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特開2025-41731トレプロスチニルのフマリルジケトピペリジンプロドラッグ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025041731
(43)【公開日】2025-03-26
(54)【発明の名称】トレプロスチニルのフマリルジケトピペリジンプロドラッグ
(51)【国際特許分類】
   C07D 241/08 20060101AFI20250318BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20250318BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20250318BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250318BHJP
   A61K 31/5575 20060101ALI20250318BHJP
【FI】
C07D241/08 CSP
A61P9/12
A61P11/00
A61P43/00 123
A61K31/5575
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024221661
(22)【出願日】2024-12-18
(62)【分割の表示】P 2022574179の分割
【原出願日】2021-06-08
(31)【優先権主張番号】63/036,561
(32)【優先日】2020-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】511266520
【氏名又は名称】ユナイテッド セラピューティクス コーポレイション
(71)【出願人】
【識別番号】522466614
【氏名又は名称】マンカインド コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】ヒテシュ バトラ
(72)【発明者】
【氏名】リャン クオ
(72)【発明者】
【氏名】パトリック ポイッソン
(72)【発明者】
【氏名】スリ ハルシャ ツンマラ
(72)【発明者】
【氏名】エリザベス アン ハリス
(57)【要約】      (修正有)
【課題】新規トレプロスチニルベースの化合物、それらを使用する治療方法、及びそれらの製造方法を提供する。
【解決手段】例えば以下の式5aの化合物又はその医薬的に許容し得る塩が提供される。

(式中RはHである)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式5a又は5bの化合物:
【化1】
【化2】
又はその医薬的に許容し得る塩
(式中RはHである)。
【請求項2】
前記化合物が式5aの化合物である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記化合物が式5bの化合物である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
がHである、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
請求項1に記載の化合物及び医薬的に許容し得る賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項6】
FDKP-トレプロスチニル化合物の製造方法であって、
i)トレプロスチニル(1)
【化3】
を二重保護して、二重保護されたトレプロスチニル部分(2)
【化4】
を生成すること(式中、Rはカルボン酸保護基であり、そして、a)RはHであり、Rはヒドロキシル保護基であるか、又はb)Rはヒドロキシル保護基であり、RはHである);
ii)前記二重保護されたトレプロスチニル部分を以下の式(3)の化合物
【化5】
(式中、RはHであり、そして、RはHである)と反応させて、以下の式(4a)又は(4b)を有する二重保護されたFDKP-トレプロスチニル化合物
【化6】
【化7】
を生成すること;及び
iii)前記二重保護されたFDKP-トレプロスチニル化合物を脱保護して、以下の式(5a)又は(5b)を有するFDKP-トレプロスチニル化合物
【化8】
【化9】
を生成すること、
を含む、方法。
【請求項7】
がシリルカルボン酸保護基又は置換もしくは非置換ベンジルカルボン酸保護基である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
が、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリ-イソプロピルシリルオキシメチル、トリイソプロピルシリル、t-ブチルジメチルシリル、t-ブチルジフェニルシリル、及びフェニルジメチルシリルから選択されるシリルカルボン酸保護基である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
が置換又は非置換ベンジルカルボン酸保護基である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
がHであり、Rがヒドロキシル保護基であり、前記二重保護されたFDKP-トレプロスチニル化合物が式(4b)を有し、及び前記FDKP-トレプロスチニル化合物が式(5b)を有する、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
がHであり、Rがヒドロキシル保護基であり、前記二重保護されたFDKP-トレプロスチニル化合物が式(4a)を有し、及び前記FDKP-トレプロスチニル化合物が式(5a)を有する、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
前記二重保護されたトレプロスチニル部分を式(3)の化合物と反応させることが、極性溶媒中のカルボジイミド及び求核触媒の存在下で実施される、請求項6に記載の方法。
【請求項13】
前記反応が有機塩基の存在下で実施される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記脱保護が、前記二重保護FDKP-トレプロスチニル化合物を脱保護して、以下の式(6a)又は(6b)の単一保護FDKP-トレプロスチニル化合物:
【化10】
【化11】
を生成することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
二重保護FDKP-トレプロスチニル化合物を脱保護して単一保護FDKP-トレプロスチニル化合物を生成することが、化学選択的ベンジル切断剤の存在下で実施される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記FDKP-トレプロスチニル化合物の純度が少なくとも90%である、請求項6に記載の方法。
【請求項17】
請求項1に記載の化合物を含む、トレプロスチニルで治療可能な状態を治療するための医薬組成物。
【請求項18】
前記状態が肺高血圧症である、請求項17に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年6月9日に出願された米国仮出願第63/036,561号に対する優先権を主張し、その全体が参照により組み込まれる。
【0002】
技術分野
本出願は、一般にプロスタサイクリン類に関し、より具体的にはトレプロスチニル(treprostinil)のプロドラッグ、並びにそのようなプロドラッグの製造方法及び使用方法に関する。
【発明の概要】
【0003】
要約
1つの実施態様は、RがH又はポリマー担体である、式5a又は5bの化合物、又はその医薬的に許容し得る塩である:
【化1】
【化2】
【0004】
別の実施態様は、少なくとも90%の純度を有する、前述の実施態様の化合物を含む医薬的に許容し得るバッチである。別の実施態様は、前述の実施態様の化合物を含む医薬組成物である。
【0005】
別の実施態様は、以下を含むFDKP-トレプロスチニル化合物の製造方法である:
i)トレプロスチニル(1)
【化3】
を二重保護して、二重保護されたトレプロスチニル部分(2)
【化4】
を生成すること(式中、Rはカルボン酸保護基であり、及びここで、a)RはHであり、かつRはヒドロキシル保護基である、又はb)Rはヒドロキシル保護基であり、RはHである);
