(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025004186
(43)【公開日】2025-01-14
(54)【発明の名称】眼表面疼痛を治療する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/517 20060101AFI20250106BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20250106BHJP
A61P 27/04 20060101ALI20250106BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20250106BHJP
A61P 27/06 20060101ALI20250106BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20250106BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20250106BHJP
【FI】
A61K31/517
A61K45/00
A61P27/04
A61P27/02
A61P27/06
A61P29/00
A61P25/04
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024177283
(22)【出願日】2024-10-09
(62)【分割の表示】P 2021547546の分割
【原出願日】2020-02-13
(31)【優先権主張番号】62/806,682
(32)【優先日】2019-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】522110555
【氏名又は名称】ボシュ + ロム アイルランド リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100153693
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 耕一
(72)【発明者】
【氏名】メドリー,クインタス
(72)【発明者】
【氏名】茂木 宗人
(72)【発明者】
【氏名】モンテッキ-パルマー,ミケラ
(72)【発明者】
【氏名】スタシ,カリオピ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】眼表面疼痛を治療する方法及び医薬を提供する。
【解決手段】眼表面疼痛の治療を、それを必要とする対象において行う方法であって、下記の構造を有する4-(7-ヒドロキシ-2-イソプロピル-4-オキソ-4H-キナゾリン-3-イル)-ベンゾニトリル(式I)又はその塩、溶媒和物、多形体若しくは共結晶を前記対象に点眼することを含む、方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼表面疼痛の治療を、それを必要とする対象において行う方法であって、有効量の、構
造:
【化1】
を有する4-(7-ヒドロキシ-2-イソプロピル-4-オキソ-4H-キナゾリン-3
-イル)-ベンゾニトリル(式I)又はその塩、溶媒和物、多形体若しくは共結晶を前記
対象に点眼することを含む、前記方法。
【請求項2】
前記眼表面疼痛は、慢性眼表面疼痛(COSP)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記式Iの化合物は、前記対象の角膜に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
約0.5%w/v~約3.5%w/v、約0.5%w/v~約2.5%w/v又は約0
.5%w/v~約1.5w/v、約0.5%~約3.0%w/v、約1.0%~約2.5
%w/v、約1.5%~約3.0%w/v又は約0.5%~約2.5%w/vの濃度で前
記式Iの化合物を投与することを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
約0.5%w/v、約1.0%w/v、約1.5%w/v、約2.0%w/v、約2.
5%w/v、約3.0%w/v又は約3.5%w/vの濃度で前記式Iの化合物を投与す
ることを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記COSPは、ドライアイ疾患に伴うものである、請求項1~5のいずれか一項に記
載の方法。
【請求項7】
前記投与は、ドライアイ疾患の症状の減少をもたらす、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記投与は、ドライアイ疾患に伴う前記眼性疼痛の減少をもたらす、請求項6に記載の
方法。
【請求項9】
前記投与は、眼の乾燥、眼の不快感、眼充血、眼の灼熱感若しくは刺痛、ざらつき若し
くは異物感又は羞明の1つ以上において少なくとも約10%の低減した発生率をもたらす
、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記対象は、ドライアイ疾患、シェーグレン症候群、結膜炎(角結膜炎、春季角結膜炎
、アレルギー性結膜炎を含む)、角膜上皮基底膜ジストロフィー、アカントアメーバ、線
維筋痛症、マイボーム腺機能不全、甲状腺眼症、酒さ、下垂症、円錐角膜、眼性疼痛症候
群、スティーヴンス・ジョンソン症候群、角膜上皮症、角膜神経障害(LASIK誘導性
角膜神経障害を含む)、角膜ジストロフィー(再発性角膜ジストロフィーを含む)、上皮
基底膜ジストロフィー、角膜びらん若しくは角膜擦過傷(再発性角膜びらん若しくは角膜
擦過傷を含む)、眼表面疾患、眼瞼炎、移植片対宿主病、マイボーム腺炎、緑内障、結膜
弛緩症、角膜症(疱疹性角膜症、糸状角膜症、帯状若しく水疱性角膜症、兎眼性角膜症を
含む)、角膜炎(単純ヘルペスウイルス角膜炎を含む)、虹彩炎、上強膜炎、角膜手術、
多発性硬化症、睫毛乱生症、翼状片、神経痛、眼球乾燥症、神経栄養性角膜炎から回復し
ている患者又はレーザー屈折矯正角膜切除(PRK)手術若しくはレーザー角膜切削形成
(LASIK)手術後になくとも3ヶ月間にわたって持続している眼性疼痛の1つ以上に
罹患している、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記対象に追加の治療剤を投与することをさらに含む、請求項1~10のいずれか一項
に記載の方法。
【請求項12】
前記投与は、視覚的アナログスケール(VAS)で測定されたとき、プラセボと比較し
て、少なくとも約3、少なくとも約4、少なくとも約5、少なくとも約6、少なくとも約
7、少なくとも約8、少なくとも約9又は少なくとも約10の、疼痛スコアの低減をもた
らす、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記投与は、VASで測定されたとき、プラセボと比較して、少なくとも約6、少なく
とも約7、少なくとも約8、少なくとも約9又は少なくとも約10の、前記対象の疼痛ス
コアの低減をもたらす、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記投与は、プラセボと比較して、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なく
とも約20%又は少なくとも約25%の、前記対象の疼痛の低減をもたらす、請求項1~
11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記疼痛スコアの前記低減は、前記対象への化合物Iの投与前及び後の疼痛スコアの差
から生じる、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項16】
VASスコアの前記低減は、前記対象への化合物Iの投与後の約半時間以内に生じる、
請求項12~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記投与は、マクモニーズスケールで少なくとも約1、少なくとも約2、少なくとも約
3、少なくとも約4又は少なくとも約5の、前記対象における充血の低減をもたらす、請
求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記投与は、プラセボと比較して、最高矯正視力、細隙灯生体顕微鏡検査、散瞳検査、
まばたき速度、涙液産生、眼内圧の1つ以上の変化をもたらさない、請求項1~17のい
ずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記式Iの化合物は、少なくとも約1ヶ月間、少なくとも約2ヶ月間又は少なくとも約
3ヶ月間にわたって投与される、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記式Iの化合物は、3ヶ月間超にわたって投与される、請求項1~19のいずれか一
項に記載の方法。
【請求項21】
前記式Iの化合物は、1日1~4回投与される、請求項1~20のいずれか一項に記載
の方法。
【請求項22】
眼表面疼痛の治療又は低減に使用するための、式I
【化2】
の化合物又はその塩、溶媒和物、多形体若しくは共結晶。
【請求項23】
前記眼表面疼痛は、少なくとも1ヶ月間、少なくとも2ヶ月間又は少なくとも3ヶ月間
にわたって持続する慢性眼表面疼痛である、請求項22に記載の使用。
【請求項24】
前記式Iの化合物は、約0.5%w/v~約3.5%w/v、約0.5%w/v~約2
.5%w/v又は約0.5%w/v~約1.5w/v、約0.5%~約3.0%w/v、
約1.0%~約2.5%w/v、約1.5%~約3.0%w/v又は約0.5%~約2.
5%w/vの濃度で投与される、請求項22又は23に記載の使用。
【請求項25】
前記式Iの化合物は、約0.5%w/v、約1.0%w/v、約1.5%w/v、約2
.0%w/v、約2.5%w/v、w/v、約3.0%w/v又は約3.5%w/vの濃
度で投与される、請求項22~24のいずれか一項に記載の使用。
【請求項26】
式I
【化3】
の化合物又はその塩、溶媒和物、多形体若しくは共結晶である活性成分を含有する、眼表
面疼痛を治療又は低減するための医薬。
【請求項27】
前記眼表面疼痛は、少なくとも1ヶ月間、少なくとも2ヶ月間又は少なくとも3ヶ月間
にわたって持続する慢性眼表面疼痛である、請求項26に記載の医薬。
【請求項28】
前記式Iの化合物は、約0.5%w/v~約3.5%w/v、約0.5%w/v~約2
.5%w/v又は約0.5%w/v~約1.5w/v、約0.5%~約3.0%w/v、
約1.0%~約2.5%w/v、約1.5%~約3.0%w/v又は約0.5%~約2.
5%w/vの濃度で投与される、請求項26又は27に記載の医薬。
【請求項29】
前記式Iの化合物は、約0.5%w/v、約1.0%w/v、約1.5%w/v、約2
.0%w/v、約2.5%w/v、約3.0%w/v又は約3.5%w/vの濃度で投与
される、請求項26~28のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項30】
眼表面疼痛の治療又は低減のための医薬の製造における、式I
【化4】
の化合物又はその塩、溶媒和物、多形体若しくは共結晶の使用。
【請求項31】
前記眼表面疼痛は、少なくとも1ヶ月間、少なくとも2ヶ月間又は少なくとも3ヶ月間
にわたって持続する慢性眼表面疼痛である、請求項30に記載の使用。
【請求項32】
前記式Iの化合物は、約0.5%w/v~約3.5%w/v、約0.5%w/v~約2
.5%w/v又は約0.5%w/v~約1.5w/v、約0.5%~約3.0%w/v、
約1.0%~約2.5%w/v、約1.5%~約3.0%w/v又は約0.5%~約2.
5%w/vの濃度で投与される、請求項30又は31に記載の使用。
【請求項33】
前記式Iの化合物は、約0.5%w/v、約1.0%w/v、約1.5%w/v、約2
.0%w/v、約2.5%w/v、w/v、約3.0%w/v又は約3.5%w/vの濃
度で投与される、請求項30~32のいずれか一項に記載の使用。
【請求項34】
眼表面疼痛の低減を、それを必要とする対象において行う方法であって、構造:
【化5】
を有する4-(7-ヒドロキシ-2-イソプロピル-4-オキソ-4H-キナゾリン-3
-イル)-ベンゾニトリル(式I)又はその塩、溶媒和物、多形体若しくは共結晶を前記
対象に点眼することを含み、前記式Iの化合物は、約0.5%w/v~約3.5%w/v
、約0.5%w/v~約2.5%w/v又は約0.5%w/v~約1.5w/v、約0.
5%~約3.0%w/v、約1.0%~約2.5%w/v、約1.5%~約3.0%w/
v又は約0.5%~約2.5%w/vの濃度で投与される、前記方法。
【請求項35】
前記眼表面疼痛は、慢性眼表面疼痛(COSP)である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記COSPは、ドライアイ疾患に伴うものである、請求項34又は35に記載の方法
。
【請求項37】
前記投与は、ドライアイ疾患の症状の減少をもたらす、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
前記投与は、ドライアイ疾患に伴う前記眼性疼痛の減少をもたらす、請求項36に記載
の方法。
【請求項39】
前記投与は、眼の乾燥、眼の不快感、眼充血、眼の灼熱感若しくは刺痛、ざらつき若し
くは異物感又は羞明の1つ以上において少なくとも約10%の低減した発生率をもたらす
、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記対象は、ドライアイ疾患、シェーグレン症候群、結膜炎(角結膜炎、春季角結膜炎
、アレルギー性結膜炎を含む)、角膜上皮基底膜ジストロフィー、アカントアメーバ、線
維筋痛症、マイボーム腺機能不全、甲状腺眼症、酒さ、下垂症、円錐角膜、眼性疼痛症候
群、スティーヴンス・ジョンソン症候群、角膜上皮症、角膜神経障害(LASIK誘導性
角膜神経障害を含む)、角膜ジストロフィー(再発性角膜ジストロフィーを含む)、上皮
基底膜ジストロフィー、角膜びらん若しくは角膜擦過傷(再発性角膜びらん若しくは角膜
擦過傷を含む)、眼表面疾患、眼瞼炎、移植片対宿主病、マイボーム腺炎、緑内障、結膜
弛緩症、角膜症(疱疹性角膜症、糸状角膜症、帯状若しく水疱性角膜症、兎眼性角膜症を
含む)、角膜炎(単純ヘルペスウイルス角膜炎を含む)、虹彩炎、上強膜炎、角膜手術、
多発性硬化症、睫毛乱生症、翼状片、神経痛、眼球乾燥症、神経栄養性角膜炎から回復し
ている患者又はレーザー屈折矯正角膜切除(PRK)手術若しくはレーザー角膜切削形成
(LASIK)手術後に少なくとも3ヶ月間にわたって持続している眼性疼痛の1つ以上
に罹患している、請求項34~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記対象に追加の治療剤を投与することをさらに含む、請求項34~40のいずれか一
項に記載の方法。
【請求項42】
前記投与は、視覚的アナログスケール(VAS)で測定されたとき、前記化合物の投与
前の疼痛スコアと比較して、少なくとも約3の、前記対象の疼痛スコアの低減をもたらす
、請求項34~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記投与は、視覚的アナログスケール(VAS)で測定されたとき、プラセボと比較し
て、少なくとも約3、少なくとも約4、少なくとも約5、少なくとも約6、少なくとも約
7、少なくとも約8、少なくとも約9又は少なくとも約10の、疼痛スコアの低減をもた
らす、請求項34~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記投与は、VASで測定されたとき、プラセボと比較して、少なくとも約6、少なく
とも約7、少なくとも約8、少なくとも約9又は少なくとも約10の、前記対象の疼痛ス
コアの低減をもたらす、請求項34~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記投与は、プラセボと比較して、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なく
とも約20%又は少なくとも約25%の、前記対象の疼痛の低減をもたらす、請求項34
~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記疼痛スコアの前記低減は、前記対象への化合物Iの投与前及び後の疼痛スコアの差
から生じる、請求項42~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記投与は、マクモニーズスケールで少なくとも約1、少なくとも約2、少なくとも約
3、少なくとも約4又は少なくとも約5の、前記対象における充血の低減をもたらす、請
求項34~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
眼充血の低減を、それを必要とする対象において行う方法であって、構造:
【化6】
を有する4-(7-ヒドロキシ-2-イソプロピル-4-オキソ-4H-キナゾリン-3
-イル)-ベンゾニトリル(式I)又はその塩、溶媒和物、多形体若しくは共結晶を前記
対象に点眼することを含み、前記式Iの化合物は、約0.5%w/v~約3.5%w/v
、約0.5%w/v~約2.5%w/v又は約0.5%w/v~約1.5w/v、約0.
5%~約3.0%w/v、約1.0%~約2.5%w/v、約1.5%~約3.0%w/
v又は約0.5%~約2.5%w/vの濃度で投与される、前記方法。
【請求項49】
眼充血の前記低減は、マクモニーズスケールで少なくとも約1、少なくとも約2、少な
くとも約3、少なくとも約4又は少なくとも約5である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記投与は、眼の乾燥、眼の不快感、眼の灼熱感若しくは刺痛、ざらつき若しくは異物
感又は羞明の1つ以上において少なくとも約10%の低減した発生率をもたらす、請求項
48又は49に記載の方法。
【請求項51】
前記対象は、ドライアイ疾患、シェーグレン症候群、結膜炎(角結膜炎、春季角結膜炎
、アレルギー性結膜炎を含む)、角膜上皮基底膜ジストロフィー、アカントアメーバ、線
維筋痛症、マイボーム腺機能不全、甲状腺眼症、酒さ、下垂症、円錐角膜、眼性疼痛症候
群、スティーヴンス・ジョンソン症候群、角膜上皮症、角膜神経障害(LASIK誘導性
角膜神経障害を含む)、角膜ジストロフィー(再発性角膜ジストロフィーを含む)、上皮
基底膜ジストロフィー、角膜びらん若しくは角膜擦過傷(再発性角膜びらん若しくは角膜
擦過傷を含む)、眼表面疾患、眼瞼炎、移植片対宿主病、マイボーム腺炎、緑内障、結膜
弛緩症、角膜症(疱疹性角膜症、糸状角膜症、帯状若しく水疱性角膜症、兎眼性角膜症を
含む)、角膜炎(単純ヘルペスウイルス角膜炎を含む)、虹彩炎、上強膜炎、角膜手術、
多発性硬化症、睫毛乱生症、翼状片、神経痛、眼球乾燥症、神経栄養性角膜炎から回復し
ている患者又はレーザー屈折矯正角膜切除(PRK)手術若しくはレーザー角膜切削形成
(LASIK)手術後に少なくとも3ヶ月間にわたって持続している眼性疼痛の1つ以上
に罹患している、請求項48~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記対象に追加の治療剤を投与することをさらに含む、請求項48~51のいずれか一
項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本願は、米国仮特許出願第62/806,682号明細書に対する優先権を主張し、そ
の全体が本明細書に援用される。
【0002】
本開示は、4-(7-ヒドロキシ-2-イソプロピル-4-オキソ-4H-キナゾリン
-3-イル)-ベンゾニトリル(化合物I)を用いて眼表面疾患又は障害を治療する方法
に関する。
【背景技術】
【0003】
眼表面、特に角膜は、感覚神経により密に神経支配されている。角膜神経の活性は、浸
透圧ストレスや組織損傷、さらには眼表面の神経傷害などのいくつかの因子に起因する炎
症により修飾可能である。眼表面症状は、眼表面のストレス及び感作を引き起こす持続刺
激により慢性眼表面疼痛をもたらすアンバランス眼表面ホメオスタシスの指標となるアラ
ームシステムである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
眼表面疼痛、特に慢性眼表面疼痛に罹患している患者は、生活の質が有意に低下する。
これまでのユーティリティー研究では、重度慢性眼表面疼痛の負荷は、中度~重度アンギ
ナ、透析又は障害性股関節骨折にたとえられてきた。重度慢性眼表面疼痛は、鬱病及び自
殺念慮にも関連付けられてきた。多くの患者では、眼表面疼痛は、根底にある病理(例え
ば、最近の外傷若しくは手術、感染又は炎症)の治療にもかかわらず未解決のままである
。さらに、眼性疼痛の短期管理に使用される治療剤(例えば、非ステロイド系抗炎症薬剤
、ステロイド剤)は、長期療法に使用できない。そのため、患者の生活の質の向上又は現
在の治療剤の補足のための他の選択肢が存在しないとき、眼表面疼痛、特に慢性眼表面疼
痛の治療のための安全で有効な治療剤に対する長い間の切実で満たされない必要性が存在
する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態では、本開示は、眼表面疼痛の治療を、それを必要とする対象において行う
方法であって、有効量の、構造:
【化1】
を有する4-(7-ヒドロキシ-2-イソプロピル-4-オキソ-4H-キナゾリン-3
-イル)-ベンゾニトリル(式I)又はその塩、溶媒和物、多形体若しくは共結晶を対象
に点眼することを含む方法を提供する。
【0006】
いくつかの実施形態では、眼表面疼痛は、エピソード性又は急性疼痛である。いくつか
の実施形態では、眼表面疼痛は、少なくとも約3ヶ月間にわたって持続する慢性眼表面疼
痛(COSP)である
【0007】
いくつかの実施形態では、式Iの化合物は、対象の角膜に投与される。いくつかの実施
形態では、式Iの化合物は、約0.5%w/v~約3.5%w/v、約0.5%w/v~
約2.5%w/v又は約0.5%w/v~約1.5w/v、約0.5%~約3.0%w/
v、約1.0%~約2.5%w/v、約1.5%~約3.0%w/v又は約0.5%~約
2.5%w/vの濃度で対象に投与される。特定実施形態では、式Iの化合物は、約0.
