3Eは、V字形又はU字形を有する例示的な電極120を示す。
図3Eに示されるように、電極120は、標的神経構造がV/U形状の凸部内に横方向に置かれるように配置されるようにサイズ設定及び構成される。治療部位に配置されると、神経構造は、電極の凸部の電極120内に配置され、神経構造の長手方向の両側の接点150との接触を維持する。
【0187】
図3Gは、電極120の本体部分に対してある角度で延びる遠位先端を有する別の例示的な経皮電極120を提供する。この双極構成は、電極の細長い本体に沿って配置された2つの電気接点150を含み、神経(N)の近くに陰極及び陽極を形成する。
図3A-3E及び
図3Gに描写される各電極のように、電気接点の長さは、標的の神経/神経構造のサイズに応じて、1~50mmの長さにすることができる。例えば、電気接点の長さは、約1mm~約30mmの範囲であり得る。別の例では、電気接点の長さは、長さが約2mm~約20mmの範囲であり得る。別の例では、電気接点の長さは、長さが約2mm~約15mmの範囲であり得る。さらなる例では、電気接点の長さは、長さが約5mm~10mmの範囲であり得る。電極120/電極120の細長い本体に含まれる電気接点150のそれぞれの長さは同じでも異なっていてもよいと考えられる。例えば、
図3Eの電極120上に描かれた電気接点150のそれぞれは、同じ長さを有しており、神経に関して一貫した均一の電場が確実に生成されるようにする。
図3Gに示される例示的な電極120では、電気接点150の長さは電極120に沿って変化する。特に、電極120の遠位先端部分122に位置する遠位電気接点150aの長さは、近位電極150bの長さよりも大きい(電極120の本体124に沿って、遠位電気接点150aと電極120の端近位端との間に配置される)。一般に、遠位電気接点150aは、近位電気接点150bの長さの少なくとも2倍であり得る。一例では、遠位電気接点150aは約10mmの長さとすることができ、近位電気接点150bは約4mmの長さとすることができる。別の例では、遠位電気接点150aと近位電気接点150bの表面積を一致させることができ、電極の長さは異なっていてもよい。例えば、近位電気接点が遠位電気接点よりも大きい円周/円周幅を有する場合、近位電気接点は、遠位電気接点よりも短い長さを有することにより、一致した表面積を達成できる。
【0188】
図3Gに示すように、電極120は、電極120の遠位先端部分122が電極120の本体部分の長手軸に対してある角度で延びる細長い本体を有する。遠位先端部分122の角度は、約0度~約50度の範囲であり得ると考えられる。遠位先端部分122の角度は、電極120の本体124/長軸に対して約5度~約15度の間である。電極120の遠位先端部分122は、湾曲部を越えて、直線で延びることができる(
図3Gに示されるように)。また、遠位先端部分122は、湾曲していても、湾曲した表面を含んでいてもよいと考えられる。
図3Gに示されるように、遠位電気接点150aは、遠位先端部分122に沿って配置され、近位電気接点150bは、電極120の細長い主本体部(本体124)に沿って配置される。この向きでは、遠位電気接点150aは、標的神経と接続するサイズ設定及び構成であり、近位電気接点150bは、皮下組織、例えば脂肪、筋膜、筋肉に隣接して配置されるサイズ設定及び構成である。この構成では、電極120/電気接点150間の組織抵抗が増加し、より高い電圧が送達され、より低い電流がもたらされ、より低い電流送達はより少なく組織を加熱する。
【0189】
図3Fは、神経構造及びその上にある粘膜組織の治療に使用される例示的な電極120を示している。具体的には、
図3Fの電極は、電気刺激をガッセル神経節及び/又は翼口蓋神経節(SPG)に送達する際の使用に適している。刺激装置は、患者の鼻孔を通って中鼻甲介の上縁に沿って前進するようにサイズ設定及び構成された細長い本体部分220を含む。1つ以上の電極120が、細長い本体部分220の遠位端に提供される。電極120は、SPGのサイズに対応するサイズを有する接触面を有し、電極120に提供される電気刺激は、SPG全体を同時に調節でき、またSPGに近接する/覆う粘膜層に均一な圧力を提供することができる。一般に、電極120の接触面積は1.57~56mm
2の範囲である。電極120の接触面の幅は少なくとも1mm~6mmの範囲である。一例では、電極120の接触面は、細長い三角形の形状、ボールの先端、又はハーフボール、又は平坦な円形の形状を有する。上記のように、
図3Fの電極は、鼻腔を通って翼口蓋神経節(SPG)に隣接する位置まで前進するように設計されている。従って、細長い本体部分220は、長さ5cmから長さ20cmの範囲である。細長い本体部分220は、中鼻甲介の上縁に対応する輪郭を有する。送達及び配置を容易にするために、細長い本体部分220は柔軟な材料で構成されることも考えられる。図示されていないが、刺激装置100及び/又は電極120は、患者の口内に配置されるようにサイズ設定及び構成され得ることが企図される。例えば、電極120は、歯肉及び歯の周りに取り付けられたマウスピース上に配置でき、電極120が歯肉組織上(例えば、歯肉線上)に配置される。電極120は、マウスピース上に配置することができ、着用すると、例えば、舌神経、歯槽神経、及び頬神経を含む神経節又は末梢神経の少なくとも1つに隣接して配置される。
【0190】
上述したように、電極120は、電気刺激を治療領域/標的神経構造に送達するための1つ以上の接点150を含むことができる。接点150は、電極120と、組織に電気刺激が送達される組織との間の界面を形成することを目的とする電極120の一部として画定される(組織に電場を生成するなど)。電極120及び接点150の構成は、電場及び電流の流れを最大化して標的神経構造に向け、電気刺激の治療用量を様々なサイズ及び形状及び組成の神経に、近くの組織への望ましくない刺激なしに送達し、最適な治療効果を得るために、神経構造に対する電極120の堅実な配置を確保するように設計できる。
【0191】
電極の関連する設計要素は、接点数、サイズ、形状、方向、材料、電解質媒体、送達方法(単極、双極、多極など)、及び戻り経路を含む。これらの要素の調節及び調整により、電場及び温度場を適切な神経構造又は神経構造の一部を介して誘導して、疼痛を選択的かつ可逆的に抑制することができる。更に、これらの要因の調節及び調整により、電場及び温度場を適切な神経構造又は神経構造の一部を介して誘導して、単一の適用で治療処置を効果的に送達し、治療効果の可逆性の時間経過を調整することができる。これらの要因を調節及び調整することにより、電場及び温度場を整形し、大きな末梢神経(直径2.5mmより大きい)、脳神経、神経節、自律神経、神経叢、脊髄などの大きな神経構造の断面全体を治療することもでき、並びに大小両方の神経構造の部分を治療することができる。例えば、電気接点のサイズ及び形状、又は電気接点の数を調整して、大きな神経との表面積接触を最適化できる。同様に、電気接点のサイズ及び形状、又は電気接点の数を調整して、粘膜組織の下にある神経構造への表面積接触/電気刺激伝達を最適化できる。
【0192】
電極接点数、サイズ、形状、方向、材料、電解質媒体、送達方法(単極、双極、多極など)、及び戻り経路もまた調整して、組織への熱損傷を防ぐことができる。これらの要因は、電極に関連する組織内のいくつかの場所での熱損傷の発生を含む、電気波形によって生成される温度場に影響を与え、冷却機構及び波形調整の文脈での調整を含むこれらの要因の調整は、組織への熱損傷の回避を可能にする。
【0193】
例えば、電極120は、標的神経構造に送達される電気刺激によって生成される電場を最大化及び方向付けるようにサイズ設定及び構成される。電極の電気接点150は、約1mm
2~約100mm
2の範囲の表面積を有することができ、大小の神経構造の部分だけでなく、大小の神経構造の全ての断面積部分に治療処置を施すのに必要な電場及び温度場のサイズに対応できる。好適には、電極接点150は、約2.5mm
2~45mm
2の範囲の表面積を有する。大きすぎる電気接点は、神経構造に接触しない接点150の表面の部分を含む可能性があり、その結果、電流が流れる可能性がある分路として機能する。神経構造の治療処置用の電極を設計するとき、分流電流は、治療効果を生み出すために制御装置から供給される必要な電流を増加させるため、推奨されないことが多い。
図3Gに示されるように、電気接点150はまた、例えば、円形又は楕円形の接触面を含む滑らかな曲線形状の周囲を画定してもよい。直線形状の接点、例えば正方形又は長方形の接点の鋭いエッジは、電流密度及び加熱の増加をもたらす可能性がある。しかしながら、電極120上に特別な大きさ及び位置にある場合、直線形状の接点150を使用して、電流密度及び熱加熱の増加を利用できると考えられる。従って、治療効果を生み出すために制御装置からの必要な電流を維持しながら、神経構造への治療電場及び温度場の目標とする送達への要望に基づいて、電気接点のサイズ及び形状が最適化される。
【0194】
別の例では、電極120は、多極式に依存して動作する少なくとも2つの接点150を含むことができ、結果として生じる電場の電流誘導及び/又は電流集束を可能にする。別の例では、電極120は、独立して動作する少なくとも2つの接点150(例えば、同じ電極120上の2つの接点150又は対応する接点150を有する複数の電極120)を含む。このようにして、各電極120によって送達される電気刺激は、神経構造に送達される総電気刺激がより短い(半分の)時間で送達されるようにインターリーブされ得る。具体的には、別個の電極120のそれぞれは、第1電極の電気刺激が第2電極の電気刺激とインターリーブされる断続的な電気刺激信号を送達することができ、例えば、第1電気刺激の「オンサイクル」は第2電気刺激の「オフサイクル」中に発生し、第2電気刺激の「オンサイクル」は第1電気刺激の「オフサイクル」中に発生する。
【0195】
別の例では、電極120は、陽極として使用される1つ以上の電極接点150と、陰極として使用される1つ以上の他の電極接点とを選択することにより、電場及び温度場の誘導のために選択できる複数の電極接点150を含むことができる。異なる電極接点の組み合わせを選択することにより、電場及び温度場の形状及びサイズを調整できる。例えば、
図3Gの電極120に関して、遠位及び近位電気接点150a、150bは、細長い本体/電極120の同じ側に配置することができる。従って、電気接点150a、150bは、電気接点なしで細長い本体電極120の円周の一部の周りに円周方向に電気エネルギーを送達せず(例えば、電気接点150a、150bは、電極120の本体の短軸に円周方向に電気エネルギーを送達しない)、それによって送達された電気刺激の電圧場整形及び電流誘導を提供する。電気刺激の短い試験パルスを接点のサブセットを介して送達して、神経の近接性及びカバレッジを判断し、神経との十分な接触が確認されるまで、更に接点を追加することができる(例えば、運動による脚の運動出力を監視すること又は筋電図記録により)。
【0196】
抵抗器は、電極120の電気接点150の電気回路と直列に配置することができる。例えば、