ii)二重保護されたトレプロスチニル部分を式(3)の化合物
【化5】
(式中、RはHである)と反応させて、式(4a)又は(4b)を有する二重保護されたFDKP-トレプロスチニル化合物を生成すること;及び
【化6】
【化7】
iii)二重保護されたFDKP-トレプロスチニル化合物を脱保護して、式(5a)又は(5b)を有するFDKP-トレプロスチニル化合物を生成すること
【化8】
【化9】
【0006】
別の実施態様は、それを必要とする被験体に前述の実施態様の化合物を投与することを含む、トレプロスチニルで治療可能な状態を治療する方法である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
詳細な説明
本明細書及び特許請求の範囲で使用される単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明確に別段の指示をしない限り、複数の参照を含む。本明細書全体を通して、別段の指示がない限り、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、及び「含む(comprising)」は、排他的ではなく包括的に使用される。「又は」という用語は、例えば「いずれか」によって修飾されない限り、包括的である。従って、文脈又は明確な記述が別段の指示をしない限り、「又は」という言葉は特定のリストの任意の1つのメンバーを意味し、そのリストのメンバーの任意の組み合わせも含む。実施例以外を又は別段の指示がある場合を除いて、本明細書で使用される成分又は反応条件の量を表すすべての数字は、すべての場合において用語「約」によって修飾されていると理解されるべきである。
【0008】
見出しは、便宜上提供されているのみであり、決して本発明を限定するものと解釈されるべきではない。特に他に定義しない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、一般的に当業者に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書で使用される専門用語は、特定の実施態様を説明することのみを目的としており、特許請求の範囲によってのみ定義される本発明の範囲を限定することを意図するものではない。本開示をより容易に理解できるようにするために、特定の用語が最初に定義される。範囲を含む、追加の定義、すべての数値指定、例えばpH、温度、時間、濃度、分子量は近似値であり、1、5、又は10%の増分で(+)又は(-)変化する。常に明確に述べられているわけではないが、すべての数値指定の前には「約」という用語が付けられていることは理解されるべきである。また、常に明確に述べられているわけではないが、本明細書に記載の試薬は単なる例示であり、その等価物は当技術分野で公知であり、詳細な説明全体に記載されていることも理解されたい。
【0009】
「HPLC」は、高速液体クロマトグラフィーを指す。
【0010】
「NMR」は、核磁気共鳴を指す。
【0011】
「FDKP」は、フマリル2,5-ジケトピペラジン又は(E)-3,6-ビス[4-(N-カルボニル-2-プロペニル)アミドブチル]-2,5-ジケトピペラジンを指す。
【0012】
「RRT」は、相対保持時間を指す。
【0013】
「TMSE」は、トリメチルシリルエチルエステルを指す。
【0014】
「TMBDS」は、tert-ブチルジメチルシリルを指す。
【0015】
「EDCI」は、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドを指す。
【0016】
「DMAP」は、4-ジメチルアミノピリジンを指す。
【0017】
「DMA」は、N,N-ジメチルアセトアミドを指す。
【0018】
「DMF」は、N,N-ジメチルホルムアミドを指す。
【0019】
「TBAF」は、フッ化テトラ-n-ブチルアンモニウムを指す。
【0020】
「THF」は、テトラヒドロフランを指す。
【0021】
「LCMS」は、液体クロマトグラフィー質量分析法を指す。
【0022】
「IR」は、赤外分光法を指す。
【0023】
「TFA」は、トリフルオロ酢酸を指す。
【0024】
「DIEA」又は「DIPEA」は、N,N-ジイソプロピルエチルアミンを指す。
【0025】
「DQF-COSY」は、二重量子フィルター相関分光法を指す。
【0026】
「ACN」は、アセトニトリルを指す。
【0027】
「HOBt」は、ヒドロキシベンゾトリアゾールを指す。
【0028】
「DEPT-NMR」は、分極移動核磁気共鳴による歪みのない増強を指す。
【0029】
本明細書で使用される「保護基(protecting group)」又は「保護基(protective group)」は、当技術分野で公知であり、及びT. W. Green, P. G. M. Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, Wiley-Interscience, New York, 1999 (hereinafter "Greene, Protective Groups in Organic Synthesis") に示されており、これは、保護基に関するその教示について、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0030】
本明細書で使用される「ヒドロキシル保護基(hydroxyl protecting group)」又は「ヒドロキシル保護基(hydroxyl protective group)」は、T. W. Green, P. G. M. Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, Wiley-Interscience, New York, 1999 に定義されているように、アルコール又はヒドロキシル保護基の一般的に理解されている定義を指す。
【0031】
本明細書で使用される「カルボン酸保護基(carboxylic acid protecting group)」、「カルボキシル保護基(carboxyl protecting group)」、「カルボン酸保護基(carboxylic acid protective group)」、「カルボキシル保護基(carboxyl protective group)」は、T. W. Green, P. G. M. Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, Wiley-Interscience, New York, 1999 に定義されているように、カルボキシル保護基の一般的に理解されている定義を指す。
【0032】
本明細書で使用されるC~C、例えばC~C12、C~C、又はC~Cは、基の前で使用される場合、m~n個の炭素原子を含む基を指す。
【0033】
「任意選択的に置換された」は、その群から選択される基及びその基の置換形態を指す。置換基は、以下に定義される基のいずれかを含み得る。1つの実施態様において、置換基は、C~C10又はC~Cアルキル、置換C~C10又はC~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルキニル、C~C10アリール、C~Cシクロアルキル、C~C10ヘテロシクリル、C~C10ヘテロアリール、置換C~Cアルケニル、置換C~Cアルキニル、置換C~C10アリール、置換C~Cシクロアルキル、置換C~C10ヘテロシクリル、置換C~C10ヘテロアリール、ハロ、ニトロ、シアノ、-COH、又はそのC~Cアルキルエステルから選択される。
【0034】
「医薬的に許容し得る塩」は化合物の塩を指し、その塩は医薬的用途に適しており、当技術分野で周知の様々な有機及び無機対イオンから誘導される。医薬的に許容し得る塩には、化合物が酸性官能基を含む場合、単なる例として、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、及びテトラアルキルアンモニウムが含まれる。分子が塩基性官能基を含む場合、有機酸又は無機酸の塩、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、酒石酸塩、メシル酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、シュウ酸塩が含まれる。医薬的に許容し得る塩に関するその教示について参照により本明細書に組み込まれる Stahl and Wermuth, eds., “Handbook of Pharmaceutically Acceptable Salts,” (2002), Verlag Helvetica Chimica Acta, Zurich, Switzerlandは、種々の医薬的塩、それらの選択、調製、及び使用を考察している。
