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特開2025-41721PP2Aアンカリングの阻害による心疾患の処置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025041721
(43)【公開日】2025-03-26
(54)【発明の名称】PP2Aアンカリングの阻害による心疾患の処置
(51)【国際特許分類】
   A61K 48/00 20060101AFI20250318BHJP
   A61P 9/04 20060101ALI20250318BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250318BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20250318BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20250318BHJP
   C12N 9/12 20060101ALI20250318BHJP
   C12N 15/54 20060101ALI20250318BHJP
   C12N 15/864 20060101ALN20250318BHJP
【FI】
A61K48/00
A61P9/04 ZNA
A61P43/00 111
A61K35/76
A61K38/16 200
C12N9/12
C12N15/54
A61P9/04
A61K48/00 ZNA
C12N15/864 100Z
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024221257
(22)【出願日】2024-12-18
(62)【分割の表示】P 2021568509の分割
【原出願日】2020-03-13
(31)【優先権主張番号】62/848,156
(32)【優先日】2019-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】521498999
【氏名又は名称】ユニバーシティー オブ マイアミ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF MIAMI
(71)【出願人】
【識別番号】516162733
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(72)【発明者】
【氏名】カピロフ,マイケル エス.
(72)【発明者】
【氏名】リ,ジンリャン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】駆出率が低下した心不全を処置する方法を提供する。
【解決手段】方法は、PP2AのmAKAPβへのアンカリングを阻害する薬学的有効量の組成物を、そうした障害のリスクを有する患者に投与することで行われる。この組成物は、好ましくは、PP2Aが結合するmAKAPβのフラグメントをコードするウイルスに基づく遺伝子治療ベクターの形態である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号22又は配列番号23の配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する分子又はその断片をコードする核酸を含み、
前記分子は、プロテイン(セリン-スレオニン)ホスファターゼ2A(PP2A)の脱リン酸活性を阻害して、血清応答因子(SRF)におけるリン酸化レベルを維持する、心不全を処置するための組成物。
【請求項2】
前記核酸は、配列番号22又は配列番号23の配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有する分子又はその断片をコードする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記核酸は、配列番号22又は配列番号23の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有する分子又はその断片をコードする、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記核酸は、配列番号22又は配列番号23の配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する分子をコードする、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記核酸は、配列番号22又は配列番号23の配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有する分子をコードする、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記核酸は、配列番号22又は配列番号23の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有する分子をコードする、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記核酸は、配列番号22又は配列番号23の配列の分子をコードする、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記核酸は、ヒト筋肉A-キナーゼアンカータンパク質(mAKAP)のアミノ酸2132~2319に対して少なくとも80%の配列同一性を有する分子又はその断片をコードする、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記核酸は、mAKAPのアミノ酸2132~2319に対して少なくとも90%の配列同一性を有する分子又はその断片をコードする、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記核酸は、mAKAPのアミノ酸2132~2319に対して少なくとも95%の配列同一性を有する分子又はその断片をコードする、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記核酸は、mAKAPのアミノ酸2132~2319に対して少なくとも80%の配列同一性を有する分子をコードする、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記核酸は、mAKAPのアミノ酸2132~2319に対して少なくとも90%の配列同一性を有する分子をコードする、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記核酸は、mAKAPのアミノ酸2132~2319に対して少なくとも95%の配列同一性を有する分子をコードする、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記核酸は、アデノ随伴ウイルス(AAV)を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記AAVは、AAV9である、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記分子は、PP2AのB56δ(PPP2R5D)のリン酸化を阻害する、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
前記SRFのリン酸化は、Ser103のリン酸化である、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
前記心不全は、駆出率が低下した心不全である、請求項1に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
この出願は、2019年5月15日に出願した米国仮特許出願第62/848,156
号の優先権を主張し、その全体が言及によって本願に援用され、この出願は、2015年
8月7日に出願した米国特許出願第14/821,082号であり、現在は2018年4
月10日に発行された米国特許第9,937,228号、2014年3月14日に出願し
た米国特許出願第14/213,583号であり、現在は2015年9月15日に発行さ
れた米国特許第9,132,174号、2018年7月5日に出願した米国特許出願第1
6/028,004号、2013年3月15日に出願した米国仮特許出願第61/798
,268号、及び2017年7月6日に出願した米国仮特許出願第62/529,224
号の全体を言及によって援用する。
【0002】
[政府支援についての記載]
この発明は、米国国立衛生研究所により与えられた契約番号RO1 HL 07539
8及びHL126825のもと政府支援により実現した。政府は本発明の所定の権利を有
する。
【背景技術】
【0003】
慢性ストレスを受けると、心臓の主な代償機序は、収縮性細胞体積の非有糸分裂的な増
加である筋細胞肥大となる(Hill and Olson 2008)。成人の哺乳動
物筋細胞はおよそ円筒状であり、幅又は長さ方向の成長をすることができる。筋細胞は心
臓の心筋量の大部分に寄与するので(Jugdutt 2003)、心筋細胞の求心性及
び偏心性肥大が、それぞれ心室壁の肥厚及び心室の拡張をもたらす。理論上、筋節の並行
構造に関与する幅方向の「求心性」筋細胞成長により、心室壁ストレスが低下する一方(
Law of LaPlace)、筋節の連続構造に関与する「偏心性」の長さ方向の筋
細胞成長は、収縮における最適な長さを超えて個々の筋節を伸張することなく、より大き
な心室容積に適応することができる(長さ-張力関係)(Grossman, Jone
s, and McLaurin 1975)。左心室は、妊娠又は運動訓練などの生理
的ストレスを受けて比較的対称に肥大する一方、求心性心室肥大は、高血圧又は大動脈狭
窄などの圧負荷疾患において存在する収縮期壁ストレスの増加に対する主な初期の応答で
ある。偏心性心室肥大は、心筋梗塞後に起こるものなど容積負荷の状態において、及び、
求心性肥大から、圧負荷によって主に特徴づけられる疾患を含む、心血管疾患のある形態
における駆出率が低下した心不全(HFrEF)における拡張した心臓への移行において
、優勢である。また、偏心性及び求心性肥大は、それぞれ遺伝性肥大型及び拡張型心筋症
に存在する。
【0004】
細胞レベルにおいて、心筋細胞肥大は、個々の筋細胞内のタンパク質合成並びに筋節の
サイズ及び組織化の増大の結果として起こる。心臓リモデリング及び肥大のより充実した
考察については、Kehat(2010)及びHill(2008)のものが参照され、
それぞれの全体が本明細書において言及により援用される。有力な見方は、心肥大が心不
全の発症に主要な役割を果たすというものである。心不全を処置する従来の方法は、罹患
した患者における、後負荷軽減、βアドレナリン受容体(β-AR)の阻害、機械的サポ
ートデバイスの使用を含む。しかしながら、この技術は、病的な心肥大を予防又は処置す
るさらなる機序を必要としている。
【0005】
研究において、圧負荷関連心疾患の早期に「代償性」求心性肥大を誘発する機序が、心
臓を後の収縮期機能障害及び最終的な不全にしやすくすることが示唆されている(Sch
iattarella and Hill 2015)。これに関して、RSK3-mA
KAPβ複合体の標的化により、圧負荷による心臓リモデリングを抑え、心不全を防止し
得るということが、結果において示されている(Kritzer et al. 201
4;Li, Kritzer, et al. 2013)。つまり、求心性肥大を含む
、リモデリングを誘発するシグナリング経路の阻害が、圧負荷疾患の早期に望ましいもの
であり得る。しかしながら、心臓が、圧負荷関連疾患の後期、又は容積負荷関連疾患の進
行においても、HFrEFをもたらす偏心性成長及び心室拡大によって特徴づけられる疾
患プロセスの段階にあるとき、求心性肥大を促進し、偏心性肥大に対抗するシグナルを維
持する取り組みにより、心臓容積及び惹起したときの収縮を保持し得るかどうか、という
疑問が残る。さらに、家族性拡張型心筋症における求心性筋細胞肥大の亢進及び/又は偏
心性筋細胞肥大の阻害が有益であり得るかは未知である。
【0006】
AKAP及び心臓リモデリング
心室筋細胞肥大は、心筋が心筋梗塞、高血圧、及び先天性心疾患、又は神経液性活性化
のためストレスを受けると心室壁張力を軽減する、主要な代償性機構である。これは、心
筋細胞の非分裂成長、筋原線維組織化、及び胚性期時に通常発現される「胎児」遺伝子の
特定のサブセットの上方調節(Frey 2004,Hill 2008)に関連する。
同時的な異常心臓収縮、Ca2+ハンドリング、及び心筋エネルギーは、間質性線維症及
び心筋細胞死を含むとともに、心不全及び悪性不整脈を発症するリスクを増加させる不適
応性変化に関連する(Cappola 2008,Hill 2008)。この適応は、
共に、根底にある疾患に対応して様々な比率で存在する収縮期及び拡張期の両方の機能障
害に寄与する(Sharma and Kass 2014)。筋細胞の病的なリモデリ
ングは、分裂促進因子活性化プロテインキナーゼ(MAPK)、環状ヌクレオチド、Ca
2+、低酸素、及びホスホイノシチド依存性シグナリング経路を含む複雑な細胞内シグナ
リングネットワークによって調節されている(Heineke and Molkent
in 2006)。
【0007】
米国において、喫煙や肥満などのリスク因子により有病率が増加したため、心不全は6
20万の成人に発症しており、年間約1,000,000の成人における新しい症例が診
断されている(Benjamin et al. 2019)。心不全の有病率及び発症
率は増加しており、これは、主に寿命延長のためであるが、リスク因子(高血圧、糖尿病
、脂質異常症、及び肥満)の有病率増加、及び他の種類の心血管疾患(心筋梗塞[MI]
及び不整脈)の生存率増加のためでもある(Heidenreich et al. 2
013)。心不全の患者の第一選択療法は、そうした患者の生存性及びクオリティ・オブ
・ライフを向上するとともに、左心室機能障害を有する患者の死亡率を下げることができ
るアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤及びβ-アドレナリン受容体遮断剤(β-
遮断剤)を含む(Group 1987)。その次の又は代替の療法は、アルドステロン
及びアンジオテンシンII受容体遮断剤、ネプリライシン阻害剤、ループ利尿剤及びチア
ジド利尿剤、血管拡張剤、及びI電流遮断剤、並びにデバイス使用療法を含む((Po
nikowski et al. 2016)。それにもかかわらず、症候性心不全の5
年死亡率は依然として約50%であり、MI後の40%を超える死亡率を含む(Heid
enreich et al. 2013; Gerber et al. 2016)
【0008】
心肥大は、Gタンパク質結合受容体、サイトカイン受容体、及び成長因子チロシンキナ
ーゼ受容体を含むいくつかの受容体ファミリーを活性化させる多様な神経液性、パラクラ
イン性、及びオートクライン性刺激によって誘発され得る(Brown 2006,Fr
ey 2004)。この文脈において、A-キナーゼアンカータンパク質(AKAP)が
、これらの受容体から発する肥大経路を統合する多タンパク質複合体を会合させることが
できるということが徐々に明らかになっている。特に、近年の研究において、足場タンパ
ク質として機能するとともにストレスシグナルによって活性化される肥大経路を組織化し
て調節するのに中心的な役割を果たすmAKAP、AKAP-Lbc、及びD-AKAP
1を含むアンカータンパク質を現在のところ同定している。
【0009】
細胞内シグナリングネットワークにおける「ノード」のまとめ役として、足場タンパク
質は、可能性のある治療標的として興味の対象となっている(Negro,Dodge-
Kafka,and Kapiloff 2008)。細胞において、足場タンパク質は
、細胞内シグナル伝達における特異性及び有効性の要因となる重要な機構を構成する「シ
グナロソーム」と呼ばれる多分子複合体を組織化することができる(Scott and
Pawson 2009)。第1に、多くのシグナリング酵素が広い基質特異性を有し
ている。足場タンパク質は、これらの多面発現性酵素を個々の基質と共に局在させて、基
質の触媒を選択的に向上させるとともに、酵素の活性部位に固有でないある程度の特異性
を与える(Scott and Pawson 2009)。第2に、一部のシグナリン
グ酵素は低含量である。足場タンパク質は、希少酵素をその基質と共に局在させることが
でき、シグナリングを動態学的に有利にする。第3に、多くの足場が多価であるので、足
場結合により、個々の基質エフェクターの複数の酵素による共調節を統括することができ
る。筋肉A-キナーゼアンカータンパク質(AKAP6としても既知のmAKAP)は、
広い基質特異性を有するプロテインキナーゼA(PKA)及びCa2+/カルモジュリン
依存性ホスファターゼカルシニューリン(CaN)などのシグナリング酵素と、特に低含
量であるp90リボソームS6キナーゼ3(RSK3)などのシグナリング酵素との両方
に結合する、心筋細胞及び骨格筋細胞並びにニューロンに発現される大きい足場である(
図1)(Wang et al. 2015;Pare, Easlick, et a
l. 2005;Michel et al. 2005a;Kapiloff et
al. 1999b)。mAKAPβは、筋細胞に発現される選択的スプライシングアイ
ソフォームであり、細胞において、内在性膜タンパク質のネスプリン-1αを結合するこ
とで核膜外膜に局在する(Pare, Easlick, et al. 2005)。
【0010】
心筋細胞におけるストレス関連シグナリング分子の足場タンパク質としてのその役割に
一致して、in vitroにおけるラットの新生仔心室筋細胞におけるmAKAPβ欠
乏により、α-アドレナリン、β-アドレナリン、エンドセリン-1、アンジオテンシン
II、及びロイシン阻害因子/gp130受容体シグナリングによって誘発される肥大を
阻害した(Zhang et al. 2011;Pare, Bauman, et
al. 2005;Dodge-Kafka et al. 2005;Guo et
al. 2015)。in vivoにおいて、マウスにおけるmAKAP遺伝子標的化
は、短期圧負荷及び慢性β-アドレナリン刺激によって誘発される肥大を抑えるとともに
、長期圧負荷後の心不全の発症を阻害して、生存の恩恵があった(Kritzer et
al. 2014)。具体的に、mAKAPfl/fl、Tg(Myh6-cre/E
sr1*)、タモキシフェン誘発性の、コンディショナルノックアウトマウスにおけるm
AKAP遺伝子欠失により、16週間の大動脈縮窄による筋細胞アポトーシス、及び間質
性線維症、左心房肥大、及び肺水腫(浮腫肺重量)を大きく阻害しながら、左心室肥大を
低下させた(Kritzer et al. 2014)。
【0011】
また、mAKAP遺伝子標的化は、心筋梗塞後に有益である(Kapiloff,未掲
載の知見)。マウスにおける左前下行枝(LAD)の永続的な結紮により、広範な筋細胞
死、瘢痕形成、及びその後の左心室(LV)リモデリングを含む、心筋梗塞を起こす。L
AD結紮の4週後、mAKAPコンディショナルノックアウトマウスは、梗塞のコントロ
ールコホートと比較すると、LVの寸法及び機能を保持した。mAKAPコンディショナ
ルノックアウトマウスは、梗塞サイズの顕著な減少を示しながら、コントロールと比較し
てLVの駆出率及び指標心房重量を保持した。
【0012】
mAKAP及び心臓リモデリングの説明
mAKAPは、当初、新たなcAMP依存性プロテインキナーゼ(PKA)調節サブユ
ニット(Rサブユニット)結合タンパク質、すなわち、A-キナーゼアンカータンパク質
又はAKAPのcDNAライブラリスクリーニングにおいて同定された(Mccartn
ey et al. 1995)。mAKAPは、初め、当初のcDNAフラグメントに
よってコードされるタンパク質のサイズから、「AKAP100」と呼ばれていた(Mc
cartney et al. 1995)。その後、ニューロンに発現されるmAKA
Pの選択的スプライシングアイソフォームであるmAKAPαの全長mRNA配列を規定
し、野生型mAKAPαは255kDAの足場であることを明らかにした(Kapilo
ff et al. 1999b)。横紋筋細胞に発現されるmAKAPの230kDa
の選択的スプライシングアイソフォームであるmAKAPβの配列は後に取得され、mA
KAPは、心臓又は骨格筋に発現されると、mAKAPα残基Met-245に対応する
内部開始部位から移動するということを示した(Michel et al. 2005
a)。
【0013】
mAKAPは、mAKAPを明らかに発現する3つの細胞型である、ニューロン並びに
心臓及び骨格横紋筋細胞の両方の核膜に局在する(図6)(Kapiloff et a
l. 1999b;Pare, Easlick, et al. 2005;Mich
el et al. 2005a)。mAKAPは、膜貫通ドメインタンパク質ではなく
、局在化をもたらす3つのスペクトリン様反復領域(残基772~1187)を含むもの
である(Kapiloff et al. 1999b)。核膜外膜タンパク質ネスプリ
ン-1αによる、mAKAPの第3スペクトリン反復(残基1074~1187)の結合
は、少なくとも筋細胞において、及び異種細胞に発現されるとき、mAKAPの核膜局在
化に必要且つ十分なものである(Pare, Easlick, et al.2005
)。また、ネスプリン-1αは、A型ラミン及びエメリンを結合し得る核膜内膜に存在し
得る。興味深いことに、ラミンA/C、エメリン、及びネスプリン-1αにおける突然変
異は、エメリー-ドレイフス型筋ジストロフィー、及び他の形態の心筋症に関連している
(Bonne et al. 1999;Fatkin et al. 1999;Mu
chir et al. 2000;Bione et al. 1994;Zhang
et al. 2007)。しかしながら、疾患を引き起こす突然変異は、ヒトmAK
AP遺伝子においてまだ同定されておらず、発育早期におけるマウス心臓のmAKAPβ
ノックアウトは心筋症を誘発しない(Kritzer et al. 2014)。また
、mAKAPβは、ネスプリン-1αを結合することに加えて、mAKAPの第1スペク
トリン反復によってホスホリパーゼCε(PLCε)を結合し、核膜との会合を強化して
いる可能性がある(Zhang et al. 2011)。mAKAPβが筋小胞体に
存在するという早期の報告がある(Mccartney et al. 1995;Ma
rx et al. 2000;Yang et al. 1998)が、これらの知見
は、抗体特異性を含む技術的問題から、疑問視されている(Kapiloff, Jac
kson, and Airhart 2001;Kapiloff et al. 1
999b)。
【0014】
mAKAPβは、PKA、PLCε、及びネスプリン-1αに加えて、アデニリルシク
ラーゼタイプ5(AC5)、cAMP-1によって活性化する交換タンパク質(Epac
1)、cAMP特異性ホスホジエステラーゼタイプ4D3(PDE4D3)、MEK5及
びERK5 MAP-キナーゼ、3-ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ-1(
PDK1)、p90リボソームS6キナーゼ3(RSK3)、プロテインキナーゼCε(
PKCε)、プロテインキナーゼD(PKD1、PKCμ)、プロテインホスファターゼ
カルシニューリン(CaN)Aβ及びPP2A、タイプ2リアノジン受容体(RyR2)
、ナトリウム/カルシウム交換体NCX1、HIF1α調節に関与するユビキチンE3-
リガーゼ、並びにミオポディン(myopodin)(Pare, Bauman, e
t al. 2005;Pare, Easlick, et al. 2005;Do
dge-Kafka et al. 2005;Marx et al. 2000;K
apiloff, Jackson, and Airhart 2001;Miche
l et al. 2005a;Li et al. ;Wong et al. 20
08;Zhang et al. 2011;Dodge-Kafka and Kap
iloff 2006;Vargas et al. 2012;Faul et al
. 2007;Schulze et al. 2003;Kapiloff et a
l. 2009;Zhang et al. 2013)という、筋細胞ストレス応答に
重要な多種多様なタンパク質を結合する。これらのシグナリング分子は、mAKAPβに
結合して、転写因子の低酸素誘導因子1α(HIF1α)、筋細胞エンハンサー因子-2
(MEF2)、及び活性化T細胞の核内因子(NFATc)転写因子、並びにタイプII
ヒストンデアセチラーゼ(図7)(Kritzer et al. 2014;Li,
Vargas, et al. 2013;Li et al. 2010; Wong
et al. 2008;Li et al. 2019;Dodge-Kafka
et al. 2018)を共調節する。これらの分子の一部は直接的に、一部は非直接
的に、一部は恒常的に、及び一部は調節された方法で結合する。このように、mAKAP
βシグナロソームの組成は、根底にある筋細胞の状態に対応すると考えられる。mAKA
Pβに対して研究が続けられるにつれ、結合パートナーのリストも長くなり、リモデリン
グに要求されるシグナリング経路の重要な統括役としての仮定される役割を裏付けている
。mAKAPβについて知られていることの大部分は、培養した新生仔ラットの心室筋細
胞を使用した研究に基づくものであり、その中で、mAKAPβは、α-及びβ-アドレ
ナリン並びにサイトカイン受容体を含む、上流の多様な受容体による肥大の誘発に要求さ
れると早期に認められていた(Pare, Bauman, et al. 2005;
Dodge-Kafka et al. 2005)。しかしながら、近年、心筋細胞
特異的mAKAPβコンディショナルノックアウトマウスの表現型が掲載され、リモデリ
ングにおいてmAKAPβが中心にあることを裏付けた(Kritzer et al.