図3Gの電極120に関して、電気接点150a、150bの一方又は両方と直列に抵抗器を配置することができる。抵抗器は、所望の設定点温度(例えば、破壊的組織温度)以下で刺激インピーダンスと発生器140から送達される電圧を増加させ、刺激電流と熱変化を低減する。同様に、電気接点150は、高インピーダンス又は高レベルの静電容量を備えた材料から構築することができる。例えば、ステンレス鋼又はプラチナのインピーダンス又は静電容量よりも高い材料を使用して、高電圧レベルの送達を依然として可能にしながら、刺激電流及び熱変化を減らすことができる。これは、所望の設定点温度(例えば、破壊的組織温度)以下で刺激インピーダンスと発生器140から送達される電圧を更に増加させ、一方で刺激電流と熱変化を低減する。
【0197】
一般的に、経皮電極アセンブリの形態であり得る電極120を利用して標的神経構造に電気刺激を送達して、標的神経構造における神経線維活動を一時的かつ選択的に調節することができる。例えば、電極120は、患者の皮膚の開口部を通して経皮的に導入されるように構成されたパドル、カフ、円筒形カテーテル又は針、ワイヤ形態、又は細いプローブの形態の電極アセンブリを含むことができる。別の例では、頭及び顔の疼痛の治療で使用するために(本明細書でより詳細に説明するように)、患者の粘膜組織上に配置された電極120、例えば、ガッセル神経節及び/又は翼口蓋神経節(SPG)に近い標的部位を経鼻的に前進させるようにサイズ設定及び構成された電気プローブ、を介して標的神経構造に電気刺激を与えることができる。
【0198】
加えて、電気刺激は、例えば慢性疼痛の治療のために、患者に埋め込まれた電極120を介して標的神経構造に送達されてもよい。この場合、電極120は外科的に植え込まれてもよく、外科的処置中又は低侵襲性インプラント処置中に、神経構造に接触して又はその周りに配置されてもよい。電極120は、縫合を使用して、又は電極を神経構造又は隣接組織に固定する電極上に構築された固定構造を使用して、神経構造及び周囲組織に固定することができる。
【0199】
リード線(L)は、導電性ワイヤ又はケーブルを介するなど、刺激装置100と電極120との間で電気エネルギーを伝達する手段を含む。リード線(L)は、永久的に電極120に直接取り付けられてもよいし、又は導電性コネクタを使用して取り付け及び取り外し可能であってもよい。この場合、互換性のあるコネクタが電極120上及びリード線(L)上に存在する。リード線は、永久的に刺激装置100/信号発生器140に直接取り付けられてもよいし、導電性コネクタを使用して取り付け及び取り外し可能であってもよい。この場合、互換性のあるコネクタが刺激装置100/信号発生器140上及びリード線(L)上に存在する。リード線(L)はまた、電極120を冷却するために使用される流体/ガスを伝達するために使用される導管160など、流体/ガスを伝達するための手段も含むことができる。流体伝達導管(導管160)は、電極120及び冷却装置に直接又は着脱可能コネクタを介して接続することができる。リード線(L)はまた、電極120の配置に最適な形状を提供するように起伏をつけることができ、例えば、神経構造の近くの理想的な位置に電極をナビゲートし、挿入ポイントと標的神経構造との間に部分的な障壁を示す障害物又は組織の周りにナビゲートすることを可能にする。
【0200】
リード線(L)及び電極120は、カニューレ、ガイドワイヤ、イントロデューサ針及びトロカールなどのリード線イントロデューサツールを使用して配置することができる。特に経皮的配置の場合、これらのリード線及び電極イントロデューサツールを使用して、皮膚及び下層組織を介して標的神経構造に近い位置まで誘導することができる。イントロデューサツールを使用して、必要な全ての接点150及び標的神経構造近くの他の電極構成要素の導入/配置を可能にすることもできる。リード線(L)、電極及びイントロデューサツールにより、末梢神経、脳神経、神経節、自律神経、神経叢、及び脊髄を含む大小両方の標的神経構造の近くに電極を配置でき、更に電極(単数又は複数)とこれらの標的神経構造との間を適切に接続し、これは、疼痛の知覚の選択的かつ可逆的な抑制の生成を支援する。リード線(L)、電極、及びイントロデューサツールは、経皮使用の場合、例えば急性疼痛の場合、及び植え込み使用の場合、例えば慢性疼痛の場合、電極120の配置も可能にする。
【0201】
図4Aは、標的神経構造、例えば患者の皮膚の開口部を通して末梢神経、に隣接して配置された例示的な経皮電極120(例えば、
図3G)の概略図を提供する。電極は、2つの電気接点150を備えた単一の針状シャフトで構成されていてもよい。この例では、遠位電気接点150aは、標的神経構造(N)の近くのアクティブ電気接点として機能し、近位電気接点150bは、戻り電極として機能する。上述のように、電極120のシャフトの材料は、熱伝導率及び/又は熱質量を最大化するための所望に基づいて選択され得る(例えば、電極120をヒートシンクとして機能させ、組織の温度を上げることなく、より高い電圧又は電流処置波形の送達を可能にしてもよいため)。電極120のシャフト材料はまた、超音波画像(例えば、エコー源性材料)又は透視撮像下でプローブが見えることの所望に基づいて選択することもできる。
【0202】
皮膚表面から近位電気接点150b(戻り接点)までの距離(A-B)は、皮膚又は皮下組織への損傷のリスクを減らすために最適化されてもよい。例えば、距離A-Bは、約0~約40mmの範囲であり得る。別の例では、距離A-Bは、約0~約20mmの範囲であり得る。さらなる例では、距離A-Bは約5mm~約15mmの範囲であり得る。別の例では、距離A-Bは、約10mm~約15mmの範囲であり得る。近位電気接点150b(戻り接点)と屈曲部の間の距離(C-D)及び/又は近位電気接点105bと遠位電気接点150a(アクティブ接点)間の距離(C-E)は、例えば、電圧場を標的神経構造に優先的に向くように整形することにより、又は例えば治療波形のパルス中に熱エネルギーを集束することにより、例えば熱エネルギーを標的神経構造から遠ざけることによって、治療結果を最適化するために選択される。例示的なシステムでは、距離C-D及びC-Eはそれぞれ約2mm~約50mmの範囲にある。好適には、距離C-D及びC-Eは、約10mm~約30mmの範囲である。
【0203】
近位電気接点150b(戻り接点)と屈曲部の間の距離(C-D)及び/又は近位電気接点150b(戻り接点)と遠位電気接点150a(アクティブ接点)間の距離(C-E)は、異なる解剖学的構成を有する患者の様々な深さの様々な標的神経構造の治療を可能にするように選択できる(例えば、筋肉、皮膚、脂肪層の異なる厚さ、標的神経構造までの異なる深さなど)。例えば、近位電気接点150b(戻り接点)と湾曲又は遠位電気接点150a(アクティブ接点)(C-D又はC-E)との間の距離は、遠位電気接点150a(アクティブ接点)を、様々な異なる解剖学的構成の様々な患者の様々な標的神経構造の近くに配置できるように、ただし、皮膚と近位電気接点150b(戻り接点)との間の距離(A-B)が、皮膚又は他の皮下組織に損傷を与えることなく、エネルギーの効果的な送達を可能にするのに十分であるように選択することができる。別の例では、電極は調整可能な距離(C-D又はC-E)を有することができ、近位電極接点150b(戻り接点)を、標的神経構造の深さに関係なく、所望の解剖学的位置(例えば、脂肪層内又は皮膚の下の固定距離)に繰り返し配置できる。
【0204】
遠位電気接点150a(アクティブ接点)と電極120の遠位先端との間の距離(F-G)は、鋭く尖った先端などの、高電流密度を生成する可能性がある接点150a上の幾何学的構造を介した電流の送達を回避することにより、治療波形の送達中の時空間熱スパイクを低減するように選択され得る。加えて、遠位電気接点150a(アクティブ接点)と電極120の先端との間の距離(F-G)は、電極シャフト及び先端の材料の選択などの設計及び製造上の考慮に基づいて選択され得る。例えば、電極シャフト及び先端が導電性材料で作られ、遠位電気接点150a(アクティブ接点)と電気的に接続又は連続している場合、遠位電気接点150a(アクティブ接点)は電極120の先端も含み得る(例えば、組織を貫通する際、鋭利な先端上の絶縁体が除去される可能性があるため)。逆に、電極シャフト及び先端が非導電性材料で作られており、遠位電気接点150a(アクティブ接点)に電気的に結合されていない場合、アクティブ接点と電極の先端との間の距離(F-G)は0mmより大きくてもよい。この距離(F-G)の選択はまた、様々なプローブ構成要素の望ましいエコー源性によって影響を受ける可能性がある。更に、電極120の先端は、高電流密度を最小限に抑えるため、又は挿入時の絶縁体除去のリスクを克服するために、滑らかで、尖っていない、すなわち鈍いように構成されてもよい。
【0205】
電極120の遠位先端部分122の角度(α)は、電極120の挿入及び配置中に、標的神経構造(N)に向けて接点150の誘導を可能にするように選択され得る。この角度(α)はまた、例えば、標的神経構造を通る電流の流れを誘導し、電圧場を標的神経構造に優先的に向くように整形し、及び/又は治療波形のパルス中に標的神経構造に向かって熱エネルギーを集中させることによって、治療波形の標的神経構造への送達を指示するのにも役立ってもよい。
【0206】
遠位電気接点150a(アクティブ接点)の長さ(E-F)は、標的神経構造の直径全体に及ぶように、又は標的神経構造の一部のみ(例えば、線維束又は線維束の群)に及ぶように選択され得る。一実施形態では、遠位電気接点150a(アクティブ接点)の長さ(E-F)と近位電気接点150b(戻り接点)の長さ(B-C)は同一であってもよい。他の実施形態では、近位電気接点150b(戻り接点)の長さ(B-C)は、遠位電気接点150a(アクティブ接点)の長さ(E-F)より大きくてもよい。より長い近位電気接点150b(戻り接点)は、戻り接点での電流密度がアクティブ接点(遠位電気接点150a)よりも低いことを保証できる(例えば、戻り接点の面積がアクティブ接点の面積より大きい場合)。より長い戻り接点(近位電気接点150b)はまた、戻り接点(近位電気接点150b)又は皮膚及び皮下組織の近くでの加熱の可能性を減らすことができる。他の実施形態では、近位電気接点150b(戻り接点)の長さ(B-C)は、遠位電気接点150a(アクティブ接点)の長さ(E-F)より小さくてもよい。より長いアクティブ接点(遠位電気接点150a)は、治療波形回路のインピーダンスを増加させる可能性がある。より長いアクティブ接点(遠位電気接点150a)を使用して、組織に送達される電流又は組織の加熱を維持又は低減しながら、アクティブ接点での電圧場を増加させることができる。特に、治療波形回路のインピーダンスを増加させることは、上述のように、抵抗要素を電極120の回路内のアクティブ又は戻り経路に追加することにより、全体的又は部分的に達成されてもよい。電気接点150に接続する電気ケーブル又は電気配線要素と直列に、抵抗要素を追加することによる。ケーブル自体も、回路内の抵抗要素として機能する場合がある。
【0207】
図4Bは、
図4Bの電極120及び電気接点150の概略断面図を提供する。電極120のアクティブ及び/又は戻り接点はまた、完全に円周(360°)である接触アーク長(β)、又は