5%w/v、約1.0%w/v、約1.5%w/v、約2.0%w/v、約2.5%w/
v、約3.0%w/v又は約3.5%w/vの濃度で投与される。いくつかの実施形態で
は、式Iの化合物は、約5mg/ml~約35mg/ml、約5mg/ml~約25mg
/ml又は約5mg/ml~約15mg/ml、約5mg/ml~約30mg/ml、約
10mg/ml~約25mg/ml、約15mg/ml~約30mg/ml又は約5mg
/ml~約25mg/mlの濃度で対象に投与される。特定実施形態では、式Iの化合物
は、約5mg/ml、約10mg/ml、約15mg/ml、約20mg/ml、25m
g/ml、約30mg/ml又は約35mg/mlの濃度で投与される。
【0008】
本明細書に記載の眼表面疼痛の治療方法のいくつかの実施形態では、COSPは、ドラ
イアイ疾患に伴うものである。いくつかの実施形態では、投与は、ドライアイ疾患の症状
の減少をもたらす。特定実施形態では、投与は、ドライアイ疾患に伴う眼性疼痛の減少を
もたらす。いくつかの実施形態では、投与は、眼の乾燥、眼の不快感、眼充血、眼の灼熱
感若しくは刺痛、ざらつき若しくは異物感又は羞明の1つ以上において少なくとも約10
%の低減した発生率をもたらす。
【0009】
本明細書に記載の眼表面疼痛の治療方法のいくつかの実施形態では、対象は、ドライア
イ疾患、シェーグレン症候群、結膜炎(角結膜炎、春季角結膜炎、アレルギー性結膜炎を
含む)、角膜上皮基底膜ジストロフィー、アカントアメーバ、線維筋痛症、マイボーム腺
機能不全、甲状腺眼症、酒さ、下垂症、円錐角膜、眼性疼痛症候群、スティーヴンス・ジ
ョンソン症候群、角膜上皮症、角膜神経障害(LASIK誘導性角膜神経障害を含む)、
角膜ジストロフィー(再発性角膜ジストロフィーを含む)、上皮基底膜ジストロフィー、
角膜びらん若しくは角膜擦過傷(再発性角膜びらん若しくは角膜擦過傷を含む)、眼表面
疾患、眼瞼炎、移植片対宿主病、マイボーム腺炎、緑内障、結膜弛緩症、角膜症(疱疹性
角膜症、糸状角膜症、帯状若しく水疱性角膜症、兎眼性角膜症を含む)、角膜炎(単純ヘ
ルペスウイルス角膜炎を含む)、虹彩炎、上強膜炎、角膜手術、多発性硬化症、睫毛乱生
症、翼状片、神経痛、眼球乾燥症又は神経栄養性角膜炎から回復している患者の1つ以上
に罹患している。本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、対象は、レーザー屈
折矯正角膜切除(PRK)手術又はレーザー角膜切削形成(LASIK)手術後に少なく
とも3ヶ月間にわたって持続している眼性疼痛に罹患している。
【0010】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の眼表面疼痛の治療方法は、追加の治療剤を
対象に投与することを含む。
【0011】
本明細書に記載の眼表面疼痛の治療方法のいくつかの実施形態では、対象への化合物I
の投与は、視覚的アナログスケール(VAS)で測定されたとき、プラセボと比較して、
少なくとも約3、少なくとも約4、少なくとも約5、少なくとも約6、少なくとも約7、
少なくとも約8、少なくとも約9又は少なくとも約10の、疼痛スコアの低減をもたらす
。さらなる実施形態では、対象への化合物Iの投与は、VASで測定されたとき、プラセ
ボと比較して、少なくとも約6、少なくとも約7、少なくとも約8、少なくとも約9又は
少なくとも約10の、対象の疼痛スコアの低減をもたらす。
【0012】
本明細書に記載の眼表面疼痛の治療方法のいくつかの実施形態では、対象への化合物I
の投与は、プラセボと比較して、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも
約20%又は少なくとも約25%の、対象の疼痛の低減をもたらす。いくつかの実施形態
では、疼痛スコアの低減は、対象への化合物Iの投与前及び後の疼痛スコアの差から生じ
る。本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、対象への化合物Iの投与の疼痛ス
コアの低減は、対象への化合物Iの投与後の約半時間以内に生じる。
【0013】
本明細書に記載の眼表面疼痛の治療方法のいくつかの実施形態では、対象への化合物I
の投与は、マクモニーズ(McMonnies)スケールで少なくとも約1、少なくとも
約2、少なくとも約3、少なくとも約4又は少なくとも約5の、対象における充血の低減
をもたらす。
【0014】
本明細書に記載の眼表面疼痛の治療方法のいくつかの実施形態では、対象への化合物I
の投与は、プラセボと比較して、最高矯正視力、細隙灯生体顕微鏡検査、散瞳検査、まば
たき速度、涙液産生、眼内圧の1つ以上の変化をもたらさない。
【0015】
本明細書に記載の眼表面疼痛の治療方法のいくつかの実施形態では、式Iの化合物は、
少なくとも約1ヶ月間、少なくとも約2ヶ月間又は少なくとも約3ヶ月間にわたって投与
される。いくつかの実施形態では、式Iの化合物は、3ヶ月間超にわたって投与される。
いくつかの実施形態では、式Iの化合物は、1日1~4回投与される。特定実施形態では
、式Iの化合物は、1日1~2回投与される。
【0016】
いくつかの実施形態では、本開示は、眼表面疼痛の治療又は低減に使用するための、式
I
【化2】
の化合物又はその塩、溶媒和物、多形体若しくは共結晶に関する。
【0017】
いくつかの実施形態では、眼表面疼痛は、急性又はエピソード性眼表面疼痛である。い
くつかの実施形態では、眼表面疼痛は、少なくとも1ヶ月間、少なくとも2ヶ月間又は少
なくとも3ヶ月間にわたって持続する慢性眼表面疼痛である。
【0018】
本明細書に記載の使用のいくつかの実施形態では、式Iの化合物は、約0.5%w/v
~約3.5%w/v、約0.5%w/v~約2.5%w/v又は約0.5%w/v~約1
.5w/v、約0.5%~約3.0%w/v、約1.0%~約2.5%w/v、約1.5
%~約3.0%w/v又は約0.5%~約2.5%w/vの濃度で投与される。
【0019】
本明細書に記載の使用のいくつかの実施形態では、式Iの化合物は、約0.5%w/v
、約1.0%w/v、約1.5%w/v、約2.0%w/v、約2.5%w/v、約3.
0%w/v又は約3.5%w/vの濃度で投与される。
【0020】
いくつかの実施形態では、本開示は、式I
【化3】
の化合物又はその塩、溶媒和物、多形体若しくは共結晶である活性成分を含有する、眼表
面疼痛を治療又は低減するための医薬に関する。
【0021】
いくつかの実施形態では、眼表面疼痛は、急性又はエピソード性眼表面疼痛である。い
くつかの実施形態では、眼表面疼痛は、少なくとも1ヶ月間、少なくとも2ヶ月間にわた
って持続する慢性眼表面疼痛である。いくつかの実施形態では、眼表面疼痛は、少なくと
も3ヶ月間にわたって持続する慢性眼表面疼痛である。いくつかの実施形態では、式Iの
化合物は、約0.5%w/v~約3.5%w/v、約0.5%w/v~約2.5%w/v
又は約0.5%w/v~約1.5w/v、約0.5%~約3.0%w/v、約1.0%~
約2.5%w/v、約1.5%~約3.0%w/v又は約0.5%~約2.5%w/vの
濃度で投与される。いくつかの実施形態では、式Iの化合物は、約0.5%w/v、約1
.0%w/v、約1.5%w/v、約2.0%w/v、約2.5%w/v、約3.0%w
/v又は約3.5%w/vの濃度で投与される。
【0022】
いくつかの実施形態では、本開示は、眼表面疼痛の治療又は低減のための医薬の製造に
おける、式I
【化4】
の化合物又はその塩、溶媒和物、多形体若しくは共結晶の使用に関する。
【0023】
いくつかの実施形態では、化合物Iの使用は、急性又はエピソード性眼表面疼痛に対す
るものである。いくつかの実施形態では、化合物Iの使用は、少なくとも1ヶ月間、少な
くとも2ヶ月間又は少なくとも3ヶ月間にわたって持続する慢性眼表面疼痛に対するもの
である。
【0024】
本明細書に記載の使用のいくつかの実施形態では、式Iの化合物は、約0.5%w/v
~約3.5%w/v、約0.5%w/v~約2.5%w/v又は約0.5%w/v~約1
.5w/v、約0.5%~約3.0%w/v、約1.0%~約2.5%w/v、約1.5
%~約3.0%w/v又は約0.5%~約2.5%w/vの濃度で投与される。
【0025】
本明細書に記載の使用のいくつかの実施形態では、式Iの化合物は、約0.5%w/v
、約1.0%w/v、約1.5%w/v、約2.0%w/v、約2.5%w/v、約3.
0%w/v又は約3.5%w/vの濃度で投与される。
【0026】
いくつかの実施形態では、本開示は、眼表面疼痛の低減を、それを必要とする対象にお
いて行う方法であって、構造:
【化5】
を有する4-(7-ヒドロキシ-2-イソプロピル-4-オキソ-4H-キナゾリン-3
-イル)-ベンゾニトリル(式I)又はその塩、溶媒和物、多形体若しくは共結晶を対象
に点眼することを含み、式Iの化合物は、約0.5%w/v~約3.5%w/v、約0.
5%w/v~約2.5%w/v又は約0.5%w/v~約1.5w/v、約0.5%~約
3.0%w/v、約1.0%~約2.5%w/v、約1.5%~約3.0%w/v又は約
0.5%~約2.5%w/vの濃度で投与される、方法に関する。
【0027】
いくつかの実施形態では、眼表面疼痛は、急性又はエピソード性眼表面疼痛である。い
くつかの実施形態では、眼表面疼痛は、少なくとも1ヶ月間、少なくとも2ヶ月間又は少
なくとも3ヶ月間にわたって持続する慢性眼表面疼痛である。
【0028】
本明細書に記載の眼性疼痛の低減方法のいくつかの実施形態では、COSPは、ドライ
アイ疾患に伴うものである。
【0029】
本明細書に記載の眼表面疼痛の低減方法のいくつかの実施形態では、対象への化合物I
の投与は、ドライアイ疾患の症状の減少をもたらす。
【0030】
本明細書に記載の眼表面疼痛の低減方法のいくつかの実施形態では、対象への化合物I
の投与は、ドライアイ疾患に伴う眼性疼痛の減少をもたらす。本明細書に記載の方法のい
くつかの実施形態では、対象への化合物Iの投与は、眼の乾燥、眼の不快感、眼充血、眼
の灼熱感若しくは刺痛、ざらつき若しくは異物感又は羞明の1つ以上において少なくとも
約10%の低減した発生率をもたらす。
【0031】
いくつかの実施形態では、眼表面疼痛の低減を必要とする対象は、ドライアイ疾患、シ
ェーグレン症候群、結膜炎(角結膜炎、春季角結膜炎、アレルギー性結膜炎を含む)、角
膜上皮基底膜ジストロフィー、アカントアメーバ、線維筋痛症、マイボーム腺機能不全、
甲状腺眼症、酒さ、下垂症、円錐角膜、眼性疼痛症候群、スティーヴンス・ジョンソン症
候群、角膜上皮症、角膜神経障害(LASIK誘導性角膜神経障害を含む)、角膜ジスト
ロフィー(再発性角膜ジストロフィーを含む)、上皮基底膜ジストロフィー、角膜びらん
若しくは角膜擦過傷(再発性角膜びらん若しくは角膜擦過傷を含む)、眼表面疾患、眼瞼
炎、移植片対宿主病、マイボーム腺炎、緑内障、結膜弛緩症、角膜症(疱疹性角膜症、糸
状角膜症、帯状若しく水疱性角膜症、兎眼性角膜症を含む)、角膜炎(単純ヘルペスウイ
ルス角膜炎を含む)、虹彩炎、上強膜炎、角膜手術、多発性硬化症、睫毛乱生症、翼状片
、神経痛、眼球乾燥症又は神経栄養性角膜炎から回復している患者の1つ以上に罹患して
いる。
【0032】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の眼表面疼痛の低減方法は、追加の治療剤を
対象に投与することを含む。
【0033】
本明細書に記載の眼表面疼痛の低減方法のいくつかの実施形態では、対象への化合物I
の投与は、視覚的アナログスケール(VAS)で測定されたとき、化合物の投与前の疼痛
スコアと、比較して少なくとも約3の、対象の疼痛スコアの低減をもたらす。本明細書に
記載の方法のいくつかの実施形態では、対象への化合物Iの投与は、視覚的アナログスケ
ール(VAS)で測定されたとき、プラセボと比較して、少なくとも約3、少なくとも約
4、少なくとも約5、少なくとも約6、少なくとも約7、少なくとも約8、少なくとも約
9又は少なくとも約10の、疼痛スコアの低減をもたらす。本明細書に記載の方法のいく
つかの実施形態では、対象への化合物Iの投与は、VASで測定されたとき、プラセボと
比較して、少なくとも約6、少なくとも約7、少なくとも約8、少なくとも約9又は少な
くとも約10の、対象の疼痛スコアの低減をもたらす。
【0034】
本明細書に記載の眼表面疼痛の低減方法のいくつかの実施形態では、対象への化合物I
の投与は、プラセボと比較して、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも
約20%又は少なくとも約25%の、対象の疼痛の低減をもたらす。本明細書に記載の方
法のいくつかの実施形態では、疼痛スコアの低減は、対象への化合物Iの投与前及び後の
疼痛スコアの差から生じる。
【0035】
本明細書に記載の眼表面疼痛の低減方法のいくつかの実施形態では、対象への化合物I
の投与は、マクモニーズスケールで少なくとも約1、少なくとも約2、少なくとも約3、
少なくとも約4又は少なくとも約5の、対象における充血の低減をもたらす。
【0036】
いくつかの実施形態では、本開示は、眼充血の低減を、それを必要とする対象において
行う方法であって、構造:
【化6】
を有する4-(7-ヒドロキシ-2-イソプロピル-4-オキソ-4H-キナゾリン-3
-イル)-ベンゾニトリル(式I)又はその塩、溶媒和物、多形体若しくは共結晶を対象
に点眼することを含み、式Iの化合物は、約0.5%w/v~約3.5%w/v、約0.