2014)。心臓の病的なリモデリングに影響を与える、mAKAPβシグナロソーム
内の種々の上流インプット、下流エフェクター(アウトプット)、及び統合回路が存在す
る。
【0015】
mAKAPβ-プロトタイプのA-キナーゼアンカータンパク質
大部分のAKAPのように、mAKAPは、PKAを結合する要因となる両親媒性ヘリ
ックス(残基2055~2072)を含む(Kapiloff et al. 1999
b;Kritzer et al. 2012)。PKAは、C-R-R-Cの構成にお
ける、2つのRサブユニット及び2つの触媒Cサブユニットのヘテロ四量体である。ホロ
酵素内において、PKAのRサブユニットのN末端ドッキング及び二量体化ドメインが、
X型で反平行の4つのヘリックス束を形成する(Newlon et al. 1999
)。この束は、AKAP両親媒性ヘリックスの疎水性面に対応する疎水性溝を含む。mA
KAPβは、高親和性(K=119nM)で、選択的に(RIIサブユニットを含む)
タイプIIPKAを結合する(Zakhary et al. 2000)。興味深いこ
とに、PKA-mAKAPβ結合は、RIIαの自己リン酸化後に16倍増加し(Zak
hary et al. 2000)、β-アドレナリンシグナリングの変化状態におい
てPKA-mAKAPβ結合に影響する可能性がある。mAKAPβに加えて、12を超
える他のAKAPが筋細胞に発現され、それぞれがその独自で特定の局在性及び結合パー
トナー群を有する(Kritzer et al. 2014)。注目すべきことに、m
AKAPは、筋細胞において最も希少なAKAPの1つであり、mAKAPの欠失が核周
囲PKAの局在化に影響すらしないというものである(Kapiloff,未掲載の知見
)。足場が低レベルで発現するにもかかわらず、筋細胞において内在性mAKAPβを、
PKAに結合できない全長mAKAPβ突然変異体で置換することが、筋細胞肥大誘発の
阻害に十分である(Pare, Bauman, et al. 2005)。このよう
に、mAKAPβシグナロソームは、PKAシグナリングが個々の小器官においても精密
に区画化され得ること、及び、タンパク質又はタンパク質複合体の発現レベルがそのタン
パク質の機能的意義を必ずしも示すわけではないということの両方の例となる。
【0016】
mAKAPβは、cAMPシグナリングのエフェクターだけでなく、cAMP合成及び
分解の要因となる酵素も結合するので、重要性がある(Kapiloff et al.
2009;Dodge et al. 2001)。cAMPのATPからの合成は、
アデニリルシクラーゼ(AC)によって触媒される一方、cAMPの5’AMPへの代謝
は、ホスホジエステラーゼ(PDE)によって触媒される。AC及びPDEのAKAPと
の会合の差が、細胞におけるcAMPの区画化に寄与し、cAMPエフェクターの局所活
性化及び特有の調節性フィートバック及びフィードフォワードループによる局所cAMP
レベルの調節の両方を行う(Scott, Dessauer, and Tasken
2013)。mAKAPは、AC2及びAC5の両方に結合することができるが、AC
5は、心臓における関連するmAKAPβ結合パートナーと認められる(Kapilof
f et al. 2009)。AC5のN末端、C1及びC2ドメインは、mAKAP
βの特有のN末端部位(残基275~340)に直接結合する。AC5活性は、細胞にお
いてmAKAPβ複合体形成によって促進されるPKAフィードバックリン酸化によって
阻害される(Kapiloff et al. 2009)。この負のフィードバックは
、基本のcAMPシグナリングの維持に生理学的に関連すると認められる。AC5のmA
KAPβへのつながりが、mAKAP AC5結合ドメインを含む競合性ペプチドによっ
て阻害されるとき、筋細胞のcAMP含有量及びサイズの両方が肥大性刺激の存在なしで
増加した(Kapiloff et al. 2009)。
【0017】
mAKAPは、PDEに結合することを示した最初のAKAPであった(Dodge
et al. 2001)。mAKAP内の部位1286~1831は、PDE4D3の
特有のN末端ドメインに結合する。PDE4D3のセリン残基13及び54のリン酸化に
より、それぞれ、足場への結合が増加し、PDE触媒活性が増加する(Dodge et
al. 2001;Sette and Conti 1996;Carlisle
Michel et al. 2004)。PDE4D3活性の増加はcAMP分解を速
めるので、PKA及びPDE4D3は、局所のcAMPレベル及びPKA活性を調節可能
な負のフィードバックループを構成する(Dodge et al. 2001)。mA
KAPに結合したPDE4D3は、PDEとしてだけでなく、MAPKのMEK5及びE
RK5、並びにcAMP依存性のRap1-グアニンヌクレオチド交換因子Epac1を
足場に動員するアダプタータンパク質としても機能する(Dodge-Kafka et
al. 2005)。上流シグナルによるMEK5及びERK5の活性化は、Ser-
579においてPDE4D3のリン酸化をもたらし、PDEを阻害して、cAMP蓄積及
びPKA活性化を促進する(Dodge-Kafka et al. 2005;Hof
fmann et al. 1999;Mackenzie et al. 2008)
。Epac1は、PKAほどcAMPに感受性ではなく、極めて高いcAMPレベルによ
り、mAKAP会合Epac1のさらなる活性がもたらされるというようになる。Epa
c1が、Rap1によって、ERK5活性を阻害するので、MAPKシグナリングによる
PDE4D3阻害を防害し、同時のPKAリン酸化のため最大のPDE4D3活性をおそ
らくもたらすことができる(Dodge-Kafka et al. 2005)。結果
として、Epac1、ERK5、及びPDE4D3は、cAMPが極めて高いレベルに上
昇することに対抗するmAKAP複合体近傍においてcAMPレベルを抑え得る第3の負
のフィードバックループを構成する。
【0018】
さらなる複雑性が、セリン-スレオニンホスファターゼPP2Aの、mAKAPのC末
端(残基2083~2319)への結合により与えられる(Dodge-Kafka e
t al. 2010)。PP2Aは、PDE4D3のSer-54の脱リン酸化を触媒
することで、上流の刺激の存在なしでPDEを阻害することができる。mAKAP複合体
と会合したPP2Aは、PKA基質であるB56δBサブユニットを含む。PKAリン酸
化は、PP2A触媒活性を高め(Ahn et al. 2007)、mAKAP結合P
KAによるB56δのリン酸化がPDE4D3脱リン酸化を増加させ、PDEを阻害する
というようになる。これにより、おそらくcAMPレベルが増加し、cAMPシグナリン
グを開始させるための正のフィードフォワードループを構成する。PKA及びERK5に
よるAC5リン酸化及びPDE4D3調節に基づく負のフィードバックループと共に、m
AKAPβシグナロソームにおけるcAMPレベルが、上流のβ-アドレナリン及びMA
PKシグナリングによって厳密に制御され得るということが予測され得る。AC5及びE
RK5の上流のシグナリングは、初めにPP2Aフィードフォワードシグナリングによっ
て促進し得るcAMPシグナリングを促進し得る一方、PKA及びEpac1の負のフィ
ードバックによるPDE4D3活性化及びAC5阻害がシグナリングを抑え得る。興味深
いことに、Rababa’hらは、非同義の多型性を含むmAKAPタンパク質が、どの
ように異なるようにPKA及びPDE4D3を結合するかということを示した(Raba
ba’h et al. 2013)。cAMPシグナリングが、上流のシグナリング経
路間のクロストークによって又はヒト多型性によって異なるように調節される可能性は、
この複雑なシグナリングネットワークの関連を示す、筋細胞におけるさらなる研究を注目
に値するものとする。
【0019】
mAKAPβ及びMAP-キナーゼ-RSK3シグナリング
PDE4D3によるERK5のmAKAPβ複合体への動員は、初め、前述のフィード
バックループによるcAMPの局所調節に関連すると示されていた(Dodge-Kaf
ka et al. 2005)。しかしながら、また、ERK5は、筋細胞肥大の重要
な誘導因子であるとも認められ、優先的に、培養筋細胞における長さ方向の成長(偏心性
肥大)を誘発する一方で、圧負荷によるin vivoにおける求心性肥大にも重要であ
る(マウスの大動脈縮窄術)(Nicol et al. 2001; Kimura
et al. 2010)。とりわけ、培養筋細胞におけるmAKAPβ発現のRNA干
渉(RNAi)による阻害により、インターロイキン-6-タイプサイトカイン白血病阻
止因子(LIF)によって誘発される偏心性成長を阻害した(Dodge-Kafka
et al. 2005)。mAKAPβ結合ERK5の可能性のあるエフェクターは、
以下に記載するようにMEF2転写因子であった。しかしながら、心臓及び脳の両方にお
いて、mAKAPは、ERK(ERK1,2、又は5)と共に、MAPKエフェクターp
90RSKを活性化可能なキナーゼである、PDK1を結合し、MAPKエフェクターp
90RSKもmAKAPに会合するキナーゼである(Ranganathan et a
l. 2006;Michel et al. 2005a)。重要な点として、PDK
1のmAKAPへの結合により、RSK活性化における膜会合の必要がなくなった(Mi
chel et al. 2005a)。これらのデータは、共に、mAKAPβが上流
のMAPKシグナリングに対応して筋細胞においてRSK活性化を統括できることを示す
ものであった。
【0020】
p90RSKは、細胞増殖、生存、遊走、及び浸潤を含む多くの細胞プロセスを調節す
る多面性ERKエフェクターである。RSK活性は、大部分の肥大性刺激によって筋細胞
において高まる(Anjum and Blenis 2008;Sadoshima
et al. 1995)。その上、RSK活性は、ヒトの末期拡張型心筋症の心臓組織
において高まることが分かった(Takeishi et al. 2002)。RSK
ファミリーメンバーは、N末端キナーゼドメイン及びC末端キナーゼドメインという、2
つの触媒ドメインを含む(Anjum and Blenis 2008)。N末端キナ
ーゼドメインはRSK基質をリン酸化し、ERK及びPDK1によるそれぞれC末端及び
N末端キナーゼドメインの活性化ループにおける連続的なリン酸化によって活性化されて
、Ser-218におけるN末端ドメインのPDK1リン酸化が酵素の完全な活性化を示
すようになる。遍在的に発現される、4つの哺乳動物RSKファミリーメンバーが存在す
るが、RSK3のみがmAKAPβを結合する(Li, Kritzer, et al
. 2013)。RSK3における特有のN末端ドメイン(1~30)は、mAKAPβ
残基1694~1833を直接結合し、このアイソフォームと足場との選択的会合を説明
している(Li, Kritzer, et al. 2013)。RSK3が、他のR
SKファミリーメンバーより少なく筋細胞に発現されるにもかかわらず、新生仔筋細胞肥
大は、RSK3のRNAi、RSK3のN末端キナーゼドメインの不活性化、及びアンカ
リングディスラプターペプチドを使用したmAKAPへのRSK3結合の阻害によって抑
えられることが分かった(Li, Kritzer, et al. 2013)。重要
な点として、in vivoにおけるRSK3発現が、圧負荷及びカテコールアミン注入
の両方による心肥大の誘発、並びに家族性肥大型心筋症のマウスモデルに関連する心不全
(α-トロポミオシン Glu180Gly)に要求されるものであった(Li, Kr
itzer, et al. 2013;Passariello et al. 20
13)。その上、求心性肥大の選択的誘発におけるERK1/2MAP-キナーゼの報告
されている役割に一致して(Kehat et al. 2011)、RSK3遺伝子欠
失により」、ヌーナン症候群のマウスモデルにおいてRaf1L613V突然変異によっ
て誘発される求心性肥大が阻害された(Passariello et al. 201
6)。この特定のRSKアイソフォームが心臓リモデリングに要求とされるという認識に
より、これが治療標的のための注目に値する候補となる。
【0021】
mAKAPβ及びホスファチジルイノシチドシグナリング
cAMPエフェクターEpac1は、ERK5シグナリングに影響するmAKAPβ複
合体においてRap1を活性化する(Dodge-Kafka et al. 2005
)。その上、Epac1-Rap1は、そのRas会合ドメインがmAKAPβの第1ス
ペクトリン反復様ドメインを直接結合するホスホリパーゼである、PLCεを活性化する
(Zhang et al. 2011)。PLCεは、mAKAPβのように、RNA
iによって又は競合性結合ペプチドの発現によりmAKAPβから除くことによって阻害
されても、新生仔筋細胞肥大に要求されるものであった。Smrcka laborat
oryによる優れた文献において、mAKAPβ結合PLCεは、新たなホスファチジル
イノシトール-4-リン酸(PI4P)経路によってPKCε及びPKD活性化を調節す
ることを示しており、該経路において、PLCεが核周囲のPI4Pをジアシルグリセロ
ール及びイノシトール-1,4-ビスリン酸に選択的に変換する(Zhang et a
l. 2013)。PKD1は、タイプIIヒストンデアセチラーゼ(HDAC 4/5
/7/9)をリン酸化して、その核外輸送を誘導し、肥大遺伝子発現を抑制解除する(M
onovich et al. 2010;Xie and Hill 2013)。S
mrckaらは、PLCεが圧負荷誘導PKD活性化、タイプIIHDACリン酸化、及
びin vivoにおける肥大に要求されることを見いだした(Zhang et al
. 2013)。その後、mAKAPβはまた、in vivoにおいて、圧負荷に対応
してPKD活性化及びHDAC4リン酸化に要求されることが分かった(Kritzer
et al. 2014)。注目すべきことに、mAKAPβは、PKD及びHDAC
4と三元複合体を形成可能である。これらの結果は、共に、局所cAMPシグナリングが
どのように心臓遺伝子発現の調節に影響し得るかを示している。
【0022】
近年、mAKAPβが、心筋細胞においてHDAC5の足場となり、HDAC5、PK
D、及びPKAを含むシグナロソームを形成することが掲載された(Dodge-Kaf
ka et al. 2018)。mAKAPβ発現の阻害は、それぞれα-及びβ-ア
ドレナリン受容体刺激に対応するPKD及びPKAによるHDAC5のリン酸化を抑えた
。重要な点として、mAKAPβ-HDAC5アンカリングの阻害により、α-アドレナ
リン受容体シグナリング及びPKDリン酸化によるHDAC5の核外輸送誘導を妨害した
。その上、mAKAPβ-PKAアンカリングの阻害により、α-アドレナリン誘導HD
AC5核外輸送のβ-アドレナリン受容体刺激による阻害を妨害した。これらのデータは
、共に、mAKAPβシグナロソームがクラスIIaHDACの核-細質質局在化を双方
向に調節するように機能するということを明らかにしている。このように、mAKAPβ
足場は、それぞれ健康状態及び疾患における病的な遺伝子発現の抑制及び活性化の両方を
制御する筋細胞調節ネットワークにおいて、ノードとして機能する。
【0023】
mAKAPβ及びカルシウムシグナリング
mAKAPβは、cAMP、ホスホイノシチド、及びMAP-キナーゼシグナリングに
加えて、Ca2+依存性シグナリング伝達の統括に寄与している。同定されたmAKAP
βの第2の結合パートナーは、細胞内貯蔵部からのCa2+誘導Ca2+放出の要因とな
るリアノジン受容体Ca2+放出チャネル(RyR2)であった(Kapiloff,
Jackson, and Airhart 2001;Marx et al. 20
00)。RyR2は、バルクCa2+が放出されて筋節収縮を誘発する興奮収縮連関にお
ける役割で最もよく知られる。PKAリン酸化は、RyR2流を増強する(Valdiv
ia et al. 1995;Dulhunty et al. 2007;Bers
2006)が、興奮収縮連関に対するPKA触媒RyR2リン酸化の重要性は、大きく
議論されるところである(Houser 2014;Dobrev and Wehre
ns 2014)。おそらく核周囲の二分子に位置するRyR2の一部分(Escoba
r et al. 2011)は、mAKAPβ及びネスプリン-1α抗体と共に免疫沈
降することができる(Pare, Easlick, et al. 2005;Kap
iloff, Jackson, and Airhart 2001)。mAKAPβ
は、病的なリモデリングに関係する核イベントの調節に重要である興奮収縮連関機構及び
シグナリング分子成分をまとめると認められる。このように、mAKAPβ複合体は、収
縮を肥大誘発に対応させる一機構をもたらし得る。筋細胞初代培養物のβ-アドレナリン
刺激は、mAKAPβ会合RyR2のPKAリン酸化の増加をもたらす(Pare, B
auman, et al. 2005)。PKA触媒RyR2リン酸化は、交換刺激増
加状態時におけるmAKAPβシグナロソーム近傍内の局所Ca2+放出を増強し得る。
【0024】
少数のmAKAPβ会合RyR2が収縮全体に影響し得るという可能性は低いが、核周
囲のCa2+増加の可能性のある標的は、足場を結合可能なCa2+/カルモジュリン依
存性ホスファターゼカルシニューリン(CaN)とし得る。CaNの触媒サブユニットの
3つのアイソフォームが存在する(α、β、γ)が、CaNAβ-mAKAPβ複合体の
みが筋細胞において検出されている(Li et al. 2010)。注目すべきこと
に、CaNAβは、in vivoにおける心肥大誘発、及び虚血後の筋細胞生存に重要
なCaNAアイソフォームである(Bueno et al. 2002; Bueno
et al. 2004)。CaNAβは、mAKAPβ内の特有の部位(残基128
6~1345)に直接結合する(Pare, Bauman, et al. 2005
;Li et al. 2010)。mAKAPβへのCaNAβ結合は、アドレナリン
刺激によって及びCa2+/カルモジュリンによって直接的に、細胞において増強される
(Li et al. 2010)。とりわけ、CaNAβ-mAKAPβ結合は、in
vitroにおけるα-アドレナリン誘発性の新生仔筋細胞肥大に要求されるものであ
った(Li et al. 2010)。
【0025】
mAKAPβ及び遺伝子発現
CaNは、多くの基質のなかでも、NFATc及びMEF2転写因子の活性化の要因と
なる。NFATc転写因子ファミリーは、そのすべてが筋細胞に発現し、且つ筋細胞肥大
誘発に寄与し得る、4つのCaN依存性アイソフォームを含む(Wilkins et
al. 2004)。一般に、NFATcファミリーメンバーは、N末端調節ドメイン内
の複数のセリン高含有モチーフにおいて著しくリン酸化されると、細胞質に保持される。
このモチーフがCaNによって脱リン酸化されると、NFATcは核内に移行する。複数
のNFATcファミリーメンバーがmAKAPβを結合可能であり、mAKAPβとの結
合は、筋細胞におけるNFATc3のCaN依存性脱リン酸化に要求されるものであった
(Li et al. 2010)。したがって、mAKAPβ発現はまた、in vi
troのNFAT核移行及び転写活性にも要求されるものであった(Li et al.
2010;Pare, Bauman, et al. 2005)。これらの結果は
、in vivoのNFAT依存性遺伝子発現が、大動脈縮窄術後のmAKAPβ心筋細
胞特異的ノックアウトによって抑えられたという近年の知見と互いに関連する(Krit
zer et al. 2014)。
【0026】
NFATc2及びNFATc3のように、MEF2Dは、in vivoにおける心肥
大に要求される転写因子である(Kim et al. 2008;Wilkins e
t al. 2002;Bourajjaj et al. 2008)。MEF2ファ
ミリーメンバーは、MADSボックス及びMEF2相同ドメインの両方を含む保存DNA
結合ドメインを含む(Potthoff and Olson 2007)。MEF2D
のDNA結合ドメインは、mAKAPのN末端ドメインに直接結合する(Vargas
et al. 2012;Kim et al. 2008)。CaN及びMEF2Dは
、心臓だけでなく骨格筋においても重要である(Naya et al. 1999;N
aya and Olson 1999;Black and Olson 1998;
Friday et al. 2003;Wu et al. 2001)。MEF2-
mAKAPβ結合の妨害は、C2C12骨格筋芽細胞におけるMEF2転写活性及び内在
性MEF2標的遺伝子発現を鈍化させるものであった(Vargas et al. 2
012)。その上、細胞融合及び分化マーカー発現の減少によって明らかにされるように
、MEF2-mAKAP複合体の阻害により、C2C12筋芽細胞の筋管への分化を抑え
た(Vargas et al. 2012)。注目すべきことに、CaN-MEF2結
合は、心筋細胞においてmAKAPβ依存性である(Li, Vargas, et a
l. 2013)。したがって、CaN-mAKAPβ結合の阻害により、C2C12細
胞におけるMEF2転写活性及び心筋細胞肥大の両方を阻害した(Li, Vargas
, et al. 2013)。NFATc2のように、圧負荷に対応するin viv
oにおけるMEF2D脱リン酸化は、mAKAPβのコンディショナルノックアウト後に
抑えられ、心房性ナトリウム利尿因子の発現を含むMEF2標的遺伝子の発現低下に相関
するものであった(Kritzer et al. 2014)。
【0027】
圧負荷時におけるin vivoでのmAKAPβによるNFATc、MEF2、及び
HDAC4の調節は、ストレス調節遺伝子発現に対するmAKAPβの重要性を示してい
る(Kritzer et al. 2014)。掲載記事において、mAKAPβにて
、NFATc及びMEF2がどのようにCaNによって調節される一方、HDAC4及び
HDAC5がどのようにPKD及びPKAによって調節されるかが示されている(Li,
Vargas, et al. 2013;Zhang et al. 2013;L
i et al. 2010;Dodge-Kafka et al. 2018)。m
AKAPβは、他のシグナリング酵素によるこれらの遺伝子調節タンパク質の調節を促す
と認められる。例えば、mAKAPβ会合ERK5は、MEF2をリン酸化して、転写因
子を活性化させ得る(Kato et al. 2000)。その上、PKAは、MEF
2をリン酸化して、そのDNA結合親和性に影響を及ぼすことができる(Wang et
al. 2005)。一方で、Olsonらは、HDAC4のPKAリン酸化が、新た
なHDAC4タンパク質分解フラグメントの生成によってMEF2活性を阻害可能である
ことを提案している(Backs et al. 2011)。多くのmAKAPβ結合
パートナーの活性が最終的にどのように統合されて遺伝子発現を制御するかは、in v
itro及びin vivoの両方で研究可能である。
【0028】
その他のmAKAPβ結合パートナー
ミオポディン(myopodin)及びNCX1を含む、足場へのドッキングの意義が
十分に特徴づけられていないmAKAPβの他の結合パートナーが存在する(Faul
et al. 2007;Schulze et al. 2003)また、低酸素に対
する全身性応答を調節する転写因子であるHIF-1αも、mAKAPβを結合する(W
ong et al. 2008)。正常酸素状態において、細胞におけるHIF-1α
の存在量は、ユビキチン媒介プロテアソーム分解によって少なく保たれる。HIF-1α
は、プロリルヒドロキシラーゼ(PHD1、PHD2、及びPHD3)と呼ばれる酸素感
受性ジオキシゲナーゼファミリーによってヒドロキシル化される(Ohh et al.