図4Bに示されるように、部分的にのみ円周(360°未満)である接触アーク長(β)を有するように配向されてもよい。いくつかの実施形態では、接触アーク長(β)は180°未満である。接触アーク長の短縮(β)を使用して、例えば、標的神経構造(N)を通る電流の流れを誘導し、電圧場を標的神経構造に優先的に向くように整形し、及び/又は治療波形のパルス中に標的神経構造に向かって熱エネルギーを集中させることによって、治療波形の標的神経構造への送達を更に指示するのに役立つ可能性がある。更に、接触アーク長(β)の短縮は、標的神経構造を含まない組織内の経路を流れる電流の量(分流電流など)の減少、又は組織治療波形によって提供される電圧場への非標的神経構造の曝露を低減することに役立つ可能性がある。これらの対策により、システムの電力消費が削減され、非標的組織へのリスクが軽減されてもよい。一例では、神経に最も近い遠位電気接点150a(アクティブ接点)は、シャント電流を減らし、優先的に神経に電流を誘導するために180°未満のアーク長を有し、一方、神経から最も遠い近位電気接点105b(戻り接点)は、180°より大きいアーク長を有している。この例では、戻り電気接点に長いアーク長を使用すると、戻り接点の(長手方向)長さを最小にしながら、2つの接点の表面積の一致を可能にし、2つの接点間の最適な分離距離が可能になる。
【0208】
また、電気接点150の厚さ(t)はまた、電極120の使用中に発生する可能性のある接点材料の機械的及び電気化学的応力に耐えるのに十分な電気接点質量を提供しながら、特定の針ゲージで電極120を製造できるように指定することができる。例えば、電気接点150の厚さ(t)は、0.01/1000インチ~50/1000インチの範囲であり得る。
【0209】
電極ホルダ126を設計に組み込んで、電極120を固定し、配置が完了した後の電極120の動きを最小限に抑えるのを助けることができる。例えば、電極ホルダ126は、治療波形の送達中に標的神経構造(N)に対する遠位電気接点150a(アクティブ接点)の位置を安定化するのに役立ち得る。電極ホルダ126はまた、ユーザが波形送達の持続時間にわたって電極120を適所に保持する必要なく、治療波形を送達することを可能にし得る。リード線(L)は、電気ケーブル及び電極120へのコネクタを含むことができ、遠位電気接点150a(アクティブ接点)、近位電気接点150b(戻り接点)、及び温度検知素子210(例えば、TC-及びTC+)に電気的接続を提供するのに使用されてもよい。
【0210】
レーザエッチング又は機械的にエッチングされた材料などのエコー源性特徴もまた電極上の所望の位置に組み込んで、超音波画像下での視覚化を強化することができる。
【0211】
温度検知素子210(温度センサとも呼ばれる)は、所望の精度(例えば+/-2℃、又は例えば+/-1℃、又は例えば+/-0.5℃、又は例えば+/-0.3°C)及び所望の範囲(例えば0~100°C、又は例えば20~80°C、又は例えば30~70°C)を提供するように選択できる。熱電対の精度は、任意の冷接点の周囲温度と製造要因の影響を受ける。加えて、温度検知素子210及び電極120は、温度測定において所望の応答速度(例えば、0~500ミリ秒の時定数、又は0~100ミリ秒の時定数、又は0~10ミリ秒の時定数、又は0~1ミリ秒の時定数)を提供するように設計することができる。熱電対接合部の形状/サイズ、並びに電極120及び熱電対/温度検知素子210で使用される材料の比熱容量は、所望の温度測定応答速度を生成するように設計することができる。
【0212】
図5は、双極電気接点150/電極120の様々な構成例を示している。以下により詳細に説明されるように、構成例A~Dは、単体電極120を示し、例示的な構成E~Hは、
図9A及び9Bに関して説明した同心接点構造を備えた単体電極120を示しており、電極120は、窓付きイントロデューサカニューレ230と併せて使用され、構成例I~Jは、湾曲したイントロデューサカニューレ230と共に使用される可撓性電極120を示しており、例示的な構成K~Mは、直線イントロデューサカニューレ210と共に使用される直線電極120を示している。これらの構成のいずれも、個別に又は組み合わせて、本明細書で説明する電極120のいずれかで使用できると考えられる。
【0213】
以下で説明するように、例示的な構成には、単体電極120設計及び複数体電極120設計が含まれる。例えば、構成A~D及びE~Hは、2つの電気接点150を含む単体電極120シャフトで構成される単体構成の例を示している。電極120の先端は、丸くて滑らか(例えば、A、E~H)又は鋭利(例えば、B~D)であり得る。近位電気接点150b(戻り接点)は、完全に円周状(例えばA及びB)又は部分的に円周状(例えばC~H)であってもよい。遠位電気接点150a(アクティブ接点)は、電気接点として電極120の先端を含める/除外する、及び/又は治療波形を標的神経構造に向けるという要望に基づいて、様々な異なる形状に整形することができる。ルーメンは、電極120を介した流体の注入を可能にするために、全ての設計に組み込まれ得る。例えば、ルーメンは、電気刺激の送達の前、最中、及び/又は後に、治療部位(例えば鎮痛剤)に薬物療法を送達するために使用できる。例Dでは、アクティブ接点の一部としての鋭利な先端の回避は、電気接点がない第2の本体の使用によって達成される。この場合、電極120を通って伸びる中央ルーメンから突出する鋭利なイントロデューサ針である。ここで、鋭利なイントロデューサ針は、電極120の配置後、又は流体がルーメンを介して注入されることが望まれる場合に取り外され得る。実施例E~Hでは、電気接点がないカニューレ230が、単体電極120の挿入のための経路を提供するために使用される。このカニューレ230は、例えば、鋭利なイントロデューサ針を使用して、単体電極なしで最初に配置されてもよい。配置後、イントロデューサ針を取り外し、電極120をカニューレ230に挿入してもよい。カニューレ230は、窓付きアクセス232を戻り接点又はアクティブ接点へ提供するために使用され得る(例えば、例E~Fにおける戻り接点への窓付きアクセス)。カニューレは、曲線又は直線(E~Fで曲線、G~Hで直線)であってもよい。電極はまた、曲線又は直線(G~Hで曲線、E~Fで直線)であってもよい。
【0214】
I~Mに示す例などの複数体設計は、電気接点150を備えた複数のシャフトで構成されている。これらの例では、戻り電気接点150aがカニューレ230に設けられ、アクティブ電気接点150bを備えた第2本体234が、カニューレ230の中央ルーメンを通して挿入される。複数体を使用して、アクティブ接点と戻り電気接点間の距離を調整可能な電極を提供できる。例えば、第2本体234は、アクティブ電極150bと戻り電極150aとの間の所望の間隔に達するまでカニューレ230内で長手方向に移動することができる。所望の位置及び向きになると、カニューレ230内の第2本体234の位置が固定される。
【0215】
カニューレ230は、湾曲(例えば、I~J)又は直線(K~M)であり得る。アクティブ電気接点150bを含む電極本体(第2本体234)は、湾曲(例えば、K~M)又は直線(I~J)であり得る。
【0216】
図5に示すように、アクティブ及び戻り電気接点150b、150aは、電気接点アーク長の様々な組み合わせと組み合わせることができる。例えば、構成A、B、I、K及びLは、アクティブ及び戻り電気接点150b、150aの両方が電極120の周囲の大部分の周りに延びる電気接点を含む(例えば、180°、270°、360°を超える)。例えば、構成Aは、電極120の全周囲の周りに延びるアクティブ及び戻り電気接点150b、150aを有する電極120を示す。構成E~H、J、Mは、例示的な電極120を提供し、戻り電気接点150aは、アクティブな電気接点150bよりも電極の周囲のより少ない周囲に延びる。同様に、構成例は、様々な形状の組み合わせと組み合わされたアクティブ及び戻り電気接点150b、150aを示し、例えば戻り電気接点150aが直線形状を有し、アクティブ電気接点150bが曲線形状を有する構成Jを示す。
図5はまた、様々な接触長及び周囲で組み合わされたアクティブ及び戻り電気接点150b、150aを示し、例えば、構成B及びCは、戻り電極150aがアクティブ電極150bよりも短い(電極120の長手軸に沿った)電極を提供し、構成J及びMは、戻り電極150aがアクティブ電極150bよりも長い電極を提供し、構成I、Kは、戻り電極150aがアクティブ電極150bよりも大きい円周を有するプローブを示している。
【0217】
図6A及び6Bは、電極120と、電極120を発生器140に電気的に結合するリード線(L)との間の例示的な接続を示す。接続は、電極120の近位端及び/又は電極120の近位端に結合された電極のコネクタ128の設計を介して促進され得る。
図6Aで提供されるように、電極120及び/又は電極のコネクタ128は、複数の円周形状の接点が電極120の長軸の周りの層状同心表面として配置されるように、同心設計を含むことができる。例えば、
図6Aに示すように、接点Aは最も外側の導電性表面、接点Bは内側の導電性表面(電極120の長軸に面する向き)、接点Cは別の内側の導電性表面(電極120の長軸から離れて面する向き)、接点Dは及び最も内側の導電性表面(電極120の長軸に面する向き)である。同心表面はそれぞれ、電極120の固有の構成要素に電気的に接続され得る(例えば、アクティブ電気接点(遠位電気接点150a)、戻り電気接点(近位電気接点150b)、及び/又は温度検知素子210)。同心表面は、例えば、電気絶縁材料及び/又は隣接する導電性表面の間に提供される空気を含む誘電体層によって分離することができる。例えば、隣接する同心表面の間に、厚さの範囲が0.01/1000インチ~50/1000インチの誘電体層を設けることができる。針ゲージは、同心設計に対応するために、電極120のシャフトに沿って変化してもよく、又は一定であってもよい。更に、針ゲージは、アクティブ、戻り、及び温度検知の電気トレース/回路のルーティングに加えて、ルーメンの経路を提供するために選択することができる。
【0218】
リード線(L)は、電極120及び/又は電極のコネクタ128を発生器140と電気的に結合するための互換ケーブル及び/又はコネクタを含むことができる。リード線(L)ケーブル/コネクタは、対応するサイズ及び形状を有し、かつ電極120/コネクタ128の対応する同心表面と電気的に嵌合するように構成された同心表面(例えば、A、B、C、D)を含み、発生器140と電極120の間の高信頼性で一貫性のある電気接続を提供する。
【0219】
同心表面は、適切な機械的圧力が印加されたときに圧縮又は膨張するように設計できるため、リード線(L)と電極120との間に信頼性の高いぴったりした接合を可能にする。例えば、リード線(L)及び/又は電極120/コネクタ128に設けられた同心表面は、同心表面間に設けられた導電性表面又は誘電体層のいくつかにノッチを含むことができる。ノッチは、電極120(又はリード線(L))の対応する表面との一貫した接触を維持しながら、同心表面の制御された膨張を可能にする。
【0220】
リード線(L)及び/又は電極の同心設計は、リード線(L)及び電極120を通る及び/又はそれらの間の流体の通過を可能にするルーメンを含むことができる。例えば、プローブコネクタ(コネクタ128)は、最も内側の同心層内(及び/又は他の同心層間)に伸びるルーメンを含むことができ、シリンジ又はチューブのコネクタ128への取り付け及び最も内側の同心層を通る又は他の同心層との間の流体の注入を可能にする。