5%w/v~約2.5%w/v又は約0.5%w/v~約1.5w/v、約0.5%~約
3.0%w/v、約1.0%~約2.5%w/v、約1.5%~約3.0%w/v又は約
0.5%~約2.5%w/vの濃度で投与される、方法に関する。
【0037】
本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、対象への化合物Iの投与は、マクモ
ニーズスケールで少なくとも約1、少なくとも約2、少なくとも約3、少なくとも約4又
は少なくとも約5の、眼充血の低減をもたらす。本明細書に記載の方法のいくつかの実施
形態では、対象への化合物Iの投与は、眼の乾燥、眼の不快感、眼の灼熱感若しくは刺痛
、ざらつき若しくは異物感又は羞明の1つ以上において少なくとも約10%の低減した発
生率をもたらす。
【0038】
眼充血の低減方法のいくつかの実施形態では、対象は、ドライアイ疾患、シェーグレン
症候群、結膜炎(角結膜炎、春季角結膜炎、アレルギー性結膜炎を含む)、角膜上皮基底
膜ジストロフィー、アカントアメーバ、線維筋痛症、マイボーム腺機能不全、甲状腺眼症
、酒さ、下垂症、円錐角膜、眼性疼痛症候群、スティーヴンス・ジョンソン症候群、角膜
上皮症、角膜神経障害(LASIK誘導性角膜神経障害を含む)、角膜ジストロフィー(
再発性角膜ジストロフィーを含む)、上皮基底膜ジストロフィー、角膜びらん若しくは角
膜擦過傷(再発性角膜びらん若しくは角膜擦過傷を含む)、眼表面疾患、眼瞼炎、移植片
対宿主病、マイボーム腺炎、緑内障、結膜弛緩症、角膜症(疱疹性角膜症、糸状角膜症、
帯状若しく水疱性角膜症、兎眼性角膜症を含む)、角膜炎(単純ヘルペスウイルス角膜炎
を含む)、虹彩炎、上強膜炎、角膜手術、多発性硬化症、睫毛乱生症、翼状片、神経痛、
眼球乾燥症又は神経栄養性角膜炎から回復している患者の1つ以上に罹患している。
【0039】
眼充血を低減するための本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態は、追加の治療剤
を対象に投与することをさらに含む。
【0040】
本発明の特定の好ましい実施形態は、特定の好ましい実施形態の下記のより詳細な説明
及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】視覚的アナログスケール(VAS)経時的疼痛アセスメントのモデル推定平均(+/-SE)を示す(一次PD解析セット)。
【
図2】経口レスキュー投薬使用発生率のヒストグラムを示す(経口レスキュー投薬を使用しなかった患者数)(二次PD解析セット)。期間の各々に対して、右のバーは、化合物Iが投与された対象を表し、一方、左のバーは、媒体が投与された対象を表す。経口レスキュー投薬(ORM)を使用しなかった患者のパーセントは、y軸に提示される。n/Nは、各治療での患者の数/合計数を表す。
【
図3A】
図3:質問4、5及び6に対する経時的眼性疼痛アセスメント調査(OPAS)の算術平均(+/-SD)を提供する(二次PD解析セット)。
図3Aは、質問4:最大疼痛時の24時間眼性疼痛(疼痛レベル)の結果を提供し、
図3Bは、質問5:最小疼痛時の24時間眼性疼痛(疼痛レベル)の結果を提供し、且つ
図3Cは、平均の24時間眼性疼痛(疼痛レベル)の質問6の結果を提供する。
図3A、3B及び3Cの各々に対して、「×」を有する破線は媒体を表し、且つ丸(o)を有する実線は化合物Iを表す。
【
図4A】
図4:質問22、23、24及び25に対する経時的眼性疼痛アセスメント調査(OPAS)の算術平均(+/-SD)を提供する(二次PD解析セット)。
図4Aは、質問22:発赤を伴う眼性疼痛の頻度(%)の結果を提供する。
図4Bは、質問23:灼熱感を伴う眼性疼痛の頻度(%)の結果を提供する。
図4Cは、質問24:知覚を伴う眼性疼痛の頻度(%)の結果を提供する。
図4Dは、質問25:流涙を伴う眼性疼痛の頻度(%)の結果を提供する。
図4A、4B、4C及び4Dの各々に対して、「x」を有する破線は媒体を表し、且つ丸(o)を有する実線は化合物Iを表す。
【
図5A】
図5:
図5Aは、1日目の2.5%化合物Iの局所眼投与後の化合物Iの算術平均(SD)血漿中濃度を提供する(PK解析セット)。
図5Bは、4日目の2.5%化合物Iの局所眼投与後の化合物Iの算術平均(SD)血漿中濃度を提供する(PK解析セット)。
【
図6A】
図6:
図6Aは、化合物Iに対する経時的眼充血のバーチャートを提供し、
図6Bは、媒体に対する経時的眼充血のバーチャートを提供する。四分円は、S:上側、N:鼻側、I:下側及びT:耳側である。
【
図7】経時的上皮欠損サイズの算術平均(+/-SD)を提供する(安全性解析セット)パラメーター(単位):上皮創傷サイズ(mm)、サブカテゴリー:面積(mm2)。「×」を有する破線は媒体を表し、且つ丸(o)を有する実線は化合物Iを表す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
「TRPV1受容体」は、分子クローニング及び薬理によって特徴付けられてきた一過
性受容体電位バニロイド1を指す。例えば、Caterina MJ,et al.,N
ature 1997;389:816-824を参照されたい。TRPV1受容体活性
は、全体が参照により本明細書によって援用される国際公開第2005/120510号
パンフレットにおいて記載されるとおりに測定される。
【0043】
語「有効量」の本明細書に記載される化合物は、哺乳動物内でその所期の機能を果たす
のに必要又は十分な治療用化合物の量を指す。治療用化合物の有効量は、哺乳動物におい
て既に存在する原因物質の量、年齢、性別及び哺乳動物の体重並びに哺乳動物における眼
表面障害及び/又はその症状を治療するための本開示の治療用化合物の能力などの要因に
従って変動し得る。
【0044】
語句「眼科的に適合する」は、合理的なベネフィット/リスク比に対応して、過剰な毒
性、刺激、アレルギー反応又は他の問題若しくは合併症を伴わずにヒト及び動物の眼組織
との接触における使用に好適である製剤、ポリマー並びに他の物質及び/又は剤形を指す
。
【0045】
本明細書で使用する場合、ある疾患又は障害に関係する用語「治療する」、「治療する
こと」又は「治療」は、いくつかの実施形態において、疾患又は障害を改善すること(す
なわち、疾患又はその臨床症状の少なくとも1つの発達を遅らせるか又は阻止するか又は
低減すること)を指す。別の実施形態では、「治療する」、「治療すること」又は「治療
」は、患者により識別可能でない可能性のあるものを含む少なくとも1つの身体的パラメ
ーターを軽減又は改善することを指す。さらに別の実施形態では、「治療する」、「治療
すること」又は「治療」は、物理的に(例えば、識別可能な症状の安定化)、生理学的に
(例えば、身体的パラメーターの安定化)のいずれか又は両方で疾患又は障害を調節する
ことを指す。さらに別の実施形態では、「治療する」、「治療すること」又は「治療」は
、疾患若しくは障害又はその症状の発症又は発達又は進行を予防するか又は遅らせること
を指す。
【0046】
本明細書で使用する場合、用語「対象」又は「患者」は、ヒト並びに霊長類、ウサギ、
ブタ、ウマ、イヌ、ネコ、ヒツジ及び雌ウシを含むがこれらに限定されない非ヒト哺乳動
物を指す。特定の実施形態では、対象又は患者はヒトである。いくつかの実施形態では、
用語「患者」又は「対象」は、本明細書に記載される病態(すなわち、疾患又は障害)に
かかっており且つ治療から恩恵を被るであろうヒトを指す。本明細書で使用する場合、対
象は、そのような対象(患者)が、そのような治療から生物学的に、医学的に又は生活の
質において恩恵を被る場合、治療「を必要とする」。特定の実施形態では、対象は、少な
くとも約18歳の成体のヒトである。特定の実施形態では、対象は、約18~約75歳の
成体のヒトである。いくつかの実施形態では、対象は、約18歳以下のヒトの子供である
。
【0047】
本明細書で使用する場合、「眼表面」は、解剖学的に角膜(上皮、ボーマン層、角膜実
質、デスメ膜、内皮を有する)、結膜、結膜嚢及び角膜縁、すなわち、縁を含む眼の外表
面を指す。
【0048】
本明細書で用いられる場合、眼投与は、角膜、結膜、盲管、角強膜接合部すなわち角膜
縁などの眼表面の全ての部分を含めて眼の全ての部分への投与を含む。
【0049】
本明細書で使用する場合、「疼痛」は、限定はされないが、刺すような、鈍い、鋭い又
はうずきとして説明される常時又は断続的な実際の痛みの感覚を指す。疼痛は、限定はさ
れないが、灼熱感、刺痛、ざらつき、異物感、乾き、砂っぽい、疲労した、痒い、ちくち
くする、光に対する過敏性などの同様の関連する記述語も指す。
【0050】
本明細書で使用する場合、「眼表面疼痛」は、眼の表面、例えば、角膜の疼痛を指す。
眼性疼痛は、一般に、角膜手術、炎症又は角膜表面に対する他の損傷などの外部の物理的
又は化学的損傷刺激によって引き起こされる侵害受容性の疼痛であり得る。眼性疼痛は、
侵害性刺激の存在にもかかわらず中枢神経系及び脳に送られている疼痛のメッセージをも
たらす、身体のニューロンに対する直接的な損傷に起因して生じ得る神経因性疼痛から引
き起こされる場合もある。本明細書で使用する場合、「眼表面疼痛」は、侵害受容性疼痛
及び神経因性疼痛の両方を含む。
【0051】
本明細書で使用する場合、用語「視覚的アナログスケール」(VAS)は、対象が通常
、疼痛のレベルとともに整列させるスケールに対して位置をマークする疼痛強度の尺度で
ある。疼痛は、「疼痛なし」(0のスコア)及び「最悪の疼痛」又は「想像できる最悪の
疼痛」(100のスコア)の範囲においてマークされる。例えば、Hawker,et
al.,Arthritis Care & Research 63(11),pp.
S240-S252(November 2011)を参照されたい。疼痛の程度を評価
するのを助けるために使用され得るいくつかの他のよく設計された疼痛スケールがある。
対象が疼痛を等級付けするために数を使用する数値評価スケール(NRS)が使用される
ことが多い。数値スケールは、1~10又は1~100であり得る。Wong-Bake
r FACES疼痛スケールは、疼痛の等級付けのために絵及び数字を組み合わせる。そ
れは、3歳を超える子供及び成人において使用され得る。6つの顔は、良好から非常に不
調の範囲の異なる表情を表す。各々が、0(ほほえんでいる)~10(泣いている)の間
の数値的な等級付けに割り当てられる。言葉による疼痛強度スケールは、疼痛強度を等級
付けするためのスケールにおいて言葉による表現を使用する:疼痛なし/軽度の疼痛/中
等度の疼痛/重度の疼痛 非常に重度の疼痛/これ以上ない疼痛。
【0052】
眼の感覚スケールは、眼部の疼痛の重症度を測定するために開発された特殊な疼痛スケ
ールである。Caudle L.E.et al.,Optom Vis Sci.20
07 Aug;84(8):752-62を参照されたい。このスケールでは、疼痛、不
快又は光過敏性は通常、「極度」、「重度」、「中等度」、「軽度」又は「なし」の5つ
のカテゴリーラベルによって測定される。
【0053】
眼性疼痛評価調査(OPAS)は、角膜及び眼表面疼痛並びに生活の質(QoL)の変
化の評価のために特別に設計された定量的であり多次元の質問票である。OPASは、疼
痛強度、眼痛及び非眼痛の頻度、QoL変化、重大化する要因、関連要因及び徴候の緩和
を定量的に評価して、治療応答のモニタリングを可能にする。Qazi et al.,
Ophthalmology July 123(7):1458-1468(2016
)を参照されたい。
【0054】
本明細書で使用する場合、用語「視覚的仕事の質問票」は、眼性疼痛を悪化させ得る固
定的又は長時間の凝視を必要とするある種の作業を実行するのにどの程度の困難を有する
かを主観的に等級付けするために対象に尋ねる質問票を指す。この質問票は、視覚的仕事
の作業中に経験する困難と関連したコーピング機構についても尋ねる。
【0055】
本明細書で使用する場合、眼充血は、眼表面の発赤を指す。眼充血は、炎症及び/又は
眼刺激に関する臨床マーカーであり得る。眼充血は、標準的な写真に基づいて0~5の値
で、マクモニーズスケールを用いて測定され得る。
【0056】
本明細書で使用する場合、「プラセボ」は、投与される薬物を含まない薬物組成物の全
ての構成要素を含む点眼用製剤を指す。
【0057】
本明細書で使用する場合、用語「約」は、指定の値の値+10%の範囲を指す。
【0058】
本明細書で用いられる場合、医薬組成物とは、医薬使用に好適な組成物のことである。
医薬使用に好適な組成物は、無菌、均一及び/又は等張であり得る。医薬組成物は、特定
の実施形態では、水性形態で、例えばプレ充填シリンジ又は他の単回若しくは複数回用量
容器で調製され得る。本発明の特定の実施形態では、医薬組成物は、眼科的に適合可能で
あり、且つヒト対象への眼投与、例えば局所送達法又は他の公知の送達法による眼投与に
好適である。
【0059】
本明細書で使用する場合、「式Iの化合物」、「化合物I(Compound I)」
、「式I」及び「化合物I(compound I)」は、互換的に使用され、下記に示
される構造の名称4-(7-ヒドロキシ-2-イソプロピル-4-オキソ-4H-キナゾ
リン-3-イル)-ベンゾニトリルを有する化合物を意味し、且つ当業者に知られ且つ両
方の全体が参照により本明細書によって援用されるChenらの国際公開第2005/1
20510号パンフレット及び米国特許第8,349,852号明細書(「Quinaz
olinone derivatives useful as vanilloid
antagonists」)において記載される手順を用いて合成され得る。
【化7】
【0060】
追加的又は代替的に、化合物Iの各種結晶形及び多形体形が使用され得る。
【0061】
いくつかの実施形態では、化合物Iは、米国特許第8,349,852号明細書(参照
により本明細書に組み込まれる)に記載の多型体形Bである。いくつかの実施形態では、
多形体Bは、9.3、10.6及び14.4±0.2o2θから選択される2θ値に3つ
以上のピークを有するX線回折パターンにより特徴付けられる。いくつかの実施形態では
、多形体Bは、9.3、10.6、14.4、15.5、17.9、19.9、23.4
±0.2o2θから選択される2θ値に3つ以上のピークを有するX線回折パターンによ
り特徴付けられる。
【0062】
本明細書で与えられる任意の化学式は、化合物の非標識形態及び同位体標識形態を表す
ことも意図される。同位体標識化合物は、1つ以上の原子が、選択された原子質量又は質
量数を有する原子によって置き換えられることを除いて本明細書に与えられる式によって
示される構造を有する。本開示の化合物に組み込まれ得る同位体としては、例えば、3H
、11C、13C、14C及び15Nなどの水素、炭素、窒素及び酸素の同位体が挙げら
れる。したがって、本発明の方法は、例えば、3H及び14Cなどの放射性同位体又は2
H及び13Cなどの非放射性同位体が存在するものを含む前述の同位体のいずれかの1つ
以上を組み込む化合物を含むことができるか又は含み得ることを理解すべきである。この
ような同位体標識化合物は、代謝試験(14Cによる)、反応速度試験(例えば、2H又
は3Hによる)、薬物若しくは基質の組織分布アッセイを含むポジトロン放出断層撮影(
PET)若しくは単光子放射型コンピューター断層撮影(SPECT)などの検出若しく
はイメージング技術又は患者の放射性治療において有用である。同位体標識化合物は通常
、例えば、以前に利用された非標識試薬の代わりに適切な同位体標識試薬を使用して、当
業者に知られる従来の手法によって調製され得る。
【0063】
本発明は、本明細書で提供される本発明に従って有用な化合物の全ての薬学的に許容さ
れる塩を含む実施形態を包含する。本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される塩」
は、開示された化合物の誘導体を指し、親化合物は、存在している酸又は塩基部分をその
塩形態に変換することによって修飾される。薬学的に許容される塩の例としては、アミン
などの塩基性残基の鉱酸塩又は有機酸塩;カルボン酸などの酸性残基のアルカリ塩又は有
機塩などが挙げられるが、これらに限定されない。薬学的に許容される塩としては、形成
された親化合物の、例えば、非毒性無機酸又は有機酸に由来する通常の非毒性塩が挙げら
れる。薬学的に許容される塩は、従来の化学的方法により、塩基性又は酸性部分を含有す
る親化合物から合成され得る。通常、そのような塩は、これらの化合物の遊離酸又は塩基
形態と、水若しくは有機溶媒又はその2つの混合物(通常、エーテル、酢酸エチル、エタ
ノール、イソプロパノール又はアセトニトリルのような非水性媒体が好ましい)中の化学
量論的な量の適切な塩基又は酸とを反応させることによって調製され得る。好適な塩のリ
ストは、各々が全体として参照により本明細書に援用されるRemington’s P
harmaceutical Sciences,17th ed.,Mack Pub
lishing Company,Easton,Pa.,1985,p.1418及び
Journal of Pharmaceutical Science,66,2(1
977)において見出される。例えば、好ましい薬学的に許容される塩としては、アミン
などの塩基性残基の鉱酸塩又は有機酸塩が挙げられるがこれらに限定されない。例えば、
塩は、塩酸塩であり得る。好適な塩の他の例は、内容が全体として本明細書により援用さ
れる米国特許第8,349,852号明細書において見出すことができる。
【0064】
本明細書において使用される場合の語句「薬学的に許容される」は、適切な医学的判断
の範囲内で、合理的なベネフィット/リスク比に対応して、過剰な毒性、刺激、アレルギ
ー反応又は他の問題若しくは合併症を伴わずにヒト及び動物の組織との接触における使用
に好適であるそれらの化合物、物質、組成物及び/又は剤形を指す。
【0065】
化合物(I)又はその薬学的に許容可能な塩は、送達のために各種製剤に組み込まれ得
る。例えば、局所製剤は、使用可能であるとともに、眼科的に適合可能な溶液剤及び懸濁
液剤を形成するように眼科的に許容可能な保存剤、界面活性剤、粘度増強剤、緩衝剤、塩
化ナトリウム及び水を含み得る。
【0066】
式Iの化合物は、通常、約0.1%~約5.0%w/vの量でこれらの製剤に含有され
るであろう。いくつかの実施形態では、局所投与のための化合物Iの濃度は、約0.5%
~約1.5%w/v、約0.5%~約2.5%w/v、約0.5%~約3.5%w/v、
約0.5%~約3.0%w/v、約1.0%~約2.5%w/v、約1.5%~約3.0
%w/v、約0.5%~約2.5%w/vの範囲内である。いくつかの実施形態では、局
所使用のための製剤中の式Iの化合物の濃度は、少なくとも約0.5%w/v、少なくと
も約1.0%w/v、少なくとも約1.5%w/v、少なくとも約2.0%w/v又は少
なくとも約2.5%w/vである。いくつかの実施形態では、局所使用のための製剤中の
式Iの化合物の濃度は、約5.0%w/v以下、約4.5%w/v以下、約4.0%w/
v以下、約3.5%w/v以下又は約3.0%w/v以下である。特定実施形態では、局
所使用のための製剤中の式Iの化合物の濃度は、約0.5%w/v、約1.0%w/v、
約1.5%w/v、約2.0%w/v、約2.5%w/v、約3.0%w/v又は約3.