【0035】
「肺高血圧症」は、肺高血圧症のすべての形態、WHOグループ1~5を指す。PAH とも呼ばれる肺動脈性高血圧症は、WHOグループ1肺高血圧症を指す。PAHには、特発性、遺伝性、薬物又は毒素誘発性、及び新生児の持続性肺高血圧症(PPHN)が含まれる。
【0036】
一般に、医薬的に許容し得る塩は、親化合物の所望の薬理学的活性の1つ又はそれ以上を実質的に保持し、インビボ投与に適した塩である。医薬的に許容し得る塩には、無機酸又は有機酸と生成される酸付加塩が含まれる。医薬的に許容し得る酸付加塩を生成するのに適した無機酸には、限定ではなく例として、ハロゲン化水素酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸など)、硫酸、硝酸、リン酸などが含まれる。
【0037】
医薬的に許容し得る酸付加塩を生成するのに適した有機酸には、限定ではなく例として、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、シュウ酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、パルミチン酸、安息香酸、3-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、アルキルスルホン酸(例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2-エタンジスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸など)、アリールスルホン酸(例えば、ベンゼンスルホン酸、4-クロロベンゼンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、4-トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸など)、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸などが含まれる。
【0038】
医薬的に許容し得る塩には、親化合物に存在する酸性プロトンが、金属イオン(例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、又はアルミニウムイオン)又はアンモニウムイオン(例えば、有機塩基、例えばエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、ピペリジン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、及びアンモニア由来のアンモニウムイオン)によって置換される場合に生成される塩も含まれる。
【0039】
Remodulin(登録商標)(トレプロスチニル)注射剤、Tyvaso(登録商標)(トレプロスチニル)吸入液、及びOrenitram(登録商標)(トレプロスチニル)徐放性錠剤の有効成分であるトレプロスチニルは、米国特許第4,306,075号に記載された。トレプロスチニル及び他のプロスタサイクリン誘導体を製造する方法は、例えば、Moriarty, et al., J. Org. Chem. 2004, 69, 1890-1902, Drug of the Future, 2001, 26(4), 364-374, 米国特許第6,441,245号、6,528,688号、6,700,025号、6,809,223号、6,756,117号、8,461,393号、8,481,782号;8,242,305号、8,497,393号、8,940,930号、9,029,607号、9,156,786号、及び9,388,154号、9,346,738号;米国特許出願公開第2012-0197041号、2013-0331593号、2014-0024856号、2015-0299091号、2015-0376106号、2016-0107973号、2015-0315114号、2016-0152548号、及び2016-0175319号;PCT公開番号WO2016/0055819及びWO2016/081658に記載されている。
【0040】
トレプロスチニルの種々の用途及び/又は種々の形態は、例えば米国特許第5,153,222号、5,234,953号、6,521,212号、6,756,033号、6,803,386号、7,199,157号、6,054,486号、7,417,070号、7,384,978号、7,879,909号、8,563,614号、8,252,839号、8,536,363号、8,410,169号、8,232,316号、8,609,728号、8,350,079号、8,349,892号、7,999,007号、8,658,694号、8,653,137号、9,029,607号、8,765,813号、9,050,311号、9,199,908号、9,278,901号、8,747,897号、9,358,240号、9,339,507号、9,255,064号、9,278,902号、9,278,903号、9,758,465号;9,422,223号;9,878,972号;9,624,156号;米国特許出願公開第2009-0036465号、2008-0200449号、2008-0280986号、2009-0124697号、2014-0275616号、2014-0275262号、2013-0184295号、2014-0323567号、2016-0030371号、2016-0051505号、2016-0030355号、2016-0143868号、2015-0328232号、2015-0148414号、2016-0045470号、2016-0129087号、2017-0095432号;2018-0153847号、及びPCT公開番号WO00/57701、WO20160105538、WO2016038532、WO2018/058124に開示されている。
【0041】
トレプロスチニルは、以下の化学式を有する:
【0042】
【化10】
【0043】
本発明者らは、式(5a)又は(5b)の化合物:
【化11】
【化12】
又はそれらの医薬的に許容し得る塩であるトレプロスチニルプロドラッグを開発した。式(5a)及び(5b)において、RはH又はポリマー担体、例えばポリエチレングリコール(PEG)担体、脂肪アルコール担体、又は脂肪アミン担体である。
【0044】
いくつかの実施態様において、PEG担体などのポリマー担体は、約200~約200,000までの数平均分子量などの平均分子量を有し得る。いくつかの実施態様において、PEG担体などのポリマー担体は、約200~約80,000までの数平均分子量などの平均分子量を有し得る。いくつかの実施態様において、ポリマー担体は、PEG1500、PEG4000、PEG5000、PEG8000、PEG10,000、PEG15,000、PEG20,000、及びPEG25,000であり得る。いくつかの実施態様において、ポリマー担体はPEG20,000であり得る。
【0045】
いくつかの実施態様において、脂肪アルコール担体は、C~C20アルコールを含む。いくつかの実施態様において、脂肪アルコール担体は飽和又は不飽和である。いくつかの実施態様において、脂肪アルコール担体は、飽和脂肪アルコール担体、例えば1-ヘキサノール、1-ヘプタノール、1-オクタノール、1-ノナノール、1-デカノールなどである。いくつかの実施態様において、脂肪アルコール担体は不飽和脂肪アルコール担体、例えば10-ウンデセン-1-オール、(Z)-9-オクタデセン-1-オール、(E)-9-オクタデセン-1-オール、(Z,Z)-9,12-オクタデカジエン-1-オールなどである。当技術分野で知られている他の脂肪アルコールとして、例えば、K. Nowek et al., (2012) 'Fatty Alcohols' in Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry. Wiley-VCH Verlag GmbH & Co. KGaA(これは、脂肪アルコールの教示のためにその全体が本明細書に組み込まれる)に開示されているものを使用することができる。
