(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025042065
(43)【公開日】2025-03-27
(54)【発明の名称】電極の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/139 20100101AFI20250319BHJP
H01M 4/04 20060101ALI20250319BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20250319BHJP
B05D 5/12 20060101ALI20250319BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20250319BHJP
【FI】
H01M4/139
H01M4/04 A
B05D7/24 301E
B05D5/12 B
B05D3/00 D
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023148874
(22)【出願日】2023-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】大野 雅人
【テーマコード(参考)】
4D075
5H050
【Fターム(参考)】
4D075AE19
4D075BB24Z
4D075BB33Z
4D075BB37Z
4D075BB48Z
4D075BB91Z
4D075BB93Z
4D075CA22
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA04
4D075DB01
4D075DB06
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4D075DC08
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4D075DC18
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4D075EA05
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4D075EA10
4D075EB12
4D075EB17
4D075EB18
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4D075EC01
4D075EC10
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4D075EC33
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050GA02
5H050GA10
5H050GA22
5H050GA27
5H050HA14
5H050HA15
(57)【要約】
【課題】生産性を向上できる電極の製造方法を提供する。
【解決手段】電極の製造方法であって、基材に電極スラリーを塗工する塗工工程と、前記電極スラリーを乾燥する乾燥工程と、を有し、前記乾燥工程は、前記塗工工程後、前記電極スラリーを第1露点下で定率乾燥する第1工程と、前記第1工程後、前記電極スラリーを第2露点下で減率乾燥する第2工程と、前記第2工程後、前記電極スラリーを第3露点下で減率乾燥する第3工程と、を含み、前記第2露点は、前記第1露点よりも低く、前記第3露点は、前記第2露点よりも低い、電極の製造方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極の製造方法であって、
基材に電極スラリーを塗工する塗工工程と、
前記電極スラリーを乾燥する乾燥工程と、を有し、
前記乾燥工程は、
前記塗工工程後、前記電極スラリーを第1露点下で定率乾燥する第1工程と、
前記第1工程後、前記電極スラリーを第2露点下で減率乾燥する第2工程と、
前記第2工程後、前記電極スラリーを第3露点下で減率乾燥する第3工程と、を含み、
前記第2露点は、前記第1露点よりも低く、
前記第3露点は、前記第2露点よりも低い、電極の製造方法。
【請求項2】
前記第1工程における第1炉内の圧力は、前記第2工程における第2炉内の圧力よりも小さく、
前記第2工程における前記第2炉内の圧力は、前記第3工程における第3炉内の圧力よりも小さい、請求項1に記載の電極の製造方法。
【請求項3】
前記第3工程における前記第3炉内の温度は、65℃以上である、請求項2に記載の電極の製造方法。
【請求項4】
前記第1炉の体積は、前記第2炉及び前記第3炉の体積よりも大きい、請求項2に記載の電極の製造方法。
【請求項5】