【0221】
更に、同心設計は、コネクタの構成要素としてだけでなく、電気接点及び温度検知素子の電気回路を、それらの端子位置から電極120の近位端に接続して発生器140に接続するための手段としても採用できる。導電性表面及び誘電体層を含む同心設計はまた、電極120のシャフトに沿って使用することもできる。そのような設計は、
図6Bに示されるように、単純な製造方法に役立ち、潜在的に、リード線(L)との接続を提供するために電極120シャフトを使用し、すなわちコネクタ128を使用しないことに適している。
【0222】
更に、同心表面間の誘電体層の材料の種類及び厚さ、並びに導電層の材料の種類及び厚さを選択して、導電層間の静電容量を最小化及び/又はインピーダンスを最大化することができる(例えば、分流及び寄生容量を減らし、治療波形の組織への送達を最大化すると同時に、発生器の電力要件を最小化するため)。
【0223】
電極120に1つ以上の温度センサ/熱検知素子210を含めて、電極120及び/又は特定の場所の組織温度に関するフィードバックを提供することができる。一例では、温度センサ(単数又は複数)210は、最高温度の部位であると予想される場所、例えば、予測電流密度が最高の場所の近くに配置され、これには、例えば、鋭利な先のとがった先端、接点の端部、異なる電気伝導率の材料間の不連続性又は急速な空間的遷移が含まれる。これらの温度センサの配置場所の選択は、モデリング研究、あるいは組織又は生理食塩水、導電性ゲル製剤、卵白などのモデル媒体におけるin vitro又はin-vivo温度測定に基づいて決定できる。温度センサのトレースは、温度検知回路への波形の伝達によって生じる電磁干渉のレベルを低減する方法でルーティングできる。
【0224】
同心配置に加えて、アクティブ及び戻り電気接点及び温度検知素子を、端子位置からリード線(L)ケーブル又は発生器140に接続する位置にルーティングするための様々な他の配置が評価でき、例えば、絶縁ワイヤのルーティング、絶縁されていないワイヤを備えた誘電体層の使用、導電性インクを使用した電気トレースの印刷などを含む。更に、アクティブ及び戻り接点並びに温度検知素子を、端子位置からそれらがリード線(L)ケーブル又は発生器140に接続する位置にルーティングするために使用される材料は、汚染又は分流のない電気信号の信頼できる効果的な伝送を可能にするために慎重に選択されてもよい。また、そのようなアプローチは、単一電極120上で複数の電気接点150又は複数の熱検知素子210が使用される場合に使用できることも理解されたい。
【0225】
信号発生器の例
【0226】
刺激装置100は、電極120及び制御装置130に結合された信号発生器140を含むことができる。信号発生器140は、上述の刺激波形のパラメータを含む刺激波形を生成する。信号発生器140は、指定された刺激波形を生成し、制御装置130による刺激波形の調節を可能にするために必要なソフトウェア及びハードウェア部品を含む。信号発生器140はまた、電極120及び患者を接地回路及び他の接地接続から電気的に絶縁して、電極が患者の体内に導入されときに患者が接地されないようにしながら、電極120を介して神経構造に刺激を送達する機能を含む。これは、例えば、インダクタ又は光アイソレータを介して実現される。更に、信号発生器140は、コンデンサ、インダクタ、抵抗器及び電極120への出力の近くにある他の受動回路部品を含むことができ、これらは電荷バランスを確保し、DCオフセットを低減し、あるいは前述の波形パラメータの望ましい調整を提供する。更に、フィードバック監視回路を組み込んで、送達される波形(電流、電圧、電力など)及び温度に関する情報を収集することができる(例えば、電極120又は組織内で温度監視機構(例えば、温度センサ210)を介して監視される)。流体/ガス冷却媒体の温度、流体/ガスの流量及び圧力、電極120及び/又は周囲組織からの熱伝達率などの冷却機構のパラメータもまた収集することができる。
【0227】
制御装置及び電源の例
【0228】
上記で一般的に説明したように、制御装置130は、電極120によって刺激装置100/信号発生器140の動作を指示して、標的神経構造に電気刺激を提供する。制御装置130/信号発生器140は、電気エネルギーを刺激装置100/電極120に供給する電源180に電気的に結合されている。電源180は隔離された電源を含むことができ、システム内の全ての機器は隔離された電源180によって電力を供給され、地絡及び電気幹線によって運ばれる電力スパイクからそれらを保護することができる。電源180はまた、一次電力又はバックアップ電力のいずれかのために使用される1つ以上の電池を含むことができ、これにより、施設の電気幹線に接続することなく装置を動作させることができる。
【0229】
具体的には、制御装置130は、信号発生器140の動作を指示して、電気刺激信号を標的神経構造に送達する。制御装置130は、高速データキャプチャ、出力制御、及び処理、並びに独立した波形サンプルレート及びオンライン分析を促進するためにオンボードメモリを有してもよい。制御装置のこれらの構成要素により、電極を介して送達される波形、冷却機構のパラメータ、並びに組織の熱的及び電気的状態を理解するために必要なフィードバックデータを収集できる。このフィードバックにより、疼痛の選択的かつ可逆的な抑制を提供するために、そのような治療パラメータの調整が可能になる。
【0230】
図1に概略的に示されるように、刺激装置は、導線(L)によって信号発生器140を介して制御装置130に接続される1つ以上の電極120を含むことができる。制御装置130は、所望の電気刺激を患者に送達するように設計された制御ロジック及びソフトウェアを含むことができる。制御装置130はまた、アナログ及びデジタルデータを処理し、患者監視システム190からの波形データ及びデジタル情報を記録でき、電気刺激のリアルタイム制御のために波形出力、アナログ出力及びデジタル出力を同時に生成することができる(リアルタイムの自動制御又は手動ユーザ制御)。例えば、制御装置130は、電極120及び/又は刺激装置100に結合された温度センサから受信したフィードバック情報に応じて電気刺激を調整することができる。例えば、刺激装置100/電極120は、刺激装置及び/又は電極接点の接触面と、電極120の接触面に隣接する患者の組織の温度とを測定するための熱電対を含むことができる。温度センサは、制御装置130に結合され、刺激装置100の接触面及び/又は電極120の接触面及び/又は組織内の他の位置での測定温度に関するフィードバック情報を提供する。次に、制御装置130又はユーザは、フィードバック情報に応じて電気刺激のパラメータを調整することができ、パラメータは、例えば、波形形状、波形周波数範囲、波形振幅範囲、電極で発生する電場強度、波形DCオフセット、波形デューティサイクル(連続的送達又は断続的送達)、組織温度、冷却機構パラメータ、及び治療期間を含む。制御装置によって中継又は記録されるか、電気信号のフィードバック制御に使用される追加のフィードバック信号には、温度、接触インピーダンス、電流、電圧、電気信号の電力、電気信号の他のパラメータ、組織内の電場に関する情報、血流、皮膚コンダクタンス、心拍数、筋肉活動(筋電図など)、又は他の生理信号が含まれる。
【0231】
電気刺激のフィードバック制御は、組織の損傷の発生を回避し、標的神経構造内の電気刺激の調整範囲を調節し、かつ大小両方の神経構造と、末梢神経、脳神経、神経節、自律神経、神経叢、脊髄などの神経構造の多様性を対象とするために電気刺激の調整範囲を調節するのに望ましい。電気刺激のフィードバック制御はまた、疼痛の知覚の抑制の可逆性の時間経過の調整を可能にし、疼痛の知覚の抑制の選択性を調整し、そして疼痛の適切な抑制が、例えば、単一の治療で達成されることを保証するために望ましい。
【0232】
電気刺激を調整して、選択した種類の神経線維を介して及び/又は神経構造の選択領域を介して、神経信号伝達を選択的に調整するか否かにかかわらず、制御装置130の制御及び/又は動作は、神経信号伝達の抑制の測定フィードバック(例えば、標的神経からの/標的神経を介する神経信号伝達がない/制限されていることの確認)、及び/又は治療部位の温度の測定フィードバック、及び/又は疼痛の知覚に関する患者からのフィードバックに基づいて、電気刺激のパラメータを変えて調整することができる。神経信号伝達がない/制限されていることの確認は、例えば、記録されたEMG、待ち時間及び/又は振幅又はバースト領域における疼痛線維応答の変化を示す直接神経記録、を含む術中監視技術により達成できる。制御装置130及びユーザインタフェースはまた、フィードバックに応答して、刺激波形のパラメータ、並びに電極構成及び冷却機構の特性を調整するために使用される。例えば、制御装置130は、治療中にリアルタイムで電気刺激のデューティサイクル及び/又は刺激エンベロープ持続時間を変化させて、治療部位の標的組織温度、すなわち破壊的組織温度を超えないで、治療部位に送達される電圧を最大化するように構成される。同様に、いくつかの実施形態では、制御装置は、リアルタイムで電気刺激のデューティサイクル及び/又は刺激波形エンベロープ持続時間を変化させて、治療部位の標的組織温度、すなわち破壊的組織温度を超えないで、治療部位に送達される電流を最大化するように構成される。即時の温度応答性フィードバックループを提供することにより、損傷を引き起こすことなく、可能な限り長時間、治療電圧(又は電流)を神経構造に届けることができる。電流を制御することにより、ユーザは組織の温度及び安全性をより簡単に制御できる。同様に、電圧制御は治療効果と相関している。
【0233】
あるいは、ユーザは、ユーザインタフェース170を介して提供されるフィードバックに応じて、刺激波形のパラメータ、並びに電極構成及び冷却機構の特性を手動で調整することができる。
【0234】
ユーザインタフェース例
【0235】
刺激装置100は、ユーザ(例えば、患者又は医療専門家)から入力を受け取り、入力をユーザに提供するためのユーザインタフェース170を更に含むことができる。ユーザは、電気信号への変更を含む刺激装置100の動作を指示する入力を提供してもよい。ユーザインタフェース170は、刺激装置100に関する情報をユーザに提供するディスプレイを更に含むことができる。例えば、ディスプレイは、刺激装置100の状態に関する情報、例えば、オン/オフ、信号送達モード、電気信号に関するパラメータ日付などを提供することができる。ユーザインタフェース170は、刺激装置100と一体であってもよい。また、ユーザインタフェース170は、刺激装置に電気的に(有線又は無線で)結合される遠隔装置に組み込まれてもよいと考えられる。例えば、ユーザインタフェース170は、外部のタブレットコンピュータ又は電話上に提供されてもよい。ユーザインタフェース170を使用して、制御装置130からのフィードバック情報に応答して、ユーザが電気刺激のパラメータを(リアルタイムで)アクティブに制御できるようにすることができる。
【0236】