【0046】
いくつかの実施態様において、Rは脂肪アミン担体であり、カルボキシル基とアミド結合を生成する。いくつかの実施態様において、脂肪アミン担体は、C~C20アミンを含む。いくつかの実施態様において、脂肪アミン担体は飽和又は不飽和である。いくつかの実施態様において、脂肪アミン担体は、飽和脂肪アミン担体、例えば1-ヘキサンアミン、1-ヘプタンアミン、1-オクタナミン、1-ノナンアミン、1-デカンアミンなどである。いくつかの実施態様において、脂肪アミン担体は、不飽和脂肪アミン担体、例えば10-ウンデセン-1-アミン、(Z)-9-オクタデセン-1-10-ウンデセン-1-アミン、(E)-9-オクタデセン-1-10-ウンデセン-1-アミン、(Z,Z)-9,12-オクタデカジエン-1-10-ウンデセン-1-アミンなどである。当技術分野で知られている他の脂肪アミンは脂肪アミン担体として、例えば、K. Nowek et al., (2012) 'Fatty Alcohols' in Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry. Wiley-VCH Verlag GmbH & Co. KGaA(これは、脂肪アルコールの教示のためにその全体が本明細書に組み込まれる)に開示されているものを使用することができる。
【0047】
ヒトなどの被験体に投与される場合、プロドラッグは、インビボ生体内変化、例えば化学的切断又は酵素的切断を受けて、被験体への有効量のトレプロスチニルの送達が可能になる。
【0048】
医薬組成物
トレプロスチニルプロドラッグは、医薬的に許容し得る担体、賦形剤、結合剤、希釈剤なども含み得る薬学的組成物の形態で提供され得る。このような医薬組成物は、特に、顆粒化、混合、溶解、カプセル化、凍結乾燥、乳化、又は湿式粉砕プロセスなどの当技術分野で知られている方法によって製造することができる。組成物は、例えば、顆粒剤、粉末剤、錠剤、カプセル剤、シロップ剤、坐剤、注射剤、乳剤、エリキシル剤、懸濁液、及び液剤の形態であり得る。組成物は、多くの異なる投与経路用に、例えば経口投与、経粘膜投与、直腸投与、経皮又は皮下投与、並びにくも膜下腔内、静脈内、筋肉内、腹腔内、鼻腔内、眼内、又は脳室内注射用に、製剤化することができる。トレプロスチニルプロドラッグは、上記の経路のいずれかにより、例えば全身投与ではなく局所投与で、注射又は持続放出製剤として投与することができる。
【0049】
いくつかの実施態様において、トレプロスチニルプロドラッグは吸入によって投与することができる。トレプロスチニルは、任意の適切な技術又は配合を使用して乾燥粉末吸入(DPI)用に配合することができる。
【0050】
1つの実施態様において、医薬組成物は、トレプロスチニルのプロドラッグと滅菌水などの担体とを混合することができる。いくつかの実施態様において、トレプロスチニルのプロドラッグは、皮下投与用に配合され、そのような配合物は、m-クレゾール又は別の防腐剤を含むことも含まないこともある。
【0051】
経口、口腔内、及び舌下投与の場合、粉末剤、懸濁剤、顆粒剤、錠剤、丸薬、カプセル剤、ジェルキャップ剤、及びカプレット剤が、固体剤形として許容され得る。これらは、例えば、1つ又はそれ以上のトレプロスチニルプロドラッグ又はその医薬的に許容し得る塩を、デンプン又は他の添加剤などの少なくとも1つの添加物又は賦形剤と混合することによって調製することができる。適切な添加剤又は賦形剤は、スクロース、乳糖、セルロース糖、マンニトール、マルチトール、デキストラン、ソルビトール、デンプン、寒天、アルギン酸塩、キチン、キトサン、ペクチン、トラガントガム、アラビアゴム、ゼラチン、コラーゲン、カゼイン、アルブミン、合成又は半合成ポリマー若しくはグリセリド、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及び/又はポリビニルピロリドンであり得る。任意選択的に、経口剤形は、投与を補助する他の成分、例えば不活性希釈剤、又は滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウム、防腐剤、例えばパラベンやソルビン酸、抗酸化剤、例えばアスコルビン酸、トコフェロール、又はシステイン、崩壊剤、結合剤、増粘剤、緩衝剤、甘味料、香味剤、又は芳香剤を含んでいてもよい。さらに、識別のために染料又は顔料を加えてもよい。錠剤は、当技術分野で知られている適切なコーティング材料でさらに処理することができる。
【0052】
経口投与のための液体剤形は、
水などの不活性希釈剤を含み得る、医薬的に許容し得るエマルジョン、シロップ剤、エリキシル剤、懸濁剤、スラリー及び液剤の形態でもよく、これらは水などの不活性希釈剤を含み得る。医薬製剤は、特に限定されるものではないが、油、水、アルコール、及びこれらの組み合わせを含む無菌液体を使用して、液体懸濁液又は溶液として調製することができる。医薬的に適切な界面活性剤、懸濁化剤、乳化剤を、経口又は非経口投与のために添加することができる。
【0053】
上記のように、懸濁液は油を含んでもよい。そのような油には、特に限定されるものではないが、ピーナッツ油、ゴマ油、綿実油、コーン油、及びオリーブ油が含まれる。懸濁調製物は、脂肪酸のエステル、例えばオレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、脂肪酸グリセリド、及びアセチル化脂肪酸グリセリドも含み得る。懸濁調製物は、アルコール、例えば、特に限定されるものではないが、エタノール、イソプロピルアルコール、ヘキサデシルアルコール、グリセロール、及びプロピレングリコールを含んでもよい。エーテル、例えば、特に限定されるものではないが、ポリ(エチレングリコール)、石油系炭化水素、例えば鉱油及びペトロラタム、及び水も、懸濁製剤に使用することができる。
【0054】
注射可能な剤形は、一般に、適切な分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤を使用して調製することができる水性懸濁液又は油性懸濁液を含む。注射可能な形態は、溶液相であっても、溶媒又は希釈液で調製される懸濁物の形態であり得る。許容される溶媒又はビヒクルには、滅菌水、リンゲル液、又は等張食塩水が含まれる。あるいは、無菌油を溶媒又は懸濁剤として使用することができる。好ましくは、油又は脂肪酸は、不揮発性であり、天然油又は合成油、脂肪酸、モノグリセリド、ジグリセリド、又はトリグリセリドが含まれる。
【0055】
注射の場合、医薬製剤は、上記のような適切な溶液で復元するのに適した粉末であり得る。これらの例には、特に限定されるものではないが、凍結乾燥、回転乾燥又は噴霧乾燥粉末、無定形粉末、顆粒、沈殿物、又は粒子が含まれる。注射の場合、製剤は任意選択的に、安定剤、pH調整剤、界面活性剤、バイオアベイラビリティー調整剤、及びこれらの組み合わせを含んでもよい。化合物は、ボーラス注射又は持続注入などの注入による非経口投与用に製剤化することができる。注射用の単位剤形には、アンプル又は多回投与容器中にあり得る。上記の代表的な剤形に加えて、医薬的に許容し得る賦形剤及び担体は、当業者に一般に知られており、使用することができる。そのような賦形剤及び担体は、例えば、“Remingtons Pharmaceutical Sciences” Mack Pub. Co., New Jersey (1991)に記載されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0056】
トレプロスチニルプロドラッグは、トレプロスチニルプロドラッグ又はその医薬的に許容し得る塩の無菌水性製剤を含み得る非経口投与に適した製剤に配合することができ、製剤は、意図された受容者の血液と等張であり得る。これらの製剤は、皮下注射によって投与することができるが、投与は静脈内又は筋肉内又は皮内注射によって行うこともできる。このような調製物は、化合物を水又はグリシン又はクエン酸緩衝液と混合し、得られた溶液を滅菌し、血液と等張にすることにより、便利に調製することができる。注射用製剤は、プロドラッグ中のトレプロスチニルの重量に基づいて0.1~5%w/vを含むことができ、0.1ml/分/kgの速度で投与することができる。あるいは、プロドラッグは、プロドラッグ中のトレプロスチニルの重量に基づいて、0.625~50ng/kg/分の速度で投与され得る。あるいは、プロドラッグは、プロドラッグ中のトレプロスチニルの重量に基づいて、10~15ng/kg/分の速度で投与され得る。