5%w/vである。等価濃度は、様々な単位で表現可能であると通常理解されている。例
えば、0.1%w/vの濃度は、1mg/ml溶液としても表現可能である。mg/ml
の単位において表す場合、いくつかの実施形態では、式Iの化合物は、約5mg/ml~
約35mg/ml、約5mg/ml~約25mg/ml又は約5mg/ml~約15mg
/ml、約5mg/ml~約30mg/ml、約10mg/ml~約25mg/ml、約
15mg/ml~約30mg/ml又は約5mg/ml~約25mg/mlの濃度で対象
に投与される。いくつかの実施形態では、局所的な使用のための製剤中の式Iの化合物の
濃度は、少なくとも約5mg/ml、少なくとも約10mg/ml、少なくとも約15m
g/ml、少なくとも約20mg/ml又は少なくとも約25mg/mlである。いくつ
かの実施形態では、局所的な使用のための製剤中の式Iの化合物の濃度は、約50mg/
ml以下、約45mg/ml以下、約40mg/ml以下、約35mg/ml以下又は約
30mg/ml以下である。特定の実施形態では、式Iの化合物は、約5mg/ml、約
10mg/ml、約15mg/ml、約20mg/ml、約25mg/ml、約30mg
/ml又は約35mg/mlの濃度で投与される。
【0067】
いくつかの実施形態では、製剤は、熟練臨床医のルーチン自由裁量に依存して眼の表面
に1日1~6回送達される。いくつかの実施形態では、製剤は、1日1回、2回、3回又
は4回投与される。
【0068】
特に明記されていない限り、式Iの化合物に対して本明細書で参照される重量又は投与
量は、その塩やプロドラッグではなく化合物それ自体の重量又は投与量であり、意図され
る治療効果を達成するために様々であり得る。例えば、本明細書に開示される方法、組成
物又は組み合わせに好適な化合物の対応する塩の重量又は投与量は、塩及び化合物それ自
体の分子量の比に基づいて計算され得る。
【0069】
化合物(I)及び/又はその薬学的に許容可能な塩は、眼への送達のために眼科的に適
合可能な製剤に組み込まれ得る。化合物は、水性無菌眼科用懸濁液剤又は溶液剤を形成す
るために、眼科的に許容可能な保存剤、界面活性剤、粘度増強剤、浸透増強剤、緩衝剤、
塩化ナトリウム及び水と組み合わされ得る。
【0070】
本発明の医薬組成物は、化合物(I)のほかに追加の治療剤を含み得る。さらなる治療
剤は、例えば、眼表面障害の治療に有用な他の化合物及び抗体を含み得る。かかる作用剤
の非限定的リストには、ケトロラク、ネパフェナク、ブロムフェナク、コルチコステロイ
ドなどの非ステロイド系抗炎症薬剤、シクロスポリン、リフィテグラスト、自己血清、他
のTRPV1阻害剤などのドライアイ疾患用薬剤が含まれる。特定実施形態では、追加の
治療剤は、デキサメタゾン、フルオシノロン、ロテプレドノール、ジフルプレドナート、
フルオロメトロン、プレドニゾロン、プレドニゾン、メドリゾン、トリアムシノロン、ベ
タメタゾン、リメキソロン、それらの薬学的に許容可能な塩などの眼科用ステロイドであ
る。医薬組成物に含まれ得るかかる追加の治療剤のさらなる非限定的例としては、Xii
dra(登録商標)(リフィテグラスト)、Restasis(登録商標)(シクロスポ
リン)、ミノサイクリン、ドキシサイクリン又は他のテトラサイクリン抗生物質が挙げら
れる。他の例としては、二硫化セレン、サリチル酸、グリコール酸など、それらの薬学的
に許容可能な塩などの角質溶解剤が挙げられる。
【0071】
理論に束縛されることなく、一過性受容体電位バニロイド1(TRPV1)の遮断薬は
、疼痛、例えば、慢性疼痛の治療に有用であり得ると仮定される。
【0072】
したがって、いくつかの実施形態では、本発明は、眼表面疼痛の治療を、それを必要と
する対象において行う方法を提供し、前記方法は、有効量の化合物(I)又はその薬学的
に許容される塩、溶媒和物若しくは共結晶を対象に投与することを含む。いくつかの実施
形態では、本発明は、必要とする対象における眼表面疼痛を低減する方法を提供し、前記
方法は、有効量の化合物(I)又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは共結晶
を対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、本発明は、眼表面疼痛の治療又
は低減における式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは共結晶の
使用を提供する。いくつかの実施形態では、式Iの化合物は、多形形態Bである。
【0073】
いくつかの実施形態では、眼表面疼痛は、エピソード性すなわち急性である。
【0074】
いくつかの実施形態では、対象は、偶発性又は急性の眼性疼痛に罹患している。いくつ
かの実施形態では、対象は、少なくとも3ヶ月間続く慢性眼表面疼痛に罹患している。い
くつかの実施形態では、対象は、少なくとも2ヶ月間続く慢性眼表面疼痛に罹患している
。いくつかの実施形態では、対象は、少なくとも1ヶ月間続く慢性眼表面疼痛に罹患して
いる。いくつかの実施形態では、対象は、少なくとも4ヶ月間続く慢性眼表面疼痛に罹患
している。いくつかの実施形態では、対象は、少なくとも5ヶ月間続く慢性眼表面疼痛に
罹患している。したがって、いくつかの実施形態では、本発明は、有効量の式Iの化合物
又はその塩、溶媒和物、多形体若しくは共結晶を対象に投与することによって対象におけ
る慢性眼表面疼痛を治療する方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、有効
量の式Iの化合物又はその塩、溶媒和物、多形体若しくは共結晶を対象に投与することに
よって対象における慢性眼表面疼痛を低減する方法を提供する。本発明は、慢性眼表面疼
痛の治療における式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、多形体若しく
は共結晶の使用を提供する。
【0075】
いくつかの実施形態では、投与は、対象の眼表面、例えば、眼の角膜、結膜又は結膜嚢
のいずれかの部分に対するものである。
【0076】
いくつかの実施形態では、本発明は、約0.5%w/v~約3.5%w/vの濃度で眼
科的に適合する製剤における必要とする対象に対する式Iの化合物の投与を提供する。い
くつかの実施形態では、投与のための濃度は、約0.5%w/v~約3.5%w/v、約
0.5%w/v~約2.5%w/v、約0.5%w/v~約1.5%w/v、約0.5%
w/v~約3.0%w/v、約1.0%w/v~約2.5%w/v、約1.5%w/v~
約3.0%w/v、約0.5%w/v~約2.5%w/vの範囲である。特定の実施形態
では、局所的な使用のための製剤中の式Iの化合物の濃度は、約0.5%w/v、約1.
0%w/v、約1.5%w/v、約2.0%w/v、約2.5%w/v、約3.0%w/
v又は約3.5%w/vである。いくつかの実施形態では、式Iの化合物は、約5mg/
ml~約35mg/ml、約5mg/ml~約25mg/ml又は約5mg/ml~約1
5mg/ml、約5mg/ml~約30mg/ml、約10mg/ml~約25mg/m
l、約15mg/ml~約30mg/ml又は約5mg/ml~約25mg/mlの濃度
で対象に投与される。特定実施形態では、式Iの化合物は、約5mg/ml、約10mg
/ml、約15mg/ml、約20mg/ml、25mg/ml、約30mg/ml又は
約35mg/mlの濃度で投与される。いくつかの実施形態では、眼当たりの投与当たり
の用量は、約0.15~約1.15mg又は約0.15mg、0.2mg、約0.25m
g、約0.3mg、約0.35mg、約0.4mg、約0.45mg、約0.5mg、約
0.55mg、約0.6mg、約0.65mg、約0.7mg、約0.75mg、約0.
8mg、約0.85mg、約0.9mg、約0.95mg、約1.0mg、約1.05m
g、約1.1mg又は約1.15mgである。いくつかの実施形態では、眼当たりの投与
当たりの用量は、約0.18mg、約0.37mg、約0.55mg、約0.74mg又
は約0.92mgである。いくつかの実施形態では、眼当たりの1日の総用量は、約0.
5~約3.5mg又は約0.5mg、約1.0mg、約1.5mg、約2.0mg、約2
.5mg、約3.0mg又は約3.5mgである。いくつかの実施形態では、式Iの化合
物は、1日1~6回、例えば、1日1、2、3又は4回対象に投与される。いくつかの実
施形態では、式Iの化合物は、少なくとも約1ヶ月、少なくとも約2ヶ月又は少なくとも
約3ヶ月の期間対象に投与される。いくつかの実施形態では、式Iの化合物は、少なくと
も約12週間対象に投与される。
【0077】
いくつかの実施形態では、眼表面疼痛又は慢性眼表面疼痛は、ドライアイ疾患、シェー
グレン症候群、結膜炎(角結膜炎、春季角結膜炎、アレルギー性結膜炎を含む)、角膜上
皮基底膜ジストロフィー、アカントアメーバ、線維筋痛症、マイボーム腺機能不全、甲状
腺眼症、酒さ、下垂症、円錐角膜、眼性疼痛症候群、スティーヴンス・ジョンソン症候群
、角膜上皮症、角膜神経障害(LASIK誘導性角膜神経障害を含む)、角膜ジストロフ
ィー(再発性角膜ジストロフィーを含む)、上皮基底膜ジストロフィー、角膜びらん若し
くは角膜擦過傷(再発性角膜びらん若しくは角膜擦過傷を含む)、眼表面疾患、眼瞼炎、
移植片対宿主病、マイボーム腺炎、緑内障、結膜弛緩症、角膜症(疱疹性角膜症、糸状角
膜症、帯状若しくは水疱性角膜症、兎眼性角膜症を含む)、角膜炎(単純ヘルペスウイル
ス角膜炎を含む)、虹彩炎、上強膜炎、角膜手術、多発性硬化症、睫毛乱生症、翼状片、
神経痛、眼球乾燥症又は神経栄養性角膜炎から回復している患者の1つ以上を伴う。
【0078】
特定実施形態では、眼表面疼痛又は慢性眼表面疼痛は、ドライアイ疾患又はシェーグレ
ン症候群に伴う。本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、対象は、レーザー屈
折矯正角膜切除(PRK)手術後又はレーザー角膜切削形成(LASIK)手術後の少な
くとも3ヶ月間持続している眼性疼痛に罹患している。
【0079】
いくつかの実施形態では、対象は、結膜炎、結膜下出血、結膜下瘢痕、結膜の膜、結膜
潰瘍、点状表層上皮びらん、上皮欠損、眼瞼縁潰瘍、眼瞼縁角化、瞼球癒着、眼瞼癒着、
睫毛乱生症、前部眼瞼炎、涙点自己閉塞、マイボーム腺疾患、角膜不透明化、ドライアイ
、睫毛重生、角膜縁幹細胞不全症又は角膜血管新生に罹患している。
【0080】
いくつかの実施形態では、式Iの化合物の投与は、プラセボと比較して、対象の眼性疼
痛の低減をもたらす。いくつかの実施形態では、対象の眼性疼痛の低減は、VASスコア
上で測定されるとき、プラセボと比較して少なくとも約3である。いくつかの実施形態で
は、投与は、VASスコア上で測定されるとき、プラセボと比較して、少なくとも約4、
少なくとも約5、少なくとも約6、少なくとも約7、少なくとも約8、少なくとも約9又
は少なくとも約10の対象の眼性疼痛の低減をもたらす。いくつかの実施形態では、投与
は、プラセボと比較して、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20
%又は少なくとも約25%の対象の疼痛の低減をもたらす。いくつかの実施形態では、投
与は、式Iの化合物の投与の7日後に測定されたとき、対象の疼痛の低減をもたらす。い
くつかの実施形態では、投与は、式Iの化合物の投与の14日後に測定されたとき、対象
の疼痛の低減をもたらす。
【0081】
いくつかの実施形態では、式Iの化合物の投与は、投与から約半時間後、投与から約1
時間後、約2時間後又は約2~4時間後、VASスコアにより測定される際、プラセボと
比較して、少なくとも約2の対象の疼痛の低減をもたらす。
【0082】
いくつかの実施形態では、疼痛スコアの低減は、化合物Iの対象への投与前及び後の疼
痛スコアの差から生じる。いくつかの実施形態では、VASによって測定される際の疼痛
スコアの低減は、化合物Iの対象への投与前及び後の疼痛スコアの差から生じる。いくつ
かの実施形態では、疼痛スコアの低減は、化合物Iの対象への投与後約30分以内に生じ
る。いくつかの実施形態では、疼痛スコアの低減は、化合物Iの対象への投与後約1時間
、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間又は約6時間以内に生じる。他の実施形態で
は、疼痛スコアの低減は、対象への化合物Iの投与の約7日後に起こる。いくつかの実施
形態では、疼痛スコアの低減は、対象への化合物Iの投与の約14日後に起こる。
【0083】
いくつかの実施形態では、式Iの化合物の投与は、プラセボと比較して低減された眼充
血(眼の発赤)をもたらす。特定実施形態では、式Iの化合物の投与は、プラセボと比較
して低減されたグレード1、グレード2、グレード3又はグレード4の充血をもたらす。
いくつかの実施形態では、投与は、マクモニーズスケールで少なくとも約1、少なくとも
約2、少なくとも約3、少なくとも約4又は少なくとも約5の眼充血スコアの低減をもた
らす。
【0084】
いくつかの実施形態では、式Iの化合物の投与は、OPASの少なくとも1つの質問に
対して少なくとも約10%、少なくとも約20%又は少なくとも約30%のスコアの改善
をもたらす。
【0085】
いくつかの実施形態では、式Iの化合物の投与は、視覚的仕事の質問票の少なくとも1
つの質問に対して少なくとも約10%、少なくとも約20%又は少なくとも約30%のス
コアの改善をもたらす。
【0086】
そのため、いくつかの実施形態では、本発明は、眼充血の治療を、それを必要とする対
象において行う方法であって、有効量の式Iの化合物又はその塩、溶媒和物、多形体若し
くは共結晶を対象に投与することを含む方法に関する。いくつかの実施形態では、本発明
は、眼充血の低減を、それを必要とする対象において行う方法であって、有効量の式Iの
化合物又はその塩、溶媒和物、多形体若しくは共結晶を対象に投与することを含む方法に
関する。いくつかの実施形態では、化合物Iの投与は、マクモニーズスケールで少なくと
も1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4又は少なくとも5の眼充血の低減をも
たらす。いくつかの実施形態では、本発明は、眼充血の治療における、式Iの化合物又は
その薬学的に許容可能な塩、溶媒和物若しくは共結晶の使用を提供する。いくつかの実施
形態では、本発明は、約0.5%w/v~約3.5%w/vの濃度で眼科的に適合する製
剤における必要とする対象に対する式Iの化合物の投与を提供する。いくつかの実施形態
では、投与のための濃度は、約0.5%w/v~約3.5%w/v、約0.5%w/v~
約2.5%w/v、約0.5%w/v~約1.5%w/v、約0.5%w/v~約3.0
%w/v、約1.0%w/v~約2.5%w/v、約1.5%w/v~約3.0%w/v
、約0.5%w/v~約2.5%w/vの範囲である。特定の実施形態では、局所的な使
用のための製剤中の式Iの化合物の濃度は、約0.5%w/v、約1.0%w/v、約1
.5%w/v、約2.0%w/v、約2.5%w/v、約3.0%w/v又は約3.5%
w/vである。パーセント値は、mg/ml単位で表され得ることが理解される。いくつ
かの実施形態では、眼当たりの投与当たりの用量は、約0.15~約1.15mg又は約
0.15mg、0.2mg、約0.25mg、0.3mg、約0.35mg、約0.4m
g、約0.45mg、約0.5mg、約0.55mg、約0.6mg、約0.65mg、
約0.7mg、約0.75mg、約0.8mg、約0.85mg、約0.9mg、約0.
95mg、約1.0mg、約1.05mg、約1.1mg又は約1.15mgである。い
くつかの実施形態では、眼当たりの投与当たりの用量は、約0.18mg、約0.37m
g、約0.55mg、約0.74mg又は約0.92mgである。いくつかの実施形態で
は、眼当たりの1日の総用量は、約0.5~約3.5mg又は約0.5mg、約1.0m
g、約1.5mg、約2.0mg、約2.5mg、約3.0mg又は約3.5mgである
。いくつかの実施形態では、式Iの化合物は、1日1~6回、例えば、1日1、2、3又
は4回対象に投与される。いくつかの実施形態では、式Iの化合物は、少なくとも約1ヶ
月、少なくとも約2ヶ月又は少なくとも約3ヶ月の期間対象に投与される。
【0087】
いくつかの実施形態では、眼充血は、ドライアイ疾患、シェーグレン症候群、結膜炎(
角結膜炎、春季角結膜炎、アレルギー性結膜炎を含む)、角膜上皮基底膜ジストロフィー
、アカントアメーバ、線維筋痛症、マイボーム腺機能不全、甲状腺眼症、酒さ、下垂症、
円錐角膜、眼性疼痛症候群、スティーヴンス・ジョンソン症候群、角膜上皮症、角膜神経
障害(LASIK誘導性角膜神経障害を含む)、角膜ジストロフィー(再発性角膜ジスト
ロフィーを含む)、上皮基底膜ジストロフィー、角膜びらん若しくは角膜擦過傷(再発性
角膜びらん若しくは角膜擦過傷を含む)、眼表面疾患、眼瞼炎、移植片対宿主病、マイボ
ーム腺炎、緑内障、結膜弛緩症、角膜症(疱疹性角膜症、糸状角膜症、帯状若しくは水疱
性角膜症、兎眼性角膜症を含む)、角膜炎(単純ヘルペスウイルス角膜炎を含む)、虹彩
炎、上強膜炎、角膜手術、多発性硬化症、睫毛乱生症、翼状片、神経痛、眼球乾燥症又は
神経栄養性角膜炎から回復している患者の1つ以上を伴う。特定の実施形態では、眼充血
は、ドライアイ疾患に伴うものである。本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態
では、眼充血は、レーザー屈折矯正角膜切除(PRK)手術又はレーザー角膜切削形成(
LASIK)手術後に少なくとも3ヶ月間にわたって持続する。
【0088】
いくつかの実施形態では、眼表面疼痛又は慢性眼表面疼痛は、ドライアイ疾患に伴うも
のである。いくつかの実施形態では、式Iの化合物の投与は、ドライアイ疾患の症状の減
少をもたらす。ドライアイ疾患は一般に、眼表面及び涙腺の炎症並びに涙の質及び/又は
量の低減によって特徴付けられる複雑であり多因子性の病態であると理解される。ドライ
アイ疾患患者の最大で30%が、慢性であり得る、すなわち少なくとも12週間又は3ヶ
月間持続する眼表面疼痛に罹患していると考えられる。したがって、いくつかの実施形態
では、本発明は、眼の乾燥、眼の不快感、眼充血、眼の灼熱感若しくは刺痛、ざらつき若
しくは異物感又は羞明の1つ以上を含むドライアイ疾患の症状の少なくとも約10%、少
なくとも約15%、少なくとも約20%又は少なくとも約30%の減少をもたらす。
【0089】
いくつかの実施形態では、本発明は、必要とする対象におけるドライアイ疾患を治療す
る方法であって、有効量の式Iの化合物又はその塩、溶媒和物、多形体若しくは共結晶を
対象に投与することを含む方法に関する。いくつかの実施形態では、本発明は、必要とす
る対象におけるドライアイ疾患を治療する方法であって、有効量の式Iの化合物又はその
塩、溶媒和物、多形体若しくは共結晶を対象に投与することを含む方法に関し、式Iの化
合物は、少なくとも2ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも4ヶ月又は少なくとも5ヶ月
間にわたる投与について安全である。特定の実施形態では、本発明は、ドライアイ疾患の
治療における式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは共結晶の使
用を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、眼の乾燥、眼の不快感、眼充血、眼
の灼熱感若しくは刺痛、ざらつき若しくは異物感又は羞明の1つ以上を含むドライアイ疾
患の症状の少なくとも約10%の減少をもたらす。いくつかの実施形態では、本発明は、
約0.5%w/v~約3.5%w/vの濃度で眼科的に適合する製剤における必要とする
対象に対する式Iの化合物の投与を提供する。いくつかの実施形態では、投与のための濃
度は、約0.5%w/v~約3.5%w/v、約0.5%w/v~約2.5%w/v、約
0.5%w/v~約1.5%w/v、約0.5%w/v~約3.0%w/v、約1.0%
w/v~約2.5%w/v、約1.5%w/v~約3.0%w/v、約0.5%w/v~
約2.5%w/vの範囲である。特定の実施形態では、局所的な使用のための製剤中の式
Iの化合物の濃度は、約0.5%w/v、約1.0%w/v、約1.5%w/v、約2.
0%w/v、約2.5%w/v、約3.0%w/v又は約3.5%w/vである。いくつ
かの実施形態では、眼当たりの投与当たりの用量は、約0.15~約1.15mg又は約
0.15mg、0.2mg、約0.25mg、0.3mg、約0.35mg、約0.4m
g、約0.45mg、約0.5mg、約0.55mg、約0.6mg、約0.65mg、
約0.7mg、約0.75mg、約0.8mg、約0.85mg、約0.9mg、約0.