システムはまた、患者監視システム190を含むことができる。患者監視システム190は、刺激装置及びユーザインタフェース170と組み合わせて使用されてもよい。患者監視システム190は、生理信号を取得し、増幅し、かつフィルタにかけ、それらをフィードバックのために制御装置130及び/又はユーザインタフェース170に出力する。監視システムは、患者の体表面温度の変化を測定するために患者の皮膚の外面に結合された温度センサ、患者の皮膚に結合された、又は患者の皮膚を通して挿入された血流計、患者の皮膚に結合された皮膚コンダクタンス計、患者の心拍数に対応する心電図信号を収集する心拍数モニタ、及び筋電図信号を収集する筋活動モニタを含み得る。心拍数モニタには、交流(AC)増幅器に結合された別個の心電図(ECG)電極が含まれる場合がある。筋活動モニタには、ACアンプに結合された別個のEMG電極が含まれる場合がある。他の種類のトランスデューサも使用できる。説明したように、患者監視システムで取得した全ての生理信号は、信号増幅器/調整器を通過する。電気刺激のパラメータは、制御装置130又はユーザのいずれかによって、患者監視システム190で受信したフィードバック情報に応じて調整することができる。例えば、電気信号の少なくとも1つのパラメータは、温度センサ、インピーダンス計、血流計、皮膚コンダクタンス計、心拍数モニタ、及び筋活動モニタから受信したフィードバック情報に応じて、制御装置130によって調整することができる。刺激波形及びパラメータ、並びに組織、電極及び冷却機構の電気的熱特性に関する情報もまた、ユーザインタフェース170を介して提供され、電気刺激又は冷却機構の少なくとも1つのパラメータあるいは電極構成を調整するために使用され得る。電気信号の調整されたパラメータは、例えば、波形形状、波形周波数範囲、波形振幅範囲、波形エンベロープ持続時間範囲(すなわち、刺激エネルギーが送達される期間(「オン」)、例えば、連続的に送達される刺激エネルギーが長いエンベロープ持続時間を有し、パルス刺激エネルギーが短いエンベロープを有する)、電極での電場強度、波形DCオフセット、波形デューティサイクル(例えば、連続的送達、又は断続的送達)、組織温度、冷却機構パラメータ、及び治療期間を含み得る。電極構成(例えば、双極、多極、単極、インターリーブされるなど)はまた、フィードバック情報に応じて、調整することができる。
【0237】
方法例
【0238】
本開示は、患者による疼痛の知覚を抑制するために、電気エネルギーの単一の適用で神経構造の標的神経組織及び非神経組織を選択的かつ可逆的に調節する方法を包含する。本発明を実施する方法は、患者を快適な位置に配置するステップから始まる。心拍数モニタ(ECG)、筋活動モニタ(EMG)、又はその他のモニタを使用して、電気刺激信号に対する患者の反応を測定できる。患者は、電気刺激信号の適用前にベースライン状態を判定するために一定期間監視されてもよい。
【0239】
次に、標的神経構造を識別して位置特定できる。電気信号を経皮的に送達する場合、電極120を使用して、神経ロケータ(例えばAmbu(登録商標)Ministim(登録商標)神経刺激器及びロケータ)などの刺激装置を使用して、標的神経構造を位置特定することができる。神経の位置はまた、刺激装置を介して低レベルの刺激エネルギー信号を通過させることにより特定することができる。低刺激振幅(単一パルス)を使用した遠位筋群における刺激誘発性筋収縮は、刺激ポイントが神経信号伝達を調節するのに十分近いことを示す。
【0240】
次いで、刺激装置100が、神経構造の標的神経組織及び非神経組織に近接する治療部位に配置される。電極(単数又は複数)120は、経皮的又は経鼻的方式で、又は開放切開及び植え込みにより、神経構造の近くに配置することができる。
【0241】
例えば、電極120は、患者の皮膚(S)の開口部を通して経皮的に神経構造に隣接して配置することができる(例えば、
図5を参照)。(内部)電極120/リード線(L)は、外部刺激装置/信号発生器140に取り付けられるか、又は手持ち式刺激装置に固定することができる。電極120の経皮的な配置には、皮膚の貫通、及び標的神経構造に近い位置への画像案内下(超音波を使用するなど)での電極120及び/又はリード線(L)のナビゲーションが含まれ得る。カニューレ、ガイドワイヤ、イントロデューサ針、及びトロカールなどの追加の位置特定ツールを使用して、組織のナビゲーション及び標的神経構造に近接する電極の最終的な配置を可能にすることができる。
【0242】
神経構造の近くに電極120を配置するステップは、電極120を介して初期電気刺激(すなわち、低レベル電気刺激、0.5V未満)を治療部位に送達し、電極120で電圧及び/又は電流を測定するステップを含み得る。測定された電圧及び/又は電流に基づいて、治療部位(標的神経構造の近く)の電極120の位置が調整される。更に初期電気刺激信号が治療部位に送られ、電極120の位置が調整され、これは、測定された電圧及び/又は電流が電極120が効果的な治療を送達する位置における神経の周りに配置されていることを示す閾値電圧及び/又は閾値電流に対応するまで繰り返される。
【0243】
電気信号が経皮的に送達される場合、方法は、患者の皮膚の外面に1つ以上の戻り電極を配置するステップを更に含んでもよい。各陽極は、望ましくは、陽極の皮膚接触面が刺激電極の接触面と少なくとも同じ(又はより大きい)表面領域を有するような、皮膚接触面を有する。1つ以上の戻り電極は、分流を回避するのに十分な1つ以上の刺激電極から離れた距離で、皮膚上に配置されてもよい。
【0244】
本発明を実施する方法は、例えば、戻り電極の場合に皮膚に塗られてもよいか、又は電極120の周りのシース内に配置されてもよいか、又は経皮的に配置された電極120の場合に電極120の先端に配置されてもよい導電性液体、ゲル又はペーストなどの結合媒体の使用を更に含んでもよく、電場を最大化かつ誘導し、刺激エネルギーの治療用量を大小の神経に送達し、最適な治療効果のための信頼性の高い電極/神経の配置を保証する。代替的及び/又は追加的に、1つ以上の皮膚保湿剤、保水剤、スクラブ剤などが、皮膚の導電率を高める及び/又は皮膚のインピーダンスを下げる目的で皮膚に塗られてもよい。導電性ペーストの例には、コロラド州AuroraのWeaver and CompanyのTen20(登録商標)導電性ペーストと、カリフォルニア州Foothill RanchにオフィスがあるNihon KohdenのELEFIX Conductive Pasteが含まれる。導電性ゲルの例には、ニュージャージー州FairfieldのParker Laboratories,Inc.からのSpectra 360 Electrode Gel、又はオハイオ州EatonのElectro-Cap International、Inc.からのElectro-Gelが含まれる。経皮電極を適用する前に皮膚を準備するために使用できる例のスクラブ剤は、コロラド州AuroraのWeaver and companyのNuprep皮膚準備ゲルである。
【0245】
さらなる例では、電極は、治療部位に隣接し、かつ標的の神経構造に近接して患者の体内に埋め込むことができる。電極及び刺激装置は、標的神経構造に又はその近くに植え込むことができる。別の例では、電極を治療部位に植え込み、リード線を患者の皮膚から刺激装置まで延ばすことができる。電極を治療部位に埋め込むことができ、患者の皮膚を通して無線で起動できることも考えられる。また、無線受信機モジュールを植え込み、制御装置130から無線で入力を受信し、リード線を介して電極と通信するために使用できることも考えられる。
【0246】
追加の例は、電気信号のガッセル神経節及び/又は翼口蓋神経節(SPG)への経粘膜送達のための経鼻アプローチを介した鼻甲介における電極120(例えば
図3F)の配置である。例えば、電極120及びリード線は、患者の鼻に挿入され、鼻甲介に配置され、電気信号の送達中に所定の位置にしっかりと保持され得る(例えば、
図9A及び9Bを参照)。患者のくしゃみ反射を抑制する方法を使用でき、例えば、化学遮断又は電気神経遮断を使用するか、あるいはくしゃみ反射を意図的に誘発し、くしゃみの直後で患者が第2のくしゃみ反射を発生することができる前にリード線及び電極を配置する。意図的な初期のくしゃみ反射は、リード線及び/又は電極によって、又は鼻に挿入された別のプローブによってトリガされる場合がある。電極120は、経皮的アプローチを介して、ガッセル神経節及び/又は翼口蓋神経節(SPG)に隣接して配置できることも考えられる。経鼻的アプローチであるか経皮的アプローチであるかに関わらず、SPGの位置は、例えば磁気共鳴画像法(MRI)、透視撮像法、及び超音波画像法を使用して最初に特定してもよい。
【0247】
電極120が配置された後、従来の電気刺激が電極120を通して送達され十分な組織/神経の近接性を保証することができ、インピーダンス測定値が収集され、同様に使用され得る。次いで、刺激装置は、上述のように、電極接点選択、戻り電極選択、及び刺激パラメータを最適化するようにプログラムできる。最適な刺激パラメータの選択は、適切な結果が達成されるまで、異なるパラメータ構成を備えた異なる候補波形の送達を含むことができると考えられる。更に、最適な電極接点150構成及び戻り電極構成の選択は、適切な結果が達成されるまで、電極構成(接点150)及び戻り電極の異なる構成を介した電気信号の送達を含むことができると考えられる。これらの最適化は、ユーザが手動で実行してもよいか、又はアルゴリズムの反復検索又は事前にプログラムされた検索の一部として閉ループで制御装置によって送達されてもよい。必要に応じて、電気信号を送る前に電極リード線を通して化学神経遮断薬を送達することもできる。化学神経遮断は、開始反応を緩和し、患者の快適さを改善するのに役立つ。
【0248】
次いで、刺激電気信号は、上述の刺激パラメータの1つ以上を使用して、電極(単数又は複数)を介して標的神経構造に近い治療部位に送達され得る。電源180から電気エネルギーの供給を受ける制御装置130は、刺激装置の動作を指示して、標的神経及び非神経組織を選択的に調節して患者の疼痛の知覚を抑制し、一方他の感覚及び運動機能、並びに固有受容を維持するのに十分な電気信号を提供することができる。ユーザは、制御装置130を介してユーザインタフェース170に提供されるフィードバックに応じて、リアルタイムで電気信号のパラメータを制御することもできる。治療部位への電気信号の単一の適用は、標的神経及び非神経組織を選択的に調節し、約1日から約30日間、疼痛の知覚のその後の抑制を提供する。
【0249】
電極が独立して動作する少なくとも2つの電極を含む場合、第1の電気刺激信号は第1の電極を介して、第2の電気刺激信号は第2の電極を介して送達されると考えられる。第1及び第2の電気刺激信号は断続的に出力され、第1の電気刺激は第2の電気刺激に対してインターリーブされる。この構成では、第1の電気刺激のオンサイクルは、第2の電気刺激のオフサイクル中に発生する。同様に、第2の電気刺激のオンサイクルは、第1の電気刺激のオフサイクル中に発生する。
【0250】
治療部位への電気信号の適用が、疼痛の伝達に関与する神経線維を介した神経信号伝達を調節する標的神経組織及び非神経組織を選択的に調節するため、患者による疼痛の知覚が抑制される。一方、他の感覚及び運動機能並びに固有受容に関与する神経線維を介した神経信号伝達は保持される。保持された「他の」感覚機能は、例えば、触覚、視覚、聴覚、味覚、嗅覚及びバランスを含む。電気信号の適用はまた、熱受容、自律神経活動、及び内臓機能に関与する信号の伝達に関与する神経線維を介した神経信号伝達を抑制及び/又は分断させる可能性がある。