【0057】
いくつかの実施態様において、静脈内注入又は皮下注入(連続皮下注入を含む)などの非経口投与のための製剤中のトレプロスチニルプロドラッグの濃度は、0.0005~30mg/mL、又は0.0007~50mg/mL、又は0.001~15mg/mL、又はこれらの範囲内の任意の値若しくは部分範囲であり得る。例示的な濃度は、0.1mg/mL、1mg/mL、2.5mg/mL、5mg/mL、又は10mg/mLを含み得る。
【0058】
いくつかの実施態様において、静脈内注入又は皮下注入(連続皮下注入を含む)などの非経口投与のためのトレプロスチニルプロドラッグの製剤は、プロドラッグを緩衝液などのビヒクルと混合することによって調製することができる。特定の実施態様において、ビヒクルは、リン酸塩含有ビヒクル、すなわち少なくとも1つのリン酸塩でもよく、これは、例えば二塩基性リン酸塩、例えば二塩基性リン酸ナトリウム若しくは二塩基性リン酸カリウム、又は三塩基性リン酸塩、例えば三塩基性リン酸ナトリウム若しくは三塩基性リン酸カリウムであり得る。特定の実施態様において、ビヒクルはまた、ハロゲン塩、例えば塩化ナトリウム又は塩化カリウムであり得る塩化物塩を含有し得る。塩化ナトリウムなどのハロゲン塩を使用して、ビヒクルの張性を調整することができる。特定の実施態様において、リン酸塩とびハロゲン塩が同じカチオンを有することが好ましい場合がある。例えば、リン酸塩がリン酸ナトリウム、例えば三塩基性リン酸ナトリウム又は三塩基性リン酸ナトリウムである場合、ハロゲン塩は、塩化ナトリウムなどのハロゲン塩であり得る。同様に、リン酸塩がリン酸カリウム、例えば三塩基性リン酸カリウム又は三塩基性リン酸カリウムである場合、ハロゲン塩は、塩化カリウムなどのカリウムハロゲン塩であり得る。ビヒクルの溶剤には水が含まれ得る。特定の実施態様において、水がビヒクル中の唯一の溶媒であり得る。さらに特定の実施態様において、ビヒクルは、水に加えて1つ又はそれ以上の追加の溶媒を含んでもよい。いくつかの実施態様において、追加の溶媒は、m-クレゾールなどの防腐剤であり得る。
【0059】
好ましくは、ビヒクルは、ヒトなどの患者の血液と等張である。等張という用語は、ビヒクルの浸透圧及びイオン濃度が、ヒトなどの患者のものと一致することを意味し得る。ビヒクルの非限定的な例にはリン酸緩衝化生理食塩水が含まれ、これは、リン酸水素二ナトリウム、塩化ナトリウム、及び一部の製剤では塩化カリウム及びリン酸二水素カリウムを含む水性塩溶液である。他の例には、125mMの塩化ナトリウムと共に20mMの二塩基性リン酸ナトリウムを含有するビヒクル、及び15mMの三塩基性リン酸ナトリウム、125mMの塩化ナトリウム、及び0.3%w/wのm-クレゾールを含有するビヒクルが含まれ得る。
【0060】
治療方法
トレプロスチニルプロドラッグは、トレプロスチニルで治療可能な疾患又は状態、すなわち、トレプロスチニルが有効であることが知られている疾患又は状態を治療するために使用することができる。いくつかの実施態様において、そのような状態は肺高血圧症であり得る。いくつかの実施態様において、トレプロスチニルプロドラッグは、肺動脈高血圧症(PAH)を治療するために使用することができる。いくつかの実施態様において、トレプロスチニルプロドラッグは、WHOグループ1~5の肺高血圧症の1つ又はそれ以上を治療するために使用することができる。同様に、本明細書に記載のトレプロスチニルプロドラッグは、トレプロスチニルが適応又は有用である任意の疾患又は状態を治療するために使用することができる。トレプロスチニルプロドラッグは、単独の治療剤として、又はトレプロスチニルを含む他の活性物質に加えて投与することができる。
【0061】
いくつかの実施態様において、本明細書に開示される化合物(例えば、プロドラッグ)又は組成物を被験体に投与することを含む、疾患又は状態を治療する方法が提供される。いくつかの実施態様において、疾患又は状態は、肺高血圧症、うっ血性心不全、末梢血管疾患、レイノー現象、強皮症、腎不全、末梢神経障害、指潰瘍、間欠性跛行、虚血性四肢疾患、末梢虚血性病変、肺線維症、及び喘息から選択される1種以上である。いくつかの実施態様において、疾患は肺高血圧症である。
【0062】
投与は、上記の経路を介して、又は例えば、経口、静脈内、動脈内、筋肉内、鼻腔内、直腸内、膣内、又は皮下に行うことができる。いくつかの実施態様において、組成物は注入によって投与される。いくつかの実施態様において、投与は経口で行われる。いくつかの実施態様において、投与は皮下に行われる。
【0063】
治療される被験体は、ヒト、イヌ、ネコ、鳥類、ヒト以外の霊長類、ウシ、又はウマであり得る。好ましい実施態様において、被験体はヒトである。
【0064】
いくつかの実施態様において、疾患又は状態を治療する方法が提供され、この方法は、被験体にトレプロスチニルのプロドラッグを投与することを含み、前記投与により、前記プロドラッグは代謝産物に変換される。代謝産物は、トレプロスチニルを含むか、それから本質的になるか、又はそれからなることができる。
【0065】
トレプロスチニルプロドラッグは、ヒトなどの被験体に有効量を投与することができる。
【0066】
「有効量」という用語は、肺高血圧症などの疾患又は状態を治療するために必要であり得るトレプロスチニルプロドラッグの量を意味し得る。いくつかの実施態様において、トレプロスチニルプロドラッグの有効量は、同じ疾患又は状態を治療するためのトレプロスチニルの有効量と同一又は同様であり得る。いくつかの実施態様において、トレプロスチニルプロドラッグの有効量は、同じ疾患又は状態を治療するためのトレプロスチニルの有効量とは異なり得る。当業者は、例えば、関連する疾患又は状態、疾患又は状態を治療、改善、又は予防することが知られているトレプロスチニルの量、及びプロドラッグがインビボでトレプロスチニルに変換される速度に基づいて、トレプロスチニルプロドラッグの「有効量」を決定することができるであろう。
【0067】
製造方法
FDKP-トレプロスチニルプロドラッグは、トレプロスチニル部分がヒドロキシル保護基で保護されたその3つのヒドロキシル基のうちの2つを有する二重保護トレプロスチニル部分から調製され得る。
【0068】
【化13】
【0069】
二重保護されたトレプロスチニル部分は、保護されていないトレプロスチニル、すなわち式(1)の化合物から、例えば、Greene, Protective Groups in Organic Synthesis に開示されている方法(これは、参照によりその全体が本明細書に取り込まれる)を使用して生成され得る。
【0070】
シクロペンチル環FDKP-トレプロスチニルプロドラッグを生成するために、二重保護されたトレプロスチニル部分は式(2a)の化合物であってもよく、側鎖FDKP-トレプロスチニルプロドラッグを生成するために、二重保護されたトレプロスチニル部分は式(2b)の化合物であり得る。
【0071】
【化14】
【0072】
【化15】
【0073】
いくつかの実施態様において、二重保護されたトレプロスチニル部分において、R及びR(又はR)は保護基である。R及びR(又はR)は、同じであっても異なっていてもよい。いくつかの実施態様において、Rは、シリルカルボン酸保護基又はベンジルカルボン酸保護基であり得る。シリルカルボン酸保護基は、例えば、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリルオキシメチル、トリイソプロピルシリル、t-ブチルジメチルシリル、t-ブチルジフェニルシリル、フェニルジメチルシリルであり得る。ベンジルカルボン酸保護基は、非置換ベンジル又は置換ベンジル基、すなわち、1つ又はそれ以上のメタ、オルト、又はパラ位置で、-NO、-CN、ハロゲン(例えば、-F、-Cl、-Br、又は-I)、(C~C)アルキル、ハロ(C~C)アルキル、(C~C)アルコキシ、及びハロ(C~C)アルコキシからなる群から独立して選択され得る1つ又はそれ以上の置換基で置換されたベンジル基であり得る。いくつかの実施態様において、R(又はR)は、シリルヒドロキシル保護基、例えば、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリ-イソプロピルシリルオキシメチル、トリイソプロピルシリル、t-ブチルジメチルシリル、t-ブチルジフェニルシリル、フェニルジメチルシリルであり得る。