95mg、約1.0mg、約1.05mg、約1.1mg又は約1.15mgである。い
くつかの実施形態では、眼当たりの投与当たりの用量は、約0.18mg、約0.37m
g、約0.55mg、約0.74mg又は約0.92mgである。いくつかの実施形態で
は、眼当たりの1日の総用量は、約0.5~約3.5mg又は約0.5mg、約1.0m
g、約1.5mg、約2.0mg、約2.5mg、約3.0mg又は約3.5mgである
。いくつかの実施形態では、式Iの化合物は、1日1~6回、例えば、1日1、2、3又
は4回対象に投与される。いくつかの実施形態では、式Iの化合物は、少なくとも約1ヶ
月、少なくとも約2ヶ月又は少なくとも約3ヶ月の期間対象に投与される。
【0090】
本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態では、式Iの化合物の投与は、プラセ
ボと比較して、最高矯正視力、細隙灯生体顕微鏡検査、散瞳検査、まばたき速度、涙液産
生、眼内圧の1つ以上において変化をもたらさない(例えば、5%未満の差、4%未満の
差又は3%未満の差)。本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態では、式Iの化
合物の投与は、必要とする患者において、プラセボと比較して、創傷治癒における遅延を
引き起こさない。
【0091】
患者集団
特定の実施形態では、本明細書に記載される方法によって治療されることになる対象は
、眼表面障害に罹患している。眼表面障害の非限定的な例としては、慢性眼表面疼痛(C
OSP)、ドライアイ疾患、シェーグレン症候群、結膜炎(角結膜炎、春季角結膜炎、ア
レルギー性結膜炎を含む)、角膜上皮基底膜ジストロフィー、アカントアメーバ、線維筋
痛症、マイボーム腺機能不全、甲状腺眼症、酒さ、下垂症、円錐角膜、眼性疼痛症候群、
スティーヴンス・ジョンソン症候群、角膜上皮症、角膜神経障害(LASIK誘導性角膜
神経障害を含む)、角膜ジストロフィー(再発性角膜ジストロフィーを含む)、上皮基底
膜ジストロフィー、角膜びらん若しくは角膜擦過傷(再発性角膜びらん若しくは角膜擦過
傷を含む)、眼表面疾患、眼瞼炎、移植片対宿主病、マイボーム腺炎、緑内障、結膜弛緩
症、角膜症(疱疹性角膜症、糸状角膜症、帯状若しくは水疱性角膜症、兎眼性角膜症を含
む)、角膜炎(単純ヘルペスウイルス角膜炎を含む)、虹彩炎、上強膜炎、角膜手術、多
発性硬化症、睫毛乱生症、翼状片、神経痛、眼球乾燥症又は神経栄養性角膜炎から回復し
ている患者が挙げられる。いくつかの実施形態では、対象は、レーザー屈折矯正角膜切除
(PRK)手術又はレーザー角膜切削形成(LASIK)手術後に少なくとも3ヶ月間に
わたって持続している眼性疼痛に罹患している。
【0092】
特定の実施形態では、本明細書で提供される方法は、急性眼表面疼痛などの眼表面疼痛
を治療するか又は低減するためのものである。
【0093】
特定の実施形態では、本明細書で提供される方法は、慢性眼表面疼痛(COSP)など
の眼表面疼痛を治療するか又は低減するためのものである。特定の態様では、COSPは
、通常の日常動作から気を散らす場合があるか又はそれに支障をきたす場合がある持続的
な眼表面疼痛(例えば、持続的な重度の眼表面疼痛)として特徴付けられる。特定の実施
形態では、COSPは不十分な生活の質をもたらす場合があり、且つ少なくとも1ヶ月、
少なくとも2ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも4ヶ月、少なくとも5ヶ月又は少なく
とも6ヶ月間持続し得る。いくつかの態様では、COSPは、少なくとも約2ヶ月又は少
なくとも約3ヶ月間持続し得る。他の態様では、COSPは、少なくとも3ヶ月又は少な
くとも4ヶ月間持続し得る。特定の態様では、COSPを有する対象は、それらの根底に
ある疾患(例えば、ドライアイ疾患又はシェーグレン症候群などの眼表面障害)について
必要が示された他の療法に対して適合しているにもかかわらず症状が残っている。
【0094】
いくつかの実施形態では、治療されることになる対象は、眼性神経因性疼痛(ONP)
に罹患している。ONPは、神経、例えば、角膜神経を冒す障害又は疾患に起因し得る眼
性疼痛の一連の障害である。ONPの症状は、眼痛、光に対する過敏性、痛覚過敏又は乾
燥、刺痛又は異物の感覚などの異常感覚(知覚異常)、通常では痛みを起こさない刺激に
よって生じる痛み(アロディニア)の1つ異常を含み得る。ガバペンチン及び他の神経因
性疼痛薬物は、感覚神経刺激又は神経刺激の知覚を鈍らせるために使用され得る。
【0095】
いくつかの実施形態では、治療されることになる対象は、兎眼性角膜症に罹患している
。EKは、主に外部環境への眼表面の長時間の暴露から生じる角膜に対する損傷である。
EKは、潰瘍、微生物性角膜炎、瘢痕からの永久的な視力喪失をもたらす場合がある。E
Kのリスクがある患者としては、不完全な眼瞼の閉鎖(例えば、兎眼症、眼球突出、目蓋
の位置異常)、不十分な瞬目反射、不十分なまばたき速度(例えば、神経疾患、例えば、
パーキンソン病、神経筋疾患によって引き起こされる)及び/又は角膜の保護的な潤滑の
減少のいずれかによる、角膜を保護する能力に支障をきたす病態に罹患している患者が挙
げられる。EKの症状としては、異物感、灼熱感、流涙の増加及び間欠的な霧視(不安定
な涙膜に起因する)、疼痛及び羞明が挙げられる。標準治療は、夜間の潤滑軟膏剤による
頻繁な人工涙液、涙点プラグの使用が挙げられる。
【0096】
いくつかの実施形態では、治療されることになる対象は、角結膜炎に罹患している。角
結膜炎は、結膜及び角膜の両方を含む炎症プロセスである。角膜の表層の炎症(角膜炎)
は一般に、例えば、成人において、ウイルス性及び細菌性結膜炎と関連して発生する。角
結膜炎の以下の種類は、炎症の潜在的原因に基づいて区別される。
・乾性角結膜炎は、乾燥に起因する炎症による原因である;
・春季角結膜炎(VKC)は、季節によって生じ、アレルゲンによるものと考えられる;
・アトピー性角結膜炎は、アトピーの1つの症状である;
・流行性角結膜炎又はアデノウイルス性角結膜炎は、アデノウイルス感染によって引き起
こされる;
・ウシ伝染性角結膜炎(IBK)は、細菌のモラクセラ・ボビス(Moraxella
bovis)によって引き起こされるウシを冒す疾患である;
・ヒツジ及びヤギにおけるピンクアイは主に、クラミドフィラ・ペコルム(Chlamy
dophila pecorum)によって引き起こされる;
・上輪部角結膜炎は、器質的外傷により引き起こされると考えられる;
・角結膜炎電気性眼炎(アークアイ)は、光電性UV光によって引き起こされる炎症を意
味する。
【0097】
いくつかの実施形態では、治療されることになる対象は、ドライアイに罹患している。
本明細書で使用する場合、用語「ドライアイ」は、不十分な涙液産生及び/又は異常な涙
液組成を指す。ドライアイ症候群、乾性角結膜炎若しくは乾性角膜炎、又は涙液機能不全
症候群、又は眼灼熱症候群としても知られるドライアイ症候群疾患(DEDS)は、涙膜
層のいずれかの欠損に起因する。ドライアイは、涙膜の恒常性の消失によって特徴付けら
れ、且つ眼の症状を伴う眼表面に対する潜在的な損傷による不快感、視覚障害、涙膜不安
定性の症状をもたらす涙及び眼表面の多因子性疾患であり、ここで、涙膜不安定性及び高
浸透圧性、眼表面の炎症及び損傷並びに神経感覚異常は、病因となる役割を果たしている
(Craig JP,et al.,The Ocular Surface 2017
;15:276-83)。それは、涙膜のモル浸透圧濃度の上昇及び眼表面の炎症を伴う
場合がある。ドライアイ障害は、軽度から中等度、重度までの形態に及ぶこともある。ド
ライアイ症候群疾患の症状としては、ざらつき、異物感、灼熱感、羞明及び視力の低下、
流涙、刺痛、かゆみ、砂っぽさ又はざらつき感、眼脂、頻繁なまばたき、睫毛の膿又は固
化(通常、起床時により悪化する)、発赤、霧視又は振動視(読書、コンピューター、テ
レビを見る、運転又はテレビゲームをするときにより悪化する)、光過敏性、眼痛及び/
又は頭痛、眼瞼の重み、眼精疲労が挙げられる。ドライアイ疾患の原因としては、次のも
のが挙げられるが、これらに限定されない:原因不明、先天性無涙液症、眼球乾燥症、涙
腺切除及び感覚神経支配除去;関節リウマチ、ウェゲナー肉芽腫症及び全身性エリテマト
ーデスを含む膠原病性脈管疾患;シェーグレン症候群及びシェーグレン症候群に伴う自己
免疫疾患;眼瞼炎又は酒さによって引き起こされる脂質涙液層の異常;ビタミンA欠乏に
よって引き起こされるムチン涙液層の異常;トラコーマ、ジフテリア性角結膜炎;皮膚粘
膜障害;加齢;閉経;及び糖尿病。本明細書で定義されるとおりのドライアイの徴候及び
/又は症状は、次のものを含むが、これらに限定されない他の状況によって誘発される場
合もある:長時間の視覚的仕事;コンピューターによる仕事;乾燥環境にいること;温風
若しくは冷風又は空気流;季節変化;眼への刺激;コンタクトレンズ、LASIK及び他
の屈折矯正手術;疲労;及びイソトレチノイン、鎮静薬、利尿剤、三環系抗うつ薬、降圧
薬、経口避妊薬、抗ヒスタミン薬、鼻腔うっ血除去薬、β遮断薬、フェノチアジン、アト
ロピン及びモルヒネなどの鎮痛オピエートなどの薬物。
【0098】
ドライアイのための診断検査としては、例えば、綿棒又はより厳密にはCochet-
Bonnet知覚計を用いる角膜感覚機能の評価(角膜感覚過敏及び/又は感覚の低下は
、重度及び慢性ドライアイ疾患において存在する場合がある);例えば、保存剤を含まな
い生理食塩水溶液により湿らせたフルオレセイン浸透性細片又はフルオレセイン滴下の必
要性がないより客観的なコンピューターによる方法を用いる涙液層破壊時間の測定;例え
ば、フルオレセインナトリウム、ローズベンガル、リサミングリーンによる眼表面の染色
の実施;シルマー試験の実施(軽度のドライアイを有する患者については相対的に非感受
性);涙液クリアランスの遅延の検査;涙液メニスカスの高さ;MMP-9のレベルの測
定(MMP-9は、ドライアイ疾患を有する患者の涙液において上昇することが示されて
おり、レベルは中等度から重度のドライアイを有する患者における試験結果と相関する)
;涙液のモル浸透圧濃度及び涙膜のインターフェロメトリーの測定;Sjo試験の実施(
血清中のSS-A(抗Ro)及びSS-B(抗La)抗体、唾液腺タンパク質1(SP-
1)、炭酸脱水酵素6(CA6)及び耳下腺分泌タンパク質(PSP)、SP-1、CA
6及びPSPの検出)を含む。
【0099】
人工涙液、潤滑軟膏剤、コルチコステロイド(例えば、1日4回のロテプレドノール0
.5%点眼薬)は、最初の治療として使用される。処方薬としては、シクロスポリン、リ
フィテグラスト、ジクアホソル、レバメピド、コルチコステロイド(例えば、1日4回の
ロテプレドノール0.5%点眼薬)が挙げられる。
【0100】
用語「涙膜機能障害」は、涙膜が角膜及び結膜上の異なる場所において破れているとき
の状態を指し、刺激の症状だけでなく、視覚の不安定且つ間欠的な変動を引き起こす。例
えば、ドライアイ症候群疾患は、涙膜機能障害によって特徴付けられる。涙膜機能障害の
症状としては、流涙、灼熱感、刺痛、かゆみ、砂っぽさ又はざらつき感、ちくちくする又
は異物感、眼脂、頻繁なまばたき、睫毛の膿又は固化(通常、起床時により悪化する)、
発赤、霧視又は振動視(読書、コンピューター、テレビを見る、運転又はテレビゲームを
するときにより悪化する)、光過敏性、眼痛及び/又は頭痛、眼瞼の重み、眼精疲労が挙
げられる。
【0101】
流行性角結膜炎としても知られるアデノウイルス性角結膜炎は、一般的な高度に伝染性
の眼のウイルス感染症である。アデノウイルス性角結膜炎の臨床経過は、角膜の関与を伴
うか又は伴わない様々な強度の結膜炎症を有する急性期及び角膜の混濁を伴う慢性期に分
けられる。
【0102】
春季角結膜炎(VKC)は、重度のかゆみ、羞明、異物感、粘液性の眼脂(「粘着性」
と記載される場合が多い)、眼瞼痙攣及び霧視からなる症状によって特徴付けられる眼の
外表面のアトピー性病態である(Buckley,R.J.,Int Ophthalm
ol Clin,1988 28(4):p.303-8;Kumar,S.,Acta
Ophthalmologica,2009.87(2):p.133-147)。こ
れは通常両側性であるが、実際に非対称である場合がある。これは、季節的な様式で高温
乾燥気候において若年の男性を特徴的に冒し;患者の23%が、四季を通じて続く形態を
有し得る(Kumar,S.,Acta Ophthalmologica,2009.
87(2):p.133-147;Bonini,S.,et al.,Ophthal
mology,2000.107(6):p.1157-63)。
【0103】
VKCの徴候は、結膜、角膜縁及び角膜の徴候に分けることができる:
・結膜の徴候としては、びまん性結膜充血及び直径が1mmを超えて離散している上瞼板
巨大乳頭が挙げられる;
・角膜縁の徴候としては、角膜縁結膜の肥厚及び不透明化並びにゼラチン質の出現及び時
々起こる集密的な角膜縁乳頭が挙げられる。周囲の角膜縁のホルネル-トランタス点は、
変質した上皮細胞及び好酸球からなる局所的な角膜縁の白点である(Buckley,R
.J.,Int Ophthalmol Clin,1988 28(4):p.303
-8);
・角膜の徴候は、疾患プロセスの重症度に応じて変動し、巨大なびらん、角膜潰瘍及び瘢
痕を含む(Buckley,R.J.,Int Ophthalmol Clin,19
88 28(4):p.303-8)。
【0104】
進行中のVKC患者(羞明、上瞼板結膜上の乳頭又は試験時に明瞭に認識できる角膜縁
のホルネル-トランタス点を含む中等度から重度の眼の不快感として定義される)は、眼
表面疾患の症状及び徴候の著しい増加を示した。不活性なVKC患者(症状がないか又は
軽度の不快感及び試験時に角膜の異常がないものとして定義される)は、羞明、結膜のリ
サミングリーン染色及びシルマー試験値の増大並びにフルオレセインによる破壊時間(B
UT)及び角膜感受性の減少を示した。この症候群は、涙膜安定性、上皮細胞の統合性及
び角膜神経の機能における異常を判定すると、全ての時期(進行中及び静止状態)におい
て眼表面を冒しているように見える(Villani E.et al.,Medici
ne(Baltimore).2015 Oct;94(42):e1648)。
【0105】
次の要因がVKCに役割を果たすと考えられる:IgEがマスト細胞放出;活性化好酸
球、単核細胞及び好中球並びにIL-4、IL-5及びbFGFなどの免疫調節物質によ
るCD4 T-ヘルパー-2駆動型IVの過感受性を介して反応を媒介する(Buckl
ey,R.J.,Int Ophthalmol Clin,1988 28(4):p
.303-8;Kumar,S.,Acta Ophthalmologica,200
9.87(2):p.133-147;La Rosa,M.,et al.,Ital
J Pediatr,2013.39:p.18)。
【0106】
治療は冷湿布及び目蓋の洗浄からなり、生理食塩水の点眼薬は、局所抗ヒスタミン薬、
非ステロイド系抗炎症薬又はコルチコステロイド、例えば、低吸収コルチコステロイド(
フルオロメトロン、ロテプレドノール、リメキソロンなど)、局所マスト細胞安定剤(ク
ロモリンナトリウム、ネドクロミルナトリウム及びロドキサミド)、局所シクロスポリン
-A又はタクロリムスを伴って、症状を軽減するのを助け得る。例えば、Oray,M.
and E.Toker,Cornea,2013.32(8):p.1149-54;
Vichyanond,P.and P.Kosrirukvongs,Curr Al
lergy Asthma Rep,2013.13(3):p.308-14;Bar
ot,RK et al.,J Clin Diagn Res.2016 Jun;1
0(6):NC05-9;Wan Q et al.,Ophthalmic Res.