2000)。ヒドロキシル化したHIF-1αは、その後、エロンギンCユビキチンリ
ガーゼ複合体を動員してHIF-1αをユビキチン化するとともにそのプロテアソーム依
存性分解を促進するフォン・ヒッペル・リンドウタンパク質(pVHL)に認識される(
Maxwell et al. 1999)。低酸素条件において、PHDは不活性化さ
れ、HIF-1α分解が減少し、HIF-1αが核に蓄積して、そこでHIF-1βと二
量体化して標的遺伝子の転写を促進することができる。mAKAPβは、培養新生仔筋細
胞においてHIF-1α、PHD、pVHL、及びE3リガーゼSiah2(seven
in absentia相同体2)を含むシグナリング複合体を会合させることができ
る(Wong et al. 2008)。正常酸素状態において、mAKAPβアンカ
ーPHD及びpVHLは、HIF-1αユビキチン化及び分解を促進する(Wong e
t al. 2008)。しかしながら、低酸素条件において、Siah2活性化が、結
合したPHDのプロテアソーム分解を誘導し、HIF-1α蓄積を促進する(Wong
et al. 2008)。mAKAPβノックアウトは、虚血再灌流後の心筋細胞生存
に影響し得る。
【0029】
mAKAPβ-リモデリング構成の統括役
上述の記載は、心肥大及び病的なリモデリングに重要であることが知られている複数の
シグナリング経路が、主要なシグナリング中間体のmAKAPβ足場への結合によってど
のように調節されるかを示している。心筋細胞特異的なmAKAPコンディショナルノッ
クアウトマウスは、in vivoにおけるmAKAPβシグナロソームの関連を示すよ
うに、特徴づけられている(Kritzer et al. 2014)。mAKAPβ
は、心筋細胞において、大動脈縮窄術及びイソプロテレノール注入による心肥大誘発に要
求されるものであった。しかしながら、最も注目されることは、心筋アポトーシス及び間
質性線維症を含む病的なリモデリングの防止、及び長期圧負荷に直面しての心臓機能の保
護であり、共に、マウスの生存を著しく延長させた(Kritzer et al. 2
014)。これらの結果は、心臓疾患において、消失させることで生存の利益をもたらす
初めての足場として、mAKAPβを認知させた。重要な点として、Nkx2-5-対象
cre欠失株の使用により、6か月齢において明らかな表現型をもたらさなかったので、
mAKAPβは、正常な成体心臓機能の発達又は維持のいずれにも必要とされるとは認め
られなかった。(Kritzer et al. 2014)。mAKAPβノックアウ
トは、強制的な運動(水泳)によって誘発される生理学的な肥大を抑えるものの、疾患に
おけるmAKAPβ複合体の標的化は関連するにとどまる。
【0030】
足場のsiRNAノックダウンを含む、ヒトにおけるmAKAPβ複合体を標的化する
種々の方法が想定され得る。しかしながら、mAKAPβシグナロソームの構造及び機能
を比較的詳しく理解することで、これらの経路を標的化するさらなるアプローチをもたら
す。例えば、mAKAPβ-CaNAβ、mAKAPβ-MEF2D、mAKAPβ-P
LCε、及びmAKAPβ-RSK3結合を標的とするアンカリングディスラプターペプ
チドを含む、mAKAPβに関与する主要なタンパク質とタンパク質との相互作用を標的
とするペプチドの発現は、in vitroにおいて有効であることが既に示されている
(Li, Vargas, et al. 2013;Li, Kritzer, et
al. 2013;Vargas et al. 2012;Zhang et al
. 2011)。主要な死因である心不全は、米国だけで300億/年ドルを超える費用
のかかる、現代の治療においても診断の5年内に50%の死亡率を招く疾患である。(G
o et al. 2014)。心疾患における可能性のある標的の多くの候補が多面性
であり、in vivoにおいて十分な特異性を有する薬剤の開発を複雑にしている。m
AKAPβシグナロソームの特異的標的化により、病的な心臓リモデリングに特化すると
認められ、かつ、著しい副作用を伴わずにその消失が促され得る、比較的希少なタンパク
質とタンパク質との相互作用を標的化する機会がもたらされる。心不全の患者を処置する
ための新しい有効な治療の開発、並びに冠動脈疾患、高血圧、及び弁膜疾患など他の心血
管疾患に関連するその発症の予防がまさに求められている。
【発明の概要】
【0031】
以下の簡単な概要は、本発明のすべての特徴及び態様を含むことを意図せず、本発明が
この概要に記載されるすべての特徴及び態様を含む必要があるということを示唆するもの
ではない。
【0032】
本発明者らは、特有のタンパク質とタンパク質との相互作用を標的とする薬剤を使用し
て個々のmAKAPシグナリング複合体のシグナリング特性を阻害することで、心臓の病
的プロセスを処置する方法を発見した。そうした治療方法は、所定の細胞応答の選択的阻
害を可能にするため、従来の治療アプローチに対する利点をもたらす。
【0033】
特に、本発明者らは、mAKAP媒介のタンパク質とタンパク質との相互作用を阻害す
ることが、病的な心臓リモデリングもたらす細胞プロセスを開始させる主要な転写因子の
活性化において中心的役割を果たす酵素の活性化を調節するmAKAPの能力を阻害する
ために使用可能であるということを見いだした。
【0034】
具体的に、発明者らは、PP2AとmAKAPβとの結合相互作用を阻害することで、
例えば心筋梗塞後の、心不全につながる障害から心臓を保護することができるということ
を発見した。
【0035】
このように、本発明は、所定の態様において、心臓を障害から保護する方法を含み、該
方法は、PP2AとmAKAPβとの相互作用を阻害する薬学的有効量の組成物を、そう
した障害のリスクを有する患者に投与することで行われる。
【0036】
また、本発明は、PP2AとmAKAPβとの相互作用を阻害する薬学的有効量の組成
物を患者に投与することで心疾患を処置する方法に関する。
【0037】
また、本発明は、PP2AとmAKAPβとの相互作用を阻害する組成物に関する。
【0038】
さらに他の実施形態において、阻害剤は、PP2A及びmAKAPβの発現又は活性を
阻害する任意の分子を含む。
【0039】
本発明の上述及び他の目的、特徴及び利点は、同様の参照符号が各種の図面において同
じ部分を指す添付の図面に示されるように、以下の本発明の好ましい実施形態のより具体
的な記載から明らかになるだろう。図面は、必ずしも正確な縮尺ではなく、代わりに本発
明の原理を示すことに重点が置かれている。
【0040】
本特許又は出願願書は、少なくとも1つの色付き図面を含む。色付き図面を含むこの特
許または特許出願公開公報の写しは、申請および必要手数料支払いの上、特許庁から提供
される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1図1は、mAKAPβ調節した、SRF依存性遺伝子発現のモデルを示す。アンカリングしたRSK3は、核周囲のmAKAPβ複合体と会合したSRFをリン酸化する、Gqタンパク質結合受容体-ERKエフェクターである。cAMP依存性プロテインキナーゼA(PKA)によって活性化可能な、mAKAPβアンカリングPP2Aは、SRFリン酸化に対抗する。リン酸化したSRFは、求心性肥大を促進する遺伝子発現を誘導する。
図2図2は、ヒトRSK3のアミノ酸配列(配列番号1)を示す。
図3図3は、ラットmAKAPのアミノ酸配列(配列番号2)を示す。この文書内では、mAKAP配列の参照は、「mAKAPβ」又は「mAKAP」と記載されていても、mAKAPβ全体に含まれるとともに、この図に示すように当初記載のmAKAP配列と同一である、mAKAPα選択的スプライシング形態のナンバリングによるものであるということが留意される(Kapiloff 1999, Michel 2005)。また、「mAKAP」は、参照データベース及び文献において「AKAP6」とも呼ばれる。mAKAPβは残基245から始まる一方、mAKAPαは残基1から始まる。PP2A結合ドメインは残基2134から始まる。
図4図4は、AAVベクターに発現されるときのラットmAKAPのPBDのアミノ酸配列を示す。N末端のmycタグを含む(配列番号12)。
図5図5は、AAV9sc.ラットPBDを作製するために使用されるpscA-TnT-myc-ラットmAKAPのPBDのプラスミドを示す(配列番号13及び14)。
図6図6は、核周囲の足場であるmAKAPβを示す。上部は、mAKAP抗体(グレースケールのパネル及び緑色)、ヘキスト核染色(青色)、及び小麦胚芽凝集素(赤色、拡大したコントロールイメージのみに示す)で染色したマウスの心臓切片(左心室)を示す。左下パネルはコントロール、mAKAPノックアウトマウスのものである。横線=20μm。中央部は、mAKAP(緑色)及びアクチニン(赤色)に対する抗体で染色した成体ラットの筋細胞を示す。下部は、mAKAPドメイン構造を示す。部位がmAKAPβにおいて詳細にマッピングされている直接結合パートナーを示す。mAKAPβはmAKAPαの残基245から始まる。つまり、すべての結合部位はmAKAPαに対して番号をつけている。イメージはKritzerらによるものである(Kritzer et al. 2014)。
図7図7は、mAKAPβのシグナリングモジュールを示す。mAKAPβは複数のシグナリング酵素及び遺伝子調節タンパク質を結合する。cAMP、Ca2+、低酸素、ホスファチジルイノシチド、及びMAPKシグナリングに関与するモジュールを定め得る。詳細は上記参照のこと。この図において、mAKAPβ足場は、ネスプリン-1αを表す灰色の基部に配置され、種々のシグナリング分子を会合する黄色の球体として示される。金色の円筒体は、核膜に挿入される核膜孔複合体を表す。
図8図8は、オカダ酸感受性ホスファターゼはmAKAP会合PDE4D3を調節することを示す。A、mAKAP及びPDE4D3の両方を発現する、遺伝子導入したHEK293細胞を、300μMのオカダ酸(OA)又は500μMのシクロスポリンA(CsA)のいずれかで30分間処理した後、5μMのフォルスコリン(Fsk)で10分間刺激した。mAKAP抗体免疫沈降物に存在するPDE4D3のリン酸化状態は、リン酸化PDE4D3のSer-54に特異的な抗体を使用して測定した(上部パネル)。mAKAP抗体免疫沈降物に存在する全PDE4D3(中央パネル)及びmAKAP(下部パネル)を、非リン酸特異的抗体を使用して検出した。これらの実験において、mAKAPはGFPタグを付け、PDE4D3はVSV及びGFPタグを付け、分子量が増加したことが留意される。n=3。B、Aのように調製したmAKAP抗体免疫沈降物に関連するPDE活性を、[H]cAMP基質を使用してアッセイした。未処理の細胞(棒部1)と比較して*p<0.05。C、内因性のタンパク質複合体を、清澄化した成体ラットの心臓抽出物(500μgの全タンパク質)からコントロール(IgG)又はmAKAP特異的抗体を使用して単離した。免疫沈降物に関連するPDE活性を、10nMのOA又は50nMのPKIの存在下でアッセイした。n=3、*p<0.05。
図9図9は、プロテインホスファターゼPP2Aが成体ラットの心臓においてmAKAP足場に会合することを示す。A、成体ラットの心臓抽出物(500μgの全タンパク質)からmAKAP抗体を使用して免疫沈降したタンパク質複合体に関連するホスファターゼ活性を、30nMのPP2A阻害剤I(Li, Makkinje, and Damuni 1996)及び100nMのPKAリン酸化PP1阻害剤-1(Endo et al. 1996)あり又はなしで、32P標識ヒストン基質を使用してアッセイした。n=3。*p<0.05。B及びC、タンパク質複合体を、清澄化した成体ラットの心臓抽出物(2mgの全タンパク質)からコントロール(IgG)又はmAKAP特異的抗体を使用して単離した。抽出物(80μg)及び免疫沈降物(25%ロード)におけるPP2A(パネルB)及びPP1(パネルC)触媒サブユニットをイムノブロッティングによって検出した。n=3。
図10図10は、PP2AがC末端mAKAPドメインを結合することを示す。A、本明細書に使用するmAKAPドメイン並びにGFP及びmycタグ付きmAKAPタンパク質の模式図を示す。ラット及びヒトタンパク質を含むmAKAPフラグメントをそれぞれ黒色及び灰色で表す。ハッチング棒部は、筋細胞における核膜標的化の要因となる3つのスペクトリン反復ドメインを示す(Kapiloff et al. 1999a)。結合部位は、3-ホスホイノシチド依存性キナーゼ-1(PDK1、mAKAP残基227-232)(Michel et al. 2005b)、ネスプリン-1α(1074-1187)(Pare, Easlick, et al. 2005)、リアノジン受容体(RyR2、1217-1242)(Marx et al. 2000)、PP2B(1286-1345)(Li et al. 2009)、PDE4D3(1285-1833)(Dodge et al. 2001)、及びPKA(2055-2072)を含む、mAKAPを直接結合することが知られるタンパク質に対して示されている(Kapiloff et al. 1999a)。網掛け棒部はPP2A結合部位を示す。各フラグメントの最初と最後の残基を示す。B、精製したGST-PP2A Aサブユニット融合タンパク質を、示したGFP-mAKAP融合タンパク質を発現するHEK293細胞から調製した抽出物とともにインキュベートし、グルタチオン樹脂を使用してプルダウンで検出した。GFP-mAKAPフラグメントを、GFP抗体を使用してプルダウン(25%ロード、上部パネル)及び抽出物(5%ロード、下部パネル)において検出した。n=3。C、mycタグ付きmAKAPフラグメントを、HEK293細胞に発現し、ホスファターゼ結合をコントロール(IgG)又はmycタグ付き抗体を使用した免疫沈降、その後の32P標識ヒストン基質を使用したホスファターゼアッセイによって検出した。n=3。他の試料と比較して*p<0.05。ラット及びヒトmAKAPの両方のC末端相同性ドメインはPP2Aを結合することが留意される。
図11図11は、mAKAP-PDE4D3複合体とのPP2Aの会合がPDE4D3リン酸化の阻害に要求されることを示す。A、PDE4D3(VSV及びGFPタグ付き)、及びmycタグ付きmAKAP1286-2312又はPP2A結合部位のない1286-2083を発現するHEK293細胞を、300μMのOAで30分間処理した後、5μMのFskで10分間刺激した。タンパク質複合体を、ホスファターゼ阻害剤の存在下でmycタグ付き抗体を使用して免疫沈降した。免疫共沈降したPDE4D3のリン酸化状態は、リン酸化PDE4D3のSer-54に特異的な抗体を使用して測定した(P-PDE4D3、上部パネル)。免疫沈降物に存在する全PDE4D3、myc-mAKAP、及びPP2A C-サブユニットを、非リン酸特異的抗体を使用して検出した(下部の3つのパネル)。n=3。B、Aのように処理したさらなる細胞から単離した、myc抗体免疫沈降物に関連するPDE活性を、[H]cAMPを使用してアッセイした。n=3。棒部1と比較して*p<0.05。
図12図12は、mAKAP結合PP2AがB56δサブユニットを含み、cAMP活性化されることを示す。A、タンパク質複合体を、図2Bのように成体ラットの心臓抽出物(500μgの全タンパク質)からコントロール(IgG)又はmAKAP特異的抗体を使用して免疫沈降し、関連するホスファターゼ活性についてアッセイした。図示するように、免疫沈降物を、50μMのCPT-cAMP、10nMのOA、又は50nMのPKIを添加しないで又は添加して、5分間プレインキュベートした後、[32P]ヒストン基質を添加した。n=3。*p<0.05。B、内在性タンパク質複合体を、成体の心臓抽出物(2mgの全タンパク質)からB56δ及びコントロール(IgG)抗体で免疫沈降した。80μgの抽出物及び免疫沈降物(25%ロード)におけるmAKAPをイムノブロッティングによって検出した。n=3。C、Flagタグ付きB56δ及び/又はGFPタグ付きmAKAPをHEK293細胞に発現させた。タンパク質複合体はmAKAP抗体を使用して免疫沈降した。免疫沈降物(25%ロード)及び全抽出物(5%ロード)におけるB56δをイムノブロッティングによってFlag抗体で検出した。n=3。D、Cのように調製したmAKAP抗体免疫沈降物に関連するホスファターゼ活性を、32P標識ヒストン基質を使用してアッセイした。n=3。E、mAKAP及びB56δを発現するHEK293細胞を、5μMのFsk及び10μMのIBMX(Fsk/IBMX)で10分間処理した後、mAKAP抗体でタンパク質複合体を免疫沈降した。免疫沈降物に関連するホスファターゼ活性を、[32P]ヒストン基質を使用してアッセイした。n=3。mAKAPへのPP2AのB56δ及びCサブユニット結合はFsk/IBMXに影響されなかったということが留意される(以下の図13参照)。
図13図13は、PKAによるB56δのリン酸化がmAKAP関連PP2A活性を増加させることを示す。A、B56δは、PKAによってセリン残基53、68、81、及び566においてリン酸化される(Ahn et al. 2007)。野生型又は4つすべてのPKA部位でアラニン置換した(S4A)B56δを、野生型mAKAP又はPKA結合部位のない全長mAKAP突然変異体とHEK293細胞において共発現させた(ΔPKA、図3A参照)。5μMのFsk及び50μMのIBMXで刺激後、タンパク質複合体をmAKAP抗体で免疫沈降し、会合したタンパク質を、B56δ、mAKAP、及びPP2A-C抗体でイムノブロッティングによって検出した(下部の3つのパネル)。B56δのPKAリン酸化を、B56δリン酸-Ser-566特異的抗体でイムノブロッティングによって検出した(P-B56δ、上部パネル)。n=3。B、Bにおいて調製した免疫沈降物を、関連するホスファターゼ活性についてアッセイした。n=3。*p<0.05。
図14図14は、PKAによるB56δのリン酸化がmAKAP会合PDE3D3の脱リン酸化を高めることを示す。A、mAKAP(GFPタグ付き)、PDE4D3(VSV及びGFPタグ付き)、及び野生型B56δ又はPKAリン酸化部位のB56δ S4A突然変異体のいずれかを発現するHEK293細胞を、300μMのOAで30分間、提示したように処理した後、5μMのFskで10分間刺激した。タンパク質複合体を、ホスファターゼ阻害剤の存在下においてmAKAP抗体で免疫沈降した。免疫沈降物に存在するPDE4D3のリン酸化状態は、リン酸化PDE4D3のSer-54に特異的な抗体を使用して測定した(上部パネル)。免疫沈降物に存在する全PDE4D3、mAKAP、B56δ、及びPP2A-Cタンパク質を、非リン酸特異的抗体を使用して検出した(下部の4つのパネル)。n=3。B、Aのように処理したさらなる細胞から単離したタンパク質複合体に関連するPDE活性を、[H]cAMPを使用してアッセイした。n=3。棒部1と比較して*p<0.05。
図15図15は、mAKAP複合体と会合したPKA及びPP2Aが連携してPDE4D3活性及びcAMP分解を調節することを示す。PKAは、2つの調節サブユニット及び2つの触媒サブユニットから構成される。mAKAP結合PP2Aは、A、B56δ、及びC(触媒)サブユニットを含む。A、非刺激細胞において、基本的なPP2A活性はPDE4D3脱リン酸化を維持し、おそらく、PDE4D3をリン酸化及び活性化する場合より、その後の作動剤に対応してcAMPレベルをより急速に上昇させる。同時に、基本的なPDE4D3活性は、cAMPの局所レベルを低く維持し、擬似的シグナリングを防止するはずである。B、G-共役型受容体刺激はcAMP合成を誘導し、PDE4D3によるcAMP分解速度を超え、mAKAP結合PKAを活性化させる。PKAは、PDE4D3及びPP2Aの両方をリン酸化及び活性化する。PDE4D3活性は、ピークのcAMPレベルを制限し、GPCRダウンレギュレート後のcAMPクリアランスの速度を加速させるはずである。一方で、PP2A活性化は、PKAによるPDE4D3リン酸化に対抗し、cAMP分解を抑えて、より大きくて長く続くcAMPシグナルに寄与する。