【0074】
二重保護されたトレプロスチニル部分は、式(3)の化合物などのFDKP部分と反応して、二重保護されたFDKP-トレプロスチニル化合物を生成することができ、これは、式(4a)又は(4b)の二重保護FDKP-トレプロスチニル化合物であり得る。
【0075】
【化16】
【0076】
【化17】
【0077】
【化18】
FDKP部分では、RはHであり得る。
【0078】
FDKP部分と二重保護トレプロスチニル部分との間のカップリング反応は、EDCIなどの水溶性カルボジイミドであり得るカルボジイミドの存在下で実施され得る。FDKP部分と二重保護されたトレプロスチニル部分との反応は、DMAPなどのピリジン化合物であり得る求核触媒の存在下で実施され得る。いくつかの実施態様において、DMAPなどの求核触媒を、DIPEA又はトリエチルアミンなどの有機塩基と一緒に使用することができる。DMAPなどの求核触媒は、単独で又は有機塩基とともに、DMA又はDMFなどの極性溶媒中に存在し得る。FDKP部分と二重保護トレプロスチニル部分との反応は、以下の表1から選択されるカップリング試薬の存在下で実施され得る。
【0079】
が、ポリマー担体、脂肪アルコール担体、又は脂肪アミン担体である式(5a)又は(5b)の化合物において、この化合物は、式(5a)又は(5b)の化合物のカップリング反応から生成され得、ここで、Rは、H、及びポリマー、脂肪酸、又は脂肪アミンである。いくつかの実施態様において、カップリングは、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)カップリング、又は以下の表1から選択される試薬を使用して実施されるカップリングである。
【表1】
【0080】
二重保護FDKP-トレプロスチニル部分を脱保護して、式(5a)又は(5b)の非保護FDKP-トレプロスチニル化合物を生成することができる。
【0081】
【化19】
【0082】
【化20】
【0083】
いくつかの実施態様において、式4a(4b)の二重保護FDKP-トレプロスチニル化合物の脱保護は、R及びR(R)における保護基を1工程で切断し、これらを水素で置換することによって1工程で実施され得る。例えば、R及びR(R)における保護基は、同じタイプの保護基であり、式4a(4b)の二重保護されたFDKP-トレプロスチニル化合物の脱保護は1工程で実施され得る。例えば、R及びR(R)における保護基が両方ともシリル保護基であり、これらが同じであっても異なっていてもよい場合、式4a(4b)の二重保護FDKP-トレプロスチニル化合物の脱保護は、酸又はテトラ-n-ブチルアンモニウムフルオリドなどのフッ化物であるシリルエステル又はエーテル切断剤を使用して、1工程で実施され得る。
【0084】
さらにいくつかの実施態様において、式4a(4b)の二重保護されたFDKP-トレプロスチニル化合物の脱保護は、2工程で実施され得る:1つは、Rでカルボキシル保護基を切断する工程であり、もう1つは、R(R)でヒドロキシル保護基を切断する工程である。いくつかの実施態様において、切断は最初にRに対して、次にR(R)に対して実施され得る。いくつかの他の実施態様において、切断は最初にR(R)に対して、次にRに対して実施され得る。例えば、Rがベンジルカルボン酸保護基であり、R(又はR)がシリルヒドロキシル保護基、例えばトリメチルシリル、トリエチルシリル、トリ-イソプロピルシリルオキシメチル、トリイソプロピルシリル、t-ブチルジメチルシリル、又は t-ブチルジフェニルシリル、フェニルジメチルシリルである場合、ベンジルカルボン酸保護基をRで切断して、式(6a)又は(6b)の単一保護FDKP-トレプロスチニル化合物を生成するすることができる:
【0085】
【化21】
【化22】
【0086】
におけるベンジルカルボン酸保護基の切断は、化学選択的ベンジル切断剤、例えば水酸化トリメチルスズ、水酸化バリウム、炭酸バリウム、水酸化セシウム、炭酸セシウム、他のアルカリ金属水酸化物及び炭酸塩、水酸化トリブチルスズ、水酸化テトラメチルアンモニウム、又は水酸化テトラブチルアンモニウムを使用して実施することができる。
【0087】
次に、式(5a)又は(5b)の非保護FDKP-トレプロスチニル化合物は、式(6a)又は(6b)の単一保護FDKP-トレプロスチニル化合物から生成することができる。いくつかの実施態様において、式(5a)又は(5b)の非保護FDKP-トレプロスチニル化合物は、式(6a)又は(6b)の単一の保護されたFDKP-トレプロスチニル化合物から、R又はRにおけるシリルエーテルヒドロキシル保護基を、酸又はテトラ-n-ブチルアンモニウムフルオリドなどのフッ化物であり得るシリルエーテル切断剤を使用して切断することにより、生成することができる。さらにいくつかの他の実施態様において、式(5a)又は(5b)の非保護FDKP-トレプロスチニル化合物は、式(6a)又は(6b)の単一保護FDKP-トレプロスチニル化合物から、式(6a)又は(6b)の単一保護FDKP-トレプロスチニル化合物を、長時間、例えば少なくとも10時間、又は少なくとも12時間、又は少なくとも14時間、又は少なくとも16時間、又は少なくとも18時間、単に保存して、R又はRにおけるシリルヒドロキシル保護基を、酸又はテトラ-n-ブチルアンモニウムフルオリドなどフッ化物であり得るシリルエーテル切断剤を使用して、シリルエーテルヒドロキシル保護基の切断を可能にすることによって、生成され得る。例えば、いくつかの実施態様において、式(6a)又は(6b)の単一保護FDKP-トレプロスチニル化合物を、長時間、例えば少なくとも10時間、又は少なくとも12時間、又は少なくとも14時間、又は少なくとも16時間、又は少なくとも18時間、低濃度、例えば約0.005%~約0.2%まで、又は約0.01%~約0.1%までのトリフルオロ酢酸(TFA)で保存することは、R又はRにおけるシリルエーテルヒドロキシル保護基の切断を可能にする。
【0088】
式(5a)又は(5b)のFDKP-トレプロスチニル化合物は、少なくとも90%、又は少なくとも92%、又は少なくとも93%、又は少なくとも94%、又は少なくとも95%、又は少なくとも96%、又は少なくとも97%、又は少なくとも98%、又は少なくとも98.5%の純度のバッチで製造され得る。いくつかの実施態様において、バッチ群は、少なくとも90%、又は少なくとも92%、又は少なくとも93%、又は少なくとも94%、又は少なくとも95%、又は少なくとも96%、又は少なくとも97%、又は少なくとも98%、又は少なくとも98.5%の純度を有する。
【0089】
いくつかの実施態様において、式(5a)の化合物のバッチは、式(5b)の化合物を実質的に含まなくてもよい。いくつかの実施態様において、式(5b)の化合物のバッチは、式(5a)の化合物を実質的に含まなくてもよい。例えば、いくつかの実施態様において、式(5a)の化合物のバッチは、5%未満、又は4%未満、又は3%未満、又は2%未満、又は1%未満、又は0.5%未満、0.3%未満、又は0.1%未満の式(5b)の化合物を含有し得る。同様に、いくつかの実施態様において、式(5b)の化合物のバッチは、5%未満、又は4%未満、又は3%未満、又は2%未満、又は1%未満、又は0.5%未満、又は0.3%未満、又は0.1%未満の式(5a)の化合物を含有し得る。
【0090】
バッチ中の式(5a)又は(5b)の化合物の量は、例えば、少なくとも0.1g、少なくとも0.3g、少なくとも0.5g、少なくとも0.8g、少なくとも1g、少なくとも1.2g、少なくとも1.5g、少なくとも2g、少なくとも3g、少なくとも4g、又は少なくとも5gであり得る。
【0091】
本明細書に記載の実施態様は、限定するものではないが、以下の実施例によってさらに説明される。
【実施例0092】
(E)-3,6-ビス[4-(N-カルボニル-2-プロペニル)アミドブチル]-2,5-ジケトピペラジン(FDKP)を有するトレプロスチニルプロドラッグを合成した。具体的には、FDKP-トレプロスチニルシクロペンチル環エステル及びFDKP-トレプロスチニル側鎖エステルを、それぞれスキーム1及びスキーム2に示すように合成した。
【0093】