2018;59(3):126-134を参照されたい。
【0107】
アトピー性角結膜炎(AKC)は通常、VKCによる10歳前の発症に対して、20~
50歳高い発症年齢を有する。結膜での併発は、古典的にはVKCにおいて上瞼板及びA
KCにおいて下瞼板で起こる。AKCは通常、事実上より慢性であり、より一般的には角
膜の瘢痕及び結膜の瘢痕形成を引き起こす。
【0108】
シェーグレン症候群(ドライアイを伴うシェーグレン症候群)は、多くの場合重度のド
ライアイを引き起こす唾液腺及び涙腺を含む外分泌腺の機能障害によって特徴付けられる
慢性の炎症性障害である。主要な症状はドライアイ(乾性角膜炎又は乾性角結膜炎)及び
口渇症(口内乾燥)である。重度のドライアイは、角膜疼痛、角膜瘢痕、潰瘍、感染、さ
らには穿孔を引き起こし得る。鑑別診断は、成人性の眼瞼炎、ドライアイ疾患及び若年性
の原因不明の関節炎、ぶどう膜炎、加えて角膜症、例えば、点状表層角膜症、繊維状角膜
症、神経障害性角膜症、兎眼性角膜症などの病態を含む。シェーグレン症候群の治療は、
不十分な涙液分泌の保存、増強及び/又は補充により涙膜の統合性を維持することに向け
られる。したがって、シェーグレン症候群の治療としては、人工涙液及び潤滑軟膏剤;自
己血清点眼薬;経口オメガ-6必須脂肪酸;流体が通過し、気体透過性の強膜レンズ;局
所コルチコステロイド;涙液排出を減少させるための涙点閉鎖;小規模な側方の瞼板縫合
術;環境の加湿;親水性バンデージレンズ;ブロムヘキシン及び3-イソブチル-1-メ
チルキサンチン(IBMX)(涙液産生/分泌の増強);ムスカリン受容体を刺激する薬
剤(ピロカルピン及びセビメリン);免疫抑制剤、例えば、メトトレキセート、抗マラリ
ア薬、シクロホスファミド、レフルノミド又は腫瘍壊死因子(TNF)、例えば、インフ
リキシマブ、TNF-アルファに対するモノクローナル抗体;シクロスポリンA;バンデ
ージコンタクトレンズが挙げられる。
【0109】
スティーヴンス・ジョンソン症候群(SJS)は、皮膚の緊急事態又は全体表面積の1
0%未満を含む上皮及び粘膜の水疱性病変の存在によって特徴付けられる1つのタイプの
重度の皮膚反応である。SJSの初期症状は、熱及びインフルエンザ様症状を含み、これ
は、体躯及び顔を含む斑状皮疹の発症に先行するか又は同時に発生し得る。疾患が進行す
るにつれて、斑状皮疹が集まり、巻き込まれた領域が水疱に発達し、最終的に上皮層が脱
落する。SJS-TENの急性期の間、患者の80%が、眼の合併症を有することになる
。
【0110】
高熱(>102.2)、倦怠感、関節痛、体躯、首及び顔を含む斑状皮疹並びに新規薬
物への暴露の最近の履歴又は現在の薬物療法の最近の投与量増加のコンステレーションが
、SJSの診断のために使用される指標である。生じた領域の皮膚生検が、診断の確認の
ために実施され得る。グラニュライシンは、SJSの診断のためのマーカーとして使用さ
れ得る。水疱液内のグラニュライシンの濃度は、急性期のSJSの重症度と相関する(C
hung WH,et al.Nat Med.2008;14(12):1343-5
0)。
【0111】
SJSにおける眼の症状としては、結膜炎、結膜下出血、結膜下瘢痕、結膜の膜、結膜
潰瘍、点状表層上皮びらん、上皮欠損、眼瞼縁潰瘍、眼瞼縁角化、瞼球癒着、眼瞼癒着、
睫毛乱生症、前部眼瞼炎、涙点自己閉塞、マイボーム腺疾患、角膜不透明化、ドライアイ
、睫毛重生、角膜縁幹細胞不全症、角膜血管新生が挙げられる。SJSにおける眼の治療
は、生理食塩水点眼薬、保存剤を含まない人工涙液並びに十分な潤滑をもたらし且つ上皮
損傷を低減する軟膏剤からなる。任意の角膜又は結膜上皮欠損を有する患者は、予防的な
局所抗生物質、好ましくは第四世代フルオロキノロンにより治療される。軽度又は中等度
の眼の合併症(3分の1未満の眼瞼縁合併症、最大直径が1cm未満の結膜欠損及び角膜
上皮欠損なし)を有する患者は通常、1日4回の局所モキシフロキサシン0.5%、1日
2回のシクロスポリン0.05%及び局所ステロイド(1日4~8回のプレドニゾロン酢
酸塩1%又は1日2回のデキサメタゾン0.1%)により治療される。重度又は極めて重
度の眼の合併症(3分の1を超える眼瞼縁合併症、1cmを超える結膜欠損及び角膜上皮
欠損)を有する患者は、上記の治療に加えて羊膜(AM)移植を受ける。
【0112】
いくつかの実施形態では、治療されることになる対象は、角膜上皮症に罹患している。
角膜上皮症は、例えば、角膜上皮バリア機能の変化において顕在化する角膜上皮が関与す
る疾患である。
【0113】
いくつかの実施形態では、治療されることになる対象は、角膜神経障害又は角膜神経痛
に罹患している。角膜神経障害又は角膜神経痛は、角膜における神経線維、感覚線維の損
傷によって引き起こされる角膜疼痛を伴う障害である。角膜神経障害の例の1つは、LA
SIK誘導性角膜神経障害である。角膜神経障害は一般に、ドライアイの検査によって同
定及び診断され得る。原因及びリスク因子はまだ明らかではないが、ドライアイ様症状、
角膜感受性の増大及び角膜神経形態の変化を有するが、乾燥の徴候のない患者は、角膜神
経障害に罹患し得る。
【0114】
いくつかの実施形態では、治療されることになる対象は、眼表面疾患又は障害に罹患し
ている。用語「眼表面疾患」又は「眼表面障害」は、異常な目蓋の解剖学的形態又は機能
、異常な又は変化した涙液産生又は組成及び関連する無症候性徴候を含む様々な異常に起
因する疾病並びに関連症状を包含する。多くの疾患が、眼表面障害を引き起こし得る。眼
表面障害を有する患者は、いくつかの疾患に共通な臨床徴候を呈する場合があり、且つ慢
性点状角膜症、糸状角膜症、再発性角膜びらん、細菌性結膜炎、培養陰性結膜炎、瘢痕形
成(瘢痕)結膜炎、遷延性上皮欠損、伝染性角膜炎、角膜融解及び眼表面不全を含み得る
。最も一般的な眼表面障害は、涙膜異常及び/又は目蓋にある腺の機能障害(「眼瞼炎」
)に由来する。
【0115】
いくつかの実施形態では、治療されることになる対象は、神経栄養性角膜炎又は神経栄
養性角膜症に罹患している。神経栄養性角膜炎又は神経栄養性角膜症(NK)は、角膜感
受性の低下又は欠如によって特徴付けられる角膜変性疾患である。NKにおいて、三叉神
経による角膜神経支配が損なわれる。角膜感覚神経支配がNKにおいて損なわれるため、
患者は通例、眼表面の症状を訴えない。しかしながら、霧視は、不規則な上皮又は上皮欠
損(PED)、瘢痕又は浮腫に起因して報告され得る。NKは通常、「Mackie分類
」によって3種の異なるステージに段階分けされる。ステージIIのNKは、最も一般的
には角膜の上半分における再発性又は遷延性上皮欠損によって定義される。ステージII
のNKにおいて使用され得る治療の1つは、局所神経成長因子を含む。患者は通常、神経
の再形成のために、NGFによる治療の間疼痛を経験する。
【0116】
いくつかの実施形態では、治療されることになる対象は、眼瞼炎に罹患している。眼瞼
炎は、眼瞼周縁部の炎症性病態であり、眼瞼周縁部における持続性の変質又は表層角膜症
による視力喪失、角膜血管新生及び潰瘍を引き起こす場合がある。解剖学上の位置に従っ
て、眼瞼炎は、前部及び後部に分けられ得る。前部眼瞼炎は、眼瞼皮膚、睫毛の基部及び
睫毛濾胞を冒し、且つブドウ球菌性及び脂漏性眼瞼炎の従来の分類を含む。後部眼瞼炎は
、マイボーム腺及び腺開口部を冒し、主要な原因はマイボーム腺機能不全である。慢性眼
瞼炎の症状は、発赤、灼熱感、刺激、流涙、眼瞼痂皮及び固着及び羞明及び霧視などの視
覚的な問題を含み得る。長期間の症状管理は、毎日の眼瞼洗浄ルーチン及び感染及び炎症
を低減する治療剤の使用を含み得る。治療としては、局所性又は全身性の抗生物質、例え
ば、バシトラシン又はエリスロマイシン;経口抗生物質、例えば、テトラサイクリン系抗
生物質(テトラサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン)又はマクロライド系抗
生物質(エリスロマイシン、アジスロマイシン);局所ステロイド、例えば、コルチコス
テロイド、例えば、エタボン酸ロテプレドノール、フルオロメトロン;トブラマイシン/
デキサメタゾン又はトブラマイシン/ロテプレドノールなどの抗生物質とコルチコステロ
イドの局所的組合せ;局所シクロスポリン0.05%が挙げられる。
【0117】
いくつかの実施形態では、治療されることになる対象は、マイボーム腺機能不全に罹患
している。マイボーム腺は、眼の涙膜の蒸発を防ぐ油状物質であるマイバムの供給に関与
する、瞼板内部の眼瞼の周辺部にある全分泌型の外分泌腺である。マイボーム腺炎、後部
眼瞼炎又はマイボーム腺の炎症としても知られるマイボーム腺機能不全(MGD)は、一
般に末端の管閉塞及び/又は腺分泌における質的/量的変化によって特徴付けられるマイ
ボーム腺の慢性のびまん性の異常である(Nelson JD,et al.,Inve
st Ophthalmol Vis Sci 2011;52:1930-7)。それ
は、涙膜の変質、眼刺激、臨床的に明らかな炎症及び眼表面疾患を引き起こし得る。MG
Dはドライアイを引き起こす場合が多く、且つ眼瞼炎の一因となり得る。いくつかの場合
、局所ステロイド及び局所/経口抗生物質も炎症を低減するために処方される。インテン
ス・パルス・ライト(IPL)治療又は腺を発現させるために熱及び圧力をかける他の機
械的治療(例えば、LipiFlow)は、炎症を低減し、且つ患者における腺機能を改
善することも示されてきた。
【0118】
いくつかの実施形態では、治療されることになる対象は、移植片対宿主病に罹患してい
る。移植片対宿主病(GVHD)は、同種移植に独特である炎症性疾患である。これは、
たとえドナーとレシピエントが同一のHLAであっても発生し得るレシピエントの組織に
対する移植された白血球による攻撃である。急性移植片対宿主病は通常、移植後最初の3
ヶ月に発生し、皮膚、腸管又は肝臓を巻き込む場合がある。プレドニゾンなどのコルチコ
ステロイドが標準治療である。慢性移植片対宿主病も同種移植後に発生する場合があり、
遅発型合併症の主要な原因である。炎症に加えて、慢性移植片対宿主病は、強皮症又は他
の自己免疫疾患と同様に線維症又は瘢痕組織の発生を引き起こす場合があり、且つ機能的
能力障害及び長期の免疫抑制療法の必要性をもたらす場合がある。
【0119】
いくつかの実施形態では、治療されることになる対象は、眼性移植片対宿主病に罹患し
ている。GVHDは、同種間の血液幹細胞移植を経た患者において発生する。これは、急
性又は慢性GVHDを有する患者において発生する可能性があるが、慢性形態を有する患
者においてより一般的である。慢性GVHDを有する患者のおよそ40~90%が、眼の
症状を発症することになる。眼の症状は、中等度から重度の乾性角結膜炎、両側周辺部角
膜炎、前部ぶどう膜炎、角膜潰瘍又は血管新生を含み得る。治療としては、保存剤を含ま
ない人工涙液を含む局所潤滑剤、自己血清涙液及び他の局所及び全身免疫抑制治療;全身
性ステロイド;局所シクロスポリン0.5%が挙げられる。
【実施例0120】
以下の実施例は、本発明の非限定的な実施形態を示すために含まれる。
【0121】
実施例1. 安全性及び薬動学のアセスメントのための化合物Iのヒト初回投与試験
この実施例では、健常志願者で行われた化合物Iのヒト初回投与試験を記載する。合計
54名の対象に試験投薬を施した。ヒト初回投与試験のパート1では、0.15%、1.
5%、2.5%w/v(1滴)の単回漸増用量の化合物Iを点眼剤で投与した。
【0122】
化合物Iのパート2では、(i)7日間にわたり0.15%、1.5%、2.5%の1
滴を1日4回(6時間ごとに)、又は(ii)7日間にわたり2.5%の1滴を1日8回
(3時間ごとに)(治療用量超)点眼剤として投与する複数回漸増用量(MAD)で試験
した。
【0123】
パート3は、化合物Iの知覚麻痺性を評価する知覚測定アセスメントであった。試験の
パート3は、化合物I、媒体、テトラカイン(0.5%眼科用溶液、陽性対照として使用
)及びジクロフェナクナトリウム(0.1%眼科用溶液、活性NSAIDコンパレーター
として使用)を用いる4つのアームを有していた。眼知覚麻痺剤は、その確立された知覚
麻痺効果が理由で選択されたが、それは、創傷治癒に及ぼすその悪影響に起因して標準ケ
アではない。NSAIDは、PRK後の角膜痛に対する現在の標準ケアであり、最小限の
知覚麻痺性であるが有意な疼痛管理性を有する。潜在的知覚麻痺効果のより良好な決定を
可能にするために、媒体点眼剤を陰性対照として使用した。適格性基準を満たした12名
の健常対象は、各々4つの異なる試験日(1、4、7及び10日目)の1日に単回点眼の
4つの試験治療を受けるようにランダム化された。各対象は、下記の4つのシーケンスの
1つに記載の試験治療を受けるようにランダム化された。
・シーケンス1:知覚麻痺剤、NSAID、化合物I2.5%、媒体
・シーケンス2:NSAID、媒体、知覚麻痺剤、化合物I2.5%
・シーケンス3:媒体、化合物I2.5%、NSAID、知覚麻痺剤
・シーケンス4:化合物I2.5%、知覚麻痺剤、媒体、NSAID
【0124】
安全性アセスメント:安全性アセスメントでは、全身及び眼有害イベントを含めて全て
の有害イベント(AE)、重篤有害イベント(SAE)を、それらの重症度及び試験薬剤
との関係と共に収集することからなっていた。全身安全性アセスメントは、試験センター
で実施された血液学、血液化学及び尿検査の定期的モニタリングと、身体検査、生命徴候
(収縮期及び拡張期血圧、脈拍数並びに体温)、ECG、妊娠及び不妊アセスメント並び
にMADパート時の49℃手浸漬試験の定期的アセスメントとを含んでいた。眼安全性ア
セスメントは、早期治療糖尿病性レチノパチー試験(ETDRS)視力、眼内圧、細隙灯
生体顕微鏡検査、角膜染色及び拡張眼底検査を含んでいた。
【0125】
対象は、下記の選択及び除外基準に基づいて選択された。
【0126】
選択基準:
・いずれのアセスメントも実施前に書面によるインフォームドコンセントが得られた。
・スクリーニング時に既往歴、身体検査、生命徴候、ECG及び検査室試験により決定
したときに健康状態の良い18~50歳(両端を含む)の健常な男性及び女性対象。
・スクリーニング時及びベースライン時、対象が少なくとも3分間着座した後且つ立位
で再び3分間した後、生命徴候(収縮期及び拡張期血圧(BP)並びに脈拍数)を座位で
評価した。座位生命徴候は、下記範囲の正常範囲内にあることが必要とされた。
・口腔体温35.0~37.5℃
・収縮期血圧90~150mmHg(SBP)
・拡張期血圧50~90mmHg(DBP)
・脈拍数40~100bpm
・対象は、試験に参加するために少なくとも50kgの体重を有するとともに18~2
9kg/m2の範囲内の体重指数(BMI)を有することが必要とされた。BMI=体重
(kg)/[身長(m)]2
・試験の要件を理解し遵守するのに十分な程度に研究者とコミュニケーションを図るこ
とが可能であった対象。
・パート3では、眼知覚の対象ベースラインレベルは、コシェ・ボネ知覚計により測定
されたときに50~60mm(両端を含む)の範囲内であるべきであった。
【0127】
除外基準:
・試験治療の施行時に有効な避妊方法を使用していない限り、生理学的に妊娠可能な全
ての女性として定義される出産可能性のある女性。
・研究者の意見として及び治験薬概要書の内容に基づいて、試験品の安全な投与又はこ
の試験への安全な参加を妨げるおそれのあるいずれかの医学的病態(全身又は眼)を呈し
た対象。
・パート3(知覚測定):試験時にコンタクトレンズを使用していたか又は過去3年間
に使用していた対象は、コンタクトレンズ使用による角膜知覚の変動性を最小限に抑える
ために除外された。
・スクリーニング前の過去6ヶ月以内のいずれかの眼手術又はレーザーの病歴。屈折異
常、初発白内障、斜視弱視又は不同視弱視以外のいずれかの慢性眼疾患の病歴。スクリー
ニングから過去6ヶ月以内の急性眼疾患(例えば、感染、角膜擦過傷又はアレルギー)の
病歴を有する対象は、疾患が活動性でなければ適格であった。
・局所点眼剤を使用する必要があったいずれかの現在活動性の眼病態。
・持続気道陽圧デバイス又は他の睡眠時無呼吸デバイスを使用している対象。
【0128】
ヒト初回投与試験からの安全性結果
パート1、2及び3からの結果に基づいて、最大耐容用量(MTD)は、7日間にわた
り1日8回で2.5%の最大実現可能濃度として同定された。用量制限有害イベントは、
この用量レベルでは同定されなかった。化合物Iに対して因果関係が推定された有害イベ
ントは全て、2.5%1日4回コホートの1名の患者で治療中止をもたらした中度重症度
の眼刺激以外は軽度重症度であった。化合物I治療患者で最も頻度の高い眼有害イベント
は、プラセボに類似したレベルで角膜染色、充血及び軽度前房炎症であった。SAD試験
からの有害イベントの概要は、表1に示される。
【0129】
【0130】
SAD試験からの有害イベントの概要は、表2に示される。
【0131】
【0132】
手浸漬試験では、治療コホートの対象は全て、0~≦50秒の時間インターバルで49
℃の水から手を引き出した。どの対象も22秒よりも長く続かず、化合物I及び媒体で治
療された対象間に有意な浸漬時間の変化は観測されなかった。したがって、化合物Iは対
象の温度知覚を変化させないことが結果から示唆される。
【0133】
知覚測定試験(パート3)
ヒト初回投与試験では、知覚測定試験、すなわち、角膜触覚閾値が知覚されたときのフ
ィラメント長(cm)の測定により、局所眼用2.5%化合物Iの潜在的知覚麻痺効果を
さらに評価した。
【0134】
テトラカイン0.5%は、おおよそ10分間の作用持続時間で知覚麻痺効果を有するこ
とが結果の解析から示された(陽性対照)。ジクロフェナクを用いた公知の臨床経験に基
づいて予想される通り、ジクロフェナク0.1%及び媒体は両方とも、角膜に対する知覚
麻痺効果を有していなかった。化合物I2.50%は、治療後のいずれの時点でも知覚麻
痺効果を示さなかった。
【0135】
角膜知覚の尺度のために、下記に対する最小二乗平均(試験対参照)を比較しつつ、統
計的及び臨床的有意性を観測した。
・投与後2.5分、10分及び20分でのテトラカイン0.5%(N=12)対媒体(
N=12)、
・投与後2.5分、10分及び20分でのテトラカイン0.5%(N=12)対ジクロ
フェナク0.1%(N=12)、
・投与後2.5分及び10分での化合物I2.5%(N=11)対テトラカイン0.5
%(N=12)
【0136】
化合物I2.5%と媒体との間の角膜知覚の差は、全て0.395以上のp値を有して
投与後30分までの予定時間点で見られなかった。この試験は、テトラカイン0.5%(
陽性対照として知覚麻痺効果を有する薬剤)及び媒体(プラセボ)と比較したとき、2.