【0251】
最も簡単な形式では、この方法は、神経遮断刺激信号の送達後の疼痛の知覚に関する患者のフィードバックに依存して、一時的かつ選択的な神経調節の有効性を評価する。いくつかの例では、刺激中に経験した心拍感覚、チクチク感、重苦しさ及び/又は強い圧力などの患者の感覚を使用して、例えば、電圧、電流、刺激インピーダンス及び治療時間経過(デューティサイクル及び刺激の時間経過、治療期間及び終了時間、投与(刺激の「オン」時間))を含む様々な刺激パラメータを指示することができる。
【0252】
代替的及び/又は追加的に、刺激は患者がフィードバックを提供できない外科的処置の前、最中、又は直後に発生する可能性があるため、この方法は、ECG、電気皮膚反応、血流計、皮膚温度又は体温、及び/又は筋電図信号などの記録電極によって収集されたフィードバックに依存して、一時的かつ選択的な刺激調整の効果が評価されてもよい。
【0253】
標的神経構造は、末梢神経(大又は小)、脳神経、神経節、自律神経、神経叢、及び脊髄を含むことができる。標的神経構造には、運動ニューロン、感覚ニューロン及び/又は自律神経ニューロンの混合物を含めることができるか、あるいは、単一種類の神経活動(運動のみ、感覚のみ、自律神経のみなど)を含めることができる。標的神経節には、後根神経節、交感神経節、副交感神経節、翼口蓋神経節、ガッセル神経節、神経叢、及び/又は脊髄が含まれる。一例では、標的神経構造は大きな末梢神経(約2.5mmより大きいなど)を含み、電極は、数日から数週間の間、疼痛に関連する神経信号活動を選択的かつ可逆的に抑制する電気信号を神経に送達し、運動機能、非疼痛性感覚、及び固有受容に関連付けられた神経シグナル伝達は保持する。例えば、電極120は、数日から数週間にわたり、感覚(疼痛)機能に関連付けられた小径神経線維の神経信号活動を選択的かつ可逆的に抑制する電気信号を送達することができ、運動機能、非疼痛性感覚、及び固有受容に関連するより大きな有髄線維の機能の変化を最小限又はまったく伴わない。一例では、標的神経構造の神経組織及び非神経組織への電気信号の適用は、神経に設けられる少なくとも1つの有髄Aδ線維及び/又は無髄C線維を介する神経信号伝達を抑制及び/又は分断し、電気信号はAβ及びAα線維、及び/又は運動線維の少なくとも1つを介した神経信号伝達を保持する。さらなる例では、電気信号の様々なパラメータを調整して、有髄Aδ線維又は無髄C線維の少なくとも1つを選択的に抑制することができ、例えば、無髄C線維を介する神経信号伝達を保持しながら、有髄Aδ線維を介する神経信号伝達を抑制し、またその逆も含む。さらなる例では、電気信号の様々なパラメータを調整して、有髄Aδ線維の神経信号伝達/機能を差別的に抑制し、有髄Aδ線維は、無髄C線維よりも多くの割合の線維が抑制される。同様に、電気信号の様々なパラメータを調整して、無髄C線維の神経信号伝達/機能を差別的に抑制し、無髄C線維は、有髄Aδ線維よりも多くの割合の線維が抑制される。
【0254】
別の例では、標的神経構造の神経組織及び非神経組織への電気信号の適用は、運動、疼痛のない感覚、及び固有受容活動を維持しながら、疼痛の抑制をもたらす下流又は二次的影響をもたらす方法で神経又は非神経組織の機能を調節する。例えば、電気信号の様々なパラメータを調整して機能を選択的に調節することにより、有髄Aδ線維及び/又は無髄C線維の活動に起因する疼痛を軽減し、一方Aβ及びAα線維、及び/又は運動線維によって伝達されるものなど運動、非疼痛性感覚、及び固有受容機能を維持することができる。さらなる例では、電気信号の様々なパラメータを調整して機能を選択的に調節することにより、有髄Aδ線維又は無髄C線維の活動に起因する疼痛を軽減することができ、例えば、無髄C線維の活動に由来する疼痛を維持しながら、有髄Aδ線維の活動に起因する疼痛を抑制し、又その逆も含む。さらなる例では、電気信号の様々なパラメータを調整して、機能を差別的に調節することにより、有髄Aδ線維の活動に起因する疼痛を軽減することができ、有髄Aδ線維の活動に起因する疼痛は、無髄C線維の活動に起因する疼痛よりも大きく抑制される。同様に、電気信号の様々なパラメータを調整して、機能を差別的に調節することにより、無髄C線維の活動に起因する疼痛を軽減することができ、無髄C線維の活動に起因する疼痛は、有髄Aδ線の活動に起因する疼痛よりも大きく抑制される。
【0255】
別の例では、電気信号の特定のパラメータを調整して、神経構造の所望の領域内で神経信号伝達/機能を優先的に調整することができる。一般的に、望ましい領域は、疼痛の感覚の伝達に関与する感覚成分を含む神経構造の部分である。例えば、大腿神経に関して、大腿神経の組織分布は、膝を支配する感覚成分の部分が神経断面の領域に集められることを示す。従って、電気信号を調整して、これらの標的感覚成分に対応する神経断面の一部を通る神経信号伝達を優先的に調節できることが考えられる。
【0256】
電気信号の様々な変更可能なパラメータには、例えば、波形、周波数、振幅、波形エンベロープ持続時間、強度、電場強度、波形オフセット(DCオフセット)、連続送達、及び/又は電極120を介した断続的な送達が含まれる。例えば、制御装置130は、治療部位の目標組織温度を超えないように、治療部位に送達される電圧を最大化するために、デューティサイクル及び/又は波形エンベロープ持続時間をリアルタイムで調整し、例えば、刺激負荷サイクル及び/又は刺激エンベロープを調節して、治療部位の組織が破壊的組織温度を超えないことを保証しながら、治療部位にリアルタイムで供給される電圧を最大化する。同様に、いくつかの実施形態では、制御装置130は、デューティサイクル及び/又は波形エンベロープ持続時間をリアルタイムで調節し、治療部位の標的組織温度を超えないで、治療部位に送達される電流を最大化し、例えば、刺激デューティサイクル及び/又は刺激エンベロープを調節して、破壊的組織温度を超えることなく電流を最大化する。
【0257】
別の例において、電気刺激の刺激振幅は、安定状態までゆっくりと漸増することができる。電気刺激を安定状態に漸増させると、電気刺激の送達中に患者が経験する感覚の大きさを排除及び/又は低減できる(例えば、刺激エネルギーが連続する場合の神経の受容野での経験における刺痛感覚、刺激エネルギーがパルスとして送達されるときに経験される断続的な刺痛感覚)。
【0258】
開示された方法は、急性疼痛(外科的疼痛、術後疼痛、外傷性疼痛を含む)、神経障害性疼痛、慢性疼痛、並びに頭及び顔の疼痛に関連する疼痛の知覚を抑制することを含む。疼痛が急性疼痛である場合、疼痛の知覚を抑制するために標的の神経組織及び非神経組織を選択的かつ可逆的に調節する方法には、外科的処置の直前に電気信号を適用することが含まれる。電気信号はまた、手術中及び/又は外科的処置の直後に適用して、外科的処置及び回復に伴う疼痛の知覚を抑制することができる。電気信号は、処置の数時間及び/又は数日前に適用することもできる。例えば、電気信号は、外科的処置の少なくとも24時間前に適用されてもよい。外科的処置などの処置の前に電気信号を送達することは、患者が処置の準備をする際の疼痛及び患者の不快感を軽減するのに役立つ。処置の前に電気信号を送達することも、処置時にピーク鎮痛効果が発生するように構成できる。また、複数の神経構造を標的にして、標的領域をより包括的にカバーできるようにすることも考えられる。例えば、疼痛が膝関節形成術後(膝関節全置換術を含む)の術後急性疼痛である場合、電気刺激は大腿神経、坐骨神経、閉鎖神経、並びに外側皮神経及び神経枝、又はそれらの組み合わせに適用される。疼痛が肩部痛である別の例では、腕神経叢、腋窩神経、肩甲上神経及び外側胸筋神経、又はそれらの組み合わせに電気刺激を適用できる。疼痛が腕及び/又は手への医療処置及び/又は外傷に関連する場合、電気刺激は、それぞれ内側、尺骨及び橈骨神経又は腕神経叢に適用できる。疼痛が足首及び/又は足への医療処置及び/又は外傷に関連する場合、電気刺激は脛骨、腓骨/腓腹及び伏在神経、又はそれらの組み合わせに適用できる。疼痛が股関節形成術に関連する場合、電気刺激は、大腿骨、坐骨、又は閉塞筋(例えば、前部及び後部に分岐する前の一般的な閉塞筋)神経及び/又は神経叢、あるいはそれらの組み合わせに適用できる。疼痛が前十字靭帯(ACL)の治療に関連する場合、電気刺激は大腿骨又は坐骨神経、あるいはそれらの組み合わせに適用できる。
【0259】
疼痛が神経障害性疼痛又は慢性疼痛である場合、標的神経構造の神経組織及び非神経組織を調節する方法には、予防ケアの事前決定されたスケジュールの一部として、及び/又は治療処置/疼痛緩和のオンデマンドボーラスを提供するために患者の必要に応じて、電気信号を適用するユーザ(医師又は患者など)が含まれる。
【0260】
標的神経組織及び非神経組織を選択的かつ可逆的に調節して疼痛の知覚を抑制する方法は、温度センサ210で、刺激装置100の接触面(例えば、電極120の接触面)の温度、及び/又は電気信号の送達中の刺激装置接触面に隣接する患者の組織の温度を測定するステップを更に含み得る。測定された温度に関するフィードバック情報は、刺激装置に提供される。フィードバック情報が、刺激装置の接触面の温度が装置の閾値温度を超えていることを示す場合、及び/又は患者の組織の温度が組織の閾値温度を超える場合、刺激装置/制御装置又はユーザは、刺激装置の動作及び電気信号のパラメータ及び/又は冷却効果を生成し、接触面及び組織の温度を下げるための冷却機構を調整できる。接触面及び/又は患者の組織の温度を下げると、患者の組織への損傷を防ぐ。いくつかの例では、システムは、刺激装置100及び/又は電極120に結合及び/又は一体化された冷却機構を含んでもよい。刺激装置100の接触面の温度が装置の閾値温度を超えていること、及び/又は患者の組織の温度が組織の閾値温度を超えていることをフィードバック情報が示す場合、刺激装置100/制御装置130及び/又はユーザは、冷却機構の動作を起動及び制御して、刺激装置100/電極120の接触面を冷却し、接触面を冷却することは、患者の組織の温度を組織の閾値温度未満に保つことにより電気信号が送達される場合に、患者の組織への損傷を防ぐことができる。同様に、刺激装置100/制御装置130及び/又はユーザは、冷却機構の動作を起動及び制御して、刺激装置100/電極120の接触面の温度を、温度センサ210から受け取った測定温度に関するフィードバック情報に応じて閾値温度未満に維持することができる。
【0261】
電気信号が送達され、他の感覚及び運動機能、及び固有受容を維持しながら、疼痛の知覚が抑制された後、経皮(有傷)及び/又は経皮(無傷)電極120を取り外すことができる。その間、植え込み電極120(ある場合)は、さらなる使用及び常時の治療のために体内に残すことができる。
【0262】
実施例1
【0263】
この例では、健常者は地域から募集し、IRB承認済み同意フォームを使用して研究に同意した。高用量のオピオイド使用者は研究から除外された。各被験者の複数の時点で、2種類の官能評価を実施した。(1)非疼痛性触覚感覚に対する被験者の感度を評価するための機械的振動試験、及び(2)誘発された疼痛に対する被験者の感度を評価するための疼痛を誘発する電気刺激試験。最初のセッションの開始時に、機械的振動試験及び疼痛を誘発する電気刺激評価が各脚に対して行われた。これらは、ベースライン評価と呼ばれた。次に、被験者は、左脚に経皮的に配置された電極を介して電気刺激波形を使用して治療を受けた。治療後、機械的及び振動試験が各脚に対して再度評価された。被験者はその後の機械的振動試験及び疼痛を誘発する電気刺激試験のために来院した。