スキーム1:FDKP-トレプロスチニルシクロペンチル環エステル(6)の合成
【化23】
【0094】
スキーム2:FDKP-トレプロスチニル側鎖エステル(9)の合成
【化24】
【0095】
FDKP-トレプロスチニルエステル:二保護されたトレプロスチニル部分である側鎖TBDMSトレプロスチニルTMSEエステル(1、R=TMSE)を、(E)-3,6-ビス[4-(N-カルボニル-2-プロペニル)アミドブチル]-2,5-ジケトピペラジン(FDKP)(3)と、DMA又はDMF中のEDCI.HCl及びDMAPの存在下でカプリングさせて、モノ-TBDMS FDKPトレプロスチニルTMSEシクロペンチル環エステル(4、R=TMSE)を、水とアセトニトリルを使用した逆相事前充填カラムでクロマトグラフィー分離後に、適度な収率で得た。THF中のTBAFを使用して4からのTMSE及びTBDMS基の脱シリル化を試みると、少量の目的の生成物であるFDKPトレプロスチニルシクロペンチル環エステル(6)がFDKP切断生成物、すなわちトレプロスチニルと共に得られた。脱シリル化中のFDKP切断を克服するために、保護基であるTMSEを、酸の保護下でベンジル基に置き換えた。ベンジルで保護された酸である側鎖TBDMSトレプロスチニルベンジルエステル(2、R=ベンジル)をカップリング反応に使用した。側鎖TBDMSトレプロスチニルベンジルエステル(2)をFDKPとカプリングさせて、逆相カラムクロマトグラフィー後、TBDMS FDKPトレプロスチニルベンジルシクロペンチル環エステル(5、R=ベンジル)を適度な収率で生成し、LCMS及びH NMRによって確認した。1,2-ジクロロエタン中の水酸化トリメチルスズによる粗製物(5、R=ベンジル)の化学選択的脱ベンジル化により、対応する酸(5、R=H)が得られた。FDKP切断産物の痕跡があった。水及びアセトニトリル中の0.05%トリフルオロ酢酸(TFA)を使用する逆相カラムによる粗酸の精製により、所望のFDKP-トレプロスチニルシクロペンチル環エステル(6)が得られた。0.05%TFA溶液の弱酸性の性質により、TBDMSの脱シリル化は、合わせた画分を冷蔵庫で一晩保存している間に発生した。これにより、最終化合物6を得るためにTBDMS基を切断するための余分な化学的工程が回避された。合わせた画分の凍結乾燥により、純粋なFDKPトレプロスチニルシクロペンチル環エステル(6)がオフホワイトの固体として得られ、IR、H NMR、及びLCMSによって特性解析された。同様の反応条件下で、シクロペンチルTBDMSトレプロスチニルベンジルエステル(7)もFDKP(2)とカップリングさせて、TBDMS FDKP-トレプロスチニルベンジル側鎖環エステル(3)を得た。水酸化トリメチルスズによる粗生成物(8)の化学選択的脱ベンジル化とそれに続く逆相カラムクロマトグラフィー中の脱シリル化により、FDKP-トレプロスチニル側鎖エステル(9)が適度な収率で得られ、IR、H NMR、及びLCMSによって特性解析された。
【0096】
合成方法:
【0097】
さまざまなカップリング試薬を使用して二保護トレプロスチニル(1又は2)と(E)-3,6-ビス[4-(N-カルボニル-2-プロペニル)アミドブチル]-2,5-ジケトピペラジン(FDKP)(3)とのカップリングを試みた。
【0098】
N,N-ジメチルアセトアミド(DMA)中のEDCI.HCl、DMAP、DIEA
【0099】
DMA又はN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)中のEDCI.HCl、DMAP
【0100】
DMA中の中のO-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N',N'-テトラメチルウロリウムテトラフルオロボレート(TBTU)及びDBU
【0101】
DMA中のヨウ化2-クロロ-1-メチルピリジニウム(CMPI)及びトリエチルアミン
【0102】
DMA中のEDCI.HCL、DMAP、HOBt、DIPEA
【0103】
DMF中の固体支持EDCI、固体支持DMAP。
【0104】
DMF又はDMA中のEDCI・HCl、DMAPを使用する二保護トレプロスチニル(1又は2)とFDKP(3)とのカップリング反応は、所望のカップリング生成物(4又は5)を与え、他の試薬は機能しなかった(スキーム1及び2)。化合物(4)を、アセトニトリル及び水を移動相として使用して逆相カラムクロマトグラフィーにより精製した。フッ化テトラブチルアンモニウム(TBAF)を使用して化合物(4)からのTBDMS及びTMSEの切断を試みると、少量の目的の化合物(6)がトレプロスチニル(エステル結合の切断による)と共に得られ、化合物(5)を使用したときも同様の結果が観察された。その後、TBAFを水酸化トリメチルスズに置き換えて、化合物(3b)からベンジルエステルの化学選択的切断を行い、対応する酸を得た。水酸化トリメチルスズを使用した場合、FDKPとトレプロスチニル部分の間のエステル結合の加水分解は最小であった。ベンジルエステル加水分解後の粗酸を、水中の0.05%ACN/ACN中の0.05%TFAを使用して逆相カラムクロマトグラフィーにより精製すると、化合物(6)の前駆体であるTBDMS FDKP-トレプロスチニル-シクロペンチル環エステルが得られた。LCMSによって所望の生成物が検出された。精製された生成物の保存中にTBDMS基の切断があり、最終生成物(6)が生成された。合わせた純粋な画分の凍結乾燥により、FDKP-トレプロスチニル-シクロペンチル環エステル(6)がオフホワイトの固体として得られた。純粋な化合物(6)は、IR、H NMR、DQF-COSY、及びLCMSによって特性解析された。
【0105】
FDKP-トレプロスチニル-シクロペンチル環エステル(6)の合成が成功した後、同様の反応条件を使用して、スキーム2に示すように、二保護トレプロスチニル(7)及びFDKP(3)を使用して、FDKP-トレプロスチニル-側鎖エステル(9)を合成した。純粋なFDKP-トレプロスチニル-側鎖エステル(9)は、IR、H NMR、DQF-COSY、及びLCMSによって特性解析された。
【0106】
実験:
【0107】
TBDMS FDKP-トレプロスチニルTMSEシクロペンチル環エステル(4、R=TMSE)の合成:
【0108】
N,N-ジメチルアセトアミド(DMA)(14mL)中のTBDMS-トレプロスチニルTMSEエステル(1、R=TMSE)(0.50g)の溶液に、(E)-3,6-ビス[4-(N-カルボニル-2-プロペニル)アミドブチル]-2,5-ジケトピペラジン(FDKP)(3)(0.44g)、EDCI.HCl(0.24g)、及びDMAP(0.30g)を、室温、アルゴン下で加えた。懸濁反応混合物を攪拌し、100℃に加熱した。反応混合物は透明かつ淡褐色になり、100℃で一晩加熱し続けた。反応混合物の加熱を停止し、次に真空中で蒸発させてDMA及び他の有機揮発物を除去した。粗生成物をトルエン(75mL)で粉砕し、トルエン可溶性生成物をデカントした(さらに2回繰り返した)。トルエン不溶性生成物を真空下で乾燥させて、淡褐色の固体(0.61g)を得た。粗生成物を、水及びアセトニトリル混合物を使用して逆事前充填カラムでクロマトグラフィーにかけ、TBDMSトレプロスチニルTMSEシクロペンチルFDKPエステル(4、R=TMSE)(0.015g)を得て、LCMSによって確認した。
【0109】
FDKP-トレプロスチニルシクロペンチル環エステル(6)の合成:
【0110】
ジメチルスルホキシド(0.75mL)中のTBDMS FDKP-トレプロスチニルTMSEシクロペンチル環エステル(4、R=TMSE)(0.013g)の溶液に、フッ化テトラブチルアンモニウム(TBAF)(THF(0.12mL)中1.0M)の溶液を室温、アルゴン下で加えた。反応混合物を室温で一晩撹拌した。22時間後、反応混合物をLCMSでチェックし、FDKP切断生成物すなわちトレプロスチニルと共に、FDKP-トレプロスチニルシクロペンチル環エステル(6)の所望の分子量を示した。
【0111】
TBDMS FDKP-トレプロスチニルベンジルシクロペンチル環エステル(5、R=ベンジル)の合成:
【0112】