図16図16は、PKAリン酸化I-1のPP1活性阻害の確認を示す。タンパク質複合体を、ラットの心臓抽出物からPP1又はコントロールのIgG抗体で免疫沈降し、関連するホスファターゼ活性を、100nMのPKAリン酸化PP1阻害剤-1(Endo et al. 1996)あり又はなしで、[32P]ヒストン基質を使用してアッセイした。n=3。
図17図17は、ラット新生仔の心筋細胞におけるmAKAP及びPP2A触媒サブユニットの分布を示す。ラット新生仔の心室筋細胞を、これまでに記載されたように単離した(Pare, Easlick, et al. 2005)。筋原線維組織化及びmAKAP発現を誘導するため、50μMのフェニレフリンで1週間処理した後、これまでに記載したように、細胞を固定して、0.25μg/mlのマウス抗PP2A-C(緑色)、0.1μg/mlのOR010ウサギ抗mAKAP(赤色)のアフィニティー精製した抗体、及びローダミンファロイジン(複合イメージの青色)で染色し、アクチン筋原線維を示した。4色イメージを、Zeiss LSM510/UV共焦点顕微鏡において400×で得た。明確にするため、別々のPP2A-Cサブユニット及びmAKAPのイメージを示す。PP2A-Cサブユニットは、サイトゾルにおいて拡散した断続的パターンで存在する一方、mAKAPは核膜の位置に限定される。核膜におけるPP2A-Cサブユニット染色の存在は、PP2A-mAKAP複合体の存在と一致する(複合イメージの黄色)。コントロールのIgG染色を右側パネルに示す。n=3。
図18図18は、mAKAPフラグメントがHEK293細胞においてPP1に結合しないことを示す。mAKAP-GFP融合タンパク質をHEK293細胞に発現し、タンパク質複合体をPP1抗体で免疫沈降した。強く発現するにもかかわらず(下部パネル)、mAKAP融合タンパク質はPP1抗体で沈降しなかった。n=3。
図19図19は、SRFリン酸化が心筋細胞におけるmAKAPβシグナロソームによって調節されることを示す。(A)はSRFドメイン構造を示す。既知のリン酸化残基を示す(Li et al. 2014; Mack 2011; Janknecht et al. 1992)。(B)新生仔ラットの心室筋細胞(NRVM)に、siRNA及びSRE-ルシフェラーゼ及びコントロールのウミシイタケルシフェラーゼプラスミドを一時的に遺伝子導入した。ノーマライズしたluc:rluc比を示す。n=3。(C)はマウスの心臓抽出物からの内在性複合体の免疫共沈降を示す。n=3。(D)HAタグ付きRSK3WT又はS218A不活性突然変異体(Li, Kritzer, et al. 2013)及び/又はmyc-mAKAPβを、免疫共沈降アッセイのためにCOS-7細胞に発現した。n=3。(E)NRVM抽出物を、10μMのPEあり又はなしでsiRNAを遺伝子導入した2日後に得た。図S1B参照。n=3。コントロールのsiRNA+PEに対して*、コントロールのsiRNA+薬剤なしに対して†。(F)成体ラットの心室筋細胞(ARVM)に、myc-GFP又はmyc-GFP-RBDを発現するアデノウイルスを感染させ、20μMのPEで1日処理した。n=3。myc-GFP+PEに対して*、myc-GFP+薬剤なしに対して†。(G)最少維持培地中のNRVMを、1μMのオカダ酸(OA)又は1μg/mlのシクロスポリンA(CsA)で1時間処理した。n=4。薬剤なしのコントロールに対して*。(H)コントロール又はmAKAP siRNAを遺伝子導入したNRVMを、免疫共沈降アッセイに使用した。PP2Aホロ酵素は、A及びCサブユニットホモ二量体コア並びに足場Bサブユニットを含む(Dodge-Kafka et al. 2010)。PP2A Cサブユニット(PP2A-C)をイムノブロッティングによって検出した。n=3。(I)NRVMに、myc-PBD又はβ-galを発現するアデノウイルスを感染させた後、免疫共沈降アッセイを行った。n=3。(J)ARVMは、myc-PBD又はβ-galアデノウイルスを感染させ、10μMのIsoで1日処理した。n=4。β-gal+Isoに対して*、β-gal+薬剤なしに対して†。
図20図20は、SRF S103リン酸化が筋細胞求心性成長の決定要因であることを示す。成体ラットの心室筋細胞(ARVM)にアデノウイルスを感染させ、20μMのPE又は10μMのIsoあり又はなしで24時間培養した後、免疫細胞化学染色並びに細胞の幅及び長さの測定を行った(横紋と平行又は横紋に垂直の最大寸法、横線=25μm)。(A、B)筋細胞に、β-gal(コントロール)又はHAタグ付きRSK3を発現するアデノウイルスを感染させ、最少培地中で維持した。上部において、α-アクチニン-赤色、核-青色、HA-RSK3-緑色であり、下部においてHA-RSK3-グレースケールである。n=4。(C~F)筋細胞に、SRF WT、S103D、S013Aを発現するアデノウイルス、又はコントロールウイルスを感染させた。Flag-SRF-緑色、、α-アクチニン-赤色、核-青色である。同じウイルスで薬剤なしに対して*、同じ処理条件下のコントロールに対して†、同じ処理条件下のSRF WTに対して‡。D:n=3、F:n=5。(G、H)筋細胞に、myc-GFP又はmyc-GFP-RBDを発現するアデノウイルスを感染させた(緑色)。(I、J)筋細胞に、myc-PBD又はβ-galコントロールを発現するアデノウイルスを感染させた。(G~J)α-アクチニン-赤色、核-青色である。同じタンパク質で薬剤コントロールなしに対して*、同じ処理条件でのコントロールタンパク質に対して†。n=4。これらの実験で測定した細胞の相対度数分布を図S4に示す。
図21図21は、PP2AがSRF S103を脱リン酸化することを示す。細菌抽出物から精製し、グルタチオンビーズ上に配置されたGST-SRF融合タンパク質を、精製した0.5μgのRSK3(Millipore)とともに30分間インキュベートした後、PP2A反応バッファーで2回洗浄してから、10nMのオカダ酸あり又はなしで、50ngの精製PP2Aとともに30分間インキュベートした。
図22図22は、AAV9sc.myc-PBDを示す。A.AAV9sc.myc-PBDは、mycタグ付きのラットPBDペプチド(ラットmAKAP aa 2134-2314)を発現するミニ遺伝子及び欠損した右ITRを含み、自己相補性を与え、おそらく遅延を少なくして、発現効果を上げる(Andino et al., 2007)。AAVは、心臓栄養性(cardiotrophic)血清型9カプシドタンパク質を有し、心筋細胞特異的なトリトロポニンTプロモーター(cTnT)の制御下において、コードしたタンパク質を発現させる(Prasad et al., 2011)。B.AAV9sc.myc-PBDのためのシャトルプラスミドを示す。
図23図23は、PBDアンカリングディスラプター治療を示す。(A)mycタグ付きのラットmAKAP PBD(AAV9sc.myc-PBD)及びmyc-GFP(AAV9sc.GFP)を、自己相補的なAAV9及び心筋細胞特異的なトリトロポニンTプロモーターを使用してマウスに発現した(Prasad et al., 2011)。(B)AAV9sc.myc-PBD処理研究の時間経過をC~Hに示す。マウスは研究開始時に8週齢であった。(C)エンドポイントにおける代表の心臓全体の写真を示す。横線=5μm。(D~H)連続的なMモードの心エコー法を示す。nは、AAV9sc.myc-PBD-8(緑色)、AAV9sc.GFP-5(黒色)である。*所定の時点におけるコホートの差のP値。LVリモデリング指標=質量÷拡張終期容積。LVAW;d-拡張期における左心室前壁厚。
図24図24は、ヒトRSK3のヌクレオチド配列を示す(配列番号15)。
図25図25は、オープンリーディングフレームを翻訳したラットmAKAPα mRNAのヌクレオチド配列を示す(配列番号2及び16)。
図26図26は、オープンリーディングフレームを翻訳したヒトmAKAPβ mRNAのヌクレオチド配列を示す(配列番号17及び18)。
図27図27は、オープンリーディングフレームを翻訳したヒトmAKAPα mRNAのヌクレオチド配列を示す(配列番号19及び20)。
図28図28は、ヒトmAKAPのアミノ酸配列を示す(配列番号8)。mAKAPαは残基1から始まり、mAKAPβは残基243から始まる。PBDを太字で示す。
図29図29は、AAVに発現されるヒトPBDのアミノ酸配列を示す(配列番号9)。
図30図30は、AAV種に発現されるヒト及びラットにおけるPBDのアミノ酸配列のアライメントを示す(配列番号9及び12)。ラットPBDは、N末端のMyc-タグ[EQKLISEEDL](配列番号21)を有する(図4)。
図31図31は、ヒトPBDシャトルプラスミドのマップを示す。
図32図32は、pscAAV-hmAKAP PBDプラスミドのヌクレオチド配列を示す(配列番号10及び11)。
図33図33は、SRFリン酸化が拡張した心臓において減少することを示す。(A~E)マウス心室のタンパク質抽出物を、TAC又は偽生存手術の5分後(短期圧負荷、n=4,4)又は16週後(心不全、n=15,19)においてリン酸化SRF及び全SRFについてアッセイした。(A)代表するウエスタンブロットを示す。(B)Aの上部パネルのデンシトメトリーを示す。(C)圧負荷の5分後、RSK3をN-16 RSK3特異的抗体を使用して免疫沈降し、OR43 RSK3抗体及びRSK3活性を示すRSK3 S218のリン酸特異的抗体を使用して検出した。免疫沈降-ウエスタンアッセイを、RSK3-/-マウスを使用して検証した(図示せず)。各条件においてn=3。(D)16週の圧負荷により心不全を誘発した。拡張期及び収縮期における左心室(LV)容積並びに駆出率のためのM-モードの心エコー法により、TAC心臓が拡張し、機能障害を有することを示した。肺水腫の存在を示す浮腫肺重量の測定(脛骨長さに連動)により、TACマウスが心不全であることを示した。(E)Aの下部パネルのデンシトメトリーを示す。(F~H)ヒト患者の左心室組織(非虚血性及び虚血性心筋症並びに非拡張先天性心疾患並びにコントロールを含む)をSRF S103リン酸化についてアッセイし、拡張期における正常(<5.3cm、n=7)又は上昇(>5.3cm、n=8)左心室内径(LVID;d)によって分けた。ブロットにおける等しいロードを、主なタンパク質のバンドにポンソーS染色を使用して確認した(図示せず)。
【発明を実施するための形態】
【0042】
上述のように、AKAP由来シグナリング複合体は、生理学的及び病理学的な心臓での
イベントの調節において中心的役割を果たす。ゆえに、本発明者らは、心臓の病的プロセ
スを抑えるためのアプローチとしてタンパク質とタンパク質との特有の相互作用を標的と
する薬剤を使用して個々のAKAPシグナリング複合体のシグナリング特性を阻害するこ
とを検討した。そうした治療方法は、所定の細胞応答の選択的阻害を可能にするため、従
来の治療アプローチに対する利点をもたらす。
【0043】
mAKAPを含むアンカータンパク質は、心肥大及び心不全の処置の治療標的である。
特に、本発明者らは、AKAP媒介のタンパク質とタンパク質との相互作用を阻害するこ
とが、心肥大をもたらすリモデリングプロセスを開始させる主要転写因子の活性化におい
て中心的役割を果たす酵素の活性化を調節するmAKAPの能力を阻害するために使用可
能であるということを発見した。
【0044】
本発明の一態様は、心室形状の改善、すなわち、あまり長尺でない筋細胞によりLV内
径を小さくすること、及び/又は、より幅の広い筋細胞によりLV壁厚を大きくすること
で、壁ストレスを小さくして(ラプラスの法則)、HFrEF傾向の心臓における収縮期
機能を向上させ得る。収縮期機能障害の防止は、プロテインホスファターゼ2A(PP2
A)の筋肉A-キナーゼアンカータンパク質(mAKAP、AKAP6としても知られる
)由来アンカリングディスラプターペプチドの発現に基づく新たな遺伝子治療ベクターに
おいて示されている。
【0045】
以下に記載されるように、本発明者らは、転写因子の血清応答因子(SRF)が、心筋
細胞においてmAKAPβシグナロソームにてRSK3によってSer103でリン酸化
され、SRFは次に、足場に結合したプロテインホスファターゼ2A(PP2A)によっ
て脱リン酸化され得るということを近年発見した。末期の疾患及びHFrEFの特徴を示
す心室形態における偏心性変化を抑制する方法は、本発明の主題である。
【0046】
プロテインホスファターゼ2A(PP2A)は、これまで恒常的なハウスキーピング酵
素であると考えられていたが、多くのリン酸化イベントの調節に寄与することが明らかに
なってきている。例えば、心筋細胞において、PP2Aは、カルシウム及びMAPKシグ
ナリングの調節に関与する(duBell, Lederer, and Rogers
1996; duBell et al. 2002;Liu and Hofman
n 2004)。PP2Aは、安定で遍在的に発現される触媒(PP2A-C)及び足場
(PP2A-A)サブユニットヘテロ二量体、並びに21個の既知の多様なBサブユニッ
トの1つからなるヘテロ三量体複合体として存在する、セリン/スレオニンホスファター
ゼである(Lechward et al. 2001;Wera and Hemmi
ngs 1995)。PP2A Bサブユニットは、B(又はPR55)、B’(又はB
56)及びB’’(又はPR72)と呼ばれる3つの関連しないファミリーに分類され、
触媒活性及びホスファターゼの細胞内標的化の両方を調節することが提示されている(V
irshup 2000)。本発明者らは、mAKAP複合体に会合するプロテインホス
ファターゼ2A(PP2A)がPDE4D3セリン残基54の脱リン酸化を触媒すること
でPDE4D3活性化を覆すことが可能であることを異種細胞におけるmAKAP複合体
の再構成によってこれまでに示している(Dodge-Kafka et al. 20
10)。マッピング研究により、C末端mAKAPドメイン(残基2085~2319)
がPP2Aを結合することを明らかにした(Dodge-Kafka et al. 2
010)。mAKAPとの結合は、PDE4D3におけるPP2Aの機能に要求され、C
末端ドメインの欠失がベースライン及びフォルスコリン刺激性PDE4D3活性の両方を
高めるというようになった。興味深いことに、心臓においてmAKAP複合体に会合した
PP2Aホロ酵素は、PP2A標的サブユニットB56δを含む(Dodge-Kafk
a et al. 2010)。PDE4D3のように、B56δはPKA基質であり、
mAKAP結合B56δのPKAリン酸化により、複合体において2倍ホスファターゼ活
性を高めた。したがって、mAKAPを有する異種細胞においてPKAによってリン酸化
できないB56δ突然変異体の発現により、PDE4D3リン酸化の増大もたらした。こ
れらの知見は、共に、mAKAP複合体に会合したPP2AがPDE4D3脱リン酸化を
促進し、非刺激細胞においてPDE4D3を阻害すること、またアデニリルシクラーゼ活
性化及びB56δリン酸化後にcAMP誘導の正のフィードバックループを媒介すること
の両方について機能することを示した。このように、PKA-PDE4D3-PP2A-
mAKAP複合体は、プロテインキナーゼ及びホスファターゼがどのように分子シグナル
複合体に関与して局在細胞内シグナリングを動的に調節し得るかを例示している。心筋細
胞機能及び任意の可能性のある治療的意義との関連は、先行する研究において定義されな
かった(Dodge-Kafka et al. 2010)。
【0047】
本発明者らは、心筋細胞におけるmAKAP結合PP2Aの新たな作用機序、及びこの
機序の治療的意義をここで開示する。発明者らは、転写因子SRFがmAKAPβ結合R
SK3によってSer103でリン酸化され(図19)、Ser103におけるSRFの
リン酸化が求心性心筋細胞肥大を促進するエピジェネティックスイッチを構成することを
示している(図20)。重要な点として、SRFのSer103が、mAKAPβ足場に
結合したPP2Aによって脱リン酸化できるということを開示する(図19及び図21
。SRFのSer103におけるリン酸化は、求心性筋細胞肥大を誘発することが示され
ている(図20)。これらの知見は、心筋細胞形態調節の新たな機序、及びmAKAPβ
結合PP2Aの予期せぬ機能の発見である。特に、発明者らは、mAKAPβ結合SRF
のホスファターゼとしてのPP2Aの役割に一致して、in vitroにおいてmAK
APβからPP2Aを除くことにより、心筋細胞SRFのSer103のリン酸化(図1
9)、及び求心性心筋細胞肥大(図20)を促進し得、in vivoにおいてマウスの
心筋梗塞後の収縮期機能障害の発症に対して保護し得る(図23)。
【0048】
mAKAPβへのPP2A結合の阻害はmAKAPβにおけるPP2A結合部位マッピ
ングの新たな改良を示し、及び心臓疾患においてin vivoでmAKAP-PP2A
結合の阻害を初めて示す、mAKAPβ2134~2314(図19)又はヒトmAKA
Pβの2132~2319を含む競合ペプチドの発現によって行うことができる。ラット
のmAKAPのものと相同のヒトmAKAPのC末端ドメインもまたPP2Aを結合する
ことを示したということが留意される(図10)。ゆえに、図28図30に示されるラ
ットmAKAP2134~2314に対するヒト配列(ヒトmAKAPアミノ酸残基相同
2132~2319)も、PP2Aを結合すると予期され、PP2A-mAKAP結合競
合ペプチドを構成する。
【0049】
ウイルスに基づく遺伝子治療を介してPP2Aアンカリングディスラプターペプチドを
有効に送達することが、マウス梗塞モデルにおける効果によって示されている(図23
。あるいは、PP2A-mAKAPβ相互作用を阻害し得るそうしたペプチドの送達は、
転写ペプチドのトランスアクチベーター及びポリアルギニンテイルなどの細胞透過性配列
、又はステアレートなどの脂肪由来基とのコンジュゲーションの使用によって向上するこ
とができる。また、ペプチド模倣(すなわち、元の配列における構造的に変化を伴うペプ
チドは、ペプチドの構造的及び機能的特性に影響なくエキソプロテアーゼ及びエンドプロ
テアーゼに対して保護を与える)の使用によって、安定性を向上させることができる。
【0050】
また、発明者らは、低分子ディスラプターがAKAP由来複合体内の特定の相互作用を
標的とするために使用可能であるということを見いだした。低分子ディスラプターは、合
理的設計とスクリーニング手法とを組み合わせて同定可能である。そうした化合物は、慢
性心不全の処置のため、AKAPの特定の結合面を標的とし、心筋細胞においてAKAP
とPP2Aとの相互作用を阻害し、正常な心臓の収縮を向上させるように設計可能である
【0051】
本発明は、PP2AとmAKAPβとの相互作用によって引き起こされる任意の心臓病
態を処置する方法に関する。そうした心臓機能障害は、息切れや倦怠感などの兆候及び症
状をもたらし得、高血圧、冠動脈疾患、心筋梗塞、弁膜疾患、原発性心筋症、先天性心疾
患、不整脈、肺疾患、糖尿病、貧血症、甲状腺機能亢進、及び他の全身性疾患を含むがこ
れらに限定されない種々の原因があり得る。
【0052】
本発明において、本技術分野内の従来の分子生物学、微生物学、及び組換えDNA技術
が使用され得る。そうした技術は文献において十分に説明されている。例えば、Samb
rook et al、“Molecular Cloning: A Laborat
ory Manual” (4th Ed., 2012); “Current Pr
otocols in Molecular Biology” Volumes I-
III [Ausubel, R. M., ed. (1994)]; “Cell
Biology: A Laboratory Handbook” Volumes
I-III [J. E. Celis, 3rd ed. (2005))]; “C
urrent Protocols in Immunology” Volumes
I-III [Coligan, J. E., ed. (2005)]; “Oli
gonucleotide Synthesis” (M.J. Gait ed. 1
984); “Nucleic Acid Hybridization” [B.D.