【0264】
機械的振動試験:被験者は手術着を着用し、快適な椅子に座った。右脚は、動きを制限するためにフォームパッドでスタンドにまっすぐに固定された。伏在神経分布内の皮膚と接触するように振動装置を配置した。次に、一連の2つのエポックが被験者に提供され、1つは振動装置を介した振動を含み、他方は振動を含まない振動試行が実行された。各試行について、振動が送達されたエポックの選択はランダムに決定され、被験者は、振動が伝達されたと考えるエポックがどちらのエポックであるかを口頭で指摘するように要求された。被験者が正しいエポックを選択した場合、3つの連続した試行の選択が成功するまで重複試行が行われ、その後、次の試行のために振動振幅が減少した。被験者が誤ったエポックを選択した場合、次の試行はより高い振幅の刺激で行われた。このようにして、各脚での3セットの50回の試行から組み合わせたパフォーマンスに基づいて、閾値振幅が特定された。閾値振幅は、各セッションにおいて各脚で特定された。
【0265】
疼痛を誘発する電気刺激試験:電気刺激は、内果近くの伏在神経上に配置された粘着性表面電極を介して送達された。刺激持続時間は、単一パルスにつき1msであった。被験者が最初に感覚を知覚するまで、刺激の振幅は徐々に増加された。その後、刺激は500Hzで一連の9個のパルスで送達され、被験者が非疼痛性感覚から疼痛を伴う感覚への移行を知覚するまで、刺激の振幅が徐々に増加された。疼痛の閾値は、上昇及び下降限度試験の両方によって特定され、そのセッションの平均疼痛閾値が記録された。この閾値は、各セッションにおいて各脚で特定された。
【0266】
電気刺激治療:電気刺激治療は、各被験者に左脚のみの1回の治療で実施された。ベースライン機械的振動試験及びベースライン疼痛誘発電気刺激試験の後、被験者は電気刺激治療の実施の準備ができた。
【0267】
被験者は臥位で手術台に置かれ、脛骨粗面に対して数センチ遠位で内側の伏在神経上の部位で皮膚が準備された。腓腹筋の対側の脚に表面戻り電極を配置した。超音波を用いて伏在神経を特定し、高周波プローブ(22ゲージ、4mm露出先端)を皮膚に挿入した。高周波プローブのアクティブ先端の位置を操作し、刺激(1ms持続時間、2Hz)は次第に小さくなる振幅で送達された。プローブ位置の操作は、感覚閾値が0.2V未満に達するまで行われた。
【0268】
次に、電気刺激治療を被験者に2Hz、20msで240秒間行った。刺激の振幅をリアルタイムで調整して、プローブの先端温度を42°Cに維持した。刺激の完了後、プローブは取り外され、被験者は再び、訪問0と呼ばれる機械的振動試験及び疼痛誘発電気刺激試験を受けた。
【0269】
被験者はその後の来院時のフォローアップ評価のために戻ってきた。振動閾値を経時的にプロットして、大径の有髄線維を介して伝達される感覚などの触覚に対する電気刺激治療の効果を評価した。疼痛の閾値をベースラインレベルに正規化し、経時的にプロットして、小径の線維を介して伝達される感覚などの痛覚に対する電気刺激治療の効果を評価した。
【0270】
図10は、240秒間の電気刺激治療を受けた5人の被験者の経時的な正規化された疼痛閾値を示している。緑の線は、リドカインやブピバカインなどの局所鎮痛剤の平均応答を示しており、1日未満の期間無痛覚を提供する。疼痛閾値の増加は全ての被験者で明らかであり、疼痛に対する感受性の低下を示している。ベースラインへの復帰は、処置後7日間で明らかになった。
【0271】
図11は、同じ5人の被験者(240秒間の電気刺激治療)の経時的な機械的振動の閾値を示している。機械的振動閾値の体系的な変化は明らかではなく、疼痛知覚に対する治療の選択性が示唆された。更に、臨床検査の結果もまた、治療を受けた脚の感覚障害を示さなかった。
【0272】
これらの結果は、治療後7日以内に完全に可逆的に治療された神経を介して、電気刺激治療が、疼痛の知覚に対する閾値を選択的かつ可逆的に増加させることを示唆している。
【0273】
計算システムの例
【0274】
方法及びシステムを好ましい実施形態及び特定の例に関連して説明してきたが、本明細書の実施形態はあらゆる点で限定的ではなく例示的であるように意図されているため、範囲は記載の特定の実施形態に限定されることを意図していない。
【0275】
本明細書で使用される「コンピューティング装置」は、複数のコンピュータを含み得る。コンピュータは、例えば、プロセッサ、ランダムアクセスメモリ(RAM)モジュール、読み取り専用メモリ(ROM)モジュール、記憶装置、データベース、1つ以上の入力/出力(I/O)装置、及びインタフェースなどの1つ以上のハードウェア部品を含んでもよい。あるいは、及び/又は更に、制御装置は、例えば、例示的な実施形態に関連する方法を実行するためのコンピュータ実行可能命令を含むコンピュータ可読媒体などの1つ以上のソフトウェア部品を含むことができる。上記のハードウェア部品の1つ以上は、ソフトウェアを使用して実装できると考えられる。例えば、記憶装置には、1つ以上の他のハードウェア部品に関連付けられたソフトウェアパーティションが含まれる場合がある。上記にリストされた部品は例示にすぎず、限定されることを意図していないことが理解される。
【0276】
プロセッサは、1つ以上のプロセッサを含むことができ、それぞれが命令を実行し、データを処理して、画像にインデックスを付けるためのコンピュータに関連する1つ以上の機能を実行するように構成される。プロセッサは、RAM、ROM、記憶装置、データベース、I/O装置、及びインタフェースに通信可能に結合されていてもよい。プロセッサは、コンピュータプログラム命令のシーケンスを実行して様々なプロセスを実行するように構成することができる。コンピュータプログラム命令は、プロセッサによる実行のためにRAMにロードされてもよい。本明細書で使用するプロセッサとは、入力に対して機能を実行し、出力を作成するための符号化された命令を実行する物理ハードウェア装置を指す。
【0277】
プロセッサは、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、あるいはASIC(特定用途向け集積回路)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、又はその他のプログラマブルロジック集積回路などの論理回路である。いくつかの実施形態において、プロセッサは、装置のメモリに記憶された命令を実行するように構成される。
【0278】
RAM及びROMはそれぞれ、プロセッサの動作に関連付けられた情報を記憶するための1つ以上の装置を含み得る。例えば、ROMは、1つ又は複数の構成要素及びサブシステムの動作を識別、初期化、及び監視するための情報を含む、制御装置に関連付けられた情報にアクセスして記憶するように構成されたメモリ装置を含み得る。RAMは、プロセッサの1つ以上の動作に関連付けられたデータを記憶するためのメモリ装置を含み得る。例えば、ROMはプロセッサによる実行のためにRAMに命令をロードする場合がある。
【0279】
記憶装置は、プロセッサが開示された実施形態と一致するプロセスを実行するために必要とする可能性がある情報を記憶するように構成された任意の種類の大容量記憶装置を含み得る。例えば、記憶装置には、ハードドライブ、CD-ROM、DVD-ROM、又はその他の種類のマスメディア装置などの、1つ以上の磁気及び/又は光ディスク装置が含まれてもよい。
【0280】
データベースは、制御装置及び/又はプロセッサによって使用されるデータを記憶、まとめ、ソート、フィルタ処理、及び/又は整理するために協力する1つ以上のソフトウェア及び/又はハードウェア構成要素を含むことができる。例えば、データベースは、本明細書で説明されるように、入出力ハードウェア装置及び制御装置に関連付けられたハードウェア及び/又はソフトウェア構成データを記憶してもよい。データベースは、上記にリストされた情報とは別の及び/又は異なる情報を記憶できると考えられる。
【0281】
I/O装置には、制御装置に関連付けられたユーザと情報を通信するように構成された1つ以上の部品が含まれる場合がある。例えば、I/O装置には、ユーザが画像のデータベースを維持し、関連付けを更新し、デジタルコンテンツにアクセスできるようにするキーボードと及びマウスが統合されたコンソールが含まれる場合がある。I/O装置にはまた、モニタに情報を出力するためのグラフィカルユーザインタフェース(GUI)を含むディスプレイが含まれてもよい。I/O装置にはまた、例えば、制御装置に関連付けられた情報を印刷するためのプリンタ、ユーザが記憶されたデータをポータブルメディア装置に入力することを可能にするユーザアクセス可能なディスクドライブ(例えば、USBポート、フロッピー、CD-ROM、又はDVD-ROMドライブなど)、マイクロフォン、スピーカーシステム、又は任意の他の適切な種類のインタフェース装置などの周辺装置が含まれてもよい。
【0282】
インタフェースには、インターネット、ローカルエリアネットワーク、ワークステーションピアツーピアネットワーク、直接リンクネットワーク、ワイヤレスネットワーク、又は任意の他の適切な通信ネットワークなどの通信ネットワークを介してデータを送受信するように構成された1つ以上の部品が含まれてもよい。例えば、インタフェースには、1つ以上の変調器、復調器、マルチプレクサ、デマルチプレクサ、ネットワーク通信装置、無線装置、アンテナ、モデム、及び通信ネットワークを介したデータ通信を可能にするように構成された任意の他の種類の装置が含まれてもよい。
【0283】
別途明示的に述べられていない限り、本明細書に記載されるいずれの方法も、その工程が特定の順序で実行されることを要求していると解釈されることは、全く意図していない。したがって、方法の発明に係る請求項において、その工程が実行される順序が実際に記載されていないか又は工程が特定の順序で実行されるように限定されることとなる旨が本願の特許請求の範囲若しくは本明細書において別段具体的に述べられていない場合、いかなる点においても、順序を黙示的に示すことは、全く意図していない。これは、工程の配置又は操作フローに関する論理的な事柄、文法的な構成又は句読点から導かれる平易な意味及び本明細書に記載された実施形態の数又は種類を含む、あらゆる可能な明示的でない解釈の原則に適用される。
【0284】
本出願全体を通して、様々な出版物が参照される場合がある。方法およびシステムが関連する技術水準をより十分に説明するために、これらの刊行物の開示内容全体が参照により本出願に組み込まれる。
【0285】
範囲又は精神から逸脱することなく、様々な修正及び変更を行うことができることは、当業者には明らかとなるであろう。他の実施形態は、明細書及び本明細書に開示された実施を考慮することにより、当業者には明らかとなるであろう。明細書及び実施例は例示としてのみ考慮されることを意図しており、真の範囲及び趣旨は添付の特許請求の範囲によって示される。
【手続補正書】