前記第3露点は、-20℃以下である、請求項1に記載の電極の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電極の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1において開示されるような電極の製造方法に関して様々な技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術では、プレス加工時の残留応力が経時的に開放され電極厚みが増加する電極のスプリングバックを抑制するため、塗工乾燥処理、プレス処理、ベーク(絶乾)処理の順に処理しているが、塗工乾燥処理後のワーク温度が高い状態でプレス処理をすると、電極合材の線膨張量と集電体の線膨張量が異なることによる電極ひずみが生じてしまうため、プレス処理前に一度温度を下げる必要がある。
よって、塗工乾燥処理で温度を上げたにもかかわらず、一度温度を低下させ、再度ベーク処理で温度を上げる必要があり、エネルギー効率が悪い(生産性が低い)。
【0005】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、生産性を向上できる電極の製造方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1実施形態においては、電極の製造方法であって、
基材に電極スラリーを塗工する塗工工程と、
前記電極スラリーを乾燥する乾燥工程と、を有し、
前記乾燥工程は、
前記塗工工程後、前記電極スラリーを第1露点下で定率乾燥する第1工程と、
前記第1工程後、前記電極スラリーを第2露点下で減率乾燥する第2工程と、
前記第2工程後、前記電極スラリーを第3露点下で減率乾燥する第3工程と、を含み、
前記第2露点は、前記第1露点よりも低く、
前記第3露点は、前記第2露点よりも低い、電極の製造方法を提供する。
【0007】
本開示の第2実施形態においては、第1実施形態において、前記第1工程における第1炉内の圧力は、前記第2工程における第2炉内の圧力よりも小さく、
前記第2工程における前記第2炉内の圧力は、前記第3工程における第3炉内の圧力よりも小さくてもよい。
【0008】
本開示の第3実施形態においては、第2実施形態において、前記第3工程における前記第3炉内の温度は、65℃以上であってもよい。
【0009】
本開示の第4実施形態においては、第2実施形態において、前記第1炉の体積は、前記第2炉及び前記第3炉の体積よりも大きくてもよい。
【0010】
本開示の第5実施形態においては、第1実施形態において、前記第3露点は、-20℃以下であってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本開示の電極の製造方法は、生産性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の乾燥工程の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示による実施の形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本開示の実施に必要な事柄(例えば、本開示を特徴付けない電極の一般的な構成および製造プロセス)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本開示は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
また、図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は実際の寸法関係を反映するものではない。
【0014】
本開示においては、電極の製造方法であって、
基材に電極スラリーを塗工する塗工工程と、
前記電極スラリーを乾燥する乾燥工程と、を有し、
前記乾燥工程は、
前記塗工工程後、前記電極スラリーを第1露点下で定率乾燥する第1工程と、
前記第1工程後、前記電極スラリーを第2露点下で減率乾燥する第2工程と、
前記第2工程後、前記電極スラリーを第3露点下で減率乾燥する第3工程と、を含み、
前記第2露点は、前記第1露点よりも低く、
前記第3露点は、前記第2露点よりも低い、電極の製造方法を提供する。
【0015】
従来は、塗工乾燥工程にて100℃程度まで昇温し、その後のプレス工程で電極ひずみ発生を抑制するため常温まで冷却し、ベーク(絶乾)工程(注液前の電極絶乾)にて再度200℃程度まで昇温していた。本開示においては、電極スラリーの蒸気をベーク工程に持ち込まないようにすることにより、リール・to・リール搬送における従来の塗工乾燥工程とベーク工程を直結させることにより、プレス工程での冷却が不要となり、エネルギー効率を良くし、生産性を向上させることができる。
【0016】
(1)塗工工程
塗工工程は、基材に電極スラリーを塗工する工程である。
【0017】
基材は、集電体等であってもよい。
集電体は、負極集電体、正極集電体、バイポーラ集電体等であってもよい。集電体の材料としては、例えば、アルミニウム、銅、SUS、ニッケル等の金属が挙げられる。集電体の厚さは、例えば0.1μm以上、100μm以下である。集電体の形状は、シート状等であってもよい。