Hames & S.J. Higgins eds. (1985)]; “Tra
nscription And Translation” [B.D. Hames
& S.J. Higgins, eds. (1984)]; “Animal Ce
ll Culture” [R.I. Freshney, ed. (1986)];
“Immobilized Cells And Enzymes” [IRL Pr
ess, (1986)]; B. Perbal、“A Practical Gui
de To Molecular Cloning” (1984); C. Mach
ida、“Viral Vectors for Gene Therapy: Met
hods and Protocols” (2010); J. Reidhaar-
Olson and C. Rondinone、 “Therapeutic App
lications of RNAi: Methods and Protocols
” (2009)が参照される。
【0053】
以下の定義及び省略形が本明細書において使用される。
AC5- アデニリルシクラーゼタイプ5
ACE- アンジオテンシン変換酵素
ANF- 心房性ナトリウム利尿因子
ARVM- 成体ラット心室筋細胞
CaN- カルシニューリン
CArGボックス- (CC9AT)GG
CPT- cAMP-8-(4-クロロフェニルチオ)アデノシン3’,5’-環状一
リン酸
CsA- シクロスポリンA
CTKD- C末端キナーゼドメイン
ERK- 細胞外シグナル調節キナーゼ
FBS- ウシ胎仔血清
Fsk- フォルスコリン
GFP- 緑色蛍光タンパク質
GPCR- G-タンパク質結合受容体HDAC-ヒストンデアセチラーゼ
Gs- 刺激性Gタンパク質
GST- グルタチオン-S-トランスフェラーゼHIF1α-低酸素誘導因子1α
HFrEF- 駆出率が低下した心不全
IBMX- 3-イソブチル-1-メチルキサンチン
Iso- イソプロテレノール
LIF- 白血病阻止因子
MADS- (MCM1、agamous、deficiens、SRF)ドメイン-
CArGボックス(CC9AT)GG血清応答要素(SRE)へのDNA結合を媒介す
る。MADSボックス遺伝子ファミリーは、ARG80を無視して最初の4つのメンバー
を指す頭字語として後に名づけられた。
出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeからのMCM1
シロイヌナズナArabidopsis thalianaからのAGAMOUS
キンギョソウAntirrhinum majusからのDEFICIENS
ヒトHomo sapiensからのSRF
mAKAP- 筋肉A-キナーゼアンカータンパク質
mAKAPα- ニューロンに発現する選択的スプライシングアイソフォーム、255
kDa
mAKAPβ- 横紋筋細胞に発現する選択的スプライシングアイソフォーム、230
kDa
MAPK- 分裂促進因子活性化プロテインキナーゼ
MEF2- 筋細胞エンハンサー因子-2
MgAc- マグネシウムアセテート
MI- 心筋梗塞
NCX1- ナトリウム/カルシウム交換体
NFATc- 活性化T細胞の核内因子
NRVM- 新生仔ラット心室筋細胞
NTKD- N末端キナーゼドメイン
OA- オカダ酸
PBD-PP2A- アンカリングディスラプター-偏心性肥大を抑える
PDE4D3- cAMP特異的ホスホジエステラーゼタイプ4D3
PDK1- 3´ホスホイノシチド依存性キナーゼ1
PE- フェニレフリン
PHD- プロリルヒドロキシラーゼ
PI4P- ホスファチジルイノシトール-4-ホスフェート
PKA- プロテインキナーゼA
PKD- プロテインキナーゼD
PKI- プロテインキナーゼ阻害剤
PLCε- ホスホリパーゼCε
PKA- cAMP依存性プロテインキナーゼ
PP2A- プロテイン(セリン-スレオニン)ホスファターゼ-SRFのSer10
を脱リン酸化する
PP2B- カルシウム/カルモジュリン依存性プロテインホスファターゼ2B
RBD- アイソフォーム特異的N末端RSK3ドメインは、mAKAPβ内の別個の
「RSK3結合ドメイン」を残基1694~1833(RBD)において結合する
RSK- p90リボソームS6キナーゼ
RyR2- タイプ2リアノジン受容体
siRNA- 低分子干渉RNAオリゴヌクレオチド
shRNA- 短ヘアピンRNA
SRE- 血清応答要素
SRF- 血清応答因子-転写因子(SRFのSer103のリン酸化により、求心性
筋細胞及び心臓の肥大が誘発される。リン酸化の阻害により、心臓構造及び機能を向上す
る。)
siRNA- 低分子干渉RNA
TAC- 大動脈縮窄術
TCA- トリクロロ酢酸
VSV- 水疱性口内炎ウイルス
【0054】
他の定義をしない限り、本明細書に使用されるすべての技術的及び科学的用語は、本発
明の属する技術分野における当業者が通常理解するものと同じ意味を有する。本明細書に
記載されるものと類似する又は同等の任意の方法及び材料が本発明の実施又は試験におい
て使用可能であるが、好ましい方法及び材料を記載している。一般に、細胞及び分子生物
学並びに分子化学に関して使用される専門語及びそれらの技術は、周知のものであり、本
技術分野において通常使用されるものである。具体的に規定されていない特定の実験技術
は、一般に、本技術分野において周知であるとともに、本明細書において引用及び記載さ
れている種々の一般的でより具体的な参考文献に記載されるような従来の方法によって行
われる。明確にするため、以下の用語は下記において定義される。
【0055】
本発明は、心筋細胞肥大及び/又は機能障害をもたらす種々の細胞内シグナル及び経路
をPP2AとmAKAPβとの相互作用が媒介するということを認める。このように、本
発明者らは、心筋細胞肥大及び/又は機能障害を予防及び/又は処置するため、この相互
作用を阻害する種々の方法を発見した。
【0056】
したがって、本発明は心臓を障害から保護する方法を含み、該方法は、PP2AとmA
KAPβとの相互作用を阻害する薬学的有効量の組成物を、そうした障害のリスクを有す
る患者に投与することで行われる。「薬学的有効量」は、送達の方法に基づいて経験的に
決定可能であり、送達の方法によって変わり得るということが理解される必要がある。
【0057】
また、本発明は、PP2AとmAKAPβとの相互作用を阻害する薬学的有効量の組成
物を患者に投与することで心疾患を処置する方法にも関する。
【0058】
また、本発明は、PP2AとmAKAPβとの相互作用を阻害する組成物にも関する。
特定の実施形態において、これらの阻害組成物又は「阻害剤」は、遺伝子治療送達を含む
任意の既知の方法で投与可能なペプチド阻害剤を含む。他の実施形態において、阻害剤は
低分子阻害剤であり得る。
【0059】
具体的に、本発明は、心臓を処置する又は障害から保護する方法及び組成物に関し、該
方法は、(1)PP2AとmAKAPβとの相互作用を阻害する、(2)PP2AとmA
KAPβとの活性を阻害する、又は(3)PP2AとmAKAPβとの発現を阻害する薬
学的有効量の組成物を、そうした障害のリスクを有する患者に投与することで行われる。
【0060】
また、本発明は、心臓を処置する又は障害から保護する方法にも関し、該方法は、PP
2Aのアンカリングによって媒介される細胞プロセスを阻害する薬学的有効量の組成物を
、そうした障害のリスクを有する患者に投与することで行われる。
【0061】
一実施形態において、組成物はmAKAPβとペプチドを含む。好ましい実施形態にお
いて、mAKAPβペプチドは、mAKAPβアミノ酸配列のカルボキシ末端から得られ
る。特に好ましい実施形態において、mAKAPβペプチドは、少なくともmAKAPβ
アミノ酸配列のアミノ酸2083~2319のフラグメントである。
【0062】
好ましい一実施形態において、mAKAPβペプチドは、少なくともmAKAPβアミ
ノ酸配列のアミノ酸2133~2319のフラグメントである。
【0063】
他の実施形態において、組成物は、PP2A及びmAKAPβのいずれか又は両方の発
現を阻害する低分子干渉RNAのsiRNAを含む。好ましい実施形態において、mAK
APβの発現を阻害するsiRNAは、短ヘアピンRNA発現ベクター又は生物学的薬剤
(shRNA)の投与後in vivoにおいて生成される。
【0064】
本発明の組成物は直接投与可能である、又はウイルスベクターを使用して投与可能であ
る。好ましい実施形態において、ベクターはアデノ随伴ウイルス(AAV)である。
【0065】
他の実施形態において、組成物は低分子阻害剤を含む。好ましい実施形態において、低
分子はPP2A阻害剤である。
【0066】
他の実施形態において、組成物は、mAKAPβの結合、発現又は活性を阻害する分子
を含む。好ましい実施形態において、分子はmAKAPβペプチドである。分子は、アデ
ノ随伴ウイルス(AAV)を含むウイルスベクターを使用して発現することができる。
【0067】
さらに他の実施形態において、組成物は、mAKAPβ媒介細胞プロセスを妨害する分
子を含む。好ましい実施形態において、分子は、PP2Aのアンカリングを妨害する。
【0068】
また、本発明は、PP2AとmAKAPβとの結合相互作用が、直接的に、又はPP2
AとmAKAPβとの結合における下流での作用を測定することで、測定される、心臓疾
患の傾向を判断するための診断アッセイに関する。また、本発明はそうしたアッセイのた
めの試験キットを提供する。
【0069】
さらに他の実施形態において、阻害剤は、shRNAを含む、アンチセンスRNA、リ
ボザイム、及び低分子干渉RNA(siRNA)を含む、PP2A及びmAKAPβの発
現を阻害する任意の分子を含む。
【0070】
また、本発明は、PP2A及びmAKAPβの発現及び/又は結合を阻害するために有
効な、可能性のある薬剤のスクリーニングのためのアッセイ系を含む。一態様において、
被験薬剤は、コントロールとの比較によって、PP2A及びmAKAPβの結合活性にお
けるその作用を測定するため、PP2A及びmAKAPβを含む細胞サンプル、又はPP
2A及びmAKAPβを含有する抽出物に投与することができる。また、本発明はそうし
たアッセイのための試験キットを提供する。
【0071】
本発明のペプチド組成物の調製において、PP2A又はmAKAP(図3)のアミノ酸
配列のすべて又は一部を使用することができる。一実施形態において、mAKAPβタン
パク質のカルボキシ末端領域は阻害剤として使用される。好ましくは、mAKAP配列の
少なくとも10個のアミノ酸を使用する。より好ましくは、mAKAP配列の少なくとも
25個のアミノ酸を使用する。最も好ましくは、mAKAPのアミノ酸2133~231
9のペプチド部分を使用する。
【0072】
種々のアミノ酸置換、欠失、又は挿入も、PP2AとmAKAPβとの相互作用を阻害
する阻害ペプチドの能力を向上させ得るということが理解される必要がある。このような
置換の突然変異は、非保存的な方法で(すなわち、特定のサイズ又は特性を有するアミノ
酸群に属するアミノ酸を、他の群に属するアミノ酸に変化させることによって)、又は保
存的な方法で(すなわち、特定のサイズ又は特性を有するアミノ酸群に属するアミノ酸を
、同じ群に属するアミノ酸に変化させることによって)、得られたタンパク質のアミノ酸
を変化させるように行われ得る。そうして保存的に変化させることで、一般に、得られた
タンパク質の構造及び機能の変化が少なくなる。非保存的に変化させることで、得られた
タンパク質の構造、活性、又は機能をより変化させやすい。本発明は、得られたタンパク
質の活性又は結合特性を大きく変えるものではない保存的な変化を含む配列を含むと考え
る必要がある。
【0073】
以下は、種々のアミノ酸分類の一例である。
非極性R基のアミノ酸:アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェ
ニルアラニン、トリプトファン、メチオニン。
極性無電荷R基のアミノ酸:グリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、
アスパラギン、グルタミン。
極性電荷R基のアミノ酸(pH6.0で負電荷):アスパラギン酸、グルタミン酸。
塩基性のアミノ酸(pH6.0で正電荷):リジン、アルギニン、ヒスチジン(pH6
.0におけるもの)。
【0074】
他の分類は、フェニル基を有するアミノ酸であり得る:フェニルアラニン、トリプトフ
ァン、チロシン。
【0075】
他の分類は、分子量によるもの(すなわちR基のサイズ)であり得る:グリシン(75
)、アラニン(89)、セリン(105)、プロリン(115)、バリン(117)、ス
レオニン(119)、システイン(121)、ロイシン(131)、イソロイシン(13
1)、アスパラギン(132)、アスパラギン酸(133)、グルタミン(146)、リ
ジン(146)、グルタミン酸(147)、メチオニン(149)、ヒスチジン(pH6
.0におけるもの)(155)、フェニルアラニン(165)、アルギニン(174)、
チロシン(181)、トリプトファン(204)。
【0076】
特に好ましい置換は、
- 正電荷を維持可能であるように、Argに対してLys、及びその逆のもの、
- 負電荷を維持可能であるように、Aspに対してGlu、及びその逆のもの、
- 遊離-OHを維持可能であるように、Thrに対してSer、並びに
- 遊離NHを維持可能であるように、Asnに対してGln、である。
【0077】
また、アミノ酸置換は、特に好ましい特性を有するアミノ酸を置換するために導入する
ことができる。例として、Cysは、他のCysとのジスルフィド架橋のために候補部位
として導入することができる。Hisは、特に「触媒」部位として導入することができる
(すなわち、Hisは、酸又は塩基として作用し得、生化学的触媒における最も一般的な
アミノ酸である)。Proは、タンパク質の構造においてβターンを誘発するその特に平
面である構造のため、導入することができる。少なくとも約70%の(好ましくは少なく
とも約80%の、最も好ましくは少なくとも約90%又は95%の)アミノ酸残基が同一
である、又は保存的置換に相当するとき、2つのアミノ酸配列は「実質的に相同」である
【0078】
同様に、本発明において使用されるヌクレオチド配列にはまた、置換、欠失、又は挿入
を行うことができる。特定のアミノ酸をコードするコドンが縮重する場合、特定のアミノ
酸をコードする任意のコドンを使用することができる。さらに、1つのアミノ酸を他のも
のに置換することが求められる場合、既知の遺伝コードに従ってヌクレオチド配列を修飾
することができる。
【0079】
また、ヌクレオチド及びオリゴヌクレオチドを修飾することができる。特に修飾ヌクレ
オチド及びオリゴヌクレオチドの記載のため、参照によってその全体が援用される米国特
許第7,807,816号は、例の修飾を記載している。
【0080】
少なくとも約70%の(好ましくは少なくとも約80%の、最も好ましくは少なくとも
約90%又は95%の)ヌクレオチドが同一であるとき、2つのヌクレオチド配列は「実
質的に相同」又は「実質的に同一」である。
【0081】
少なくとも約70%の(好ましくは少なくとも約80%の、最も好ましくは少なくとも
約90%又は95%の)ヌクレオチドが標的配列に水素結合可能であるとき、2つのヌク
レオチド配列は「実質的に相補的」である。
【0082】
「標準ハイブリダイゼーション条件」という用語は、ハイブリダイゼーション及び洗浄
の両方において5×SSC及び60Cと実質的に同等の塩条件及び温度条件を指す。しか
しながら、当業者は、そうした「標準ハイブリダイゼーション条件」は、バッファーにお
けるナトリウム及びマグネシウムの濃度、ヌクレオチド配列の長さ及び濃度、ミスマッチ
率、及びホルムアミド率などを含む特定の条件によって決まるということ理解するであろ
う。また、「標準ハイブリダイゼーション条件」の決定において重要であるのは、ハイブ
リダイゼーションする2つの配列がRNA-RNA、DNA-DN、又はRNA-DNA
であるかどうかである。そうした標準ハイブリダイゼーション条件は、ハイブリダイゼー
ションが典型的に、望まれるならより高い厳密性の洗浄で、予想した又は決定したT
り10~20C低い、周知の製法に従って当業者によって容易に決定される。
【0083】
「薬学的に許容される」という用語は、生理学的に許容可能であるとともに、ヒトに投
与すると、胃の不調、及びめまいなどのアレルギー性の又類似の有害反応を通常は生じさ
せない分子実体及び組成物を指す。
【0084】
「治療有効量」という用語は、心筋細胞の特徴における臨床的に有意な変化を、予防す
る、好ましくは、少なくとも約30パ-セント、より好ましくは少なくとも50パーセン
ト、最も好ましくは少なくとも90パーセント減少させるために十分な量を意味するよう
に、本明細書において使用される。
【0085】
有効成分としてポリペプチド、類似体、又は活性フラグメントを含む治療用組成物の調
製は、本技術分野において十分に理解されている。典型的には、そうした組成物は、液剤
又は懸濁剤としての注射剤として調製されるが、注射の前に液体内の溶解又は懸濁に適す
る固体形態も調製することができる。また、製剤は乳化させることができる。活性治療成
分は、多くの場合、薬学的に許容されるとともに有効成分に適合する賦形剤と混合される
。適切な賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、又はエタ
ノールなど、及びそれらの組合せである。さらに、望まれるなら、組成物は、有効成分の
効果を高める湿潤剤又は乳化剤、pH緩衝剤などの少量の補助物質を含むことができる。
【0086】
ポリペプチド、類似体、又は活性フラグメント、及び低分子阻害剤は、薬学的に許容さ
れる中和塩形態として治療用組成物に製剤化することができる。薬学的に許容される塩は
、例えば塩酸若しくはリン酸などの無機酸、又は酢酸、シュウ酸、酒石酸、及びマンデル
酸などの有機酸とともに形成された、(ポリペプチド又は抗体分子の遊離アミノ基ととも
に形成された)酸付加塩を含む。また、遊離カルボキシル基から形成された塩は、例えば
ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、若しくは水酸化第二鉄などの無機塩
基、及びイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチ
ジン、及びプロカインなどの有機塩基由来であってもよい。
【0087】
本発明の治療用組成物は、例えば単位用量の注射によって、従来法で静脈内に投与され
る。本発明の治療用組成物に関して使用されるとき「単位用量」という用語は、ヒト用の
単位投与量として適した物理的に個別のユニットに関し、各ユニットは、必要とされる希
釈剤、すなわち担体又はビヒクルを伴って、望まれる治療的作用を生じるように計算され
た所定量の活性物質を含む。
【0088】
組成物は、投与製剤に適合する方法において、治療有効量で投与される。投与される量
は、処置する対象、有効成分を使用する対象の免疫系の能力、及び所望されるPP2A-
mAKAPβ結合の阻害の程度によって決まる。投与に必要とされる正確な有効成分量は
、医師の判断によって決まり、各個人に固有である。しかしながら、適切な投与量は、1
日あたり、個人の体重キログラムあたり、約0.1~20、好ましくは約0.5~約10
、及びより好ましくは1~数ミリグラムの範囲の有効成分であり、投与経路によって決ま
り得る。また、初期の投与及びブースター注射の適切な用法は変わり得るが、初期投与、
及びその後の注射又は他の投与による1時間以上の間隔でのその後の再投与が典型とされ
る。あるいは、血液において10ナノモル~10マイクロモルの濃度を維持するために十
分な静脈内持続注入が考慮される。
【0089】
阻害剤がサイトゾルに達する必要性があることから、本発明におけるペプチドは、細胞
膜における移動を可能にするように修飾する必要があり得る、又はペプチド阻害剤をコー
ドするベクターにより発現される必要があり得る。同様に、核酸阻害剤(siRNA、s
hRNA、及びアンチセンスRNAを含む)をベクターによって発現可能である。標的と
される細胞に入ることができる任意のベクターを本発明において使用することができる。
特に、ウイルスベクターは細胞に「感染」し、望まれるRNA又はペプチドを発現するこ
とができる。細胞に「感染」することができる任意のウイルスベクターを使用することが
できる。特に好ましいウイルスベクターはアデノ随伴ウイルス(AAV)である。
【0090】
siRNAは、RNA干渉と呼ばれるプロセスによって標的mRNAの翻訳を阻害する
。siRNAが、標的mRNAに対して完全に相補的であるとき、siRNAは、mRN
A分解を促進することによって作用する。shRNAは、特別なsiRNAの種類として
、オリゴヌクレオチドとして作製されるというsiRNAに対する所定の利点を有する。
siRNAオリゴヌクレオチドは、典型的に実験室内で合成され、siRNAを細胞質に
送達する送達系を使用して細胞に送達される。対照的に、shRNAは、ベクターによっ
て細胞核に送達されるミニ遺伝子として発現され、shRNAが、転写の後、ドローシャ
やダイサーなどの細胞酵素によって成熟siRNA種へとプロセスされる。siRNAは
通常48時間後に99%分解される一方、shRNAは最大3年発現可能である。さらに
、shRNAは、siRNAよりもはるかに少ないコピー数で送達可能であり(5コピー
対低nM)、オフターゲット作用、免疫活性化、炎症、及び毒性を生じることははるかに
少ない。siRNAは、高用量を許容可能な急性疾患病態に適切であるが、shRNAは
、低用量が望まれる慢性の重篤な疾患又は障害に適切である(http://www.b
enitec.com/technology/sirna-vs-shrna)。
【0091】
siRNA及びshRNAの設計ガイドラインは、Elbashir(2001)の文
献、並びにhttps://www.thermofisher.com/us/en/
home/references/ambion-tech-support/rnai
-sirna/general-articles/-sirna-design-gu
idelines.html及びhttp://www.invivogen.com/
review-sirna-shrna-designを含む種々のウエブサイトにおい
て見受けられ、そのすべての全体が参照によって本明細書に援用される。好ましくは、第
1ヌクレオチドはA又はGである。25~29ヌクレオチドのsiRNAは、より短いも
のよりも有効であるが、2本鎖長19~21のshRNAは、より長いものほども有効で
あると考えられる。siRNA及びshRNAは、好ましくは19~29ヌクレオチドで
ある。shRNAにおけるループ配列は3~9ヌクレオチド長であり得、5、7又は9ヌ
クレオチドが好ましい。
【0092】
低分子阻害剤に関して、PP2AとmAKAPβとの相互作用を阻害する任意の低分子
を使用することができる。さらに、PP2A及び/又はmAKAPβの活性を阻害する任
意の低分子を使用することができる。
【0093】
類似の構造及び機能の低分子は、同様に合理的及びスクリーニング手法によって決定可
能である。
【0094】
同様に、PP2A及び/又はmAKAPβの発現を阻害する任意の低分子を使用するこ
とができる。
【0095】
さらにまた詳細には、本発明は、その好ましい実施形態を示す以下の項によって記載さ
れる。
1.駆出率が低下した心不全を処置又は予防する方法であって、患者の心臓細胞に、血
清応答因子(SRF)におけるリン酸化レベルを維持する組成物を投与することを含む方
法。
2.SRFはSer103においてリン酸化される、項1に記載の方法。
3.プロテイン(セリン-スレオニン)ホスファターゼ2A(PP2A)の脱リン酸活
性を阻害する、項1に記載の方法。
4.PP2Aの筋肉A-キナーゼアンカータンパク質(mAKAPβ)へのアンカリン
グを阻害する、項3に記載の方法。
5.組成物は、mAKAPβのフラグメントを含む、項4に記載の方法。
6.組成物は、mAKAPβのフラグメントと少なくとも90%の配列同一性を有する
アミノ酸配列を含む、項5に記載の方法。
7.組成物は、mAKAPのアミノ酸2132~2319のフラグメントを含む、項5
に記載の方法。
8.組成物は、mAKAPのアミノ酸2132~2319を含む、項5に記載の方法。
9.組成物は、PP2Aのフラグメントを含む、項4に記載の方法。
10.組成物はmAKAPのフラグメントをコードするベクターを含む、項4に記載の
方法。
11.組成物は、mAKAPのフラグメントと少なくとも90%の配列同一性を有する
アミノ酸配列をコードするベクターを含む、項4に記載の方法。
12.ベクターは、mAKAPのアミノ酸2132~2319のフラグメントをコード
する、項10に記載の方法。
13.ベクターは、mAKAPのアミノ酸2132~2319をコードする、項10に
記載の方法。
14.ベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)である、項10に記載の方法。
15.PP2AのmAKAPへのアンカリングを阻害する分子をコードする組成物。
16.分子は、mAKAPのフラグメントを含む、項15に記載の組成物。
17.mAKAPのフラグメントと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配
列を含む、項15に記載の組成物。
18.mAKAPのアミノ酸2132~2319のフラグメントを含む、項16に記載
の組成物。
19.mAKAPβのアミノ酸2132~2319を含む、項16に記載の組成物。
20.PP2Aのフラグメントを含む、項15に記載の組成物。
21.PP2AのmAKAPへのアンカリングを阻害する分子をコードするベクターを
含む組成物。
22.ベクターは、mAKAPのフラグメントをコードする、項21に記載の組成物。
23.ベクターは、mAKAPのフラグメントと少なくとも90%の配列同一性を有す
るアミノ酸配列をコードする、項21に記載の組成物。
24.ベクターは、mAKAPのアミノ酸2132~2319のフラグメントをコード
する、項21に記載の組成物。
25.ベクターは、mAKAPのアミノ酸2132~2319をコードする、項21に
記載の組成物。
26.ベクターは、PP2Aのフラグメントをコードする、項21に記載の組成物。
27.ベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)である、項21に記載の組成物。
【0096】
以下の実施例は本発明を理解しやすくするために提供するものであって、その真の範囲
は添付の特許請求の範囲に示される。示される方法において、本発明の趣旨を逸脱するこ
となく変形を行うことができるということが理解される。
【実施例0097】
本発明の組成物及びプロセスは、例示のみを意図するとともに本発明の範囲を限定する
ものではない以下の実施例に関してより十分に理解される。開示の実施形態への種々の変
更及び改変は、当業者に明らかであろう。また、このような変更及び改変は、限定はしな
いが、本発明のプロセス、配合物及び/又は方法に関するものを含み、本発明の趣旨及び
添付の特許請求の範囲から逸脱せずに行うことができる。
【0098】
[実施例1]
mAKAPβシグナロソームによるSRF調節
材料及び方法
新生仔ラット心室筋細胞の培養:
生後1~3日のスプラーグドーリーラットを断頭し、切除した心臓を1×ADSバッフ
ァーに配置した(116mM NaCl、20mM HEPES、1mM NaHPO
、5.5mM グルコース、5.4mM KCl、0.8mM MgSO、pH7.