5%化合物Iの知覚麻痺効果の欠如を実証した。
【0137】
ヒト初回投与試験からの薬動学的概要
化合物I0.15%、1.5%及び2.5%の単回及び複数回の両方の局所眼用懸濁液
剤の投与後、対象全体にわたり中程度の変動性で体循環への化合物Iの迅速吸収及び低濃
度の暴露が達成されることが、血漿中PKプロファイルから示された。0.15%から2
.5%への用量増加は、全身暴露で用量比例的増加未満をもたらした。定常状態での化合
物Iの蓄積は、0.15%、1.5%又は2.5%懸濁液剤1日4回投与後でわずか(約
1.7倍)であり、2.5%1日8回7日間の後でもわずか(約1.3倍)であった。
【0138】
実施例2. 術後疼痛の治療のための化合物Iの臨床試験
この実施例では、レーザー屈折矯正角膜切除(PRK)手術を受ける患者の術後眼性疼
痛の治療における化合物I(4-(7-ヒドロキシ-2-イソプロピル-4-オキソ-4
H-キナゾリン-3-イル)-ベンゾニトリル)の臨床試験を記載する。
【0139】
【0140】
試験設計
試験は、PRK手術後の患者において標準ケア治療のほかに点眼剤として投与された化
合物Iの概念実証二重盲検ランダム化媒体対照試験であった。PRK手術は、レーザーア
ブレーションで局所麻酔下において角膜上皮を除去して間質を露出させる外来患者手順と
して実施された。化合物I投与は、手術直後(時間0)から72時間の最終投与まで片眼
に1日4回(6時間ごとに)投与された2.5%(25mg/ml、0.925mg/滴
)単回点眼であった。
【0141】
媒体投与は、手術直後(時間0)から72時間の最終投与まで片眼に1日4回(6時間
ごとに)投与された単回滴下であった。
【0142】
試験は、クロスオーバー設計を用いた2つの治療期間からなっていた。患者は、2つの
個別機会(期間)にその都度片眼にPRK手術を受けた。患者は、手順1及び代替的後続
手順2に従って化合物1又は媒体のどちらかを摂取するようにランダム化された。
【0143】
40名の患者は、2つのシーケンス:期間1に化合物I、続いて期間2に媒体又は期間
1に媒体、続いて期間2に化合物Iに1:1の比でランダム化された。各患者は、その試
験眼へのPRK手術後72時間にわたり1日4回1滴投与された(1日目、期間1及び2
)。最初の試験眼は、患者及び研究者の合意の下でスクリーニング時に確定された非優位
眼であった。患者は、第1の眼の手術後の期間1の2、3、4及び8日目にフォローアッ
プ診察に戻り、創傷治癒が完全になるまで患者をフォローするための任意選択的な毎日の
診察を受けた。なんらか合併症が認められた場合、第2の眼手術は実施されなかった。
【0144】
患者は、期間2の1日目にその第2の試験眼(優位眼)へのPRK手術を受けた。PR
K手術は、研究者の自由裁量で第1の眼の上皮欠損が回復された後に実施された。PRK
手術後、患者は、72時間にわたり対向治療を1日4回受けた。患者は、術後の最初の3
日間(期間2、2~4日目)にわたり毎日及び第2の手術後1週間(期間2、8日目)で
戻り、創傷治癒が完全になるまで患者をフォローするための任意選択的な毎日の診察を受
けた。試験終了(EOS)診察は、第2の眼の手術の30日後(又は患者が時期1に早期
に治療を終了したときは治験薬の最終投与後)に行われた。
【0145】
患者は全て、試験の期間1及び2に、PRK手順の後及び疼痛用試験滴剤を受ける前に
バンデージコンタクトレンズ(Air Optix(登録商標)Night and D
ay(登録商標)Aqua又は等価物)の適用を含む標準ケア治療を受けた。試験滴剤の
最初の用量の適用後に局所眼用抗生物質(モキシフロキサシン又は等価物1点眼剤1日4
回)のコースを開始して4~7日間継続した。PRK後1週間にわたり酢酸プレドニゾロ
ン眼用点眼剤1滴1日4回を投与し、続いて漸減させた。必要に応じて保存剤フリー単位
用量人工涙液を使用した。各PRK手順後の試験滴剤の最初の用量は、現場スタッフによ
り投与された。後続用量は自己投与された。シーケンスの点眼剤投与間で5分間のギャッ
プが許容された。まとめると、患者はPRK手順を受け、バンデージレンズが角膜に配置
され、化合物I又は媒体が投与され、おおよそ5分間後に抗生物質が投与され、さらに5
分後にプレドニゾロンが投与された。
【0146】
レスキュー投薬は、必要に応じて合計10錠/日又は4時間ごとに1~2錠までの経口
鎮痛剤(アセトアミノフェン300mg+コデイン30mg)からなっていた。
【0147】
追加の試験治療
患者は全て、PRK手術後に以下のものを含む標準ケア補助治療を受けた。
・バンデージコンタクトレンズ(Air Optix(登録商標)Night and
Day(登録商標)Aqua又は等価物)
・PRK手術の直後及び試験点眼剤の最初の用量の適用後に局所眼用抗生物質(モキシ
フロキサシン又は等価物点眼剤1滴1日4回)のコースを開始し、管理医師に従って4~
7日間継続した。
・酢酸プレドニゾロン眼剤:PRK手術直後及び抗生物質点眼剤の点眼後に点眼剤1滴
1日4回を開始し、PRK後1週間にわたり投与し、続いて局所手順に従って漸減させた
。
・必要に応じて保存剤フリー単位用量人工涙液を使用した。人工涙液は、鎮痛作用のた
めに冷却させなかった。
【0148】
滴剤は、点眼剤投与間に少なくとも5分間のギャップをもたせて逐次的に投与された。
【0149】
選択基準
この試験の選択適格集団は、下記基準の全てを満たさなければならなかった。
・両眼PRK手術に適格な18~75歳の男性及び女性患者。
・ベースライン時に屈折異常以外は正常な眼検査。
・計画された近視矯正は、ベースライン時に顕性屈折により-4.50以下の等価球面
度数が確認され、-4.00ディオプター(球面)及び3.00ディオプター非点収差を
超えないことが必要とされた。モノビジョン治療(例えば、片眼は遠距離及び僚眼は中間
距離の矯正)は許容された。
・いずれのアセスメントも実施前に書面によるインフォームドコンセントが得られた。
【0150】
除外基準
・単眼患者(弱視を含む)又はベースライン時に20/80(スネレン)若しくは55
文字[早期治療糖尿病性レチノパチー試験(EDTRS)]よりもより悪い最高矯正視力
(BCVA)スコア。
・創傷治癒に影響したいずれかの全身若しくは眼疾患(例えば、重篤関節リウマチ若し
くは糖尿病又はケロイド形成病歴)又はベースラインの6ヶ月前の眼外傷、ブドウ膜炎、
感染若しくは炎症の病歴。とりわけ糖尿病に対して:重症糖尿病、コントロール不能糖尿
病、糖尿病性ケラトパチー、糖尿病性レチノパチー、糖尿病性黄斑浮腫、糖尿病性腎症、
糖尿病性足部潰瘍又は糖尿病の他の全身合併症の患者は除外された。糖尿病の眼又は全身
合併症の証拠を有していない軽度コントロール良好糖尿病の患者は採用された。
・活動性の炎症性若しくは感染性眼病態、重篤若しくは進行性網膜疾患及びベースライ
ン前の過去6ヶ月以内に局所若しくは全身ステロイド剤の使用又はクマジン若しくは類似
薬剤の使用の患者。
・いずれかの角膜ジストロフィー(上皮、間質若しくは内皮)又はいずれかの角膜疾患
(有意な瘢痕化(研究者の自由裁量で)、眼ヘルペス若しくは翼状片を含む)を有する患
者。
・既往屈折又は角膜手術(例えば、LASIK、PRK、放射状角膜切開、翼状片除去
、角膜移植)。
・テトラカイン又は類似の局所眼用知覚麻痺剤、NSAID及びアスピリン、経口鎮痛
剤(アセトアミノフェン及びコデインを含む)、抗生物質、ステロイド剤並びにバンデー
ジコンタクトレンズ耐容又は着用不能を含めてこの試験に使用した薬剤に対するアレルギ
ー性若しくは過敏性反応又はいずれかの有意なAEの病歴。
・併用療法、又は長期治療病歴、又は全身若しくは眼NSAID、鎮痛剤、疼痛医薬(
ガバペンチン若しくはプレガバリン及び類似物を含む)、オピエート若しくはカンナビス
の乱用。
・試験眼手術前の2週間以内に潤滑点眼剤以外のいずれかの局所眼医薬を使用した患者
は除外された。下記のいずれかを満たす患者は除外された。
oベースライン前の30日間に局所NSAIDの使用、又は
oベースライン前の30日以内に全身NSAIDの全身/長期使用、又は
oベースライン前の3日以内に全身NSAIDの随時使用、又は
o手術前の3ヶ月間以内に眼シクロスポリン(又は類似の医薬)の使用。
・体重<50kgの患者又は18~35kg/m2の範囲内の体重指数(BMI)を有
していない患者。BMI=体重(kg)/[身長(m)]2
・妊娠女性又は授乳(泌乳)女性。治験薬剤の投与時に基本的避妊方法を使用していな
い限り、生理学的に妊娠可能な全ての女性として定義される出産可能性のある女性。
【0151】
試験集団が全ての適格患者を代表するものであったため、追加の除外は研究者により適
用されなかった。
【0152】
試験集団
試験集団は、18~75歳(両端を含む)のPRK手術に適格な男性及び女性の患者で
構成された。合計40名の患者が計画された。合計44名の患者がスクリーニングされ、
そのうちの40名の患者が試験に登録されてランダム化された。
【0153】
患者選択は、スクリーニング時及びベースライン時に全ての適格性基準の精査に基づい
て確定された。適格性基準の関連記録(例えば、チェックリスト)は、試験現場で原文書
と共に保存された。いずれかのエントリー基準から偏りのある患者は、試験への登録から
除外された。
【0154】
患者デモグラフィックスは表3に提供される。
【0155】
【0156】
治療アーム
患者は、各期間が3日間続く下記の2つの治療シーケンスの1つに1:1の比で割り当
てられた。
【0157】
【0158】
化合物Iは、点眼剤として患者に投与された。滴剤は、PRK手術日に試験現場で試験
員により投与された。毎日のフォローアップ術後診察時、患者が点眼剤投与の予想時間に
現場にいるとき、試験員は点眼剤を投与することが必要とされた。滴剤の残りは、家庭で
患者により又は診察のために患者が試験現場にいるときに(例えば、術後24、48及び
72時間で)投与された。
【0159】
視覚的アナログスケール
患者の主観的疼痛経験は、0~100の数値疼痛アセスメントのVASを用いて記録さ
れた(0は無疼痛を表し、且つ100は最悪の想像可能な疼痛を表す)。PRKの疼痛の
従来の試験では、手術後4~6時間近傍にピークを有して手術後の最初の12時間以内に
最も激しい疼痛を経験することが示されたことから(Sher et al.,Refr
act Corneal Surg.Nov-Dec;9(6):425-36(199
3))、これらを一次エンドポイント解析の時間点に選択した。術直後の期間に患者が経
験する最大疼痛、さらには疼痛全体の両方を減少させることが臨床的に重要であるため、
術後6時間及び12時間までの2つの期間を一次エンドポイントとして評価した。評価可
能なVASデータは全て、適切な時間点で患者が自身の疼痛レベルをマークした電子デバ
イス(ソフトウェアアプリケーションを備えたセルフォン)のePROを用いて収集され
た。
【0160】
レスキュー経口鎮痛剤:臨床試験の一部として術後に患者への疼痛管理投薬を拒絶する
ことは倫理的でない。PRK後の標準ケアに類似して、PRK後の術後疼痛に対してNS
AIDをレスキュー経口鎮痛剤として使用することが、従来の臨床試験の精査から示唆さ
れた。経口レスキュー投薬の使用は、疼痛VAS評価の潜在的交絡因子であり得るため、
疼痛医薬の影響を考慮して疼痛VASスコアを解析するとき、以下の3つのアプローチを
使用した(4時間のレスキュー投薬の影響を仮定して)。(1)レスキュー投薬の使用後
4時間以内のいずれの記録VASスコアも、欠測とみなされ、(2)記録VASスコアは
全て、使用され、且つ(3)レスキュー投薬使用後4時間以内のいずれの記録VASスコ
アも、レスキュー投薬前に得られた記録によりインピュートされた。
【0161】
一次効能結果
術後6時間及び0~12時間の平均VAS疼痛重症度スコアは、それぞれ、表4及び表
5に提示されるとともに
図1に示される。一次解析は、一次PD解析セットを用いて実施
された。
【0162】
術後6時間及び0~12時間にわたる平均VAS疼痛重症度スコアの治療差は、化合物
Iと媒体との間で0.10未満のp値で統計的に有意であった。
【0163】
術後6時間のVAS疼痛重症度スコアのモデルベース平均治療差(化合物I-媒体)は
、-11.1(90%CI:(-17.54、-4.71、p=0.005))、術後0
~12時間では-8.56(90%CI:(-14.29、-2.83、p=0.016
))であった。そのため、試験の一次効能目的は満たされた。
【0164】
術後6時間及び0~12時間にわたる平均VAS疼痛重症度スコアの治療差は、化合物
Iと媒体との間で0.10未満のp値で統計的に有意であった。
【0165】
【0166】
【0167】
二次効能結果
経口レスキュー投薬(ORM)を使用しなかった患者数は、術後0~6時間、0~12
時間及び0~24時間で媒体治療眼と比較して化合物I治療眼でより多かった。術後の3
6時間後では、化合物I対媒体で同数の患者がORMを受けた(表6)。
【0168】
【0169】
経口レスキュー投薬(ORM)使用発生率のヒストグラム(ORMを使用しなかった患
者数)は、
図2に表示される。
【0170】
ORM量の概要及び解析(丸剤/患者の数)は、表7に提示される。
【0171】
【0172】
表7及び
図2に見られるように、試験期間の時間インターバルごとに、化合物I対媒体
治療でORMの低下が見られた。
【0173】
ORM量(mg/kg体重)の概要及び解析は、表8に提示される。
【0174】
時間インターバルごとに、ORM量(mg/kg体重)は、化合物I対媒体治療で低下
した(表8)。術後0~6時間、0~24時間、0~48時間及び0~72時間の期間で
は、ミリグラム/キログラム体重の差は統計的に有意であった(p≦0.10)。
【0175】
【0176】
PRK手術後の最初の3日間のVAS疼痛重症度
PRK手術後、患者は、手術後1時間から始めて手術後の最初の18時間にチェックさ
れた7つの時間点の6つでp値の閾値0.10で、化合物Iによる治療後に媒体と比較し
て統計的に有意に低下したVAS疼痛重症度スコアを報告した。VAS疼痛重症度スコア
は、化合物Iでは、手術後36時間以下の全ての予定時間点で媒体よりも低かった。PR
K手術後36時間から72時間のVAS収集期間の終りまでの全ての時間点で、化合物I
のVASスコアと媒体のVASスコアとの間の差はわずかに異なるにすぎず、p値の閾値
0.10でスコア間の統計的有意差は見られなかった。
【0177】
試験点眼剤の点眼の前及び後のVAS疼痛重症度スコア
1/2時間前且つ点眼剤の点眼直前(すなわち6、18及び24時間)と比較して術後
6.5、18.5及び24.5時間の時間点のVASスコアの平均変化は、化合物I治療
眼では、それぞれ、-3.1、2.8及び1.3であった。媒体治療眼では、同一差は、
それぞれ、-5.6、2.2及び-0.2であった。
【0178】
眼性疼痛アセスメント調査(OPAS)
OPASは、2010年の国立眼科研究所(National Eye Instit
ute)ワークショップから同定された必要性に応えて開発された、角膜及び眼表面疼痛
並びに生活の質を定量及びモニターするための検証された機器である。Qazi et
al.,Ophthalmology July 123(7):1458-1468(
2016)を参照されたい。QaziらによるOPASの疼痛重症度全体の等級スケール
は、調査に準拠して、0(無疼痛)~10(重篤疼痛)又は症状の頻度に関して0%(皆
無)~100%(常時)に等級付けされた。患者は、2日目、4日目(試験薬剤による治
療期間の終了時)及び8日目にOPAS調査/アンケートに記入するように要求された。
OPAS結果の統計解析は実施されなかった。合計27のOPAS質問のうち、7つの質
問の結果が以下に提示される。
【0179】
2日目の最大疼痛の眼性疼痛レベル(質問4)、最小疼痛の眼性疼痛レベル(質問5)
及び平均の眼性疼痛レベル(質問6)での過去24時間の眼性疼痛強度の質問では、3つ
の回答は全て、媒体と比較して化合物Iが数値的に有利であった(
図3A、
図3B、
図3
C)。
【0180】
次の症状:発赤(質問22)、灼熱感(質問23)、光知覚(質問24)及び流涙(質
問25)を伴う眼性疼痛はどれくらいの頻度かの質問では、回答は全て、媒体と比較して
化合物Iが有利であった(
図4A、4B、4C及び4D)。そのため、化合物Iが投与さ
れた患者は、プラセボが投与された患者と比較して、発赤、灼熱感、光知覚(羞明)及び
流涙を伴うより低い眼性疼痛レベルを呈した。
【0181】
要約診査眼結果
眼性疼痛アセスメント調査(OPAS)は、化合物I対媒体の治療期間でより良好な疼
痛管理及び生活の質の患者を示した。
・2日目の最大疼痛の眼性疼痛レベル(質問4)、最小疼痛の眼性疼痛レベル(質問5
)及び平均の眼性疼痛レベル(質問6)での過去24時間の眼性疼痛強度の質問では、3
つの回答は全て、媒体と比較して化合物Iが有利であった(
図3A~3C)。
・次の症状:発赤(質問22)、灼熱感(質問23)、光知覚(質問24)及び流涙(
質問25)を伴う眼性疼痛はどれくらいの頻度かの質問では、回答は全て、媒体と比較し
て化合物Iが有利であった(
図4A~4D)。
・1/2時間前且つ点眼剤の点眼直前(すなわち、6、18及び24時間)と比較して
術後6.5、18.5及び24.5時間の時間点のVASスコアの平均変化は、化合物I
治療眼では、それぞれ、-3.1、2.8及び1.3であった。媒体治療眼では、同一差
は、それぞれ、-5.6、2.2及び-0.2であった。
【0182】
薬動学
薬動学的アセスメント
薬動学的(PK)サンプルは、表9に示されるPK血液採取ウィンドウを用いて、以上
の診察スケジュールに定義される時間点で採取された。
【0183】
【0184】
血液サンプル(3mL)は全て、直接静脈穿刺又は前腕静脈に挿入された留置カテーテ
ルのどちらかにより腕から採取された。各血液管を引き抜いた後、管内容物と抗凝固剤(
3mL K2EDTA)との混合を確保するために、ただちに穏やかに8~10回反転さ
せた。サンプルとゴムストッパーとの長時間接触を回避して、遠心分離までウェットアイ
スに囲まれた試験管ラックに管を直立に配置した。
【0185】
30分以内に、約5℃で10分間にわたりおおよそ2000Gでサンプルを遠心分離し
た(又はサンプルを氷上に配置し、そして室温で遠心分離した)。遠心分離の直後、全上
清(約1.5mL)を第1の1.8mL NUNC 2Dバーコード付きクライオバイア
ルに移した。血漿を完全に混合した後、血漿の半分を第1のクライオバイアルから第2の
クライオバイアルに移してキャップを固定した。適切なPKクライオラベルを各クライオ
バイアルに装着し、透明テープでラベルを固定した。ただちにドライアイス上でクライオ
バイアルをフリーズし、次いで中央検査室に輸送するまで≦-20℃でフリーズ状態を維
持した。バイアルをバッチ方式で2週間に1回輸送した。
【0186】
検証されたLC-MS/MS法を用いて血漿中の化合物Iを定量した。定量下限(LL
OQ)は0.05ng/mLであった。濃度はng/mL単位で表された。実現可能なと
き、試験薬剤に暴露されたバンデージコンタクトレンズ(BCL)を収集し、治療後の残
留薬剤暴露に関して分析した(LLOQ:0.55mL抽出流体中5.00ng/mL又
は2.75ng/BCL)。LLOQ未満の濃度は「ゼロ」として報告され、且つ欠測デ
ータはそのように記された。
【0187】
実際の記録サンプリング時間及びノンコンパートメント法を用いて、Phoenix(
商標)WinNonlin(登録商標)(バージョン6.4)により、血漿中濃度-時間
データから関連する次のPKパラメーター:Cmax、Tmax、AUClast(計算
値)、Clast及びTlastを決定した。公称0、24及び72時間の検査により投
与前濃度を決定した。AUClast計算に線形台形公式を使用した。バンデージコンタ
クトレンズ化合物I濃度データからは、PKパラメーターを計算しなかった。
【0188】
化合物Iの血漿中薬動学
化合物Iの算術平均血漿中濃度-時間プロファイル及びPKパラメーターは、それぞれ
、
図5A及び
図5B並びに表10に提示される。
【0189】
化合物Iの局所片眼投与後、体循環への吸収は迅速であり、初回(1日目、範囲0.1
67~2.00時間)及び13回目(4日目、範囲0.00~2.08時間)の投与後の
メジアンTmaxは、それぞれ、0.459時間及び0.467時間であった。1日目に
34/40名の患者及び4日目に33/40名(Cmax)又は31/40名(AUCl
ast)の患者でCmaxを決定し、AUClastを計算した。1日目の投与前の濃度
は全て、定量限界未満にあり、0.00ng/mLとしてインピュートされた。2日目の
5回目の投与前(1回目の投与後24時間、2日目の時間点0時間)のトラフ(6時間投
与インターバルの終了時及びその次の投与前)の平均濃度(CV%)は1.25ng/m
L(54.9%)、4日目の13回目の投与前(1回目の投与後72時間、4日目の時間
点0時間)ではわずかに高い1.99ng/mL(76.3%)であった。
【0190】
濃度は一般に低く、4日間の繰返しQID投与にわたり0.195~7.56ng/m
Lの範囲内のCmax及び0.261~14.5ng・時間/mLのAUClastが観
測された。1日目の初回投与後の算術平均Cmax(CV%)は、0.454ng/mL
(49.9%)であり、4日目の13回目の投与後は、2.40ng/mL(63.5%
)すなわち5.3倍であった。対応する平均AUClast(CV%)値は、0.638
ng・時間/mL(46.0%)及び4.38ng・時間/mL(67.0%)(4日間
にわたり6.9倍に増加)であった。
【0191】
【0192】
バンデージコンタクトレンズ
用量投与の4日目に40名の患者からバンデージコンタクトレンズ(BCL)を収集し
て化合物Iを分析した。3名のIMPノンコンプライアント患者からの値はBCL要約統
計から除外したため、利用可能な血漿中PKなしの患者からの1つの値を含めて37の評
価可能な値が残った。0.55mL抽出流体中の化合物Iの平均濃度(CV%)は、85
00ng/mL(73.1%)であり、284~22600ng/mLの広範囲にわたっ
ていた。これらの濃度は、4680ng/レンズ(0.55mL×8500ng/mL)
の推定平均及び156~12400ng/レンズの範囲に変換される。BCL中の量は、
投与された化合物Iの0.925mg用量に比べて非常に少なく、平均は用量の0.51
%及び範囲は0.017%~1.3%であった。このことは、BCLが局所眼用化合物I
を吸収及び保持することを示唆するが、局所眼用量と比較して無視し得る量である。
【0193】
要約薬動学的結果
・体循環への化合物Iの吸収は、単回(初回用量)又は繰返し1日4回のどちらの局所
眼投与後も、迅速であった(メジアン血漿中Tmaxはおおよそ0.5時間であった)。
・化合物Iの単回及び複数回の両方の局所眼投与後、全身暴露は低く、4日間の繰返し
QID投与にわたり0.195ng/mL~7.56ng/mLの範囲内であり、中程度
の変動性を示した。平均Cmaxは、1日目の初回投与後0.454ng/mL及び4日
目の13回目の投与後2.40ng/mLであった。
・単回投与後のCmax及びAUClastに対するCV%値は、それぞれ、49.9
%及び46.0%であった。繰返し投与後の対応する値は、63.5%及び67.0%で
あった。
・繰返し投与後の平均Cmax(2.40ng/mL)は、1日目の単回投与後(0.