【0018】
電極スラリーは、基材の第1面に塗工される。電極スラリーは、集電体の第1面のみに塗工されてもよく、集電体の第1面および当該第1面の裏面である第2面に塗工されてもよい。
電極スラリーは、活物質、バインダー、導電材、電解質、増粘剤等を含む電極材料を溶媒とともに混合して調製することができる。電極スラリーは、正極スラリーであってもよく、負極スラリーであってもよい。電極スラリーは、10000ppm以下程度の水分を含んでいてもよい。
【0019】
活物質は正極活物質であってもよい。正極活物質としては、例えば酸化物活物質が挙げられる。酸化物活物質としては、例えば、LiCoO2、LiMnO2、LiNiO2、LiVO2、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2等の岩塩層状型活物質、LiMn2O4、Li(Ni0.5Mn1.5)O4等のスピネル型活物質、LiFePO4、LiMnPO4、LiNiPO4、LiCuPO4等のオリビン型活物質が挙げられる。
【0020】
活物質は負極活物質であってもよい。負極活物質としては、例えば、カーボン活物質、酸化物活物質および金属活物質等を挙げることができる。カーボン活物質としては、例えば、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、高配向性グラファイト(HOPG)、ハードカーボンおよびソフトカーボン等を挙げることができる。酸化物活物質としては、例えば、Nb2O5、Li4Ti5O12およびSiOを挙げることができる。金属活物質としては、例えば、In、Al、SiおよびSn等を挙げることができる。
【0021】
バインダーとしては、例えば、ポリビニリデンフロライド(PVDF)およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素含有バインダー、ブタジエンゴム等のゴム系バインダーおよびアクリル系バインダーが挙げられる。
【0022】
導電材としては、例えば、炭素材料、金属粒子、導電性ポリマー等が挙げられる。炭素材料としては、例えば、アセチレンブラック(AB)およびケッチェンブラック(KB)等の粒子状炭素材料;炭素繊維、カーボンナノチューブ(CNT)およびカーボンナノファイバー(CNF)等の繊維状炭素材料が挙げられる。
【0023】
増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース等の多糖類を挙げることができる。
【0024】
電解質としては、例えば、硫化物固体電解質および酸化物固体電解質などの固体電解質が挙げられる。硫化物固体電解質としては、例えば、Li元素、X元素(Xは、P、As、Sb、Si、Ge、Sn、B、Al、Ga、Inの少なくとも一種である)、および、S元素を含有する固体電解質が挙げられる。また、硫化物固体電解質は、O元素およびハロゲン元素の少なくとも一方をさらに含有していてもよい。ハロゲン元素としては、例えば、F元素、Cl元素、Br元素、I元素が挙げられる。
【0025】
酸化物固体電解質としては、例えば、Li2O-B2O3-P2O5、Li2O-SiO2、Li2O-B2O3、Li1.3Al0.3Ti0.7(PO4)3、Li5La3Ta2O12、Li7La3Zr2O12、Li6BaLa2Ta2O12、Li3.6Si0.6P0.4O4、Li4SiO4、Li3PO4、Li3PO4-3/2xNx(x≦1)が挙げられる。
【0026】
溶媒としては、例えば、水系溶媒、有機溶媒等が挙げられる。水系溶媒とは、水、または、水と極性有機溶媒とを含む混合溶媒を意味する。例えば、活物質、バインダー等の種類に応じて適当な分散媒が選択され得る。
水系溶媒としては、取扱いの容易さからは、水を好適に用いることができる。混合溶媒に使用可能な極性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、テトラヒドロフラン等のエーテル類等が挙げられる。
有機溶媒としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)等が挙げられる。
【0027】
(2)乾燥工程
乾燥工程は、前記電極スラリーを乾燥する工程である。
通常、乾燥工程では、電極スラリーの乾燥のために乾燥装置を用いる。乾燥装置は、熱風装置、レーザー装置、IR(赤外線)装置など、電極スラリーを乾燥させることができる従来公知の装置を用いることができる。乾燥工程では、電極スラリーを水分が数百ppm以下になるまで絶乾してもよい。
電極スラリーは、乾燥工程により電極層となる。
【0028】
乾燥工程は、第1工程と、第2工程と、第3工程と、を含む。
第1工程は、前記塗工工程後、前記電極スラリーを第1露点下で定率乾燥する工程である。
第2工程は、前記第1工程後、前記電極スラリーを第2露点下で減率乾燥する工程である。
第3工程は、前記第2工程後、前記電極スラリーを第3露点下で減率乾燥する工程である。