35)。心房を慎重に取り除き、血液を洗浄して除いた。心室を細かく刻み、軽く振とう
させながら、3.3mgのタイプIIコラゲナーゼ(Worthington、230U
/mg)及び9mgのパンクレアチン(Sigma)を含む15mLの1×ADSバッフ
ァーにおいて37℃でインキュベートした。15分後、ほぐした心筋細胞を50gで1分
間遠心分離によって分離し、4mLのウマ血清に再懸濁して、時折かく拌しながら37℃
でインキュベートした。収量を最大にするため、筋細胞の酵素消化及び単離のステップを
10~12回繰り返した。筋細胞をプールし、再び50gで2分間遠心沈殿し、10%ウ
マ血清及び5%ウシ胎仔血清を添加したメンテナンス培地(DMEM:M199、4:1
)に再懸濁した。任意の混入線維芽細胞を取り除くため、ゼラチン被膜組織培養プラスチ
ック容器にプレーティングする前に、細胞を1時間プリプレーティングした。この作業に
より、90%を超える純度の心筋細胞を得た。培養の翌日、培地を0.1mMのブロモデ
オキシウリジンを含むメンテナンス培地に変えて線維芽細胞成長を抑えた。
【0099】
成体ラット心室筋細胞の単離及び培養:
2~3か月齢のラットに、心臓切除のため1000Uのヘパリン処置後、ケタミン(8
0~100mg/kg)及びキシラジン(5~10mg/kg)を腹腔内に使用して麻酔
をかけた。心臓を95%O及び5%COで予め平衡化した冷灌流バッファー(NaC
l 120mM、KCl 5.4mM、NaHPO4 7HO 1.2mM、NaH
CO 20.0mM、MgCl.6HO 1.6mM、タウリン 5mM、グルコ
ース 5.6mM、2,3-ブタンジオンモノオキシム 10 mM)内に直ちに移動さ
せた。外来性の組織を取り除いた後、心臓をハーバードランゲンドルフ装置カニューレに
大動脈を介して取り付けた。Ca2+非含有灌流を使用して、残りの血液を8~10mL
/minの一定速度において37℃で流し出した。その後、心臓を125mgのタイプI
Iコラゲナーゼ(Worthington、245U/mg)、0.1mgのプロテアー
ゼ(Sigma type XIV)及び0.1%のBSAを含む50mL灌流バッファ
ーでの循環灌流によって消化させた。灌流後、心房を取り除き、心室筋細胞をスライスし
、ピペッティングを繰り返してほぐした。細胞片を200μmのナイロンメッシュによっ
てろ過し、筋細胞を50gで1分間の遠心分離によって採取した。バッファー内のCa
濃度は、1.8mMまで徐々に回復し、筋細胞を、ACCT培地(M199培地(In
vitrogen 11150-059)、クレアチン 5mM、L-カルニチン 2m
M、タウリン 5mM、HEPES 25mM、2,3-ブタンジオンモノオキシム 1
0mM、 BSA 0.2% 及び1×インスリン-トランスフェリン-セレン添加)に
再懸濁し、10μg/mlラミニンを予め被膜したディッシュにプレーティングした。細
胞を、プレーティングの1.5時間後にACCT培地で洗浄し、それぞれ100~200
の感染多重度(MOI)のアデノウイルス及びDharmafect1(Dharmac
on)と混合させた100nmol/LのsiRNAを使用して、アデノウイルス感染又
はsiRNA遺伝子導入を行った。アドレナリン作動剤を翌日添加して、生化学アッセイ
及び形態学的測定を刺激の24時間後に行った。
【0100】
その他の細胞培養:
HEK293及びCOS-7細胞を、10%FBS及び1%P/Sを含むDMEM中に
おいて維持した。これらの細胞に、製造者によって提示されたように、Lipofect
amine2000(Invitrogen)で一時的に遺伝子導入した、又はアデノウ
イルス及びAdeno-X Tet-Offウイルス(Clontech)で感染させた
【0101】
ルシフェラーゼアッセイ:
24ウェルディッシュ内の225,000個の新生仔ラット心室筋細胞に、コントロー
ル又はRSK3特異的siRNAオリゴヌクレオチド(10nM)及びDharmafe
ct1試薬(Thermofisher)を遺伝子導入した。翌日、細胞を培地で洗浄し
た後、筋細胞に、100ngのSRE-luc(ホタルルシフェラーゼ)及び100ng
の-36Prl-rluc(ウミシイタケルシフェラーゼ)レポータープラスミド及びT
ransfast試薬を1時間再遺伝子導入し、その後、4%ウマ血清を含む培地中で一
晩培養してから、培地で洗浄し、10μMのPEあり又はなしで1日インキュベートした
。試料を、100μlのPLB中に採取し、Promegaデュアルルシフェラーゼキッ
ト及びBerthold Centro Xルミノメーターを使用してアッセイを行った
【0102】
免疫共沈降:
組織はポリトロンを使用してホモジナイズした、又は細胞を、阻害剤カクテル(1μg
/ml ロイペプチン、1μg/ml ペプスタチン、1mM ベンズアミジン、1mM
AEBSF、50mM NaF、1mM オルトバナジン酸ナトリウム)を含むIPバ
ッファー(50mM HEPES pH7.4、150mM NaCl、5mM EDT
A、10% グリセロール、1% Triton-X 100、1mM DTT)中に溶
解した。可溶性タンパク質を、3~10,000gで10分間の遠心分離によって分離し
た。抗体及びタンパク質-Gアガロースビーズ(50%スラリー、Upstate)を抽
出物に添加し、揺らしながら4℃で一晩インキュベートした。ビーズをIPバッファーで
4℃において4回洗浄した。結合したタンパク質を、SDS-PAGEゲルにおいてサイ
ズにより分別し、富士フィルムLAS-3000又はGE-AI600イメージングシス
テムを使用してこれまでに記載されたようにイムノブロッティングによって現像した(4
6)。タンパク質マーカーはPrecision Plus Protein Stan
dards(Bio-Rad、1610373)であった。
【0103】
免疫細胞化学:
カバースリップ上の筋細胞をPBS中の3.7%ホルムアルデヒド中で1時間固定し、
0.3%TritonX-100で透過処理し、0.2%BSA及び1%ウマ血清を含む
PBS中で遮断した。その後、スライドを、ブロッキングバッファー中で希釈した一次抗
体及びAlexa蛍光色素コンジュゲート特異的2次抗体(Invitrogen、1:
1000)とともに1時間連続的にインキュベートした。スリップをブロッキングバッフ
ァーで3回洗浄した。1μg/mLのヘキスト33258を最後の洗浄に含ませ、核標識
を停止させた。蛍光顕微鏡観察のためSlowFade Gold退色防止バッファー(
Invitrogen、S36938)中でスライドを封止した。ライカDM4000顕
微鏡を使用して広視野イメージを得た。
【0104】
GST-SRFリン酸化アッセイ:
GST-SRFタンパク質を、これまでに記載されたようにBL21 E.coli及
びグルタチオン-セファロースを使用して精製した(Vargas et al. 20
12)。ビーズ上のGST-SRFを、ATP含有キナーゼバッファー中で0.5μgの
活性組換え全長Hisタグ付きヒトRSK3(Millipore 14-462)+
/-50nMのBI-D1870とともに30分間インキュベートした。その後、GST
-SRFビーズを、レムリバッファーで溶出するか、又はPP2Aホスファターゼバッフ
ァーで洗浄してから、50ngのPP2A+/-10nMオカダ酸の存在下でさらに30
分間インキュベートした後、レムリバッファーで溶出した。等しいGST-SRFタンパ
ク質のロード量を、ポンソー染色によって測定し、SRFのリン酸化をホスホ-SRF
103特異的抗体を使用して検出した。
【0105】
プラスミドコンストラクト
SRE-ルシフェラーゼレポーター -
SRE-lucを、これまでに記載されたように(Kapiloff et al.
1991)ホタルルシフェラーゼレポータープラスミドにおいて-36bpのラットプロ
ラクチンプロモーターの上流でXho I部位においてc-fosSRF応答エレメント
(TCGAC AGG ATG TCC ATA TTA GGA CAT CTG)(
配列番号 )(Treisman 1985)の2つのコピーをサブクローニングするこ
とによって作製した。
【0106】
-36Prl-ウミシイタケルシフェラーゼ -
BglII及びHindIII親和性末端を有する--36-+36のラットプロラク
チンプロモーターを含むオリゴヌクレオチド(GATCT CGA AGG TTT A
TA AAG TCA ATG TCT GCA GAT GAG AAA GCA
GTG GTT CTC TTA GGA CTT CTT GGG GAA GTG
TGG TC)(配列番号 )を、pRL-ヌル(Promega)にサブクローニン
グして、コントロールのウミシイタケルシフェラーゼベクターを得た。
【0107】
mAKAPフラグメント発現ベクター:
pS-EGFPC1-mAKAP-1694-1833-mhアデノウイルスシャトル
ベクターを、pEGFPC1(Clontech)においてmyc、His、及びGF
Pタグ付きmAKAP aa 1694-1833フラグメント(RBD)をコードする
cDNA(Li, Kritzer, et al. 2013)を、それまでにCMV
最初期プロモーターを含むように修飾したpTREシャトルベクターにサブクローニング
することによって作製した。pS-EGFPC1-mhを、mAKAP配列の欠失を除い
て、同様に設計する。mycタグ付きmAKAP aa 2134-2314(PBD)
フラグメントをコードするpTRE-myc-mAKAP PBDを、Apa I-Sc
a Iにおいて、全長の、N末端にmycタグ付きのmAKAPのcDNAを含むpTR
E-myc-mAKAPを消化、及びライゲーションすることによって作製した。β-ガ
ラクトシダーゼコントロールタンパク質をコードするpTRE-βgalをClonte
chから得た。AAV-RBDを作製するために使用したpAcTnTS-EGFP-m
AKAP 1694-1833mhプラスミドは、pEGFPC1-rmAKAP-16
94-1833-mhのNheI-BamHIフラグメント(Li, Kritzer,
et al. 2013)を、バージニア大学のBrent French博士から寛
大にも提供されたpAcTnTs(Prasad et al. 2011)にサブクロ
ーニングすることによって作製した。AAV-GFPコントロールウイルスを作製するた
めのpAcTnTs-EGFP-mhプラスミドを、Acc65I及びBsRGIでpA
cTnTS-EGFP-mAKAP 1694-1833mhを消化、平滑末端化、及び
ライゲーションすることによって作製した。他のmAKAPプラスミドは、これまでに記
載されたようなものであった(Pare, Bauman, et al. 2005;
Kapiloff, Jackson, and Airhart 2001)。
【0108】
SRFコンストラクト -
Flagタグ付きSRFタンパク質を発現するpFlag-SRFを、pCGN-SR
F(Addgeneプラスミド#11977)からのヒトSRFのcDNAを、pSH1
60c NFATc1発現プラスミドのXbaI/EcoRI部位にサブクローニングす
ることによって作製した(Ho et al. 1995)。pTRE-Flag-hS
RFは、Flagタグ付きSRFのcDNAを、pTREシャトルベクター(Clont
ech)にサブクローニングすることによって作製した。pTRE-3xHA-hSRF
は、Flagタグを3個の直列型HAタグに置換するpTRE-Flag-hSRFのS
fiI及びSanDI部位内のカスタム配列を挿入することによって作製した。S103
A及びS103D突然変異を、部位特異的突然変異誘発によってpTREプラスミドに導
入して、GAGCCTGAGCGAG(配列番号 )の代わりに、配列ATCGCTGG
CAGAG(配列番号 )及びGAGCCTGGATGAA(配列番号 )を導入した。
細菌におけるGST-SRF発現のためのpGEX-4T1-FLAG-hSRFは、p
TRE-Flag-hSRFのNcoI(平滑末端化)-EcoRIフラグメントを、p
GEX-4T1のBamHI(平滑末端化)-EcoRI部位にサブクローニングするこ
とによって作製した。
【0109】
RSK3発現ベクター:
HAタグ付きRSK3野生型及びS218A突然変異体及びRSK3フラグメントのプ
ラスミドは、これまでに記載されたようなものであった(Li, Kritzer, e
t al. 2013)。pS-HA-hRSK3 1-42アデノウイルスシャトルベ
クターは、HAタグ付き1-42cDNAを、pS-EGFPC1-mhのBsaBI及
びNheI部位にサブクローニングすることによって作製し、タグ付きGFPのcDNA
を置換した。
【0110】
アデノウイルスは、PI-SceI及びI-CeuIサブクローニングによってpTR
Eシャトルベクター及びAdeno-X Tet-offシステム(Clontech)
を使用して調製し、Vivapure AdenoPACKキット(Sartorius
Stedim)を使用して増幅後に精製した。これらのアデノウイルスは、テトラサイ
クリントランスアクチベーター発現ウイルスとともに感染させると、条件的に組換えタン
パク質を発現する(「tet-off」ではアデノ-tTA又は「tet-on」では逆
tTA)。一部のアデノウイルスを、恒常的CMVプロモーターを含む修飾pTREシャ
トルベクター(pS)を使用して作製した。
【0111】
結果
求心性筋細胞成長の判定におけるRSK3及びmAKAPβの役割を考えると、研究の
焦点は、RSK3心筋細胞基質の同定に置かれた。転写因子の血清応答因子(SRF)は
、成長及びアクチン細胞骨格に関与する遺伝子の調節によって心臓発達及び成体機能の両
方において重要な役割を担う(Miano 2010)。SRFには、Ser103リン
酸化を含む、複数の翻訳後修飾(図1)が行われる(Mack 2011)。筋細胞調節
におけるSRFの卓越した役割と、これまでに示した、他のRSKファミリーメンバーに
よるSRFリン酸化とのため(Miano 2010;Rivera et al. 1
993;Janknecht et al. 1992;Hanlon, Sturgi
ll, and Sealy 2001)、SRFは、心筋細胞においてRSK3のエフ
ェクターであると考えられる。RSK3によるSRFのSer103のリン酸化は、精製
グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)-SRF融合タンパク質を使用して容
易に確認された(データを示さず)。SRFは、CArGボックス[CC(A/T)
G]血清応答要素(SRE)へのDNA結合、及び他の転写因子とのホモ又はヘテロ二量
体化の両方を媒介する保存MADS(MCM1、agamous、deficiens、
SRF)ドメインを含む(図19A)。RNA干渉(RNAi)によってSRFを新生仔
ラット心室筋細胞初代培養物(NRVM)から枯渇させるためのRSK3低分子干渉ヌク
レオチド(siRNA)を使用して、RSK3の欠失が、α-アドレナリン作動剤フェニ
レフリンによって誘導されるものを含むSRE依存性の一時的なレポーター活性を阻害す
ると判定した(PE、図19B)。RSK3が足場タンパク質mAKAPβを結合する(
Li, Kritzer, et al. 2013)と、SRFもmAKAPβシグナ
ロソームに会合して、そのリン酸化を促進するかどうかを試験した。内在性のmAKAP
βは、SRF抗体を使用して成体マウスの心臓抽出物のSRFとともに安定して免疫共沈
降された(図19C)。その上、SRF及びRSK3は、異種細胞に発現されると、mA
KAPβの存在下で会合して、三元複合体を形成することができた(図19D)。したが
って、NRVMにおけるRSK3及びmAKAPβ発現の阻害により、PE誘導のSRF
のSer103リン酸化を阻害した(図19E)。アイソフォーム特異的N末端RSK3
ドメインは、mAKAPβ内の別個の「RSK3結合ドメイン」を残基1694~183
3(RBD)において結合する(Li, Kritzer, et al. 2013)
。mAKAPβ-RSK3結合と競合可能な、mycタグ付きの緑色蛍光タンパク質(G
FP)RBD融合タンパク質の発現(Li, Kritzer, et al. 201
3)により、NRVM及び成体ラット心室筋細胞初代培養物(ARVM、図19及びデー
タを示さず)の両方においてPE誘導のSRFのSer103リン酸化を阻害した。N末
端RSK3ペプチドを使用するアンカリング阻害によって同様の結果を得た(データを示
さず)。これらの結果をin vivoにおいて確証した。SRFのSer103リン酸
化は、これまでに記載したRSK3全身性及びmAKAPβ筋細胞特異的コンディショナ
ルノックアウトマウスの両方から得た心臓において(Kritzer et al. 2
014;Li, Kritzer, et al. 2013)、並びにin vivo
におけるRBD発現マウスにおいて(データを示さず)、低下した。これらの結果は、共
に、SRFが、カテコールアミン刺激に対応するそのリン酸化をmAKAPβシグナロソ
ームとの会合によって決める、筋細胞におけるRSK3基質であることを明らかにした。
【0112】
mAKAPβは、Ca2+/カルモジュリン依存性ホスファターゼカルシニューリン(
PP2B、PPP3)、及びB56δサブユニットを含むPP2Aのプロテインキナーゼ
A(PKA)活性アイソエンザイムの、2つのホスファターゼを結合する(Dodge-
Kafka et al. 2010;Li et al. 2010)。カルシニュー
リン阻害剤のシクロスポリンA(CsA)ではなく、PP1/PP2A阻害剤のオカダ酸
(OA)によるNRVMの処理により、ベースラインのSRFのSer103リン酸化を
促進した(図19G)。したがって、精製PP2AはSRFのSer103を容易に脱リ
ン酸化するものであった(図21)。SRF及びPP2AはmAKAPβの存在下のみに
おいて免疫共沈降することができるので、RSK3のように、SRF、PP2A、及びm
AKAPβは、NRVMにおいて三元複合体を形成する(図19H)。PP2Aは、mA
KAPβのC末端ドメインを結合し(Dodge-Kafka et al. 2010
)、PP2A結合ドメイン(myc-PBD、図4)の発現は、筋細胞における内在性の
mAKAPβ-PP2A会合と競合した(図19I)cAMPがmAKAPβ結合PP2
Aを活性化するというこれまでに掲載された知見に一致して(Dodge-Kafka
et al. 2010)、PBD発現は、β-アドレナリンイソプロテレノール(Is
o、図19J)で刺激したARVMにおけるSRFのSer103リン酸化の誘導を増強
した。まとめると、これらの結果は、mAKAPβシグナロソームが、種々の上流におけ
る刺激に対応して双方向性でSRFのSer103リン酸化を調節可能であるということ
を示す。
【0113】
[実施例2]
SRFのSer103リン酸化は求心性肥大を促進する
新生仔ラット心室筋細胞(NRVM)及び成体ラット心室筋細胞(ARVM)の両方が
、α-アドレナリン及びβ-アドレナリン誘発肥大を含む分子シグナリング経路の研究に
有用である一方、2つの細胞試料は、形状、超微細構造、及び一部の場合において細胞調
節が著しく異なる(Peter, Bjerke, and Leinwand 201
6)。ARVMは、その略円筒形状を利用して、in vivoの心臓リモデリングにさ
らに関連する形態肥大のためのin vitroモデルとして開発された。RSK3ノッ
クアウトマウスの特徴により、RSK3が求心性肥大に重要であることが示唆された(P
assariello et al. 2016; Li, Kritzer, et
al. 2013)。RSK3の高発現により、培養したARVMの幅が選択的に増大し
、長さ/幅の比が著しく低下した(図20A、B)。この結果は、フェニレフリンの存在
下における筋細胞培養の1日後に得られるものと同様であった(PE、図20C、D)。
PEは、24時間で幅の8~10%の増大、及び長さ/幅の比の8~14%の縮小を誘導
し、これは、大動脈縮窄術の2週間後の、in vivoにおけるマウス筋細胞の幅の1
7~21%の増大、及び長さ/幅の比の14~21%の縮小と良好に比較される(8、1
6)。注目すべきことに、SRF S103Dリン酸化模倣突然変異体の発現はまた、A
RVMの幅を増大させ、PE処理と同程度に求心性肥大を誘発した。ところが、SRF
S103A突然変異体の発現は、基本的な筋細胞サイズに影響しなかったが、PE誘発求
心性肥大を阻害した(図20E、F)。この結果は、SRFのSer103リン酸化を阻
害する(図19F)、RBD RSK3アンカリングディスラプターペプチドの発現によ
って表現型模写された(図20G、H)。PE及びRSK3高発現と対照的に、β-アド
レナリン作動剤Isoによる長期刺激が、ARVMの長さ及び幅の両方を増大させ、より
対称的な肥大をもたらし(図20I、J)、これは、in vivoにおける長期Iso
注入の作用と類似するものであった(Li, Kritzer, et al. 201
3)。RBD及びSRF S103A発現のように、mAKAPβシグナロソームからP
P2Aホスファターゼを除くことは、基本的なARVM形態に作用をもたらさなかった。
その上、SRF S103D発現のように、PBDアンカリングディスラプター発現は、
PE誘発肥大を向上も低下もしなかった。対照的に、Isoの存在下において、PDB発
現は、ARVMの求心性肥大を促進し、Iso誘発性のARVMの幅及び長さ増大は、P
P2Aを除くとそれぞれ大きく及び小さくなる傾向があった。この後者の結果は、Iso
誘発性のSRFのSer103リン酸化のPDB依存性の増強と一致した(図19J)。
これらの結果は、共に、mAKAPβアンカリングRSK3及びPP2Aが、求心性心筋
細胞肥大を促進するSRFのSer103リン酸化を調節するモデルを裏付けている。
【0114】
[実施例3]
mAKAPβ結合PP2AによるPDE4D3の調節
抗体 -
マウスモノクローナル抗-GFP(Santa Cruz;1:500)、マウスモノ
クローナル抗-VSVタグ(Sigma: 1:1000)、マウスモノクローナル抗-
mAKAP(Covance、1:1000)、9E10マウス抗-myc(Santa
Cruz,Inc、1:500希釈)、ポリクローナル抗-PP2A-C(Santa
Cruz、1:500),及びポリクローナル抗-PP1触媒サブユニット(Sant
a Cruz,Inc、1:500)の一次抗体を、イムノブロッティングに使用した。
リン酸-PDE4D3 Ser-54のリン酸特異的抗体を作製し、残基70~81を含
むリン酸化及び非リン酸化ヒトPDE4D3ペプチド(21st Century Bi
ochemicals)を使用してアフィニティー精製し、1:500の希釈で使用した
。非リン酸特異的及びリン酸-Ser-566に特異的の両方のポリクローナルB56δ
抗体は、これまでに記載されたようなものである(Ahn et al. 2007)。
【0115】
発現コンストラクト -
Flagタグ付きB56δ、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)PP2
A-A融合タンパク質、並びにmyc及び緑色蛍光タンパク質(GFP)タグ付きラット
及びヒトmAKAPの発現ベクターは、これまでに記載されたようなものである(Ahn
et al. 2007;Pare, Bauman, et al. 2005;K
apiloff et al. 1999a;Kapiloff, Jackson,
and Airhart 2001)。PP2A結合を欠損させた、mycタグ付きmA
KAPコンストラクトは、PCRによって作製したラットmAKAP1286~2083
をコードするcDNAフラグメントを、pCMV-Myc(Clontech)にサブク
ローニングすることによって作製した。mAKAPα及びmAKAPβは、それぞれ心臓
及び脳に発現される、mAKAPの2つの選択的スプライシングアイソフォームである(
Michel et al. 2005b)。mAKAPβは、mAKAPα残基245
~2314と同一であり、この明細書において示されるすべての組換えmAKAPタンパ
ク質はmAKAPαに基づく。この明細書においてPDE4D3に使用される発現ベクタ
ーは、VSVタグ付きPDE4D3をコードするcDNA(Dodge et al.