N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)(90mL)中のモノ-TBDMS-トレプロスチニルベンジルエステル(6、R=ベンジル)(3.17g)の溶液に、(E)-3,6-ビス[4-(N-カルボニル-2-プロペニル)アミドブチル]-2,5-ジケトピペラジン(FDKP)(3)(2.89g)、EDCI.HCl(1.54g)、及びDMAP(1.54g)を、室温、アルゴン下で加えた。懸濁反応混合物を攪拌し、100℃に加熱した。反応混合物は褐色に濁り、100℃で一晩加熱し続けた。16時間後、所望の生成物について反応混合物をLCMSによってチェックした。同様の反応条件下で、0.61gのTBDMS-トレプロスチニルベンジルエステル(2、R=ベンジル)と0.55gの(E)-3,6-ビス[4-(N-カルボニル-2-プロペニル)アミドブチル]-2,5-ジケトピペラジン(FDKP)(3)とのさらに2バッチのカプリング反応を実施し、LCMSでチェックした。これらの3つのバッチは、LCMSデータに基づいて合わせた。反応混合物を真空中で蒸発させてDMF及び他の有機揮発性物質を除去して、暗褐色の粘性液体(18.37g)を得た。粗生成物をジクロロメタン(3×100mL)で粉砕し、濾過した。ジクロロメタン不溶性生成物(褐色固体)を廃棄し、ジクロロメタン可溶性生成物を真空下で濃縮して、褐色の粘性半固体生成物(14.59g)を得た。粗生成物をトルエン(3×100mL)で粉砕し、濾過した。トルエン可溶生成物(トルエン蒸発後7.02g)を廃棄した。トルエン不溶性生成物を真空下で乾燥させて、褐色の半固体(5.02g)を得た。粗生成物(5.0g)をシリカゲル(188g)カラム(230~400メッシュ)で、ジクロロメタン中のメタノール(0~100%)を使用してクロマトグラフィーにかけ、TBDMS FDKP-トレプロスチニルベンジルシクロペンチル環エステル(5、R=ベンジル)(2.26g)を得て、LCMSにより確認した。精製された生成物には少量のDMAPが含まれており、これは次の工程で除去することができた。この精製された生成物1.0gを、さらに0.05%トリフルオロ酢酸を含む水とアセトニトリル混合物を使用して逆相事前充填カラムのクロマトグラフィーにより精製して、純粋なTBDMS FDKP-トレプロスチニルベンジルシクロペンチル環エステル(5、R=ベンジル)(0.085g)を得て、これをLCMSにより確認した。
【0113】
FDKPトレプロスチニルシクロペンチル環エステル(14)の合成:
【0114】
1,2-ジクロロエタン(25mL)中の粗モノTBDMS FDKPトレプロスチニルベンジルシクロペンチル環エステル(13、R=ベンジル)(1.04g)の溶液に、水酸化トリメチルスズ(1.46g)を室温、アルゴン下で加えた。反応混合物を60℃で一晩加熱した。19時間後、反応をLCMSでチェックし、完了したことがわかった。反応混合物を真空中で蒸発させて、明るいオレンジ色の固体を得た(2.91g)。粗生成物(1.45g)を、さらに0.05%トリフルオロ酢酸を含有する水及びアセトニトリル混合物を使用して、逆相事前充填カラムのクロマトグラフィーにより精製して、純粋な画分を得た。選択された画分のLCMSをチェックした後、これらの画分を合わせた。合わせた画分を冷蔵庫に一晩保存した。18時間後、TBDMS基は完全に切断され、LCMSによって確認された。残りの粗生成物(1.45g)も同様に精製した。次に、両方の精製された生成物を合わせ、凍結乾燥して、オフホワイトのFDKP-トレプロスチニルシクロペンチル環エステル(6)を白色固体(0.212g)として得て、IR、H NMR、及びLCMSによって特性解析した。
【0115】
モノTBDMS FDKP-トレプロスチニルベンジル側鎖エステル(8)の合成:
【0116】
N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)(150mL)中のTBDMS-トレプロスチニルベンジルエステル(7)(5.57g)の溶液に、(E)-3,6-ビス[4-(N-カルボニル)-2-プロペニル)アミドブチル]-2,5-ジケトピペラジン(FDKP)(3)(5.08g)、EDCI.HCl(2.69g)、及びDMAP(3.43g)を、室温、アルゴン下で加えた。懸濁反応混合物を攪拌し、100℃に加熱した。反応混合物は褐色に濁り、100℃で一晩加熱し続けた。16時間後、所望の生成物について反応混合物をLCMSによってチェックした。反応混合物を真空中で蒸発させ、DMF及び他の有機揮発性物質を除去して、褐色の粘性液体(22.86g)を得た。粗生成物をジクロロメタン(3×100mL)で粉砕し、濾過した。ジクロロメタン不溶性生成物(褐色固体)を廃棄し、ジクロロメタン可溶性生成物を真空下で濃縮して、褐色の粘性液体生成物(17.33g)を得た。粗生成物をトルエン(200mL)で摩砕し、濾過した。トルエン可溶生成物(トルエン蒸発後の半固体生成物9.30g)を廃棄した。トルエン不溶性生成物を真空下で乾燥させて、褐色の泡状固体(7.73g)を得た。この粗生成物のLCMSは、所望のTBDMS FDKPトレプロスチニルベンジル側鎖エステル(8)(7.73g)を主生成物として示した。粗生成物をさらに精製することなく次の工程で使用した。
【0117】
FDKP-トレプロスチニル側鎖エステル(9)の合成:
【0118】
1,2-ジクロロエタン(100mL)中の粗モノ-TBDMS FDKPトレプロスチニルベンジル側鎖エステル(8)(2.45g)の溶液に、水酸化トリメチルスズ(3.44g)を室温、アルゴン下で加えた。反応混合物を60℃で一晩加熱した。17時間後、反応混合物をLCMSでチェックし、完了したことがわかった。反応混合物を室温まで冷却した。ジクロロエタン層を褐色の粘性液体(ゴム状)からデカントした。ジクロロエタン層を真空下で蒸発させて、淡褐色の粘性液体(4.48g)を得た。この生成物のLCMSは、生成物がほとんどないことを示した。ゴム状の褐色の生成物を高真空下で乾燥させて、泡状の褐色固体(1.02g)を得て、これは多量の所望の生成物を含んでいた。粗生成物(1.0g)を、0.05%トリフルオロ酢酸を含有する水及びアセトニトリル混合物を使用して逆相事前充填カラムのクロマトグラフィーにより精製して、純粋な画分を得た。選択した画分のLCMSをチェックした後、これらの画分を合わせた。合わせた画分を冷蔵庫に一晩保存した。16時間後、TBDMS基は完全に切断され、LCMSによって確認された。精製した生成物を合わせ、凍結乾燥して、オフホワイトのFDKP-トレプロスチニル側鎖エステル(9)をオフホワイトの固体(0.195g)として得て、IR、H NMR、及びLCMSにより特性解析し、HPLCによると純度は98.85%であった。
【0119】
上記は特定の好ましい実施態様に言及しているが、本発明はそれらに限定されないことは理解されるであろう。当業者であれば、開示された実施態様に対して様々な変更を加えることができ、そのような変更は本発明の範囲内にあることを意図していることに気付くであろう。
【0120】
本明細書で引用されたすべての刊行物、特許出願、及び特許は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【手続補正書】
【提出日】2025-01-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(4a)又は(4b)の化合物:
【化1】
【化2】
(式中、Rはカルボン酸保護基であり、RはH又はヒドロキシル保護基であり、RはH又はヒドロキシル保護基であり、Rはポリマー担体である)。
【請求項2】
がシリルカルボン酸保護基又は置換もしくは非置換ベンジルカルボン酸保護基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
が、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリ-イソプロピルシリルオキシメチル、トリイソプロピルシリル、t-ブチルジメチルシリル、t-ブチルジフェニルシリル、及びフェニルジメチルシリルから選択されるシリルカルボン酸保護基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
がトリメチルシリルである、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
が置換又は非置換ベンジルカルボン酸保護基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
がベンジル基である、請求項5に記載の化合物。