【提出日】2024-10-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経系構造の標的神経組織及び非神経組織を選択的かつ可逆的に調節するためのシステムであって、前記システムは、
前記神経系構造の前記標的神経組織及び非神経組織に近い治療部位に電気刺激を送達する1つ以上の電極を備えた電気刺激装置と、
前記電気刺激装置の前記1つ以上の電極と前記1つ以上の電極に電気エネルギーを供給する電源とに接続し、前記電気刺激装置の動作を指示し、前記1つ以上の電極を介して前記治療部位に前記電気刺激を適用するように構成された、制御装置と、
前記治療部位に冷却効果を提供するように構成された冷却機構とを備え、
前記治療部位への前記電気刺激の前記適用は、前記標的神経組織及び非神経組織を選択的に調節し、それにより、疼痛を抑制し、他の感覚機能及び運動機能並びに固有受容を維持し、
前記冷却効果は、患者の組織の温度が破壊的組織温度より低く維持されることによって前記治療部位の損傷が防止されることである、システム。
【請求項2】
前記疼痛が、急性疼痛、術後疼痛、神経障害性疼痛、慢性疼痛、頭及び顔の疼痛又はそれらの組み合わせを含み、
前記治療部位への前記電気刺激の単一の適用が、前記標的神経組織及び非神経組織を選択的に調節し、その後の疼痛の24時間以上の期間における抑制をもたらす、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記治療部位への前記電気刺激の前記適用は、前記標的神経組織及び非神経組織を調節し、疼痛の伝達に関与する神経線維を介した神経信号伝達を抑制し、
前記他の感覚及び運動機能並びに固有受容に関与する神経線維を介した神経信号伝達は保持され、
前記他の感覚機能は、触覚、視覚、聴覚、味覚、及び嗅覚から選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記1つ以上の電極は、末梢神経、脳神経、神経節、自律神経、神経叢、脊髄又はそれらの組み合わせを含む前記神経系構造に隣接して配置されるサイズ及び構成であり、
前記神経節は、後根神経節、交感神経節、副交感神経節、翼口蓋神経節、ガッセル神経節、又はそれらの組み合わせ含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記神経系構造は、前記末梢神経を含み、
前記制御装置は、鈍い/うずく疼痛の感覚に関与する無髄C線維及び/又は前記神経系構造の神経線維の機能を差別的に抑制し、それにより、鈍い/うずく疼痛の感覚に関与する前記無髄C線維及び/又は前記神経線維は、前記神経系構造の有髄Aδ線維よりも多くの割合で線維が抑制される、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記治療部位への前記電気刺激の適用は、前記末梢神経に与えられる有髄Aδ線維及び/又は無髄C線維を介する神経信号伝達を選択的に抑制する一方で、Aβ及び/若しくはAα線維、並びに/又は運動線維を介する神経信号伝達を維持する、請求項4に記載のシステム。
【請求項7】
前記治療部位への前記電気刺激の適用は、前記末梢神経に与えられる有髄Aδ線維及び/又は無髄C線維を介する神経信号伝達を選択的に抑制する一方で、Aβ及び/若しくはAα線維、並びに/又は隣接する神経又は隣接する神経束の運動線維を介する神経信号伝達を維持する、請求項4に記載のシステム。
【請求項8】
前記制御装置は、神経信号伝達の測定された抑制;前記治療部位、前記1つ以上の電極若しくはその一部、前記電気刺激装置、及び/若しくは患者の皮膚における測定された温度;前記患者からの入力;前記電気刺激の調節可能なパラメータ、回復の時間経過に関連する治療設定、電極接触インピーダンス、組織で生成される電場、若しくは患者の生理学的反応に対応するフィードバック;又はそれらの組み合わせから選択された測定されたフィードバックに基づいて、前記電気刺激を変えるように調節可能である、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記制御装置は、前記電気刺激の少なくとも1つのパラメータを変更して、(i)有髄Aδ線維及び/又は無髄C線維、又は(ii)大神経又は大神経節又は大神経構造のいずれかを介した神経信号伝達を調節し、
前記少なくとも1つのパラメータは、波形形状、波形周波数、波形振幅、波形エンベロープ持続時間、前記1つ以上の電極で生成される電場強度、波形DCオフセット、波形デューティサイクル、組織温度、冷却機構パラメータ、及び、治療期間から選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記神経系構造は、末梢神経を含み、
前記制御装置は、前記電気刺激を適用して、鋭い/刺すような前記疼痛の感覚に関与する有髄Aδ線維及び/又は前記神経系構造の神経線維の機能を差別的に抑制するように調節し、鋭い/刺すような前記疼痛の感覚に関与する前記有髄Aδ線維及び/又は前記神経線維は、前記神経系構造の前記無髄C線維よりも多くの割合の線維が抑制される、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記制御装置は、前記電気刺激の少なくとも1つのパラメータを変化させて、前記神経系構造の完全な断面以下の断面を有する前記神経系構造の一部内の神経信号伝達を調節する、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記制御装置は、前記電気刺激の少なくとも1つのパラメータを変化させて、前記神経系構造の開始応答及び/又は前記神経系構造の抑制の開始時の前記神経系構造の活性化を低減するように調節可能である、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記制御装置は、刺激装置を備え、前記刺激装置は、前記1つ以上の電極及び前記制御装置のインタフェースの両方に結合され、前記刺激装置の動作は、前記1つ以上の電極に前記電気刺激を供給するように前記制御装置によって指示される、請求項1記載のシステム。
【請求項14】
(i)前記刺激装置の接触面及び/又は(ii)前記接触面に隣接する患者の組織の温度を測定するために前記刺激装置に結合される温度センサを更に備え、
前記制御装置に結合された前記温度センサは、測定温度に関する熱フィードバック情報を提供し、
前記制御装置は、前記温度センサから受信した前記熱フィードバック情報に応答して前記電気刺激の少なくとも1つのパラメータを変化させるように調整し、前記接触面の温度を調整し、前記患者の組織の前記温度を破壊的組織温度より低く維持し、及び/又は前記刺激装置の前記接触面の前記温度を前記破壊的組織温度より低く維持する、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記1つ以上の電極は、細長い本体の形態の電極アセンブリを備え、前記電極アセンブリは、前記細長い本体には、刺激対を形成するように少なくとも2つの電気接点が配置され、
前記少なくとも2つの電気接点は、前記細長い本体の遠位先端に隣接する遠位電気接点と、前記遠位電気接点と前記電極アセンブリの近位端との間の前記電極アセンブリに沿った位置に配置された近位電気接点とを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
電気刺激装置であって、
神経系構造の標的神経組織及び非神経組織に近い治療部位に電気刺激を送達する1つ以上の電極と、
前記電気刺激装置の前記1つ以上の電極と、前記1つ以上の電極に電気エネルギーを供給する電源とに接続するように構成された制御装置であって、前記電気刺激装置の動作を指示し、前記1つ以上の電極を介して前記治療部位に前記電気刺激を適用するように構成された、該制御装置と、
前記治療部位に冷却効果を提供するように構成された冷却機構とを備え、
前記治療部位への前記電気刺激の前記適用は、前記標的神経組織及び非神経組織を選択的に調節し、それにより、疼痛を抑制し、他の感覚機能及び運動機能並びに固有受容を維持し、
前記治療部位への前記電気刺激の前記適用は、前記標的神経組織及び非神経組織を選択的に調節し、それにより、その後の疼痛を抑制し、
前記冷却効果は、前記標的神経組織及び非神経組織の温度を破壊的組織温度より低く維持することによる、前記治療部位の損傷の防止である、電気刺激装置。
【請求項17】
前記神経系構造は、末梢神経、脳神経、神経節、自律神経、自律神経節又はそれらの組み合わせを含み、
前記神経節は、後根神経節、交感神経節、副交感神経節、翼口蓋神経節、ガッセル神経節、神経叢、脊髄又はそれらの組み合わせ含む、請求項16に記載の電気刺激装置。
【請求項18】
前記疼痛が、急性疼痛、外科的疼痛、術後疼痛、外傷性疼痛、神経障害性疼痛、慢性疼痛、頭及び顔の疼痛、又はそれらの組み合わせを含み、
前記疼痛が前記急性疼痛である場合、前記電気刺激は、外科的処置の直前、手術中、外科的処置若しくは外傷の直後、又はそれらを組み合わせた時期に適用され、
前記疼痛が膝関節形成術後の術後急性疼痛である場合、前記電気刺激は、大腿神経、坐骨神経、閉鎖神経、外側皮神経、神経枝、又はそれらの組み合わせに適用され、
前記疼痛が肩部痛である場合、前記電気刺激は、腕神経叢、腋窩神経、肩甲上神経、外側胸筋神経、又はそれらの組み合わせに適用され、
前記疼痛が腕及び/又は手への医療処置及び/又は外傷に関連する場合、前記電気刺激は、内側、尺骨及び橈骨神経、腕神経叢、又はそれらの組み合わせに適用され、
前記疼痛が足首及び/又は足への医療処置及び/又は外傷に関連する場合、前記電気刺激は、脛骨、腓骨/腓腹及び伏在神経、又はそれらの組み合わせに適用され、
前記疼痛が股関節形成術に関連する場合、前記電気刺激は、大腿骨、坐骨若しくは閉塞筋神経及び/又は神経叢、あるいはそれらの組み合わせに適用され、
前記疼痛が前十字靭帯(ACL)の治療に関連する場合、前記電気刺激は、大腿骨神経、坐骨神経、又はそれらの組み合わせに適用され、
疼痛が神経障害性疼痛又は慢性疼痛である場合、前記電気刺激は、治療処置のオンデマンドボーラスを提供するために使用される、請求項16に記載の電気刺激装置。
【請求項19】
前記制御装置は、更に、
前記電気刺激の少なくとも1つのパラメータを調整して、前記標的神経組織及び非神経組織を介した神経信号伝達を選択的に阻害するように構成され、前記少なくとも1つのパラメータは、波形形状、波形周波数、波形振幅、波形エンベロープ持続時間、前記1つ以上の電極で生成される電場強度、波形DCオフセット、波形デューティサイクル、組織温度、治療持続時間、若しくは、冷却機構パラメータであって、冷却速度、冷却媒体の流量、冷却媒体圧力、前記治療部位で若しくは前記冷却機構の一部で測定された温度を含む該冷却機構パラメータ、又はそれらの組み合わせから選択され、かつ、
神経信号伝達の測定された抑制;前記治療部位、前記1つ以上の電極若しくはその一部、前記電気刺激装置、若しくはこれらの組み合わせにて測定された温度;受信した入力;前記電気刺激の調節可能な前記少なくとも1つパラメータに対応するフィードバック;回復の時間経過に関連する治療設定;電極接触インピーダンス;組織で生成される電場;測定された生理学的反応、及びそれらの組み合わせからから選択された測定されたフィードバックに基づいて、前記電気刺激を変えるように構成された、請求項16に記載の電気刺激装置。