2001)を、GFP発現ベクター(Clontech)にサブクローニングすることに
よって作製し、二重タグ付きPDE4D3タンパク質を得た。
【0116】
免疫沈降 -
HEK293細胞を、種々の野生型及び突然変異タンパク質を容易に発現できる、mA
KAPを欠損した異種系として本研究に使用した。60mmプレートにおいて培養した細
胞は、プレート毎に6μgの各DNAコンストラクトを使用してカルシウムホスフェート
方法によって50%~70%培養密度で遺伝子導入した。細胞を、0.5mlのHSEバ
ッファー中(HEPES、pH7.4、150mM NaCl、5mM EDTA、1%
TritonX-100及びプロテアーゼ阻害剤)の遺伝子導入の24時間後に採取し
た。上清を、3μgの抗体、及び15μlの予洗したタンパク質A又はGアガロースビー
ズとともにインキュベートした。4℃で一晩インキュベートした後、免疫沈降物を同じバ
ッファーで3回洗浄した。結合タンパク質をイムノブロッティングによって分析した。
【0117】
内在性のネイティブmAKAP複合体の免疫沈降のため、成体ラットの心臓(Pel-
Freeze)を10mlのHSEバッファー中でホモジナイズした。15,000×g
で25分間の遠心分離後、清澄化した抽出物を上述のように免疫沈降した。
【0118】
PDEアッセイ -
免疫沈降タンパク質複合体に関連するPDE活性を、Beavoらによる方法に従って
アッセイした(Beavo, Bechtel, and Krebs 1974)。試
料を、45μlのPDEバッファーA(100mM MOPS、pH7.5、4mM E
GTA、1.0mg/ml ウシ血清アルブミン)及び50μlのPDEバッファーB[
100mM MOPS、pH7.5、75mM MgAc、1μM cAMP、及び10
0,000cpm[H]cAMP(Dupont,NEN)]中でアッセイした。阻害
剤を提示したように含ませた。
【0119】
ホスファターゼアッセイ -
ホスファターゼ活性を、基質として32P-標識ヒストンを使用してAhnらの方法に
従って測定した(Ahn et al. 2007)。ヒストンを、250mM MOP
S、pH7.4、2.5mM MgAc、100 mM β-メルカプトエタノール、精
製PKA触媒サブユニット、1μM ATP、20μM ヒストン、及び1mCi[γ-
32P]ATP(6000 Ci/mmol)を含む反応物中で放射標識した。反応を、
50%TCAの添加によって停止させ、[32P]ヒストンを遠心分離によって遊離放射
性ヌクレオチドから精製した。[32P]ヒストンのペレットを、1mlのエーテル/エ
タノール/HCL(4:1:0.1)で1回、及び1mlのエーテル/エタノール(4:
1)で3回洗浄した。その後、基質を200μlのPP2Aアッセイバッファー中(25
mM Tris、pH7.4、1mM DTT、及び10mM MgCl2)に懸濁した
後、50%TCAで沈殿させた。洗浄を繰り返した後、[32P]ヒストンを200μl
のPP2Aバッファー中に懸濁した。
【0120】
ホスファターゼ活性を測定するため、免疫沈降タンパク質複合体を、HSEバッファー
中で2回、及びPP2A反応バッファー中で1回洗浄した。免疫沈降物を、阻害剤あり及
びなしで、100,000cpm[32P]ヒストンを含む20μlのPP2Aアッセイ
バッファー中において30℃で30分間インキュベートした。PP2A阻害剤(Calb
iochem)を30nMの濃度で使用した。精製したI-1を、PKAによってリン酸
化した後、特異的PP1阻害剤として使用した。反応を、100μlの20%TCAの添
加によって停止させ、その後10分の遠心分離を行った。放出された32POを含むT
CA上清を、シンチレーション計数によって測定した。
【0121】
GSTプルダウン -
PP2A-AサブユニットGST融合タンパク質又はGSTコントロールタンパク質を
吸着させたグルタチオン樹脂を、HEK293細胞抽出物とともにインキュベートした。
一晩インキュベートした後、ビーズを3回洗浄した。結合タンパク質をイムノブロッティ
ングによって分析した。
【0122】
統計 -
各「n」は、別個の培養物又は心臓試料を使用して行った完全に独立した実験を指す。
すべてのp値は、スチューデントのt検定を使用して計算した。
【0123】
結果
オカダ酸感受性ホスファターゼによるmAKAP結合PDE4D3の調節
PKAのcAMP活性化、PDE4D3のPKAリン酸化及び活性化、並びにPDE4
D3触媒cAMP分解を含むmAKAP複合体に固有の負のフィードバックループは、こ
れまでに記載されている(Dodge et al. 2001)。PDE4D3リン酸
化は、mAKAPへのPKA結合に依存するものであった。対称的に、mAKAP結合ホ
スファターゼはPDE4D3脱リン酸化の要因となり得る。PP2A及びCa2+/カル
モジュリン依存性プロテインホスファターゼカルシニューリン(PP2B)の両方が、心
筋細胞におけるmAKAP足場に会合する(Pare, Bauman, et al.
2005; Kapiloff, Jackson, and Airhart 20
01; Li et al. 2009)。この研究を始めるにあたって、PP2A又は
PP2Bが、PKA活性化に要求されるPDE4D3の上流保存領域内の残基であるSe
r-54においてPDE4D3を脱リン酸化し得るかどうかを試験するため、異種系を使
用した(Sette and Conti 1996)。mAKAP及びPDE4D3を
高発現するHEK293細胞を、300μMのオカダ酸(OA)で処理し、PP2A(及
びプロテインホスファターゼ1[PP1])活性を阻害した、又は500μMのシクロス
ポリンA(CsA)で処理し、PP2B活性を阻害した(図8A)。mAKAP特異的抗
体を使用したタンパク質複合体の免疫沈降後、PDE4D3のリン酸化を、作製した残基
Ser-54に対するリン酸特異的抗体でのイムノブロッティングによってアッセイした
。OA処理は、ベースラインのPDE4D3のSer-54リン酸化を増加させた一方、
PP2Bの阻害は影響がなかった(図8A、上部パネル、2列目)。このリン酸化の増加
は、PKAをアデニリルシクラーゼ作動剤フォルスコリンの添加によって活性化したとき
、さらに1.8倍高まった(Fsk、図8A、上部パネル、5列目)。とりわけ、フォル
スコリン単独では、ホスファターゼ阻害なしでは、著しい影響がなかった(図8A、4列
目)。PDE4D3に対する非リン酸特異的抗体及びmAKAPに対する抗体を使用した
イムノブロッティングは、2つのタンパク質が各条件下で同様に沈降することを示した(
図8A、下部パネル)。
【0124】
PDE4D3のSer-54のリン酸化が、ホスホジエステラーゼ活性を2倍高めるの
で(Sette and Conti 1996)、OA処置もまたmAKAP結合PD
E4D3活性を高め得るかどうかを試験した。mAKAP複合体を、遺伝子導入したHE
K293細胞から免疫沈降させ、関連するホスホジエステラーゼ活性についてアッセイし
た(図8B)。未処理の細胞におけるmAKAP関連ホスホジエステラーゼ活性は、mA
KAPをPDE4D3と共発現させたときにのみ検出され(図8B、棒部1、及びデータ
を示さず)、PDE4D3が心筋細胞においてmAKAPと関連するホスホジエステラー
ゼ活性のすべてに相当するというこれまでの知見に一致するものであった(Dodge
et al. 2001)。リン酸-Ser-54抗体で得られた結果に一致して、Fs
k処理単独では、HEK293細胞におけるmAKAP結合PDE4D3活性を十分に刺
激できない一方、Fsk及びOA処理は、共に、相乗的にPDE4D3活性を高めた(図
8B、棒部3及び6)。CsAは、基本の又は刺激したPDE4D3活性のいずれにも影
響がなく、PP2Bが、これらの条件下で細胞においてmAKAPに結合したPDE4D
3を調節しないということを示唆した。これらの結果は、この異種系において、OA感受
性ホスファターゼがmAKAPに結合したPDE4D3のベースライン及びFsk刺激の
リン酸化及び活性の両方を強力に阻害するということを共に示す。
【0125】
OAによるホスホジエステラーゼ活性の向上は、HEK293細胞における組換えタン
パク質の発現だけでなく、成体ラットの心臓抽出物からのネイティブmAKAP複合体の
単離においても見受けられた(図8C)。PDE4D3及びPKAの両方が精製したmA
KAP複合体において活性である(Dodge et al. 2001)。内在性のm
AKAP複合体に存在するPKA活性は、特異的PKA阻害剤のPKIによるmAKAP
結合PKAの阻害において明らかであったように、ホスホジエステラーゼ活性の2倍の増
加の要因となる(図8C、棒部2及び4)。重要な点として、OA阻害は、mAKAP関
連ホスホジエステラーゼ活性を30%(棒部2及び3)及びPKAもまた阻害するとき6
0%(棒部4及び5)増加させた。これらのデータは、共に、mAKAP複合体に会合す
るOA感受性ホスファターゼがPDE4D3の脱リン酸化及びホスホジエステラーゼ活性
調節の要因となることを示す。
【0126】
PP2Aは心臓においてmAKAP足場に会合する。
OA感受性ホスファターゼがmAKAP複合体に会合することを認めたので、ホスファ
ターゼを免疫共沈降実験によって同定した。心臓細胞抽出物から単離したmAKAP複合
体に関連するホスファターゼ活性を、基質として[32P]ヒストンを使用して測定した
。コントロールのIgG免疫沈降物に対してホスファターゼ活性が3倍向上した(図9A
、棒部1及び2)。免疫沈降活性の要因となるmAKAP会合ホスファターゼはPP2A
として同定され、これは、ホスファターゼ活性が30nMのPP2A阻害剤Iによって完
全に阻害される(Li, Makkinje, and Damuni 1996)が、
100nMのPKAリン酸化PP1阻害剤-1の添加によっては阻害されないためである
(Endo et al. 1996)。正のコントロールとして、PKAリン酸化PP
1阻害剤-1は、HEK293細胞抽出物からPP1抗体での免疫沈降によって単離した
PP1を確かに阻害した(図16)。mAKAP関連ホスファターゼ活性はmAKAP結
合PP2Bによるものではなく、これは、Ca2+/カルモジュリンがホスファターゼア
ッセイバッファーに含まれていないためであった。これらの結果の裏付けは、mAKAP
免疫沈降物のイムノブロッティング分析によって得られた。PP1触媒サブユニットでな
はく、PP2A-CサブユニットをmAKAP特異的免疫沈降物において検出した(図1
8B及びC)。
【0127】
PKAのように、PP2Aは多くの細胞基質と会合し、多様な細胞内コンパートメント
に存在すると予想される(Virshup 2000)。培養した新生仔ラット心筋一次
細胞の共焦点蛍光顕微鏡観察により、PP2A-Cサブユニットが微細な断続的パターン
で細胞質にわたり分布することを明らかにした(図17、緑色)。これまでに見いだされ
たように、mAKAPは、主に核膜に局在するものであった(Pare, Easlic
k, et al. 2005)。成体ラットの心臓抽出物からのmAKAP及びPP2
Aの免疫共沈降に一致して、PP2A及びmAKAP染色の重なりを、核膜において検出
でき(図17、複合イメージ)、PP2A、PKA、及びPDE4D3、並びに足場mA
KAPの個別のプールからなる局在シグナリング複合体が心筋細胞に存在するというモデ
ルを裏付けた。
【0128】
mAKAP残基2083~2319はPP2A結合ドメインを含む。
mAKAPにおけるPP2A結合部位をマッピングするため、細菌で発現したPP2A
-AサブユニットGST融合タンパク質を使用して、HEK293細胞に発現したmAK
APのGFPタグ付きフラグメントをプルダウンで検出した(図10A及びB)。GST
-PP2A-Aは、C末端から残基2085のドメインを含むmAKAPのフラグメント
のみを安定してプルダウンで検出した。ラットmAKAP1835~2312及びヒト2
085~2319を含む、ヒト及びラットのmAKAPのGFP融合タンパク質が、GS
T-PP2A-Aを結合した。負のコントロールとして、GFP-mAKAP融合タンパ
ク質は、HEK293細胞においてPP1を結合せず、心臓抽出物からのPP1及びmA
KAPの免疫共沈降がないことと一致した(図18)。mAKAPにおけるPP2A結合
部位のマッピングを確認するため、HEK293細胞に発現したmycタグ付きmAKA
Pフラグメントを、mycタグ付き抗体で免疫沈降し、関連するPP2A活性についてア
ッセイした(図10C)。mAKAPの1286~2083ではなく、mAKAPの12
86~2312が、OA感受性ホスファターゼ活性で免疫共沈降した。これらのデータは
、共に、PP2Aが、PKA、PDE4D3,及び他の既知のmAKAP結合タンパク質
の結合部位から離れたmAKAP内のC末端部位を結合するということを示す(図10A
)。
【0129】
mAKAPアンカリングPP2Aは複合体においてPDE4D3リン酸化を調節する。
ラットの心臓抽出物から単離したmAKAP複合体を使用して得られたデータは、mA
KAP結合PP2Aが複合体においてPDE4D3を調節することを示唆した(図8C
。PP2AアンカリングがPDE4D3脱リン酸化に要求されるかどうかを試験するため
、PDE4D3をHEK293細胞に発現し、PDE4D3、PKA、及びPP2Aの結
合部位を含むmAKAPコンストラクト(myc-mAKAP 1286-2312)、
又はPP2A結合部位のない類似のmAKAPコンストラクト(myc-mAKAP 1
286-2083)を発現した。細胞をFsk及びOAで刺激し、mAKAP複合体をそ
の後免疫沈降によって単離した。mAKAP結合PDE4D3のリン酸化を、Ser-5
4リン酸特異的抗体でのイムノブロッティングによってアッセイした。全長mAKAPの
発現の際に見受けられたように(図8A)、ホスファターゼ活性をOAによって抑えたと
きのみ、myc-mAKAP1286-2312に結合したPDE4D3のリン酸化を検
出した(図11A、3列目)。とりわけ、顕著なPP2A結合のないmyc-mAKAP
1286-2083の発現の際(図11A、4~6列目)、ベースラインのmAKAP結
合PDE4D3のリン酸化の増加を検出した(OAで得られたレベルの0.49±0.1
9倍、図11A、4列目vs3列目)。さらに、PP2A結合ドメインの欠失の際、Fs
k単独では、Fsk及びOAの両方で処理したPP2A含有複合体に関連するものと同等
のレベルまでホスホジエステラーゼのリン酸化を増加させた(図11A、3、5、及び6
列目)。PDE4D3のSer-54リン酸化の変化はホスホジエステラーゼ活性の変化
に反映された(図11B)。PDE4D3活性は、PP2Aのないmyc-mAKAP1
286-2083免疫沈降物において、ホスファターゼを含む複合体よりも、30%高い
(棒部1及び4)重要な点として、PDE4D3活性における有意差は、PP2Aのない
複合体においてFsk刺激及びOAの存在下のFsk刺激との間で見受けられなかった(
棒部5及び6)。これらのデータは、PDE4D3リン酸化及び活性の調節におけるPP
2Aアンカリングの重要性を示す。さらに、これらは、PP2Aが、PKA活性化ホスホ
ジエステラーゼ活性を抑えるだけでなく、非刺激細胞における、基本の低いPDE4D3
活性レベルを維持するように機能することを示す。
【0130】
B56δサブユニットを含むmAKAP結合PP2Aホロ酵素はPKAによって調節さ
れる。
PP2Aホロ酵素は、コアA及びCサブユニットのヘテロ二量体、及びホロ酵素を特定
の細胞内小器官に標的化し得るBサブユニットを含む3つのサブユニットから構成される
(Virshup 2000)。心臓に発現し、核に局在する、3つの緊密に関連するB
サブユニット、B56δ、B56γ1、及びB56γ3が同定されている(Gigena
et al. 2005; McCright et al. 1996)。近年の研
究により、B56δを含むPP2Aホロ酵素がPKAリン酸化によって調節されることを
示した(Ahn et al. 2007)。mAKAP複合体に会合したPP2AもP
KA活性によって調節され得るかどうかを試験した。ネイティブのmAKAP複合体を、
成体ラットの心臓抽出物から免疫沈降して、関連するホスファターゼ活性についてアッセ
イした(図12A)。mAKAP関連ホスファターゼ活性は、結合PKAを非加水分解性
cAMP類似体CPT-cAMPで刺激することによって2.5倍増加した(2及び3列
目)。コントロールとして、すべての免疫沈降ホスファターゼ活性を、10mMのOAに
よって阻害し(4列目)、ホスファターゼ活性のCPT-cAMP刺激による増加をPK
A阻害剤PKIの添加によって遮断した(5列目)。これらのデータは、共に、心臓にお
けるmAKAP複合体に関連するPP2A活性がPKA依存性cAMPシグナリングによ
って増強されることを示す。
【0131】
mAKAP結合PP2AがPKA活性によって調節されるので、mAKAP結合PP2
Aホロ酵素がB56δサブユニットを含むかどうかを試験した。タンパク質複合体は、B
56δ及びコントロールの(IgG)抗体を使用して成体ラットの心臓抽出物から免疫沈
降させた(図12B)。mAKAPはB56δ抗体で安定して免疫沈降された。その上、
Flagタグ付きB56δをHEK293細胞に発現し、B56δが、(GFPタグ付き
)mAKAPと共発現したときのみ、mAKAP抗体で免疫沈降されることを示した(図
12C)。最後に、B56δのmAKAPとの結合が、PP2A-Cサブユニットを複合
体に動員することを示し、これは、HEK293細胞抽出物から免疫沈降したmAKAP
複合体が、GFP-mAKAPをFlag-B56δと共発現させたときに、より大きい
ホスファターゼ活性に関連するためであった(図12D、2及び3列目)。これらの結果
に基づいて、B56δは、心臓においてPP2A-A/Cコアのヘテロ二量体をmAKA
P複合体に動員し、cAMP依存性ホスファターゼ活性を与えている。したがって、Fs
k及びホスホジエステラーゼ阻害剤IBMXによる細胞内cAMPの上昇により、mAK
APがB56δと共発現されるときのみHEK293細胞におけるmAKAP関連ホスフ
ァターゼ活性を増加させた(図12E)。
【0132】
PKA結合はmAKAP複合体におけるcAMP依存性PP2A活性に要求される。
これまでの研究により、PKAが4つのセリン残基(53、68、81、566)にお
いてB56δをリン酸化することが見いだされており、Ser-566がPP2A活性の
誘導に相当することが示唆されている(Ahn et al. 2007)。mAKAP
複合体がPKA及びPP2Aの両方を含むので、mAKAPへのPP2A結合がPDE4
D3脱リン酸化に要求されるように、これらの分子の複合体への会合がPP2Aリン酸化
に重要であると認められた(図11)。この仮説を検証するため、B56δを野生型全長
mAKAP又はPKA結合部位を含む残基2053~2073を内部欠失させた全長mA
KAP突然変異体(ΔPKA、図13A)とともに、HEK293細胞に発現した(Pa
re, Bauman, et al. 2005)。Fsk/IBMXで細胞を刺激し
て、細胞内cAMPを上昇させた後、mAKAP複合体を免疫沈降によって単離し、B5
6δのリン酸化状態が、B56δのSer-566に対するリン酸特異的抗体を使用して
測定された(図13A、上部パネル)(Ahn et al. 2007)。FSK/I
BMX処理後にのみ、及びB56δをΔPKA突然変異体ではなく野生型mAKAPと共
発現したときのみ、B56δのリン酸化を検出した(図13A、2及び6列目)。コント
ロールとして、突然変異体及び野生型のmAKAP及びB56δタンパク質の同等の発現
を、非リン酸特異的抗体でのイムノブロッティングによって示した(図13A、中央及び
下部パネル)。さらに、野生型のmAKAPを、4つのPKA基質部位のそれぞれにアラ
ニン残基を含む突然変異形態B56δと共発現した(S4A)。予想されたように、Fs
k/IBMX刺激はB56δのS4Aのリン酸化を誘導しなかった(図13A、4列目)
。B56δのリン酸化がPP2A触媒活性を増加させるので、mAKAP抗体免疫沈降物