第1工程においては、第1炉内で電極スラリーを乾燥してもよく、第2工程においては、第2炉内で電極スラリーを乾燥してもよく、第3工程においては、第3炉内で電極スラリーを乾燥してもよい。乾燥工程においては、基材及び基材上に塗工された電極スラリーを含むワークを搬送体に載せて、第1炉、第2炉、第3炉の順に搬送してもよい。また、塗工工程、乾燥工程の順にワークを搬送体に載せて搬送してもよい。搬送速度は、例えば、30m/min以上であってもよい。
【0029】
第2露点は、第1露点よりも低く、第3露点は、第2露点よりも低い。
第1露点は-20℃以上であってもよく、-10℃以上であってもよい。第2露点は、第1露点よりも低く、且つ、第3露点よりも高く、例えば-10℃以下であってもよい。第3露点は、-20℃以下であってもよい。
【0030】
第1工程における第1炉内の圧力は、第2工程における第2炉内の圧力よりも小さく、第2工程における第2炉内の圧力は、第3工程における第3炉内の圧力よりも小さくてもよい。これにより、第1炉から第2炉への気流の発生を抑制し、第2炉から第3炉への気流の発生を抑制し、第2炉及び第3炉の露点が第1炉の露点よりも低い状態を維持することができる。
第1工程における第1炉内の圧力は、乾燥工程系外に対して負圧であり、且つ、第2工程における第2炉内の圧力に対して負圧であってもよい。
第2工程における第2炉内の圧力は第1工程における第1炉内の圧力に対して正圧であり、且つ、第3工程における第3炉内の圧力に対して負圧であってもよい。
第3工程における第3炉内の圧力は乾燥工程系外に対して負圧であり、且つ、第2工程における第2炉内の圧力に対して正圧であってもよい。
【0031】
第1炉の体積は、第2炉及び第3炉の体積よりも大きくてもよい。第2炉及び第3炉の体積を第1炉の体積よりも小さくすることで、第2工程以降にエアの露点を低くすることができる。第2炉及び第3炉の体積は、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0032】
第1工程においては、熱風装置、レーザー装置、IR装置等を用いて電極スラリーを加熱してもよい。第1工程においては、第1炉内に外気を供給してもよいし、熱風として露点-20℃以上25℃以下、温度65℃以上のエアを供給し、第1炉内の温度を65℃以上にしてもよい。第1工程においては、第1炉内の圧力が、第2炉内の圧力よりも小さいことを利用して、第2炉内に熱風を供給し、第2炉内から第1炉内に熱風が流れるように気流を発生させ、第2炉内に供給される熱風を第1炉内に供給してもよい。これにより、第2炉内の露点の上昇を抑制することができる。第1工程においては、輻射熱を利用してもよい。
第1工程においては、電極スラリーの乾燥に必要な最高温度まで電極スラリーを加熱してもよく、電極スラリーの加熱温度は100℃~200℃であってもよい。
第1工程における電極スラリーの乾燥時間は、電極スラリーの定率乾燥期間内であれば特に限定されない。定率乾燥期間は、材料の表面と中心温度は同一に保たれ、含水量が時間とともに直線的に減少する期間である。
第1工程における電極スラリーの乾燥時間は、第1炉内の露点、温度、電極スラリーの加熱温度等に応じて適宜設定することができる。
第1工程においては、レーザー及びIR等により、温度100℃~200℃、10秒~15秒の条件で電極スラリーを乾燥してもよい。
【0033】
第2工程においては、第2炉内に熱風として例えば、露点-10℃以下、温度65℃以上のエアを供給し、第2炉内の温度を65℃以上にしてもよい。第2工程においては、第1炉内の圧力が、第2炉内の圧力よりも小さく、第2炉内の圧力が、第3炉内の圧力よりも小さいことを利用して、第3炉内に熱風を供給し、第3炉内から第2炉内及び第1炉内に熱風が流れるように気流を発生させ、第3炉内に供給される熱風を第2炉内及び第1炉内に供給してもよい。これにより、第3炉内の露点の上昇を抑制することができる。第2工程においては、第2炉を設けることにより、第1炉と第3炉を隔離し、第3炉内を低露点に維持することができる。
第2工程における電極スラリーの乾燥時間は、電極スラリーの減率乾燥期間内であれば特に限定されない。減率乾燥期間は、表面温度が急速に上昇し始め、中心温度も表面温度に追従して上昇し、材料の表面温度と中心温度が熱源温度に近づくまでの期間である。
【0034】
第3工程においては、第3炉内に熱風として露点-20℃以下、温度65℃以上のエアを供給し、第3炉内の温度を65℃以上にしてもよい。第3工程においては、熱風装置、レーザー装置、IR装置等を用いて電極スラリーを加熱してもよい。第3工程においては、輻射熱を利用してもよい。
第3工程における電極スラリーの加熱温度は、100℃~200℃であってもよい。
第3工程における第3炉内に供給する熱風の温度は、電極スラリーの温度の低下を抑制する観点から、第1工程における第1炉内に供給する熱風の温度と同じかそれ以上であってもよく、電極スラリーの到達温度以上の温度であってもよい。