454ng/mL)の5.3倍であった。同様に、平均AUClastは、繰返し対単回
投与(4.38対0.638ng・時間/mL)後6.9倍であった。これらのデータは
、4日間の2.5%化合物Iの1日4回投与にわたり蓄積を示唆した。
・用量投与の4日目に40名の患者からバンデージコンタクトレンズ(BCL)を収集
した。0.55mL抽出流体中の平均濃度(CV%)は、8500ng/mL(73.1
%)であり、推定4680ng/レンズに変換される。BCL中の量は、投与された化合
物Iの0.925mg用量に比べて非常に少なく、用量の0.51%であり、0.017
%~1.3%の範囲であった。このことは、BCLが局所眼用化合物Iを吸収及び保持す
ることを示唆するが、局所眼用量と比較して無視し得る量である。
【0194】
安全性
安全性アセスメントは、全てのAE、SAEをそれらの重症度及び試験薬剤との関係と
共に収集することからなっていた。表11は、PRK手術後の状況で共通する徴候及び症
状のリストを含む。重症度又は持続時間のどちらかの列挙された範囲を超えた徴候及び症
状のみがAEとして報告された。
【0195】
【0196】
1週間とは、許容可能なウィンドウを含めて術後8日目の診察(治療期間1の6回目の
診察又は期間2の11回目の診察)までの消散を意味する。表は、試験を開始する前、標
準的PRK手術後によく見受けられる予想される臨床徴候を含む編集された経験に基づく
全ての治験責任医師及び外科医からのフィードバックにより構築された。
【0197】
1ヶ月とは、EOS診察までの又はEOS診察が実施されないか若しくは試験手術間が
1週間を超える場合には手術後37日以内の消散を意味する。
【0198】
有害イベント及び重篤有害イベントは、全身及び眼の両方のアセスメントのアセスメン
トを含んでいた。全身安全性アセスメントは、身長及び体重の定期的アセスメント、生命
徴候、誤用/乱用を含む投薬過誤報告、妊娠報告並びに初期安全性モニタリングを含んで
いた。誤用/乱用、妊娠報告及び初期安全性モニタリングは、試験で評価されなかった。
眼安全性アセスメントは下記を含んでいた。
・最高矯正視力(BCVA)及び非矯正視力(UCVA):4メートル(13フィート
)又は1メートル(4メートルチャートを読めない患者に対して)のETDRS視力チャ
ートを用いて各診察時に測定された。BCVAスコアリングは、適正に読み取られた文字
の数プラス30に基づいて行われた。視力が非常に劣り患者が1メートルでいずれの最大
文字も読み取れない場合、指数弁及び手動弁及び光覚弁が試験された。
・眼内圧(IOP):IOP測定は、圧平眼圧測定又はトノペンを用いて行われた。
・拡張眼底検査:拡張眼底検査は、硝子体、網膜/黄斑/脈絡膜及び視神経の検眼鏡検
査アセスメントを含んでいた。網膜裂傷/剥離、網膜出血、硝子体出血密度、硝子体ヘイ
ズグレーディング及び異常所見の評価を行って、グレーディング基準に従ってスコア付け
した。
・眼充血:マクモニーズ発赤スケールに従ってスリットランプで各眼中の眼球結膜の結
膜発赤をグレードけした。充血は、各眼の4つの領域(上側、下側、耳側、鼻側)で各領
域の重症度を0~5にグレードけして評価された。
・スリットランプ検査による上皮欠損のサイズ:光源ビームに対して斜めの観察角で狭
いスリットビームを用いて、角膜を区分して角膜創傷の垂直及び水平境界を可視化した。
校正スリットビームの幅及び高さを調整することにより、手術上皮創傷の最大水平寸法(
創傷幅)及び垂直寸法(創傷高さ)を推定した。創傷が閉鎖されて創傷サイズが水平寸法
0及び垂直寸法0として報告されるまで、評価を実施した。
・細隙灯生体顕微鏡法:グレーディング基準に従って細隙灯生体顕微鏡法により両眼の
眼徴候(眼瞼/結膜、角膜、水晶体及び虹彩/前房)を評価した。
・まばたき速度:まばたきは、外部刺激誘発の不在下において眼瞼で発作的に両眼を閉
じること(持続時間<1秒間)として定義された。各まばたきアセスメントは、2分(又
は最小時間を1分間としてできる限り2分間近く)継続され、得られたまばたき速度を平
均してまばたき/分単位でまばたき速度を計算した。
・涙液産生(知覚麻痺剤なしのシルマー試験):試験は、両眼で知覚麻痺剤なしで同時
に行われた。涙分泌は、涙により湿潤されたストリップの長さがミリメートル単位で測定
された。測定値は、最も近い整数に丸められた。
・角膜染色:この試験は、下側の結膜嚢に含浸フルオレセインナトリウムストリップの
湿潤端を穏やかに触れることにより実施される。ストリップは、1滴の無菌生理食塩水で
湿潤され、軽く叩いて過剰の生理食塩水が除去された。患者は、涙膜全体にわたり色素の
分散を確保するために数回まばたきした後、5つのゾーン(中心プラス4つの四分円)の
各々に対して、0~3(0=正常、染色なし、1=軽度、表層斑点マイクロ点状染色、2
=中度、いくつかの合体領域を有するマクロ点状染色及び3=重度、数多くの合体マクロ
点状領域及び/又はパッチ)のスケールでグレード付けされた。
【0199】
安全性評価
試験では、死亡もSAEも薬剤の中止もAEに起因する試験の中止も見られなかった。
合計18回のAEが10名の患者(40名の登録患者の25%)で報告され、そのうちの
12回は化合物Iによる治療後、5回は媒体による治療後に起こり、1回は試験薬剤の投
与前に1名の患者で起こった。AEは全て、重症度が軽度又は中度どちらかであった。
【0200】
合計10名の患者(25%)は、治療時に現れた少なくとも1回のAEを経験し、5名
の患者は単回のAEを経験し、5名の患者は2回以上のAEを経験した。5名の患者は、
化合物Iによる治療時にのみAEを経験し、2名の患者は、媒体による治療時にのみAE
を経験し、3名の患者は、化合物I及び媒体の両方による治療時にAEを経験した。初回
の試験薬剤の投与前に1回のAE(頭痛)が見られた。
【0201】
4名の患者(40名の登録患者の10%)で6回の眼AEが見られ、その全てが軽度重
症度であった(各々化合物I及び媒体で治療された3つの眼)。いずれのAEも、どちら
の試験薬剤(化合物I又は媒体)にも関連すると推測されなかった。6回の眼AEのうち
の5回は、治験医によりPRK手順に関連すると考えられた(2回は化合物I治療眼及び
3回は媒体治療眼に属した)。
【0202】
7名の患者(17.5%)で12回の非眼AEが見られた(化合物Iで治療された6つ
の眼、媒体で治療された2つの眼及び薬剤期間でない間の1名の患者)。4名の患者(1
0%)の5回のAEは、中度重症度であった(化合物Iで治療された4つの眼及び媒体で
治療された1つの眼)。残りのAEは軽度重症度であった。いずれのAEも、治験医によ
り化合物Iに関すると推測されなかった。
【0203】
表12は、有害イベントの全発生率を提供する。
【0204】
【0205】
眼安全性アセスメント
最高矯正視力(BCVA)及び非矯正視力(UCVA):化合物Iの投与は、試験全体
を通じて化合物I治療眼と媒体治療眼との間にいかなるトレンドも明らかな差ももたらさ
なかった。したがって、化合物Iは、BCVA及びUCVAに悪影響を及ぼすことなく疼
痛を軽減することが、データから示唆される。
【0206】
眼内圧(IOP):試験全体を通じて予定時間点にわたるトレンドも化合物I治療眼と
媒体治療眼との間の明らかな差も観測されなかった。試験の終了時、ベースラインと比較
して平均IOP値のわずかな増加(<5mmHg)が見られた。試験期間中の平均スコア
の小さい変化は、臨床的に有意でなかった。
【0207】
拡張眼底検査:異常所見は、化合物I及び媒体治療眼に対して予定時間点にわたり治験
医により報告されなかった。
【0208】
眼充血:化合物I及びプラセボ治療眼に対する経時的眼充血のバーチャートは、それぞ
れ、
図6A及び6Bに提供される。
図6A及び6Bは、それぞれ、3日目及び4日目のグ
レード4及びグレード3眼充血(マクモニーズスケールで測定されたとき)を表す。術後
2日目(PRK手術後24時間)、化合物I治療眼では媒体治療眼と比較してより少ない
グレード4充血(全ての四分円で)が見られた。上側四分円では、この差に対するp値は
0.04であった。3日目(術後48時間)、化合物I治療眼では媒体治療眼と比較して
より少ないグレード3充血が観測された。観測はいずれかも、AEとしてキャプチャーさ
れなかった。
【0209】
スリットランプ検査による上皮欠損のサイズ:化合物Iの投与後の創傷治癒の速度を評
価するために、化合物I及び媒体治療集団の両方で上皮欠損のサイズが測定された。上皮
創傷サイズの楕円面積は、スリットランプで測定される上皮欠損の幅及び高さから次のよ
うに:面積(mm2)=幅×高さ×πとして計算された。化合物Iと媒体との間の上皮創
傷面積の差は、PRK手術後2日目(面積差に対するp値は全ての>0.35であった)
を除いて、いずれの時間点でも顕著に異ならなかった。2日目(術後24時間)、化合物
I対媒体で治療された患者間の平均上皮欠損面積の差は11.23mm2であった(p値
=0.034)。この差は、手術時間直後、臨床的に有意でなかった。3日目(術後48
時間)まで、化合物I治療眼と媒体治療眼との間に差は見られず、創傷の面積は非常に小
さかった。4日目(術後48時間)、ほとんど全ての眼は治癒し、化合物I治療眼と媒体
治療眼との間に差は見られなかった。化合物Iは、媒体と比較して創傷治癒の遅延を示さ
なかった。
【0210】
図7及び表13は、化合物I治療眼対媒体治療眼の上皮サイズ欠損の比較を提供する。
【0211】
【0212】
細隙灯生体顕微鏡検査:細隙灯生体顕微鏡検査は、眼構造(眼瞼/結膜、角膜、虹彩/
前房、水晶体、房水フレア及び房水炎症性細胞グレード)の検査からなっていた。予定時
間点全体にわたり化合物I及び媒体の両方で治療された患者において、房水フレア及び房
水炎症性細胞グレード、虹彩/前房及び水晶体の眼構造に異常は観測されなかった。
【0213】
まばたき速度:平均まばたき速度の変動が見られたが、化合物I及び媒体治療後のまば
たき速度間の予定時間点にわたるトレンドも明らかな差も試験全体を通じて観測されなか
った。試験の終了時、まばたき速度の臨床関連変化は、ベースラインと比較して観測され
なかった。
【0214】
角膜染色:患者のほとんどは、ベースライン、8日目及びEOS診察で測定された正常
(グレード0)染色度を有していた。ベースライン又は8日目又はEOS診察のどれでも
、化合物I対媒体で治療された眼間の角膜染色の臨床的差は、観測されなかった。
【0215】
生命徴候、身体所見及び安全性に関連する他の観測:生命徴候パラメーター(収縮期及
び拡張期血圧、脈拍数並びに体温)は、全ての患者が試験期間中正常範囲内にあった。生
命徴候に関連するAEは観測されなかった。心電図及び特殊安全性トピックは行われず評
価されなかった(プロトコルに従って)。
【0216】
安全性結果の概要
・この試験で報告された死亡も深刻又は重篤AEも治療中止も試験中止も見られなかっ
た。
・いずれのAEも、試験薬剤(化合物I又は媒体のどちらも)に関連すると評価されな
かった。40名中8名の患者及び40名中5名の患者は、それぞれ、化合物I及び媒体治
療後にAEを発生した。眼AEは全て、軽度であり、化合物Iと媒体との間で均衡してお
り、大多数は、PRK手順に関連する周知のAEであった。
・化合物Iと媒体との間で安全性の臨床的有意差は観測されなかった。
・化合物Iは、媒体と比較して創傷治癒の遅延を示さなかった。
・2日目(術後24時間)に重篤結膜充血を示した化合物I治療眼は、媒体治療眼と比
較してより少なかった。
・化合物I投与後、媒体と比較して、BCVA、IOP、細隙灯生体顕微鏡検査、散瞳
検査、まばたき速度、涙液産生、角膜染色又は生命徴候で観測された臨床関連変化は見ら
れなかった。
【0217】
優先項目によるAEの発生率は、表14に示される。
【0218】
【0219】
本明細書で引用される全ての刊行物及び特許文献は、このような刊行物又は文献のそれ
ぞれが具体的且つ個別に参照により本明細書に組み込まれるように指示されているかのよ
うに、参照により本明細書に組み込まれる。本発明及びその実施形態は、詳細に記載され
た。しかしながら、本発明の範囲は、本明細書に記載されるいずれかのプロセス、製造、
物質の組成、化合物、手段、方法及び/又は工程の特定の実施形態に限定されることが意
図されない。本発明の趣旨及び/又は本質的な特徴から逸脱することなく、様々な変更形
態、置換及び変形形態が本開示の材料に施され得る。したがって、当業者は、本明細書に
記載される実施形態と同じ機能を実質的に実施するか又は同じ結果を実質的に達成する、
後の変更形態、置換及び/又は変形形態が、本発明のそのような関連する実施形態に従っ
て利用され得ることを本発明から容易に理解するであろう。したがって、以下の特許請求
の範囲は、本明細書に開示されるプロセス、製造、物質の組成、化合物、手段、方法及び
/又は工程に対する変更形態、置換及び変形形態をそれらの範囲内に包含することが意図
される。特許請求の範囲は、その趣旨が述べられていない限り、記載された順又は要素に
限定して解釈すべきではない。形態及び詳細の様々の変更が添付の特許請求の範囲から逸
脱することなく施され得ることを理解すべきである。