をホスファターゼ活性についてアッセイした(図13B)。リン酸特異的B56δ抗体を
使用して得た結果と一致して、cAMP上昇は、mAKAP複合体におけるホスファター
ゼ活性を1.7倍増加させた(図13B、2及び3列目)。S4A突然変異体を含む複合
体がcAMPの増加によってPP2A活性の拡大を示さなかったので(5列目)、この増
加はB56δのリン酸化を要求するものであった。同様に、B56δをmAKAPのΔP
KA突然変異体足場と共発現したとき増加が得られなかったので(6列目)、mAKAP
へのPKA結合が、PP2A活性を誘導するために要求された。興味深いことに、mAK
AP関連PP2A活性におけるFsk/IBMX誘導の増加は、mAKAP複合体へのP
P2A-Cサブユニット結合の増加によるものではなかった(図13A、1及び2列目)
。この結果は、B56δのリン酸化が、ホロ酵素形成に影響しない構造変化によってPP
2A触媒活性を増加させるというこれまでの示唆に一致するものである(Ahn et
al. 2007)。
【0133】
PP2AはPKA依存的にPDE4D3リン酸化を調節する。
上述の結果は、B56δ-mAKAP複合体におけるPDE4D3のPP2A脱リン酸
化がホスファターゼのPKA触媒リン酸化によって高まるはずであるということを示唆す
る。.PDE4D3の調節におけるB56δリン酸化の役割を特定するため、PDE4D
3及びmAKAPを野生型B56δ又はPKAに応答しないB56δS4A突然変異体の
いずれかと共発現した。細胞をFskで刺激してから、mAKAP複合体を単離した。リ
ン酸特異的抗体のイムノブロッティング及び酵素アッセイによって検出されたように、P
DE4D3のSer-54リン酸化のFsk刺激及びホスホジエステラーゼ活性は、PP
2AをOAによって阻害するとき、野生型B56δを含むmAKAP複合体においてのみ
観察され(図14A及びB、1~3)、前述のデータと一致した(図8)。一方で、B5
6δのS4Aの発現により、検出可能なfsk刺激のPDE4D3リン酸化がもたらされ
(Fsk/OA刺激細胞の0.39±0.15倍、図4A、5列目)、及びホスホジエス
テラーゼ活性が同時に増加した(図14B、5列目)が、PP2A活性をOAによって直
接阻害したときほど強力ではなかった(図14A及びB、3及び6列目)。図12及び図
13に示す結果と共に、PKA刺激したPP2Aホロ酵素のアンカリングは、mAKAP
シグナリング複合体における基本及びPKA刺激のPDE4D3活性の両方を抑える要因
となる。
【0134】
検討
本明細書に記載される結果は、足場タンパク質mAKAPが結合したPKAリン酸化P
DE4D3の脱リン酸化及び不活性化の生化学的機序を定めている。A、C、及びB56
δサブユニットから構成されるPP2Aヘテロ三量体は、他の既知のmAKAPパートナ
ーの結合部位とは別のmAKAPにおけるC末端部位を結合する(図10)。PP2Aの
mAKAP足場との会合は、重要且つ新たな2つの点で機能的重要性がある。第1に、m
AKAPは、PP2AとPDE4D3との両方を結合することによって、ホスホジエステ
ラーゼに近接させてホスファターゼを捕捉して、効果的なPDE4D3脱リン酸化及びダ
ウンレギュレートを可能にする(図11)。第2に、mAKAPは、PKAとPP2Aと
の両方を結合することによって、PP2AのB56δサブユニットのcAMP依存性リン
酸化及びPP2A活性の誘導を促進する(図13)。多分子シグナリング複合体形成の関
連性は、PP2A及びPKAの結合部位のないmAKAP突然変異体の発現の際に明らか
であった。
【0135】
基質特異性を得るためのホスファターゼ標的化という発想は、最初のPP1標的サブユ
ニットとしてグリコーゲン粒子会合タンパク質を同定することで1980年代なかばに初
めて提示された(Bauman and Scott 2002)。この初期の知見以来
、他のいくつかのホスファターゼ標的モチーフが特定されてきた(Virshup 20
00)。AKAPは、ホスファターゼをその適切な基質に結合する重要な機序に相当し、
いくつかのAKAPがプロテインホスファターゼを結合する。mAKAPがPP2B(カ
ルシニューリン)を結合すること、及びこの相互作用が筋細胞におけるPP2B依存性N
FATc3活性化に重要であることが近年掲載された(Li et al. 2009)
。しかしながら、PP2Bの阻害がPDE4D3のSer-54リン酸化又はホスホジエ
ステラーゼ活性に影響しなかったので、mAKAPへのPP2B結合がPDE4D3を調
節するとは認められていない(図8)。本データは、ホスホジエステラーゼの脱リン酸化
における、及び結果として局所cAMPレベルの調節における、mAKAPに結合するP
P2Aの特有の役割を裏付けている。
【0136】
細胞のcAMP濃度調節における全体的なホスファターゼの役割は未だ十分に調査され
ていない。ラットの脂肪細胞において、PP2AがPDE3B活性及びリン酸化の両方を
調節することが分かった(Resjo et al. 1999)。PDE4D3は、S
er-54においてPKAによってリン酸化されることに加えて、mAKAP複合体に存
在するERK5を含むMAPキナーゼによってSer-579においてリン酸化される(
Hoffmann et al. 1999;Dodge-Kafka et al.
2005)。PP1はmAKAPを結合すると認められないが(図9及び図18)、PP
1は、他の細胞ドメインにおいてPDE4D3のSer-579を脱リン酸化し得、これ
は、単離したPDE4D3に精製したPP1を添加することで、この部位においてリン酸
化を低減するためである。また、ホスファターゼは、Ser-579における、及びPD
E4D3における第2PKA部位のSer-16における、mAKAP結合PDE4D3
の脱リン酸化の要因となる(Carlisle Michel et al. 2004
)。
【0137】
アンカリングの仮説は、同じシグナリング複合体に両方のタンパク質を局在させること
によって特定の基質に対するPKAの作用を標的とするように、AKAPが機能するとい
うことを示唆している。本明細書において、mAKAP複合体におけるPKAに対する新
たな標的であるPP2AのB56δサブユニットを提示している。これまでの研究により
、B56δのリン酸化がPP2A活性を刺激し、DARPP-32の脱リン酸化を高める
ことを見いだした(Ahn et al. 2007)。これらの結果に一致して、心筋
細胞をβ-アドレナリン受容体作動剤で刺激することにより、PP2A活性を増加させる
(De Arcangelis, Soto, and Xiang 2008)。mA
KAP足場は、アンカリングタンパク質をPKA及びPP2Aの両方に会合させることが
ホスファターゼ活性のcAMPによる増加に重要であることから、この事象を促進し得る
図11及び13)。ゆえに、mAKAPは、心臓におけるホスファターゼ活性調節にお
いて役割を有する。
【0138】
これらの結果に基づいて、PP2AがmAKAPシグナリング複合体近くのcAMPレ
ベルの調節における二重の役割を担うモデルを提示する(図15)。第1に、mAKAP
複合体におけるPP2Aは、GPCR刺激なしで脱リン酸化した最小限の活性状態にPD
E4D3を維持するはずであり(図15A)、おそらく作動剤に対応してcAMPレベル
をより急速に上昇させる。第2に、GPCR刺激よってcAMPレベルの活性化を誘導後
、PKAはPDE4D3及びPP2Aの両方をリン酸化し得る(図15B)。PDE4D
3リン酸化増加によって媒介されるcAMPレベルにおける負のフィードバックと対照的
に、PP2AのPKAリン酸化はPDE4D3活性化に対抗する。PDE4D3リン酸化
を阻害することによって、PP2Aは、おそらく、正のフィードバックループの一部とし
て局所cAMPの作用を増強して延長する。このように、これまでに記載されたmAKA
P結合ERK5によるPDE4D3の阻害の可能性と併せて(図示せず)(Dodge-
Kafka et al. 2005)、mAKAPシグナリング複合体は、複合体に固
有の複数のフィードバックループ、及び上流のMAPKシグナリング経路とのクロストー
クの両方によって局所cAMPレベルを微細に調節する態勢にある。PP2A発現及び細
胞内局在化が心不全において変化するということが観察されている(Reiken et
al. 2001; Ai and Pogwizd 2005)。PP2A媒介の正
のフィードバック又はPDE4D3媒介の負のフィードバックが、mAKAP複合体に局
在するcAMPレベルを主に調節するかどうかは、病態におけるmAKAPへのPP2A
結合の化学量論量並びにPKA及びPP2AによるPDE4D3リン酸化及び脱リン酸化
の相対速度の両方によって最終的に決まり得る。
【0139】
本実施例は、足場タンパク質mAKAPがPDE4D3、PKA、及びPP2Aとの会
合によってアンカリングPDE4D3活性の動的調節を維持する新たな機序を示している
。この3つの酵素のそれぞれが、核周囲のmAKAP複合体近傍のcAMP濃度の時間的
調節において重要な役割を果たしている。mAKAP「シグナロソーム」による局所cA
MPのこの複雑な調節は、cAMPのコンパートメント化の調節におけるAKAP及びホ
スファターゼの広範な役割を表している。
【0140】
[実施例4]
HFrEFの処置としてのPBDの使用
心疾患の一般的最終段階である心不全は、公衆衛生上極めて重要であるシンドロームで
あり、毎年960,000の新規症例を含む650万人の米国人に発症している(Ben
jamin et al. 2017)。症候的心不全の患者は、駆出率が低下したもの
(HFrEF)と駆出率が保持されたものとにほぼ等しく分けることができる。心不全の
第一選択療法は、少なくともHFrEFにおいて生存性及びクオリティ・オブ・ライフを
向上するとともに、死亡率を下げることができるアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻
害剤及びβ-アドレナリン受容体遮断剤(β-遮断剤)を含む(Ponikowski
et al. 2016)。しかしながら、これらと他の補助療法とがあるにもかかわら
ず、5年死亡率は心不全では約50%にとどまり(2016年の心筋梗塞後の調査では3
9%)(Benjamin et al. 2017; Gerber et al.
2016)、新たな治療アプローチの発見が必要とされている。SRFのリン酸化は、H
FrEFにおける代償性肥大から拡張した不全の心臓への移行を調節する新規の機序に相
当する。
【0141】
上述のように、in vitro及びin vivoの両方におけるSRF S103
Dの発現が求心性筋細胞肥大を促進し得る。さらに、PP2Aアンカリングディスラプタ
ーPBDの発現により、培養した成体筋細胞のIso処理によって誘発した偏心性肥大を
抑えた(図20)。これらの結果は、SRF S103のリン酸化が幅方向に成長を促進
する一方、心筋細胞の伸長を抑えるということを示唆している。これらの結果、及び長期
圧負荷によって誘発される収縮期機能障害とのSRF脱リン酸化の関連(データを示さず
)を考えると、正常な又は増加したSRFリン酸化の回復が、慢性圧負荷の疾患及び虚血
性心疾患においてHFrEFをもたらす心室拡張を防止し得る。
【0142】
心疾患の早期に「代償性」求心性肥大を誘発する機序が、心臓を後の収縮期機能障害及
び最終的な不全にしやすくする(Schiattarella and Hill 20
15)。これに関して、RSK3-mAKAPβ複合体の標的化により、圧負荷による心
臓リモデリングを抑え、心不全を防止し得る(Kritzer et al. 2014
;Li, Kritzer, et al. 2013)。求心性肥大を含むリモデリン
グを誘発するシグナリング経路の阻害が疾患の早期に望ましいものであり得るが、心臓が
、HFrEFをもたらす偏心性成長及び心室拡大によって特徴づけられる疾患プロセスの
段階にあるとき、求心性筋細胞肥大を促進し、偏心性筋細胞肥大を抑えるシグナルを維持
する取り組みにより、心臓容積及び惹起したときの収縮を保持し得るかどうか、という疑
問が残る。したがって、SRFリン酸化を維持することは、末期の疾患及びHFrEFの
特徴を示す心室形態における偏心性変化を抑制する方法となる。したがって、SRFリン
酸化を維持することが、末期の疾患及びHFrEFの特徴を示す心室形態における偏心性
変化を抑制する方法となるということは、SRFリン酸化が短期圧負荷を行ったマウスに
おいて増加し、心室拡張を経たマウス及びヒトにおいて低下するという本発明者らによる
新たな知見によってさらに裏付けられる。S218リン酸化によって検出すると、RSK
3活性化が1.9倍増加するとき(図33C)、リン酸化したSRFは、圧負荷の誘発後
5分内に全左心室抽出物(細胞数で約3分の1の筋細胞を含む)において28%増加する
図33A及びB)。注目すべきことに、大動脈縮窄術手術の16週後、心臓が拡張し、
マウスが心不全になったとき(図33D)、リン酸化したSRFは偽手術コントロールに
存在するものより30%低く抑えられた(図33E)。これらの結果は、RSK3触媒リ
ン酸化と反対に、偏心性肥大誘導時にSRFを脱リン酸化する要因となるホスファターゼ
と一致する。この知見のヒト疾患との関連を、患者の組織試料を使用して評価した。正常
な左心室内径を有する患者の左心室組織におけるSRF Ser103リン酸化と比較す
ると、拡張した心臓を有する患者におけるSRF Ser103リン酸化が53%低下し
た(p=0.005、図33F~H)。
【0143】
心室形状の改善、すなわち、あまり長尺でない筋細胞によりLV内径を小さくすること
、及び/又は、より幅の広い筋細胞によりLV壁厚を大きくすることで、壁ストレスを小
さくして(ラプラスの法則)、HFrEF傾向の心臓における収縮期機能を向上させ得る
。収縮期機能障害の防止は、mAKAPβ由来PBDの発現に基づく新たなAVV遺伝子
治療ベクターにおいて得られている(図22)。
【0144】
心筋梗塞の処置
冠動脈心疾患はHFrEFの主要な要因である(Writing Group et
al. 2016)。8週齢のC57BL/6WTマウスに、永続的なLAD結紮又は偽
開胸術を行った。手術の2日後、心臓機能を心エコー法によって評価し、マウスをEF及
び体重によってランダム化した(図23B)。AAVsc.myc-PBD(n=8)又
はAAVsc.GFP(n=5)のいずれかで処置される、2つのマウスのコホートを、
LAD結紮の2日後に平均駆出率=34%を有すると定めた(図23D)。手術の3日後
、マウスに5x1011vgを尾静脈から注射した。コントロールのGFPマウスでは、
駆出率が次第に低下する(EFが21%になる)一方、PBDマウスでは、収縮期機能が
長期回復した(手術の8週後のEF=43%、p<0.0001)。その上、AAVsc
.myc-PBD処置マウスは、心臓機能の改善に一致して左心室容積が低下した(収縮
期-PBDでは69μl vs GFPでは156μl、p<0.001、拡張期-11
8μl vs 192μl、p<0.001)。エンドポイントでは、重量分析において
、心室及び心房の肥大は低下し(それぞれp=0.053及び0.024、脛骨長さに連
動、図23C)、心不全の徴候である肺水腫が改善する傾向にあった(p=0.078)
。PP2AがSRFを脱リン酸化可能なmAKAPβからPP2Aを除く、PP2Aアン
カリングディスラプター治療が、虚血性心疾患における駆出率が低下した心不全を防止す
る新たな治療アプローチを構成することを、これらの結果は示している。
【0145】
方法
左冠動脈結紮の一般的方法
マウスに誘導するための5%イソフルラン及びその後維持するための2.5~3%イソ
フルランで麻酔をかけた。16Gカテーテルを使用して経口気管内挿管を行い、その後ミ
ニベントベンチレーターを使用してマウスに機械的に人工呼吸した。左側開胸術部位上の
皮膚を、ポビドンヨード10%溶液を使用して滅菌するように前処理をしてドレープをか
けた。加熱パッド使用して、熱消失を防ぐように手技時にマウスを保温した。角膜乾燥を
防ぐため、外科的滅菌性非薬用眼軟膏剤を手術前に目に塗布した。顕微鏡視野下で手術を
行った。適切な鎮静作用が得られると、第4肋間腔において左側開胸術によって開胸した
。筋肉出血がある場合、熱焼灼装置(例えばファインティップ、Bovie)を使用して
止血を行った。肋骨を切り離すために3mmの開創器を使用した。心膜切開術後、前壁M
Iを得るため左冠動脈を7-0プロリーン縫合糸で結紮した。5-0吸収性縫合糸(筋肉
)、及び絹6-0(肋骨及び皮膚の2結紮)で3層において胸を閉鎖した。痛みを72時
間抑えるため手術後直ちに単一用量で皮下の0.5~1mg/kgブプレノルフィン徐放
(Bup-SR-LAB)を投与した。手術後直ちに補液を投与した(例えば滅菌生理食
塩水0.9%、腹腔内)。マウスを機敏で活発になるまで回復させた。冠動脈結紮留置以
外のすべてを行った偽手術マウスはコントロールとしての役割をする。
【0146】
心エコー法
1~2%のイソフルランで最小限の麻酔をかけたマウスを高解像度イメージングシステ
ムのVevo2100(登録商標)(VisualSonics)を使用して研究した。
種々の時点において麻酔下のマウスでMモードイメージを得た。後壁及び前壁の拡張期及
び収縮期の厚さ及び左心室腔の拡張終期の直径(LVEDD)及び収縮終期の直径(LV
ESD)を測定し、LV容積、短縮率、及び駆出率の推定を行った。
【0147】
本明細書において参照される特許文献及び科学文献は当業者が入手可能な知見を提示す
るものである。本明細書に引用したすべての米国特許及び公開又は非公開の米国特許出願
は、参照により援用される。本明細書に引用したすべての公開外国特許及び特許出願は、
参照により本明細書に援用される。本明細書に引用した他のすべての公開参考文献、文書
、原稿及び科学文献は、参照により本明細書に援用される。
【0148】
本発明はその好ましい実施形態に関して特に示されて記載されているが、当業者には、
添付の特許請求の範囲に含まれる本発明の範囲から逸脱することなく態様や詳細に種々の
変更を行い得るということが理解される。
【0149】
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図2
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図4
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図5-2】
図5-3】
図6
図7-1】
図7-2】
図7-3】
図8
図9
図10AB
図10C
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19A-C】
図19D-F】
図19G-J】
図20AB
図20CD
図20EF
図20GH
図20IJ
図21
図22
図23A-D】
図23EF
図23GH
図24-1】
図24-2】
図24-3】
図25-1】
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図25-3】
図25-4】
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図25-6】
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図26-1】
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図27-1】
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図28-1】
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図29
図30
図31
図32-1】
図32-2】
図32-3】
図32-4】
図33A-C】
図33DE
図33F-H】
【配列表】
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