第3工程における電極スラリーの乾燥時間は、電極スラリーの減率乾燥期間内であれば特に限定されない。
第3工程においては、レーザー及びIR等により、温度100℃~200℃、10秒~15秒の条件で電極スラリーを乾燥してもよい。
【0035】
第3工程における第3炉の出口の露点は-20℃以下であってもよい。第3炉を出た後の出口側の領域はドライエア雰囲気であってもよい。第3工程により、電極スラリーから水分が数百ppm以下、例えば500ppm以下になるまで除去され基材上に電極層が形成される。第3工程後、基材及び電極層を含む電極をプレス処理してもよい。
【0036】
炉内への外気の流入の際や電極スラリー自体の水分が乾燥する際に露点が変動する。そのため、乾燥工程においては、露点計を設けて、熱風としてエアを給気する環境下において、実測した露点に応じて、エアの露点、熱風の給気量、熱風の温度を適宜調整してもよい。
具体的には、露点計は、第3炉内の排気配管に設けてもよい。そして、排気配管の露点を給気側にフィードバックし、露点値が予め設定した所定の露点となるようにエアの露点、熱風の給気量、熱風の温度を調整してもよい。
電極スラリーの水分の蒸発等により、炉内環境が変動しても変化に追従し露点、熱風供給量、熱風温度等を調整することで、電極スラリーの乾燥を安定して行うことができる。
第1炉~第3炉の全ての炉について、露点、熱風供給量、熱風温度等を調整するのではなく、最終ゾーンである第3炉の露点を観測し、制御することで最も効率よく電極スラリーを絶乾することができる。
熱風供給量の調整には、露点に応じて開閉及び開度を制御可能なオートダンパー等を用いてもよい。
【0037】
図1は、本開示の乾燥工程の一例を示す模式図である。
図1に示す乾燥工程は、搬送方向にワーク1が搬送され、第1工程においてワーク1は第1炉10内でレーザー装置11により加熱され、第2工程において熱風装置21により第2炉20内に熱風50が供給され、第3工程において熱風装置32により第3炉30内に熱風50が供給され、且つ、ワーク1は第3炉30内でレーザー装置31により加熱される。
第1工程においても熱風装置により第1炉10内に熱風50を供給してもよい。第1工程においては、レーザー装置11の代わりに、熱風装置、IR装置等を用いてもよい。
第2工程においては、第1炉10と第3炉30を隔てる仕切りを設けてもよい。
第2工程においては、熱風装置21から供給する熱風50は、露点-10℃以下、温度65℃以上であってもよい。
第3工程においては、熱風装置32から供給する熱風50は、露点-20℃以下、温度65℃以上であってもよい。
第2炉20と第3炉30の体積は、第1炉10の体積よりも小さい。第1炉10内の圧力が、第2炉20内の圧力よりも小さいため、第2炉20内に供給される熱風50は、第2炉20内から第1炉10内に流れるように気流が発生し、第2炉20内の第2露点が第1炉10内の第1露点よりも低い状態が維持される。
第2炉20内の圧力が、第3炉30内の圧力よりも小さいため、第3炉30内に供給される熱風50は、第3炉30内から第2炉20内に流れるように気流が発生し、第3炉30内の第3露点が第2炉20内の第2露点よりも低い状態が維持される。
第3工程後の第3炉30の出口側の領域は、ドライエア雰囲気であってもよい。
第3工程後、ワーク1は、プレス処理される。
【0038】
本開示の製造方法で得られる電極は、電極層と集電体を備える。
電極層は、正極層であってもよく、負極層であってもよい。電極層は、正極活物質および負極活物質の一方と、さらに、バインダー、導電材、電解質等を含有していてもよい。これらの材料については、上記のとおりである。
集電体は、負極集電体、正極集電体、バイポーラ集電体等であってもよい。集電体の材料、集電体の厚さ、集電体の形状については、上記のとおりである。
【0039】
本開示の電極は、通常、電池の製造に用いられる。電極は、正極であってもよく、負極であってもよい。
電極が用いられる電池の種類は特に限定されないが、例えば、リチウムイオン二次電池が挙げられる。電池は、電解質として電解液を用いた液系電池であってもよく、電解質として固体電解質を用いた固体電池であってもよい。電池の用途としては、例えば、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、電気自動車(BEV)、ガソリン自動車、ディーゼル自動車等の車両の電源が挙げられる。中でも、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)または電気自動車(BEV)の駆動用電源に用いられてもよい。また、電池は、車両以外の移動体(例えば、鉄道、船舶、航空機)の電源として用いられてもよく、情報処理装置等の電気製品の電源として用いられてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1.ワーク
10.第1炉
11.レーザー装置
20.第2炉
21.熱風装置
30.第3炉
31.レーザー装置
32.熱風装置
50.熱風